(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】食品情報提供システム、装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20240208BHJP
【FI】
G16H50/30
(21)【出願番号】P 2023003449
(22)【出願日】2023-01-13
(62)【分割の表示】P 2020041822の分割
【原出願日】2018-06-05
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】308032699
【氏名又は名称】日清食品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安藤 徳隆
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 孝典
(72)【発明者】
【氏名】仲村 太志
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 徹也
【審査官】森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-202236(JP,A)
【文献】特開2011-204194(JP,A)
【文献】特開2008-257293(JP,A)
【文献】特開2008-191716(JP,A)
【文献】特表2012-502398(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0082144(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0088111(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0035949(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の遺伝子情報と、生体情報と、生活習慣情報との入力を受け付け可能な情報入力部と、
前記情報入力部により受け付けられた利用者の前記遺伝子情報と、生体情報と、生活習慣情報とを取得する情報取得部と、
複数種類の健康リスクそれぞれに応じて、前記情報取得部により取得された前記遺伝子情報、生体情報、生活習慣情報の中から1または複数種類の情報を選択すると共に、選択した情報に基づいて複数種類の健康リスクそれぞれに対するリスク指数を算出するリスク算出部と、
前記リスク算出部より算出された前記複数種類の健康リスクそれぞれに対するリスク指数に基づいて、1または複数の機能素材を選択する素材選択部と、
前記素材選択部により選択された1または複数の機能素材を含む1または複数の食品の食品情報を提供する食品情報提供部と、を含み、
前記リスク算出部は、顕在リスク指数および潜在リスク指数を算出すると共に、前記潜在リスク指数および前記顕在リスク指数に基づいて、前記リスク指数を算出し、
前記素材選択部は、前記複数種類の健康リスクのうち前記リスク指数が第1閾値以上のものを特定健康リスクとして抽出すると共に、前記潜在リスク指数及び前記顕在リスク指数に基づいて、抽出した1または複数の前記特定健康リスクに適した機能素材を選択する、
食品情報提供システム。
【請求項2】
利用者の遺伝子情報と、生体情報と、生活習慣情報とを取得する情報取得部と、
複数種類の健康リスクそれぞれに応じて、前記情報取得部により取得された前記遺伝子情報、生体情報、生活習慣情報の中から1または複数種類の情報を選択すると共に、選択した情報に基づいて複数種類の健康リスクそれぞれに対するリスク指数を算出するリスク算出部と、
前記リスク算出部より算出された前記複数種類の健康リスクそれぞれに対するリスク指数に基づいて、1または複数の機能素材を選択する素材選択部と、
前記素材選択部により選択された1または複数の機能素材を含む1または複数の食品の食品情報を提供する食品情報提供部と、を含み、
前記リスク算出部は、顕在リスク指数および潜在リスク指数を算出すると共に、前記潜在リスク指数および前記顕在リスク指数に基づいて、前記リスク指数を算出し、
前記素材選択部は、前記複数種類の健康リスクのうち前記リスク指数が第1閾値以上のものを特定健康リスクとして抽出すると共に、前記潜在リスク指数及び前記顕在リスク指数に基づいて、抽出した1または複数の前記特定健康リスクに適した機能素材を選択する、
食品情報提供装置。
【請求項3】
前記リスク算出部は、
前記潜在リスク指数の算出においては少なくとも遺伝子情報を使用し、
前記顕在リスク指数の算出においては少なくとも生体情報を使用する、
請求項2に記載の食品情報提供装置。
【請求項4】
前記素材選択部は、下記(1)から(3)のいずれかに沿って機能素材を選択する
(1)前記特定健康リスクへの効果が相対的に高い機能素材を優先して選択
(2)価格面を優先して選択
(3)複数の前記特定健康リスクに効果がある機能素材を優先して選択
請求項2に記載の食品情報提供装置。
【請求項5】
前記リスク算出部は、顕在リスク指数および潜在リスク指数を算出すると共に、前記顕在リスク指数および前記潜在リスク指数の加重平均値を前記リスク指数として算出し、
前記素材選択部は、
前記特定健康リスクに適した機能素材として、
(1)前記リスク指数内における前記顕在リスク指数の割合が前記潜在リスク指数の割合以上の場合、効果の高い機能素材を優先して選択し、
(2)前記リスク指数内における前記顕在リスク指数の割合が前記潜在リスク指数の割合よりも小さい場合、価格の安い機能素材を優先して選択する、
請求項4に記載の食品情報提供装置。
【請求項6】
前記リスク指数が第2閾値以上の場合、所定のメッセージを出力するメッセージ出力部と、を更に含む
請求項4または5に記載の食品情報提供装置。
【請求項7】
前記素材選択部は、
利用者の嗜好性情報に基づいて選択した食品と、該素材選択部が選択した1または複数の機能素材との風味面の相性を判定すると共に、
前記選択した食品と風味面の相性が悪いと判定された機能素材がある場合、該風味面の相性が悪いと判定された機能素材を除外して、再度、1または複数の機能素材を選択する請求項2から6のいずれかに記載の食品情報提供装置。
【請求項8】
前記食品は、食品本体と、添加素材とを有して構成され、
前記素材選択部は、
前記添加素材に含まれる機能素材の増減を提案可能に構成される
請求項2から7のいずれかに記載の食品情報提供装置。
【請求項9】
前記食品情報提供部により提示される1または複数の食品における食品価格を算出する価格算出部を更に有し、
前記価格算出部は、前記利用者からの健康情報の提供頻度と、リスク指数の改善度合いに基づいて割引ポイントを算出し、割引ポイントに応じて前記食品価格を変更可能に構成される、
請求項2から8のいずれかに記載の食品情報提供装置。
【請求項10】
1または複数の機能素材を含む食品を提案する食品情報提供方法であって、
食品情報提供装置により実行される当該食品情報提供方法は、
利用者の遺伝子情報と、生体情報と、生活習慣情報とを取得する取得ステップと、
