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特許7432769蓄冷材、蓄冷材粒子、造粒粒子、蓄冷器、冷凍機、クライオポンプ、超電導磁石、核磁気共鳴イメージング装置、核磁気共鳴装置、磁界印加式単結晶引上げ装置、及び、ヘリウム再凝縮装置
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  • 特許-蓄冷材、蓄冷材粒子、造粒粒子、蓄冷器、冷凍機、クライオポンプ、超電導磁石、核磁気共鳴イメージング装置、核磁気共鳴装置、磁界印加式単結晶引上げ装置、及び、ヘリウム再凝縮装置 図1
  • 特許-蓄冷材、蓄冷材粒子、造粒粒子、蓄冷器、冷凍機、クライオポンプ、超電導磁石、核磁気共鳴イメージング装置、核磁気共鳴装置、磁界印加式単結晶引上げ装置、及び、ヘリウム再凝縮装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】蓄冷材、蓄冷材粒子、造粒粒子、蓄冷器、冷凍機、クライオポンプ、超電導磁石、核磁気共鳴イメージング装置、核磁気共鳴装置、磁界印加式単結晶引上げ装置、及び、ヘリウム再凝縮装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/14 20060101AFI20240208BHJP
   F25B 9/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C09K5/14 F
C09K5/14 102F
F25B9/00 D
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022565399
(86)(22)【出願日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2021043134
(87)【国際公開番号】W WO2022114045
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2020195605
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021120187
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】河本 崇博
(72)【発明者】
【氏名】碓井 大地
(72)【発明者】
【氏名】平松 亮介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 弘康
(72)【発明者】
【氏名】田口 成那
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-152769(JP,A)
【文献】特開2003-213252(JP,A)
【文献】特開2005-336240(JP,A)
【文献】国際公開第2018/25581(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/14
F25B9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群から選ばれる少なくとも一つの希土類元素を含む希土類酸硫化物を含み、第一族元素を0.001原子%以上10原子%以下含み、2K以上10K以下の温度範囲における体積比熱の最大値が0.5J/(cm・K)以上である、蓄冷材。
【請求項2】
前記第一族元素がLi、Na、及びKからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素である、請求項1記載の蓄冷材。
【請求項3】
第二族元素を0原子%以上10原子%以下含む、請求項1又は請求項2記載の蓄冷材。
【請求項4】
第二族元素を0.001原子%以上10原子%以下含む、請求項1又は請求項2記載の蓄冷材。
【請求項5】
前記第二族元素がMg、Ca、Sr、及びBaからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素である、請求項3又は請求項4記載の蓄冷材。
【請求項6】
Al、Fe、Cu、Ni、Co、Zr、及びBからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素を0.01原子%以上20原子%以下含む、請求項1ないし請求項5いずれか一項記載の蓄冷材。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6いずれか一項記載の蓄冷材で形成され、粒径が50μm以上3mm以下である、蓄冷材粒子。
【請求項8】
アスペクト比が1以上5以下である、請求項7記載の蓄冷材粒子。
【請求項9】
請求項7又は請求項8記載の蓄冷材粒子の原料となる造粒粒子であって、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群から選ばれる少なくとも一つの希土類元素を含む希土類酸化物、又は、前記少なくとも一つの希土類元素を含む希土類酸硫化物を含み、第一族元素を0.001原子%以上10原子%以下含み、炭素を0.01重量%以上20重量%以下含み、粒径が70μm以上5mm以下であり、アスペクト比が1以上5以下である、造粒粒子。
【請求項10】
請求項7又は請求項8記載の蓄冷材粒子の原料となる脱脂後の造粒粒子であって、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群から選ばれる少なくとも一つの希土類元素を含む希土類酸化物、又は、前記少なくとも一つの希土類元素を含む希土類酸硫化物を含み、第一族元素を0.001原子%以上10原子%以下含み、炭素を0.001重量%以上10重量%以下含み、粒径が70μm以上5mm以下であり、アスペクト比が1以上5以下である、造粒粒子。
【請求項11】
請求項1ないし請求項6いずれか一項記載の蓄冷材を備えた、蓄冷器。
【請求項12】
請求項7又は請求項8記載の蓄冷材粒子が複数個、充填された、蓄冷器。
【請求項13】
請求項11又は請求項12記載の蓄冷器を備えた、冷凍機。
【請求項14】
請求項13記載の冷凍機を備えた、クライオポンプ。
【請求項15】
請求項13記載の冷凍機を備えた、超電導磁石。
【請求項16】
請求項13記載の冷凍機を備えた、核磁気共鳴イメージング装置。
【請求項17】
請求項13記載の冷凍機を備えた、核磁気共鳴装置。
【請求項18】
請求項13記載の冷凍機を備えた、磁界印加式単結晶引上げ装置。
【請求項19】
請求項13記載の冷凍機を備えた、ヘリウム再凝縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄冷材、蓄冷材粒子、造粒粒子、蓄冷器、冷凍機、クライオポンプ、超電導磁石、核磁気共鳴イメージング装置、核磁気共鳴装置、磁界印加式単結晶引上げ装置、及び、ヘリウム再凝縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超電導技術の発展は著しく、その応用分野が拡大するに伴って小型で高性能の極低温冷凍機の開発が不可欠になってきている。かかる極低温冷凍機は、軽量かつ小型で熱効率の高いことが要求されており、種々の応用分野において実用化が進められている。
【0003】
極低温冷凍機では、複数の蓄冷材を蓄冷器の中に収容する。例えば、蓄冷材と、蓄冷器の中を通るヘリウムガスとの間で熱交換を行うことにより、寒冷を発生させる。例えば、超電導MRI装置や半導体製造装置等に使用されるクライオポンプなどにおいては、ギフォード・マクマホン(GM)方式、スターリング方式、又はパルスチューブ方式などの冷凍サイクルによる冷凍機が用いられている。
【0004】
また、磁気浮上列車にも超電導磁石を用いて磁力を発生させるために高性能な冷凍機が必須とされている。さらに、最近では、超電導電力貯蔵装置(SMES)、及び高品質のシリコンウェハーなどを製造する磁界印加式単結晶引上げ装置などにおいても高性能な冷凍機が用いられている。さらに高い信頼性が期待されているパルスチューブ冷凍機の開発及び実用化も積極的に進められている。
【0005】
また、上記したような超電導磁石やMRI装置などにおいては、使用する液体ヘリウムが蒸発するため、液体ヘリウムの補給が問題となる。 近年、ヘリウムの枯渇問題が深刻化し、入手困難な状態が発生し、産業界に影響を及ぼしている。
【0006】
この液体ヘリウムの消費量を低減し、補給などのメンテナンスの負荷を軽減するため、蒸発したヘリウムを再凝縮するヘリウム再凝縮装置が実用化され、需要が高まっている。このヘリウム再凝縮装置にも、ヘリウムを液化するために、温度を4Kレベルに冷却するGM式冷凍機やパルスチューブ式冷凍機が使用されている。
【0007】
このような冷凍機においては、蓄冷材が収容された蓄冷器内を、圧縮されたヘリウム(He)ガスなどの作動媒質が一方向に流れて、その熱エネルギーを蓄冷材に供給する。そして、蓄冷器内を膨張した作動媒質が反対方向に流れ、蓄冷材から熱エネルギーを受け取る。こうした過程での復熱効果が良好になるに伴い、作動媒質サイクルでの熱効率が向上し、より低い温度を実現することが可能となる。
【0008】
ここで蓄冷器に搭載する蓄冷材の単位体積当たりの比熱が高いほど、蓄冷材の蓄えることが可能な熱エネルギーが増加するため、冷凍機の冷凍能力が向上する。このため、蓄冷器の低温側には低温で高い比熱を有する蓄冷材を、高温側には高温で高い比熱を有する蓄冷材を搭載することが望ましい。
【0009】
磁性蓄冷材はその組成に依存して、特定の温度域で高い体積比熱を示す。このため、目的とする温度領域において高い体積比熱を示す、異なる組成の磁性蓄冷材を組み合わせることで、蓄冷能力が高まり、冷凍機の冷凍能力が向上する。
【0010】
また、蓄冷器に搭載する蓄冷材は、その熱伝導率及び熱伝達率が高いほど熱エネルギーの受け渡しの効率が向上し、冷凍機の効率が向上する。
