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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】自動分析装置及びその組立支援システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20240209BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
G01N35/10 B
G01N35/00 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022524882
(86)(22)【出願日】2021-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2021003964
(87)【国際公開番号】W WO2021235015
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2020089370
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】宮本 隼佑
(72)【発明者】
【氏名】三島 弘之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 創
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸丸 武
(72)【発明者】
【氏名】安居 晃啓
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-518572(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044160(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0048194(US,A1)
【文献】国際公開第2013/035471(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/230198(WO,A1)
【文献】特開2004-061397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 1/00- 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分注ユニットと、
それぞれ対応する分注ユニットに接続された複数のポンプユニットと
を備え、
前記複数のポンプユニットのそれぞれは、
一端に液体ポートを有し他端が開口したシリンジ管と、
前記シリンジ管の他端の開口に装着されたシリンジ基部と、
前記シリンジ基部を貫通し先端が前記シリンジ管の内部に挿入されたプランジャと、
前記プランジャ及び前記シリンジ基部の隙間をシールするシールピースと、
アクチュエータと、
前記アクチュエータ及び前記プランジャを連結する動力伝達機構とを含んで構成され、
前記複数のポンプユニットの各プランジャは、個別に直径が設定されて太さが異なっており、
前記シリンジ基部及び前記シリンジ管の少なくとも一方は、対応するプランジャの直径に応じて成形色が色分けされており、前記対応するプランジャの直径を外観で表している
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1の自動分析装置において、
前記シリンジ基部は、対応するプランジャの直径を成形色で表示しており、
前記シリンジ管は、対応するプランジャの直径の大きさの範囲を成形色で表示している
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1の自動分析装置において、
前記液体ポートと前記分注ユニットとを接続するホースに設けられ、対応するシリンジ管の成形色と色が対応した識別バンドを備えていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1の自動分析装置において、
前記複数のポンプユニット同士で、前記シリンジ管、前記シリンジ基部、前記アクチュエータ及び前記動力伝達機構のそれぞれの外形が統一されていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1の自動分析装置において、
前記複数のポンプユニットが規定の位置から見て重ならないように並べて配置してあることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1の自動分析装置において、
前記複数のポンプユニットは、それぞれ対応する位置に視標を有していることを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1の自動分析装置と、
モニタと、
前記複数のポンプユニットのそれぞれの前記シリンジ管及び前記シリンジ基部の配置と前記外観についての登録データが記録されたメモリと、
前記自動分析装置についての前記登録データを前記モニタに表示出力する少なくとも1つのプロセッサと
を備えていることを特徴とする組立支援システム。
【請求項8】
請求項1の自動分析装置と、
モニタと、
前記複数のポンプユニットのそれぞれの前記シリンジ管及び前記シリンジ基部の配置と前記外観についての登録データが記録されたメモリと、
前記複数のポンプユニットの撮影画像を前記登録データと照合し、前記シリンジ管及び前記シリンジ基部の組み付け位置の正誤判定をして前記モニタに判定結果を表示出力する少なくとも1つのプロセッサと
を備えていることを特徴とする組立支援システム。
【請求項9】
請求項の組立支援システムにおいて、
前記プロセッサは、前記シリンジ管及び前記シリンジ基部の組み付け位置に誤りがある場合、前記自動分析装置に分注動作を禁止するインターロック信号を出力することを特徴とする組立支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料の定量分析又は定性分析の少なくとも一方を実行する自動分析装置に係り、特にシリンジポンプを備えた自動分析装置及びその組立支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、試薬との反応で生じる血清や尿等の生体試料(以下、試料と略称する)の色調や濁りの変化、発光量等を測光ユニット(例えば分光光度計等)で光学的に測定し、試料の成分分析をする。
【0003】
