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特許7432843三次元座標測定方法及び三次元座標測定機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】三次元座標測定方法及び三次元座標測定機
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/008 20060101AFI20240209BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
G01B5/008
G01B21/00 E
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020018879
(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公開番号】P2021124428
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】外川 陽一
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-071029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00- 5/30
G01B 11/00-11/30
G01B 21/00-21/32
G01D 5/26- 5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象であるワークの三次元座標を測定プログラムで制御された三次元座標測定機により測定する三次元座標測定方法であって、
前記ワークの温度、前記三次元座標測定機のX軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、及びZ軸スケールの温度を取得する温度取得工程と、
前記温度取得工程で取得された前記温度と環境判断閾値とを比較して、前記三次元座標の測定に前記温度が適切である場合には正常判断を行い、前記三次元座標の測定に前記温度が不適切である場合には異常判断を行う環境温度判断工程と、
前記環境温度判断工程において、前記異常判断が行われた場合には、前記測定プログラムの実行を一時停止させる停止工程と、
を含み、
前記環境温度判断工程では、前記ワークの温度、前記X軸スケールの温度、前記Y軸スケールの温度、及び前記Z軸スケールの温度の全てが、前記環境判断閾値として規定された第1の閾値である上限値と下限値との範囲以内である場合には前記正常判断を、前記ワークの温度、前記X軸スケールの温度、前記Y軸スケールの温度、及び前記Z軸スケールの温度の少なくとも一つが、前記範囲から外れている場合には前記異常判断を行う三次元座標測定方法。
【請求項2】
前記環境温度判断工程では、同じタイミングで取得された前記ワークの温度、前記X軸スケールの温度、前記Y軸スケールの温度、及び前記Z軸スケールの温度のうち最大値と最小値との差分が、前記環境判断閾値として規定された第2の閾値以下である場合には前記正常判断を、前記第2の閾値より大きい場合には前記異常判断を行う請求項に記載の三次元座標測定方法。
【請求項3】
測定対象であるワークの三次元座標を測定プログラムで制御された三次元座標測定機により測定する三次元座標測定方法であって、
前記ワークの温度、前記三次元座標測定機のX軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、及びZ軸スケールの温度を取得する温度取得工程と、
前記温度取得工程で取得された前記温度と環境判断閾値とを比較して、前記三次元座標の測定に前記温度が適切である場合には正常判断を行い、前記三次元座標の測定に前記温度が不適切である場合には異常判断を行う環境温度判断工程と、
前記環境温度判断工程において、前記異常判断が行われた場合には、前記測定プログラムの実行を一時停止させる停止工程と、
を含み、
前記環境温度判断工程では、同じタイミングで取得された前記ワークの温度、前記X軸スケールの温度、前記Y軸スケールの温度、及び前記Z軸スケールの温度のうち最大値と最小値との差分が、前記環境判断閾値として規定された第2の閾値以下である場合には前記正常判断を、前記第2の閾値より大きい場合には前記異常判断を行う三次元座標測定方法。
【請求項4】
前記環境温度判断工程では、前記ワークの温度、前記X軸スケールの温度、前記Y軸スケールの温度、及び前記Z軸スケールの温度の全てにおいて、設定された時間間隔における温度変化量が、前記環境判断閾値として規定された第3の閾値以下である場合には前記正常判断を、前記ワークの温度、前記X軸スケールの温度、前記Y軸スケールの温度、及び前記Z軸スケールの温度の少なくとも一つにおいて、前記時間間隔における温度変化量が、前記第3の閾値より大きい場合には前記異常判断を行う請求項1から3のいずれか1項に記載の三次元座標測定方法。
【請求項5】
測定対象であるワークの三次元座標を測定プログラムで制御された三次元座標測定機により測定する三次元座標測定方法であって、
前記ワークの温度、前記三次元座標測定機のX軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、及びZ軸スケールの温度を取得する温度取得工程と、
前記温度取得工程で取得された前記温度と環境判断閾値とを比較して、前記三次元座標の測定に前記温度が適切である場合には正常判断を行い、前記三次元座標の測定に前記温度が不適切である場合には異常判断を行う環境温度判断工程と、
前記環境温度判断工程において、前記異常判断が行われた場合には、前記測定プログラムの実行を一時停止させる停止工程と、
を含み、
前記環境温度判断工程では、前記ワークの温度、前記X軸スケールの温度、前記Y軸スケールの温度、及び前記Z軸スケールの温度の全てにおいて、設定された時間間隔における温度変化量が、前記環境判断閾値として規定された第3の閾値以下である場合には前記正常判断を、前記ワークの温度、前記X軸スケールの温度、前記Y軸スケールの温度、及び前記Z軸スケールの温度の少なくとも一つにおいて、前記時間間隔における温度変化量が、前記第3の閾値より大きい場合には前記異常判断を行う三次元座標測定方法。
【請求項6】
前記環境温度判断工程は、前記停止工程において、前記測定プログラムの実行を一時停止した後も継続して行われ、
前記停止工程において前記測定プログラムの実行が一時停止している間に、前記環境温度判断工程において前記正常判断が継続して測定再開閾値以上の回数行われた場合には、前記三次元座標の測定を再開させる測定再開工程を含む請求項1からのいずれか1項に記載の三次元座標測定方法。
【請求項7】
測定対象であるワークの三次元座標を測定プログラムで制御された三次元座標測定機により測定する三次元座標測定方法であって、
前記ワークの温度、前記三次元座標測定機のX軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、及びZ軸スケールの温度を取得する温度取得工程と、
前記温度取得工程で取得された前記温度と環境判断閾値とを比較して、前記三次元座標の測定に前記温度が適切である場合には正常判断を行い、前記三次元座標の測定に前記温度が不適切である場合には異常判断を行う環境温度判断工程と、
前記環境温度判断工程において、前記異常判断が行われた場合には、前記測定プログラムの実行を一時停止させる停止工程と、
を含み、
前記環境温度判断工程は、前記停止工程において、前記測定プログラムの実行を一時停止した後も継続して行われ、
前記停止工程において前記測定プログラムの実行が一時停止している間に、前記環境温度判断工程において前記正常判断が継続して測定再開閾値以上の回数行われた場合には、前記三次元座標の測定を再開させる測定再開工程を含む三次元座標測定方法。
【請求項8】
前記環境温度判断工程は、前記停止工程において、前記測定プログラムの実行を一時停止した後も継続して行われ、
前記停止工程において前記測定プログラムの実行が一時停止している間に、前記環境温度判断工程において前記異常判断が継続して測定中止閾値以上の回数行われた場合には、前記測定プログラムの実行を中止する中止工程を含む請求項1からのいずれか1項に記載の三次元座標測定方法。
【請求項9】
測定対象であるワークの三次元座標を測定プログラムで制御された三次元座標測定機により測定する三次元座標測定方法であって、