【0011】
これまでの冷凍機では、高温側に鉛(Pb)、ビスマス(Bi)やスズ(Sn)などの金属蓄冷材粒子を、20K以下の低温側にErNi、ErNi、HoCuなどの金属系磁性蓄冷材粒子と組み合わせることで4Kでの冷凍が実現されてきた。
【0012】
近年では、金属系磁性蓄冷材粒子の一部を2Kから10Kの温度域で高い比熱を有するGdS、TbS、DyS、HoS、GdAlOなどのセラミックス磁性蓄冷材粒子に置換することにより、冷凍機の冷凍能力を向上させる試みもなされている。
【0013】
上記のような冷凍機を各種冷却システムに応用することが検討されるに伴って、より大規模な冷却対象物を安定して冷却する必要性から、冷凍機には、より一層の冷凍機の冷凍能力の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2003-73661号公報
【文献】特開2003-213252号公報
【文献】国際公開第2018/025581号
【文献】特許第5010071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、高い体積比熱と高い熱伝導率を備える蓄冷材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
実施形態の蓄冷材は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群から選ばれる少なくとも一つの希土類元素を含む希土類酸硫化物を含み、第一族元素を0.001原子%以上10原子%以下含み、2K以上10K以下の温度範囲における体積比熱の最大値が0.5J/(cm・K)以上である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第2の実施形態の蓄冷材粒子及び第4の実施形態の冷凍機の要部構成を示す模式断面図。
図2】第5の実施形態のクライオポンプの概略構成を示す断面図。
図3】第6の実施形態の超電導磁石の概略構成を示す斜視図。
図4】第7の実施形態の核磁気共鳴イメージング装置の概略構成を示す断面図。
図5】第8の実施形態の核磁気共鳴装置の概略構成を示す断面図。
図6】第9の実施形態の磁界印加式単結晶引上げ装置の概略構成を示す斜視図。
図7】第10の実施形態のヘリウム再凝縮装置の概略構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する場合がある。
【0019】
本明細書中、極低温とは、例えば、超電導現象を工業的に有用に利用できる温度域を意味する。極低温とは、例えば、20K以下の温度域である。
【0020】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の蓄冷材は、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)からなる群から選ばれる少なくとも一つの希土類元素を含む希土類酸硫化物を含み、第一族元素を0.001原子%以上10原子%以下含み、2K以上10K以下の温度範囲における体積比熱の最大値が0.5J/(cm・K)以上である。
【0021】
第1の実施形態の蓄冷材は、例えば、2.5K以上10K以下の温度範囲における体積比熱が0.5J/(cm・K)以上である。また、第1の実施形態の蓄冷材は、例えば、2K以上8K以下の温度範囲における体積比熱が0.55J/(cm・K)以上である。また、第1の実施形態の蓄冷材は、例えば、4K以上7K以下の温度範囲における体積比熱が0.6J/(cm・K)以上である。
【0022】
第1の実施形態の蓄冷材が含む希土類酸硫化物は、例えば、一般式R2±0.11±0.1(式中、RはY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群から選ばれる少なくとも一つの希土類元素を示す)で示される。上記一般式で示される希土類酸硫化物において、選択された希土類元素によって体積比熱の最大値と、体積比熱の最大値を示す温度が異なる。このため、希土類元素の割合を適宜調整することで、比熱特性を調整することができる。
【0023】
希土類元素は、例えば、Gd、Tb、Dy、Ho、及びErからなる群から選ばれる少なくとも一つの希土類元素である。第1の実施形態の蓄冷材が含む希土類酸硫化物は、例えば、二種類以上の希土類元素を含んでもよい。
【0024】
希土類酸硫化物は、例えば、結晶質である。
【0025】
第1の実施形態の蓄冷材は、希土類酸硫化物を主成分とする。第1の実施形態の蓄冷材に含まれる物質の中で、例えば、希土類酸硫化物の体積割合が最も大きい。第1の実施形態の蓄冷材に含まれる物質の中で、例えば、希土類酸硫化物のモル比が最も大きい。
【0026】
第1の実施形態の蓄冷材は、第一族元素を合計で0.001原子%以上10原子%以下含む。第一族元素は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビシウム(Rb)、セシウム(Cs)、及びフランシウム(Fr)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素である。第一族元素は、例えば、Li、Na、及びKからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素である。蓄冷材は、例えば、二種類以上の第一族元素を含んでもよい。
【0027】
蓄冷材に含まれる第一族元素は、例えば、希土類酸硫化物の結晶中に存在する。蓄冷材に含まれる第一族元素は、例えば、希土類酸硫化物の結晶粒界に存在する。蓄冷材に含まれる第一族元素は、例えば、蓄冷材の中に存在する空隙の内壁面に存在する。蓄冷材に含まれる第一族元素は、例えば、希土類酸硫化物の結晶粒中に存在する。蓄冷材に含まれる第一族元素は、例えば、蓄冷材の中に含まれる希土類酸硫化物以外の結晶粒中に存在する。
【0028】
第1の実施形態の蓄冷材は、例えば、上記第一族元素に加え、第二族元素を合計で0原子%以上10原子%以下含有する。また、第1の実施形態の蓄冷材は、例えば、上記第一族元素に加え、例えば、第二族元素を合計で0.001原子%以上10原子%以下含有する。
【0029】
第二族元素は、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、及びラジウム(Ra)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素である。第二族元素は、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、及びバリウム(Ba)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素である。
【0030】
蓄冷材は、例えば、二種類以上の第二族元素を含んでもよい。蓄冷材は、第二元素を含まなくても構わない。
【0031】
蓄冷材に含まれる第二族元素は、例えば、希土類酸硫化物の結晶中に存在する。蓄冷材に含まれる第二族元素は、例えば、希土類酸硫化物の結晶粒界に存在する。蓄冷材に含まれる第二族元素は、例えば、蓄冷材の中に存在する空隙の内壁面に存在する。蓄冷材に含まれる第二族元素は、例えば、希土類酸硫化物の結晶粒中に存在する。蓄冷材に含まれる第二族元素は、例えば、蓄冷材の中に含まれる希土類酸硫化物以外の結晶粒中に存在する。
【0032】
第1の実施形態の蓄冷材は、例えば、蓄冷材を製造する際に用いられた焼結助剤に由来する物質を含む。焼結助剤は、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、又は酸化ホウ素である。
【0033】
第1の実施形態の蓄冷材は、例えば、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、及びボロン(B)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素を0.01原子%以上20原子%以下含む。Al、Fe、Cu、Ni、Co、Zr、及びBからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素は、例えば、焼結助剤に由来する元素である。
【0034】
なお、第1の実施形態の蓄冷材中に含まれる元素の検出、及び、元素の原子濃度の測定は、例えば、蓄冷材を液体に溶解させ、誘導結合プラズマ発光分光分析(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy:ICP-AES)を用いて行うことも可能である。また、エネルギー分散型X線分光法(EDX)又は波長分散型X線分析法(WDX)を用いて行うことも可能である。
【0035】
第1の実施形態の蓄冷材に含まれる希土類酸硫化物の結晶構造は、例えば、CeS型であり、その空間群はP-3mである。結晶構造は粉末X線回折測定や走査型電子顕微鏡を用いた電子線後方散乱回折像の観察、又は透過型電子顕微鏡観察などにより確認できる。
【0036】
第1の実施形態の蓄冷材の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば原料粉末をボールミルなどを用いて混合して原料混合体を調製し、得られた原料混合体を成形、焼結することにより製造できる。原料粉末には希土類酸化物、あるいは希土類酸硫化物を使用することができる。蓄冷材の目標組成に合わせて、希土類酸化物、あるいは希土類酸硫化物の種類及び割合を調整する。
【0037】
原料粉末に第一族元素を含有する炭酸塩、第一族元素を含有する酸化物、第一族元素を含有する窒化物、又は第一族元素を含有する炭化物を使用することで、第一族元素を蓄冷材に含有させることが可能となる。原料粉末に第二族元素を含有する炭酸塩、第二族元素を含有する酸化物、第二族元素を含有する窒化物、又は第二族元素を含有する炭化物を使用することで、第二族元素を蓄冷材に含有させることが可能となる。
