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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】モノビニルエーテルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/44 20060101AFI20240213BHJP
   C07C 41/08 20060101ALI20240213BHJP
   C07C 43/188 20060101ALI20240213BHJP
   C07C 43/16 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C07C41/44
C07C41/08
C07C43/188
C07C43/16
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021510925
(86)(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2019072078
(87)【国際公開番号】W WO2020043518
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】18191738.6
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビーネウォルド,フランク
(72)【発明者】
【氏名】フェルカート,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ピンコス,ロルフ
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第00787915(GB,A)
【文献】特表2009-523716(JP,A)
【文献】特開2006-265204(JP,A)
【文献】特開2005-095155(JP,A)
【文献】特開2016-135756(JP,A)
【文献】特開2010-229049(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01054747(GB,A)
【文献】特表2006-527225(JP,A)
【文献】特開平10-218823(JP,A)
【文献】特開平10-158208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/CASREACT/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
R-O-CH=CH2
(式中、Rは、少なくとも3個の炭素原子を有する有機基を表す)
のモノビニルエーテルを製造する方法であって、
a)式II
R-OH
(式中、Rは上記の意味を有する)
のモノヒドロキシ化合物を触媒の存在下でアセチレンと反応させて、モノビニルエーテル、変換されていないモノヒドロキシ化合物、及び触媒を含む生成物混合物を得ることと、 b)式III
X-O2C-
(式中、Xは、Rよりも少ない炭素原子を有する炭化水素基である)
の少なくとも1個のエステル基を有するエステルを、プロセスステップa)で得られた生成物混合物に加え、残ったモノヒドロキシ化合物R-OHを触媒の存在下でエステルと反応させ、式IV
R-O2C-
の少なくとも1個のエステル基を有するエステル交換生成物、及び式V
X-OH
のアルコール
(式中、R及びXは上記の意味を有する)
を得ることと、
c)プロセスステップb)の後に得られた生成物混合物からモノビニルエーテルを単離し、その後、任意選択的に蒸留によるモノビニルエーテルの精製を行うことと、を含む、方法。
【請求項2】
式I中のRが、3個から10個の炭素原子を有する非芳香族炭化水素基を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式I中のRがシクロヘキシル基である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
触媒が、式VI
RO-+
(式中、Rは上記の意味を有し、M+は金属カチオンを表す)
のアルコラートである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
触媒が、モノヒドロキシ化合物100重量部当たり、0.1重量部から10重量部の量で使用される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)で得られた生成物混合物が、100重量%の生成物混合物に対して、
55重量%から98.9重量%の式Iのモノビニルエーテル、
1重量%から35重量%の式IIのモノヒドロキシ化合物、及び
0.1重量%から10重量%の触媒
を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
式III中のXが、メチル基又はエチル基を表す、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップb)で加えるエステルが、式IIIの1個又は2個のエステル基を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップb)で加えるエステルが、式VII
