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  • 特許-高吸水性樹脂およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/24 20060101AFI20240209BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20240209BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20240209BHJP
   C08F 8/14 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
C08J3/24 CER
B01J20/26 D
B01J20/30
C08F8/14
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019536818
(86)(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 KR2018013917
(87)【国際公開番号】W WO2019117482
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-09-11
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】10-2017-0173553
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0139102
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヘミン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、チョンミン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨンス
【合議体】
【審判長】磯貝 香苗
【審判官】植前 充司
【審判官】天野 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/159144(WO,A1)
【文献】韓国特許第10-2015-0132035(KR,B1)
【文献】韓国特許第10-2017-0106156(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1684649(KR,B1)
【文献】特表2016-524634(JP,A)
【文献】特開平2-196802(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0312273(US,A1)
【文献】特許第5647625(JP,B2)
【文献】特許第3481250(JP,B2)
【文献】特開2002-284803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/24
B01J 20/26
B01J 20/30
C08F 8/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の第1架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および
前記ベース樹脂粉末上に形成されており、前記第1架橋重合体が表面架橋剤を媒介として追加架橋された第2架橋重合体を含む表面架橋層を含む高吸水性樹脂であって、
前記高吸水性樹脂は、ASTM規格の標準網篩で分級した150μm~850μmの粒径を有し、かつ、それぞれの高吸水性樹脂粒子の最短直径/最長直径で定義される縦横比が0.5未満である高吸水性樹脂粒子を10個数%以上で含み、
生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(SFC;・10-7cm3・s/g)が30(・10-7cm3・s/g)以上である、高吸水性樹脂。
【請求項2】
下記式1で表される吸水度が46~63g/gである、請求項1に記載の高吸水性樹脂:
[式1]
吸水度=CRC+AUP
上記式1中、
CRCは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能を示し、
AUPは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する0.7psi下で1時間の加圧吸水能を示す。
【請求項3】
前記CRCは、25~35g/gである、請求項2に記載の高吸水性樹脂。
【請求項4】
前記AUPは、21~27g/gである、請求項2または3に記載の高吸水性樹脂。
【請求項5】
0.3psiの加圧下生理食塩水に対する30秒吸水速度が1.5mm/min以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項6】
表面張力(surface tension)が60~75mN/mである、請求項1~5のいずれか1項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項7】
前記表面架橋剤は、互いに異なる炭素数を有する炭素数2~6のアルキレンカーボネートの2種以上を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項8】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、および2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の高吸水性樹脂。
【請求項9】
発泡剤および内部架橋剤の存在下に、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して第1架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階;
前記含水ゲル重合体をゲル粉砕、乾燥、粉砕およびASTM規格の標準網篩で150μm~850μmの粒径を有するベース樹脂粉末を分級して、それぞれのベース樹脂粉末の最短直径/最長直径で定義される縦横比が0.5未満であるベース樹脂粉末を10個数%以上で含むベース樹脂を形成する段階;および
表面架橋剤および液状媒質を含み、20~25℃の温度で表面張力が25~50mN/mである表面架橋液の存在下に、前記ベース樹脂を熱処理して表面架橋する段階を含む、高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記内部架橋剤は、ポリオールのポリ(メタ)アクリレート系第1内部架橋剤およびアリル(メタ)アクリレート系第2内部架橋剤を含み、
前記第1および第2内部架橋剤の総含量は、前記内部架橋剤および単量体を含む単量体組成物の100重量部に対して0.01重量部~2重量部である、請求項9に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記発泡剤は、炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)、炭酸ナトリウム(sodium carbonate)、炭酸水素カリウム(potassium bicarbonate)、炭酸カリウム(potassium carbonate)、炭酸水素カルシウム(calcium bicarbonate)、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、炭酸水素マグネシウム(magnesium bicarbonate)および炭酸マグネシウム(magnesium carbonate)からなる群より選択された1種以上を含む、請求項9または10に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記表面架橋剤は、互いに異なる炭素数を有する炭素数2~6のアルキレンカーボネートの2種以上を含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項13】
前記表面架橋液は、界面活性剤をさらに含む、請求項9~12のいずれか1項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項14】
前記表面架橋液は、下記化学式1-aと化学式1-bで表される繰り返し単位を有するポリカルボン酸系共重合体をさらに含む、請求項9~13のいずれか1項に記載の高吸水性樹脂の製造方法:
【化1】
【化2】
上記化学式1-aおよび1-b中、
1、R2およびR3はそれぞれ独立して水素または炭素数1~6のアルキルグループであり、ROは炭素数2~4のオキシアルキレングループであり、M1は水素または1価金属または非金属イオンであり、Xは-COO-、炭素数1~5のアルキルオキシグループまたは炭素数1~5のアルキルジオキシグループであり、mは1~100の整数であり、nは1~1000の整数であり、pは1~150の整数であり、前記pが2以上である場合、二つ以上繰り返される-RO-は互いに同一であるか異なってもよい。
