(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】ガラス繊維含有樹脂組成物、及び、硬化物
(51)【国際特許分類】
C08F 234/00 20060101AFI20240213BHJP
C07D 207/448 20060101ALI20240213BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240213BHJP
C08F 283/00 20060101ALI20240213BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240213BHJP
D06M 15/507 20060101ALI20240213BHJP
D06M 15/564 20060101ALI20240213BHJP
C08L 67/06 20060101ALI20240213BHJP
C08L 75/14 20060101ALI20240213BHJP
C08K 9/08 20060101ALI20240213BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C08F234/00
C07D207/448
C08F2/44 A
C08F283/00 510
C08L63/00 C
D06M15/507
D06M15/564
C08L67/06
C08L75/14
C08K9/08
C08K7/14
(21)【出願番号】P 2019228541
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有田 和郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 肇
(72)【発明者】
【氏名】大塚 恵子
(72)【発明者】
【氏名】米川 盛生
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/116948(WO,A1)
【文献】特開昭61-252234(JP,A)
【文献】国際公開第2017/209237(WO,A1)
【文献】特開2019-065063(JP,A)
【文献】特開平07-278268(JP,A)
【文献】特開2018-100232(JP,A)
【文献】特開2018-095706(JP,A)
【文献】特開平11-236249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-301/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
D06M 13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される(メタ)アリル基含有マレイミド化合物、
下記式(4)で表される水酸基含有マレイミド化合物、及び、
重合性二重結合濃度を3モル%以上
25モル%以下含有する、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の少なくともいずれか一方を含有する樹脂組成物で被覆されたガラス繊維、を含有
し、
前記重合性二重結合濃度は、
13
C-NMRの全シグナルの積分値と98~100ppm付近のシグナルの積分値の2分の1の割合から算出したものであることを特徴とするガラス繊維含有樹脂組成物。
【化1】
(上記式(1)中、n
1及びm
1はそれぞれ独立して1~5の整数であって、Alyは下記式(2)で表される(メタ)アリル基を有する基であって、MIは下記式(3)で表されるマレイミド基を有する基であって、A
1は
下記式(5)で表される構造のうちのいずれかである。)
【化2】
(上記式(2)中、Z
1は直接結合または置換基を有していても良い炭素数1~10の炭化水素基であって、R
1は水素原子またはメチル基を表す。)
【化3】
(上記式(3)中、Z
2は直接結合または置換基を有していても良い炭素数1または2の炭化水素基であって、R
2及びR
3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表す。)
【化4】
(上記式(4)中、n
2及びm
2はそれぞれ独立して1~5の整数であって、MIは上記式(3)で表されるマレイミド基を有する基であって、A
2はベンゼン
環構造である。)
【化5】
【請求項2】
上記式(4)において
、n
2
及びm
2がいずれも1であることを特徴とする請求項
1に記載のガラス繊維含有樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、エポキシ化合物を含有することを特徴とする請求項1
又は2に記載のガラス繊維含有樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれかに記載のガラス繊維含有樹脂組成物を含有することを特徴とするコンパウンド。
【請求項5】
請求項1~
3のいずれかに記載のガラス繊維含有樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする硬化物。
【請求項6】
請求項1~
3のいずれかに記載のガラス繊維含有樹脂組成物を含有することを特徴とする耐熱材料用組成物。
【請求項7】
請求項
5に記載の硬化物を含有することを特徴とする耐熱部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維含有樹脂組成物、及び、前記ガラス繊維含有樹脂組成物より得られる硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジン周辺部品や、各種電装部品、ポンプ関連部品等には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などをガラス繊維で強化した熱硬化性樹脂成型材料が用いられている。特に近年、金属部品の樹脂化が進んでおり、高耐熱、高強度、及び、高剛性に代表される性能の一層の向上、及びこれらを兼備する材料、組成物が求められている。なかでもビスマレイミド(BMI)は従来のエポキシ樹脂、フェノール樹脂と比較して優れた耐熱性(高ガラス転移温度及び高強度)を発現することから、近年、金属代替用途向け樹脂材料としても注目されている。
【0003】
市場では、DDM(4,4’-ジアミノジフェニルメタン)やDDE(4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)骨格を有するBMIが、高耐熱樹脂として流通している(例えば、特許文献1参照)。しかし、高耐熱性のBMIは、高融点となるため、融点と硬化開始温度が近く、硬化が進行しない低温でガラス繊維を溶融混練することが困難なため、限られた用途でしか使用できないという課題に加え、ガラス繊維への密着性が低く、更なる改良、性能の向上が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、耐熱性及び機械的強度に優れた硬化物を得ることができる特定構造を有する(メタ)アリル基含有マレイミド化合物、特定構造を有する水酸基含有マレイミド化合物、及び、特定の樹脂組成物により被覆されたガラス繊維を含有するガラス繊維含有樹脂組成物、前記ガラス繊維含有樹脂組成物を硬化してなる硬化物などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定構造を有する(メタ)アリル基含有マレイミド化合物、特定構造を有する水酸基含有マレイミド化合物、及び、特定の樹脂組成物により被覆されたガラス繊維を含有するガラス繊維含有樹脂組成物が、上記課題を解決することを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される(メタ)アリル基含有マレイミド化合物、下記式(4)で表される水酸基含有マレイミド化合物、及び、重合性二重結合濃度を3モル%以上含有する、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の少なくともいずれか一方を含有する樹脂組成物で被覆されたガラス繊維、を含有するガラス繊維含有樹脂組成物に関する。
【化1】
(上記式(1)中、n
1及びm
1はそれぞれ独立して1~5の整数であって、Alyは下記式(2)で表される(メタ)アリル基を有する基であって、MIは下記式(3)で表されるマレイミド基を有する基であって、A
1はベンゼン環を1個以上有する構造である。)
【化2】
(上記式(2)中、Z
1は直接結合または置換基を有していても良い炭素数1~10の炭化水素基であって、R
1は水素原子またはメチル基を表す。)
【化3】
(上記式(3)中、Z
2は直接結合または置換基を有していても良い炭素数1または2の炭化水素基であって、R
2及びR
3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表す。)
【化4】
(上記式(4)中、n
2及びm
2はそれぞれ独立して1~5の整数であって、MIは上記式(3)で表されるマレイミド基を有する基であって、A
2はベンゼン環を1個以上有する構造である。)
【0008】
本発明のガラス繊維含有樹脂組成物は、上記式(1)において、A
1が下記式(5)で表される構造のうちのいずれかであることが好ましい。
【化5】
【0009】
本発明のガラス繊維含有樹脂組成物は、上記式(4)において、A2がベンゼン環構造であって、n2及びm2がいずれも1であることが好ましい。
【0010】
本発明のガラス繊維含有樹脂組成物は、さらに、エポキシ化合物を含有することが好ましい。
【0011】
本発明は、前記ガラス繊維含有樹脂組成物を含有するコンパウンドに関する。
【0012】
本発明は、前記ガラス繊維含有樹脂組成物を硬化してなる硬化物に関する。
【0013】
本発明は、前記ガラス繊維含有樹脂組成物を含有する耐熱材料用組成物に関する。
【0014】
本発明は、前記硬化物を含有する耐熱部材に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、得られる硬化物が耐熱性や機械的強度に優れる硬化物、更に、前記ガラス繊維含有樹脂組成物を用いたコンパウンド、耐熱部材等に好適に使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ベンゼン環を1個以上有する構造を有し、(メタ)アリル基を有する基を1個以上有し、さらにマレイミド基を有する基を1個以上有する(メタ)アリル基含有マレイミド化合物と、ベンゼン環を1個以上有する構造を有し、水酸基を有する基を1個以上有し、さらにマレイミド基を1個以上有する水酸基含有マレイミド化合物、及び、重合性二重結合濃度を3モル%以上含有する、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の少なくともいずれか一方を含有する樹脂組成物で被覆されたガラス繊維、を含有するガラス繊維含有樹脂組成物を提供するものである。
