(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】乾燥試薬の溶解方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20240209BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
G01N35/02 D
(21)【出願番号】P 2020019693
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青柳 雄大
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-026728(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025705(WO,A1)
【文献】特開2019-193670(JP,A)
【文献】特表2009-527734(JP,A)
【文献】特開2019-215376(JP,A)
【文献】特開2013-110999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
G01N 35/00-35/10
G01N 33/48-33/98
C12Q 1/00ー1/70
C12M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に配置された乾燥試薬に溶媒を加える工程と、
蛍光検出器の励起光が
前記容器の下部を覆うように照準を合わせて蛍光強度の検出を開始する工程と、
検出された蛍光強度が所定の閾値
を下回るまで前記容器内の攪拌を行う工程と、
を含んでなる
、乾燥試薬の溶解方法。
【請求項2】
乾燥試薬の形状が薄膜状であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
乾燥試薬が核酸増幅試薬であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥試薬の溶解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体試料と試薬を混合して反応させることで、生体試料中の成分を分析する自動分析装置において、乾燥試薬が多く用いられている。乾燥試薬は溶媒による溶解が必要であり、通常、一定の攪拌時間や温度で行われている(例えば、特許文献1参照)。乾燥試薬が十分に溶解されていない場合、試薬の反応性が低下する等によって誤判定になるおそれがあるが、十分に溶解されているかは目視での確認にとどまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乾燥試薬の溶解中にリアルタイムで溶解の進行度を確認することで、乾燥試薬の溶解不良を防ぐ方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、容器内に配置された乾燥試薬に溶媒を加える工程と、蛍光検出器の励起光及び蛍光の有効径が前記乾燥試薬すべてを覆うように照準を合わせて蛍光強度の検出を開始する工程と、検出された蛍光強度が任意の閾値に達するまで前記容器内の攪拌を行う工程と、を含んでなる乾燥試薬の溶解方法である。
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
乾燥試薬とは、液状の試薬を凍結乾燥、自然乾燥、真空乾燥等させて水分を取り除いた試薬である。核酸増幅試薬であれば、酵素と基質とプライマーと、増副産物と特異的に反応する蛍光標識を含んだ乾燥試薬が例示できるが、これに限定されるものではない。形状については、粒状、粉状、薄膜状のいずれであっても問題は無いが、薄膜状が特に好ましい。
【0008】
乾燥試薬を配置する容器としては、試薬の溶解反応や試料の核酸増幅等に影響を与えないのであれば、その材質、大きさ、形状において、特に制限はないが、使い捨てが容易であるプラスチック製の容器が好ましい。
【0009】
乾燥試薬を溶解するのに用いられる溶媒としては、測定試料が添加された精製水が用いられる。乾燥試薬と測定試料の反応によって、適宜、溶媒に対し酸、塩、界面活性剤をさらに添加してもよい。
【0010】
容器内に配置された乾燥試薬に溶媒を加えた後、蛍光検出器の励起光及び蛍光の有効径が乾燥試薬すべてを覆うように照準を合わせて蛍光強度の検出を開始する。通常、乾燥試薬は溶媒よりも比重が重いため、容器が十分に大きければ、乾燥試薬は容器内底に沈んでいる。
【0011】
用いる蛍光検出器としては、試料に励起光を照射する励起光照射手段と、当該試料から発する蛍光を検出する蛍光検出手段とを備えた一般的な装置であれば問題はないが、3励起3蛍光検出器が特に好適である。なお、励起光及び蛍光の有効径とは、励起光照射手段及び蛍光検出手段がそれぞれ備えているレンズの有効口径(JIS B 7095:1997参照)を指す。すなわち、レンズの光軸上の無限遠物点から出て,与えられた絞り目盛に相当する開口をもつレンズを通過すべき平行光線束の,光軸に垂直な断面積と等しい面積をもつ円の直径のことを指す。
【0012】
蛍光検出器は、励起光及び蛍光の有効径が乾燥試薬すべてを覆えるのであれば、その位置は特に制限されず、核酸増幅を行うためのインキュベーターと蛍光検出器が一体となった態様も可能である。
【0013】
蛍光検出器の励起光及び蛍光の有効径が乾燥試薬すべてを覆うように照準を合わせて蛍光強度を検出すると、溶解が始まっていない段階(乾燥試薬のみ)の時に蛍光強度が最も高く、乾燥試薬が溶媒に均等に溶解していると蛍光強度は最も低くなる。すなわち、乾燥試薬の溶解が進むにつれて、蛍光強度が漸減していく。
【0014】
上述の原理を利用して、適切な蛍光強度を閾値として設定する。蛍光強度が任意の閾値に達していれば、乾燥試薬は溶媒に均等に溶解していると判断できるため、その時点で溶解を促進するための攪拌を止めればよい。なお、攪拌方法は、攪拌翼を用いた方法、容器を水平又は垂直方法に振動させる方法、分注機構による吸引吐出などを例示することができるが、特に制限はない。
【発明の効果】
【0015】
容器内での乾燥試薬の溶解不良を防ぎ、無駄な攪拌を行わず、総合的な時間短縮に資する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の乾燥試薬の溶解方法を示す概略図である。
【実施例】
【0017】
以下、具体的な実施形態を説明するが、本発明は当該例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者に容易に理解可能である。
【0018】
実施例1
図1に示す本発明の蛍光検出器と攪拌機構を用いて、乾燥試薬の溶解の進行度がリアルタイムに蛍光測定できるか検証した。試料容器10として無色透明のポリプロピレン製容器を、乾燥試薬11は蛍光色素で修飾した核酸プローブを、溶媒12は精製水を主成分とした溶媒を用いた。励起光照射部14と蛍光検出部15は、励起光450nm蛍光495nm、励起光500nm蛍光545nm、励起光590nm蛍光645nmの3組を用いた。3つの励起光照射部14を順番に点灯し(2.5sec×3、2.5sec消灯)、それに対応する蛍光検出部15の蛍光強度を測定した。分注機構13にて、試料容器10へ溶媒12を吐出し、その後は吸引吐出にて攪拌を行った。
【0019】
結果を
図2に示す。溶媒12の吐出前は、蛍光検出器の有効径内に乾燥試薬が全て覆われているため、3種類の蛍光検出器ともに高い蛍光強度を受光した。溶媒12を吐出して40秒間は蛍光強度が徐々に減少した。有効径外の溶媒へ乾燥試薬が時間的に溶解していることが分かる。40秒以降は蛍光強度が一定になった。乾燥試薬が全て溶媒へ溶解したことが分かる。
【符号の説明】
【0020】
10 :試料容器
11 :乾燥試薬
12 :溶媒
13 :分注機構(攪拌機構)
14 :励起光照射部
14a:励起光源
14b:光学フィルタ(励起光側)
14c:励起光有効径
15 :蛍光検出部
15a:受光素子
15b:光学フィルタ(蛍光側)
15c:蛍光有効径