(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】彩度補正装置、映像信号変換装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 9/64 20230101AFI20240213BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20240213BHJP
H04N 1/60 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
H04N9/64 Z
G06T1/00 510
H04N1/60
(21)【出願番号】P 2020093050
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】野村 光佑
【審査官】三沢 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-025241(JP,A)
【文献】特開平06-131430(JP,A)
【文献】特開2020-065220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 9/64
G06T 1/00
H04N 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像信号の彩度を補正する彩度補正装置において、
前記映像信号のCIELAB色空間における明度及び色座標から前記彩度及び色相角を算出し、前記色相角を保持しながら前記彩度の最大値を最大彩度として算出する最大彩度算出部と、
前記明度が前記映像信号の基準白レベルに対応する明度以下の領域では、前記彩度を維持し、
前記明度が前記映像信号の基準白レベルに対応する明度よりも高い領域では、前記最大彩度算出部により算出された前記彩度及び前記最大彩度を用いて、前記映像信号の色が白色点に近づき、前記彩度が低くなるように補正を行う彩度補正部と、を備え、
前記彩度補正部は、
前記映像信号の明度をL
*、前記映像信号の基準白レベルに対応する明度をL
*
Ref、前記映像信号の上限値に対応する明度をL
*
max、前記彩度をC
*
ab、前記最大彩度をC
*
cusp、予め設定されたユーザーパラメータをσ,γ
saturation(σ≧0,γ
saturation≧1)、補正ファクターをf
cor、補正後の彩度をC
*
ab,corとして、以下の式:
により前記補正ファクターf
corを算出し、以下の式:
により前記彩度C
*
ab,corを算出する、ことを特徴とする彩度補正装置。
【請求項2】
映像信号の彩度を補正する彩度補正装置において、
前記映像信号のCIELAB色空間における明度及び色座標から前記彩度及び色相角を算出し、前記色相角を保持しながら前記彩度の最大値を最大彩度として算出する最大彩度算出部と、
前記明度が前記映像信号の基準白レベルに対応する明度以下の領域では、前記彩度を維持し、
前記明度が前記映像信号の基準白レベルに対応する明度よりも高い領域では、前記最大彩度算出部による算出された前記彩度及び前記最大彩度を用いて、前記映像信号の色が白色点に近づき、前記彩度が低くなるように補正を行う彩度補正部と、を備え、
前記彩度補正部は、
前記映像信号の明度をL
*、前記映像信号の基準白レベルに対応する明度をL
*
Ref、前記映像信号の上限値に対応する明度をL
*
max、前記彩度をC
*
ab、前記最大彩度をC
*
cusp、予め設定されたユーザーパラメータをσ,γ
saturation(σ≧0,γ
saturation≧1)、補正ファクターをf
cor、補正後の彩度をC
*
ab,corとして、以下の式:
により前記補正ファクターf
corを算出し、以下の式:
により前記彩度C
*
ab,corを算出する、ことを特徴とする彩度補正装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の彩度補正装置において、
前記最大彩度算出部は、
前記映像信号の三刺激値が前記CIELAB色空間に変換されることで得られた第1明度及び第1色座標のうちの前記第1色座標から、第1彩度及び第1色相角を算出し、
予め設定された彩度パラメータ及び前記第1色相角から、前記第1色相角を保持しながら前記映像信号の色域の境界を超える彩度となるように、新たな第1色座標を算出し、
予め設定された明度パラメータ及び前記新たな第1色座標のCIELAB色空間に対応する新たな映像信号について、前記新たな映像信号のRGB成分の比率を変えずに、前記RGB成分のそれぞれのうちの最大値がその上限値に一致するようにゲイン処理を行い、ゲイン処理後の映像信号を算出し、
前記ゲイン処理後の映像信号の三刺激値をCIELAB色空間に変換し、第2明度及び第2色座標を算出し、
前記第2色座標から前記最大彩度を算出する、ことを特徴とする彩度補正装置。
【請求項4】
映像信号の彩度を補正する彩度補正装置において、
前記映像信号の三刺激値がCIELAB色空間に変換されることで得られた明度及び色座標のうちの前記色座標から、彩度及び色相角を算出し、
前記明度が前記映像信号の基準白レベルに対応する明度以下の領域では、前記彩度を維持し、
前記明度が前記映像信号の基準白レベルに対応する明度よりも高い領域では、前記映像信号の色が白色点に近づき、前記彩度が低くなるように補正を行う彩度補正部を備え、
前記彩度補正部は、
前記映像信号の明度をL
*、前記映像信号の基準白レベルに対応する明度をL
*
Ref、前記映像信号の上限値に対応する明度をL
*
max、前記彩度をC
*
ab、予め設定されたユーザーパラメータをσ,γ
saturation、補正ファクターをf
cor(σ≧0,γ
saturation>1)、補正後の彩度をC
*
ab,corとして、以下の式:
により前記補正ファクターf
corを算出し、以下の式:
により前記彩度C
*
ab,corを算出する、ことを特徴とする彩度補正装置。
【請求項5】
HDR映像信号をSDR映像信号に変換する映像信号変換装置において、
請求項1から4までのいずれか一項に記載の彩度補正装置と、
前記彩度補正装置により彩度が補正された映像信号について、HDRからSDRへダイナミックレンジを圧縮する所定の関数を用いた圧縮処理を行う圧縮処理部と、
を備えたことを特徴とする映像信号変換装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1から4までのいずれか一項に記載の彩度補正装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号の色相角を保持しながら彩度を補正する彩度補正装置、映像信号変換装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放送事業者は、ダイナミックレンジの異なるHLG(Hybrid Log Gamma:ハイブリッドログガンマ)映像とSDR(Standard Dynamic Range:スタンダードダイナミックレンジ)映像を同時に制作する一体化制作の検討を始めている。効率的な一体化制作方法は、HLG映像等のダイナミックレンジの広いHDR(High Dynamic Range:ハイダイナミックレンジ)で映像を制作し、ダイナミックレンジの狭いSDR映像を変換によって得ることである。
【0003】
HDR映像をSDR映像に変換する際には、HDR映像の見た目または色の再現性が、SDR映像でも再現できていることが望ましい。それを実現する技術として、ダイナミックレンジを圧縮するために、線形関数及び対数関数を組み合わせたトーンマッピング関数を用いる変換法がある(例えば、特許文献1、非特許文献1,2を参照)。
【0004】
この変換法では、HDR映像で再現されている色の色相を保つために、トーンマッピングをRGB成分ではなく輝度成分に適用している。一般的に、トーンマッピングを輝度成分に適用すると、明度の高い信号の彩度が過度に高く再現される場合があるという問題がある。
【0005】
この問題を解決するためには、明度の高い信号領域において、彩度を補正する必要がある。具体的には、トーンマッピング関数を用いたダイナミックレンジ圧縮処理前に、知覚的均等色空間であるCIELAB色空間を用いた彩度補正処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Report ITU-R BT.2446-0,“Methods for conversion of high dynamic range content to standard dynamic range content and vice-versa”
