(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】レーザー加工装置及び集光レンズの状態確認方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20240213BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/00 Q
(21)【出願番号】P 2020049677
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】寺西 俊輔
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-093431(JP,A)
【文献】特開2018-132389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、
レーザービームを生成するレーザー発振器と、
該レーザー発振器が生成した該レーザービームを該チャックテーブル側に集光する集光レンズと、
該集光レンズの汚れを検出する検出ユニット
であって、該集光レンズを透過した該レーザービームの形状を検出する検出器と、該検出器で検出された該レーザービームの形状に基づいて、該集光レンズが汚れているか否かを判定する判定部と、を含む
該検出ユニットと、
該チャックテーブルの該保持面に対して垂直な方向に該集光レンズを移動させる移動機構と、
該レーザー発振器で該レーザービームを生成しながら該移動機構で該集光レンズを移動させて該検出器で検出される該レーザービームの形状及び該レーザービームの光強度を、該集光レンズの位置とともに記憶する検出結果記憶部と、を含み、
該判定部は、該検出器で検出された該レーザービームの光強度が最も大きい該集光レンズの位置での該レーザービームの形状に基づいて、該集光レンズが汚れているか否かを判定するレーザー加工装置。
【請求項2】
該検出器は、該集光レンズに対して該チャックテーブルとは反対側に配置され、該集光レンズを透過し該チャックテーブル側で反射された後に該集光レンズを再び透過した該レーザービームの形状を検出する請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
該集光レンズに対して該チャックテーブルとは反対側に配置され、該レーザー発振器が生成した該レーザービームの一部を反射して該集光レンズに導く反射面を有する光学素子を更に含み、
該検出器は、該光学素子の該集光レンズとは反対側に配置され、該集光レンズを再び透過した上で該反射面を透過した該レーザービームの形状を検出する請求項2に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
該検出器は、該集光レンズに対して該チャックテーブルと同じ側に配置されている請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項5】
該集光レンズの汚れが許容される範囲にある状態で該検出器により検出され得る該レーザービームの形状を記憶する基準形状記憶部を更に含み、
該判定部は、該基準形状記憶部に記憶された該レーザービームの形状と、該検出器により検出される該レーザービームの形状と、を比較して、該集光レンズが汚れているか否かを判定する請求項1から請求項4のいずれかに記載のレーザー加工装置。
【請求項6】
該検出器の受光面の中央の領域がマスクで覆われている請求項1乃至5のいずれかに記載のレーザー加工装置。
【請求項7】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、レーザービームを生成するレーザー発振器と、該レーザー発振器が生成した該レーザービームを該チャックテーブル側に集光する集光レンズと、
該チャックテーブルの該保持面に対して垂直な方向に該集光レンズを移動させる移動機構と、を含むレーザー加工装置の該集光レンズが汚れているか否かを確認する集光レンズの状態確認方法であって、
該レーザー発振器で該レーザービームを生成するレーザービーム生成ステップと、
該集光レンズを透過した該レーザービームの形状を検出する検出ステップと、
該検出ステップで検出された該レーザービームの形状に基づいて、該集光レンズが汚れているか否かを判定する判定ステップと、を含
み、
該検出ステップでは、該レーザー発振器で該レーザービームを生成しながら該移動機構で該集光レンズを移動させて該レーザービームの形状及び該レーザービームの光強度を該集光レンズの位置とともに検出し、
該判定ステップでは、該検出ステップで検出された該レーザービームの光強度が最も大きい該集光レンズの位置での該レーザービームの形状に基づいて、該集光レンズが汚れているか否かを判定する集光レンズの状態確認方法。
【請求項8】
該検出ステップでは、該集光レンズを透過し該チャックテーブル側で反射された後に該集光レンズを再び透過した該レーザービームの形状を、該集光レンズに対して該チャックテーブルとは反対側で検出する請求項
7に記載の集光レンズの状態確認方法。
【請求項9】
該レーザー加工装置は、該集光レンズに対して該チャックテーブルとは反対側に配置され、該レーザー発振器が生成した該レーザービームの一部を反射して該集光レンズに導く反射面を有する光学素子を更に含み、
該検出ステップでは、該集光レンズを再び透過した上で該反射面を透過した該レーザービームの形状を、該光学素子の該集光レンズとは反対側で検出する請求項
8に記載の集光レンズの状態確認方法。
【請求項10】
該検出ステップでは、該集光レンズを透過した該レーザービームの形状を、該集光レンズに対して該チャックテーブルと同じ側で検出する請求項7に記載の集光レンズの状態確認方法。
【請求項11】