X-O2C-Z
(式中、Xは上記の意味を有し、Zは6個から20個の炭素原子を有する炭化水素基を表す)
のエステル、又は、式VIII
X-O2C-CO2-X
(式中、Xは上記の意味を有する)
のエステルである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップb)において、生成物混合物中の式IIのモノヒドロキシ化合物100mol当たり、80molから300molの量で、エステルを加える、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップb)におけるエステル交換を20℃から100℃の温度で行う、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップb)におけるエステル交換を50℃から90℃の温度で行う、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式I
R-O-CH=CH
(式中、Rは、少なくとも3個の炭素原子を有する有機基を表す)
のモノビニルエーテルを製造する方法であって、
a)式II
R-OH
(式中、Rは上記の意味を有する)
のモノヒドロキシ化合物を触媒の存在下でアセチレンと反応させて、モノビニルエーテル、変換されていないモノヒドロキシ化合物、及び触媒を含む生成物混合物を得ることと、
b)式III
X-OC-
(式中、Xは、Rよりも少ない炭素原子を有する炭化水素基である)
の少なくとも1個のエステル基を有するエステルを、プロセスステップa)で得られた生成物混合物に加え、残ったモノヒドロキシ化合物R-OHを触媒の存在下でエステルと反応させ、式IV
R-OC-
の少なくとも1個のエステル基を有するエステル交換生成物、及び式V
X-OH
のアルコール
(式中、R及びXは上記の意味を有する)
を得ることと、
c)プロセスステップb)の後に得られた生成物混合物からモノビニルエーテルを単離し、その後、任意選択的に蒸留によるモノビニルエーテルの精製を行うことと、を含む、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニルエーテルの合成のための周知の方法は、レッペ法(Reppe process)である。レッペ法によれば、アルコールを触媒の存在下でアセチレンと反応させることにより、ビニルエーテルが得られる。通常、触媒はナトリウムアルコラート又はカリウムアルコラートである。触媒は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを、アルコールに、アルコールの0.5重量%から5重量%の量で加え、対応するアルコラートにすることにより、容易に得られる。得られたアルコールと対応するナトリウムアルコラート又はカリウムアルコラートの混合物を、次いで、アセチレンと反応させる。このような方法は、例えば、US6794546又はWO2018/036848に記載されている。
【発明の概要】
【0003】
アルコールの転化率が高いと、粘度が顕著に増加し、ゲル形成が起こることがあり、多くの場合、ポリマー及び/又はその他の残余生成物の生成が見られる。さらに、高い転化率のためには、反応器での長い滞留時間が必要であり、経済的でない。
【0004】
しがたって、より低いアルコールの転化率で反応を終わらせることがあり、こうしてビニルエーテルと過半量の変換されていないアルコールを含む生成物混合物が得られる。ビニルエーテルは、混合物から分離する必要がある。蒸留による分離がUS7670464から知られている。この米国特許に記載されているように、蒸留は、共沸混合物の生成が原因で、容易に行うことができない。この米国特許で示唆されている蒸留プロセスは、共沸混合物の第二カラムから第一カラムへの再循環を伴う、別個のカラムにおける二段階蒸留である。
【0005】
本発明の目的は、ビニルエーテルと変換されていないアルコールとを容易に且つ経済的に分離することを含む、ビニルエーテルの製造のための方法を提供することである。
【0006】
よって、上記の方法が見出された。
【発明を実施するための形態】
【0007】
式Iのモノビニルエーテルについて
【0008】
式I中のRは、少なくとも3個の炭素原子を有する有機基を表す。
【0009】
好ましくは、式I中のRは、3個から20個の炭素原子、より好ましくは3個から10個の炭素原子を有する有機基を表す。Rは、ヒドロキシ基を含まない。有機基は、炭素原子及び水素原子以外の原子を、アセチレンと反応しない官能基の形態で含んでよい。例えば、有機基は、酸素原子をエーテル又はカルボニル基の形態で含んでよい。
【0010】
より好ましくは、式I中のRは、炭化水素基を表し、炭素原子又は水素原子以外の原子を含まない。
【0011】
最も好ましくは、式I中のRは、3個から10個の炭素原子を有する非芳香族炭化水素基を表す。このような炭化水素基は、アルキル基又はシクロアルキル基であってよい。
【0012】
本発明の特に好ましい実施形態において、Rはシクロヘキシル基である。
【0013】
プロセスステップa)について
【0014】
プロセスステップa)の出発物質は、アセチレン、式IIのモノヒドロキシ化合物、及び触媒である。
