(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及び粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 133/04 20060101AFI20240214BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20240214BHJP
C09J 133/26 20060101ALI20240214BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240214BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240214BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240214BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J133/14
C09J133/26
C09J11/08
C09J11/06
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2019172861
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】小松崎 優紀
(72)【発明者】
【氏名】綱島 啓次
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-187245(JP,A)
【文献】特開2015-105329(JP,A)
【文献】特開2015-117347(JP,A)
【文献】特開2018-076390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル重合体(A)、架橋剤(B)
、可塑剤(C)
及び溶剤(D)を含み、
前記アクリル重合体(A)が、(メタ)アクリレートモノマー(a1)に由来する単位と;窒素含有モノマー(a2)に由来する単位と;酸基を有するモノマー(a3)及び水酸基を有するモノマー(a4)からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する単位とを含み、
前記可塑剤(C)の含有量が、前記アクリル重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上3質量部以下であり、
前記可塑剤(C)が、水酸基を有する化合物(c1)と酸基を有する化合物(c2)とのエステル化物を含むものであり、
前記可塑剤(C)の数平均分子量が、6,000以下である粘着剤組成物。
【請求項2】
前記窒素含有モノマー(a2)が、(メタ)アクリルアミドモノマーである請求項
1
記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
請求項1
又は2記載の粘着剤組成物から形成される粘着層。
【請求項4】
請求項
3記載の粘着層を有する保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物及び粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、自動車、建築、電子機器など、様々な分野で使用されている。特に近年では、タブレットや、スマートフォンなど、持ち運びする電子機器の表面保護、部材の固定、使用する部材の加工工程時の保護など、多くの場面で活用されている。このような、電子機器に使用される粘着シートは、その製品の特性から、より高性能、高機能が求められている。特に、様々な使用環境下においても、部材が剥がれることなく、かつ欠点などが無く、鮮明な画像を表示できる(表示を妨げない)ことを要求されている。
【0003】
また、これらのスマートフォンに代表されるモバイル機器は、持ち運ぶ頻度が高く、使用中に誤って落としてしまうリスクも高くなっている。落とした際に、場合によっては表面ガラスが割れ、ガラスの破片が飛び散り、怪我をする可能性もあり、危険である。そのため、ガラスの破片が飛散することを防ぐことを目的とした、飛散防止フィルムが貼られることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-48328号公報
【文献】特開2019-70148号公報
【文献】特開2019-70149号公報
【文献】特開2019-70152号公報
【文献】特開2019-77881号公報
【文献】特開2019-77882号公報
【文献】特開2019-90040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この飛散防止フィルムは、表面ガラスに貼り付けることで破片が飛散することを防ぐため、貼った状態でスマートフォンなどを使用することになる。そのため、様々な環境においても剥がれないこと(高接着力)と、光学透明性が高いこと(被膜の高透明性)が求められる。また、本性能を確実に発現するためには被着体の種類によらず、軽く圧着した場合でも、良好に貼付できること(貼付性)が必要となり、これら全てを両立することが最大の課題である。加えて、厳しい高温高湿環境に保管された場合でも接着力の低下がない事(耐久性)も要求される。しかし現状、これらの要求性能を高いレベルで両立するには至っていない。本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、光学透明性を維持したまま、高接着力化し、軽く圧着した場合でも、良好に貼付できる貼付性を付与することを目的とし、好ましくは、耐久性を付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の粘着剤組成物は、アクリル重合体を特定のモノマー組成とすることで、光学的な透明性を維持したまま、粘着剤被膜の凝集力を向上することができ、高透明性と高接着力、耐久性を両立することを特徴とする。
【0007】
