(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】物標検知装置、システム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/56 20060101AFI20240213BHJP
G01S 13/34 20060101ALI20240213BHJP
G01S 13/58 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
G01S13/56
G01S13/34
G01S13/58 200
(21)【出願番号】P 2019157302
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 優
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-059826(JP,A)
【文献】特開2017-134795(JP,A)
【文献】特開2017-166998(JP,A)
【文献】特表2000-510238(JP,A)
【文献】特開平08-005736(JP,A)
【文献】特開2013-113819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周波数及び第2周波数を用いる2周波連続波方式の物標検知装置であって、
前記第1周波数の送受信信号間のビート周波数又は前記第2周波数の送受信信号間のビート周波数に基づいて、物標速度を計測する物標速度計測部と、
前記第1周波数の送受信信号間のビート位相と前記第2周波数の送受信信号間のビート位相との差に基づいて、前記2周波連続波方式のレーダ送受信装置から前記物標検知装置の検知対象物標までの距離としての物標距離を計測する物標距離計測部と、
計測開始時かつ前記物標距離の時間変化が連続であるときに、又は、一定期間毎かつ前記物標距離の時間変化が連続であるときに、前記物標距離に基づいて、前記物標速度の積分定数が不明である時間積算値を補正し、補正した前記物標速度の積分定数が既知になった時間積算値又は補正しなかった前記物標距離を、高精度化した前記物標距離として出力する物標距離出力部と、
を備えることを特徴とする物標検知装置。
【請求項2】
前記物標距離出力部は、前記物標距離の時間変化が不連続であるときに、前記物標速度の積分定数が
既知である時間積算値に基づいて、前記物標距離を補正し、補正した前記物標距離又は補正しなかった前記物標速度の積分定数が
既知である時間積算値を、高精度化した前記物標距離として出力する
ことを特徴とする、請求項1に記載の物標検知装置。
【請求項3】
前記第1周波数の送受信実信号間のビート位相と前記第2周波数の送受信実信号間のビート位相との差に基づいて、前記物標距離を計測する実信号物標距離計測部と、
前記第1周波数の送受信虚信号間のビート位相と前記第2周波数の送受信虚信号間のビート位相との差に基づいて、前記物標距離を計測する虚信号物標距離計測部と、
前記送受信実信号に基づく前記物標距離と前記送受信虚信号に基づく前記物標距離との差に基づいて、前記送受信実信号に基づく前記物標距離及び前記送受信虚信号に基づく前記物標距離の信頼性を判定する物標距離信頼性判定部と、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の物標検知装置。
【請求項4】
前記物標距離信頼性判定部は、前記送受信実信号及び前記送受信虚信号に基づく前記物標距離の信頼性が高いときに、前記送受信実信号及び前記送受信虚信号に基づく前記物標距離のうちの一方又は両方に基づいて、高精度化した前記物標距離を出力する
ことを特徴とする、請求項
3に記載の物標検知装置。
【請求項5】
前記物標距離信頼性判定部は、前記送受信実信号及び前記送受信虚信号に基づく前記物標距離の信頼性が低いときに、前記送受信実信号及び前記送受信虚信号に基づく前記物標距離のうちの前回までの送受信周期の前記物標距離により近い一方に基づいて、又は、前記前回までの送受信周期の前記物標距離に基づいて推定した現時点での送受信周期の前記物標距離に基づいて、高精度化した前記物標距離を出力する
ことを特徴とする、請求項
3又は
4に記載の物標検知装置。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれかに記載の物標検知装置と、前記2周波連続波方式のレーダ送受信装置と、を備えることを特徴とする物標検知システム。
【請求項7】
第1周波数及び第2周波数を用いる2周波連続波方式の物標検知方法であって、
前記第1周波数の送受信信号間のビート周波数又は前記第2周波数の送受信信号間のビート周波数に基づいて、物標速度を計測する物標速度計測ステップと、
前記第1周波数の送受信信号間のビート位相と前記第2周波数の送受信信号間のビート位相との差に基づいて、前記2周波連続波方式のレーダ送受信装置から前記物標検知方法の検知対象物標までの距離としての物標距離を計測する物標距離計測ステップと、