【0015】
式IIのモノヒドロキシ化合物は、式Iの所望のモノビニルエーテルに対応し、式II中のRは、式I中と同じ意味を有する。
【0016】
したがって、式IIのモノヒドロキシ化合物は、最も好ましくは、1個のヒドロキシ基で置換された、3個から10個の炭素原子を有する炭化水素、特に、C3からC10アルカノール又はシクロヘキサノールである。特に好ましい実施形態において、モノヒドロキシ化合物は、シクロヘキサノールである。
【0017】
触媒は、好ましくは、式VI
RO
(式中、Rは、上記の意味を有し、Mは、金属カチオンを表す)
の金属アルコラートである。
【0018】
好ましくは、Mはアルカリカチオン、例えばナトリウム又はカリウムのカチオン、最も好ましくはカリウムのカチオンである。
【0019】
好ましくは、金属アルコラートROは、アセチレンと反応させるモノヒドロキシ化合物の金属アルコラートである。
【0020】
金属アルコラートは、別個に調整して、次いでステップa)の反応混合物に加えてよい。
【0021】
好ましい実施形態において、金属アルコラートは、金属水酸化物、好ましくはアルカリ金属水酸化物、最も好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを、式IIのモノヒドロキシ化合物に加えることによって調製される。好ましくは、アルカリ金属水酸化物を水溶液の形態で使用する。
【0022】
式IIのモノヒドロキシ化合物のアルカリ金属水酸化物との反応は、好ましくは、50℃から250℃の温度で、1mbar(0.1kPa)から1bar(100kPa)で行われる。
【0023】
好ましくは、触媒を、モノヒドロキシ化合物100重量部当たり、0.1重量部から10重量部の量で、より好ましくは0.5重量部から7重量部の量で、使用する。上記の金属アルコラートの調製方法において、アルカリ金属水酸化物の量は、それに応じて選択される。
【0024】
触媒の存在下でのモノヒドロキシ化合物のアセチレンとのビニル化は、好ましくは120℃から220℃で行う。
【0025】
反応は、減圧又は昇圧下で、例えば0.1barから25bar(10kPaから2500kPa)の圧力で、特に1barから20bar(100kPaから2000kPa)の圧力で行ってよい。圧力は、アセチレン自体の圧力であってもよいし、アセチレンと不活性ガスの混合物の圧力であってもよい。
【0026】
モノヒドロキシ化合物の全量が反応する前に、第1ステップにおける反応を停止させる。
【0027】
好ましくは、70%から99%、より好ましくは90%から99%のモノヒドロキシ化合物が消費されたときに、反応を停止させる。モノヒドロキシ化合物の消費は、ガスクロマトグラフィにより測定してよい。
【0028】
反応は、温度を下げること及び/又は圧力を解放することにより、及び/又はアセチレンの供給を停止することにより、停止してよい。
【0029】
ステップa)で得られた生成物混合物は、式Iのモノビニルエーテル、変換されていない式IIのモノヒドロキシ化合物、及び触媒を含む。
【0030】
好ましくは、ステップa)で得られた生成物混合物は、100重量%の生成物混合物に対して、
55重量%から98.9重量%の式Iのモノビニルエーテル、
1重量%から35重量%の式IIのモノヒドロキシ化合物、及び
0.1重量%から10重量%の触媒
を含む。
【0031】
より好ましくは、ステップa)で得られた生成物混合物は、100重量%の生成物混合物に対して、
85重量%から97重量%の式Iのモノビニルエーテル、
2重量%から10重量%の式IIのモノヒドロキシ化合物、及び
1重量%から5重量%の触媒
を含む。
【0032】
プロセスステップa)の反応は、単独の反応器において、又は複数の連続した反応器、例えば一連の反応器(reactor battery)において、行ってよい。適した反応器としては、撹拌槽反応器、一連の撹拌槽反応器、流通管、気泡塔、及びループ型反応器が挙げられる。アセチレンは、好ましくは、(撹拌槽反応器の場合)撹拌機を通って、又はノズルを通って導入される。
【0033】
プロセスステップa)は、バッチプロセス、半連続プロセス、又は連続プロセスとして行ってよい。バッチプロセスにおいては、反応が開始する前に全ての出発物質を反応器に加える。半連続プロセスにおいては、反応中に少なくとも一種の出発物質を連続的に供給する。連続プロセスにおいては、全ての出発物質を反応器に連続的に供給し、全ての生成物を反応器から連続的に取り出す。
【0034】
好ましい実施形態において、プロセスステップa)は、全量のアルコールを反応器に加え、次いで、所望のアルコール転化率になるまで反応器にアセチレンを定常的に供給することによって、半連続的に行われる。
【0035】
プロセスステップb)について
【0036】
好ましくは、ステップa)で得られた生成物混合物を、事前のワークアップ(work-up)又は化合物の取り出しを行うことなく、ステップb)で使用する。
【0037】
プロセスステップb)において、式III
X-OC-
(式中、Xは、Rよりも少ない炭素原子を有する炭化水素基である)
の少なくとも1個のエステル基を有するエステルを、プロセスステップa)で得られた生成物混合物に加える。
【0038】
