(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】3次元表示デバイス
(51)【国際特許分類】
G02B 30/32 20200101AFI20240213BHJP
G03B 35/00 20210101ALI20240213BHJP
H04N 13/31 20180101ALI20240213BHJP
H04N 13/317 20180101ALI20240213BHJP
H04N 13/366 20180101ALI20240213BHJP
H04N 13/356 20180101ALI20240213BHJP
H04N 13/312 20180101ALI20240213BHJP
【FI】
G02B30/32
G03B35/00 Z
H04N13/31
H04N13/317
H04N13/366
H04N13/356
H04N13/312
(21)【出願番号】P 2020005334
(22)【出願日】2020-01-16
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100210251
【氏名又は名称】大古場 ゆう子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀也
(72)【発明者】
【氏名】濱岸 五郎
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0182404(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0237972(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0065951(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向と縦方向とを有する画素が格子状に配列された表示面を有する表示部と、
前記画素に左眼用画像及び右眼用画像を表示させる制御部と、
ユーザの左眼に対しては前記右眼用画像を遮り、前記ユーザの右眼に対しては前記左眼用画像を遮る遮光領域と、前記ユーザの左眼には前記左眼用画像を到達させ、前記ユーザの右眼には前記右眼用画像を到達させる透過領域とが形成されるバリア部と、
を備え、
前記画素は、前記横方向に沿って連続する3個のサブピクセルから構成される正方形状のピクセルであり、
前記制御部は、前記横方向に沿って連続する4個以上の前記サブピクセルごとに、前記左眼用画像と前記右眼用画像とを交互に表示し、
前記遮光領域及び前記透過領域は、前記横方向に対して所定の傾斜角を有するストライプを形成し、
前記傾斜角は、前記画素の一方の対角線が前記横方向に対してなす角であり、
前記横方向に対する前記傾斜角は、前記表示部が、前記横方向が第1の方向に沿った状態である第1状態から、前記横方向が前記第1の方向に直交する第2の方向に沿った状態である第2状態に遷移するまでの間、一定である、
3次元表示デバイス。
【請求項2】
前記左眼用画像が表示される領域である第1領域の形状、及び前記右眼用画像が表示される領域である第2領域の形状は、前記表示部が、前記第1状態から前記第2状態に遷移するまでの間、一定である、
請求項
1に記載の3次元表示デバイス。
【請求項3】
前記制御部は、前記横方向に沿って連続するn個
(ただし、n≧4)の前記サブピクセルごとに、前記左眼用画像と前記右眼用画像とを交互に表示し、
前記透過領域の前記横方向の幅は、前記横方向に沿って連続するm個の前記サブピクセルの前記横方向の幅に対応し、
m≦(n-3)である、
請求項
1又は
2に記載の3次元表示デバイス。
【請求項4】
1組の前記遮光領域及び前記透過領域の前記横方向の幅は、前記横方向に沿って連続する前記サブピクセル2n個分の幅に対応し、nは3の倍数以外の数である、
請求項
3に記載の3次元表示デバイス。
【請求項5】
前記制御部は、前記表示面から所定の距離だけ離れた仮想平面上に、前記透過領域の形状に基づくドット領域を設定し、
前記ドット領域の前記横方向の幅Wは、前記仮想平面上において前記ユーザの両眼間隔をEとすると、2E≦W≦2E×√2であり、
前記ドット領域は、前記横方向に対して傾斜した境界線によって2n個のサブ領域に等分され、前記境界線は、前記ストライプと同じ方向に傾斜している、
請求項
4に記載の3次元表示デバイス。
【請求項6】
前記ユーザの眼を検知するトラッキング部
をさらに備え、
前記制御部は、前記トラッキング部により検知された前記ユーザの眼と前記ドット領域との位置関係に基づいて前記左眼用画像及び前記右眼用画像を前記サブピクセルに表示する、
請求項
5に記載の3次元表示デバイス。
【請求項7】
前記制御部は、前記ユーザの両眼を結ぶ線と、前記境界線とのなす角が所定の限界角よりも小さくなると、前記表示面の全体に前記左眼用画像及び前記右眼用画像のいずれか一方を表示する、
請求項6に記載の3次元表示デバイス。
【請求項8】
前記所定の限界角は、45°である、
請求項
7に記載の3次元表示デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元表示デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、パララックスバリア方式の3次元表示システムを開示する。特許文献1で開示されるシステムは、表示装置と、バリアと、検出装置と、コントローラとを有する。表示装置は、左眼画像を表示する表示領域と右眼画像を表示する表示領域とを有する。バリアは、入射する光を透過させる透光領域と、入射する光を遮る遮光領域とを有し、左眼に左眼画像を、右眼に右眼画像を到達させる。検出装置はユーザの左眼及び右眼の位置を検出する。コントローラは、検出した両眼の位置により、左眼画像の表示領域と右眼画像の表示領域との境界を移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるシステムは、表示装置に表示される左眼画像及び右眼画像がユーザから見て横方向に見える第1モードと、左眼画像及び右眼画像がユーザから見て縦方向に見える第2モードとを有する。バリアの透光領域と遮光領域とは表示装置の画素に対する傾斜角を有し、傾斜角は、第1モードと第2モードとで変化しない。つまり、表示装置がユーザに対して90°回転した時、バリアはユーザに対して回転しない。言い換えると、第1モードにおいてバリアの表示装置に対する回転角度が0°であったとすると、第2モードにおいてバリアが表示装置に対して90°回転した状態となる。