【0017】
<(メタ)アリル基含有マレイミド化合物>
本発明の(メタ)アリル基含有マレイミド化合物は、ベンゼン環を1個以上有する構造を有し、(メタ)アリル基を有する基を1個以上有し、さらにマレイミド基を有する基を1個以上有することを特徴とする、下記式(1)で表される化合物である。
【0018】
【0019】
上記式(1)中、n1及びm1はそれぞれ独立して1~5の整数であって、Alyは下記式(2)で表される(メタ)アリル基を有する基であって、MIは下記式(3)で表されるマレイミド基を有する基であって、A1はベンゼン環を1個以上有する構造である。
【0020】
【0021】
上記式(2)中、Z1は直接結合または置換基を有していても良い炭素数1~10の炭化水素基であって、R1は水素原子またはメチル基を表す。
【0022】
【0023】
上記式(3)中、Z2は直接結合または置換基を有していても良い炭素数1または2の炭化水素基であって、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表す。
【0024】
ここで、前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物は、ベンゼン環を1個以上有することで、耐熱性、特に耐熱分解温度が向上する。また、マレイミド基を有することでガラス転移温度が上昇することから、耐熱性が更に向上する。また、(メタ)アリル基により、反応性が向上すると共に融点が低下することから、ハンドリング性が向上し様々な用途で好適に使用可能となる。
【0025】
ここで、前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物は、上記式(1)のA1が、ベンゼン環を1個以上有する構造である。ベンゼン環を1個以上有する構造としては、例えば、下記式(6)で表される構造が例示される。
【0026】
【0027】
前記構造中、ベンゼン環は置換基を有していても有していなくても良く、置換基の結合方式に特に限定は無い。また、ベンゼン環が複数存在する場合、ベンゼン環同士は、直接結合していても良く、連結基を介して結合していても良く、ベンゼン環同士が縮合して縮合環を形成していてもかまわない。
上記式(6)中のXは直接結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては例えば置換基を有していても良い炭素数1~3の炭化水素基、酸素原子、カルボニル基、硫黄原子、スルホン基、2価の脂環構造等が挙げられる。
上記式(6)中のYは3価の連結基を表す。3価の連結基としては、例えば置換基を有する炭素数1~3の炭化水素基、窒素原子、3価の脂環構造等が挙げられる。
【0028】
上記式(6)で表されるベンゼン環を1個以上有する構造のうち、好ましい構造としては下記式(5)で表される構造のいずれかが挙げられる。
【0029】
【0030】
上記式(6)において、該構造は本発明の効果を損ねない範囲において、ベンゼン環構造の水素原子が置換基に置き換わっていてもかまわない。置換基としては、公知慣用のものが挙げられる。例えば、置換基を有していても良い炭素数1-6の炭化水素基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、カルボキシル基、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0031】
上記式(1)において、n1は1~5の整数であればよく、n1が2以上であると、融点が下がるため好ましい。また、m1は1~5の整数であればよく、m1が2以上であると、耐熱性が向上するため好ましい。
m1とn1の比率としては、m1:n1=1:5~5:1であれば良い。好ましくはm1:n1=1:2~2:1である場合、耐熱性と低融点が両立できるため、特に好ましい。
(メタ)アリル基を含有する基とマレイミド基を含有する基の結合場所に特に限定はないが、マレイミド基を含有する基と(メタ)アリル基を含有する基が同じベンゼン環上に存在すると、耐熱性が更に向上するため好ましい。
【0032】
上記式(2)において、Z1は直接結合または置換基を有していても良い炭素数1~10の炭化水素基を表す。炭素数1~10の炭化水素基とは、例えばアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基、およびそれらを複数組み合わせた基があげられる。アルキレン基としては、メチレン基、メチン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基等が挙げられる。アルケニレン基としては、ビニレン基、1-メチルビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基等が挙げられる。アルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、へキシニレン基等が挙げられる。シクロアルキレン基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基等が挙げられる。アリーレン基としては、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0033】
上記式(2)において、Z1として好ましい構造としては、直接結合またはメチレン基が挙げられる。
【0034】
上記式(3)において、Z2は直接結合または置換基を有していても良い炭素数1または2の炭化水素基を表す。好ましくは直接結合またはメチレン基である。
【0035】
本発明の(メタ)アリル基含有マレイミド化合物として、特に好ましい構造は下記式(7-1)~(7-14)で例示される構造である。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
上記式(7-1)~(7-14)の中でも、特に好ましいのは、上記式(7-1)、(7-2)、(7-3)、(7-4)、(7-5)、(7-6)、(7-8)、(7-12)、(7-13)で表される構造である。(メタ)アリル基を含有する基とマレイミド基が同一ベンゼン環に存在すると、融点が低下する傾向にあるため好ましい。また、硬化した際には、耐熱性が向上するため好ましい。
【0051】
<(メタ)アリル基含有マレイミド化合物の製造(合成)方法>
本発明の(メタ)アリル基含有マレイミド化合物の製造方法は、特に限定はされないが、以下の工程を経ることで、効率的に製造を行うことが出来る。
【0052】
<製造方法1>
1-1)ベンゼン環を有する水酸基含有芳香族アミノ化合物のアミノ基を保護する工程
1-2)1-1)で得られた化合物の水酸基を(メタ)アリル化する工程
1-3)1-2)で得られた化合物の保護アミノ基から脱保護する工程
1-4)1-3)で得られた化合物のアミノ基をマレイミド化する工程
【0053】
ベンゼン環を有する水酸基含有芳香族アミノ化合物を用いることで、本発明のベンゼン環を1個以上有する構造を有し、(メタ)アリル基を有する基を1個以上有し、さらにマレイミド基を1個以上有する化合物であることを特徴とする、(メタ)アリル基含有マレイミド化合物を製造することが出来る。
【0054】
【0055】
上記式(8)中、n1及びm1はそれぞれ独立して1~5の整数であって、Alyは下記式(2)で表される(メタ)アリル基を有する基であって、B1は下記式(9)で表されるアミノ基を有する基であって、A1はベンゼン環を1個以上有する構造である。
【0056】
ベンゼン環を有する水酸基含有芳香族アミノ化合物としては、好ましくは上記式(8)で表される構造のいずれかと、水酸基及びアミノ基とを有する化合物が挙げられる。具体的には、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,3-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジアミノ-4”-ヒドロキシトリフェニルアミン等の従来公知の化合物が挙げられるが、これらに限定されることなく、アミノ基を有するフェノール化合物であればかまわない。
芳香族アミノフェノール化合物を製造するには、水酸基含有芳香族化合物をニトロ化した後に還元する方法が挙げられる。
【0057】
【0058】
上記式(2)中、Z1は直接結合または置換基を有していても良い炭素数1~10の炭化水素基であって、R1は水素原子またはメチル基を表す。
【0059】
【0060】
上記式(9)中、Z2は直接結合または置換基を有していても良い炭素数1または2の炭化水素基を表す。
【0061】
工程1-1)におけるアミノ基の保護は、公知慣用の方法を用いればよく、例えばアセチル化することで保護することが可能である。アセチル化には、公知慣用のアセチル化剤を用いればよく、例えば無水酢酸、塩化アセチル等が挙げられる。
【0062】
工程1-2)においては、例えばアミノ基が保護された水酸基含有芳香族アミノ化合物の水酸基に対し、ハロゲン化(メタ)アリル化合物を塩基の存在化で反応させることで、(メタ)アリル化することが出来る。ハロゲン化(メタ)アリル化合物としては、臭化(メタ)アリルや塩化(メタ)アリルが挙げられ、塩基としては炭酸カリウム等が挙げられる。
【0063】
工程1-3)と工程1-4)では、保護されていたアミノ基を脱保護し、そのアミノ基をマレイミド化する。アミノ基のマレイミド化としては、例えば、下記式(10)で表される化合物を反応させることで、マレイミド化させることが出来る。
【0064】
【0065】
上記式(10)中、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表す。
【0066】
上記式(10)で表される化合物としては、例えば無水マレイン酸、シトラコン酸無水物、2,3-ジメチルマレイン酸無水物等が挙げられる。
【0067】
上記工程を経ることで、本発明のベンゼン環を1個以上有する構造を有し、(メタ)アリル基を有する基を1個以上有し、さらにマレイミド基を有する基を1個以上有する化合物であることを特徴とする、(メタ)アリル基含有マレイミド化合物を製造することが出来る。
【0068】