【請求項15】
前記表面架橋液の液状媒質は、炭素数6以上の脂肪族アルコールをさらに含む、請求項9~14のいずれか1項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項16】
前記表面架橋段階は、20℃~130℃の初期温度から10分~30分にわたって140℃~200℃の最高温度に昇温し、前記最高温度を5分~60分間維持して熱処理することによって行われる、請求項9~15のいずれか1項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2017年12月15日付韓国特許出願第10-2017-0173553号および2018年11月13日付韓国特許出願第10-2018-0139102号に基づいた優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、基本的な吸水性能が優れるだけでなく、より向上した吸水速度および通液性などを示す高吸水性樹脂およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百~1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発会社ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名前で命名している。前記のような高吸水性樹脂は生理用具として実用化され始めて、現在は子供用紙おむつなどの衛生用品以外に園芸用土壌補修剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、および湿布用などの材料として広く使用されている。
【0004】
最も多くの場合に、このような高吸水性樹脂はおむつや生理帯など衛生材分野で広く使用されており、このような用途のために水分などに対する高い吸収能を示す必要があり、外部の圧力にも吸収された水分が漏れて出てはいけなく、これに加えて、水を吸収して体積膨張(膨潤)された状態でも形態をよく維持して優れた通液性(permeability)を示す必要がある。
【0005】
最近は薄いおむつに対する要求が高まることによって、おむつ内のパルプなど繊維材の含量が減少し、相対的に高吸水性樹脂の比率が増加する傾向がある。したがって、おむつの繊維材が担当していた性能を高吸水性樹脂が兼備する必要性があり、このために高吸水性樹脂の高い吸水能はもちろん高い吸水速度および通液性を有しなければならない。特に、おむつが薄くなるほど、おむつの使用者である幼児の動きによっておむつから小便が漏れるおそれが増加するため、高吸水性樹脂に対する高い吸水速度などに対する要求は増加しているのが実情である。
【0006】
一方、高吸水性樹脂が前述の高い通液性を示すためには、基本的に前記高吸水性樹脂粒子が水分を吸収して膨潤された後にもその形態を維持して粒子と粒子の間の空隙が維持される必要がある。これは、粒子の間の空隙が流路の役割を果たして高吸水性樹脂の優れた通液性を担保することができるためである。このため、より向上した通液性およびその他の優れた物性を示す高吸水性樹脂を提供するためには、このような高吸水性樹脂が表面架橋などを通じてより高いゲル強度を示すように製造される必要がある。
【0007】
また、前記高吸水性樹脂がより高い吸水速度を示すためには、広い表面積を有し、内部に多数の微細気孔が形成された多孔性構造などを示す必要がある。これにより、以前から発泡剤などを適用してこのような多孔性構造などを有する高吸水性樹脂が製造されたことがある。しかし、このような高吸水性樹脂は粉砕後に粒子の形態などが不均一になるおそれが大きいため、粉砕後の表面架橋時または物性向上のための添加剤などの混合時に、表面架橋が不均一に行われるか、添加剤の塗布が不均一に行われる場合が多い。その結果、多孔性構造などを形成して高吸水性樹脂の高い吸水速度を実現した従来技術では、通液性や吸水性能などの他の物性が低下される場合が多かった。
【0008】
よって、優れた吸水性能を維持しながらも、さらに向上した通液性および吸水速度を同時に示す高吸水性樹脂を提供することができる技術の開発が継続的に要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、基本的な吸水性能が優れるだけでなく、より向上した吸水速度および通液性などを共に示す高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の第1架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および
前記ベース樹脂粉末上に形成されており、前記第1架橋重合体が表面架橋剤を媒介として追加架橋された第2架橋重合体を含む表面架橋層を含む高吸水性樹脂であって、
前記高吸水性樹脂は、それぞれの高吸水性樹脂粒子の最短直径/最長直径で定義される縦横比が0.5未満である高吸水性樹脂粒子を10個数%以上で含み、
生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(SFC;・10-7cm3・s/g)が30(・10-7cm3・s/g)以上である高吸水性樹脂を提供する。
【0011】
本発明はまた、発泡剤および内部架橋剤の存在下に、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して第1架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階;
前記含水ゲル重合体をゲル粉砕、乾燥、粉砕および分級して、それぞれのベース樹脂粉末の最短直径/最長直径で定義される縦横比が0.5未満であるベース樹脂粉末を10個数%以上で含むベース樹脂を形成する段階;および
表面架橋剤および液状媒質を含み、20~25℃の温度で表面張力が25~50mN/mである表面架橋液の存在下に、前記ベース樹脂を熱処理して表面架橋する段階を含む高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0012】
以下、発明の具体的な実施形態による高吸水性樹脂およびその製造方法などについてより詳しく説明する。但し、これは発明の一つの例示として提示されるものであって、これによって発明の権利範囲が限定されるのではなく、発明の権利範囲内で実施形態に対する多様な変形が可能であるのは当業者に自明である。
【0013】
追加的に、本明細書全体で特別な言及がない限り“含む”または“含有”とはある構成要素(または構成成分)を特別な制限なく含むのを称し、他の構成要素(または構成成分)の付加を除くと解釈されない。
【0014】
発明の一実施形態によれば、本発明は少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の第1架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および前記ベース樹脂粉末上に形成されており、前記第1架橋重合体が表面架橋剤を媒介として追加架橋された第2架橋重合体を含む表面架橋層を含む高吸水性樹脂であって、
前記高吸水性樹脂は、それぞれの高吸水性樹脂粒子の最短直径/最長直径で定義される縦横比が0.5未満である高吸水性樹脂粒子を10個数%以上で含み、
生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(SFC;・10-7cm3・s/g)が30(10-7cm3・s/g)以上である高吸水性樹脂が提供される。
【0015】
本発明者の継続的な実験の結果、後述の製造方法によって、架橋重合時に発泡剤などの存在下に縦横比が小さい粒子を一定水準以上に得た後、表面架橋液の表面張力を低めてこれを使用した表面架橋工程を行うことによって、基本的な吸収能が優れるだけでなく、通液性および吸水速度が共に向上した高吸水性樹脂が製造および提供できるのを確認して発明を完成した。
【0016】
基本的に、前記一実施形態の高吸水性樹脂は、重合過程で発泡剤などを使用した発泡重合を行って得られることによって、粉砕後のベース樹脂粉末および高吸水性樹脂粒子が相対的に小さい縦横比を有するように製造され、広い表面積を有するように製造され得る。例えば、高吸水性樹脂粒子の最短直径/最長直径で定義される縦横比が0.5未満である高吸水性樹脂粒子を10個数%以上、あるいは10個数%~60個数%、あるいは10個数%~50個数%の比率で含むように提供できる。
【0017】
このように、高吸水性樹脂の製造過程で、ベース樹脂粉末および高吸水性樹脂粒子が一定水準以上に縦横比が小さい粒子を含むように得られその表面積が増加することによって、前記一実施形態の高吸水性樹脂はより高い吸水速度などを示すことができる。
【0018】
但し、このように縦横比が小さい粒子が一定水準以上に形成される場合、粒子の形態などが不均一で以後の表面架橋が均一に行われにくく、その結果、高吸水性樹脂の加圧吸水能および通液性などを共に向上させにくくなる。これは、縦横比が小さい粒子の場合、縦横比が1に近い粒子に比べて表面架橋が不均一に起こるためである。
【0019】
