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特許7433995フィルム、フィルムの製造方法、および、袋
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】フィルム、フィルムの製造方法、および、袋
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240213BHJP
   B29C 48/30 20190101ALI20240213BHJP
   B29C 48/395 20190101ALI20240213BHJP
   B29C 48/53 20190101ALI20240213BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20240213BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20240213BHJP
   C08F 210/16 20060101ALI20240213BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20240213BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
B29C48/30
B29C48/395
B29C48/53
B65D30/02
B65D65/02 E
C08F210/16
B29K23:00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020042935
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021143281
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】越智 直子
(72)【発明者】
【氏名】豊田 博
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-053554(JP,A)
【文献】特開2001-002849(JP,A)
【文献】特開昭63-063731(JP,A)
【文献】特開平09-155985(JP,A)
【文献】特公昭51-014532(JP,B1)
【文献】特開昭53-028655(JP,A)
【文献】実開昭56-021518(JP,U)
【文献】国際公開第2020/050245(WO,A1)
【文献】特開2020-132877(JP,A)
【文献】特開2009-299038(JP,A)
【文献】特開2011-098544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
B65D 30/00-33/38
C08F 210/16
C08J 5/00-5/02
C08J 5/12-5/22
B65D 30/02
B65D 65/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含むフィルムであって、
フィルムの樹脂密度が860kg/m以上900kg/m未満であり、
少なくとも一方のフィルム表面において、算術平均高さSaが下記式[1]を満たし、
かつ、最小自己相関長さSalが下記式[2]を満たし、
0.10μm≦Sa≦0.50μm [1]
0.2μm≦Sal≦10.4μm [2]
前記樹脂が、
エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有し、密度が915kg/m 以上950kg/m 以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体(1)と、
エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有し、密度が850kg/m 以上890kg/m 未満であり、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.1g/10分以上10g/10分以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体(2)と、
の混合物であり、
前記エチレン-α-オレフィン共重合体(1)における炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位が、1-ブテンおよび1-ヘキセンからなる群から選ばれる少なくとも1種に基づく単量体単位である、フィルム。
【請求項2】
前記少なくとも一方のフィルム表面の算術平均高さSaが下記式[1’]を満たす、請求項1に記載のフィルム。
0.10μm≦Sa≦0.20μm [1’]
【請求項3】
前記少なくとも一方のフィルム表面の最小自己相関長さSalが下記式[2’]を満たす、請求項1または2に記載のフィルム。
7.0μm≦Sal≦10.4μm [2’]
【請求項4】
前記フィルムの樹脂密度が890kg/m以上900kg/m未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.0001g/10分以上0.2g/10分以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の密度が920kg/m以上935kg/m以下であり、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.001g/10分以上0.01g/10分以下であり、
前記エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の密度が880kg/m以上890kg/m未満であり、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートが1g/10分以上5g/10分以下である、請求項5に記載のフィルム。
【請求項7】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の含有量と、前記エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の含有量との合計100質量%に対して、
エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の含有量が5質量%以上25質量%以下であり、
エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の含有量が75質量%以上95質量%以下である、請求項5または6に記載のフィルム。
【請求項8】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の極限粘度が1.0dl/g以上2.0dl/g以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項9】
エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有し、密度が915kg/m以上950kg/m以下であり、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.0001g/10分以上0.2g/10分以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体(1)と、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有し、密度が850kg/m以上890kg/m未満であり、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.1g/10分以上10g/10分以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体(2)との混合物を、スクリューを備える押出機を用いて溶融混錬し、押し出す工程と、
押し出された混合物を成膜する工程と、を含み、
前記スクリューは、前記混合物を圧縮混練して下流側へ送る圧縮部を備え、
前記圧縮部は、回転主軸と、該回転主軸の外周に螺旋状に形成された螺旋羽根と、を有し、
前記回転主軸は、前記螺旋羽根のピッチ間に配されて螺旋状の溝を構成する螺旋溝部を有し、
前記螺旋溝部は、溝深さが前記混合物の進行方向に向かって徐々に大きくなるように形成される第1の領域と、溝深さが前記進行方向に向かって徐々に小さくなるように形成される第2の領域と、を含む、フィルムの製造方法。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載のフィルムをヒートシールしてなる袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、該フィルムの製造方法、および、前記フィルムをヒートシールしてなる袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、洗剤等の被包装物を包装するフィルムとして、基材フィルムとシーラントフィルムとを積層(ラミネート)させたラミネートフィルムが広く用いられている。シーラントフィルムには、ヒートシール性、滑り性、透明性及び強度に優れることが求められる。このような性能を有するシーラントフィルムとして、近年、エチレン-α-オレフィン共重合体を含有するフィルムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/164169号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被包装物を包装する袋として、二枚のフィルムの周縁部をヒートシールにより封止して開口部を設けた袋(例えば、二方袋、三方袋、合掌袋、ボトムシール袋、四方シール袋、スタンディングパウチ、ピロー包装等)が知られている。このような袋に用いられるフィルムには、ヒートシール強度が高いことに加えて、袋の開口部において密着した二枚のフィルムを剥がしやすくする観点から、開口強度が低いことが求められる。しかしながら、従来、ヒートシール強度および開口強度のバランスに着目したフィルムは検討されてこなかった。
【0005】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、ヒートシール強度および開口強度のバランスが良好なフィルム、該フィルムの製造方法、および、前記フィルムをヒートシールしてなる袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフィルムは、樹脂を含むフィルムであって、フィルムの樹脂密度が860kg/m以上900kg/m未満であり、少なくとも一方のフィルム表面において、算術平均高さSaが下記式[1]を満たし、かつ、最小自己相関長さSalが下記式[2]を満たす。
0.10μm≦Sa≦0.50μm [1]
0.2μm≦Sal≦10.4μm [2]
【0007】
本発明に係るフィルムの製造方法は、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有し、密度が915kg/m以上950kg/m以下であり、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.0001g/10分以上0.2g/10分以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体(1)と、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有し、密度が850kg/m以上890kg/m未満であり、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.1g/10分以上10g/10分以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体(2)との混合物を、スクリューを備える押出機を用いて溶融混錬し、押し出す工程と、押し出された混合物を成膜する工程と、を含み、前記スクリューは、前記混合物を圧縮混練して下流側へ送る圧縮部を備え、前記圧縮部は、回転主軸と、該回転主軸の外周に螺旋状に形成された螺旋羽根と、を有し、前記回転主軸は、前記螺旋羽根のピッチ間に配されて螺旋状の溝を構成する螺旋溝部を有し、前記螺旋溝部は、溝深さが前記混合物の進行方向に向かって徐々に大きくなるように形成される第1の領域と、溝深さが前記進行方向に向かって徐々に小さくなるように形成される第2の領域と、を含む。
【0008】
本発明に係る袋は、フィルムをヒートシールしてなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヒートシール強度および開口強度のバランスが良好なフィルム、該フィルムの製造方法、および、前記フィルムをヒートシールしてなる袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態におけるスクリューの圧縮部の一部を模式的に示す図である。
図2図2は、比較例におけるスクリューの圧縮部の一部を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
<定義>
本明細書において、下記の用語は次のように定義されるか、または説明される。
「エチレン系重合体」とは、エチレンに基づく単量体単位を有する重合体であって、該重合体の全質量を100質量%としたとき、エチレンに基づく単量体単位の含有量が50質量%以上である重合体をいう。
「エチレン-α-オレフィン共重合体」とは、エチレンに基づく単量体単位と、α-オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体であって、該共重合体の全質量を100質量%としたとき、エチレンに基づく単量体単位とα-オレフィンに基づく単量体単位との合計含有量が95質量%以上である共重合体をいう。