具体的には、前記粘着剤組成物が、アクリル重合体(A)、架橋剤(B)及び可塑剤(C)を含み、前記アクリル重合体(A)が、(メタ)アクリレートモノマー(a1)に由来する単位と;窒素含有モノマー(a2)に由来する単位と;酸基を有するモノマー(a3)及び水酸基を有するモノマー(a4)からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する単位とを含み、前記可塑剤(C)が、水酸基を有する化合物(c1)と酸基を有する化合物(c2)とのエステル化物を含むものであり、前記可塑剤(C)の数平均分子量が、6,000以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明の粘着剤組成物を用いることで、光学透明性を維持したまま、高接着力化し、貼付性を付与することが可能となる。また、好ましくは耐久性を付与することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の粘着剤組成物は、アクリル重合体(A)及び架橋剤(B)を含む。
【0010】
前記アクリル重合体(A)は、(メタ)アクリレートモノマー(a1)に由来する単位と;窒素含有モノマー(a2)に由来する単位と;酸基を有するモノマー(a3)及び水酸基を有するモノマー(a4)からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する単位を含む。
【0011】
(メタ)アクリレートモノマー(a1)としては、アルキル基がエステル結合した(メタ)アクリル酸アルキルエステル、環状エーテル含有(メタ)アクリレートモノマー、脂環構造含有(メタ)アクリレートモノマー、芳香環含有(メタ)アクリレートモノマー、アルキレンオキサイド構造含有(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられる。
【0012】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル、n-デシル基、ラウリル基、ステアリル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、イソノニル基、イソデシル基、イソステアリル基等の分岐鎖状アルキル基などが挙げられる。前記アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは12以下である。
【0013】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0014】
また、前記(メタ)アクリレートモノマー(a1)としては、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の環状エーテル含有(メタ)アクリレートモノマー;シクロへキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート等の脂環構造含有(メタ)アクリレートモノマー;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環含有(メタ)アクリレートモノマー;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート)などのアルキレンオキサイド構造含有(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられる。
【0015】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)は、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が、-15℃未満である低Tgモノマー(a1-1)と、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が-15℃以上である高Tgモノマー(a1-2)とを含むことが好ましい。
【0016】
前記低Tgモノマー(a1-1)のガラス転移温度(Tg)は、-15℃未満であり、好ましくは-20℃以下、より好ましくは-25℃以下であり、下限は、例えば-100℃以上であってもよい。
【0017】
前記低Tgモノマー(a1-1)の含有率は、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0018】
前記高Tgモノマー(a1-2)のガラス転移温度は、-15℃以上であり、好ましくは-10℃以上、より好ましくは-10℃以上であり、上限は、例えば150℃以下、100℃以下であってもよい。
【0019】
前記高Tgモノマー(a1-2)の含有量は、前記低Tgモノマー(a1-1)100質量部に対して、好ましくは15質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは25質量部以上であり、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。
【0020】
前記高Tgモノマー(a1-2)に由来する単位は、前記アクリル重合体(A)中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0021】
前記(メタ)アクリレートモノマー(a1)は、1種、または2種以上を用いることができ、柔軟性と凝集力をバランス良く付与できることから、アクリル酸アルキルエステル、脂環構造含有(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
【0022】
前記アクリル重合体(A)中、前記(メタ)アクリレートモノマー(a1)に由来する単位の含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
【0023】
前記窒素含有モノマー(a2)は、分子中に、窒素原子と重合性二重結合とを有する単量体であり、分子中に、アミド結合と重合性二重結合とを有する単量体であることが好ましく、例えば、ビニル基を有するラクタム化合物;(メタ)アクリルアミド単量体;窒素原子を含む官能基(例えば、アミノ基、1置換アミノ基、2置換アミノ基、ニトリル基等)を有する(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0024】
