(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】架橋された配位子
(51)【国際特許分類】
C09K 11/02 20060101AFI20240213BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20240213BHJP
C09K 11/62 20060101ALI20240213BHJP
C09K 11/88 20060101ALI20240213BHJP
C08F 292/00 20060101ALI20240213BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240213BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240213BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240213BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20240213BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240213BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20240213BHJP
H05B 33/20 20060101ALI20240213BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20240213BHJP
【FI】
C09K11/02 Z
C09K11/08 G
C09K11/62
C09K11/88
C08F292/00
C08F2/44 A
H01L29/06 601N
H01L29/06 601D
G02B5/20
H05B33/12 E
H05B33/14 A
H05B33/14 Z
H05B33/20
B82Y20/00
(21)【出願番号】P 2020561742
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2019060995
(87)【国際公開番号】W WO2019211257
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-28
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リーバーマン,イタイ
(72)【発明者】
【氏名】マチュシェック,クリスティアン
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-507588(JP,A)
【文献】特表2011-530187(JP,A)
【文献】特表2015-511167(JP,A)
【文献】特開2010-138367(JP,A)
【文献】国際公開第2016/195047(WO,A1)
【文献】特表2013-514437(JP,A)
【文献】特表2021-514418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00;301/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
C09K 11/02
C09K 11/08
C09K 11/70
C09K 11/88
H01L 29/06
H05B 33/14
H05B 33/20
H05B 33/12
H10K 50/10
G02B 5/20
B82Y 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア、
1つ以上のシェル層、ならびに
シェル層の最表面へ付着されている、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子C
を含む半電導性発光ナノ粒子であって、ここで
少なくとも1つの有機配位子Aが、架橋性官能基Xを含み、
少なくとも1つの有機配位子Bが、架橋性官能基Yを含み、および
少なくとも1つの有機配位子Cが、架橋性官能基Zを含み、
基X、Y、およびZが各々、架橋の受容体として、および架橋の供与体として作用することが可能であ
り、
少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cが各々、一般式(I)
U-V-W (I)
式中、Uは、配位子A、B、およびCにおいて出現毎に、ホスホン酸基であって、ナノ粒子表面の付着基であり、Vは、配位子A、B、およびCにおいて出現毎に、同一であるかまたは異なるリンカー基であり、ならびにWは、架橋性官能基X、Y、およびZに夫々対応する末端の架橋性官能基であって、互いに独立して、チオール基、アクリラート基およびスチレン基からなる群から選択される、
で表される、前記
半電導性発光ナノ粒子。
【請求項2】
基Xが、基Yに関して架橋の受容体として、かつ基Zに関して架橋の供与体として、または基Zに関して架橋の受容体として、かつ基Yに関して架橋の供与体として、作用することが可能である;
基Yが、基Zに関して架橋の受容体として、かつ基Xに関して架橋の供与体として、または基Xに関して架橋の受容体として、かつ基Zに関しては架橋の供与体として、作用することが可能である;および
基Zが、基Xに関して架橋の受容体として、かつ基Yに関して架橋の供与体として、または基Yに関して架橋の受容体として、かつ基Xに関して架橋の供与体として、作用することが可能である
ことを特徴とする、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
式(I)において
、
Vは、配位子A、B、およびCにおいて出現毎に同一であるかまたは異なっており、1~20個のC原子を有する直鎖アルキレン基、または3~20個のC原子を有する分岐アルキレン基からなる群から選択され、ここで該直鎖および分岐のアルキレン基における1つ以上の非隣接メチレン構造単位(-CH
2-)は各ケースにおいて、フェニレン基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、スルホキシド基、エステル基、リン酸エステル基、アミド基もしくはイミン基、または2~20個のC原子を有する直鎖のアルケニレン基もしくはアルキニレン基、または3~20個のC原子を有する分岐のアルケニレン基もしくはアルキニレン基によって置き換えられていてもよく、ここで該直鎖および分岐のアルケニレン基またはアルキニレン基における1つ以上のメチレン構造単位(-CH
2-)は各ケースにおいて、フェニレン基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、スルホキシド基、エステル基、リン酸エステル基、アミド基またはイミン基によって置き換えられていてもよ
い
ことを特徴とする、請求項
1または2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
基Vが、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cの各々において同一であることを特徴とする、請求項
1~3のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項5】
基Vが、1~20個のC原子を有する直鎖アルキレン基であり、ここで該直鎖アルキレン基における1つ以上の非隣接メチレン構造単位(-CH
2-)が、フェニレン基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、スルホキシド基、エステル基、リン酸エステル基、アミド基またはイミン基によって置き換えられていてもよいことを特徴とする、請求項
1~
4のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項6】
基X、Y、およびZが、同一であることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項7】
少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cが、同一であることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項8】
少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cが
同一であり、11-メルカプトウンデシルホスホン酸、11-ホスホノウンデシル
アクリラート、およびp-[4-(エテニルフェニル)メチル]ホスホン酸から選択されることを特徴とする、請求項
1~
7のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項9】
コア、
1つ以上のシェル層、
シェル層の最表面へ付着されている、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子C、ならびに
ポリマー外層
を含み、
ポリマー外層が、架橋性官能基X、Y、およびZを通して、少なくとも1つの有機配位子Aと、少なくとも1つの有機配位子Bと、少なくとも1つの有機配位子Cとの間の直接連結によって形成されている
ことを特徴とする、請求項1~
8のいずれか一項に記載の半電導性発光ナノ粒子。
【請求項10】
ポリマー外層を有する半電導性発光ナノ粒子を調製するための方法であって、方法が次のステップを含む:
a)コア、1つ以上のシェル層、ならびにシェル層の最表面へ付着されている、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cを提供すること、ここで少なくとも1つの有機配位子Aが、架橋性官能基Xを含み、少なくとも1つの有機配位子Bが、架橋性官能基Yを含み、および少なくとも1つの有機配位子Cが、架橋性官能基Zを含
み、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cが各々、一般式(I)
U-V-W (I)
式中、Uは、配位子A、B、およびCにおいて出現毎に、ホスホン酸基であって、ナノ粒子表面の付着基であり、Vは、配位子A、B、およびCにおいて出現毎に、同一であるかまたは異なるリンカー基であり、ならびにWは、架橋性官能基X、Y、およびZに夫々対応する末端の架橋性官能基であって、互いに独立して、チオール基、アクリラート基およびスチレン基からなる群から選択される、
で表される、;ならびに
b)ステップa)のナノ粒子を、少なくとも1つの有機配位子Aと少なくとも1つの有機配位子Bと少なくとも1つの有機配位子Cとの間の直接連結の、架橋性官能基X、Y、およびZを通した形成を可能にする条件へ供することによって、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cを架橋することでポリマー外層を形成すること。
【請求項11】
式(I)において、
基Vは、配位子A、B、およびCにおいて出現毎に、同一であるかまたは異なっており、1~20個のC原子を有する直鎖アルキレン基、または3~20個のC原子を有する分枝のアルキレン基からなる群から選択され、ここで該直鎖および分枝のアルキレン基における1つ以上の非隣接メチレン構造単位(-CH
2-)は各ケースにおいて、フェニレン基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、スルホキシド基、エステル基、リン酸エステル基、アミド基もしくはイミン基、または2~20個のC原子を有する直鎖のアルケニレン基もしくはアルキニレン基、または3~20個のC原子を有する分枝のアルケニレン基もしくはアルキニレン基によって置き換えられていてもよく、ここで該直鎖および分枝のアルケニレンまたはアルキニレン基における1つ以上のメチレン構造単位(-CH
2-)は各ケースにおいて、フェニレン基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、スルホキシド基、エステル基、リン酸エステル基、アミド基またはイミン基によって置き換えられていてもよい
、
ことを特徴とする、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