「α-オレフィン」とは、α位に炭素-炭素不飽和二重結合を有する直鎖状または分岐状のオレフィンをいう。
「エチレン系樹脂組成物」とは、エチレン系重合体を含有する組成物をいう。
「滑剤」とは、それが加えられる材料の摩擦係数を低下させる作用を有する剤をいう。
「アンチブロッキング剤」とは、フィルムの保存中または使用中にフィルム同士が互着、粘着または融着して剥がれなくなることを防止する機能を有する剤をいう。
【0013】
本明細書における密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980に規定されたA法に従い測定される値(単位:kg/m)をいう。
本明細書におけるメルトフローレート(以下、MFRともいう)は、JIS K7210-1995に規定されたA法に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定される値(単位:g/10分)をいう。
【0014】
本明細書における数平均分子量(以下、Mnともいう)および重量平均分子量(以下、Mwともいう)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により求められる。また、GPC測定は、次の条件で行う。
・GPC装置:HLC-8121GPC/HT(東ソー社製)
・GPCカラム:TSKgelGMH-HT(東ソー社製)×3本
・測定温度:140℃
・溶媒および移動相:0.05質量%のジブチルヒドロキシトルエンを含有するオルトジクロロベンゼン(和光特級)
・移動相流速:1.0mL/分
・注入量:300μL
・検出器:示差屈折
・分子量標準物質:標準ポリスチレン
・データ取り込み間隔:2.5秒
【0015】
<フィルム>
本実施形態に係るフィルムは、樹脂を含む。フィルムの樹脂密度は、860kg/m以上900kg/m未満であり、890kg/m以上900kg/m未満であることが好ましい。
【0016】
なお、本明細書において「樹脂密度」とは、該フィルムに含まれる樹脂成分の密度をいう。フィルムは、無機成分を含んでいてもよい。フィルムが無機成分を含まない場合は、フィルムの密度をフィルムの樹脂密度とする。フィルムが無機成分を含む場合は、フィルムから無機成分を除いた樹脂成分の密度を樹脂密度とする。樹脂成分とは、フィルム中の無機成分以外の成分をいう。
【0017】
フィルムの樹脂密度は、上述の方法で密度を測定した後、フィルムに含有される樹脂の質量比率に基づき、求めることができる。
【0018】
フィルムの樹脂密度は、例えば、後述するエチレン-α-オレフィン共重合体(1)またはエチレン-α-オレフィン共重合体(2)の含有量または密度を調整することによって、860kg/m以上900kg/m未満の範囲に制御することができる。
【0019】
本実施形態に係るフィルムは、少なくとも一方のフィルム表面において、算術平均高さSaが下記式[1]を満たし、かつ、最小自己相関長さSalが下記式[2]を満たす。
0.10μm≦Sa≦0.50μm [1]
0.2μm≦Sal≦10.4μm [2]
【0020】
ここで、算術平均高さとは、ISO25178-2で規定されるSaをいう。Saは、以下の方法により求めることができる。まず、白色干渉顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、フィルム表面を対物レンズ110倍で測定する。次に、得られた視野サイズ80μm×60μmの画像に対して、日立ハイテクノロジーズ社製「VS-viewer」を用いて面補正(傾斜補正)を行う。具体的には、サンプル面のZ方向の凹凸の絶対値の二乗の総和が最も小さくなる面を計算し、傾いているサンプル面が水平となるように面補正を行う。さらに、面補正された画像に対して、ISO25178-2に規定されたS-Filterの値を用いて処理する。具体的には、Lateral Period Limit(光学分解能の1/2、0.17μm)をカットオフ値としてフィルター処理を行い、短波長成分のノイズを除去する。処理された画像から、ISO25178-2に規定されるSaを求めることができる。
【0021】
少なくとも一方のフィルム表面の算術平均高さSaは、下記式[1’]を満たすことが好ましい。
0.10μm≦Sa≦0.20μm [1’]
【0022】
また、最小自己相関長さとは、ISO25178-2で規定されるSalをいう。Salは、算術平均高さSaと同様の方法により処理された画像から求めることができる。
【0023】
少なくとも一方のフィルム表面の最小自己相関長さSalは、下記式[2’]を満たすことが好ましい。
7.0μm≦Sal≦10.4μm [2’]
【0024】
算術平均高さSaは、後述するフィルムの製造方法において、圧縮部4における螺旋溝部43が、溝深さが混合物の進行方向に向かって徐々に大きくなるように形成される第1の領域A1と、溝深さが前記進行方向に向かって徐々に小さくなるように形成される第2の領域A2と、を含むスクリュー3を用いて、フィルムの加工温度を調整することにより、0.10μm≦Sa≦0.50μmの範囲に制御することができる。より詳しくは、フィルムの加工温度を180℃以下にすることにより、Saを0.50μm以下とすることができる。
【0025】
最小自己相関長さSalは、後述するフィルムの製造方法において、圧縮部4における螺旋溝部43が、溝深さが混合物の進行方向に向かって徐々に大きくなるように形成される第1の領域A1と、溝深さが前記進行方向に向かって徐々に小さくなるように形成される第2の領域A2と、を含むスクリュー3を用いて、後述するエチレン-α-オレフィン共重合体(1)の含有量を調整することにより、0.2μm≦Sal≦10.4μmの範囲に制御することができる。より詳しくは、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の含有量を5質量%以上にすることにより、Salを0.2μm以上とすることができる。また、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の含有量を25質量%以下にすることにより、Salを10.4μm以下とすることができる。
【0026】
本実施形態の一態様として、フィルムの樹脂密度が890kg/m以上900kg/m未満であり、少なくとも一方のフィルム表面において、算術平均高さSaが下記式[1’]を満たし、かつ、最小自己相関長さSalが下記式[2’]を満たすフィルムが挙げられる。該フィルムは、ヒートシール強度および開口強度のバランスがより良好である。
0.10μm≦Sa≦0.20μm [1’]
7.0μm≦Sal≦10.4μm [2’]
【0027】
本実施形態に係るフィルムに含まれる樹脂は、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有し、密度が915kg/m以上950kg/m以下であり、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.0001g/10分以上0.2g/10分以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体(1)と、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有し、密度が850kg/m以上890kg/m未満であり、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.1g/10分以上10g/10分以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体(2)と、の混合物であることが好ましい。
【0028】
より好ましくは、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の密度が920kg/m以上935kg/m以下であり、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.001g/10分以上0.01g/10分以下であり、エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の密度が880kg/m以上890kg/m未満であり、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートが1g/10分以上5g/10分以下である。
【0029】
エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の密度を915kg/m以上950kg/m以下、エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の密度を850kg/m以上890kg/m未満とすることで、フィルムの樹脂密度を860kg/m以上900kg/m未満とすることができる。
【0030】
また、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の密度を920kg/m以上935kg/m以下、エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の密度を880kg/m以上890kg/m未満とすることで、フィルムの樹脂密度を890kg/m以上900kg/m未満とすることができる。
【0031】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の含有量と、前記エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の含有量との合計100質量%に対して、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の含有量は、5質量%以上25質量%以下であることが好ましく、8質量%以上23質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の含有量と、前記エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の含有量との合計100質量%に対して、エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の含有量は、75質量%以上95質量%以下であることが好ましく、77質量%以上92質量%以下であることがより好ましい。
【0033】
本実施形態の一態様として、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の含有量と、エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の含有量との合計100質量%に対して、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の含有量が5質量%以上25質量%以下であり、エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の含有量が75質量%以上95質量%以下であるフィルムが挙げられる。
【0034】
エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の含有量と、エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の含有量との合計100質量%に対して、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の含有量を5質量%以上25質量%以下、エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の含有量を75質量%以上95質量%以下とすることで、フィルムの樹脂密度を860kg/m以上900kg/m未満とすることができる。
【0035】
樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のブレンド方法が挙げられる。公知のブレンド方法としては、例えば、各共重合体をドライブレンドする方法、メルトブレンドする方法等が挙げられる。ドライブレンドする方法としては、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーを用いる方法が挙げられる。メルトブレンドする方法としては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の各種ミキサーを用いる方法が挙げられる。
【0036】
樹脂として、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)とエチレン-α-オレフィン共重合体(2)との混合物を用いることにより、滑り性に優れたフィルムを得ることができる。エチレン-α-オレフィン共重合体(1)は、滑り改質剤として使用できる。
【0037】
本実施形態に係るフィルムは、滑剤および/またはアンチブロッキング剤を含んでいてもよい。さらに、添加剤として、例えば、酸化防止剤、中和剤、耐候剤、帯電防止剤、防曇剤、無滴剤、顔料またはフィラーを含んでいてもよい。
【0038】
本実施形態に係るフィルムは、滑剤および/またはアンチブロッキング剤を含む場合、その含有量が、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の含有量と、エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の含有量との合計100質量%に対して、5.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることがさらに好ましく、2.0質量%以下であることが特に好ましい。本実施形態に係るフィルムは、滑剤および/またはアンチブロッキング剤を実質的に含有しないことが好ましい。
