(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 4/50 20060101AFI20240213BHJP
H01R 43/20 20060101ALI20240213BHJP
H01R 43/16 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
H01R4/50 A
H01R43/20 Z
H01R43/16
(21)【出願番号】P 2019202633
(22)【出願日】2019-11-07
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 猛
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 文孝
(72)【発明者】
【氏名】村上 弘国
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-061742(JP,A)
【文献】特開2017-054589(JP,A)
【文献】特開2016-039072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/48-4/50
H01R 43/16
H01R 43/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のキャリアと、前記キャリアの側部に長手方向の一端が連続した端子を有し、前記端子が前記キャリアの長手方向に沿って一定のピッチで複数並設された連鎖端子
の前記キャリアから切り離された前記端子が装着されたハウジングを有するコネクタであって、
前記端子の軸周りの外面に、変形することによって挿入された電線を押圧して接続する電線押付片が形成されるとともに、
前記電線押付片の変形方向が、前記キャリア
から切り離された際にできる前記端子の切断端部の面
方向と同方向であり、
前記端子におけるハウジングに装着された際に前記ハウジングの上方又は下方に向く面に、前記電線押付片が形成され、
前記ハウジングの前記端子が挿入される端子挿入部は、前記ハウジングの厚み方向において上下二段に形成され
るとともに、
上段と下段の前記端子挿入部は、前記端子がそれぞれ上下逆さまに挿入される形状であり、
前記上段の前記端子挿入部は、前記ハウジングの上方に向く面に対応する面を上面とするとともに、前記下段の前記端子挿入部は、前記ハウジングの下方に向く面に対応する面を上面とし、
前記上段及び前記下段の前記端子挿入部における上面にのみに、前記電線押付片が嵌る押付片貫通穴が形成され、
前記上段の前記端子挿入部に、前記電線押付片が前記ハウジングの上方に向
き、前記電線押付片が前記押付片貫通穴に嵌るように挿入され、
下段の前記端子挿入部に、前記電線押付片が前記ハウジングの下方に向
き、前記電線押付片が前記押付片貫通穴に嵌るように挿入され
、
前記切断端部の面方向が、前記ハウジングの上下方向に沿う
コネクタ。
【請求項2】
前記端子が、電線を接続する電線接続部と、他の端子と接続する端子接続部を、前記キャリア
から切り離された際にできる前記切断端部の側からこの順で有し、
前記電線押付片が、前記電線接続部に形成された
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記電線押付片の幅が、前記電線押付片を有する部分の前記端子の幅よりも短い
請求項1
または請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線が接続される端子が複数連なった連鎖端子に関する。
【背景技術】
【0002】
電線が接続される端子としては、下記特許文献1に開示されたものがある。この端子は、長手方向の一方側に電線を接続する電線接続部を有し、他方側に他の端子を接続する端子接続部を有している。これらのうち電線接続部は、一端が開口した四角筒状であり、ハウジングに装着される際に上となる上面の一部に電線押付片が形成されている。電線押付片は弾性を有しており、遊端側部分が側面視略三角形状に折り曲げられている。また、電線押付片は電線接続部の上面から外方へ突出している。
【0003】