前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物を合成する場合、反応物中に未反応モノマーが残留したり、生成物として(メタ)アリル基含有マレイミド化合物とは異なる他の化合物が生成することもある。他の化合物としては、例えば未閉環のアミック酸、イソイミド、モノマー類あるいは生成物のオリゴマーなどが挙げられる。これら(メタ)アリル基含有マレイミド化合物以外の物質については、精製工程を経ることで取り除いてもかまわないし、用途によっては含有したまま使用してもかまわない。
【0069】
<水酸基含有マレイミド化合物>
本発明のガラス繊維含有樹脂組成物は、前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物のほかに、ベンゼン環を1個以上有する構造を有し、水酸基を有する基を1個以上有し、さらにマレイミド基を1個以上有することを特徴とする、下記式(4)で表される水酸基含有マレイミド化合物を含有する。
【0070】
【0071】
上記式(4)中、n2及びm2はそれぞれ独立して1~5の整数であって、MIは上記式(3)で表されるマレイミド基を有する基であって、A2はベンゼン環を1個以上有する構造である。)
【0072】
本発明のガラス繊維含有樹脂組成物は、(メタ)アリル基含有マレイミド化合物と水酸基含有マレイミド化合物の両方を含有することで、ガラス繊維に対する密着性が向上する。また、本発明の水酸基含有マレイミド化合物は、芳香環構造を有することから、それを含有するガラス繊維含有樹脂組成物は高耐熱性を有する。
【0073】
上記式(4)において、n2は1~5の整数であればよく、また、m2は1~5の整数であればよい。
m2とn2の比率としては、m2:n2=1:5~5:1であれば良い。好ましくはm2:n2=1:2~2:1である場合、耐熱性と低融点が両立できるため、特に好ましい。
水酸基とマレイミド基の結合場所に特に限定はないが、マレイミド基と水酸基を含有する基が同じベンゼン環上に存在すると、耐熱性が更に向上するため好ましい。
【0074】
本発明の水酸基含有マレイミド化合物として、特に好ましい構造はA2がベンゼン環構造であって、n2及びm2がいずれも1である、以下の下記式(11)の構造である。
【0075】
【0076】
<水酸基含有マレイミド化合物の製造(合成)方法>
【0077】
本発明の水酸基含有マレイミド化合物の製造方法は、特に限定は無いが、ベンゼン環を有する水酸基含有芳香族アミノ化合物をマレイミド化することで、本発明のベンゼン環を1個以上有する構造を有し、水酸基を有する基を1個以上有し、さらにマレイミド基を1個以上有することを特徴とする、水酸基含有マレイミド化合物を製造することが出来る。
【0078】
ベンゼン環を有する水酸基含有芳香族アミノ化合物としては、好ましくは上記式(6)で表される構造のいずれかと、水酸基及びアミノ基とを有する化合物が挙げられる。具体的には、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、2,4-ジヒドロキシアニリン、2,6-ジヒドロキシアニリン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,3-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジアミノ-4”-ヒドロキシトリフェニルアミン等の従来公知の化合物が挙げられるが、これらに限定されることなく、アミノ基を有するフェノール化合物であればかまわない。
芳香族アミノフェノール化合物を製造するには、水酸基含有芳香族化合物をニトロ化した後に還元する方法が挙げられる。
【0079】
アミノ基のマレイミド化としては、例えば上記式(10)で表される化合物を反応させることで、マレイミド化させることが出来る。
【0080】
上記式(10)で表される化合物としては、例えば無水マレイン酸、シトラコン酸無水物、2,3-ジメチルマレイン酸無水物等が挙げられる。
【0081】
上記工程を経ることで、本発明のベンゼン環を1個以上有する構造を有し、水酸基を有する基を1個以上有し、さらにマレイミド基を1個以上有することを特徴とする、水酸基含有マレイミド化合物を製造することが出来る。
【0082】
本発明の水酸基含有マレイミド化合物を合成する場合、反応物中に未反応モノマーが残留したり、生成物として水酸基含有マレイミド化合物とは異なる他の化合物が生成することもある。他の化合物としては、例えば未閉環のアミック酸、イソイミド、モノマー類あるいは生成物のオリゴマーなどが挙げられる。これら水酸基含有マレイミド化合物以外の物質については、精製工程を経ることで取り除いてもかまわないし、用途によっては含有したまま使用してもかまわない。
【0083】
本発明のガラス繊維含有樹脂組成物において、前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物と前記水酸基含有マレイミド化合物の配合比率(質量比)としては、本発明の効果を損ねない範囲において適宜調製して用いればよいが、好ましくは本発明の(メタ)アリル基含有マレイミド化合物:水酸基含有マレイミド化合物=1:5~5:1が好ましい。この範囲であれば、耐熱性と密着性のバランスに優れるためである。特に好ましくは1:2~4:1である。
【0084】
<ガラス繊維>
本発明のガラス繊維含有樹脂組成物は、重合性二重結合濃度を3モル%以上含有する、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の少なくともいずれか一方を含有する樹脂組成物で被覆されたガラス繊維を含有することを特徴とする。前記樹脂組成物は、繊維集束剤として機能し、ガラス繊維の集束性に優れ、かつ、機械的強度にも優れた硬化物を得ることができ、有用である。
【0085】
本発明のガラス繊維含有樹脂組成物には、前記ガラス繊維に加えて、その他の繊維質基質を用いることができる。前記繊維質基質としては、特に限定はないが、繊維強化樹脂に用いられるものが好ましく、無機繊維や有機繊維が挙げられる。
【0086】
前記無機繊維としては、カーボン繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等の無機繊維のほか、炭素繊維、活性炭繊維、黒鉛繊維、タングステンカーバイド繊維、シリコンカーバイド繊維(炭化ケイ素繊維)、セラミックス繊維、アルミナ繊維、天然繊維、玄武岩などの鉱物繊維、ボロン繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ホウ素繊維、及び金属繊維等を挙げることができる。前記金属繊維としては、例えば、アルミニウム繊維、銅繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維を挙げることができる。これらのうち、1種類のみ用いてもよく、複数種を同時に用いてもよい。
【0087】
前記有機繊維としては、ポリベンザゾール、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアリレート等の樹脂材料からなる合成繊維や、セルロース、パルプ、綿、羊毛、絹といった天然繊維、タンパク質、ポリペプチド、アルギン酸等の再生繊維等を挙げる事ができる。中でも、カーボン繊維とガラス繊維は、産業上利用範囲が広いため、好ましい。これらのうち、1種類のみ用いてもよく、複数種を同時に用いてもよい。
【0088】
本発明で用いられるガラス繊維は、繊維の集合体であってもよく、繊維が連続していても、不連続状でもかまわず、織布状であっても、不織布状であってもかまわない。また、繊維を一方方向に整列した繊維束でもよく、繊維束を並べたシート状であってもよい。また、繊維の集合体に厚みを持たせた立体形状であってもかまわない。
【0089】
前記ガラス繊維としては、特に限定されないが、例えば、ガラス長繊維、ガラス短繊維などである。なお、この分類法はその製造法に拠するため、チョップドストランドのように、3mm程度に短く切断された繊維においてもガラス長繊維と呼ぶ。
【0090】
前記ポリエステル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ネオペンチルグルコールやポリプロピレングリコール、ポリカプロラクトンエステルポリオール、両末端水酸基ポリブタジエンなどのジオール類と、無水マレイン酸やブチロラクトン、安息香酸などを反応させて得られる。
【0091】
前記ポリウレタン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、キシレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートなどのイソシアネート類と、ポリカプロラクトンエステルポリオールや両末端水酸基ポリブタジエン、ネオペンチルグルコールやポリプロピレングリコールなどを反応させて得られる。
【0092】
前記樹脂組成物に含まれるポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂のいずれか少なくとも一方を含有する場合、前記重合性二重結合濃度を3モル%以上含有し、好ましくは、5モル%以上であり、より好ましくは、5~35モル%であり、更に好ましくは、5~25モル%である。前記重合性二重結合濃度が、3モル%以上であることにより、ガラス繊維への濡れ性および密着性が良好となり、コンパウンド中の繊維分散性が好ましい態様となる。
【0093】
前記ガラス繊維含有樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、硬化触媒、潤滑剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤等の添加剤、pH調整剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、分散安定剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、耐熱性付与剤、無機充填剤、有機充填剤、可塑剤、補強剤、触媒、抗菌剤、防カビ剤、防錆剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、顔料、染料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、結晶水含有化合物、難燃剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤、顔料分散剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤等を併用することができる。
【0094】
<ガラス繊維含有樹脂組成物>
