(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】多層保香性フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240209BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20240209BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240209BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240209BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240209BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B27/28 102
B32B27/30 102
B32B27/32 C
B65D65/40 D
C08L29/04 B
(21)【出願番号】P 2020053940
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 卓矢
(72)【発明者】
【氏名】川戸 大輔
(72)【発明者】
【氏名】増田 淳
(72)【発明者】
【氏名】幸田 真吾
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/199985(WO,A1)
【文献】特開平07-101002(JP,A)
【文献】特開2001-080002(JP,A)
【文献】特開平06-166152(JP,A)
【文献】特開2005-097483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B32B 27/28
B32B 27/30
B32B 27/32
B65D 65/40
C08L 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリア層(I)の両面にポリオレフィン層(II)が隣接した3層から構成され、バリア層(I)が下記要件(1)、(2)を満たす接着剤と下記要件(3)を満たすポリビニルアルコール及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を含む樹脂組成物であり、ポリオレフィン層(II)が下記要件(4)を満たす熱可塑性樹脂からなる多層保香性フィルム。
(1)熱可塑性樹脂(A)、(A)よりもビニルエステル及び/又はアクリル酸エステル含量が5mol%以上多い、エチレンとビニルエステル及び/又はアクリル酸エステルとの共重合体(B)、並びに(A)と(B)がグラフト化された変性体を含む溶融混練物の加水分解物。
(2)ビニルアルコール含量が0.5~40mol%、ビニルエステル及び/又はアクリル酸エステル含量が30mol%以下。
(3)エチレン含量が55mоl%以下。
(4)エチレンと炭素数6以上のα-オレフィンとのランダム共重合体からなる、直鎖状低密度ポリエチレンを少なくとも1種類以上含有。
【請求項2】
熱可塑性樹脂(A)が、炭素数2~12のα-オレフィンの単独重合体若しくはこれらの共重合体、エチレンとビニルエステルの共重合体、エチレンとアクリル酸エステルの共重合体からなる群の少なくとも1種である請求項1に記載の多層保香性フィルム。
【請求項3】
バリア層(I)が、接着剤を10重量部以上60重量部以下、ポリビニルアルコール及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を40重量部以上90重量部以下(これらの合計は100重量部)、含む樹脂組成物である請求項1又は2に記載の多層保香性フィルム。
【請求項4】
前記ポリオレフィン層(II)が、炭素数2~12のα-オレフィンの単独重合体若しくはこれらの共重合体を5重量部以上95重量部以下、エチレンと炭素数6以上のα-オレフィンとのランダム共重合体からなる直鎖状低密度ポリエチレンを5重量部以上95重量部以下(これらの合計は100重量部)、含む樹脂組成物である請求項1乃至3いずれか一項に記載の多層保香性フィルム。
【請求項5】
炭素数2~12のαーオレフィンの単独重合体若しくはこれらの共重合体が、チューブラー製法により重合され、密度が900~940kg/m
3、メルトマスフローレートが0.1~10g/10min、融点が90~130℃である請求項4に記載の多層保香性フィルム。
【請求項6】
直鎖状低密度ポリエチレンが、メタロセン化合物の重合触媒により重合され、密度が900~940kg/m
3、メルトマスフローレートが0.1~10g/10min、融点が90~130℃であることを特徴とする請求項1乃至5いずれか一項に記載の多層保香性フィルム。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項に記載の多層保香性フィルムからなる家庭紙包装用多層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3層から構成される多層保香性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン・ビニルアルコール系共重合体(以下、「EVOH」という)は、ガスバリア性、耐溶剤性などに優れることから、内容物劣化の防止を目的として食品や飲料、医薬品などの包装材料として用いられている。近年では、食品や飲料、医薬品分野にとどまらず、臭気成分や香気成分などをバリアする目的でもEVOHの活用が行われており、特に香料成分を多く含むトイレットペーパー、ティッシュペーパー、ペーパータオル等の家庭紙包装向けの保香性フィルムへの適用が期待されている。