【0039】
本実施形態に係るフィルムは、樹脂密度が860kg/m以上900kg/m未満であり、少なくとも一方のフィルム表面において、算術平均高さSaが上記式(1)を満たし、かつ、最小自己相関長さSalが上記式(2)を満たすフィルムからなる層(以下、層αともいう)のみからなる単層フィルムであってもよいし、該層αを含む多層フィルムであってもよい。前記フィルムが多層フィルムである場合、多層フィルムが有する2つの表面層のうち、すくなくとも一方の表面層が層αであり、多層フィルムの少なくとも一方のフィルム表面において、算術平均高さSaが上記式(1)を満たし、かつ、最小自己相関長さSalが上記式(2)を満たす多層フィルムであってもよい。
【0040】
前記フィルムは、層αと、エチレン系重合体を含む層β(ただし、層βは前記層αと異なる)とを有する多層フィルムであって、該多層フィルムが有する2つの表面層のうち、少なくとも一方の表面層が、層αである多層フィルムであってもよい。
【0041】
前記フィルムは、層αと、エチレン系重合体を含まない層γ(ただし、層γは前記層αと異なる)とを有する多層フィルムであって、該多層フィルムが有する2つの表面層のうち、少なくとも一方の表面層が、層αである多層フィルムであってもよい。
【0042】
前記多層フィルムにおいて、層βに含まれるエチレン系重合体としては、例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)を含まないエチレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0043】
前記多層フィルムにおいて、層γを構成する材料としては、例えば、セロハン、紙、板紙、織物、アルミニウム箔、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。
【0044】
層αと層γとを有する多層フィルムであって、該多層フィルムが有する2つの表面層のうち、少なくとも一方の表面層が、層αである多層フィルムとしては、例えば、層αと層γとを有する二層フィルムであって、一方の表面層が層αであり、他方の表面層が層γである二層フィルムが挙げられる。
【0045】
層αと層γとを有する多層フィルムであって、該多層フィルムが有する2つの表面層のうち、少なくとも一方の表面層が、層αである多層フィルムとしては、例えば、層αと層βと層γとを有する多層フィルムであって、一方の表面層が層αであり、他方の表面層が層γである多層フィルムが挙げられる。
【0046】
単層フィルムおよび多層フィルムの製造方法としては、例えば、インフレーションフィルム成形法やTダイフィルム成形法等の押出成形法、射出成形法、圧縮成形法等が挙げられる。単層フィルムおよび多層フィルムの製造方法は、インフレーションフィルム成形法であることが好ましい。
【0047】
多層フィルムが、層αと層γとを有する多層フィルムである場合、該多層フィルムの製造方法としては、例えば、層αのみからなる単層フィルム、または、層αと層βとを有する多層フィルムを、層γにラミネートするラミネーション法が挙げられる。ラミネーション法としては、例えば、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、サンドラミネート法等が挙げられる。ラミネーション法は、ドライラミネート法であることが好ましい。
【0048】
<エチレン-α-オレフィン共重合体(1)>
エチレン-α-オレフィン共重合体(1)中の炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位を形成する炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられる。これらの中でも、炭素原子数3~20のα-オレフィンは、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、または、1-オクテンであることが好ましく、1-ヘキセン、または、1-オクテンであることがより好ましい。炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
エチレン-α-オレフィン共重合体(1)は、全質量を100質量%としたとき、エチレンに基づく単量体単位の含有量が80質量%以上97質量%以下であることが好ましい。また、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)は、全質量を100質量%としたとき、炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位の含有量が3質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0050】
エチレン-α-オレフィン共重合体(1)は、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン以外の単量体に基づくその他の単量体単位を有していてもよい。その他の単量体としては、例えば、ブタジエンまたはイソプレン等の共役ジエン;1,4-ペンタジエン等の非共役ジエン;アクリル酸;アクリル酸メチルまたはアクリル酸エチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル;酢酸ビニル等が挙げられる。
【0051】
エチレン-α-オレフィン共重合体(1)は、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数4~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体であることが好ましく、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数5~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体であることがより好ましく、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数6~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体であることがさらに好ましい。
【0052】
エチレン-α-オレフィン共重合体(1)としては、例えば、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ブテン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体等が挙げられる。これらの中でも、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)は、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、または、エチレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体であることが好ましく、エチレン-1-ヘキセン共重合体、または、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体であることがより好ましい。
【0053】
エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の密度は、フィルムの滑り性を向上させる観点から、915kg/m以上であることが好ましく、920kg/m以上であることがより好ましい。また、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の密度は、フィルムのフィッシュアイのような外観不良を低減する観点から、950kg/m以下であることが好ましく、935kg/m以下であることがより好ましい。エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の密度は、一つの態様において915kg/m以上950kg/m以下であり、他の態様において920kg/m以上935kg/m以下である。エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の密度は、後述するエチレン-α-オレフィン共重合体(1)の製造方法において、気相重合時のα-オレフィン濃度を調整することにより、915kg/m以上950kg/m以下の範囲に調整することができる。
【0054】
エチレン-α-オレフィン共重合体(1)のメルトフローレート(MFR)は、フィルムの製膜時の押出負荷を低減する観点から、0.0001g/10分以上であることが好ましく、0.001g/10分以上であることがより好ましい。また、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)のMFRは、フィルムの滑り性を向上させる観点から、0.2g/10分以下であることが好ましく、0.01g/10分以下であることがより好ましい。エチレン-α-オレフィン共重合体(1)のMFRは、一つの態様において0.0001g/10分以上0.2g/10分以下であり、他の態様において0.001g/10分以上0.01g/10分以下である。なお、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)のMFRの測定では、通常、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)に酸化防止剤を1000ppm程度配合した試料を用いる。エチレン-α-オレフィン共重合体(1)のMFRは、後述するエチレン-α-オレフィン共重合体(1)の製造方法において、気相重合時の連鎖移動剤濃度を調整することにより、0.0001g/10分以上0.2g/10分以下の範囲に調整することができる。
【0055】
エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の重量平均分子量(Mw)は、フィルムに良好な開口性を与える観点から、10万以上であることが好ましく、11万以上であることがより好ましく、12万以上であることが特に好ましい。また、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)のMwは、フィルムのフィッシュアイのような外観不良を低減する観点から、15万以下であることが好ましく、14万以下であることがより好ましく、13万以下であることが特に好ましい。エチレン-α-オレフィン共重合体(1)のMwは、一つの態様において10万以上15万以下であり、他の態様において11万以上14万以下である。
【0056】
エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)は、フィルムの滑り性を向上させる観点から、7.0以上であることが好ましく、7.5以上であることがより好ましい。また、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)のMw/Mnは、フィルムの製膜時の押出負荷を低減する観点から、9.0以下であることが好ましく、8.5以下であることがより好ましい。エチレン-α-オレフィン共重合体(1)のMw/Mnは、一つの態様において7.0以上9.0以下であり、他の態様において7.5以上8.5以下である。
【0057】
エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の極限粘度(以下、[η]ともいう;単位はdl/gである。)は、フィルムの滑り性を向上させる観点から、1.0dl/g以上であることが好ましく、1.2dl/g以上であることがより好ましく、1.3dl/g以上であることがさらに好ましい。また、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の[η]は、フィルムのフィッシュアイのような外観不良を低減する観点から、2.0dl/g以下であることが好ましく、1.9dl/g以下であることがより好ましく、1.7dl/g以下であることがさらに好ましい。エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の[η]は、一つの態様において1.0dl/g以上2.0dl/g以下であり、他の態様において1.2dl/g以上1.9dl/g以下であり、さらに他の態様において、1.3dl/g以上1.7dl/g以下である。エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の[η]は、テトラリンを溶媒として用い、温度135℃でウベローデ型粘度計を用いて測定することができる。
【0058】
エチレン-α-オレフィン共重合体(1)は、例えば、活性化助触媒成分(以下、成分(I)ともいう)が微粒子状担体に担持されてなる助触媒担体(以下、成分(H)ともいう)と、メタロセン系錯体と、電子供与性化合物と、を接触させることにより得られるオレフィン重合触媒の存在下、エチレンとα-オレフィンとを共重合することにより製造することができる。
【0059】
成分(I)としては、亜鉛化合物が挙げられる。亜鉛化合物としては、例えば、ジエチル亜鉛(以下、成分(a)ともいう)と、フッ素化フェノール(以下、成分(b)ともいう)と、水(以下、成分(c)ともいう)と、を接触させることにより得られる化合物が挙げられる。
【0060】