前記ビニル基を有するラクタム化合物としては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0025】
前記(メタ)アクリルアミド単量体は、(メタ)アクリルアミドの窒素原子に、水素原子又は炭化水素基(好ましくは脂肪族炭化水素基。ただし、該炭化水素に含まれる-CH2-は、-CO-に置き換わっていてもよく、該炭化水素基に含まれる水素原子は、水酸基に置換されていてもよい。)が結合した化合物などが挙げられる。また、(メタ)アクリルアミドの窒素原子に、2以上の基(前記炭化水素基)が置換する場合、それらの基は互いに結合して窒素原子を含む環を形成していてもよい。
【0026】
前記アミド結合に含まれる窒素原子に置換する炭化水素基(好ましくは脂肪族炭化水素基)の炭素原子数は、好ましくは1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは6以下である。
【0027】
前記(メタ)アクリルアミド単量体(a2)としては、1種又は2種以上を用いることができる。前記(メタ)アクリルアミド単量体は、(メタ)アクリルアミド、N-1置換(メタ)アクリルアミド化合物、N,N-2置換(メタ)アクリルアミド化合物のいずれであってもよい。
【0028】
前記(メタ)アクリルアミド化合物としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、(メタ)アクリルアミド;N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド等のN-1置換(メタ)アクリルアミド化合物;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイル-4-ピペリドン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のN-2置換(メタ)アクリルアミド化合物などが挙げられる。
【0029】
中でも、前記(メタ)アクリルアミド単量体は、式(1)で表される単量体を含むものであることが好ましい。
【0030】
【化1】
[式(1)中、R
1は、水素原子又はメチル基を表す。R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる-CH
2-は、-CO-又は-O-に置き換わっていてもよく、該炭化水素基に含まれる水素原子はヒドロキシル基に置き換わっていてもよく、R
2及びR
3は、互いに結合して、窒素原子を含む環を形成していてもよい。]
【0031】
前記R2及びR3で表される炭化水素基としては、1種又は2種以上であってよく、例えば、直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基;直鎖状又は分岐鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基などが挙げられる。中でも、直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましい。R2及びR3の少なくとも一方は、水素原子であることが好ましい。
【0032】
前記(メタ)アクリルアミドモノマーは、R2及びR3の両方が前記炭化水素基である(メタ)アクリルアミドモノマーを含むことも好ましい。前記R2及びR3の両方が前記炭化水素基である(メタ)アクリルアミドモノマーを含む場合、該単量体に由来する単位の含有率は、前記アクリル重合体(A)中、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0033】
前記窒素含有モノマー(a2)中、前記アクリルアミドモノマーに由来する単位の含有率は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0034】
前記窒素原子を含む官能基(例えば、アミノ基、1置換アミノ基、2置換アミノ基、ニトリル基等)を有する(メタ)アクリレート化合物としては、(メタ)アクリロニトリル、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
前記アクリル重合体中、前記窒素含有モノマー(a2)に由来する単位の含有率は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0036】
前記酸基を有するモノマー(a3)としては、酸基と重合性二重結合とを有するモノマーが挙げられ、好ましくはカルボキシル基を有するモノマー、スルホ基を有するモノマーが挙げられ、カルボキシル基を有するモノマーが好ましい。
【0037】
前記カルボキシル基を有するモノマーとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、(メタ)アクリル酸;カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシアルキル(メタ)アクリレート;イタコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸などが挙げられる。
【0038】
前記酸基を有するモノマー(a3)中、カルボキシル基を有するモノマーの含有率は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0039】
前記アクリル重合体(A)中、前記酸基を有するモノマー(a3)に由来する単位の含有率は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下である。
【0040】
前記水酸基を有するモノマー(a4)は、水酸基と重合性二重結合とを有するモノマーが挙げられる。前記水酸基を有する(メタ)アクリル単量体としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられ、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0041】