しかしながら、EVOHは分子内に多くの水酸基を有するポリマーであり、かつ、親水性が高いため、吸湿によりガスバリア性の低下が起こる。またEVOHは脆性材料であるため、引裂強度などの機械物性にも劣る。このため、一般的にポリエチレンやポリプロピレンなどの耐水性、機械物性に優れるポリオレフィン等との積層体の中間層としてEVOHが使用されることが知られている(特許文献1)。
【0003】
ところが、EVOHとポリオレフィンを積層すると、分子構造の違いにより両者の接着性は極めて低いため、積層体における層間接着性が不十分となることがある。
そのため、EVOH層とポリオレフィン層との間に、不飽和カルボン酸またはその誘導体によってグラフトされたグラフト変性エチレン系樹脂組成物(特許文献2)や、エチレン・酢酸ビニル共重合体加水分解物(特許文献3)を接着剤として用いる技術が報告されている。
従って、EVOHを含む包装材料は、少なくともポリオレフィン層/接着剤層/EVOH層/接着剤層/ポリオレフィン層を含む3種5層以上、或いは、ポリオレフィン層/接着剤層/EVOH層/接着剤層/リサイクル層/ポリオレフィン層を含む4種6層以上の構成とする必要がある。
【0004】
しかしながら、このような5層以上の多層積層体を製造するための多層成形機は、一般的に導入コストが非常に高く、結果として寡占市場となりやすく最終製品価格が高止まりしやすい。
そのため汎用成形機で製造可能な3層構成を有する積層体の製造が従来より望まれている。例えば、ポリオレフィン層又はEVOH層へ直接接着剤を添加する検討がなされてきたが、各種物性を満足するものは得られていなかった(特許文献4)。
このような背景から、より少ない層構成であり、且つガスバリア性と機械物性に優れる多層保香性フィルムが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-216565号公報
【文献】特開2018-529554号公報
【文献】特開2018-145407号公報
【文献】特開2004-082574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような状況を鑑みなされたものであって、より少ない層構成でありながら、優れたガスバリア性と機械物性を示す多層保香性フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の加水分解物をEVOH層に配合したガスバリア層に、特定のポリオレフィン層との接着性能を兼ね備えた単層のバリア層を得ることができ、該バリア層の両面にポリオレフィン樹脂層を積層することで、保香性、透明性のみならず、優れた機械物性を兼ね備えたフィルムを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、バリア層(I)の両面にポリオレフィン層(II)が隣接した3層から構成され、バリア層(I)が下記要件(1)、(2)を満たす接着剤と下記要件(3)を満たすポリビニルアルコール及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を含む樹脂組成物であり、ポリオレフィン層(II)が下記要件(4)を満たす熱可塑性樹脂からなる多層保香性フィルムである。
(1)熱可塑性樹脂(A)と、(A)よりもビニルエステル及び/又はアクリル酸エステル含量が5mol%以上多い、エチレンとビニルエステル及び/又はアクリル酸エステルとの共重合体(B)、並びに(A)と(B)がグラフト化された変性体を含む溶融混練物の加水分解物。
(2)ビニルアルコール含量が0.5mol%以上40mol%以下、ビニルエステル及び/又はアクリル酸エステル含量が30mol%以下。
(3)エチレン含量が55mоl%以下。
(4)エチレンと炭素数6以上のα-オレフィンとのランダム共重合体である直鎖状低密度ポリエチレンを含有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた保香性と透明性、機械物性を示す多層保香性フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の一態様である多層保香性フィルムについて詳細に説明する。
【0011】
本発明におけるバリア層(I)は、接着剤とポリビニルアルコール系樹脂を含む。
【0012】
該接着剤は、より詳細には熱可塑性樹脂(A)と、(A)よりもビニルエステル及び/又はアクリル酸エステル含量が5mol%以上多い、エチレンとビニルエステル及び/又はアクリル酸エステルとの共重合体(B)、並びに(A)と(B)がグラフト化された変性体を含む溶融混練物の加水分解物である。該加水分解物は、ビニルアルコール含量が0.5mol%以上40mol%以下、ビニルエステル及び/又はアクリル酸エステル含量が30mol%以下である。
【0013】
熱可塑性樹脂(A)(以下、(A)又は成分(A)と略すことがある。)としては、α―オレフィンの含量が60mol%以上のポリオレフィンを挙げることができ、より詳細にはエチレン、プロピレン、1-ブテンなど炭素数2~12のα-オレフィンの単独重合体、該オレフィンの共重合体、エチレン-ビニルエステル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
