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特許7434068無線通信システム、通信方法、及び無線基地局
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】無線通信システム、通信方法、及び無線基地局
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/1263 20230101AFI20240213BHJP
   H04W 72/0453 20230101ALI20240213BHJP
【FI】
H04W72/1263
H04W72/0453 110
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020098336
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021192475
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】玉置 真也
(72)【発明者】
【氏名】原 一貴
(72)【発明者】
【氏名】南 勝也
(72)【発明者】
【氏名】久保 亮吾
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス ダビド
【審査官】本橋 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-515584(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0207725(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0158203(US,A1)
【文献】Ming Gan,Discussion on OFDMA scheduling for 802.11ax,IEEE 802.11-15/0380r0 ,IEEE, インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/15/11-15-0380-00-00ax-discussion-on-ofdma-scheduling-for-802-11ax.pptx>,2015年03月09日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの無線基地局と複数の無線端末との間の無線接続が直交周波数分割多元接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)である無線通信システムであって、
前記無線基地局は、
現在のバッファ内のフロー毎のキュー長及び優先度の情報を取得する情報取得部と、
前記キュー長及び優先度の情報を用いて、OFDMAに基づく前記無線端末との間の無線資源割当の計算を一定の時間間隔で行う演算部と、
前記無線資源割当の計算結果を前記演算部が行う次の無線資源割当の計算にフィードバックさせるフィードバック部と、
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記情報取得部が取得する前記情報は、前記無線基地局の前記バッファの情報であり、
前記無線資源割当は、前記無線基地局から前記無線端末への下り方向の割当であることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記情報取得部が取得する前記情報は、前記無線端末の前記バッファの情報であり、
前記無線資源割当は、前記無線端末から前記無線基地局への上り方向の割当であることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
1つの無線基地局と複数の無線端末との間の無線接続が直交周波数分割多元接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)である無線通信システムにおける通信方法であって、
前記無線基地局と前記無線端末の少なくとも一方の、現在のバッファ内のフロー毎のキュー長及び優先度の情報を取得すること、
前記キュー長及び優先度の情報を用いて、OFDMAに基づく前記無線端末との間の無線資源割当の計算を一定の時間間隔で行うこと、及び
前記無線資源割当の計算結果を次の無線資源割当の計算にフィードバックすること、
を特徴とする通信方法。
【請求項5】
複数の無線端末との間の無線接続が直交周波数分割多元接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)である無線基地局であって、
自身と前記無線端末の少なくとも一方の、現在のバッファ内のフロー毎のキュー長及び優先度の情報を取得する情報取得部と、
前記キュー長及び優先度の情報を用いて、OFDMAに基づく前記無線端末との間の無線資源割当の計算を一定の時間間隔で行う演算部と、
前記無線資源割当の計算結果を前記演算部が行う次の無線資源割当の計算にフィードバックさせるフィードバック部と、
を備えることを特徴とする無線基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信システムの無線資源割当に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムでは1台の無線基地局と複数台の無線端末との間の通信においてデータ衝突を避けるために各無線端末に対して無線資源の割当制御が行われている。例えば、モバイル無線通信規格のLTE(Long Term Evolution)や無線LAN(Local Area Network)のIEEE 802.11axではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)が採用されており、無線資源量をRB(Resource Block)ないしRU(Resource Unit)単位で各無線端末に割り当てる。RB/RUとデータレートの関係はMCS(Modulation and Coding Scheme)およびトーン数(サブキャリア数)に依存する。
【0003】
LTEにおけるRBの割当には各ユーザのバッファ状態を考慮して、各ユーザ宛のデータ量に比例した無線資源割当技術や通信品質やユーザ間の公平性を考慮した無線資源割当技術が提案されている(例えば、非特許文献1~4を参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】F. Capozzi, “Downlink Packet Scheduling in LTE Cellular Networks: Key Design Issues and a Survey,” IEEE Communications Surveys & Tutorials, vol. 15, no. 2, pp. 678-700, Second Quarter 2013.