該レーザービーム生成ステップの前に、該集光レンズの汚れが許容される範囲にある状態で検出され得る該レーザービームの形状を取得する基準形状取得ステップを更に含み、
該判定ステップでは、該基準形状取得ステップで取得された該レーザービームの形状と、該検出ステップで検出された該レーザービームの形状と、を比較して、該集光レンズが汚れているか否かを判定する請求項
7から請求項
10のいずれかに記載の集光レンズの状態確認方法。
【請求項12】
該検出ステップでは、該レーザービームの形状のうち中央の領域以外の領域を検出する請求項7乃至11のいずれかに記載の集光レンズの状態確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を加工する際に用いられるレーザー加工装置、及びレーザー加工装置が備える集光レンズの状態を確認する際に用いられる集光レンズの状態確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハに代表される板状の被加工物を複数のチップへと分割する際には、例えば、レーザー発振器と集光レンズとを含むレーザー加工装置が用いられる。レーザー発振器で生成したレーザービームを、チップの境界となる被加工物のストリート(加工予定ライン)に対して集光レンズを通じて照射することで、この被加工物をストリートで加工して複数のチップへと分割できるようになる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーザービームを照射して被加工物をストリートで加工する際には、被加工物の内部の狭い領域、又は被加工物の近傍の狭い領域にレーザービームを照射できるように、焦点距離の短い集光レンズを被加工物から近い位置に配置することが多い。
【0005】
しかしながら、被加工物から近い位置に集光レンズを配置すると、レーザービームによって発生する被加工物の溶融した小片や蒸気等が集光レンズに付着しやすくなる。この小片や蒸気で集光レンズが汚れると、レーザービームの一部が遮られて被加工物の加工にかかる精度も低下してしまう。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、集光レンズが汚れているか否かを簡単に確認できるレーザー加工装置及び集光レンズの状態確認方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、レーザービームを生成するレーザー発振器と、該レーザー発振器が生成した該レーザービームを該チャックテーブル側に集光する集光レンズと、該集光レンズの汚れを検出する検出ユニットであって、該集光レンズを透過した該レーザービームの形状を検出する検出器と、該検出器で検出された該レーザービームの形状に基づいて、該集光レンズが汚れているか否かを判定する判定部と、を含む該検出ユニットと、該チャックテーブルの該保持面に対して垂直な方向に該集光レンズを移動させる移動機構と、該レーザー発振器で該レーザービームを生成しながら該移動機構で該集光レンズを移動させて該検出器で検出される該レーザービームの形状及び該レーザービームの光強度を、該集光レンズの位置とともに記憶する検出結果記憶部と、を含み、該判定部は、該検出器で検出された該レーザービームの光強度が最も大きい該集光レンズの位置での該レーザービームの形状に基づいて、該集光レンズが汚れているか否かを判定するレーザー加工装置が提供される。
【0008】
本発明の一態様において、該検出器は、該集光レンズに対して該チャックテーブルとは反対側に配置され、該集光レンズを透過し該チャックテーブル側で反射された後に該集光レンズを再び透過した該レーザービームの形状を検出することがある。
【0009】
また、本発明の一態様において、該集光レンズに対して該チャックテーブルとは反対側に配置され、該レーザー発振器が生成した該レーザービームの一部を反射して該集光レンズに導く反射面を有する光学素子を更に含み、該検出器は、該光学素子の該集光レンズとは反対側に配置され、該集光レンズを再び透過した上で該反射面を透過した該レーザービームの形状を検出することがある。
【0010】
また、本発明の一態様において、該検出器は、該集光レンズに対して該チャックテーブルと同じ側に配置されていることがある。また、本発明の一態様において、該検出器の受光面の中央の領域がマスクで覆われていることがある。
【0011】
また、本発明の一態様において、該集光レンズの汚れが許容される範囲にある状態で該検出器により検出され得る該レーザービームの形状を記憶する基準形状記憶部を更に含み、該判定部は、該基準形状記憶部に記憶された該レーザービームの形状と、該検出器により検出される該レーザービームの形状と、を比較して、該集光レンズが汚れているか否かを判定することがある。
【0012】
本発明の別の一態様によれば、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、レーザービームを生成するレーザー発振器と、該レーザー発振器が生成した該レーザービームを該チャックテーブル側に集光する集光レンズと、該チャックテーブルの該保持面に対して垂直な方向に該集光レンズを移動させる移動機構と、を含むレーザー加工装置の該集光レンズが汚れているか否かを確認する集光レンズの状態確認方法であって、該レーザー発振器で該レーザービームを生成するレーザービーム生成ステップと、該集光レンズを透過した該レーザービームの形状を検出する検出ステップと、該検出ステップで検出された該レーザービームの形状に基づいて、該集光レンズが汚れているか否かを判定する判定ステップと、を含み、該検出ステップでは、該レーザー発振器で該レーザービームを生成しながら該移動機構で該集光レンズを移動させて該レーザービームの形状及び該レーザービームの光強度を該集光レンズの位置とともに検出し、該判定ステップでは、該検出ステップで検出された該レーザービームの光強度が最も大きい該集光レンズの位置での該レーザービームの形状に基づいて、該集光レンズが汚れているか否かを判定する集光レンズの状態確認方法が提供される。