成分(b)としては、例えば、3,4,5-トリフルオロフェノール、3,4,5-トリス(トリフルオロメチル)フェノール、3,4,5-トリス(ペンタフルオロフェニル)フェノール、3,5-ジフルオロ-4-ペンタフルオロフェニルフェノール、4,5,6,7,8-ペンタフルオロ-2-ナフトール等が挙げられる。これらの中でも、成分(b)は、3,4,5-トリフルオロフェノールであることが好ましい。
【0061】
微粒子状担体とは、50%体積平均粒子径が10~500μmである多孔質の物質である。50%体積平均粒子径は、例えば、光散乱式レーザー回折法により測定される。微粒子状担体としては、例えば、無機物質、有機ポリマー等が挙げられる。無機物質としては、例えば、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO等の無機酸化物;スメクタイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ラポナイト、サポナイト等の粘土および粘土鉱物等が挙げられる。有機ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体等が挙げられる。微粒子状担体は、無機物質からなる微粒子状担体(以下、無機微粒子状担体と称する)であることが好ましい。
【0062】
微粒子状担体の細孔容量は、通常0.3~10mL/gである。微粒子状担体の比表面積は、通常10~1000m/gである。細孔容量と比表面積は、ガス吸着法により測定され、細孔容量はガス脱着量をBJH法で、比表面積はガス吸着量をBET法で解析することにより求められる。
【0063】
成分(H)は、成分(I)が微粒子状担体に担持されてなる担体である。成分(H)は、成分(I)であるジエチル亜鉛(成分(a))、フッ素化フェノール(成分(b))および水(成分(c))と、無機微粒子状担体(以下、成分(d)ともいう)と、トリメチルジシラザン(((CH33Si)2NH)(以下、成分(e)ともいう)と、を接触させて得ることができる。
【0064】
成分(d)は、シリカゲルであることが好ましい。
【0065】
成分(I)の製造方法において、成分(a)、成分(b)、成分(c)の各成分の使用量は、各成分の使用量のモル比率を成分(a):成分(b):成分(c)=1:y:zとするとき、yおよびzが下記式を満足するように使用することができる。
|2-y-2z|≦1 [3]
z≧-2.5y+2.48 [4]
y<1 [5]
(上記式[3]~[5]において、yおよびzは0よりも大きな数を表す。)
【0066】
成分(a)の使用量に対する成分(b)の使用量のモル比率y、および、成分(a)の使用量に対する成分(c)の使用量のモル比率zは、上記式[3]、[4]および[5]を満たす限り特に制限されない。yは、通常0.55~0.99であり、0.55~0.95であることが好ましく、0.6~0.9であることがより好ましく、0.7~0.8であることがさらに好ましい。エチレン-α-オレフィン共重合体(1)を得るためには、yが0.55以上であることが好ましい。yが1以上であると、得られるエチレン-α-オレフィン共重合体を含むフィルムは、フィッシュアイのような外観不良を起こす場合がある。
【0067】
成分(a)と成分(d)との接触により得られる粒子1gに含まれる成分(a)に由来する亜鉛原子のモル数は、好ましくは0.1mmol以上、より好ましくは0.5~20mmolとなるように成分(a)と成分(b)との使用量を調整する。成分(d)に対する成分(e)の使用量は、成分(d)1gに対して、成分(e)0.1mmol以上あることが好ましく、0.5~20mmolであることがより好ましい。
【0068】
メタロセン系錯体とは、シクロペンタジエン形アニオン骨格を含む配位子を有する遷移金属化合物である。メタロセン系錯体としては、下記一般式[6]で表される遷移金属化合物、または、そのμ-オキソタイプの遷移金属化合物二量体が好ましい。
・・・[6]
(式中、Mは周期律表第3~11族もしくはランタノイド系列の遷移金属原子である。Lはシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基であり、複数のLは互いに直接連結されているか、または、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子もしくはリン原子を含有する残基を介して連結されていてもよい。Xはハロゲン原子、炭化水素基(但し、シクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基を除く)、または、炭化水素オキシ基である。aは2、bは2を表す。)
【0069】
一般式[6]において、Mは周期律表(IUPAC1989年)第3~11族もしくはランタノイド系列の遷移金属原子であり、例えば、スカンジウム原子、イットリウム原子、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、バナジウム原子、ニオビウム原子、タンタル原子、クロム原子、鉄原子、ルテニウム原子、コバルト原子、ロジウム原子、ニッケル原子、パラジウム原子、サマリウム原子、イッテルビウム原子等が挙げられる。一般式[6]におけるMは、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、バナジウム原子、クロム原子、鉄原子、コバルト原子またはニッケル原子であることが好ましく、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であることがより好ましく、ジルコニウム原子であることがさらに好ましい。
【0070】
一般式[6]において、Lはη-(置換)インデニル基であり、2つのLは同じであっても異なっていてもよい。2つのLは互いに、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子もしくはリン原子を含有する架橋基を介して連結されている。η-(置換)インデニル基とは、置換基を有していてもよいη-インデニル基を表す。
【0071】
におけるη-(置換)インデニル基としては、少なくとも、5位、6位が水素原子であるη-(置換)インデニル基であり、具体的には、η-インデニル基、η-2-メチルインデニル基、η-3-メチルインデニル基、η-4-メチルインデニル基、η-7-メチルインデニル基、η-2-tert-ブチルインデニル基、η-3-tert-ブチルインデニル基、η-4-tert-ブチルインデニル基、η-7-tert-ブチルインデニル基、η-2,3-ジメチルインデニル基、η-4,7-ジメチルインデニル基、η-2,4,7-トリメチルインデニル基、η-2-メチル-4-イソプロピルインデニル基、η-4-フェニルインデニル基、η-2-メチル-4-フェニルインデニル基、η-2-メチル-4-ナフチルインデニル基、これらの置換体等が挙げられる。なお、本明細書においては、遷移金属化合物の名称については「η-」を省略することがある。Lは、インデニル基であることが好ましい。
【0072】
2つの(置換)インデニル基は、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子もしくはリン原子を含有する架橋基を介して連結されている。架橋基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基;ジメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基等の置換アルキレン基;シリレン基、ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、テトラメチルジシリレン基等の置換シリレン基;窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子等のヘテロ原子等が挙げられる。架橋基は、エチレン基、ジメチルメチレン基、ジメチルシリレン基であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。
【0073】
一般式[6]におけるXとしては、ハロゲン原子、炭化水素基(但し、シクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基を除く)、炭化水素オキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基等が挙げられる。炭化水素オキシ基としては、例えば、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。
【0074】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-ペンタデシル基、n-エイコシル基等が挙げられる。アルキル基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子で置換されたアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、フルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パークロロプロピル基、パークロロブチル基、パーブロモプロピル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、いずれも、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基等で、その一部の水素原子が置換されていてもよい。
【0075】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、(2-メチルフェニル)メチル基、(3-メチルフェニル)メチル基、(4-メチルフェニル)メチル基、(2,3-ジメチルフェニル)メチル基、(2,4-ジメチルフェニル)メチル基、(2,5-ジメチルフェニル)メチル基、(2,6-ジメチルフェニル)メチル基、(3,4-ジメチルフェニル)メチル基、(3,5-ジメチルフェニル)メチル基、(2,3,4-トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,5-トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,6-トリメチルフェニル)メチル基、(3,4,5-トリメチルフェニル)メチル基、(2,4,6-トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,5-テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,6-テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,5,6-テトラメチルフェニル)メチル基、(ペンタメチルフェニル)メチル基、(エチルフェニル)メチル基、(n-プロピルフェニル)メチル基、(イソプロピルフェニル)メチル基、(n-ブチルフェニル)メチル基、(sec-ブチルフェニル)メチル基、(tert-ブチルフェニル)メチル基、(n-ペンチルフェニル)メチル基、(ネオペンチルフェニル)メチル基、(n-ヘキシルフェニル)メチル基、(n-オクチルフェニル)メチル基、(n-デシルフェニル)メチル基、(n-ドデシルフェニル)メチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基等が挙げられる。アラルキル基は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基を置換基として有していてもよい。
【0076】
アリール基としては、例えば、フェニル基、2-トリル基、3-トリル基、4-トリル基、2,3-キシリル基、2,4-キシリル基、2,5-キシリル基、2,6-キシリル基、3,4-キシリル基、3,5-キシリル基、2,3,4-トリメチルフェニル基、2,3,5-トリメチルフェニル基、2,3,6-トリメチルフェニル基、2,4,5-トリメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、3,4,5-トリメチルフェニル基、2,3,4,5-テトラメチルフェニル基、2,3,4,6-テトラメチルフェニル基、2,3,5,6-テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n-プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n-ブチルフェニル基、sec-ブチルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、n-ペンチルフェニル基、ネオペンチルフェニル基、n-ヘキシルフェニル基、n-オクチルフェニル基、n-デシルフェニル基、n-ドデシルフェニル基、n-テトラデシルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。アリール基は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基等を置換基として有していてもよい。
【0077】
アルケニル基としては、例えば、アリル基、メタリル基、クロチル基、1,3-ジフェニル-2-プロペニル基等が挙げられる。
【0078】
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、ネオペントキシ基、n-ヘキソキシ基、n-オクトキシ基、n-ドデソキシ基、n-ペンタデソキシ基、n-イコソキシ基等が挙げられる。アルコキシ基は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基等を置換基として有していてもよい。
【0079】
アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、(2-メチルフェニル)メトキシ基、(3-メチルフェニル)メトキシ基、(4-メチルフェニル)メトキシ基、(2、3-ジメチルフェニル)メトキシ基、(2、4-ジメチルフェニル)メトキシ基、(2、5-ジメチルフェニル)メトキシ基、(2、6-ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,4-ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,5-ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4-トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5-トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,6-トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,5-トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,6-トリメチルフェニル)メトキシ基、(3,4,5-トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,5-テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,6-テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5,6-テトラメチルフェニル)メトキシ基、(ペンタメチルフェニル)メトキシ基、(エチルフェニル)メトキシ基、(n-プロピルフェニル)メトキシ基、(イソプロピルフェニル)メトキシ基、(n-ブチルフェニル)メトキシ基、(sec-ブチルフェニル)メトキシ基、(tert-ブチルフェニル)メトキシ基、(n-ヘキシルフェニル)メトキシ基、(n-オクチルフェニル)メトキシ基、(n-デシルフェニル)メトキシ基、ナフチルメトキシ基、アントラセニルメトキシ基等が挙げられる。アラルキルオキシ基は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基等を置換基として有していてもよい。
【0080】
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、2-メチルフェノキシ基、3-メチルフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、2、3-ジメチルフェノキシ基、2、4-ジメチルフェノキシ基、2、5-ジメチルフェノキシ基、2、6-ジメチルフェノキシ基、3,4-ジメチルフェノキシ基、3,5-ジメチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-3-メチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-5-メチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-メチルフェノキシ基、2,3,4-トリメチルフェノキシ基、2,3,5-トリメチルフェノキシ基、2,3,6-トリメチルフェノキシ基、2,4,5-トリメチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-3,4-ジメチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-3,5-ジメチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-3,6-ジメチルフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチル-3-メチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-4,5-ジメチルフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ基、3,4,5-トリメチルフェノキシ基、2,3,4,5-テトラメチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-3,4,5-トリメチルフェノキシ基、2,3,4,6-テトラメチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-3,4,6-トリメチルフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチル-3,4-ジメチルフェノキシ基、2,3,5,6-テトラメチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-3,5,6-トリメチルフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチル-3,5-ジメチルフェノキシ基、ペンタメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、n-プロピルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、n-ブチルフェノキシ基、sec-ブチルフェノキシ基、tert-ブチルフェノキシ基、n-ヘキシルフェノキシ基、n-オクチルフェノキシ基、n-デシルフェノキシ基、n-テトラデシルフェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基等を置換基として有していてもよい。Xは、塩素原子、メトキシ基、フェノキシ基であることが好ましく、塩素原子、フェノキシ基であることがより好ましく、フェノキシ基であることがさらに好ましい。
【0081】
メタロセン系錯体の具体例としては、ジメチルシリレンビス(インデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2-メチルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2-tert-ブチルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2,3-ジメチルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2,4,7-トリメチルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-イソプロピルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2-フェニルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(4-フェニルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-ナフチルインデニル)チタンジクロライド、これらの化合物のチタンをジルコニウムまたはハフニウムに変更した化合物、ジメチルシリレンをメチレン、エチレン、ジメチルメチレン(イソプロピリデン)、ジフェニルメチレン、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレンまたはジメトキシシリレンに変更した化合物、ジクロライドをジフルオライド、ジブロマイド、ジアイオダイド、ジメチル、ジエチル、ジイソプロピル、ジフェニル、ジベンジル、ジメトキシド、ジエトキシド、ジ(n-プロポキシド)、ジ(イソプロポキシド)、ジフェノキシドまたはジ(ペンタフルオロフェノキシド)に変更した化合物等が挙げられる。
【0082】
メタロセン系錯体は、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルメチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジフェノキシド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジフェノキシド、または、ジメチルメチレンビス(インデニル)ジルコニウムジフェノキシドであることが好ましく、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジフェノキシドであることがより好ましい。
【0083】
メタロセン系錯体の使用量は、成分(H)1gに対して、5×10-6~5×10-4molであることが好ましい。
【0084】
電子供与性化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリイソブチルアミン、トリノルマルオクチルアミン等が挙げられる。これらの中でも、電子供与性化合物は、トリエチルアミンであることが好ましい。
【0085】
オレフィン重合触媒は、成分(H)と、メタロセン系錯体と、有機アルミニウム化合物と、電子供与性化合物と、を接触させてなるオレフィン重合触媒であることが好ましい。
【0086】
有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウムトリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウムが挙げられ、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウムであることが好ましく、トリイソブチルアルミニウムであることがより好ましい。
【0087】
有機アルミニウム化合物の使用量は、メタロセン系錯体の金属原子モル数に対する有機アルミニウム化合物のアルミニウム原子のモル数の比(Al/M)で表して、1~2000であることが好ましい。
【0088】
電子供与性化合物の使用量は、有機アルミニウム化合物のアルミニウム原子のモル数に対して、1~50mol%であることが好ましく、3~20mol%であることがより好ましい。
【0089】
成分(H)と、メタロセン系錯体と、有機アルミニウム化合物と、電子供与性化合物と、を接触させてなるオレフィン重合触媒においては、必要に応じて、酸素を接触させてなる重合触媒としてもよい。
【0090】
酸素の使用量は、有機アルミニウム化合物のアルミニウム原子のモル数に対して、1~100mol%であることが好ましく、5~80mol%であることがより好ましく、10~40mol%であることがさらに好ましい。
【0091】
オレフィン重合触媒は、成分(H)と、メタロセン系錯体と、有機アルミニウム化合物と、電子供与性化合物と、を接触させてなる触媒成分の存在下、少量のエチレンと炭素原子数3~20のα-オレフィンとを重合(以下、予備重合ともいう)して得られた予備重合触媒成分を含むことが好ましい。
【0092】
予備重合触媒成分の製造方法としては、例えば、下記工程(i)~(iv)を含む方法が挙げられる。
工程(i):メタロセン系錯体を含有する飽和脂肪族炭化水素化合物溶液を40℃以上で熱処理して熱処理物を得る工程
工程(ii):工程(i)で得られた熱処理物と成分(H)とを接触させ、接触処理物を得る工程
工程(iii):工程(ii)で得られた接触処理物と有機アルミニウム化合物とを接触させ、触媒成分を得る工程
工程(iv):工程(iii)で得られた触媒成分の存在下、エチレンと炭素原子数3~20のα-オレフィンとを予備重合して予備重合触媒成分を得る工程
【0093】
工程(i)における、メタロセン系錯体を含有する飽和脂肪族炭化水素化合物溶液は、例えば、飽和脂肪族炭化水素化合物溶媒中にメタロセン系錯体を添加する方法により調製される。メタロセン系錯体は、通常、粉体、あるいは、飽和脂肪族炭化水素化合物液のスラリーとして、添加される。
【0094】
メタロセン系錯体を含有する飽和脂肪族炭化水素化合物溶液の調製に用いられる飽和脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。飽和脂肪族炭化水素化合物溶液は、これら飽和脂肪族炭化水素化合物の1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。飽和脂肪族炭化水素化合物は、常圧における沸点が100℃以下であることが好ましく、常圧における沸点が90℃以下であることがより好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、または、シクロヘキサンであることがさらに好ましい。
【0095】
メタロセン系錯体を含有する飽和脂肪族炭化水素化合物溶液の熱処理は、メタロセン系錯体を含有する飽和脂肪族炭化水素化合物溶媒の温度を、40℃以上の温度に調整すればよい。熱処理中は、溶媒を静置してもよく、溶媒を撹拌してもよい。該温度は、フィルムの成形加工性を高める観点から、45℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。また、前記温度は、触媒活性を高める観点から、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。熱処理の時間は、通常、0.5~12時間である。該時間は、フィルムの成形加工性を高める観点から、1時間以上であることが好ましく、2時間以上であることがより好ましい。また、前記時間は、触媒性能の安定性の観点から、6時間以下であることが好ましく、4時間以下であることがより好ましい。
【0096】
工程(ii)では、熱処理物と成分(H)とが接触すればよい。接触させる方法としては、例えば、熱処理物に成分(H)を添加する方法、または、飽和脂肪族炭化水素化合物中に、熱処理物と成分(H)とを添加する方法が挙げられる。成分(H)は、通常、粉体、あるいは、飽和脂肪族炭化水素化合物溶媒のスラリーとして添加される。
【0097】
