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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-08
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20240209BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
G01N35/00 C
G01N35/02 G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022550334
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2021009030
(87)【国際公開番号】W WO2022059231
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2020156008
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】野中 昂平
(72)【発明者】
【氏名】高山 洋行
(72)【発明者】
【氏名】川原 鉄士
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-136225(JP,A)
【文献】特開平06-079672(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031451(WO,A1)
【文献】特表2015-517675(JP,A)
【文献】特開2006-308560(JP,A)
【文献】特開平05-010948(JP,A)
【文献】特開2014-095709(JP,A)
【文献】特開昭55-140154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00~35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動分析装置であって、
検体と反応させる試薬を収容した試薬ボトルを保管する試薬保管部と、
前記試薬ボトルを前記試薬保管部に搬送する試薬搬送部と、
前記試薬保管部設けられており、前記試薬ボトルを区画するリブ、前記試薬ボトルを設置する位置を示す凹形状、前記試薬ボトルを設置する位置を示す凸形状、のうち少なくともいずれかで構成される基準部材と、
記試薬搬送部設けられており、光源および前記光源から放出され前記基準部材で反射された光を検出する検出器から構成される反射型センサ、前記基準部材までの距離を測定するレーザ変位計、のうち少なくともいずれかで構成される、前記試薬搬送部の鉛直方向における待機位置から前記基準部材までの距離を測定するセンサと、
前記センサにより検知された前記基準部材の位置に基づいて、前記試薬搬送部の搬送パラメータを調整するとともに、前記センサにより検知された待機位置から前記基準部材までの距離の経時変化から、前記試薬保管部、あるいは前記試薬搬送部の異常、故障状態の有無を判定する制御部と、を備えた
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
自動分析装置であって、
検体と反応させる試薬を収容した試薬ボトルを設置する試薬搭載部と、
前記試薬ボトルを保管する試薬保管部と、
前記試薬ボトルを前記試薬搭載部から前記試薬保管部に搬送する試薬搬送部と、
前記試薬搭載部設けられており、前記試薬ボトルを区画するリブ、前記試薬ボトルを設置する位置を示す凹形状、前記試薬ボトルを設置する位置を示す凸形状、のうち少なくともいずれかで構成される基準部材と、
記試薬搬送部設けられており、光源および前記光源から放出され前記基準部材で反射された光を検出する検出器から構成される反射型センサ、前記基準部材までの距離を測定するレーザ変位計、のうち少なくともいずれかで構成される、前記試薬搬送部の鉛直方向における待機位置から前記基準部材までの距離を測定するセンサと、
前記センサにより検知された前記基準部材の位置に基づいて、前記試薬搬送部の搬送パラメータを調整するとともに、前記センサにより検知された待機位置から前記基準部材までの距離の経時変化から、前記試薬搭載部、前記試薬保管部、あるいは前記試薬搬送部の異常、故障状態の有無を判定する制御部と、を備えた
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
自動分析装置であって、
検体と反応させる試薬を収容した試薬ボトルを保管する試薬保管部と、
前記試薬ボトルを前記試薬保管部に搬送する試薬搬送部と、
前記試薬保管部に設けられており、前記試薬ボトルを区画するリブ、前記試薬ボトルを設置する位置を示す凹形状、前記試薬ボトルを設置する位置を示す凸形状、のうち少なくともいずれかで構成される基準部材と、
前記試薬搬送部に設けられており、光源および前記光源から放出され前記基準部材で反射された光を検出する検出器から構成される反射型センサ、前記基準部材までの距離を測定するレーザ変位計、のうち少なくともいずれかで構成される、前記試薬搬送部の鉛直方向における待機位置から前記基準部材までの距離を測定するセンサと、
前記センサにより検知された前記基準部材の位置に基づいて、前記試薬搬送部の搬送パラメータを調整するとともに、複数個所での前記待機位置から前記基準部材までの距離の経時変化から前記基準部材の高さおよび傾きを求め、前記傾きから前記試薬保管部の異常、あるいは故障状態を判定する制御部と、を備えた
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
自動分析装置であって、
検体と反応させる試薬を収容した試薬ボトルを設置する試薬搭載部と、
前記試薬ボトルを保管する試薬保管部と、
前記試薬ボトルを前記試薬搭載部から前記試薬保管部に搬送する試薬搬送部と、
前記試薬搭載部に設けられており、前記試薬ボトルを区画するリブ、前記試薬ボトルを設置する位置を示す凹形状、前記試薬ボトルを設置する位置を示す凸形状、のうち少なくともいずれかで構成される基準部材と、
前記試薬搬送部に設けられており、光源および前記光源から放出され前記基準部材で反射された光を検出する検出器から構成される反射型センサ、前記基準部材までの距離を測定するレーザ変位計、のうち少なくともいずれかで構成される、前記試薬搬送部の鉛直方向における待機位置から前記基準部材までの距離を測定するセンサと、
前記センサにより検知された前記基準部材の位置に基づいて、前記試薬搬送部の搬送パラメータを調整するとともに、複数個所での前記待機位置から前記基準部材までの距離の経時変化から前記基準部材の高さおよび傾きを求め、前記傾きから前記試薬保管部の異常、あるいは故障状態を判定する制御部と、を備えた
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1または3に記載の自動分析装置において、
前記基準部材が設けられており、前記試薬ボトルを設置する試薬搭載部を更に備え、
前記試薬搬送部は、前記試薬ボトルを前記試薬搭載部から前記試薬保管部に搬送するものであり、
前記センサは、前記試薬搭載部に設けられている前記基準部材も検知する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自動分析装置において、
前記センサは、前記試薬搬送部の水平方向における待機位置から前記基準部材までの距離を測定する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記待機位置から前記基準部材までの距離に基づいて、前記試薬搬送部の水平方向の移動量を調整する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか1項8に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記待機位置から前記基準部材までの距離に基づいて、前記試薬搬送部の鉛直方向の移動量を調整する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
請求項4または5に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記センサにより検知された待機位置から前記基準部材までの距離の経時変化から、前記試薬搭載部、前記試薬保管部、あるいは前記試薬搬送部の異常、故障状態の有無を判定する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記経時変化から、前記試薬搭載部、前記試薬保管部、あるいは前記試薬搬送部が異常、または故障状態になると判断される時期を予兆し、警報を発報する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
