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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】結晶成長装置及び結晶成長方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/36 20060101AFI20240214BHJP
   C30B 23/06 20060101ALI20240214BHJP
   C30B 35/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C30B29/36 A
C30B23/06
C30B35/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019197404
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021070600
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100137017
【弁理士】
【氏名又は名称】眞島 竜一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤川 陽平
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-030994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/36
C30B 35/00
C30B 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
坩堝と、
前記坩堝の外側に設置され、前記坩堝を囲むヒータと、
前記ヒータの外側に設置され、前記ヒータを囲むコイルと、を備え、
前記ヒータの前記坩堝側の内面は、第1領域と、前記第1領域より前記坩堝の外側面から離れた第2領域と、を備え、
前記坩堝は、内部に原料設置領域と結晶設置部とを有し、
前記原料設置領域と前記結晶設置部とは対向し、
前記第1領域は、前記結晶設置部を囲み、
前記第2領域は、前記原料設置領域を囲む、結晶成長装置。
【請求項2】
前記ヒータの前記内面は、前記第1領域と前記第2領域との間に段差を有する、請求項1に記載の結晶成長装置。
【請求項3】
前記ヒータの前記内面は、前記第1領域と前記第2領域との間が連続する、請求項1に記載の結晶成長装置。
【請求項4】
前記第2領域と前記坩堝の前記外側面との最短距離は、前記第1領域と前記坩堝の前記外側面との最短距離の2倍以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の結晶成長装置。
【請求項5】
坩堝と、
前記坩堝の外側に設置され、前記坩堝を囲むヒータと、
前記ヒータの外側に設置され、前記ヒータを囲むコイルと、を備えた結晶成長装置を用いた結晶成長方法であって、
前記坩堝は、内部に原料設置領域と結晶設置部とを有し、
前記原料設置領域と前記結晶設置部とは対向し、
前記ヒータの前記坩堝側の内面の第1領域は、前記結晶設置部を囲み、
前記ヒータの前記坩堝側の内面の第2領域は、前記原料設置領域を囲み、
前記ヒータの前記第1領域と前記坩堝の外側面との距離を、前記ヒータの前記第2領域と前記坩堝の外側面との距離より小さくして、前記ヒータから前記坩堝に至る輻射量を制御する、結晶成長方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶成長装置及び結晶成長方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて絶縁破壊電界が1桁大きく、バンドギャップが3倍大きい。また、炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて熱伝導率が3倍程度高い等の特性を有する。そのため炭化珪素(SiC)は、パワーデバイス、高周波デバイス、高温動作デバイス等への応用が期待されている。このため、近年、上記のような半導体デバイスにSiCエピタキシャルウェハが用いられるようになっている。
【0003】
SiCエピタキシャルウェハは、SiC単結晶基板上に化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)によってSiC半導体デバイスの活性領域となるSiCエピタキシャル膜を成長させることによって製造される。
【0004】
SiC単結晶基板は、SiC単結晶を切り出して作製する。このSiC単結晶は、一般に昇華法によって得ることができる。昇華法は、黒鉛製の坩堝内に配置した台座にSiC単結晶からなる種結晶を配置し、坩堝を加熱することで坩堝内の原料粉末から昇華した昇華ガスを種結晶に供給し、種結晶をより大きなSiC単結晶へ成長させる方法である。
【0005】
近年、市場の要求に伴い、SiC単結晶の大口径化、長尺化の要望も高まっている。またSiC単結晶の大口径化、長尺化の要望と共に、SiC単結晶の高品質化及び生産効率の向上も求められている。
【0006】