【0005】
特許文献1は、システムが有する複数のモードとして、第1のモードと第2のモードのみを開示する。つまり、特許文献1に記載のシステムでは、第1のモード及び第2のモード以外の状態におけるバリア及び表示装置の制御が考慮されていない。このため、表示装置がユーザに対して0°から90°回転する間、どのような表示が提供されるのかが不明である。
【0006】
本発明は、所定の角度範囲を回転する間、連続して立体表示を提供し得る3次元表示デバイス及びパララックスバリアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る3次元表示デバイスは、表示部と、制御部と、バリア部とを備える。表示部は、横方向と縦方向とを有する画素が格子状に配列された表示面を有する。制御部は、前記画素に左眼用画像及び右眼用画像を表示させる。バリア部には、ユーザの左眼に対しては前記右眼用画像を遮り、前記ユーザの右眼に対しては前記左眼用画像を遮る遮光領域と、前記ユーザの左眼には前記左眼用画像を到達させ、前記ユーザの右眼には前記右眼用画像を到達させる透過領域とが形成される。前記遮光領域及び前記透過領域は、前記横方向に対して所定の傾斜角を有するストライプを形成し、前記横方向に対する前記傾斜角は、前記表示部が前記横方向が第1の方向に沿った状態である第1状態から、前記横方向が前記第1の方向に直交する第2の方向に沿った状態である第2状態に遷移するまでの間、一定である。
【0008】
上記構成によれば、バリアの遮光領域及び透過領域が形成するストライプが画素の横方向に対して傾斜しているため、表示部が少なくとも第1状態から第2状態まで遷移するまでの間は、傾斜角を一定に維持したまま立体表示が可能である。また、バリアのストライプが画素の横方向に対して傾斜していることにより、表示部が表示する画像において、モアレが認識されにくくなる。
【0009】
上記側面に係る3次元表示デバイスにおいて、前記傾斜角は、前記画素の一方の対角線が前記横方向に対してなす角であってもよい。
【0010】
上記側面に係る3次元表示デバイスにおいて、前記左眼用画像が表示される領域である第1領域の形状、及び前記右眼用画像が表示される領域である第2領域の形状は、前記第1状態と前記第2状態に遷移するまでの間、一定であってもよい。
【0011】
上記側面に係る3次元表示デバイスにおいて、前記画素は、前記横方向に沿って連続する3個のサブピクセルから構成される正方形状のピクセルであってもよく、前記制御部は、前記横方向に沿って連続するn個の前記サブピクセルごとに、前記左眼用画像と前記右眼用画像とを交互に表示してもよく、前記透過領域の横方向の幅は、前記横方向に沿って連続するm個の前記サブピクセルの横方向の幅に対応し、m≦(n-3)であってもよい。
【0012】
上記側面に係る3次元表示デバイスにおいて、1組の前記遮光領域及び前記透過領域の前記横方向の幅は、前記横方向に沿って連続する前記サブピクセル2n個分に対応し、nは3の倍数以外の数であってもよい。
【0013】
上記側面に係る3次元表示デバイスにおいて、前記制御部は、前記表示面から所定の距離だけ離れた仮想平面上に、前記透過領域の形状に基づくドット領域を設定してもよく、前記ドット領域の前記横方向の幅Wは、前記仮想平面上において前記ユーザの両眼間隔をEとすると、2E≦W≦2E×√2であってもよく、前記ドット領域は、前記横方向に対して傾斜した境界線によって2n個のサブ領域に等分され、前記境界線は、前記ストライプと同じ方向に傾斜していてもよい。
【0014】
上記側面に係る3次元表示デバイスは、前記ユーザの眼を検知するトラッキング部をさらに備えてもよく、前記制御部は、前記トラッキング部により検知された前記ユーザの眼と前記ドット領域との位置関係に基づいて、前記左眼用画像及び前記右眼用画像を前記サブピクセルに表示してもよい。
【0015】
上記側面に係る3次元表示デバイスにおいて、前記制御部は、前記ユーザの両眼を結ぶ線と、前記境界線とのなす角が所定の限界角よりも小さくなると、前記表示面の全体に前記左眼用画像及び前記右眼用画像のいずれか一方を表示してもよい。
【0016】
上記側面に係る3次元表示デバイスにおいて、前記バリア部は、前記制御部によって制御可能な液晶シャッタから構成されてもよく、前記制御部は、前記ユーザの両眼を結ぶ線と、前記境界線とのなす角が所定の限界角よりも小さくなると、前記バリア部に前記遮光領域を形成せず、前記透過領域のみを形成してもよい。
【0017】
上記側面に係る3次元表示デバイスにおいて、前記バリア部は、前記制御部によって制御可能な液晶シャッタから構成されてもよく、前記制御部は、前記ユーザの両眼を結ぶ線と、前記境界線とのなす角が所定の限界角よりも小さくなると、前記バリア部に前記透過領域を形成せず、前記遮光領域のみを形成してもよい。
【0018】
上記側面に係る3次元表示デバイスにおいて、前記所定の限界角は、45°であってもよい。
【0019】
上記側面に係る3次元表示デバイスにおいて、前記バリア部は、前記制御部によって制御可能な液晶シャッタから構成されるとともに、前記制御部によって、前記傾斜角が所定の第1傾斜角である第1パターンと、前記傾斜角が所定の第2傾斜角である第2パターンとを切り替え可能に構成されてもよく、前記第1傾斜角は、前記画素の一方の対角線が前記横方向に対してなす角であり、前記第2傾斜角は、前記画素の他方の対角線が前記横方向に対してなす角であり、前記制御部は、前記ユーザの両眼を結ぶ線と、前記境界線とのなす角が所定の限界角よりも小さくなると、前記バリア部を前記第1パターンから前記第2パターンへと切り替える、又は、前記バリア部を前記第2パターンから前記第1パターンへと切り替えてもよい。