具体的な(A)として、例えば、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-へキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン系重合体、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、ポリ1-ブテン、ポリ1-ヘキセン、ポリ4-メチル-1-ペンテン等が挙げられ、中でも、接着性およびコストの観点から高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-へキセン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレンが好ましく、これらの組成物が成形性にも優れるため最も好ましい。
熱可塑性樹脂(A)は、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。
【0014】
高圧法低密度ポリエチレンの製造方法は、高圧ラジカル重合を例示することができ、このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができ、例えば東ソー株式会社からペトロセンの商品名で市販されている。高密度ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体およびエチレン・1-へキセン共重合体の製造方法は特に限定するものではないが、チーグラー・ナッタ触媒やフィリップス触媒、メタロセン触媒を用いた高・中・低圧イオン重合法などを例示することができ、このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができる。例えば東ソー株式会社からニポロンハード、ニポロン-L、ニポロン-Zの商品名で各々市販されている。
エチレン・酢酸ビニル共重合体の製造方法は、エチレン・酢酸ビニル共重合体の製造が可能であれば特に制限されるものではないが、公知の高圧ラジカル重合法やイオン重合法を例示することができる。高圧ラジカル重合法により製造されたエチレン・酢酸ビニル共重合体として、東ソー株式会社からウルトラセンの商品名で市販されている。
【0015】
成分(B)はエチレンとビニルエステル及び/又はアクリル酸エステルとの共重合体である(以下、(B)又は成分(B)と略すことがある。)。
【0016】
成分(B)としては、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられ、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。中でも、コストの観点からエチレン・酢酸ビニル共重合体を使用することが好ましい。
成分(B)のビニルエステル及び/又はアクリル酸エステル含量は、成分(A)よりも5mol%以上多い。
成分(B)のビニルエステル及び/又はアクリル酸エステル含量は、好ましくは12mol%以上であり、前述した成分(A)とともに併用することにより、本発明における樹脂組成物のEVOHに対する接着性が良好となる。成分(B)のビニルエステル及び/又はアクリル酸エステル含量が10mol%を下回る場合は、本発明における接着剤のEVOHに対する接着性が悪化する。
成分(B)におけるエチレン・酢酸ビニル共重合体の製造方法は限定されないが、高圧法ラジカル重合、溶液重合やラテックス重合等の公知の製造方法が挙げられ、東ソー株式会社からウルトラセンの商品名で、ランクセス株式会社からレバプレン、レバメルトの商品名で各々市販されている。
【0017】
成分(A)と成分(B)との好適な配合比は、ポリオレフィン層(II)との接着性向上、及びバリア層(I)を構成するポリビニルアルコール及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体との相溶性向上の観点から、成分(A)が30重量部以上95重量部以下及び成分(B)が5重量部以上70重量部以下(ここで(A)及び(B)の合計は100重量部とする)であることが好ましい。配合比は、さらに好ましくは成分(A)が40重量部以上90重量部以下、成分(B)が10重量部以上60重量部以下、またさらに好ましくは成分(A)が50重量部以上85重量部以下、成分(B)が15重量部以上50重量部以下である。
【0018】
接着剤は、構成成分として、成分(A)と成分(B)の他にさらに相溶化剤(C)(以下、(C)又は成分(C)と略すことがある)を含むことが好ましい。
【0019】
成分(C)はエチレンとビニルエステル及び/又はアクリル酸エステルとの共重合体である。
【0020】
成分(C)は、そのビニルエステル及び/又はアクリル酸エステル含量が成分(A)よりも高く、且つ成分(B)よりもビニルエステル及び/又はアクリル酸エステル含量が低いものである。
この場合、接着剤は、エチレン含量もしくはビニルエステル又はアクリル酸エステル含量の少なくともいずれかが異なる、少なくとも2種類のエチレンとビニルエステル及び/又はアクリル酸エステルとの共重合体を含むことを意味する。
【0021】
ビニルエステル及び/又はアクリル酸エステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸部ブチル等が挙げられる。
なかでも、経済性に優れることから、エチレン・酢酸ビニル共重合体を使用することが好ましく、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。なかでも2種以上の相溶化剤を併用することで、成分(A)および成分(B)の分散性が向上し、接着剤とポリビニルアルコール及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体との相溶性が向上する。
【0022】