試料と試薬を反応させるためには、それぞれが収容されている容器から反応容器へ適量の分注を行う必要がある。このため自動分析装置には、試料又は試薬(以下、液体と総称する)をそれぞれが収容されている容器から反応容器へ自動で吸引し吐出する分注装置が備わっている。分注装置は、様々な性質を持つ多種の液体を精度良く分注するために、対応する液体に適した部品を使用する必要がある。分注装置を構成する部品には、プランジャやシリンジ管、アクチュエータ等が含まれる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-61397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、分析精度、分注量、分析速度、設置スペース等、自動分析装置にはユーザに要求される仕様が多様化してきている。例えば分析精度にはシリンジポンプの性能が大きく関係する。自動分析装置には一般にシリンジポンプが複数備わっており、これらシリンジポンプは、試料分注ユニット、試薬分注ユニット、洗浄液分注ユニットといった各種分注ユニットに適宜接続される。各シリンジポンプは用途に応じてプランジャ径が異なる。
【0006】
特許文献1に記載されたシリンジポンプは、複数組のシリンジポンプで1つのアクチュエータを共用し、このアクチュエータを駆動すると複数のプランジャが一体に動作するように構成されている。この構成の場合、各々のプランジャを個別に駆動できないため、液体分注について動作シーケンスの自由度が低く、分析速度の向上や分注量の抑制の観点で不利である。それに対し、各シリンジポンプをそれぞれ専用のアクチュエータで駆動する構成とすれば動作シーケンスの自由度が増し、分析速度の面でも分注量の面でも有利になる。
【0007】
しかし、シリンジポンプはメンテナンスに伴って自動分析装置に対して脱着されるところ、シリンジポンプとアクチュエータを一対一の関係にすると似通ったシリンジポンプを対応するアクチュエータに正しく組み合わせなければならない。そのため、メンテナンス後にシリンジポンプを自動分析装置に戻す際、組み合わせの異なる分注ユニットに間違えてシリンジポンプを接続してしまうと、シリンジポンプが個別に駆動できるメリットが得られない。
【0008】
本発明の目的は、分注ユニットに組み合わせの異なるシリンジポンプが接続される取り違えを抑制できる自動分析装置及びその組立支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の分注ユニットと、それぞれ対応する分注ユニットに接続された複数のポンプユニットとを備え、前記複数のポンプユニットのそれぞれは、一端に液体ポートを有し他端が開口したシリンジ管と、前記シリンジ管の他端の開口に装着されたシリンジ基部と、前記シリンジ基部を貫通し先端が前記シリンジ管の内部に挿入されたプランジャと、前記プランジャ及び前記シリンジ基部の隙間をシールするシールピースと、アクチュエータと、前記アクチュエータ及び前記プランジャを連結する動力伝達機構とを含んで構成され、前記複数のポンプユニットの各プランジャは、個別に直径が設定されて太さが異なっており、前記シリンジ基部及び前記シリンジ管の少なくとも一方は、対応するプランジャの直径を外観で表している自動分析装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分注ユニットに組み合わせの異なるシリンジポンプが接続される取り違えを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る自動分析装置の一例の模式図
図2】本発明の第1実施形態に係る自動分析装置に備えられたポンプユニットの外観図
図3】本発明の第1実施形態に係る自動分析装置に備えられたポンプユニットのシリンジポンプについてプランジャの中心線を含む平面で切断した断面図
図4】本発明の第1実施形態に係る自動分析装置におけるシリンジ管及びシリンジ基部のプランジャ径による色分け表の一例を表す図
図5】本発明の第1実施形態に係る自動分析装置に備えられたポンプユニットの取り付け例を示す図
図6】本発明の第2実施形態に係る自動分析装置に備えられた複数のポンプユニットの外観図
図7】本発明の第2実施形態に係る組立支援システムの模式図
図8図6に示したポンプユニットを端末で撮影する様子を表す図
図9図7に示した組立支援システムの機能ブロック図
図10】本発明の第2実施形態に係る組立支援システムにおける一連の処理の手順の一例を表すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは原則として同一の符号を付している。
【0014】
(第1実施形態)
-自動分析装置-
図1は本発明の第1実施形態に係る自動分析装置の一例の模式図である。同図に示した自動分析装置1は、複数のディスク11-14、複数の分注ユニット21-24、複数のポンプユニット31-34、攪拌装置41、容器洗浄機構42、光源43、分光検出器44、コンピュータ50等の要素を含んで構成されている。各要素は自動分析装置1のボディに収容され又は取り付けられているが、ボディは図示省略してある。
【0015】
攪拌装置41は、反応容器17(後述)の内部の液体を撹拌する装置である。容器洗浄機構42は反応容器17を洗浄する機構である。光源43は反応容器17の内部の攪拌後の液体に検査光を照射する装置であり、本実施形態ではリング状の反応ディスク14の内周側に設置されている。分光検出器44は反応容器17を透過した検査光を受光するセンサを含む装置であり、リング状の反応ディスク14の外周側に設置され、反応ディスク14を挟んで光源43と対向している。コンピュータ50は自動分析装置1の各機器の動作を制御する制御装置であり、分光検出器44からの信号を基に試料に含まれる特定の生体成分や化学物質等を検出する機能を併せて備えている。コンピュータ50は、ユーザの操作に応じて分析結果をディスプレイ51に表示出力したりプリンタ(不図示)に印刷出力したりすることができる。
【0016】
続いてディスク11-14、分注ユニット21-24、ポンプユニット31-34について順次説明する。
【0017】
-ディスク-
ディスク11は、試料が入った試料容器15(例えば採血管)を搬送する一種の搬送装置である。この試料用のディスク11には、複数の試料容器15を環状に設置することができる。ディスク11はアクチュエータ(不図示)により駆動されて鉛直軸を中心に回転(自転)する。アクチュエータの動作はコンピュータ50からの指令により制御され、例えば分注ユニット21の吸引位置に目的の試料容器15を移動させることができるように構成されている。
【0018】
ディスク12,13は、試薬が入った試薬容器16を搬送する一種の搬送装置である。試料用のディスク11と同様、これら試薬用のディスク12,13もそれぞれ複数の試薬容器16を環状に設置でき、コンピュータ50からの指令に応じてアクチュエータ(不図示)により駆動されて鉛直軸を中心に回転(自転)するように構成されている。これにより例えば分注ユニット22,23の吸引位置に目的の試薬容器16を移動させることができる。
【0019】
ディスク14は、環状に配置した複数の反応容器17を備えており、ディスク11-13と同様、コンピュータ50からの指令に応じてアクチュエータ(不図示)により駆動されて鉛直軸を中心に回転(自転)する構成である。これにより例えば分注ユニット21-24の吐出位置や攪拌装置41による攪拌位置、容器洗浄機構42による洗浄位置、光源43の検査光の照射位置に、目的の反応容器17を移動させることができる。
【0020】