【文献】K. Nomura,Y. Ikeda,Y. Kusakabe,Y. Nishida,“Method for HDR to SDR Conversion Considering HDR Reference White”,IDW’18,VHF1-4L,p.945-948,(2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の彩度補正処理は、HDRの入力信号の明度L
*及び色相角h
abを保ちながら、彩度を補正するものである。具体的には、前述の特許文献1の彩度補正処理を行う映像信号変換装置は、まず、以下の式に示す補正ファクターf
corを算出する。
【数1】
【0009】
L*
Refは、HDR基準白レベルに対応する明度であり、L*
maxは、HDR映像信号の上限値に対応する明度(最大明度)である。彩度補正パラメータσは、σ≧0の実数を任意で調整可能なユーザーパラメータである。
【0010】
そして、映像信号変換装置は、以下の式により、補正ファクターf
corを入力信号の彩度C
*
abに乗算することで、補正後の彩度C
*
ab,corを算出する。
【数2】
この補正後の彩度C
*
ab,corは、入力信号の明度L
*及び色相角h
abを保ちながら、入力信号の彩度C
*
abが補正されたデータである。
【0011】
このように、彩度補正処理により、明度L*がHDR基準白レベルに対応する明度L*
Ref以下の領域では、補正後の彩度C*
ab,corとして、入力信号の彩度C*
abが維持されそのまま用いられる。また、明度L*がHDR基準白レベルに対応する明度L*
Refよりも高い領域、すなわち明度L*の高い領域では、入力信号の彩度C*
abに1以下の補正ファクターfcorが乗算されることで、補正後の彩度C*
ab,corとして、入力信号の彩度C*
ab以下の値が得られる。
【0012】
しかしながら、従来の彩度補正処理では、補正に用いるパラメータである彩度補正パラメータσの値を大きくすると、補正後の彩度C*
ab,corに不連続を生じるという問題があった。
【0013】
図16は、特許文献1の映像信号変換装置が入力するHDR映像信号のグラデーション画像を示す図であり、
図17は、特許文献1の映像信号変換装置が出力するSDR映像信号のグラデーション画像を示す図である。尚、
図16に示すグラデーション画像は、後述する
図12~
図14において、後述する実施例1~3の彩度補正装置1-1~1-3を備えた映像信号変換装置2-1,2-2が入力する画像でもある。
【0014】
図16、
図17(1)~(3)において、横軸は、色相角0°(左端)から180°(右端)までの色相を示し、縦軸は明度を示す。縦軸の明度は、下端へ向けて低くなり、上端へ向けて高くなる。
【0015】
図17において、(1)は彩度補正パラメータσ=0、(2)は彩度補正パラメータσ=1、(3)は彩度補正パラメータσ=2の場合を示している。
【0016】
(1)~(3)を比較すると、(2)(3)の楕円で囲った箇所において、明度の高い上方向へ向かうほど、彩度が急激に無彩色に変化しており、その変化部分が丸味を帯びていることがわかる。
【0017】
このように、入力信号の明度L*及び色相角habを保ちながら彩度を補正する従来の彩度補正処理では、彩度補正パラメータσの値を大きくすると、彩度に不連続を生じてしまう。
【0018】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、HDR映像信号をSDR映像信号に変換する際の彩度補正処理において、彩度の不連続を抑制可能な彩度補正装置、映像信号変換装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記課題を解決するために、請求項1の彩度補正装置は、映像信号の彩度を補正する彩度補正装置において、前記映像信号のCIELAB色空間における明度及び色座標から前記彩度及び色相角を算出し、前記色相角を保持しながら前記彩度の最大値を最大彩度として算出する最大彩度算出部と、前記明度が前記映像信号の基準白レベルに対応する明度以下の領域では、前記彩度を維持し、前記明度が前記映像信号の基準白レベルに対応する明度よりも高い領域では、前記最大彩度算出部により算出された前記彩度及び前記最大彩度を用いて、前記映像信号の色が白色点に近づき、前記彩度が低くなるように補正を行う彩度補正部と、を備え、前記彩度補正部が、前記映像信号の明度をL
*、前記映像信号の基準白レベルに対応する明度をL
*
Ref、前記映像信号の上限値に対応する明度をL
*
max、前記彩度をC
*
ab、前記最大彩度をC
*
cusp、予め設定されたユーザーパラメータをσ,γ
saturation(σ≧0,γ
saturation≧1)、補正ファクターをf
cor、補正後の彩度をC
*
ab,corとして、以下の式:
により前記補正ファクターf
corを算出し、以下の式:
により前記彩度C
*
ab,corを算出する、ことを特徴とする。
【0020】
また、請求項2の彩度補正装置は、映像信号の彩度を補正する彩度補正装置において、前記映像信号のCIELAB色空間における明度及び色座標から前記彩度及び色相角を算出し、前記色相角を保持しながら前記彩度の最大値を最大彩度として算出する最大彩度算出部と、前記明度が前記映像信号の基準白レベルに対応する明度以下の領域では、前記彩度を維持し、前記明度が前記映像信号の基準白レベルに対応する明度よりも高い領域では、前記最大彩度算出部により算出された前記彩度及び前記最大彩度を用いて、前記映像信号の色が白色点に近づき、前記彩度が低くなるように補正を行う彩度補正部と、を備え、前記彩度補正部が、前記映像信号の明度をL
*、前記映像信号の基準白レベルに対応する明度をL
*
Ref、前記映像信号の上限値に対応する明度をL
*
max、前記彩度をC
*
ab、前記最大彩度をC
*
cusp、予め設定されたユーザーパラメータをσ,γ
saturation(σ≧0,γ
saturation≧1)、補正ファクターをf
cor、補正後の彩度をC
*
ab,corとして、以下の式:
により前記補正ファクターf
corを算出し、以下の式:
により前記彩度C
*
ab,corを算出する、ことを特徴とする。
【0021】
また、請求項3の彩度補正装置は、請求項1または2に記載の彩度補正装置において、前記最大彩度算出部が、前記映像信号の三刺激値が前記CIELAB色空間に変換されることで得られた第1明度及び第1色座標のうちの前記第1色座標から、第1彩度及び第1色相角を算出し、予め設定された彩度パラメータ及び前記第1色相角から、前記第1色相角を保持しながら前記映像信号の色域の境界を超える彩度となるように、新たな第1色座標を算出し、予め設定された明度パラメータ及び前記新たな第1色座標のCIELAB色空間に対応する新たな映像信号について、前記新たな映像信号のRGB成分の比率を変えずに、前記RGB成分のそれぞれのうちの最大値がその上限値に一致するようにゲイン処理を行い、ゲイン処理後の映像信号を算出し、前記ゲイン処理後の映像信号の三刺激値をCIELAB色空間に変換し、第2明度及び第2色座標を算出し、前記第2色座標から前記最大彩度を算出する、ことを特徴とする。
【0022】
また、請求項4の彩度補正装置は、映像信号の彩度を補正する彩度補正装置において、前記映像信号の三刺激値がCIELAB色空間に変換されることで得られた明度及び色座標のうちの前記色座標から、彩度及び色相角を算出し、前記明度が前記映像信号の基準白レベルに対応する明度以下の領域では、前記彩度を維持し、前記明度が前記映像信号の基準白レベルに対応する明度よりも高い領域では、前記映像信号の色が白色点に近づき、前記彩度が低くなるように補正を行う彩度補正部を備え、前記彩度補正部が、前記映像信号の明度をL
*、前記映像信号の基準白レベルに対応する明度をL
*
Ref、前記映像信号の上限値に対応する明度をL
*
max、前記彩度をC
*
ab、予め設定されたユーザーパラメータをσ,γ
saturation、補正ファクターをf
cor(σ≧0,γ
saturation>1)、補正後の彩度をC
*
ab,corとして、以下の式:
により前記補正ファクターf
corを算出し、以下の式:
により前記彩度C
*
ab,corを算出する、ことを特徴とする。
【0023】
さらに、請求項5の映像信号変換装置は、HDR映像信号をSDR映像信号に変換する映像信号変換装置において、請求項1から4までのいずれか一項に記載の彩度補正装置と、前記彩度補正装置により彩度が補正された映像信号について、HDRからSDRへダイナミックレンジを圧縮する所定の関数を用いた圧縮処理を行う圧縮処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
