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特許7432722昇華用の高密度化された固体プリフォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】昇華用の高密度化された固体プリフォーム
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/448 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
C23C16/448
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022528223
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 US2020060478
(87)【国際公開番号】W WO2021097258
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】62/935,235
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリックス, ブライアン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ライト, ジュニア, ロバート エル.
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-273093(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/003603(US,A1)
【文献】特表2005-535112(JP,A)
【文献】特開平10-025576(JP,A)
【文献】特開2003-282556(JP,A)
【文献】特開2010-013693(JP,A)
【文献】特開2001-059178(JP,A)
【文献】特開平11-278997(JP,A)
【文献】特表2014-523484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
C23C 16/00-16/56
H01L 21/00-21/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持相及び固体昇華性材料を含む昇華用プリフォームであって、固体昇華性材料は支持相の少なくとも一部を取り囲み、固体昇華性材料は加圧粉体であり、プリフォームは、プリフォームを貫通する複数のチャネルを含む、昇華用プリフォーム。
【請求項2】
プリフォームが、プリフォームの上面、プリフォームの底面、又はプリフォームの側面、の少なくとも1つに金属箔をさらに含む、請求項1に記載のプリフォーム。
【請求項3】
プリフォームが、プリフォームの表面に複数の溝を備える、請求項1に記載のプリフォーム。
【請求項4】
蒸気を送達するためのアンプルであって、蒸気出口ポートを有するアンプル本体を含み、アンプル本体は、一又は複数の昇華性プリフォームを含む内部空間を画定し、各昇華性プリフォームは、支持相及び固体昇華性材料を含み、固体昇華性材料は、支持相の少なくとも一部を取り囲み、固体昇華性材料は加圧粉体であり、プリフォームは、プリフォームを貫通する若しくはその周囲にある複数のチャネルを含む、蒸気を送達するためのアンプル。
【請求項5】
アンプル本体が複数の昇華性プリフォームを含み、各昇華性プリフォームのチャネルが隣接する昇華性プリフォームのチャネルと整列しないように昇華性プリフォームが配置される、請求項4に記載のアンプル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板上に膜を堆積させるための蒸気を生成するための固体昇華性材料に関し、より詳細には、支持相を取り囲む固体昇華性材料を含むプリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸着は、昇華により気化する固体材料を用いた堆積を含み得る。典型的には、これらの固体材料をアンプルに入れ、このアンプルを加熱して昇華させる。固体材料は、典型的には、粉末形態でアンプルに加えられる。粉末は、アンプルを充填するよう使用されてもよいし、あるいはアンプル内に収容されているトレイ又は仕切りに分配されてもよい。アンプルから供給される蒸気は、例えば、半導体製造プロセスにおいて使用することができる。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、基板上に膜を堆積させるための蒸気を生成するための固体昇華性材料に関し、より詳細には、支持相を取り囲む固体昇華性材料を含むプリフォームに関する。
【0004】
典型的には、アンプルに固体昇華性材料の粉末を充填する。これは、正確な充填を要するゆっくりとした手動プロセスで行うことができ、水分又は夾雑物がアンプルに入らないようにするために、しばしばグローブボックス条件下で行われる。固体昇華性材料を含むプリフォームを用いることにより、プリフォームの取り扱いが簡単になるため、アンプル充填プロセスを合理化することができる。
【0005】
さらに、粉末は密度が低くなる可能性があり、そうするとアンプルの内容物が急速に消費される。例えば固体昇華性材料を加圧又は堆積させることにより、より高密度の形態の固体昇華性材料を提供することによって、アンプルに含まれる固体昇華性材料の密度を高めて、固体昇華性材料のアンプルを交換及び再充填する頻度を少なくすることができる。
【0006】
さらに、粉末が昇華するにつれて、固体昇華性材料によって提示される表面が変化するので、昇華特性及びアンプル内の蒸気の循環も、時間とともに変化し得る。画定されたチャネル及び分散された支持相を備えたプリフォームを使用することにより、固体昇華性材料の粉末又は固体ブロックだけの場合と比較してより一貫した昇華及び蒸気流が可能になる。
【0007】