工程(ii)での接触処理の温度は、70℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましい。また、該温度は、10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。接触処理の時間は、通常、0.1時間以上2時間以下である。
【0098】
工程(iii)では、工程(ii)で得られた接触処理物と有機アルミニウム化合物とが接触すればよい。接触させる方法としては、例えば、工程(ii)で得られた接触処理物に有機アルミニウム化合物を添加する方法、または、飽和脂肪族炭化水素化合物中に、工程(ii)で得られた接触処理物と有機アルミニウム化合物とを添加する方法が用いられる。
【0099】
工程(iii)での接触処理の温度は、70℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましい。また、該温度は、予備重合の活性の発現を効率的に行う観点から、10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。接触処理の時間は、通常、0.01時間~0.5時間である。
【0100】
工程(iii)の接触処理は、エチレンとα-オレフィンとの存在下で行うことが好ましい。α-オレフィンとしては、通常、予備重合での原料となるオレフィンが挙げられる。エチレンおよびα-オレフィンの量としては、成分(H)1gあたり、0.05g以上1g以下であることが好ましい。
【0101】
上記の工程(i)~(iii)は、飽和脂肪族炭化水素化合物と成分(H)とメタロセン系錯体と有機アルミニウム化合物とを、予備重合反応器に別々に添加することにより、工程(i)~(iii)の全ての工程を予備重合反応器内で行ってもよく、工程(ii)および(iii)を予備重合反応器内で行ってもよく、または、工程(iii)を予備重合反応器内で行ってもよい。
【0102】
工程(iv)は、工程(iii)で得られた触媒成分の存在下、エチレンと炭素原子数3~20のα-オレフィンとを予備重合(少量のエチレンと炭素原子数3~20のα-オレフィンとを重合)して予備重合触媒成分を得る工程である。該予備重合は、通常、スラリー重合法で行われ、該予備重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれの方式を用いてもよい。さらに、該予備重合は、水素等の連鎖移動剤を添加して行ってもよい。
【0103】
予備重合をスラリー重合法で行う場合、溶媒としては、通常、飽和脂肪族炭化水素化合物が用いられる。飽和脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。飽和脂肪族炭化水素化合物溶液は、これら飽和脂肪族炭化水素化合物の1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。飽和脂肪族炭化水素化合物としては、常圧における沸点が100℃以下であることが好ましく、常圧における沸点が90℃以下であることがより好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、または、シクロヘキサンであることがさらに好ましい。
【0104】
予備重合をスラリー重合法で行う場合、スラリー濃度としては、溶媒1リットル当たりの成分(H)の量が、通常0.1~600gであり、0.5~300gであることが好ましい。予備重合温度は、通常、-20~100℃であり、0~80℃であることが好ましい。予備重合中、重合温度は適宜変更してもよいが、予備重合を開始する温度は、45℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましい。また、予備重合中の気相部でのオレフィン類の分圧は、通常0.001~2MPaであり、0.01~1MPaであることがより好ましい。予備重合時間は、通常、2分間~15時間である。
【0105】
予備重合に用いられる炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられる。炭素原子数3~20のα-オレフィンは、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、または、1-オクテンであることが好ましく、1-ヘキセン、または、1-オクテンであることがより好ましい。炭素原子数3~20のα-オレフィンは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0106】
予備重合触媒成分中の予備重合された重合体の含有量は、成分(H)1g当たり、通常0.01~1000gであり、0.05~500gであることが好ましく、0.1~200gであることがより好ましい。
【0107】
エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の製造には、スラリー重合法、または、気相重合法を用いることが好ましく、連続気相重合法を用いることがより好ましい。スラリー重合法に用いられる溶媒としては、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒が挙げられる。連続気相重合法に用いられる気相重合反応装置としては、通常、流動層型反応槽を有する装置であり、拡大部を有する流動層型反応槽を有する装置であることが好ましい。反応槽内に撹拌翼が設置されていてもよい。
【0108】
オレフィン重合触媒が、予備重合触媒成分を含むオレフィン重合触媒である場合、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の粒子の形成を行う連続重合反応槽に予備重合触媒成分を供給する方法としては、通常、アルゴン等の不活性ガス、窒素、水素もしくはエチレンを用いて、水分のない状態で供給する方法、または、各成分を溶媒に溶解もしくは稀釈して、溶液もしくはスラリー状態で供給する方法が用いられる。
【0109】
エチレン-α-オレフィン共重合体(1)を気相重合法で製造する場合の重合温度としては、通常、エチレン-α-オレフィン共重合体(1)が溶融する温度未満であり、0~150℃であることが好ましく、30~100℃であることがより好ましく、70℃~87℃であることがさらに好ましい。エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の溶融流動性を調節するために、水素を添加してもよい。水素は、エチレン100mol%に対して、0.01~1.1mol%となるように制御することが好ましい。気相重合中のエチレンに対する水素の比率は、重合中に発生する水素の量および重合中に添加する水素の量によって、制御することができる。重合反応槽の混合ガス中に不活性ガスを共存させてもよい。オレフィン重合触媒が予備重合触媒成分を含むオレフィン重合触媒である場合、オレフィン重合触媒は、有機アルミニウム化合物等の助触媒成分を含んでもよい。
【0110】
<エチレン-α-オレフィン共重合体(2)>
エチレン-α-オレフィン共重合体(2)中の炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位を形成する炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられる。これらの中でも、炭素原子数3~20のα-オレフィンは、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、または、1-オクテンであることが好ましく、1-ヘキセン、または、1-オクテンであることがより好ましい。炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0111】
エチレン-α-オレフィン共重合体(2)は、全質量を100質量%としたとき、エチレンに基づく単量体単位の含有量が50質量%以上99.5質量%以下であることが好ましい。また、エチレン-α-オレフィン共重合体(2)は、全質量を100質量%としたとき、炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位の含有量が0.5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0112】
エチレン-α-オレフィン共重合体(2)は、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン以外の単量体に基づくその他の単量体単位を有していてもよい。その他の単量体としては、例えば、ブタジエンまたはイソプレン等の共役ジエン;1,4-ペンタジエン等の非共役ジエン:アクリル酸;アクリル酸メチルまたはアクリル酸エチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル;酢酸ビニル等が挙げられる。
【0113】
エチレン-α-オレフィン共重合体(2)は、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数4~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体であることが好ましく、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数5~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体であることがより好ましく、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数6~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体であることがさらに好ましい。
【0114】
エチレン-α-オレフィン共重合体(2)としては、例えば、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ブテン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体等が挙げられる。エチレン-α-オレフィン共重合体(2)は、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、または、エチレン-1-オクテン共重合体であることが好ましく、エチレン-1-ヘキセン共重合体であることがより好ましい。
【0115】
エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の密度は、フィルムの滑り性を向上させる観点から、850kg/m以上であることが好ましく、880kg/m以上であることがより好ましい。また、エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の密度は、フィルムの強度を向上させる観点から、890kg/m未満であることが好ましい。エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の密度は、一つの態様において850kg/m以上890kg/m未満であり、他の態様において880kg/m以上890kg/m未満である。エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の密度は、後述するエチレン-α-オレフィン共重合体(2)の製造方法において、気相重合時のα-オレフィン濃度を調整することにより、880kg/m以上890kg/m未満の範囲に調整することができる。
【0116】
エチレン-α-オレフィン共重合体(2)のメルトフローレート(MFR)は、フィルムの成形加工性を良好にする観点、特にフィルムの製膜時の押出負荷を低減する観点から、0.1g/10分以上であることが好ましく、1g/10分以上であることがより好ましい。エチレン-α-オレフィン共重合体(2)のMFRは、フィルムの強度を向上させる観点から、10g/10分以下であることが好ましく、5g/10分以下であることがより好ましい。エチレン-α-オレフィン共重合体(2)のMFRは、一つの態様において0.1g/10分以上10g/10分以下であり、他の態様において1g/10分以上5g/10分以下である。なお、エチレン-α-オレフィン共重合体(2)のMFRの測定では、通常、エチレン-α-オレフィン共重合体(2)に酸化防止剤を1000ppm程度配合した試料を用いる。エチレン-α-オレフィン共重合体(2)のMFRは、後述するエチレン-α-オレフィン共重合体(2)の製造方法において、気相重合時の連鎖移動剤濃度を調整することにより、0.1g/10分以上10g/10分以下の範囲に調整することができる。
【0117】
エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の重量平均分子量(Mw)は、フィルムの機械強度を高める観点から、6万以上であることが好ましく、7万以上であることがより好ましい。また、エチレン-α-オレフィン共重合体(2)のMwは、押出成形適性の観点から、10万以下であることが好ましく、9万以下であることがより好ましい。エチレン-α-オレフィン共重合体(2)のMwは、一つの態様において6万以上10万以下であり、他の態様において7万以上9万以下である。
【0118】
エチレン-α-オレフィン共重合体(2)は、メタロセン系重合触媒、または、チーグラー・ナッタ系重合触媒の存在下、エチレンと炭素原子数3~20のα-オレフィンとを共重合することにより製造することができる。
【0119】
メタロセン系重合触媒としては、例えば、次の(C1)~(C4)の触媒等が挙げられる。
(C1)シクロペンタジエン形骨格を有する基を有する遷移金属化合物を含む成分と、アルモキサン化合物とを含む成分からなる触媒