計測開始時かつ前記物標距離の時間変化が連続であるときに、又は、一定期間毎かつ前記物標距離の時間変化が連続であるときに、前記物標距離に基づいて、前記物標速度の積分定数が不明である時間積算値を補正し、補正した前記物標速度の積分定数が既知になった時間積算値又は補正しなかった前記物標距離を、高精度化した前記物標距離として出力する物標距離出力ステップと、
を順に備えることを特徴とする物標検知方法。
【請求項8】
第1周波数及び第2周波数を用いる2周波連続波方式の物標検知プログラムであって、
前記第1周波数の送受信信号間のビート周波数又は前記第2周波数の送受信信号間のビート周波数に基づいて、物標速度を計測する物標速度計測ステップと、
前記第1周波数の送受信信号間のビート位相と前記第2周波数の送受信信号間のビート位相との差に基づいて、前記2周波連続波方式のレーダ送受信装置から前記物標検知プログラムの検知対象物標までの距離としての物標距離を計測する物標距離計測ステップと、
計測開始時かつ前記物標距離の時間変化が連続であるときに、又は、一定期間毎かつ前記物標距離の時間変化が連続であるときに、前記物標距離に基づいて、前記物標速度の積分定数が不明である時間積算値を補正し、補正した前記物標速度の積分定数が既知になった時間積算値又は補正しなかった前記物標距離を、高精度化した前記物標距離として出力する物標距離出力ステップと、
を順にコンピュータに実行させるための物標検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2周波連続波方式の物標距離精度を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
2周波連続波方式の物標検知技術が、非特許文献1等に開示されている。ここで、非特許文献1等では、各送受信周期において、第1周波数の送信信号を照射した後に、第2周波数の送信信号を照射したうえで、第1周波数の送受信信号間のビート位相と第2周波数の送受信信号間のビート位相との差に基づいて、物標距離を計測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Robert J. Mayahn et al.,“A two-frequency radar for vehicle automatic lateral control”,IEEE trans. Veh. Technol.,vol.VT-31,No.3,pp.32-39.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非特許文献1等では、受信信号に対してノイズ成分が大きいとき、物標以外の環境による影響があるとき、及び、人間等の動き方による影響があるとき等には、物標距離の時間変化が不連続になることがあり、物標距離の計測精度が低下することがある。
【0006】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、2周波連続波方式の物標検知技術において、受信信号に対してノイズ成分が大きいとき、物標以外の環境による影響があるとき、及び、人間等の動き方による影響があるとき等でも、物標距離の時間変化を不連続にすることなく、物標距離の計測精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
受信信号に対してノイズ成分が大きいとき、物標以外の環境による影響があるとき、及び、人間等の動き方による影響があるとき等でも、物標速度の時間変化が不連続になることが少なく、物標速度の計測精度が低下することが少ない。そこで、物標速度の時間積算値を、物標距離として出力することが考えられる(特許文献1等を参照。)。しかし、物標速度の計測開始時には、物標速度の時間積算値の積分定数が不明であり、物標速度の長時間計測後には、物標速度の速度積算値の積算誤差が大きくなる。そこで、前記課題を解決するために、第1の方法として、物標速度の時間積算値及び物標距離のうちの一方の短所を、物標速度の時間積算値及び物標距離のうちの他方の長所で補完することとした。
【0008】
具体的には、本開示は、第1周波数及び第2周波数を用いる2周波連続波方式の物標検知装置であって、前記第1周波数の送受信信号間のビート周波数又は前記第2周波数の送受信信号間のビート周波数に基づいて、物標速度を計測する物標速度計測部と、前記第1周波数の送受信信号間のビート位相と前記第2周波数の送受信信号間のビート位相との差に基づいて、物標距離を計測する物標距離計測部と、前記物標速度の時間積算値及び前記物標距離のうちの一方に基づいて、前記物標速度の時間積算値及び前記物標距離のうちの他方を補正し、補正した前記他方又は補正しなかった前記一方を、高精度化した前記物標距離として出力する物標距離出力部と、を備えることを特徴とする物標検知装置である。
【0009】
また、本開示は、第1周波数及び第2周波数を用いる2周波連続波方式の物標検知方法であって、前記第1周波数の送受信信号間のビート周波数又は前記第2周波数の送受信信号間のビート周波数に基づいて、物標速度を計測する物標速度計測ステップと、前記第1周波数の送受信信号間のビート位相と前記第2周波数の送受信信号間のビート位相との差に基づいて、物標距離を計測する物標距離計測ステップと、前記物標速度の時間積算値及び前記物標距離のうちの一方に基づいて、前記物標速度の時間積算値及び前記物標距離のうちの他方を補正し、補正した前記他方又は補正しなかった前記一方を、高精度化した前記物標距離として出力する物標距離出力ステップと、を順に備えることを特徴とする物標検知方法である。