さらに、請求項6のプログラムは、コンピュータを、請求項1から4までのいずれか一項に記載の彩度補正装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、HDR映像信号をSDR映像信号に変換する際の彩度補正処理において、彩度の不連続を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施例1~3の彩度補正装置の入力信号及び出力信号を説明する図である。
【
図2】実施例1の彩度補正装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】実施例1の彩度補正装置の処理例を示すフローチャートである。
【
図4】実施例1における最大彩度算出部の処理例(ステップS303)を示すフローチャートである。
【
図5】実施例1における彩度補正部の処理例(ステップS304)を示すフローチャートである。
【
図6】実施例2の彩度補正装置の構成例を示すブロック図である。
【
図7】実施例2における彩度補正部の処理例を示すフローチャートである。
【
図8】実施例3の彩度補正装置の構成例を示すブロック図である。
【
図9】実施例1~3の彩度補正装置を備えた映像信号変換装置の第1の構成例を示すブロック図である。
【
図10】実施例1~3の彩度補正装置を備えた映像信号変換装置の第2の構成例を示すブロック図である。
【
図11】CIALAB色空間の色域の境界を超える彩度となる色座標a
*
est,b
*
estを算出するステップS403の処理を説明する図である。
【
図12】実施例1の彩度補正装置を備えた映像信号変換装置が出力するSDR映像信号のグラデーション画像を示す図である。
【
図13】実施例2の彩度補正装置を備えた映像信号変換装置が出力するSDR映像信号のグラデーション画像を示す図である。
【
図14】実施例3の彩度補正装置を備えた映像信号変換装置が出力するSDR映像信号のグラデーション画像を示す図である。
【
図15】実施例1による彩度補正処理を説明する図である。
【
図16】特許文献1の映像信号変換装置が入力するHDR映像信号のグラデーション画像を示す図である。
【
図17】特許文献1の映像信号変換装置が出力するSDR映像信号のグラデーション画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、実施例1~3の彩度補正装置の入力信号及び出力信号を説明する図である。この彩度補正装置1は、HDR映像信号のビデオ信号がディスプレイ光信号に変換され、HDRの三刺激値X
HDRY
HDRZ
HDRに変換された信号を入力し、HDR映像信号の彩度が補正された三刺激値X
HDRY
HDRZ
HDRの信号を出力する。
図1に示した彩度補正装置1について、実施例1~3を挙げて具体的に説明する。
【0028】
〔実施例1〕
まず、
図1に示した彩度補正装置1について、実施例1を説明する。
図2は、実施例1の彩度補正装置1の構成例を示すブロック図であり、
図3は、実施例1の彩度補正装置1の処理例を示すフローチャートである。
【0029】
この彩度補正装置1-1は、色空間変換部10、最大彩度算出部11、彩度補正部12及び色空間逆変換部13を備えている。
【0030】
色空間変換部10は、HDR映像信号のビデオ信号がディスプレイ光信号に変換され、HDRの三刺激値に変換された三刺激値XHDRYHDRZHDRの信号を入力する(ステップS301)。具体的には、HDR映像信号のビデオ信号がHDR方式に応じたEOTF(Electro Optical Transfer Function:電気-光伝達関数)によりディスプレイ光のリニア信号に変換され、RGB/XYZ変換された三刺激値XHDRYHDRZHDRの信号が入力される。
【0031】
色空間変換部10は、三刺激値XHDRYHDRZHDRの空間(三刺激値空間)をCIELAB色空間に変換し、明度L*及び色座標a*,b*を算出する(ステップS302)。
【0032】
色空間変換部10は、明度L*を色空間逆変換部13に出力すると共に、明度L*及び色座標a*,b*を最大彩度算出部11に出力する。
【0033】
最大彩度算出部11は、色空間変換部10から明度L*及び色座標a*,b*を入力し、色座標a*,b*から彩度C*
ab及び色相角habを算出する。
【0034】
最大彩度算出部11は、色相角habを保持したままで、CIELAB色空間の色域境界における色相角habに応じた彩度の最大値(最大彩度)C*
cuspを推定する(ステップS303)。これにより、HDR映像信号における色相角hab毎の最大彩度C*
cuspが得られる。
【0035】
最大彩度算出部11は、明度L*、彩度C*
ab、色相角hab及び最大彩度C*
cuspを彩度補正部12に出力する。最大彩度算出部11によるステップS303の処理の詳細については後述する。
【0036】
彩度補正部12は、最大彩度算出部11から、明度L*、彩度C*
ab、色相角hab及び最大彩度C*
cuspを入力すると共に、予め設定された彩度補正パラメータσ,γsaturationを入力する。
【0037】
彩度補正部12は、明度L*、彩度C*
ab、最大彩度C*
cusp及び彩度補正パラメータσ,γsaturation等に基づいて、予め設定されたHDRの基準白レベルに対応する明度L*
Refよりも高い明度L*における彩度C*
abを、明度L*の高い信号が白色点に近づくように補正することで、補正後の彩度C*
ab,corを算出する(ステップS304)。
【0038】
彩度補正部12は、彩度C*
ab,cor及び当該色相角habから色座標a*
cor,b*
corを算出し、補正後の色座標a*
cor,b*
corとして色空間逆変換部13に出力する。彩度補正部12によるステップS304の処理の詳細については後述する。
【0039】
色空間逆変換部13は、色空間変換部10から明度L*を入力すると共に、彩度補正部12から補正後の色座標a*
cor,b*
corを入力する。そして、色空間逆変換部13は、明度L*及び色座標a*
cor,b*
corによるCIELAB色空間を三刺激値XHDRYHDRZHDRの空間に変換する(ステップS305)。
【0040】
色空間逆変換部13は、彩度が補正されたHDRの三刺激値XHDRYHDRZHDRを出力する(ステップS306)。
【0041】
(最大彩度算出部11/実施例1)
次に、
図2に示した最大彩度算出部11による
図3のステップS303の処理について詳細に説明する。
図4は、実施例1における最大彩度算出部11の処理例(ステップS303)を示すフローチャートである。前述のとおり、最大彩度算出部11は、HDR映像信号において、その色相角h
abを保持したままで、CIELAB色空間の色域境界における色相角h
abに応じた最大彩度C
*
cuspを推定する。
【0042】
最大彩度算出部11は、色空間変換部10から、HDR映像信号の三刺激値空間がCIELAB色空間に変換された明度L
*及び色座標a
*,b
*を入力する(ステップS401)。そして、最大彩度算出部11は、以下の式により、色座標a
*,b
*から彩度C
*
ab及び色相角h
abを算出する(ステップS402)。
【数3】
【0043】
最大彩度算出部11は、後述するステップS403~S409により、色相角hab毎の彩度C*
abの最大値、すなわち最大彩度C*
cuspを推定する。
【0044】
ここで、色相角habにおいて彩度C*
abが最大値となることは、色相角habを用いてHDR映像信号を復元したときに、RGB成分のいずれかの信号が当該信号の上限値(例えば109%の映像信号レベル)に一致していることと等価である。
【0045】
このため、後述するステップS403~S409では、この性質を利用した処理が行われる。つまり、最大彩度算出部11は、色相角habを保持しながら、色域の境界を超える彩度C*
abとなる映像信号E’を算出し、映像信号E’を用いて、RGB成分のいずれかの信号が当該信号の上限値に一致するようにゲイン処理を行って映像信号E’aimを求め、映像信号E’aimから最大彩度C*
cuspを算出する。以下、具体的に説明する。
【0046】
最大彩度算出部11は、以下の式により、予め設定された彩度パラメータC
*
est及び色相角h
abから、色相角h
abを保持したままでCIALAB色空間の色域の境界を超える彩度(彩度パラメータC
*
est)となるように、色座標a
*
est,b
*
estを算出する(ステップS403)。