【0038】
原料混合体に、焼結助剤を含んでもよい。焼結助剤は、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、又は酸化ホウ素である。
【0039】
原料粉末に希土類酸化物を使用した場合、成形体の硫化を行う。この場合、硫化雰囲気で熱処理を行う。硫化雰囲気は、例えば、硫化水素(HS)、硫化炭素(CS)、又はメタンチオール(CHSH)等の酸化数が負の硫黄原子を含むガスを含む。熱処理温度は、例えば、400℃以上700℃以下である。また、熱処理時間は、例えば、1時間以上8時間以下である。
【0040】
得られた酸硫化物を焼結する熱処理は、例えば、不活性ガスの加圧雰囲気で行う。熱処理温度は、例えば、1000℃以上2000℃以下である。熱処理温度は、例えば、1100℃以上1700℃以下である。熱処理時間は、例えば、1時間以上48時間以下である。
【0041】
第1の実施形態の蓄冷材は、例えば、第1の蓄冷材からなる蓄冷材粒子の焼結体でもよい。
【0042】
次に、第1の実施形態の蓄冷材の作用及び効果について説明する。
【0043】
超電導機器の冷却などに用いられる極低温冷凍機では、蓄冷材を蓄冷器の中に収容する。例えば、蓄冷材と蓄冷器の中を通るヘリウムガスとの間で熱交換を行うことにより、寒冷を発生させる。冷凍機の冷凍能力を向上させるには、蓄冷器に収容される蓄冷材に対し、例えば、高い体積比熱、高い熱伝導率等、優れた特性を備えることが要求される。
【0044】
体積比熱は物質の組成により上限値が制限される。このため、体積比熱を大幅に向上させることは難しい。一方、熱伝導率は、結晶性の向上や空隙の数を減らすことにより向上させることができる。
【0045】
第1の実施形態の蓄冷材は、2K以上10K以下の温度範囲における体積比熱の最大値が0.5J/(cm・K)以上である。したがって、第1の実施形態の蓄冷材は高い体積比熱を有する。
【0046】
また、第1の実施形態の蓄冷材は、例えば、2.5K以上10K以下の温度範囲における体積比熱が0.5J/(cm・K)以上である。また、例えば、2K以上8K以下の温度範囲における体積比熱が0.55J/(cm・K)以上である。また、例えば、4K以上7K以下の温度範囲における体積比熱が0.6J/(cm・K)以上である。
【0047】
このように、第1の実施形態の蓄冷材は高い体積比熱を有するため、第1の実施形態の蓄冷材を収容した蓄冷器は、高い蓄冷性能を具備する。そして、第1の実施形態の蓄冷材を収容した蓄冷器を備える冷凍機は、高い冷凍能力を発揮する。
【0048】
また、第1の実施形態の蓄冷材は、第一族元素を原子濃度で0.001原子%以上10原子%以下含む。第一族元素は、蓄冷材を製造する際の焼結工程において、成形体の焼結を促進し、得られた焼結体の空隙の数を減少させる作用を有する。したがって、第1の実施形態の蓄冷材は焼結度合が高く、高い熱伝導率を備える。
【0049】
熱伝導率及び体積比熱等の蓄冷材に求められる特性を十分に得るためには、焼結プロセスにおいて十分な焼結温度及び焼結時間が必要である。第1の実施形態の蓄冷材は、第一族元素の焼結促進作用により、焼結に必要な焼結温度の低下と、焼結時間の低減を可能とする。したがって、蓄冷材の製造コストを低減し、安価な蓄冷材を提供することを可能とする。
【0050】
蓄冷材の中の第一族元素の原子濃度が、0.001原子%以上であることにより、焼結度合が高くなり、極微小な空隙の数が減る。したがって、蓄冷材の熱伝導率を高くすることが可能となる。
【0051】
蓄冷材の中の第一族元素の原子濃度が、10原子%を超えると、希土類と第一族元素を含む硫化物を生成するため、体積比熱が低くなり、かつ、熱伝導率が低くなる。蓄冷材の中の第一族元素の原子濃度が、10原子%以下であることにより、体積比熱が高く、熱伝導率を高くすることが可能となり、第1の実施形態の蓄冷材を収容した冷凍機の冷凍能力が向上する。
【0052】
第1の実施形態の蓄冷材に含まれる第一族元素は、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs、及びFrからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素である。また、第一族元素は、Li、Na、及びKからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素であることが好ましい。また、例えば、第一族元素の内、二種類以上の第一族元素を含んでもよい。
【0053】
原料粉末に第一族元素を含有する炭酸塩、酸化物、窒化物、あるいは炭化物を使用することで、第一族元素を含有する蓄冷材を製造することができる。第一族元素を含有する炭酸塩、酸化物、窒化物、あるいは炭化物の量を調整することで、蓄冷材に含まれる第一族元素の濃度を調整する。
【0054】
第1の実施形態の蓄冷材は、例えば、第二族元素を原子濃度で、合計0原子%以上10原子%以下含む。また、例えば、第二族元素を原子濃度で、合計0.001原子%以上10原子%以下含む。第二族元素は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、及びRaからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素である。第二族元素の原子濃度は、例えば、合計で0.001原子%以上5原子%以下である。蓄冷材は、例えば、二種類以上の第二族元素を含んでもよい。
【0055】
第1の実施形態の蓄冷材は、第一族元素に加え、第二族元素を0.001原子%以上含有することでさらに焼結性が向上し、極微小な空隙の数が減少する。これにより、熱伝導率がさらに向上する。第二族元素は比熱特性を発揮しない。そのため、第二族元素の含有量が合計で10原子%を超えると、蓄冷材としての体積比熱が低下し、蓄冷器の蓄冷性能が低下し、冷凍機の冷凍能力が低下する。
【0056】
原料粉末に第二族元素を含有する炭酸塩、酸化物、窒化物、あるいは炭化物を使用することで、第二族元素を含有する蓄冷材を製造することができる。第二族元素を含有する炭酸塩、酸化物、窒化物、あるいは炭化物の量を調整することで、蓄冷材に含まれる第二族元素の濃度を調整する。
【0057】
第1の実施形態の蓄冷材を製造する際に、第一族元素に加え、焼結助剤を、焼結助剤を構成する金属あるいは半金属元素として0.01原子%以上加えることでさらに焼結性が向上し、極微小な空隙の数が減少する。これにより、熱伝導率がさらに向上する。焼結助剤を構成する金属あるいは半金属元素は比熱特性を発揮しない。そのため、焼結助剤を構成する金属あるいは半金属元素の添加量が20原子%を超えると、蓄冷材としての体積比熱が低下し、蓄冷器の蓄冷性能が低下し、冷凍機の冷凍能力が低下する。
【0058】
第1の実施形態の蓄冷材は、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、及びボロン(B)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素を0.01原子%以上20原子%以下含むことが好ましい。Al、Fe、Cu、Ni、Co、Zr、及びBからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素は、例えば、焼結助剤に由来する元素である。Al、Fe、Cu、Ni、Co、Zr、及びBからなる群から選ばれる少なくとも一つの元素は、例えば、焼結助剤を構成する金属あるいは半金属元素の一例である。
【0059】
以上、第1の実施形態によれば、高い体積比熱、高い熱伝導率という優れた特性を備えた蓄冷材が実現できる。
【0060】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の蓄冷材粒子は、第1の実施形態の蓄冷材で形成され、粒径が50μm以上3mm以下である。蓄冷材粒子のアスペクト比は、例えば、1以上5以下である。蓄冷材粒子のアスペクト比とは、蓄冷材粒子の短径に対する長径の比である。蓄冷材粒子の形状は、例えば、球状である。
【0061】
以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0062】
蓄冷材粒子の粒径は、円相当径である。円相当径は、光学顕微鏡画像又は走査電子顕微鏡画像(SEM画像)などの画像で観察される図形の面積に相当する真円の直径である。蓄冷材粒子の粒径は、例えば、光学顕微鏡画像又はSEM画像の画像解析により求めることが可能である。
【0063】
第2の実施形態の蓄冷材粒子の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば原料粉末をボールミルなどを用いて混合して原料混合体を調製し、得られた原料混合体を転動造粒法,攪拌造粒法,押し出し法,噴霧法(スプレー法)又はプレス成形法などにより粒状に成形(造粒)した後に、得られた粒状成形体を焼結することにより製造できる。
【0064】
得られた粒状成形体を造粒粒子と称する。
【0065】
上記造粒法では、バインダーを添加し原料粉末同士を付着させることで、造粒粒子の強度を向上させている。バインダーは、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、カルボキシメチルセルロース、アクリル樹脂、又はポリエチレングリコールである。バインダーの添加量は、例えば、0.01重量%以上20重量%以下である。
【0066】
原料粉末には、希土類酸化物、あるいは希土類酸硫化物を使用することができる。蓄冷材粒子の目標組成に合わせて、希土類酸化物、あるいは希土類酸硫化物の種類及び割合を調整する。
【0067】