特許文献1には、坩堝の周囲を囲むヒータが高さ方向に分離され、分離されたヒータの間に棒状部材又は中間断熱材があるSiC単結晶製造装置が記載されている。棒状部材又は中間断熱材によって、分離されたヒータ同士が熱的に分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-219294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
坩堝内において、原料が昇華する原料側の温度と昇華ガスが再結晶化する種結晶側の温度との温度差を大きくすると、SiC単結晶の成長速度が速くなる。特許文献1に記載のSiC単結晶製造装置のようにヒータを分離しても、それぞれのヒータからの輻射は、加熱対象である坩堝に至り、坩堝内の温度差を十分大きくすることができない。またヒータを分離することで、装置の部品数が多くなり、作業性が低下する。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、坩堝内の温度分布を制御できる結晶成長装置及び結晶成長方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0011】
(1)第1の態様にかかる結晶成長装置は、坩堝と、前記坩堝の外側に設置され、前記坩堝を囲むヒータと、前記ヒータの外側に設置され、前記ヒータを囲むコイルと、を備え、前記ヒータの前記坩堝側の内面は、第1領域と、前記第1領域より前記坩堝の外側面から離れた第2領域と、を備える。
【0012】
(2)上記態様にかかる結晶成長装置において、前記ヒータの前記内面は、前記第1領域と前記第2領域との間に段差を有してもよい。
【0013】
(3)上記態様にかかる結晶成長装置において、前記ヒータの前記内面は、前記第1領域と前記第2領域との間が連続していてもよい。
【0014】
(4)上記態様にかかる結晶成長装置において、前記坩堝は、内部に原料設置領域と結晶設置部とを有し、前記原料設置領域と前記結晶設置部とは対向し、前記第1領域は、前記結晶設置部を囲み、前記第2領域は、前記原料設置領域の周囲を囲む構成でもよい。
【0015】
(5)上記態様にかかる結晶成長装置において、前記第2領域と前記坩堝の前記外側面との最短距離は、前記第1領域と前記坩堝の前記外側面との最短距離の2倍以上であってもよい。
【0016】
(6)第2の態様にかかる結晶成長方法は、坩堝と、前記坩堝の外側に設置され、前記坩堝を囲むヒータと、前記ヒータの外側に設置され、前記ヒータを囲むコイルと、を備えた結晶成長装置を用いた結晶成長方法であって、前記ヒータと前記坩堝との距離を場所によって変えて、前記ヒータから前記坩堝に至る輻射量を制御する。
【発明の効果】
【0017】
上記態様にかかる結晶成長装置及び結晶成長方法によれば、坩堝内の温度分布を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る結晶成長装置の断面模式図である。
図2】比較例に係る結晶成長装置の断面模式図である。
図3】第1変形例に係る結晶成長装置の断面模式図である。
図4】第2変形例に係る結晶成長装置の断面模式図である。
図5】実施例1、実施例2、比較例1のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態にかかる結晶成長装置および坩堝について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材質、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0020】
(結晶成長装置)
図1は、第1実施形態にかかる結晶成長装置の断面模式図である。図1に示す結晶成長装置100は、坩堝10とヒータ20とコイル30とを備える。図1では、理解を容易にするために、原料G、種結晶S、種結晶S上に結晶成長した単結晶Cを同時に図示している。
【0021】
まず方向について定義する。坩堝10内において原料Gから種結晶Sに向かう方向をz方向とする。またz方向に対して垂直で、坩堝10の中心から広がる方向を径方向とする。図1は、坩堝10の中心軸に沿う任意の断面で切断した断面図である。
【0022】
坩堝10は、内部に単結晶Cを結晶成長させる結晶成長空間Kを有する柱状体である。坩堝10は、例えば、円柱状である。坩堝10は、z方向に分離可能であり、原料G及び種結晶Sを内部に設置できる。昇華法によって単結晶Cを結晶成長させる際は、坩堝10の底部には原料Gが充填される。原料Gと対向する坩堝10の上部には結晶設置部11がある。結晶設置部11は、原料Gと対向する。昇華法によって単結晶Cを結晶成長させる際は、結晶設置部11に種結晶Sが設置される。原料Gから昇華した原料ガスが、種結晶Sの表面で再結晶化することで、単結晶Cが結晶成長する。
【0023】
坩堝10は、単結晶Cを成長する際の高温に耐えることができる材料からなる。坩堝10は、例えば、黒鉛である。黒鉛は昇華温度が3550℃と極めて高く、成長時の高温にも耐えることができる。
【0024】
