(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】コールドプレートおよびコールドプレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20240213BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
(21)【出願番号】P 2023124338
(22)【出願日】2023-07-31
【審査請求日】2023-08-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】町田 雄気
(72)【発明者】
【氏名】引地 秀太
(72)【発明者】
【氏名】青木 博史
(72)【発明者】
【氏名】川畑 賢也
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-117077(JP,A)
【文献】特開2007-165481(JP,A)
【文献】特開平09-293809(JP,A)
【文献】特開平11-314131(JP,A)
【文献】特開2020-167328(JP,A)
【文献】特開2017-228748(JP,A)
【文献】実開平07-027159(JP,U)
【文献】特表平10-502217(JP,A)
【文献】米国特許第06009938(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に熱媒体が流通する熱媒体流通空間が形成され、冷却対象物から吸収した熱を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に放出するコールドプレートであって、
冷却対象物から放出された熱を吸収する吸熱面が一方の面に設けられ、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に前記吸熱面において吸収した熱を放出する放熱面が他方の面に設けられたベースプレートと、
前記ベースプレートの前記放熱面を覆うカバープレートと、を備え、
前記熱媒体流通空間は、前記ベースプレートの前記放熱面と前記カバープレートとの間に形成され、
前記ベースプレートは、前記放熱面から前記カバープレートに向かって突出するように設けられ、前記放熱面から放出される熱を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に対して伝える複数の伝熱部を有し、
前記カバープレートにおける前記熱媒体流通空間側の面には、複数の前記伝熱部の少なくとも一部の先端部が挿入される凹部が形成され
、
前記ベースプレートは、外周側に沿って延在するように設けられ、前記カバープレートが接合されるベース側接合部を有し、
前記放熱面は、前記ベース側接合部よりもカバープレート側に張り出している
コールドプレート。
【請求項2】
前記伝熱部の先端側は、先細り形状を有している
請求項1に記載のコールドプレート。
【請求項3】
複数の前記伝熱部は、それぞれ、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体の流通方向に沿って延在するフィンである
請求項1に記載のコールドプレート。
【請求項4】
内部に熱媒体が流通する熱媒体流通空間が形成され、冷却対象物から吸収した熱を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に放出するコールドプレートの製造方法であって、
冷却対象物から放出された熱を吸収する吸熱面が一方の面に設けられ、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に前記吸熱面において吸収した熱を放出する放熱面が他方の面に設けられ、前記放熱面から放出される熱を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に対して伝える複数の伝熱部が前記放熱面から突出するように設けられたベースプレートに対して、前記放熱面を覆うカバープレートを積層するプレート積層工程と、
前記プレート積層工程によって、前記ベースプレートに対して前記カバープレートを積層した状態で、前記ベースプレートおよび前記カバープレートを互いに押圧することによって、複数の前記伝熱部の少なくとも一部の先端部を、前記カバープレートにおける前記放熱面に対向する面にめり込ませて、前記カバープレートにおける前記放熱面に対向する面に形成された凹部に位置させるプレート押圧工程と、
前記ベースプレートの外周側に沿って延在するとともに、前記放熱面よりも前記カバープレート側への張り出し量が小さくなるように設けられ、前記カバープレートが接合されるベース側接合部を形成するベース側接合部形成工程と、
前記ベース側接合部に前記カバープレートを接合する接合工程と、を含む
コールドプレートの製造方法。
【請求項5】
前記伝熱部の先端側を先細り形状に形成する伝熱部形成工程を含む
請求項
4に記載のコールドプレートの製造方法。
【請求項6】
前記伝熱部を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体の流通方向に沿って延びるフィン形状に形成する伝熱部形成工程を含む
請求項