【0013】
本発明の別の一態様において、該検出ステップでは、該集光レンズを透過し該チャックテーブル側で反射された後に該集光レンズを再び透過した該レーザービームの形状を、該集光レンズに対して該チャックテーブルとは反対側で検出することがある。
【0014】
また、本発明の別の一態様において、該レーザー加工装置は、該集光レンズに対して該チャックテーブルとは反対側に配置され、該レーザー発振器が生成した該レーザービームの一部を反射して該集光レンズに導く反射面を有する光学素子を更に含み、該検出ステップでは、該集光レンズを再び透過した上で該反射面を透過した該レーザービームの形状を、該光学素子の該集光レンズとは反対側で検出することがある。
【0015】
また、本発明の別の一態様において、該検出ステップでは、該集光レンズを透過した該レーザービームの形状を、該集光レンズに対して該チャックテーブルと同じ側で検出することがある。また、本発明の別の一態様において、該検出ステップでは、該レーザービームの形状のうち中央の領域以外の領域を検出することがある。
【0016】
また、本発明の別の一態様において、該レーザービーム生成ステップの前に、該集光レンズの汚れが許容される範囲にある状態で検出され得る該レーザービームの形状を取得する基準形状取得ステップを更に含み、該判定ステップでは、該基準形状取得ステップで取得された該レーザービームの形状と、該検出ステップで検出された該レーザービームの形状と、を比較して、該集光レンズが汚れているか否かを判定することがある。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様にかかるレーザー加工装置は、集光レンズを透過したレーザービームの形状を検出する検出器と、検出器で検出されたレーザービームの形状に基づいて、集光レンズが汚れているか否かを判定する判定部と、を含む検出ユニットを含むので、集光レンズが汚れているか否かを簡単に確認できる。
【0018】
また、本発明の別の一態様にかかる集光レンズの状態確認方法は、集光レンズを透過したレーザービームの形状を検出する検出ステップと、検出ステップで検出されたレーザービームの形状に基づいて、集光レンズが汚れているか否かを判定する判定ステップと、を含むので、集光レンズが汚れているか否かを簡単に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、レーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、レーザー加工装置の内部でレーザービームが進行する様子を示す模式図である。
【
図3】
図3は、制御ユニットの機能的な構造を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、集光レンズの状態確認方法の概要を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、基準プロファイルの例を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、検出プロファイルの例を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、検出プロファイルの別の例を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、変形例にかかるレーザー加工装置の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態にかかるレーザー加工装置2の構成例を示す斜視図である。なお、
図1では、レーザー加工装置2の一部の構成要素を機能ブロックで示している。また、以下の説明で用いられるX軸方向(加工送り方向)、Y軸方向(割り出し送り方向)、及びZ軸方向(鉛直方向)は、互いに垂直である。
【0021】
図1に示すように、レーザー加工装置2は、各構成要素を支持する基台4を備えている。基台4の上面には、水平移動機構(加工送り機構、割り出し送り機構)6が配置されている。水平移動機構6は、基台4の上面に固定されY軸方向に対して概ね平行な一対のY軸ガイドレール8を備えている。Y軸ガイドレール8には、Y軸移動プレート10がY軸方向に沿ってスライドできる態様で取り付けられている。
【0022】
Y軸移動プレート10の下面側には、ボールネジを構成するナット(不図示)が設けられている。このナットには、Y軸ガイドレール8に対して概ね平行なネジ軸12が回転できる態様でねじ込まれている。ネジ軸12の一端部には、Y軸パルスモーター14が連結されている。Y軸パルスモーター14でネジ軸12を回転させれば、Y軸移動プレート10は、Y軸ガイドレール8に沿ってY軸方向に移動する。
【0023】
Y軸移動プレート10の上面には、X軸方向に対して概ね平行な一対のX軸ガイドレール16が設けられている。X軸ガイドレール16には、X軸移動プレート18がX軸方向に沿ってスライドできる態様で取り付けられている。X軸移動プレート18の下面側には、ボールネジを構成するナット(不図示)が設けられている。
【0024】
このナットには、X軸ガイドレール16に対して概ね平行なネジ軸20が回転できる態様でねじ込まれている。ネジ軸20の一端部には、X軸パルスモーター22が連結されている。X軸パルスモーター22でネジ軸20を回転させれば、X軸移動プレート18は、X軸ガイドレール16に沿ってX軸方向に移動する。
【0025】
X軸移動プレート18の上面側には、円柱状のテーブル基台24が配置されている。また、テーブル基台24の上部には、被加工物11の保持に使用されるチャックテーブル(保持テーブル)26が配置されている。テーブル基台24の下部には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0026】