しかし、本発明者の継続的な実験の結果、以下に説明する方法で比較的に低い表面張力を有する表面架橋液を得た後、これを使用して表面架橋を行うことによって、前記縦横比が小さい粒子を一定水準以上含むベース樹脂粉末上にも優れた表面架橋度および強度を有する表面架橋層を均一に形成することができるのが確認された。これは、前記表面架橋液の浸透程度が比較的に浅くて均一に制御され得るためであると予測される。
【0020】
したがって、前記一実施形態の高吸水性樹脂は、優れた吸水速度と共により向上された通液性および加圧吸水能などを示すことができる。このような一実施形態の高吸水性樹脂が示す向上された通液性などは前記SFC範囲によって定義され得る。
【0021】
したがって、一実施形態の高吸水性樹脂は、吸水速度および通液性を共に向上させにくいという既存の常識とは異なり、基本的な吸水性能を優れるように維持することができると共に、より向上された吸水速度および通液性などを共に示すことができ、より薄い厚さを有するおむつなど衛生材に好ましく適用できる。
【0022】
以下、一実施形態の高吸水性樹脂についてより具体的に説明する。
【0023】
また、本明細書で称する‘高吸水性樹脂’とは、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の第1架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および前記ベース樹脂粉末上に形成されており、前記第1架橋重合体が表面架橋剤を媒介として追加架橋された第2架橋重合体を含む表面架橋層を含む高吸水性樹脂を意味する。
【0024】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、高吸水性樹脂の製造に通常使用される任意の単量体であり得る。非制限的な例として、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、下記化学式1で表される化合物であってもよい:
[化学式1]
1-COOM1
上記化学式1中、
1は、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキルグループであり、
1は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0025】
適切には、前記単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれら酸の1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選択された1種以上であってもよい。このように水溶性エチレン系不飽和単量体としてアクリル酸またはその塩を使用する場合、吸水性が向上された高吸水性樹脂を得ることができて有利である。この他にも、前記単量体としては、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたは(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択された1種以上を使用することができる。
【0026】
ここで、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和されたものであってもよい。好ましくは、前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのようなアルカリ物質で部分的に中和させたものが使用されてもよい。
【0027】
この時、前記単量体の中和度は、40~95モル%、または40~80モル%、または45~75モル%であってもよい。前記中和度の範囲は最終物性によって変わってもよいが、中和度が過度に高ければ中和された単量体が析出され重合が円滑に行われにくいことがあり、逆に、中和度が過度に低ければ高分子の吸水性が大きく落ちるだけでなく、取り扱いが困難な弾性ゴムのような性質を示すことがある。
【0028】
前記‘第1架橋重合体’とは、前述の水溶性エチレン系不飽和単量体が内部架橋剤の存在下に架橋重合されたものを意味し、前記‘ベース樹脂粉末’とは、このような第1架橋重合体を含む物質を意味する。また、前記‘第2架橋重合体’とは、前記第1架橋重合体が表面架橋剤を媒介として追加架橋された物質を意味し、これにより前記ベース樹脂粉末上に形成されている。前記表面架橋剤については後述することにする。
【0029】
このような一実施形態の高吸水性樹脂は、前述のように、発泡重合などによって前記ベース樹脂粉末が得られることにより、このようなベース樹脂粉末および高吸水性樹脂粒子が相対的に小さい縦横比を有するように提供できる。より具体的に、一実施形態の高吸水性樹脂は多数の高吸水性樹脂粒子を含み、これら高吸水性樹脂粒子の全体個数を基準に、例えば、高吸水性樹脂粒子の最短直径/最長直径で定義される縦横比が0.5未満である高吸水性樹脂粒子を10個数%以上、あるいは10個数%~80個数%、あるいは10個数%~70個数%、10個数%~60個数%、あるいは10個数%~50個数%の比率で含むことができる。
【0030】
この時、前記ベース樹脂粉末および高吸水性樹脂粒子の縦横比は、例えば、図1に示されているように、それぞれの粒子を電子顕微鏡で分析して最短直径(a)および最長直径(b)をそれぞれ算出することができ、これから各ベース樹脂粉末および高吸水性樹脂粒子の縦横比を算出することができる。このように算出された各粒子の縦横比データから、前記縦横比が0.5未満である粒子の個数比率を算出することができる。参考として、ベース樹脂粉末および高吸水性樹脂粒子の縦横比は互いに同等であると確認される。
【0031】
このように、一実施形態の高吸水性樹脂が縦横比の小さい粒子を一定水準以上に含むことによって、前記ベース樹脂粉末および高吸水性樹脂粒子間には微細気孔が多数形成され得る。このような多孔性粒子上に表面架橋層が形成される場合、これら微細気孔の間に水分が速い速度で多量吸収され得るので、一実施形態の高吸水性樹脂がより速い吸水速度および吸水性能(保水能など)を示すことができる。
【0032】
一方、前述の一実施形態の高吸水性樹脂は、基本的な加圧下または無加圧下吸水性能、吸水速度および通液性に優れ、これはCRC、AUP、吸水度、SFC、30秒吸水速度または表面張力などの物性によって定義され得る。
【0033】
具体的に、一実施形態の高吸水性樹脂は、生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能(CRC)が25~35g/g、あるいは26~33g/gであってもよい。このような遠心分離保水能(CRC)範囲は、一実施形態の高吸水性樹脂が示す優れた無加圧下吸水性能を定義することができる。
【0034】
前記生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)は、高吸水性樹脂を30分にわたって生理食塩水に吸収させた後、次のような計算式1によって算出できる:
[計算式1]
CRC(g/g)={[W2(g)-W1(g)-W0(g)]/W0(g)}
上記計算式1中、
0(g)は、高吸水性樹脂の初期重量(g)であり、
1(g)は、高吸水性樹脂を入れない不織布封筒を常温で生理食塩水に30分間含浸した後、遠心分離機を使用して250Gで3分間脱水した後に測定した重量であり、
2(g)は、高吸水性樹脂を入れた不織布封筒を常温で生理食塩水に30分間含浸した後、遠心分離機を使用して250Gで3分間脱水した後に測定した重量である。
【0035】
また、一実施形態による高吸水性樹脂は、生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する0.7psi下で1時間の加圧吸水能(AUP)が21~27g/g、あるいは21.5~26g/gであってもよい。このような加圧吸水能(AUP)範囲は、一実施形態の高吸水性樹脂が示す優れた加圧下吸水性能を定義することができる。
【0036】
このような加圧吸水能(AUP)は、高吸水性樹脂を1時間にかけて0.7psiの加圧下に生理食塩水に吸収させた後、下記計算式2によって算出できる:
[計算式2]
AUP(g/g)=[W4(g)-W3(g)]/W0(g)
上記計算式2中、
0(g)は高吸水性樹脂の初期重量(g)であり、W3(g)は高吸水性樹脂の重量および前記高吸水性樹脂に荷重を付与することができる装置重量の総合であり、W4(g)は荷重(0.7psi)下に1時間前記高吸水性樹脂に生理食塩水を吸収させた後に、高吸水性樹脂の重量および前記高吸水性樹脂に荷重を付与することができる装置重量の総合である。
【0037】
また、一実施形態の高吸水性樹脂が前述の範囲の遠心分離保水能(CRC)および加圧吸水能(AUP)を示すことによって、前記高吸水性樹脂は下記式1で定義される吸水度が46~63g/g、あるいは47~60g/gであり得る:
[式1]
吸水度=CRC+AUP
上記式1中、
CRCは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能であって、前記計算式1のように算出される保水能を示し、
AUPは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する0.7psi下で1時間の加圧吸水能であって、前記計算式2で算出される加圧吸水能を示す。