-分注ユニット-
分注ユニット21は、試料容器15から吸引した試料を反応容器17に吐出して分注する装置である。この試料用の分注ユニット21は、鉛直軸を中心に回動自在なアームの先端から下向きに延びるプローブ(分注ノズル)を備えている。アームは、一のアクチュエータ(不図示)により回動し他のアクチュエータ(不図示)によって昇降するように構成されている。アームを回動させてプローブを吸引位置に移動させ、そこでアームを下げてプローブを試料容器15に挿し込むことでプローブに試料を吸引することができる。その後、アームを上げて回動させて吐出位置にプローブを移動させ、アームを下げてプローブを反応容器17に挿し込むことで試料を分注することができる。
【0021】
他の分注ユニット22-24も、分注ユニット21と同様の構成である。分注ユニット22,23は試薬用、分注ユニット24は洗浄液用である。分注ユニット22はディスク12の試薬容器16から試薬を吸引し、反応容器17に試薬を分注するように構成されている。分注ユニット23はディスク13の試薬容器16から試薬を吸引し、反応容器17に試薬を分注するように構成されている。分注ユニット24は洗浄液容器18から洗浄液を吸引し、反応容器17に洗浄液を吐出するように構成されている。
【0022】
なお、以下の説明において、分注ユニット21-24が吸引吐出する試料、試薬、洗浄液を総称して「液体」と記載する。
【0023】
-ポンプユニット-
ポンプユニット31-34は、対応する分注ユニットのプローブに液体を吸引したりプローブから液体を吐出したりさせる装置であり、それぞれ対応する分注ユニットに接続されている。ポンプユニット31は試料用であり、試料用の分注ユニット21に接続されてプローブを介した試料の吸引及び吐出をする。ポンプユニット32,33は試薬用である。ポンプユニット32は試薬用の分注ユニット22に、ポンプユニット33は試薬用の分注ユニット23に接続され、それぞれプローブを介した試薬の吸引及び吐出をする。ポンプユニット34は洗浄液用であり、洗浄液用の分注ユニット24に接続されて洗浄液の吸引及び吐出をする。
【0024】
本実施形態において、ポンプユニット31-34は規定の位置(例えば図5の視点P)から自動分析装置1を見た場合に互いに重ならないように並べて配置してある。例えば自動分析装置1の前部にポンプユニット31-34を設置した場合、自動分析装置1の前面カバーを開けて正面から見たときに、ポンプユニット31-34の各シリンジ管A1及びシリンジ基部A2が同時に見えるようなレイアウトとしてある。具体例として、本実施形態では、ポンプユニット31-34の各シリンジポンプAを上下に延びる姿勢で自動分析装置に取り付け、これらシリンジポンプAを同一平面(例えば前面カバーと平行な仮想平面)に沿って1列に水平に並べた構成を示してある(図1)。但し、ポンプユニットの配置例はこれに限定されず、例えば各ポンプユニットのシリンジポンプAを横向きに取り付けたり、複数列に配置したりすることもでき、1つの視点Pから全てのポンプユニットが同時に視認できる限りにおいて適宜変更可能である。
【0025】
また、ポンプユニット31-34は、用途(試料分注用途/試薬分注用途/洗浄液分注用途)毎にまとめて配置してある。本実施形態においては、向かって左側の区域に洗浄液分注用の2つのポンプユニット34を配置し、右側の区域に試薬分注用のポンプユニット32,33を配置し、中央の区域に試料分注用のポンプユニット31を配置した場合を例示している。
【0026】
図2はポンプユニット31-34の外観図、図3はプランジャの中心線を含む平面で切断したシリンジポンプの断面図である。ポンプユニット31-34はそれぞれ、シリンジポンプA、アクチュエータB及び動力伝達機構Cを含んで構成されている。
【0027】
シリンジポンプAは、シリンジ管A1、シリンジ基部A2、プランジャA3及びシールピースA4(図3)を含んで構成されている。
【0028】
シリンジ管A1は円筒状の部品であり、上下に延びる姿勢で自動分析装置1に組み付けられており、一端(本例では上端)に液体ポートA9を有し他端(本例では下端)が開口している。シリンジ管A1の周胴部には洗浄液ポートA8が1カ所設けられている。液体ポートA9は、ホースA7(図1)を介して対応する分注ユニットのプローブに接続している。洗浄液ポートA8は、ホースA6(同)を介して洗浄液容器18(同)に接続している。図1では洗浄液用のポンプユニット34のみが洗浄液容器18に接続している様子を表しているが、ポンプユニット31-33の洗浄液ポートも洗浄液容器18(又は他の洗浄液容器)に接続している。ホースA6,A7の途中には電磁弁(不図示)が備わっている。
【0029】
シリンジ基部A2はプラグ状の部品であり、シリンジ管A1の他端(下端)の開口に装着されている。シリンジ基部A2の中央にはプランジャA3を通し、またシールピースA4を装着する貫通孔が開いている。
【0030】
プランジャA3は円柱状の部品であり、シリンジ管A1と同軸に延び、シールピースA4及びシリンジ基部A2を貫通している。プランジャA3の先端側(本例では上側)はシリンジ管A1の内部に挿入されており、プランジャA3の基端側(本例では下側)はシリンジ管A1の外部に突出している。プランジャA3及びシリンジ基部A2の隙間はシールピースA4でシールされている。また、プランジャA3の外径はシリンジ管A1の内径に対して小さく、プランジャA3の外周面とシリンジ管A1の内周面との間には隙間が空いている。
【0031】
アクチュエータBはシリンジポンプAを駆動する駆動装置であり、電動モータ又は電動モータに減速機を組み合わせたアセンブリで構成されている。アクチュエータBの動作はコンピュータ50により制御される。
【0032】
動力伝達機構CはアクチュエータB及びプランジャA3を連結し、アクチュエータBの動力をシリンジポンプA(プランジャA3)に伝達する。この動力伝達機構Cは、サポートC1、ネジ軸C2、ブラケットC3を含んで構成されている。
【0033】
サポートC1はポンプユニットを自動分析装置1に固定する部品であり、本実施形態ではL字型に折れ曲がったプレートで構成されている。サポートC1の下部には上下に延びるスリットC9が設けられている。このサポートC1には、シリンジポンプA及びアクチュエータBが固定されて支持されている。本実施形態でサポートC1に固定されるシリンジポンプAの部品はシリンジ管A1であるが、シリンジ基部A2をサポートC1に固定する構成としても良い。
【0034】
ネジ軸C2は、アクチュエータBの出力軸(不図示)にカップリング(同)を介して連結され、プランジャA3と平行にアクチュエータBから下方に延びている。ネジ軸C2とシリンジポンプAの間にはサポートC1が介在している。
【0035】
ブラケットC3はプランジャA3とネジ軸C2を連結する部品であり、サポートC1に設けたスリットC9を通っている。このブラケットC3の一端は、プランジャA3の基端(本例では下端)に固定されている。ブラケットC3の他端にはネジ穴が開いており、このネジ穴にネジ軸C2がねじ込まれている。
【0036】