請求項に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記試薬搭載部、前記試薬保管部、あるいは前記試薬搬送部のうち少なくともいずれが異常、あるいは故障状態にあると判断された場合は、前記試薬搬送部の動作のみを停止させるとともに、前記試薬搬送部による前記試薬ボトルの搬送が停止している旨の警報を発報させる
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項12】
請求項1または2に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、複数個所での前記待機位置から前記基準部材までの距離の経時変化から前記基準部材の高さおよび傾きを求め、前記傾きから前記試薬保管部の異常、あるいは故障状態を判定する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項13】
請求項12に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記経時変化から、前記試薬保管部が異常、または故障状態になると判断される時期を予兆し、警報を発報する
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項14】
請求項12に記載の自動分析装置において、
前記試薬保管部が複数存在する場合において、
前記制御部は、前記試薬保管部が異常、あるいは故障状態にあると判断された場合は、異常ありと判定された前記試薬保管部以外の前記試薬保管部への前記試薬ボトルの搬送のみを許可し、異常ありと判定された前記試薬保管部への前記試薬ボトルの搬送を停止する
ことを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
血液,尿などの生体サンプル(以下「検体」と記載)の分析を行う自動分析装置に関し、特に、より多くの分析項目の分析を可能とする自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試薬登録、試薬交換等の作業によるオペレータの負担を軽減すると共に、分析中に試薬不足を発生させず、分析中断を最小化する自動分析装置の一例として、特許文献1には、複数の反応容器に検体と試薬を各々分注して反応させ、反応した液体を測定する自動分析装置において、反応に使用する試薬を保管する第1の試薬保管手段と、試薬を補助用に保管する第2の試薬保管手段と、第2の試薬保管手段から第1の試薬保管手段に試薬を搬送する試薬搬送手段と、を備えたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-37171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生化学自動分析装置や免疫自動分析装置で使用する試薬は、オペレーターが試薬ディスクに試薬ボトルを設置してから、装置内に設置されたRFIDリーダやバーコードリーダなどの読み取機構で試薬ボトルに貼付けされている識別情報を取得することで管理するのが一般的である。
【0005】
これに対し、近年、特許文献1に記載されたような、自動で試薬ボトルを搬入・搬出する機構を用いて試薬ディスク機構へ試薬ボトルを設置し、試薬の管理を行うことが知られている。
【0006】
特許文献1に記載されたような試薬ボトルの自動の搬入・搬出技術は、試薬登録や試薬交換等の作業によるオペレーターの負担を軽減すると共に、分析中の試薬不足を発生させず、分析中断を最小化する、との利点がある。
【0007】
ここで、近年の自動分析装置の分析速度の向上に伴い、試薬の消費量が多くなり、試薬ボトル交換のインターバルも短くなってきている。
【0008】
そのような中で試薬の管理を正確に行うためには、試薬ボトルが試薬ディスクに正常に設置する技術が重要となってくるが、試薬ボトル搬入・搬出機構および試薬ディスク機構の相対位置関係は、各部品の製作ばらつきなどにより一定とならない。そのため、製品ごとに機構部の調整を行う必要があり、調整作業者の大きな負担となっている。
【0009】
また、摺動部の経年劣化により各機構の位置ずれが発生することが避けられないが、位置ずれが生じると試薬ボトルの設置異常となったり、最悪の場合は試薬ディスクの動作不良による装置の動作停止に陥る恐れがあることから、対策をとる必要がある。
【0010】
本発明は、試薬ボトルを自動で搬出・搬入すること可能な自動分析装置において、従来に比べて作業者の負担を軽減するとともに装置の停止に陥ることを抑制することが可能な自動分析装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、自動分析装置であって、検体と反応させる試薬を収容した試薬ボトルを保管する試薬保管部と、前記試薬ボトルを前記試薬保管部に搬送する試薬搬送部と、前記試薬保管部設けられており、前記試薬ボトルを区画するリブ、前記試薬ボトルを設置する位置を示す凹形状、前記試薬ボトルを設置する位置を示す凸形状、のうち少なくともいずれかで構成される基準部材と、記試薬搬送部設けられており、光源および前記光源から放出され前記基準部材で反射された光を検出する検出器から構成される反射型センサ、前記基準部材までの距離を測定するレーザ変位計、のうち少なくともいずれかで構成される、前記試薬搬送部の鉛直方向における待機位置から前記基準部材までの距離を測定するセンサと、前記センサにより検知された前記基準部材の位置に基づいて、前記試薬搬送部の搬送パラメータを調整するとともに、前記センサにより検知された待機位置から前記基準部材までの距離の経時変化から、前記試薬保管部、あるいは前記試薬搬送部の異常、故障状態の有無を判定する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来に比べて作業者の負担を軽減するとともに装置の停止に陥ることを抑制することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の自動分析装置の全体構成の概略図を示した図である。
図2】本実施形態の自動分析装置に設けられたオートローダー機構を示した図である。
図3】本実施形態の自動分析装置におけるグリッパー機構の概略図である。
図4】本実施形態の自動分析装置における試薬ディスクあるいは試薬搭載部のリブと試薬ボトルとの関係を示した概略図である。
図5】本実施形態の自動分析装置におけるグリッパー機構に設けられたセンサの概略図である。
図6】本実施形態の自動分析装置における試薬ディスクおよび試薬搭載部のリブを示した概略図である。
図7】本実施形態の自動分析装置における試薬ディスクとグリッパー機構のX方向に対する断面図を示した概略図である。
図8】本実施形態の自動分析装置における試薬ディスク対するグリッパー機構(X方向)の位置の自動調整を行うフローチャートである。
図9】本実施形態の自動分析装置における試薬ディスクとグリッパー機構のY方向に対する断面図を示した概略図である。
図10】本実施形態の自動分析装置におけるグリッパー機構に対する試薬ディス(θ方向)の位置の自動調整を行うフローチャートである。
図11】本実施形態の自動分析装置における試薬ディスクとグリッパー機構のZ方向に対する断面図を示した概略図である。
図12】本実施形態の自動分析装置における試薬ディスク対するグリッパー機構(Z方向)の位置の自動調整を行うフローチャートである。
図13】本実施形態の自動分析装置における試薬搭載部とグリッパー機構のY方向に対する断面図を示した概略図である。
図14】本実施形態の自動分析装置におけるグリッパー機構に対する試薬搭載部(Y方向)の位置の自動調整を行うフローチャートである。
図15】本実施形態の自動分析装置における試薬搭載部とグリッパー機構のX方向に対する断面図を示した概略図である。
図16】本実施形態の自動分析装置における試薬搭載部対するグリッパー機構(X方向)の位置の自動調整を行うフローチャートである。
図17】本実施形態の自動分析装置における試薬搭載部とグリッパー機構のZ方向に対する断面図を示した概略図である。
図18】本実施形態の自動分析装置における試薬搭載部対するグリッパー機構(Z方向)の位置の自動調整を行うフローチャートである。
図19】本実施形態の自動分析装置における試薬ディスクとグリッパー機構のZ方向に対する断面図を示した概略図である。