【0010】
また、本開示は、第1周波数及び第2周波数を用いる2周波連続波方式の物標検知プログラムであって、前記第1周波数の送受信信号間のビート周波数又は前記第2周波数の送受信信号間のビート周波数に基づいて、物標速度を計測する物標速度計測ステップと、前記第1周波数の送受信信号間のビート位相と前記第2周波数の送受信信号間のビート位相との差に基づいて、物標距離を計測する物標距離計測ステップと、前記物標速度の時間積算値及び前記物標距離のうちの一方に基づいて、前記物標速度の時間積算値及び前記物標距離のうちの他方を補正し、補正した前記他方又は補正しなかった前記一方を、高精度化した前記物標距離として出力する物標距離出力ステップと、を順にコンピュータに実行させるための物標検知プログラムである。
【0011】
これらの構成によれば、受信信号に対してノイズ成分が大きいとき、物標以外の環境による影響があるとき、及び、人間等の動き方による影響があるとき等でも、物標距離の時間変化を不連続にすることなく、物標距離の計測精度を向上させることができる。
【0012】
また、本開示は、前記物標距離出力部は、前記物標距離の時間変化が不連続であるときに、前記物標速度の時間積算値に基づいて、前記物標距離を補正し、補正した前記物標距離又は補正しなかった前記物標速度の時間積算値を、高精度化した前記物標距離として出力することを特徴とする物標検知装置である。
【0013】
この構成によれば、物標距離の短所(物標距離の時間変化の不連続性)を、物標速度の時間積算値の長所(物標速度の時間変化の連続性)で補完することができる。
【0014】
また、本開示は、前記物標距離出力部は、計測開始時かつ前記物標距離の時間変化が連続であるときに、又は、一定期間毎かつ前記物標距離の時間変化が連続であるときに、前記物標距離に基づいて、前記物標速度の時間積算値を補正し、補正した前記物標速度の時間積算値又は補正しなかった前記物標距離を、高精度化した前記物標距離として出力することを特徴とする物標検知装置である。
【0015】
この構成によれば、物標速度の時間積算値の短所(積分定数及び積算誤差の考慮要)を、物標距離の長所(積分定数及び積算誤差の考慮不要)で補完することができる。
【0016】
受信信号に対してノイズ成分が小さいとき、物標以外の環境による影響が少ないとき、及び、人間等の動き方による影響が少ないとき等には、送受信実信号に基づく物標距離と送受信虚信号に基づく物標距離との差が小さい。一方で、受信信号に対してノイズ成分が大きいとき、物標以外の環境による影響があるとき、及び、人間等の動き方による影響があるとき等には、送受信実信号に基づく物標距離と送受信虚信号に基づく物標距離との差が大きい。そこで、前記課題を解決するために、第2の方法として、送受信実信号に基づく物標距離と送受信虚信号に基づく物標距離との差に基づいて、送受信実信号に基づく物標距離及び送受信虚信号に基づく物標距離の信頼性を判定することとした。
【0017】
具体的には、本開示は、前記第1周波数の送受信実信号間のビート位相と前記第2周波数の送受信実信号間のビート位相との差に基づいて、前記物標距離を計測する実信号物標距離計測部と、前記第1周波数の送受信虚信号間のビート位相と前記第2周波数の送受信虚信号間のビート位相との差に基づいて、前記物標距離を計測する虚信号物標距離計測部と、前記送受信実信号に基づく前記物標距離と前記送受信虚信号に基づく前記物標距離との差に基づいて、前記送受信実信号に基づく前記物標距離及び前記送受信虚信号に基づく前記物標距離の信頼性を判定する物標距離信頼性判定部と、をさらに備えることを特徴とする物標検知装置である。
【0018】
この構成によれば、受信信号に対してノイズ成分が大きいとき、物標以外の環境による影響があるとき、及び、人間等の動き方による影響があるとき等でも、物標距離の時間変化を連続にするより前に、物標距離の信頼性を判定することができる。
【0019】
また、本開示は、前記物標距離信頼性判定部は、前記送受信実信号及び前記送受信虚信号に基づく前記物標距離の信頼性が高いときに、前記送受信実信号及び前記送受信虚信号に基づく前記物標距離のうちの一方又は両方に基づいて、高精度化した前記物標距離を出力することを特徴とする物標検知装置である。
【0020】
この構成によれば、送受信実信号及び送受信虚信号に基づく物標距離の信頼性が高いときには、特段の処理もなく物標距離の時間変化を連続にできるはずである。
【0021】
また、本開示は、前記物標距離信頼性判定部は、前記送受信実信号及び前記送受信虚信号に基づく前記物標距離の信頼性が低いときに、前記送受信実信号及び前記送受信虚信号に基づく前記物標距離のうちの前回までの送受信周期の前記物標距離により近い一方に基づいて、又は、前記前回までの送受信周期の前記物標距離に基づいて推定した現時点での送受信周期の前記物標距離に基づいて、高精度化した前記物標距離を出力することを特徴とする物標検知装置である。