基Vが、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cの各々において同一であるであることを特徴とする、請求項
10または
11に記載の方法。
【請求項13】
基Vが1~20個のC原子を有する直鎖アルキレン基であり、ここで該直鎖アルキレン基における1つ以上の非隣接メチレン構造単位(-CH
2-)が、フェニレン基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、スルホキシド基、エステル基、リン酸エステル基、アミド基、またはイミン基によって置き換えられていてもよいことを特徴とする、請求項
10~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
基X、Y、およびZが、同一であることを特徴とする、請求項
10~
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cが、同一であることを特徴とする、請求項
10~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項
9に記載の少なくとも1つの半電導性発光ナノ粒子、および少なくとも1つの追加材料を含む組成物であって、前記追加材料が、好ましくは有機機能性材料であり、より好ましくは蛍光放射体、リン光放射体、ホスト材料、マトリックス材料、電子輸送材料、電子注入材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子遮断材料、正孔遮断材料、広バンドギャップ材料、遅延蛍光放射体、および遅延蛍光ホストからなる群から選択される、前記組成物。
【請求項17】
請求項
9に記載の少なくとも1つの半電導性発光ナノ粒子、あるいは請求項
16に記載の少なくとも1つの組成物、および少なくとも1つの溶媒を含む製剤であって、前記溶媒が、好ましくは、芳香族の溶媒、ハロゲン化された溶媒、および脂肪族炭化水素の溶媒からなる群の1つ以上のメンバーから選択され、より好ましくは、トルエン、キシレン、エーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、およびヘプタンからなる群の1つ以上のメンバーから選択される
、前記製剤。
【請求項18】
電子デバイス、光学デバイス、または生物医学デバイスにおける、請求項
9に記載の半電導性発光ナノ粒子、あるいは請求項
16に記載の組成物、あるいは請求項
17に記載の製剤の使用。
【請求項19】
請求項
9に記載の半電導性発光ナノ粒子、あるいは請求項
16に記載の組成物、あるいは請求項
17に記載の製剤を含む、光媒体。
【請求項20】
請求項
19に記載の光媒体を含む、光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、ポリマー外層を含む半電導性発光ナノ粒子に、および該半電導性発光ナノ粒子を調製するための方法に関する。さらに、本発明は、少なくとも該半電導性発光ナノ粒子を含む組成物および製剤に、ならびに光学デバイスにおける該半電導性発光ナノ粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
半電導性発光ナノ粒子は、それらの狭い蛍光放射に起因して、光学デバイスにおける色変換材料として使用される場合に、大きな関心を引く。
【0003】
例えば、US 2010/068522 A1は、配位子(その端部にて不飽和基を含む)をもつ量子ドット(以降、QDs)の合成を提示している。前記特許出願において記載されている架橋の概念は、二重結合を架橋するために触媒プロセスを要する。
【0004】
US 2011/281388 Aは、QDs溶液がガラス基板上にスピンコートされた後の、固体状態におけるQDsの架橋を記載している。このケースにおいて架橋は、第1の層上に堆積される第2の層による、スピンコートされたQDsの第1の層の再溶解を防止するためになされる。
【0005】
US 9115097 B2、およびUS 9840664 B2は、配位子の架橋が架橋剤を添加することによってなされたことを記載している。
【0006】
In201747022708は、QD各々が異なる種類の配位子(これらは互いに反応し得る)を有するQDとQDの架橋、または架橋剤の使用について言及している。また、架橋は固体相上にもなされた。
【0007】
Colloids and Surfaces A: Physicochem. Eng. Aspects 402 (2012) 72-79は、架橋剤としての二機能性PEDをもつグルタチオンの架橋を開示している。
【0008】
US 7151047B2は、架橋剤としてのリシンをもつメルカプト酸の架橋を開示している。
【0009】
EP 3163372A2は、QD製剤へのかさ高い配位子の添加が、最終産物におけるQDの有効濃度を減少させることを記載している。架橋は架橋剤を通してなされたが、このことによりQDに対して部分的な保護がもたらされる。
【0010】
J. Phys. Chem. B2014, 118, 14103-14109は、CdSe/ZnS QDへ吸着されているメルカプトジアセチレンの光触媒架橋を記載しており、架橋された配位子に覆われたQDsが極性溶媒中で経時的に安定であることを示している。
【0011】
液晶ディスプレー(LCDs)における逓降(down conversion)変換層、発光ダイオード(LEDs)における色フィルターなどの用途への、またはエレクトロルミネッセントデバイスにおける放射層としての蛍光量子ドットの使用は、半電導性発光ナノ粒子が、高熱(elevated heat)および高光束(high light flux)などの極限条件下で、ならびにナノ粒子の外層を通過する酸素、水、フリーラジカル、および自由電荷などの、雰囲気または周囲のマトリックスからの外的要素に対して、安定していることを要する。
【0012】
典型的には、半電導性ナノ粒子は、ナノ結晶のための保護を提供するために、薄膜中へ組み込まれる。このために、アクリラート、シロキサン、シラザン、エポキシ、またはシリコーンなどの様々なポリマーが使用されてきた。
【0013】
しかしながら、量子ドットをこれらの種の層中へ組み込むことは、それらの放射量子収率(QY)の低下を引き起こす。これは、固体ポリマー層中の半電導性ナノ粒子の凝集によって、および重合プロセスに起因して引き起こされるが、これらは、ナノ粒子の表面へ付着されている有機分子(一般的に「配位子」として知られている)に影響を及ぼし、およびナノ粒子表面からの配位子の脱離を引き起こす。
【0014】
さらにまた、ポリマー層への適用は、必ずしも実行可能ではなく、エレクトロルミネセントデバイスのケースと同様に、例えば、半電導性ナノ粒子が導電性である必要があるときに実行可能ではない。この種のデバイスにおいて、半電導性ナノ粒子は固体層として堆積され、およびナノ粒子の表面は保護されなければならない。
【0015】
よって、先行技術に記載された1つ以上の欠点を克服する、半電導性発光ナノ粒子を外部要素に対して保護するという1つ新しい概念の必要性は依然としてある。
【発明の概要】
【0016】
本発明の概要
本発明は、上に記載の問題に鑑みなされたものであり、したがって半電導性発光ナノ粒子の表面を外部要素に対して保護し、これによって上に記載の欠点に悩まされないという新しい概念を提供することが、本発明の目的である。
【0017】
本発明者らは、驚くべきことに、1つ上に記載の問題の1つ以上がクレームに定義されたとおりの特色によって解決され得ることを見出した。
【0018】
具体的に言うと、1つ上に記載の問題の1つ以上を解決するために、本発明は、
コア、
1つ以上のシェル層、ならびに
シェル層の最表面へ付着されている、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子C
を含む半電導性発光ナノ粒子であって、ここで
少なくとも1つの有機配位子Aは、架橋性官能基Xを含み、
少なくとも1つの有機配位子Bは、架橋性官能基Yを含み、および
少なくとも1つの有機配位子Cは、架橋性官能基Zを含み、
基X、Y、およびZは各々、架橋の受容体として、および架橋の供与体として作用することが可能である
ことを特徴とする、前記半電導性発光ナノ粒子を提供する。
【0019】
さらに、1つ上に記載の問題の1つ以上を解決するために、本発明は、
コア、
1つ以上のシェル層、
シェル層の最表面へ付着されている、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子C、ならびに
ポリマー外層
を含む半電導性発光ナノ粒子であって、
ポリマー外層は、架橋性官能基X、Y、およびZを通して、少なくとも1つの有機配位子Aと、少なくとも1つの有機配位子Bと、少なくとも1つの有機配位子Cとの間の直接連結によって形成されている
ことを特徴とする、前記半電導性発光ナノ粒子を提供する。
【0020】
1つ上に記載の問題の1つ以上はまた、ポリマー外層を有する半電導性発光ナノ粒子を調製するための方法によっても解決され、方法は次のステップを含む:
a)コア、1つ以上のシェル層、ならびにシェル層の最表面へ付着されている、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cを含む半電導性発光ナノ粒子を提供すること、ここで少なくとも1つの有機配位子Aは、架橋性官能基Xを含み、少なくとも1つの有機配位子Bは、架橋性官能基Yを含み、および少なくとも1つの有機配位子Cは、架橋性官能基Zを含む;ならびに
【0021】
b)ステップa)のナノ粒子を、少なくとも1つの有機配位子Aと少なくとも1つの有機配位子Bと少なくとも1つの有機配位子Cとの間の直接連結の、架橋性官能基X、Y、およびZを通した形成を可能にする条件へ供することによって、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cを架橋することでポリマー外層を形成すること。
【0022】
本発明はまた、本方法によって得られたか、または得られる半電導性発光ナノ粒子にも関する。
【0023】
つまり、本発明者らは驚くべきことに、官能化されたかかる配位子(ナノ粒子表面に付着する基ならびに架橋性基または重合性基を含む)を、表面に付着された配位子として使用することによって、および表面に付着された配位子自体を架橋することによって、ナノ粒子の表面を取り囲むポリマー外層を創出するかまたはこれに相当するポリマー網目が形成されること、前記ポリマー網目が、あらゆる種類の外部要素に対して立体的な保護を提供し、また表面から脱離された配位子の遠くへの拡散も防止するが、それどころか脱離された配位子を高確率で表面へ再付着できるようにさせることを見出した。
【0024】
さらに、この保護の概念は有利なことに、半電導性ナノ粒子へ加えられるべきいずれの追加材料、化合物、または剤も要さず、したがって、高度に濃縮された半電導性発光ナノ粒子層への適用を可能にさせ、それによって、放射要素としての量子材料層に基づく、光電気デバイスからの発光出力(light emission output)を改善させる。
【0025】
さらに、本発明は、半電導性発光ナノ粒子を含む組成物に、および半電導性発光ナノ粒子または前記組成物と少なくとも1つの溶媒とを含む製剤に関する。
【0026】
加えて、本発明は、電子デバイス、光学デバイスにおける、もしくは生物医学デバイスにおける、半電導性発光ナノ粒子または組成物または製剤の使用に関する。
【0027】
本発明はまた、半電導性発光ナノ粒子または組成物を含む光媒体にも関する。
【0028】
本発明はさらに、光媒体を含む光学デバイスに関する。
本発明のさらなる利点は、以下の詳細な記載から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図面の簡単な記載
【
図1】
図1は、11-MPAを用いた配位子交換前および配位子交換後の量子ドットのFT-IRスペクトルを示す。
【
図2】
図2aは、光(365nm、1時間)への曝露後の実施例1において得られた11-MPA試料のSEM画像であり、および
図2bは、元の量子ドットの試料のSEM画像である。
【0030】
【
図3】
図3aおよび