【0020】
上記構成によれば、ユーザの両眼を結ぶ線と、ドット領域の境界線とがなす角によらず立体表示を提供することが可能になる。
【0021】
上記側面に係る3次元表示デバイスは、前記表示部の表示面上に配置されるタッチパネルをさらに備えてもよい。
【0022】
上記側面に係る3次元表示デバイスにおいて、前記バリア部は、前記タッチパネルと前記表示面との間に配置されてもよい。
【0023】
上記側面に係る3次元表示デバイスにおいて、前記表示部は、バックライトと液晶パネルとを有してもよく、前記バリア部は、前記バックライトと前記液晶パネルとの間に配置されてもよい。
【0024】
本発明の一側面に係るパララックスバリアは、縦方向と横方向とを有し、前記横方向に複数連続することでピクセルを構成するサブピクセルが格子状に配列されており、前記サブピクセルに左眼用画像及び右眼用画像を表示する表示装置に装着可能なシート状のパララックスバリアであって、遮光領域と、透過領域とを有する。遮光領域は、ユーザの左眼に対しては前記右眼用画像を遮り、前記ユーザの右眼に対しては前記左眼用画像を遮る。透過領域は、前記ユーザの左眼には前記左眼用画像を到達させ、前記ユーザの右眼には前記右眼用画像を到達させる。前記遮光領域及び前記透過領域は、前記ピクセルの対角線と平行な方向に傾斜したストライプを形成する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、所定の角度範囲を回転する間、連続して立体表示を提供し得る3次元表示デバイス及びパララックスバリアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】一実施形態に係る3次元表示デバイスの平面図。
【
図1B】
図1Aの3次元表示デバイスの内部構造を示す断面模式図。
【
図2】一実施形態に係る3次元表示デバイスの電気的構成を示すブロック図。
【
図4A】第1状態における表示面及びバリア部の状態を示す図。
【
図4B】第3状態における表示面及びバリア部の状態を示す図。
【
図4C】第2状態における表示面及びバリア部の状態を示す図。
【
図4D】さらに別の状態における表示面及びバリア部の状態を示す図。
【
図5】ユーザと3次元表示デバイスとの幾何学的関係を説明する図。
【
図6】バリア部とサブピクセルとの関係について説明する図。
【
図7】サブピクセルとドット領域との関係を説明する図。
【
図10】変形例に係るバリアとデバイスとの構成を示す図。
【
図11A】変形例に係るデバイスの動作を説明する図。
【
図11B】変形例に係るデバイスの動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る3次元表示デバイスの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
<1.3次元表示デバイス>
図1Aは、本実施形態に係る3次元表示デバイス1(以下、単に「デバイス1」と称することがある)の平面図であり、
図1Bは
図1Aの断面模式図である(ただし、説明に不要な構成は省略されている)。デバイス1は、典型的にはタブレットコンピュータ、スマートフォン、ゲーム機等のデジタル情報処理機器である。デバイス1は、パララックスバリア方式の3次元表示機能を備えることにより、立体感を有する映像をユーザに提供することができる。以下では、
図1Aに示すように互いに直交するxyz軸で方向を定義し、xyz軸方向を基準として説明を行う。なお、x軸方向、y軸方向を、それぞれ第1の方向、第2の方向と称することがある。
【0029】
デバイス1は、ディスプレイ2と、バリア部3と、トラッキング部4と、制御部5と、記憶部6とを備える(
図2参照)。各部分3~6は、ケーシング10内に収容されている。ディスプレイ2は、ケーシング10に保持され、
図1Aに示されるデバイス1の天面を構成している。
図2に示すように、各部分2~6は互いに電気的に接続されている。制御部5は、各部の動作を制御する。記憶部6は、不揮発性のメモリであり、デバイス1を動作させるためのプログラム60が格納されている。制御部5は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等から構成され、記憶部6からプログラム60を読み出して実行することにより各部分の動作を制御する。各部分の動作は、後述する。
【0030】
<2.ディスプレイ>
本実施形態のディスプレイ2は、タッチパネルディスプレイであり、ユーザによる入力を受け付ける入力受付機能と、画像を表示する画像表示機能との両方を備えている。ディスプレイ2は、タッチパネル20と、画像を表示する表示部21と、バックライト22とを有し、各部分は
図1Bに示すz軸方向の正の側からこの順に配置されている。タッチパネル20は、ユーザの指や専用のペン等による座標の指定を検知し、検知信号を制御部5に出力する。バックライト22は、表示部21の光源として機能する。
【0031】
本実施形態の表示部21は、汎用の液晶パネルで構成されており、画素が格子状に配列された表示面210を有する。
図3は、表示面210の一部を表した模式図であり、画素として、RGB(赤緑青)のサブピクセルから構成されるピクセルPが格子状に配列されている。サブピクセルは、短辺と長辺とを有する長方形状であり、以下、短辺が延びる方向を横方向、長辺が延びる方向を縦方向と称する。本実施形態のサブピクセルは、RGBが順に横方向に3つ連続することで、一辺の長さがVpの1つの正方形状のピクセルPを構成している。つまり、サブピクセルの短辺の長さをHpとすると、3Hp=Vpが成り立つ。ここで、ピクセルPの一方の対角線を第1対角線Q1、他方の対角線を第2対角線Q2と称する。本実施形態では、第1対角線Q1は横方向に対して45°をなし、第2対角線Q2は横方向に対して135°をなしているものとする。また、表示面210はxy平面上にあるものとする。