ヒータ20は、坩堝10の外側にある。ヒータ20は、例えば、坩堝10の周囲を囲む。ヒータ20は、径方向にコイル30と坩堝10の間にある。ヒータ20は、例えば、z方向に延びる円筒状である。ヒータ20のz方向の高さは、例えば、坩堝10のz方向の高さより大きい。ヒータ20は、コイル30が生じる磁界を受け、誘導加熱される。発熱したヒータ20からの輻射は、坩堝10を加熱する。坩堝10は、ヒータ20を介して間接加熱される。ヒータ20は、例えば、黒鉛、TaC、TaC被覆された黒鉛等からなる。
【0025】
ヒータ20の内面20Aは、坩堝10の外側面10Sに面する。図1に示すヒータ20の内面20Aは、第1領域20A1と第2領域20A2に区分される。第1領域20A1は、内面20Aのうち坩堝10の外側面10Sから距離L1だけ離れた部分である。第2領域20A2は、内面20Aのうち坩堝10の外側面10Sから距離L2だけ離れた部分である。図1に示すヒータ20は、第1領域20A1と第2領域20A2との間に段差Spを有する。
【0026】
第2領域20A2は、第1領域20A1より坩堝10の外側面10Sから離れている。第2領域20A2と坩堝10の外側面10Sとの距離L2は、第1領域20A1と坩堝10の外側面10Sとの距離L1より大きい。第2領域20A2と坩堝10の外側面10Sとの距離L2は、第1領域20A1と坩堝10の外側面10Sとの距離L1の2倍以上が好ましく、4倍以上がより好ましい。
【0027】
第1領域20A1と坩堝10の外側面10Sとの距離L1は、例えば、0.1mm以上50mm以下であり、1mm以上20mm以下とすることが好ましく、5mm以上15mm以下とすることがより好ましい。また第2領域20A2と坩堝10の外側面10Sとの距離L2は、例えば、10mm以上200mm以下であり、20mm以上150mm以下とすることが好ましく、30mm以上100mm以下とすることがより好ましい。
【0028】
第1領域20A1と第2領域20A2とは、z方向の異なる位置にある。第1領域20A1は、例えば、坩堝10の上方を囲む。第1領域20A1は、例えば、坩堝10の結晶設置部11の周囲を囲む。第1領域20A1は、例えば、ヒータ20のz方向の高さ中心より結晶設置部11側にある。第2領域20A2は、例えば、坩堝10の下方を囲む。第2領域20A2は、例えば、坩堝10の原料Gが充填される原料設置領域の周囲を囲む。第2領域20A2は、例えば、ヒータ20のz方向の高さ中心より原料設置領域側にある。
【0029】
コイル30は、ヒータ20の外側にある。コイル30は、坩堝10及びヒータ20の周囲を巻回している。コイル30に電流を流すと、コイル30の内側に磁界が発生する。発生した磁界は、ヒータ20内に誘導電流を生み出す。ヒータ20は誘導電流により発熱し、誘導加熱される。コイル30は、例えば、シングルコイルであり、連続する一つの配線からなる。
【0030】
第1実施形態にかかる結晶成長装置100は、坩堝10のz方向の温度分布を大きくすることができる。
【0031】
図2は、比較例1にかかる結晶成長装置101の断面模式図である。比較例1にかかる結晶成長装置101は、ヒータ21の内面21Aと坩堝10の外側面10Sとの距離がz方向のいずれの位置でも一定である点が、第1実施形態にかかる結晶成長装置100と異なる。その他の構成は、図1に示す例と同様である。
【0032】
比較例1にかかる結晶成長装置101の場合、ヒータ21の内面21Aと坩堝10の外側面10Sとは略平行で向き合っている。ヒータ21のいずれの位置から発生した輻射も坩堝10の外側面10Sに至ることができる。例えば、ヒータ21が均一な場合、ヒータ21のz方向の中心が加熱中心hpとなる。加熱中心hpから等方的に広がる輻射は、坩堝10の外側面10Sのいずれの位置にも到達し、坩堝10の外側面10Sは均一に加熱される。
【0033】
これに対し、第1実施形態にかかる結晶成長装置100は、ヒータ20の内面20Aと坩堝10の外側面10Sとの距離が場所によって異なる。そのため、ヒータ20の輻射の発生箇所によっては、輻射が坩堝10の外側面10Sに至れない。例えば、第2領域20A2の第1点p1から等方的に広がる輻射のうち結晶設置部11側に向う輻射r1は、段差Spの影となる坩堝10の外側面10Sに届かないが、原料設置領域側に向う輻射r2は、坩堝10の外側面10Sに届く。ヒータ20の多くの位置からの輻射を受ける坩堝10の原料設置領域側の温度は、結晶設置部11側の温度より高くなり、坩堝10の側面に温度勾配が形成される。
【0034】
坩堝10の原料設置領域側の温度が結晶設置部11側の温度より高くなると、原料Gの昇華が促進され、かつ、単結晶Cの再結晶化が促進される。そのため、第1実施形態にかかる結晶成長装置100は、単結晶Cの成長速度を高めることができる。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0036】
図3は、第1変形例にかかる結晶成長装置の断面模式図である。第1変形例にかかる結晶成長装置102は、ヒータ22の形状が図1に示す結晶成長装置100と異なる。図3において、図1と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省く。
【0037】
ヒータ22の内面22Aは、第1領域22A1と第2領域22A2とを有する。第1領域22A1及び第2領域22A2は、図1の第1領域20A1及び第2領域20A2に対応する。図3に示すヒータ22は、第1領域22A1と第2領域22A2とが連続的である。第1領域22A1と第2領域22A2とが連続的であるとは、接平面の傾きがz方向に連続的に変化することを意味する。