アクチュエータBを駆動するとネジ軸C2が回転し、ネジ軸C2から与えられる推力によりスリットC9にガイドされてブラケットC3が上下に並進移動し、シリンジ管A1に対してプランジャA3が出入りしてシリンジ管A1の内容積が変化する。このようなポンプユニットの動作をホースA6の電磁弁を閉じて実行することで、プローブに対して液体が吸引及び吐出される。ホースA7の電磁弁を閉じてポンプユニットを駆動する(プランジャA3を引く)ことで、シリンジ管A1に洗浄水が導入される。図2中の矢印はシリンジ管A1に対する液体の流れ方向を表している。
【0037】
-プランジャ径の識別表示-
ポンプユニットの部品のうち、シリンジ管A1、シリンジ基部A2、アクチュエータB及び動力伝達機構Cについては、ポンプユニット31-34同士でそれぞれの外形が統一されている。つまり、シリンジ管A1の外形はポンプユニット31-34で共通しているし、シリンジ基部A2の外形(内径を除く)もポンプユニット31-34で共通している。特に、シリンジ管A1、アクチュエータB及び動力伝達機構C(サポートC1、ネジ軸C2及びブラケットC3)については、ポンプユニット31-34に使用するもの同士で同一形状を採用することができる。更には、アクチュエータB及び動力伝達機構C(サポートC1、ネジ軸C2及びブラケットC3)については、ポンプユニット31-34間で色彩を統一することもできる。
【0038】
他方、ポンプユニット31-34のプランジャA3は、それぞれ個別に直径が設定されて太さが異なっている。プランジャA3の直径は自己が構成するシリンジポンプAが吸引する液体の種類に応じて設定され、各プランジャは少なくとも1種の他のプランジャと直径が異なっている。
【0039】
シリンジ基部A2については、ポンプユニット31-34同士で外形(外径)は共通しているが、シールピースA4やプランジャA3を嵌める中央の穴径(内径)がプランジャA3の直径に応じて異なっている。シールピースA4の内径はプランジャA3の直径に応じて当然に異なる。
【0040】
この点に関連し、本実施形態のシリンジ基部A2及びシリンジ管A1は、対応するプランジャA3(つまり共に同一のシリンジポンプAを構成するプランジャA3)の直径を外観で表している。具体的には、シリンジ基部A2及びシリンジ管A1の成形色が、対応するプランジャの直径に応じて色分けしてある。特に本実施形態の場合、シリンジ基部A2の成形色は対応するプランジャA3の直径を個別的に表示しているが、シリンジ管A1の成形色は対応するプランジャA3の直径の区分を表示している。つまり、シリンジ基部A2については、成形色とプランジャ径が一対一の関係で対応し、プランジャ径が微差でも異なっていれば成形色が区別してある。それに対し、シリンジ管A1については、プランジャ径の範囲について予め規定した区分の下、区分を跨いでプランジャ径が異なるもの同士の成形色は異なるが、プランジャ径が違っても同一区分に属するもの同士の成形色は同一である。
【0041】
図4はシリンジ管及びシリンジ基部のプランジャ径による色分け表の一例である。同図の例では、自動分析装置Xでは複数種の試薬α,βの使用が想定され、自動分析装置Yでは1種類の試薬の使用が想定されている。同表によれば、試料分注用のプランジャは直径1.0-3.9mm、試薬分注用のプランジャは直径4.0-7.9mm、洗浄液分注用のプランジャは直径8.0mm以上といったようにプランジャ径の範囲が区分されている。自動分析装置Xでは、試料の分注用に直径1.0mmのプランジャ、試薬αの分注用に直径5.0mmのプランジャ、試薬βの分注用に直径6.0mmのプランジャ、洗浄液の分注用に直径10.0mmのプランジャが採用されている。自動分析装置Yでは、試料の分注用に直径1.5mmのプランジャ、試薬の分注用に直径5.0mmのプランジャ、洗浄液の分注用に直径10.0mmのプランジャが採用されている。
【0042】
自動分析装置X,Yにおいて試料の分注に用いるプランジャはいずれも1.0-3.9mmの区分に属しており、自動分析装置X,Yのいずれにおいても試料分注用途を外観表示する赤色の成形色がシリンジ管に割り当てられている。他方、シリンジ基部については、自動分析装置X,Yで使用するプランジャの直径が異なることから同じ試料分注用途でも成形色が異なっており、自動分析装置Xでは赤色、自動分析装置Yでは黄色がシリンジ基部に割り当てられている。
【0043】
次に、自動分析装置X,Yで試薬の分注に用いるプランジャはいずれも4.0-7.9mmの区分に属しており、自動分析装置X,Yのいずれにおいても試薬分注用途を外観表示する青色の成形色がシリンジ管に割り当てられている。他方、シリンジ基部については、自動分析装置X,Yで共に使用する直径5.0mmのプランジャの表示色としてシリンジ管と同じ青色が割り当てられている。但し、自動分析装置Xでは直径6.0mmのプランジャも併用されるため、直径5.0mmのプランジャとの区別のために、直径6.0mmのプランジャに対応するシリンジ基部の成形色に灰色が採用されている。
【0044】
また、自動分析装置X,Yにおいて洗浄液の分注に用いるプランジャはいずれも8.0mm以上の区分に属しており、自動分析装置X,Yのいずれにおいても洗浄液分注用途を外観表示する緑色の成形色がシリンジ管に割り当てられている。洗浄液分注用途については、自動分析装置X,Yで使用するプランジャの直径は10.0mmで統一されており、いずれもシリンジ管と同じ緑色の成形色がシリンジ基部にも割り当てられている。
【0045】
なお、シリンジ管及びシリンジ基部の成形色は共通用途であれば同系色を割り当てることが好ましい。この観点の下、試料分注用途について、図4の例ではシリンジ基部の成形色に暖色(赤色、黄色)を割り当て、暖色を代表する赤色をシリンジ管の成形色に割り当てている。暖色の割り当ては、生体試料の代表例である血液との印象的関連性も強く、合理的な一例と考えられる。また、試薬分注用途について、同例ではシリンジ基部の成形色に暖色と対照をなす寒色(青色、灰色)を割り当て、寒色を代表する青色をシリンジ管の成形色に割り当てている。そして、洗浄液分注用途について、同例ではシリンジ基部の成形色に中性色(緑色)を割り当て、中性色を代表する緑色をシリンジ管の成形色に割り当てている。
【0046】
図5は本実施形態に係るポンプユニットの取り付け例を示す図である。シリンジ管A1及びシリンジ基部A2の成形色は図4の表の自動分析装置Xについて色分けの通りとする。各ポンプユニット31-34において、ホースA7のシリンジポンプとの接続端部には識別バンドD1が、ホースA6のシリンジポンプとの接続端部には識別バンドD2が取り付けられている。これら識別バンドD1,D2の色は、装着されたポンプユニットのシリンジ管A1又はシリンジ基部A2の成形色に対応している。同一のポンプユニットにおいて識別バンドD1,D2の色を統一しても良いが、本例では、識別バンドD1の色はシリンジ管A1の成形色に、識別バンドD2の色はシリンジ基部A2の成形色に対応させてある。従って、試料用のポンプユニット31、試薬α用のポンプユニット32、洗浄液用のポンプユニット34については識別バンドD1,D2が同色であるが、試薬β用のポンプユニット33については識別バンドD1,D2が同系色であるが色が異なる。