【0032】
制御部5は、立体表示のため、視差を有する左眼用画像及び右眼用画像をそれぞれサブピクセルに表示させる。なお、左眼用画像及び右眼用画像は、他の記憶媒体又はインターネットを介して記憶部6に保存された画像でもよく、記憶部6に記憶されている画像から制御部5が生成した画像でもよい。
【0033】
1つの行において、左眼用画像は、横方向に沿って連続するn個のサブピクセルに表示される。以下、左眼用画像が表示されるサブピクセルをサブピクセル200Lと称する。右眼用画像は、サブピクセル200Lに隣接し、横方向に沿って連続するn個のサブピクセルに表示される。以下、右眼用画像が表示されるサブピクセルをサブピクセル200Rと称する。つまり、制御部5は、横方向に沿って連続するn個のサブピクセルごとに、左眼用画像及び右眼用画像を交互に表示させる。
図3は、n=7の例であり、左眼用画像が表示されるサブピクセル200Lが白色で、右眼用画像が表示されるサブピクセル200Rが網掛けで示されている。サブピクセルの行が1つ縦方向に移動すると、連続する14個のサブピクセル200L及びサブピクセル200Rが、サブピクセル3個分、つまりピクセル1個分だけ横方向にずれて形成される。こうして、左眼用画像が表示される第1領域及び右眼用画像が表示される第2領域が、それぞれ周期的な階段状に形成される。第1領域及び第2領域は、本実施形態では、階段状の頂点を結ぶ直線Cが第1対角線Q1と平行となるよう形成されるが、直線Cが第2対角線Q2と平行となるよう形成されてもよい。
【0034】
デバイス1又は表示部21は、サブピクセルの横方向がx軸方向に沿った第1状態と、サブピクセルの横方向がy軸方向に沿った第2状態と、ピクセルPの第2対角線Q2がx軸に平行であり、第1対角線Q1がy軸方向に平行である第3状態とを有する。デバイス1が第1状態であるとき、サブピクセルの配列は
図3Aに示す状態である。また、デバイス1が第3状態であるとき、サブピクセルの配列は
図3Bに示す状態である。第3状態は、
図1Aの状態からデバイス1がz軸を中心として時計回りに45°回転した状態である。言い換えると、第3状態は、サブピクセルの長辺とx軸とが45°の角度をなす状態である。デバイス1が第2状態であるとき、サブピクセルの配列方向は
図3Cに示す状態である。第2状態は、
図1Aの状態からデバイス1がz軸を中心として時計回りに90°回転した状態である。後述するバリア部3の構成により、デバイス1が少なくとも第1状態から第3状態を経由し、第2状態へと遷移する間、制御部5はサブピクセル200Lで構成される第1領域の形状、サブピクセル200Rで構成される第2領域の形状、及びこれらの領域同士の位置関係を変化させることなく立体表示を行うことができる。
【0035】
<3.バリア部>
バリア部3は、本実施形態ではディスプレイ2と一体的に形成されており、タッチパネル20と表示部21との間に配置されている。これにより、バリア部3はタッチパネル20が静電容量式である場合でも、その機能を阻害せず、表示部21に表示される画像のパララックスバリアとして機能する。バリア部3は、略平板状の外観形状を有し、表示面210とは距離gだけ離れて表示面210と平行又は概ね平行に配置されている(
図5参照)。本実施形態のバリア部3は、液晶シャッタで構成され、格子状に配列された制御要素を有する。液晶シャッタの制御要素は、それぞれに印加される電圧に応じて、光の透過量を調整するように構成されている。制御部5は、バリア部3の制御要素ごとに適切な電圧を印加することにより、光を透過させる透過領域30と、光を透過させない(遮る)遮光領域31とを任意の形状に形成することができる。制御部5は、バリア部3の全制御要素に光を透過させることにより、全体的に透過領域30を形成し、バリア機能をOFF状態とすることもできる。さらに、制御部5は、バリア部3の全制御要素に光を遮蔽させることにより、全体的に遮光領域31を形成し、表示部21に表示される画像を全面的に遮蔽することができる。
【0036】
図4Aは、バリア部3を重ねた表示面210の一部を表した模式図である。
図4Aに示すように、バリア部3には白色で表す透過領域30と網掛けで表す遮光領域31とが交互に形成され、ストライプを形成している。ストライプは、サブピクセルの横方向に対して所定の傾斜角θを有するように形成される。傾斜角θは、ピクセルPの第1対角線Q1又は第2対角線Q2が、横方向に対してなす角と一致する。本実施形態では、傾斜角θは45°であり、第1対角線Q1が横方向に対してなす角と一致するが、傾斜角θは第2対角線Q2が横方向に対してなす角と一致してもよく、135°であってもよい。1組の透過領域30と遮光領域31との、サブピクセルの横方向に沿った幅をバリアピッチBpと称する。
【0037】
ユーザが表示面210を観察する時、ユーザの両眼はバリア部3から距離dだけ離れた位置にあるものとする。このときのユーザ、バリア部3及び表示面210の幾何学的な位置関係を
図5に示す。ユーザの両眼間の距離(両眼間隔)をE,k=Hp×2nとすると、
図5に示す三角形の相似から、以下の式(1)(2)が成り立つ。なお、距離Eは、想定されるデバイス1のユーザの平均的な両眼間の距離として、予め定められた値であってよい。また、ユーザはその両眼を結ぶ線U1がx軸と平行又は概ね平行になるように、デバイス1に対向しているものとする。
E:d=k/2:g (1)
Bp:d=k:(d+g) (2)
【0038】
なお、