(C2)前記遷移金属化合物を含む成分と、トリチルボレート、アニリニウムボレート等のイオン性化合物とを含む成分からなる触媒
(C3)前記遷移金属化合物を含む成分と、前記イオン性化合物を含む成分と、有機アルミニウム化合物とを含む成分からなる触媒
(C4)(C1)~(C3)のいずれか一つに記載の各成分をSiO、Al等の無機粒子状担体や、エチレン、スチレン等のオレフィン重合体等の粒子状ポリマー担体に担持または含浸させて得られる触媒
【0120】
チーグラー・ナッタ系重合触媒としては、マグネシウム化合物にチタニウム化合物を担持させた固体触媒成分と有機アルミニウムを組合せたいわゆるMg-Ti系チーグラー触媒(例えば「触媒活用大辞典;2004年工業調査会発行」、「出願系統図-オレフィン重合触媒の変遷-;1995年発明協会発行」等を参照)を用いることが好ましい。
【0121】
エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の製造に用いられる触媒は、フィルムの強度を向上させる観点から、メタロセン系重合触媒であることが好ましい。
【0122】
エチレン-α-オレフィン共重合体(2)の製造に用いられる重合方法としては、例えば、バルク重合法、溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法、高圧イオン重合法等が挙げられる。ここで、バルク重合法とは、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行う方法をいい、溶液重合法およびスラリー重合法とは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法をいう。また、気相重合法とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する方法をいう。これらの重合方法は、バッチ式および連続式のいずれでもよく、また、単一の重合槽で行われる単段式および複数の重合反応槽を直列に連結させた重合装置で行われる多段式のいずれでもよい。なお、重合工程における各種条件(重合温度、重合圧力、モノマー濃度、触媒添加量、重合時間等)は、適宜決定すればよい。
【0123】
<フィルムの製造方法>
本実施形態に係るフィルムの製造方法は、上述のエチレン-α-オレフィン共重合体(1)とエチレン-α-オレフィン共重合体(2)との混合物を、スクリューを備える押出機を用いて溶融混錬し、押し出す工程と、押し出された混合物を成膜する工程と、を含む。
【0124】
前記押出機について、図1を用いて詳しく説明する。押出機1は、加熱シリンダ2と、該加熱シリンダ2内で回転可能に構成されたスクリュー3と、を備える。
【0125】
スクリュー3は、ホッパーから供給されたエチレン-α-オレフィン共重合体(1)とエチレン-α-オレフィン共重合体(2)との混合物を下流側へ送る供給部(図示なし)と、該供給部から送られてきた混合物を圧縮混練して下流側へ送る圧縮部4と、該圧縮部4から送られてきた混合物をさらに均一に混錬して先端へ送る計量部(図示なし)と、を含む。
【0126】
圧縮部4は、回転主軸41と、該回転主軸41の外周に螺旋状に形成された螺旋羽根42と、を有する。圧縮部4には、14ピッチ以上18ピッチ以下の螺旋羽根42が形成されていることが好ましい。ここで、1ピッチとは、螺旋羽根42が回転主軸41の外周面を1周する単位を意味し、図1中に示すPである。1ピッチの長さは、46mm以上54mm以下であることが好ましい。
【0127】
回転主軸41は、螺旋羽根42のピッチ間に配されて螺旋状の溝を構成する二条の螺旋溝部43(43a,43b)を有する。二条の螺旋溝部43a,43bは、それぞれ、溝深さが前記混合物の進行方向(図1中に示す矢印Xの方向)に向かって徐々に大きくなるように形成される第1の領域A1と、溝深さが前記進行方向に向かって徐々に小さくなるように形成される第2の領域A2と、を含む。二条の螺旋溝部43a,43bでは、第1の領域A1同士、及び、第2の領域A2同士が隣り合って配置されていない。すなわち、一方の螺旋溝部43aの第1の領域A1が配された部分に隣接する他方の螺旋溝部43bの部分には、第2の領域A2が配されている。また、一方の螺旋溝部43aの第2の領域A2が配された部分に隣接する他方の螺旋溝部43bの部分には、第1の領域A1が配されている。このように構成されることで、隣り合って配置される二条の螺旋溝部43a,43bの溝深さを変えることができる。
【0128】
さらに、二条の螺旋溝部43a,43bは、それぞれ、溝深さが前記進行方向に向かって一定である第3の領域A3を含む。具体的には、一方の螺旋溝部43aは、第1の領域A1と、第3の領域A3と、第1の領域A1と、第2の領域A2と、が繰り返し連続して配される。また、他方の螺旋溝部43bは、第2の領域A2と、第3の領域A3と、第2の領域A2と、第1の領域A1と、が繰り返し連続して配される。なお、各領域は、0.5ピッチ分ずつ配される。
【0129】
ここで、溝深さとは、加熱シリンダ2の内周面と螺旋溝部43の外周面との最短距離(図1中に示すh)を意味する。圧縮部4における溝深さは、最小値が0.8mm以上1.5mm以下であることが好ましく、最大値が5.0mm以上6.0mm以下であることが好ましい。
【0130】
供給部及び計量部は、それぞれ溝深さが一定であることが好ましい。計量部の溝深さに対する供給部の溝深さの比(溝深さ比)は、1.3以上2.0以下であることが好ましい。
【0131】
加熱シリンダ2の直径(D,単位:mm)は、46mm以上54mm以下であることが好ましい。加熱シリンダ2の直径に対するスクリューの長さ(L/D)は、27以上30以下であることが好ましい。なお、スクリューの長さ(L,単位:mm)は、螺旋羽根42の上流端からから先端までの長さをいう。
【0132】
本実施形態に係るフィルムの製造方法では、螺旋羽根42のピッチ間に二条の螺旋溝部43a,43bが配されるが、本発明は当該構成に限定されるものではなく、一条または三条以上の螺旋溝部43が配されていてもよい。
【0133】
また、本実施形態に係るフィルムの製造方法において、螺旋溝部43は、溝深さが前記進行方向に向かって一定である第3の領域A3を含むが、本発明は当該構成に限定されるものではなく、第3の領域A3を含まなくてもよい。すなわち、螺旋溝部43は、第1の領域A1と、第2の領域A2と、が繰り返し連続して配されていてもよい。
【0134】
さらに、本実施形態に係るフィルムの製造方法では、螺旋溝部43a,43bにおいて、各領域が0.5ピッチ分ずつ配されているが、本発明は当該構成に限定されるものではなく、圧縮混練する混合物の材料に応じて各領域の距離を適宜変更することができる。
【0135】
スクリュー3は、さらに、計量部から送られてきた混合物の混合効果を向上させるバリア部(図示なし)を含んでいてもよい。
【0136】
<袋>
本発明に係る袋は、上述のフィルムをヒートシールしてなる。ヒートシールの方法としては、例えば、熱板シール、インパルスシール、ベルトシール、溶断シール等が挙げられる。
【0137】
本実施形態に係る袋は、種々の内容物の包装に用いられる。内容物としては、例えば、食品、飲料、調味料、乳等、乳製品、医薬品、半導体製品等電子部品、ペットフード、ペットケア用品、洗剤、トイレタリー用品等が挙げられる。
【0138】
なお、本実施形態に係るフィルム、該フィルムの製造方法、および、前記フィルムをヒートシールしてなる袋は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記以外の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく、上記の1つの実施形態に係る構成や方法等を上記の他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよい。
【実施例
【0139】
以下、実施例、および、比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0140】
[測定方法]
実施例および比較例での各項目の測定値は、次の方法に従って測定した。
【0141】
<元素分析>
Zn:試料を硫酸水溶液(濃度1M)を入れ、その後超音波を照射して金属成分を抽出した。得られた溶液を、ICP発光分析法により定量した。
F:酸素を充填させたフラスコ中で試料を燃焼させ、生じた燃焼ガスを水酸化ナトリウム水溶液(10%)に吸収させ、得られた水溶液をイオン電極法により定量した。
【0142】
<メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)>
JIS K7210-1995に規定されたA法に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定した。
【0143】
<密度(単位:kg/m)>
JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980に規定されたA法に従い測定した。
【0144】
<Mw>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。
・GPC装置:HLC-8121GPC/HT(東ソー社製)
・GPCカラム:TSKgelGMH-HT(東ソー社製)×3本
・測定温度:140℃
・溶媒および移動相:0.05質量%のジブチルヒドロキシトルエンを含有するオルトジクロロベンゼン(和光特級)
・移動相流速:1.0mL/分
・注入量:300μL
・検出器:示差屈折
・分子量標準物質:標準ポリスチレン
・データ取り込み間隔:2.5秒
【0145】
<極限粘度([η]、単位:dl/g)>
テトラリン溶媒に重合体を溶解し、ウベローデ型粘度計を用いて135℃にて測定した。
【0146】
<融点(Tm、単位:℃)、結晶化温度(Tc、単位:℃)>
熱分析装置 示差走査熱量計(Diamond DSC Perkin Elmer社製)を用いて下記の段階1)~3)の方法により測定した。融点は、段階3)中に観測されるヒートフロー曲線の吸熱ピークとして、結晶化温度は段階2)中に観測されるヒートフロー曲線の発熱ピークとして、それぞれ求めた。
1)サンプル約10mgを窒素雰囲気下、150℃ 5分間保持
2)冷却 150℃~20℃(5℃/分)2分間保持
3)昇温 20℃~150℃(5℃/分)
なお、TmとTcとの差分(Tm-Tc)が小さいエチレン-α-オレフィン共重合体を含有するフィルムは、滑り性に優れる。
【0147】
[フィルムの物性評価方法]
実施例および比較例のフィルムの物性は、次の方法に従って評価した。
【0148】
<フィルムの樹脂密度(単位:kg/m)>
樹脂密度は、JIS K7112-1980に規定された方法に従い、A法により測定した。なお、樹脂密度の測定前に、試料には、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った。そして、フィルムに含有される樹脂の重量比率に基づき、フィルムの樹脂密度を求めた。
【0149】
<フィルム表面の算術平均高さSa(単位:μm)>
まず、白色干渉顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、フィルム表面を対物レンズ110倍で測定した。次に、得られた視野サイズ80μm×60μmの画像に対して、日立ハイテクノロジーズ社製「VS-viewer」を用いて面補正(傾斜補正)を行った。具体的には、サンプル面のZ方向の凹凸の絶対値の二乗の総和が最も小さくなる面を計算し、傾いているサンプル面が水平となるように面補正を行った。さらに、面補正された画像に対して、ISO25178-2に規定されたS-Filterの値を用いて処理した。具体的には、Lateral Period Limit(光学分解能の1/2、0.17μm)をカットオフ値としてフィルター処理を行い、短波長成分のノイズを除去した。処理された画像から、ISO25178-2に規定されたSaを求めた。
【0150】
<フィルム表面の最小自己相関長さSal(単位:μm)>
算術平均高さSaと同様の方法により処理された画像から、ISO25178-2に規定されたSalを求めた。
【0151】
<フィルムのヒートシール強度(単位:N/15mm)>
各実施例および比較例で得られたインフレーションフィルムのチューブ内面同士を重ね合わせた。重ね合わせたフィルムを厚さ15μmのナイロンフィルム2枚で挟み、下記シール条件により、ヒートシーラー(テスター産業社製)を用いてTD方向にヒートシールを行った。
・上部シールバー設定温度:90℃
・下部シールバー設定温度:40℃
・シール時間:1秒
・シール圧力:0.1MPa
・シール巾:10mm
【0152】
得られたサンプルを23℃で24時間以上静置した後、シール巾方向に直交する方向の長さが15mmの試験片を切り出した。切り出された試験片のシール部を、引張試験機を用いて200mm/分の速度で180°剥離することにより、ヒートシール強度を測定した。
【0153】
<フィルムの開口強度(単位:N/m)>
実施例で得られたインフレーションフィルムを、10cm×10cmに切り出し、インフレーションフィルム成形時のチューブ内側同士が密着するように重ね合わせ、60℃に調整されたオーブン中、100g/cmの荷重下、24時間静置した。静置後、マッケンジーブロッキングテスター(島津製作所製)を用い、剥離荷重速度20g/分で垂直方向に剥離させるために必要な荷重量として開口強度を測定した。
【0154】
[エチレン-α-オレフィン共重合体(1)の製造]
エチレン-α-オレフィン共重合体(1)は、下記製造例に従って製造した。
【0155】
<製造例1>
・成分(H)の製造
特開2009-79180号公報に記載された実施例1(1)および(2)の成分(A)の調製と同様の方法で、成分(H)を製造した。元素分析の結果、Zn=11質量%、F=6.4質量%であった。