この回転駆動源から発生する力によって、チャックテーブル26は、Z軸方向に対して概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、テーブル基台24及びチャックテーブル26は、上述した水平移動機構6によって、X軸方向及びY軸方向に移動する(加工送り、割り出し送り)。
【0027】
被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体でなる円盤状のウェーハである。この被加工物11の表面(
図1では上面)側は、互いに交差する複数のストリート(加工予定ライン)によって複数の小領域に区画されており、各小領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイスが形成されている。
【0028】
被加工物11の裏面(
図1では下面)側には、例えば、被加工物11よりも径の大きいテープ(ダイシングテープ)13が貼付される。また、テープ13の外周部分は、環状のフレーム15に固定される。このように、被加工物11は、テープ13を介してフレーム15に支持された状態で加工されることになる。
【0029】
なお、本実施形態では、シリコン等の半導体でなる円盤状のウェーハを被加工物11としているが、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる基板等を被加工物11として用いることもできる。
【0030】
同様に、被加工物11に形成されるデバイスの種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。被加工物11には、デバイスが形成されていなくても良い。また、被加工物11は、テープ13が貼付されていない状態や、フレーム15に支持されていない状態で加工されることがある。
【0031】
チャックテーブル26の上面の一部は、例えば、多孔質材で形成されており、テープ13(テープ13が貼付されない場合には被加工物11)と接触して被加工物11を保持する保持面26aとして機能する。この保持面26aは、X軸方向及びY軸方向に対して概ね平行である。
【0032】
また、保持面26aは、チャックテーブル26の内部に設けられた流路(不図示)等を介して真空ポンプ等の吸引源(不図示)に接続されている。チャックテーブル26の周囲には、被加工物11を支持する環状のフレーム15を固定できる4個のクランプ28が設けられている。
【0033】
水平移動機構6のY軸方向の一方側の領域には、X軸方向に対して概ね垂直な側面を持つ支持構造30が設けられている。この支持構造30の側面には、鉛直移動機構(高さ調整機構)32が配置されている。鉛直移動機構32は、支持構造30の側面に固定されZ軸方向に対して概ね平行な一対のZ軸ガイドレール34を備えている。Z軸ガイドレール34には、Z軸移動プレート36がZ軸方向に沿ってスライドできる態様で取り付けられている。
【0034】
Z軸移動プレート36の裏面側(Z軸ガイドレール34側)には、ボールネジを構成するナット(不図示)が設けられている。このナットには、Z軸ガイドレール34に対して概ね平行なネジ軸(不図示)が回転できる態様でねじ込まれている。ネジ軸の一端部には、Z軸パルスモーター38が連結されている。Z軸パルスモーター38でネジ軸を回転させれば、Z軸移動プレート36は、Z軸ガイドレール34に沿ってZ軸方向に移動する。
【0035】
Z軸移動プレート36の表面側には、支持具40が固定されており、この支持具40には、レーザービーム照射ユニット42の一部が支持されている。
図2は、レーザー加工装置2の内部でレーザービーム21が進行する様子を示す模式図である。
図1及び
図2に示すように、レーザービーム照射ユニット42は、例えば、基台4に固定されたレーザー発振器44と、支持具40に支持されY軸方向に長い筒状のハウジング46と、ハウジング46の端部(Y軸方向の他方側の端部)に設けられた照射ヘッド48と、を含む。
【0036】
レーザー発振器44は、例えば、レーザー発振に適したNd:YAG等のレーザー媒質を備えており、被加工物11の加工に使用されるレーザービーム21を生成してハウジング46側に出射する。本実施形態では、このレーザー発振器44によって、被加工物11を透過する波長のレーザービーム21が生成される。
【0037】
ただし、レーザー発振器44は、被加工物11に吸収される波長のレーザービームを生成できるように構成されても良い。なお、被加工物11を透過する波長のレーザービームは、被加工物11を多光子吸収等によって改質する加工に適しており、被加工物11に吸収される波長のレーザービームは、被加工物11のアブレーション加工等に適している。
【0038】
ハウジング46は、レーザービーム照射ユニット42を構成する光学系の一部を収容しており、レーザー発振器44から出射されたレーザービーム21を照射ヘッド48へと導く。本実施形態では、
図2に示すように、ミラー46aとミラー46bとがハウジング46に収容されている。
【0039】
照射ヘッド48には、レーザービーム照射ユニット42を構成する光学系の別の一部が収容されている。例えば、この照射ヘッド48は、ハウジング46から導かれるレーザービーム21の進路をビームスプリッター(数%の光を透過する一般的なミラーや、ハーフミラーを含む)等の光学素子48aで下向きに変え、下方に配置された集光レンズ48bでチャックテーブル26側の所定の高さの位置に集光する。
【0040】