【数4】
【0047】
ここで、予め設定された彩度パラメータC*
estは、色相角habにおける最大彩度C*
cuspを推定するために使用されるパラメータである。彩度パラメータC*
estは、C*
est>0を満たす実数であり、CIELAB色空間における色域の境界を超える値が用いられる。
【0048】
前述の特許文献1に記載された手法により映像信号がCIELAB色空間に変換された場合、例えば色相角hab=146°における最大彩度C*
cuspは420である。このため、予め設定された彩度パラメータC*
estとしては、実用的にはC*
est=500が望ましい。
【0049】
図11は、CIALAB色空間の色域の境界を超える彩度となる色座標a
*
est,b
*
estを算出するステップS403の処理を説明する図である。横軸は色座標a
*を示し、縦軸は色座標b
*を示す。多角形の領域がCIELAB色空間の色域であるとする。この多角形の外枠は、色域の境界である。
【0050】
図11に示すように、予め設定された彩度パラメータC
*
estは、CIELAB色空間における色域の境界を超える彩度である。この値を用いて、色相角h
abにおける色座標a
*
est,b
*
estが算出される。尚、
図11のαに示すように、後述するステップS406にて、実質的に彩度パラメータC
*
estが最大彩度C
*
cuspに変換される処理が行われ、後述するステップS409にて、最大彩度C
*
cuspが得られる。
【0051】
尚、最大彩度算出部11は、ステップS403の処理の代わりに、予め設定されたテーブルから、ステップS402にて算出した色相角hab及びステップS403において予め設定された彩度パラメータC*
estに対応する色座標a*
est,b*
estを読み出すようにしてもよい。予め設定されたテーブルには、色相角hab、彩度パラメータC*
est及び色座標a*
est,b*
estが組となって格納されているものとする。
【0052】
図4に戻って、最大彩度算出部11は、予め設定された明度パラメータL
*
est及びステップS403にて算出した色座標a
*
est,b
*
estによるCIELAB色空間を三刺激値空間に変換することで、三刺激値X
HDRY
HDRZ
HDRを算出する(ステップS404)。ここで、予め設定された明度パラメータL
*
estは、L
*
est>0を満たす実数であり、任意の値が用いられる。
【0053】
これにより、色座標a*,b*及び明度L*の3次元のCIELAB色空間において、元のHDR映像信号の色相角habを保持したままでその色域の境界を超える彩度(彩度パラメータC*
est)となるように、三刺激値XHDRYHDRZHDRが得られる。
【0054】
最大彩度算出部11は、ステップS404にて算出した三刺激値XHDRYHDRZHDRをHDRのディスプレイ光信号E={RHDR,GHDR,BHDR}に変換する。そして、最大彩度算出部11は、HDR方式に応じたEOTFの逆関数により、ディスプレイ光信号EをHDRの映像信号E’={R’HDR,G’HDR,B’HDR}に変換する(ステップS405)。
【0055】
これにより、元のHDR映像信号の色相角habが保持され、かつそのCIELAB色空間の色域の境界を超える彩度(彩度パラメータC*
est)を有する映像信号E’が得られる。この映像信号E’におけるRGB成分間の比率は、CIELAB色空間の色相角habに相当する。また、映像信号E’のRGB成分のうちのいずれか1つの成分は、上限値(109%の映像信号レベル)の値をとる。
【0056】
最大彩度算出部11は、映像信号E’のRGB成分のうち、最大の信号値(最大値)を特定する。そして、最大彩度算出部11は、映像信号E’のRGB成分の比率を変えずに、特定した最大値が映像信号E’の上限値に一致するように、ゲイン処理を行うことで、映像信号E’aimを算出する(ステップS406)。
【0057】
具体的には、最大彩度算出部11は、映像信号E’が負の値となる場合があるため、以下の式により、映像信号E’
aimを算出する。
【数5】
【0058】
ここで、E’minは映像信号E’の下限値である。E’maxは映像信号E’の上限値、例えば109%の映像信号レベルである。max(E’-E’min)は、映像信号E’のRGB成分毎の信号値からE’minを減算した値のうち最大の値であり、言い換えると、映像信号E’のRGB成分のうち最大の信号値からE’minを減算した値である。
【0059】
つまり、最大彩度算出部11は、映像信号E’から下限値E’minを減算し、減算結果に上限値E’maxを乗算する。そして、最大彩度算出部11は、成分毎の減算結果のうち最大値であるmax(E’-E’min)を求め、乗算結果をmax(E’-E’min)で除算することで、目的となる映像信号E’aim={R’aim,G’aim,B’aim}を求める。
【0060】
これにより、元のHDR映像信号の色相角habが保持され、かつそのCIELAB色空間の最大彩度C*
cuspを有する映像信号E’aimが得られる。
【0061】
最大彩度算出部11は、HDR方式に応じたEOTFにより、映像信号E’aimをディスプレイ光信号E={RHDR,GHDR,BHDR}に変換し、ディスプレイ光信号EをHDRの三刺激値XHDRYHDRZHDRに変換する(ステップS407)。
【0062】
最大彩度算出部11は、三刺激値X
HDRY
HDRZ
HDRの空間をCIELAB色空間に変換し、明度L
*
cusp及び色座標a
*
cusp,b
*
cuspを算出する(ステップS408)。そして、最大彩度算出部11は、以下の式(前記式(3)の上式に対応)を用いて、色座標a
*
cusp,b
*
cuspから色相角h
abにおける最大彩度C
*
cuspを算出する(ステップS409)。
【数6】
これにより、HDR映像信号における色相角h
ab毎の最大彩度C
*
cuspが得られる。
【0063】
最大彩度算出部11は、明度L*、彩度C*
ab、色相角hab及び最大彩度C*
cuspを彩度補正部12に出力する(ステップS410)。
【0064】
(彩度補正部12/実施例1)
次に、
図2に示した彩度補正部12による
図3のステップS304の処理について詳細に説明する。
図5は、実施例1における彩度補正部12の処理例(ステップS304)を示すフローチャートである。前述のとおり、彩度補正部12は、明度L
*、彩度C
*
ab、最大彩度C
*
cusp及び彩度補正パラメータσ,γ
saturation等に基づいて、予め設定されたHDRの基準白レベルに対応する明度L
*
Refよりも高い明度L
*における彩度C
*
abを、明度L
*の高い信号が白色点に近づくように補正することで、補正後の彩度C
*
ab,corを算出する。
【0065】
彩度補正部12は、最大彩度算出部11から明度L*、彩度C*
ab、色相角hab及び最大彩度C*
cuspを入力する(ステップS501)。また、彩度補正部12は、予め設定された彩度補正パラメータσ,γsaturationを入力する(ステップS502)。
【0066】
彩度補正部12は、以下の式により、補正ファクターf
corを算出する(ステップS503)。
【数7】
【0067】
補正ファクターは、fcor<0のときfcor=0とする。前述のとおり、L*
Refは、HDR基準白レベルに対応する明度であり、予め設定される。L*
maxは、HDR映像信号の上限値に対応する明度(最大明度)である。ここで、HDRの基準白レベルに対応する明度をL*
Ref=100とし、HDRのピーク輝度を1000cd/m2としたときの最大明度は、L*
max=181.37522735となる。
【0068】
彩度補正パラメータσは、σ≧0の実数を任意で調整可能な、予め設定されるユーザーパラメータである。彩度補正パラメータγsaturationは、HDRの基準白レベル以上の明度のうち、RGB成分間のコントラストが高い、つまりRGB原色の色部分の彩度を任意で調整可能な、予め設定されるユーザーパラメータであり、γsaturation≧1である。彩度補正パラメータσ,γsaturationを1つに絞るために、γsaturation=σ+1としてもよい。尚、σ=0の場合、補正ファクターfcor=1となるため、実質的にはσ>0である。後述する実施例2,3についても同様である。
【0069】
前記式(7)の下式において、((C*
cusp-C*
ab)/C*
cusp)は彩度C*
abの項であり、0~1の範囲において、彩度C*
abが最大彩度C*
cuspに近ければ近いほど0に近い値をとり、彩度C*
abが0に近ければ近いほど(彩度C*
abが最大彩度C*