【0022】
この構成によれば、送受信実信号及び送受信虚信号に基づく物標距離の信頼性が低いときでも、上記の処理により物標距離の時間変化を連続にすることができる。
【0023】
また、本開示は、以上に記載の物標検知装置と、前記2周波連続波方式のレーダ送受信装置と、を備えることを特徴とする物標検知システムである。
【0024】
この構成によれば、受信信号に対してノイズ成分が大きいとき、物標以外の環境による影響があるとき、及び、人間等の動き方による影響があるとき等でも、物標距離の時間変化を不連続にすることなく、物標距離の計測精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
このように、本開示は、2周波連続波方式の物標検知技術において、受信信号に対してノイズ成分が大きいとき、物標以外の環境による影響があるとき、及び、人間等の動き方による影響があるとき等でも、物標距離の時間変化を不連続にすることなく、物標距離の計測精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施形態の物標検知装置の構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態の物標検知方法の手順を示す図である。
【
図3】第1実施形態の物標検知方法の詳細を示す図である。
【
図4】第1実施形態の物標検知方法の詳細を示す図である。
【
図5】第1実施形態の物標検知方法の詳細を示す図である。
【
図6】第2実施形態の物標検知装置の構成を示す図である。
【
図7】第2実施形態の物標検知方法の手順を示す図である。
【
図8】第2実施形態の物標検知方法の詳細を示す図である。
【
図9】第3実施形態の物標検知装置の構成を示す図である。
【
図10】第4実施形態の物標検知装置の構成を示す図である。
【
図11】第5実施形態の物標検知装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0028】
(第1実施形態)
第1実施形態の物標検知装置の構成を
図1に示す。第1実施形態の物標検知方法の手順を
図2に示す。第1実施形態の物標検知方法の詳細を
図3~5に示す。物標検知装置Tは、物標速度計測部1、物標距離計測部2及び物標距離出力部3から構成され、
図2の物標検知プログラムをコンピュータにインストールして実現可能である。
【0029】
受信信号に対してノイズ成分が大きいとき、物標以外の環境による影響があるとき、及び、人間等の動き方による影響があるとき等には、物標距離d(t)の時間変化が不連続になることがあり、物標距離d(t)の計測精度が低下することがある。一方で、受信信号に対してノイズ成分が大きいとき、物標以外の環境による影響があるとき、及び、人間等の動き方による影響があるとき等でも、物標速度v(t)の時間変化が不連続になることが少なく、物標速度v(t)の計測精度が低下することが少ない。
【0030】
そこで、物標速度v(t)の時間積算値dv(t)を、物標距離として出力することが考えられる。しかし、物標速度v(t)の計測開始時には、物標速度v(t)の時間積算値dv(t)の積分定数が不明であり、物標速度v(t)の長時間計測後には、物標速度v(t)の速度積算値dv(t)の積算誤差が大きくなる。そこで、物標速度v(t)の時間積算値dv(t)及び物標距離d(t)のうちの一方の短所を、物標速度v(t)の時間積算値dv(t)及び物標距離d(t)のうちの他方の長所で補完する。
【0031】
物標速度計測部1は、第1周波数の送受信信号間のビート周波数又は第2周波数の送受信信号間のビート周波数に基づいて、物標速度v(t)を計測する(ステップS1)。なお、送受信信号は、送受信実信号でもよく、送受信虚信号でもよい。
【0032】
物標距離計測部2は、第1周波数の送受信信号間のビート位相と第2周波数の送受信信号間のビート位相との差に基づいて、物標距離d(t)を計測する(ステップS2)。なお、送受信信号は、送受信実信号でもよく、送受信虚信号でもよい。
【0033】
物標距離出力部3は、物標速度v(t)の時間積算値dv(t)及び物標距離d(t)のうちの一方に基づいて、物標速度v(t)の時間積算値dv(t)及び物標距離d(t)のうちの他方を補正し、補正した他方又は補正しなかった一方を、高精度化した物標距離として出力する(ステップS3~S9)。具体的な処理について、以下に説明する。
【0034】
図3の上段では、物標速度v(t)の時間変化を示す。
図3の下段では、物標速度v(t)の時間積算値d
v(t)の時間変化を示す。
図3の上段において、物標速度v(t)が0であるときには、送受信信号間のビート周波数は0であるため、送受信信号間のビート位相を確定することができず、物標距離d(t)を計測することができない。
図3の下段において、物標速度v(t)の時間積算値d
v(t)は、計測開始時のt=0では、物標距離d(t)=0に基づいて真値0に初期化されているが、長時間計測後のt→大では、真値に積算誤差を重畳している(「誤差あり」が「誤差なし」から離れている。)。
【0035】