前記水酸基を有するモノマー(a4)としては、具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアルキル基(アルキレン基)の炭素原子数が2~10のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、4-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリルアミド、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリルアミド等のアルキル基(アルキレン基)の炭素原子数が2~8のヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0042】
前記水酸基を有するモノマー(a4)に由来する単位の含有率は、前記アクリル単量体(A)中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0043】
前記酸基を有するモノマー(a3)及び水酸基を有するモノマー(a4)に由来する単位の合計は、前記アクリル重合体(A)中、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは22質量%以下、さらに好ましくは17質量%以下である。
【0044】
前記アクリル重合体(A)中、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、前記窒素含有モノマー(a2)、酸基を有するモノマー(a3)及び水酸基を有するモノマー(a4)に由来する単位の合計は、前記アクリル重合体(A)中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0045】
前記アクリル重合体(A)は、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、窒素含有モノマー(a2)、酸基を有するモノマー(a3)及び水酸基を有するモノマー(a4)以外のその他の単量体(ax)に由来する単位を有していてもよい。
【0046】
前記その他の単量体(ax)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチラート、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル単量体;スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、パラヒドロキシスチレン等の芳香族ビニル単量体;イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、エチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
【0047】
前記アクリル重合体(A)中、その他の単量体(ax)に由来する単位の含有率は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下であり、下限は0質量%である。
【0048】
前記アクリル重合体(A)の重量平均分子量は、好ましくは10万以上、より好ましくは20万以上、さらに好ましくは30万以上であり、好ましくは200万以下、より好ましくは180万以下、さらに好ましくは150万以下である。
【0049】
本明細書において、前記アクリル重合体(A)の数平均分子量、重量平均分子量は、ポリスチレンを標準試料としゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ法(GPC)を用いて測定された換算値を表すものとする。
【0050】
本発明の粘着剤組成物において、前記アクリル重合体(A)の含有率は、不揮発分中、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0051】
本明細書において、粘着剤組成物の不揮発分とは、粘着剤組成物必要に応じて含まれる溶剤成分を除いた部分を表すものとする。
【0052】
前記アクリル重合体(A)は、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、窒素含有モノマー(a2)、酸基を有するモノマー(a3)、水酸基を有するモノマー(a4)及び必要に応じて用いるその他の単量体(ax)を、重合開始剤の存在下、共重合させることにより製造することができる。
【0053】
前記重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤の1種又は2種以上を用いることができ、過酸化ベンゾイルや過酸化ラウロイル等の過酸化物開始剤;アソビスメチルブチロニトリル、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ開始剤などが挙げられる。
【0054】
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤(B)を含む。架橋剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤、多価金属塩架橋剤、金属キレート架橋剤、ケト・ヒドラジド架橋剤、オキサゾリン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、シラン架橋剤等が挙げられる。
【0055】
中でも、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、オキサゾリン架橋剤、カルボジイミド架橋剤が好ましく、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、カルボジイミド架橋剤がより好ましく、エポキシ架橋剤が特に好ましい。
【0056】