cuspよりも低ければ低いほど)1に近い値をとる。また、((L*-L*
Ref)/(L*
max-L*
Ref))は明度L*の項であり、0~1の範囲において、明度L*が明度L*
Refに近ければ近いほど0に近い値をとり、明度L*が明度L*
maxに近ければ近いほど1に近い値をとる。
【0070】
前記式(7)の下式は、彩度補正パラメータγsaturationを冪指数とし、彩度C*
abの項に明度L*の項を乗算した結果を底とする冪関数を用いている。
【0071】
具体的には、彩度補正部12は、明度L*が明度L*
Ref以下の場合、補正ファクターfcor=1を設定する。一方、彩度補正部12は、明度L*が明度L*
Refよりも高い場合、映像信号の色が無彩色として表現されるように、彩度C*
abが最大彩度C*
cuspよりも低ければ低いほど、彩度C*
abの項の影響を受けることのない補正ファクターfcorを算出する。この場合、補正後の彩度C*
ab,corは、彩度C*
abに対する補正度合いが大きくなり、より低い値となる。
【0072】
また、彩度補正部12は、彩度C*
abが最大彩度C*
cuspに近ければ近いほど、彩度C*
abの項の影響を受けて1に近くなるように、補正ファクターfcorを算出する。この場合、補正後の彩度C*
ab,corは、彩度C*
abに対する補正度合いが小さくなり、彩度C*
abに近い値となる。
【0073】
彩度補正部12は、前記式(2)により、補正ファクターfcorを彩度C*
abに乗算することで、補正後の彩度C*
ab,corを求める(ステップS504)。この補正後の彩度C*
ab,corは、明度L*及び色相角habを保ちながら、彩度C*
abが補正されたデータである。
【0074】
図15は、実施例1による彩度補正処理を説明する図であり、特許文献1による彩度補正処理との比較を示している。横軸は彩度C
*
abを示し、縦軸は明度L
*を示し、この特性は、明度L
*がHDR基準白レベルに対応する明度L
*
Refよりも高い場合を示している。
【0075】
前記式(1)を用いた特許文献1による彩度補正処理により、彩度C*
ab=(1-σ)Cab,2は、例えば明度L*=L*
maxにおいてa1からb1へ、明度L*=L*
2においてa2からb2へ補正される。また、彩度C*
ab=(1-σ)Cab,1は、例えば明度L*=L*
1においてa5からb5へ補正される。つまり、直線α1,α2で示す彩度C*
ab,corに補正される。
【0076】
これに対し、前記式(7)を用いた実施例1による彩度補正処理により、彩度C*
ab=(1-σ)Cab,2は、例えばa3からb3’へ、a2からb2’へ、a4からb4’へ補正され、曲線α3(太い点曲線)で示す彩度C*
ab,corに補正される。
【0077】
明度L*がHDR基準白レベルに対応する明度L*
Refよりも高い場合では、実施例1の前記式(7)に示したとおり、彩度C*
abの補正量は、冪関数を用いた冪乗補正がなされた量であり、この冪乗補正が曲線α3に表れている。
【0078】
前記式(1)を用いた特許文献1による彩度補正処理では、彩度C*
ab,corは、直線α1,α2で表したとおり、彩度C*
abに対して線形的に移動することとなる。これに対し、前記式(7)を用いた実施例1による彩度補正処理では、彩度C*
ab,corは、曲線α3で表したとおり、彩度C*
abに対して曲線的に移動することとなり、前記式(1)を用いた特許文献1による彩度補正処理に比べ、移動量が少ない。つまり、彩度C*
abの補正量が緩和されることとなる。後述する実施例2,3についても同様の特性となる。
【0079】
このように、彩度補正部12の彩度補正処理により、明度L*がHDR基準白レベルに対応する明度L*
Ref以下の領域では、補正後の彩度C*
ab,corとして、彩度C*
abが維持されそのまま用いられる。また、明度L*がHDR基準白レベルに対応する明度L*
Refよりも高い領域、すなわち明度の高い領域では、彩度C*
abに1以下の補正ファクターfcorが乗算され、補正後の彩度C*
ab,corとして、彩度C*
ab以下の値が得られる。
【0080】
図5に戻って、彩度補正部12は、以下の式により、補正後の彩度C
*
ab,cor及び色相角h
abから補正後の色座標a
*
cor,b
*
corを算出する(ステップS505)。
【数8】
【0081】
彩度補正部12は、補正後の色座標a*
cor,b*
corを色空間逆変換部13に出力する(ステップS506)。
【0082】
(シミュレーション結果/実施例1)
次に、実施例1のシミュレーション結果について説明する。
図12は、実施例1の彩度補正装置1-1を備えた映像信号変換装置が出力するSDR映像信号のグラデーション画像の例を示す図である。
【0083】
(1)~(3)は、後述する
図9の映像信号変換装置2-1において、HDR映像信号が、HDR方式に応じたEOTFによりディスプレイ光信号に変換され、彩度補正処理及び圧縮処理後のディスプレイ光信号が、SDR方式に応じたEOTFの逆関数によりビデオ信号に変換され、SDR映像信号として出力される場合のSDR映像信号のグラデーション画像を示す。この場合の後述する
図9の映像信号変換装置2-1が入力するHDR映像信号のグラデーション画像は、
図16に示したグラデーション画像であるものとする。後述する
図13及び
図14についても同様である。
【0084】
図17と同様に、(1)は彩度補正パラメータσ=0、(2)は彩度補正パラメータσ=1、(3)は彩度補正パラメータσ=2の場合を示している。(1)(2)(3)のそれぞれにおいて、横軸は、色相角0°(左端)から180°(右端)までの色相を示し、縦軸は明度を示す。縦軸の明度は、下端へ向けて低くなり、上端へ向けて高くなる。また、彩度補正パラメータγ
saturation=σ+1とする。後述する
図13及び
図14についても同様である。
【0085】
図17に示した特許文献1の場合のグラデーション画像と、
図12に示す実施例1の場合のグラデーション画像とを比較すると、(1)は彩度補正パラメータσ=0であり、前記式(1)及び(7)にて補正ファクターf
cor=1である。このため、両グラデーション画像は同じである。
【0086】
図17(2)(3)及び
図12(2)(3)を参照すると、特に、
図17(2)(3)に示した楕円で囲った箇所、及び
図12(2)(3)に対応する箇所において、
図12に示す実施例1の方が、彩度が急激に変化していないことがわかる。つまり、
図12に示す実施例1は、
図17に示した特許文献1の場合よりも、彩度の不連続が抑制され、
図16に示したグラデーション画像に近い色再現性が実現できていることがわかる。つまり、実施例1では、彩度補正パラメータσの値を大きくすると、彩度に不連続を生じてしまうという従来の問題を解決することができる。
【0087】
以上のように、実施例1の彩度補正装置1-1によれば、色空間変換部10は、HDR映像信号の三刺激値XHDRYHDRZHDRの空間をCIELAB色空間に変換し、明度L*及び色座標a*,b*を算出する。
【0088】
最大彩度算出部11は、色座標a*,b*から彩度C*
ab及び色相角habを算出し、色相角habを保持したままで、CIELAB色空間の色域境界となる色相角habに応じた最大彩度C*
cuspを推定する。
【0089】
彩度補正部12は、前記式(7)を用いる等して、明度L*、彩度C*
ab、最大彩度C*
cusp及び彩度補正パラメータσ,γsaturation等に基づいて、予め設定されたHDRの基準白レベルに対応する明度L*
Refよりも高い明度L*における彩度C*
abを、明度L*の高い信号が白色点に近づくように補正することで、補正後の彩度C*
ab,corを算出する。彩度補正部12は、彩度C*
ab,cor及び色相角habから色座標a*
cor,b*
corを算出する。
【0090】
色空間逆変換部13は、明度L*及び色座標a*
cor,b*
corによるCIELAB色空間を三刺激値XHDRYHDRZHDRの空間に変換し、彩度が補正されたHDRの三刺激値XHDRYHDRZHDRを出力する。
【0091】
これにより、実施例1の彩度補正装置1-1を、例えば後述する
図9に示す映像信号変換装置2-1に用いることで、
図12に示したSDR映像信号のグラデーション画像を得ることができる。
【0092】
つまり、彩度補正パラメータσの値を大きくすると、彩度に不連続を生じてしまうという従来の問題を解決することができ、HDR映像信号をSDR映像信号に変換する際の彩度補正処理において、彩度の不連続を抑制することができる。
【0093】