このような構成の電線接続部は、次のようにして電線の接続がなされる。まず、芯線がむき出しにされた電線の先端部が一端の開口から挿入される。このあと、電線押付片が上から押下されて変形される。変形された電線押付片の遊端部は、電線を上から押圧して電気的に接続するとともに電線を機械的に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外方に突出する電線押付片は、前述したように電線接続部の上面に形成されている。このため、帯状のキャリアの側部に複数の端子が並設された連鎖端子においても、電線押付片を有する面は当然のように上面、つまりキャリアの面に垂直な方向に向いていた。換言すれば、端子の上下方向は、ハウジングに対して装着される姿勢を基準に考えられている。ハウジングの上下方向と端子の上下方向は同じに設定されるのが技術的にも通常であり、連鎖端子における端子においても、端子の上下方向はキャリアの面に垂直な方向であった。
【0006】
しかし、前述のように電線押付片がキャリアの面に垂直な方向に向いていると電線押付片に変形が生じるおそれが高い。
【0007】
例えば、連鎖端子は製造後にリールに巻かれて取り扱われる。リールに巻かれた連鎖端子は、上に向いた端子がリールの径方向で層状に重なることになる。連鎖端子には層間紙が重ねられており、径方向に重なる端子間には層間紙が存在する。しかしながら、電線押付片が外方に突出している端子では特に、電線押付片に上から負荷がかかることになる。
【0008】
負荷がかかり続けると、電線押付片は弾力性を有するとはいえ、変形するおそれがある。電線押圧片が変形してしまうと、電線の挿入作業が円滑にできなかったり、不能になったりして、電線の接続に支障をきたすことになる。
【0009】
また電線押付片には、リールに巻き取られる前の段階でも変形のリスクがある。例えば、連鎖端子はプレス機で製造されたのちキャリアの長手方向に沿って搬送される。搬送路には、連鎖端子を導くガイド材などの周辺部品が存在している。このため、キャリアの面に垂直な方向を向く電線押付片とっては、周辺部材と接触する可能性が高まる。
【0010】
電線押付片が外方に突出しない端子であっても、キャリアに対する端子の相対変位が起こると、変形が可能な電線押付片には負荷がかかりやすく、電線押付片に変形が生じるおそれがある。
【0011】
そこでこの発明は、電線押付片の変形を防止し、電線と端子とを所望通りに接続できるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのための手段は、帯状のキャリアと、前記キャリアの側部に長手方向の一端が連続した端子を有し、前記端子が前記キャリアの長手方向に沿って一定のピッチで複数並設された連鎖端子の前記キャリアから切り離された前記端子が装着されたハウジングを有するコネクタであって、前記端子の軸周りの外面に、変形することによって挿入された電線を押圧して接続する電線押付片が形成されるとともに、前記電線押付片の変形方向が、前記キャリアから切り離された際にできる前記端子の切断端部の面方向と同方向であり、前記端子におけるハウジングに装着された際に前記ハウジングの上方又は下方に向く面に、前記電線押付片が形成され、前記ハウジングの前記端子が挿入される端子挿入部は、前記ハウジングの厚み方向において上下二段に形成されるとともに、上段と下段の前記端子挿入部は、前記端子がそれぞれ上下逆さまに挿入される形状であり、前記上段の前記端子挿入部は、前記ハウジングの上方に向く面に対応する面を上面とするとともに、前記下段の前記端子挿入部は、前記ハウジングの下方に向く面に対応する面を上面とし、前記上段及び前記下段の前記端子挿入部における上面にのみに、前記電線押付片が嵌る押付片貫通穴が形成され、前記上段の前記端子挿入部に、前記電線押付片が前記ハウジングの上方に向き、前記電線押付片が前記押付片貫通穴に嵌るように挿入され、下段の前記端子挿入部に、前記電線押付片が前記ハウジングの下方に向き、前記電線押付片が前記押付片貫通穴に嵌るように挿入され、前記切断端部の面方向が、前記ハウジングの上下方向に沿うコネクタである。
【0013】
この構成では、端子の電線押付片は、キャリアの面に垂直な方向、つまり上下方向に対して横臥する方向の面に形成されている。連鎖端子がリールに巻かれた場合などの取り扱い時に、横を向いた電線押付片を有する端子同士が上下方向に重なっても、電線押付片が外力を受けることを回避できる。また、端子がキャリアの長手方向に沿って離隔配設されているので、横を向いた電線押付片の先には空間がある。このため、電線押付片が横方向で他の端子と接触して外力を受けることも回避できる。このようにして、電線押付片の変形は防止される。