成分(C)が、エチレンとビニルエステル及び/又はアクリル酸エステルとの共重合体を少なくとも2種類含む組成物である場合、組成物の各成分のビニルエステル及び/又はアクリル酸エステル含量、メルトマスフローレート、密度の少なくとも1つが異なる。好ましくは該組成物の各成分のビニルエステル及び/又はアクリル酸エステル含量が異なることが好ましい。
【0023】
相溶化剤(C)を構成する各エチレンとビニルエステルの共重合体のビニルエステル含量と、成分(A)のビニルエステル含量の差を取った際に、少なくとも1組の共重合体のビニルエステルとの差は好ましくは20mol%以下、さらに好ましくは15mol%以下、またさらに好ましくは13mol%以下、特に好ましくは10mol%以下である。
また、少なくとも1組の共重合体のビニルエステル含量の差は2mol%以上であることが好ましい。
【0024】
また、(C)を構成する各エチレンとビニルエステルの共重合体のビニルエステル含量と、成分(A)のビニルエステル含量の差を取った際に、各ビニルエステルとの差が、全ての組み合わせにおいて好ましくは45mol%以下、さらに好ましくは33mol%以下である。
また、各ビニルエステル含量の差がすべて2mol%以上であることが好ましい。
前記配合比により、バリア層(I)とポリオレフィン層(II)との接着性に優れたものなる。
【0025】
相溶化剤(C)を構成する各エチレンとビニルエステルの共重合体のビニルエステル含量と、成分(B)のビニルエステル含量の差を取った際に、少なくとも1組の共重合体のビニルエステルとの差は好ましくは20mol%以下、さらに好ましくは15mol%以下、またさらに好ましくは13mol%以下、特に好ましくは11mol%以下である。
また、少なくとも1組の共重合体のビニルエステル含量の差は2mol%以上であることが好ましい。
【0026】
また、(C)を構成する各エチレンとビニルエステルの共重合体のビニルエステル含量と、成分(B)のビニルエステル含量の差を取った際に、各ビニルエステルとの差が、全ての組み合わせにおいて好ましくは45mol%以下、さらに好ましくは33mol%以下である。
また、各ビニルエステル含量の差がすべて2mol%以上であることが好ましい。
前記配合比により、バリア層(I)とポリオレフィン層(II)との接着性に優れたものなる。
【0027】
成分(C)におけるエチレン・酢酸ビニル共重合体の製造方法は限定されないが、高圧法ラジカル重合、溶液重合やラテックス重合等の公知の製造方法が挙げられ、このような樹脂は市販品の中から便宜選択することができ、東ソー株式会社からウルトラセンの商品名で、ランクセス株式会社からレバプレン、レバメルトの商品名で各々市販されている。
【0028】
バリア(I)層を構成する接着剤が相溶化剤(C)を含む場合、相溶化剤(C)の配合量は、ポリオレフィン層(II)に対する接着性向上の観点から、(A)及び(B)の合計 100重量部に対し、相溶化剤(C)を1重量部以上50重量部以下配合することが好ましく、さらに好ましくは5重量部以上45重量部以下、またさらに好ましくは10重量部以上40重量部以下である。
【0029】
成分(A)と成分(B)のグラフト変性方法としては、(A)にエチレンと酢酸ビニルをグラフト共重合する方法、(B)にエチレン単独、エチレンとα-オレフィンをグラフト共重合する方法、(A)と(B)を予め重合し、これらをグラフト変性する方法等が挙げられるが、生産性の観点から上記成分(A)、(B)を含む組成物に架橋剤(D)を添加するのが好ましい。
【0030】
熱可塑性樹脂(A)がポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロプレンの場合、架橋剤(D)として有機化酸化物を使用することが最も好ましい。
架橋剤(D)の有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジt-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1、1ージ(tーブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ジ-(t-ブチルペルオキシ)-ジイソプロピルベンゼン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシドなどが挙げることができる。これらは単独で或いは2種類以上を混合して使用することができる。
なかでも、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1、1ージ(tーブチルペルオキシ)シクロヘキサンが反応性の観点から好ましく用いられる。また、前記架橋剤と共に、必要に応じて、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼンなどの架橋助剤を用いてもよい。
【0031】
また接着剤のグラフト化を、架橋剤(D)を添加して行う場合、成分(A)と、成分(B)の合計100重量部に対する架橋剤(D)の配合量は、0.005重量部以上1重量部以下の範囲とすることでポリオレフィン層(II)との接着性が向上し、かつ、バリア層(I)を構成するポリビニルアルコール及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とより相溶するため好ましい。
【0032】
バリア層(I)に用いる接着剤は、前記(A)~(D)成分を混練し、加水分解することにより製造することができる。(A)~(D)成分の溶融混練の方法は、各成分を均一に分散しうる溶融混練装置であれば特に制限はなく、通常用いられる樹脂の混合装置により製造することができる。例えば、単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダ-、回転ロールなどの溶融混練装置が挙げられる。中でも混練度が高く連続的に運転できる二軸押出機は、分散状態を細かく均一にできるため好ましい。溶融温度は熱可塑性樹脂(A)の融点~260℃程度の温度範囲であることが好ましい。
