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特許7434311合成波データの生成方法、合成波データ生成プログラム、記憶媒体、合成波データ生成装置、及び波形データの生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】合成波データの生成方法、合成波データ生成プログラム、記憶媒体、合成波データ生成装置、及び波形データの生成方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/02 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
G10K15/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021522903
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(86)【国際出願番号】 JP2020021369
(87)【国際公開番号】W WO2020241832
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2019102317
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 博次
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-343360(JP,A)
【文献】特開平10-307587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 5/00- 7/02
G10H 1/00- 7/12
G10K 15/00-15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに周波数の異なる複数の音データ片を合成して得た1の合成波を示すデータ系列を表す合成波データ片を複数生成する合成波データの生成方法であって、
前記1の合成波の時間の長さの基準となる基準時間長、サンプリング間隔時間、周波数変動率を取得する第1のステップと、
前記基準時間長、前記サンプリング間隔時間、前記周波数変動率に基づいて前記1の合成波を示すデータ系列における総サンプル数を算出する第2のステップと、
前記互いに周波数の異なる複数の音データ片各々について、前記総サンプル数に基づいて前記サンプリング間隔時間に対する回転角を算出する第3のステップと、
前記サンプリング間隔時間毎に、前記回転角に基づいて算出される前記互いに周波数の異なる複数の音データ片の値の各々を合成した合成値を、前記総サンプル数分算出する第4のステップと、
前記総サンプル数分の前記サンプリング間隔時間毎の前記合成値の系列を前記1の合成波データ片のデータ系列として生成する第5のステップと、
前記第2のステップ、前記第3のステップ、前記第4のステップ及び前記第5のステップによる一連の処理を1回実行する度に前記周波数変動率を変更しつつ、前記一連の処理を所定の回数実施することで複数の前記合成波データ片の各々を示すデータ系列を生成する第6のステップと、
を含むことを特徴とする合成波データの生成方法。
【請求項2】
前記第1のステップでは、前記互いに周波数の異なる複数の音データ片の各々の前記基準時間長内での振動数(整数)を夫々取得し、
前記基準時間長、及び前記互いに周波数の異なる複数の音データ片の各々が前記サンプリング間隔時間に基づいて決定された値であることを特徴とする請求項1に記載の合成波データの生成方法。
【請求項3】
前記合成波データ片各々の前記データ系列中における先頭のサンプル値と、最後尾のサンプル値と、が同一値となるように、前記基準時間長及び前記複数の音データ片各々の前記振動数の値が決定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の合成波データの生成方法。
【請求項4】
前記複数の音データ片は互いに周波数が異なる第1~第n(nは2以上の整数)の正弦波を夫々表すn個の音データ片であり、
前記第4のステップでは、
数の前記合成波データ片の各々毎に、以下の数式、
W1=V1・sin(2πt・r1+α1)
W2=V2・sin(2πt・r2+α2)
W3=V3・sin(2πt・r3+α3)



Wn=Vn・sin(2πt・rn+αn)
W1~Wn:前記第1~第nの正弦波各々のサンプル値
V1~Vn:前記第1~第nの正弦波各々の振幅値
t:0~前記総サンプル数までの整数
r1~rn:前記第1~第nの正弦波に夫々対応した回転角
α1~αn:0°又は180°のシフト回転角
により求めたサンプル値W1~Wnを合成することで、前記合成波データ片各々の前記データ系列を生成することを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載の合成波データの生成方法。
【請求項5】
前記シフト回転角α1~αnのうちの少なくとも1つのシフト回転角が0°であり、前記少なくとも1つのシフト回転角を除く他のシフト回転角が180°であることを特徴とする請求項4に記載の合成波データの生成方法。
【請求項6】
互いに周波数の異なる複数の音データ片を合成して得た1の合成波を示すデータ系列を表す合成波データ片を複数生成する合成波データ生成装置の制御部が実行する合成波データ生成プログラムであって、
前記1の合成波の時間の長さの基準となる基準時間長、サンプリング間隔時間、周波数変動率を取得する第1のステップと、
前記基準時間長、前記サンプリング間隔時間、前記周波数変動率に基づいて前記1の合成波を示すデータ系列における総サンプル数を算出する第2のステップと、