複数種類の健康リスクそれぞれに応じて、前記取得ステップおいて取得された前記遺伝子情報、生体情報、生活習慣情報の中から1または複数種類の情報を選択すると共に、選択した情報に基づいて複数種類の健康リスクそれぞれに対するリスク指数を算出するリスク算出ステップと、
前記リスク算出ステップにおいて算出された前記複数種類の健康リスクそれぞれに対するリスク指数に基づいて、1または複数の機能素材を選択する機能素材選択ステップと、
前記機能素材選択ステップにより選択された1または複数の機能素材を含む1または複数の食品の食品情報を提供する食品情報提供ステップと、を含み、
前記リスク算出ステップは、顕在リスク指数および潜在リスク指数を算出すると共に、前記潜在リスク指数および前記顕在リスク指数に基づいて、前記リスク指数を算出するステップを含み、
前記機能素材選択ステップは、前記複数種類の健康リスクのうち前記リスク指数が第1閾値以上のものを特定健康リスクとして抽出すると共に、前記潜在リスク指数及び前記顕在リスク指数に基づいて、抽出した1または複数の前記特定健康リスクに適した機能素材を選択するステップを含む、
食品情報提供方法。
【請求項11】
1または複数の機能素材を含む食品を提案する食品情報提供方法を食品情報提供装置に実行させる食品情報提供プログラムであって、
利用者の遺伝子情報と、生体情報と、生活習慣情報とを取得する取得ステップと、
複数種類の健康リスクそれぞれに応じて、前記取得ステップおいて取得された前記遺伝子情報、生体情報、生活習慣情報の中から1または複数種類の情報を選択すると共に、選択した情報に基づいて複数種類の健康リスクそれぞれに対するリスク指数を算出するリスク算出ステップと、
前記リスク算出ステップにおいて算出された前記複数種類の健康リスクそれぞれに対するリスク指数に基づいて、1または複数の機能素材を選択する機能素材選択ステップと、
前記機能素材選択ステップにより選択された1または複数の機能素材を含む1または複数の食品の食品情報を提供する食品情報提供ステップと、を含み、
前記リスク算出ステップは、顕在リスク指数および潜在リスク指数を算出すると共に、前記潜在リスク指数および前記顕在リスク指数に基づいて、前記リスク指数を算出するステップを含み、
前記機能素材選択ステップは、前記複数種類の健康リスクのうち前記リスク指数が第1閾値以上のものを特定健康リスクとして抽出すると共に、前記潜在リスク指数及び前記顕在リスク指数に基づいて、抽出した1または複数の前記特定健康リスクに適した機能素材を選択するステップを含む、
食品情報提供方法を食品情報提供装置に実行させる食品情報提供プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品情報提供システム、装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化に伴う医療費や介護費の増加が問題となっており、健康上の理由で日常生活が制限されることなく過ごせる「健康寿命」を伸ばすことが、医療費抑制や豊かな老後を過ごす上で重要な課題となっている。
【0003】
「健康寿命」を伸ばすには、健康な状態と病気の状態の間にある「未病」の状態を早期に見つけ出して改善する必要があるが、「未病」への対応は個々人の努力に委ねられている。
【0004】
従来、ユーザからのアンケート結果に基づいて複数のユーザをグループに分類し、同一のグループに分類された別のユーザに有効であった機能性素材に関する情報を提示するシステム(特許文献1)、バイオセンサーで測定した血糖値等の方法に基づいて健康状態に適した栄養素を特定して献立を決定するシステム(特許文献2)が知られている。
【0005】
また、個々のユーザの健康リスクをユーザに提示する手法としては、各ユーザの健康情報である、ゲノム情報と生体情報および行動情報を各ユーザから収集し、蓄積した複数のユーザ分の健康情報を解析することで、ゲノム情報から導き出されるゲノムの型、及び、生体情報及び行動情報から導き出されるライフスタイルの型の組み合わせと、将来発症し得る疾病との関連性を導き出す健康情報表示装置(特許文献3)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6245487号公報
【文献】特開2006-323791号公報
【文献】特許第6212784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、利用者には複数の健康リスクが存在することが一般的であり、複数の健康リスクに対応する最適な機能素材を選択し、利用者の嗜好性を尊重しながら機能素材を含む食品又はレシピを提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、遺伝子検査の結果等の遺伝子情報、健康診断の結果等の生体情報、および利用者の生活習慣アンケート結果等の生活習慣情報に基づいて健康リスクを指数化し、リスク指数に応じて1または複数の機能素材を選択し、当該機能素材を含み、かつユーザの嗜好性に合致した食品またはレシピを利用者に提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、利用者は日常的に購入している加工食品等の食品の喫食を通じて、健康リスクの低減に有効な機能素材を気軽にかつ効果的に摂取することが可能となる。なお、機能素材は薬事法上の医薬品を含まないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態における食品情報提供システムの概要を説明する図である。
【
図2】本実施形態における食品情報提供システムの構成を説明するブロック図である。
【
図3】本実施形態における食品情報提供システムにおける処理の概要を説明する図である。
【
図4】情報入力部において入力される各種情報の概要を説明する図であり、(a)遺伝情報入力部により入力される遺伝子情報の概要を示す図であり、(b)生体情報入力部により入力される生体情報の概要を示す図であり、(c)生活習慣情報入力部により入力される生活習慣情報の概要を示す図である。
【
図5】リスク算出部が遺伝子情報、生体情報および生活習慣情報に基づいて、各健康リスクごとの顕在リスク指数および潜在リスク指数を算出する一例を示す図である。
【
図6】リスク算出部が顕在リスク指数および潜在リスク指数に基づいて、各健康リスクごとのリスク指数を算出する処理内容の一例を示す図である。
【
図7】素材選択部が特定健康リスクに適した機能素材を選択するための機能素材DBの一例を示す図である。
【
図8】端末装置における食品情報の表示態様の一例を示す図である。
【
図9】本実施形態の食品情報提供システムにおける処理動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明に係る食品情報提供装置及び提供方法を実施するための実施形態について詳しく説明する。なお、本発明は、以下の実施形態および実施例に限定されるものではない。
【0012】
図1から
図8により、本実施形態における食品情報提供システムの構成について説明する。
図1は、本実施形態における食品情報提供システムの概要を説明する図である。
図2は、本実施形態における食品情報提供システムの構成を説明するブロック図である。
図3は、本実施形態における食品情報提供システムにおける処理の概要を説明する図である。