固体昇華性材料は、所定の形状を有するプリフォームとして提供することができる。本開示の実施形態によるプリフォームは、支持相を取り囲む固体昇華性材料を含む。固体昇華性材料は、例えば蒸着ツールで使用するための蒸気を提供するために昇華させる材料である。支持相により、プリフォームは、堆積ツールで使用するための蒸気を提供するために、固体昇華性材料を絶えず昇華させることができる形状を保持することが可能となる。プリフォームは、この絶え間ない昇華を提供するためのチャネル及び溝を含み得る。プリフォームは、例えば、固体昇華性材料の粉末を支持相の周りに加圧することによって、又は固体昇華性材料の溶液を提供し溶媒を除去することによって、作製することができる。蒸着システムと一緒に使用するために提供される固体送達アンプルの中に、1つ又は複数のプリフォームが含まれてもよい。
【0008】
一実施形態では、昇華用プリフォームは、支持相及び固体昇華性材料を含む。固体昇華性材料は、支持相の少なくとも一部を取り囲む。プリフォームは、プリフォームを貫通する複数のチャネルを含む。
【0009】
一実施形態では、固体昇華性材料は加圧粉体である。
【0010】
一実施形態では、支持相は、金属発泡体、固体金属の格子、1つ又は複数の金属ワイヤ、又は金属ウールを含む。
【0011】
一実施形態では、支持相は、炭素繊維又はセラミック繊維を含む。
【0012】
一実施形態では、プリフォームはさらに、プリフォームの上面又はプリフォームの底面の一方に箔を含む。
【0013】
一実施形態では、プリフォームはさらに、プリフォームの側面に箔を含む。
【0014】
一実施形態では、固体昇華性材料は塩化アルミニウムである。一実施形態では、支持相はアルミニウムを含む。
【0015】
一実施形態では、固体昇華性材料はMo又はWを含む。一実施形態では、支持相はニッケルを含む。
【0016】
一実施形態では、プリフォームは、プリフォームの表面に複数の溝を含む。
【0017】
一実施形態では、蒸気を送達するためのアンプルは、蒸気出口ポートを有するアンプル本体を含む。アンプル本体は1つ又は複数の昇華性プリフォームを含む内部空間を画定する。各昇華性プリフォームは、支持相及び固体昇華性材料を含む。固体昇華性材料は、支持相の少なくとも一部を取り囲む。プリフォームは、プリフォームを貫通する複数のチャネルを含む。
【0018】
一実施形態では、アンプル本体は、キャリアガス入口をさらに含む。
【0019】
一実施形態では、アンプルは2つ以上の昇華性プリフォームを含み、昇華性プリフォームの各々は同じ固体昇華性材料を含む。
【0020】
一実施形態では、アンプル本体は複数の昇華性プリフォームを含み、昇華性プリフォームは、各昇華性プリフォームのチャネルが隣接する昇華性プリフォームのチャネルと整列しないように配置される。
【0021】
一実施形態では、固体昇華性材料を調製する方法は、支持相を得ること、支持相の少なくとも一部を固体昇華性材料で取り囲むこと、並びに支持相及び固体昇華性材料を含むプリフォームを調製することを含み、固体昇華性材料は支持相の少なくとも一部を取り囲む。
【0022】
一実施形態では、固体昇華性材料は粉末の形態で提供され、プリフォームを調製することは、粉末及び支持相を加圧することを含む。一実施形態では、粉末及び支持相を加圧することは、粉末を加熱することを含む。
【0023】
一実施形態では、固体昇華性材料は、固体昇華性材料と溶媒とを含む溶液の形態で提供され、プリフォームを調製することは、溶液から溶媒を除去することを含む。
【0024】
一実施形態では、固体昇華性材料は蒸気として提供され、プリフォームを調製することは、固体昇華性材料の蒸気を支持相上に凝縮させることを含む。
【0025】
一実施形態では、固体昇華性材料は溶融した形態で提供され、プリフォームを調製することは、溶融した固体昇華性材料を冷却することを含む。
【0026】
一実施形態では、本方法は、固体送達アンプル内にプリフォームを配置することをさらに含む。
【0027】
一実施形態では、プリフォームを調製することは、プリフォームを貫通する複数のチャネルを形成し、プリフォームの少なくとも1つの表面に沿って複数の溝を形成するように構成された型の中で行われる。
【0028】
一実施形態では、本方法は、プリフォームにドリルで1つ又は複数のチャネルを形成すること、及び/又はプリフォームの少なくとも1つの表面に沿ってカットし複数の溝を形成することをさらに含む。
【0029】
一実施形態では、プリフォームを調製することは、固体昇華性材料及び支持相の少なくとも一方を箔と接触させることを含む。
【0030】
本開示は、添付の図面に関連して以下に説明される様々な例示的実施形態を考慮してより完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A】一実施形態によるプリフォームの斜視図である。
図1B】一実施形態による、図1Aに示すプリフォームの断面図である。
図1C】一実施形態による、図1Aに示すプリフォームの上面図である。
図1D】一実施形態により不揮発性固体の薄層である箔が施された、図1Aに示すプリフォームの断面図である。
図2】一実施形態によるアンプルの略断面図である。
図3】一実施形態によるアンプルの略断面図である。
図4】プリフォームの調製方法の流れ図である。
図5a】調製されたプリフォームの例である。
図5b】プリフォームの異なる気化した相の初期形態の例である。
図5c】プリフォームの気化の後続ステージの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1A図1Cは、本開示の一実施形態によるプリフォーム100の様々な図を示す。図1Dは、図1Aに示すプリフォームに、本開示の一実施形態に従って箔を施したものを示す。
【0033】