すなわち、光学素子48aは、集光レンズ48bに対してチャックテーブル26とは反対側に配置されており、レーザー発振器44が生成したレーザービーム21の一部をその反射面で反射して集光レンズ48bに導く。一方で、この光学素子48aの反射面は、レーザービーム21の他の一部を透過できるように構成されている。集光レンズ48bは、代表的には、凸レンズである。
【0041】
光学素子48aの上方(光学素子48aに対して集光レンズ48bとは反対側、集光レンズ48bに対してチャックテーブル26とは反対側)には、レーザービーム21のビームプロファイルを検出できる検出器50が配置されている。なお、このレーザービーム21のビームプロファイルには、進行方向に対して垂直な平面に照射した場合のレーザービーム21の輪郭の形状や、進行方向に対して垂直な平面に照射した場合のレーザービーム21の2次元的な強度分布の情報が含まれる。
【0042】
検出器50の受光面は、下方(光学素子48a側)から伝播するレーザービーム21のビームプロファイル(輪郭の形状や2次元的な強度分布)を検出できるように、下方(光学素子48a側)を向いている。よって、例えば、レーザービーム21を反射できる平坦な反射面を持つ反射部材23をチャックテーブル26の保持面26aに載せることで、この反射部材23で反射して集光レンズ48b及び光学素子48aを透過するレーザービーム21のビームプロファイルを検出器50で検出できる。
【0043】
検出器50としては、例えば、レーザービーム21の波長に感度を持つCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の2次元光センサを含むビームプロファイラが用いられる。また、検出器50として、分割型シリコンフォトダイオード等の受光素子が用いられても良い。
【0044】
図1に示すように、照射ヘッド48のX軸方向の一方側の領域には、ハウジング46に固定されたカメラ(撮像ユニット)52が配置されている。カメラ52は、例えば、可視光に感度を持つCMOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等の2次元光センサを含んでおり、チャックテーブル26によって保持される被加工物11の上面等を撮像する際に使用される。
【0045】
レーザービーム照射ユニット42のハウジング46及び照射ヘッド48は、上述したカメラ52とともに、鉛直移動機構32によってZ軸方向に移動する。つまり、鉛直移動機構32は、照射ヘッド48に設けられる光学素子48aや集光レンズ48b等の構成要素を、チャックテーブル26の保持面26aに対して概ね垂直な方向に移動させる。本実施形態の検出器50は、照射ヘッド48に固定されており、照射ヘッド48とともにZ軸方向に移動する。
【0046】
なお、本実施形態では、レーザー発振器44が基台4に固定されている場合を例に挙げたが、レーザー発振器44は、ハウジング46等とともに鉛直移動機構32によってZ軸方向に移動できるように構成されることもある。また、集光レンズ48bのみを独立してZ軸方向に移動させることができるように、照射ヘッド48にアクチュエーター等が設けられても良い。
【0047】
基台4の上部は、各構成要素を収容できるカバー(不図示)によって覆われている。このカバーの側面には、ユーザーインターフェースとなるタッチスクリーン(入出力装置)54が配置されている。例えば、被加工物11を加工する際に適用される種々の条件は、このタッチスクリーン54に入力される。なお、表示装置(出力装置)と入力装置とが一体になったタッチスクリーン54の代わりに、液晶ディスプレイ等の表示装置(出力装置)と、キーボードやマウス等の入力装置と、をそれぞれ設けても良い。
【0048】
水平移動機構6、鉛直移動機構32、レーザービーム照射ユニット42、検出器50、カメラ52、タッチスクリーン54等の構成要素は、それぞれ、制御ユニット56に接続されている。制御ユニット56は、被加工物11の加工に必要な一連の工程に合わせて、上述した各構成要素を制御する。
【0049】
制御ユニット56は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成される。補助記憶装置に記憶されるソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御ユニット56の機能を実現できる。ただし、制御ユニット56は、ハードウェアのみによって実現されても良い。
【0050】
図3は、制御ユニット56の機能的な構造を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、制御ユニット56は、レーザー発振器44によるレーザー発振を制御するレーザー発振制御部56aと、水平移動機構6及び鉛直移動機構32の動作を制御する移動制御部56bと、を含む。
【0051】
集光レンズ48bの状態を確認する際には、例えば、レーザー発振制御部56aの指示に基づき、レーザー発振器44がレーザービーム21の生成を開始する。この状態で、移動制御部56bが鉛直移動機構32の動作を制御し、Z軸移動プレート36をZ軸方向に移動させる。つまり、レーザー発振器44でレーザービーム21を生成しながら、鉛直移動機構32で集光レンズ48bをチャックテーブル26の保持面26aに対して垂直な方向に移動させる。
【0052】
Z軸移動プレート36のZ軸方向の位置に関する情報は、集光レンズ48bのZ軸方向の位置(以下、「レンズ位置」)に関する情報として、移動制御部56bから検出結果記憶部56cへと送られる。検出結果記憶部56cは、移動制御部56bから送られたレンズ位置を、検出器50が検出したレーザービーム21のビームプロファイル(以下、「検出プロファイル」)とともに記憶する。
【0053】
具体的には、例えば、検出結果記憶部56cは、同じタイミングで取得される検出プロファイルに関する情報とレンズ位置に関する情報とを、互いに紐づけた状態で記憶する。つまり、検出結果記憶部56cには、集光レンズ48bのZ軸方向の位置と、レーザービーム21のビームプロファイルと、の関係が記憶される。