図4は、情報入力部において入力される各種情報の概要を説明する図であり、(a)遺伝情報入力部により入力される遺伝子情報の概要を示す図であり、(b)生体情報入力部により入力される生体情報の概要を示す図であり、(c)生活習慣情報入部により入力される生活習慣情報の概要を示す図である。
図5は、リスク算出部が遺伝子情報、生体情報および生活習慣情報に基づいて、各健康リスクごとの顕在リスク指数および潜在リスク指数を算出する処理内容の一例を示す図である。
図6は、リスク算出部が顕在リスク指数および潜在リスク指数に基づいて、各健康リスクごとのリスク指数を算出する処理内容の一例を示す図である。
図7は、素材選択部が特定健康リスクに適した機能素材を選択するための機能素材DBの一例を示す図である。
図8は、端末装置における食品情報の表示態様の一例を示す図である。
【0013】
図1に示すように、食品情報提供システム1は、複数の端末装置10と、食品情報提示装置20と、食品製造管理装置30と、食品配送装置40と、を含んで構成される。
複数の端末装置10は、各利用者により使用される端末装置であって、インターネット等の通信網Nを介して食品情報提示装置20と相互に通信可能に接続される。複数の端末装置10は、利用者からの入力情報を食品情報提示装置20に出力可能であると共に、食品情報提示装置20からの後述する食品情報を受け付け可能に構成される。なお、複数の端末装置10は、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ(PC)、ウェアラブル情報端末、インターネットテレビ等の通信可能ないかなる情報端末であってもよい。
【0014】
また、食品情報提示装置20は、複数の端末装置10それぞれから出力される各情報を受け付けると共に、受け付けた各情報に基づいて、後述する健康リスクに対するリスク指数を算出し、算出したリスク指数を参照して健康リスクに効果のある機能素材を選択する。そして、食品情報提示装置20は、選択した機能素材を含む食品やレシピ等の食品情報を端末装置10に出力する。食品情報提示装置20における詳細な構成および処理動作の内容は後述する。
【0015】
また、食品製造管理装置30および食品配送装置40は、通信網Nを介して、食品情報提示装置20に接続される。
食品製造管理装置30は、食品情報提示装置20からの指示に基づいて、所定の機能素材を含む食品の製造を図示しない食品製造部に指示する。
食品配送装置40は、食品情報提示装置20および食品製造管理装置30からの指示に基づいて、所定の機能素材を含む食品の配送を図示しない配送部に指示する。
【0016】
続けて、
図2に示すように、端末装置10は、情報入力部11と、メッセージ表示部12と、食品情報表示部13と、食品選択部14と、を含む。
また、食品情報提示装置20は、処理部100と、記憶部200と、を有する。
また、食品製造管理装置30は、食品製造管理部31を含む。
また、食品配送装置40は、配送指示部41と、配送先DB42と、を含む。
【0017】
ここで、
図3により、食品情報提供システム1の処理動作の概要を説明する。
まず、端末装置10における情報入力部11により入力された遺伝子情報111、生体情報112および生活習慣情報113に基づいて、食品情報提示装置20のリスク算出部120は、糖尿病、脂質異常症、骨粗しょう症等といった各健康リスクごとの潜在リスク指数121および顕在リスク指数122を算出すると共に、健康リスクごとのリスク指数(例えば、加重平均リスク指数123)を算出する。ここで、潜在リスク指数とは将来疾病に罹患する可能性が高いことを示す数値であり、顕在リスク指数とは現実に疾病に罹患する可能性が高いことを示す数値である。続けて、リスク指数が第1閾値以上、かつ、第2閾値未満の場合には、素材選択部130がリスク指数内における潜在リスク指数及び顕在リスク指数の割合に応じて健康リスクへの効果や価格を優先視点とし、1または複数の機能素材を選択する。そして、食品情報提示装置20の食品情報提供部150が選択された1または複数の機能素材を含む1または複数の食品の食品情報(機能素材を含む食品自体の情報やレシピ情報)を端末装置10の食品情報表示部13に出力して表示させる。一方、リスク指数が第2閾値以上である場合、利用者が病気状態であるとし、メッセージ出力部126に対して所定のメッセージ(例えば、通院を推奨するメッセージ)を端末装置10のメッセージ表示部12に出力するよう指示する。他方、リスク指数が第1閾値未満の場合、利用者が健康状態であるとし、素材選択部130に機能素材の選択をしないよう指示する。ここで、本実施形態においては、情報入力部11が端末装置10に配置されているが、これに限定されない。情報入力部11については、後に詳述する。
【0018】
続けて、
図2より、端末装置10の構成について説明する。
図2に示すように、端末装置10は、情報入力部11と、メッセージ表示部12と、食品情報表示部13と、食品選択部14と、を含む。
情報入力部11は、利用者の遺伝子情報と、生体情報と、生活習慣情報との入力を受け付け可能な入力部である。情報入力部11は、例えば、
図4(a)から(c)に示すような情報を、遺伝子情報入力部11aと、生体情報入力部11bと、生活習慣情報入力部11cに入力可能に構成されていてもよい。
【0019】
また、遺伝子情報は、例えば、
図4(a)および
図5に示す情報を例示できる。ここでいう遺伝子情報とは、利用者が遺伝子検査サービスを提供する検査機関から受領した利用者個人の遺伝子検査の結果であり、各健康リスクに関する統計的な平均値から見たリスクの程度を示すリスク値が含まれる。また、生体情報は、例えば、
図4(b)および
図5に示す情報を例示でき、健康診断結果に関する情報が含まれる。また、生活習慣情報は、例えば、
図4(c)および
図5に示す情報を例示でき、例えば生活習慣に関する利用者からのアンケート情報が含まれる。ここで、後述する情報取得部110において取得される各種情報においても同様である。
【0020】
本実施形態においては、情報入力部11は、端末装置10に配置され、利用者の遺伝子情報と、生体情報と、生活習慣情報との入力を受け付け可能に構成されているが、これに限定されず、例えば、遺伝子情報と、生体情報と、生活習慣情報のうち、1または2の情報を入力可能に構成されていてもよい。ここで、上述の通り、情報入力部11は、端末装置10に配置されるほか、利用者の端末装置とは異なる端末装置、例えば、病院や遺伝子検査機関の端末装置に配置されていてもよい。この場合、病院や遺伝子検査機関からは遺伝子情報、生体情報や生活習慣情報の1または複数の情報が、通信網Nを介して、または搬送可能な記憶媒体(例えば、USB等)を介して、後述する情報取得部110に入力される。また、情報入力部11を食品情報提示装置20に配置し、利用者より郵送された遺伝子情報、生体情報や生活習慣情報を記載した書類を読み込み可能に構成してもよい。また、情報入力部11は、複数の各種端末装置により構成されていてもよく、各種情報が同時または個別に入力されるように構成されていてもよい。
【0021】