【0038】
これにより、一実施形態の高吸水性樹脂は、基本的な吸水性および加圧下吸水維持性などの吸水性能が優秀に発現されて各種衛生材に適するように使用することができる。
【0039】
また、一実施形態の高吸水性樹脂は、生理食塩水(0.685重量%塩化ナトリウム水溶液)の流れ誘導性(SFC、10-7cm3・s/g)が、30(・10-7cm3・s/g)以上、あるいは35(・10-7cm3・s/g)以上、あるいは40~150(・10-7cm3・s/g)、あるいは42~130(・10-7cm3・s/g)であってもよい。
【0040】
前記生理食塩水流れ誘導性(SFC)は、以前から当業者によく知られた方法、例えば、米国特許登録番号第5562646号のカラム54~カラム59に開示された方法によって測定および算出することができる。
【0041】
前記高吸水性樹脂は、高いゲル強度を維持するベース樹脂粉末を含み、これに対する特定条件下に表面架橋が行われて優れた強度を有する表面架橋層を均一に含むことによって、全体的に高いゲル強度を有することができ、これによってより向上された生理食塩水流れ誘導性(SFC)および優れた通液性を示すことができる。
【0042】
また、一実施形態の高吸水性樹脂は、後述の低い表面張力を有する表面架橋液などを使用して製造/提供されることによって、それ自体として、表面張力(surface tension)が60~75mN/m、あるいは60~73mN/mであり得る。
【0043】
このような表面張力は、例えば、23±2℃の常温で表面張力測定器を使用して測定することができる。このような表面張力の具体的な測定方法は後述の実施例に記載されている。
【0044】
このような高吸水性樹脂の表面張力は、保水能、加圧吸水能、通液性などとは区分される物性であって、前記高吸水性樹脂を含むおむつでの小便漏出(leakage)を評価することができる尺度になり得る。前記表面張力は高吸水性樹脂を塩水に膨潤させ、該当塩水に対して測定した表面張力を意味し、高吸水性樹脂の表面張力が低い場合、これを含んで製造されるおむつなどで小便が漏れる現象が発生する可能性が高い。一実施形態の高吸水性樹脂によれば、高い通液性などを維持しながらも適正な範囲の表面張力を有することによって漏出発生の可能性を減らして高品質の衛生用品を生産することができる。
【0045】
前記高吸水性樹脂の表面張力が過度に低くなる場合、小便の漏れ現象、即ち、リウェット(rewet)が増加することがあり、表面張力が過度に高まる場合には、表面架橋層が不均一に形成され通液性などの物性が低下することがある。
【0046】
一方、前述の一実施形態の高吸水性樹脂は、約0.16gの高吸水性樹脂が円筒形シリンダー下部のメッシュ(mesh)を通じて流入した生理食塩水によって0.3psi加圧条件下で膨潤されるとき、30秒吸水速度が1.5mm/min以上、あるいは1.7mm/min~3.0mm/min、あるいは1.8mm/min~2.6mm/minであり得る。このような30秒吸水速度は、高吸水性樹脂の体積膨張によるレオメータ上部プレートの高さ変化を吸水時間(30秒)で割る値として測定および算出できる。
【0047】
前記高吸水性樹脂は、高いゲル強度およびこれによる優れた通液性を示しながらも、製造過程中の粒子分布が制御され内部に多孔性構造を有することによって、前述の30秒吸水速度範囲で定義される優れた吸水速度を同時に示すことができる。したがって、前記高吸水性樹脂は、パルプなど繊維材の含量が減少された衛生材内に好ましく使用できる。
【0048】
一方、前述の一実施形態の高吸水性樹脂で、前記ベース樹脂粉末に含まれている第1架橋重合体は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリストールテトラアクリレートからなる群より選択されたポリオールのポリ(メタ)アクリレート系第1内部架橋剤;およびアリル(メタ)アクリレート系第2内部架橋剤の存在下に、前記単量体が架橋重合された高分子であり得る。これら2種以上の特定内部架橋剤の適用によって、一実施形態の高吸水性樹脂はゲル粉砕および粉砕などを行った後にも、高いゲル強度を維持することができ、これにより、さらに優れた通液性および加圧下吸水性能などを示すことができる。
【0049】
また、前述の高吸水性樹脂は、以下にさらに詳しく説明するが、表面架橋時に互いに異なる炭素数を有する炭素数2~6のアルキレンカーボネートの2種以上を表面架橋剤として使用することができる。これにより、前記高吸水性樹脂は、前記複数種の表面架橋剤を媒介とする架橋構造が表面架橋層に含まれてもよい。
【0050】
そして、このような表面架橋剤および液状媒質を含む表面架橋液は、界面活性剤、所定のポリカルボン酸系共重合体、界面活性剤または炭素数6以上の脂肪族アルコールなどをさらに含むことができる。このように、表面架橋剤の複数種使用、そして選択的に表面架橋液に含まれる追加成分によって、表面架橋液の表面張力が相対的に低い特定範囲で達成され、前述の諸般物性を有する高吸水性樹脂が製造および提供され得る。
【0051】
一方、前述の一実施形態の高吸水性樹脂は、150~850μmの粒径を有することができる。より具体的に、前記ベース樹脂粉末およびこれを含む高吸水性樹脂の少なくとも95重量%以上が150~850μmの粒径を有し、150μm未満の粒径を有する微分が5重量%未満であり得る。この時、前記高吸水性樹脂の粒径は、前述の高吸水性樹脂粒子の最長直径で定義され得る。
【0052】
前述の一実施形態の諸般物性を充足する高吸水性樹脂が製造できる技術的原理は次の通りである。
【0053】
まず、架橋重合時に発泡剤などを使用して発泡程度を増加させ、これによって微細気孔が多数含まれ表面積が広い形態に含水ゲル重合体を形成することができる。このような含水ゲル重合体に対してゲル粉砕およびそれ以後の粉砕などを行う場合、前記含水ゲル重合体の多孔性などによって縦横比が小さい粒子形態で壊れる蓋然性が高まる。したがって、縦横比が低い粒子の比率が高いベース樹脂粉末が製造され得る。
【0054】
但し、縦横比が低い粒子の場合、表面架橋液を相対的に速い速度で吸収することによって、縦横比が1に近い粒子とは表面架橋液の浸透様相および表面架橋の程度が変わるようになる。このために、不均一な架橋が起こる可能性が高く、これは通液性などの低下を招くことがある。しかし、本発明者の継続的な実験の結果、表面架橋液の表面張力を相対的に低める場合、表面架橋液がベース樹脂粉末に浸透する深さが相対的に低くなるので、表面架橋剤が全体粒子に対して均一に浸透/分布でき、その結果、高吸水性樹脂の通液性などが向上して一実施形態の諸般物性を充足する高吸水性樹脂が製造できる。
【0055】
このような技術的原理に基づいて、発明の他の実施形態による高吸水性樹脂の製造方法が提供される。
【0056】
このような製造方法は、発泡剤、界面活性剤および内部架橋剤の存在下に、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して第1架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階;
前記含水ゲル重合体をゲル粉砕、乾燥、粉砕および分級して、それぞれのベース樹脂粉末の最短直径/最長直径で定義される縦横比が0.5未満であるベース樹脂粉末を10個数%以上で含むベース樹脂を形成する段階;および
表面架橋剤および液状媒質を含み、20~25℃の温度で表面張力が30~50mN/mの表面架橋液の存在下に、前記ベース樹脂を熱処理して表面架橋する段階を含むことができる。
【0057】
以下、各段階別に前記製造方法を詳しく説明する。
【0058】
まず、他の実施形態の製造方法は、架橋重合によって含水ゲル重合体を形成する段階を含む。具体的に、内部架橋剤の存在下に水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル重合体を形成する段階である。
【0059】
前記単量体組成物に含まれる水溶性エチレン系不飽和単量体は前述のとおりである。
【0060】
また、前記単量体組成物には高吸水性樹脂の製造に一般に使用される重合開始剤が含まれてもよい。非制限的な例として、前記重合開始剤としては、重合方法によって熱重合開始剤または光重合開始剤などを使用することができる。但し、光重合方法によっても、紫外線照射などによって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によってある程度の熱が発生するので、熱重合開始剤が追加的に含まれてもよい。
【0061】
ここで、前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびアルファ-アミノケトン(a-aminoketone)からなる群より選択された一つ以上の化合物を使用することができる。そのうちのアシルホスフィンの具体例としては、商用のlucirin TPO、即ち、2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-トリメチルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethyl-benzoyl-trimethyl phosphine oxide)を使用することができる。より多様な光重合開始剤については、Reinhold Schwalm著書の“UV Coatings:Basics、Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)”の115ページに開示されており、これを参照することができる。