図3bは、配位子を架橋(CL)する前(ではあるが11-ホスホノウンデシルアクリラートを用いた配位子交換の後)、および配位子を架橋(CL)した後のFT-IRスペクトルを示す。
【
図4】
図4は、実施例1および比較例1から得られた量子ドットの当初量子収率(t=0時間)および365nm光への曝露(t=1時間)後の量子収率を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の詳細な記載
下文に、本発明を実行するための最良の実施態様が詳細に記載される。
【0032】
本発明は、
コア、
1つ以上のシェル層、ならびに
シェル層の最表面へ付着されている、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子C
を含む半電導性発光ナノ粒子であって、ここで
少なくとも1つの有機配位子Aは、架橋性官能基Xを含み、
少なくとも1つの有機配位子Bは、架橋性官能基Yを含み、および
少なくとも1つの有機配位子Cは、架橋性官能基Zを含み、
基X、Y、およびZは各々、架橋の受容体として、および架橋の供与体として作用することが可能であることを特徴とする、前記半電導性発光ナノ粒子を提供する。
【0033】
本発明に従うと、官能基X、YおよびZは、架橋性のまたは重合性の化学基であって、これらの用語は本明細書中、互換的に使用されるが、つまり、架橋の受容体としておよび架橋の供与体として作用する能力を提供する官能基は、下に記載されるであろうポリマー外層が形成されるように、例えばビニル基などの不飽和基を化学的に架橋し、それによって同じナノ粒子の表面の周りの、表面に付着された少なくとも1つの有機配位子Aと少なくとも1つの有機配位子Bと少なくとも1つの有機配位子Cとの間の連結(すなわち、分子内連結)を形成することによって、重合されることができる。
【0034】
好ましくは、架橋性官能基X、YおよびZは夫々、配位子A、B、およびCのに関する末端基である。さらに好ましくは、配位子A、B、およびCの各々は、厳密に1つの架橋性官能基X、YおよびZを夫々含む。
【0035】
本明細書に定義されるとおりの、架橋の受容体としておよび架橋の供与体として作用する能力は、化学的な架橋反応の最中、架橋性のまたは重合性の官能基X、Y、およびZの各々が、活性成長(propagating)中心によって攻撃されて(架橋の受容体を表す)、それによって新しい成長中心を創出することが可能であり、前記成長中心は次に、架橋性のまたは重合性の別の官能基を攻撃して(架橋の供与体を表す)、新しい成長中心を再び創出する、などを意味するものと理解される。
【0036】
成長中心が取る形態は、重合メカニズムの特定のタイプに依存するが、それは、下に記載されるであろう本発明内に限定されない。結果的に、いずれの理論にも縛られることは望まないが、官能基X、Y、およびZは、鎖構築重合タイプの反応に適応可能であり、それによって、ポリマー外層を創出するかまたはこれに対応するポリマーの網の形成をもたらす少なくとも3つの有機配位子A、B、およびCを分子内架橋する。
【0037】
例えば、本発明に従うと、基X(単数もしくは複数)は、基(単数もしくは複数)Yに関し架橋の受容体としておよび基(単数もしくは複数)Zに関し架橋の供与体として、および/または基(単数もしくは複数)Zに関し架橋の受容体としておよび基(単数もしくは複数)Yに関し架橋の供与体として、作用することが可能である;基(単数もしくは複数)Yは、基(単数もしくは複数)Zに関し架橋の受容体としておよび基(単数もしくは複数)Xに関し架橋の供与体として、および/または基(単数もしくは複数)Xに関すし架橋の受容体としておよび基(単数もしくは複数)Zに関し架橋の供与体として、作用することが可能である;および/または、基(単数もしくは複数)Zは、基(単数もしくは複数)Xに関し架橋の受容体としておよび基(単数もしくは複数)Yに関し架橋の供与体として、および/または基(単数もしくは複数)Yに関し架橋の受容体としておよび基(単数もしくは複数)Xに関し架橋の供与体として、作用することが可能であるが、これらに限定されることはない。例えば、基(単数もしくは複数)Xが、(別の)他の基(単数もしくは複数)Xに関し、架橋の受容体および/または架橋の供与体として作用することが可能であることもまた、本発明内で実行可能なこともある。同じことが、基YおよびZにも適用される。
【0038】
本発明に従うと、夫々架橋性官能基X、Y、およびZを含む、有機配位子A、B、およびCは、ナノ粒子のコアと1つ以上のシェル層とを全面的に取り囲むポリマー外層の形成(官能基X、YおよびZを通して、有機配位子A、B、およびCを架橋することによる)を可能にさせる濃度で、ナノ粒子のシェル層の最表面へ付着されている。
【0039】
好ましくは、ナノ粒子のシェル層の最表面へ付着されている、有機配位子Aの濃度、有機配位子Bの濃度、および有機配位子Cの濃度は、実質的に同じである。
【0040】
本発明の好ましい態様において、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cは、一般式(I)
U-V-W (I)
によって表される。
【0041】
式(I)内、基Uは、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子Bおよび少なくとも1つの有機配位子Cにおいて出現毎に、同一であるかまたは異なっており、1つ以上のシェル層の最表面と相互作用または結合することが可能であるナノ粒子表面付着基である。相互作用または結合は、これらに限定されずに、共有結合もしくイオン結合であっても、または双極子-双極子相互作用であってもよい。
【0042】
好ましくは、基Uは、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子Bおよび、少なくとも1つの有機配位子Cにおいて出現毎に、同一であるかまたは異なっており、ホスホン酸基、チオール基、チオラート基、チオ酸基、ジチオ酸基、メルカプトエステル基、カルボン酸基、カルボキシラート基、とりわけZn-カルボキシラート、ホスホナート基、とりわけZn-ホスホナート、チオカルバマート基、とりわけZn-チオカルバマート、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、アミン基、アミド基、およびセレノール基からなる群から選択される。最も好ましくは、基Uは、ホスホン酸基(-P(O)(OH)2)である。
からなる群から選択される
【0043】
式(I)内、基Wは、一般式(I)が表す有機配位子A、B、またはCのどれかに応じて、架橋性官能基X、Y、およびZ夫々に対応する末端の架橋性官能基を表す。好ましくは、基X、Y、およびZは、互いに独立して、チオール基、アクリラート基(-OC(O)CHCH2)、スチレン基(-(C6H4)CHCH2)、カーボネート基、およびカルバマート(ウレタン)基からなる群から選択される。
【0044】
式(I)内、基Vは、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cにおいて出現毎に、同一であるかまたは異なっており、リンカー基、つまり、ナノ粒子表面付着基Uを、夫々の架橋性官能基X、Y、またはZと接続する化学基である。
【0045】
好ましくは、連結基Vは、出現毎に独立して、1~20個のC原子を有する直鎖アルキレン基、または3~20個のC原子を有する分枝アルキレン基からなる群から選択されるが、ここで該直鎖および分枝のアルキレン基中1つ以上の非隣接メチレン構造単位(-CH2-)は、各ケースにおいて、フェニレン基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、スルホキシド基、エステル基、リン酸エステル基、アミド基、もしくはイミン基、または2~20個のC原子を有する直鎖のアルケニレン基もしくはアルキニレン基、または3~20個のC原子を有する分枝のアルケニレン基もしくはアルキニレン基によって置き換えられていてもよく、ここで該直鎖および分枝のアルケニレン基またはアルキニレン基中1つ以上のメチレン構造単位(-CH2-)は、各ケースにおいて、フェニレン基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、スルホキシド基、エステル基、リン酸エステル基、アミド基、またはイミン基によって置き換えられていてもよい。
【0046】
本発明の目的のために、1~20個のC原子を有する直鎖アルキレン基、3~20個のC原子を有する分枝アルキレン基、2~20個のC原子を有する直鎖のアルケニレン基もしくはアルキニレン基、または3~20個のC原子を有する分枝のアルケニレン基もしくはアルキニレン基は、前記基において加えて、個々のメチレン構造単位(-CH2-)が上に言及された基によって置換されていてもよいが、好ましくは、基メチレン、エチレン、n-プロピレン、i-プロピレン、n-ブチレン、i-ブチレン、s-ブチレン、t-ブチレン、2-メチルブチレン、n-ペンチレン、s-ペンチレン、シクロペンチレン、ネオペンチレン、n-ヘキシレン、ネオヘキシレン、n-へプチレン、n-オクチレン、n-ノニレン、n-デシレン、n-ウンデシレン、n-ドデシレン、2-エチルヘキシレン、エテニレン、プロペニレン、ブテニレン、ペンテニレン、ヘキセニレン、ヘプテニレン、オクテニレン、ノネニレン、デセニレン、ウンデセニレン、ドデセニレン、エチニレン、エチニレン、n-プロピニレン、i-プロピニレン、n-ブチニレン、i-ブチニレン、s-ブチニレン、t-ブチニレン、2-メチルブチニレン、n-ペンチニレン、s-ペンチニレン、シクロペンチニレン、ネオペンチニレン、n-ヘキシニレン、ネオヘキシニレン、n-ヘプチニレン、n-オクチニレン、n-ノニニレン、n-デシニレン、n-ウンデシニレン、n-ドデシニレン、2-エチルヘキシニレン、エテニニレン、プロペニニレン、ブテニニレン、ペンテニニレン、ヘキセニニレン、ヘプテニニレン、オクテニニレン、またはノネニニレンを意味するものと解釈される。
【0047】
最も好ましくは、連結基Vは、1~20個のC原子を有する直鎖アルキレン基であり、ここで該直鎖アルキレン基中1つ以上の非隣接メチレン構造単位(-CH2-)が、フェニレン基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、スルホキシド基、エステル基、リン酸エステル基、アミド基、またはイミン基によって置き換えられていてもよい。
【0048】
本発明のさらに好ましい態様において、基Uは、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cの各々において同一であり、および/または基Vは、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cの各々において同一である。
【0049】
換言すれば、本発明に従い、有機配位子A、B、およびCは、同一の官能基Uを介してナノ粒子の表面へ付着されているのが好ましいこともある。代替的にまたは加えて、本発明に従い、有機配位子A、B、およびCにおいて、表面付着基U、および夫々の架橋性の官能基X、Y、またはZは、同一の連結基Vを介して連結されているのが好ましいこともある。
【0050】
さらに好ましくは、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cの各々において、基Uはホスホン酸基であり、および基Vは1~20個のC原子を有するアルキレン基であり、ここで該直鎖アルキレン基中1つ以上の非隣接メチレン構造単位(-CH2-)が、フェニレン基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、スルホキシド基、エステル基、リン酸エステル基、アミド基、またはイミン基によって置き換えられていてもよい。
【0051】
本発明のさらに好ましい態様において、架橋性官能基X、Y、およびZは同一であり、そのことは有機配位子A、B、およびCが同一の架橋性官能基X、Y、およびZを有することを意味する。結果的に、本発明に従うと、ナノ粒子の最表面へ付着されている有機配位子A、B、およびCを架橋するため、ゆえにポリマー外層を形成するための官能基は、同一であるのが好ましいこともある。
【0052】
本発明に従うと、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cが、同一である場合、さらに好ましい。このことは、本発明に従うと、ナノ粒子の最表面へ付着されておりポリマー外層を形成するために架橋されている有機配位子A、B、およびCが同一であるのが好ましいこともあることを意味する。
【0053】
さらに好ましくは、官能基X、Y、およびZは、同じく、チオール基、アクリラート基、およびスチレン基から選択される。
【0054】
本発明のさらに好ましい態様において、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cは、同じく、11-メルカプトウンデシルホスホン酸、11-ホスホノウンデシルアクリラート、およびp-[(4-エテニルフェニル)メチル]ホスホン酸から選択される。
【0055】
上に記載された半電導性発光ナノ粒子は、下に記載されるであろう方法における反応ステップa)を受けて調製され得、および下に記載されるであろう方法の反応ステップa)から得られるものか、または得られたものもしくは単離されたものであり得る。
【0056】
本発明はさらに、
コア、
1つ以上のシェル層、
シェル層の最表面へ付着されている、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子C、ならびに
ポリマー外層
を含む半電導性発光ナノ粒子であって、
ポリマー外層は、架橋性官能基X、Y、およびZを通して、少なくとも1つの有機配位子Aと、少なくとも1つの有機配位子Bと、少なくとも1つの有機配位子Cとの間の直接連結によって形成されている
ことを特徴とする、前記半電導性発光ナノ粒子を提供する。
【0057】
換言すれば、本発明によって提供される半電導性発光ナノ粒子は、ナノ粒子の1つ以上のシェル層の最表面へ付着されている、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cが、架橋性官能基X、YおよびZを通して直接連結によって架橋され、それによってポリマー外層を形成していることを特徴とする。
【0058】
例えば、本発明に従うと、ポリマー外層は、架橋性官能基X、Y、およびZを通して、少なくとも1つの有機配位子Aの、少なくとも1つの有機配位子Bおよび1つの有機配位子Cとの直接連結、少なくとも1つの有機配位子Bの、少なくとも1つの有機配位子Aおよび1つの有機配位子Cとの直接連結、および/または、少なくとも1つの有機配位子Cの、少なくとも1つの有機配位子Aおよび1つの有機配位子Bとの直接連結、によって形成されていてもよい。
【0059】
上に言及されたように、本発明に従うと、ナノ粒子のシェル層の最表面へ付着されている有機配位子A、B、およびCの濃度は、ポリマー外層の形成が、官能基X、Y、およびZを通して有機配位子A、B、およびCを架橋させることによって可能となり、前記層がナノ粒子のコアおよび1つ以上のシェル層を全面的に取り囲むような濃度である。
【0060】
用語「直接連結」は、本明細書に使用されるとき、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cが、夫々の架橋性または重合性の官能基X、Y、およびZの原子の間の直接的な化学結合、好ましくは共有結合を通して、上に定義されるとおり互いに連結されており、すなわち、架橋の反応は、追加のいずれの連結/架橋剤、たとえば、二機能性のポリエチレングリコール、メラミンベースの化合物、たとえば、ヘキサメトキシメチルメラミンジシクロヘキシルカルボジイミドの、またはナノ粒子の表面へ付着されていない、いずれの外来のポリマーまたはコポリマーの配位子の、使用および/または組み込みなしに、実施されることを意味すると理解される。
【0061】
少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および、少なくとも1つの有機配位子Cは夫々、それら非架橋形態で官能基X、Y、およびZを含むが、上に定義されるとおりである。
【0062】
結果的に、本発明の好ましい態様において、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cは各々、その非架橋の形態で一般式(I)
U-V-W (I)
ここで基U、V、およびWは、上に定義されるとおりである、
によって表される。
【0063】
本発明のさらに好ましい態様に従うと、基Uは、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cの各々において同一であり、および/または基Vは、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cの各々において同一である。
【0064】
さらに好ましくは、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cの各々において、基Uはホスホン酸基であり、および基Vは1~20個のC原子を有する直鎖アルキレン基であり、ここで該直鎖アルキレン基において、1つ以上の非隣接メチレン構造単位(-CH2-)は、フェニレン基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、スルホキシド基、エステル基、リン酸エステル基、アミド基、またはイミン基によって置き換えられていてもよい。
【0065】
本発明のさらに好ましい態様に従うと、架橋性官能基X、Y、およびZは、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cの各々において同一である。結果的に、本発明に従うと、ナノ粒子の最表面へ付着されている有機配位子AとBとCとの間の直接連結は、同一の官能基を通して形成され、それによってポリマー外層を創出することが好ましいこともある。
【0066】
本発明のなおもさらに好ましい態様に従うと、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cは、同一である。このことは、本発明に従うと、ポリマー外層は、ナノ粒子の最表面へ付着されている少なくとも3つの同一の有機配位子の直接連結を通して形成されるのが好ましいこともあることを意味する。
【0067】
さらに好ましくは、官能基X、Y、およびZは、チオール基、アクリラート基、およびスチレン基から同じく選択される。
【0068】
本発明のさらに好ましい態様において、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cは各々、その非架橋形態で、11-メルカプトウンデシルホスホン酸、11-ホスホノウンデシルアクリラート、およびp-[(4-エテニルフェニル)メチル]ホスホン酸から同じく選択される。
【0069】
本発明に従う半電導性発光ナノ粒子は、いずれの(二機能性の)架橋剤、または外来のポリマーもしくはコポリマーの配位子の、添加および/または組み込みなしに、表面に付着された配位子の分子内自己架橋により創出されたポリマー外層を有する。
【0070】
表面に付着された配位子の分子内自己架橋によって形成された該ポリマー外層は、酸化的要素(前記要素は、配位子と反応し、ナノ粒子表面からの配位子の脱離を引き起こす)の、例えば雰囲気または周囲のマトリックスからの浸透を防止する。
【0071】
また、表面に付着された配位子の分子内自己架橋によって形成されたポリマー外層は、表面から脱離された配位子が放散するのも防止するが、代わりに、脱離された配位子がその表面へ高確率で再付着できるようにする。これによって、熱および光の条件下ならびにラジカルリッチな環境において、配位子脱離の結果としての、量子ドットの量子収率の低下が防止され得る。代わりに、半電導性ナノ粒子のより良好な性能、ならびに溶液中のおよびラジカルリッチな環境に対するより高い安定性が実現される。
【0072】
半電導性発光ナノ粒子:
本発明に従うと、半電導性発光ナノ粒子の無機部分として、公的に知られている多種多様の半電導性発光ナノ粒子が、所望されるとおりに使用され得る。
【0073】
本発明の半電導性発光ナノ粒子の形状のタイプは、具体的に限定されない。いずれのタイプの半電導性発光ナノ粒子、例えば、球状成形の、伸長成形の、星形成形の、多面体成形の半電導性発光ナノ粒子が使用され得る。
【0074】
本発明に従うと、半電導性発光ナノ粒子の該1つ以上のシェル層は、好ましくは、単一シェル層、二重シェル層、または2つ以上のシェル層を有するマルチシェル層であり、最も好ましくは、二重シェル層である。
【0075】
本明細書に使用されるとき、用語「シェル層」は、該コアを全体的にまたは部分的に覆う構造を意味する。好ましくは、該1つ以上のシェル層は、該コアを全体的に覆う。用語「コア」および「シェル」は、当該技術分野において周知であり、US 8221651 B2など、量子材料の分野において典型的に使用される。
【0076】
本明細書に使用されるとき、用語「ナノ」は、0.1nmと999nmとの間のサイズを意味し、好ましくは、0.1nmから150nmまでである。
本発明の好ましい態様において、本発明の半電導性発光ナノ粒子は、量子サイズの材料である。
【0077】
本明細書に使用されるとき、用語「量子サイズの」は、配位子も別の表面修飾もない半導体材料自体のサイズを意味するが、それは例えば、ISBN:978-3-662-44822-9に記載されているような量子閉じ込め効果を示し得る。一般に、量子サイズの材料は、「量子閉じ込め効果」に起因して、調節可能であって、鋭く、かつ鮮やかな色の光を発し得る。
【0078】
好ましくは、量子サイズの材料の全体構造のサイズは、1nmから100nmまで、より好ましくは、1nmから30nmまでであり、さらにより好ましくは、5nmから15nmまでである。
【0079】
本発明に従うと、半電導性発光ナノ粒子の該コアは変動し得る。例えば、
CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnSeS、ZnTe、ZnO、GaAs、GaP、GaSb、HgS、HgSe、HgSe、HgTe、InAs、InP、InPS、InPZnS、InPZn、InPGa、InSb、AlAs、AlP、AlSb、Cu2S、Cu2Se、CuInS2、CuInSe2、Cu2(ZnSn)S4、Cu2(InGa)S4、TiO2の合金、およびこれらのいずれかの組み合わせが使用され得る。
【0080】
本発明の好ましい態様において、半電導性発光ナノ粒子の該コアは、周期表の13族元素の1つ以上、および周期表の15族元素の1つ以上を含む。例えば、GaAs、GaP、GaSb、InAs、InP、InPS、InPZnS、InPZn、InPGa、InSb、AlAs、AlP、AlSb、CuInS2、CuInSe2、Cu2(InGa)S4、およびこれらのいずれかの組み合わせ。
【0081】
さらにより好ましくは、コアは、In原子およびP原子、例えば、InP、InPS、InPZnS、InPZn、またはInPGaを含む。
【0082】
本発明のさらに好ましい態様に従うと、シェル層の該少なくとも1つは、周期表の12族、13族、または14族の第1元素、および周期表の15族または16族の第2元素を含む。好ましくは、すべてのシェル層は、周期表の12族、13族、または14族の第1元素、および周期表の15族または16族の第2元素を含む。
【0083】
より好ましくは、シェル層の少なくとも1つは、周期表の12族の第1元素および周期表の16族の第2元素を含む。例えば、CdS、CdZnS、ZnS、ZnSe、ZnSSe、ZnSSeTe、CdS/ZnS、ZnSe/ZnS、またはZnS/ZnSeのシェル層が使用され得る。さらにより好ましくは、すべてのシェル層は、周期表の12族の第1元素および周期表の16族の第2元素を含む。
【0084】
具体的に好ましくは、少なくとも1つのシェル層は、以下の式(II)
ZnSxSeyTez、 -(II)、
ここで0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1であり、0≦x≦1、0≦y≦1、z=0であってx+y+z=1であり、さらにより好ましくはx+y=1である、
で表される。
【0085】
ZnS、ZnSe、ZnSeS、ZnSeSTe、CdS/ZnS、ZnSe/ZnS、ZnS/ZnSeのシェル層は、最も好ましく使用される。