【0054】
検出結果記憶部56cに記憶された検出プロファイルは、必要に応じて判定部56dで使用される。判定部56dは、例えば、検出結果記憶部56cに記憶された検出プロファイルを、基準となるレーザービーム21のビームプロファイル(以下、「基準プロファイル」)と比較して、集光レンズ48bが汚れているか否かを判定する。なお、この基準プロファイルは、基準プロファイル記憶部(基準形状記憶部)56eに予め記憶される。
【0055】
判定部56dによる判定の結果は、例えば、タッチスクリーン54に表示される。オペレーターは、タッチスクリーン54に表示される判定の結果を確認することで、判定の結果に対応する各種の処理を行うことができるようになる。このように、制御ユニット56(判定部56d)は、検出器50とともに、集光レンズ48bの汚れを検出するための検出ユニットを構成している。制御ユニット56のより詳細な機能及び動作については後述する。
【0056】
次に、上述したレーザー加工装置2を用いて行われる集光レンズの状態確認方法について説明する。
図4は、集光レンズの状態確認方法の概要を示すフローチャートである。本実施形態にかかる集光レンズの状態確認方法では、まず、集光レンズ48bの汚れが許容される範囲にある状態で、検出器50によって検出され得るレーザービーム21のプロファイル(基準プロファイル)を取得する(基準プロファイル取得ステップ(基準形状取得ステップ)ST1)。
【0057】
具体的には、集光レンズ48bが汚れていない状態で、例えば、オペレーターがチャックテーブル26の保持面26aに反射部材23を載せ、その後、レーザー発振制御部56aがレーザー発振器44によるレーザービーム21の生成を開始する。レーザー発振器44から出射されるレーザービーム21の一部は、
図2に示すように、光学素子48aの反射面で反射され、集光レンズ48bへと導かれる。なお、反射部材23としては、例えば、平坦な反射面を持つウェーハやミラー等が使用される。
【0058】
集光レンズ48bを透過したレーザービーム21は、反射部材23(すなわち、集光レンズ48bよりもチャックテーブル26側)で反射された後に、再び集光レンズ48bを透過する。集光レンズ48bを再び透過したレーザービーム21の一部は、光学素子48aの反射面を透過し、そのビームプロファイルが検出器50で検出される。
【0059】
このようにして検出されたレーザービーム21のビームプロファイルは、基準プロファイルとして基準プロファイル記憶部56eに記憶される。
図5は、基準プロファイル記憶部56eに記憶される基準プロファイルの例を模式的に示す図である。集光レンズ48bが汚れていない場合には、
図5に示すように、集光レンズ48bを透過した後のレーザービーム21の輪郭の形状が円になり、光強度の分布はガウス分布になる。
【0060】
なお、本実施形態では、検出器50で実際に検出されるレーザービーム21のビームプロファイルを、判定の基準となる基準プロファイルとして基準プロファイル記憶部56eに記憶させているが、計算等によって得られる理想的なビームプロファイルを、基準プロファイルとして基準プロファイル記憶部56eに記憶させることもできる。
【0061】
基準プロファイルを取得した後には、任意のタイミングで集光レンズ48bの状態を確認することができる。集光レンズ48bの状態を確認する際には、例えば、オペレーターがチャックテーブル26の保持面26aに反射部材23を載せ、その後、レーザー発振制御部56aがレーザー発振器44によるレーザービーム21の生成を開始する(レーザービーム生成ステップST2)。
【0062】
そして、検出器50によってレーザービーム21のプロファイルを検出する(検出ステップST3)。レーザー発振器44から出射されるレーザービーム21の一部は、
図2に示すように、光学素子48aの反射面で反射され、集光レンズ48bへと導かれる。集光レンズ48bを透過したレーザービーム21は、反射部材23(すなわち、集光レンズ48bよりもチャックテーブル26側)で反射された後に、再び集光レンズ48bを透過する。
【0063】
集光レンズ48bを再び透過したレーザービーム21の一部は、光学素子48aの反射面を透過し、そのビームプロファイルが検出器50で検出される。このようにして検出されたレーザービーム21のビームプロファイルは、検出プロファイルとして検出結果記憶部56cに記憶される。
【0064】
図6は、検出結果記憶部56cに記憶される検出プロファイルの例を模式的に示す図であり、
図7は、検出結果記憶部56cに記憶される検出プロファイルの別の例を模式的に示す図である。
図6に示すように、集光レンズ48bが汚れている場合には、集光レンズ48bを透過した後のレーザービーム21の輪郭の形状は、変形した円になる。そして、レーザービーム21の光強度の分布も、ガウス分布から外れる。
【0065】
図7に示すように、集光レンズ48bの汚れがひどい場合には(つまり、汚れの程度が大きい場合には)、集光レンズ48bを透過した後のレーザービーム21の輪郭の形状は、円から大幅に変形した形状になる。更に、レーザービーム21の光強度の分布も、ガウス分布から大きく外れる。
【0066】
なお、このビームプロファイルの検出は、鉛直移動機構32によってZ軸移動プレート36を移動させながら行われることが望ましい。具体的には、Z軸移動プレート36のZ軸方向の位置に関する情報を取得しながら、各位置でビームプロファイルを検出する。つまり、レーザー発振器44でレーザービーム21を生成しながら鉛直移動機構32で集光レンズ48bを移動させ、レーザービーム21のビームプロファイルを集光レンズ48bの位置とともに検出する。
【0067】