4に記載のコールドプレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品等の冷却対象物の冷却に用いられるコールドプレートおよびコールドプレートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコールドプレートとしては、例えば、特許文献1に示すように、内部に熱媒体が流通する熱媒体流通空間が形成され、冷却対象物から放出された熱を、熱媒体流通空間を流通する熱媒体に放出するものであって、冷却対象物から放出された熱を吸収する吸熱面が一方の面に設けられ、熱媒体流通空間を流通する熱媒体に吸熱面において吸収した熱を放出する放熱面が他方の面に設けられたベースプレートと、ベースプレートの放熱面を覆うカバープレートと、を備え、ベースプレートが、放熱面からカバープレートに向かって突出するように設けられ、放熱面から放出される熱を、熱媒体流通空間を流通する熱媒体に対して伝える複数の伝熱部を有するものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載のコールドプレートは、複数の伝熱部の先端部とカバープレートにおける熱媒体流通空間側の面との間に隙間が形成されている場合に、熱媒体流通空間を流通する熱媒体が、伝熱部と伝熱部との隙間よりも、複数の伝熱部の先端部とカバープレートとの隙間を流れやすくなる。このため、特許文献1に記載のコールドプレートは、熱媒体流通空間を流通する熱媒体が、伝熱部から十分に熱を吸収することなく、熱媒体流通空間から流出することとなり、冷却効率の向上を図ることが出来ない。
【0004】
そこで、特許文献2に記載のコールドプレートは、複数の伝熱部の先端部とカバープレートにおける熱媒体流通空間側の面との間に接合部材を配置することで、複数の伝熱部の先端部とカバープレートにおける熱媒体流通空間側の面との隙間の熱媒体の流通を規制し、冷却効率の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2013-506996号公報
【文献】特開2019-186297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載のコールドプレートは、複数の伝熱部の先端部とカバープレートにおける熱媒体流通空間側の面との間に接合部材を配置しているため、複数の伝熱部の高さ寸法が小さく、伝熱部と熱媒体流通空間を流通する熱媒体との接触面積が小さくなるため、冷却能力が低下する可能性がある。また、特許文献2に記載のコールドプレートは、必要な冷却能力を発揮することが可能な伝熱部の高さ寸法とした場合に、コールドプレート全体の厚さ方向の寸法が大きくなる。
【0007】
本発明の目的とするところは、厚さ方向の大型化の抑制と同時に、冷却効率の向上を図ることのできるコールドプレートおよびコールドプレートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコールドプレートは、内部に熱媒体が流通する熱媒体流通空間が形成され、冷却対象物から吸収した熱を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に放出するコールドプレートであって、冷却対象物から放出された熱を吸収する吸熱面が一方の面に設けられ、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に前記吸熱面において吸収した熱を放出する放熱面が他方の面に設けられたベースプレートと、前記ベースプレートの前記放熱面を覆うカバープレートと、を備え、前記熱媒体流通空間は、前記ベースプレートの前記放熱面と前記カバープレートとの間に形成され、前記ベースプレートは、前記放熱面から前記カバープレートに向かって突出するように設けられ、前記放熱面から放出される熱を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に対して伝える複数の伝熱部を有し、前記カバープレートにおける前記熱媒体流通空間側の面には、複数の前記伝熱部の少なくとも一部の先端部が挿入される凹部が形成され、前記ベースプレートは、外周側に沿って延在するように設けられ、前記カバープレートが接合されるベース側接合部を有し、前記放熱面は、前記ベース側接合部よりもカバープレート側に張り出している。
【0009】
また、本発明に係るコールドプレートは、前記伝熱部の先端側が、先細り形状を有している、ことが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るコールドプレートは、複数の前記伝熱部が、それぞれ、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体の流通方向に沿って延在するフィンである、ことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るコールドプレートの製造方法は、内部に熱媒体が流通する熱媒体流通空間が形成され、冷却対象物から吸収した熱を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に放出するコールドプレートの製造方法であって、冷却対象物から放出された熱を吸収する吸熱面が一方の面に設けられ、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に前記吸熱面において吸収した熱を放出する放熱面が他方の面に設けられ、前記放熱面から放出される熱を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体に対して伝える複数の伝熱部が前記放熱面から突出するように設けられたベースプレートに対して、前記放熱面を覆うカバープレートを積層するプレート積層工程と、前記プレート積層工程によって、前記ベースプレートに対して前記カバープレートを積層した状態で、前記ベースプレートおよび前記カバープレートを互いに押圧することによって、複数の前記伝熱部の少なくとも一部の先端部を、前記カバープレートにおける前記放熱面に対向する面にめり込ませて、前記カバープレートにおける前記放熱面に対向する面に形成された凹部に位置させるプレート押圧工程と、前記ベースプレートの外周側に沿って延在するとともに、前記放熱面よりも前記カバープレート側への張り出し量が小さくなるように設けられ、前記カバープレートが接合されるベース側接合部を形成するベース側接合部形成工程と、前記ベース側接合部に前記カバープレートを接合する接合工程と、を含む。
【0013】
また、本発明に係るコールドプレートの製造方法は、前記伝熱部の先端側を先細り形状に形成する伝熱部形成工程を含む、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るコールドプレートの製造方法は、前記伝熱部を、前記熱媒体流通空間を流通する熱媒体の流通方向に沿って延びるフィン形状に形成する伝熱部形成工程を含む、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、伝熱部の先端部とカバープレートにおける熱媒体流通空間側の面との隙間をなくすことが可能となるので、熱媒体流通空間におけるカバープレート側の熱媒体の流通量を低下させて隣り合う伝熱部と伝熱部との間の熱媒体の流通量を増加させることが可能となり、冷却効率の向上を図ることが可能となる。また、厚さ方向の大型化を抑制することが可能となるので、設置スペースの省スペース化、使用材料の低減および軽量化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るコールドプレートの全体斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るカバープレート側から見たコールドプレートの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るベースプレート側から見たコールドプレートの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係るコールドプレートの側面断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係るベースプレートの側面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係るベースプレートの要部側面図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係るコールドプレートの要部側面断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係るコールドプレートの製造方法を説明する側面断面図である。
【
図9】
図9(a)および
図9(b)は、本発明の一実施形態に係るコールドプレートの製造方法を説明する要部側面断面図である。
【
図10】
図10(a)乃至
図10(e)は、本発明の他の実施形態に係るコールドプレートの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1乃至
図9は、本発明の一実施形態を示すものである。
図1はコールドプレートの全体斜視図であり、
図2はカバープレート側から見たコールドプレートの分解斜視図であり、
図3はベースプレート側から見たコールドプレートの分解斜視図であり、
図4はコールドプレートの側面断面図であり、
図5はベースプレートの側面図であり、
図6はベースプレートの要部側面図であり、
図7はコールドプレートの要部側面断面図であり、
図8はコールドプレートの製造方法を説明する側面断面図であり、
図9(a)および
図9(b)はコールドプレートの製造方法を説明する要部側面断面図である。
【0019】
本実施形態のコールドプレート1は、例えば、発熱する電子部品等の冷却対象物を冷却するために用いられるものである。コールドプレート1は、
図1および
図4に示すように、内部に形成された熱媒体流通空間2に対して熱媒体を流入させる熱媒体流入口2aと、熱媒体流通空間2を流通した熱媒体を流出させる熱媒体流出口2bと、が設けられている。コールドプレート1は、熱媒体流入口2aに図示しない熱媒体供給管が接続され、熱媒体流出口2bに図示しない熱媒体排出管が接続された状態で使用される。コールドプレート1は、冷却された熱媒体を、熱媒体流入口2aを介して熱媒体流通空間2に流入させて、熱媒体流通空間2において熱媒体に冷却対象物から放出された熱を吸収させ、熱媒体流通空間2において熱を吸収した熱媒体を、熱媒体流出口2bを介して熱媒体流通空間2から流出させる。ここで、熱媒体としては、例えば、水が用いられる。