【0014】
また、前記端子におけるハウジングに装着された際に前記ハウジングの上方に向く面に、前記電線押付片が形成されているため、電線押付片のみではなく、端子の全体にとっての上面が横を向くことになる。端子の上面または下面にはハウジングに対する係止などに利用される係止や位置決めなど凸部のような構造が必要になることがあるので、このような構造も外力による荷重から保護され得る。このため、端子はハウジングに対して確実に装着可能であり、電線押付片の不測の変形が防止されることと相まって、電線押付片による電線の接続が所望通りに行える。
【0015】
この発明の態様として、前記端子が、電線を接続する電線接続部と、他の端子と接続する端子接続部を、前記キャリアから切り離された際にできる前記切断端部の側からこの順で有し、前記電線押付片が、前記電線接続部に形成された構成としてもよい。
【0016】
この構成では、電線押付片は、キャリア側に位置する電線接続部に形成されている。このため、キャリアから離れた端子接続部に形成される場合よりも、電線押付片を有する部分がキャリアの長手方向に振れる変位量が少なく、電線押付片が不要な外力を受ける可能性を低減できる。このことによっても電線押付片の不測の変形が防止されるので、電線押付片による電線の接続が所望通りに行える。
【0017】
この発明の態様として、前記電線押付片の幅が、前記電線押付片を有する部分の前記端子の幅よりも短い構成としてもよい。
【0018】
この構成では、連鎖端子がリールに巻かれた場合などの取り扱い時に、端子同士が上下方向に重なっても、上下に並ぶ端子において電線押付片同士が上下方向で当たることが防止される。電線押付片の不測の変形がより確実に防止されることによって、所望通りの電線の接続が確保できる。
【0019】
この発明の態様として、前記電線押付片が外方に突出するものであるとともに、前記電線押付片の突出高さが、前記端子を並設する前記ピッチよりも低い構成としてもよい。
【0020】
この構成では、電線押付片は横に突出していても、突出高さが端子の並設ピッチよりも低いので、電線押付片は、隣の端子と強く当たることが防止される。電線押付片の不測の変形がより確実に防止されることによって、所望通りの電線の接続が確保できる。
【0021】
この発明の態様として、前記端子が、前記キャリアの面に垂直な方向に突出する突起を有する構成としてもよい。
【0022】
この構成によれば、突起はハウジングやその他の部材に係合したりするための部位であっても、単に突出した構造であっても、存在することによって、連鎖端子がリールに巻かれた場合などの取り扱い時に上下に並ぶ端子において間隔を保持する。電線押付片の不測の変形がより確実に防止されることによって、所望通りの電線の接続が確保できる。
【0023】
課題を解決するための別の手段は、前述した連鎖端子の前記キャリアが、前記電線押付片の変形方向を周方向に向けてリールに巻かれたリール巻き連鎖端子である。
【0024】
この構成のリール巻き連鎖端子は、上下方向に重なる端子の電線押付片について、前述したように不測の変形が防止される。このため、リールに巻かれた連鎖端子の梱包や運搬などでたとえ激しく扱われても、電線の接続に際しては電線押付片に所期の機能を発揮させることができる。
【0025】
また、前記端子における前記キャリアから切り離した際にできる切断端部の面方向が、前記ハウジングの上下方向に沿っているため、端子の切断端部の面方向と、端子における電線接続のために変形する電線押付片の変形方向が同じである。切断端部は電線押付片が形成された部分の形状の強度をその面方向で高めるので、電線押付片の変形を所望通りに行わせることができる。このため、前述のようにして不測の変形が防止れされる電線押し付け片によっての電線接続に際して、端子に所期の機能を発揮させることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のようにこの発明によれば、電線押付片に外力がかからない構成を採用したので、使用前における電線押付片の変形を防止し、電線と端子とを所望通りに接続できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0029】