本発明のガラス繊維含有樹脂組成物は、前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物、前記水酸基含有マレイミド化合物、及び、前記重合性二重結合濃度を3モル%以上含有する、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の少なくともいずれか一方を含有する樹脂組成物で被覆されたガラス繊維、を含有することを特徴とする。前記ガラス繊維含有樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は、耐熱分解性に優れ、高ガラス転移温度、低線膨張であることから、耐熱部材に好適に使用可能である。
【0095】
<ガラス繊維含有樹脂組成物の製造(調製)方法>
前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物、前記水酸基含有マレイミド化合物、及び、前記重合性二重結合濃度を3モル%以上含有する、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の少なくともいずれか一方を含有する樹脂組成物で被覆されたガラス繊維、を含有するガラス繊維含有樹脂組成物の製造(調製)方法は、特に限定はされないが、簡便な方法としては前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物、前記水酸基含有マレイミド化合物、及び、前記樹脂組成物で被覆されたガラス繊維をそのまま混合すればよい。
【0096】
前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物、前記水酸基含有マレイミド化合物をより均一に混合させるに、上記式(1)で表される(メタ)アリル基含有マレイミド化合物と、上記式(4)で表される水酸基含有マレイミド化合物と溶剤とを混合し混合液(i)を調製する工程と、
前記混合液(i)に、更に、前記重合性二重結合濃度を3モル%以上含有する、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の少なくともいずれか一方を含有する樹脂組成物で被覆されたガラス繊維を混合し混合液(ii)を調製する工程と、
前記ガラス繊維を含有する混合液(ii)から溶剤を除去する工程と、を有する製造方法によって、均一なガラス繊維含有樹脂組成物を製造することが可能である。これにより、2種のマレイミド化合物が分子レベルで分散し、更にガラス繊維も混合液中で均一に分散し、ガラス繊維含有樹脂組成物の低粘度化を図ることが出来る。
【0097】
前記混合液(i)を製造するには、前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物と前記水酸基含有マレイミド化合物を一つの溶剤に溶解させることで混合させればよい。
また、前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物と前記水酸基含有マレイミド化合物を個別に溶剤に溶解させたのち、溶液同士を混合する方法であってもよい。このとき、前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物と前記水酸基含有マレイミド化合物のそれぞれを溶解させる溶剤は、相溶するものであれば異なる溶剤でもよく、もちろん同一の溶剤を用いてもかまわない。
更に、前記重合性二重結合濃度を3モル%以上含有する、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の少なくともいずれか一方を含有する樹脂組成物で被覆されたガラス繊維を混合するために、カップリング剤や離型剤などを用いることもできる。
【0098】
前記混合液(i)及び(ii)を調製する際に使用できる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン等の環状エーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類が挙げられ、これらを単独又は併用して使用可能であるが、中でも酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエンが、ガラス繊維含有樹脂組成物の溶解性、溶媒留去時の揮発性や溶媒回収の面から好ましい。
【0099】
前記ガラス繊維含有樹脂組成物の製造(調製)方法としては、前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物と前記水酸基含有マレイミド化合物の前駆体を混合した上で、一括してマレイミド化することでも製造することができる。この方法を用いると、製造(合成)工程を簡略化できる上、2種のマレイミド化合物が分子レベルで分散し、化合物を低粘度化することが出来る。
【0100】
具体的には、下記式(8)で表される(メタ)アリル基含有アミノ化合物と、下記式(12)で表される水酸基含有アミノ化合物とを混合して、芳香族アミノ化合物混合物を製造する工程と、
芳香族アミノ化合物混合物をマレイミド化する工程とを有する製造方法により、(メタ)アリル基含有化合物と水酸基含有マレイミド化合物を含有する組成物を一括で製造することができる。
【0101】
【0102】
上記式(8)中、n1及びm1はそれぞれ独立して1~5の整数であって、Alyは下記式(2)で表される(メタ)アリル基を有する基であって、B1は下記式(9)で表されるアミノ基を有する基であって、A1はベンゼン環を1個以上有する構造である。
【0103】
【0104】
上記式(2)中、Z1は直接結合または置換基を有していても良い炭素数1~10の炭化水素基であって、R1は水素原子またはメチル基を表す。
【0105】
【0106】
上記式(9)中、Z2は直接結合または置換基を有していても良い炭素数1または2の炭化水素基を表す。
【0107】
【0108】
上記式(12)中、n2及びm2はそれぞれ独立して1~5の整数であって、B2は上記式(3)で表されるマレイミド基を有する基であって、A2はベンゼン環を1個以上有する構造である。
【0109】
<エポキシ化合物>
本発明のガラス繊維含有樹脂組成物には、更にエポキシ化合物を含有させても良い。エポキシ化合物を含有させることで、更にガラス繊維への密着性が向上する。また、エポキシ化合物の有するエポキシ基と、水酸基含有マレイミド化合物の有する水酸基が反応し、さらには(メタ)アリル基含有マレイミド化合物と水酸基含有マレイミド化合物の有するマレイミド基同士が反応する複合架橋系を形成することから、耐熱性や低線膨張性が更に向上する。
【0110】
本発明のガラス繊維含有樹脂組成物が、エポキシ化合物を含有する場合、水酸基含有マレイミド化合物とエポキシ化合物の配合比率は、水酸基含有マレイミド化合物の水酸基当量とエポキシ当量の比率として1:2~2:1が、硬化性や耐熱性の観点から好ましい。特に好ましくは1:1.5~1.5:1である。
【0111】
前記エポキシ化合物としては、例えばエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、エポキシ基を有していれば特に限定は無く、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールスルフィド型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0112】
フェノキシ樹脂は、ジフェノールと、エピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンに基づく高分子量熱可塑性ポリエーテル樹脂のことであり、重量平均分子量が、20,000~100,000であることが好ましい。フェノキシ樹脂の構造としては、例えばビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、トリメチルシクロヘキサン骨格から選択される1種以上の骨格を有するものが挙げられる。
【0113】
エポキシ化合物のうち、好ましくは芳香族エポキシ化合物であり、更に好ましくは芳香環を複数有する多環芳香族エポキシ化合物である。
好ましいエポキシ化合物として、下記式(13)で表される構造が挙げられる。
【0114】
【化35】
(上記式(13)中のrは繰り返し単位の平均で1~10である。)
【0115】
<フィラー>
本発明のガラス繊維含有樹脂組成物は、更にフィラーを含有してもよい。フィラーとしては、無機フィラーと有機フィラーが挙げられる。無機フィラーとしては、例えば無機微粒子が挙げられる。
【0116】
無機微粒子としては、例えば、耐熱性に優れるものとしては、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、シリカ(石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等)等;熱伝導に優れるものとしては、窒化ホウ素、窒化アルミ、酸化アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、ダイヤモンド等;導電性に優れるものとしては、金属単体又は合金(例えば、鉄、銅、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、白金、亜鉛、マンガン、ステンレスなど)を用いた金属フィラー及び/又は金属被覆フィラー、;バリア性に優れるものとしては、マイカ、クレイ、カオリン、タルク、ゼオライト、ウォラストナイト、スメクタイト等の鉱物等やチタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム;屈折率が高いものとしては、チタン酸バリウム、酸化ジルコニア、酸化チタン等;光触媒性を示すものとしては、チタン、セリウム、亜鉛、銅、アルミニウム、錫、インジウム、リン、炭素、イオウ、テリウム、ニッケル、鉄、コバルト、銀、モリブデン、ストロンチウム、クロム、バリウム、鉛等の光触媒金属、前記金属の複合物、それらの酸化物等;耐摩耗性に優れるものとしては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム等の金属、及びそれらの複合物及び酸化物等;導電性に優れるものとしては、銀、銅などの金属、酸化錫、酸化インジウム等;絶縁性に優れるものとしては、シリカ等;紫外線遮蔽に優れるものとしては、酸化チタン、酸化亜鉛等である。
これらの無機微粒子は、用途によって適時選択すればよく、単独で使用しても、複数種組み合わせて使用してもかまわない。また、上記無機微粒子は、例に挙げた特性以外にも様々な特性を有することから、適時用途に合わせて選択すればよい。