原料粉末に第一族元素を含有する炭酸塩、第一族元素を含有する酸化物、第一族元素を含有する窒化物、あるいは第一族元素を含有する炭化物を使用することで、第一族元素を含有する蓄冷材粒子を製造することができる。また、原料粉末に第二族元素を含有する炭酸塩、第二族元素を含有する酸化物、第二族元素を含有する窒化物、あるいは第二族元素を含有する炭化物を使用することで、第二族元素を含有する蓄冷材粒子を製造することができる。
【0068】
原料粉末に焼結助剤を添加することで、焼結助剤を含有する蓄冷材粒子を製造することができる。焼結助剤と原料の希土類酸化物が反応することで、希土類元素及び焼結助剤を構成する金属あるいは半金属元素を含有する酸化物相が生成することもある。
【0069】
また、原料粉末をアルギン酸水溶液に加えて混合して作製したスラリーをゲル化溶液に滴下し、スラリーをゲル化させることで粒状に造粒してもよい。これは、ゲル化溶液が含有する多価金属イオンによる架橋反応によりゲル化を進行させることで粒子を造粒する方法である。このため、造粒粒子の強度、すなわち、ゲル化強度は粒子に含まれるアルギン酸塩の量で変化する。
【0070】
粒子に含まれるアルギン酸塩の量は、アルギン酸水溶液中に含まれるアルギン酸塩の濃度、あるいは、アルギン酸水溶液と原料粉末の比率によって変化させることができる。スラリーのゲル化溶液への滴下は、例えば、スポイト、ビューレット、ピペット、シリンジ、ディスペンサー、又はインクジェット等を用いることができる。以下、同手法による粒子の造粒法をアルギン酸ゲル法と呼称する。
【0071】
アルギン酸ゲル法ではスラリーの粘度、滴下の際の吐出口の口径、又は吐出口の先端とゲル化溶液の液面までの距離を調整することで、粒子の粒径、及びアスペクト比を変化させることができる。吐出口の口径は、例えば、50μm以上3000μm以下である。スラリーの粘度は、例えば、0.1mPa・s以上1000000mPa・s以下である。また、吐出口の先端とゲル化溶液の液面までの距離は、例えば、0.1mm以上1000mm以下である。
【0072】
ディスペンサーを吐出に用いる場合、装置としてエアパルス式ディスペンサー、プランジャー式ディスペンサー、ピエゾ式ディスペンサー、いずれを使用してもよい。
【0073】
インクジェットは吐出方式として大きくコンティニュアス型とオンデマンド型に分かれるが、いずれの型の吐出方式を使用してもよい。また、オンデマンド型はピエゾ方式、サーマル方式、バルブ方式の3つに区分されるが、いずれの方式を使用してもよい。
【0074】
スポイト、ビューレット、ピペット、シリンジ、ディスペンサー、インクジェット等によりゲル化溶液に滴下されたスラリーは、ゲル化溶液中に保持することでゲル化する。スラリーをゲル化させることで、蓄冷材の原料粉末を含む造粒粒子が形成される。
【0075】
スラリーのゲル化溶液中での保持時間は、例えば、10分以上48時間以下である。ゲル化時間が短いとゲル化が十分に進行しないため、造粒粒子の強度がアルギン酸塩の量から期待される強度よりも小さくなる。
【0076】
アルギン酸ゲル法で用いるアルギン酸水溶液は、例えば、アルギン酸ナトリウム水溶液、アルギン酸アンモニウム水溶液、又はアルギン酸カリウム水溶液である。第一族元素を含むアルギン酸ナトリウム水溶液、又はアルギン酸カリウム水溶液を使用することで、蓄冷材粒子にナトリウム、又はカリウムを含有させることができる。アルギン酸ナトリウム水溶液、及びアルギン酸カリウム水溶液の混合水溶液をスラリーに使用することで、ナトリウム、及びカリウムを同時に含有させることができる。
【0077】
第一族元素を含むアルギン酸塩の濃度を調整することで、粒子に含まれる第一族元素の濃度を調整する。アルギン酸塩の濃度はアルギン酸塩水溶液として、例えば、0.01重量%以上5重量%以下である。アルギン酸塩水溶液の濃度が0.01重量%より低いと、十分な強度のゲルが生成できず、粒子を得ることができない。
【0078】
ゲル化溶液は、第二族元素を含む水溶液として、例えば、乳酸カルシウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、塩化マンガン(II)水溶液、硫酸マグネシウム水溶液、硫酸ベリリウム水溶液、硝酸ストロンチウム水溶液、塩化バリウム水溶液、水酸化バリウム水溶液、を使用することができる。
【0079】
乳酸カルシウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、硫酸マグネシウム水溶液、硫酸ベリリウム水溶液、硝酸ストロンチウム水溶液、塩化バリウム水溶液、水酸化バリウム水溶液をゲル化溶液に使用することで、カルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウムを蓄冷材粒子に含有させることができる。
【0080】
塩化アルミニウム水溶液、硝酸アルミニウム水溶液、乳酸アルミニウム水溶液、塩化鉄(II)水溶液、塩化鉄(III)水溶液、塩化銅(II)水溶液、塩化ニッケル(II)水溶液、塩化コバルト(II)水溶液をゲル化溶液として使用することで、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、又はコバルトを焼結助剤として蓄冷材粒子に含有させることができる。
【0081】
ゲル化は、ゲル化溶液が含有する多価金属イオンによる架橋反応により進行するため、スラリーに第一族元素を含む水溶液を使用し、ゲル化溶液に第二族元素を含む水溶液を使用した場合、ゲル化溶液に滴下して造粒した粒子のゲル化溶液中の浸漬時間を調整することで、粒子中に含まれる第一族元素、及び第二族元素の量を調整することができる。
【0082】
乳酸カルシウム水溶液、塩化カルシウム水溶液、硫酸マグネシウム水溶液、硫酸ベリリウム水溶液、硝酸ストロンチウム水溶液、塩化バリウム水溶液、及び水酸化バリウム水溶液からなる群から選ばれる、異なる金属元素を含む少なくとも二種類の水溶液を混合し、ゲル化溶液として使用することで、二種類以上の第二族元素を蓄冷材粒子に含有させることができる。
【0083】
造粒粒子の粒径は、例えば、70μm以上5mm以下である。造粒粒子のアスペクト比は、例えば、1以上5以下である。
【0084】
造粒粒子は脱脂することで、一定量の有機成分を除去することができる。原料が酸化物である場合、脱脂が不十分だと、硫化が十分に進行せず、酸硫化物を必要な量生成できない。さらに、脱脂が不十分で有機成分が残りすぎていると、焼結粒子の密度が低くなる。このため、蓄冷材粒子の強度が弱くなり、冷凍機での使用に耐えることはできない。
【0085】
脱脂が進みすぎると、強度を担保する有機成分が消失するため、脱脂後の造粒粒子の強度が低下し、粒子に割れ、あるいは欠けが生じる。脱脂の温度は例えば、400℃以上800℃以下であり、時間は30分以上12時間以下である。
【0086】
原料粉末に希土類酸化物を使用した場合、造粒した粒子の硫化を行う。この場合、硫化雰囲気で熱処理を行う。硫化雰囲気は、例えば、硫化水素(HS)、硫化炭素(CS)、又はメタンチオール(CHSH)等の酸化数が負の硫黄原子を含むガスを含む。熱処理温度は、例えば、400℃以上700℃以下である。また、熱処理時間は、例えば、1時間以上8時間以下である。
【0087】
酸硫化物粒子を焼結する熱処理は、例えば、不活性ガスの加圧雰囲気で行う。熱処理温度は、例えば、1000℃以上2000℃以下である。熱処理温度は、例えば、1100℃以上1700℃以下である。熱処理時間は、例えば、1時間以上48時間以下である。
【0088】
次に、第2の実施形態の蓄冷材粒子の作用及び効果について説明する。
【0089】
第2の実施形態の蓄冷材粒子は、第1の実施形態の蓄冷材からなり、粒径が50μm以上3mm以下である。蓄冷材粒子のアスペクト比は、例えば、1以上5以下である。蓄冷材粒子のアスペクト比とは、蓄冷材粒子の短径に対する長径の比である。蓄冷材粒子の形状は、例えば、球状である。
【0090】
第2の実施形態の蓄冷材粒子は、2K以上10K以下の温度範囲における体積比熱の最大値が0.5J/(cm・K)以上である。したがって、第2の実施形態の蓄冷材粒子は高い体積比熱を有する。第2の実施形態の蓄冷材粒子は、高い体積比熱を有するため、第2の実施形態の蓄冷材粒子を搭載した蓄冷器は、高い蓄冷性能を備える。また、第2の実施形態の蓄冷材粒子を搭載した蓄冷器を備えた冷凍機は、高い冷凍能力を発揮する。
【0091】
また、第2の実施形態の蓄冷材粒子は、第一族元素を原子濃度で0.001原子%以上10原子%以下含む。第一族元素は、蓄冷材粒子を製造する際の焼結時に、蓄冷材粒子の焼結を促進し、蓄冷材粒子に含まれる空隙の数を減少させる作用を有する。したがって、蓄冷材粒子は焼結度合が高く、高い熱伝導率を備える。
【0092】
第1の実施形態の蓄冷材は、第一族元素に加え、焼結助剤を、焼結助剤を構成する金属あるいは半金属元素として0.01原子%以上加えることでさらに焼結性が向上し、極微小な空隙の数が減少する。これにより、熱伝導率がさらに向上する。焼結助剤を構成する金属あるいは半金属元素は比熱特性を発揮しない。そのため、焼結助剤を構成する金属あるいは半金属元素の添加量が20原子%を超えると、蓄冷材としての体積比熱が低下し、蓄冷器の蓄冷性能が低下し、冷凍機の冷凍能力が低下する。
【0093】
熱伝導率及び体積比熱等の蓄冷材粒子に求められる特性を十分に得るために、焼結プロセスにおいて十分な焼結温度及び焼結時間が必要である。第2の実施形態の蓄冷材粒子は、第一族元素の焼結促進作用により、焼結に必要な焼結温度の低下と、焼結時間の低減を可能とする。したがって、蓄冷材粒子の製造コストを低減し、安価な蓄冷材粒子を提供することを可能とする。
【0094】
第2の実施形態の蓄冷材粒子の粒径は50μm以上3mm以下である。蓄冷材粒子の粒径は1mm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましい。
【0095】