図20】本実施形態の自動分析装置におけるグリッパー機構を用いて試薬ディスクの試薬ボトル設置面の高さおよび傾きを確認する動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の自動分析装置の実施例について図1乃至図20を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0015】
最初に、自動分析装置の全体構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態の自動分析装置の斜視図である。
【0016】
図1において、自動分析装置1000は、検体と試薬を反応容器2に各々分注して反応させ、この反応させた液体を測定するための装置であって、反応ディスク1、試薬ディスク9、検体搬送機構17、試薬分注機構7,8、試薬用シリンジ18、サンプル分注機構11、検体用シリンジ19、洗浄機構3、光源4a、分光光度計4、撹拌機構5,6、洗浄用ポンプ20、洗浄槽13,30,31,32,33、コントローラ21、オートローダー機構100(図2参照)を備えている。
【0017】
反応ディスク1には反応容器2が円周上に並んでいる。反応ディスク1の近くには検体容器15を載せたラック16を移動する検体搬送機構17が設置されている。
【0018】
反応ディスク1と検体搬送機構17の間には、回転および上下動可能なサンプル分注機構11が設置されており、サンプルプローブ11aを備えている。サンプルプローブ11aには検体用シリンジ19が接続されている。サンプルプローブ11aは回転軸を中心に円弧を描きながら移動して検体容器15から反応容器2への検体分注を行う。
【0019】
試薬ディスク9の中には試薬を収容した試薬ボトル10が円周上に複数保管することが可能な構造となっている。その詳細は後述する。
【0020】
この試薬ディスク9は保冷されており、吸引口111(図2参照)が設けられたカバーによって覆われている。本実施例の試薬ディスク9では、その内側には、試薬ボトル10に取り付けられたRFIDタグに記録された試薬ボトル10内の試薬の情報を入手するための機器(例えばRFIDセンサ等)は一切設けられていないものとする。
【0021】
反応ディスク1と試薬ディスク9の間には回転および上下動可能な試薬分注機構7,8が設置されており、それぞれ試薬プローブ7a,8aを備えている。試薬プローブ7a,8aには試薬用シリンジ18が接続されている。試薬プローブ7a,8aは回転軸を中心に円弧を描きながら移動して、吸引口111から試薬ディスク9内にアクセスし、試薬ボトル10から反応容器2への試薬の分注を行う。
【0022】
反応ディスク1の周囲には、更に、洗浄機構3、光源4a、分光光度計4、撹拌機構5,6が配置されている。洗浄機構3には洗浄用ポンプ20が接続されている。試薬分注機構7,8、サンプル分注機構11、撹拌機構5,6の動作範囲上に洗浄槽32,33,13,30,31がそれぞれ設置されている。検体容器15には検体が含まれ、ラック16に載せられて検体搬送機構17によって運ばれる。また、各機構はコントローラ21に接続されている。
【0023】
コントローラ21は、コンピュータ等から構成され、自動分析装置1000内の各機構の動作を制御するとともに、検体中の所定の成分の濃度を求める演算処理を行う。
【0024】
以上が自動分析装置1000の全体的な構成である。
【0025】
上述のような自動分析装置1000による検体の分析処理は、一般的に以下の順に従い実行される。
【0026】
まず、検体搬送機構17によって反応ディスク1近くに搬送されたラック16の上に載置された検体容器15内の検体を、サンプル分注機構11のサンプルプローブ11aにより反応ディスク1上の反応容器2へと分注する。次に、分析に使用する試薬を、試薬ディスク9上の試薬ボトル10から試薬分注機構7,8により先に検体を分注した反応容器2に対して分注する。続いて、撹拌機構5で反応容器2内の検体と試薬との混合液の撹拌を行う。
【0027】
その後、光源4aから発生させた光を撹拌後の混合液の入った反応容器2を透過させ、透過光の光度を分光光度計4により測定する。分光光度計4により測定された光度を、A/Dコンバータおよびインターフェイスを介してコントローラ21に送信する。そしてコントローラ21によって演算を行い、検体中の所定の成分の濃度を求め、結果を表示部21a等にて表示させたり、記憶部(図示省略)に記憶させる。
【0028】
次にオートローダー機構100の構成について図2乃至図5を参照して説明する。図2はオートローダー機構100の概要を示す図である。図3はグリッパー機構の概略図である。図4は試薬ディスクあるいは試薬搭載部のリブと試薬ボトルとの関係を示した概略図である。図5はグリッパー機構に設けられたセンサの概略図である。
【0029】
上述したように、試薬ボトル10の試薬プローブ吸引口位置には内部を密閉するために蓋112が取りつけられており、自動分析装置1000内にセットする時に蓋112を取り外して装置内に設置することが一般的である。
【0030】
しかし、近年、蓋112に切り込み状の穴を開けて、試薬プローブ7a,8aを切り込み状の穴に挿入して試薬ボトル10内の試薬を吸引する方法がある。試薬は蓋112の開口部が僅かな切り込みとなるため、試薬は外気との接触が最小となり、試薬の劣化は従来と比較して改善される。
【0031】
このような場合に、オペレーターは未開封の新品の試薬ボトル10を自動分析装置1000内に設置すれば、試薬ボトル10の蓋112に穴を開けて自動で試薬ディスク9に設置まで行われる。そのための機構がオートローダー機構100である。
【0032】
オートローダー機構100は、試薬ディスク9の上部に配置され、図2に示すような構成となっている。図2において、オートローダー機構100は、試薬搭載部103、試薬搭載機構102、試薬搬送機構101、ニードル洗浄槽108、ニードル乾燥口109、RFIDセンサ115、支柱117、金属板118を備えており、1枚の金属板118に支柱117を除くこれらの各機構が取り付けられた構成となっている。
【0033】
試薬搭載部103は、自動分析装置1000内に試薬ボトル10を投入する際にオペレーターが試薬ボトル10を設置するための部分であり、試薬搭載機構102によって試薬搭載部103は図2上で上下方向に動作される。試薬搭載部103の動作範囲はオートローダー機構100が配置される金属板118上に留めることで装置内に収まるようにする。
【0034】
試薬搭載部103は、複数の試薬ボトル10を直線上に設置可能な構造となっており、例えば、試薬ボトル10を設置するための試薬ボトルスロットを複数有するトレーである。
【0035】
試薬搭載機構102は、試薬ボトル10の装置内への投入位置と試薬搭載部103の待機位置との間に設置されたガイドに沿ってレール上を試薬搭載部103がモータ等の動力によって移動することができるよう構成されている。
【0036】
試薬搬送機構101は、試薬搭載部103に設置された試薬ボトル10を試薬ディスク9内に搬送する、あるいは試薬ディスク9内の試薬ボトル10を試薬搭載部103に設置するための機構である。
【0037】
この試薬搬送機構101は、試薬ボトル10を把持するグリッパー機構106、試薬ボトル10の蓋112に切り込み状の穴を開ける蓋開栓機構104、蓋開栓機構104を上下動させる上下駆動モータ132、およびグリッパー機構106や蓋開栓機構104を図2上で左右方向に駆動させる水平駆動モータ131を構成部品としている。
【0038】
試薬搬送機構101は、図2における試薬搭載部103の位置から開閉カバー113の位置の間を図2上で左右方向に動作する。すなわち、試薬搭載部103は図2上で上下方向に移動し、試薬搬送機構101は図2上で水平方向に動作するため、動作方向が直交するように構成されている。また、試薬搬送機構101は、グリッパー機構106によって試薬ボトル10を把持する位置と、試薬ボトル10を試薬ディスク9に搬入、搬出する位置とが直線状に配置されている。
【0039】
蓋開栓機構104は、試薬ボトル10の蓋112に切り込みを入れるためのニードル105が取り付けられている。蓋開栓機構104では、蓋112に切り込みを入れた後のニードル105の洗浄を試薬搬送機構101の動作方向に対して平行に配置されたニードル洗浄槽108で行い、次の工程で、試薬搬送機構101の動作方向に対して平行に配置されたニードル乾燥口109にて洗浄水の除去を行う。これにより、試薬ボトル10の蓋112の切り込みを入れるときに、洗浄水で試薬を薄めないように構成されている。ここで図2に示されているように、ニードル洗浄槽108とニードル乾燥口109は、試薬搬送機構101の動作方向に対して平行に配置されている。
【0040】