【0086】
すべてのシェル層は、式(II)によって表されることがさらに好ましい。
例えば、緑色および/または赤色放射のための半電導性発光ナノ粒子として、CdSe/CdS、CdSeS/CdZnS、CdSeS/CdS/ZnS、ZnSe/CdS、CdSe/ZnS、InP/ZnS、InP/ZnSe、InP/ZnSe/ZnS、InP/ZnS/ZnSe、InPZn/ZnS、InPZn/ZnSe/ZnS、InPZn/ZnS/ZnSe、ZnSe/CdS、ZnSe/ZnSの半電導性発光ナノ粒子またはこれらのいずれかの組み合わせが使用され得る。
【0087】
より好ましくは、InP/ZnS、InP/ZnSe、InP/ZnSe/ZnS、InP/ZnS/ZnSe、InPZn/ZnS、InPZn/ZnSe/ZnS、InPZn/ZnS/ZnSeが使用され得る。
【0088】
本発明の好ましい態様においては、半電導性発光ナノ粒子の該シェル層は、二重シェル層である。
該半電導性発光ナノ粒子は、例えばSigma-Aldrichから公的に入手可能であり、および/または例えば、ACS Nano、2016、10 (6)、pp 5769-5781、Chem. Moter. 2015, 27, 4893-4898、および国際特許出願第WO 2010/095140 A2号に記載されている。
【0089】
追加の配位子(単数または複数):
本発明に従う半電導性発光ナノ粒子は、上に定義されるとおりの有機配位子A、B、およびCに加えて、シェル層の最表面へ付着されている1つ以上の異なるタイプの配位子を任意に含むが、どのタイプの配位子もポリマー外層を形成するための架橋反応または重合反応には関与せず、ただしこれらの配位子は架橋反応または重合反応に影響を及ぼすことも妨害することもない。
【0090】
結果的に、本発明に従う半電導性発光ナノ粒子のシェル層の最表面は、もし所望される場合、上に定義されるとおりの有機配位子A、B、およびCと一緒に/これらに加えて、異なるタイプの表面配位子でさらに覆われて(over-coated)いてもよい。
【0091】
本発明の好ましい態様に従うと、上に定義されるとおりの1つ以上のシェル層の最表面へ付着されている有機配位子A、B、およびCの総量は、シェル層(単数または複数)の最表面上へ付着されている全配位子のうち、30wt.%から99.9wt.%までの範囲にあり、好ましくは50wt.%から99.9wt.%までの範囲にあり、最も好ましくは70wt.%から99.9wt.%までの範囲にある。
【0092】
理論によって拘束されることは望まないが、かかる表面配位子は、ナノサイズの蛍光材料が、溶媒中でより容易に分散されるのに影響を及ぼし得ると考えられている。
【0093】
一般的な使用における表面配位子は、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)、トリオクチルホスフィン(TOP)、およびトリブチルホスフィン(TBP)などのホスフィンおよびホスフィンオキシド;ドデシルホスホン酸(DDPA)、トリデシルホスホン酸(TDPA)、オクタデシルホスホン酸(ODPA)、およびヘキシルホスホン酸(HPA)などのホスホン酸;オレイルアミン、ドデシルアミン(DDA)、テトラデシルアミン(TDA)、ヘキサデシルアミン(HDA)、およびオクタデシルアミン(ODA)、オレイルアミン(OLA)などのアミン、ヘキサデカンチオールおよびヘキサンチオールなどのチオール;オレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸などのカルボン酸;酢酸、ならびにこれらのいずれかの組み合わせを包含する。
【0094】
表面配位子の例は、例えば国際特許出願第WO 2012/059931A号に記載されてきた。
【0095】
方法:
本発明によって対処される問題はまた、ポリマー外層を有する半電導性発光ナノ粒子を調製するための方法によっても解決され、方法は次のステップを含む:
【0096】
a) コア、1つ以上のシェル層、ならびにシェル層の最表面へ付着されている、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cを含む、半電導性発光ナノ粒子を提供すること、ここで少なくとも1つの有機配位子Aは架橋性官能基Xを含み、少なくとも1つの有機配位子Bは架橋性官能基Yを含み、および少なくとも1つの有機配位子Cは、架橋性官能基Zを含む;ならびに
【0097】
b) ステップa)のナノ粒子を、少なくとも1つの有機配位子Aと少なくとも1つの有機配位子Bと少なくとも1つの有機配位子Cとの間の直接連結の、架橋性官能基X、Y、およびZを通した形成を可能にする条件へ供することによって、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cを架橋することでポリマー外層を形成すること。
【0098】
例えば、本発明に従うと、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cを架橋して、ポリマー外層を形成するステップにおいて、少なくとも1つの有機配位子Aの、少なくとも1つの有機配位子Bおよび1つの有機配位子Cとの直接連結、少なくとも1つの有機配位子Bの、少なくとも1つの有機配位子Aおよび1つの有機配位子Cとの直接連結、および/または、少なくとも1つの有機配位子Cの、少なくとも1つの有機配位子Aおよび1つの有機配位子Bとの直接連結が、架橋性官能基X、YおよびZを通して、形成され得る。
【0099】
半電導性発光ナノ粒子のコアおよび1つ以上のシェル層は、上に定義されるとおりである。
少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子C、ならびに夫々の官能基X、Y、およびZは、上に定義されるとおりである。
【0100】
結果的に、本方法の好ましい態様において、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cは各々、一般式(I)
U-V-W (I)、
ここで基U、VおよびWは、上に定義されるとおりである、
によって表される。
【0101】
本発明に従う方法のさらに好ましい態様に従うと、基Uは、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cの各々において同一であり、および/または基Vは、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cの各々において同一である。
【0102】
さらに好ましくは、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cの各々において、基Uはホスホン酸基であり、および基Vは1~20個のC原子を有する直鎖アルキレン基であるが、ここで該直鎖アルキレン基の1つ以上の非隣接メチレン構造単位(-CH2-)は、フェニレン基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、スルホキシド基、エステル基、リン酸エステル基、アミド基、またはイミン基によって置き換えられていてもよい。
【0103】
本発明に従う方法のさらに好ましい態様に従うと、架橋性官能基X、Y、およびZは、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cの各々において同一である。
【0104】
結果的に、本発明に従うと、本発明の方法によって得られたまたは得られる半電導性ナノ粒子は、同一の架橋性官能基を通して、有機配位子A、B、およびCの直接連結によって形成されるポリマー外層を有することが好ましいこともある。
【0105】
本発明に従う方法のなおもさらに好ましい態様に従うと、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cは、同一である。
【0106】
このことは、本発明に従うと、本発明の方法によって得られたまたは得られる半電導性ナノ粒子は、ナノ粒子の最表面へ付着されている同一の有機配位子A、B、およびCの直接連結によって形成されるポリマー外層を有することが好ましいこともあることを意味する。
【0107】
さらに好ましくは、官能基X、Y、およびZは、チオール基、アクリラート基、およびスチレン基から、同じく選択される。
【0108】
本発明に従う方法のさらに好ましい態様において、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cは、11-メルカプトウンデシルホスホン酸、11-ホスホノウンデシルアクリラートおよびp-[(4-エテニルフェニル)メチル]ホスホン酸から同じく選択される。
【0109】
本発明の方法内で、架橋性官能基X、Y、およびZを通して少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cを架橋し、それによってポリマー外層を形成するステップb)において、架橋または重合反応のタイプ(すなわち反応機構)は、具体的に限定されない。
【0110】
当業者に知られている、縮合重合(重縮合)または付加重合(重付加)、とりわけアニオン性重合、カチオン性重合、ラジカル重合、または配位重合などの、いずれのタイプの重合機構も適用されてよい。
【0111】
重合機構のタイプは主に、架橋性のもしくは重合性の官能基のタイプ、および/または重合反応が開始されるやり方、および/または反応条件(これらすべての因子は当業者に知られている)に依存する。
【0112】
本発明の方法のステップb)に従う架橋を形成することを可能にする条件は、具体的に限定されることはなく、架橋および重合反応を開始し、ならびに伝播させるための、当業者によって知られているいずれの適切な条件も、夫々適用されてよい。
【0113】
例えば、1つ以上のシェル層の最表面へ付着されている、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子C(各々その非架橋形態での)を有する、半電導性発光ナノ粒子を包含する系は、架橋反応または重合反応を開始して伝播させるために、例えば約20℃~約200℃の温度まで加熱されてもよい。
【0114】
あるいは、系は、架橋反応または重合反応を開始して進行させるために、予め決められた波長の光、好ましくはUV(約100nmから約400nmまで波長の電磁放射線)に暴露されてもよい。
【0115】
系への熱もしくは光曝露の適用への代わりにまたはこれに加えて、架橋反応または重合反応を開始して進めるために、重合開始剤が系へ加えられてもよい。これによって、架橋または重合は、より低い温度において、または熱を加えることさえもせずに、開始されて伝播されることが可能になる。
【0116】
本明細書に使用されるとき、重合開始剤は、解離および電子移動を包含する、異なる経路によって反応種(フリーラジカル、カチオン、またはアニオン)を創出する分子または化合物である。
【0117】
結果的に、光開始剤は、光(UVまたは可視光)に暴露されたときに、かかる反応種を創出する分子または化合物であり、熱開始剤は、熱が適用されたときに、かかる反応種を創出する分子または化合物である。
【0118】
重合開始剤は、本方法内に具体的に限定されることはなく、例えば、光開始剤、求核性の開始剤、ラジカル開始剤、または熱開始剤であってもよく、これらの好適な例は当業者に知られている。好ましくは、光開始剤または熱開始剤が使用される。
【0119】
ポリマー外層を調製するための反応時間、つまり架橋反応または重合反応の持続時間は、具体的に限定されることはなく、適切に選択されてもよい。例えば、架橋は約1分以上、例えば約10分~約12時間実施されてもよいが、これらに限定されない。
【0120】
適用される温度ならびに暴露される光の波長および強度は、熱開始剤および光開始剤夫々のタイプおよび量、ならびに量子ドットまたは同種のもののタイプおよび量に基づき、選択されてもよい。
【0121】
さらに好ましくは、重合開始剤が使用されるとき、それは、ナノ粒子の総重量(つまり、表面付着配位子を包含している)に基づき、1.0wt.-%以下の少ない量で加えられる。
【0122】