蓄冷材粒子の粒径が上記下限値を上回ることで、蓄冷器中の蓄冷材粒子の充填密度が低くなり、ヘリウム等の作動媒質の圧力損失が低減し、冷凍機の冷凍性能が向上する。一方、蓄冷材粒子の粒径が上記上限値を下回ることで、蓄冷材粒子表面から粒子中心部までの距離が短くなり、作動媒質と蓄冷材粒子間での伝熱が蓄冷材中心部まで伝わりやすくなり、冷凍機の冷凍性能が向上する。
【0096】
蓄冷材粒子のアスペクト比は、1以上5以下であることが好ましく、1以上2以下であることがより好ましい。蓄冷材粒子のアスペクト比が上記上限値を下回ることで、蓄冷材粒子を蓄冷器に充填した際の空隙が均一になり、冷凍機の冷凍性能が向上する。
【0097】
第2の実施形態の蓄冷材粒子は、脱脂後の造粒粒子において、一定以上の強度を満たさない場合、取り扱い中に割れ、あるいは欠けが生じる。球状から外れた蓄冷材粒子が、冷凍機に搭載されると冷凍機性能が低下するため、割れ、あるいは欠けの生じた造粒粒子は不良品として廃棄することとなる。このため、造粒粒子は割れ、あるいは欠けが生じない、一定以上の強度を有することが望ましい。
【0098】
造粒粒子の強度は主にバインダー量、あるいは、アルギン酸塩の量に依存するが、これら有機成分が多すぎると硫化、あるいは焼結が困難となる。一方、第一族元素は、蓄冷材粒子の焼結を促進する。造粒粒子は第一族元素を原子濃度で0.001原子%以上10原子%以下含んだ上で、更に、バインダー、あるいは、アルギン酸塩由来の炭素成分を0.01重量%以上20重量%以下含有すると、上記の二つの効果によって、焼結性と高強度を両立することができる。
【0099】
炭素成分は10重量%以下であることがより好ましく、更に好ましくは5重量%以下である。第一族元素を原子濃度で0.001原子%以上10原子%以下含んでいても、炭素成分が20重量%を超えると、有機成分を適切に除去することが困難になったり、あるいは、脱脂後の成形密度の著しい低下等が起こり、焼結温度が高温でも焼結反応が進行しない。このため、焼結粒子の強度が著しく低く、粒子としての回収が困難である。炭素成分が0.01重量%より少ないと、造粒粒子に含まれるバインダー、あるいはアルギン酸ナトリウムの量が少ないため、強度が弱くなり、造粒粒子の取り扱い時に割れ、あるいは欠けが生じる。
【0100】
脱脂した造粒粒子では、第一族元素を原子濃度で0.001原子%以上10原子%以下含んだ上で、更に、バインダー、あるいは、アルギン酸塩由来の炭素成分を0.001重量%以上10重量%以下含有すると、焼結性と高強度を両立することができる。炭素成分は5重量%以下がより好ましく、更に好ましくは3重量%以下である。炭素成分を10重量%を超えて含んでいると、成形密度が低いため、焼結後でも密度があがらず、冷凍機での使用に耐えうる強度が出ない。焼結温度を上げることで、焼結後の密度を向上させようとすると、粒子と粒子が接着し、アスペクト比が顕著に低下する。
【0101】
焼結による収縮をふまえると、造粒粒子の粒径は脱脂前と後のいずれも、70μm以上5mm以下が望ましい。造粒粒子のアスペクト比は、脱脂前と後のいずれも、例えば、1以上5以下である。
【0102】
以上、第2の実施形態によれば、高い体積比熱、高い熱伝導率という優れた特性を備えた蓄冷材粒子が実現できる。
【0103】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の蓄冷器は、第2の実施形態の蓄冷材粒子が複数個、充填された蓄冷器である。第3の実施形態の蓄冷器は、例えば、充填された複数の第2の実施形態の蓄冷材粒子の、投影像の周囲長さをLとし、投影像の実面積をAとしたとき、4πA/Lで表される円形度Rが0.5以下の蓄冷材粒子の比率が5%以下である。
【0104】
円形度Rは、光学顕微鏡で複数の蓄冷材粒子の形状を画像処理することで、求めることができる。円形度Rが0.5以下の蓄冷材粒子は、表面に凹凸が存在する等の形状を表す。このような蓄冷材粒子を5%を超えて含む、複数の蓄冷材粒子が蓄冷器に充填されると、蓄冷器の中で、蓄冷材粒子が形成する空隙率が不均一となり、また充填性が不安定な状態となるため、作動媒質が流入した際、蓄冷性能が低下したり、蓄冷材粒子の充填時や、冷凍機の作動時に蓄冷材粒子にかかる応力によって、蓄冷材粒子が移動したり、破壊して微粒子を発生し、空隙を詰まらせる原因となり、冷凍機の冷凍性能や、長期信頼性を低下させる。円形度Rが0.5以下の蓄冷材粒子は、2%以下であることが好ましく、さらには、0%であることが好ましい。
【0105】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の冷凍機は、第1の実施形態の蓄冷材、又は第2の実施形態の蓄冷材粒子が複数個、充填された蓄冷器を備える冷凍機である。以下、第1の実施形態、第2の実施形態、及び第3の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0106】
図1は、第2の実施形態の蓄冷材粒子が複数個、充填された、第3の実施形態の蓄冷器を備える、第4の実施形態の冷凍機の要部構成を示す模式断面図である。第4の実施形態の冷凍機は、超電導機器などの冷却に用いられる2段式の蓄冷型極低温冷凍機100である。
【0107】
蓄冷型極低温冷凍機100は、第1シリンダ111、第2シリンダ112、真空容器113、第1蓄冷器114、第2蓄冷器115、第1シールリング116、第2シールリング117、第1蓄冷材118、第2蓄冷材119、第1膨張室120、第2膨張室121、第1冷却ステージ122、第2冷却ステージ123、コンプレッサ124を備える。
【0108】
蓄冷型極低温冷凍機100は、大径の第1シリンダ111と、第1シリンダ111と同軸的に接続された小径の第2シリンダ112とが設置された真空容器113を有している。第1シリンダ111には第1蓄冷器114が往復運動自在に配置されている。第2シリンダ112には、第3の実施形態の蓄冷器の一例である第2蓄冷器115が往復運動自在に配置されている。
【0109】
第1シリンダ111と第1蓄冷器114との間には、第1シールリング116が配置されている。第2シリンダ112と第2蓄冷器115との間には、第2シールリング117が配置されている。
【0110】
第1蓄冷器114には、Cuメッシュなどの第1蓄冷材118が収容されている。第2蓄冷器115には、第2蓄冷材119が収容されている。
【0111】
第1蓄冷器114及び第2蓄冷器115は、第1蓄冷材118や第2蓄冷材119の間隙などに設けられた作動媒質の通路をそれぞれ有している。作動媒質は、ヘリウムガスである。
【0112】
第1蓄冷器114と第2蓄冷器115との間には、第1膨張室120が設けられている。また、第2蓄冷器115と第2シリンダ112の先端壁との間には、第2膨張室121が設けられている。そして、第1膨張室120の底部に第1冷却ステージ122が設けられている。また、第2膨張室121の底部に第1冷却ステージ122より低温の第2冷却ステージ123が形成されている。
【0113】
上述した2段式の蓄冷型極低温冷凍機100には、コンプレッサ124から高圧の作動媒質が供給される。供給された作動媒質は、第1蓄冷器114に収容された第1蓄冷材118間を通過して第1膨張室120に到達する。そして、第2蓄冷器115に収容された第2蓄冷材119間を通過して第2膨張室121に到達する。
【0114】
この際に、作動媒質は第1蓄冷材118及び第2蓄冷材119に熱エネルギーを供給して冷却される。第1蓄冷材118及び第2蓄冷材119の間を通過した作動媒質は、第1膨張室120及び第2膨張室121で膨張して寒冷を発生させる。そして、第1冷却ステージ122及び第2冷却ステージ123が冷却される。
【0115】
膨張した作動媒質は、第1蓄冷材118及び第2蓄冷材119の間を反対方向に流れる。作動媒質は第1蓄冷材118及び第2蓄冷材119から熱エネルギーを受け取った後に排出される。こうした過程で復熱効果が良好になるに従って作動媒質サイクルの熱効率が向上し、より一層低い温度が実現されるように蓄冷型極低温冷凍機100は構成されている。
【0116】
第4の実施形態の冷凍機が備える蓄冷器は、第2蓄冷器115に、第2蓄冷材119の少なくとも一部として、第1の実施形態の蓄冷材を収容する。また、第2蓄冷器115に、第2蓄冷材119の少なくとも一部として、第2の実施形態の蓄冷材粒子を、複数個、充填してもよい。第2の実施形態の複数個の蓄冷材粒子は、蓄冷材粒子のそれぞれの投影像の周囲長をLとし、前記投影像の実面積をAとしたとき、4πA/Lで表される円形度Rが0.5以下のものが5%以下であることが好ましい。
【0117】
第4の実施形態において、第3の実施形態の蓄冷器は、例えば、異なる種類の蓄冷材の複数の蓄冷材充填層を具備していてもよい。上記異なる種類の蓄冷材は、メッシュで区分けされていてもよい。上記メッシュは、例えば、金属メッシュである。上記複数の蓄冷材充填層の少なくとも1つは、第1の実施形態の蓄冷材、又は第2の実施形態の蓄冷材粒子である。 第4の実施形態の冷凍機において、第1の実施形態の蓄冷材、又は、複数個の第2の実施形態の蓄冷材粒子は、例えば、蓄冷器の低温側に充填される。
【0118】
冷凍機の冷凍能力向上には、蓄冷材の単位体積当たりの比熱を向上させることと、熱伝導率を向上させることが望ましい。第4の実施形態の冷凍機は、体積比熱を維持し、熱伝導率を向上した蓄冷材、又は蓄冷材粒子を具備する。
【0119】
例えば、第4の実施形態の冷凍機を、磁気浮上列車に利用することにより、磁気浮上列車の長期信頼性を向上させることができる。
【0120】
以上、第4の実施形態によれば、優れた特性を備えた蓄冷材又は蓄冷材粒子を用いることにより、優れた特性の冷凍機が実現できる。
【0121】
(第5の実施形態)
第5の実施形態のクライオポンプは、第4の実施形態の冷凍機を備える。以下、第4の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0122】