グリッパー機構106は、図3に示すように、試薬ボトル10を把持するための引っかけ爪106aを有しており、この引っかけ爪106aを試薬ボトル10の切欠き部に引っかけることで試薬ボトル10を把持する。
【0041】
開閉カバー113は、保冷された試薬ディスク9内部の冷気を逃がさないようにするためのカバーであり、通常は閉じた状態である。試薬搬送機構101が試薬ディスク9にアクセスする際には開閉カバー113が開き、試薬ディスク9への試薬ボトル10の搬入・搬出を行うことができるように動作する。
【0042】
RFIDセンサ115は、試薬搭載部103の動作経路上に配置されており、試薬ボトル10に取り付けられたRFIDタグに記録された試薬ボトル10内の試薬の情報を入手する。なお、試薬情報とは、試薬ボトルに入っている試薬の種類や充填量などの情報である。また、RFIDセンサ115の替わりに、例えばバーコードを読み取りバーコードリーダ等の試薬情報を読み取れる機構を設けることができる。
【0043】
以上がオートローダー機構100の構成である。
【0044】
次に、オペレーターが試薬ボトル10を試薬搭載部103に設置してから試薬ディスク9へ搬入するまでの動作について説明する。
【0045】
オペレーターが新規の試薬ボトル10を装置の試薬ディスク9に搬入したい場合は、まず装置のボタンスイッチ(図示省略)の第1回目の押下を行う。装置は、オペレーターによってボタンスイッチの第1回目の押下が行われたことを認識する。これにより、試薬搭載機構102が動作し、試薬搭載部103が待機位置から動きだし、装置手前(図2下側)に移動する。
【0046】
試薬搭載部103が装置手前に到着した後、オペレーターは試薬ボトル10を試薬搭載部103に設置する。試薬ボトル10の必要数を試薬搭載部103に設置した後、オペレーターはボタンスイッチを再度押下する。
【0047】
オペレーターがボタンスイッチを押下したことを認識した後は、オートローダー機構100に搭載されているRFIDセンサ115により試薬情報を読み取る。試薬情報を読み取った際に、表示部21aに試薬情報が仮登録されたことが表示される。
【0048】
試薬情報読み取り後、試薬搭載部103は蓋開栓機構104の下方位置に移動する。次いで、蓋開栓機構104が試薬ボトル10の蓋112に向けて下降して、ニードル105で蓋112に試薬プローブ7a,8aが挿入できる程度の切り込みを開ける。試薬ボトル10の蓋112に切り込みを入れた後、蓋開栓機構104は上昇し、ニードル105を洗浄するために試薬搬送機構101がニードル洗浄槽108の位置に移動し、ニードル105を洗浄する。その後、ニードル乾燥口109に移動しニードル105の乾燥を実施する。
【0049】
乾燥後、試薬搭載機構102は試薬搭載部103を動作させ、切り込みを入れた試薬ボトル10をグリッパー機構106の下方位置に移動させる。その後、グリッパー機構106が下降し、試薬ボトル10を掴み、その後、開閉カバー113を開ける。その後、グリッパー機構106が上昇するとともに、開いた開閉カバー113の位置まで移動し、空きの試薬ディスク9の位置に運搬した試薬ボトル10を搬入する。搬入後は再度、グリッパー機構106を試薬搭載部103の位置に戻す。
【0050】
以上の動作を、試薬搭載部103に搭載され、試薬ディスク9に搬入する必要がある全ての試薬ボトル10に対して繰り返し行う。試薬搭載部103に設置され、搬入する必要がある試薬ボトル10を試薬ディスク9に全て搬入した後、開閉カバー113を閉める。
【0051】
開閉カバー113が正常に閉まったことにより、試薬ディスク9に試薬ボトル10が正常に設置されたことが認識され、試薬情報の登録が完了となる。この際、装置に付属している表示部21aには試薬情報が仮登録状態から本登録されたことが表示される。
【0052】
以上が、オートローダー機構100での試薬ボトル10の設置からの、試薬情報の読み取り、試薬ボトル10の蓋112の穴あけ動作、試薬ディスク9への搬入動作、試薬情報の登録になる。
【0053】
試薬ディスク9内に設置された試薬が空の状態になった場合は、以下の流れで試薬ボトル10を搬出する。試薬ボトル10の搬出タイミングは、分析中でも試薬分注機構7,8の最後の分注の終了後、もしくは分析結果の出力後に実施しても良い。
【0054】
まず、コントローラ21は、開閉カバー113を開ける。また、試薬搬送機構101は開いた開閉カバー113の位置まで移動する。次いで、グリッパー機構106により空の試薬ボトル10を把持する。また、これと並行して、試薬搭載部103が待機位置から移動して、試薬搭載部103の空きの試薬ボトルスロットがグリッパー機構106の軌道の下方になる位置で停止する。
【0055】
次いで、グリッパー機構106により空の試薬ボトル10を把持した状態で試薬搬送機構101が試薬搭載機構102の位置まで移動する。これと並行して、開閉カバー113を閉める。その際、試薬ボトル10を正常に搬出できたと判断し、表示部21aには本登録されている試薬情報が削除されたことが表示される。その後、グリッパー機構106により試薬搭載部103の空きの試薬ボトルスロットに空になった試薬ボトル10を置く。その後、試薬搭載機構102は待機位置に戻る。
【0056】
その後、表示部21aなどによりオペレーターに対して空の試薬ボトル10が取り出せる状態であることを通知する。
【0057】
オペレーターはこの通知を受けて空になった試薬ボトル10を装置外に取り出す。
【0058】
また、試薬搭載部103全ての試薬スロットに試薬ボトル10が設置されている場合で、試薬ディスク9に設置している試薬ボトル10が空になり装置の外に廃棄したい場合は、試薬ディスク9の設置可能数に対し1個もしくは数個、空の試薬スロットを設けておく。その上で、試薬搭載部103に設置されている試薬ボトル10を蓋112に切り込みを入れないで試薬ディスク9に搬入し、空の試薬ボトル10をグリッパー機構106で掴み、試薬搭載部103に乗せた後、オペレーターが空の試薬ボトル10を搬出する。搬出後、空いている試薬スロットに再度、試薬ディスク9に設置した切り込みを入れていない試薬ボトル10を戻すことができる。試薬搭載部103に空きスロットを設けておけば同様の動作は可能である。
【0059】
ここで、前述した試薬ボトル10を試薬搭載部103に設置する動作や、試薬ボトル10の排出動作においては、安定した設置、あるいは排出を行うために、試薬ディスク9とグリッパー機構106との位置関係や、試薬搭載部103とグリッパー機構106との位置関係が正確であることが非常に重要となる。以下、その理由を説明する。
【0060】
試薬ディスク9および試薬搭載部103の動作におけるグリッパー機構106に対する試薬ボトル10の位置ずれが発生した場合、試薬ボトル10をグリッパー機構106にて本来把持すべき箇所とは異なる箇所を把持してしまい、安定した把持が行えない憾みがある。また、ずれが大きくなったときは、最悪の場合には掴むことができなくなる恐れがある。
【0061】
また、試薬搭載部103の動作における蓋開栓機構104に対する試薬ボトル10の位置ずれが発生した場合、ニードル105で蓋112に試薬プローブ7a,8aが挿入できる程度の切り込みを開ける動作において、蓋112の中心位置からずれた位置に切り込みを開けてしまい、吸引時に試薬プローブ7a,8aに不要な負荷が掛かる憾みがある。更に、ずれが大きくなったときは、最悪の場合は切り込みを開けることができないケースや、不要な箇所にも切り込みが入って試薬と外気との接触が大きくなり、試薬の劣化が進んでしまう虞がある。
【0062】
ここで、試薬ディスク9には試薬ボトル10を区画するリブ300が試薬ディスク9の設置面500上に設けられており、試薬搭載部103にも同様にその設置面600上に試薬ボトル10を区画するリブ400が設けられている。図4に示すこれらリブ300,400と試薬ボトル10との隙間900は、前述リスクを鑑みて0.5mm以下で設定されている。
【0063】
これらリブ300,400と試薬ボトル10との隙間900が0.5mm以下であることから、試薬ディスク9とグリッパー機構106、試薬搭載部103とグリッパー機構106それぞれの位置関係が崩れた場合、グリッパー機構106にて試薬ボトル10を試薬ディスク9へ設置する動作において試薬ボトル10がリブ300に乗り上げる可能性がある。また、試薬搭載部103に対する動作でも同様に試薬ボトル10がリブ400に乗り上げる可能性がある。
【0064】
また、これら機構の位置関係は各部品のばらつきに伴い各装置ごとに異なるため、装置据付作業者が調整用の専用治具などを用いて手動で合わせる必要がある。更に、各駆動部の経年劣化に伴い、位置関係がずれることも考えられ、最悪のケースとしては分析中に装置が停止する可能性がある。
【0065】