前記ワークの温度、前記三次元座標測定機のX軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、及びZ軸スケールの温度を取得する温度取得工程と、
前記温度取得工程で取得された前記温度と環境判断閾値とを比較して、前記三次元座標の測定に前記温度が適切である場合には正常判断を行い、前記三次元座標の測定に前記温度が不適切である場合には異常判断を行う環境温度判断工程と、
前記環境温度判断工程において、前記異常判断が行われた場合には、前記測定プログラムの実行を一時停止させる停止工程と、
を含み、
前記環境温度判断工程は、前記停止工程において、前記測定プログラムの実行を一時停止した後も継続して行われ、
前記停止工程において前記測定プログラムの実行が一時停止している間に、前記環境温度判断工程において前記異常判断が継続して測定中止閾値以上の回数行われた場合には、前記測定プログラムの実行を中止する中止工程を含む三次元座標測定方法。
【請求項10】
前記ワークの複数の測定箇所の公差情報を取得する公差情報取得工程と、
前記環境温度判断工程で使用される前記環境判断閾値を前記公差情報に基づいて変更する閾値変更工程と、
を含み、
前記閾値変更工程は、前記公差情報における公差幅が広くなるにつれて、前記環境判断閾値の範囲が広がるように、前記環境判断閾値を変更する請求項1からのいずれか1項に記載の三次元座標測定方法。
【請求項11】
測定対象であるワークの三次元座標を測定プログラムで制御された三次元座標測定機により測定する三次元座標測定方法であって、
前記ワークの温度、前記三次元座標測定機のX軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、及びZ軸スケールの温度を取得する温度取得工程と、
前記温度取得工程で取得された前記温度と環境判断閾値とを比較して、前記三次元座標の測定に前記温度が適切である場合には正常判断を行い、前記三次元座標の測定に前記温度が不適切である場合には異常判断を行う環境温度判断工程と、
前記環境温度判断工程において、前記異常判断が行われた場合には、前記測定プログラムの実行を一時停止させる停止工程と、
を含み、
前記ワークの複数の測定箇所の公差情報を取得する公差情報取得工程と、
前記環境温度判断工程で使用される前記環境判断閾値を前記公差情報に基づいて変更する閾値変更工程と、
を含み、
前記閾値変更工程は、前記公差情報における公差幅が広くなるにつれて、前記環境判断閾値の範囲が広がるように、前記環境判断閾値を変更する三次元座標測定方法。
【請求項12】
測定対象であるワークの三次元座標を測定プログラムで制御された三次元座標測定機であって、
前記ワークの温度、前記三次元座標測定機のX軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、及びZ軸スケールの温度を取得する温度取得部と、
前記温度取得部で取得された前記温度と環境判断閾値とを比較して、前記三次元座標の測定に前記温度が適切である場合には正常判断を行い、前記三次元座標の測定に前記温度が不適切である場合には異常判断を行う環境温度判断部と、
前記環境温度判断部において、前記異常判断が行われた場合には、前記測定プログラムの実行を一時停止させる停止部と、
を備え、
前記環境温度判断は、前記ワークの温度、前記X軸スケールの温度、前記Y軸スケールの温度、及び前記Z軸スケールの温度の全てが、前記環境判断閾値として規定された第1の閾値である上限値と下限値との範囲以内である場合には前記正常判断を、前記ワークの温度、前記X軸スケールの温度、前記Y軸スケールの温度、及び前記Z軸スケールの温度の少なくとも一つが、前記範囲から外れている場合には前記異常判断を行う三次元座標測定機。
【請求項13】
前記環境温度判断は、同じタイミングで取得された前記ワークの温度、前記X軸スケールの温度、前記Y軸スケールの温度、及び前記Z軸スケールの温度のうち最大値と最小値との差分が、前記環境判断閾値として規定された第2の閾値以下である場合には前記正常判断を、前記第2の閾値より大きい場合には前記異常判断を行う請求項12に記載の三次元座標測定
【請求項14】
測定対象であるワークの三次元座標を測定プログラムで制御された三次元座標測定機であって、
前記ワークの温度、前記三次元座標測定機のX軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、及びZ軸スケールの温度を取得する温度取得部と、
前記温度取得部で取得された前記温度と環境判断閾値とを比較して、前記三次元座標の測定に前記温度が適切である場合には正常判断を行い、前記三次元座標の測定に前記温度が不適切である場合には異常判断を行う環境温度判断部と、
前記環境温度判断部において、前記異常判断が行われた場合には、前記測定プログラムの実行を一時停止させる停止部と、
を備え、
前記環境温度判断は、同じタイミングで取得された前記ワークの温度、前記X軸スケールの温度、前記Y軸スケールの温度、及び前記Z軸スケールの温度のうち最大値と最小値との差分が、前記環境判断閾値として規定された第2の閾値以下である場合には前記正常判断を、前記第2の閾値より大きい場合には前記異常判断を行う三次元座標測定
【請求項15】
前記環境温度判断は、前記ワークの温度、前記X軸スケールの温度、前記Y軸スケールの温度、及び前記Z軸スケールの温度の全てにおいて、設定された時間間隔における温度変化量が、前記環境判断閾値として規定された第3の閾値以下である場合には前記正常判断を、前記ワークの温度、前記X軸スケールの温度、前記Y軸スケールの温度、及び前記Z軸スケールの温度の少なくとも一つにおいて、前記時間間隔における温度変化量が、前記第3の閾値より大きい場合には前記異常判断を行う請求項12から14のいずれか1項に記載の三次元座標測定
【請求項16】
測定対象であるワークの三次元座標を測定プログラムで制御された三次元座標測定機であって、
前記ワークの温度、前記三次元座標測定機のX軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、及びZ軸スケールの温度を取得する温度取得部と、
前記温度取得部で取得された前記温度と環境判断閾値とを比較して、前記三次元座標の測定に前記温度が適切である場合には正常判断を行い、前記三次元座標の測定に前記温度が不適切である場合には異常判断を行う環境温度判断部と、
前記環境温度判断部において、前記異常判断が行われた場合には、前記測定プログラムの実行を一時停止させる停止部と、
を備え、
前記環境温度判断は、前記ワークの温度、前記X軸スケールの温度、前記Y軸スケールの温度、及び前記Z軸スケールの温度の全てにおいて、設定された時間間隔における温度変化量が、前記環境判断閾値として規定された第3の閾値以下である場合には前記正常判断を、前記ワークの温度、前記X軸スケールの温度、前記Y軸スケールの温度、及び前記Z軸スケールの温度の少なくとも一つにおいて、前記時間間隔における温度変化量が、前記第3の閾値より大きい場合には前記異常判断を行う三次元座標測定
【請求項17】
前記環境温度判断は、前記停止部が前記測定プログラムの実行を一時停止した後も継続して前記正常判断又は前記異常判断を行い
前記停止部は、前記測定プログラムの実行一時停止している間に、前記環境温度判断において前記正常判断が継続して測定再開閾値以上の回数行われた場合には、前記三次元座標の測定を再開させる請求項12から16のいずれか1項に記載の三次元座標測定
【請求項18】
測定対象であるワークの三次元座標を測定プログラムで制御された三次元座標測定機であって、
前記ワークの温度、前記三次元座標測定機のX軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、及びZ軸スケールの温度を取得する温度取得部と、
前記温度取得部で取得された前記温度と環境判断閾値とを比較して、前記三次元座標の測定に前記温度が適切である場合には正常判断を行い、前記三次元座標の測定に前記温度が不適切である場合には異常判断を行う環境温度判断部と、
前記環境温度判断部において、前記異常判断が行われた場合には、前記測定プログラムの実行を一時停止させる停止部と、
を備え、
前記環境温度判断は、前記停止部が前記測定プログラムの実行を一時停止した後も継続して前記正常判断又は前記異常判断を行い
前記停止部は、前記測定プログラムの実行一時停止している間に、前記環境温度判断において前記正常判断が継続して測定再開閾値以上の回数行われた場合には、前記三次元座標の測定を再開させる三次元座標測定
【請求項19】
前記環境温度判断は、前記停止部が前記測定プログラムの実行を一時停止した後も継続して前記正常判断又は前記異常判断を行い