図2は、第5の実施形態のクライオポンプの概略構成を示す断面図である。第5の実施形態のクライオポンプは、第4の実施形態の蓄冷型極低温冷凍機100を備えるクライオポンプ500である。
【0123】
クライオポンプ500は、気体分子を凝縮又は吸着するクライオパネル501、クライオパネル501を所定の極低温に冷却する蓄冷型極低温冷凍機100、クライオパネル501と蓄冷型極低温冷凍機100の間に設けられたシールド503、吸気口に設けられたバッフル504、及び、アルゴン、窒素、水素等の排気速度を変化させるリング505を備える。
【0124】
第5の実施形態によれば、優れた特性の冷凍機を用いることで優れた特性のクライオポンプが実現できる。また、第5の実施形態のクライオポンプを、半導体製造装置に利用することにより、半導体製造装置の長期信頼性を向上させることができる。
【0125】
(第6の実施形態)
第6の実施形態の超電導磁石は、第4の実施形態の冷凍機を備える。以下、第4の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0126】
図3は、第6の実施形態の超電導磁石の概略構成を示す斜視図である。第6の実施形態の超電導磁石は、第4の実施形態の蓄冷型極低温冷凍機100を備える、例えば磁気浮上列車用超電導磁石600である。
【0127】
磁気浮上列車用超電導磁石600は、超電導コイル601、この超電導コイル601を冷却するための液体ヘリウムタンク602、液体ヘリウムの揮散を防ぐ液体窒素タンク603、積層断熱材605、パワーリード606、永久電流スイッチ607、及び、蓄冷型極低温冷凍機100を備える。
【0128】
第6の実施形態によれば、優れた特性の冷凍機を用いることで優れた特性の超電導磁石が実現できる。
【0129】
(第7の実施形態)
第7の実施形態の核磁気共鳴イメージング装置は、第4の実施形態の冷凍機を備える。以下、第4の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0130】
図4は、第7の実施形態の核磁気共鳴イメージング装置の概略構成を示す断面図である。第7の実施形態の核磁気共鳴イメージング(MRI)装置は、第4の実施形態の蓄冷型極低温冷凍機100を備える核磁気共鳴イメージング装置700である。
【0131】
核磁気共鳴イメージング装置700は、人体に対して空間的に均一で時間的に安定な静磁界を印加する超電導静磁界コイル701、発生磁界の不均一性を補正する図示を省略した補正コイル、測定領域に磁界勾配を与える傾斜磁界コイル702、ラジオ波送受信用プローブ703、クライオスタット705、及び、放射断熱シールド706を備える。そして、超電導静磁界コイル701の冷却用として、蓄冷型極低温冷凍機100が用いられている。
【0132】
第7の実施形態によれば、優れた特性の冷凍機を用いることで優れた特性の核磁気共鳴イメージング装置が実現できる。
【0133】
(第8の実施形態)
第8の実施形態の核磁気共鳴装置は、第4の実施形態の冷凍機を備える。以下、第4の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0134】
図5は、第8の実施形態の核磁気共鳴装置の概略構成を示す断面図である。第8の実施形態の核磁気共鳴(NMR)装置は、第4の実施形態の蓄冷型極低温冷凍機100を備える核磁気共鳴装置800である。
【0135】
核磁気共鳴装置800は、サンプル管801に入れられた有機物等のサンプルに磁界を印加する超電導静磁界コイル802、磁場中のサンプル管801にラジオ波を印加する高周波発振器803、サンプル管801の周りの図示しないコイルに発生する誘導電流を増幅する増幅器804を備える。また、超電導静磁界コイル802を冷却する蓄冷型極低温冷凍機100を備える。
【0136】
第8の実施形態によれば、優れた特性の冷凍機を用いることで優れた特性の核磁気共鳴装置が実現できる。
【0137】
(第9の実施形態)
第9の実施形態の磁界印加式単結晶引上げ装置は、第4の実施形態の冷凍機を備える。以下、第4の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0138】
図6は、第9の実施形態の磁界印加式単結晶引上げ装置の概略構成を示す斜視図である。第9の実施形態の磁界印加式単結晶引上げ装置は、第4の実施形態の蓄冷型極低温冷凍機100を備える磁界印加式単結晶引上げ装置900である。
【0139】
磁界印加式単結晶引上げ装置900は、原料溶融用るつぼ、ヒータ、単結晶引上げ機構等を有する単結晶引上げ部901、原料融液に対して静磁界を印加する超電導コイル902、単結晶引上げ部901の昇降機構903、電流リード905、熱シールド板906、及び、ヘリウム容器907を備える。そして、超電導コイル902の冷却用として、蓄冷型極低温冷凍機100が用いられている。
【0140】
第9の実施形態によれば、優れた特性の冷凍機を用いることで優れた特性の磁界印加式単結晶引上げ装置が実現できる。
【0141】
(第10の実施形態)
第10の実施形態のヘリウム再凝縮装置は、第4の実施形態の冷凍機を備える。以下、第4の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0142】
図7は、第10の実施形態のヘリウム再凝縮装置の概略構成を示す模式図である。第10の実施形態のヘリウム再凝縮装置は、第4の実施形態の蓄冷型極低温冷凍機100を備えるヘリウム再凝縮装置1000である。
【0143】
ヘリウム再凝縮装置1000は、蓄冷型極低温冷凍機100、蒸発配管1001、及び液化配管1002を備える。
【0144】
ヘリウム再凝縮装置1000は、液体ヘリウムを使用する装置、例えば、超電導磁石、核磁気共鳴(NMR)装置、核磁気共鳴イメージング(MRI)装置、物理特性測定システム(PPMS)、あるいは磁気特性測定システム等の超電導磁石を使用する装置が具備する液体ヘリウム装置から蒸発するヘリウムガスを再凝縮して、液体ヘリウムとすることができる。
【0145】
図示しない液体ヘリウム装置から、蒸発配管1001を通ってヘリウムガスがヘリウム再凝縮装置1000に導入される。ヘリウムガスは、蓄冷型極低温冷凍機100により、ヘリウムの液化温度以下の4Kへ冷却される。凝縮液化した液体ヘリウムが、液化配管1002を通って、液体ヘリウム装置に戻る。
【0146】
第10の実施形態によれば、優れた特性の冷凍機を用いることで優れた特性のヘリウム再凝縮装置が実現できる。
【実施例
【0147】
以下、第1の実施形態の蓄冷材、及び第2の実施形態の蓄冷材粒子の実施例、比較例、及び、それらの評価結果について説明する。
【0148】
(実施例1)
Gd粉末とNaCO粉末をボールミルで24時間、混合粉砕して原料混合体を調製した。次に得られた原料混合体を乾燥した後に、転動造粒機を用いて造粒することにより、粒径が0.3mm~0.5mmの造粒粒子を調製した。このとき、バインダーにはポリビニルアルコールを使用し、原料粉末に対して1.2重量%となるように加えた。造粒粒子のナトリウム濃度は0.52原子%であり、炭素濃度は0.99重量%だった。得られた原料混合体を成形し、成形体を得た。
【0149】
造粒粒子の強度を評価するため、造粒粒子をφ15mm、高さ5mmの円筒容器に充填した。このとき、造粒粒子が円筒容器の中で固定され、自由に動かないように十分な量の蓄冷材を充填した。容器に対して振幅2mm、最大加速度200m/sの単振動を1×10回加えた。その結果、破壊した蓄冷材の割合は0.1重量%未満だった。
【0150】
造粒粒子、及び成形体について大気雰囲気下で600℃、6時間の脱脂を行った。脱脂後の造粒粒子、及び成形体は、ナトリウム濃度が、0.54原子%、炭素濃度が0.51重量%であった。硫化水素(HS)を含む雰囲気中で、500℃、4時間の熱処理を行い、粒子、及び成形体を硫化した。不活性ガスの加圧雰囲気中で、1300℃、12時間の熱処理を行い、粒子、及び成形体を焼結した。
【0151】
実施例1の蓄冷材、及び蓄冷材粒子の主たる構成要素は酸硫化ガドリニウムである。実施例1の蓄冷材、及び蓄冷材粒子の中のナトリウム濃度は0.55原子%である。
【0152】
実施例1に係る蓄冷材の10K以下における体積比熱の最大値、及び4.2Kにおける熱伝導率を測定した。測定は物理特性測定システム(PPMS)を用いて行った。
【0153】
実施例1に係る蓄冷材粒子250gを、図1に示す2段式GM冷凍機の2段目蓄冷器の低温側に充填する一方、高温側にはPb製蓄冷材を250g充填して実施例1に係る冷凍機を組み立て、冷凍試験を実施し、4.2Kにおける冷凍能力を測定した。 なお、一段目蓄冷器は温度が50Kになるように熱負荷を加えた。
【0154】
上記冷凍試験の結果、4.2Kにおける冷凍能力として0.66Wが得られた。
【0155】
なお、以下の実施例及び比較例において、原料粉末の混合時間、硫化熱処理の条件、焼結熱処理の条件等は適切な条件となるように調整している。また、冷凍機の試験条件は同等になるようにした。
【0156】
(実施例2)
NaCO粉末の代わりにLiCO粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0157】
(実施例3)
NaCO粉末の代わりにKCO粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0158】
(実施例4)
NaCO粉末に加えて、CaCO粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0159】
(実施例5)
NaCO粉末の代わりに、LiCO粉末を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0160】
(実施例6)
NaCO粉末の代わりに、KCO粉末を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0161】