以上より、試薬ディスク9、グリッパー機構106、試薬搭載部103と複数の駆動軸を持つ機構については、それぞれの位置関係が非常に重要となる。
【0066】
これら問題を解決するための手段について本発明者らが鋭意検討した結果、グリッパー機構106にセンサ(光源210+検出器211)を設けて、試薬ディスク9に備えたリブ300、あるいは試薬搭載部103に備えたリブ400を検知して、試薬ディスク9とグリッパー機構106あるいは試薬搭載部103とグリッパー機構106の位置を自動調整することを発想した。
【0067】
また、基準となる部材はリブ300,400に限られずマーカや試薬設置用の凹凸形状などを用いることができること、センサも反射型に限られずカメラやレーザ変位計などを用いることができること、そしてこれらの基準となる部材やセンサのうち、元来設けられている構成以外は据付型でも取り外し可能な型のいずれでもよいこと、を発想した。
【0068】
以下にその詳細を説明する。
【0069】
本実施例では、図5に示すように、試薬搬送機構101のグリッパー機構106にセンサ200を設ける。センサ200は、光源210および検出器211を備え、三角測量を用いることにより、センサ200から対象面までの距離を把握することができる。このセンサ200を用いることにより、グリッパー機構106から例えば試薬ディスク9の設置面500上に設けられたリブ300までの距離、あるいは試薬搭載部103の設置面600上に設けられたリブ400までの距離、を検知する。
【0070】
そして、コントローラ21では、反射型のセンサ200により検知されたリブ300やリブ400の位置に基づいて、試薬搬送機構101の搬送パラメータを調整する。
【0071】
なお、センサ200は、グリッパー機構106に組み込まれたものでも良いし、脱着可能なものでも良い。脱着可能な構造については特段限定されず、様々な公知の手段を採用することができる。これにより、既存の装置へ本発明の技術を適用することが非常に容易となる。
【0072】
また、以下の説明においては、センサ200は光軸201がグリッパー機構106の中心に位置しているものと仮定して行う。
【0073】
ここで、センサ200はグリッパー機構106のどこに位置しても構わないが、その場合、センサ200の光軸201からグリッパー機構106の中心までの距離を以下の説明において更に補正値として反映させる必要がある。
【0074】
以下、自動調節の詳細について図6乃至図20を用いて説明する。
【0075】
最初に、試薬ディスク9と試薬搬送機構101との位置調整の詳細について図6乃至図12を用いて説明する。図6は試薬ディスクおよび試薬搭載部のリブを示した概略図である。図7は試薬ディスクとグリッパー機構のX方向に対する断面図を示した概略図、図8は試薬ディスク対するグリッパー機構(X方向)の位置の自動調整を行うフローチャートである。図9は試薬ディスクとグリッパー機構のY方向に対する断面図を示した概略図、図10はグリッパー機構に対する試薬ディス(θ方向)の位置の自動調整を行うフローチャートである。図11は試薬ディスクとグリッパー機構のZ方向に対する断面図を示した概略図、図12は試薬ディスク対するグリッパー機構(Z方向)の位置の自動調整を行うフローチャートである。
【0076】
前提として、試薬ディスク9の設置面500上や試薬搭載部103の設置面600上の各構成について図6を用いて説明する。
【0077】
図6に示すように、試薬ディスク9では、同心円状に複数の試薬ボトル10が載置可能であり、径方向には、内周側から、内周側の設置位置を設定するリブ300a,300b、および外周側の設置位置を設定するリブ300c,300dが設けられている。また、円周方向には、内周側ではリブ300e,300fが、外周側ではリブ300g,300hがそれぞれ設けられており、リブ300a,300e,300b,300fにより内周側の設置位置が、リブ300c,300g,300d,300hにより外周側の設置位置が設定されている。
【0078】
試薬搭載部103は図6では5つの試薬ボトル10が搭載可能に構成されており、図6中下側からリブ400a,400b,400c,400d,400eが設けられている。リブ400eより奥側には、リブよりも高さの高い壁が設けられている。これらのリブ400a,400b,400c,400d,400eの側面側にリブ400f,400gが設けられている。
【0079】
本実施例では、図6に示すように、図6中、試薬搭載部103の移動方向をX方向、グリッパー機構106の移動方向をY方向、図6の紙面垂直方向をZ方向とする。また、X-Y平面上の回転成分の方向をθ方向とする。
【0080】
次いで、前述したセンサ200を用いて、試薬ディスク9とグリッパー機構106の水平方向位置の自動調整の一例について、図7および図8を用いて説明する。
【0081】
なお、以下説明する自動調整は、コントローラ21によりその動作が制御される。
【0082】
最初に、図7および図8に示すように、試薬ディスク9とグリッパー機構106とを待機位置に移動させ、動作を開始させる(ステップS120)。
【0083】
次いで、開閉カバー113を開ける(ステップS121)。次に、グリッパー機構106を開閉カバー113方向に対して動作させる。この際、グリッパー機構106の水平駆動モータ131がステッピングモータである場合においては、水平駆動モータ131を1パルス駆動させ(ステップS122)、移動後にセンサ200を用いて、リブ300aの検知有無を確認する(ステップS123)。
【0084】
検出されなかった場合は、処理をステップS122に戻し、水平駆動モータ131を再度1パルス駆動させる。
【0085】
検出された場合は、コントローラ21にて検出された時に付与された総パルス数よりグリッパー機構106の待機位置からリブ300aまでの距離a1を把握、管理する(ステップS124)。
【0086】
これらステップS120乃至ステップS124の処理を繰り返すことにより、グリッパー機構106の待機位置からリブ300cまでの距離a2も把握することが可能である。
【0087】
なお、駆動モータに回転速度や位置を把握することが可能なエンコーダを備えている場合においては、駆動モータを一定速度で動作させることにより前述の距離a1,a2を把握することが可能であり、ステッピングモータと比較してそれぞれの距離を把握するまでの時間を短縮することが可能である。
【0088】
図7に示すように、試薬ボトル10の設置位置であるリブ300aとリブ300bとの中心位置やリブ300cとリブ300dとの中心位置a3は固定値であり、ステップS120乃至ステップS124の処理より把握した距離a1に距離a3を加えた距離a5、および距離a2に距離a3を加えた距離a6が試薬ディスク9に対するグリッパー機構106の停止位置となる。そこで、コントローラ21は、グリッパー機構106の試薬ディスク9に対するX方向の停止位置a5,a6を設定する(ステップS125)とともに、開閉カバー113を閉じる(ステップS126)。
【0089】
前述した停止位置a5,a6の調整が完了した直後でも所定時間経過でもよいが、次いで、コントローラ21は、図9および図10に示すように、再度、試薬ディスク9とグリッパー機構106を待機位置へ移動させる(ステップS130)。
【0090】
その後、開閉カバー113を開ける(ステップS131)。次に、グリッパー機構106を試薬ディスク9の内周側の試薬ボトル10設置位置a5へ移動させる(ステップS132)。この時移動される位置は、ステップS125で設定したものである。
【0091】
その後、試薬ディスク駆動モータ(図示省略)を1パルス駆動させ(ステップS133)、回転後にセンサ200を用いてリブ300eの検知有無を確認する(ステップS134)。
【0092】
なお、試薬ディスク9と試薬ディスク駆動モータにおいては、歯車あるいはベルトにより接続されるが、歯車あるいはベルトにおけるバックラッシュを考慮し、前述した試薬ディスク9および試薬ディスク駆動モータの回転方向については、試薬ディスク9および試薬ディスク駆動モータの待機位置への移動方向と同一とする。
【0093】
センサ200による検出がされなかった場合は、処理をステップS133に戻して、試薬ディスク駆動モータを1パルス駆動させる。
【0094】
検出された場合は、検出された時に付与された総パルス数より試薬ディスク9の待機位置からリブ300eまでの距離b1を把握、管理する(ステップS135)。
【0095】
これらステップS131乃至S135の動作を試薬ディスク9の外周側の試薬ボトル10設置位置a6へ適用させることにより、試薬ディスク9の待機位置からリブ300gまでの距離b2も把握することが可能である。
【0096】