したがって、ハイライト領域の色相を保ちながら、明度の高い領域に生じる彩度の不連続が生じることを抑制することができ、普及が見込まれる一体化制作システムに、彩度補正装置1-1の導入が期待できる。
【0094】
〔実施例2〕
次に、
図1に示した彩度補正装置1について、実施例2を説明する。
図6は、実施例2の彩度補正装置1の構成例を示すブロック図である。この彩度補正装置1-2は、色空間変換部10、彩度補正部14及び色空間逆変換部13を備えている。
【0095】
図2に示した実施例1の彩度補正装置1-1と
図6に示す実施例2の彩度補正装置1-2とを比較すると、両彩度補正装置1-1,1-2は、色空間変換部10及び色空間逆変換部13を備えている点で共通する。一方、彩度補正装置1-2は、彩度補正部14を備えている点で、最大彩度算出部11及び彩度補正部12を備えた彩度補正装置1-1と相違する。尚、
図6において、
図2と同一部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0096】
彩度補正部14は、色空間変換部10から明度L*及び色座標a*,b*を入力すると共に、予め設定された彩度補正パラメータσ,γsaturationを入力する。そして、彩度補正部14は、前記式(3)により、色座標a*,b*から彩度C*
ab及び色相角habを算出する。
【0097】
彩度補正部14は、明度L*及び彩度補正パラメータσ,γsaturation等に基づいて、予め設定されたHDRの基準白レベルに対応する明度L*
Refよりも高い明度L*における彩度C*
abを、明度L*の高い信号が白色点に近づくように補正することで、補正後の彩度C*
ab,corを算出する。
【0098】
彩度補正部14は、彩度C*
ab,cor及び色相角habから色座標a*
cor,b*
corを算出し、補正後の色座標a*
cor,b*
corとして色空間逆変換部13に出力する。彩度補正部14の処理の詳細については後述する。
【0099】
(彩度補正部14/実施例2)
次に、
図6に示した彩度補正部14の処理について詳細に説明する。
図7は、実施例2における彩度補正部14の処理例を示すフローチャートである。
【0100】
彩度補正部14は、色空間変換部10から明度L*及び色座標a*,b*を入力すると共に(ステップS701)、予め設定された彩度補正パラメータσ,γsaturationを入力する(ステップS702)。
【0101】
彩度補正部14は、前記式(3)により、色座標a*,b*から彩度C*
ab及び色相角habを算出する(ステップS703)。
【0102】
彩度補正部14は、以下の式により、補正ファクターf
corを算出する(ステップS704)。
【数9】
【0103】
補正ファクターは、fcor<0のときfcor=0とする。実施例1の前記式(7)の下式とこの実施例2の前記式(9)の下式とを比較すると、前記式(9)は、((C*
cusp-C*
ab)/C*
cusp)の項(彩度C*
abの項)が存在しない点で、前記(7)と相違する。また、特許文献1の前記式(1)の下式とこの実施例2の前記式(9)の下式とを比較すると、前記式(9)は、彩度補正パラメータγsaturationを冪指数とし、((L*-L*
Ref)/(L*
max-L*
Ref))の項(明度L*の項)を底とする冪関数を用いている点で、冪関数を用いていない前記式(1)と相違する。
【0104】
彩度補正パラメータγsaturationは、予め設定されたユーザーパラメータであり、特許文献1の前記式(1)と異なり、γsaturation>1である。
【0105】
彩度補正部14は、明度L*が明度L*
Ref以下の場合、補正ファクターfcor=1を設定する。一方、彩度補正部14は、明度L*が明度L*
Refよりも高い場合、映像信号の色が白色点に近づくように、前記式(9)の下式により補正ファクターfcorを算出する。この場合、前記式(9)の下式は、実施例1の前記式(7)の下式よりも簡略化されているため、低負荷にて補正ファクターfcorを得ることができる。
【0106】
彩度補正部14は、前記式(2)により、補正ファクターfcorを彩度C*
abに乗算することで、補正後の彩度C*
ab,corを求める(ステップS705)。この補正後の彩度C*
ab,corは、明度L*及び色相角habを保ちながら、彩度C*
abが補正されたデータである。
【0107】
このように、彩度補正部14の彩度補正処理により、明度L*がHDR基準白レベルに対応する明度L*
Ref以下の領域では、補正後の彩度C*
ab,corとして、彩度C*
abが維持されそのまま用いられる。また、明度L*がHDR基準白レベルに対応する明度L*
Refよりも高い領域、すなわち明度の高い領域では、彩度C*
abに1以下の補正ファクターfcorが乗算され、補正後の彩度C*
ab,corとして、彩度C*
ab以下の値が得られる。
【0108】
彩度補正部14は、前記式(8)により、補正後の彩度C*
ab,cor及び色相角habから補正後の色座標a*
cor,b*
corを算出する(ステップS706)。そして、彩度補正部14は、補正後の色座標a*
cor,b*
corを色空間逆変換部13に出力する(ステップS707)。
【0109】
(シミュレーション結果/実施例2)
次に、実施例2のシミュレーション結果について説明する。
図13は、実施例2の彩度補正装置1-2を備えた映像信号変換装置が出力するSDR映像信号のグラデーション画像の例を示す図である。
【0110】
図17に示した特許文献1の場合のグラデーション画像と、
図13に示す実施例2の場合のグラデーション画像とを比較すると、
図12に示した実施例1の場合と同様に、
図13に示す実施例2は、
図17に示した特許文献1の場合よりも、彩度の不連続が抑制され、
図16に示したグラデーション画像に近い色再現性が実現できていることがわかる。つまり、彩度補正パラメータσの値を大きくすると、彩度に不連続を生じてしまうという従来の問題を解決することができる。
【0111】
ここで、
図12に示した実施例1の場合のグラデーション画像と、
図13に示す実施例2の場合のグラデーション画像とを比較すると、
図12に示した実施例1の方が、
図12(3)の矢印の箇所であるRGBの原色から混色に変化するエッジの部分で、彩度の不連続が抑制され、色再現性が実現できていることがわかる。
【0112】
これは、実施例1の補正ファクターfcorを算出する前記式(7)は、彩度C*
abがその色相角habの最大彩度C*
cuspよりもどの程度小さいかという彩度C*
abの項((C*
cusp-C*
ab)/C*
cusp)を含めた底の冪関数を用いているのに対し、実施例2の補正ファクターfcorを算出する前記式(9)は、冪関数を用いているが、その底は彩度C*
abの項を含んでいないからである。
【0113】
以上のように、実施例2の彩度補正装置1-2によれば、色空間変換部10は、HDR映像信号の三刺激値XHDRYHDRZHDRの空間をCIELAB色空間に変換し、明度L*及び色座標a*,b*を算出する。
【0114】
彩度補正部14は、色座標a*,b*から彩度C*
ab及び色相角habを算出する。そして、彩度補正部14は、前記式(9)を用いる等して、明度L*及び彩度補正パラメータσ,γsaturation等に基づいて、予め設定されたHDRの基準白レベルに対応する明度L*
Refよりも高い明度L*における彩度C*
abを、明度L*の高い信号が白色点に近づくように補正することで、補正後の彩度C*
ab,corを算出する。彩度補正部14は、彩度C*
ab,cor及び色相角habから色座標a*
cor,b*
corを算出する。
【0115】
色空間逆変換部13は、明度L*及び色座標a*
cor,b*
corによるCIELAB色空間を三刺激値XHDRYHDRZHDRの空間に変換し、彩度が補正されたHDRの三刺激値XHDRYHDRZHDRを出力する。
【0116】
これにより、実施例2の彩度補正装置1-2を、例えば後述する
図9に示す映像信号変換装置2-1に用いることで、
図13に示したSDR映像信号のグラデーション画像を得ることができる。
【0117】
つまり、実施例1の場合と同様に、HDR映像信号をSDR映像信号に変換する際の彩度補正処理において、彩度の不連続を抑制することができる。
【0118】
したがって、ハイライト領域の色相を保ちながら、明度の高い領域に生じる彩度の不連続が生じることを抑制することができ、普及が見込まれる一体化制作システムに、彩度補正装置1-2の導入が期待できる。
【0119】
また、実施例2では、実施例1の前記式(7)よりも簡素化した前記式(9)を用いるようにした。これにより、実施例1よりも簡易な処理にて彩度補正処理を行うことができ、実施例1と同様の色再現性を保つことができる。