メッセージ表示部12は、後述する食品情報提示装置20におけるメッセージ出力部126から出力されたメッセージを表示可能に構成される。メッセージ出力部126は、例えば、通院を推奨する内容のメッセージを出力する。そして、メッセージ表示部12は、該通院を推奨する内容のメッセージを表示する。
【0022】
食品情報表示部13は、後述する選択された機能素材を含む1または複数の食品の食品情報を表示可能に構成される。食品情報は、例えば、複数の食品の情報および利用者のリスク指数に基づいて選択された1または複数の機能素材情報を含む該食品自体の情報や、レシピの情報等を示す。食品情報表示部13は、例えば、
図8に示す例のような態様で食品の外観画像、機能素材の種類や配合量の情報、価格情報、リスク指数の推移、割引ポイント、後述する食品選択部14の一部を構成する選択アイコン等を表示するように構成される。
【0023】
食品選択部14は、食品情報表示部13に表示された食品情報、例えば、機能素材を含む食品の種類(料理名、商品名等)を利用者が参照し、食品選択の入力を受け付け可能に構成される。食品選択部14は、受け付けた食品選択の指示を後述する食品情報提示装置20の食品選択受付部160に出力する。食品選択部14は、例えば、
図8に示す例における選択アイコン「カートに入れる」を指定することで所望の食品を選択可能に構成される。
【0024】
図2により、食品情報提示装置20の構成について説明する。
図2に示すように、食品情報提示装置20は、処理部100と、記憶部200と、を有する。処理部100は、情報取得部110と、リスク算出部120と、リスク指数判定部125と、メッセージ出力部126と、素材選択部130と、価格算出部140と、食品情報提供部150と、食品選択受付部160と、を含む。
【0025】
情報取得部110は、情報入力部11により受け付けられた利用者の遺伝子情報と、生体情報と、生活習慣情報と、を取得可能に構成される。また、情報取得部110は、端末装置10からの情報のほか、利用者の健康診断情報や遺伝子検査情報を医療機関等から(ユーザIDとともに)取得可能に構成される。ここで、利用者の情報には、遺伝子検査結果情報(遺伝子情報)、健康診断結果情報(生体情報)や生活習慣アンケート結果情報(生活習慣情報)が含まれるが、これらに限定されるものではない。また、情報取得部110は、取得した各種情報を後述するユーザ情報DB210に記憶させる。
【0026】
リスク算出部120は、情報取得部110により取得された遺伝子情報と、生体情報と、生活習慣情報とから複数種類の健康リスクそれぞれに応じた1または複数種類の情報を選択すると共に、選択した情報に基づいて複数種類の健康リスクそれぞれに対する潜在リスク指数及び顕在リスク指数を算出する。リスク算出部120は、例えば、情報取得部110により取得され、ユーザ情報DB210に記憶されている利用者の遺伝子情報と、生体情報と、生活習慣情報とを利用する。
【0027】
リスク算出部120は、顕在リスク指数および潜在リスク指数を算出すると共に、潜在リスク指数および顕在リスク指数に基づいて、リスク指数を算出する
【0028】
リスク算出部120は、まず、顕在リスク指数と、潜在リスクとを算出する。
リスク算出部120は、潜在リスク指数算出においては遺伝子情報を使用する。リスク算出部120は、例えば、遺伝子情報および生体情報を使用して潜在リスク指数を算出する。リスク算出部120は、その場合、複数種類の遺伝子情報から各健康リスクの潜在リスク評価に適した1または複数種類を選択すると共に、複数種類の生体情報から各健康リスクの潜在リスク評価に適した1または複数種類を選択して、潜在リスク指数を算出する。また、リスク算出部120は、遺伝子情報および生体情報に加え、生活習慣情報を使用して潜在リスク指数を算出する。リスク算出部120は、その場合、上述の選択された情報に加え、複数種類の生活習慣情報から各健康リスクの潜在リスク評価に適した1または複数種類を選択して使用し、潜在リスク指数を算出する。
【0029】
また、リスク算出部120は、顕在リスク指数の算出においては生体情報を使用し、遺伝子情報は使用しない。リスク算出部120は、複数種類の生体情報から各健康リスクの顕在リスク評価に適した1または複数種類の生体情報を選択して、顕在リスク指数を算出する。
【0030】
リスク算出部120は、例えば、潜在リスク指数および顕在リスク指数に基づいて、リスク指数を算出する。リスク算出部120は、例えば、潜在リスク指数および顕在リスク指数を、加算、重みづけ係数を用いた算出式、平均、加重平均等して得られた値をリスク指数として算出できる。リスク算出部120は、リスク指数を潜在リスク指数と顕在リスク指数を加重平均して算出する場合、例えば、リスク指数=潜在リスク指数×W+顕在リスク指数×(1-W) W:重み付け係数(1未満)により算出できる。
【0031】
図5により、リスク算出部120の具体的な処理内容について更に説明する。
図5に示すように、後述する健康リスクDB220には、糖尿病、脂質異常症、および骨粗しょう症等の健康リスクの判定に有効な判定項目(各健康リスクの評価に適した情報)と、各判定項目の重みづけ係数等が互いに関連付けて記憶されている。
図5に示すように、各健康リスクのリスク判定に有効な判定項目(各健康リスクの評価に適した情報)は健康リスクの種類によって異なっている。
【0032】
リスク算出部120は、後述する健康リスクDB220を参照して各利用者の健康リスクごとの潜在リスク指数および顕在リスク指数を算出する。例えば、糖尿病の潜在リスク指数は、(1)遺伝子検査の糖尿病リスク値、(2)生体情報である血圧、BMI(Body Mass Index)を基準値により正規化したリスク値、および(3)生活習慣情報である、食習慣(1週間における推定カロリー摂取量)、喫煙習慣、飲酒習慣、糖尿病の家族歴をそれぞれの基準値により正規化したリスク値を加重平均することで得られ、顕在リスク指数は、生体情報である血糖値及びヘモグロビンA1c(HbA1c)をそれぞれの基準値により正規化したリスク値を加重平均することで得られる。
【0033】
例えば、脂質異常症の潜在リスク指数は、(1)遺伝子検査の脂質異常症リスク値、(2)生体情報であるBMIを基準値により正規化したリスク値、および(3)生活習慣情報である、食習慣(1週間における推定カロリー摂取量)および運動習慣をそれぞれの基準値により正規化したリスク値を加重平均することで得られ、脂質異常症の顕在リスク指数は、生体情報であるLDLコレステロール、HDLコレステロール、および中性脂肪をそれぞれの基準値により正規化したリスク値を加重平均することで得られる。
【0034】
例えば、骨粗しょう症の潜在リスク指数は、(1)遺伝子検査の骨粗しょう症リスク値、(2)生体情報である骨形成マーカーおよび骨吸収マーカーを基準値により正規化したリスク値、および(3)生活習慣情報である、食習慣(1週間における推定摂取カルシウム量)、喫煙習慣、飲酒習慣、運動習慣、日光を浴びる時間をそれぞれの基準値により正規化したリスク値を加重平均することで得られ、骨粗しょう症の顕在リスク指数は、生体情報である骨密度を基準値により正規化したリスク値となる。なお、食習慣(推定カロリー摂取量及び推定摂取カルシウム量)は、利用者から提供される1週間分の食事の写真や購入履歴、アンケートから推定すればよい。また、HDLコレステロール、骨形成マーカー、摂取カルシウム量、運動習慣の運動頻度、日光を浴びる時間、および骨密度は、その絶対値が小さいほどリスク値は高くなる。