なお、駆動モータに回転速度や位置を把握することが可能なエンコーダを備えている場合においては、駆動モータを一定速度で動作させることにより前述の距離b1,b2を把握することが可能であり、ステッピングモータと比較してそれぞれの距離を把握するまでの時間を短縮することが可能である。
【0097】
図9に示すように、試薬ボトル10の設置位置であるリブ300eと300fとの中心位置b3、リブ300gと300hとの中心位置b3は固定値である。前述した動作より把握した距離b1に距離b3を引いた距離b5、および距離b2に距離b3を引いた距離b6がグリッパー機構106に対する試薬ディスク9の停止位置となる。そこで、コントローラ21は、グリッパー機構106の試薬ディスク9に対するθ方向の停止位置b5,b6を設定する(ステップS136)。その後、開閉カバー113を閉じる(ステップS137)。
【0098】
次に、センサ200を用いて、試薬ディスク9とグリッパー機構106の鉛直方向に対する位置の自動調整の流れについて図11および図12を用いて以下に説明する。
【0099】
最初に、図11および図12に示すように、試薬ディスク9とグリッパー機構106とを待機位置に移動させ、動作開始する(ステップS140)。
【0100】
その後、開閉カバー113を開ける(ステップS141)。次に、前述したステップS125にて設定した停止位置a5へグリッパー機構106を移動させる(ステップS142)とともに、前述したステップS136にて設定した停止位置b5へ試薬ディスク9を水平方向へ移動させる(ステップS143)。なお、グリッパー機構106の停止位置はa6でもよいし、試薬ディスク9の停止位置はb6でも良い。
【0101】
次に、センサ200を用いて、グリッパー機構106鉛直方向に対する待機位置から試薬ディスク9の試薬ボトル設置面500までの距離c1を把握する(ステップS144)。把握した距離はコントローラ21にて管理する(ステップS145)。
【0102】
図11に示すように、試薬ボトル10の高さと、引っかけ爪106aを試薬ボトル10の切欠き部に引っかけるために必要なグリッパー機構106のクッション量を加算した高さをc2と定義した場合、試薬ディスク9へ試薬ボトル10を設置する時および試薬ディスク9から試薬ボトル10を掴む時のグリッパー機構106の高さc3は、前述センサより取得した距離c1からc2を引いた値となり、c3がグリッパー機構106の鉛直方向に対する停止位置となる。そこで、コントローラ21は、グリッパー機構106のZ方向の停止位置c3を設定する(ステップS146)。その後、開閉カバー113を閉じる(ステップS147)。
【0103】
次に、センサ200を用いた試薬搭載部103とグリッパー機構106の位置の自動調整の一例について、図13乃至図18を用いて以下に説明する。
【0104】
図13は試薬搭載部とグリッパー機構のY方向に対する断面図を示した概略図、図14はグリッパー機構に対する試薬搭載部(Y方向)の位置の自動調整を行うフローチャートである。図15は試薬搭載部とグリッパー機構のX方向に対する断面図を示した概略図、図16は試薬搭載部対するグリッパー機構(X方向)の位置の自動調整を行うフローチャートである。図17は試薬搭載部とグリッパー機構のZ方向に対する断面図を示した概略図、図18は試薬搭載部対するグリッパー機構(Z方向)の位置の自動調整を行うフローチャートである。
【0105】
初めに、試薬搭載部103とグリッパー機構106の水平方向位置の自動調整の流れについて説明する。
【0106】
図13および図14に示すように、試薬搭載部103とグリッパー機構106とを待機位置に移動させ、動作開始する(ステップS150)。
【0107】
その後、グリッパー機構106を開閉カバー113方向に対して動作させ、試薬搭載部103の軌道上に停止させる(ステップS151)。なお、グリッパー機構106の停止位置は調整値が反映されていない仮の位置とする。
【0108】
次に、試薬搭載部103の駆動モータ134がステッピングモータである場合においては、駆動モータ134を1パルス駆動させ試薬搭載部103を装置手前に移動させ(ステップS152)、移動後にセンサ200を用いて、リブ400aの検知有無を確認する(ステップS153)。
【0109】
センサ200による検出がされなかった場合は、ステップS152に戻り、駆動モータ134を1パルス駆動させる。
【0110】
検出された場合は、コントローラ21は、検出された時に付与された総パルス数より試薬搭載部103の待機位置からリブ400aまでの距離d1の把握、管理する(ステップS154)。
【0111】
これらステップS151乃至S154の処理を繰り返すことにより、試薬搭載部103の待機位置からリブ400b,400c,400d,400eまでの距離d2,d3,d4,d5も把握することが可能である。
【0112】
なお、駆動モータに回転速度や位置を把握することが可能なエンコーダを備えている場合においては、駆動モータを一定速度で動作させることにより前述の距離d1~d5を把握することが可能であり、ステッピングモータと比較してそれぞれの距離を把握するまでの時間を短縮することが可能である。
【0113】
図13に示すように、試薬ボトル10の設置位置であるリブ400aとリブ400bの中心距離距離d6は固定値である。前述した動作より把握した距離d1に距離d6を加えた距離d7がグリッパー機構106に対する試薬搭載部103の試薬搭載位置の停止位置となる。そこで、コントローラ21は、試薬搭載部103のY方向の停止位置d7を設定する(ステップS155)。
【0114】
また、前述した停止位置の設定は、距離d2,d3,d4,d5にも同様に適用することにより、試薬搭載部103の他の設置位置にも停止位置を定義することが可能である。
【0115】
前述した試薬搭載部103のY方向の停止位置の調整が完了したら、図15および図16に示すように、試薬搭載部103とグリッパー機構106を待機位置へ移動させる(ステップS160)。
【0116】
その後、試薬搭載部103の試薬搭載位置を前述の停止位置d7へ移動させる(ステップS161)。次に、グリッパー機構106の水平駆動モータ131を1パルス駆動させグリッパー機構106を開閉カバー113方向へ移動させる(ステップS162)。
【0117】
移動後、センサ200を用いてリブ400fの検知有無を確認する(ステップS163)。
【0118】
センサ200による検出がされなかった場合は、ステップS162に戻り、水平駆動モータ131を1パルス駆動させる。
【0119】
検出された場合は、コントローラ21は、検出された時に付与された総パルス数よりグリッパー機構106の待機位置からリブ400fまでの距離e1を把握、管理する(ステップS164)。
【0120】
なお、駆動モータに回転速度や位置を把握することが可能なエンコーダを備えている場合においては、駆動モータを一定速度で動作させることにより前述の距離e1を把握することが可能であり、ステッピングモータと比較してそれぞれの距離を把握するまでの時間を短縮することが可能である。
【0121】
図15に示すように、試薬ボトル10の設置位置であるリブ400fと400gの中心距離e2は固定値である。前述した動作より把握した距離e1に距離e2を加えた距離e3が試薬搭載部103に対するグリッパー機構106の停止位置となる。そこで、コントローラ21はグリッパー機構106の試薬搭載部103に対するX方向の停止位置e3を定義する(ステップS165)。
【0122】
次に、センサ200を用いて、試薬搭載部103とグリッパー機構106の鉛直方向に対する位置の自動調整の一例を以下に説明する。
【0123】
最初に、図17および図18に示すように、試薬搭載部103とグリッパー機構106とを待機位置に移動させ、動作開始する(ステップS170)。
【0124】
その後、試薬搭載部103を前述のステップS155にて設定した停止位置d7へ移動させる(ステップS171)とともに、グリッパー機構106を前述のステップS165にて設定した停止位置e3へ水平方向に移動させる(ステップS172)。
【0125】
次に、センサ200を用いて、グリッパー機構106鉛直方向に対する待機位置から試薬搭載部103の試薬ボトル設置面600までの距離f1を把握する(ステップS173)。把握した距離はコントローラ21にて管理する(ステップS174)。
【0126】
図17に示すように、試薬ボトル10の高さと、引っかけ爪106aを試薬ボトル10の切欠き部に引っかけるために必要なグリッパー機構106のクッション量を加算した高さをf2と定義した場合、試薬搭載部103へ試薬ボトル10を設置する時および試薬搭載部103から試薬ボトル10を掴む時のグリッパー機構106の高さf3は、前述センサより取得した距離f1からf2を引いた値となり、f3がグリッパー機構106の鉛直方向に対する停止位置となる。そこで、コントローラ21は、グリッパー機構106のZ方向の停止位置f3を設定する(ステップS175)。