【0156】
・予備重合触媒成分の製造
予め窒素置換した内容積9000リットルの撹拌機付きオートクレーブに、ブタン4.15mを添加した後、ラセミ-エチレンビス(1-インデニル)ジルコニウムジフェノキシド6.0molを添加し、オートクレーブを50℃まで昇温して撹拌を2時間行った。次に、製造した成分(H)60.4kgをオートクレーブに添加した。その後、オートクレーブを30℃まで降温し、系内が安定した後、オートクレーブにエチレン5kg、水素(常温常圧)5リットルを添加し、続いてトリイソブチルアルミニウムをn-ヘキサンで20wt%に希釈したヘキサン溶液35.1Lを添加して予備重合を開始した。エチレンと水素(常温常圧)をそれぞれ60kg/hrと30リットル/hrで、30分間オートクレーブに供給し、その後、50℃へ昇温するとともに、エチレンと水素(常温常圧)をそれぞれ159kg/hrと0.54m/hrでオートクレーブに供給した。合計15.4時間の予備重合を実施した。予備重合終了後、エチレン、ブタンおよび水素などをパージし、残った固体を室温にて真空乾燥し、成分(H)1g当り41.1gのポリエチレンを含有する予備重合触媒成分を得た。該ポリエチレンの[η]は1.21dl/gであった。その後、得られた予備重合触媒成分を、窒素雰囲気下で、目開き162μmの網を備えた東洋ハイテック株式会社製ハイボルダー内に投入し、微粉の除去を実施することによって、微小な予備重合触媒成分を除去した予備重合触媒成分を得た。
【0157】
・重合体の製造
得られた予備重合触媒成分の存在下、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1-ブテンと1-ヘキセンとの共重合を実施し、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1-1と称する)のパウダーを得た。重合条件としては、重合温度を89℃;重合圧力を2MPa;エチレン100mol%に対する、水素量の平均比を0.33%;エチレンと1-ブテンと1-ヘキセンとの合計に対する1-ブテンのモル比を1.33%、1-ヘキセンのモル比を0.53%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1-ブテン、1-ヘキセンおよび水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウム(LLDPE1-1のパウダー重量に対するトリイソブチルアルミニウムのモル比0.44mol/t)、トリエチルアミン(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比10.2%)、および、酸素(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比24%)を連続的に供給した。流動床の総パウダー重量は52.9tを一定に維持した。平均重合時間6.6hrであった。LLDPE-1のパウダーを、連続式流動床気相重合装置とホッパーとを連結する移送配管を介して、ホッパーに移送した。当該ホッパーに、流量250m/hrの窒素と流量6L/hrの水を混合して65℃に加熱した混合ガスを投入することで、LLDPE-1のパウダーに水を接触させた。ホッパー内での水との接触時間は1.3時間であった。水接触後のLLDPE-1のパウダーを別のホッパーに移送配管を通して移送し、該ホッパーに窒素を流通することでLLDPE-1のパウダーの乾燥を行った。乾燥したLLDPE1-1のパウダーを、押出機(株式会社神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200~230℃の条件で造粒し、LLDPE1-1のペレットを得た。得られたLLDPE1-1のペレットの物性を評価した。結果を表1に示す。
【0158】
<製造例2>
・予備重合触媒成分の製造
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付きオートクレーブに、ブタン41リットルを添加した後、ラセミ-エチレンビス(1-インデニル)ジルコニウムジフェノキシド60.9mmolを添加し、オートクレーブを50℃まで昇温して撹拌を2時間行った。次に、オートクレーブに上記製造例1で得られた成分(H)0.60kgを添加した。その後、オートクレーブを31℃まで降温し、系内が安定した後、オートクレーブにエチレン0.1kg、水素(常温常圧)0.1リットル添加し、続いてトリイソブチルアルミニウム240mmolを添加して予備重合を開始した。エチレンと水素(常温常圧)をそれぞれ0.5kg/hrと1.1リットル/hrで、30分間オートクレーブに供給し、その後、50℃へ昇温するとともに、エチレンと水素(常温常圧)をそれぞれ2.7kg/hrと8.2リットル/hrでオートクレーブに供給した。合計10.0時間の予備重合を実施した。予備重合終了後、エチレン、ブタンおよび水素などをパージし、残った固体を室温にて真空乾燥し、成分(H)1g当り39.6gのポリエチレンを含有する予備重合触媒成分を得た。該ポリエチレンの[η]は1.17dl/gであった。
【0159】
・重合体の製造
得られた予備重合触媒成分の存在下、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1-ヘキセンとの共重合を実施し、エチレン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1-2と称する)のパウダーを得た。重合条件としては、重合温度を96℃、重合圧力を2MPa、エチレン100mol%に対する、水素量の平均を0.56%、エチレンと1-ヘキセンとの合計に対する1-ヘキセンのモル比を1.09%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1-ヘキセン、水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウム、トリエチルアミン(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比30%)、酸素(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比12%)を連続的に供給した。流動床の総パウダー重量80kgを一定に維持した。平均重合時間3.4hrであった。得られたLLDPE1-2のパウダーを、連続式流動床気相重合装置とホッパーとを連結する移送配管を介して、ホッパーに移送した。当該ホッパーに、常温のメタノールを投入することで、LLDPE1-2のパウダーにメタノールを接触させた。ホッパー内での水との接触時間は1時間であった。メタノール接触後のLLDPE1-2のパウダーを別のホッパーに移送配管を通して移送し、該ホッパーに窒素を流通することでLLDPE1-2のパウダーの乾燥を行った。乾燥したLLDPE1-2のパウダーを、押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200~230℃の条件で造粒してLLDPE1-2のペレットを得た。得られた該LLDPE1-2のペレットの物性を評価した。結果を表1に示す。
【0160】
【表1】
【0161】
[インフレーションフィルム成形]
エチレン-α-オレフィン共重合体(2)は下記のものを使用した。
エチレン-1-ヘキセン共重合体2-1(LLDPE2-1):メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン エクセレンFX FX307(住友化学株式会社製、エチレン-1-ヘキセン共重合体、MFR 3.1g/10分、密度 889.1kg/m、Mw 74517、Mw/Mn 1.8)
エチレン-1-ヘキセン共重合体2-2(LLDPE2-2):メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン スミカセンE EV203N(住友化学株式会社製、エチレン-1-ヘキセン共重合体、MFR 2.0g/10分、密度 913.0kg/m、Mw 84482、Mw/Mn 2.0)
【0162】
アンチブロッキング剤および滑剤は下記のものを使用した。
アンチブロッキング剤マスターバッチ(AB-MB):日本ポリエチレン株式会社製、KMB32F、AB-MBに含まれる樹脂のMFR 3.8g/10分
滑剤マスターバッチ(SA-MB):プライムポリマー株式会社製、ESQ-4、SA-MBに含まれる樹脂のMFR 1.5g/10分
【0163】
<実施例1>
LLDPE1-1、LLDPE2-1、アンチブロッキング剤マスターバッチ、および、滑剤マスターバッチを表2に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した。次に、得られた混合物をプラコー社製インフレーションフィルム成形機(プラコー社EXU型の単軸押出機、ダイス(ダイ径125mmφ、リップギャップ2.0mm)、シングルスリットでアイリス付エアリング)を用い、加工温度170℃、押出量25kg/hr、フロストラインディスタンス(FLD)250mm、ブロー比1.8の加工条件で、厚み70μmのインフレーションフィルムを成形した。得られたインフレーションフィルムの物性を表2に示す。
【0164】
本実施例で用いるインフレーションフィルム成形機が備えるスクリューの圧縮部の構成は、図1に示す通りである。具体的な条件を以下に示す。
・加熱シリンダ直径(D):50.25mm
・加熱シリンダの直径に対するスクリューの長さ(L/D):28
・合計ピッチ:28個
・供給部ピッチ:7個
・圧縮部ピッチ:16個
・計量部ピッチ:1個
・バリア部ピッチ:4個
・1ピッチの長さ(ピッチ間距離):50.0mm
・供給部溝深さ:5.5mm(一定)
・圧縮部溝深さ:最大値 5.5mm/最小値 1.2mm
・計量部溝深さ:3.5mm(一定)
・圧縮比:1.5
【0165】
<実施例2>
LLDPE1-1、LLDPE2-1、アンチブロッキング剤マスターバッチ、および、滑剤マスターバッチを表2に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表2に示す。
【0166】
<実施例3>
LLDPE1-1、LLDPE2-1、アンチブロッキング剤マスターバッチ、および、滑剤マスターバッチを表2に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表2に示す。
【0167】
<比較例1>
LLDPE1-1、LLDPE2-1、アンチブロッキング剤マスターバッチ、および、滑剤マスターバッチを表2に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した。次に、得られた混合物をプラコー社製インフレーションフィルム成形機(プラコー社フルフライト型の単軸押出機、ダイス(ダイ径50mmφ、リップギャップ2.0mm)、二重スリットエアリング)を用い、加工温度170℃、押出量5.5kg/hr、フロストラインディスタンス(FLD)200mm、ブロー比1.8の加工条件で、厚み70μmのインフレーションフィルムを成形した。得られたインフレーションフィルムの物性を表2に示す。
【0168】
以下、本比較例で用いるインフレーションフィルム成形機が備えるスクリューの圧縮部の構成について、図2を用いて説明する。圧縮部40は、回転主軸410と、該回転主軸410の外周に螺旋状に形成された螺旋羽根420と、を有する。回転主軸410は、螺旋羽根420のピッチ間に配されて螺旋状の溝を構成する一条の螺旋溝部430を有する。圧縮部40における螺旋溝部430は、全体として、溝深さ(h)が混合物の進行方向(図1中に示す矢印Xの方向)に向かって徐々に小さくなるように形成されている。具体的な条件を以下に示す。
・加熱シリンダ直径(D):30.0mm
・加熱シリンダの直径に対するスクリューの長さ(L/D):26
・合計ピッチ:26個
・供給部ピッチ:8個
・圧縮部ピッチ:10個
・計量部ピッチ:8個
・1ピッチの長さ(ピッチ間距離):30.0mm
・供給部溝深さ:5.2mm(一定)
・圧縮部溝深さ:最大値 5.2mm/最小値 1.5mm
・計量部溝深さ:1.5mm(一定)
・溝深さ比:3.5
【0169】
<比較例2>
LLDPE1-1、LLDPE2-1、アンチブロッキング剤マスターバッチ、および、滑剤マスターバッチを表2に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、比較例1と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表2に示す。
【0170】
<比較例3>
LLDPE1-2、LLDPE2-2、アンチブロッキング剤マスターバッチ、および、滑剤マスターバッチを表2に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、比較例1と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表2に示す。
【0171】
【表2】
【0172】
表2の結果から分かるように、本発明の構成要件をすべて満たす各実施例のフィルムは、ヒートシール強度および開口強度のバランスが良好である。
【0173】
一方、比較例1のフィルムは、Saが0.10μm未満であるため、開口強度が高い。比較例2のフィルムは、Salが10.4μmを超えるため、ヒートシール強度が低い。比較例3のフィルムは、フィルムの樹脂密度が900kg/mを超えるため、ヒートシール強度が低い。
【符号の説明】
【0174】
1 押出機
2 加熱シリンダ
3 スクリュー
4 圧縮部
41 回転主軸
42 螺旋羽根
43(43a,43b) 螺旋溝部
A1 第1の領域
A2 第2の領域
図1
図2