物標距離出力部3は、物標距離d(t)の時間変化が不連続であるときに(ステップS3、NO)、物標速度v(t)の時間積算値dv(t)に基づいて、物標距離d(t)を補正し(ステップS4)、補正した物標距離d(t)又は補正しなかった物標速度v(t)の時間積算値dv(t)を、高精度化した物標距離として出力する(ステップS5)。
【0036】
ここで、物標距離出力部3は、以下の方法等により、物標距離d(t)の時間変化が不連続であることを判定する:(1)d(t)-d(t-nΔt)とdv(t)-dv(t-nΔt)との差が所定閾値より大きいと判定(Δtは1送受信周期、nは1以上の整数。)、(2)d(t-nΔt)~d(t-Δt)と比べてd(t)が大きく異なると判定、(3)v(t)が0に近いため、d(t)が大きな誤差を有すると判定。
【0037】
そして、物標距離出力部3は、以下の方法等により、物標速度v(t)の時間積算値dv(t)に基づいて、物標距離d(t)を補正する:(1)d(t)が大きな誤差を有するものの、dv(t)が大きな誤差を有さないと考えて、d(t)がdv(t)に等しいと補正、(2)d(t)が大きな誤差を有するため、dv(t)が多少は誤差を有すると考えて、d(t)が(dv(t-Δt)+d(t-Δt))/2に等しいと補正。
【0038】
なお、物標距離出力部3は、将来に物標距離d(t)の時間変化が不連続であるかどうかを判定するために、補正した物標距離d(t)を記憶しておく。
【0039】
図4の上段では、物標速度v(t)の時間積算値d
v(t)の時間変化を示す。
図4の下段では、物標距離d(t)の時間変化を示す。d
v(t
1)は不連続性を有さないが、d(t
1)は不連続性を有している。そこで、d(t
1)はd
v(t
1)に近い値に補正される。そして、補正されたd(t
1)又は補正されなかったd
v(t
1)が出力される。
【0040】
物標距離出力部3は、計測開始時(ステップS6、YES)かつ物標距離d(t)の時間変化が連続であるときに(ステップS3、YES)、物標距離d(t)に基づいて、物標速度v(t)の時間積算値dv(t)を補正し(ステップS7)、補正した物標速度v(t)の時間積算値dv(t)又は補正しなかった物標距離d(t)を、高精度化した物標距離として出力する(ステップS8)。又は、物標距離出力部3は、一定期間毎(ステップS6、YES)かつ物標距離d(t)の時間変化が連続であるときに(ステップS3、YES)、物標距離d(t)に基づいて、物標速度v(t)の時間積算値dv(t)を補正し(ステップS7)、補正した物標速度v(t)の時間積算値dv(t)又は補正しなかった物標距離d(t)を、高精度化した物標距離として出力する(ステップS8)。
【0041】
ここで、物標距離出力部3は、以下の方法等により、物標距離d(t)の時間変化が連続であることを判定する:(1)d(t)-d(t-nΔt)とdv(t)-dv(t-nΔt)との差が所定閾値より小さいと判定(Δtは1送受信周期、nは1以上の整数。)、(2)d(t-nΔt)~d(t-Δt)と比べてd(t)が大きく異ならないと判定、(3)v(t)が0に近くないため、d(t)が大きな誤差を有さないと判定。
【0042】
そして、物標距離出力部3は、ステップS6の計測開始時として、t≒0を設定し、ステップS6の一定期間として、許容可能な最大限の積算誤差が生じる期間を設定する。
【0043】
さらに、物標距離出力部3は、以下の方法等により、物標距離d(t)に基づいて、物標速度v(t)の時間積算値dv(t)を補正する:(1)dv(t)が大きな誤差を有するものの、d(t)が大きな誤差を有さないと考えて、dv(t)がd(t)に等しいと補正、(2)dv(t)が大きな誤差を有するため、d(t)が多少は誤差を有すると考えて、dv(t)が(d(t-Δt)+dv(t-Δt))/2に等しいと補正。
【0044】
なお、物標距離出力部3は、将来に物標距離d(t)の時間変化が連続であるかどうかを判定するために、補正した物標速度v(t)の時間積算値dv(t)を記憶しておく。
【0045】
図5の上段では、物標速度v(t)の時間積算値d
v(t)の時間変化を示す。
図5の下段では、物標距離d(t)の時間変化を示す。d
v(t
3)は計測開始時の物標速度の時間積算値であり、d(t
3)は不連続性を有さない。そこで、d
v(t
3)はd(t
3)に近い値に補正される。そして、補正されたd
v(t
3)又は補正されなかったd(t
3)が出力される。d
v(t
4)は一定期間毎の物標速度の時間積算値であり、d(t
4)は不連続性を有さない。そこで、d
v(t
4)はd(t
4)に近い値に補正される。そして、補正されたd
v(t
4)又は補正されなかったd(t
4)が出力される。
【0046】
物標距離出力部3は、計測開始時でない時(ステップS6、NO)かつ物標距離d(t)の時間変化が連続であるときに(ステップS3、YES)、計測された物標速度v(t)の時間積算値dv(t)又は計測された物標距離d(t)を、高精度化した物標距離として出力する(ステップS9)。又は、物標距離出力部3は、一定期間毎でない時(ステップS6、NO)かつ物標距離d(t)の時間変化が連続であるときに(ステップS3、YES)、計測された物標速度v(t)の時間積算値dv(t)又は計測された物標距離d(t)を、高精度化した物標距離として出力する(ステップS9)。