前記停止部は、前記測定プログラムの実行一時停止している間に、前記環境温度判断において前記異常判断が継続して測定中止閾値以上の回数行われた場合には、前記測定プログラムの実行を中止する請求項12から18のいずれか1項に記載の三次元座標測定
【請求項20】
測定対象であるワークの三次元座標を測定プログラムで制御された三次元座標測定機であって、
前記ワークの温度、前記三次元座標測定機のX軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、及びZ軸スケールの温度を取得する温度取得部と、
前記温度取得部で取得された前記温度と環境判断閾値とを比較して、前記三次元座標の測定に前記温度が適切である場合には正常判断を行い、前記三次元座標の測定に前記温度が不適切である場合には異常判断を行う環境温度判断部と、
前記環境温度判断部において、前記異常判断が行われた場合には、前記測定プログラムの実行を一時停止させる停止部と、
を備え、
前記環境温度判断は、前記停止部が前記測定プログラムの実行を一時停止した後も継続して前記正常判断又は前記異常判断を行い
前記停止部は、前記測定プログラムの実行一時停止している間に、前記環境温度判断において前記異常判断が継続して測定中止閾値以上の回数行われた場合には、前記測定プログラムの実行を中止する三次元座標測定
【請求項21】
前記ワークの複数の測定箇所の公差情報を取得する公差情報取得と、
前記環境温度判断で使用される前記環境判断閾値を前記公差情報に基づいて変更する閾値変更と、
備え
前記閾値変更は、前記公差情報における公差幅が広くなるにつれて、前記環境判断閾値の範囲が広がるように、前記環境判断閾値を変更する請求項12から20のいずれか1項に記載の三次元座標測定
【請求項22】
測定対象であるワークの三次元座標を測定プログラムで制御された三次元座標測定機であって、
前記ワークの温度、前記三次元座標測定機のX軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、及びZ軸スケールの温度を取得する温度取得部と、
前記温度取得部で取得された前記温度と環境判断閾値とを比較して、前記三次元座標の測定に前記温度が適切である場合には正常判断を行い、前記三次元座標の測定に前記温度が不適切である場合には異常判断を行う環境温度判断部と、
前記環境温度判断部において、前記異常判断が行われた場合には、前記測定プログラムの実行を一時停止させる停止部と、
前記ワークの複数の測定箇所の公差情報を取得する公差情報取得と、
前記環境温度判断で使用される前記環境判断閾値を前記公差情報に基づいて変更する閾値変更と、
を備え、
前記閾値変更は、前記公差情報における公差幅が広くなるにつれて、前記環境判断閾値の範囲が広がるように、前記環境判断閾値を変更する三次元座標測定
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元座標測定方法及び三次元座標測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、測定対象であるワークの三次元座標を測定する際に、測定環境の温度を測定することが行われている。
【0003】
例えば特許文献1では、三次元座標測定機のX軸スケール、Y軸スケール、及びZ軸スケールの各々に温度センサを取り付けて、測定環境の温度変化に応じて各スケールの熱膨張を考慮した補正を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-21303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、三次元座標測定機の測定環境の温度は、以下に例示する場合に測定に適さない状態となる。例えば、三次元座標測定機への測定対象であるワークの搬送を自動化する目的で、三次元測定機を空調の整った測定室の外に設置しなければならない場合に、測定環境の温度を一定に保つことが困難である。また、測定が自動化されることにより工場が無人化となり空調を入れない工場があり、このような場合にも測定環境の温度を一定に保つことが困難である。また、ワークが加工直後で未だ熱をもった状態であるにもかかわらず測定を行う場合にも、測定環境の温度を一定に保つことが困難となる。
【0006】
上記で例示したように、測定環境の温度が想定されている温度(又は適した温度)と非常に異なる場合には、例えば特許文献1に記載されているように温度に基づく補正を行ったとしても精度の高い測定の実現は困難である。そして、測定環境の温度が想定されている温度と非常に異なる状況で測定を実行してしまうと、例えば測定検査において不合格品が頻発してしまい手戻り工程が多く発生し、効率的な測定を行うことができない。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、効率の良い測定を行う三次元座標測定方法及び三次元座標測定機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一の態様である三次元座標測定方法は、測定対象であるワークの三次元座標を測定プログラムで制御された三次元座標測定機により測定する三次元座標測定方法であって、ワークの温度、三次元座標測定機のX軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、及びZ軸スケールの温度を取得する温度取得工程と、温度取得工程で取得された温度と環境判断閾値とを比較して、三次元座標の測定に温度が適切である場合には正常判断を行い、三次元座標の測定に温度が不適切である場合には異常判断を行う環境温度判断工程と、環境温度判断工程において、異常判断が行われた場合には、測定プログラムの実行を一時停止させる停止工程と、を含む。
【0009】
本態様によれば、環境温度判断工程において取得された温度と環境判断閾値とを比較して、温度が三次元座標の測定に適切であるかの判断が行われ、温度が測定に不適切と判断された場合には、測定プログラムの実行が一時停止される。これにより、本態様は、測定環境の温度が異常な場合に三次元座標の測定を一時停止させ、測定が正確に行われないことによる不合格品の頻発を防ぎ効率的な測定を行うことができる。
【0010】
好ましくは、環境温度判断工程では、ワークの温度、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、及びZ軸スケールの温度の全てが、環境判断閾値として規定された第1の閾値である上限値と下限値との範囲以内である場合には正常判断を、ワークの温度、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、及びZ軸スケールの温度の少なくとも一つが、範囲から外れている場合には異常判断を行う。
【0011】
好ましくは、環境温度判断工程では、同じタイミングで取得されたワークの温度、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、及びZ軸スケールの温度のうち最大値と最小値との差分が、環境判断閾値として規定された第2の閾値以下である場合には正常判断を、第2の閾値より大きい場合には異常判断を行う。
【0012】
好ましくは、環境温度判断工程では、ワークの温度、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、及びZ軸スケールの温度の全てにおいて、設定された時間間隔における温度変化量が、環境判断閾値として規定された第3の閾値以下である場合には正常判断を、ワークの温度、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、及びZ軸スケールの温度の少なくとも一つにおいて、時間間隔における温度変化量が、第3の閾値より大きい場合には異常判断を行う。
【0013】
好ましくは、環境温度判断工程は、停止工程において、測定プログラムの実行を一時停止した後も継続して行われ、停止工程において測定プログラムの実行が一時停止している間に、環境温度判断工程において正常判断が継続して測定再開閾値以上の回数行われた場合には、三次元座標の測定を再開させる測定再開工程を含む。
【0014】
好ましくは、環境温度判断工程は、停止工程において、測定プログラムの実行を一時停止した後も継続して行われ、停止工程において測定プログラムの実行が一時停止している間に、環境温度判断工程において異常判断が継続して測定中止閾値以上の回数行われた場合には、測定プログラムの実行を中止する中止工程を含む。