上に言及されたとおり、本発明に従うと、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cは、いずれの(二機能性の)架橋剤の添加および/または組み込みもなく、上に定義されるとおりに互いに架橋されることが好ましい。
【0123】
結果的に、ステップb)における本発明の方法の好ましい態様において、架橋がいずれの架橋剤の不在下でも実施される。
【0124】
本発明に従う方法のなおもさらに好ましい態様に従うと、ナノ粒子を提供するステップa)は、次のステップを含む
a1) コアおよび1つ以上のシェル層と、任意に、シェル層の最表面へ付着されている当初有機配位子化合物とを含むナノ粒子前駆体種を含有する溶液を調製すること、ならびに
a2) (前記)溶液へ、架橋性官能基X、Y、およびZを夫々含む、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cを加えること。
【0125】
ステップa1)のための溶媒として、例えば、トルエン、ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチル、ベンゼン、キシレン、エーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、およびヘプタン、ならびにそれらの混合物が使用され得るが、それらに限定されない。
【0126】
少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cを、ナノ粒子前駆体種を含有する溶液へ加える際、当初有機配位子化合物は、存在する場合、配位子交換を通して置き換えられ、夫々の有機配位子A、B、およびCの、ナノ粒子表面に付着した官能基を介する結合は影響を受ける。
【0127】
当初有機配位子化合物は、具体的に限定されず、例えばナノ粒子前駆体種の保管挙動等々を改善するための、またはナノ粒子前駆体を調製するプロセスから残存した、当業者に知られており当該技術分野において一般的に使用されるいずれの化合物であってもよい。
【0128】
方法ステップa)、とりわけ、上に記載のとおりの本発明の方法の方法ステップa1)およびa2)を受けて、コアと、1つ以上のシェル層と、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子C(各々非架橋形態でシェル層の最表面へ付着されている)とを含む半電導性発光ナノ粒子(ここで、少なくとも1つの有機配位子Aは、架橋性官能基Xを含み、少なくとも1つの有機配位子Bは、架橋性官能基Yを含み、および少なくとも1つの有機配位子Cは、架橋性官能基Zを含み、基X、Y、およびZは各々、架橋の受容体として、および架橋の供与体として作用することが可能であることを特徴とする)、が、この反応ステップから調製され得るかもしくは得られるか、またはそれから得られたものであり得るかもしくは単離され得る。
【0129】
したがって、本発明はまた、本明細書に記載の方法の反応ステップa)から得られたかまたは得られる半電導性発光ナノ粒子にも関する。
【0130】
本明細書に記載の方法によって得られたかまたは得られる半電導性発光ナノ粒子は、コアと、1つ以上のシェル層と、シェル層の最表面へ付着されている少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cと、ポリマー外層とを含み、ポリマー外層は、少なくとも1つの有機配位子Aと、少なくとも1つの有機配位子Bと、少なくとも1つの有機配位子Cとの間の、架橋性官能基X、Y、およびZを通した直接連結によって形成されていることを特徴とする。
【0131】
したがって、本発明はさらに、本明細書に記載の方法によって得られたかまたは得られるポリマー外層を有する半電導性発光ナノ粒子に関する。
【0132】
本明細書に記載のとおりの方法は、ナノ粒子の表面へ付着されている配位子の分子内自己架橋によって形成された保護的なポリマー外層によって取り囲まれている半電導性発光ナノ粒子の調製を可能にさせ、いずれの追加の架橋剤もしくは(コ)ポリマーまたは他の保護的要素の存在も要さない。
【0133】
表面に付着した配位子のみを保護層を形成するために使用することで、すなわち、いずれの追加の架橋剤等の添加もないことで、有機デバイスの層中の半電導性発光ナノ粒子の高濃度を維持すること、それによって、放射要素としての量子材料層を基にする光電デバイスからの光放射出力を改善することが可能となる。
【0134】
さらにまた、本明細書に定義されるとおりの、ナノ粒子表面に付着する官能基および架橋性官能基を含む官能化配位子を使用することによって、当初有機配位子化合物の配位子交換およびポリマー外層の形成が、ワンステップで実行可能である。つまり、ポリマー外層は、配位子交換が起こるうちに量子ドットの周辺で形成され得る。
【0135】
本明細書に記載の方法によって得られた半電導性発光ナノ粒子の該ポリマー外層は、例えば、雰囲気または周囲のマトリックスからの酸化的な要素の侵入を防止するが、その要素は、配位子と反応して配位子のナノ粒子表面からの脱離を引き起こす。また、該ポリマー外層は、表面から脱離した配位子が放散するのも防止するが、その代わりに、脱離した配位子が高い確率で表面へ再付着できるようにする。
【0136】
これによって、熱および光の条件下ならびにラジカルリッチな環境中の配位子脱離の結果としての量子ドットの量子収率の低下は防止され得る。その代わり、半電導性ナノ粒子のより良好な性能ならびに溶液におけるおよびラジカルリッチな環境に対するより高い安定性は、半電導性発光ナノ粒子を調製するための本明細書に記載の方法を使用して達成される。
【0137】
組成物:
別の側面において、本発明はさらに、本明細書に定義されるとおりのまたは本明細書に記載の方法に従って得られたポリマー外層および少なくとも1つの追加材料を有する半電導性発光ナノ粒子を含む組成物に関し、前記追加材料、好ましくは有機機能性材料、、より好ましくは、添加材料は、蛍光放射体、リン光放射体、ホスト材料、マトリックス材料、電子輸送材料、電子注入材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子遮断材料、正孔遮断材料、広バンドギャップ材料、遅延蛍光放射体、および遅延蛍光ホストからなる群から選択される。
【0138】
本発明の好ましい態様において、追加材料は、マトリックス材料である。
本発明に従うと、光学デバイスに好適な、多種多様の公的に知られている透き通ったマトリックス材料が、好ましく使用され得る。
【0139】
本発明に従うと、用語「透き通った」は、入射光の少なくともほぼ60%が、光媒体において使用される厚さにて、および光媒体操作の最中に使用される波長または波長範囲にて、伝達することを意味する。好ましくは、それは70%を超え、より好ましくは75%を超え、最も好ましくは80%を超える。
【0140】
本発明のいくつかの態様において、透き通ったマトリックス材料は透き通ったポリマーであり得る。
本発明に従うと、用語「ポリマー」は、繰り返し単位を有し、1000以上の重量平均分子量(Mw)を有する材料を意味する。
【0141】
本発明のいくつかの態様において、透き通ったポリマーのガラス転移温度(Tg)は、70℃以上かつ250℃以下である。
Tgは、Rickey J Seyler, Assignment of the Glass Transition, ASTM刊行物コード番号(PCN)04-012490-50に記載されているように、熱容量の変化に基づいた示差走査熱量測定により観測される。
【0142】
例えば、透き通ったマトリックス材料のための透き通ったポリマーとして、ポリ(メタ)アクリラート、エポキシ、ポリウレタン、ポリシロキサンが好ましくは使用され得る。
【0143】
本発明の好ましい態様において、透き通ったマトリックス材料としてのポリマーの重量平均分子量(Mw)は、1,000から300,000までの範囲にある。より好ましくは、それは10,000から250,000までである。
【0144】
製剤:
本発明はさらにまた、本明細書に定義されるとおりのポリマー外層を有する半電導性発光ナノ粒子または本明細書に定義されるとおりの組成物、および少なくとも1つの溶媒を含む製剤に関する。
【0145】
好ましくは、該溶媒は、芳香族の、ハロゲン化された、および脂肪族の炭化水素溶媒からなる群の1つ以上のメンバーから選択され、より好ましくは、トルエン、キシレン、エーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、およびヘプタンからなる群の1つ以上のメンバーから選択される。
【0146】
製剤中の溶媒の量は、製剤をコーティングする方法に従って自由に制御され得る。例えば、製剤がスプレーコートされるべきものである場合、それは90wt.%以上の量で溶媒を含有し得る。さらに、より大きな基板をコートするのにしばしば採用されるスリットコート法が実行されるべきものである場合、溶媒の含量は通常60wt.%以上、好ましくは70wt.%以上である。
【0147】
使用:
本発明はさらにまた、本明細書に定義されるとおりのポリマー外層を有する半電導性発光ナノ粒子、または本発明に従う組成物、もしくは製剤の、電子デバイス、光学デバイス、または生物医学デバイスにおける使用に関する。
【0148】
光媒体:
本発明は加えて、本明細書に定義されるとおりのポリマー外層を有する半電導性発光ナノ粒子または本発明に従う組成物を含む光媒体に関する。
【0149】
本発明のいくつかの態様において、光媒体は、光学フィルム、例えば、色フィルター、色変換フィルム、リモートフォスファーテープ(remote phosphor tape)、または別のフィルムもしくはフィルターであり得る。
【0150】
光学デバイス:
本発明はさらに、本発明に従う光媒体を含む光学デバイスに関する。
【0151】
光学デバイスは、好ましくは、液晶ディスプレー、有機発光ダイオード(OLED)、ディスプレーのためのバックライトユニット、発光ダイオード(LED)、微小電気機械システム(これ以降「MEMS」)、エレクトロウェッティングディスプレー、または電気泳動ディスプレー、照明デバイス、および/または太陽電池である。
【0152】
本発明は、表面に付着する配位子として、ナノ粒子表面に付着する官能基ならびに架橋性のまたは重合性の官能基を含む、かかる官能化配位子を使用することと、表面に付着する配位子自体を架橋(すなわち分子内で)することで、ナノ粒子表面を取り囲むポリマー外層を創出するかまたはこれに対応するポリマー網目が形成されることという、新しい概念を提供する。ポリマー外層は有利なことには、あらゆる種類の外部要素に対して、立体的な保護を提供し、また表面から脱離された配位子が放散するのも防止するが、その代わりに、脱離された配位子が高い確率で表面へ再付着できるようにする。
【0153】
さらに、この保護の概念は有利なことに、半電導性ナノ粒子へ加えられるべきいずれの追加材料、化合物、または架橋剤も要さず、したがって、高度に濃縮された半電導性発光ナノ粒子層の適用が可能になり、それによって、放射要素としての量子材料層にを基にする光電気デバイスからの光放射が改善される。
【0154】
好ましい態様
態様1。
コア、
1つ以上のシェル層、ならびに
シェル層の最表面へ付着されている、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子C
を含む半電導性発光ナノ粒子であって、ここで
少なくとも1つの有機配位子Aは、架橋性官能基Xを含み、
少なくとも1つの有機配位子Bは、架橋性官能基Yを含み、および
少なくとも1つの有機配位子Cは、架橋性官能基Zを含み、
基X、Y、およびZが各々、架橋の受容体として、および架橋の供与体として作用することが可能であることを特徴とする。
【0155】
態様2。基Xが、基Yに関しては架橋の受容体として、基Zに関しては架橋の供与体として、または基Zに関しては架橋の受容体として、基Yに関しては架橋の供与体として作用することが可能であり、
基Yが、基Zに関しては架橋の受容体として、基Xに関しては架橋の供与体として、または基Xに関しては架橋の受容体として、基Zに関しては架橋の供与体として作用することが可能であり、
基Zが、基Xに関しては架橋の受容体として、基Yに関しては架橋の供与体として、または基Yに関しては架橋の受容体として、基Xに関しては架橋の供与体として作用することが可能である
ことを特徴とする、態様1に従うナノ粒子。