【0117】
例えば、無機微粒子としてシリカを用いる場合、特に限定はなく粉末状のシリカやコロイダルシリカなど公知のシリカ微粒子を使用することができる。市販の粉末状のシリカ微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製アエロジル50、200、旭硝子(株)製シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製E220A、E220、富士シリシア(株)製SYLYSIA470、日本板硝子(株)製SGフレ-ク等を挙げることができる。
また、市販のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業(株)製メタノ-ルシリカゾル、IPA-ST、MEK-ST、NBA-ST、XBA-ST、DMAC-ST、ST-UP、ST-OUP、ST-20、ST-40、ST-C、ST-N、ST-O、ST-50、ST-OL等を挙げることができる。
【0118】
表面修飾をしたシリカ微粒子を用いてもよく、例えば、前記シリカ微粒子を、疎水性基を有する反応性シランカップリング剤で表面処理したものや、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾したものがあげられる。(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販の粉末状のシリカとしては、日本アエロジル(株)製アエロジルRM50、R711等、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販のコロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)製MIBK-SD等が挙げられる。
【0119】
前記シリカ微粒子の形状は特に限定はなく、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、または不定形状のものを用いることができる。また一次粒子径は、5~200nmの範囲が好ましい。5nm未満であると、分散体中の無機微粒子の分散が不十分となり、200nmを超える径では、硬化物の十分な強度が保持できないおそれがある。
【0120】
酸化チタン微粒子としては、体質顔料のみならず紫外光応答型光触媒が使用でき、例えばアナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンなどが使用できる。更に、酸化チタンの結晶構造中に異種元素をドーピングさせて可視光に応答させるように設計された粒子についても用いることができる。酸化チタンにドーピングさせる元素としては、窒素、硫黄、炭素、フッ素、リン等のアニオン元素や、クロム、鉄、コバルト、マンガン等のカチオン元素が好適に用いられる。また、形態としては、粉末、有機溶媒中もしくは水中に分散させたゾルもしくはスラリーを用いることができる。市販の粉末状の酸化チタン微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製アエロジルP-25、テイカ(株)製ATM-100等を挙げることができる。また、市販のスラリー状の酸化チタン微粒子としては、例えば、テイカ(株)TKD-701等が挙げられる。
【0121】
<反応性化合物>
本発明のガラス繊維含有樹脂組成物は、前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物、前記水酸基含有マレイミド化合物、前記重合性二重結合濃度を3モル%以上含有する、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の少なくともいずれか一方を含有する樹脂組成物で被覆されたガラス繊維、更に、上述したエポキシ化合物のほかに、反応性化合物を含有してもよい。反応性化合物を添加することで、反応性や耐熱性、ハンドリング性など様々な特徴を樹脂に付与することが可能になる。
ここで言う反応性化合物とは、反応性基を有する化合物であり、モノマーであってもオリゴマーであってもポリマーであってもかまわない。
【0122】
前記反応性基としては、前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物、水酸基含有マレイミド化合物、前述したエポキシ化合物と反応しない官能基でも、反応する官能基でもよいが、耐熱性をより向上させるためには、前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物、水酸基含有マレイミド化合物、前述したエポキシ化合物と反応する官能基であることが好ましい。例えばシアナト基、マレイミド基、フェノール性水酸基、オキサジン環、アミノ基、炭素-炭素間二重結合を有する基が挙げられる。
【0123】
シアナト基を有する化合物としては、シアネートエステル樹脂が挙げられる。
マレイミド基を有する化合物(マレイミド化合物)としては、マレイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂が挙げられる。
フェノール性水酸基を有する化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂が挙げられる。
オキサジン環を有する化合物(オキサジン化合物)としては、フェノール化合物、芳香族アミノ化合物をホルムアルデヒドとを反応させることで得られるベンゾオキサジンが挙げられる。これらのフェノール化合物、芳香族アミノ化合物は構造中に反応性官能基を有していても良い。
アミノ基を有する化合物としてはDDM(4,4’-ジアミノジフェニルメタン)やDDE(4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-{ビス4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル等の芳香族アミノ化合物が挙げられる。
炭素-炭素間二重結合を有する基を有する化合物としては、マレイミド化合物、ビニル系化合物、(メタ)アリル系化合物等があげられる。
【0124】
上記の反応性化合物は、反応性基を一種類だけ有していても、複数種有していてもよく、官能基数も1つであっても複数であってもかまわない。また、複数種を同時に使用してもかまわない。
【0125】
好ましい反応性化合物としては、シアネートエステル樹脂、マレイミド化合物、ビニル系化合物、芳香族アミノ化合物などが挙げられる。その中でも特に好ましくは、マレイミド化合物、シアネートエステル樹脂、芳香族アミノ化合物である。
【0126】
マレイミド化合物は、前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物と、マレイミド基同士の自己付加反応やアリル基とマレイミド基のエン反応により、架橋密度が向上し、その結果、耐熱性、特にガラス転移温度が向上する。
通常、マレイミド化合物を用い、均一な硬化物を得るためには、高温かつ長時間の硬化条件が必要となるため、多くの場合、反応促進のために過酸化物系触媒が併用される。しかし、前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物は触媒を使用しない場合においても、硬化反応が進行し、均一な硬化物を得ることができる。過酸化物系触媒を使用することで、組成物の粘度上昇や、ポットライフの低下、また、硬化物中に微量の過酸化物が残存することによる物性低下等の課題があるが、前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物は過酸化物系硬化剤を使用しなくてもよいことから、それら課題を解決することができる。
【0127】
シアネートエステル樹脂と前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物との硬化物は優れた誘電特性を示す。
【0128】
芳香族アミノ化合物は、アミノ基とマレイミド基とのマイケル付加反応により架橋密度が向上し、耐熱分解温度、ガラス転移温度が向上する。
【0129】
シアネートエステル樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールスルフィド型シアネートエステル樹脂、フェニレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ビフェニル型シアネートエステル樹脂、テトラメチルビフェニル型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、クレゾールノボラック型シアネートエステル樹脂、トリフェニルメタン型シアネートエステル樹脂、テトラフェニルエタン型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂、フェノールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトールノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型シアネートエステル樹脂、ビフェニル変性ノボラック型シアネートエステル樹脂、アントラセン型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0130】
これらのシアネートエステル樹脂の中でも、特に耐熱性に優れる硬化物が得られる点においては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ノボラック型シアネートエステル樹脂を用いることが好ましく、誘電特性に優れる硬化物が得られる点においては、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂が好ましい。
【0131】
マレイミド化合物としては、例えば、下記構造式(i)~(iii)のいずれかで表される各種の化合物等が挙げられる。
【0132】
【0133】
上記式(i)中のRはm価の有機基であり、α及びβはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基のいずれかであり、sは1以上の整数である。
【0134】
【0135】
上記式(ii)中のRは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基のいずれかであり、sは1~3の整数、tは繰り返し単位の平均で0~10である。
【0136】
【0137】