プリフォーム100は、支持相を取り囲む固体昇華性材料を含み得る。一実施形態では、固体昇華性材料は支持相を取り囲む。固体昇華性材料は、蒸着ツール内に蒸気を提供するために昇華される材料である。固体昇華性材料は、蒸着ツールによって蒸着される蒸気を提供するために昇華される任意の適切な固体であればよい。支持相は、固体昇華性材料とは異なる材質である。支持相は、固体昇華性材料に適合するものを選択することができる。支持相は、プリフォーム100を含む固体送達アンプル及び/又は蒸着ツールの動作条件下では実質的に蒸発しないものがよい。支持相は、固体昇華性材料の蒸気を汚染しないものを選択することができる。一実施形態では、支持相は固体昇華性材料の中に組み込まれる。一実施形態では、固体昇華性材料は支持相を完全に取り囲む。一実施形態では、支持相の一部が露出している。一実施形態では、固体昇華性材料は加圧粉体である。一実施形態では、固体昇華性材料は、支持相上に形成された沈殿物である。一実施形態では、固体昇華性材料は、蒸気から支持相上に凝縮した固体である。一実施形態では、固体昇華性材料は、溶融した材料から支持相の周りで固化される。固体昇華性材料は、同じ固体昇華性材料の粉末の密度よりも高い密度にすることができる。一実施形態では、プリフォーム100は、粉末形態で提供されるときの等体積の固体昇華性材料と比べて、より大きな質量の固体昇華性材料を含む。
【0034】
固体昇華性材料は、蒸着システムに蒸気として供給される固体材料である。固体昇華性材料は、蒸着プロセスで使用される任意の適切な固体材料であってもよい。固体昇華性材料は、非限定的な例として、AlCl、タングステンハロゲン化物及びオキシハロゲン化物(WCl、WCl及びWOClを含むがこれらに限定されない)、並びにモリブデンハロゲン化物及びオキシハロゲン化物(MoCl、MoOCl、及びMoOClを含むがこれらに限定されない)を含み得る。一実施形態では、固体昇華性材料はMoOCl又はWOCl(式中x=0、1、又は2、及びy=6-2x又はy=5-2x)である。一実施形態では、固体昇華性材料は、ZrCl又はHfClを含む。固体昇華性材料の他の非限定的な例としては、SiI、In(CH、Ti(OCH、TaF、NbF、TaCl、NbCl、W(CO)、Mo(CO)などが挙げられる。
【0035】
支持相は、固体昇華性材料が消費されるときにプリフォームがその形状を維持できるようにする構造をプリフォームに提供する。支持相は、固体昇華性材料の昇華前及び昇華中、固体昇華性材料の形状を維持する。形状としては、プリフォーム100の一般的な形状、例えば、円筒形若しくは円板形、四角柱形、六角柱形、十二面体、又はプリフォーム100に適した任意の他のそのような形状が挙げられる。形状は、そのアンプルの内部空間の形状又はプリフォーム100を含むアンプルの使用中の流動形状など、プリフォーム100と一緒に使用されるアンプルの設計に基づくことができる。
【0036】
一実施形態では、支持相は熱分解炭素を含む。一実施形態では、熱分解炭素は、複数の炭素繊維として提供される。一実施形態では、繊維を加圧してペレットなどの形状にしてもよい。一実施形態では、支持相は金属構造である。一実施形態では、支持相は合金を含む。一実施形態では、支持相は金属発泡体である。一実施形態では、支持相は、1つ又は複数の金属ワイヤを含む。一実施形態では、支持相は金属ウールを含む。一実施形態では、支持相は、高い熱伝導率に基づいて選択される材料である。
【0037】
一実施形態では、支持相は、固体昇華性材料と適合するよう選択される材料である。適合性とは、固体昇華性材料と支持相との付着性に関するものであろう。適合性は、固体昇華性材料によって提供される蒸気を汚染しないような材料、ということによりさらに限定され得る。
【0038】
AlClが固体昇華性材料である場合の支持相として適合する材料の非限定的な例としては、アルミニウム金属及びAlを含むセラミックが挙げられる。Alを含むセラミックとしては、例えば、セラミック中にAlを含むものでもよく、又は支持相上にAlがコーティングされてもよい。
【0039】
固体昇華性材料がタングステンハロゲン化物及びオキシハロゲン化物を含む場合の支持相として適合する材料の非限定的な例としては、熱分解炭素、ニッケル金属、C22若しくはC247ニッケル合金などのニッケル基合金、セラミック、又はガラス、あるいはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0040】
固体昇華性材料がモリブデンハロゲン化物及びオキシハロゲン化物を含む場合の支持相として適合する材料の非限定的な例としては、熱分解炭素、ニッケル金属、C22若しくはC247ニッケル合金などのニッケル基合金、セラミック、又はガラス、あるいはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
プリフォーム100は、例えば、プリフォーム100を含む固体送達アンプルの加熱中など、特定の周囲温度以上で昇華することができるように固体昇華性材料を提供する。支持相は、固体昇華性材料が昇華するときにプリフォーム100が形状を維持できるようにし、例えばチャネル102及び溝104を含むプリフォームの要素を構造的に支持する。支持相はさらに、例えば支持相材料の熱伝導性によって、プリフォーム100を通って熱が伝わりやすくすることができる。
【0042】
図1Aに示すように、プリフォーム100は、プリフォーム100を貫通して延びるチャネル102を含む。一実施形態では、図1Bに示すように、プリフォーム100の上面106及び底面108に溝104を形成することができる。いくつかの実施形態では、プリフォーム100の例えば周面112上に、位置合わせライン110も含めることもできる。
【0043】
さらに、いくつかの実施形態では、プリフォーム100は、アンプル内でキャリアガスを搬送する管など、プリフォーム100と一緒に使用される固体搬送アンプルのパーツを収容するための1つ又は複数の開口部(図示せず)を含むことができる。
【0044】