【0120】
〔実施例3〕
次に、
図1に示した彩度補正装置1について、実施例3を説明する。
図8は、実施例3の彩度補正装置1の構成例を示すブロック図である。この彩度補正装置1-3は、色空間変換部10、最大彩度算出部11、彩度補正部15及び色空間逆変換部13を備えている。
【0121】
図2に示した実施例1の彩度補正装置1-1と
図8に示す実施例3の彩度補正装置1-3とを比較すると、両彩度補正装置1-1,1-3は、色空間変換部10、最大彩度算出部11及び色空間逆変換部13を備えている点で共通する。一方、彩度補正装置1-3は、彩度補正部15を備えている点で、彩度補正部12を備えた彩度補正装置1-1と相違する。尚、
図8において、
図2と同一部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0122】
彩度補正部15は、最大彩度算出部11から明度L*、彩度C*
ab、色相角hab及び最大彩度C*
cuspを入力すると共に、予め設定された彩度補正パラメータσ,γsaturationを入力する。
【0123】
彩度補正部15は、明度L*、彩度C*
ab、最大彩度C*
cusp及び彩度補正パラメータσ,γsaturation等に基づいて、予め設定されたHDRの基準白レベルに対応する明度L*
Refよりも高い明度L*における彩度C*
abを、明度L*の高い信号が白色点に近づくように補正することで、補正後の彩度C*
ab,corを算出する。
【0124】
具体的には、彩度補正部15は、以下の式により、補正ファクターf
corを算出する。
【数10】
【0125】
補正ファクターは、fcor<0のときfcor=0とする。実施例1の前記式(7)の下式とこの実施例3の前記式(10)の下式とを比較すると、両式は、彩度補正パラメータγsaturationを冪指数とした冪関数を用いている点で共通する。一方、前記式(10)の冪関数の底は、明度L*の項である点で、彩度C*
abの項に明度L*の項を乗算した結果を底とする前記式(7)と相違する。
【0126】
彩度補正部15は、明度L*が明度L*
Ref以下の場合、補正ファクターfcor=1を設定する。一方、彩度補正部15は、明度L*が明度L*
Refよりも高い場合、映像信号の色が無彩色として表現されるように、彩度C*
abが最大彩度C*
cuspよりも低ければ低いほど、彩度C*
abの項の影響を受けることのない補正ファクターfcorを算出する。この場合、補正後の彩度C*
ab,corは、彩度C*
abに対する補正度合いが大きくなり、より低い値となる。
【0127】
また、彩度補正部15は、彩度C*
abが最大彩度C*
cuspに近ければ近いほど、彩度C*
abの項の影響を受けて1に近くなるように、補正ファクターfcorを算出する。この場合、補正後の彩度C*
ab,corは、彩度C*
abに対する補正度合いが小さくなり、彩度C*
abに近い値となる。
【0128】
彩度補正部15は、前記式(2)により、補正ファクターfcorを彩度C*
abに乗算することで、補正後の彩度C*
ab,corを求める。
【0129】
このように、彩度補正部15の彩度補正処理により、明度L*がHDR基準白レベルに対応する明度L*
Ref以下の領域では、補正後の彩度C*
ab,corとして、彩度C*
abが維持されそのまま用いられる。また、明度L*がHDR基準白レベルに対応する明度L*
Refよりも高い領域、すなわち明度の高い領域では、彩度C*
abに1以下の補正ファクターfcorが乗算され、補正後の彩度C*
ab,corとして、彩度C*
ab以下の値が得られる。
【0130】
彩度補正部15は、前記式(8)により、補正後の彩度C*
ab,cor及び色相角habから補正後の色座標a*
cor,b*
corを算出し、補正後の色座標a*
cor,b*
corを色空間逆変換部13に出力する。
【0131】
(シミュレーション結果/実施例3)
次に、実施例3のシミュレーション結果について説明する。
図14は、実施例3の彩度補正装置1-3を備えた映像信号変換装置が出力するSDR映像信号のグラデーション画像の例を示す図である。
【0132】
図17に示した特許文献1の場合のグラデーション画像と、
図14に示す実施例3の場合のグラデーション画像とを比較すると、
図12に示した実施例1及び
図13に示した実施例2の場合と同様に、
図14に示す実施例3は、
図17に示した特許文献1の場合よりも、彩度の不連続が抑制され、
図16に示したグラデーション画像に近い色再現性が実現できていることがわかる。つまり、彩度補正パラメータσの値を大きくすると、彩度に不連続を生じてしまうという従来の問題を解決することができる。
【0133】
以上のように、実施例3の彩度補正装置1-3によれば、色空間変換部10は、HDR映像信号の三刺激値XHDRYHDRZHDRの空間をCIELAB色空間に変換し、明度L*及び色座標a*,b*を算出する。
【0134】
最大彩度算出部11は、色座標a*,b*から彩度C*
ab及び色相角habを算出し、色相角habを保持したままで、CIELAB色空間の色域境界となる色相角habに応じた最大彩度C*
cuspを推定する。
【0135】
彩度補正部15は、前記式(10)を用いる等して、明度L*、彩度C*
ab、最大彩度C*
cusp及び彩度補正パラメータσ,γsaturation等に基づいて、予め設定されたHDRの基準白レベルに対応する明度L*
Refよりも高い明度L*における彩度C*
abを、明度L*の高い信号が白色点に近づくように補正することで、補正後の彩度C*
ab,corを算出する。彩度補正部15は、彩度C*
ab,cor及び色相角habから色座標a*
cor,b*
corを算出する。
【0136】
色空間逆変換部13は、明度L*及び色座標a*
cor,b*
corによるCIELAB色空間を三刺激値XHDRYHDRZHDRの空間に変換し、彩度が補正されたHDRの三刺激値XHDRYHDRZHDRを出力する。
【0137】
これにより、実施例3の彩度補正装置1-3を、例えば後述する
図9に示す映像信号変換装置2-1に用いることで、
図14に示したSDR映像信号のグラデーション画像を得ることができる。
【0138】
つまり、実施例1,2と同様に、HDR映像信号をSDR映像信号に変換する際の彩度補正処理において、彩度の不連続を抑制することができる。
【0139】
したがって、ハイライト領域の色相を保ちながら、明度の高い領域に生じる彩度の不連続が生じることを抑制することができ、普及が見込まれる一体化制作システムに、彩度補正装置1-3の導入が期待できる。
【0140】
〔映像信号変換装置〕
次に、実施例1~3の彩度補正装置1-1~1-3を用いた映像信号変換装置について説明する。
【0141】
図9は、実施例1~3の彩度補正装置1-1~1-3を備えた映像信号変換装置の第1の構成例を示すブロック図である。この映像信号変換装置2-1は、ディスプレイ参照型またはシーン参照型、かつ輝度成分にダイナミックレンジ圧縮処理を適用するHDRからSDRへの変換処理において、実施例1~3による彩度補正処理を適用するものである。
【0142】
映像信号変換装置2-1は、HDRビデオ/光変換部20、RGB/三刺激値変換部21、彩度補正装置1、三刺激値及び色度変換部22、圧縮処理部23、SDR輝度/三刺激値変換部24、三刺激値/RGB変換部25及びSDR光/ビデオ変換部26を備えている。彩度補正装置1は、彩度補正装置1-1~1-3のうちのいずれかの装置を示す。
【0143】
映像信号変換装置2-1は、HDR映像信号を入力し、実施例1~3の彩度補正装置1-1~1-3のいずれかの装置を用いてHDR映像信号の彩度を補正し、その後にHDR映像信号からSDR映像信号へダイナミックレンジを圧縮し、SDR映像信号を出力する。後述する
図10に示す映像信号変換装置2-2についても同様であり、ダイナミックレンジ圧縮前に、HDR映像信号の彩度が補正される。
【0144】
ディスプレイ参照型のダイナミックレンジの圧縮が行われる場合、HDRビデオ/光変換部20は、HDR方式に応じたEOTFにより、HDR映像信号のビデオ信号をディスプレイ光信号に変換する。一方、シーン参照型のダイナミックレンジの圧縮が行われる場合、HDRビデオ/光変換部20は、HDR方式に応じたOETF(Opto Electronic Transfer Function:光-電気伝達関数)の逆関数により、HDR映像信号のビデオ信号をディスプレイ光信号に変換する。
【0145】