【0062】
そして、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素、およびアスコルビン酸からなる群より選択された一つ以上の化合物を使用することができる。具体的に、過硫酸塩系開始剤としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na228)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K228)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH4228)などを例として挙げることができる。また、アゾ(Azo)系開始剤としては、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチラミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノ吉草酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などを例として挙げることができる。より多様な熱重合開始剤については、Odian著書の“Principle of Polymerization(Wiley、1981年)”の203ページに開示されており、これを参照することができる。
【0063】
このような重合開始剤は、前記単量体組成物に対して約0.001~1重量%の濃度で添加できる。即ち、前記重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなることがあり、最終製品に残存モノマーが多量で抽出されることがあるため好ましくない。逆に、前記重合開始剤の濃度が過度に高い場合、ネットワークを成す高分子鎖が短くなって水可溶成分の含量が高まり加圧吸水能が低くなるなど樹脂の物性が低下することがあるため好ましくない。
【0064】
一方、前記単量体組成物には前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重合による樹脂の物性を向上させるための架橋剤(“内部架橋剤”)が含まれる。前記架橋剤は、含水ゲル重合体を内部架橋させるためのものであって、後述の“表面架橋剤”と別個に使用できる。
【0065】
特に、前記他の実施形態の製造方法では、前述の2種以上の内部架橋剤、例えば、ポリオールのポリ(メタ)アクリレート系第1内部架橋剤およびアリル(メタ)アクリレート系第2内部架橋剤を共に使用して、含水ゲル重合体を得ることができる。
【0066】
より具体的に、前記第1内部架橋剤としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、およびペンタエリストールテトラアクリレートからなる群より選択された1種以上を使用することができ、前記第2内部架橋剤としては、アリルメタクリレートまたはアリルアクリレートなどを使用することができる。
【0067】
また、前記第1および第2内部架橋剤の総含量は、前記内部架橋剤および単量体などを含む単量体組成物の100重量部に対して0.01重量部~2重量部、あるいは0.05~1.8重量部の含量であってもよい。また、第1内部架橋剤:第2内部架橋剤は1:1~10:1の重量比で使用されてもよい。このように内部架橋剤の種類および含量範囲など組成を調節する一方、後述の含水ゲル重合体の含水率を制御することによって、一実施形態の物性を充足する高吸水性樹脂をより効果的に得ることができる。但し、前記内部架橋剤の含量が過度に大きくなれば、高吸水性樹脂の基本的な吸水性能が低下することがある。
【0068】
一方、前述の単量体組成物は、追加的に発泡剤をさらに含む。このような発泡剤の存在下に、前記重合工程を発泡重合工程で行うことによって、低い縦横比を有する粒子が多数形成され、前述の粒子分布を有するベース樹脂粉末および高吸水性樹脂粒子が得られる。
【0069】
前記発泡剤は、重合時に発泡が起こって含水ゲル重合体内に気孔を形成し小さい縦横比の粒子を多数形成し、表面積を増やす役割を果たす。前記発泡剤は炭酸塩を使用することができ、一例として炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)、炭酸ナトリウム(sodium carbonate)、炭酸水素カリウム(potassium bicarbonate)、炭酸カリウム(potassium carbonate)、炭酸水素カルシウム(calcium bicarbonate)、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、炭酸水素マグネシウム(magnesium bicarbonate)または炭酸マグネシウム(magnesium carbonate)を使用することができる。
【0070】
また、前記発泡剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して約0.01~約1.0重量部、あるいは約0.03~約0.7重量部、あるいは約0.05~約0.6重量部の濃度で添加されてもよい。前記発泡剤の使用量が1.0重量部を超過する場合には過多発泡によって工程上生産が難しいだけでなく、過度な気孔形成で高吸水性樹脂の密度が小さくなって流通と保管に問題を招くことがある。また、前記0.01重量部未満である場合には、発泡剤としての役割が微小なことがある。
【0071】
そして、前記単量体組成物は、前記発泡剤による気孔形成を最適化するために気泡安定剤をさらに含むことができる。このような気泡安定剤は、発泡剤によって形成された気泡の形態を維持しながら同時に重合体全領域に気泡を均一に分布させる役割を果たすものであって、低い縦横比の粒子の形成をより効果的にして、重合体の表面積を増やす役割を果たす。
【0072】
このような気泡安定剤としては、以前から高吸水性樹脂の発泡重合時に気泡安定剤として使用されていた任意の成分を使用することができ、例えば、陽イオン性、陰イオン性または非イオン性界面活性剤などを使用することができる。
【0073】
前記気泡安定剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.001重量部~0.1重量部の濃度で添加されてもよい。前記気泡安定剤の濃度が過度に低い場合、気泡を安定化する役割が微小であって吸水速度向上効果を達成しにくく、逆に、前記濃度が過度に高い場合、高吸水性樹脂の表面張力が低くなっておむつで水分漏出(leakage)などが発生することがある。
【0074】
この他にも、前記単量体組成物には必要によって増粘剤、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤がさらに含まれてもよい。
【0075】
そして、このような単量体組成物は、前述の単量体、重合開始剤、内部架橋剤などの原料物質が溶媒に溶解された溶液の形態で準備されてもよい。
【0076】
この時使用可能な溶媒としては、前述の原料物質を溶解させることができるものであれば、その構成の限定無く使用できる。例えば、前記溶媒としては、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテート、N,N-ジメチルアセトアミド、またはこれらの混合物などが使用できる。
【0077】
そして、前記単量体組成物の重合を通じた含水ゲル重合体の形成は通常の重合方法で行われてもよく、その工程は特別に限定されない。非制限的な例として、前記重合方法は重合エネルギー源の種類によって大きく熱重合と光重合に分けられ、前記熱重合を行う場合にはニーダー(kneader)のような攪拌軸を有する反応器で行われてもよく、光重合を行う場合には移動可能なコンベヤーベルトが備えられた反応器で行われてもよい。
【0078】
一例として、攪拌軸が備えられたニーダーのような反応器に前記単量体組成物を投入し、ここに熱風を供給するか反応器を加熱して熱重合することによって含水ゲル重合体を得ることができる。この時、反応器に備えられた攪拌軸の形態によって反応器排出口に排出される含水ゲル重合体は数ミリメートル~数センチメートルの粒子として得られる。具体的に、得られる含水ゲル重合体は注入される単量体組成物の濃度および注入速度などによって多様な形態に得られ、通常(重量平均)粒径が2~50mmである含水ゲル重合体が得られる。
【0079】
そして、他の一例として、移動可能なコンベヤーベルトが備えられた反応器で前記単量体組成物に対する光重合を行う場合には、シート形態の含水ゲル重合体が得られる。この時、前記シートの厚さは注入される単量体組成物の濃度および注入速度によって変わることになり、シート全体が均一に重合されるようにしながらも生産速度などを確保するために、通常0.5~10cmの厚さに調節されるのが好ましい。