前記互いに周波数の異なる複数の音データ片各々について、前記総サンプル数に基づいて前記サンプリング間隔時間に対する回転角を算出する第3のステップと、
前記サンプリング間隔時間毎に、前記回転角に基づいて算出される前記互いに周波数の異なる複数の音データ片の値の各々を合成した合成値を、前記総サンプル数分算出する第4のステップと、
前記総サンプル数分の前記サンプリング間隔時間毎の前記合成値の系列を前記1の合成波データ片のデータ系列として生成する第5のステップと、
前記第2のステップ、前記第3のステップ、前記第4のステップ及び前記第5のステップによる一連の処理を1回実行する度に前記周波数変動率を変更しつつ、前記一連の処理を所定の回数実施することで複数の前記合成波データ片の各々を示すデータ系列を生成する第6のステップと、
を含むことを特徴とする合成波データ生成プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のプログラムを記憶したことを特徴とする記憶媒体。
【請求項8】
互いに周波数の異なる複数の音データ片を合成して得た1の合成波を示すデータ系列を表す合成波データ片を複数生成する合成波データ生成装置であって、
前記1の合成波の時間の長さの基準となる基準時間長、サンプリング間隔時間、周波数変動率を取得する第1のステップと、
前記基準時間長、前記サンプリング間隔時間、前記周波数変動率に基づいて前記1の合成波を示すデータ系列における総サンプル数を算出する第2のステップと、
前記互いに周波数の異なる複数の音データ片各々について、前記総サンプル数に基づいて前記サンプリング間隔時間に対する回転角を算出する第3のステップと、
前記サンプリング間隔時間毎に、前記回転角に基づいて算出される前記互いに周波数の異なる複数の音データ片の値の各々を合成した合成値を、前記総サンプル数分算出する第4のステップと、
前記総サンプル数分の前記サンプリング間隔時間毎の前記合成値の系列を前記1の合成波データ片のデータ系列として生成する第5のステップと、
前記第2のステップ、前記第3のステップ、前記第4のステップ及び前記第5のステップによる一連の処理を1回実行する度に前記周波数変動率を変更しつつ、前記一連の処理を所定の回数実施することで複数の前記合成波データ片の各々を示すデータ系列を生成する第6のステップと、
を実行する制御部を有することを特徴とする合成波データ生成装置。
【請求項9】
1の波形を表すデータ系列を示す波形データ片を複数生成する波形データの生成方法であって、
前記1の波形の時間の長さの基準となる基準時間長、サンプリング間隔時間、周波数変動率を取得する第1のステップと、
前記基準時間長、前記サンプリング間隔時間、前記周波数変動率に基づいて前記1の波形を示すデータ系列における総サンプル数を算出する第2のステップと、
前記1の波形について、前記総サンプル数に基づいて前記サンプリング間隔時間に対する回転角を算出する第3のステップと、
前記サンプリング間隔時間毎に、前記回転角に基づいて算出される前記1の波形の値を、前記総サンプル数分算出する第4のステップと、
前記総サンプル数分の前記サンプリング間隔時間毎の前記1の波形の値の系列を前記1の波形データ片のデータ系列として生成する第5のステップと、
前記第2のステップ、前記第3のステップ、前記第4のステップ及び前記第5のステップによる一連の処理を1回実行する度に前記周波数変動率を変更しつつ、前記一連の処理を所定の回数実施することで複数の前記波形データ片の各々を示すデータ系列を生成する第6のステップと、
を含むことを特徴とする波形データの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成波データ、特に複数の合成波データ片を生成する合成波データの生成方法、合成波データ生成プログラム、当該プロログラムが記憶されている記憶媒体、合成波データ生成装置、及び波形データの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータで走行を行う電気自動車や電気ハイブリッド車として、エンジン車と比べて低速走行時の騒音が極めて小さいことから、自車両の接近を車両外部に知らせる音(以下、車両接近音と称する)を発生する車両接近通報装置を搭載したものが製品化されている。
【0003】
車両接近通報装置は、車両が所定速度よりも低速で走行している際に、その走行速度に応じて当該車両接近音の音色を変化させる。
【0004】
このような車両接近通報装置として、予め車両の走行速度に対応付けして、互いに音色が異なる複数の音色生成用データが予め格納されているメモリを備えたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。音色生成用データとしては、例えば実際に走行している車両のタイヤノイズやエンジン音を合成音で表すものが用いられる。
【0005】
車両接近通報装置では、先ず、当該メモリから、車両の現在の走行速度に対応した合成音を表す音色生成用データ片を読み出す。そして、車両接近通報装置は、当該メモリから順次読み出された当該音色生成用データ片同士を連結したものをアナログの音声信号に変換し、これをスピーカによって車両外部に音響出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-207390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した車両接近通報装置のような、メモリから読み出された、合成音を表すデータ片(音色生成用データ)に基づき車両接近音を発生させる発音装置では、データ片同士の連結部で、車両接近音にノイズ音が重畳する場合があった。
【0008】