RGB/三刺激値変換部21は、ディスプレイ光信号を三刺激値に変換する。彩度補正装置1は、前述の実施例1~3にて説明したとおり、彩度補正処理を行い、彩度補正後の三刺激値を出力する。三刺激値及び色度変換部22は、彩度補正装置1から三刺激値を入力し、三刺激値から色座標x,yを求める。
【0146】
圧縮処理部23は、三刺激値のうちの輝度Yに対し、所定のトーンマッピング関数を用いてダイナミックレンジを圧縮する。SDR輝度/三刺激値変換部24は、圧縮後の輝度Y及び色座標x,yから三刺激値を求める。三刺激値/RGB変換部25は、三刺激値をディスプレイ光信号に変換する。
【0147】
ディスプレイ参照型のダイナミックレンジの圧縮が行われた場合、SDR光/ビデオ変換部26は、SDR方式に応じたEOTFの逆関数により、ディスプレイ光信号をビデオ信号に変換し、SDR映像信号を出力する。一方、シーン参照型のダイナミックレンジの圧縮が行われる場合、SDR光/ビデオ変換部26は、SDR方式に応じたOETFにより、ディスプレイ光信号をビデオ信号に変換し、SDR映像信号を出力する。
【0148】
図10は、実施例1~3の彩度補正装置1-1~1-3を備えた映像信号変換装置の第2の構成例を示すブロック図である。この映像信号変換装置2-2は、ディスプレイ参照型またはシーン参照型、かつRGB成分にダイナミックレンジ圧縮処理を適用するHDRからSDRへの変換処理において、実施例1~3による彩度補正処理を適用するものである。
【0149】
映像信号変換装置2-2は、HDRビデオ/光変換部30、RGB/三刺激値変換部31、彩度補正装置1、三刺激値/RGB変換部32、圧縮処理部33及びSDR光/ビデオ変換部34を備えている。彩度補正装置1は、彩度補正装置1-1~1-3のうちのいずれかの装置を示す。
【0150】
ディスプレイ参照型のダイナミックレンジの圧縮が行われる場合、HDRビデオ/光変換部30は、HDR方式に応じたEOTFにより、HDR映像信号のビデオ信号をディスプレイ光信号に変換する。一方、シーン参照型のダイナミックレンジの圧縮が行われる場合、HDRビデオ/光変換部30は、HDR方式に応じたOETFの逆関数により、HDR映像信号のビデオ信号をディスプレイ光信号に変換する。
【0151】
RGB/三刺激値変換部31は、ディスプレイ光信号を三刺激値に変換する。彩度補正装置1は、前述の実施例1~3にて説明したとおり、彩度補正処理を行い、彩度補正後の三刺激値を出力する。三刺激値/RGB変換部32は、彩度補正装置1から三刺激値を入力し、三刺激値からRGB成分のディスプレイ光信号を求める。
【0152】
圧縮処理部33は、RGB成分のディスプレイ光信号に対し、所定のトーンマッピング関数を用いてダイナミックレンジを圧縮する。
【0153】
ディスプレイ参照型のダイナミックレンジの圧縮が行われた場合、SDR光/ビデオ変換部34は、SDR方式に応じたEOTFの逆関数により、圧縮後のRGB成分のディスプレイ光信号をビデオ信号に変換し、SDR映像信号を出力する。一方、シーン参照型のダイナミックレンジの圧縮が行われる場合、SDR光/ビデオ変換部34は、SDR方式に応じたOETFにより、圧縮後のRGB成分のディスプレイ光信号をビデオ信号に変換し、SDR映像信号を出力する。
【0154】
以上のように、
図9及び
図10に示した映像信号変換装置2-1,2-2によれば、実施例1~3の彩度補正装置1-1~1-3は、HDR映像信号の彩度を補正し、その後に、圧縮処理部23,33は、HDR映像信号からSDR映像信号へダイナミックレンジを圧縮するようにした。
【0155】
これにより、映像信号変換装置2-1,2-2から、実施例1~3の彩度補正装置1-1~1-3により彩度が補正されたSDR映像信号が出力され、例えば
図12~
図14に示したSDR映像信号のグラデーション画像を得ることができる。
【0156】
つまり、彩度補正パラメータσの値を大きくすると、彩度に不連続を生じてしまうという従来の問題を解決することができ、HDR映像信号をSDR映像信号に変換する際の彩度補正処理において、彩度の不連続を抑制することができる。
【0157】
したがって、ハイライト領域の色相を保ちながら、明度の高い領域に生じる彩度の不連続が生じることを抑制することができ、普及が見込まれる一体化制作システムに、彩度補正装置1-1~1-3の導入が期待できる。
【0158】
以上、実施例1~3による彩度補正装置1-1~1-3及び映像信号変換装置2-1,2-2を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施例1~3等に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0159】
例えば、
図9及び
図10に示した映像信号変換装置2-1,2-2の圧縮処理部23,33に用いるトーンマッピング関数は、線形関数及び対数関数を組み合わせた関数であってもよいし、他の関数であってもよい。要するに、ダイナミックレンジを圧縮する関数であれば何でもよい。
【0160】
尚、本発明の実施例1~3による彩度補正装置1-1~1-3及び映像信号変換装置2-1,2-2のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。彩度補正装置1-1~1-3及び映像信号変換装置2-1,2-2は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。
【0161】
彩度補正装置1-1に備えた色空間変換部10、最大彩度算出部11、彩度補正部12及び色空間逆変換部13の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0162】
また、彩度補正装置1-2に備えた色空間変換部10、彩度補正部14及び色空間逆変換部13の各機能も、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。また、彩度補正装置1-3に備えた色空間変換部10、最大彩度算出部11、彩度補正部15及び色空間逆変換部13の各機能も、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0163】
また、映像信号変換装置2-1に備えたHDRビデオ/光変換部20、RGB/三刺激値変換部21、彩度補正装置1、三刺激値及び色度変換部22、圧縮処理部23、SDR輝度/三刺激値変換部24、三刺激値/RGB変換部25及びSDR光/ビデオ変換部26の各機能も、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。また、映像信号変換装置2-2に備えたHDRビデオ/光変換部30、RGB/三刺激値変換部31、彩度補正装置1、三刺激値/RGB変換部32、圧縮処理部33及びSDR光/ビデオ変換部34の各機能も、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0164】
これらのプログラムは、前記記憶媒体に格納されており、CPU等に読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD-ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもでき、ネットワークを介して送受信することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明による彩度補正装置、映像信号変換装置及びプログラムは、HDR映像信号及びSDR映像信号の一体化制作において有用である。
【符号の説明】
【0166】
1,1-1,1-2,1-3 彩度補正装置
2-1,2-2 映像信号変換装置
10 色空間変換部
11 最大彩度算出部
12,14,15 彩度補正部
13 色空間逆変換部
20,30 HDRビデオ/光変換部
21,31 RGB/三刺激値変換部
22 三刺激値及び色度変換部
23,33 圧縮処理部
24 SDR輝度/三刺激値変換部
25,32 三刺激値/RGB変換部
26,34 SDR光/ビデオ変換部
L* 明度
hab 色相角
fcor 補正ファクター
L*
Ref HDR基準白レベルに対応する明度
L*
max HDR映像信号の上限値に対応する明度(最大明度)
σ,γsaturation 彩度補正パラメータ
C*
ab,C*
ab,cor 彩度
XHDRYHDRZHDR 三刺激値
a*,b*,a*
cor,b*
cor,a*
est,b*
est,a*
cusp,b*
cusp 色座標
C*
cusp 最大彩度
E’,E’aim 映像信号
C*
est 彩度パラメータ
L*
est 明度パラメータ
E ディスプレイ光信号
E’max 映像信号の上限値
E’min 映像信号の下限値