【0033】
バリア層(I)に用いる接着剤の製造プロセスの具体例は次のとおりである。
前記成分(A)~(D)のドライブレンド物を、押出機のホッパーに投入する。この際、熱可塑性樹脂(A)、エチレンとビニルエステル及び/又はアクリル酸エステルとの共重合体(B)及び架橋剤(D)の少なくとも一部をサイドフィーダー等から添加してもよい。さらに、二台以上の押出機を使用し、段階的に順次溶融混練してもよい。前記成分(A)~(D)の混合には、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーなどを使用してもよい。
【0034】
バリア層(I)に用いる接着剤を構成する成分(A)と成分(B)のグラフト化物の加水分解の処理方法は、生産性の観点から上記組成物のペレット又はパウダーをアルカリ中で直接加水分解処理方法が好ましい。ビニルエステル及び/又はアクリル酸エステル成分のケン化度は10mol%以上95mol%以下のものが好ましく、20mol%以上65mol%以下であるものがさらに好ましい。10mol%以上であればEVOHに対する接着性は十分である。
本願のバリア層(I)は、上記した加水分解物以外に、必要に応じて酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤、シリコンオイル、紫外線吸収剤、難燃剤、離型剤、発泡剤、香料などの一般的に使用される添加剤を1種または2種以上を含有してもよい。
【0035】
バリア層(I)はポリビニルアルコール系樹脂を含む。ここでポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコールホモポリマーまたはエチレン・ビニルアルコール共重合体のいずれであってもよく、好ましくは、エチレン含量が55mol%以下のエチレン・ビニルアルコール共重合体である。
バリア層(I)に用いるポリビニルアルコール系樹脂としては、主としてビニルアルコール単位からなる重合体、又はエチレン単位とビニルアルコール単位とからなる共重合体(EVOH)を挙げることができる。EVOHを使用する場合、例えば、成形用途で使用されるような公知のものを挙げることができる。ただし、EVOHのエチレン単位の含有量は、気体、有機液体等に対する遮断性の高さと成形加工性の良好さの点から、0mol%を超え55mol%以下が好ましく、10mol%以上55mol%以下のものがさらに好ましい。
【0036】
バリア層(I)に用いるポリビニルアルコール系樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、公知の方法にしたがって、脂肪酸ビニルエステルの重合体、若しくはエチレンと脂肪酸ビニルエステルとの共重合体を製造し、次いで、これを加水分解することによってポリビニルアルコール及び/又はEVOHを製造することができ、このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができ、例えばクラレ株式会社からポバールやエバール、日本合成化学株式会社からゴーセノールやソアノールの商品名で各々市販されている。
またEVOHには、エチレン単位およびビニルアルコール単位に加えて、少量であれば他の構成単位を有していてもよい。
【0037】
バリア層(I)に用いるポリビニルアルコール系樹脂のメルトマスフローレート(温度190℃)は、成形加工性の点から、0.1~100g/10分であることが好ましく、0.5~50g/10分であることがより好ましく、1~20g/10分であることが最も好ましい。
【0038】
上記した成分以外に、必要に応じて酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤、シリコンオイル、紫外線吸収剤、難燃剤、離型剤、発泡剤、香料などの一般的に使用される添加剤を1種または2種以上を含有してもよい。
【0039】
バリア層(I)を構成する接着剤とポリビニルアルコール系樹脂の好適な配合比は、ポリオレフィン層(II)との接着性向上の観点から、好ましくは接着剤が10重量部以上50重量部以下、ポリビニルアルコール系樹脂が50重量部以上90重量部以下(ここで、接着剤とポリビニルアルコール系樹脂の合計は100重量部とする)を含むものであり、さらに好ましくは接着剤が15重量部以上45重量部以下、ポリビニルアルコール系樹脂が55重量部以上85重量部以下、またさらに好ましくは接着剤が20重量部以上40重量部以下、ポリビニルアルコール系樹脂が60重量部以上80重量部以下である。
【0040】
バリア層(I)を構成する接着剤とポリビニルアルコール系樹脂の混合方法は、各成分を均一に分散しうる溶融混練装置を用いる方法であれば特に制限はなく、通常用いられる樹脂の混合装置により製造することができる。例えば、単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダ-、回転ロール、ラボプラストミルなどの溶融混練装置が挙げられる。溶融温度はEVOHの融点~260℃程度が好ましい。
【0041】
本発明におけるポリオレフィン層(II)は、エチレンと炭素数6以上のα-オレフィンとのランダム共重合体である直鎖状低密度ポリエチレンを含有する。
【0042】
ポリオレフィン層(II)は、エチレンと炭素数6以上のα-オレフィンとのランダム共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン(以下、「LLDPE」という)の他に、炭素数5以下のα-オレフィンの単独重合体またはこれらの共重合体(以下、「ポリオレフィン樹脂」という)をさらに含有することが好ましい。これにより、ポリオレフィン層(II)の成形がより容易に行うことができる。