【文献】E. Khorov et al., “A Tutorial on IEEE 802.11ax High Efficiency WLANs,” IEEE Communications Surveys & Tutorials, vol. 21, no. 1, pp. 197-216, First Quarter 2019.
【文献】G. Piro et al., “Two-Level Downlink Scheduling for Real-Time Multimedia Services in LTE Networks,” IEEE Transactions on Multimedia, vol. 13, no. 5, pp. 1052-1065, Oct. 2011.
【文献】山下 他, “ワイヤレスQoS制御技術,” NTT技術ジャーナル, Vol. 16, No. 7, pp. 23-28, July 2004.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、IEEE 802.11ax規格のOFDMAには、IoT(Internet of Things)の普及や災害時のアクセス集中等により無線端末数が増加すると、多様な品質要求や品質変動によりリアルタイムで効率的な無線資源割当が困難になるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、リアルタイムに各無線端末の通信品質等を考慮して効率性およびユーザ間の公平性を担保した無線資源割当ができる無線通信システム、通信方法、及び無線基地局を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る無線通信システムは、通信品質およびバッファ状態を考慮してフィードバック制御により無線基地局と各無線端末との無線資源割当量を決定することとした。
【0008】
具体的には、本発明に係る無線通信システムは、1つの無線基地局と複数の無線端末との間の無線接続が直交周波数分割多元接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)である無線通信システムであって、
前記無線基地局は、
現在のバッファ内のキュー長及び優先度の情報を取得する情報取得部と、
前記キュー長及び優先度の情報を用いて、OFDMAに基づく前記無線端末との間の無線資源割当の計算を一定の時間間隔で行う演算部と、
前記無線資源割当の計算結果を前記演算部が行う次の無線資源割当の計算にフィードバックさせるフィードバック部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本無線通信システムは、現在のバッファ内のキュー長や優先度から無線資源割当の計算を行うときに過去の無線資源の割当量をフィードバックすることでリアルタイム性と公平性を両立させる。
より詳細には、本無線通信システムは、複数の無線端末に対して一定の時間間隔でOFDMAに基づく無線資源割当を行う無線通信システムであって、無線基地局が、各無線端末からバッファ内のキュー長および優先度情報を受信し、受信したキュー長および優先度情報と、過去に割り当てられた無線資源量および割当可能な無線資源量とを同時に考慮したフィードバック制御によって、各無線端末へ割り当てる無線資源量を決定する。
【0010】
このとき、本発明に係る無線通信システムの前記情報取得部が取得する前記情報は、前記無線基地局の前記バッファの情報であり、前記無線資源割当は、前記無線基地局から前記無線端末への下り方向の割当とすることができる。
また、本発明に係る無線通信システムの前記情報取得部が取得する前記情報は、前記無線端末の前記バッファの情報であり、前記無線資源割当は、前記無線端末から前記無線基地局への上り方向の割当とすることもできる。
すなわち、上述した無線資源割当は、下り方向にも上り方向にも適用できる。
【0011】
また、本発明に係る通信方法は、1つの無線基地局と複数の無線端末との間の無線接続が直交周波数分割多元接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)である無線通信システムにおける通信方法であって、
前記無線基地局と前記無線端末の少なくとも一方の、現在のバッファ内のキュー長及び優先度の情報を取得すること、