【0156】
態様3。少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cは各々、一般式(I)
U-V-W (I)
ここでUは、配位子A、B、およびCの出現毎に、同じくまたは異なって、ナノ粒子表面付着基であり、Vは、配位子A、B、およびCの出現毎に、同じくまたは異なって、リンカー基であり、ならびにWは、架橋性官能基X、Y、およびZに夫々対応する、
によって表されることを特徴とする、態様1または2に従うナノ粒子。
【0157】
態様4。式(I)中、
Uが、配位子A、B、およびCの出現毎に同じくまたは異なって、ホスホン酸基、チオール基、チオラート基、チオ酸基、ジチオ酸基、メルカプトエステル基、カルボン酸基、カルボキシラート基、とりわけZn-カルボキシラート、ホスホナート基、とりわけZn-ホスホナート、チオカルバマート基、とりわけZn-チオカルバマート、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、アミン基、アミド基、およびセレノール基からなる群から選択される;
Vが、配位子A、B、およびCの出現毎に同じくまたは異なって、1~20個のC原子を有する直鎖アルキレン基、または3~20個のC原子を有する分枝のアルキレン基からなる群から選択され、ここで該直鎖および分枝のアルキレン基における1つ以上の非隣接メチレン構造単位(-CH2-)は、各ケースにおいて、フェニレン基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、スルホキシド基、エステル基、リン酸エステル基、アミド基またはイミン基、または2~20個のC原子を有する直鎖アルケニレン基またはアルキニレン基、または3~20個のC原子を有する分枝アルケニレン基またはアルキニレン基によって置き換えられていてもよく、ここで該直鎖および分枝のアルケニレンまたはアルキニレン基における1つ以上のメチレン構造単位(-CH2-)は、各ケースにおいて、フェニレン基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、スルホキシド基、エステル基、リン酸エステル基、アミド基、またはイミン基によって置き換えられていてもよい;および
X、Y、およびZが、互いに独立して、チオール基、アクリラート基、スチレン基、カーボネート基、およびカルバマート(ウレタン)基からなる群から選択される
ことを特徴とする、請求項3に記載のナノ粒子。
【0158】
態様5。基Uが、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cの各々において同一であり、および/またはVは、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cの各々において同一であることを特徴とする、態様3または4に従うナノ粒子。
【0159】
態様6。Uが、ホスホン酸基であり、および基Vは、1~20個のC原子を有する直鎖アルキレン基であり、ここで該直鎖アルキレン基の1つ以上の非隣接するメチレン構造単位(-CH2-)は、フェニレン基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、スルホキシド基、エステル基、リン酸エステル基、アミド基、またはイミン基によって置き換えられていてもよいことを特徴とする、態様3~5のいずれか1つに従うナノ粒子。
【0160】
態様7。基X、Y、およびZが、同一であることを特徴とする、態様1~6のいずれか1つに従うナノ粒子。
【0161】
態様8。少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cが、同一であることを特徴とする、態様1~7のいずれか1つに従うナノ粒子。
【0162】
態様9。X、Y、およびZが、チオール基、アクリラート基、およびスチレン基から同じく選択されることを特徴とする、態様1~8のいずれか1つに従うナノ粒子。
【0163】
態様10。は、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cが、11-メルカプトウンデシルホスホン酸、11-ホスホノウンデシルアシレート、およびp-[(4-エテニルフェニル)メチル]ホスホン酸から同じく選択されることを特徴とする、態様1~9のいずれか1つに従うナノ粒子。
【0164】
態様11。
コア、
1つ以上のシェル層、
シェル層の最表面へ付着されている、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子C、ならびに
ポリマー外層
を含み、
ポリマー外層が、架橋性官能基X、Y、およびZを通して、少なくとも1つの有機配位子Aと、少なくとも1つの有機配位子Bと、および少なくとも1つの有機配位子Cとの間の直接連結によって形成されている
ことを特徴とする、態様1~10のいずれか1つに従う半電導性発光ナノ粒子。
【0165】
態様12。ポリマー外層が、架橋性官能基X、Y、およびZを通して、少なくとも1つの有機配位子Aの、少なくとも1つの有機配位子Bおよび有機配位子Cとの直接連結、少なくとも1つの有機配位子Bの、少なくとも1つの有機配位子Aおよび有機配位子Cとの直接連結、および/または少なくとも1つの有機配位子Cの、少なくとも1つの有機配位子Aおよび有機配位子Bとの直接連結によって形成されていることを特徴とする、態様11に従う半電導性発光ナノ粒子。
【0166】
態様13。ポリマー外層を有する半電導性発光ナノ粒子を調製する方法であって、方法が以下のステップを含む:
a) コア、1つ以上のシェル層、およびシェル層の最表面へ付着されている少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cを含む半電導性発光ナノ粒子を提供すること、ここで少なくとも1つの有機配位子Aは、架橋性官能基Xを含み、少なくとも1つの有機配位子Bは、架橋性官能基Yを含み、おおよび少なくとも1つの有機配位子Cは、架橋性官能基Zを含む;ならびに
b) ステップa)のナノ粒子を、少なくとも1つの有機配位子Aと少なくとも1つの有機配位子Bと少なくとも1つの有機配位子Cとの間の直接連結の、架橋性官能基X、Y、およびZを通した形成を可能にする条件へ供することによって、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cを架橋することでポリマー外層を形成すること。
【0167】
態様14。少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cが各々、一般式(I)
U-V-W (I)
ここでUが、配位子A、B、およびCの出現毎に同じくまたは異なって、ナノ粒子表面に付着する基であり、Vは、出現毎に同じくまたは異なって、リンカー基であり、ならびにWは、架橋性官能基X、Y、およびZ夫々に対応する
によって表されることを特徴とする、態様13に従う方法。
【0168】
態様15。式(I)中、
Uが、配位子A、B、およびCの出現毎に、同じくまたは異なって、ホスホン酸基、チオール基、チオラート基、チオ酸基、ジチオ酸基、メルカプトエステル基、カルボン酸基、カルボキシラート基、とりわけZn-カルボキシラート、ホスホナート基、とりわけZn-ホスホナート、チオカルバマート基、とりわけZn-チオカルバマート、ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、アミン基、アミド基、およびセレノール基からなる群から選択される;
Vが、配位子A、B、およびCの出現毎に、同じくまたは異なって、1~20個のC原子を有する直鎖アルキレン基、または、3~20個のC原子を有する分枝のアルキレン基からなる群から選択され、ここで該直鎖および分枝のアルキレン基における1つ以上の非隣接するメチレン構造単位(-CH2-)は、各ケースにおいて、フェニレン基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、スルホキシド基、エステル基、リン酸エステル基、アミド基、またはイミン基、または2~20個のC原子を有する直鎖アルケニレン基またはアルキニレン基、または3~20個のC原子を有する、分枝のアルケニレン基またはアルキニレン基によって置き換えられていてもよく、ここで該直鎖および分枝のアルケニレンまたはアルキニレン基における1つ以上のメチレン構造単位(-CH2-)は、各ケースにおいて、フェニレン基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、スルホキシド基、エステル基、リン酸エステル基、アミド基またはイミン基によって置き換えられていてもよい;
X、Y、およびZが、互いに独立して、チオール基、アクリラート基、スチレン基、カーボネート基、およびカルバマート(ウレタン)基からなる群から選択される
ことを特徴とする、態様14に従う方法。
【0169】
態様16。基Uが、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cの各々において同一であり、および/または基Vは、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cの各々において同一であることを特徴とする、態様14または15に従う方法。
【0170】
態様17。Uが、ホスホン酸基であり、およびVは、1~20個のC原子を有する直鎖アルキレン基であって、ここで該直鎖アルキレン基における1つ以上の非隣接するメチレン構造単位(-CH2-)は、フェニレン基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、スルホキシド基、エステル基、リン酸エステル基、アミド基、またはイミン基によって置き換えられていてもよいことを特徴とする、態様14~16のいずれか1つに従う方法。
【0171】
態様18。基X、Y、およびZが、同一であることを特徴とする、態様13~17のいずれか1つに従う方法。
【0172】
態様19。少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cが、同一であることを特徴とする、態様13~18のいずれか1つに従う方法。
【0173】
態様20。は、基X、Y、およびZが、チオール基、アクリラート基、およびスチレン基から同じく選択されることを特徴とする、態様13~19のいずれか1つに従う方法。
【0174】
態様21。少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cが、11-メルカプトウンデシルホスホン酸、11-ホスホノウンデシルアクリラート、およびp-[(4-エテニルフェニル)メチル]ホスホン酸から同じく選択されることを特徴とする、態様13~20のいずれか1つに従う方法。
【0175】
態様22。ステップb)において、少なくとも1つの有機配位子Aと、少なくとも1つの有機配位子Bと、少なくとも1つの有機配位子Cとの間で直接連結を形成することを可能にする条件が、熱の適用、任意に重合開始剤、とりわけ熱的開始剤の存在下であることを特徴とする、態様13~21のいずれか1つに従う方法。
【0176】
態様23。ステップb)において、少なくとも1つの有機配位子Aと、少なくとも1つの有機配位子Bと、少なくとも1つの有機配位子Cの間の直接連結の形成を可能にする条件は、光の曝露、任意に重合開始剤、とりわけ光開始剤の存在下であることを特徴とする、態様13~21のいずれか1つに従う方法。
【0177】
態様24。重合開始剤が、ナノ粒子の総重量に基づき1.0wt.-%以下の量で存在することを特徴とする、態様22または23に従う方法。
【0178】
態様25。ステップb)における架橋が、いずれの架橋剤も不在で実施されることを特徴とする、態様13~24のいずれか1つに従う方法。
【0179】
態様26。態様13~25のいずれか1つに従う方法であって、ここでナノ粒子を提供するステップa)は、
a1) コアと、1つ以上のシェル層と、任意に、シェル層の最表面へ付着されている当初有機配位子化合物とを含む、ナノ粒子前駆体種を含有する溶液を調製すること、ならびに
a2) 架橋性官能基X、Y、およびZを夫々含む、少なくとも1つの有機配位子A、少なくとも1つの有機配位子B、および少なくとも1つの有機配位子Cを、前記溶液へ加えること