前記エポキシ架橋剤の含有率は、前記架橋剤(B)中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりいっそう好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0057】
前記架橋剤(B)の含有量は、前記アクリル重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。
【0058】
本発明の粘着剤組成物は、可塑剤(C)を含む。前記可塑剤(C)は、水酸基を有する化合物(c1)と酸基を有する化合物(c2)とのエステル化物を含む。
【0059】
前記水酸基を有する化合物(c1)は、1分子中に水酸基を1個以上有する化合物であり、前記水酸基を有する化合物(c1)において、水酸基の個数は、1分子中に、好ましくは1個以上であり、好ましくは6個以下、より好ましくは4個以下、さらに好ましくは2個以下である。
【0060】
前記水酸基を有する化合物(c1)は、直鎖状、分岐鎖状等の鎖式化合物であってもよく、脂環、芳香環等の環式化合物であってもよく、鎖式基と環式基とを組み合わせた化合物であってもよく、鎖式化合物であることが好ましい。
【0061】
前記水酸基を有する化合物(c1)は、以下の式(2)又は(3)で表される化合物を含むものであることが好ましい。
【0062】
【0063】
[式(2)中、R4は、炭素原子数2~18の1価の鎖状炭化水素基又は炭素原子数5~50の1価の炭化水素基に含まれる1つ以上の-CH2-が、-O-に置き換わった基を表す。
式(3)中、R5は、炭素原子数2~18の2価の鎖状炭化水素基又は炭素原子数5~65の2価の炭化水素基に含まれる1つ以上の-CH2-が、-O-に置き換わった基を表す。]
【0064】
R4で表される鎖状炭化水素基としては、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、2ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、イソノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、へプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基が挙げられ、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。R4で表される鎖状炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは4~16、より好ましくは6~13である。
【0065】
R4で表される基のうち、1価の鎖状炭化水素基に含まれる1つ以上の-CH2-が、-O-に置き換わった基としては、炭素原子数2~10のオキシアルキレン単位を1つ以上有する基が挙げられる。前記オキシアルキレン単位の炭素原子数は、好ましくは2~6、より好ましくは2~4、さらに好ましくは3~4である。前記水酸基を有する化合物(c1)において、該オキシアルキレン単位は、1種又は2種以上であってもよく、例えば、炭素原子数2のオキシアルキレン単位と、炭素原子数3以上のオキシアルキレン単位とが両方含まれていてもよい。
【0066】
R4で表される基のうち、1価の鎖状炭化水素基に含まれる1つ以上の-CH2-が、-O-に置き換わった基において、オキシアルキレン単位の数は、合計で、好ましくは1以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは15以下である。
【0067】
R5で表される2価の鎖状炭化水素基としては、エタンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基、ノナンジイル基、デカンジイル基等のアルカンジイル基が挙げられ、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。R5で表される鎖状炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは2~10、より好ましくは2~6、さらに好ましくは3~4である。
【0068】
R5で表される基のうち、2価の鎖状炭化水素基に含まれる1つ以上の-CH2-が、-O-に置き換わった基としては、炭素原子数2~10のオキシアルキレン単位を1つ以上有する基が挙げられる。前記オキシアルキレン単位の炭素原子数は、好ましくは2~6、より好ましくは2~4、さらに好ましくは3~4である。前記水酸基を有する化合物(c1)において、該オキシアルキレン単位は、1種又は2種以上であってもよく、例えば、炭素原子数2のオキシアルキレン単位と、炭素原子数3以上のオキシアルキレン単位とが両方含まれていてもよい。
【0069】
R5で表される基のうち、2価の鎖状炭化水素基に含まれる1つ以上の-CH2-が、-O-に置き換わった基において、オキシアルキレン単位の数は、合計で、好ましくは2以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは15以下である。
【0070】
前記式(2)又は(3)で表される化合物の含有率は、前記水酸基を有する化合物(c1)中、合計で、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0071】
前記水酸基を有する化合物(c1)のうち、1分子中に水酸基を3個以上有する化合物としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0072】
前記酸基を有する化合物(c2)は、1分子中に酸基を1個以上有する化合物であり、前記酸基を有する化合物(c2)において、酸基の個数は、1分子中に、好ましくは1個以上であり、好ましくは6個以下、より好ましくは4個以下、さらに好ましくは3個以下、いっそう好ましくは2個以下である。前記酸基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。
【0073】