そこで、本発明は、ノイズ音の発生を抑制することが可能な合成波データの生成方法、合成波データ生成プログラム、記憶媒体、合成波データ生成装置、及び波形データの生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る合成波データの生成方法は、互いに周波数の異なる複数の音データ片を合成して得た1の合成波を示すデータ系列を表す合成波データ片を複数生成する合成波データの生成方法であって、前記1の合成波の時間の長さの基準となる基準時間長、サンプリング間隔時間、周波数変動率を取得する第1のステップと、前記基準時間長、前記サンプリング間隔時間、前記周波数変動率に基づいて前記1の合成波を示すデータ系列における総サンプル数を算出する第2のステップと、前記互いに周波数の異なる複数の音データ片各々について、前記総サンプル数に基づいて前記サンプリング間隔時間に対する回転角を算出する第3のステップと、前記サンプリング間隔時間毎に、前記回転角に基づいて算出される前記互いに周波数の異なる複数の音データ片の値の各々を合成した合成値を、前記総サンプル数分算出する第4のステップと、前記総サンプル数分の前記サンプリング時間間隔毎の前記合成値の系列を前記1の合成波データ片のデータ系列として生成する第5のステップと、前記第2のステップ、前記第3のステップ、前記第4のステップ及び前記第5のステップによる一連の処理を1回実行する度に前記周波数変動率を変更しつつ、前記一連の処理を所定の回数実施することで複数の前記合成波データ片の各々を示すデータ系列を生成する第6のステップと、を含む。
【0010】
本発明に係る合成波データ生成プログラムは、互いに周波数の異なる複数の音データ片を合成して得た1の合成波を示すデータ系列を表す合成波データ片を複数生成する合成波データ生成装置の制御部が実行する合成波データ生成プログラムであって、前記1の合成波の時間の長さの基準となる基準時間長、サンプリング間隔時間、周波数変動率を取得する第1のステップと、前記基準時間長、前記サンプリング間隔時間、前記周波数変動率に基づいて前記1の合成波を示すデータ系列における総サンプル数を算出する第2のステップと、前記互いに周波数の異なる複数の音データ片各々について、前記総サンプル数に基づいて前記サンプリング間隔時間に対する回転角を算出する第3のステップと、前記サンプリング間隔時間毎に、前記回転角に基づいて算出される前記互いに周波数の異なる複数の音データ片の値の各々を合成した合成値を、前記総サンプル数分算出する第4のステップと、前記総サンプル数分の前記サンプリング時間間隔毎の前記合成値の系列を前記1の合成波データ片のデータ系列として生成する第5のステップと、前記第2のステップ、前記第3のステップ、前記第4のステップ及び前記第5のステップによる一連の処理を1回実行する度に前記周波数変動率を変更しつつ、前記一連の処理を所定の回数実施することで複数の前記合成波データ片の各々を示すデータ系列を生成する第6のステップと、を含む。
【0011】
本発明に係る記憶媒体は、互いに周波数の異なる複数の音データ片を合成して得た1の合成波を示すデータ系列を表す合成波データ片を複数生成する合成波データ生成装置の制御部が実行する合成波データ生成プログラムが記憶されている記憶媒体であって、前記合成波データ生成プログラムは、前記1の合成波の時間の長さの基準となる基準時間長、サンプリング間隔時間、周波数変動率を取得する第1のステップと、前記基準時間長、前記サンプリング間隔時間、前記周波数変動率に基づいて前記1の合成波を示すデータ系列における総サンプル数を算出する第2のステップと、前記互いに周波数の異なる複数の音データ片各々について、前記総サンプル数に基づいて前記サンプリング間隔時間に対する回転角を算出する第3のステップと、前記サンプリング間隔時間毎に、前記回転角に基づいて算出される前記互いに周波数の異なる複数の音データ片の値の各々を合成した合成値を、前記総サンプル数分算出する第4のステップと、前記総サンプル数分の前記サンプリング時間間隔毎の前記合成値の系列を前記1の合成波データ片のデータ系列として生成する
第5のステップと、前記第2のステップ、前記第3のステップ、前記第4のステップ及び前記第5のステップによる一連の処理を1回実行する度に前記周波数変動率を変更しつつ、前記一連の処理を所定の回数実施することで複数の前記合成波データ片の各々を示すデータ系列を生成する第6のステップと、を含む。
【0012】
本発明に係る合成波データ生成装置は、互いに周波数の異なる複数の音データ片を合成して得た1の合成波を示すデータ系列を表す合成波データ片を複数生成する合成波データ生成装置であって、前記1の合成波の時間の長さの基準となる基準時間長、サンプリング間隔時間、周波数変動率を取得する第1のステップと、前記基準時間長、前記サンプリング間隔時間、前記周波数変動率に基づいて前記1の合成波を示すデータ系列における総サンプル数を算出する第2のステップと、前記互いに周波数の異なる複数の音データ片各々について、前記総サンプル数に基づいて前記サンプリング間隔時間に対する回転角を算出する第3のステップと、前記サンプリング間隔時間毎に、前記回転角に基づいて算出される前記互いに周波数の異なる複数の音データ片の値の各々を合成した合成値を、前記総サンプル数分算出する第4のステップと、前記総サンプル数分の前記サンプリング時間間隔毎の前記合成値の系列を前記1の合成波データ片のデータ系列として生成する第5のステップと、前記第2のステップ、前記第3のステップ、前記第4のステップ及び前記第5のステップによる一連の処理を1回実行する度に前記周波数変動率を変更しつつ、前記一連の処理を所定の回数実施することで複数の前記合成波データ片の各々を示すデータ系列を生成する第6のステップと、を実行する制御部を有する。