【0047】
図4の上段では、物標速度v(t)の時間積算値d
v(t)の時間変化を示す。
図4の下段では、物標距離d(t)の時間変化を示す。d
v(t
2)は計測開始時でない時又は一定期間毎でない時の物標速度の時間積算値であり、d(t
2)は不連続性を有さない。そこで、計測されたd
v(t
2)又は計測されたd(t
2)が出力される。
【0048】
このように、受信信号に対してノイズ成分が大きいとき、物標以外の環境による影響があるとき、及び、人間等の動き方による影響があるとき等でも、物標距離の時間変化を不連続にすることなく、物標距離の計測精度を向上させることができる。
【0049】
そして、
図4に示したように、物標距離d(t)の短所(物標距離d(t)の時間変化の不連続性)を、物標速度v(t)の時間積算値d
v(t)の長所(物標速度v(t)の時間変化の連続性)で補完することができる。さらに、
図5に示したように、物標速度v(t)の時間積算値d
v(t)の短所(積分定数及び積算誤差の考慮要)を、物標距離d(t)の長所(積分定数及び積算誤差の考慮不要)で補完することができる。
【0050】
(第2実施形態)
第2実施形態の物標検知装置の構成を
図6に示す。第2実施形態の物標検知方法の手順を
図7に示す。第2実施形態の物標検知方法の詳細を
図8に示す。物標検知装置Tは、実信号物標距離計測部4、虚信号物標距離計測部5及び物標距離信頼性判定部6から構成され、
図7の物標検知プログラムをコンピュータにインストールして実現可能である。
【0051】
受信信号に対してノイズ成分が大きいとき、物標以外の環境による影響があるとき、及び、人間等の動き方による影響があるとき等には、物標距離d(t)の時間変化が不連続になることがあり、物標距離d(t)の計測精度が低下することがある。よって、受信信号に対してノイズ成分が大きいとき、物標以外の環境による影響があるとき、及び、人間等の動き方による影響があるとき等には、送受信実信号に基づく物標距離dI(t)と送受信虚信号に基づく物標距離dQ(t)との差|dI(t)-dQ(t)|が大きい。
【0052】
一方で、受信信号に対してノイズ成分が小さいとき、物標以外の環境による影響が少ないとき、及び、人間等の動き方による影響が少ないとき等には、送受信実信号に基づく物標距離dI(t)と送受信虚信号に基づく物標距離dQ(t)との差|dI(t)-dQ(t)|が小さい。そこで、送受信実信号に基づく物標距離dI(t)と送受信虚信号に基づく物標距離dQ(t)との差|dI(t)-dQ(t)|に基づいて、送受信実信号に基づく物標距離dI(t)及び送受信虚信号に基づく物標距離dQ(t)の信頼性を判定する。
【0053】
実信号物標距離計測部4は、第1周波数の送受信実信号間のビート位相と第2周波数の送受信実信号間のビート位相との差に基づいて、送受信実信号に基づく物標距離dI(t)を計測する(ステップS11)。
【0054】
虚信号物標距離計測部5は、第1周波数の送受信虚信号間のビート位相と第2周波数の送受信虚信号間のビート位相との差に基づいて、送受信虚信号に基づく物標距離dQ(t)を計測する(ステップS12)。
【0055】
物標距離信頼性判定部6は、送受信実信号に基づく物標距離dI(t)と送受信虚信号に基づく物標距離dQ(t)との差|dI(t)-dQ(t)|に基づいて、送受信実信号に基づく物標距離dI(t)及び送受信虚信号に基づく物標距離dQ(t)の信頼性を判定する(ステップS13)。
【0056】
ここで、物標距離信頼性判定部6は、送受信実信号に基づく物標距離dI(t)と送受信虚信号に基づく物標距離dQ(t)との差|dI(t)-dQ(t)|が所定閾値以下であるときには、送受信実信号に基づく物標距離dI(t)及び送受信虚信号に基づく物標距離dQ(t)の信頼性が高いと判定する(ステップS14、YES)。
【0057】
一方で、物標距離信頼性判定部6は、送受信実信号に基づく物標距離dI(t)と送受信虚信号に基づく物標距離dQ(t)との差|dI(t)-dQ(t)|が所定閾値より大きいときには、送受信実信号に基づく物標距離dI(t)及び送受信虚信号に基づく物標距離dQ(t)の信頼性が低いと判定する(ステップS14、NO)。
【0058】
図8の上段では、送受信実信号に基づく物標距離d
I(t)の時間変化を示す。
図8の中段では、送受信虚信号に基づく物標距離d
Q(t)の時間変化を示す。
図8の下段では、送受信実信号に基づく物標距離d
I(t)と送受信虚信号に基づく物標距離d
Q(t)との差|d
I(t)-d
Q(t)|の時間変化を示す。
【0059】
dI(t5)は不連続性を有さず、dQ(t5)も不連続性を有さず、dI(t5)とdQ(t5)はほぼ等しく、|dI(t5)-dQ(t5)|はほぼ0である。dI(t6)は不連続性を有し、dQ(t6)は不連続性を有さず、dI(t6)とdQ(t6)は大きく異なり、|dI(t6)-dQ(t6)|は有限値となる。dI(t7)は不連続性を有さず、dQ(t7)は不連続性を有し、dI(t7)とdQ(t7)は大きく異なり、|dI(t7)-dQ(t7)|は有限値となる。dI(t8)は不連続性を有し、dQ(t8)も不連続性を有し、dI(t8)とdQ(t8)は大きく異なり、|dI(t8)-dQ(t8)|は有限値となる。