図1に、連鎖端子11の斜視図を示す。連鎖端子11は、複数の端子13がキャリア15を介してつながったものであり、1枚の導電性金属板で構成されている。このような連鎖端子11は、
図2に示したようにリール17に巻かれて、梱包、輸送等の取り扱いがなされる。
図2中、19は層間紙であり、連鎖端子11のキャリア15の長手方向に沿って配置され、ロール状に積層された連鎖端子11の異なる層同士の間に挿入される。
【0030】
複数の端子13をつなぐキャリア15は所定幅の帯状をなす長尺状である。キャリア15には、搬送等に必要な貫通穴51が形成されている。
【0031】
端子13は
図3にも示したように、全体として棒状に形成されており、電線21(
図8参照)を接続する電線接続部31と、他の端子と接続する端子接続部32を有している。つまり、長手方向の一端側に電線接続部31を有し、他端側に端子接続部32を有している。図示した端子13は、一例であり、電線接続部31と端子接続部32との間に他の機能を有する部位が存在する構成であってもよい。
【0032】
図1に示した端子13は、雌雄あるうちの雌端子13aであり、雌端子13aの端子接続部32は、
図4に示した雄端子13bの端子接続部32が差し込まれて、電気的に接続される部分である。雌端子13aと雄端子13bの端子接続部32の形状はそれぞれ異なるが、電線接続部31の構造は同一である。
【0033】
端子13はキャリア15の一方の側部に長手方向の一端を連続しており、端子13はキャリア15の長手方向に沿って一定のピッチで複数並設されている。電線接続部31と端子接続部32のうちキャリア15につながるのは、電線接続部31である。電線接続部31はキャリア15の側部から突出する細幅のつなぎ部52を介してつながっている。つまり端子13は、電線21を接続する電線接続部31と、他の端子と接続する端子接続部32を、キャリア15側からこの順で有している。
【0034】
端子13における主として電線接続部31の構造を、雌端子13aを例にして、次に説明する。
【0035】
電線接続部31は、電線21を挿入可能な中空状に形成されている。図示例の電線接続部31は四角筒形である。雌端子13aは、電線接続部31以外の部位も含めた全体が略四角筒形である。電線接続部31は四角筒形であるほか、円筒形や多角筒形などの他の形状であってもよい。
【0036】
端子13の電線接続部31は、軸周りの外面に、変形することによって挿入された電線21を押圧して接続する電線押付片33を有している。電線押付片33は、軸周りの外面である上面34aと下面34bと左右の側面34cのうちの上面34aに切り起こしにより形成されている。電線押付片33は外方に突出するものであり、弾性変形可能である。
【0037】
なお、上述の「上面34a」とは、端子13にとっての上面であり、キャリア15を有する連鎖端子11の上面(キャリア15の面にとって鉛直上方)とは異なる。この「上面34a」は、ハウジングに装着された際にハウジングの上方又は下方に向く面である。「下面34b」は上面34aと反対側の面であり、上面34aと同じくハウジングに装着された際にハウジングの上方又は下方に向く。「側面34c」は上面34aと下面34bを繋ぐ面であり、ハウジングに装着された際には、ハウジングの左右方向に向く。また、上面34aなどの表現は説明のための方向を示すものであって、製品で搭載された際の方向とは関係ない。
【0038】
電線押付片33は、電線接続部31に形成されているので、端子13のなかでもキャリア15に近い側の部位に形成されていることになる。
【0039】
電線押付片33は、前傾斜面33aと後傾斜面33bと後端湾曲部33cを有している。前傾斜面33aは、端子13の端部でもある電線接続部31の端部側から後方斜め上に向けて傾斜している。後傾斜面33bは前傾斜面33aの上端から下方に延びている。後端湾曲部33cは、後傾斜面33bの下端において曲がった部分であり、先端が前傾斜面33aの下面側である前方斜め上に向いている。前傾斜面33aから後端湾曲部33cまでの幅は同一である。
【0040】
このような電線押付片33に加えて、端子13の上面34aには、ハウジングに対する固定のための係止突起35と位置決め部36が形成されている。
【0041】
係止突起35は、弾性変形可能であり、端子13の長手方向における中間部の上面において、側面視三角形状に突出している。係止突起35の突出高さは、電線押付片33の突出高さHよりも低い。係止突起35の幅は長手方向全体にわたって同一である。