チャネル102は、上面106から底面108までプリフォーム100を貫通して形成された穴又は細孔である。チャネル102により、蒸気をプリフォーム100内に通す若しくはプリフォーム100から逃がすことができる。これにより、固体昇華性材料をより均一に昇華させることができる。一実施形態では、チャネル102は、円筒形であってもよい。一実施形態では、チャネル102は、円錐台形状を有するようにテーパ状であってもよい。円錐台形状であれば、プリフォーム100が形成された型から、プリフォーム100を取り外しやすくなる。チャネル102の直径は、固体昇華性材料から昇華した蒸気の平均自由行程よりも大きくなるように選択されてもよい。言い換えれば、チャネルの直径は、蒸気の分子が蒸気の他の分子と衝突する前に移動する平均距離よりも大きい。一実施形態では、チャネル102の直径は、10μm~10mmである。一実施形態では、チャネル102の直径は、プリフォーム100の中又は複数のプリフォームの間の圧力勾配に少なくともある程度基づいて選択することができる。一実施形態では、チャネル102の直径は、10μm~100μmである。一実施形態では、チャネル102の直径は、1~10mmである。
【0045】
図1Bに示すように、プリフォーム100の上面106及び/又は底面108に溝104を形成することができる。一実施形態では、溝104は直線状である。一実施形態では、溝104は湾曲していてもよく、例えば波形パターン又は螺旋パターンを形成してもよい。溝104は、プリフォーム100のチャネル102と隣接するプリフォームのチャネルとの間を蒸気が通過するための経路を提供することができる。溝104は、アンプルの蒸気出口に到達する前にプリフォーム100及び/又は隣接するプリフォームに沿って蒸気が移動する距離を増加させるための曲がりくねった経路を提供することができる。溝104の代わりに又はこれに加えて、上面106及び/又は底面108を粗面化してもよい。
【0046】
図1Aに示すように、プリフォーム100の周面112上に1つ又は複数の位置合わせライン110を含めることもできる。位置合わせライン(単数又は複数)110は、プリフォームの方向を示す。一実施形態では、位置合わせライン110は、周面112から外側に向かって突出する直線状突起であってもよい。別の実施形態では、位置合わせラインは、周面112に形成された溝とすることができる。位置合わせライン110は、複数のプリフォーム100を積み重ねるときにプリフォームを互いに位置合わせするために使用されてもよい。位置合わせライン110に準拠してアシストされるプリフォームの位置合わせは、隣接するプリフォームのチャネル102を互いに整列させないようにするとよい。隣接するプリフォーム100のチャネル102を整列させないことによって、蒸気は、例えば溝104を介してチャネル102のあるセットから次のセットへと強制的に移動させることができる。プリフォームの位置合わせライン110を用いれば、プリフォームを互いにこのような方向に向けさせ、それにより蒸気が通るための曲がりくねった経路を提供し、1つ又は複数のプリフォーム100を含むアンプル内で最終的に生成される蒸気の飽和の一貫性を改善する。
【0047】
図1Bは、図1Aに示すプリフォーム100の断面図を示す。図1Bの断面図に示すように、チャネル102は、プリフォーム100を貫通して延びている。プリフォーム100の上面106及び底面110上に溝104が見える。図1Bに示す実施形態では、溝104は直線状であり、図1Bに示す断面図の紙面方向に延びている。
【0048】
図1Cは一実施形態によるプリフォームの上面図である。図1Cの図では、上面106にチャネル102が見える。図1Cに示すチャネル102の分布は、2つの隣接するプリフォームが互いに対して180°回転すると、2つの隣接するプリフォームのチャネル102が互いに整列しないようになっている。図1Cに示すように、チャネル102は、プリフォーム100の上面106から底面108まで、プリフォーム100全体を貫通して延びる。
【0049】
図1Dは、図1Aに示すプリフォームの断面図であって、一実施形態に従ってプリフォームに金属箔114が施されているところを示す。金属箔114は、不揮発性固体の薄層とすることができる。金属箔114は、プリフォーム100の1つ又は複数の面(例えば上面106又は底面108など)に施すことができる。一実施形態では、金属箔はさらに、プリフォーム100の側面(例えば周面112など)を取り囲んでもよい。金属箔114は、貫通孔を含んでいてもよい。貫通孔は、プリフォーム100に形成されたチャネル102の全てに対応してもよいし、していなくてもよい。金属箔114はさらに、固体送達アンプル内の1つ又は複数のプリフォーム100のそば又は中を蒸気が通過するための曲がりくねった経路に寄与することができる。一実施形態では、金属箔114を、プリフォームの支持相の一部としてプリフォーム100の中に含めることができる。金属箔114は、支持相の中に含まれる場合、さらにプリフォーム100の中を熱が伝わりやすくすることができる。
【0050】
図2は、一実施形態によるアンプル200の断面図を示す。アンプル200は、固体昇華性物質から昇華した蒸気を送達するためのアンプルである。アンプル200は、蒸着システムと適合するように寸法決めされる。蒸着システムは加熱チャンバを含み、この中でアンプル200を加熱することによってアンプル200内に含まれる固体昇華性材料を加熱し昇華させることができる。
【0051】
アンプル200は、アンプル本体202及び蒸気出口204を含む。蒸気出口弁206は、蒸気出口204からの流れを調節する。アンプル本体202は、内部空間を画定する。内部空間の中には複数のプリフォーム208が配置される。複数のプリフォーム208は、図1A図1Cを参照して上述したプリフォーム100などの2つ以上のプリフォームを含む。複数のプリフォーム208の各プリフォームは、互いに積み重ねることができる。一実施形態では、複数のプリフォーム208の各プリフォームは、積み重ねられるときに互いに接触する。一実施形態では、複数のプリフォーム208の中の隣接するプリフォームの各対の間にスペーサが設けられる。一実施形態では、複数のプリフォームの中のプリフォームの各々は、例えばアンプル本体202の内面から突き出た突起などの構造によって支持される。一実施形態では、アンプル200を取り囲むヒータジャケット(図示せず)を設けることができる。一実施形態では、アンプル本体202内の内部空間へと、加熱ロッド又は加熱フィン(図示せず)が延びていてもよい。