(実施例7)
CaCO粉末の代わりに、MgCO粉末を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0162】
(実施例8)
CaCO粉末の代わりに、SrCO粉末を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0163】
(実施例9)
CaCO粉末の代わりに、BaCO粉末を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0164】
(実施例10)
Gd粉末の代わりにGdS粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0165】
(実施例11)
Gd粉末の代わりにTb粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0166】
(実施例12)
Gd粉末の代わりにDy粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0167】
(実施例13)
Gd粉末の代わりにHo粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0168】
(実施例14)
NaCO粉末に加え、KCO粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0169】
(実施例15)
NaCO粉末に加え、LiCO粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0170】
(実施例16)
NaCO粉末に加え、KCO粉末及びCaCO粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0171】
(実施例17)
NaCO粉末に加え、CaCO粉末及びSrCO粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0172】
(実施例18~20)
NaCO粉末の重量を減らしたこと以外は、実施例1と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0173】
(実施例21~23)
NaCO粉末の重量を増やしたこと以外は、実施例1と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0174】
(実施例24、25)
CaCO粉末の重量を減らしたこと以外は、実施例4と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0175】
(実施例26~28)
CaCO粉末の重量を増やしたこと以外は、実施例4と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0176】
(実施例29~31)
Gd粉末の一部をTb、Dy、Hoに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0177】
(実施例32)
Gd粉末をアルギン酸ナトリウム水溶液に加え、12時間混合することでスラリーを作成した。アルギン酸ナトリウム水溶液はアルギン酸ナトリウムが原料粉末に対して2.3重量%となるように加えた。 作成したスラリーを、ゲル化溶液である乳酸カルシウム水溶液に滴下した。スラリーの滴下にはシリンジを用いた。シリンジの口径は510μm、シリンジの先端から乳酸カルシウム水溶液の液面までの距離は100mmとした。また、スラリーを型に充填した後、ゲル化溶液に浸漬させた。
【0178】
シリンジで滴下したスラリー、及び型に充填したスラリーをゲル化溶液中に5時間保持した。
【0179】
その後、ゲル化した造粒粒子を純水で洗浄した。型に充填したスラリーは型から取り外した後、純水で洗浄し、成形体を得た。成形体、及び粒子を洗浄した後、成形体、及び粒子を乾燥させた。造粒粒子のナトリウム濃度は0.78原子% であり、炭素濃度は0.82重量%であった。成形体、及び粒子の乾燥後、成形体、及び粒子の脱脂、硫化と焼結を行った。
【0180】
大気雰囲気下で600℃ 、6時間の脱脂を行い、脱脂後の、造粒粒子のナトリウム濃度は1.0原子% であり、炭素濃度は0.54重量%であった。脱脂後、硫化水素(HS)を含む雰囲気中で、500℃、4時間の熱処理を行い、成形体、及び粒子を硫化した。不活性ガスの加圧雰囲気中で、1300℃、12時間の熱処理を行い、成形体、及び粒子を焼結した。実施例32の蓄冷材、及び蓄冷材粒子の主たる構成要素は酸硫化ガドリニウムである。実施例32の蓄冷材、及び蓄冷材粒子の中のナトリウム濃度は0.83原子%であった。
【0181】
(実施例33)
アルギン酸ナトリウム水溶液の代わりにアルギン酸カリウム水溶液を用いたこと以外は、実施例32と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0182】
(実施例34~38)
アルギン酸カリウム水溶液の量を増やしたこと、又は減らしたこと以外は、実施例33と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0183】
(実施例39)
乳酸カルシウム水溶液の代わりに塩化マグネシウム水溶液を用いたこと以外は、実施例32と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0184】
(実施例40)
乳酸カルシウム水溶液の代わりに塩化ストロンチウム水溶液を用いたこと以外は、実施例32と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0185】
(実施例41)
乳酸カルシウム水溶液の代わりに塩化バリウム水溶液を用いたこと以外は、実施例32と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0186】
(実施例42)
原料粉末としてKCO粉末を加えたこと以外は、実施例32と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0187】
(実施例43)
原料粉末としてLiCO粉末を加えたこと以外は、実施例18と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。
【0188】
(実施例44)
スラリーの型への充填法、及びスラリーの滴下方法としてシリンジではなくエアパルス式ディスペンサーも用いたこと以外は、実施例32と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。ノズルの口径を510μm、ノズルの先端から乳酸カルシウム水溶液の液面までの距離は100mmとした。
【0189】
(実施例45)
スラリーの型への充填法、及びスラリーの滴下方法としてシリンジではなくピエゾ式ディスペンサーを用いたこと以外は、実施例32と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。ノズルの口径は510μm、ノズルの先端から乳酸カルシウム水溶液の液面までの距離は100mmとした。
【0190】
(実施例46~51)
実施例46~51の蓄冷材粒子は、蓄冷材粒子の粒径又はアスペクト比が、実施例44の蓄冷材粒子と異なる。実施例51~56の蓄冷材粒子を製造する際、実施例1の蓄冷材粒子を製造する場合に対し、シリンジの口径及びシリンジの先端からゲル化溶液の表面までの距離を変化させた。
【0191】
(実施例52)
スラリーの型への充填法、及びスラリーの滴下方法としてシリンジではなくコンティニュアス型インクジェットを用いたこと以外は、実施例32と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。ノズルの口径は510μm、ノズルの先端から乳酸カルシウム水溶液の液面までの距離は100mmとした。
【0192】
(実施例53~56)
ポリビニルアルコールの重量を変化した以外は、実施例1と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。また、実施例1と同様にして、造粒粒子の強度を測定した。
【0193】
(実施例57~60)
アルギン酸ナトリウム水溶液の濃度、あるいは原料粉末に対するアルギン酸ナトリウム水溶液の割合を変化することで、原料粉末に対するアルギン酸ナトリウムの量を変化させたこと以外は、実施例32と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。また、実施例1と同様にして、造粒粒子の強度を測定した。
【0194】
(実施例61)
原料粉末にAl粉末も用いた以外は、実施例1と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。Al粉末は蓄冷材粒子に含まれるAlが15原子%となるように加えた。
【0195】
(実施例62)
原料粉末にAl粉末も用いた以外は、実施例4と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。Al粉末は蓄冷材粒子に含まれるAlが15原子%となるように加えた。
【0196】
(実施例63)
乳酸カルシウム水溶液の代わりに塩化アルミニウム水溶液を用いたこと以外は、実施例32と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。蓄冷材粒子中に含まれるAlの量が0.01原子%となるように加えた。
【0197】
(実施例64)