【0042】
位置決め部36は、端子接続部32の端部から適宜長さの部分を、上面の幅方向の略半分の領域において上方へ突出するように折り曲げて形成されている。位置決め部36の高さは係止突起35の高さよりも高いが、ハウジングにおける対応する部分の肉厚内に収まる高さである。
【0043】
このような雌端子13aは、
図5に示した雌型コネクタ22を構成するものである。雌型コネクタ22は、雌アウター部材23と、雌アウター部材23に嵌められる前述したハウジングとしての雌インナー部材24と、雌端子13aを有している。雌端子13aは、雌インナー部材24の内部で電線21と接続される。
【0044】
前述した雌端子13aの電線押付片33と係止突起35と位置決め部36の機能を、電線21の接続態様を示しながら次に説明する。
【0045】
図6は、雌インナー部材24と電線21と雌端子13aを示す斜視図であり、
図7は、雌インナー部材24の電線21と雌端子13aが挿入される部分を示す断面図である。
【0046】
雌インナー部材24の電線21が挿入される部分(以下、「電線挿入部25」という)は、適宜長さの断面円形の穴部で構成されている。穴部の先端部分は、径が先端側ほど小さくなる縮径部25aと、電線21のうちの芯線21aが通る小径部25bを有している。
【0047】
雌インナー部材24の雌端子13aが挿入される部分(以下、「端子挿入部26」という)は、電線挿入部25の小径部25bの先に連続して形成されており、断面形状は雌端子13aを挿入できる断面略四角形である。端子挿入部26の長さは雌端子13aの長さに対応している。
【0048】
雌インナー部材24の電線挿入部25と端子挿入部26は、雌インナー部材24の一部を除いて厚み方向において上下二段に形成されている。そして、上段と下段の電線挿入部25及び端子挿入部26は、端子13がそれぞれ上下逆さまに挿入される形状である。つまり、上段の端子挿入部26は、ハウジングの上方に向く面である雌インナー部材24の上面24aに対応する面を上面としている。また下段の端子挿入部26は、ハウジングの下方に向く面である雌インナー部材24の下面24bに対応する面を上面としている。
【0049】
なお、ハウジング(雌インナー部材24)の上面と下面の表現も、説明のための方向を示すものであって、製品で搭載された際の方向とは関係ない。
【0050】
このような端子挿入部26に挿入される雌端子13aは、ハウジングである雌インナー部材24に装着された際に雌インナー部材24の上方又は下方に向く面に、電線押付片33が形成されていることになる。
【0051】
上段と下段の端子挿入部26の上面、つまり雌インナー部材24の上面24aと下面24bには、雌端子13aの電線押付片33が嵌る押付片貫通穴27と、係止突起35が嵌る係止突起貫通穴28と、位置決め部36が収まる切り欠き部29が形成されている。
【0052】
押付片貫通穴27は、雌端子13aを端子挿入部26に途中まで挿入したときに嵌る位置に形成されている。具体的には位置決め部36を端子挿入部26から出した状態の電線押付片33に対応する位置に押付片貫通穴27は形成されている。
【0053】
電線押付片33が押付片貫通穴27に嵌っている状態で係止突起35に対応する位置には、前述した係止突起貫通穴28の一つとしての前段係止穴28aが形成されている。
【0054】
前段係止穴28aと押付片貫通穴27との間であって、雌端子13aを端子挿入部26に奥まで押し込んだときに係止突起35に対応する位置には、前述した係止突起貫通穴28の一つとしての後段係止穴28bが形成されている。
【0055】
切り欠き部29は、端子挿入部26の後端から位置決め部36に対応する長さの範囲にわたって形成されている。切り欠き部29より前方部分の上面は、後端ほど下がる傾斜面24cを有している。
【0056】
雌端子13aに対する電線21の接続は、
図6に示したように電線21と端子13をそれぞれ雌インナー部材24の反対方向から挿入して行う。まず、先に挿入した雌端子13aを奥まで挿入せずにその手前に保持する(
図8の(a)参照)。つまり、電線押付片33を押付片貫通穴27に嵌めた状態にする。つぎに、電線挿入部25に挿入した電線21の芯線21aを雌端子13aの電線挿入部25における軸心部に差し込む(