【0127】
なお、試薬ボトル10の付属の蓋112、ニードル洗浄槽108、ニードル乾燥口109にはテーパが設けられていることがある。また、ニードル105にもテーパが設けられていることがある。
【0128】
このような場合は、ニードル105に対する蓋112、ニードル洗浄槽108、ニードル乾燥口109の水平方向に対する多少の位置ずれが発生しても矯正できることから、ニードル洗浄槽108およびニードル乾燥口109の水平方向に対する蓋開栓機構104の位置調整は必須ではないが、実行してもよい。
【0129】
また、ニードル105には緩衝材が設けられていることがある。そのため、ニードル105に対する蓋112、ニードル洗浄槽108、ニードル乾燥口109の鉛直方向に対する多少の位置ずれが発生しても矯正できることから、ニードル洗浄槽108およびニードル乾燥口109の鉛直方向に対する蓋開栓機構104の位置調整は必須ではないが、実行してもよい。
【0130】
以上の処理により、試薬ディスク9、試薬搭載部103、グリッパー機構106の水平方向および鉛直方向に対する位置調整が完了する。各機構に対する位置調整は、装置据付時ならびに機構の取外し・取付けを行った際に必要となるが、前述の自動調整を用いることにより、作業者の工数を無くすことが可能であり、装置の据付工数ならびに保守作業の工数の大きな低減に寄与することが可能である。
【0131】
更に、試薬ディスク9特有の自動調整の一例について図19および図20を用いて説明する。図19は試薬ディスクとグリッパー機構のZ方向に対する断面図を示した概略図、図20はグリッパー機構を用いて試薬ディスクの試薬ボトル設置面500の高さおよび傾きを確認する動作を示したフローチャートである。
【0132】
試薬ディスク9には、以下に説明する問題も抱えている。
【0133】
例えば、試薬ディスク9については、一体成型あるいは部品を分割して製作されることが一般的ではあるが、形状が大きいこと、且つ支持点が試薬ディスク9の回転中心のみであることから、重力に伴い試薬ディスク9の試薬ボトル設置面に歪みが発生することが考えられる。
【0134】
図19に示す試薬ディスク9の試薬ボトル設置面500が歪むことにより、試薬プローブ7a,8aにおける試薬分注性能へ影響を及ぼす可能性がある。
【0135】
具体的には、試薬プローブ7a,8aは回転軸を中心に円弧を描きながら移動して、吸引口111から試薬ディスク9内にアクセスし、試薬ボトル10から反応容器2への試薬の分注を行う。
【0136】
この際、試薬ディスク9が歪むことにより、各試薬ボトル設置面500の高さにばらつきが発生し、同じ試薬ボトル10を用いても試薬プローブ7a,8aから見た各試薬ボトル10の液面の高さに差が生じ、試薬分注性能へ影響を及ぼす恐れがある。また、試薬ボトル設置面500に傾きが生じた場合、蓋112の切り込みに試薬プローブ7a,8aが挿入できずにプローブの曲がりおよび装置停止へつながる恐れがある。
【0137】
これらを未然に防止することを目的として、グリッパー機構106に備えたセンサ200を用いて、試薬ボトル設置面500の高さのばらつきおよび傾きを把握することが可能である。
【0138】
図20に示すように、試薬ディスク9とグリッパー機構106を待機位置に移動させ、調整が開始される(ステップS180)。
【0139】
その後、開閉カバー113を開ける(ステップS181)。次に、試薬ディスク9をb5へ移動させる(ステップS182)とともに、グリッパー機構106をa7へ移動させる(ステップS183)。この時、センサ200を用いて、グリッパー機構106から試薬ボトル設置面500までの距離g1を把握する(ステップS184)。
【0140】
その後、試薬ディスク9をb5から極僅か(例えば1ステップ分)に回転させた位置b7(図示の都合上省略)へ移動させる(ステップS185)とともに、グリッパー機構106をa8へ移動させる(ステップS186)。この時、センサ200を用いて、グリッパー機構106から試薬ボトル設置面500までの距離g2を把握する(ステップS187)。
【0141】
最後に、試薬ディスク9をb5から極僅か(例えば-1ステップ分)回転させた位置b8(図示の都合上省略)へ移動させる(ステップS188)。この時、センサ200を用いて、グリッパー機構106から試薬ボトル設置面500までの距離g3を把握する(ステップS189)。ステップS184,S187、S189で把握した距離はコントローラ21にて管理するとともに、開閉カバー113を閉じる(ステップS190)。
【0142】
また、前述した動作を繰り返すことにより、試薬ディスク9内の全ポジションの試薬ボトル設置面500の高さおよび傾きを把握することが可能である。その場合、前述した動作は試薬ディスク9に試薬ボトル10が無いことが必須であり、例えば、通常の分析ルーティン内においては、試薬ボトル10が設置していない箇所に範囲を絞り、試薬ボトル設置面の高さおよび傾きに異常がないかを検出可能である。
【0143】
以上より得られた距離g1,g2,g3から、試薬ボトル設置面500の高さおよび傾きを把握して、試薬ボトル設置面500の高さおよび傾きに異常があるか否かを判定する(ステップS191)。例えば、距離g1,g2,g3同士の差分が全て所定値未満であったか否か、などの条件で判定するものとする。
【0144】
異常があると判定されたときは装置よりアラームを発生させ、当該試薬ボトル設置面500を使用不可として(ステップS193)、処理を終了する。
【0145】
これに対し、異常がないと判定されたときは当該試薬ボトル設置面500を使用可のままとし(ステップS192)、処理を終了する。
【0146】
以上より取得した試薬ディスク9あるいは試薬搭載部103に対する試薬搬送機構101のグリッパー機構106に対する水平方向位置、鉛直方向位置、試薬ディスク9の試薬ボトル設置面の高さおよび傾きなどのデータは、コントローラ21にて管理する。
【0147】
これらのデータは、通常の分析ルーティン動作の所定タイミング毎や、メンテナンス動作時において取得するものとすることができる。
【0148】
また、コントローラ21は、取得した距離の経時変化のデータから、試薬搭載部103、試薬ディスク9、あるいは試薬搬送機構101の異常、故障状態の有無を判定し、基準範囲から乖離している場合や閾値を超えているなど、異常が認められる場合は、アラームを発報する。
【0149】
更に、コントローラ21は、経時変化から、試薬搭載部103、試薬ディスク9、あるいは試薬搬送機構101が異常、または故障状態になると判断される時期を予兆し、警報を発報するものとすることができる。
【0150】
上述のように、試薬搭載部103や試薬ディスク9、試薬搬送機構101は経年劣化などにより、停止位置が変化することが想定されるため、取得される位置データの推移より各部品の寿命を予想し、警報を発報することができる。
【0151】
また、警報を発報するに際し、コントローラ21の設定では、元の位置データからの乖離量によりアラームレベルを変えることも可能である。
【0152】
例えば、試薬ボトルの登録および削除に関する動作に影響のしない範囲の乖離量であれば、注意喚起のみのアラームとし、装置は通常通り使用可能とする。次に、試薬ボトルの登録および削除に関する動作に影響する閾値に近づいてきた場合は、該当部品の交換を推奨するアラームとし、装置は通常通り使用可能とする。最後に、試薬ボトル10の登録および削除に関する動作に影響があると判断された場合は、試薬の登録および削除機能を停止するアラームとし、オートローダー機構100の機能を停止させる。
【0153】
そして、異常、あるいは故障状態にあると判断された場合は、コントローラ21は、試薬搬送機構101の動作のみを停止させるとともに、試薬搬送機構101による試薬ボトル10の搬送が停止している旨の警報を発報させることができる。この際、その他機構は通常通り動作可能であり、設置された試薬ボトル10の試薬量が無くならない限りは分析可能である。
【0154】
また、試薬ディスク9が複数存在する場合は、異常ありと判定された試薬ディスク9以外の試薬ディスク9への試薬ボトル10の搬送のみを許可し、異常ありと判定された試薬ディスク9への試薬ボトル10の搬送のみを停止することができる。
【0155】
前述した各機構のチェック機能は一例であるが、前述のチェック機能を設けることにより、装置の異常を検出し、分析中の装置停止などの異常状態を未然に防ぐことが可能である。
【0156】