【0080】
一方、前述の架橋重合によって含水ゲル重合体を形成した後には、含水率が制御された含水ゲル重合体をゲル粉砕する。
【0081】
前記ゲル粉砕段階で、使用される粉砕機は構成の限定はないが、具体的に、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボブラインダー(Turbo grinder)、回転切断式粉砕機(Rotary cutter mill)、切断式粉砕機(Cutter mill)、円板粉砕機(Disc mill)、小片破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、チョッパ(chopper)および円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕機器群より選択されるいずれか一つを含むことができるが、上述の例に限定されない。
【0082】
前記含水ゲル重合体のゲル粉砕は、前記含水ゲル重合体の粒径が0.01mm~50mm、あるいは0.01mm~30mmになるように行われ得る。即ち、乾燥効率の増大のために前記含水ゲル重合体は50mm以下の粒子に粉砕されるのが好ましい。しかし、過度な粉砕時、粒子間凝集現象が発生することがあるので、前記含水ゲル重合体は0.01mm以上の粒子にゲル粉砕されるのが好ましい。
【0083】
また、前記含水ゲル重合体のゲル粉砕は、含水率が相対的に低い状態で行われるためゲル粉砕機の表面に含水ゲル重合体がひっつく現象が現れることがある。このような現象を最少化するために、必要によって、スチーム、水、界面活性剤、凝集防止剤(例えば、クレー(clay)、シリカ(silica)など);過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素、熱重合開始剤、エポキシ系架橋剤、ジオール(diol)類架橋剤、2官能基または3官能基以上の多官能基のアクリレートを含む架橋剤、水酸化基を含む1官能基の架橋剤などが含水ゲル重合体に添加されてもよい。
【0084】
前述のゲル粉砕後には、含水ゲル重合体を乾燥させることができる。前記乾燥は120~250℃、好ましくは140~200℃、より好ましくは150~200℃の温度下で行うことができる。この時、前記乾燥温度は、乾燥のために供給される熱媒体の温度または乾燥工程で熱媒体および重合体を含む乾燥反応器内部の温度で定義され得る。乾燥温度が低くて乾燥時間が長くなる場合、工程効率性が低下するので、これを防止するために乾燥温度は120℃以上であるのが好ましい。また、乾燥温度が必要以上に高い場合、含水ゲル重合体の表面が過度に乾燥されて後続工程の粉砕段階で微分発生が多くなることがあり、最終樹脂の物性が低下することがあり、これを防止するために乾燥温度は250℃以下であるのが好ましい。
【0085】
この時、前記乾燥段階での乾燥時間は特別に制限されないが、工程効率および樹脂の物性などを考慮して、前記乾燥温度下で20分~90分に調節することができる。
【0086】
前記乾燥は通常の媒体を用いて行われてもよく、例えば、前記粉砕された含水ゲル重合体に対する熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法を通じて行うことができる。
【0087】
そして、このような乾燥は、乾燥された重合体が0.1~10重量%の含水率を有するように行われるのが好ましい。即ち、乾燥された重合体の含水率が0.1重量%未満である場合、過度な乾燥による製造原価の上昇および架橋重合体の分解(degradation)が起こることがあるので好ましくない。そして、乾燥された重合体の含水率が10重量%を超過する場合、後続工程で乾燥された重合体が付着されて移送経路に妨害になることがあるので好ましくない。
【0088】
前記乾燥後には、乾燥重合体を粉砕することができ、これによって重合体の粒径および表面積が適切な範囲に調節され得る。前記粉砕は、粉砕された重合体の粒径が150~850μmになるように行うことができる。この時の粒径も各重合体粒子の最長直径で定義することができ、以下でも同一である。
【0089】
この時使用できる粉砕機としては、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)、ジョッグミル(jog mill)など通常のものを使用することができる。
【0090】
また、最終製品化される高吸水性樹脂の物性を管理するために、前記粉砕段階を通じて得られる重合体粒子から150~850μmの粒径を有する粒子を選択的に分級する段階がさらに行われてもよい。
【0091】
一方、前述の分級工程までを経てベース樹脂粉末を製造した後には、表面架橋剤の存在下に、前記ベース樹脂粉末を熱処理しながら表面架橋して高吸水性樹脂粒子を形成することができる。前記表面架橋は表面架橋剤の存在下に前記ベース樹脂粉末の表面に架橋反応を誘導することであって、このような表面架橋を通じて前記ベース樹脂粉末の表面には表面改質層(表面架橋層)が形成され得る。
【0092】
より具体的に、前述の他の実施形態の製造方法では、表面架橋剤および液状媒質を含み、20~25℃の温度で表面張力が25~50mN/m、あるいは30~47mN/mである表面架橋液を使用して熱処理して表面架橋を行うことができる。
【0093】
このように、相対的に低い表面張力を有する表面架橋液を使用することによって、相対的に不均一な粒子形態(低い縦横比を有する粒子を多数含む)にもかかわらず、表面架橋が均一に行われ、優れた架橋度および強度を有する表面架橋層が均一に形成され、高吸水性樹脂の吸水能に比べて加圧吸水能と通液性などがより向上できる。但し、前記表面張力が過度に低まる場合、衛生用品のリウェットが増加することがあり、高い表面張力を有する表面架橋液を使用する場合には表面架橋層が不均一に形成されて吸水能に比べて加圧吸水能と通液性などの物性が低下することがある。
【0094】
前述のように、このような特定表面張力を有する表面架橋液を得るためには、互いに異なる炭素数を有する炭素数2~6のアルキレンカーボネートの2種以上を表面架橋剤として使用することができる。
【0095】
また、前記表面張力をより効果的に達成するために、前記表面架橋剤および液状媒質を含む表面架橋液は選択的に界面活性剤、下記の化学式1-aと化学式1-bで表される繰り返し単位を有するポリカルボン酸系共重合体または炭素数6以上の脂肪族アルコールなどをさらに含むことができる。このように、表面架橋剤の複数種使用、そして選択的に表面架橋液に含まれる追加成分によって、表面架橋液の表面張力が相対的に低い特定範囲で達成されて前述の諸般物性を有する一実施形態の高吸水性樹脂が製造できる:
【0096】
【化1】
【0097】
【化2】
【0098】
上記化学式1-aおよび1-b中、
1、R2およびR3はそれぞれ独立して水素または炭素数1~6のアルキルグループであり、ROは炭素数2~4のオキシアルキレングループであり、M1は水素または1価金属または非金属イオンであり、Xは-COO-、炭素数1~5のアルキルオキシグループまたは炭素数1~5のアルキルジオキシグループであり、mは1~100の整数であり、nは1~1000の整数であり、pは1~150の整数であり、前記pが2以上である場合、二つ以上繰り返される-RO-は互いに同一であるか異なってもよい。
【0099】
このような表面架橋工程で、前記表面架橋剤としては炭素数2~6のアルキレンカーボネートが複数種使用されてもよく、これのより適切な例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、またはグリセロールカーボネートなどが挙げられる。
【0100】
この時、前記表面架橋剤の含量は架橋剤の種類や反応条件などによって適切に調節されてもよく、好ましくは前記ベース樹脂粉末100重量部に対して0.001~5重量部に調節されてもよい。前記表面架橋剤の含量が過度に低まれば、表面改質がよく行われず、最終樹脂の物性が低下することがある。逆に、過量の表面架橋剤が使用されれば、過度な表面架橋反応によって樹脂の基本的な吸収能がむしろ低下することがあるので好ましくない。
【0101】
また、前記表面架橋液の表面張力範囲の制御のために、前記表面架橋液は界面活性剤をさらに含んでもよく、このような界面活性剤の種類は特に制限されず、前記表面架橋液に含まれる液状媒質の種類などを考慮して、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤または陽イオン性界面活性剤のうちの適切なものを選択して使用することができる。これによって、表面架橋液の表面張力を前述の範囲に追加制御することができる。
【0102】
そして、他の例で、前記表面架橋液は、前記化学式1-aと化学式1-bで表される繰り返し単位を有するポリカルボン酸系共重合体をさらに含んでもよい。このようなポリカルボン酸系共重合体は登録特許公報第1684649号などに公知されたものであって、その製造方法などは当業者に自明である。
【0103】