【0052】
アンプル本体202は、蒸着システムの加熱されたチャンバと接触し、内部空間へと熱を伝えて内部空間を加熱し、固体昇華性材料の蒸気を生成する部分とすることができる。アンプル本体202は、例えば円筒形であってもよい。アンプル本体202は、アンプル本体202内の内部空間に出入りする唯一の通路が蒸気出口204だけになるように密閉されていてもよい。アンプル本体202は、アンプル本体202内に複数のプリフォーム208を配置した後に密閉することができる。
【0053】
蒸気出口204は、複数のプリフォーム208から昇華した固体昇華性材料を含む蒸気を蒸着ツールに供給できるようにする、アンプル本体202の開口部である。蒸気出口弁206は、蒸気出口204からの蒸気の通路を調節し、蒸気の流れを調節又は制御するための任意の適切な弁とすることができる。蒸気出口弁206は、アンプル200のコントローラ(図示せず)及び/又はアンプル200と一緒に使用される蒸着ツールのコントローラ(図示せず)によって制御することができる。
【0054】
アンプル本体202によって画定された内部空間の中に、複数のプリフォーム208が配置される。複数のプリフォーム208の各プリフォームは、上述し図1A図1Cに示されるプリフォーム100などのプリフォームであってもよい。プリフォームはそれぞれ、支持相を取り囲む固体昇華性材料を含む。固体昇華性材料は、例えば、AlCl、塩化タングステン又はオキシ塩化タングステン、塩化モリブデン又はオキシ塩化モリブデンであってもよい。支持相は、炭素繊維、熱分解炭素、金属(例えば金属発泡体)、セラミック、又はガラスであってもよい。一実施形態では、支持相は、高い熱伝導率に基づいて選択される材料である。支持相は、例えば上述のように、固体昇華性材料との適合性に基づいて選択することができる。複数のプリフォーム208の中のプリフォームの数は、アンプルに基づいて選択することができ、例えば、単一の蒸着ツールに供給するアンプルの場合は2~10個のプリフォームから、複数の蒸着ツールに蒸気を供給するアンプルの場合は数百ものプリフォームを含む。いくつかの実施形態では、複数のプリフォーム208はそれぞれ、同じ固体昇華性材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、複数のプリフォーム208は、プリフォーム208の少なくともいくつかに異なる固体昇華性材料を含んでもよい。複数のプリフォーム208の各々は、第一の表面から第一の表面の反対側の第二の表面までプリフォームの中を貫通するチャネルを含む。複数のプリフォーム208の各々は、プリフォームの1つ又は複数の面に形成された溝を含んでもよい。一実施形態では、溝は、各プリフォームの両面にあってもよい。一実施形態では、2つの隣接するプリフォームの少なくとも一方の溝は、1つのプリフォームのチャネルから隣接するプリフォームのチャネルに蒸気を運ぶことができる。
【0055】
複数のプリフォームは、複数のプリフォーム208のうちの隣接するプリフォームのチャネル102などのチャネルが互いに整列しないように配置されるとよい。複数のプリフォームの配置は、位置合わせライン110などの位置合わせラインに準拠して、例えば、隣接するプリフォーム208の位置合わせラインが互いに整列しないようにすることによって、確実に行うことができる。隣接するプリフォームのチャネルが互いに対して位置ずれするように複数のプリフォーム208を位置合わせすることによって、アンプルの中をキャリアガス又は蒸気が通過するための曲がりくねった経路を提供することができる。蒸気は、上述の溝104などのプリフォームの表面に形成された溝に沿って移動し、一方のプリフォームのチャネルから隣接するプリフォームのチャネルへと通過することができる。曲がりくねった経路は、昇華した固体昇華性材料による蒸気の飽和を改善することができる。一実施形態では、金属箔は、プリフォームの上、下、又は内部に含まれてもよい。一実施形態では、プリフォームの1つ又は複数の面に金属箔が使用される。金属箔は、貫通孔を含んでもよい。貫通孔は、プリフォームに形成されたチャネルの全てに対応しなくてもよい。金属箔はさらに、蒸気が通過する曲がりくねった経路に寄与し得る。金属箔は、プリフォームの支持相の一部であってもよい。金属箔は、プリフォームを通して熱を伝えることができる。
【0056】
図3は、別の実施形態によるアンプル300の断面図を示す。アンプル300は、アンプル本体302を含む。図3に示す実施形態では、アンプル本体302は、キャリアガス入口304及び蒸気出口306を含む。アンプル本体302は、内部空間を画定する。内部空間内には、各々が固体昇華性材料と支持相とを含む複数のプリフォーム308が配置される。プリフォーム308はそれぞれ、キャリアガス管312が複数のプリフォーム308を通って延びるように構成された開口部310を含むことができる。図3に示す実施形態では、キャリアガス管312は直線状である。複数の実施形態では、キャリアガス管はカーブを含んでいてもよい。キャリアガス管312は、キャリアガス入口304からアンプル300内の内部空間内のキャリアガスが運搬されるべき地点まで延びている。
【0057】
アンプル300は、固体から昇華した蒸気を運ぶためのアンプルである。アンプル300は、蒸着システムと適合するように寸法決めされる。蒸着システムは加熱チャンバを含み、この中でアンプル300を加熱することにより、中に含まれる固体昇華性材料を加熱し昇華させることができる。
【0058】
アンプル300は、アンプル本体302を含む。アンプル本体302は内部空間を画定し、この中に複数のプリフォームが収容される。アンプル本体302は、蒸着システムの加熱されたチャンバと接触し、内部空間に熱を伝えて内部空間を加熱し、固体昇華性材料の蒸気を生成する部分であってもよい。アンプル本体302は、例えば円筒形であってもよい。アンプル本体302は、アンプル本体302内の内部空間に出入りする唯一の通路がキャリアガス入口304及び蒸気出口306となるように、密閉されてもよい。アンプル本体302は、アンプル本体302の中に複数のプリフォーム308を配置した後に密閉することができる。