図5に示す例では、距離dが適視距離OVD(Optical Viewing Distance)となっている。このとき、バリアピッチBpがサブピクセル2n個分の幅に対応し、透過領域30は、ユーザの左眼にはサブピクセル200Lに表示される左眼用画像の少なくとも一部を、ユーザの右眼にはサブピクセル200Rに表示される右眼用画像の少なくとも一部を、それぞれ到達させる。また、距離dが適視距離OVDであるとき、遮光領域31はユーザの左眼に対してはサブピクセル200Rに表示される右眼用画像を遮り、ユーザの右眼に対してはサブピクセル200Lに表示される左眼用画像を遮る。その結果、左眼及び右眼のそれぞれが認識した画像が表示面210よりも手前で合成され、ユーザが立体感のある立体表示画像を視認することができる。
【0039】
透過領域30は、光の透過率が100%か、概ね100%となる領域である。透過領域30は、距離dが適視距離OVDであるとき、その横方向に沿った幅W1が、幾何学的にサブピクセルm個分の幅に対応するように構成される(
図4A参照)。より具体的には、透過領域30は、W1:(Hp×m)=OVD:(OVD+g)が成り立つように構成される。これにより、ユーザの左眼は、第1領域に表示される左眼用画像の少なくとも一部を、透過領域30を介して視認することができる。同様に、距離dが適視距離OVDであるとき、ユーザの右眼は、第2領域に表示される右眼用画像の少なくとも一部を、透過領域30を介して視認することができる。
【0040】
mは自然数であり、適宜変更が可能であるが、m≦(n-3)を満たすことが好ましい。バリア部3の傾斜角θが45°であるとき、透過領域30及び遮光領域31との境界線32は、1つの行内で横方向に連続する3つのサブピクセルを2分するようにまたがる。従って、m≦(n-3)であれば、透過領域30がサブピクセル200Lとサブピクセル200Rとにまたがることがなく、左眼に右眼用画像が、右眼に左目用画像が到達してしまうクロストークの発生を防止することができる。なお、
図4A~Cに示す例ではm=3であるが、本実施形態ではn=7であるため、m=4であってもよい。
【0041】
遮光領域31は、光の透過率が0%か、概ね0%となる領域である。遮光領域31は、距離dが適視距離OVDであるとき、その横方向に沿った幅W2が、幾何学的にサブピクセル(2n-m)個分の幅に対応するように構成される。より具体的には、遮光領域31は、W2:{Hp×(2n-m)}=OVD:(OVD+g)が成り立つように構成される。なお、Bp=W1+W2である。
【0042】
ここで、
図4Aは第1状態の、
図4Bは第3状態の、
図4Cは第2状態の表示面210及びバリア部3の様子をそれぞれ示している。
図4A~Cに示すように、デバイス1が第1状態から第3状態を介して第2状態に遷移する間、透過領域30及び遮光領域31の形状は表示面210に対して変化していない。言い換えると、バリア部3はデバイス1が第1状態からz軸を中心として少なくとも90°回転する間、傾斜角θ及びバリアピッチBpを一定に保ち、表示部21に対して回転しない。つまり、制御部5はデバイス1が少なくとも90°回転する間は、透過領域30及び遮光領域31の形状等を変形させるべく制御要素を切り替えたり、バリア機能をOFFにしたりすることなく、連続的な立体表示を行うことができる。
【0043】
ところで、デバイス1が第3状態にあるとき、ユーザの両眼を結ぶ線U1と、バリア部3の境界線32とのなす角は90°である。このとき、x軸方向に沿った見かけのバリアピッチBp´が(Bp/√2)となり、見かけのk´が(k/√2)となる(
図4B参照)。このため、第3状態において式(1)及び(2)が成り立つためには、Eが(E/√2)となる必要がある。しかしながら、Eはユーザの両眼間の距離として想定されている値であるため、第3状態ではd=OVDである場合の式(1)及び(2)が成り立ちにくく、立体表示が困難になる可能性がある。これを回避するため、式(1)及び(2)が第3状態を基準として成り立つようにデバイス1を構成してもよい。より具体的には、第1状態及び第2状態におけるユーザの両眼間の見かけの距離E´を最大で(E×√2)と想定すれば、第3状態において両眼間の距離がEに近くなり、式(1)及び(2)が成り立つ。なお、このように見かけの距離E´を想定すると、第1状態及び第2状態において、ユーザの両眼間の距離がEであるときよりもユーザがサブピクセルを視認できない範囲が増えるが、立体表示は、問題なく行うことができる。
【0044】
以上より、第1状態及び第2状態におけるユーザの両眼間の見かけの距離E´は、E≦E´≦(E×√2)であることが好ましい。これにより、第3状態においても立体表示が破綻しにくく、デバイス1が第1状態から第3状態を経由して第2状態へと遷移する間、連続した立体表示をユーザに提供することができる。
【0045】
なお、
図4A~Cに示す例では、透過領域30がサブピクセル200Lに表示される左眼用画像の少なくとも一部をユーザの左眼に到達させ、遮光領域31がサブピクセル200Rに表示される右眼用画像を遮ることが示されているが、右眼用画像についても同様のことが言える。つまり、図中のサブピクセル200Lをサブピクセル200Rに置き換えることにより、透過領域30がサブピクセル200Rに表示される右眼用画像の少なくとも一部をユーザの右眼に到達させ、遮光領域31がサブピクセル200Lに表示される左眼用画像を遮ることが示される。
【0046】
左眼用画像及び右眼用画像を連続して表示するサブピクセル数nは、7に限られず、例えば4,5,8等に適宜変更することができるが、3の倍数でない数が好ましい。通常のサブピクセルは、RGBが順に割り当てられて横方向に配列されているため、3個ごとに同じ色を繰り返している。一方、バリアピッチBpは、適視距離OVDにおいてサブピクセル2n個分の幅に対応する。nが3の倍数であると、表示面210の同じ行内においては、バリア部3のどのストライプにおいても透過領域30がRGBのいずれかの色のサブピクセルに広い面積で重なる。これにより、集中してユーザの眼に到達する色が生じる一方で、相対的にユーザの眼に到達しにくい色が生じ、表示する画像の本来の色彩がユーザに視認されにくくなることがある。