上記式(iii)中のRは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基のいずれかであり、sは1~3の整数、tは繰り返し単位の平均で0~10である。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0138】
オキサジン化合物としては、特に制限はないが、例えば、ビスフェノールFとホルマリンとアニリンの反応生成物(F-a型ベンゾオキサジン樹脂)や4,4’-ジアミノジフェニルメタンとホルマリンとフェノールの反応生成物(P-d型ベンゾオキサジン樹脂)、ビスフェノールAとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジヒドロキシジフェニルエーテルとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジアミノジフェニルエーテルとホルマリンとフェノールの反応生成物、ジシクロペンタジエン-フェノール付加型樹脂とホルマリンとアニリンの反応生成物、フェノールフタレインとホルマリンとアニリンの反応生成物、ジヒドロキシジフェニルスルフィドとホルマリンとアニリンの反応生成物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0139】
ビニル系化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の炭素原子数が1~22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート等のω-アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;クロトン酸メチル、クロトン酸エチル等のクロトン酸のアルキルエステル類;ジメチルマレート、ジ-n-ブチルマレート、ジメチルフマレート、ジメチルイタコネート等の不飽和二塩基酸のジアルキルエステル類;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類;フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等のフルオロオレフィン類;エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル類;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-ビニルピロリドン等の3級アミド基含有モノマー類等が挙げられる。
【0140】
(メタ)アリル系化合物としては、酢酸アリル、塩化アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシメタノール、アリルオキシエタノール等のアリルオキシアルコール;、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、ビスフェノールFジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、トリプロピレングリコールジアリルエーテルなどのアリル基を2つ含有する化合物;トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテルなどのアリル基を3つ以上含有する化合物;等、またはこれら化合物のメタアリル体が挙げられる。
【0141】
本発明のガラス繊維含有樹脂組成物中には、マレイミド基と(メタ)アリル基の両方が存在する。マレイミド基と(メタ)アリル基の比率は特に限定は無いが、マレイミド基モル数:(メタ)アリル基モル数=1:10~10:1が好ましく、1:5~5:1であると耐熱性に優れるため好ましい。特に、1:2~3:1の場合、耐熱性と組成物粘度のバランスに優れるため好ましい。
【0142】
<分散媒>
本発明のガラス繊維含有樹脂組成物は、組成物の固形分量や粘度を調整する目的として、分散媒を使用してもよい。分散媒としては、本発明の効果を損ねることのない液状媒体であればよく、各種有機溶剤、液状有機ポリマー等が挙げられる。
【0143】
前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン等の環状エーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類が挙げられ、これらを単独又は併用して使用可能であるが、中でもメチルエチルケトンが塗工時の揮発性や溶媒回収の面から好ましい。
【0144】
前記液状有機ポリマーとは、硬化反応に直接寄与しない液状有機ポリマーであり、例えば、カルボキシル基含有ポリマー変性物(フローレンG-900、NC-500:共栄社)、アクリルポリマー(フローレンWK-20:共栄社)、特殊変性燐酸エステルのアミン塩(HIPLAAD ED-251:楠本化成)、変性アクリル系ブロック共重合物(DISPERBYK2000:ビックケミー)などが挙げられる。
【0145】
<樹脂>
また、本発明のガラス繊維含有樹脂組成物は、上述した各種化合物以外の樹脂を有していてもよい。前記樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば公知慣用の樹脂を配合すればよく、例えば熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0146】
熱硬化性樹脂とは、加熱または放射線や触媒などの手段によって硬化される際に実質的に不溶かつ不融性に変化し得る特性を持った樹脂である。その具体例としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、活性エステル樹脂、アニリン樹脂、シアネートエステル樹脂、スチレン・無水マレイン酸(SMA)樹脂、本発明により得られるアリル基含有マレイミド化合物以外のマレイミド樹脂などが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0147】
熱可塑性樹脂とは、加熱により溶融成形可能な樹脂を言う。その具体例としてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ゴム変性ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、酢酸セルロース樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリケトン樹脂、液晶ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0148】
<硬化剤>
本発明のガラス繊維含有樹脂組成物は、配合物に応じて硬化剤を用いてもよく、例えば、エポキシ基を有する化合物(エポキシ化合物)を配合している場合には、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、カルボキシル基含有硬化剤、チオール系硬化剤などの各種の硬化剤を併用してもかまわない。
【0149】
アミン系硬化剤としてはジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、オルトフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、イミダゾ-ル、BF3-アミン錯体、グアニジン誘導体、グアナミン誘導体等が挙げられる。
【0150】
アミド系硬化剤としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0151】
酸無水物系硬化剤としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0152】
フェノール系硬化剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、4,4’,4”-トリヒドロキシトリフェニルメタン、ナフタレンジオール、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、カリックスアレーン、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
これらの硬化剤は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
【0153】
また、本発明のガラス繊維含有樹脂組成物にエポキシ基を有する化合物(エポキシ化合物)が含まれる場合、硬化促進剤を単独で、あるいは前記の硬化剤と併用することもできる。硬化促進剤としてエポキシ樹脂の硬化反応を促す種々の化合物が使用でき、例えば、リン系化合物、第3級アミン化合物、イミダゾール化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。この中でも、イミダゾール化合物、リン系化合物、第3級アミン化合物の使用が好ましく、特に硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、イミダゾール化合物では2-エチル-4-メチル-イミダゾール、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンではN,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセン(DBU)が好ましい。
【0154】
<その他の配合物>
本発明のガラス繊維含有樹脂組成物は、その他の配合物を有していてもかまわない。例えば、触媒、重合開始剤、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、カップリング剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤等が挙げられる。
【0155】
<硬化物>
本発明の硬化物は、前記ガラス繊維含有樹脂組成物を硬化することにより得ることができる。前記硬化物は、低線膨張で、高ガラス転移温度、耐熱分解性に優れることから、耐熱部材として好適に使用可能であり、また、ガラス繊維への密着性に優れることから、機械的強度が高く、ガラス繊維で強化した成形材料にも好適に使用可能である。硬化物の成形方法は特に限定は無く、組成物単独で成形してもよいし、基材と共に硬化物からなる層を有る(積層する)ことで積層体としてもかまわない。
【0156】
本発明のガラス繊維含有樹脂組成物を硬化させる場合には、熱硬化をおこなえばよい。熱硬化する際、公知慣用の硬化触媒を用いても良いが、前記ガラス繊維含有樹脂組成物は、マレイミド基とアリル基との反応により硬化触媒を用いなくても硬化することが可能である。