【0013】
本発明に係る波形データの生成方法は、1の波形を表すデータ系列を示す波形データ片を複数生成する波形データの生成方法であって、前記1の波形の時間の長さの基準となる基準時間長、サンプリング間隔時間、周波数変動率を取得する第1のステップと、前記基準時間長、前記サンプリング間隔時間、前記周波数変動率に基づいて前記1の波形を示すデータ系列における総サンプル数を算出する第2のステップと、前記1の波形について、前記総サンプル数に基づいて前記サンプリング間隔時間に対する回転角を算出する第3のステップと、前記サンプリング間隔時間毎に、前記回転角に基づいて算出される前記1の波形の値を、前記総サンプル数分算出する第4のステップと、前記総サンプル数分の前記サンプリング時間間隔毎の前記1の波形の値の系列を前記1の波形データ片のデータ系列として生成する第5のステップと、前記第2のステップ、前記第3のステップ、前記第4のステップ及び前記第5のステップによる一連の処理を1回実行する度に前記周波数変動率を変更しつつ、前記一連の処理を所定の回数実施することで複数の前記波形データ片の各々を示すデータ系列を生成する第6のステップと、を含むことを特徴とする波形データの生成方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、互いに周波数の異なる複数の音データ片を合成した合成波データ片にて表されるデータ系列として、先頭のサンプル値と、最後尾のサンプル値と、が同一値になるものを生成することが可能となる。
【0015】
かかる合成波データ片によれば、合成波データ片同士を連結して可聴音を発生させる場合において、当該連結部での急激な音のレベル変化を抑えることができるので、不要なノイズ音を抑制した、違和感の無い良好な可聴音を発生することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】合成波データAF1~AF(S)を生成する合成波データ生成装置200の構成を示すブロック図である。
図2】合成波データAF1~AF(S)に基づく可聴音の周波数の高低関係を表す図である。
図3】合成波データAF1~AF(S)の各々を表すサンプル値の系列Q0~Q(N)の一例を表す図である。
図4】合成波データ生成プログラムにしたがって制御部202が実行する合成波データ生成処理手順の一例を表すフローチャートである。
図5】合成波データ生成プログラムにしたがって制御部202が実行する合成波データ生成処理手順の一例を表すフローチャートである。
図6】車両CRに搭載されている車両接近通報システム100の構成を示すブロック図である。
図7】接近通報装置12の構成を示すブロック図である。
図8】音声メモリ121のメモリマップの一例を示す図である。
図9】速度信号VSに応じて音声メモリ121から読み出される合成波データAFの系列を含む合成音データ信号SEの形態の一例を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る合成波データの生成方法にしたがって、図2に示すように夫々が異なる周波数の可聴音を表す合成波データAF1~AF(S)(Sは2以上の整数)を生成する合成波データ生成装置200の構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、合成波データ生成装置200は、プログラムメモリ201及び制御部202を含む。
【0020】
プログラムメモリ201には、合成波データAF1~AF(S)を生成する為の合成波データ生成プログラムが格納されている。尚、プログラムメモリ201は、例えばNAND又はNOR型のフラッシュメモリ又はROMのような不揮発性の半導体メモリ、或いは、磁気記録式のハードディスク等の記憶媒体からなる。
【0021】
制御部202は、プログラムメモリ201に格納されている合成波データ生成プログラムを実行する。これにより、制御部202は、夫々が、図3に示すような1データ片分の長さの可聴音をサンプリング間隔時間Tのサンプル値Q0~Q(N)(Nは2以上の整数)のデータ系列で表す合成波データAF1~AF(S)を生成する。
【0022】
図4及び図5は、合成波データ生成プログラムにしたがって制御部202が実行する合成波データ生成処理の手順の一例を表すフローチャートである。
【0023】
尚、かかる合成波データ生成プログラムによって生成される合成波データAF1~AF(S)の各々は、周波数が異なる第1~第n(nは2以上の整数)の正弦波を合成した合成波を表すものである。つまり、1つの合成波データAFは、第1~第nの正弦波を表す第1~第nの音データ片が合成されたものである。この際、第1~第nの正弦波の全てが可聴帯域の周波数を有するものである必要はなく、一部の正弦波が可聴帯域外の周波数を有するものであっても良い。
【0024】
図4において、制御部202は、まず、以下の各種パラメータの夫々を取得する(ステップS11)。
【0025】
合成波データAFの総数S
サンプリング間隔時間T[秒]
1音データ片の基準時間長L[秒]
合成波データAF毎の周波数変動率G[%]
第1~第nの正弦波各々の基準時間長L内での振動数F1~Fn
第1~第nの正弦波各々の振幅V1~Vn
例えば可聴音として車両接近音を想定し、0~50[km/h]の速度範囲内で0.2[km/h]刻みで車両接近音の周波数を変化させるには、50×(1/0.2)+1=251個の合成波データAFが必要となる。この際、制御部202は、合成波データAFの総数Sとして「251」を取得する。
【0026】
また、車両接近音のサンプリング周波数を例えば48[ksps]とする場合、制御部202は、サンプリング間隔時間Tとして1/48000秒を取得する。
【0027】