【0038】
第1変形例にかかる結晶成長装置102は、第1実施形態にかかる結晶成長装置100と同様の効果を奏する。
【0039】
図4は、第2変形例にかかる結晶成長装置の断面模式図である。第2変形例にかかる結晶成長装置103は、ヒータ23の形状が図1に示す結晶成長装置100と異なる。図4において、図1と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省く。
【0040】
ヒータ23の内面23Aは、第1領域23A1と第2領域23A2と第3領域23A3とを有する。第1領域23A1と第2領域23A2と第3領域23A3のそれぞれと坩堝10の外側面10Sとの距離は、それぞれ異なる。第2領域23A2は、第1領域23A1より坩堝10の外側面10Sから離れており、第3領域23A3は、第2領域23A2より坩堝10の外側面10Sから離れている。
【0041】
第2変形例にかかる結晶成長装置103は、第1実施形態にかかる結晶成長装置100と同様の効果を奏する。
【0042】
(結晶成長方法)
第2実施形態にかかる結晶成長方法は、坩堝とヒータとコイルとを備えた結晶成長装置を用いた結晶成長方法である。ヒータは、坩堝の外側にあり、坩堝を囲む。コイルは、ヒータの外側にあり、ヒータを囲む。第2実施形態にかかる結晶成長方法は、ヒータと坩堝との距離を場所によって変えて、ヒータから坩堝に至る輻射量を制御する。
【0043】
ヒータと坩堝との距離を近づけるほど、輻射が坩堝の外側面に伝搬しにくくなり、坩堝の温度が下がる。これに対し、ヒータと坩堝との距離を離すと、輻射が坩堝の外側面に届き、坩堝の温度が高くなる。第1実施形態にかかる結晶成長装置のように、結晶設置部11側において坩堝10の外側面10Sとヒータ20の内面20Aとの距離を、原料設置領域側における坩堝10の外側面10Sとヒータ20の内面20Aとの距離より近づけると、坩堝10の結晶設置部11側の温度が原料設置領域側の温度より低くなる。例えば、昇華法によるSiCの単結晶の成長の場合に、種結晶の周囲の温度を原料の温度より低くすることは有用である。またこの場合に限られず、種々の理由で坩堝内の温度を変更したい事情がある場合に、ヒータと坩堝との距離によって坩堝内の温度を制御できる。
【実施例
【0044】
(実施例1)
図1に示す構成をシミュレーションで再現し、坩堝を加熱時の坩堝の側面における温度を求めた。シミュレーションにはSTR社製のVirtual Reactorを用いた。当該シミュレーションは、炉内の温度分布のシミュレーションに広く用いられているものであり、実際の実験結果と高い相関を有することが確認されている。
【0045】
シミュレーションは、二次元軸対象のモデルで計算し、シミュレーションの条件は以下とした。
【0046】
坩堝10の外側面10Sと第1領域20A1との距離:10mm
第1領域20A1におけるヒータ20の径方向の内径:270mm
第1領域20A1におけるヒータ20の径方向の幅(厚み):85mm
第1領域20A1のz方向の長さ:130mm
坩堝10の外側面10Sと第2領域20A2との距離:45mm
第2領域20A2におけるヒータ20の径方向の内径:340mm
第2領域20A2におけるヒータ20の径方向の幅(厚み):50mm
第2領域20A2のz方向の長さ:240mm
【0047】
(実施例2)
実施例2は、以下の条件を変更した点が実施例1と異なる。その他の条件は、実施例1と同様にして、シミュレーションを行った。
【0048】
坩堝10の外側面10Sと第2領域20A2との距離:65mm
第2領域20A2におけるヒータ20の径方向の内径:380mm
第2領域20A2におけるヒータ20の径方向の幅(厚み):30mm
【0049】
(比較例1)
比較例1は、図2に示す構成をシミュレーションで再現し、坩堝を加熱時の坩堝の側面における温度を求めた。比較例1におけるシミュレーションの条件を以下に示す。
【0050】
坩堝10の外側面10Sと内面21Aとの距離:45mm
内面21Aにおけるヒータ20の径方向の内径:340mm
内面21Aにおけるヒータ20の径方向の幅(厚み):50mm
【0051】
実施例1、実施例2、比較例1の結果を図5に示す。図5の縦軸は坩堝10の外側面10Sにおける温度であり、図5の横軸は坩堝10の最上面から-z方向の距離である。図5に示すように、実施例1及び実施例2は、比較例1と比較してz方向の温度変化が大きかった。特に第1領域20A1と重なるz方向の位置において、坩堝10の外側面10Sの温度が大きく低下した。
【符号の説明】
【0052】
10…坩堝
10S…外側面
11…結晶設置部
20,21,22,23…ヒータ
20A,21A,22A,23A…内面
20A1,21A1,22A1,23A1…第1領域
20A2,21A2,22A2,23A2…第2領域
23A3…第3領域
30…コイル
100,101、102,103…結晶成長装置
C…単結晶
G…原料
hp…加熱中心
K…結晶成長空間
L1,L2…距離
p1…第1点
r1,r2…輻射
S…種結晶
Sp…段差
図1
図2
図3
図4
図5