前記キュー長及び優先度の情報を用いて、OFDMAに基づく前記無線端末との間の無線資源割当の計算を一定の時間間隔で行うこと、及び
前記無線資源割当の計算結果を次の無線資源割当の計算にフィードバックすること、
を特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る無線基地局は、複数の無線端末との間の無線接続が直交周波数分割多元接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)である無線基地局であって、
自身と前記無線端末の少なくとも一方の、現在のバッファ内のキュー長及び優先度の情報を取得する情報取得部と、
前記キュー長及び優先度の情報を用いて、OFDMAに基づく前記無線端末との間の無線資源割当の計算を一定の時間間隔で行う演算部と、
前記無線資源割当の計算結果を前記演算部が行う次の無線資源割当の計算にフィードバックさせるフィードバック部と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、リアルタイムに各無線端末の通信品質等を考慮して効率性およびユーザ間の公平性を担保した無線資源割当ができる無線通信システム、通信方法、及び無線基地局を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る無線通信システムの基本構造を説明する図である。
図2】IEEE 802.11ax規格におけるRU配置(20MHzチャネル)を説明する図である。
図3】本発明に係る無線通信システムの基本構造を説明する図である。
図4】本発明に係る無線通信システムの基本構造を説明する図である。
図5】本発明に係る無線通信システムを説明する図である。
図6】本発明に係る通信方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0017】
(発明の概要)
非特許文献3は、LTE向けのリアルタイムで効率的な無線資源割当技術としてフィードバック制御理論に基づいた無線資源割当およびPF(Proportional Fair)に基づくスケジューリングを開示する。しかしながら、IEEE 802.11axの無線LANのRU割当に対応していない。また、無線資源割当とスケジューリングを別の機能として具備するため機能間の双方向の情報交換が不可能であり、リアルタイムな無線資源割当とスケジュールの連携が困難である。このため、非特許文献3が開示する技術では、効率性およびユーザ間公平性の同時担保が難しい。
【0018】
本発明は、無線基地局が、一定の時間間隔で、複数の無線端末に対してOFDMAに基づいて無線資源割当を行う無線通信システムをベースとする。本発明の無線通信システムは、現在のバッファ内のキュー長と優先度情報、割当可能な無線資源量および過去に割り当てた無線資源量を同時に考慮し、各無線端末へ割り当てる無線資源量をフィードバック制御により決定する。本発明の無線通信システムは、現在の情報と過去の情報を考慮しているため、リアルタイムに効率性およびユーザ間公平性の同時担保が可能である。
【0019】
なお、無線基地局から無線端末への下り方向の無線資源割当にも無線端末から無線基地局への上り方向の無線資源割当にも適用できる。
下り方向の無線資源割当の場合、無線基地局は自身のバッファ内の下りキュー長および優先度情報に基づいて各無線端末へ割り当てる無線資源量を決定する。
上り方向の無線資源割当の場合、無線端末から無線基地局へ無線端末内のバッファ内の上りキュー長および優先度情報を報告させ、無線基地局は報告された情報に基づいて各無線端末へ割り当てる無線資源量を決定して、各無線端末へ利用可能な周波数および無線資源量の情報を通知する。
【0020】
(実施形態)
図1は、本実施形態の無線通信システム301の基本構造を説明する図である。無線通信システム301は、1台の無線基地局10と複数台の無線端末20を備える。無線通信システム301は、無線基地局10と無線端末20との間の無線接続が直交周波数分割多元接続(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access)である。
【0021】