また、上述した試薬ディスク9に対する位置調整では、試薬ボトル10の有無によって測定結果の処理を変えることが望ましい。例えば、測定を基準部材の近辺でしか実行しない、もしくは測定結果を基準部材周辺で取得したものに限定する、等の対応をとることが望ましい。
【0157】
これに対し、試薬搭載部103では、基本的に試薬ボトル10は搬入出の際しか設置されないため、試薬ディスク9に比べて特段の配慮は不要である。
【0158】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0159】
上述した本実施例の自動分析装置1000では、試薬ディスク9に設けられているリブ300、あるいは試薬搭載部103に設けられているリブ400と、試薬搬送機構101に設けられており、リブ300,400を検知する反射型のセンサ200と、反射型のセンサ200により検知されたリブ300,400の位置に基づいて、試薬搬送機構101の搬送パラメータを調整するコントローラ21と、を備えているため、装置側で試薬ボトル搬入・搬出に関係する機構と試薬ディスク9との相対位置関係(水平・高さ)を自動で把握して、各機構部に対して調整値を反映させることができる。
【0160】
従って、製品ごとに機構部の調整を行う必要がなくなることから、製造時や摺動部の経年劣化により各機構の位置ずれが発生した場合にも専用の治具を用いた調節が不要であり、従来に比べて作業者の負担を減らすことができるとともに、装置の停止に陥ることを従来に比べて少なくすることができる。更に、従来に比べて安定して試薬ディスク9に試薬ボトル10を正常に設置することができる。
【0161】
また、反射型のセンサ200は、試薬搬送機構101の水平方向における待機位置からリブ300,400までの距離を測定することにより、試薬搬送機構101の水平方向の移動パラメータの調整が可能となる。
【0162】
更に、待機位置からリブ300,400までの距離に基づいて、試薬搬送機構101の水平方向の移動量を調整することで、手動のメンテンナスなどを実行することなく試薬搬送機構101の水平方向の移動距離の調整ができ、安定した試薬ボトル10の搬送が可能となる。
【0163】
また、反射型のセンサ200は、試薬搬送機構101の鉛直方向における待機位置からリブ300,400までの距離を測定することにより、試薬搬送機構101の鉛直方向の移動パラメータの調整が可能となる。
【0164】
更に、待機位置からリブ300,400までの距離に基づいて、試薬搬送機構101の鉛直方向の移動量を調整することで、手動のメンテンナスなどを実行することなく試薬搬送機構101の鉛直方向の移動距離の調整ができ、安定した試薬ボトル10の搬送が可能となる。
【0165】
また、反射型のセンサ200により検知された待機位置からリブ300,400までの距離の経時変化から、試薬搭載部103、試薬ディスク9、あるいは試薬搬送機構101の異常、故障状態の有無を判定することにより、経年劣化に伴う位置ずれを自動で把握することができ、故障などの不具合が生じる前にずれ量を調整値へ反映させるなどの対策を講じることができる。したがって、分析中に装置が異常停止することを従来に比べて抑制することができる。
【0166】
更に、経時変化から、試薬搭載部103、試薬ディスク9、あるいは試薬搬送機構101が異常、または故障状態になると判断される時期を予兆し、警報を発報することで、より早期に故障などの不具合が生じる前に対策を講じることができる。
【0167】
また、試薬搭載部103、試薬ディスク9、あるいは試薬搬送機構101のうち少なくともいずれが異常、あるいは故障状態にあると判断された場合は、試薬搬送機構101の動作のみを停止させるとともに、試薬搬送機構101による試薬ボトル10の搬送が停止している旨の警報を発報させることにより、分析がすぐに停止することは避けることができるとともに、早期に対処をとることができるため、安定した分析につなげることができる。
【0168】
更に、複数個所での待機位置からリブ300までの距離の経時変化から設置面500の高さおよび傾きを求め、傾きから試薬ディスク9の異常、あるいは故障状態を判定することで、試薬ディスク9自体の経年劣化の有無を自動で判定することができる。
【0169】
また、経時変化から、試薬ディスク9が異常、または故障状態になると判断される時期を予兆し、警報を発報することにより、試薬ディスク9自体が使用不可能になるような事態になることを従来に比べて容易に抑制できるようになる。
【0170】
更に、試薬ディスク9が複数存在する場合において、試薬ディスク9が異常、あるいは故障状態にあると判断された場合は、異常ありと判定された試薬ディスク9以外の試薬ディスク9への試薬ボトル10の搬送のみを許可し、異常ありと判定された試薬ディスク9への試薬ボトル10の搬送を停止することで、異常のあった試薬ディスク9が存在するという理由のみで分析が完全に停止してしまうことを抑制することができる。
【0171】
<その他>
なお、本発明は上記の実施形態に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【0172】
例えば、図2では試薬ボトル10を試薬ディスク9に自動で搬入するためのオートローダー機構100を備えた自動分析装置を例に説明したが、オートローダー機構100は必ずしも図2等に示した形態である必要はなく、駆動軸が交差する箇所を少なくとも1箇所以上有していれば本発明を適用することができる。
【0173】
また、試薬搬送機構101にセンサが設けられており、基準部材が試薬ディスク9あるいは試薬搭載部103に設けられている場合について説明したが、グリッパー機構106ではなく試薬ディスク9あるいは試薬搭載部103の側にセンサ200が設けられており、試薬搬送機構101に設けられた基準部材の位置に基づいて試薬搬送機構101の搬送パラメータを制御する形態とすることができる。このような形態においても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0174】
更に、基準部材が、試薬ボトル10を区画するリブ300,400の場合について説明したが、リブ300,400以外にも、試薬搬送機構101や試薬ディスク9、あるいは試薬搭載部103に設けられたマーカや、試薬ボトル10を設置する位置を示す凹形状や凸形状のうち少なくともいずれかを基準部材とすることができ、同様の効果が得られる。特に、基準部材がマーカの場合は、脱着可能とすることができる。このように着脱可能であると、既存の装置に対しても本発明を容易に適用できるとともに、調整が必要な際のみ取り付ければよいため、通常の分析動作時などにおいて動作などに支障をきたす可能性がほぼないものとすることができる。
【0175】
また、センサが光源210および光源210から放出され基準部材で反射された光を検出する検出器211から構成される反射型のセンサ200の場合について説明したが、センサは、反射型のセンサ200に換わって、基準部材を撮像するカメラ、基準部材までの距離を測定するレーザ変位計のうち少なくともいずれかとすることができる。
【符号の説明】
【0176】
1…反応ディスク
2…反応容器
3…洗浄機構
4…分光光度計
4a…光源
5,6…撹拌機構
7,8…試薬分注機構
7a,8a…試薬プローブ
9…試薬ディスク(試薬保管部)
10…試薬ボトル
11…サンプル分注機構
11a…サンプルプローブ
13…洗浄槽
15…検体容器
16…ラック
17…検体搬送機構
18…試薬用シリンジ
19…検体用シリンジ
20…洗浄用ポンプ
21…コントローラ(制御部)
21a…表示部
30,31,32,33…洗浄槽
100…オートローダー機構
101…試薬搬送機構(試薬搬送部)
102…試薬搭載機構
103…試薬搭載部
104…蓋開栓機構
105…ニードル
106…グリッパー機構
106a…引っかけ爪
108…ニードル洗浄槽
109…ニードル乾燥口
111…吸引口
112…蓋
113…開閉カバー
115…RFIDセンサ
117…支柱
118…金属板
131…水平駆動モータ
132…上下駆動モータ
134…駆動モータ
200…センサ
201…光軸
210…光源
211…検出器
300,300a,300b,300c,300d,300e,300f,300g,300hi…リブ(試薬ディスク)
400,400a,400b,400c,400d,400e,400f,400g…リブ(試薬搭載部)
500…試薬ボトル設置面(試薬ディスク)
600…試薬ボトル設置面(試薬搭載部)
900…リブと試薬ボトル間の隙間
1000…自動分析装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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図18
図19
図20