図8の(b)参照)。このあと、雌端子13aを端子挿入部26の奥まで押し込むと、電線押付片33が変形して、電線21を押圧し、電線21を電気的に接続するとともに、電線21を機械的に固定する。
【0057】
このような機能を果たす電線押付片33と係止突起35と位置決め部36を有する雌端子13aは、キャリア15に対して次の関係になるように形成される。つまり、
図1に示したように、電線押付片33の変形方向D1が、キャリア15の面に垂直な方向D2に対して横向きである。換言すれば、端子13の上面34aを横に向けている。横向きの角度は問わない。
【0058】
電線押付片33の寸法について説明すると、
図9に示したとおりである。すなわち、電線押付片33は前述したように外方に突出するものであり、電線押付片33の突出高さHは、端子13を並設するピッチPよりも低い。さらに言えば、電線押付片33の突出高さHは隣り合う端子13間の間隔Lよりも短い。また、電線押付片33の幅W1は、電線押付片33を有する部分の端子13の幅W2よりも短い。
【0059】
雄端子13bを有する連鎖端子11を、参考までに平面図である
図10に示す。この図に示すように、雄端子13bの電線接続部31は雌端子13aの電線接続部31と同じ構成である。
【0060】
以上のような構成の連鎖端子11は、プレス機(図示せず)で製造されたのち搬送されて、
図2に示したようにキャリア15が電線押付片33の変形方向D1を周方向に向けてリール17に巻かれる。リール17に巻かれた連鎖端子11は、リール巻き連鎖端子として、梱包され、運搬され、使用に際しての取り扱いがなされる。
【0061】
連鎖端子11の雌端子13aは、キャリア15から分離されて、前述したように
図6、
図8に示した如く電線21と接続されながら雌インナー部材24内に装着される。
【0062】
雌端子13aをキャリア15から切り離すと、
図3に示したように、切断されたつなぎ部52の一部が残った切断端部37が雌端子13aの端にできる。雌端子13aはキャリア15の面に垂直な方向D2に対して横転した姿勢でつながっているので、雌端子13aを雌インナー部材24に装着すると、切断端部37の面方向は、ハウジング、つまり雌インナー部材24の上下方向に沿うことになる。切断端部37が上下方向に延びる雌インナー部材24、ひいては雌型コネクタ22が得られる。端子13が雄端子13bである場合には、雄型コネクタ(図示せず)が得られる。
【0063】
前述したように端子13は、電線押付片33の変形方向D1をキャリア15の面に垂直な方向D2に対して横に向けている。このため、例えば連鎖端子11の搬送時に搬送路の周辺部品と接触することを回避できる。また、リール巻き連鎖端子とした場合などの取り扱い時に、端子13同士が上下方向に重なっても、
図11の(a)に示したように、電線押付片33が外力を受けることを回避できる。
【0064】
これに対して比較例の連鎖端子110を示す
図12に見られるように、電線押付片330の変形方向をキャリア150の面に垂直な方向に向けている場合には、
図11の(b)に仮想線で示したように、電線押付片330が外力を受けて下方へ変形してしまう。この場合には、電線押付片330が電線接続に際しての電線の挿入を阻害するので、電線の接続が所望通りに行えなくなる。
【0065】
前述のように上下方向からの荷重を回避できることは、電線押付片33の幅が、電線押付片33を有する部分の端子13の幅よりも短いことによって確実になる。
【0066】
また、電線押付片33の変形方向D1は隣り合う端子13方向に向いているうえに、電線押付片33は突出しているが、キャリア15の長手方向に沿って離隔配設された端子13の間には空間がある。このため、電線押付片33が横方向で他の端子13と接触して外力を受けることも回避できる。
【0067】
このように横方向からの荷重を回避できることは、電線押付片33の突出高さが、端子13を並設するピッチPよりも低いことによって確実になる。特に、電線押付片33の突出高さHは隣り合う端子13間の間隔Lよりも短いので、電線押付片33が外方に突出していても、より確実に横方向から荷重を受けることを回避できる。
【0068】