【0047】
図6は、上述のことを説明する図である。
図6に示す例では、n=6(=3×2)、m=3、Bp=12である。格子の1行目のサブピクセルには、説明のためRGBが記されている。
図6に示すように、1行目においては、どの透過領域30においても、幅方向の中心にBRのサブピクセルが位置し、Gのサブピクセルは相対的に透過領域30の両端に位置している。このような場合、ユーザにとって赤と青がよく見えるのに対し、緑が見え難く、立体表示の色彩のバランスが悪く認識されてしまう。このような現象を抑制するため、透過領域30の幅方向中心に位置するサブピクセルの色がストライプごとに異なるようにnを設定することが好ましい。
【0048】
<4.トラッキング部>
トラッキング部4は、ユーザの左眼及び右眼の位置を検出する。本実施形態のトラッキング部4は、デバイス1に内蔵されるカメラ11を使用する。制御部5は、立体表示を行う際に、カメラ11にユーザの顔を撮影させる。トラッキング部4は、カメラ11が撮影した画像からユーザの左眼及び右眼をそれぞれ検出し、それぞれの位置を三次元空間における座標として制御部5に出力する。
【0049】
<5.制御部>
制御部5は、ユーザの眼の位置に合わせて適切な立体表示を行うため、トラッキング部4によって出力された眼の位置情報と、後述するドット領域50とを基準にしてサブピクセルに表示する左眼用画像及び右眼用画像の制御を行う。より詳細には、制御部5は、ドット領域50と、ユーザの眼との位置関係に応じてサブピクセルに表示させる画像を調整し、ユーザの眼がある程度移動しても立体表示を提供できるように画像表示を制御する。
【0050】
制御部5は、バリア部3から適視距離OVDだけ離れており、表示面210に平行な仮想平面211上に、ドット領域50を仮想的に設定する。
図5に示すように、ドット領域50は、隣接する左ドット領域50L及び右ドット領域50Rから構成される。左ドット領域50Lは左眼の位置をカバーし、右ドット領域50Rは右眼の位置をカバーするため、ドット領域50の横方向の幅Wは、ユーザの見かけの両眼間の距離E´に応じて設定されることが好ましい。従って、2E≦W≦(2E×√2)であることが好ましい。
【0051】
図8は、デバイス1の第1状態におけるドット領域50の状態を示している。
図8に示すように、左ドット領域50L及び右ドット領域50Rの形状は、透過領域30の形状に基づいており、それぞれバリア部3の境界線32に平行な境界線58によってn個のサブ領域に分割されている。これにより、1つのサブ領域の横方向の幅はW/2nとなる。上述したように、本実施形態では、n=7であるため、以下ではn=7の場合を例に説明する。
【0052】
左ドット領域50Lは、境界線58によって7つのサブ領域S1~S7に分割される。境界線58は、バリア部3のストライプと平行に傾斜する。つまり、境界線58はデバイス1の第1状態においてはx軸と45°の角度をなし、第2状態においてはx軸と135°の角度をなし、第3状態においてはx軸と90°の角度をなす。
図7に示すように、距離d=OVDであるとき、サブピクセル200Lのうち、表示面210の各行における連続した7個のサブピクセルをN1~N7とすると、サブピクセルN1~N7は、サブ領域S1~S7にそれぞれ対応する。例えばユーザの左眼の位置がサブ領域S7に対応するとき、主としてサブピクセルN7に表示される画像がバリア部3の透過領域30を介してユーザの左眼に到達する。同様に、ユーザの左眼の位置がサブ領域S1に対応するとき、主としてサブピクセルN1に表示される画像がバリア部3の透過領域30を介してユーザの左眼に到達する。このように、サブピクセルN1~N7に対し、対応する番号を有するサブ領域S1~S7が対応する。
【0053】
制御部5は、ドット領域50の横方向中心に位置するサブ領域S4を画像制御の基準とする。ユーザの左眼の位置がサブ領域S4からサブ領域S3へ移動すると、制御部5は各行のサブピクセルN4に表示させていた左眼用画像を、サブ領域S3に対応する各行のサブピクセルN3に表示させるように、画像を切り替える。つまり、制御部5はそれまで表示させていた左眼用画像及び右眼用画像を、それぞれx軸の負の方向へ1個ずれたサブピクセルに表示させる。また、ユーザの左眼の位置がサブ領域S4からサブ領域S5へ移動すると、制御部5は各行のサブピクセルN4に表示させていた左眼用画像を、サブ領域S5に対応する各行のサブピクセルN5に表示させるように、画像を切り替える。つまり、制御部5はそれまで表示させていた左眼用画像及び右眼用画像を、それぞれx軸の正の方向へ1個ずれたサブピクセルに表示させる。制御部5は、このようにユーザの眼の位置に追随して画像の表示位置を移動させ、ユーザの眼の位置がサブ領域S4から移動したとしても、ある程度までは立体表示画像が視認できるように画像を制御する。言い換えると、制御部5は、サブピクセル200L,Rで構成される第1及び第2領域の形状及び相対的な位置関係を維持しつつ、サブピクセル200L,Rとなるサブピクセルを切り替える制御を行う。
【0054】
図9は、デバイス1の第2状態におけるドット領域50の状態を示している。制御部5は、ディスプレイ2の回転に追従してドット領域50を設定する。言い換えると、制御部5は、ドット領域50をディスプレイ2に対して回転させない。このため、
図9に示すように、第2状態におけるドット領域50は
図8の状態から時計回りに90°回転した状態となっている。制御部5は、第2状態においても、第1状態と同様の要領で画像表示制御を行う。つまり、ユーザの左眼の位置がサブ領域S4からサブ領域S3へ移動すると、制御部5は各列のサブピクセルN4に表示させていた左眼用画像を、サブ領域S3に対応する各列のサブピクセルN3に表示させるように、画像を切り替える。つまり、制御部5はそれまで表示させていた左眼用画像及び右眼用画像を、それぞれy軸の正の方向へ1個ずれたサブピクセルに表示させる。また、ユーザの左眼の位置がサブ領域S4からサブ領域S5へ移動すると、制御部5は各列のサブピクセルN4に表示させていた左眼用画像を、サブ領域S5に対応する各列のサブピクセルN5に表示させるように、画像を切り替える。つまり、制御部5はそれまで表示させていた左眼用画像及び右眼用画像を、それぞれy軸の負の方向へ1個ずれたサブピクセルに表示させる。