同じタイミングで取得された検出プロファイルに関する情報とレンズ位置に関する情報とは、互いに紐づけられた状態で検出結果記憶部56cに記憶される。このように、集光レンズ48bのZ軸方向の位置と、レーザービーム21のビームプロファイルと、の関係を取得することで、集光レンズ48bの状態の判定に適した検出プロファイルを用いて判定の精度を高めることができるようになる。
【0068】
検出プロファイルの取得が完了すると、判定部56dは、取得された検出プロファイルに基づいて集光レンズ48bが汚れているか否かを判定する(判定ステップST4)。具体的には、判定部56dは、検出プロファイルが許容される範囲内にある場合に、集光レンズ48bが汚れていないと判定し、検出プロファイルが許容される範囲を超えている場合に、集光レンズ48bが汚れていると判定する。
【0069】
判定の方法に特段の制限はないが、基準プロファイルと検出プロファイルとの間の相関の強さを求めて利用することで、精度の良い判定が可能になる。具体的には、レーザービーム21の輪郭の形状を比較する方法や、レーザービーム21の2次元的な光強度の分布を比較する方法、光学系の光軸から離れた位置で検出される散乱光の強度を確認する方法等を採用できる。
【0070】
輪郭の形状を比較する方法では、例えば、基準プロファイル中のレーザービーム21の輪郭と検出プロファイル中のレーザービーム21の輪郭とをエッジ検出等の画像処理によって抽出し、これらの形状の相関の強さを求める。相関が強い場合、判定部56dは、集光レンズ48bが汚れていないと判定し、相関が弱い場合、判定部56dは、集光レンズ48bが汚れていると判定する。基準プロファイルと検出プロファイルとで光強度が等しい位置を抽出し、その位置の相関の強さに基づいて判定を行っても良い。
【0071】
2次元的な光強度の分布を比較する方法では、例えば、検出器50の受光面を、この受光面の中心を通る境界に沿って面積が等しい複数(例えば、4つ)の領域に分割し、各領域で光強度の総和を検出する。各領域の光強度に基づきレーザービーム21の対称性を確認することで、集光レンズ48bが汚れているか否かを判定できる。
【0072】
例えば、任意の2つの領域の光強度の差が閾値以下の場合、集光レンズ48bが汚れていないと判定され、任意の2つの領域の光強度の差が閾値よりも大きい場合、集光レンズ48bが汚れていると判定される。なお、基準プロファイル中のレーザービーム21の光強度の分布と、検出プロファイル中のレーザービーム21の光強度の分布と、の相関の強さに基づいて判定を行うこともできる。
【0073】
光学系の光軸から離れた位置で検出される散乱光の強度を確認する方法では、例えば、検出プロファイル中の光軸から十分に離れた位置での光強度が閾値以下の場合に、集光レンズ48bが汚れていないと判定される。一方で、検出プロファイル中の光軸から十分に離れた位置での光強度が閾値より大きい場合には、集光レンズ48bが汚れていると判定される。例えば、各位置での光強度が256段階で表現される場合には、小さい側から第50番目~第100番目の光強度を閾値に設定すると良好な結果を得やすくなる。
【0074】
なお、レーザービーム21のビームプロファイルを集光レンズ48bの位置(Z軸方向)とともに取得している場合には、検出器50で検出されたレーザービーム21の光強度(例えば、受光面での総和)が最も大きい集光レンズ48bの位置でのレーザービーム21のビームプロファイルに基づいて、集光レンズ48bが汚れているか否かを判定すると良い。これにより、集光レンズ48bの状態をより適切に判定できる。
【0075】
基準プロファイルと検出プロファイルとの相違が任意の閾値未満の場合、つまり、検出プロファイルが許容される範囲にあり、集光レンズ48bが汚れていないと判定される場合(判定ステップST4:YES)、集光レンズ48bが汚れていない場合の処理を行う(第1処理ステップST5)。例えば、判定部56dは、集光レンズ48bが汚れていない旨をタッチスクリーン54に表示させる。また、オペレーターは、被加工物11の加工を再開する等の処理を行う。
【0076】
一方で、基準プロファイルと検出プロファイルとの相違が任意の閾値より大きい場合、つまり、検出プロファイルが許容される範囲になく、集光レンズ48bが汚れていると判定される場合(判定ステップST4:NO)、集光レンズ48bが汚れている場合の処理を行う(第2処理ステップST6)。例えば、判定部56dは、集光レンズ48bが汚れている旨をタッチスクリーン54に表示させる。また、オペレーターは、集光レンズ48bの清掃や交換等のメンテナンス作業を行う。
【0077】
以上のように、本実施形態にかかるレーザー加工装置2は、集光レンズ48bを透過したレーザービーム21の形状を検出する検出器50と、検出器50で検出されたレーザービーム21のプロファイル(形状)に基づいて、集光レンズ48bが汚れているか否かを判定する判定部56dと、を含む検出ユニットを含むので、集光レンズ48bが汚れているか否かを簡単に確認できる。
【0078】
また、本実施形態にかかる集光レンズの状態確認方法は、集光レンズ48bを透過したレーザービーム21のプロファイル(形状)を検出し(検出ステップST3)、検出されたレーザービーム21のプロファイルに基づいて、集光レンズ48bが汚れているか否かを判定する(判定ステップST4)ので、集光レンズ48bが汚れているか否かを簡単に確認できる。
【0079】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上述した実施形態では、チャックテーブル26に対して反射部材23を載せているが、チャックテーブル26に対して隣接する位置に反射部材23を配置しても良い。また、偏光ビームスプリッターを光学素子48aとして用い、この光学素子48aと集光レンズ48bとの間に1/4波長板を配置して、検出器50に入射するレーザービーム21の光量を調整できるようにしても良い。