【0015】
好ましくは、ワークの複数の測定箇所の公差情報を取得する公差情報取得工程と、環境温度判断工程で使用される環境判断閾値を公差情報に基づいて変更する閾値変更工程と、を含み、閾値変更工程は、公差情報における公差幅が広くなるにつれて、環境判断閾値の範囲が広がるように、環境判断閾値を変更する。
【0016】
本発明の他の態様である三次元座標測定機は、測定対象であるワークの三次元座標を測定プログラムで制御された三次元座標測定機であって、ワークの温度、三次元座標測定機のX軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、及びZ軸スケールの温度を取得する温度取得部と、温度取得部で取得された温度と環境判断閾値とを比較して、三次元座標の測定に温度が適切である場合には正常判断を行い、三次元座標の測定に温度が不適切である場合には異常判断を行う環境温度判断部と、環境温度判断部において、異常判断が行われた場合には、測定プログラムの実行を一時停止させる停止部と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、測定環境の温度が異常な場合に三次元座標の測定を回避し、測定が正確に行われないことによる不合格品の頻発を防ぎ効率的な測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、三次元座標測定機の例を示す斜視図及びブロック図である。
図2図2は、記憶部での温度の記憶構成例を示す図である。
図3図3は、三次元座標測定方法を示すフローチャートである。
図4図4は、各時刻で取得されたワークWの温度と第1の閾値を示す図である。
図5図5は、各時刻で取得されるX軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度、ワークWの温度を示す図である。
図6図6は、ワークWの温度と指定サンプリング間隔とを示す図である。
図7図7は、三次元座標測定方法を示すフロー図である。
図8図8は、測定されるワークの概略を示す図である。
図9図9は、測定プログラムから得られる公差情報及びその公差情報から算出される情報を示す図である。
図10図10は、変更された第1の閾値を示す図である。
図11図11は、変更された第2の閾値を示す図である。
図12図12は、変更された第3の閾値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面に従って本発明に係る三次元座標測定方法及び三次元座標測定機の好ましい実施の形態について説明する。
【0020】
図1は、本実施形態で用いられる三次元座標測定機1の例を示す図(斜視図及びブロック図)である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る三次元座標測定機1は、温度センサ(温度取得部)S1~S4を備える。また、三次元座標測定機1は、コンピュータ31及びコントローラ40を備える。なお、図1では定盤18に設置される測定対象であるワークWの図示は省略されている。
【0022】
三次元座標測定機1は、基台20と、基台20上に設けられた定盤18とを有する。定盤18の上面は、X-Y平面に平行な平面状に形成されており、定盤18の上面の法線方向をZ軸方向とし、X軸、Y軸、Z軸は互いに直交する。
【0023】
定盤18には、定盤18の上面から図中上側(+Z軸方向)に伸びる一対のコラム(支柱)16R及び16Lが取り付けられている。コラム16R及び16Lの上端部(+Z軸側の端部)には、X軸ガイドとして機能するビーム(梁)14が架け渡されている。ビーム14の下側にはX軸スケールが設けられている(不図示)。ビーム14及びコラム16R及び16Lは、門を構成し、Y軸方向に移動する門型のYキャリッジとなる。定盤18の上面と側面とには、Y軸方向に摺動面が形成され、コラム16R及び16Lにはこれに対向するエアベアリングが設けられているので、コラム16R及び16Lは、ビーム14と共にY軸方向に移動自在となる。また、コラム16R及び16Lは、駆動手段としてモータを含むY軸駆動機構17により駆動される。Y軸駆動機構17の内部にはY軸スケールが設けられている。
【0024】
ビーム14には、Z軸方向に伸びるヘッド12が取り付けられている。ビーム14は、摺動面が設けられ、ヘッド12はそれに対応してエアベアリングが設けられる。これにより、ヘッド12はビーム14の長さ方向(X軸方向)に移動自在となる。ヘッド12をビーム14に対して移動させるための駆動手段としては、モータを使用することができる。
【0025】
ヘッド12には、Z軸方向案内用のエアベアリングが内蔵されている。Z軸方向案内用のエアベアリングに沿ってZ軸スピンドル22がZ軸方向に移動自在に設けられている。Z軸スピンドル22を移動させるための駆動手段としてはモータを使用することができる。Z軸スピンドル22の前面にはZ軸スケール(不図示)が設けられている。
【0026】
Z軸スピンドル22の下端にはプローブヘッド23が設けられている。プローブヘッド23にはスタイラス24が接続されており、スタイラス24の先端には測定子26が設けられており、スタイラス24と測定子26により測定プローブを構成する。
【0027】
三次元座標測定機1は、コラム16R及び16L、ヘッド12、Z軸スピンドル22及びプローブヘッド23のそれぞれの移動量を測定するための移動量測定部(例えば、リニアエンコーダ、不図示)を含んでいる。移動量測定部は、X軸方向の移動量を測定するX軸スケール、Y軸方向の移動量を測定するY軸スケール、Z軸方向の移動量を測定するZ軸スケールで構成される。X軸スケールは、ビーム14の下面に設けられてヘッド12の移動量を測定する。Y軸スケールは、Y軸駆動機構17に設けられコラム16R及び16Lの移動量を測定する。Z軸スケールは、Z軸スピンドル22の前面に設けられる。
【0028】
ワークWの測定を行う場合には、コラム16R及び16L、ヘッド12、Z軸スピンドル22及びプローブヘッド23を移動させることにより測定子26をワークWに接触させる。そして測定子26が接触した位置(三次元座標)は、コントローラ40を介してコンピュータ31に送信される。
【0029】
コンピュータ31は、制御部30として機能し、不図示のCPU(Central Processing Unit)とRAMやROMで構成される記憶部33を備える。コンピュータ31は、記憶部33で記憶されたプログラム(例えば測定プログラム(パートプログラム))をCPUで実行して、制御部30としての機能を実現する。
【0030】
制御部30は、三次元座標測定制御部30A、温度取得制御部30B、環境温度判断部30C、及び停止部30Dを備える。
【0031】
コントローラ40は、測定プログラムがCPUで実行されることにより実現される三次元座標測定制御部30Aからの制御信号に基づいて、三次元座標測定機1を制御して(CNC(computerized numerical control)制御)、三次元座標の測定を行う。またコントローラ40は、温度取得制御部30Bからの制御信号に基づいて、温度センサS1~S4を制御して温度を取得する。温度取得制御部30Bは、自動又は手動での温度取得開始指令を受けた後は温度取得終了指令を受けるまで、リアルタイム(常時)に温度の取得を継続させる。
【0032】
温度センサS1は、測定対象であるワークW(不図示)に配置され、ワークWの温度を取得する。温度センサS2は、ビーム14の下面に設けられたX軸スケールに配置され、X軸スケールの温度を取得する。温度センサS3は、Y軸駆動機構17内に設けられるY軸スケールに配置され、Y軸スケールの温度を取得する。温度センサS4は、Z軸スピンドル22の前面に設けられるZ軸スケールに配置され、Z軸スケールの温度を取得する。温度センサS1~S4は、温度取得制御部30Bにより制御されて、同じタイミングで同時刻の温度を各々取得する。同時刻に取得された温度センサS1~S4の温度を1セットとして、例えば10秒毎に1セットの温度が温度センサS1~S4により取得される。温度センサS1~S4は、無線又は有線によりコントローラ40に接続され、取得された温度をコントローラ40に送信する。コントローラ40は送信された各々の温度をコンピュータ31に送信し、コンピュータ31は、記憶部33に取得された温度を順次記憶する。
【0033】
図2は、記憶部33での温度の記憶構成例を示す図である。
【0034】