前記酸基を有する化合物(c2)は、直鎖状、分岐鎖状等の鎖状化合物であってもよく、脂環、芳香環等の環構造を含む化合物であってもよい。前記酸基を有する化合物(c2)は、酸基以外に、水酸基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基等の他の官能基を有していてもよく、有していなくともよい。
【0074】
前記酸基を有する化合物(c2)は、以下の式(4)又は(5)で表される化合物を含むものであることが好ましい。
【0075】
【0076】
[式(4)及び(5)中、R6は、炭素原子数4~20の1価の脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~20の1価の芳香族炭化水素基を表し、前記R6で表される脂肪族炭化水素基は、置換基として水酸基を有していてもよい。
R7は、炭素原子数4~20の2価の脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~20の2価の芳香族炭化水素基を表す。
Raは、酸基を表す。]
【0077】
R6で表される脂肪族炭化水素基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基が挙げられる。R6で表される脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。R6で表される脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは4~16、より好ましくは4~10である。
【0078】
R6で表される芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基等の単環又は多環の芳香族炭化水素基が挙げられる。R6で表される芳香族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは6~15、より好ましくは6~10である。
【0079】
R6は、炭素原子数4~10の1価の脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~10の1価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0080】
R7で表される2価の脂肪族炭化水素基としては、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基、ノナンジイル基、デカンジイル基等のアルカンジイル基が挙げられる。R7で表される2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。R7で表される2価の脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは4~16、より好ましくは4~10である。
【0081】
R7で表される2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基等の単環又は多環の2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。R7で表される2価の芳香族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは6~15、より好ましくは6~10である。
【0082】
R7は、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数4~10の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0083】
Raで表される酸基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられ、カルボキシル基であることが好ましい。
【0084】
前記式(4)又は(5)で表される化合物の含有率は、前記酸基を有する化合物(c2)中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0085】
前記酸基を有する化合物(c2)のうち、1分子中に酸基を3個以上有する化合物としては、トリカルボン酸;クエン酸等のヒドロキシトリカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸等が挙げられる。
【0086】
前記可塑剤(C)中、前記水酸基を有する化合物(c1)及び酸基を有する化合物(c2)のエステル化物の含有率は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0087】
前記可塑剤(C)の数平均分子量は6,000以下であり、好ましくは3,000以下、より好ましくは2,000以下であり、下限は、例えば100以上であってもよく、150以上であってもよい。
【0088】
前記可塑剤(C)の溶解度パラメータは、好ましくは7.5(cal/mol3)1/2以上、より好ましくは8.0(cal/mol3)1/2以上であり、好ましくは10.5(cal/mol3)1/2以下、より好ましくは10.3(cal/mol3)1/2以下である。前記可塑剤(C)の溶解度パラメータは、smallの式に基づいて算出した値とする。
【0089】
前記可塑剤(C)の含有量は、前記アクリル重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。
【0090】
本発明の粘着剤組成物は、溶剤(D)を含むことが好ましい。前記溶剤(D)としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤等が挙げられる。中でも、エステル溶剤を含むことが好ましい。
【0091】
前記エステル溶剤の含有率は、前記溶剤(D)中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0092】
前記溶剤(D)の含有率は、前記粘着剤組成物中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下である。