【0020】
コールドプレート1は、
図2乃至
図4に示すように、ベースプレート10と、カバープレート20と、が互いに重ね合わせた状態でロウ付け等によって接合されている。
【0021】
ベースプレート10は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、ステンレス等の熱伝導率の高い金属からなる略矩形状の板状部材である。ベースプレート10は、
図2および
図3に示すように、カバープレート20が接合されるベース側接合部11と、冷却対象物から放出される熱を吸収する吸熱面12と、吸熱面12において吸収した熱を、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に放出する放熱面13と、放熱面13から突出するように設けられ、放熱面13から放出される熱を、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に対して伝えるための複数の伝熱部14と、を有している。
【0022】
ベース側接合部11は、ベースプレート10におけるカバープレート20側の面の外周側に沿って周方向にわたって形成されている。
【0023】
吸熱面12は、冷却対象物が設置される面であり、ベースプレート10における積層方向の外側に設けられている。
【0024】
放熱面13は、ベース側接合部11の内周側に位置する平面であり、全面にわたってベース側接合部11よりもカバープレート20側に張り出している。
【0025】
複数の伝熱部14は、ベースプレート10におけるカバープレート20側の面を、例えば、スカイブ加工を施すよって、放熱面13とともに形成される。複数の伝熱部14は、それぞれ、放熱面13から突出するとともに、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体の流通方向に延在するフィンである。複数の伝熱部14は、
図6に示すように、それぞれ、例えば、高さ寸法Hが3mm、厚さ寸法Tが0.1mm、隣り合う伝熱部14と伝熱部14との間隔Gが0.1mm、である。また、複数の伝熱部14のそれぞれの先端側は、熱媒体の流通方向の全体にわたって、先端部に向かって厚さ寸法Tが小さくなる先細り形状を有している。尚、複数の伝熱部14のそれぞれ高さ寸法Hは、例えば、0.05mm等の僅かな誤差を含んでいる。
【0026】
カバープレート20は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、ステンレス等の熱伝導率の高い金属からなる板状部材からなる。カバープレート20は、外周側に沿って延在するように設けられ、ベースプレート10に重ね合わされた状態でベースプレート10に接合されるカバー側接合部21を有し、カバー側接合部21の内側が凹形状に形成されている。ベース側接合部11およびカバー側接合部21を互いに接合すると、ベースプレート10の放熱面13とカバープレート20との間には、熱媒体流通空間2が形成される。また、カバープレート20には、長手方向の一方側に熱媒体流入口2aが形成され、長手方向の他方側に熱媒体流出口2bが形成されている。
【0027】
また、ベース側接合部11およびカバー側接合部21が互いに接合された状態において、複数の伝熱部14の先端部は、
図7に示すように、前記カバープレート20における熱媒体流通空間2側の面に設けられた凹部22に挿入されている。凹部22は、複数の伝熱部14の先端部を、カバープレート20における放熱面13に対向する面に押し付けてめり込ませることによって形成される。凹部22は、カバープレート20における、複数の伝熱部14の全ての先端部に対応する位置に設けられている必要はなく、複数の伝熱部14の少なくとも一部の先端部に対応する位置に設けられていればよい。
【0028】
以上のように構成されたコールドプレート1は、ベースプレート10の吸熱面12に冷却対象物を設置した状態で、熱媒体流入口2aを介して熱媒体を熱媒体流通空間2に流入させ、熱媒体流出口2bを介して熱媒体流通空間2を流通した熱媒体を熱媒体流通空間2から流出させる。
【0029】
このとき、冷却対象物から放出された熱は、ベースプレート10の吸熱面12において吸収され、吸熱面12から放熱面13および複数の伝熱部14に伝わって、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に放出される。これにより、冷却対象物は、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に熱を放出することが可能となり、継続的に冷却される。
【0030】
熱媒体流通空間2に流入した熱媒体は、複数の伝熱部14の先端部とカバープレート20との隙間を流通することなく、伝熱部14と伝熱部14との間を流通することになり、伝熱部14から放出される熱を効率的に吸収する。
【0031】
また、上述のコールドプレート1の製造方法においては、以下に示す工程を含んでいる。
【0032】
ベース側接合部形成工程として、切削加工等によって、ベースプレート10の外周側に沿って延在するとともに、放熱面13よりも張り出し量が小さくなるように、ベース側接合部11を形成する。