【0035】
なお、各健康リスクの潜在リスク指数、顕在リスク指数の判定項目は上記に限定されるものではないが、健康リスクのリスク判定には潜在リスク指数、顕在リスク指数のそれぞれについて少なくとも1つの判定項目を要する。顕在リスク指数の算出基準となる生体情報の判定項目は、日本人間ドック学会、日本骨粗鬆症学会、日本動脈硬化学会、日本糖尿病学会等のガイドラインに列挙されている疾病の判定項目とすることが好ましい。一方、潜在リスク指数の判定項目は、遺伝子情報を含み、また、生体情報および生活習慣情報のうち、潜在的な健康リスクを示す情報を含み得る。
【0036】
リスク指数判定部125は、リスク算出部120により算出されたリスク指数が所定の第1閾値以上であるか否かを判定可能に構成される。また、リスク指数判定部125は、リスク算出部120により算出されたリスク指数が所定の第2閾値未満であるか否かを判定可能に構成される。また、リスク指数判定部125は、リスク算出部120により算出されたリスク指数が所定の第1閾値以上、かつ、第2閾値未満であるか否かを判定可能に構成される。
【0037】
リスク指数判定部125は、リスク指数に基づいて、利用者が健康状態であるか、病気状態であるか、未病状態であるか、を判定する。
第1閾値は、健康状態と未病状態の閾値として設定された値である。第2閾値は、未病状態と病気状態との閾値として設定された値である。
【0038】
本実施形態において、リスク指数判定部125は、リスク指数が第1閾値未満の場合、利用者が健康状態であるとし、後述する素材選択部130に機能素材の選択をしないよう指示する。具体的には、リスク指数判定部125は、複数の健康リスクに対するリスク指数の全部が第1閾値未満の場合、素材選択部130に機能素材の選択をしないように指示し、複数の健康リスクに対するリスク指数のうち一部のみが第1閾値未満の場合(言い換えるとリスク指数が第1閾値以上である他の健康リスクがある場合)、素材選択部130に他の健康リスクに効果のある機能素材を選択するよう指示するよう構成される。
【0039】
また、本実施形態において、リスク指数判定部125は、リスク指数が第2閾値以上である場合、利用者が病気状態であるとし、後述するメッセージ出力部126に対して所定のメッセージ(例えば、通院を推奨するメッセージ)を端末装置10のメッセージ表示部12に出力するよう指示するよう構成される。具体的には、リスク指数判定部125は、複数の健康リスクに対するリスク指数の全部または一部が第2閾値以上の場合、後述するメッセージ出力部126に対して所定のメッセージ(例えば、通院を推奨するメッセージ)を端末装置10に出力するよう指示するよう構成される。
【0040】
また、本実施形態において、リスク指数判定部125は、リスク指数が第1閾値以上
かつ、第2閾値未満である場合、利用者が未病状態であるとし、後述する素材選択部130に機能素材の選択を指示するよう構成される。具体的には、リスク指数判定部125は、複数の健康リスクに対するリスク指数の全部または一部が第1閾値以上、かつ、第2閾値未満である場合、素材選択部130に機能素材の選択をするよう指示する。
【0041】
具体的には、
図6に示す例において、リスク指数における第1閾値を2.0に設定した場合、リスク指数判定部125は、素材選択部130に対して、糖尿病および脂質異常症について、後述する機能素材DB230を参照して糖尿病および脂質異常症に対応する機能素材を選択するよう指示する。
【0042】
メッセージ出力部126は、リスク算出部120により算出されたリスク指数が第2閾値以上の場合、所定のメッセージ(例えば、通院を推奨するメッセージ)を出力する。具体的には、メッセージ出力部126は、リスク指数判定部125によりリスク指数が第2閾値以上であると判定された場合、リスク指数判定部125から出力される指示に基づいて、メッセージ表示部12に所定のメッセージ(例えば、通院を推奨するメッセージ)を出力する。
【0043】
素材選択部130は、リスク算出部120より算出された複数種類の健康リスクそれぞれに対するリスク指数に基づいて、1または複数の機能素材を選択する。
素材選択部130は、リスク算出部120により算出されたリスク指数に基づいて、複数の健康リスクから1または複数の特定健康リスクとして抽出すると共に、抽出した1または複数の特定健康リスクに適した機能素材を選択する。
具体的には、上述の通り、
図6に示す例において、リスク指数における第1閾値を2.0に設定した場合、素材選択部130は、糖尿病および脂質異常症を特定健康リスクとして抽出し、それらについて、後述する機能素材DB230を参照して糖尿病および脂質異常症に対応する機能素材を選択するよう指示する。
【0044】
素材選択部130は、下記(1)から(3)のいずれかに沿って機能素材を選択する。
(1)特定健康リスクへの効果が相対的に高い機能素材を優先して選択
(2)価格面を優先して選択
(3)複数の特定健康リスクに効果がある機能素材を優先して選択
また、素材選択部130は、端末装置10に含まれる図示しない優先指標設定部により利用者が設定した優先指標に基づいて、機能素材を選択するよう構成されてもよい。
【0045】
素材選択部130は、上述の通り、リスク算出部120により算出されたリスク指数が第1閾値以上の場合、機能素材を選択する。本実施形態において、素材選択部130は、特定の健康リスクのリスク指数が第1閾値以上、かつ、第2閾値未満である場合、該健康リスクに対応する1または複数の機能素材を上記リスク指数内における潜在リスク指数及び顕在リスク指数の割合に応じて選択する。
【0046】
具体例として、素材選択部130は、リスク算出部120が顕在リスク指数および潜在リスク指数を算出すると共に、例えば、「リスク指数=潜在リスク指数×W+顕在リスク指数×(1-W) W:重み付け係数(1未満)」の加重平均の式に基づいてリスク指数を算出した場合、特定の健康リスクにおけるリスク指数が第1閾値以上であり、かつ、(1)「顕在リスク指数×(1-W)」が「潜在リスク指数×W」以上の場合、すなわちリスク指数内における顕在リスク指数の割合が潜在リスク指数の割合以上の場合、未病状態の中でも病気状態に近いため、効果の高い機能素材を優先して選択し、(2)顕在リスク指数×(1-W)が潜在リスク指数×Wよりも小さい場合、すなわちリスク指数内における顕在リスク指数の割合が潜在リスク指数の割合よりも小さい場合、時間的に余裕があるため、価格の安い機能素材を優先して選択し、長期的な摂取を促すよう構成してもよい。なお、重み付け係数Wは、潜在リスク指数及び顕在リスク指数の算出の基礎となっている、各健康リスクの遺伝子情報、生体情報及び生活習慣情報の信頼度等により決定してもよく、また、任意に決定してもよい。
【0047】