また、制御部202は、1音データ片による音の再生時間の基準となる基準時間長Lとして、例えば1/48000秒のサンプリング間隔時間Tの整数倍の時間である例えば0.48秒を取得する。
【0028】
また、制御部202は、例えば0.2[km/h]刻みで車両接近音の周波数を上昇させる場合、0.2[km/h]分の速度上昇期間内での周波数の変動率を指定する周波数変動率Gとして0.5%を取得する。
【0029】
また、制御部202は、合成される第1~第nの正弦波の各々毎に、その正弦波に要求される周波数に対応した、基準時間長L内での振動数(整数)を表す振動数F1~Fnを夫々取得する。例えば、第1の正弦波に要求される周波数が400[Hz]、基準期間長Lが例えば0.48秒である場合には、0.48秒内での振動数F1は、0.48秒*400[Hz]の結果である192回となる。
【0030】
特に、ステップS11では、合成波データAF1~AF(S)の全てに対して、図3に示すサンプル値Q0~Q(N)の系列のうちの先頭のサンプル値Q0と、最後尾のサンプル値Q(N)と、が同一値となるように、基準時間長L及び振動数F1~Fnの各値が決定されている。
【0031】
尚、上記した各種のパラメータについては、制御部202が、ROM(Read Only Memory)等に格納されているものを取り込んでも良いし、或いは適宜必要となるパラメータの入力を受けても良い。
【0032】
上記したステップS11の実行後、制御部202は、合成波データAF1~AF(S)のうちの1つを指定する番号eとして、初期値「1」を設定する(ステップS12)。
【0033】
次に、制御部202は、合成波データAF(e)内での第1~第nの正弦波の周波数変動係数Cを、以下の数式、
C=(1+G/100)^(e-1)
によって算出する(ステップS13)。
【0034】
次に、制御部202は、図3に示すような1音データ片で表されるデータ系列中の総サンプル数(N+1)のうちのN(Nは2以上の整数)を、小数点以下を四捨五入する以下の関数式、
N=Round[L/(T・C)]
によって算出する(ステップS14)。
【0035】
尚、ステップS14において「N」を算出するにあたり、[L/(T・C)]の結果の小数点以下を切り捨てる、或いは切り上げるようにして良い。
【0036】
次に、制御部202は、第1~第nの正弦波各々の1サンプルあたりの回転角r1~rnを、以下の数式、
第1の正弦波の回転角r1=F1/N
第2の正弦波の回転角r2=F2/N
第3の正弦波の回転角r3=F3/N



第nの正弦波の回転角rn=Fn/N
によって算出する(ステップS15)。
【0037】
次に、制御部202は、1音データ片内のサンプル値によるデータ系列中から1つのサンプルを指定する番号tとして、初期値「0」を設定する(ステップS16)。
【0038】
次に、制御部202は、第1~第nの正弦波各々の1音データ片内でのt番目のサンプル値W1~Wnを、以下の数式、
第1の正弦波のサンプル値W1=V1・sin(2πt・r1+α1)
第2の正弦波のサンプル値W2=V2・sin(2πt・r2+α2)
第3の正弦波のサンプル値W3=V3・sin(2πt・r3+α3)



第nの正弦波のサンプル値Wn=Vn・sin(2πt・rn+αn)
α1、α2、α3、・・・、αnは0°又は180°のシフト回転角
によって算出する(ステップS17)。
【0039】
次に、制御部202は、ステップS17で算出した第1~第nの正弦波各々のt番目のサンプル値W1~Wnを合成、つまりW1~Wnを合計した結果をサンプル値Q(t)として求め、これを内蔵レジスタ(図示せず)に保持する(ステップS18)。
【0040】
次に、制御部202は、サンプル値を指定する番号tがN以上であるか否かを判定する(ステップS19)。
【0041】
ステップS19において、番号tがN以上ではないと判定した場合、制御部202は、番号tに「1」を加算したものを新たな番号tに設定する(ステップS20)。ステップS20の実行後、制御部202は、上記したステップS17に戻り、前述したステップS17及びS18を再び実行する。
【0042】
つまり、制御部202は、番号tがNとなるまでステップS17及びS18を繰り返し実行することで、第1~第nの正弦波を合成した合成波を表すサンプル値Q0~Q(N)の系列を生成する。
【0043】
ここで、ステップS19において、番号tがN以上であると判定した場合、制御部202は、上記したサンプル値Q0~Q(N)の系列を、合成波データAF(e)のサンプル値Q0~Q(N)として内蔵レジスタに保持する(ステップS21)。
【0044】
ステップS21の実行後、制御部202は、合成波データAF1~AF(S)のうちの1つを指定する番号eが、合成波データAFの総数S以上であるか否かを判定する(ステップS22)。かかるステップS22において、番号eが合成波データAFの総数S以上ではないと判定した場合、制御部202は、番号eに「1」を加算したものを新たな番号eに設定する(ステップS23)。ステップS23の実行後、制御部202は、上記したステップS13に戻り、前述したステップS13~S21による一連の処理を再び実行する。
【0045】
このように、制御部202は、番号eが合成波データAFの総数S以上となるまでステップS13~S21による一連の処理を実行することで、夫々周波数が異なる合成波を表すサンプル値Q0~Q(N)のデータ系列を含む合成波データAF1~AF(S)を生成する。各合成波データAFで表される合成波の周波数は、周波数変動率Gが正の値であるため、図2に示すようにAF1、AF2、AF3、・・・、AF(S)の順に高くなって行く。この際、合成波の周波数が高いほど、高い音が聴感される。
【0046】