熱硬化を行う場合、1回の加熱で硬化させてもよいし、多段階の加熱工程を経て硬化させてもかまわない。
【0157】
硬化触媒を用いる場合には、例えば、塩酸、硫酸、燐酸等の無機酸類;p-トルエンスルホン酸、燐酸モノイソプロピル、酢酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等の無機塩基類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン酸エステル類;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ-n-ブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、イミダゾール、2-エチル-4-メチル-イミダゾール、1-メチルイミダゾール、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)等の各種の塩基性窒素原子を含有する化合物類;テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩等の各種の4級アンモニウム塩類であって、対アニオンとして、クロライド、ブロマイド、カルボキシレートもしくはハイドロオキサイドなどを有する4級アンモニウム塩類;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、オクチル酸錫又はステアリン酸錫など錫カルボン酸塩、;過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、過酸化ラウロイル、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトン過酸化物、t-ブチルパーベンゾエートなどの有機過酸化物等を使用することができる。触媒は単独で使用しても良いし、2種以上併用しても良い。
【0158】
また、前記(メタ)アリル基含有マレイミド化合物は、炭素-炭素間二重結合を有することから、活性エネルギー線硬化を併用することもできる。活性エネルギー線硬化を行う場合、光重合開始剤をガラス繊維含有樹脂組成物に配合すればよい。光重合開始剤としては公知のものを使用すればよく、例えば、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、ベンゾフェノン類からなる群から選ばれる一種以上を好ましく用いることができる。前記アセトフェノン類としては、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン等が挙げられる。前記ベンジルケタール類としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。前記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル等が挙げられる。前記ベンゾイン類等としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。光重合開始剤は単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0159】
熱硬化と活性エネルギー線硬化を併用して硬化させる場合、加熱と活性エネルギー線照射を同時に行っても良いし、別々に行っても良い。例えば、活性エネルギー線照射を行った後で熱硬化を行っても良いし、熱硬化の後に活性エネルギー線硬化を行っても良い。また、それぞれの硬化方法を2回以上組み合わせて行っても良く、用途に合わせて適宜硬化方法を選択すればよい。
【0160】
<コンパウンド>
本発明は、前記ガラス繊維含有樹脂組成物を含有するコンパウンドに関する。前記コンパウンドを得る方法としては、前記ガラス繊維含有樹脂組成物、硬化促進剤、及び、その他の充填剤の配合剤とを必要に応じて押出機、ニ-ダ、ロ-ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法が挙げられる。その際、その他の充填剤としては、カーボンブラックなどの有機着色剤や、溶融シリカなどの無機充填剤、あるいは熱伝導率の高い結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素などが用いられる。その充填率はガラス繊維含有樹脂組成物中のガラス繊維以外の成分100質量部当たり、無機充填剤を30~95質量%の範囲で用いることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましい。
【0161】
<耐熱部材>
本発明は、前記ガラス繊維含有樹脂組成物を含有する耐熱材料用組成物に関する。また、前記ガラス繊維含有樹脂組成物を硬化することにより得られる硬化物を含有する耐熱部材に関する。本発明のガラス繊維含有樹脂組成物は、その硬化物が低線膨張であって、耐熱分解性に優れることから、耐熱部材に好適に使用可能である。本発明のガラス繊維含有樹脂組成物から耐熱部材を得る成形方法としては、上記コンパウンドを注型、あるいはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50~250℃で2~10時間加熱する方法等が挙げられる。こうして得られる耐熱部材は、各種用途に好適に使用可能であり、例えば、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品、宇宙・航空関連部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材等が挙げられるが、これらに限定される物ではない。
【実施例】
【0162】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、これらに限定解釈されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。なお、1H-NMR、13C-NMR及びFD-MSスペクトルは以下の条件にて測定した。
【0163】
1H-NMR:JEOL RESONANCE製「JNM-ECA600」
磁場強度:600MHz
積算回数:32回
溶媒:DMSO-d6
試料濃度:30質量%
【0164】
13C-NMR:JEOL RESONANCE製「JNM-ECZ400S」
共鳴周波数:100MHz
積算回数:4000回
溶媒:クロロホルム-d
試料濃度:12質量%
緩和試薬 :クロム(III)アセチルアセトネート
【0165】
FD-MS:日本電子株式会社製「JMS-T100GC AccuTOF」
測定範囲:m/z=50.00~2000.00
変化率:25.6mA/min
最終電流値:40mA
【0166】
製造例1 繊維集束剤(A):重合性二重結合を含有するポリエステル樹脂使用
ネオペンチルグリコール104質量部(1モル部)、ブチロラクトン172質量部(2モル部)、及びシュウ酸チタン酸カリウム2質量部を、ガラス反応容器中、230℃で0.001MPaまで減圧し水を留去しながら15時間反応させた。反応混合物に更に無水マレイン酸88質量部(0.9モル部)を加えて、150℃、常圧で2時間反応させ、ポリエステル樹脂を得た。次いで、イオン交換水1100質量部を30分かけて滴下し、更に15分間攪拌混合した。この水分散物を減圧蒸留により濃縮して、固形分30%の繊維集束剤(A)を得た。得られた集束剤中の二重結合濃度を13C-NMRの積分値より算出した値は5モル%であった。なお、二重結合濃度は13C-NMRの全シグナルの積分値と98~100ppm付近のシグナルの積分値の2分の1の割合から算出した。
【0167】
製造例2 繊維集束剤(B):重合性二重結合を含有するポリウレタン樹脂使用
ポリカプロラクトンエステルポリオール(商品名:プラクセル220[PCL220]、ダイセル化学(株)製、OH価56mgKOH/g、Mw:約2000)200質量部、両末端水酸基ポリブタジエン(日本曹達株式会社製「NISSO-PB[G-2000]、数平均分子量:1900)1710質量部にメチルエチルケトン500質量部を加えて溶解し、次いで、キシレンジイソシアネート188質量部を加え、80℃で2時間反応させ、ポリウレタン樹脂溶液を得た。次いで、イオン交換水1200質量部を30分かけて滴下し、更に15分間攪拌混合した。この水分散物を減圧蒸留により濃縮して、固形分30%の繊維集束剤(B)を得た。得られた集束剤中の二重結合濃度を13C-NMRの積分値より算出した値は21モル%であった。なお、二重結合濃度は13C-NMRの全シグナルの積分値と98~100ppm付近のシグナルの積分値の2分の1の割合から算出した。
【0168】
製造例3 繊維集束剤(C):重合性二重結合を含有しないポリエステル樹脂使用
ネオペンチルグリコール104質量部(1モル部)、ブチロラクトン172質量部(2モル部)、及びシュウ酸チタン酸カリウム2質量部を、ガラス反応容器中、230℃で0.001MPaまで減圧し水を留去しながら15時間反応させ、ポリエステル樹脂を得た。次いで、イオン交換水1100質量部を30分かけて滴下し、更に15分間攪拌混合した。この水分散物を減圧蒸留により濃縮して、固形分30%の繊維集束剤(C)を得た。
【0169】
製造例4 繊維集束剤(D):重合性二重結合を1モルしか含有しないポリウレタン樹脂使用
ポリカプロラクトンエステルポリオール(商品名:プラクセル220[PCL220]、ダイセル化学(株)製、OH価56mgKOH/g、Mw:約2000)200質量部、両末端水酸基ポリブタジエン(日本曹達株式会社製「NISSO-PB[G-2000]、数平均分子量:1900)5.7質量部にメチルエチルケトン100質量部を加えて溶解し、次いで、キシレンジイソシアネート18質量部を加え、80℃で2時間反応させ、ポリウレタン樹脂溶液を得た。次いで、イオン交換水1200質量部を30分かけて滴下し、更に15分間攪拌混合した。この水分散物を減圧蒸留により濃縮して、固形分30%の繊維集束剤(D)を得た。得られた集束剤中の二重結合濃度を13C-NMRの積分値より算出した値は1モル%であった。なお、二重結合濃度は13C-NMRの全シグナルの積分値と98~100ppm付近のシグナルの積分値の2分の1の割合から算出した。
【0170】
製造例5 繊維集束剤(E):重合性二重結合を含有しないポリ酢酸ビニル樹脂使用