【0060】
物標距離信頼性判定部6は、送受信実信号及び送受信虚信号に基づく物標距離dI(t)、dQ(t)の信頼性が高いときに(ステップS14、YES)、送受信実信号及び送受信虚信号に基づく物標距離dI(t)、dQ(t)のうちの一方又は両方に基づいて、高精度化した物標距離を出力する(ステップS15)。
【0061】
ここで、物標距離信頼性判定部6は、以下の方法等により、高精度化した物標距離を出力する:(1)dI(t)、dQ(t)のうちの一方を、高精度化した物標距離として出力、(2)(dI(t)+dQ(t))/2を、高精度化した物標距離として出力。
【0062】
図8では、|d
I(t
5)-d
Q(t
5)|はほぼ0であり、d
I(t
5)、d
Q(t
5)の信頼性が高い。そこで、計測されたd
I(t
5)又は計測されたd
Q(t
5)が出力される。
【0063】
物標距離信頼性判定部6は、送受信実信号及び送受信虚信号に基づく物標距離dI(t)、dQ(t)の信頼性が低いときに(ステップS14、NO)、かつ、送受信実信号及び送受信虚信号に基づく物標距離dI(t)、dQ(t)のうちの一方の物標距離の時間変化が連続であるときに(ステップS16、YES)、送受信実信号及び送受信虚信号に基づく物標距離dI(t)、dQ(t)のうちの前回までの送受信周期の物標距離により近い一方に基づいて、高精度化した物標距離を出力する(ステップS17)。
【0064】
ここで、物標距離信頼性判定部6は、以下の方法等により、送受信実信号及び送受信虚信号に基づく物標距離dI(t)、dQ(t)のうちの一方の物標距離の時間変化が連続であることを判定する:(1)dI、Q(t-nΔt)~dI、Q(t-Δt)と比べてdI、Q(t)が大きく異ならないと判定(Δtは1送受信周期、nは1以上の整数。)、(2)v(t)が0に近くないため、dI、Q(t)が大きな誤差を有さないと判定(v(t)は物標速度。第1周波数の送受信実/虚信号間のビート周波数又は第2周波数の送受信実/虚信号間のビート周波数に基づいて計測。v(t)=0であれば、dI、Q(t)は計測不能。)。
【0065】
そして、物標距離信頼性判定部6は、以下の方法等により、高精度化した物標距離を出力する:(1)|dI(t)-dI(t-nΔt)|<|dQ(t)-dQ(t-nΔt)|(nは1程度の小さい整数。)であれば、dI(t)を高精度化した物標距離として出力、(2)|dI(t)-dI(t-nΔt)|>|dQ(t)-dQ(t-nΔt)|(nは1程度の小さい整数。)であれば、dQ(t)を高精度化した物標距離として出力。
【0066】
図8では、|d
I(t
6)-d
Q(t
6)|は有限値であり、d
I(t
6)は不連続性を有し、d
Q(t
6)は不連続性を有さず、|d
I(t
6)-d
I(t
6-Δt)|>|d
Q(t
6)-d
Q(t
6-Δt)|である。そこで、d
I(t
6)はd
Q(t
6)に近い値に補正される。そして、補正されたd
I(t
6)又は補正されなかったd
Q(t
6)が出力される。
【0067】
図8では、|d
I(t
7)-d
Q(t
7)|は有限値であり、d
I(t
7)は不連続性を有さず、d
Q(t
7)は不連続性を有し、|d
I(t
7)-d
I(t
7-Δt)|<|d
Q(t
7)-d
Q(t
7-Δt)|である。そこで、d
Q(t
7)はd
I(t
7)に近い値に補正される。そして、補正されたd
Q(t
7)又は補正されなかったd
I(t
7)が出力される。
【0068】
なお、物標距離信頼性判定部6は、将来に送受信実信号及び送受信虚信号に基づく物標距離dI(t)、dQ(t)のうちの一方の物標距離の時間変化が連続であることを判定するために、補正した物標速度dI(t)又はdQ(t)を記憶しておく。
【0069】
物標距離信頼性判定部6は、送受信実信号及び送受信虚信号に基づく物標距離dI(t)、dQ(t)の信頼性が低いときに(ステップS14、NO)、かつ、送受信実信号及び送受信虚信号に基づく物標距離dI(t)、dQ(t)のうちの両方の物標距離の時間変化が不連続であるときに(ステップS16、NO)、前回までの送受信周期の物標距離dI(t-nΔt)又はdQ(t-nΔt)に基づいて推定した現時点での送受信周期の物標距離de(t)に基づいて、高精度化した物標距離を出力する(ステップS18)。
【0070】
ここで、物標距離信頼性判定部6は、以下の方法等により、送受信実信号及び送受信虚信号に基づく物標距離dI(t)、dQ(t)のうちの両方の物標距離の時間変化が不連続であることを判定する:(1)dI、Q(t-nΔt)~dI、Q(t-Δt)と比べてdI、Q(t)が大きく異なると判定(Δtは1送受信周期、nは1以上の整数。)、(2)v(t)が0に近いため、dI、Q(t)が大きな誤差を有すると判定(v(t)は物標速度。第1周波数の送受信実/虚信号間のビート周波数又は第2周波数の送受信実/虚信号間のビート周波数に基づいて計測。v(t)=0であれば、dI、Q(t)は計測不能。)。