つまり、制御部202は、先ず、基準時間長L、サンプリング間隔時間T、周波数変動率G、第1~第nの正弦波各々の振動数F1~Fnを指定する情報を取得する(S11)。次に、周波数変動率Gに基づいて合成波データAF毎に算出した周波数変動係数Cに基づき、当該周波数変動係数Cが大きいほど少なくなる総サンプル数(N+1)を求める(S14)。そして、かかる総サンプル数(N+1)と、振動数F1~Fnとに基づき、第1~第nの正弦波に夫々対応した回転角r1~rnを合成波データAF毎に算出する(S15)。
【0047】
次に、合成波データAF毎に、回転角r1~rnに基づき各正弦波の位相を回転して得られたn個の値に、夫々振幅V1~Vnを掛けあわせることでサンプル値W1~Wnを求める(S17)。次に、各合成波データAFについて、サンプリング間隔時間T毎に回転角r1~rnに基づいて算出したサンプル値W1~Wnの各々を合成した合成値をサンプル値Qとし、これを総サンプル数(N+1)の分求める(S18~S20)。ここで、総サンプル数(N+1)個分のサンプル値Q0~Q(N)の系列を、合成波データAFのデータ系列として得る。(S21)。
【0048】
これにより、各合成波データAFのデータ系列として、先頭のサンプル値Q0と、最後尾のサンプル値Q(N)と、を共に同一位相のゼロレベルにしたものを生成することが可能となる。
【0049】
特に、1音データ片で表される音の長さの基準である基準時間長L内での第1~第nの正弦波の振動数F1~Fnを全て整数とし、この基準時間長Lをサンプリング時間間隔Tの整数倍として、これら基準時間長L及び振動数F1~Fnを決定することで、各合成波データAFのデータ系列内の先頭のサンプル値Q0及び最後尾のサンプル値Q(N)を同一値にできる。
【0050】
よって、このように生成された合成波データAF同士を連結して可聴音を発生させる場合において、当該連結部での急激な音のレベル変化を抑えることができるので、不要なノイズ音を抑制した、違和感の無い良好な可聴音を発生することが可能となる。
【0051】
ところで、上記した合成波データ生成処理によると、各合成波データAF内で合成される第1~第nの正弦波各々の振動数がF1~Fnに固定されている。よって、表現する可聴音の周波数が高くなるほど、合成波データAF内での総サンプル数が少なくなり、その分だけ合成波データAFで表される音の長さも短くなる。すなわち、合成波データAF1~AF(S)各々で表される音の長さは、例えば合成波データAF1が最大(基準時間長L)であり、AF2、AF3、・・・、AF(S)の順に徐々に短くなって行く。
【0052】
尚、上記実施例では、各合成波データAF内において、全ての正弦波の先頭のサンプルを回転角0°から始めているが、第1~第nの正弦波のうちの一部の正弦波において回転角180°から始めても同様に合成した波形がゼロになる。例えば、第1~第nの正弦波のうちの奇数番目の正弦波各々の先頭のサンプル値を回転角0°から開始させ、偶数番目の正弦波各々の先頭のサンプル値を回転角180°から開始させる。この際、ステップS17において実行する数式のうちの奇数番のシフト回転角α1、α3、α5、・・・を0°、偶数番のシフト回転角α2、α4、α6、・・・を180°とする。要するに、シフト回転角α1~αnのうちの少なくとも1つのシフト回転角を0°とし、その他のシフト回転角を180°とする。
【0053】
このように、先頭のサンプル値を回転角180°から開始させた正弦波と、先頭のサンプル値を回転角0°から開始させた正弦波とを混在させることで、一部のサンプルタイミングでサンプル値が過大な値になることを防ぐことができる。上述の例では奇数と偶数とでシフト回転角を異ならせる例を示したが、シフト回転角の組み合わせは当然これに限られない。
【0054】
また、上記実施例では、ステップS13~S21による一連の処理を繰り返し実行することで、AF1、AF2、AF3、・・・、AF(S)の順に正弦波の周波数が高くなる合成波データAF1~AF(S)を生成している。しかしながら、例えば周波数変動率G を負の値とすることにより、AF1、AF2、AF3、・・・、AF(S)の順に正弦波の周波数が低くなる合成波データAF1~AF(S)を生成しても良い。
【0055】
要するに、互いに周波数の異なる複数の音データ片(第1~第nの正弦波)を合成して得た1の合成波を示すデータ系列[Q0~Q(N)]を表す合成波データ片(AF)を以下の第1~第6のステップの処理によって複数[AF1~AF(S)]生成するものであれば良い。
【0056】
すなわち、第1のステップ(S11)では、1の合成波の時間の長さの基準となる基準時間長(L)、サンプリング間隔時間(T)、周波数変動率(G)を取得する。第2のステップ(S14)では、これら基準時間長、サンプリング間隔時間、周波数変動率に基づいて1の合成波を示すデータ系列における総サンプル数[(N+1)]を算出する。第3のステップ(S15)では、互いに周波数の異なる複数の音データ片(例えば第1~第nの正弦波)各々について、上記した総サンプル数に基づきサンプリング間隔時間に対する回転角(r1~rn)を算出する。第4のステップ(S17、S18)では、サンプリング間隔時間毎に、上記した回転角に基づいて算出される、互いに周波数の異なる複数(n個)の音データ片の値の各々(W1~Wn)を合成した合成値(Q)を、総サンプル数分算出する。第5のステップ(S21)では、総サンプル数分のサンプリング時間間隔毎の上記合成値の系列を1の合成波データ片(AF)のデータ系列として生成する。
【0057】
そして、第6のステップ(S13~S23)では、上記した第2~第5のステップによる一連の処理を1回実行する度に周波数変動率を変更(S23、S13)しつつ、当該一連の処理を所定の回数(S回)実施することで複数の合成波データ片[AF1~AF(S)]の各々を示すデータ系列[Q0~Q(N)]を生成する。