【0055】
なお、以上は左ドット領域50Lについて説明したが、右ドット領域50Rについても同様である。すなわち、
図7~
図9におけるサブ領域S1~S7を右ドット領域50Rのサブ領域と考え、連続した7個のサブピクセルN1~N7をサブピクセル200Rのサブピクセルと考えると、右眼の位置を基準としても同様の制御が成り立つ。
【0056】
さらに、制御部5は、トラッキング部4によって検出されたユーザの両眼の位置により、ユーザの両眼を結ぶ線U1を想定する。制御部5は、ユーザの両眼を結ぶ線U1と境界線58とがなす角ψにより、ユーザが立体表示画像を視認可能であるか否かを判断し、立体表示と通常の表示(二次元画像表示)とを切り替える。つまり、デバイス1に対するユーザの姿勢が、立体表示画像を視認可能であると判断される場合には、制御部5は、立体表示を継続する。一方、デバイス1に対するユーザの姿勢が、立体表示画像を視認不可能であると判断される場合には、制御部5は、立体表示を中止する。なお、説明の便宜上、角ψは、0°以上90°以下の角度で表すものとする。
【0057】
線U1がx軸に平行な状態となる姿勢をユーザが維持していると仮定した場合、デバイス1の第1状態では、線U1とドット領域50の境界線58とは45°をなし、左眼用画像と右眼用画像とがバリア部3によって分離される(
図4A参照)。同様に、デバイス1の第2状態では、線U1とドット領域50の境界線58とは45°をなし、左眼用画像と右眼用画像とがバリア部3によって分離される(
図4C参照)。さらに、デバイス1の第3状態では、線U1とドット領域50の境界線58とは90°をなし、左眼用画像と右眼用画像とがバリア部3によって分離される(
図4B参照)。しかしながら、線U1とドット領域50の境界線58とのなす角ψが0°に近づくにしたがって、左眼用画像と右眼用画像とがバリア部3によって分離されにくくなる。例えば
図4Dに示す状態では、角ψが0°、つまり線U1と境界線58とが平行になる。この状態では、左眼用画像と右眼用画像とがバリア部3によって分離できなくなるため、ユーザが立体表示画像を視認することが不可能となる。線U1と境界線58とがなす角度であって、バリア部3に形成される透過領域30及び遮光領域31のパターンが不変のまま立体表示が可能である限界の角度を、限界角Φと称する。限界角Φの取り得る値の範囲は、デバイス1の構成によっても異なるが、0°<φ≦45°であり得る。
【0058】
制御部5は、角ψが限界角Φ未満になると、立体表示を中止する。より具体的には、制御部5は表示面210の全面に左眼用画像又は右眼用画像のいずれか一方を表示する。つまり、表示面210の全てのサブピクセルを200L又は200Rとする。これにより、表示部21の表示がバリア部3によってマスクされた画像に切り替わり、ユーザは立体表示が中止されたことを認識することができる。制御部5は、これに加えて又は代えて、バリア部3を全体的に透過領域30とし、バリア機能をOFF状態にしてもよい。表示面210の全面に左眼用画像又は右眼用画像のいずれか一方が表示された状態でバリア部3のバリア機能がOFFになると、表示部21に表示される画像としてユーザが視認する画像は、通常の二次元表示画像となる。
【0059】
制御部5は、角ψが限界角Φ未満になると、バリア部3を全体的に遮光領域31としてもよい。これにより、ユーザは表示面210に表示される画像を全く視認できないか、視認しにくくなるため、立体表示が中止されたことを認識することができる。なお、遮光領域31の透光率は、0%でなくともよく、ユーザがこれまでと比較して表示部21の輝度が低下したと認識できる程度に設定されてもよい。
【0060】
<6.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0061】
(1-1)上記実施形態では、バリア部3はデバイス1に内蔵されていたが、バリア部とデバイスとは別体として構成されてもよい。つまり、単独のバリア3Aを、画像を表示するデバイス1Aのディスプレイ部分に外付けすると、立体表示画像が視認可能となる構成としてもよい。デバイス1Aのディスプレイ部分には、縦方向と横方向とを有するサブピクセルが格子状に配列され、横方向に連続するサブピクセルが1つのピクセルを構成しているものとする。また、デバイス1Aは、上記実施形態のデバイス1のように左眼用画像及び右眼用画像をサブピクセルに表示可能であるものとする。
図10にデバイス1A及びバリア3Aの一例を示す。
図10に示す状態では、デバイス1Aのサブピクセルの横方向がx軸に沿っており、縦方向がy軸に沿っている。
【0062】
(1-2)
バリア3Aは、樹脂製フィルム又はガラスシートからシート状に構成されており、
図10に示すように、光を透過させる透過領域30A及び光を遮る遮光領域31Aが予め形成されている。透過領域30A及び遮光領域31Aの境界線32Aが、デバイス1Aの有するピクセルのいずれかの対角線と平行となるようにバリア3Aをデバイス1Aのディスプレイ部分に装着することで、立体表示を可能とすることができる。例えば、デバイス1Aのピクセルが正方形状のピクセルである場合、
図10の状態において、境界線32Aがx軸と45°又は135°をなすようにバリア3Aを装着することができる。なお、透過領域30A及び遮光領域31Aは、どのように形成されてもよい。例えば、透過性を有するシート状の基材に、遮光性を有する部材をストライプ状に重ねて透過領域30A及び遮光領域31Aを形成してもよい。また、例えば遮光性を有するシート状の基材に開口を形成し、透過領域30A及び遮光領域31Aを形成してもよい。