乳酸カルシウム水溶液に加え塩化アルミニウム水溶液を用いたこと以外は、実施例32と同様にして、蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造した。蓄冷材粒子中に含まれるAlの量が0.01原子%となるように加えた。
【0198】
(比較例1)
比較例1の蓄冷材、及び蓄冷材粒子は、ナトリウムの原子濃度が0.0008原子%と少ない点で、実施例1の蓄冷材、及び蓄冷材粒子と異なる。比較例1の蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造する際、実施例1の蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造する場合に対し、NaCO粉末の重量を減らした。
【0199】
(比較例2)
比較例2の蓄冷材、及び蓄冷材粒子は、ナトリウムの原子濃度が15原子%と多い点で、実施例1の蓄冷材、及び蓄冷材粒子と異なる。比較例2の蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造する際、実施例1の蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造する場合に対し、NaCO粉末の重量を増やした。このとき、GdSに加え、NaGdSが顕著に生成していた。
【0200】
(比較例3)
比較例3の蓄冷材、及び蓄冷材粒子は、カルシウムの原子濃度が15原子%と多い点で、実施例4の蓄冷材、及び蓄冷材粒子と異なる。比較例3の蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造する際、実施例4の蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造する場合に対し、CaCO粉末の重量を増やした。
【0201】
(比較例4)
比較例4の蓄冷材、及び蓄冷材粒子は、第一族元素を含まない点で、実施例1の蓄冷材、及び蓄冷材粒子と異なる。比較例4の蓄冷材、及び蓄冷材粒子は、第一族元素を含む粉末を使用せずに製造した。
【0202】
(比較例5)
比較例5の蓄冷材造粒粒子は、炭素が25重量%と多い点で実施例1と異なる。比較例5の造粒粒子は脱脂後の炭素濃度が12重量%だったが、焼結後の粒子に割れ、あるいは欠けが生じ、粒子を回収できなかった。このため、比熱、強度の評価及び冷凍機試験は実施できなかった。比較例5の蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造する際、バインダーに使用するポリビニルアルコールの重量割合を、原料粉末に対し34重量%に増やした。
【0203】
(比較例6)
比較例6の蓄冷材造粒体は、炭素が0.005重量%と少ない点で実施例1と異なる。比較例6では、造粒後に粒子を回収できなかった。このため、比熱、強度の評価及び冷凍機試験は実施できなかった。比較例6の蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造する際、原料粉末に対するポリビニルアルコールの重量割合を0.2重量%とした。
【0204】
(比較例7)
比較例7の脱脂処理後の蓄冷材造粒粒子は、炭素が15重量%と多い点で実施例1と異なる。脱脂前の炭素濃度は19重量%である。比較例7の造粒粒子は焼結し、蓄冷材及び蓄冷材粒子を得た。比較例7の蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造する際、原料粉末に対するポリビニルアルコールを24重量%とし、大気雰囲気下で400℃ 、1時間の脱脂を行った。
【0205】
(比較例8)
比較例8の脱脂後蓄冷材粒子は、炭素が検出限界以下と少ない点で実施例1と異なる。比較例8の造粒粒子は脱脂後に、割れ、あるいは欠けが生じた。脱脂前の炭素濃度は0.01重量%である。比較例8の蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造する際、ポリビニルアルコールを原料粉末に対して、0.2重量%とし、大気雰囲気下で800℃ 、12時間の脱脂を行った。
【0206】
(比較例9)
比較例9の蓄冷材、及び蓄冷材粒子は、蓄冷材粒子中に含まれるAlが25原子%と多い点で実施例61と異なる。比較例9の蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造する際、実施例61の蓄冷材、及び蓄冷材粒子を製造する場合に対し、Al粉末の重量を増やした。
【0207】
各実施例及び比較例に係る蓄冷材について、10K以下における体積比熱の最大値、及び4.2Kにおける熱伝導率を測定した。結果を表1、表2、及び表3に示す。
【0208】
各実施例及び比較例に係る蓄冷材粒子の冷凍能力を表1、表2、及び表3に示す。各実施例及び比較例に係る蓄冷材粒子250gを、図1に示す2段式GM冷凍機の2段目蓄冷器の低温側に充填する一方、高温側にはPb製蓄冷材を250g充填して冷凍機を組み立て、冷凍試験を実施し、4.2Kにおける冷凍能力を測定した。 なお、一段目蓄冷器は温度が50Kになるように熱負荷を加えた。
【0209】
各実施例及び比較例に係る、脱脂前、及び脱脂後の蓄冷材造粒粒子の強度の評価結果を表3に示す。各実施例及び比較例に係る造粒粒子をφ15mm、高さ5mmの円筒容器に充填した。このとき、造粒粒子が円筒容器の中で固定され、自由に動かないように十分な量の蓄冷材を充填した。容器に対して振幅2mm、最大加速度200m/sの単振動を1×10回加えた。その結果、破壊した蓄冷材造粒粒子の割合を評価した。
【0210】
【表1】
【0211】
【表2】
【0212】
【表3】
【0213】
【表4】
【0214】
比較例1、及び比較例4のように、蓄冷材の中の第一族元素の原子濃度が0.001原子%より小さい、ないし蓄冷材が第一族元素を含まないと、熱伝導率が0.005W/cm・K、0.004W/(cm・K)と小さくなることが分かる。これは、蓄冷材の中の第一族元素の割合が低くなることで焼結促進効果が低下し、微細な空隙の量が増加したためと考えられる。
【0215】
比較例2のように、蓄冷材の中の第一族元素の原子濃度が10原子%より大きくなると、体積比熱が0.4J/(cm・K)と低くなることが分かる。これは、蓄冷材の中の第一族元素の割合が高くなることで希土類と第一族元素を含む硫化物が生成されるため、希土類酸硫化物の相対的な量が減少するからだと考えられる。
【0216】
比較例3の結果より、蓄冷材の中の第二族元素の原子濃度が10原子%より大きくなると、熱伝導率が高くなるが、体積比熱が0.4J/(cm・K)と低くなり、この蓄冷材粒子を使用した冷凍能力は著しく低下した。これは、蓄冷材粒子の中の第二族元素の割合が高くなることで希土類元素の割合が相対的に減少するためと考えられる。
【0217】
表1及び表4の結果より、焼結助剤を、焼結助剤に由来する金属あるいは半金属元素が0.01原子%以上となるように加えることで、強度が高くなる。20原子%より大きくなると、強度がさらに高くなるが、体積比熱が0.4J/(cm・K)と低くなり、この蓄冷材粒子を使用した冷凍能力は著しく低下した。これは、蓄冷材粒子の中の焼結助剤の割合が高くなることで希土類元素の割合が相対的に減少するためと考えられる。
【0218】
表1、及び表2から、蓄冷材粒子の粒径が50μm以上3000μm以下の範囲に入ると、4.2Kにおける冷凍能力が顕著に向上することが分かる。
【0219】
表1、及び表2から、蓄冷材粒子のアスペクト比が5以下になると、4.2Kにおける冷凍能力が顕著に向上することが示される。
【0220】
表1、及び表2から、蓄冷材粒子を造粒する方法が異なっていても、合成条件を適切に調整することで、同等の粒径、アスペクト比、第一族及び第二族元素の含有量、熱伝導率を示すことが分かる。
【0221】
表1、及び表2から造粒方法が異なる蓄冷材粒子であっても、粒径、アスペクト比、熱伝導率が同等であれば、その蓄冷材粒子を搭載した冷凍機の性能及び信頼性は同等であることが分かる。
【0222】
表3から、第一族元素を0.001原子%以上10%以下含み、かつ、脱脂前で炭素を0.01重量%以上20重量%以下含有すると造粒粒子の強度が高いことがわかる。炭素濃度が0.01重量%より低いと、造粒粒子が非常にもろいため、粒子として回収することができない。
【0223】
表3から、第一族元素を0.001原子%以上10%以下含み、かつ、脱脂後で炭素が0.001重量%以上10重量%以下だと造粒粒子の強度と焼結性を両立できることがわかる。また、得られた蓄冷材粒子を搭載した冷凍機は高い冷凍性能を発揮する。脱脂後の炭素濃度が10重量%を超える場合、脱脂後でも粒子の強度は保たれているが、成形密度が低く、焼結性が悪いため粒子の密度が低くなり、比熱及び熱伝導率が低くなる。このため、冷凍機に搭載した時の冷凍性能も低くなる。炭素濃度が0.001重量%より低いと、脱脂後の粒子が非常にもろいため、粒子として回収することができない。
【0224】
以上の実施例により、第1の実施形態の蓄冷材、及び第2の実施形態の蓄冷材粒子の奏する効果が確認された。
【0225】
ディスペンサーとしてエアパルス式ディスペンサー、あるいは、ピエゾ式ディスペンサーの場合を例に説明したが、ブランジャー式ディスペンサーを用いても構わない。
【0226】
インクジェットとしてコンティニュアス型インクジェットの場合を例に説明したが、オンデマンド型インクジェットを用いても構わない。
【0227】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0228】
100 蓄冷型極低温冷凍機
114、115 蓄冷器
118、119 蓄冷材
500 クライオポンプ
600 超電導磁石
700 核磁気共鳴イメージング装置
800 核磁気共鳴装置
900 磁界印加式単結晶引上げ装置
1000 ヘリウム再凝縮装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7