ポリオレフィン層(II)がさらにポリオレフィン樹脂を含む場合、LLDPEの好適な配合比は、多層保香性フィルムの成形性向上の観点から、ポリオレフィン樹脂が5重量部以上95重量部以下、LLDPEが5重量部以上95重量部以下(ここで、ポリオレフィン樹脂とLLDPEの合計は100重量部とする)を含むものであり、さらに好ましくはポリオレフィン樹脂が10重量部以上90重量部以下およびLLDPEが10重量部以上90重量部以下、最も好ましくはポリオレフィン樹脂が20重量部以上80重量部以下、LLDPEが20重量部以上80重量部以下を含むものである。
【0043】
ポリオレフィン層(II)に用いるポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、1-ブテンなど炭素数2~12のα-オレフィンの単独重合体若しくはこれらの共重合体、エチレンとビニルエステル及び/又はアクリル酸エステルとの共重合体などが挙げられる。
例えば、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-へキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン系重合体、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、ポリ1-ブテン、ポリ1-ヘキセン、ポリ4-メチル-1-ペンテン等が挙げられ、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。中でも、接着性および成形性、コストの観点から高圧法低密度ポリエチレンが好ましい。
高圧法低密度ポリエチレンの製造方法は、チューブラー法若しくはベッセル法による高圧ラジカル重合を例示することができ、透明性の観点からチューブラー法により重合されるのが望ましい。このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができ、例えば東ソー株式会社からペトロセンの商品名で市販されている。
【0044】
ポリオレフィン層(II)に用いるα-オレフィンの単独重合体若しくはこれらの共重合体は、成形加工性および透明性の点から、密度が900~940kg/m3、メルトマスフローレート(温度190℃、荷重2.16kg)が0.1~10g/10min、融点が90~130℃であることが好ましい。
ポリオレフィン層(II)に用いるLLDPEとしては、エチレン・1-へキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体などが挙げられる。
LLDPEの製造方法は、チーグラー・ナッタ触媒やフィリップス触媒、メタロセン触媒を用いた高・中・低圧イオン重合法などを例示することができ、機械物性の観点からメタロセン触媒を用いて重合されることが望ましい。このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができる。例えば東ソー株式会社からニポロン-Zの商品名で市販されている。
【0045】
ポリオレフィン層(II)に用いるLLDPEは、成形加工性および機械物性の点から、密度が900~940kg/m3、メルトマスフローレート(温度190℃、荷重2.16kg)が0.1~10g/10min、融点が90~130℃であることが好ましい。
【0046】
本発明は、バリア層(I)の両面にポリオレフィン層(II)が隣接した3層から構成される積層体である。すなわち、ポリオレフィン層(II)/バリア層(I)/ポリオレフィン層(II)の構成を備えた積層体である。該積層体は、このような構成を備えることにより、保香性と機械特性を十分に兼ね備えるため、多層保香性フィルムとして好適に使用することができる。
本発明の多層保香性フィルムにおける(I)層の厚みは、接着性などが損なわれない範囲で選択できるが、一般的には1~20μm、好ましくは2~10μmである。また、(II)層の厚みは同様に接着性などが損なわれない範囲で用途に応じて選択できるが、一般的には5~20μm、好ましくは5~15μmである。
【0047】
本発明の多層保香性フィルムは、三層キャスト成形や三層インフレーション成形等の汎用のフィルム成形方法で作製が可能である。
【0048】
本発明の多層保香性フィルムは、ガスバリア性と透明性、機械物性に優れていることから、家庭紙などの熱可塑性樹脂を材料とした包装材用途に使用することができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0050】
[ケン化度]
実施例で開示している各樹脂組成物に関して、JIS K7192(1999年)に準拠してビニルエステル含量を測定し、下記計算式に従いケン化度(mol%)を求めた。
ケン化度(mol%) = 100
× {(加水分解前の樹脂組成物のビニルエステル含量)
- (加水分解後の樹脂組成物のビニルエステル含量)}
/(加水分解前の樹脂組成物のビニルエステル含量)
[メルトマスフローレート(MFR)]
MFRは、JIS K6922-1(1997年)、またはJIS K6924-2(1997年)に準拠して測定した。
[酸素透過度]
実施例により得られた多層フィルムから切り出したサンプル(縦100mm、長さ100mm)を用いて、JIS K7126-2(2006年)に準拠して酸素透過度(cc/m2・1day・atm)を測定した。保香性は以下のように評価した。
× : 酸素透過度が500以上
△ : 500未満50以上