また、素材選択部130は、ユーザ情報DB210記憶される利用者の嗜好性情報に基づいて利用者に提示する食品と、該素材選択部130が選択した1または複数の機能素材との風味面の相性を判定すると共に、提示する食品と風味面の相性が悪いと判定された機能素材がある場合、該風味面の相性が悪いと判定された機能素材を除外して、再度、1または複数の機能素材を選択する。ここで、風味は、味、香り等を含む概念であり、食品との相性判断において、味のみ、香りのみ、風味全体のいずれを指標として相性判断してもよい。利用者の嗜好性情報は、具体的には食品の味の好みに関する情報であり、例えば、「醤油味」、「とんこつ味」が好きであり、「スパイシー」な味が苦手、といった情報を含み、ユーザ情報DB210記憶される利用者の購入履歴情報、生活習慣情報に含まれるアンケートの結果、利用者の1週間の食事の画像情報に基づいて推定される。
【0048】
素材選択部130は、利用者の嗜好性情報に基づいて利用者に提示する食品の食品情報に含まれる風味情報と、後述する機能素材DBに含まれる各機能素材と食品の風味に関する情報(特定風味との相性情報、特定分野の食品との相性情報、特定調味料との相性情報等)とに基づいて、提示する食品と機能素材との風味面の相性を評価する。そして、素材選択部130は、提示する食品と風味面の相性が悪いと判定された機能素材がある場合、該風味面の相性が悪いと判定された機能素材を除外して、再度、1または複数の機能素材を選択する。再選択は、相性が悪いと判定された機能素材を除外して、全部の機能素材を再度選択するようにしてもよく、除外した機能素材の代替素材のみを選択(差し替え)するようにしてもよい。
【0049】
図7により、素材選択部130の具体的な処理内容について更に説明する。
図7に示す機能素材DB230に格納される機能素材一覧の例において、◎は顕在化している健康リスクの低減に有効な素材であり、〇は潜在的な健康リスクを低減可能な素材を示す。
図7に示す機能素材一覧の例について更に説明すると、糖尿病の健康リスクに対応する機能素材として、例えば難消化性デキストリン、サラシノール、グアーガム分解物、(バナバ葉由来)コロソリン酸が登録されており、その内、コロソリン酸は他の素材と比べて、糖尿病の顕在化している健康リスクに効果が見込めるため◎が付与されている。また、脂質異常症に対応する素材として、例えば難消化性デキストリン、EPA・DHA、モノグルコシルヘスペリジンが登録されており、EPA・DHAおよびモノグルコシルヘスペリジンは、難消化性デキストリンと比べて、脂質異常症の顕在化している健康リスクに効果が見込めるため◎が付与されている。また、骨粗しょう症の健康リスクに対応する素材として、例えばβ-クリプトキサンチン、大豆イソフラボンが登録されており、その内、大豆イソフラボンはβ-クリプトキサンチンと比べて骨粗しょう症の顕在化している健康リスクに対して効果が見込めるため◎が付与されている。
また、難消化性デキストリンは、糖尿病と脂質異常症の潜在リスク低減に有効であることが示されており、素材選択部130は、特定された複数の健康リスクすべてをカバーする素材を優先して選択することも可能である。
【0050】
図5及び
図6に示す利用者の例では、第1閾値を2.0に設定した場合、リスク指数が第1閾値以上となるのは糖尿病および脂質異常症の健康リスクであるため、糖尿病および脂質異常症の健康リスクに対応する機能素材を選択する。また、いずれの健康リスクについても、潜在リスク指数の割合が顕在リスク指数の割合よりも高いため(ケース1)、効果よりも価格を重視して機能素材を選択する。
【0051】
はじめに、糖尿病の健康リスク改善に有効な機能素材の中で最も割安なのはコロソリン酸(価格「3」)であり、脂質異常症の健康リスク改善に有効な機能素材の中で最も割安なのは難消化性デキストリン(価格「4」)であるため、コロソリン酸及び難消化性デキストリンの組み合わせが第一候補として選択される。この場合、第一候補の機能素材の価格は、コロソリン酸及び難消化性デキストリンの価格合計である「7」となる。
つぎに、糖尿病および脂質異常症の健康リスクの両者をカバーする機能素材を探索し、難消化性デキストリンが第二候補として選択される。この場合、1つの機能素材で糖尿病および脂質異常症の健康リスクに対処できるため、第二候補の機能素材の価格は「4」となる。
最後に、第一候補と第二候補の機能素材の価格を比較し、価格が割安な第二候補の機能素材、すなわち難消化性デキストリンが選択される。
【0052】
なお、糖尿病について潜在リスクが優位であり、脂質異常症について顕在リスクが優位である場合(ケース2)、糖尿病については価格を重視して最も割安なコロソリン酸(価格「3」)を選択し、脂質異常症については効果を重視してEPA・DHAおよびモノグルコシルヘスペリジンのいずれかを選択するが、ここでは効果が同等であるため、より割安なモノグルコシルヘスペリジン(価格「12」)を選択する。この場合、機能素材の価格合計は「15」となる。
【0053】
糖尿病について顕在リスクが優位であり、脂質異常症について潜在リスクが優位である場合(ケース3)、糖尿病の顕在リスク改善に有効である◎が付与されたコロソリン酸(価格「3」)が選択され、脂質異常症については価格が最も割安な難消化性デキストリン(価格「4」)が選択される。この場合、機能素材の価格は、コロソリン酸及び難消化性デキストリンの価格合計である「7」となる。
【0054】
また、糖尿病および脂質異常症のいずれについても顕在リスクが潜在リスクよりも優位である場合(ケース4)、糖尿病の顕在リスク改善に有効である◎が付与されたコロソリン酸(価格「3」)が選択され、脂質異常症については効果を重視してEPA・DHAおよびモノグルコシルヘスペリジンのいずれかを選択するが、ここでは効果が同等であるため、より割安なモノグルコシルヘスペリジン(価格「12」)を選択する。この場合、機能素材の価格合計は「15」となる。
図7に開示されているコロソリン酸は、糖尿病の顕在リスク改善に効果があり、かつ他の素材(難消化性デキストリン、サラシノール、およびグアーガム分解物)よりも割安であるため、上記ケース4の機能素材選択は上記ケース2と同じとなる。
【0055】
また、素材選択部130は、上述の通り、利用者の嗜好性情報や購入履歴の情報等に基づいて利用者に提示する食品の風味(例えば、味)と機能素材の風味(例えば、味)との相性が悪い場合には、相性の悪い機能素材を除外して、再度、機能素材を選択することができる。
【0056】
ここで、本実施形態における食品は、例えば、食品本体と、添加素材とを有して構成される。食品として、例えば、容器入り即席麺を例示できる。ここで、機能素材は、専用の袋等に封入されて提供されてもよいが、これに限定されず、例えば、食品本体(例えば、即席麺部)に直接添加されてもよく、別添の袋に封入される添加素材に配合されてもよく、更には別添の袋に封入されるスープ用素材に配合されもよい。また、この場合、素材選択部130は、添加素材に含まれる機能素材の増減を提案可能に構成される。例えば、素材選択部130は、添加素材に含まれる特定の機能素材の含量を減少させることが可能に構成される。例えば、食品が容器入り即席麺の場合、食品は、食品本体である麺部と、別添の袋等に封入された添加素材とを有する。素材選択部130は、添加素材に含まれる機能素材を増減させ袋等に封入するよう指示可能に構成される。また、例えば、添加素材が麺部と別添ではなく、麺部に添加された状態でカップに封入される態様の場合、製造段階で所定の機能素材が増減された添加素材が麺部に添加される。また、添加素材が別添の袋ではなく、スープ用素材に含まれる態様の場合、製造段階で所定の機能素材が増減された添加素材がスープ用素材に配合される。