【0058】
ところで、図4及び図5に示す一例では、互いに周波数が異なる可聴音を表すS個の波形データ片[AF1~AF(S)]の各々として、第1~第nの正弦波を合成した合成波を表すものを採用している。しかしながら、互いに周波数が異なる可聴音を表す複数の波形データ片として、例えば単一の正弦波、矩形波、又は鋸歯状波を表すものを生成するようにしても良い。
【0059】
要するに、1の波形を表すデータ系列を示す波形データ片を複数生成するにあたり、上記した合成波データ片を複数生成する場合と同様に、以下の第1~第6のステップを含む波形データの生成方法を採用する。
【0060】
すなわち、第1のステップでは、1の波形の時間の長さの基準となる基準時間長、サンプリング間隔時間、周波数変動率を取得する。第2のステップでは、基準時間長、サンプリング間隔時間、周波数変動率に基づいて1の波形を示すデータ系列における総サンプル数を算出する。第3のステップでは、1の波形について、総サンプル数に基づいてサンプリング間隔時間に対する回転角を算出する。第4のステップでは、サンプリング間隔時間毎に、この回転角に基づいて算出される1の波形の値を、総サンプル数分算出する。第5のステップでは、総サンプル数分のサンプリング時間間隔毎の1の波形の値の系列を1の波形データ片のデータ系列として生成する。
【0061】
そして、第6のステップでは、上記した第2~第5のステップによる一連の処理を1回実行する度に周波数変動率を変更しつつ、この一連の処理を所定の回数実施することで複数の波形データ片の各々を示すデータ系列を生成する。
【0062】
図6は、図4及び図5に示す合成波データ生成処理によって生成された合成波データAF1~AF(S)に基づき可聴音を発生する発音装置の一例として、車両CRに搭載されている車両接近通報システム100の構成を示すブロック図である。
【0063】
車両接近通報システム100は、車速センサ11、接近通報装置12、及びスピーカ13を有する。
【0064】
車速センサ11は、車両CRの走行速度を表す速度信号VSを接近通報装置12に供給する。
【0065】
接近通報装置12は、速度信号VSにて表される走行速度に対応した可聴帯域の周波数成分を有する車両接近音信号ALを生成し、スピーカ13に供給する。
【0066】
スピーカ13は、例えば車両CRのフロントバンパーに設置されており、車両接近音信号ALに基づく可聴音を車両接近音として、車両CRの外部の空間に放出する。
【0067】
図7は、接近通報装置12の内部構成を表すブロック図である。
【0068】
図7に示すように、接近通報装置12は、制御部120、音声メモリ121、音声合成部122、アンプ123、及び外部端子TPを含む。
【0069】
制御部120は、速度信号VSを受け、当該速度信号VSにて表される走行速度に対応した合成波データ片を音声メモリ121から読み出す読出アクセスを音声メモリ121に施す。
【0070】
音声メモリ121には、車両接近音を発生させる走行速度の範囲を複数に区分けした各速度範囲に対応付けして、夫々が異なる周波数成分を有する複数の車両接近音を個別に表す合成波データAF1~AF(S)が格納されている。音声メモリ121は、例えばNAND又はNOR型のフラッシュメモリ、又はPROM(Programmable ROM)のような不揮発性の半導体メモリ、或いは、磁気記録式のハードディスク等の記憶媒体からなる。
【0071】
図8は、音声メモリ121のメモリマップの一例を示す図である。
【0072】
図8に示すように、音声メモリ121には、車両接近音を発生させる走行速度範囲をS(Sは2以上の整数)個に区分けした各速度範囲に対応付けして、合成波データAF1~AF(S)が格納されている。
【0073】
すなわち、図8に示すように、音声メモリ121には、速度Y1~速度Y2(例えば0~0.5[km/h])の速度範囲に対応付けして、合成波データAF1が記憶されている。また、音声メモリ121には、速度Y2~速度Y3(例えば0.5~1.0[km/h])の範囲に対応付けして、合成波データAF1よりも高い周波数の車両接近音に対応した合成波データAF2が記憶されている。また、音声メモリ121には、速度Y3~速度Y4(例えば1.0~1.5[km/h])の範囲に対応付けして、合成波データAF2よりも高い周波数の車両接近音に対応した合成波データAF3が記憶されている。
【0074】
尚、合成波データAF1~AF(S)の各々は、基準時間長L分の長さの車両接近音を、前述した図3に示すように、サンプリング間隔時間Tのサンプル値Q0~Q(N)の系列(白丸にて示す)で表すものである。
【0075】
つまり、図3に示すように、各合成波データAFに含まれるサンプル値Q0~Q(N)のうちで、先頭のサンプル値Q0は無音を表すゼロレベルであり、最後尾のサンプル値Q(N)は、先頭のサンプル値Q0と同一値である。
【0076】
音声メモリ121は、制御部120からの読出アクセスに応じて、合成波データAF1~AF(S)のうちから、速度信号VSにて表される走行速度を含む速度範囲に対応した1つの合成波データAFを読み出す。
【0077】
図9は、速度信号VSに応じて音声メモリ121から読み出される合成波データAFを含む合成音データ信号SEの形態の一例を表すタイムチャートである。
【0078】
例えば、車両CRが停止した状態(速度Y1=0[km/h])からその走行速度が図9に示すように速度Y2に到るまでの期間P1に亘り、制御部120は、音声メモリ121から合成波データAF1を繰り返し読み出す。具体的には、制御部120は、音声メモリ121から、合成波データAF1に含まれる図3に示すサンプル値Q0~Q(N)を順に読出し、サンプル値Q(N)に連結して再び合成波データAF1に含まれるサンプル値Q0~Q(N)を順に読出す。制御部120は、このような音声メモリ121からのサンプル値Q0~Q(N)の読み出し処理を、期間P1を基準時間長Lで除算した除算結果の商に1を加算した回数の分だけ繰り返し行う。