好ましくは、式III中のXは、メチル基又はエチル基である。
【0039】
より好ましくは、式III中のXは、メチル基である。
【0040】
好ましくは、エステルは、式IIIの1個から3個のエステル基を有する。
【0041】
より好ましくは、エステルは、式IIIの1個又は2個のエステル基を有する。
【0042】
好ましくは、エステルは、100g/molから500g/mol、特に150g/molから400g/molの分子量を有する化合物である。
【0043】
本発明の特に好ましい実施形態において、ステップb)で加えるエステルは、式VII
X-OC-Z
(式中、Xは上記の意味を有し、Zは6個から20個の炭素原子を有する炭化水素基を表す)
又は、式VIII
X-OC-CO-X
(式中、Xは上記の意味を有する)
のエステルである。
【0044】
好ましくは、式VII中のZは、12個から20個、特に14個から20個の炭素原子を有する炭化水素基を表す。式IIIのエステルの例は、脂肪酸のメチルエステル、例えば、C16又はC18脂肪酸のメチルエステル、又はこれらの混合物である。このような脂肪酸のメチルエステルは、例えばバイオディーゼルとして知られている。
【0045】
式VIIIの好ましいエステルは、シュウ酸のジメチルエステル(HC-OC-CO-CH)である。
【0046】
好ましくは、エステルを、ステップa)で得られた生成物混合物中の変換されていない式IIのモノヒドロキシ化合物100molに対して、80molから300mol、特に100molから200molの量で加える。
【0047】
ステップb)における反応は、エステル交換生成物と呼ばれる新規なエステルをもたらすエステル交換である。エステル交換生成物は、式IV
R-OC-
の少なくとも1個のエステル基を有する。
【0048】
さらに、エステル交換から式V
X-OH
(式中、R及びXは上記の意味、及び好ましい意味を有する)
のアルコールが得られる。
【0049】
式VIIの好ましいエステルの場合、得られるエステル交換生成物はR-OC-Zであり、アルコールはX-OHであり、これは好ましくはエタノール又はメタノール、特にメタノールである。
【0050】
式VIIIの好ましいエステルの場合、得られるエステル交換生成物は、R-OC-CO-R若しくはR-OC-CO-X又はこれらの混合物であり、アルコールはX-OHであり、これは好ましくはエタノール又はメタノール、特にメタノールである。
【0051】
ステップb)におけるエステル交換は、好ましくは20℃から100℃、特に50℃から90℃の温度で行う。
【0052】
好ましくは、生成するアルコール、特にメタノールを、反応中に除去する。アルコールの除去を容易にするために、反応混合物を不活性ガス、例えば窒素でストリッピングしてもよい。
【0053】
ステップa)で使用される触媒は、ステップb)におけるエステル交換のための触媒としても働く。ステップb)においてさらなる触媒は不要であり、好ましくは、さらなる触媒は加えない。
【0054】
プロセスステップb)の反応は、単独の反応器において、又は複数の連続した反応器、例えば一連の反応器(reactor battery)において行ってよい。適した反応器としては、撹拌槽反応器、一連の撹拌槽反応器、流通管、気泡塔、及びループ型反応器が挙げられる。
【0055】
プロセスステップb)は、バッチプロセス、半連続プロセス、又は連続プロセスとして行ってよい。
【0056】
好ましい実施形態において、プロセスステップb)は、バッチプロセスとして行われる。
【0057】
プロセスステップc)について
【0058】
プロセスステップc)において、プロセスステップb)の後に得られた生成物混合物からモノビニルエーテルを単離し、その後、任意選択的に、蒸留によるモノビニルエーテルの精製を行う。
【0059】
ステップb)の終わりに得られる生成物混合物は、式Iのモノビニルエーテルと、式IVの少なくとも1個のエステル基を有するエステル交換生成物と、任意選択的に、多少の変換されていない式IIのモノヒドロキシ化合物と、任意選択的に、多少の式IIIのエステル基を有する変換されていないエステルとを含む。アルコールX-OHは、好ましくは、ステップb)における反応の間に既に完全に除去される。
【0060】
好ましくは、モノビニルエーテルを蒸留によって生成物混合物から分離する。エステル交換生成物及び変換されていないエステルは、モノビニルエーテルよりも顕著に高い沸点を有するため、モノビニルエーテルは、任意の蒸留法、例えば薄膜蒸発器における薄膜蒸留により、生成物混合物から容易に分離することができる。得られるモノビニルエーテルは、少量の変換されていないモノヒドロキシ化合物を依然として含むことがあるが、これは、必要に応じて、分留によりさらに減少させることができる。
【0061】
プロセスステップb)及びc)は、組み合わせて、1個の反応器、それぞれのカラムで行ってもよい。このようなプロセスステップb)とc)の組み合わせは、好ましくは、エステル交換が1個のカラムで行われ、同時にビニルエーテルが蒸留によりカラムから取り出される、反応蒸留であろう。
【0062】
ステップc)におけるビニルエーテルの除去及びビニルエーテルのさらなる精製、並びに反応蒸留によるステップb)とc)の組み合わせは、バッチプロセス又は連続プロセスとして行ってよい。好ましい実施形態において、プロセスステップc)は、バッチプロセスとして行う。