【0071】
そして、物標距離信頼性判定部6は、以下の方法等により、高精度化した物標距離を出力する:(1)dI(t-nΔt)~dI(t-Δt)の現時点への外挿に基づいて、de(t)を高精度化した物標距離として出力、(2)dQ(t-nΔt)~dQ(t-Δt)の現時点への外挿に基づいて、de(t)を高精度化した物標距離として出力。
【0072】
図8では、|d
I(t
8)-d
Q(t
8)|は有限値であり、d
I(t
8)は不連続性を有し、d
Q(t
8)も不連続性を有する。そこで、d
I(t
8)及びd
Q(t
8)はd
e(t
8)に補正される。そして、補正されたd
I(t
8)又は補正されたd
Q(t
8)が出力される。
【0073】
なお、物標距離信頼性判定部6は、将来に送受信実信号及び送受信虚信号に基づく物標距離dI(t)、dQ(t)のうちの両方の物標距離の時間変化が不連続であることを判定するために、補正した物標速度dI(t)及びdQ(t)を記憶しておく。
【0074】
このように、受信信号に対してノイズ成分が大きいとき、物標以外の環境による影響があるとき、及び、人間等の動き方による影響があるとき等でも、物標距離の時間変化を連続にするより前に、物標距離の信頼性を判定することができる。
【0075】
そして、
図8の時刻t
5に示したように、送受信実信号及び送受信虚信号に基づく物標距離d
I(t)、d
Q(t)の信頼性が高いときには、特段の処理もなく物標距離の時間変化を連続にできるはずである。さらに、
図8の時刻t
6、t
7、t
8に示したように、送受信実信号及び送受信虚信号に基づく物標距離d
I(t)、d
Q(t)の信頼性が低いときでも、上記の処理により物標距離の時間変化を連続にすることができる。
【0076】
(第3実施形態)
第3実施形態の物標検知装置の構成を
図9に示す。第3実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態の物標検知処理を、お互いの効果を妨げないように並行して実行する。
【0077】
そのために、物標検知装置Tは、物標速度計測部1、物標距離計測部2、物標距離出力部3、実信号物標距離計測部4、虚信号物標距離計測部5及び物標距離信頼性判定部6から構成される。各構成要素の処理内容は、第1実施形態及び第2実施形態と同様である。
【0078】
(第4実施形態)
第4実施形態の物標検知装置の構成を
図10に示す。第4実施形態では、第2実施形態の物標検知処理の前半部分を、第1実施形態の物標検知処理に置換している。
【0079】
そのために、物標検知装置Tは、物標速度計測部1I、1Q、物標距離計測部2I、2Q、物標距離出力部3I、3Q及び物標距離信頼性判定部6から構成される。各構成要素の処理内容は、第1実施形態及び第2実施形態と同様である。ただし、物標速度計測部1I(1Q)、物標距離計測部2I(2Q)及び物標距離出力部3I(3Q)は、第1、2周波数の送受信実(虚)信号間のビート信号についての処理を実行する。
【0080】
(第5実施形態)
第5実施形態の物標検知装置の構成を
図11に示す。第5実施形態では、第1実施形態の物標検知処理の前半部分を、第2実施形態の物標検知処理に置換している。
【0081】
そのために、物標検知装置Tは、実信号物標距離計測部4、虚信号物標距離計測部5、物標距離信頼性判定部6、実信号物標速度計測部7、虚信号物標速度計測部8、物標速度信頼性判定部9及び物標距離出力部3から構成される。各構成要素の処理内容は、第1実施形態及び第2実施形態と同様である。ただし、実信号物標速度計測部7、虚信号物標速度計測部8及び物標速度信頼性判定部9は、以下の処理を実行する。
【0082】
実信号物標速度計測部7は、第1周波数の送受信実信号間のビート周波数又は第2周波数の送受信実信号間のビート周波数に基づいて、送受信実信号に基づく物標速度を計測する。虚信号物標速度計測部8は、第1周波数の送受信虚信号間のビート周波数又は第2周波数の送受信虚信号間のビート周波数に基づいて、送受信虚信号に基づく物標速度を計測する。物標速度信頼性判定部9は、送受信実信号に基づく物標速度と送受信虚信号に基づく物標速度との差に基づいて、送受信実信号に基づく物標速度及び送受信虚信号に基づく物標速度の信頼性を判定する。もっとも、物標速度の信頼性は、高いと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本開示の物標検知装置、システム、方法及びプログラムは、2周波連続波方式の物標検知技術において、受信信号に対してノイズ成分が大きいとき、物標以外の環境による影響があるとき、及び、人間等の動き方による影響があるとき等でも、物標距離の時間変化を不連続にすることなく、物標距離の計測精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0084】
T:物標検知装置
1、1I、1Q:物標速度計測部
2、2I、2Q:物標距離計測部
3、3I、3Q:物標距離出力部
4:実信号物標距離計測部
5:虚信号物標距離計測部
6:物標距離信頼性判定部
7:実信号物標速度計測部
8:虚信号物標速度計測部
9:物標速度信頼性判定部