【0057】
価格算出部140は、1または複数の食品における食品価格を算出可能に構成される。価格算出部140は、利用者からの健康情報(生体情報または生活習慣情報)の提供頻度、およびリスク指数の改善度合いに基づいて割引ポイントを計算可能に構成される。価格算出部140は、生体情報(例えば、健康診断結果)や生活習慣情報(例えば、アンケートの回答)を多く提出しており、また、リスク指数が減少している場合、割引ポイントが加算されるため、機能素材を含む食品を安く購入できるように構成される。割引ポイントは、利用者の端末装置10の食品情報表示部13の購入画面に表示され、利用者は割引ポイントを購入の都度利用することができる。また、割引ポイントの値に応じて、自動的に食品価格を変動可能としてもよい。
【0058】
食品情報提供部150は、素材選択部130により選択された1または複数の機能素材を含む1または複数の食品の食品情報、および価格算出部140が出力する1または複数の食品価格情報を提供する。食品情報提供部150は、選択された1または機能素材の情報と、1または複数の食品に関する情報と、1または複数の食品の価格情報とを含む食品情報を端末装置10の食品情報表示部13に出力可能に構成される。食品情報提供部150は、後述するユーザ情報DB210に記憶される利用者の嗜好性情報等に基づいて、後述する食品DB240に記憶される食品のうち、1又は複数の食品を選択する。そして、食品情報提供部150は、機能素材を含む食品の食品情報及び食品価格情報を端末装置10の食品情報表示部13に出力する。ここで、食品情報は、機能素材および食品に関する情報だけでなく、レシピ情報等を含むことができる。
【0059】
食品情報提供部150は、1または複数の機能素材を含む1または複数の食品の食品情報及びその価格情報を食品情報表示部13に出力して、該食品情報表示部13に複数の食品に関する情報および機能素材の情報等を表示させる。
例えば、
図8に示すように、食品情報提供部150は食品情報表示部13に、利用者の嗜好性情報等に基づいて、機能素材入りの食品F1からF5の外観画像を表示させると共に、利用者が選択した食品(例えばF1)の価格情報、機能素材の種類及び配合量の情報を表示させる。ここで、マウス等で食品の画像を指定することで、指定された食品の機能素材の種類と配合量をポップアップ表示させるようにしてもよい。
【0060】
また、食品情報提供部150は、ユーザ情報DBを参照して、リスク指数及びその推移グラフの情報を端末装置10の食品情報表示部13に表示させてもよい。
【0061】
また、食品情報提供部150は、通常の食品を複数表示させる情報を出力して端末装置10の食品情報表示部13に複数の食品を表示させると共に、素材選択部130が選択した1または複数の機能素材を表示し、利用者が食品選択部14を介して通常の食品と機能素材の組み合わせを選択可能に構成してもよい。
【0062】
食品選択受付部160は、利用者からの食品選択の指示を受け付ける。具体的には、食品選択受付部160は、端末装置10における食品選択部14から選択情報を受け付ける。
【0063】
続けて、記憶部200は、ユーザ情報DB210と、健康リスクDB220と、機能素材DB230と、食品DB240と、を含む。
【0064】
ユーザ情報DB210は、各利用者ごとに、ユーザID、住所等の個人情報、過去に受け付けた遺伝子情報(例えば、遺伝子検査結果)、生体情報(例えば、健康診断結果)、生活習慣情報(例えば、ユーザの生活習慣アンケートの結果)、利用者の嗜好性情報等を蓄積する。また、ユーザ情報DB210は、リスク算出部120により算出されたリスク指標の情報を日時情報等と共に蓄積する。
【0065】
健康リスクDB220は、例えば、
図5に示すように、糖尿病、脂質異常症、骨粗しょう症等の健康リスク情報と、各健康リスクのリスク指数算出に有効な判定項目(各健康リスクの評価に適した情報)と、各判定項目の重みづけ係数等が互いに関連付けて記憶されている。
図5に示すように、各健康リスクのリスク判定に有効な判定項目(各健康リスクの評価に適した情報)は健康リスクの種類によって異なっている。
【0066】
機能素材DB230は、複数の機能素材の価格等の情報と、健康リスクへの効果度合いの情報とを関連付けて記憶する。機能素材DB230は、各機能素材と食品との相性の情報を更に含んで構成される。機能素材DB230は、風味相性として、例えば、特定風味との相性情報、特定分野の食品との相性情報、特定調味料との相性情報等を含む。
【0067】
食品DB240は、複数の食品における情報を記憶する。食品DB240は、各食品の情報として、例えば、画像、組成、エネルギー、アレルギー、風味(味、香り)の情報等を含む。
【0068】
続けて、
図2により、食品配送装置40の構成について説明する。
図2に示すように、食品配送装置40は、配送指示部41と、配送先DB42と、を含む。
配送指示部41は、上述の食品選択受付部160から、機能素材を含む食品の食品情報を受け付けると共に、少なくとも利用者を特定するユーザID情報を含む情報を受け付ける。そして、配送指示部41は、例えば、ユーザIDに対応する配送先情報を配送先DB42から取得する。続けて、配送指示部41は、図示しない配送部に食品情報および配送先情報を出力すると共に、配送指示を出力する。なお、利用者が食品を購入した後に製造を行う場合には、配送指示部41は、食品製造管理装置30の食品製造管理部31から機能素材を含む食品の製造が完了したことを示す製造完了情報を受け付ける。
【0069】
続けて、
図2により、食品製造管理装置30の構成について説明する。
図2に示すように、食品製造管理装置30は、食品製造管理部31を含む。
食品製造管理部31は、利用者が食品を購入した後に製造を行う場合には、上述の食品選択受付部160から、利用者により選択された機能素材を含む食品の食品情報(レシピ情報含む)を受け付けると共に、図示しない食品製造部に食品情報を出力して、該食品の製造を指示する。食品製造管理部31は、機能素材を含む食品の製造が完了した場合、製造完了情報を後述の配送指示部41に出力する。
【0070】
配送先DB42は、ユーザID情報と、配送先情報(住所、勤務先情報等)とを関連付けて記憶する。
【0071】
ここで、本発明は、上述の食品情報提供システムおよび食品情報提供装置だけでなく、以下の食品情報提供方法および食品情報提供プログラムを含む。以下、食品情報提供方法および食品情報提供プログラムの一例を示す。
食品情報提供方法の一例は、例えば、食品情報提供装置が1または複数の機能素材を含む食品を提案する食品情報提供方法であって、利用者の遺伝子情報と、生体情報と、生活習慣情報とを取得する取得ステップと、前記取得ステップおいて取得された前記遺伝子情報と、生体情報と、生活習慣情報と、から複数種類の健康リスクそれぞれに応じた1または複数種類の情報を選択すると共に、選択した情報に基づいて複数種類の健康リスクそれぞれに対するリスク指数を算出するリスク算出ステップと、前記リスク算出ステップにおいて算出された前記複数種類の健康リスクそれぞれに対するリスク指数に基づいて、1または複数の機能素材を選択する機能素材選択ステップと、前記機能素材選択ステップにより選択された1または複数の機能素材を含む1または複数の食品の食品情報を提供する食品情報提供ステップと、を含む食品情報提供方法である。