【0033】
伝熱部形成工程として、スカイブ加工によってベースプレートの放熱面13と共に複数の伝熱部14を形成する。伝熱部形成工程では、複数の伝熱部14のそれぞれを、熱媒体流通空間を流通する熱媒体の流通方向に沿って延在するフィン形状に形成するとともに、熱媒体の流通方向の全体にわたって先端側を先細り形状に形成する。
【0034】
プレート積層工程として、ベース側接合部形成工程においてベース側接合部11が形成されるとともに、伝熱部形成工程において放熱面13と共に複数の伝熱部14が形成されたベースプレート10に対してカバープレート20を積層する。
【0035】
プレート押圧工程として、
図8および
図9に示すように、プレート積層工程において積層されたベースプレート10およびカバープレート20を互いに積層方向に押圧することによって、複数の伝熱部14の少なくとも一部の先端部を、カバープレート20における放熱面13に対向する面に押し付けてめり込ませて凹部22を形成する。
【0036】
接合工程として、プレート押圧工程において形成されたカバープレート20における放熱面13に対向する面の凹部22に、伝熱部14を挿入した状態で、ロウ付けによってベースプレート10のベース側接合部11に対してカバープレート20のカバー側接合部21を接合する。
【0037】
このように、本実施形態のコールドプレートによれば、内部に熱媒体が流通する熱媒体流通空間2が形成され、冷却対象物から吸収した熱を、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に放出するコールドプレート1であって、冷却対象物から放出された熱を吸収する吸熱面12が一方の面に設けられ、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に吸熱面12において吸収した熱を放出する放熱面13が他方の面に設けられたベースプレート10と、ベースプレート10の放熱面13を覆うカバープレート20と、を備え、熱媒体流通空間2は、ベースプレート10の放熱面13とカバープレート20との間に形成され、ベースプレート10は、放熱面13からカバープレート20に向かって突出するように設けられ、放熱面13から放出される熱を、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に対して伝える複数の伝熱部14を有し、カバープレート20における熱媒体流通空間2側の面には、複数の伝熱部14の少なくとも一部の先端部が挿入される凹部22が形成されている。
【0038】
また、本実施形態のコールドプレートの製造方法によれば、内部に熱媒体が流通する熱媒体流通空間2が形成され、冷却対象物から吸収した熱を、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に放出するコールドプレート1の製造方法であって、冷却対象物から放出された熱を吸収する吸熱面12が一方の面に設けられ、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に吸熱面12において吸収した熱を放出する放熱面13が他方の面に設けられ、放熱面13から放出される熱を、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に対して伝える複数の伝熱部14が放熱面13から突出するように設けられたベースプレート10に対して、放熱面13を覆うカバープレート20を積層するプレート積層工程と、プレート積層工程によって、ベースプレート10に対してカバープレート20を積層した状態で、ベースプレート10およびカバープレート20を互いに押圧することによって、複数の伝熱部14の少なくとも一部の先端部を、カバープレート20における放熱面13に対向する面にめり込ませて、カバープレート20における放熱面13に対向する面に形成された凹部22に位置させるプレート押圧工程と、を含む。
【0039】
これにより、伝熱部14の先端部とカバープレート20における熱媒体流通空間2側の面との隙間をなくすことが可能となるので、熱媒体流通空間2におけるカバープレート20側の熱媒体の流通量を低下させて隣り合う伝熱部14と伝熱部14との間の熱媒体の流通量を増加させることが可能となり、冷却効率の向上を図ることが可能となる。また、厚さ方向の大型化を抑制することが可能となるので、設置スペースの省スペース化、使用材料の低減および軽量化を図ることが可能となる。
【0040】
また、本実施形態のコールドプレートによれば、伝熱部14の先端側は、先細り形状を有している、ことが好ましい。
【0041】
また、本実施形態のコールドプレートの製造方法によれば、伝熱部14の先端側を先細り形状に形成する伝熱部形成工程を含む、ことが好ましい。
【0042】
これにより、伝熱部14の先端部を、カバープレート20における放熱面13に対向する面に容易にめり込ませることが可能となり、伝熱部14の先端部をより確実に凹部22に位置させることが可能となる。
【0043】
また、本実施形態のコールドプレートによれば、複数の伝熱部14は、それぞれ、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体の流通方向に沿って延在するフィンである、ことが好ましい。