【0063】
(2)上記実施形態では、バリア部3は、タッチパネル20と表示部21との間に配置されていたが、バリア部3は、表示部21とバックライト22との間に配置されてもよい。
【0064】
(3)上記実施形態では、バリア部3は、制御部5によって制御可能な液晶シャッタで構成されたが、バリア部3は液晶シャッタ以外のもので構成されてもよい。例えば、バリア部3は、上述したバリア3Aと同様に、透過領域30及び遮光領域31が形成されたシート状の樹脂製フィルム又はガラスシートから構成されてもよい。
【0065】
(4)上記実施形態では、トラッキング部4はデバイス1のカメラ11を使用してユーザの眼の位置を検出したが、トラッキング部4は他の方法でユーザの眼の位置を検出してもよい。例えば、トラッキング部4はユーザの顔に赤外線を照射し、反射した赤外線を赤外線カメラで撮影することによりユーザの眼の位置を検出してもよい。また、トラッキング部4は超音波センサや光センサ等によりユーザの頭部の位置を検出し、頭部の位置に基づいてユーザの眼の位置を導出してもよい。
【0066】
(5)タッチパネル20は、静電容量式タッチパネルであってもよいし、圧力式タッチパネルであってもよい。また、デバイス1においてタッチパネル20を省略してもよい。
【0067】
(6)表示部21は、液晶パネルでなくてもよく、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical System)シャッタであってもよいし、有機EL(Electro Luminescence)パネル、無機ELパネル、プラズマパネル等であってもよい。表示部21が自発光型のパネルである場合、バックライト22の構成は省略されてもよい。
【0068】
(7)制御部5は、CPUに加えて又は代えて、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向けIC(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、及び専用ICチップ等を含んでもよい。
【0069】
(8-1)上記実施形態では、線U1と境界線58とのなす角ψが限界角Φ未満になると立体表示が中止されたが、角ψに関わらず立体表示を継続して提供すべく、制御部5が表示部21及びバリア部3を制御するように構成されてもよい。例えば、制御部5は、角ψが所定の角度以上であるとき、バリア部3にストライプの傾斜角がθ1である第1パターンを形成し、角ψが所定の角度以下であるとき、バリア部3にストライプの傾斜角がθ2である第2パターンを形成するように構成されてもよい。ここで、θ1はピクセルの第1対角線Q1が横方向に対してなす角であり、θ2はピクセルの第2対角線Q2が横方向に対してなす角とすることができる。さらに、制御部5は、バリア部3に形成されるパターンに応じて、左眼用画像が表示される第1領域及び右眼用画像が表示される第2領域の形状も切り替えるように構成されてもよい。以下、
図11に示す例を用いて説明する。以下の例では、ユーザの眼の位置は一定であり、ユーザの両眼を結ぶ線U1がx軸と平行に維持されるものとする。
【0070】
(8-2)
図11Aは、デバイス1が第1状態から時計回りに回転し、角ψが所定の角度となった状態を表す。
図11Aの状態において、バリア部3には第1パターンのストライプが形成されている。第1パターンは、ストライプの傾斜角θ1が45°であり、その他の構成も上記実施形態と同様であるパターンである。さらに、このとき表示面210に配置される第1領域の形状、第2領域の形状、及びこれらの領域の位置関係も上記実施形態と同様である。
【0071】
(8-3)変形例に係る制御部5は、デバイス1を
図11Aの状態から
図11Bの状態へと切り替える。
図11Bの状態において、バリア部3には第2パターンのストライプが形成される。第2パターンは、ストライプの傾斜角θ2が135°となるが、バリアピッチBp等、その他の構成は上記実施形態と同様であるパターンである。バリア部3のパターンをこのように切り替えると、
図11Aでは線U1に対して平行に近づきつつあったドット領域の境界線58が、バリア部3の境界線32に連動して回転し、
図11Bでは線U1に対して垂直に近くなるため、左眼用画像及び右眼用画像が分離され、ユーザにとって立体表示画像がより見えやすくなる。制御部5は、第2パターンの傾斜角θ2に合わせて左眼用画像を表示するサブピクセル200L及び右眼用画像を表示するサブピクセル200Rも切り替える。これにより、
図11Bではサブピクセル200Lで構成される第1領域及びサブピクセル200Rで構成される第2領域の形状が、
図11Aに示す表示面210を、x軸を基準として反転させて得られる形状となっている。
【0072】
(8-4)デバイス1が、
図11Bの状態からさらに時計回りに回転し、再度角ψが所定の角度となると、制御部5は再度バリア部3を第1パターンに切り替え、これに合わせて再度表示面210の第1領域及び第2領域の形状も切り替えて良い。このような構成によれば、バリア部3に形成されるストライプのパターンと、表示面210の第1領域及び第2領域の形状とを切り替える簡易な制御で、ユーザに対するデバイス1の回転角度によらず連続した立体表示を提供することができる。なお、バリア部3に形成されるパターンは2つに限られず、3つ以上あってもよい。
【0073】
(9)上記実施形態では、ピクセルPは正方形状であった。しかし、ピクセルP及びサブピクセルの構成はこれに限られず、ピクセルPは短辺と長辺とを有する矩形状であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 3次元表示デバイス
2 ディスプレイ
3 バリア部
4 トラッキング部
5 制御部
6 記憶部
20 タッチパネル
21 表示部
22 バックライト
30 透過領域
31 遮光領域
50 ドット領域
200L サブピクセル
200R サブピクセル