図2は、IEEE 802.11ax規格のOFDMAのRU配置を説明する図である。IEEE 802.11ax規格における最小RUサイズRRU1は26トーンであり、例えば、20MHzチャネルでは最大で9個のRUを割り当てることができる。1ユーザあたり1個のRUを割り当てることが可能であり、割当可能な無線資源量として、RUサイズを26トーン(RU1)、52トーン(RU2)、106トーン(RU4)、242トーン(RU9)から選択できるものとする。各無線端末のデータレートは割り当てられたRUのトーン数およびMCSにより決定される。なお、本実施形態の無線資源割当の機能は無線基地局10に備えられる。
【0022】
図3は、無線端末20の機能を説明する図である。無線端末20は、無線受信機21、バッファ22及び無線送信機23を備える。
無線受信機21は、無線基地局10から割り当られたRUサイズを含む無線資源割当情報を受信する。
バッファ22は、入力される上りデータを保管し、無線基地局10から受信した無線資源割当情報をもとにデータを出力する。無線端末20は優先度毎に複数のバッファを備えても良い。無線端末20はバッファ毎ないしフロー毎のキュー長情報q[k]および優先度情報QoS[k]を取得する(kは時刻を表す)。
無線送信機23は、無線基地局10にバッファ22から出力されるキュー長情報q[k]および優先度情報QoS[k]を送信する。複数のバッファが存在する場合、無線送信機23はバッファ毎又はフロー毎にキュー長情報q[k]および優先度情報QoS[k]を送信しても良い。
【0023】
図4は、無線基地局10の基本機能を説明する図である。無線基地局10は、無線受信機11、資源割当計算機12及び無線送信機13を備える。
無線受信手段11は、各無線端末20からキュー長情報q[k]および優先度情報QoS[k]を受信する。
資源割当計算機12は、無線基地局10のバッファ(不図示)から得たキュー長情報q[k]又は各無線端末20から得られたキュー長情報q[k]をもとに、各キュー長に比例したRUサイズを計算し、各無線端末20との下り通信又は上り通信に割り当てる。スケジューリング方式としては、例えば、PF(Proportional Fair)方式が採用される。
また、資源割当計算機12は、無線基地局10のバッファ(不図示)から得た優先度情報QoS[k]又は各無線端末20から得られた優先度情報QoS[k]に基づいて送信データ又は受信データを複数のバッファに振り分け、バッファ毎に異なるスケジューリング方式を適用することができる。
無線送信機13は、各無線端末20へ割り当られたRUサイズを含む無線資源割当情報を送信する。
【0024】
図5は、無線基地局10の追加機能を説明する図である。なお、本実施形態では、説明容易のため、上り通信について説明する。無線基地局10は、現在のバッファ内のキュー長及び優先度の情報を取得する情報取得部と、
前記キュー長及び優先度の情報を用いて、OFDMAに基づく前記無線端末との間の無線資源割当の計算を一定の時間間隔で行う演算部と、
前記無線資源割当の計算結果を前記演算部が行う次の無線資源割当の計算にフィードバックさせるフィードバック部と、
を備える。
【0025】
具体的には、無線基地局10は、品質係数計算機14、公平性係数計算機15及び重み係数計算機16をさらに備える。前記情報取得部は、無線受信機11や無線基地局10のバッファ(不図示)からキュー長情報q[k]および優先度情報QoS[k]を取得する機能部(不図示)である。前記演算部は、品質係数計算機14、重み係数計算機16及び資源割当計算機12である。前記フィードバック部は、公平性係数計算機15である。
【0026】
図6は、無線基地局10が行う無線資源割当方法を説明する図である。本無線資源割当方法は、
無線基地局10と無線端末20の少なくとも一方の、現在のバッファ内のキュー長及び優先度の情報を取得すること(ステップS01)、
前記キュー長及び優先度の情報を用いて、OFDMAに基づく無線端末20との間の無線資源割当の計算を一定の時間間隔で行うこと(ステップS02)、
前記無線資源割当の計算結果を次の無線資源割当の計算にフィードバックすること(ステップS03)、及び
計算結果に基づいて無線基地局10と無線端末20との間に無線資源を割り当てること(ステップS04)を特徴とする。
【0027】
[ステップS01]
無線受信機11は、各無線端末20からキュー長情報q[k]および優先度情報QoS[k]を受信する。