○ : 50未満1以上
[透明性]
透明性の指標としてヘーズを、実施例により得られた多層フィルムから切り出したサンプル(縦50mm、長さ50mm)を用いて、JIS K7136-1(2000年)に準拠して測定した。
[引裂強度]
引裂強度は、実施例により得られた多層フィルムから切り出したサンプル(半径一定型、長さ75mm、スリット20mm、引裂半径43mm)を用いて、JIS K7128-2(1998年)に準拠したエレメンドルフ引裂法により測定した。ここでは、成形時の流れ方向をMD方向、それに垂直な方向をTD方向として定義した。
【0051】
(接着剤の製造例)
以下の製造例において、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)を溶融樹脂温度190℃で、二軸押出機で溶融混練し、ペレット状の樹脂組成物を得た。続いて、本樹脂組成物を濃度1wt%の水酸化ナトリウムメタノール溶液、温度55℃で加水分解処理を行い、接着剤を作製した。
【0052】
(接着剤1の製造例)
接着剤の成分(A)として、MFR 30g/10min、密度935kg/m3、酢酸ビニル含量5mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体((A-1))を85重量部、
成分(B)として、MFR 5 g/10min、密度1000kg/m3、酢酸ビニル含量25mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(ランクセス(株)製、商品名レバプレン500)(B-1)を15重量部、
成分(C)として、下記の相溶化剤(C-1)を30重量部、
成分(D)として、有機過酸化物(日油(株)製、商品名パーヘキサ25B)を0.01重量部
の割合でドライブレンドし、溶融樹脂温度190℃で、二軸押出機で溶融混練し、表1に示す組成のペレット状の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を濃度1wt%の水酸化ナトリウムメタノール溶液、反応温度55℃で加水分解処理を行い、ケン化度46mol%、ビニルアルコール含量が4mol%、酢酸ビニル含量が5mol%、MFR14g/10分の接着剤1を得た。
[成分(C-1)の構成]
下記4種類のエチレン・酢酸ビニル共重合体を7.5重量部ずつドライブレンドしたもの
・MFR20g/10分、密度940kg/m3、酢酸ビニル含量8mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン633)
・MFR18g/10分、密度949kg/m3、酢酸ビニル含量11mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン710)
・MFR30g/10分、密度954kg/m3、酢酸ビニル含量13mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン750)
・MFR70g/10分、密度968kg/m3、酢酸ビニル含量19mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン760)
【0053】
(接着剤2の製造例)
接着剤の成分(A)としてMFR14g/10分、密度935kg/m3、酢酸ビニル含量5mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン625)(A-2)を75重量部、
成分(B)として、MFR5g/10分、密度1110kg/m3、酢酸ビニル含量57mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(ランクセス(株)製、商品名レバプレン800)(B-2)を25重量部、
成分(C)として、下記成分(C-2)を20重量部、
成分(D)として有機過酸化物(日油(株)製、商品名パーヘキサ25B)を0.01重量部
の割合でドライブレンドし、溶融樹脂温度190℃で、二軸押出機で溶融混練し、表1に示す組成のペレット状の樹脂組成物を得た。続いて、得られた樹脂組成物を濃度1wt%の水酸化ナトリウムメタノール溶液、反応温度55℃で加水分解処理を行い、ケン化度25mol%、ビニルアルコール含量が3mol%、酢酸ビニル含量が10mol%、MFR6g/10分の接着剤2を得た。
[成分(C-2)の構成]
下記5種類のエチレン・酢酸ビニル共重合体を4重量部ずつドライブレンドしたもの
・MFR20g/10分、密度940kg/m3、酢酸ビニル含量8mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン633)
・MFR18g/10分、密度949kg/m3、酢酸ビニル含量11mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン710)
・MFR30g/10分、密度954kg/m3、酢酸ビニル含量13mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン750)
・MFR70g/10分、密度968kg/m3、酢酸ビニル含量19mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン760)
・MFR5g/10分、密度1000kg/m3、酢酸ビニル含量25mol%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(ランクセス(株)製、商品名レバプレン500)
【0054】
(接着剤3の製造例)