【0059】
図3に示す実施形態では、アンプル300はキャリアガス入口304を含む。キャリアガス入口304は、アンプル本体302によって画定された内部空間へのキャリアガスの流れを調節するバルブ314を含む。キャリアガスは、固体昇華によって提供される前駆体蒸気の完全性を維持する任意の適切なガス組成であるとよい。キャリアガスは、例えば不活性ガスであってもよい。キャリアガスの非限定的な例としては、アルゴン、ヘリウム、窒素、一酸化炭素などが挙げられる。キャリアガスは、混合ガスであってもよい。キャリアガス入口304は、例えば、蒸着ツールからのライン又はキャリアガスを供給するタンク若しくは他の供給源からのラインなどのキャリアガス源(図示せず)に接続されるように構成される。キャリアガス入口304は、アンプル本体302によって画定された内部空間内のキャリアガス管312に取り付けられてもよく、又は中まで延びてそのものがキャリアガス管312となっていてもよい。蒸気出口306を通る蒸気の流れを駆動し、及び/又は固体昇華性材料の昇華を促進して蒸気を形成するために、キャリアガスを導入してもよい。
【0060】
キャリアガス管312は、アンプル本体内のキャリアガスを、それが放出される場所まで送達する。図3に示す実施形態では、キャリアガス管312は、複数のプリフォーム308の全てを通過して、蒸気出口306を含む端部の反対側の、アンプル本体302によって画定された内部空間の端部まで、キャリアガスを搬送する。キャリアガス管312は、複数のプリフォーム308の各々に含まれる開口部を介して複数のプリフォーム308を貫通して延びる。
【0061】
蒸気出口306は、昇華した固体昇華性材料及び任意選択でキャリアガス入口304を介して供給されるキャリアガスを含む蒸気がアンプル300を出て、例えば蒸着ツールの蒸着チャンバに蒸気を搬送する加熱管に入ることができる、開口部である。蒸気出口306は、蒸気出口306を通ってアンプル300から出てくる蒸気の流れを調節するためのバルブ316を含んでいてもよい。蒸気出口306は、固体昇華性材料の蒸気が蒸気出口に向かって上昇するように、アンプル本体302によって画定された内部空間の上部に配置されるとよい。
【0062】
アンプル300は、複数のプリフォーム308を含む。複数のプリフォーム308の各々は、開口部310を含み得る。複数のプリフォーム308の各々は、図1A図1Cに示され上述されたプリフォーム100などのプリフォームであってもよい。開口部310によって、キャリアガス管312は複数のプリフォーム308の各々を通過できるようになっている。複数のプリフォーム308の各々は、固体昇華性材料及び支持相を含む。固体昇華性材料は、例えば、AlCl、塩化タングステン若しくはオキシ塩化タングステン、又は塩化モリブデン若しくはオキシ塩化モリブデン、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。支持相は、炭素繊維、熱分解炭素、金属(例えば金属発泡体)、セラミック、又はガラスであってもよい。支持相は、例えば上述のように、固体昇華性材料との適合性に基づいて選択することができる。複数のプリフォーム308の各々は、第一表面から第一表面の反対側の第二表面までプリフォームを貫通するチャネルを含む。複数のプリフォーム308は、それぞれ同一の固体昇華性材料を含んでいてもよい。一実施形態では、複数のプリフォーム308は、プリフォーム308の少なくともいくつかに異なる固体昇華性材料を含んでもよい。複数のプリフォーム308の各々は、プリフォームの上側及び底側のうちの1つ又は複数に形成された溝を含んでもよい。一実施形態では、溝は、各プリフォームの両面にあってもよい。一実施形態では、2つの隣接するプリフォームの少なくとも一方の溝は、1つのプリフォームのチャネルから隣接するプリフォームのチャネルに蒸気を運ぶことができる。
【0063】
複数のプリフォームは、複数のプリフォーム308の中の隣接するプリフォームのチャネル102などのチャネルが互いに整列しないように配置されるとよい。複数のプリフォームの配置は、位置合わせライン110などの位置合わせラインに準拠して、例えば、隣接するプリフォーム308の位置合わせラインが互いに整列しないようにすることによって、確実に行うことができる。複数のプリフォーム308の位置合わせは、アンプルを通るキャリアガス又は蒸気のための曲がりくねった経路を提供するものであってもよい。蒸気は、上述の溝104などのプリフォームの表面に形成された溝に沿って移動し、一方のプリフォームのチャネルから隣接するプリフォームのチャネルへと通過することができる。曲がりくねった経路は、昇華した固体昇華性材料による蒸気の飽和を改善することができる。一実施形態では、金属箔は、プリフォームの上、下、又は内部に含まれてもよい。一実施形態では、プリフォームの1つ又は複数の面に金属箔が使用される。金属箔は、貫通孔を含んでもよい。貫通孔は、プリフォームに形成されたチャネルの全てに対応しなくてもよい。金属箔はさらに、蒸気が通過する曲がりくねった経路に寄与し得る。金属箔は、プリフォームの支持相の一部であってもよい。金属箔は、プリフォームを通して熱を伝えることができる。
【0064】
図4は、プリフォームを調製するための方法400の流れ図を示す。方法400は、支持相を得ること(402)、支持相の少なくとも一部を固体昇華性材料で取り囲むこと(404)、並びに支持相及び固体昇華性材料を含むプリフォームを調製すること(406)を含み、固体昇華性材料が支持相の少なくとも一部を取り囲む。場合により、プリフォームは固体送達アンプルに加えられてもよい(408)。
【0065】