【0028】
[ステップS02]
品質係数計算機14は、各無線端末20から得られた優先度情報QoS[k](1≦i≦N)を要素とするN次元の優先度ベクトル{QoS[k]}を作成し、品質係数KPi(1≦i≦N )を要素とするN次元の品質係数ベクトル{K[k]}を算出する。ただし、Nは優先度を設定可能な無線端末数ないし各無線端末のバッファ数の総和ないし各無線端末のフロー数の総和である。また、{ }はベクトルを表わす。
【0029】
優先度は無線端末毎あるいは各無線端末のバッファ毎あるいは各無線端末のフロー毎に設定できる。無線端末毎に設定した場合は、優先度ベクトルの要素数Nは無線端末数と等しくなり、各無線端末のバッファ毎に設定した場合は、優先度ベクトルの要素数Nは各無線端末のバッファ数の総和と等しくなり、各無線端末のフロー毎に設定した場合は、優先度ベクトルの要素数Nは各無線端末のフロー数の総和と等しくなる。
【0030】
品質係数計算機14は、品質係数ベクトル{K[k]}を算出において、優先度の高い無線端末、バッファないしフローの品質係数が高くなるように計算する。
例えば、優先度を1からpのp段階とし、1が最も高い優先度で昇順に優先度が低くなると仮定すると、時刻kにおける品質係数ベクトル{K[k]}は時刻kにおける優先度ベクトル{QoS[k]}を用いて以下の式で算出できる。
【数1】
ただし、太字はベクトルを表わし、X[k]は各変数の時刻kにおけるXの値を示す。また、係数a、a、aは、1からpまでのQoSの範囲で品質係数KPiが単調減少となるように設定する。
【0031】
数1は一例であり、品質係数計算機14は、上式に寄らずに品質係数KPiを優先度毎に任意の等間隔ないし不等間隔の値としてもよい。また、品質係数計算機14は、品質係数ベクトル{K[k]}を数1以外の優先度ベクトル{QoS[k]}の多項式関数や指数関数を用いることができる。
【0032】
[ステップS03]
公平性係数計算機15は、資源割当計算機12より出力される割当RUサイズr3i(1≦i≦N)を要素とするN次元の割当RUサイズベクトル{r[k]}から、公平性係数b(1≦i≦N)を要素とするN次元の公平性係数ベクトル{b[k]}を算出する。割当RUサイズは、例えば、RUサイズが26トーンの場合“1”、52トーンの場合“2”、106トーンの場合“4”、242トーンの場合“9”となる。
【0033】
公平性係数計算機15は、前サプリング時刻において無線資源を割り当てられていない無線端末、バッファないしフローの公平性係数が大きくなるように計算する。例えば、ペナルティ係数を“penalty”とすると、時刻k+1における公平性係数b[k+1]は、時刻kにおける公平性係数b[k]と時刻kにおける割当RUサイズr3i[k]を用いて以下の式で算出できる。
【数2】
ただし、X[k]は時刻kにおける変数Xの値を示す。
【0034】
数2では、無線端末、バッファないしフローに対する無線資源の割り当ての有無で判断しているが、しきい値を設けて、しきい値以上の割り当てが過去に行われていたか否かで判定しても良い。また、1サンプリング前の値のみを用いても良いし、複数サンプリング前の値を任意に組み合わせて用いても良い。ペナルティ係数の大きさは、無線端末数ないしバッファ数ないしフロー数によって決定し、例えば10台の無線端末であれば“1/接続台数”により0.1と設定することができる。
【0035】
[ステップS02]
重み係数計算機16は、各無線端末20から得られたキュー長情報q[k](1≦i≦N)を要素とするN次元のキュー長ベクトル{q[k]}を作成し、これと、品質係数計算機14により出力された品質係数ベクトル{K[k]}と、公平性係数計算機15により出力された公平性係数ベクトル{b[k]}と、から重み係数w[k](1≦i≦N)を要素とするN次元の重み係数ベクトル{w[k]}を算出する。
【0036】
重み係数はキュー長に比例するように品質係数と公平性係数と組み合わせて算出することができる。例えば、キュー長に比例させる場合、時刻kにおける重み係数ベクトル{w[k]}は、時刻kにおけるキュー長ベクトル{q[k]}と時刻kにおける品質係数ベクトル{K[k]}と時刻kにおける公平性係数ベクトル{b[k]}を用いて以下の式で算出できる。
【数3】