記憶部33は、温度センサS1~S4で同時刻に取得された温度は1セットとして関連付けて記憶されている。例えば、温度センサS2で取得されたX軸スケールの温度(X1)、温度センサS3で取得されたY軸スケールの温度(Y1)、温度センサS4で取得されたZ軸スケールの温度(Z1)、温度センサS1で取得されたワークWの温度(W1)は、同時刻(○○時○○分○○秒)に取得され、互いに関連付けて記憶されている。次に、10秒後(△△時△△分△△秒)に同様に、X軸スケールの温度(X1)、Y軸スケールの温度(Y1)、Z軸スケールの温度(Z1)、ワークの温度(W1)が関連付けて記憶される。その後、10秒毎に温度センサS1~S4で取得された温度が1セットとして記憶部33に記憶される。なお、図2では、2セット分の温度の記憶について図示しているが、温度は決められた10秒毎に温度取得が終了するまで順次記憶される。また、図2では、10秒毎に温度取得が行われる例について説明したが、温度の取得間隔はこれに限定されるものではない。ユーザは、温度の取得間隔を設定することができる。
【0035】
<三次元座標測定方法>
次に、三次元座標測定機1を使用した三次元座標測定方法に関して説明する。
【0036】
図3は、三次元座標測定方法を示すフローチャートである。
【0037】
先ず、温度取得制御部30Bにより制御された温度センサS1~S4は、10秒間隔でワークWの温度、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度を取得する(ステップS10:温度取得工程)。取得された各温度は、温度が取得された時刻に関連付けられて1セット毎に記憶部33に記憶される(ステップS11:温度記憶工程)。そして環境温度判断部30Cは、記憶部33に記憶されている温度を読み取り、読み取った温度と環境判断閾値とを比較して測定環境の環境温度が適切である場合には正常判断を行い、環境温度が不適切である場合には異常判断を行う(ステップS12:環境温度判断工程)。
【0038】
環境温度判断部30Cが正常判断を行った場合には、測定プログラムの実行が継続される(ステップS13)。そして、三次元座標測定制御部30Aは、三次元座標の測定が終了しているか否かを判断し(ステップS14)、測定が終了していない場合には、温度取得工程(ステップS10)、温度記憶工程(ステップS11)、及び環境判断工程(ステップS12)が再び行われる。一方、三次元座標の測定が終了した場合には、三次元座標測定方法は終了する。
【0039】
一方、環境温度判断部30Cが異常判断を行った場合には、停止部30Dは測定プログラムの実行を一時停止させ測定を一時停止する(ステップS15:停止工程)。測定プログラムの実行が一時停止している間でも、温度取得制御部30Bにより制御された温度センサS1~S4は温度を取得し(ステップS16:温度取得工程)、取得された各温度は記憶部33に記憶され(ステップS17:温度記憶工程)、環境温度判断部30Cにより環境温度の判断が行われる(ステップS18:環境温度判断工程)。
【0040】
そして、測定プログラムの実行の一時停止中に正常判断が行われた場合には、環境温度判断部30Cは、連続して正常判断がN回以上行われたか否かを判断する(ステップS19)。三次元座標測定制御部30Aは、連続してN回以上正常判断が行われた場合には、測定プログラムの一時停止を解除し、測定プログラムの実行を再開させる(ステップS22:測定再開工程)。一方、連続して正常判断がN回未満である場合には、測定プログラムの実行は一時停止したまま再び温度取得工程(ステップS16)、温度記憶工程(ステップS17)、及び環境温度判断工程(ステップS18)が行われる。なお、Nは測定再開閾値として設定された値であり、ユーザが測定環境を考慮して設定することができる。
【0041】
また、測定プログラムの実行の一時停止中に異常判断が行われた場合には、環境温度判断部30Cは、連続して異常判断がM回以上行われたか否かを判断する(ステップS19)。三次元座標測定制御部30Aは、連続してM回以上正常判断が行われた場合には、測定プログラムの実行を中止し測定を中止させる(ステップS21:測定中止工程)。一方、連続して異常判断がM回未満である場合には、測定プログラムの実行は一時停止したまま再び温度取得工程(ステップS16)、温度記憶工程(ステップS17)、及び環境温度判断工程(ステップS18)が行われる。なお、Mは測定中止閾値として設定された値であり、ユーザが測定環境を考慮して設定することができる。
【0042】
以上で説明したように、本実施形態によれば、環境温度判断部30Cで測定環境の環境温度が異常であるか又は正常であるかの判断が行われ、異常である場合には三次元座標の測定が一時停止される。これにより、本実施形態は、異常な環境温度下での三次元座標の測定を回避して、測定が正確に行われないことによる不合格品の頻発を防ぎ効率的な測定を行うことができる。
【0043】
更に、本実施形態によれば、三次元座標の測定が一時停止されている間にも、環境温度判断部30Cで測定環境の環境温度が異常であるか又は正常であるかの判断が行わる。そして、測定が一時停止中に、正常判断が測定再開閾値以上の回数継続された場合には、本実施形態では三次元座標の測定が再開される。これにより、本実施形態では、測定が一旦停止になった後に、温度が適切な範囲に戻った場合に再度測定を行うことができ、より効率的な測定を行うことができる。一方、測定が一時停止中に、異常判断が測定中止閾値以上の回数継続された場合には、三次元座標の測定が中止される。これにより、本実施形態では、測定が一旦停止になった後に、温度が適切な範囲に戻らないような状況の場合には、測定を中止させて、測定不合格品の頻発を防ぐことができる。
【0044】
<環境判断工程及び停止工程>
次に、環境判断工程及び停止工程の具体例を説明する。以下では、環境判断工程の具体例として第1の判断、第2の判断、及び第3の判断に関して説明する。
【0045】
先ず第1の判断に関して説明する。第1の判断では、環境温度判断部30Cにより環境判断閾値として規定された第1の閾値を使用して行われる。第1の閾値では、温度の上限値及び下限値が規定されている。環境温度判断部30Cは、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度、ワークWの温度の全て(以下全ての温度という)が第1の閾値で規定されている上限値と下限値の範囲以内である場合には環境温度の正常判断を行い、少なくとも一つでも第1の閾値で規定されている上限値と下限値の範囲から外れる場合には、環境温度の異常判断を行う。
【0046】
図4は、各時刻で取得されたワークWの温度と第1の閾値を示す図である。なお、図4では、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度は省略されている。また、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度は、何れの時刻においても以下で説明する上限値と下限値との範囲内であるものとする。従って、以下では、環境判断に直接的に影響を及ぼすワークWの温度についてのみ説明する。
【0047】
図4で示されるグラフの縦軸は温度を示し横軸は温度が取得された時刻を示す。符号103では第1の閾値としての上限値(22℃)が示され、符号105では第1の閾値として下限値(18℃)が示されている。また、線L1では10秒毎に取得されたワークWの温度が示されている。
【0048】
時刻T1の直前までは、環境温度判断部30Cは、ワークWの温度が上限値(符号103)と下限値(符号105)との範囲であり、全ての温度が上限値と下限値との範囲であるので、正常判断を行う。この場合、三次元座標測定制御部30Aにより測定プログラムが実行され、三次元座標の測定が行われる。
【0049】
時刻T1では、環境温度判断部30Cは、ワークWの温度が下限値を超えていることから異常判断を行う。この場合、停止部30Dは、三次元座標測定制御部30Aでの測定プログラムの実行を一時停止させ、三次元座標の測定が停止する。
【0050】
時刻T1の経過後であって時刻T2の直前までは、環境温度判断部30Cは、ワークWの温度が上限値と下限値との範囲であり、全ての温度が上限値と下限値との範囲内であるので正常判断を行う。この場合、停止部30Dは、異常判断後に正常判断が継続してN(測定再開閾値)回以上行われた場合には、測定プログラムの実行の一時停止を解除し、測定プログラムの実行を再開させる。
【0051】
その後、時刻T2では、環境温度判断部30Cは、ワークWの温度が上限値を超えていることから異常判断をする。この場合、停止部30Dは、三次元座標測定制御部30Aでの測定プログラムの実行を一時停止させ、三次元座標の測定が停止する。