支持相を得る(402)。一実施形態では、支持相は複数の炭素繊維である。一実施形態では、支持相は熱分解炭素である。一実施形態では、支持相は金属又はセラミック構造体である。一実施形態では、支持相は、金属発泡体、例えばニッケル発泡体又はアルミニウム発泡体である。一実施形態では、支持相は、固体昇華性材料との適合性に基づいて選択される材料である。適合性とは、固体昇華性材料と支持相との付着性に関するものであろう。適合性は、固体昇華性材料によって提供される蒸気を汚染しないような材料、ということによりさらに限定され得る。AlClが固体昇華性材料である場合の支持相として適合する材料の非限定的な例としては、アルミニウム金属、Alを含むセラミックが挙げられる。Alを含むセラミックとしては、例えば、セラミック中にAlを含むものでもよく、又は支持相上にAlがコーティングされてもよい。固体昇華性材料がタングステンハロゲン化物及びオキシハロゲン化物を含む場合の支持相として適合する材料の非限定的な例としては、熱分解炭素、ニッケル金属、C22若しくはC247ニッケル合金などのニッケル基合金、セラミック、又はガラス、あるいはそれらの組み合わせが挙げられる。固体昇華性材料がモリブデンハロゲン化物及びオキシハロゲン化物を含む場合の支持相として適合する材料の非限定的な例としては、熱分解炭素、ニッケル金属、C22若しくはC247ニッケル合金などのニッケル基合金、セラミック、又はガラス、あるいはそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、支持相は、高い熱伝導率に基づいて選択される材料である。
【0066】
支持相は、固体昇華性材料で取り囲まれる(404)。固体昇華性材料は、例えば、AlCl、タングステンハロゲン化物若しくはオキシハロゲン化物、又はモリブデンハロゲン化物若しくはオキシハロゲン化物から選択されてもよい。一実施形態では、支持相が複数の炭素繊維である場合、404で支持相を固体昇華性材料で取り囲むことは、炭素繊維を固体昇華性材料の粉末と混合することを含み得る。一実施形態では、型を得て、型の中で炭素繊維と粉末との混合が起こってもよい。一実施形態では、混合した繊維と粉末を型の中に入れることができる。支持相がセラミック又は金属片である実施形態では、404で支持相を固体昇華性材料で取り囲むことは、型の一部の中で支持相を固体昇華性材料の粉末で取り囲むことを含んでもよい。支持相がセラミック又は金属片である実施形態では、404で支持相を固体昇華性材料で取り囲むことは、型内で固体昇華性材料を含む溶液で支持相を取り囲むことを含んでもよい。非限定的な一例として、固体昇華性材料を含む溶液は、固体昇華性材料としてTi(OCHを含んでもよく、溶媒は、非限定的な一例として、ヘキサン類を含んでもよい。一実施形態では、404で支持相を固体昇華性材料で取り囲むことは、溶融した固体昇華性材料(非限定的な例として、176℃を超える温度のMoOClを含む)を支持相上に注ぐことを含み得る。一実施形態では、404で支持相を固体昇華性材料で取り囲むことは、固体昇華性材料を含む蒸気を支持相の周りに供給することを含んでもよい。
【0067】
406では、支持相と固体昇華性材料とを含み、固体昇華性材料が支持相の少なくとも一部を取り囲んでいるプリフォームが調製される。404で固体昇華性材料が粉末として提供される実施形態では、型を閉じ、圧力を加えて固体昇華性材料の加圧粉体を支持相上に形成することによって、406でプリフォームを調製することができる。粉末状固体昇華性材料を加圧すること、加圧中に型及び/又は粉末を加熱することによって高温で行われてもよい。一実施形態では、粉末状固体昇華性材料の80%以上又は90%以上が軟化する温度を、粉末状固体昇華性材料の加圧で用いる。一実施形態では、周囲温度における圧力よりも低い圧力で粉末状固体昇華性材料をより迅速に高密度化できる温度を、粉末状固体昇華性材料の加圧で用いる。404で固体昇華性材料が溶液として提供される実施形態では、406で、溶液及び支持相が型内にある間に溶液から溶媒を蒸発させることにより、プリフォームを調製することができる。404で固体が溶融した形態で提供される実施形態では、406で、溶融した固体昇華性材料を型内で冷却することにより、プリフォームを調製することができる。404で固体が蒸気として提供される実施形態では、406で、蒸気を支持相上に凝縮することにより、プリフォームを調製することができる。
【0068】
図5a~図5cは、固体プリフォームの気化の一例である。図5aを参照すると、プリフォームの固体材料は、揮発相と不揮発相との組み合わせを含む。プリフォームの上面及び底面は両方とも、揮発相からの蒸気及びキャリアガスの横方向の輸送を可能にするテクスチャを有することができる。特定の実施形態では、アンプルによっては、特定の貫通孔が、揮発相及びキャリアガスからの蒸気の垂直輸送を可能にすることもできる。図5bを参照すると、底断面及び側壁は、揮発相と混ざり貫通孔にぶつかる不揮発相を示す。図5cに示す異なる段階を通して、キャリアガスとプリフォームの揮発相の蒸発面との間に密接な接触がある。このように、不揮発相がキャリア経路を分散させてキャリアガスと揮発相の蒸発面との密接な接触を維持しながら揮発相が蒸発する。プリフォームの非限定的な利点の1つの例は、不揮発相が存在しない場合、揮発相が気化するにつれて、キャリアガスと揮発相との接触が少ないキャリアガスのチャネリングが存在することである。
【0069】
一実施形態では、型は、プリフォームを貫通するチャネル及び/又は上部及び下部の平坦面などのプリフォームの1つ又は複数の表面上に溝を有するプリフォームをもたらすような特徴を含むことができる。一実施形態では、型の操作及び完成したプリフォームの取出しを容易にするために、チャネルを形成する型の部分をテーパ型にすることができる。一実施形態では、406でプリフォームを調製することは、粉末の加圧又は溶液の蒸発後にプリフォーム上にチャネル及び/又は溝を形成することをさらに含み得る。一実施形態では、チャネルはドリルによって形成されてもよい。一実施形態では、溝は、プリフォームの1つ又は複数の表面にフライス加工されてもよい。一実施形態では、例えばフライス加工、マーキング、プリフォームを形成するために使用される型の特徴、又はプリフォームの外周面などのプリフォームの外側表面に位置合わせの目に見えるしるしを含めるための任意の他の適切な方法によって、プリフォームに位置合わせラインを設けることができる。