を含む。
【0180】
態様27。態様13のステップa)の反応で得られたかまたは得られる、半電導性発光ナノ粒子。
【0181】
態様28。態様13~26のいずれか1つの方法によって得られたかまたは得られる、ポリマー外層を有する半電導性発光ナノ粒子。
【0182】
態様29。態様11または28に従う、少なくとも1つの半電導性発光ナノ粒子、および少なくとも1つの追加材料を含む組成物であって、前記追加材料は、好ましくは有機機能性材料、より好ましくは、蛍光放射体、リン光放射体、ホスト材料、マトリックス材料、電子輸送材料、電子注入材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子遮断材料、正孔遮断材料、広バンドギャップ材料、遅延蛍光放射体、および遅延蛍光ホストからなる群から選択される。
【0183】
態様30。態様11もしくは28に従う少なくとも1つの半電導性発光ナノ粒子または態様29に従う少なくとも1つの組成物、および少なくとも1つの溶媒を含む製剤であって、前記溶媒は、好ましくは、芳香族、ハロゲン化、および脂肪族の炭化水素溶媒からなる群の1つ以上のメンバーから選択され、より好ましくは、トルエン、キシレン、エーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、およびヘプタンからなる群の1つ以上のメンバーから選択される。
【0184】
態様31。電子デバイス、光学デバイス、もしくは生物医学デバイスにおける、態様11または28に従う半電導性発光ナノ粒子の使用、あるいは態様29に従う組成物、あるいは態様30に従う製剤。
【0185】
態様32。態様11もしくは28に従う少なくとも1つの半電導性発光ナノ粒子、または態様29に従う少なくとも1つの組成物、または態様30に従う製剤を含む光媒体。
【0186】
態様33。態様32に従う光媒体を含む光学デバイス。
【0187】
本発明は下に、例を活用してより詳細に記載されるが、それらの例は、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【0188】
実施例
実施例1-配位子として11-メルカプトウンデシルホスホン酸(11-MPA)をもつ量子ドット(QD)
配位子交換:
5mLの量子ドット前駆体を含有する溶液(トルエン中50mg/mL QD)を、0.06g 11-MPA(Sigma-Aldrichから購入-754269)と混合し、先ずアルゴン下50℃にて1h撹拌することで11-MPAを溶解し、次いで加えて20℃にて終夜撹拌することで配位子交換を生じさせる。混合物を遠心分離用バイアル中へ移し、5mL無水(dried)メタノールを加える。次いで混合物をアルゴン下4000rpmにて5min遠心分離する。その後、無色上清を除去し、赤色沈殿を5mL 無水トルエンに懸濁させる。
【0189】
配位子交換を確認するために、こうして得られた量子ドットおよび前駆量子ドット(すなわち、配位子交換前のQDs)をフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)によって分析する。本明細書に示されるすべてのFT-IR測定は、Bruker’s Vertex 70(ATR diamond A225/QHP)を使用して測定される。
【0190】
図1は、11-MPAでの配位子交換前および配位子交換後の量子ドット試料のFT-IRスペクトルを示す。1450cm
-1および1550cm
-1でのピークの消失は、有効な配位子交換を示す。このために、50uLの11-MPAで覆われた量子ドットをトルエンに溶解し、ATR diamond A225/QHP表面上に室温で堆積させる。溶媒を、測定を行う前に1分間蒸発される。
【0191】
架橋:
こうして得られた100mgの量子ドットを2mLの無水トルエンに溶解し、3mgの光開始剤イルガキュア(Irgacure)TPO(ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド:Sigma Aldrichから購入-415952)と混合する。混合物を、2mW/cm2の強度にて365nmの波長をもつ光へ暴露しつつ、アルゴン下20℃にて1時間撹拌する。
【0192】
図2aは、11-MPA試料の架橋後の(すなわち、光へ曝露後の)画像であり、
図2bは、前駆量子ドットの試料(すなわち、配位子交換前の、下の比較例1に対応する)の画像であり、各々走査電子顕微鏡(SEM)で撮影されている。
実施例1の11-MPA試料のSEM画像(
図2a)は、11-MPAの重合を示唆する大きい構造を示す一方、前駆量子ドットの試料のSEM画像(
図2b)は、かかる構造を示していない。
【0193】
実施例2-配位子としてp-[(4-エテニルフェニル)メチル]ホスホン酸をもつ量子ドット
配位子交換:
5mLの量子ドット前駆体を含有する溶液(テトラヒドロフラン(THF)中50mg/mL QD)を0.16g p-[(4-エテニルフェニル)メチル]ホスホン酸(特定のポリマー;SP-51-003)と混合し、アルゴン下50℃にて終夜撹拌することで配位子交換を生じさせる。次いでTHFを蒸発させ、そこから得られた量子ドットを50mg/mLの濃度にてトルエンに再溶解させる。混合物を遠心分離用バイアル中へ移し、無水メタノールを加える。混合物におけるトルエン:メタノールの最終的な比は2:1である。次いで混合物をアルゴン下4000rpmにて5min遠心分離する。その後、無色上清を除去し、赤色沈殿を濃度50mg/mLの濃度にて無水トルエンに懸濁させる。
【0194】
架橋:
架橋の反応を開始し伝播させるために、こうして得られた懸濁液を、量子ドットの濃度を15mg/mLにて維持しつつ、200℃の温度まで加熱する。
【0195】
実施例3-配位子としてp-[(4-エテニルフェニル)メチル]ホスホン酸をもつ量子ドット
配位子交換:
配位子交換を、実施例2に関して記載されるとおりに実施する。
【0196】
架橋:
熱開始剤2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)のトルエン中0.2M溶液(Sigma Aldrichから購入-714887)を、量子ドットの質量と比較して約1wt.-%の量で、そうして得られた懸濁液へ加え、懸濁液を、量子ドットの濃度を15mg/mLにて維持しつつ、架橋反応を開始して伝播させるために80℃まで加熱する。
【0197】
実施例4-配位子として11-ホスホノウンデシルアクリラートをもつ量子ドット
配位子交換:
15mLの量子ドット前駆体を含有する溶液(トルエン中25mg/mL)を0.124g 11-ホスホノウンデシルアクリラート(Sigma Aldrichから購入-795739)と混合し、アルゴン下50℃にて終夜撹拌することで配位子交換を生じさせる。4mLの混合物を遠心分離用バイアル中へ移し、4mL 無水メタノールを加える。次いで混合物をアルゴン下4000rpmにて10min遠心分離する。その後、赤色上清を蒸発させ、赤色沈殿を1mLヘキサンに再溶解させる。溶液を遠心分離用バイアル中へ移し、2mL 無水メタノールを加える。次いで混合物をアルゴン下4000rpmにて10min遠心分離する。その後、大体無色の上清を除去し、赤色沈殿を濃度50mg/mLの濃度にて無水トルエンに再溶解させる。
【0198】
架橋:
架橋の反応を開始して伝播させるために、こうして得られた溶液を、量子ドット濃度を15mg/mLにて維持しつつ、100℃の温度まで加熱する。
【0199】
図3aおよび
図3bは、実施例4の量子ドット試料の架橋前(しかし11-ホスホノウンデシルアクリラートとの配位子交換後)、および架橋後のFT-IRスペクトル(つまり同じスペクトルであるが、異なる波数範囲が描かれる)を示しており、炭素-炭素二重結合に関係があるピークの強度を比較する。これについて、11-ホスホノウンデシルアクリラートで覆われた50uLの量子ドットを、トルエンに溶解し、ATR diamond A225/QHP表面上に室温で堆積させる。
【0200】
溶媒を、測定を行う前に1分間蒸発される。炭素-炭素二重結合に関係があるピーク(すなわち、809cm
-1、1407cm
-1、および1636cm
-1での、
図3aと
図3bとを組み合わせて表1を参照)の強度の架橋最中の減少は、架橋の反応においてこれらの結合が開くことを示唆している。さらに、架橋後の試料中1610cm
-1での新しいピークは、配位子の重合を示唆している。
【0201】
ピーク強度の決定:
【数1】
「バンド@X」はC=C振動を意味する。
「バンド@1735cm
-1」はC=O振動の積分を表わす。
「比率非CL」は、架橋前の、C=O振動(バンド@1735cm
-1)の積分に対するC=C振動(バンド@X)の積分の比率を意味する。
【0202】
「比率CL」は、架橋後の、C=O振動(Band@1735cm-1)の積分に対するC=C振動の積分の比率を表わす。
【0203】
換言すれば、「バンド」は、ある波数でのFT-IRシグナルを指すが、被験分子中の結合の1つの知られている振動波数に合致する。これはFTIRスペクトルにおいてガウス分布として現れるであろう。
【0204】
アクリルのモノマーが重合されるとき、C=C結合が開くが、しかしながらC=O結合は無傷のままである。C=O結合は1735cm-1波数にて振動するので、我々は1735cm-1を参照として使用し、他の振動の強度とそれとを比較する。
【0205】
我々は次いで、架橋前(別名比率非CL)および架橋後(比率CL)の、C=C振動(バンド@X)の積分をC=O振動(バンド@1735cm
-1)の積分と比較する。比率CLが比率非CLより小さいとき、これはC=O結合と比較して少ないC=C結合を有することを意味し、真の架橋を示唆している。
表1:
【表1】
【0206】
実施例5-配位子として11-ホスホノウンデシルアクリラートをもつ量子ドット
配位子交換:
配位子交換は実施例4に関して記載されているように実施する。
【0207】
架橋:
光開始剤イルガキュアTPOを、上で得られた溶液へ、量子ドットの質量と比較して約1wt.-%の量で加える。混合物を、架橋反応を開始して伝播させるために2mW/cm2の強度にて365nmの波長をもつ光に暴露しつつ、アルゴン下20℃にて1時間撹拌する。
【0208】
実施例6-量子収率(QY)の測定
量子収率に対するすべての測定を、Hamamatsu Quantaurus絶対PL量子収率分光計モデルc11347-11を使用して行う。
光への暴露前(すなわち、配位子交換後であるが架橋前)の実施例1の混合物から1つの試料を、および光への暴露後(365nm、1時間)の実施例1の混合物から1つの試料を採取し、各試料を無水トルエンで0.08mg/mLの濃度まで希釈する。次いで量子ドットの当初量子収率(すなわち、配位子交換後であるが光曝露前)および光曝露後(365nm、1時間)の量子収率を測定する(
図3を参照)。
【0209】
比較例1-前駆量子ドットおよび量子収率(QY)の測定
実施例1~5において当初使用されたとおりの前駆量子ドット(すなわち、QDはまだ、本発明の配位子ではない表面へ付着されている当初配位子を有し、本発明に従う配位子との配位子交換を実施することがない)を、0.08mg/mLの濃度にて無水トルエンに溶解し、当初量子収率を測定する。
【0210】
その後、100mgの前駆量子ドットを2mLのトルエンに溶解し、3mg 光開始剤イルガキュアTPOと混合する。次いで混合物を、2 mW/cm2の強度にて365nmの波長を有する光へ暴露しつつ、20℃にて1時間撹拌する。次いで、試料を採取し、無水トルエンで0.08mg/mLの濃度まで希釈し、量子収率を再度測定する。
【0211】
図4において、実施例6および比較例1において測定された正規化量子収率を説明する。
図4は、実施例6および比較例1(前駆量子ドット)から得られた量子ドットの、当初量子収率(t=0時間)および365nm光(t=1時間)へ曝露後の量子収率を示す。配位子交換、および11-MPAを配位子とする架橋の結果として、QDは前駆QDより良好に安定性試験を凌ぐことがわかり得る。架橋された配位子を有する配位子交換されたQD(実施例6)は、1時間後に11%のQY(量子収率)低下を示す一方、当初の非架橋配位子をもつ前駆体QD(比較例1)は、同じ条件下で30%の低下を示す。