【0052】
時刻T2の経過後では、環境温度判断部30Cは、ワークWの温度が上限値と下限値との範囲であり、全ての温度が上限値と下限値との範囲内であることから正常判断をする。停止部30Dは、測定プログラムの一時停止中に正常判断が継続してN(測定再開閾値)回以上行われた場合には、測定プログラムの実行の一時停止を解除し、測定プログラムの実行を再開させる。
【0053】
なお、図4で示した場合では、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度は、何れの時刻においても第1の閾値の範囲である場合について説明したので、ワークWの温度に関して説明をした。X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度も上述したワークWの温度と同様に第1の閾値の範囲(符号103で示された第1の閾値の上限値と符号105で示された第1の閾値の下限値の範囲)である場合には正常判断が行われ、第1の閾値の範囲を超えている場合には異常判断が行われる。そして、環境温度判断部30Cは、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度、ワークWの温度の全てが第1の閾値で規定されている上限値と下限値の範囲以内である場合には環境温度の正常判断を行い、少なくとも一つでも第1の閾値で規定されている上限値と下限値の範囲から外れる場合には、環境温度の異常判断を行う。
【0054】
以上で説明したように、第1の判断では、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度、及びワークWの温度の少なくとも一つでも第1の閾値で規定された温度範囲を超えた場合の測定を避けることができる。例えば、高い測定精度が要求されるワークWにおいて、厳密に各軸のスケール温度及びワーク温度を管理した測定を行うことができる。また例えば、ワークWが加工直後で、熱い状態での測定を自動的に避けることができる。
【0055】
次に第2の判断に関して説明する。第2の判断では、環境温度判断部30Cにより環境判断閾値として規定された第2の閾値を使用して行われる。第2の閾値では、1セット内のX軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度、ワークWの温度のうち最大値と最小値との差分が規定されている。
【0056】
第2の判断部35Bは、1セット内のX軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度、ワークWの温度のうち最大値と最小値との差分が第2の閾値以下である場合には環境温度の正常判断を行い、第2の閾値より大きい場合には環境温度の異常判断を行う。
【0057】
図5は、各時刻で取得されるX軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度、ワークWの温度を示す図である。
【0058】
図5の縦軸は温度を示し横軸は時刻を示す。線L2は温度センサS2で取得されたX軸スケールの温度を示し、線L3は温度センサS3で取得されたY軸スケールの温度を示し、線L4は温度センサS4で取得されたZ軸スケールの温度を示し、線L5は温度センサS1で取得されたワークWの温度を示す。また、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度、ワークWの温度は同じタイミングで取得される。ここで、同じタイミング温度が取得されるとは、同時刻又は設定された時間の範囲内で各温度が取得されることをいう。
【0059】
各タイミングにおいて、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度、ワークWの温度のうち最小の温度をV1とし、最大の温度をV2とする。環境温度判断部30Cは、各タイミングでV1とV2とを特定する。そして、環境温度判断部30Cは、V2とV1との差分を各タイミングで算出する。
【0060】
時刻T3の直前までは、V2とV1との差分は第2の閾値以下であり、環境温度判断部30Cは環境温度の正常判断を行う。この場合、三次元座標測定制御部30Aにより測定プログラムが実行され、三次元座標の測定が行われる。
【0061】
時刻T3では、X軸スケールの温度がV1を示し(線L2参照)、Y軸スケールの温度V2を示す(線L3参照)。時刻T3におけるV2とV1との差分は第2の閾値より大きいので、環境温度判断部30Cは環境温度の異常判断をする。この場合、停止部30Dは、三次元座標測定制御部30Aでの測定プログラムの実行を一時停止させ、三次元座標の測定が停止する。
【0062】
時刻T3の経過後は、V2とV1との差分は第2閾値以下となるので、環境温度判断部30Cは、環境温度の正常判断を行う。この場合、停止部30Dは、異常判断後に正常判断がN(測定再開閾値)回以上継続された場合には、測定プログラムの実行の一時停止を解除し、測定プログラムの実行を再開させる。
【0063】
以上で説明したように、第2の判断では、三次元座標測定機1が設置されている測定室の温度ムラが大きい場合の測定を避けることができる。例えば、長期の休暇明けで測定室の空調を入れた直後で、測定室の上方が暖かく(Z軸が温かい)、測定室の下方が寒い(Y軸が冷たい)場合は、各軸の温度差が大きくなるので、測定室の温度ムラが大きい場合の測定を自動的に避けることができる。
【0064】
また、上述した第1の判断において、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度、及びワークWの温度の全てが第1の閾値の範囲内である場合であっても、第2の判断により、測定室の温度ムラが大きい場合などでは、測定を中止させることができる。
【0065】
次に第3の判断に関して説明する。第3の判断は、環境温度判断部30Cにより環境判断閾値として第3の閾値を使用して行われる。第3の閾値では、指定サンプリング間隔における温度変化量が規定されている。ここで指定サンプリング間隔とは、温度変化量を算出する際のサンプリングする時間間隔を示す。従って、指定サンプリング間隔が30秒とは、現在時刻と現在時刻から30秒遡った時刻との間隔が規定される。
【0066】
環境温度判断部30Cは、全ての温度において、指定サンプリング間隔における温度変化量が第3の閾値以内である場合には、環境温度の正常判断を行い、少なくとも一つでも第3の閾値よりも大きい場合には環境温度の異常判断を行う。
【0067】
図6は、ワークWの温度と指定サンプリング間隔とを示す図である。
【0068】
図6の縦軸は温度を示し横軸は時刻を示す。線L6は、時刻t1~t30までの温度センサS1で測定されたワークWの温度を示す。なお、図6では、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度は省略されており、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度は第3の閾値以内であるとする。時刻t1~t30は、10秒毎に期間が区切られている。図6では、指定サンプリング間隔がTA(30秒)の場合を時刻t7及び時刻t17について図示しており、指定サンプリング間隔がTB(60秒)の場合を時刻t10及び時刻t20について図示している。ワークWには、Event#1とEvent#2とが発生しそれに伴い温度が上昇している。
【0069】
先ず、第3の閾値として、指定サンプリング間隔がTA(30秒)で温度変化量(1℃)が規定されている場合について説明する。環境温度判断部30Cは、現在時刻からTA遡った期間における温度変化量を算出し、第3の閾値として規定された温度変化量と比較して判断を行う。
【0070】
時刻t1~t6では、環境温度判断部30Cは、指定サンプリングTAの期間において、温度変化量が1℃以下であるので正常判断を行う。なお、時刻t1~t3では、現在時刻からTA遡った温度は計測されていないが、時刻t1以前の温度は時刻t1と同じ温度であると仮定して判断を行う。
【0071】
時刻t7~t11では、環境温度判断部30Cは、指定サンプリングTAの期間において、温度変化量が1℃より大きいので異常判断を行う。この場合、環境温度判断部30Cは、連続して6回の異常判断を行うことになるが、測定中止閾値Mは20回に設定されているので、測定プログラムの実行は一時停止の状況である。
【0072】