【0070】
場合により、プリフォームは固体送達アンプルに加えられてもよい(408)。プリフォームは、固体送達アンプルの本体内のプリフォームのスタックの中に配置されてもよい。プリフォームは、1つのプリフォームを貫通するチャネルが任意の隣接するプリフォームのチャネルと整列しないように位置合わせされるとよい。スタック内のプリフォームのこの方向は、各プリフォームの表面に形成された1つ又は複数の位置合わせラインによって容易に行われよう。一実施形態では、408におけるアンプル内への配置は、ガス間(inter gas)雰囲気下で実行することができる。
【0071】
あるいは、任意の工程408が省略される場合、プリフォームは、アンプルから独立した蒸気源として使用されてもよい。
【0072】
態様:
態様1~11のいずれかは、態様12~15又は16~25のいずれかと組み合わせることができることが理解される。態様12~15のいずれかは、態様16~25のいずれかと組み合わせることができることが理解される。
【0073】
態様1.支持相及び
固体昇華性材料
を含む昇華用プリフォームであって、
固体昇華性材料は支持相の少なくとも一部を取り囲み、プリフォームはプリフォームを貫通する複数のチャネルを含む、昇華用プリフォーム。
【0074】
態様2.固体昇華性材料が加圧粉体である、態様1に記載のプリフォーム。
【0075】
態様3.支持相が、金属発泡体、固体金属の格子、1つ又は複数の金属ワイヤ、又は金属ウールを含む、態様1~2のいずれかに記載のプリフォーム。
【0076】
態様4.支持相が炭素繊維又はセラミック繊維を含む、態様1~3のいずれかに記載のプリフォーム。
【0077】
態様5.プリフォームの上面又はプリフォームの底面の一方に箔をさらに含む、態様1~4のいずれかに記載のプリフォーム。
【0078】
態様6.プリフォームの側面にさらに箔を含む、態様1~5のいずれかに記載のプリフォーム。
【0079】
態様7.固体昇華性材料が塩化アルミニウムである、態様1~6のいずれかに記載のプリフォーム。
【0080】
態様8.支持相がアルミニウムを含む、態様7に記載のプリフォーム。
【0081】
態様9.固体昇華性材料がMo又はWを含む、態様1~6のいずれかに記載のプリフォーム。
【0082】
態様10.支持相がニッケルを含む、態様9に記載のプリフォーム。
【0083】
態様11.プリフォームが、プリフォームの表面に複数の溝を含む、態様1~10のいずれかに記載のプリフォーム。
【0084】
態様12:蒸気を送達するためのアンプルであって、
蒸気出口ポートを有するアンプル本体を含み、アンプル本体は、1つ又は複数の昇華性プリフォームを収容する内部空間を画定し、各昇華性プリフォームは
支持相及び
固体昇華性材料
を含み、
固体昇華性材料は、支持相の少なくとも一部を取り囲み、プリフォームは、プリフォームを貫通する若しくはその周囲にある複数のチャネルを含む、蒸気送達アンプル。
【0085】
態様13.アンプル本体がキャリアガス入口をさらに備える、態様12に記載のアンプル。
【0086】
態様14.1つ又は複数の昇華性プリフォームの各々が同じ固体昇華性材料を含む、態様12~13のいずれかに記載のアンプル。
【0087】
態様15.アンプル本体が複数の昇華性プリフォームを含み、各昇華性プリフォームのチャネルが隣接する昇華性プリフォームのチャネルと整列しないように昇華性プリフォームが配置される、態様12~14のいずれかに記載のアンプル。
【0088】
態様16.固体昇華性材料を調製する方法であって、
支持相を得ること、
支持相の少なくとも一部を固体昇華性材料で取り囲むこと、並びに
支持相及び固体昇華性材料を含むプリフォームを調製すること
を含み、固体昇華性材料が支持相の少なくとも一部を取り囲む、固体昇華性材料の調製方法。
【0089】
態様17.固体昇華性材料が粉末の形態で提供され、プリフォームを調製することが、粉末及び支持相を加圧することを含む、態様16に記載の方法。
【0090】
態様18.粉末及び支持相を加圧することが、粉末を加熱することを含む、態様17に記載の方法。
【0091】
態様19.固体昇華性材料が、固体昇華性材料及び溶媒を含む溶液の形態で提供され、プリフォームを調製することが、溶液から溶媒を除去することを含む、態様16に記載の方法。
【0092】
態様20.固体昇華性材料が蒸気として提供され、プリフォームを調製することが、固体昇華性材料の蒸気を支持相上に凝縮させることを含む、態様16に記載の方法。
【0093】
態様21.固体昇華性材料が溶融した形態で提供され、プリフォームを調製することが、溶融した固体昇華性材料を冷却することを含む、態様16に記載の方法。
【0094】
態様22.プリフォームを固体送達アンプルの中に配置することをさらに含む、態様16~21のいずれかに記載の方法。
【0095】
態様23.プリフォームを調製することが、プリフォームを貫通する複数のチャネルを形成し、プリフォームの少なくとも1つの表面に沿って複数の溝を形成するように構成された型内で実行される、態様16~21のいずれかに記載の方法。
【0096】
態様24.プリフォームに1つ又は複数のチャネルをドリルすること、及びプリフォームの少なくとも1つの表面に沿って複数の溝をカットすることをさらに含む、態様16~23のいずれかに記載の方法。
【0097】
態様25.プリフォームを調製することが、固体昇華性材料及び支持相の少なくとも一方を箔と接触させることを含む、態様16~24のいずれかに記載の方法。
【0098】
本出願に開示された例及び図は、全ての点で例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。本発明の範囲は、前述の説明及び図面ではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と同等の意味及び範囲内にある全ての変更は、特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c