撹拌機付き200リットルのオートクレーブに、イオン交換水185質量部、エチルアルコール85質量部、酢酸ビニルモノマー100質量部、重合触媒としてビス(4-ターシャリブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート〔化薬アクゾ社製、パーカドックス 16〕0.3質量部、懸濁安定剤として部分ケン化ポリビニルアルコール0.025質量部を仕込み、重合温度62℃で7時間重合した。次にスラリーを撹拌しながら温度65℃、減圧度-580mmHgで未反応酢酸ビニルモノマーとエチルアルコールを除去し、ポリ酢酸ビニル樹脂水溶液を得た。次いで、イオン交換水370質量部を30分かけて滴下し、更に15分間攪拌混合した。この水分散物を減圧蒸留により濃縮して、固形分30%の繊維集束剤(E)を得た。
【0171】
〔合成例1〕マレイミド組成物(A)の合成
Proceedings of the National Academy of Sciences, India, Section A: Physical Sciences,71(1),5-12;2001,の文献に記載の方法に従って、反応物(h-1)を合成した。
【0172】
【0173】
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた3Lフラスコに反応物(h-1)60.00g(0.232mol)、酢酸800mL、臭化水素酸(47%)800mLを仕込み攪拌しながら加熱し還流状態とした。還流下で12時間反応させた後、室温まで空冷した。反応液を20%水酸化ナトリウム水溶液で中和後、酢酸エチル600mLで抽出した。イオン交換水200mLで3回洗浄し、硫酸ナトリウムを加え乾燥後、減圧濃縮し反応物(h-2)を43.01g(収率80.5%)得た。
【0174】
【0175】
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた3Lフラスコに反応物(h-2)133.40g(0.58mol)、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)1L、イオン交換水0.45Lを仕込み室温で撹拌した。反応液を60℃まで加熱した後、無水酢酸148.22g(1.45mol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、60℃で2時間反応させた後、室温まで空冷した。析出物をろ過し、イオン交換水2Lで洗浄した後、80℃で10時間真空乾燥を行い、固体状の反応物(a-1)を162.09g(収率89.0%)得た。
【0176】
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた3Lフラスコに反応物(a-1)137.53g(0.438mol)、アセトン2.2Lを仕込み攪拌した。次に炭酸カリウム133.79g(0.968mol)を加え、反応液を加熱し還流状態とした。1時間還流した後、臭化アリル116.60g(0.964mol)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、12時間還流下で反応させた後、室温まで空冷した。ろ過後、反応液を減圧濃縮し、さらに80℃で10時間真空乾燥を行い、反応物(a-2)を165.67g(収率96.0%)得た。
【0177】
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた1Lフラスコに反応物(a-2)を158.39g(0.402mol)、エタノール330mLを仕込み攪拌した。濃塩酸108.97gを加え60℃に加熱した。60℃で30時間反応後、室温まで空冷した。反応液を20%水酸化ナトリウム水溶液で中和後、酢酸エチル400mLで抽出した。イオン交換水200mLで2回洗浄し、硫酸ナトリウムを加え乾燥後、減圧濃縮し、得られた反応物を80℃で10時間真空乾燥を行い液状の反応物(h-3)を117.14g(収率94.0%)得た。
【0178】
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ、攪拌機を取り付けた3Lフラスコに無水マレイン酸132.48g(1.351mol)、トルエン1.53Lを仕込み室温で攪拌した。フラスコを氷浴へ移し、反応物(h-3)を99.82g(0.322mol)、4-アミノフェノールを63.76g(0.584mol)、DMF280mLの混合溶液を滴下した。滴下終了後、室温でさらに2時間反応させた。p-トルエンスルホン酸一水和物15.27gを加え、反応液を加熱し還流下で共沸してくる水とトルエンを冷却・分離した後、トルエンだけを系内に戻して脱水反応を9時間行った。室温まで空冷後、減圧濃縮し褐色溶液553.22gを得た。酢酸エチル1.4Lに溶解させイオン交換水400mLで4回、2%炭酸水素ナトリウム水溶液400mLで5回洗浄し、硫酸ナトリウムを加え乾燥後、減圧濃縮し得られた反応物を80℃で11時間真空乾燥を行い、アリル基含有マレイミド化合物および水酸基含有マレイミド化合物を含有する、マレイミド組成物(A)を183.04g得た。
【0179】
【0180】
得られたマレイミド組成物(A)のマススペクトルはM+=470、189のピークを示したことから、目的のマレイミド化が進行していることを確認した。また、1H-NMRより、マレイミド成分の比率がアリル基含有マレイミド/水酸基含有マレイミド=72:28(重量比)であることを確認した。比率の算出には、1H-NMRにおける、アリル基含有マレイミドのアリル基由来シグナル、および、水酸基含有マレイミドの芳香環由来シグナルを用いた。
【0181】
(実施例1)
[樹脂組成物で被覆したガラス繊維(被覆ガラス繊維)の調製]
製造例1で得られた繊維集束剤(A)を用いて、チョップドストランド法により直径6.5μm、長さ1.5mmの被覆ガラス繊維を製造した。この時、繊維集束剤(A)の付着(被覆)重量は、被覆ガラス繊維の合計総質量に対して固形分として1質量%であった。
【0182】
[ガラス繊維含有樹脂組成物(コンパウンド)の調製]
得られた被覆ガラス繊維を146質量部と、合成例1で得られたマレイミド組成物(A)を160質量部と、EPICLON HP-4700(DIC(株)製、エポキシ樹脂)を55質量部と、離型剤であるライスワックス((株)セラリカNODA製)を2質量部と、着色剤であるカーボンブラック(三菱ケミカル(株)製)を2質量部と、硬化触媒であるイミダゾール(四国化成工業(株)製、2E4MZ)を1質量部とを、φ8"×L20"両無段ロール機(関西ロール株式会社製)を用いて、100~110℃で4分間、その後140℃に10分間で昇温し、140℃で均一になるまで混錬し、ガラス繊維含有樹脂組成物を調製した。
【0183】
[成形体の製造]
得られたガラス繊維含有樹脂組成物について、株式会社神藤金属工業所製圧縮成型機を用いて、180℃で3分、圧力20MPaの条件にてプレス成形を行い、JIS K6911に準拠したサイズの硬化物である成形体を製造した。得られた成形体は、200℃で2時間の後加熱を行った。
【0184】
(実施例2)
実施例2については、実施例1に対し、ガラス繊維の大きさを直径11μm、長さ3mmにした以外は同様にして、ガラス繊維含有樹脂組成物および成形体を製造、評価した。
【0185】
(実施例3、及び、比較例1~3)
実施例3、及び、比較例1~3については、実施例1に対し、表1に記載の通りに変更した以外は同様の条件にて、ガラス繊維含有樹脂組成物および成形体を製造し評価した。
【0186】
(比較例4)
比較例4については、実施例1に対し、マレイミド樹脂組成物(A)の代わりに、フェノール樹脂(DIC(株)製、商品名:KI-9544)を用い、表1に記載の通りに変更した以外は同様の条件にて、ガラス繊維含有樹脂組成物および成形体を製造し評価した。
【0187】
(比較例5)
比較例5については、実施例1に対し、マレイミド樹脂組成物(A)の代わりに、4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業(株)製、商品名:BMI-1000)を用いた以外は同様の条件にて、ガラス繊維含有樹脂組成物を製造し、繊維分散性のみを評価した。
【0188】
<評価>
[繊維分散性評価(ガラス繊維への濡れ性及び密着性)]
ガラス繊維含有樹脂組成物の調製において、100~110℃で4分間、その後140℃に10分間で昇温し、140℃で4分間混練を続けた際の配合物中のガラス繊維の毛羽立ちの状態を下記の基準で目視判定した。
○:毛羽発生なし、あるいは数本の毛羽は見られたものの、実用上問題ないレベルであった。
△:毛羽立ちが確認でき、繊維の露出も若干見られた。実用上問題あり。
×:毛羽立ち及び繊維の露出が非常に多く、全体とパサつき感が確認できた。実用上問題あり。
【0189】
[成形体の評価]
得られた成形体について、JIS K6911に準拠して引張強度試験・弾性率・破断伸びの機械的強度について、評価を行った。
なお、得られた硬化物である成形体の引張強度は、室温(23℃)及び150℃(高温)のいずれにおいても、好ましくは、60MPa以上であり、より好ましくは、60~80MPaであり、更に好ましくは、70~80MPaである。前記範囲内にあると実用上に優れたものとなる。
前記弾性率としては、室温(23℃)及び150℃(高温)のいずれにおいても、好ましくは、1450MPa以上であり、より好ましくは、1550~1800MPaであり、更に好ましくは、1650~1800MPaである。前記範囲内にあると実用上に優れたものとなる。
前記破断伸びとしては、室温(23℃)及び150℃(高温)のいずれにおいても、好ましくは、4%以上であり、より好ましくは、4~6%であり、更に好ましくは、4.5~6%である。前記範囲内にあると、相反する高い弾性率と高い伸び率を両立することとなり、実用上に優れたものとなる。
【0190】
【0191】
【0192】
上記表2の結果より、実施例1~3においては、特定構造を有するマレイミド化合物2種と共に、特定の樹脂組成物で被覆したガラス繊維を含有するガラス繊維含有樹脂組成物を使用することで、得られる硬化物である成形体は、機械的強度の目安である引張強度、弾性率、及び、破断伸びが、特定構造を有するマレイミド化合物やガラス繊維を使用しない比較例に対して、優れることが確認できた。また、比較例5においては、一般的に使用される高耐熱性のBMIを使用し、特定構造のマレイミド化合物を使用しなかったため、ガラス繊維を溶融混練(100~140℃)することが困難となり、ガラス繊維への濡れ性や密着性に劣り、低粘度化を図ることができないことも確認された。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明のガラス繊維含有樹脂組成物は、耐熱性及び機械的強度に優れる硬化物を得られるため、前記ガラス繊維含有樹脂組成物を用いたコンパウンド、耐熱部材等に好適に使用可能である。