【0063】
最終的に得られるモノビニルエーテルは、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.7重量%未満、最も好ましくは0.5重量%未満の変換されていないアルコールを含む。
【0064】
本発明の方法は、モノビニルエーテルを製造する簡単で経済的な方法である。モノビニルエーテルは高収率で得られる。例えばUS7670464において記載されるような、生成物混合物からモノビニルエーテルを分離するための複雑な蒸留手順は回避される。
【実施例
【0065】
KOHの存在下でシクロヘキサノール(CH)をアセチレンとビニル化することにより、90重量%のシクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)、6重量%のシクロヘキサノール(CH)、及び4重量%のCHのカリウム塩を含有する粗生成物混合物が得られた。
【0066】
800gのこの粗生成物混合物に、C16からC18脂肪酸のメチルエステルである300gのバイオディーゼルを75℃で3時間にわたって加え、同時に20L/hの窒素を溶液に常にバブリングして生成したメタノールを除去した。さらなる撹拌及び2時間の窒素ストリッピングの後、86重量%のCHVEと、1重量%のCHと、エステル交換生成物(CHとC16からC18脂肪酸のエステル)を含む13重量%の高沸点生成物とを含む、1025gの生成物混合物が得られた。
【0067】
生成物混合物の組成は、ガスクロマトグラフィ(GC)により、対応するピークの面積百分率を測定することによって決定した。
【0068】
887gのこの生成物混合物を0.046mの薄膜蒸発器において、2.5mbar(0.25kPa)及び105~125℃で蒸留した。620gの淡黄色生成物を、薄膜蒸発器の頂部から蒸留物として取り出した。蒸留物は、98.2%のCHVE、及び0.3%のCHを含んでいた。ここでも、蒸留物の組成は、上記のようにGCにより決定した。
【0069】
高沸点化合物を、薄膜蒸発器の底部から取り出した。
【0070】
その後、30cmの充填カラムにおいて、100mbar(10kPa)、浴温100℃で、得られたCHVEとCHの混合物を分留し、99.5重量%のCHVE及び0.4重量%のCHを含む575gの無色液体を得た。
本開示の態様として、以下のものを挙げることができる。
[1]
式I
R-O-CH=CH 2
(式中、Rは、少なくとも3個の炭素原子を有する有機基を表す)
のモノビニルエーテルを製造する方法であって、
a)式II
R-OH
(式中、Rは上記の意味を有する)
のモノヒドロキシ化合物を触媒の存在下でアセチレンと反応させて、モノビニルエーテル、変換されていないモノヒドロキシ化合物、及び触媒を含む生成物混合物を得ることと、 b)式III
X-O 2 C-
(式中、Xは、Rよりも少ない炭素原子を有する炭化水素基である)
の少なくとも1個のエステル基を有するエステルを、プロセスステップa)で得られた生成物混合物に加え、残ったモノヒドロキシ化合物R-OHを触媒の存在下でエステルと反応させ、式IV
R-O 2 C-
の少なくとも1個のエステル基を有するエステル交換生成物、及び式V
X-OH
のアルコール
(式中、R及びXは上記の意味を有する)
を得ることと、
c)プロセスステップb)の後に得られた生成物混合物からモノビニルエーテルを単離し、その後、任意選択的に蒸留によるモノビニルエーテルの精製を行うことと、を含む、方法。
[2]
式I中のRが、3個から10個の炭素原子を有する非芳香族炭化水素基を表す、態様1に記載の方法。
[3]
式I中のRがシクロヘキシル基である、態様1又は2に記載の方法。
[4]
触媒が、式VI
RO - +
(式中、Rは上記の意味を有し、M + は金属カチオンを表す)
のアルコラートである、態様1~3のいずれか一つに記載の方法。
[5]
触媒が、モノヒドロキシ化合物100重量部当たり、0.1重量部から10重量部の量で使用される、態様1~4のいずれか一つに記載の方法。
[6]
ステップa)で得られた生成物混合物が、100重量%の生成物混合物に対して、
55重量%から98.9重量%の式Iのモノビニルエーテル、
1重量%から35重量%の式IIのモノヒドロキシ化合物、及び
0.1重量%から10重量%の触媒
を含む、態様1~5のいずれか一つに記載の方法。
[7]
式III中のXが、メチル基又はエチル基を表す、態様1~6のいずれか一つに記載の方法。
[8]
ステップb)で加えるエステルが、式IIIの1個又は2個のエステル基を有する、態様1~7のいずれか一つに記載の方法。
[9]
ステップb)で加えるエステルが、式VII
X-O 2 C-Z
(式中、Xは上記の意味を有し、Zは6個から20個の炭素原子を有する炭化水素基を表す)
のエステル、又は、式VIII
X-O 2 C-CO 2 -X
(式中、Xは上記の意味を有する)
のエステルである、態様1~8のいずれか一つに記載の方法。
[10]
ステップb)において、生成物混合物中の式IIのモノヒドロキシ化合物100重量部当たり、100重量部から200重量部の量で、エステルを加える、態様1~8のいずれか一つに記載の方法。