時刻t12~t16では、環境温度判断部30Cは、指定サンプリングTAの期間において、温度変化量が1℃以下であるので正常判断を行う。この場合、環境温度判断部30Cは、連続して4回の正常判断を行うことになるが、測定再開閾値Nは10回に設定されているので、測定プログラムの実行は一時停止の状況である。
【0073】
時刻t17~t24では、環境温度判断部30Cは、指定サンプリングTAの期間において、温度変化量が1℃より大きいので異常判断を行う。この場合、環境温度判断部30Cは、連続して6回の異常判断を行うことになるが、測定中止閾値Mは20回に設定されているので、測定プログラムの実行は一時停止の状況である。
【0074】
時刻t25~t30では、環境温度判断部30Cは、指定サンプリングTAの期間において、温度変化量が1℃以下であるので正常判断を行う。この場合、環境温度判断部30Cは、連続して4回の正常判断を行うことになるが、測定再開閾値Nは10回に設定されているので、測定プログラムの実行は一時停止の状況である。
【0075】
次に、第3の閾値として、指定サンプリング間隔がTB(60秒)で温度変化量(1℃)が規定されている場合について説明する。
【0076】
時刻t1~t6では、環境温度判断部30Cは、指定サンプリングTBの期間において、温度変化量が1℃以下であるので正常判断を行う。なお、時刻t1~t5では、現在時刻からTB遡った温度は計測されていないが、時刻t1以前の温度は時刻t1と同じ温度であると仮定して判断を行う。
【0077】
時刻t7~t14では、環境温度判断部30Cは、指定サンプリングTBの期間において、温度変化量が1℃より大きいので異常判断を行う。この場合、環境温度判断部30Cは、連続して9回の異常判断を行うことになるが、測定中止閾値Mは20回に設定されているので、測定プログラムの実行は一時停止の状況である。
【0078】
時刻t15~t16では、環境温度判断部30Cは、指定サンプリングTBの期間において、温度変化量が1℃以下であるので正常判断を行う。
【0079】
時刻t17~t27では、環境温度判断部30Cは、指定サンプリングTBの期間において、温度変化量が1℃より大きいので異常判断を行う。この場合、環境温度判断部30Cは、連続して12回の異常判断を行うことになるが、測定中止閾値Mは20回に設定されているので、測定プログラムの実行は一時停止の状況である。
【0080】
時刻t28~t30では、環境温度判断部30Cは、指定サンプリングTBの期間において、温度変化量が1℃以下であるので正常判断を行う。この場合、環境温度判断部30Cは、連続して3回の正常判断を行うことになるが、測定再開閾値Nは10回に設定されているので、測定プログラムの実行は一時停止の状況である。
【0081】
なお、図6で示した場合では、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度は、何れの時刻においても第3の閾値の範囲である場合について説明したので、ワークWの温度に関して説明をした。X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度も上述したワークWの温度と同様に第3の閾値の範囲である場合には正常判断が行われ、第3の閾値の範囲を超えている場合には異常判断が行われる。そして、環境温度判断部30Cは、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度、ワークWの温度の全てが第3の閾値の範囲以内である場合には環境温度の正常判断を行い、少なくとも一つでも第3の閾値で規定されている範囲から外れる場合には、環境温度の異常判断を行う。
【0082】
以上で説明したように、第3の判断では、三次元座標測定機1が設置されている測定室又はワークWの温度変化が大きい場合の測定を避けることができる。例えば、測定室に午前中に日光が差し込み、測定室の温度が急激に上昇中の場合の測定を自動的に避けることができる。また、ワークWが加工直後であって、熱い状態から急激に冷えてきている場合の測定を自動的に避けることができる。
【0083】
また、上述した第1の判断において、X軸スケールの温度、Y軸スケールの温度、Z軸スケールの温度、及びワークWの温度の全てが第1の閾値の範囲内である場合であっても、第3の判断により、測定室の温度が急激に上昇中の場合やワークWの温度が急激に冷めている場合には、測定を中止させることができる。
【0084】
上述で説明したように、環境温度判断部30Cは、例えば第1の判断、第2の判断、又は第3の判断により、各温度センサで取得された温度の判断を行う。そして、停止部30Dは、温度センサS1~S4のうち少なくとも一つの温度センサで取得された温度に異常判断がある場合には、三次元座標の測定を停止させる。これにより、測定が正確に行われないことによる不合格品の頻発を防ぎ効率的な測定を行うことができる。
【0085】
なお、上述した説明では、環境温度判断部30Cは、第1の判断、第2の判断、及び第3の判断を、それぞれ単独で用いる場合について説明したが本発明の適用はこれに限定されるものではない。環境温度判断部30Cは、複数種類の判断を組み合わせて用いてもよい。例えば、環境温度判断部30Cは、第1の判断、第2の判断、及び第3の判断のうち2つ以上の判断を組み合わせて用いてもよい。組み合わせて用いられた場合には、少なくとも一つの判断において異常判断があった場合には、停止部30Dは測定プログラムの実行を停止する。これにより、より正確に測定環境の環境温度の判断を行うことでき、より効率的な三次元座標の測定を行うことができる。
【0086】
<変形例>
次に、本発明の変形例に関して説明する。本例では、第1の判断で使用する第1の閾値、第2の判断で使用する第2の閾値、及び第3の判断で使用する第3の閾値を測定プログラムに含まれる公差情報を使用して変更する。これにより、測定プログラムに規定される測定箇所毎の公差に応じた環境判断閾値を設定することができる。
【0087】
図7は、本例の三次元座標測定方法を示すフロー図である。
【0088】
先ず、ユーザにより環境判断閾値(第1の閾値、第2の閾値又は第3の閾値)が入力される(ステップS20:閾値設定工程)。その後、環境温度判断部30Cは、記憶部33の測定プログラムから、公差情報を取得する(ステップS21:公差情報取得工程)。その後、環境温度判断部30Cは、公差情報に基づいて、環境判断閾値を変更する(ステップS22:閾値変更工程)。以下、変更された環境判断閾値を使用して環境温度の判断が行われる。なお、ステップS23~ステップ35は、図3で説明したステップS10~ステップS22と同様であるので説明は省略する。
【0089】
なお、ユーザは、各測定プログラムにおいて入力された環境判断閾値について、公差情報を使用して変更をするか否かの設定をすることができる、又測定する測定箇所毎においても入力された環境判断閾値について公差情報を使用して変更するか否かを設定することができる。
【0090】
<公差情報取得工程及び閾値変更工程>
次に、公差情報取得工程及び閾値変更工程の具体例を説明する。以下では、具体例として第1の閾値の変更、第2の閾値の変更、及び第3の閾値の変更に関して説明する。
【0091】
先ず、第1の閾値が変更される場合について説明する。第1の閾値として上限値Tu(30℃)と下限値Tl(10℃)とが予め入力されている。また、入力された上限値Tuと下限値Tlとから、温度中央値Tc(20℃)(Tc=Tl+(Tu-Tl)/2)、温度幅Tw(20℃)(Tw=Tu-Tl)が算出される。
【0092】
図8は測定されるワークWの概略を示す図であり、図9は測定プログラムから得られる公差情報及びその公差情報から算出される情報を示す図である。
【0093】
図8に示したワークWにおける円C1と点P1に関して測定が行われる。円C1の中心のX座標(図9では「円C1-X」と示す)の設計値は10であり公差は±0.5である。また、円C1の中心のY座標(図9では「円C1-Y」と示す)の設計値は10であり公差は±0.1である。また、円C1の直径(図9では「円C1-直径」と示す)の設計値は、Φ30であり公差は、±0.3である。また、点P1のX座標(図9では「点P1-X」示す)の設計値は30であり公差は、±0.7である。
【0094】
図9には、測定箇所、設計値、公差の上限値、公差の下限値、公差の上限値と公差の下限値との差分である公差幅、及び正規化した公差幅αiが示されている。なお、正規化した公差幅αiは以下の式(1)で算出される。
【0095】
【数1】
【0096】
例えば、円C1のX座標の正規化した公差幅を算出する場合には、式(1)におけるXに、円C1のX座標の公差幅(1.0)を、xmaxに円C1の直径の公差幅(1.4)を、xminに円C1のY座標の公差幅(0.2)を、Mに100%を、mに1%を代入することにより算出される。