【0093】
本発明の粘着剤組成物では、低黄変性を維持するために、粘着付与樹脂の含有量が低減されていることが好ましく、前記アクリル重合体100質量部に対して、好ましくは10質量部未満、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下、いっそう好ましくは1質量部以下であり、0質量部であることが好ましい。
【0094】
本発明の粘着剤組成物は、添加剤として、pHを調整するための塩基(アンモニア水など)や酸;発泡剤;可塑剤;軟化剤;酸化防止剤;ガラスやプラスチック製の繊維・バルーン・ビーズ・金属粉末等の充填剤;顔料・染料等の着色剤;pH調整剤;皮膜形成補助剤;レベリング剤;増粘剤;撥水剤;消泡剤;酸触媒;酸発生剤、シランカップリング剤等を含んでいてもよい。
【0095】
シランカップリング剤は、官能基と反応性シリル基とを有する化合物であり、アクリル重合体(A)と反応しうる基と、反応性シリル基とを有することが好ましい。前記シランカップリング剤は、前記アクリル重合体(A)が酸基を有するモノマー(a3)に由来する単位を含む場合は、少なくとも酸基と反応しうる基を有することが好ましく、前記アクリル重合体(A)が水酸基を有するモノマー(a4)に由来する単位を含む場合は、少なくとも水酸基と反応しうる基を有することが好ましい。また、前記アクリル重合体(A)が酸基を有するモノマー(a3)に由来する単位と水酸基を有するモノマー(a4)に由来する単位の両方を含む場合は、酸基と反応しうる基及び水酸基と反応しうる基のそれぞれを有する化合物を2種以上組み合わせて用いてもよく、酸基と反応しうる基を有する化合物のみを用いてもよい。
【0096】
前記シランカップリング剤は、前記アクリル重合体(A)が酸基を有するモノマー(a3)に由来する単位を含む場合は、少なくとも酸基と反応しうる基を有することが好ましく、前記アクリル重合体(A)が水酸基を有するモノマー(a4)に由来する単位を含む場合は、少なくとも水酸基と反応しうる基を有することが好ましい。また、前記アクリル重合体(A)が酸基を有するモノマー(a3)に由来する単位と水酸基を有するモノマー(a4)に由来する単位の両方を含む場合は、酸基と反応しうる基及び水酸基と反応しうる基のそれぞれを有する化合物を2種以上組み合わせて用いてもよく、酸基と反応しうる基を有する化合物のみを用いてもよい。
【0097】
前記酸基と反応しうる基としては、例えば、エポキシ基、アミノ基等が挙げられ、前記水酸基と反応しうる基としては、例えば、イソシアネート基、イソシアヌレート基等が挙げられる。
【0098】
前記反応性シリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のトリアルコキシシリル基;メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基等のメチルジアルコキシシリル基などが挙げられ、前記トリアルコキシシリル基、メチルジアルコキシシリル基の一部又は全部が加水分解されて生じた基も含むものとする。
【0099】
前記シランカップリング剤としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するシランカップリング剤;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0100】
前記シランカップリング剤の含有量は、前記アクリル重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.0005質量部以上、より好ましくは0.001質量部以上、さらに好ましくは0.002質量部以上であり、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下、さらに好ましくは0.07質量部以下である。
【0101】
前記粘着剤組成物を支持体上に塗布し、乾燥させることによって、粘着層を形成することができる。前記支持体は、剥離シート及び粘着シート等の基材のいずれであってもよい。
【0102】
前記塗工方法としては、ナイフコーター、リバースコーター、ダイコーター、リップダイコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の方法を用いることができる。
【0103】
前記粘着層の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは75μm以下である。
【0104】
本発明の粘着フィルム(粘着シート又は粘着テープも本発明における粘着フィルムの技術的範囲に含まれるものとする)は、前記粘着層と前記基材とを有する。前記基材は、フィルム状、シート状、テープ状、板状、立体形状等のいずれであってもよく、前記基材の材質としては、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂等のプラスチック;ゴム;不織布;金属箔;紙などが挙げられ、プラスチックが好ましく、ポリエステル樹脂がより好ましい。また、前記基材は、表面が平滑なものであってもよく、繊維質基材、フォーム基材等の表面に凹凸を有するものであってもよい。
【0105】
前記基材の厚みは、好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは1,000μm以下である。
【0106】
本発明の粘着剤組成物から得られる粘着フィルムは、光学透明性を維持したまま、高接着力化し、耐久性を向上することが可能であり、保護フィルム、特に飛散防止用保護フィルムとして有用である。
【実施例】
【0107】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0108】
[合成例1]
<アクリル樹脂(A)の合成>