ただし、[k]は各変数の時刻kにおける値を示す。また、演算子“〇”はアダマール積を表していて、要素毎の積を計算する。
【0037】
また、数3の計算以外に、重み係数はキュー長の変化速度やキュー長の積算値を組み合わせて算出してもよい。この場合、{q[k]}の微分値ないし積分値の項を線形結合することができる。
【0038】
[ステップS02]
資源割当計算機12の追加機能を説明する。資源割当計算機12は、重み係数計算機16より出力された重み係数ベクトル{w[k]}から割当RUサイズベクトル{r[k]}を算出する。割当RUサイズベクトル{r[k]}の算出例を以下に説明する。
【0039】
まず、重み係数ベクトル{w[k]}のN個の要素の内、値の大きい順に利用可能なRUの最大数であるM個分だけ要素を選択する。例えば、図2(A)であればM=9、図2(B)であればM=5、図2(C)であればM=3、図2(D)であればM=1となる。複数の要素が同じ値の場合はランダムに選択する。選択されたM個の要素は、新たに定義するN次元の重み係数ベクトル{w’[k]}の同じ要素に同じ値を代入する。選択されなかった要素には0を代入する。
【0040】
各無線端末、バッファないしフローに対して重み係数に比例するように無線資源を割り当てる。例えば、以下の式で、暫定割当レートr1i[k](1≦i≦N)を要素とするN次元の時刻kにおける暫定割当レートベクトル{r[k]}を算出する。
【数4】
ただし、[k]は各変数の時刻kにおける値を示す。また、Rは利用可能なデータレートである。例えば、20MHzチャネルで16-QAM、符号化率3/4の場合はRを48.8Mbpsとする。
【0041】
次に、暫定割当レートベクトル{r[k]}から暫定割当RUサイズr2i(1≦i≦N)を要素とするN次元の時刻kにおける暫定割当RUサイズベクトル{r[k]}を算出する。暫定割当RUサイズr2iは整数値のみを取るため、小数点以下の端数処理を行う。例えば、端数処理に四捨五入を用いた場合、暫定割当RUサイズベクトル{r[k]}は以下のように算出できる。
【数5】
また、[k]は各変数の時刻kにおける値を示す。RRU1は26トーンの場合のデータレートを表している。端数処理には、四捨五入以外に切り上げや切り捨てを用いても良い。
【0042】
割当RUサイズr3i[k]が取りうる値は、あらかじめ決められた整数値に限定される。例えば、20MHzチャネルの場合、RUサイズは図2のように1、2、4、9(26トーン(RU1)、52トーン(RU2)、106トーン(RU4)、242トーン(RU9))のいずれかであるため、割当RUサイズベクトル{r[k]}の各要素が取れる値も同様に1、2、4、9のいずれかとなる。
【0043】
最終的に割当RUサイズベクトル{r[k]}は次のように生成する。
暫定割当RUサイズベクトル{r[k]}の値の大きな要素から順に割当RUサイズベクトル{r[k]}の同じ要素に値を代入する。複数の要素が同じ値の場合はランダムに選択する。{r[k]}に代入した各要素の値を積算し、当該積算値が利用可能なRUの最大数Mを超えない範囲で値の代入を繰り返す。積算値がMを超えたら代入を停止し、残りの要素には0を代入する。
【0044】
[ステップS04]
無線送信機13は、資源割当計算機12が計算した割当RUサイズベクトル{r[k]}を受け取り、各無線端末、バッファないしフローに割り当られたRUサイズを含む無線資源割当情報を無線端末20へ送信する。
【0045】
(他の実施形態)
上記の実施形態では、上り通信の無線資源割当方式について記載したが、下り通信にも適用できることは明らかである。
上記の実施形態では、IEEE 802.11ax規格に基づく無線通信システムについて記載したが、OFDMAを採用するあらゆる通信システムに適用できることは明らかである。
また、無線基地局10は、コンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0046】
10:無線基地局
11:無線受信機
12:資源割当計算機
13:無線送信機
14:品質係数計算機
15:公平性係数計算機
16:重み係数計算機
20:無線端末
21:無線受信機
22:バッファ
23:無線送信機
301:無線通信システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6