接着剤の成分(A)として(A-2)を100重量部、成分(C)として(C-1)を30重量部、成分Dを0.01重量部用いたこと以外は接着剤2と同様の方法で作製し、ケン化度25mol%、ビニルアルコール含量が2mol%、酢酸ビニル含量が5mol%、MFR6g/10分の接着剤3を得た。
【0055】
【0056】
実施例1
バリア層(I)を構成する接着剤として接着剤1を25重量部、ポリビニルアルコール系樹脂としてMFR1.6g/10分、密度1190kg/m3、エチレン含量32mol%、ケン化度100%であるエチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製、商品名エバールF171B)を75重量部ドライブレンドした後、単軸押出機を用いて溶融樹脂温度200℃でメルトブレンドした。
ポリオレフィン層(II)を構成するLLDPEとして、メタロセン触媒により重合されたMFRが2.0g/10分、密度が910kg/m3である直鎖状低密度ポリエチレンC6LL(東ソー(株)製 商品名ニポロンZ、HF210K、エチレンと炭素数6のα-オレフィン)を70重量部、ポリオレフィン樹脂として、チューブラー製法により重合されたMFRが2.0g/10分、密度が922kg/m3である高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン180)30重量部をドライブレンドした。
前述の(I)層を構成する配合物を、45/55/45mmΦのスクリューを有した3層インフレーションフィルム成形機((株)プラコー社製)の中間層の押出機へ供給し、(II)層を構成する配合物を、内層及び外層の押出機へ供給し、中間層を210℃、内層及び外層を190℃の温度で押出し、内層/中間層/外層=10μm/5μm/10μmとなる厚み25μmの多層フィルムを得た。得られた多層フィルムの保香性、ヘーズ特性、引裂強度を評価したところ、表2に示す通りだった。
【0057】
実施例2
接着剤として接着剤2を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で多層フィルムを得た。得られた多層フィルムを用いて評価したところ、表2に示す通りだった。
【0058】
実施例3
(I)層を構成する組成物の配合比を、接着剤1が10重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体が90重量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で多層フィルムを得た。得られた多層フィルムを用いて評価したところ、表2に示す通りだった。
【0059】
実施例4
(I)層を構成する組成物の配合比を、接着剤1が50重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体が50重量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で多層フィルムを得た。得られた多層フィルムを用いて評価したところ、表2に示す通りだった。
【0060】
実施例5
(I)層を構成する組成物の配合比を、接着剤1が60重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体が40重量部に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で多層フィルムを得た。得られた多層フィルムを用いて評価したところ、表2に示す通りだった。
【0061】
実施例6
(I)層を構成する組成物の配合比を、接着剤1が30重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体が70重量部に変更し、(II)層を構成するポリオレフィン樹脂として、ベッセル製法により重合されたMFRが3.0g/10分、密度が921kg/m3である高圧法低密度ポリエチレンを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で多層フィルムを得た。得られた多層フィルムを用いて評価したところ、表2に示す通りだった。
【0062】
実施例7
(I)層を構成する組成物の配合比を、接着剤1が30重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体が70重量部に変更し、(II)層を構成するLLDPEとして、チーグラー・ナッタ触媒により重合されたMFRが2.0g/10分、密度が920kg/m3である直鎖状低密度ポリエチレンC4LL(東ソー(株)製 商品名ニポロンZ、ZF230、エチレンと炭素数4のα―オレフィン)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で多層フィルムを得た。得られた多層フィルムを用いて評価したところ、表2に示す通りだった。
【0063】
【0064】
比較例1
(I)層を構成する接着剤として接着剤2を30重量部、エチレン・ビニルアルコール共重合体としてエチレン・ビニルアルコール共重合体(エバールF171B)を70重量部のドライブレンド物を使用し、(II)層を構成する樹脂として、MFRが1.0g/10分、密度が926kg/m3である直鎖状低密度ポリエチレンを100重量部使用したこと以外は実施例1と同様の方法で多層フィルムを得た。得られた多層フィルムを用いて評価したところ、表3に示す通りだった。
【0065】
比較例2
接着剤として、接着剤1に代えて接着剤3を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で多層フィルムを得た。得られた多層フィルムを用いて評価したところ、表2に示す通りだった。
【0066】