【0080】
また、上述した実施形態では、集光レンズ48bの汚れを検出する検出ユニットを含むレーザー加工装置2及びこのレーザー加工装置2を用いる集光レンズの状態確認方法について説明したが、本発明にかかる集光レンズの状態確認方法は、このレーザー加工装置2を用いることなく実施できる。
【0081】
例えば、検出器50で検出される検出プロファイルをタッチスクリーン54等に表示させることで、集光レンズ48bが汚れているか否かをオペレーター自身に判定させても良い。この場合、レーザー加工装置は、判定部56dや基準プロファイル記憶部56e等を備える必要がない。
【0082】
また、この場合には、例えば、光学系の光軸から離れた位置で検出される散乱光の強度を確認する方法で集光レンズ48bの汚れを判定すると良い。具体的には、検出プロファイル中の光軸から十分に離れた位置での光強度が閾値以下の場合に、オペレーターは、集光レンズ48bが汚れていないと判定する。一方で、検出プロファイル中の光軸から十分に離れた位置での光強度が閾値より大きい場合には、オペレーターは、集光レンズ48bが汚れていると判定する。
【0083】
なお、集光レンズ48bが汚れている場合には、レーザービーム21の散乱が大きくなって、検出プロファイルの外周側の領域での光強度が大きくなりやすい。よって、検出プロファイルの中心からの距離で各位置の光強度に重みを付けて、検出プロファイルの外周側の領域が判定に与える影響を相対的に大きくしても良い。また、検出器50の受光面の中央の領域(基準プロファイル中で光強度が大きい領域)を予めマスク等で覆っておいても良い。
【0084】
また、上述した実施形態では、集光レンズ48bに対してチャックテーブル26とは反対側に配置された検出器50を備えるレーザー加工装置2について説明したが、レーザー加工装置の検出器50は、集光レンズ48bに対してチャックテーブル26と同じ側に配置されていても良い。
【0085】
図8は、変形例にかかるレーザー加工装置102の構成例を示す模式図である。なお、変形例にかかるレーザー加工装置102の基本的な構造は、上述した実施形態のレーザー加工装置2の基本的な構造と同じである。よって、レーザー加工装置2と共通する構成要素には同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0086】
図8に示すように、変形例にかかるレーザー加工装置102は、被加工物11の保持に使用されるチャックテーブル(保持テーブル)126を備えている。このチャックテーブル126の上面の一部は、例えば、レーザービーム21を透過できる材質で形成されており、テープ13(テープ13が貼付されない場合には被加工物11)と接触して被加工物11を保持する保持面126aとして機能する。この保持面126aは、X軸方向及びY軸方向に対して概ね平行である。
【0087】
チャックテーブル126の保持面126aの下方には、レーザービーム21のビームプロファイルを検出できる検出器50が配置されている。検出器50の受光面は、上方(チャックテーブル126の保持面126a側)から伝播するレーザービーム21のビームプロファイル(輪郭の形状や2次元的な強度分布)を検出できるように、上方(保持面126a側)を向いている。
【0088】
よって、集光レンズ48bを透過した上で保持面126aを透過するレーザービーム21のビームプロファイルを検出器50で検出できる。なお、この場合には、光学素子48aは、レーザービーム21を部分的に透過する反射面を備えたビームスプリッター等でなくても良い。光学素子48aは、例えば、レーザービーム21を完全に反射するミラー等でも良い。
【0089】
また、検出器50は、チャックテーブル126に対して隣接する位置に配置されても良い。この場合には、チャックテーブル126に被加工物11を載せた状態でも、レーザービーム21のビームプロファイルを検出できるようになる。なお、この場合には、チャックテーブル126の保持面126aが、レーザービーム21を透過できる材質で形成されていなくても良い。
【0090】
その他、上述した実施形態や変形例にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて変更して実施できる。
【符号の説明】
【0091】
2 :レーザー加工装置
4 :基台
6 :水平移動機構(加工送り機構、割り出し送り機構)
8 :Y軸ガイドレール
10 :Y軸移動プレート
12 :ネジ軸
14 :Y軸パルスモーター
16 :X軸ガイドレール
18 :X軸移動プレート
20 :ネジ軸
22 :X軸パルスモーター
24 :テーブル基台
26 :チャックテーブル(保持テーブル)
26a :保持面
28 :クランプ
30 :支持構造
32 :鉛直移動機構(高さ調整機構)
34 :Z軸ガイドレール
36 :Z軸移動プレート
38 :Z軸パルスモーター
40 :支持具
42 :レーザービーム照射ユニット
44 :レーザー発振器
46 :ハウジング
46a :ミラー
46b :ミラー
48 :照射ヘッド
48a :光学素子
48b :集光レンズ
50 :検出器
52 :カメラ(撮像ユニット)
54 :タッチスクリーン(入出力装置)
56 :制御ユニット
56a :レーザー発振制御部
56b :移動制御部
56c :検出結果記憶部
56d :判定部
56e :基準プロファイル記憶部(基準形状記憶部)
102 :レーザー加工装置
126 :チャックテーブル(保持テーブル)
126a :保持面
11 :被加工物
13 :テープ(ダイシングテープ)
15 :フレーム
21 :レーザービーム
23 :反射部材
ST1 :基準プロファイル取得ステップ(基準形状取得ステップ)
ST2 :レーザービーム生成ステップ
ST3 :検出ステップ
ST4 :判定ステップ
ST5 :第1処理ステップ
ST6 :第2処理ステップ