【0047】
-ポンプユニットのメンテナンス-
自動分析装置1の動作中、シリンジポンプAにおいてプランジャA3との擦れに伴ってシールピースA4が摩耗する。ポンプユニット31-34のメンテナンスの際、摩耗したシールピースA4は保守担当者等の作業者によって新しいものに交換される。具体的には、ポンプユニットの動力伝達機構CからシリンジポンプAが取り外され、取り外されたシリンジポンプAは、シリンジ管A1、シリンジ基部A2、プランジャA3及びシールピースA4に分解される。そして、シールピースA4を新しいものに替え、シリンジ管A1、シリンジ基部A2、プランジャA3及びシールピースA4を組み立て、組み上がったシリンジポンプAをポンプユニットの動力伝達機構Cに装着する。
【0048】
このような分解及び組立の作業が複数のポンプユニットについて並行して行われると、シリンジ基部とシリンジ管の組み合わせを取り違えたり、組み上げたシリンジポンプを異なるポンプユニットに組み付けたりするヒューマンエラーが一般に生じ易い。
【0049】
-効果-
(1)本実施形態においては、複数のポンプユニット31-34がそれぞれアクチュエータBを備えているので、ポンプユニット31-34を個別に駆動することができる。そのため、液体分注についての動作シーケンスの自由度が高く、分析速度の向上の面でも分注量の抑制の面でも優れる。
【0050】
(2)シリンジ管A1及びシリンジ基部A2が対応するプランジャの直径を成形色で表している。プランジャA3は分注対象の液体の種別毎に直径が異なり、シールピースA4は直径が対応するプランジャA3にしか形状が合わない。シールピースA4とプランジャA3との組み違えに関しては物理的に起こり難い。本実施形態においては、このシールピースA4と嵌め合うシリンジ基部A2の成形色がプランジャA3に応じて異なり、作業者は現在組み上げているシリンジポンプAが何の分注用途なのかシリンジ基部A2の色で認識できる。
【0051】
加えて、本実施形態ではシリンジ管A1もプランジャ径の区分(本例では用途に等しい)で色分けされている。形状的にシリンジ管A1とシリンジ基部A2は自由に組み合わせられるが、シリンジ管A1とシリンジ基部A2が色分けされているので、シリンジ基部A2に同一用途のシリンジ管A1を装着するに当たって取り違えが起こり難い。用途の整合したシリンジ管A1を装着することで、シリンジ基部A2に比べて露出面積の大きなシリンジ管A1で何用のシリンジポンプであるのかが一見して分かり易い。作業者はシリンジポンプAの見た目でこれを組み付けるべきポンプユニットも分かるので、シリンジポンプAを組み合わせの正しい動力伝達機構Cに円滑に組み付けることができる。よって、組み合わせの異なる分注ユニットにシリンジポンプが接続される取り違えを抑制することができる。
【0052】
なお、前述した通り、本実施形態においては、シリンジ管A1とシリンジ基部A2の双方の成形色を対応するプランジャA3の直径に応じて色分けしたことで、シリンジ管A1とシリンジ基部A2の組み違えを効果的に抑制できる。更には、露出面積の大きなシリンジ管A1でプランジャ径が一目瞭然であることにより、シリンジポンプAと分注ユニットとの組み違えも効果的に抑制できる。しかし、例えばシリンジ基部A2の成形色のみでも、表示面積は小さくなるがプランジャ径を外観で認識することはできる。この観点ではシリンジ管A1については色分けをせずに成形色を統一しても良い。
【0053】
(3)本実施形態において、シリンジ基部A2についてはプランジャ径と一対一の対応関係で細かく色分けし、シリンジ管A1についてはプランジャ径の区分で色分けする場合を例示した。例えば同一用途(試料分注用途、試薬分注用途等)で使用するプランジャ径のバリエーションが増した場合、シリンジ管A1についても細かく色分けすると、シリンジ基部A2に対してペアとして組み合わせられるシリンジ管A1を見つけるのに手間取り得る。組み上げたシリンジポンプAを組み付ける位置を絞り込む場合も同様である。
【0054】
その点、シリンジ管A1については用途(プランジャ径の区分)で大まかに色分けすることで、シリンジ基部A2に対してペアとして組み合わせられるシリンジ管A1が見つけ易い。組み上げたシリンジポンプAを動力伝達機構Cに組み付ける場合にも、シリンジ管A1の色から組み付け位置を区域で大まかに把握し、更にシリンジ基部A2の色で組み付け位置を詳しく絞り込むといった使い方ができる。図4の表の自動分析装置Xの試薬βの例を用いて説明すると、シリンジ管A1が青色であることから、図5においてまず試薬分注用途のポンプユニット32,33の配置された右側の区域に組み付け位置の候補を絞ることができる。後はシリンジ基部A2の色が灰色であることから、組み付け位置は二者択一でポンプユニット33に特定することができる。このメリットはポンプユニットの数が増えるほど有効となり得る。
【0055】
(4)ホースA6,A7に識別バンドD1,D2を設けたので、作業者は識別バンドD1,D2とシリンジ管A1及びシリンジ基部A2との色を合わせてシリンジポンプAを正しい位置にセットできる。この場合、作業者はポンプユニットとプランジャ径の対応について覚える必要がなく、また説明書等でシリンジポンプAの配置を確認しながら作業する必要もない。
【0056】
(5)ポンプユニット31-34の間で、シリンジ管A1、シリンジ基部A2、アクチュエータB及び動力伝達機構Cについては外形が統一されている。特に、シリンジ管A1、アクチュエータB及び動力伝達機構Cについてはポンプユニット31-34で全く同一形状の部品を用いることができ、大きな量産効果により製造コストが削減できる。
【0057】
(6)ポンプユニット31-34が規定の位置から見て重ならないように並べて配置してあるので、シリンジポンプAの一覧性に優れ、組み付けの正誤確認にも有利である。
【0058】
(第2実施形態)
第1実施形態では、シリンジ管A1及びシリンジ基部A2の組み付け位置(シリンジポンプAの部品選択や組み付け位置)を作業者が目視で正誤判断する例を説明した。シリンジ管A1やシリンジ基部A2、更には識別バンドD1,D2の色分けにより部品の取り違えが効果的に抑制できるが、ヒューマンエラーは起こり得る。
【0059】
そこで、シリンジ管A1やシリンジ基部A2の組み付け位置の指示や正誤判定をする組立支援システムを用い、ヒューマンエラーの発生を抑制する実施形態を説明する。
【0060】
-自動分析装置-
図6は本発明の第2実施形態におけるポンプユニットの外観図である。第1実施形態で説明した要素と同様の要素又は対応する要素には、図6において既出図面と同符号を付して説明を省略する。図6に示したポンプユニット31’-34’が第1実施形態のポンプユニット31-34と相違する点は、本実施形態のポンプユニット31’-34’がそれぞれ対応する位置に視標Eを有している点である。その他の点において、ポンプユニット31’-34’はポンプユニット31-34と同様である。識別バンドD1,D2(図5)については省略可能である。