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート200質量部、2-エチルヘキシルアクリレート277質量部、シクロヘキシルアクリレート400質量部、ダイアセトンアクリルアミド50質量部、アクリル酸70質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート3質量部、酢酸エチル1000質量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら70℃まで昇温した。1時間後に、予め酢酸エチルにて溶解した2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)溶液10質量部(固形分5質量%)を添加した。その後、攪拌下70℃にて8時間ホールドした後、内容物を冷却し200メッシュ金網にて濾過し、不揮発分50質量%、粘度100,000mPa・s、重量平均分子量90万のアクリル樹脂(A1)を得た。
【0109】
[合成例2~5、比較合成例1]
(メタ)アクリレートモノマー(a1)、窒素含有モノマー(a2)、酸基を有するモノマー(a3)、水酸基を有するモノマー(a4)を表1、2に示す通りに変更したこと以外は、合成例1と同様にして、アクリル樹脂(A2)~(A5)、比較アクリル樹脂(A1’)を得た。
【0110】
[実施例1]
合成例1で得られたアクリル樹脂(A1)100質量部に対して、可塑剤Iとしてアジピン酸ジイソノニル(DINA)を0.5質量部とエポキシ系架橋剤(ファインタック硬化剤EX-50;DIC(株)製)0.1質量部を均一になるように攪拌混合することによってアクリル粘着組成物を得た。
【0111】
[実施例2~15、比較例1~6]
合成例1で得られたアクリル樹脂(A1)を100質量部用いる代わりに、合成例2~5、比較合成例1で得られたアクリル樹脂(A2)~(A5)、比較アクリル樹脂(A1’)をそれぞれ100質量部用い、可塑剤、架橋剤の種類及び量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、アクリル粘着組成物を得た。各可塑剤の組成を表1に示し、各アクリル粘着剤組成物で用いたアクリル樹脂の組成及び可塑剤、架橋剤の種類及び量を表2~4に示す。
【0112】
[粘着フィルムの加工方法]
表面に離型処理された厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(離型PET50)の表面に、溶剤乾燥後における膜厚が25μmとなるように後記実施例で得られたアクリル系粘着剤組成物を塗布し、80℃乾燥機中で3分間溶剤を揮発した後、PET50μmフィルムを貼り合せた。
【0113】
[接着力の測定方法]
前述の方法で作成した粘着フィルムを25mm幅に切ったものを試験片とした。被着体をSUS304ステンレス板で、表面仕上げBA(冷間圧延後、光輝熱処理)のステンレス板とし、2kgロール×2往復で被着体に貼り付けた。貼り付け1時間後に23℃、50%RHの雰囲気下で180度剥離強度を測定し、接着力とした。
【0114】
[耐湿熱接着力の測定方法]
前述の方法で作成した粘着フィルムを25mm幅に切ったものを試験片とした。被着体をSUS304ステンレス板で、表面仕上げBA(冷間圧延後、光輝熱処理)のステンレス板とし、2kgロール×2往復で被着体に貼り付けた。貼り付け1時間後に85℃85%RHの雰囲気下で500時間放置した。その後、23℃、50%RHの雰囲気下で24時間後に前述の方法と同様に、180度剥離強度を測定し、耐湿熱接着力とした。
【0115】
[ループタックの測定方法]
前述の方法で作成した粘着フィルムを24mm幅、175mm長さに切ったものを試験片とし、被着体はガラス板とした。試験片を円周127mm、持手24mmとなるように、粘着剤面を外側にして両末端を合わせ、合わせた末端の被着体からの高さが100mmとなる地点から25mmとなる地点まで300mm/minで降下させ、被着体に接触させた。3秒後に300mm/minで引き上げて剥離強度を測定し、最大値を読み取った。
【0116】
[保持力の測定方法]
前述の方法で作成した粘着フィルムを25mm幅に切ったものを試験片とした。鏡面仕上げしたステンレス板に対し、接着面積が25mm×25mmとなるように2kgロール×2往復にて貼り付けた。このステンレス板に貼り付けた試験片に対し、70℃雰囲気下にて1kgの荷重を、ステンレス板に対して0°の方向(剪断方向)にかけ、粘着フィルムが被着体からずれ落ちるまでの時間を測定し、その保持時間を保持力とした。また、24時間後にも保持されていた場合には、保持時間を24時間以上とし、初期貼り付け位置からのずれ幅を測定し併記した。
【0117】
[黄変度(b*)の測定方法]
前述の方法で作成した粘着フィルムをガラス板に貼り付けたものを試験片とした。その試験片を、光源C、視野2°、「分光測色計」CM-5000d(コニカミノルタセンシング(株)製)にて、JIS K 7105に準じて黄変度(b*)を測定した。
【0118】
[ヘイズ、光線透過率の測定方法]
前述の方法で作成した粘着フィルムをガラス板に貼り付けたものを試験片とした。その試験片を、濁度計「NDH5000」(日本電色工業(株)製)にて、JIS K 7361-1に準じてヘイズ、光線透過率を測定した。
【0119】
[耐湿熱試験後の黄変度(b*)、ヘイズ、光線透過率の測定方法]
前述の方法で作成した粘着フィルムをガラス板に貼り付け、85℃×85%RH雰囲気下に500時間放置した。その後、もう一枚の離型PET50を剥離し、前述の方法と同様に、JIS K 7105に準じて黄変度(b*)測定した。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
実施例1~15は、本発明の実施例であり、光学透明性を維持したまま、高接着力化し、良好な貼付性を示した。比較例1~4は、可塑剤を含まない例であり、初期接着力、貼付性の点で十分に満足できるものではなかった。比較例5は、可塑剤の数平均分子量が、6,000を超える例であり、初期接着力、貼付性の点で十分に満足できるものではなかった。比較例6は、アクリル重合体に窒素含有モノマー(a2)を含まない例であり、初期接着力、貼付性の点で十分に満足できるものではなかった。