【0079】
その後、車両CRの走行速度が速度Y2(例えば0.5[km/h])を超え、その走行速度が速度Y3(例えば1.0[km/h])に至るまでの期間P2に亘り、制御部120は、合成波データAF1に代えて、これよりも車両接近音の周波数が1段階だけ高い合成波データAF2を音声メモリ121から繰り返し読み出す。具体的には、制御部120は、その直前に音声メモリ121から読み出した合成波データAF1のサンプル値Q(N)に連続して、合成波データAF2に含まれるサンプル値Q0~Q(N)を順に読み出す。その後、制御部120は、間を置くことなく再び合成波データAF2に含まれるサンプル値Q0~Q(N)を音声メモリ121から順に読み出す。制御部120は、このような音声メモリ121からのサンプル値Q0~Q(N)の読み出し処理を、期間P2を基準時間長Lで除算した除算結果の商に1を加算した回数の分だけ繰り返し行う。
【0080】
そして、車両CRの走行速度が速度Y3を超え、その走行速度が速度Y4(例えば1.5[km/h])に至るまでの期間P3に亘り、制御部120は、合成波データAF2に代えて、これよりも車両接近音の周波数が1段階だけ高い合成波データAF3を音声メモリ121から繰り返し読み出す。具体的には、制御部120は、その直前に音声メモリ121から読み出した合成波データAF2のサンプル値Q(N)に連続して、合成波データAF3に含まれるサンプル値Q0~Q(N)を順に読み出す。その後、制御部120は、
間を置くことなく再び合成波データAF3に含まれるサンプル値Q0~Q(N)を音声メモリ121から順に読み出す。制御部120は、このような音声メモリ121からのサンプル値Q0~Q(N)の読み出し処理を、期間P3を基準時間長Lで除算した除算結果の商に1を加算した回数の分だけ繰り返し行う。
【0081】
これにより、図9に示すように、速度信号VSに応じて音声メモリ121から読み出された合成波データAFを連結した合成音データ信号SEが、音声合成部122に供給される。
【0082】
音声合成部122は、合成音データ信号SEに含まれる各合成波データAFをアナログ信号の形態に変換した車両接近音信号MSVをアンプ123に供給する。
【0083】
アンプ123は、当該車両接近音信号MSVの振幅を増幅したものを車両接近音信号ALとしてスピーカ13に供給する。
【0084】
よって、接近通報装置12によれば、音声メモリ121に格納されている合成波データAF1~AF(S)に基づき、車両CRの走行速度が高くなるにつれて周波数が高くなる車両接近音が再生される。
【0085】
ここで、接近通報装置12では、夫々が異なる周波数の車両接近音を表す合成波データAF1~AF(S)の各々として、図3に示すように、基準時間長L分の長さの車両接近音をサンプリング間隔時間Tのサンプル値Q0~Q(N)の系列で表すものを採用している。この際、各合成波データAFは、図3に示すように、サンプル値Q0~Q(N)の系列うちで先頭のサンプル値Q0の値が例えば無音を表すゼロレベルである。更に、最後尾のサンプル値Q(N)の値が、先頭のサンプル値Q0の値と同一である。
【0086】
従って、図3に示すような形態の合成波データAFを連結させることで車両CRの走行速度に追従した周波数の車両接近音を発生するにあたり、合成波データAF同士の連結部では両者のサンプル値の値及びその位相が一致する。これにより、合成波データ同士の連結部で車両接近音の振幅が大幅に変化することで発生する不要なノイズ音が生じなくなり、違和感の無い良好な車両接近音を再生することが可能となる。
【0087】
また、合成波データAF1~AF(S)によれば、合成波データ同士の連結部において1サンプル又は複数サンプル分の音が再生されない場合でも、先頭のサンプル値Q0及び最後尾のサンプル値Q(N)の値が共にゼロレベルであることから、不要なノイズ音が重畳されにくい。よって、このような再生が実施される場合であっても違和感の無い良好な車両接近音を再生することが可能となる。
【0088】
尚、図6及び図7では、車両の接近を当該車両側から歩行者に知らせる車両接近音を発生する接近通報装置12を一例にとって、発音装置の動作を説明したが、発生させる音は車両接近音に限定されない。
【0089】
要するに、周波数が変化する音を発生する発音装置としては、以下の音声メモリ、制御部、及び音声合成部を含むものであれば良い。すなわち、音声メモリ(121)には、互いに異なる周波数の複数の可聴音の各々を同一のサンプリング間隔時間(T)でサンプリングしたサンプル値の系列[Q0~Q(N)]で個別に表す複数の合成波データ片[AF1~AF(S)]が記憶されている。尚、複数の合成波データ片各々の上記したサンプル値の系列のうちの先頭のサンプル値[Q0]と、サンプル値の系列のうちの最後尾のサンプル値[Q(N)]とが同一値である。制御部(120)は、音声メモリから複数の合成波データ片の1つを繰り返し読み出す、又は合成波データ片を順に読み出す読出アクセスを音声メモリに施す。音声合成部(122)は、音声メモリから読み出された合成波データをアナログの音信号(MSV)に変換して出力する。
【符号の説明】
【0090】
11 車速センサ
12 接近通報装置
13 スピーカ
120、202 制御部
121 音声メモリ
122 音声合成部
200 合成波データ生成装置
201 プログラムメモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9