【0061】
自動分析装置1の正面から見た(図5の視点Pに相当する位置から見た)動力伝達機構CのサポートC1の面積はシリンジポンプAの面積よりも大きい。正面から見ると(図5の視点Pに相当する位置から見ると)シリンジポンプAの背面側に位置するサポートC1がシリンジポンプAからはみ出して見える。本実施形態ではサポートC1の前面(シリンジポンプA側の面で視点Pに対向する面)のコーナー部分(本例では対角をなす2つのコーナー)に前述した視標Eが設けられている。視標Eはポンプユニット31’-34’の撮影画像上で目的の部品(シリンジ管A1及びシリンジ基部A2)を認識するための基準となるマークである。視標Eの表示位置は前述したシリンジポンプAからはみ出して見える領域に属し、正面(視点P)から見てシリンジポンプA(シリンジ管A1及びシリンジ基部A2)と視標Eとが規定の位置関係で同時に見えるように構成されている。
【0062】
-組立支援システムの概要-
図7は本実施形態に係る組立支援システムの模式図である。同図に示したシステムは、少なくとも1つの自動分析装置1’、端末60及びサーバ100を含んで構成されている。
【0063】
自動分析装置1’には、その外壁面にID表示(不図示)が貼付又は描画されている。ID表示として本実施形態ではバーコードが採用され、端末60でバーコードを撮影することで自動分析装置1’の登録IDが認識される。ID表示としては、バーコード以外のコードを用いることもできるし、コードの代わりに文字列を採用し、撮影画像から文字を認識して登録IDを認識する構成とすることもできる。また、ID表示は、視点Pから端末60でポンプユニット31’-34’を撮影した際にポンプユニット31’-34’と共に撮影画像に写り込む位置に配置することができる。この場合、シリンジ管A1やシリンジ基部A2の組み付け位置の正誤判定用の画像でも自動分析装置1’のIDの識別をすることができるメリットがある。このような機能が不要であれば、ポンプユニット31’-34’と同時に画像に写り込まない位置にID表示を配置することができる。
【0064】
その他の点において、自動分析装置1’のハード構成は、図6で説明した視標Eの有無を除いて第1実施形態の自動分析装置1と同様である。
【0065】
端末60は撮影機能付きで、カメラ61(図9)とモニタ62(図9)を備えている。端末60としては、スマートフォン、タブレット型PC、ノート型PC等のモバイル端末を好適に用いることができるが、専用端末として自動分析装置1’に備え付けた構成とすることもできる。モバイル端末は汎用品に所定のプログラムをインストールしたものでも良いし、本実施形態で説明する用途のみを実行する専用品として構成しても良い。
【0066】
サーバ100は、前述したID表示の撮影画像から自動分析装置1’のIDを認識する。そして、ポンプユニット31’-34’のシリンジポンプAのシリンジ管A1及びシリンジ基部A2の配置及び成形色についての登録データを端末60に送信し、端末60に組立指示画面をモニタ62に表示出力させる機能を持つ。作業者は端末60のモニタ62に表示された組立指示画面に従って、各シリンジポンプAを組み立てて所定の位置に組み付けることができる。
【0067】
また、サーバ100は、図8のようにして正面からカメラ61で撮影したポンプユニット31’-34’の画像に基づいて、シリンジ管A1やシリンジ基部A2の組み付け位置の正誤判定ができるようにプログラムされている。作業者は、サーバ100から返ってきた判定結果を端末60のモニタ62で確認することができる。
【0068】
更には、サーバ100は、シリンジ管A1及びシリンジ基部A2の組み付け位置に誤りがある場合、対応する自動分析装置1’のコンピュータ50に分注動作を禁止するインターロック信号を出力する機能を持つ。インターロック信号を受信したコンピュータ50は、分注のオーダーの有無に関わらず、少なくともポンプユニット31’-34’のアクチュエータBに対する一切の指令信号の出力を停止する。分注動作のインターロックは、コンピュータ50がサーバ100からのインターロック解除信号を受信することで解除される。
【0069】
-組立支援システムの構成例-
図9は組立支援システムの機能ブロック図である。同図を用いて端末60やサーバ100の構成について説明する。
【0070】
端末60は、代表的な要素として、カメラ61及びモニタ62の他、受信機63、メモリ64、プロセッサ65、タイマ66、送信機67等を含んで構成されている。受信機63はサーバ100からのデータを受信する。受信するデータには、シリンジ管A1及びシリンジ基部A2の配置情報(組立指示画面)、組み付け位置の正誤判定結果、メンテナンス通知等が含まれる。メモリ64には、プロセッサ65が実行するプログラムやプログラムの実行に必要なデータ、サーバ100から受信したデータ、カメラ61で撮影された画像データ等が記録される。撮影画像には、タイマ66で計測された撮影日時のデータが付加されている。プロセッサ65は例えばCPUであるが、マイクロプロセッサ等の同様の演算機能を持つ多種の装置で代替しても良い。端末60は、プロセッサ65によりカメラ61やモニタ62を制御したり、サーバ100との間で授受するデータを処理したりする。送信機67はサーバ100にデータを送信する。送信するデータには、カメラ61で撮影した自動分析装置1’の識別表示やポンプユニット31’-34’等の画像(撮影日時を含む)等が含まれる。
【0071】
サーバ100は、代表的な要素として、受信機110、メモリ120、プロセッサ130、送信機140を含んで構成されている。受信機110は端末60からのデータを受信する。受信するデータには、カメラ61で撮影した自動分析装置1’の識別表示やポンプユニット31’-34’等の画像(撮影日時を含む)等が含まれる。送信機140は端末60にデータを送信する。送信するデータには、シリンジ管A1及びシリンジ基部A2の配置情報(組立指示画面)、組み付け位置の正誤判定結果、メンテナンス通知等が含まれる。また送信機140は自動分析装置1’にも接続されており、自動分析装置1’に対してはインターロック信号(後述)やその解除信号を出力し得る。
【0072】
メモリ120には、プロセッサ130が実行するプログラムやプログラムの実行に必要なデータ、端末60から受信したデータ等が記録される。プログラムの実行に必要なデータとしては、配置情報テーブル121、メンテナンス履歴122、メンテナンス周期テーブル123等が登録されている。
【0073】
配置情報テーブル121は、ポンプユニット31’-34’のそれぞれのシリンジ管A1及びシリンジ基部A2の配置と成形色(外観)について自動分析装置1’のID毎にまとめたデータである。
【0074】
メンテナンス履歴122は、例えば自動分析装置1’についてシリンジ管A1やシリンジ基部A2の組み付け位置の正誤判定でされた良判定(図10のステップS8の実行)の日時の履歴である。
【0075】
メンテナンス周期テーブル123は、シールピースA4の摩耗の観点から設定されたポンプユニット31’-34’のメンテナンス間隔について自動分析装置1’のID毎にまとめたデータである。