このようなポリカルボン酸系共重合体を前記ベース樹脂粉末100重量部に対して0.001~5重量部の含量で表面架橋液中に含ませることによって、前記表面架橋液の表面張力を前述の範囲に追加制御することができる。
【0104】
付加して、前記表面架橋液の表面張力を制御するためのまた他の手段として、前記表面架橋液中の液状媒質に水またはアルコールなどの極性溶媒と共に、炭素数6以上の脂肪族アルコールをさらに含ませてもよい。
【0105】
一実施形態によれば、前記炭素数6以上の脂肪族アルコールであって炭素数6~20の1次、2次、または3次アルコールを例として挙げることができ、好ましくは炭素数6~16の1次アルコールを使用することができる。より好ましくは、ステアリルアルコール(stearyl alcohol)、ラウリルアルコール(lauryl alcohol)、およびセチルアルコール(cetyl alcohol)からなる群より選択される1種以上を使用することができるが、これに制限されるのではない。
【0106】
前記炭素数6以上の脂肪族アルコールの含量は前記粉砕された重合体、即ち、ベース樹脂粉末100重量部に対して、約0.001~約2重量部、または約0.01~約1重量部、好ましくは約0.01~約1重量部、さらに好ましくは約0.05~約0.8重量部を使用することができる。
【0107】
一方、前記表面架橋液は前述の各成分と共に、液状媒質として水および/または親水性有機溶媒(例えば、メタノールなどのアルコール系極性有機溶媒)をさらに含むことができる。この時、水および親水性有機溶媒の含量は表面架橋液の均一な分散を誘導しベース樹脂粉末の凝集現象を防止すると同時に表面架橋剤の表面浸透深さを最適化するための目的でベース樹脂粉末100重量部に対する添加比率を調節して適用することができる。
【0108】
前述の表面架橋液をベース樹脂粉末に添加する方法に対してもその構成の特別な限定はない。例えば、表面架橋液と、ベース樹脂粉末を反応槽に入れて混合するか、ベース樹脂粉末に表面架橋液を噴射する方法、連続的に運転されるミキサーにベース樹脂粉末と表面架橋液を連続的に供給して混合する方法などを使用することができる。
【0109】
前記表面架橋液が添加されたベース樹脂粉末に対して140℃~200℃、あるいは170℃~195℃の反応最高温度で5分~60分、または10分~50分、または20分~45分間表面架橋反応を行うことができる。より具体的には、前記表面架橋段階は、20℃~130℃、あるいは40℃~120℃の初期温度で10分以上、あるいは10分~30分にかけて前記反応最高温度に昇温し、前記最高温度を5分~60分間維持して熱処理することによって行うことができる。
【0110】
このような表面架橋工程条件(特に、昇温条件および反応最高温度での反応条件)の充足によって一実施形態の物性を適切に充足する高吸水性樹脂がさらに効果的に製造できる。
【0111】
表面架橋反応のための昇温手段は特別に限定されない。熱媒体を供給するか、熱源を直接供給して加熱することができる。この時、使用可能な熱媒体の種類としてはスチーム、熱風、熱い油のような昇温した流体などを使用することができるが、これに限定されるのではなく、また供給される熱媒体の温度は熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適切に選択することができる。一方、直接供給される熱源としては電気を通じた加熱、ガスを通じた加熱方法が挙げられるが、前述の例に限定されるのではない。
【0112】
前述の製造方法によって得られた高吸水性樹脂は、保水能と加圧吸水能などの吸水性能が優れるように維持され、より向上した通液性および吸水速度などを充足して、一実施形態の諸般物性を充足することができ、おむつなど衛生材、特に、パルプの含量が減少された超薄型衛生材などに適切に使用され得る。
【発明の効果】
【0113】
本発明による高吸水性樹脂は、基本的な吸水性能を優れるように維持することができながらも、より向上した吸水速度および通液性などを示すことができ、より薄い厚さを有するおむつなど衛生材など好ましく適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0114】
図1】一実施形態の高吸水性樹脂で、高吸水性樹脂粒子の縦横比定義およびその測定方法の一例を示す電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0115】
以下、発明の理解のために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明をこれらのみに限定するのではない。
【実施例
【0116】
[実施例1]
高吸水性樹脂の製造装置としては、重合工程、含水ゲル粉砕工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程、冷却工程、分級工程および各工程を連結する輸送工程から構成される連続製造装置を使用した。
【0117】
(段階1)
アクリル酸100重量部に、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量:~500g/mol)と、アリルメタクリレートを混合して0.4重量部、発泡剤として炭酸水素ナトリウムの0.1重量部、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムの0.01重量部および光開始剤としてフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(Phenylbis(2,4,6-trimethylbenzoyl)phosphine oxide)0.01重量部を混合して単量体溶液を製造した。その次に、前記単量体溶液を定量ポンプで連続供給しながら、同時に24重量%水酸化ナトリウム水溶液160重量部を連続的にラインミキシングして単量体水溶液を製造した。また、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堤を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合器に連続的に供給した。その後に、UVを照射して含水ゲルを製造した。
【0118】
(段階2)
前記含水ゲルを平均大きさが約300mm以下になるように切断した後に、粉砕機(10mmの直径を有する複数の孔を含む多孔板を備えている)に投入してそれぞれの条件で粉砕した。
【0119】
(段階3)
その次に、前記段階2で粉砕された含水ゲルを上下に風量転移が可能な乾燥器で乾燥させた。乾燥された粉の含水量が約2%以下になるように180℃のホットエアー(hot air)を15分間下方から上方に流れるようにし、再び15分間上方から下方に流れるようにして、前記含水ゲルを均一に乾燥させた。
【0120】
(段階4)
前記段階3で乾燥された樹脂を粉砕機で粉砕した後、分級して150~850μm大きさのベース樹脂を得た。
【0121】
(段階5)
その後、エチレンカーボネート1g、プロピレンカーボネートの1gを水4gに入れ混合して表面架橋液を製造した。このような表面架橋液の表面張力は45mN/mと測定された。
【0122】
前記段階4で製造されたベース樹脂粉末100gに対して、前記表面架橋液6gを噴射し、常温で攪拌してベース樹脂粉末上に表面架橋液が均一に分布するように混合した。その次に、表面架橋液と混合されたベース樹脂粉末を表面架橋反応器に入れて表面架橋反応を行った。
【0123】
このような表面架橋反応器内で、ベース樹脂粉末は80℃付近の初期温度から漸進的に昇温されると確認され、30分経過後に190℃の反応最高温度に到達するように操作した。このような反応最高温度に到達した以後に、15分間追加反応させた後、最終製造された高吸水性樹脂サンプルを取った。前記表面架橋工程後、ASTM規格の標準網篩で分級して150μm~850μmの粒径を有する実施例1の高吸水性樹脂を製造した。
【0124】
上述の方法で得られたベース樹脂および高吸水性樹脂を電子顕微鏡写真で分析して(図1など参照)、各ベース樹脂粉末および高吸水性樹脂粒子の縦横比(a/b)を算出し、全体ベース樹脂粉末および高吸水性樹脂粒子中の縦横比が0.5未満である粒子の比率(個数%)を測定した。測定結果、該当ベース樹脂粉末および高吸水性樹脂粒子中、縦横比が0.5未満である粒子の比率は約10個数%であると確認された。
【0125】
[実施例2]
発泡剤として炭酸水素ナトリウムを0.15重量部で使用したことを除いては、実施例1と同様な方法で実施例2の高吸水性樹脂を製造した。このような方法で得られたベース樹脂/高吸水性樹脂を電子顕微鏡写真で分析して全体ベース樹脂粉末および高吸水性樹脂粒子中の縦横比が0.5未満である粒子の比率(個数%)を測定した。測定結果、該当ベース樹脂粉末および高吸水性樹脂粒子中、縦横比が0.5未満である粒子の比率は約33個数%であると確認された。
【0126】
[実施例3]
発泡剤として炭酸水素ナトリウムを0.2重量部で使用したことを除いては、実施例1と同様な方法で実施例3の高吸水性樹脂を製造した。このような方法で得られたベース樹脂/高吸水性樹脂を電子顕微鏡写真で分析して全体ベース樹脂粉末および高吸水性樹脂粒子中の縦横比が0.5未満である粒子の比率(個数%)を測定した。測定結果、該当ベース樹脂粉末および高吸水性樹脂粒子中、縦横比が0.5未満である粒子の比率は約45個数%であると確認された。