【0072】
食品情報提供プログラムの一例として、例えば、1または複数の機能素材を含む食品を提案する食品情報提供方法を食品情報提供装置に実行させる食品情報提供プログラムであって、利用者の遺伝子情報と、生体情報と、生活習慣情報とを取得する取得ステップと、前記取得ステップおいて取得された前記遺伝子情報と、生体情報と、生活習慣情報と、から複数種類の健康リスクそれぞれに応じた1または複数種類の情報を選択すると共に、選択した情報に基づいて複数種類の健康リスクそれぞれに対するリスク指数を算出するリスク算出ステップと、前記リスク算出ステップにおいて算出された前記複数種類の健康リスクそれぞれに対するリスク指数に基づいて、1または複数の機能素材を選択する機能素材選択ステップと、前記機能素材選択ステップにより選択された1または複数の機能素材を含む1または複数の食品の食品情報を提供する食品情報提供ステップと、を含む食品情報提供方法を食品情報提供装置に実行させる食品情報提供プログラムである。
【0073】
続けて、
図9により、食品情報提供システム1における処理動作について説明する。
図9は、本実施形態の食品情報提供システムにおける処理動作を示すフロー図である。
まず、ステップST101において、情報取得部110は、利用者の遺伝子情報、生体情報および生活習慣情報を取得すると共に、該取得した情報を利用者のユーザIDと関連付けてユーザ情報DB210に記憶させる。
【0074】
続けて、ステップST102において、リスク算出部120は、ユーザ情報DB210に記憶される利用者の遺伝子情報、生体情報および生活習慣情報に基づいて、リスク指数を算出する。リスク算出部120は、リスク指数を利用者のユーザIDに関連付ける共に、日時情報と関連付けて記憶させる。
【0075】
続けて、ステップST103において、リスク指数判定部125は、算出されたリスク指数と、第1閾値および第2閾値とを比較する。そして、リスク指数判定部125は、算出されたリスク指数が第2閾値以上の場合、メッセージ出力部126に対し、通院の推奨等のメッセージ情報を出力させる。これにより、端末装置10のメッセージ表示部12には、通院の推奨等のメッセージが利用者に視認可能に表示される。利用者が病気状態と判定される場合には、利用者に通院の推奨等のメッセージを視認させる。
【0076】
また、リスク指数判定部125は、算出されたリスク指数が第1閾値未満の場合、素材選択部130に機能素材を選択しないよう指示する。これにより、処理は、ステップST106に進む。利用者が健康状態と判定される場合には、機能素材の選択を実施させない。
【0077】
また、リスク指数判定部125は、算出されたリスク指数が第1閾値以上、かつ、第2閾値未満の場合、素材選択部130に機能素材を実施するよう指示する。利用者がいわゆる未病状態と判定される場合には、機能素材の選択を実施させる。
【0078】
続けて、ステップST105において、素材選択部130は、例えば、リスク指数の高い健康リスクに効果のある機能素材を複数選択する。ここで、素材選択部130は、健康リスクに対する効果の高さ、価格、複数の健康リスクに効果がある等を優先指標として機能素材を選択する。また、素材選択部130は、素材選択部130が選択した機能素材が、利用者の嗜好性情報に基づいて利用者に提示する食品との風味面の相性が悪い場合には、再度、1または複数の機能素材を選択する。ここで、風味は、味、香り等を含む概念であり、食品との相性判断において、味のみ、香りのみ、風味全体のいずれを指標として相性判断してもよい。
【0079】
続けて、価格算出部140は、利用者からの健康情報(生体情報または生活習慣情報)の提供頻度、およびリスク指数の改善度合いに基づいて割引ポイントを算出し、割引ポイントの値を食品情報提供部150へ出力する。例えば、利用者が自らの健康情報を食品情報提示装置20に提供すると割引ポイントが1加算され、リスク指数が低下すれば、改善の度合いに応じてさらに割引ポイントに加算される。割引ポイントは、利用者の求めに応じて食品価格を低減するために消費可能としてもよく、また、割引ポイントの値に応じて、自動的に食品価格を変動可能としてもよい。
【0080】
続けて、ステップST107において、食品情報提供部150は、上記選択された機能素材を含む複数の食品の食品情報を端末装置10の食品情報表示部13に出力する。これにより、利用者は、端末装置10により、機能素材を含む複数の食品情報(例えば、食品の画像情報、機能素材情報、価格情報、割引ポイント等)を視認可能となる。
【0081】
続けて、ステップST108において、端末装置10の食品選択部14は、利用者からの食品選択を受け付けると共に、食品情報提示装置20の食品選択受付部160に対して利用者が選択した食品を特定する情報を含む選択情報を出力する。そして、食品選択受付部160は、選択情報を受け付けると共に、食品配送装置40の配送指示部41に対して、選択情報で特定される食品の食品情報と、利用者を特定するユーザID情報とを出力する。なお、利用者の食品選択後に食品の製造を行う場合、食品製造管理装置30の食品製造管理部31に対しても利用者が選択した機能素材を含む食品を特定する情報を含む選択情報を出力する。
【0082】
続けて、ステップST109において、食品配送装置40の配送指示部41は、食品選択受付部160からの食品情報およびユーザID情報を受け付けた場合、食品情報および配送先DBに記憶されるユーザ配送先情報を図示しない配送部に出力して、配送を指示する。そして、食品情報提供システム1における処理動作は終了する。
【0083】
本実施形態における食品情報提供システム1によれば、以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、利用者は日常的に購入している加工食品等の食品の喫食を通じて、健康リスクの低減に有効な機能素材を気軽にかつ効果的に摂取することが可能となる。
【0084】
また、本実施形態によれば、利用者は意識することなく、潜在的な健康リスク及び顕在化している健康リスクに応じて、有効な機能素材を含む食品を摂取することが可能となる。
【0085】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形、改良等は本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 食品情報提供システム
10 端末装置
11 情報入力部
12 メッセージ表示部
13 食品情報表示部
14 食品選択部
20 食品情報提示装置
30 食品製造管理装置
31 食品製造管理部
40 食品配送装置
41 配送指示部
42 配送先DB
100 処理部
110 情報取得部
120 リスク算出部
125 リスク指数判定部
126 メッセージ出力部
130 素材選択部
140 価格算出部
150 食品情報提供部
160 食品選択受付部
200 記憶部
210 ユーザ情報DB
220 健康リスクDB
230 機能素材DB
240 食品DB