【0076】
プロセッサ130は例えばCPUであるが、マイクロプロセッサ等の同様の演算機能を持つ多種の装置で代替しても良い。プロセッサ130は、メモリ120に格納されたプログラムに従って、装置判定131、正誤判定132、通知133、インターロック134の各処理を実行する機能を持つ。
【0077】
装置判定131は、自動分析装置1’のIDを判定し、自動分析装置1’についてのシリンジ管A1及びシリンジ基部A2の配置及び成形色の登録データを配置情報テーブル121から読み込んで送信機140を介して端末60に出力する処理である。こうしてサーバ100から送信された登録情報が端末60で受信され、端末60においてプロセッサ65によりモニタ62にその登録情報が例えば組立指示画面として表示出力される。
【0078】
正誤判定132は、シリンジポンプAを組み付けた状態のポンプユニット31’-34’について端末60から受信した撮影画像を配置情報テーブル121の登録データと照合し、シリンジ管A1及びシリンジ基部A2の組み付け位置の正誤判定をする処理である。正誤判定の結果は送信機して端末60に送信される。端末60では受信したデータに基づいてプロセッサ65によりモニタ62に正誤判定の結果が表示出力される。シリンジ管A1及びシリンジ基部A2の組み付け位置に誤りが含まれている場合、端末60には併せてその誤りの詳細情報が通知される。
【0079】
通知133は、自動分析装置1’について次回のメンテナンス時期を演算し、送信機140を介して端末60に通知する処理である。次回のメンテナンス時期は、自動分析装置1’に関しメンテナンス履歴122に記録された最新の(つまり直近の)メンテナンス日時にメンテナンス周期テーブル123から読み込んだ自動分析装置1’のメンテナンス周期を加えて演算される。通知のタイミングは適宜設定変更可能であり、例えばメンテナンス実行時(図10のステップS8の実行)でも良いし、次回のメンテナンス時期の到来時でも良いし、次回のメンテナンス時期の設定期間前でも良い。端末60ではサーバ100から受信した通知がプロセッサ65によりモニタ62に表示出力される。
インターロック134は、自動分析装置1’のシリンジ管A1及びシリンジ基部A2の組み付け位置に誤りがある場合、分注動作を禁止するインターロック信号を自動分析装置1’のコンピュータ50に出力する処理である。自動分析装置1’では入力されたインターロック信号に従い、コンピュータ50により自動分析装置1’の分注動作が禁止される。インターロックを解除する信号は、シリンジ管A1及びシリンジ基部A2の組み付け位置の誤りが正された場合にサーバ100からコンピュータ50に出力される。
【0080】
-処理手順-
図10はサーバ100による一連の処理の手順の一例を表すフローチャートである。以下に同図を用いてサーバ100により実行される処理の手順を説明する。
【0081】
ステップS1
メンテナンス時にポンプユニット31’-34’の各シールピースA4(図3)を交換する際、作業者は端末60の所定のプログラムを起動し、端末60で自動分析装置1’のID表示を撮影してサーバ100に送信する。こうして端末60から送信された撮影画像を受信機110で受信すると、サーバ100は図10のフローを開始し、まずステップS1として撮影画像に写り込んだID表示から自動分析装置1’のIDを認識する。
【0082】
ステップS2
ステップS2に手順を移すと、サーバ100は、ステップS1で認識したIDを基に自動分析装置1’のポンプユニット31’-34’の各シリンジポンプAの適正な組み付け状態のデータをメモリ20に記録された配置情報テーブル121から取得する。取得される配置データには、自動分析装置1’のポンプユニット31’-34’の各シリンジ管A1について予め登録された位置及び成形色の情報、並びに各シリンジ基部A2について同様に登録された位置及び成形色の情報が含まれる。
【0083】
ステップS3
続くステップS3において、サーバ100は、ステップS2で取得した自動分析装置1’のポンプユニット31’-34’の各シリンジポンプAの適正な組み付け状態のデータを送信機140から端末60に送信する。これにより端末60のモニタ62に組立指示画面が表示され、作業者はモニタ62の表示に従って、分解した各シリンジポンプAのシールピースA4を交換し、各シリンジポンプAを再度組み立てる。そして組み立てた各シリンジポンプAをモニタ62の表示に従って各々の動力伝達機構Cに組み付ける。モニタ62に映す組立指示画面は文章又は表の形式でも良いが、組み付け状態を表したカラー図面形式(又はカラー図面に色のテキスト情報を加えた形式)とすると見た目に分かり易い。
【0084】
ステップS4
各シリンジポンプAを各々の動力伝達機構Cに装着したら、作業者はポンプユニット31’-34’の全体を画角に納めて視点Pから端末60で撮影し、ポンプユニット31’-34’の撮影画像をサーバ100に送信する。ステップS4において、サーバ100はこうして端末60から送信されたポンプユニット31’-34’の撮影画像を受信機110で受信する。
【0085】
ステップS5
ステップS5に手順を移すと、サーバ100は、ステップS4で受信した撮影画像上で各視標Eを基準としてポンプユニット31’-34’の各シリンジ管A1及びシリンジ基部A2を認識し、各シリンジ管A1及びシリンジ基部A2の色を識別する。その後、サーバ100は、識別した各シリンジ管A1及び各シリンジ基部A2の色がステップS2で取得した適正なデータに一致しているかを判定する。各シリンジ管A1及びシリンジ基部A2の色が適正データに完全に一致していて各シリンジ管A1及び各シリンジ基部A2の組み付け位置が適正であれば、サーバ100はステップS5からステップS8に手順を移す。各シリンジ管A1及びシリンジ基部A2の色が適正データに一致しておらず各シリンジ管A1及びシリンジ基部A2の組み付け位置の少なくとも一部が間違っていれば、サーバ100はステップS5からステップS6に手順を移す。
【0086】
ステップS6
ステップS6に手順を移した場合、サーバ100はインターロック信号を自動分析装置1’に出力し、ポンプユニット31’-34’が適正に組み立てられていない状態で分注動作が実行されることがないように自動分析装置1’の分注動作を禁止する。
【0087】
ステップS7
続くステップS7において、サーバ100は、ステップS5でした正誤判定の結果に基づいてシリンジ管A1又はシリンジ基部A2の組み付け位置に誤りがある旨を端末60に通知し、ステップS4に手順を戻す。通知内容は端末60のモニタ62に表示される。この通知には、誤りの詳細情報が含まれる。誤りの詳細情報とは、例えば組み付け位置が間違っているパーツ(シリンジ管A1及び/又はシリンジ基部A2)の情報と、そのパーツの正しい組み付け位置の情報である。誤ったパーツが組み付けられている位置の情報と、その位置に組み付ける正しいパーツの情報を、誤りの詳細情報として表示しても良い。作業者はモニタ62の表示に従ってシリンジ管A1又はシリンジ基部A2の組み付け位置の誤りを修正する。シリンジ管A1又はシリンジ基部A2の組み付け位置の誤りを修正したら、作業者はポンプユニット31’-34’の全体を画角に納めて視点Pから端末60で撮影し、ポンプユニット31’-34’の撮影画像をサーバ100に送信する。サーバ100は、この撮影画像を受信してステップS4,S5の手順を再度実行する。