【0127】
以後の表面架橋工程は実施例1と同様に行って150μm~850μmの粒径を有する実施例3の高吸水性樹脂を製造した。
【0128】
[実施例4]
段階5で表面架橋液中の潤滑剤としてポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(Polyoxyethylenesorbitan monopalmitate)0.02g追加したことを除いては、実施例3と同様な方法で実施例4の高吸水性樹脂を製造した。
【0129】
[実施例5]
段階5で表面架橋液中の潤滑剤として脂肪族アルコール(mono stearyl alcohol)0.3g追加したことを除いては、実施例3と同様な方法で実施例5の高吸水性樹脂を製造した。
【0130】
[実施例6]
段階5で表面架橋液中の潤滑剤として登録特許第1684649号の製造例1と同様な方法で得られたポリカルボン酸系共重合体0.1g追加したことを除いては、実施例1と同様な方法で実施例6の高吸水性樹脂を製造した。
【0131】
[実施例7]
段階5で表面架橋液のうち、トリメチレンカーボネート1g、プロピレンカーボネート1gを水4gに入れ混合した表面架橋液を使用したことを除いては、実施例3と同様な方法で実施例7の高吸水性樹脂を製造した。
【0132】
[比較例1]
段階1で発泡剤として炭酸水素ナトリウムを使用しないことを除いては、実施例1と同様な方法で比較例1のベース樹脂を製造した。このような方法で得られたベース樹脂を電子顕微鏡写真で分析して全体ベース樹脂粉末中の縦横比が0.5未満である粒子の比率(個数%)を測定した。測定結果、該当ベース樹脂粉末中、縦横比が0.5未満である粒子の比率は約5個数%であると確認された。
【0133】
[比較例2]
製造されたベース樹脂粉末100重量部にエチレンカーボネート1gを水4gに入れて混合した表面架橋液5gを使用したことを除いては、比較例1と同様な方法で比較例2の高吸水性樹脂を製造した。このような表面架橋液の表面張力は51mN/mと測定された。
【0134】
[比較例3]
製造されたベース樹脂粉末100重量部にエチレンカーボネート1gを水4gに入れて混合した表面架橋液5gを使用したことを除いては、実施例1と同様な方法で比較例3の高吸水性樹脂を製造した。
【0135】
[比較例4]
製造されたベース樹脂粉末100重量部にエチレンカーボネート1gを水4gに入れて混合した表面架橋液5gを使用したことを除いては、実施例3と同様な方法で比較例4の高吸水性樹脂を製造した。
【0136】
[比較例5]
韓国公開特許公報第2015-0132035号の製造例に記載された方法によって含水ゲル重合体の製造および乾燥を行った。その後、前記韓国公開特許公報第2015-0132035号の実施例1に記載された方法によって、ベース樹脂を製造し表面架橋を行って比較例5の高吸水性樹脂を製造した。
【0137】
[実験例]
実施例および比較例で製造した各高吸水性樹脂の物性、そして製造過程中の諸般物性を次の方法で測定および評価した。
【0138】
(1)ベース樹脂粉末および高吸水性樹脂粒子の縦横比および粒子分布の測定
図1のように電子顕微鏡を通じて各粉末/粒子らの最短直径(a)および最長直径(b)を算出してこれから各粉末/粒子の縦横比を測定し、各実施例/比較例で得られた全体粉末/粒子のうちの縦横比が0.5未満である粉末/粒子の個数比率(個数%)を算出した。
【0139】
(2)遠心分離保水能(CRC、Centrifuge Retention Capacity)
ヨーロッパ不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)規格EDANA WSP 241.3によって無荷重下吸収倍率による遠心分離保水能(CRC)を測定した。高吸水性樹脂W0(g、約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後に、常温に0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液の生理食塩水に浸水させた。30分後に封筒を遠心分離機を用いて250Gで3分間水気を切った後に封筒の質量W2(g)を測定した。また、高吸水性樹脂を用いなく同一な操作をした後にその時の質量W1(g)を測定した。このように得られた各質量を用いて次の計算式1によってCRC(g/g)を算出して保水能を確認した。
[計算式1]
CRC(g/g)={[W2(g)-W1(g)-W0(g)]/W0(g)}
【0140】
(3)加圧吸水能(Absorbing under Pressure、AUP)
実施例および比較例の高吸水性樹脂に対して、ヨーロッパ不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association)規格EDANA WSP 242.3の方法によって加圧吸水能(AUP:Absorbency under Pressure)を測定した。
まず、内径60mmのプラスチックの円筒底にステンレス製400メッシュ(mesh)鉄網を装着させた。23±2℃の温度および45%の相対湿度条件下で鉄網上に実施例1~6および比較例1~4で得られた樹脂W0(g、0.90g)を均一に散布し、その上に4.83kPa(0.7psi)の荷重を均一にさらに付与することができるピストン(piston)は外径が60mmより若干小さく円筒の内壁と隙間がなく、上下の動きが邪魔されないようにした。この時、前記装置の重量W3(g)を測定した。
直径150mmのペトリ皿の内側に直径125mmで厚さ5mmのガラスフィルターをおいて、0.90重量%塩化ナトリウムで構成された生理食塩水をガラスフィルターの上面と同一レベルになるようにした。ガラスフィルターの上に前記測定装置をのせて、液を荷重下で1時間吸収した。1時間後に測定装置を持ち上げて、その重量W4(g)を測定した。
このように得られた各質量を用いて次の計算式2によってAUP(g/g)を算出して加圧吸水能を確認した。
[計算式2]
AUP(g/g)=[W4(g)-W3(g)]/W0(g)
上記計算式2中、
0(g)は、高吸水性樹脂の初期重量(g)であり、
3(g)は、高吸水性樹脂の重量および前記高吸水性樹脂に荷重を付与することができる装置重量の総合であり、
4(g)は、荷重(0.7psi)下に1時間前記高吸水性樹脂に生理食塩水を吸収させた後に、高吸水性樹脂の重量および前記高吸水性樹脂に荷重を付与することができる装置重量の総合である。
【0141】
(4)生理食塩水流れ誘導性(SFC;saline flow conductivity)
米国特許登録番号第5562646号のカラム54~カラム59に開示された方法によって測定および算出した。
【0142】
(5)30秒吸水速度
30秒吸水速度および空隙率は、約0.16gの高吸水性樹脂を円筒形シリンダー下部のメッシュ(mesh)を通じて流入された生理食塩水によって0.3psi加圧条件下で膨潤させながら測定することができる。実時間で高吸水性樹脂の体積膨張によるレオメータ上部プレートの高さ変化を測定し、30秒での上部プレートの高さを吸水時間(30秒)で割った値を通じて前記30秒吸水速度を測定および算出することができる。また、空隙率は、前記高吸水性樹脂の膨潤が完了した時、シリンダー内部の総体積(最終吸収高さ*円筒形シリンダー下部面的)を計算し、この値から含水率測定器で測定された高吸水性樹脂の生理食塩水吸収量を引く方法で算出することができる。
【0143】
(6)表面架橋液および高吸水性樹脂の表面張力
全ての過程は、恒温恒湿室(温度23±0.5℃、相対湿度45±0.5%)で行った。
まず、表面架橋液の表面張力は、このような表面架橋液をピペットで抽出して他の清潔なカップに移した後、表面張力測定器(surface tensionmeter Kruss K11/K100)を用いて測定した。
その次に、高吸水性樹脂の表面張力は0.9重量%塩化ナトリウムから構成された生理食塩水150gを250mLビーカーに入れてマグネチックバーで攪拌した。高吸水性樹脂1.0gを攪拌中の溶液に入れて3分間攪拌した後、攪拌を止めて膨潤された高吸水性樹脂が底に沈むように15分以上放置した。
その後、上澄液(表面の真下部分の溶液)をピペットで抽出して他の清潔なカップに移した後、表面張力測定器(surface tensionmeter Kruss K11/K100)を用いて測定した。
【0144】
前記方法で測定された実施例1~7および比較例1~5の各物性値を下記表1に整理して示した。
【0145】
【表1】
【0146】
上記表1を参照すれば、実施例1~7は所定の粒子分布を充足し、35(・10-7cm3・s/g)以上で定義される優れた通液性を示すのが確認された。このような実施例1~7は吸水度などで定義される基本的な吸水性能が優れるだけでなく、前記通液性が優れながらも、粒子分布が最適化されて30秒吸水速度によって定義される吸水速度も優れたことが確認された。
【0147】
これに比べて、比較例1~5は実施例に比べて、通液性または吸水速度の一つ以上が劣悪であると確認された。
図1