【0097】
上記の式(1)で各公差幅を正規化(1~100%)すると、円C1-Xが67.0%、円C1-Yが1.0%、円C1-直径が34.0%、円P1-Xが100.0%となる。そして、この正規化した公差幅を利用して、第1の閾値を変更する。
【0098】
図10は、変更された第1の閾値である上限値及び下限値を示す図である。図10では、変更後の第1の閾値(上限)、平均化した変更後の第1の閾値(上限)、変更後の第1の閾値(下限)、及び平均化した変更後の第1の閾値(下限)が示されている。
【0099】
変更された第1の閾値(上限)は、以下の式(2)により算出される。
【0100】
T’u=Tc+(Tw/2)*αi…(2)
変更された第1の閾値(下限)は以下の式(3)により算出される。
【0101】
T’u=Tc-(Tw/2)*αi…(3)
このように、ユーザが入力した第1の閾値を、測定プログラムが有する公差情報を使用して、公差幅が広くなるにつれて、第1の閾値として規定される上限値と下限値との幅を広く変更する。言い換えると、ユーザが入力した第1の閾値を、測定プログラムが有する公差情報を使用して、公差幅が狭くなるにつれて、第1の閾値として規定される上限値と下限値との幅を狭く変更する。例えば、最も狭い公差幅を有する円C1-Y(0.2)では、ユーザが入力した第1の閾値(上限値Tu=30℃、下限値Tl=10℃)から上限値(20.10℃)、下限値(19.90℃)に最も幅が狭い第1の閾値に変更される。また、2番目に狭い公差幅を有するC1-直径(0.6)では、ユーザが入力した第1の閾値(上限値Tu=30℃、下限値Tl=10℃)から上限値(23.40℃)、下限値(16.60℃)に2番目に範囲が狭い第1の閾値に変更される。
【0102】
このように、測定箇所毎に公差情報を使用して第1の閾値を変更することにより、各測定箇所を測定する際に変更後の第1の閾値を超えた場合には、その測定箇所の測定が一時停止される。これにより、測定検査において不合格品の頻発、手戻りを抑制し、効率的な測定を行うことができる。
【0103】
また、測定する測定要素毎に変更後の第1の閾値を平均化して算出してもよい。具体的には、図9に示す場合では、測定要素として円C1と円P1とがあるので、それぞれにおいて変更後の第1の閾値を平均してもよい。例えば、円C1-X(26.70℃)、円C1-Y(20.10)、及び円C1-直径(23.40℃)の変更後の第1の閾値を平均することにより、円C1に対する平均化した第1の閾値(23.40)を算出することができる。このように、測定要素毎に第1の閾値を算出することにより、各測定要素を測定する際に算出された第1の閾値を超えた場合には、その測定要素の測定が一時停止される。これにより、測定検査において不合格品の頻発、手戻りを抑制し、効率的な測定を行うことができる。
【0104】
次に、第2の閾値の変更に関して説明する。第2の閾値として最大温度幅(Tmax-min)が5℃と予め入力されている。また、測定対象であるワークW及び測定プログラムから得られる情報、公差幅、正規化した公差幅αiは、図9で説明をしたものと同様である。
【0105】
図11は、変更された第2の閾値(T’max-min)を示す図である。図11では、変更後の第2の閾値(幅)と、平均化された変更後の第2の閾値(幅)が示されている。
【0106】
変更された第2の閾値(幅)は、以下の式(6)により算出される。
【0107】
T’max-min=Tmax-min*αi…(6)
このように、ユーザが入力した第2の閾値を、測定プログラムが有する公差情報を使用して、公差幅が広くなるにつれて、第2の閾値の範囲を広く変更する。言い換えると、ユーザが入力した第2の閾値を、測定プログラムが有する公差情報を使用して、公差幅が狭くなるにつれて、第2の閾値の範囲を狭く変更する。例えば、最も狭い公差幅を有する円C1-Y(0.2)では、ユーザが入力した第2の閾値(Tmax-min=5℃)から0.05に最も範囲が狭い第2の閾値に変更される。また、2番目に狭い公差幅を有するC1-直径(0.6)では、ユーザが入力した第2の閾値(Tmax-min=5℃)から1.70に2番目に範囲が狭い第2の閾値に変更される。このように、測定箇所毎に公差情報を使用して第2の閾値を変更することにより、各測定箇所を測定する際に変更後の第2の閾値を超えた場合には、その測定箇所の測定が一時停止される。これにより、測定検査において不合格品の頻発、手戻りを抑制し、効率的な測定を行うことができる。
【0108】
また、測定する測定要素毎に変更後の第2の閾値を平均化して算出してもよい。具体的には、図11に示す場合では、測定要素として円C1と円P1とがあるので、それぞれにおいて変更後の第2の閾値を平均してもよい。例えば、円C1-X(3.35℃)、円C1-Y(0.05)、及び円C1-直径(1.70℃)の変更後の第2の閾値を平均することにより、円C1に対する平均化した第2の閾値(1.70)を算出することができる。このように、測定要素毎に第2の閾値を算出することにより、各測定要素を測定する際に算出された第2の閾値を超えた場合には、その測定要素の測定が一時停止される。これにより、測定検査において不合格品の頻発、手戻りを抑制し、効率的な測定を行うことができる。
【0109】
次に、第3の閾値の変更に関して説明する。第3の閾値として、ユーザにより指定サンプリング間隔における温度変化量Tsが5℃と予め入力されている。なお、本例においては変更の前後で指定サンプリング間隔は一定であり60秒とする。また、測定対象であるワークW及び測定プログラムから得られる情報、公差幅、正規化した公差幅αiは、図9で説明をしたものと同様である。
【0110】
図12は、変更された第3の閾値(Ts’)を示す図である。図12では、変更された第3の閾値と、平均化した変更後の第3の閾値が示されている。
【0111】
変更された第3の閾値は、以下の式(7)により算出される。
【0112】
T’s=Ts*αi…(7)
このように、ユーザが入力した第3の閾値を、測定プログラムが有する公差情報を使用して、公差幅が広くなるにつれて、第3の閾値の範囲を広く変更する。言い換えると、ユーザが入力した第3の閾値を、測定プログラムが有する公差情報を使用して、公差幅が狭くなるにつれて、第3の閾値の範囲を狭く変更する。例えば、最も狭い公差幅を有する円C1-Y(0.2)では、ユーザが入力した第3の閾値(Ts=5℃)から0.05に最も幅が狭い第3の閾値に変更される。また、2番目に狭い公差幅を有するC1-直径(0.6)では、ユーザが入力した第3の閾値(Ts=5℃)から1.70に2番目に範囲が狭い第3の閾値に変更される。このように、測定箇所毎に公差情報を使用して第3の閾値を変更することにより、各測定箇所を測定する際に変更後の第3の閾値を超えた場合には、その測定箇所の測定が一時停止される。これにより、測定検査において不合格品の頻発、手戻りを抑制し、効率的な測定を行うことができる。
【0113】
また、測定する測定要素毎に変更後の第3の閾値を平均化して算出してもよい。具体的には、図12に示す場合では、測定要素として円C1と円P1とがあるので、それぞれにおいて変更後の第3の閾値を平均して第3の閾値としてもよい。例えば、円C1-X(3.35℃)、円C1-Y(0.05)、及び円C1-直径(1.70℃)の変更後の第3の閾値を平均することにより、円C1に対する平均化した第3の閾値(1.70)を算出することができる。このように、測定要素毎に第3の閾値を算出することにより、各測定要素を測定する際に算出された第3の閾値を超えた場合には、その測定要素の測定が一時停止される。これにより、測定検査において不合格品の頻発、手戻りを抑制し、効率的な測定を行うことができる。
【0114】
<効果>
以上で説明したように、本態様では、測定環境の温度が異常な場合に三次元座標の測定を回避し、測定が正確に行われないことによる不合格品の頻発を防ぎ効率的な測定を行うことができる。
【0115】
以上で本発明の例に関して説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0116】
1 :三次元座標測定機
30 :制御部
30A :三次元座標測定制御部
30B :温度取得制御部
30C :環境温度判断部
30D :停止部
31 :コンピュータ
33 :記憶部
40 :コントローラ
図1
図2
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図12