【0088】
ステップS8
ステップS5で各シリンジ管A1及び各シリンジ基部A2の組み付け位置が適正であれば、サーバ100はステップS8に手順を移し、全てのシリンジ管A1及びシリンジ基部A2の組み付け位置が適正である旨を端末60に通知する。通知内容は端末60のモニタ62に表示される。また、自動分析装置1’にインターロックが掛かっている場合、サーバ100はインターロック解除信号を自動分析装置1’に出力する。
【0089】
ステップS9
続くステップS9において、サーバ100は、シールピースA4の交換が適正に完了した日時(例えばステップS8の通知の日時)をメンテナンス履歴122に記録して図10のフローを終了する。
【0090】
図10では省略しているが、サーバ100は、ステップS9でメンテナンス履歴122に記録した最新のメンテナンス日時から演算した次回のメンテナンス時期を規定のタイミングで端末60に通知する。
【0091】
-効果-
(1)本実施形態においても、シリンジ管A1やシリンジ基部A2を同様に色分けしているので、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0092】
(2)加えて、本実施形態では、ポンプユニット31’-34’にそれぞれ視標Eを表示した。これにより、ポンプユニット31’-34’のシリンジ管A1やシリンジ基部A2の色情報を画像処理で取得する際、視標Eを基準としてシリンジ管A1やシリンジ基部A2を高精度に認識することができ、色情報についても高い認識精度を確保することができる。
【0093】
(3)また、自動分析装置1’のポンプユニット31’-34’のシリンジ管A1及びシリンジ基部A2の正しい配置と色の情報を予めメモリ120に登録した。シリンジ管A1及びシリンジ基部A2の正しい配置と色の情報は、自動分析装置1’のポンプユニット31’-34’についてシールピースA4の交換に伴って各シリンジポンプAの分解組立をする際に呼び出してモニタ62で組立指示画面として確認できる。これによりモニタ62の表示に従って迷いなく各シリンジポンプAを分解し組み立てることができ、高い作業効率を確保することができる。
【0094】
(4)シリンジ管A1及びシリンジ基部A2の正しい配置と色の情報は、各シリンジポンプAを組み付けた後のポンプユニット31’-34’の撮影画像と照合してシリンジ管A1及びシリンジ基部A2の組み付け位置の正誤判定にも活用できる。こうして画像処理を活用してシステム的にシリンジ管A1及びシリンジ基部A2の組み付け位置の正誤判定をすることで、ヒューマンエラーによるシリンジ管A1及びシリンジ基部A2の組み付け位置の間違いを抑制できる。
【0095】
(5)更に、本実施形態においては、システム的にシリンジ管A1及びシリンジ基部A2の組み付け位置の正誤判定をした結果、間違いがある場合には自動分析装置1’の分注動作が禁止される。これにより、シリンジポンプAの組付け間違いが分析結果に悪影響を及ぼすことを未然に防止することができる。
【0096】
(6)また、次回のメンテナンス日時を通知することで、シールピースA4の摩耗による分注精度の低下の未然防止に貢献できる。
【0097】
(7)第1実施形態でも述べた通り、色分けはシリンジ管A1及びシリンジ基部A2のいずれか一方でも良いが、本実施形態では露出面積の大きなシリンジ管A1についても色分けしたことで、画像上で色を精度良く認識する上でも有利である。
【0098】
(変形例)
以上の2つの実施形態では、シリンジ基部A2及びシリンジ管A1の双方を色分けした構成を例に挙げて説明した。しかし、プランジャ径をシリンジポンプAの外観で表す上では、前述した通りシリンジ管A1及びシリンジ基部A2のいずれか一方のみをプランジャ径に応じて色分けした構成とすることもできる。この場合も一定の効果が期待できる。
【0099】
また、シリンジ管A1やシリンジ基部A2を色分けする上では、シリンジ管A1等の成形色で区別する例に限らず、例えばシリンジ管A1等に貼付するシール、シリンジ管A1等に装着するバンド、シリンジ管A1等の塗装により色分けすることも可能である。更には、シリンジポンプAの大きさや形状を変えることなくシリンジポンプAの外観でプランジャ径を表す上では、部品の色分けにも限定されず、例えばレーザ印字でシリンジ管A1やシリンジ基部A2にプランジャ径を表記する例も考えられる。
【0100】
また、第2実施形態について、サーバ100が管理対象とする自動分析装置1’を図7及び図9で1台のみ図示したが、1つのサーバ100で複数台或いは複数種の自動分析装置を管理できることは言うまでもない。同一施設内でポンプユニットの配置の異なる自動分析装置が2台以上ある場合等には、メモリ120の配置情報テーブル121に各自動分析装置のIDとこれに対応する配置情報とを登録しておき、IDに応じて配置情報が呼び出せるようにしておけば良い。メンテナンス履歴122やメンテナンス周期テーブル123についても同様である。
【0101】
また、第2実施形態において、自動分析装置1’のID表示としてバーコードを採用した場合を例に挙げて説明したが、ID表示は別種のものを採用しても良い。また、画像で自動分析装置1’のIDを認識する例に限らず、例えば端末60に複数の自動分析装置1’を登録しておき、端末60でいずれかの自動分析装置1’を選択して対応する配置情報を呼び出すようにすることもできる。
【0102】
加えて、第2実施形態において、サーバ100と端末60との協働で組み付け位置の指示や正誤判定、各種通知の処理を実行するシステムを例に挙げたが、端末60の演算能力が許容すれば端末60のみで一連の処理を実行することができる構成にもできる。この場合、サーバ100のメモリ120の記憶情報を端末60のメモリ64に記録し、プロセッサ130で実行する機能を端末60のプロセッサ65で実行できるようにすれば良い。
【0103】
また、第2実施形態において、ポンプユニット31’-34’にそれぞれ2つずつ設けた視標Eは全て同じものとしたが、ポンプユニット毎に視標Eを変えても良い。同一のポンプユニットにおいて2つの視標Eが互いに異なっていても良い。また視標Eは各ポンプユニットに1つずつとしても良い。更には、視標を用いずに撮影画像からシリンジ管A1及びシリンジ基部A2を形状で認識するようにしても良い。
【符号の説明】
【0104】
1,1’…自動分析装置、21-24…分注ユニット、31-34…ポンプユニット、62…モニタ、64…メモリ、65…プロセッサ、120…メモリ、130…プロセッサ、A1…シリンジ管、A2…シリンジ基部、A3…プランジャ、A4…シールピース、A6,A7…ホース、A9…液体ポート、B…アクチュエータ、C…動力伝達機構、D1,D2…識別バンド、E…視標
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10