このようにして、電線押付片33の変形は防止される。この結果、電線押付片33の変形を防止し、端子13に所期の機能を発揮させて、電線21と端子13との所望通りの接続を行うことができる。特に端子13は、電線押付片33を有するものであって、電線押付片33は、電線21を差し込んだのちに変形させるだけで電線21を接続できるものである。この接続のためには電線押付片33の形状の精度が要求されるところ、電線押付片33は不測の変形が防止されるため、作業性向上、精度向上などに多大な貢献をする。
【0069】
電線押付片33がキャリア15に対して横向きであり、特に端子13の全体が横向きであるので、電線押付片33以外の係止突起35や位置決め部36も横向きである。このため、電線押付片33などが外方に突出するものであっても、リール17に巻かれた状態の高さを低くすることができる(
図11参照)。この結果、リール17に巻かれた状態のコンパクト化をはかることができ、取り扱う上での効率を高められる。
【0070】
さらに、端子13におけるハウジングに装着された際にハウジングの上方又は下方に向く面に、電線押付片33が形成されている。つまり、端子13の全体にとっての上面34aが横を向くことになる。このため、係止突起35や位置決め部36などの部位も、連鎖端子11の上下方向の重なりで荷重を受けることが回避される。この結果、雌インナー部材24に対する端子13の所望通りの確実な装着を実現できる。つまり、電線押付片33の不測の変形が防止されることと相まって、電線押付片33による電線21の接続が所望通りに行える。
【0071】
端子13は電線接続部31と端子接続部32を、キャリア15側からこの順で有し、電線押付片33が電線接続部31に形成されているので、電線押付片33を有する部分がキャリア15の長手方向に振れる変位量は小さい。つまり、隣接する別の端子13との間の距離が確保でき、電線押付片33が不要な外力を受ける可能性を低減することもできる。このことによっても電線押付片33の不測の変形が防止でき、電線押付片33による電線21の接続が所望通りに行える。
【0072】
加えて、前述の端子13を装着したコネクタ、すなわち雌型コネクタ22では、端子13の切断端部37の面方向と、端子13における電線接続のために変形する電線押付片33の変形方向D1が同じである。切断端部37は電線押付片33が形成された部分の形状の強度をその面方向で高めるので、電線押付片33の変形を所望通りに行わせることができる。このため、前述のようにして不測の変形が防止される電線押付片33によっての電線接続に際して、端子13に所期の機能を発揮させることができる。
【0073】
以下、その他の例について説明する。この説明おいて、前述の構成と同一の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0074】
図13は、他の例に係る連鎖端子11の正面図である。この図は端子13における電線押付片33が形成された面を正面に見た図である。この図に示すように、端子13の左右の両側面34c、つまり図面では上下の両面に、キャリア15の面に垂直な方向D2に突出する突起38が形成されている。これらの突起38は、内側に折り曲げる片の一部を外部に突出させるほか、単独で膨出形成したものであってもよい。
【0075】
この突起38は、連鎖端子11がリール17に巻かれた場合などの取り扱い時に上下に並ぶ端子13において間隔を保持する。電線押付片33の不測の変形がより確実に防止されるので、所望通りの電線21の接続が確保できる。
【0076】
以上はこの発明を実施するための一形態の構成であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することができる。
【0077】
たとえば、電線押付片33は外方に突出するものでなくてもよく、また弾性を有さず塑性変形するものであってよい。さらに、前述した電線押付片33の変形の態様は一例であって、その他の方法で変形する構成であってもよい。
【0078】
電線接続部31や端子接続部32を含む端子13の形状は一例であって、適宜設計できる。端子13は複数の部材を組み合わせて構成されるものであってもよい。
【0079】
連鎖端子11はキャリア15の両側の側部に端子13を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0080】
11…連鎖端子
13…端子
15…キャリア
17…リール
21…電線
22…雌型コネクタ
24…雌インナー部材
31…電線接続部
32…端子接続部
33…電線押付片
37…切断端部
38…突起