【0044】
また、本実施形態のコールドプレートの製造方法によれば、伝熱部14を、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体の流通方向に沿って延びるフィン形状に形成する伝熱部形成工程を含む、ことが好ましい。
【0045】
これにより、熱媒体流通空間2における熱媒体の流通方向の全体にわたって伝熱部14が配置することが可能になるため、伝熱部14から熱媒体に対してより効率的に熱を伝えることが可能となる。
【0046】
また、本実施形態のコールドプレートによれば、ベースプレート10は、外周側に沿って延在するように設けられ、カバープレート20が接合されるベース側接合部11を有し、放熱面13は、ベース側接合部11よりもカバープレート20側に張り出している、ことが好ましい。
【0047】
また、本実施形態のコールドプレートの製造方法によれば、ベースプレート10の外周側に沿って延在するとともに、放熱面13よりもカバープレート20側への張り出し量が小さくなるように設けられ、カバープレート20が接合されるベース側接合部11を形成するベース側接合部形成工程と、ベース側接合部11にカバープレート20を接合する接合工程と、を含む、ことが好ましい。
【0048】
これにより、ベースプレート10に対してカバープレート20をロウ付けによって接合する場合に、放熱面13側へのロウ材の流入を規制することが可能となり、ロウ材による熱媒体流通空間の詰まりを抑制することが可能となる。
【0049】
尚、前記実施形態では、例として、複数の伝熱部14のそれぞれを、高さ寸法が3mm、厚さ寸法が0.1mm、隣り合う伝熱部14と伝熱部14との間隔が0.1mm、としたフィンを示したが、これに限られるものではない。複数の伝熱部としては、
図10(a)および
図10(b)に示すように、それぞれ、高さ寸法、厚さ寸法、隣り合う伝熱部と伝熱部との間隔を、任意に設定することが可能である。
【0050】
また、複数の伝熱部14は、すべての先端部がカバープレート20に形成された凹部22に挿入されている必要はなく、少なくともの一部の伝熱部14の先端部が凹部22に挿入されていればよい。例えば、
図10(c)に示すように、カバープレート20の厚さ寸法を、熱媒体流通空間2の幅方向中央部側を、幅方向両外側に対して大きく形成し、幅方向中央部側に位置する伝熱部14の先端部を凹部22に挿入されるようにしてもよい。このコールドプレート1は、熱媒体流通空間2における幅方向中央部側に対して幅方向両外側の熱媒体の流通量を増大させることが可能となる。また、
図10(d)に示すように、カバープレート20の厚さ寸法を、熱媒体流通空間2の幅方向両外側を、幅方向中央部側に対して大きく形成し、幅方向両外側に位置する伝熱部14の先端部を凹部22に挿入されるようにしてもよい。このコールドプレート1は、熱媒体流通空間2における幅方向両外側に対して幅方向中央部側の熱媒体の流通量を増大させることが可能となる。
【0051】
また、前記実施形態では、放熱面13に対して垂直方向に延在する伝熱部14を示したが、これに限られるものではない。伝熱部14は、放熱面からカバープレート20側に向かって延在するものであれば、例えば、
図10(e)に示すように、放熱面13からカバープレート20に向かって斜めに延在するものであってもよい。
【0052】
また、前記実施形態では、熱媒体の例として、水を示したが、これに限られるものではない。例えば、エチレングリコールを含む不凍液、ハイドロフルオロカーボン(HFC)等の冷媒ガスを、熱媒体として利用してもよい。
【0053】
また、前記実施形態では、複数の伝熱部14のそれぞれを、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体の流通方向に延在するフィンとしたものを示したが、これに限られるものではない。伝熱部は、熱媒体流通空間において放熱面からカバープレート側に張り出す形状を有していればよく、例えば、放熱面からカバープレート側に張り出す円錐形状の突起であってもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、ベースプレート10に対するカバープレート20の接合を、ロウ付けによって行うようにしたものを示したが、これに限られるものではない。ベースプレート10に対するカバープレート20の接合は、拡散接合、摩擦攪拌接合(FSW)、圧接によって行ってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 コールドプレート
2 熱媒体流通空間
10 ベースプレート
11 ベース側接合部
12 吸熱面
13 放熱面
14 伝熱部
20 カバープレート
22 凹部
【要約】
【課題】厚さ方向の大型化の抑制と同時に、冷却効率の向上を図ることのできるコールドプレートを提供する。
【解決手段】熱媒体流通空間2は、ベースプレートの放熱面とカバープレートとの間に形成され、ベースプレートは、放熱面からカバープレート20に向かって突出するように設けられ、放熱面から放出される熱を、熱媒体流通空間2を流通する熱媒体に対して伝える複数の伝熱部14を有し、カバープレート20における熱媒体流通空間2側の面には、複数の伝熱部14の少なくとも一部の先端部が挿入される凹部22が形成されている。
【選択図】
図7