(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】薬注システムの管理方法
(51)【国際特許分類】
G01G 19/62 20060101AFI20240214BHJP
G01G 19/40 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G01G19/62
G01G19/40 Z
(21)【出願番号】P 2019233031
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】西田 秀揮
(72)【発明者】
【氏名】内田 和義
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-293432(JP,A)
【文献】特開2011-173198(JP,A)
【文献】特開2005-170599(JP,A)
【文献】特開2013-037137(JP,A)
【文献】国際公開第2017/154574(WO,A1)
【文献】特開2016-161969(JP,A)
【文献】特開2003-212225(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0046215(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 1/00-23/48
B65G 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ又は循環冷却水系の補給水に薬注する薬注システムの薬液貯留タンクへの薬液補充時期を予測する薬注システムの管理方法において、
薬液を貯留した
該タンクの重量を重量センサーで測定し、測定した重量の経時変化から該タンクへの薬液補充時期を予測する薬注システムの管理方法であって、
下記式で算出される単位時間当たりの該タンク内の薬液の平均減少量aと、該平均減少量算出の期間の長さ(t
1-t
2)との積(W
1-W
2)が、該重量センサーのフルスケールの1%を超えるように、該平均減少量算出の期間の長さ(t
1-t
2)を設定
し、
前記タンク内の薬液残量と前記平均減少量aとに基づいて薬液補充時期を予測することを特徴とする薬注システムの管理方法。
a=(W
1-W
2)/(t
1-t
2)
W
1:時刻t
1におけるタンク内の薬液残量(重量)
W
2:時刻t
2におけるタンク内の薬液残量(重量)
【請求項2】
請求項
1の薬注システムの管理方法において、予測された薬液補充時期と、メンテナンス作業者の移動到達時間又はスケジュールとに基づいてアラームを送信することを特徴とする、薬注システムの管理方法。
【請求項3】
請求項1
又は2の薬注システムの管理方法において、アラームを送信する対象を指定可能とすることを特徴とする、薬注システムの管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬注システムの管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラや循環冷却水系あるいは水処理設備等において、タンク内の薬液を注入対象水にケミカルポンプで注入する場合、タンク内の薬液残量を監視して補充時期を予測したり、ケミカルポンプの安定した動作の監視を行っている。
【0003】
従来、薬液タンク内の残量やケミカルポンプ吐出量を測定するには以下の方法がとられていた。
(a) 電極式センサー、フロート式の液位センサー、タンク底部水圧を感知する圧力センサー、タンク内水面の高さをレーザー反射光で光学式に検知する液位センサー等によってタンク内の液位を測定する。
(b) ポンプのサクション側かデリベリ側のホース等に流量センサーを設置し、流量を測定する。また、測定流量を積算することによりタンク内の残量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭63-95322号公報
【文献】特開平7-101403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薬液が発泡性であるとケミカルポンプにエア噛みが生じることがある。また、薬液もしくは薬液の蒸発気体に起因して接液したり、タンク内に設置したセンサーに腐食が生じ安定的な計測が困難になることがある。
【0006】
また、残量の管理も薬液タンクの形状が複雑であると水位高さだけでは簡単に予想できない。容器が簡易であっても液位だけでは質量に換算できないので、扱う薬剤が多いとその比重を考慮する必要が出てくる。
【0007】
また、残量と吐出量の把握はこれまでは残量と吐出の各用途に対して各々センサーを使用することが多かったので、センサー数を減少させることによりコストを削減することが望まれる。
【0008】
本発明は、薬液やその蒸気に非接触な方式でタンク内残量の測定を行い、薬液注入量や薬品在庫量の管理を行うことができる薬注システムの管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の薬注システムの管理方法は、薬液を貯留したタンクの重量を測定し、測定した重量の経時変化から該タンクへの薬液補充時期を予測する。
【0010】
本発明の一態様では、薬液残量の下限と薬液減少速度とに基づいて薬液補充時期を予測する。
【0011】
本発明の一態様では、薬液減少速度の平均値、最大値又は予測値と、前記薬液残量の下限値とに基づいて薬液補充時期を予測する。
【0012】
本発明の一態様では、予測された薬液補充時期と、メンテナンス作業者の移動到達時間又はスケジュールとに基づいてアラームを送信する。
【0013】
本発明の一態様では、アラームを送信する対象を指定可能とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、薬液やその蒸気に非接触な方式でタンク内残量の測定を行い、薬液注入量や薬品在庫量の管理を行うことができる。また、使用量の平均数値と残量から、補充必要性が予測できるようになるので、薬剤メーカーや事業者の薬剤受発注業務が容易になるとともに、給水量等のインプットデータから薬注量の監視も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態に用いられる薬注システムの構成図である。
【
図3】薬注システムの設置例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0017】
図1の通り、薬液タンク1及び薬液タンク1内に貯留された薬液Lの合計重量が重量センサー2で測定可能となっている。薬液タンク1内の薬液Lは、ケミカルポンプ3から薬注配管4を介して薬注対象水系に添加される。
【0018】
重量センサー2としては、圧力センサーや電子秤りなどいずれのものであってもよい。なお、薬液タンク1内の薬液量は、重量センサー2の検出重量から、空の薬液タンク1及び付帯設備の重量(風袋重量)を減算することにより求められる。重量センサー2の検出信号は、有線又は無線回線5によって監視装置(図示略)に送信される。
【0019】
図1のシステムによると、例えば、薬液タンク1内の薬液残量の経時変化を測定して、単位時間当たりの減少量を把握し、薬液残量と単位時間当たりの減少量に基づいて薬液補充時期を予測することができる。
【0020】
【0021】
時刻t1における薬液タンク1内の薬液残量(重量)をW1とし、時刻t2における薬液タンク1内の薬液残量をW2とした場合、時刻t1~t2間の平均減少量(ケミカルポンプ3の平均吐出量)aは
a=(W1-W2)/(t2-t1)
として求められる。
【0022】
残量W1が例えば薬品補充で増加した場合は、新たに計測単位時間の読み直しを行って、再度測定を開始してもよい。
【0023】
薬液タンク1内の薬液残量が規定量Wmにまで減少する時刻tmは、時刻t2から(W2-Wm)/a後(又は時刻t1から(W1-Wm)/a後)として算出される。
【0024】
時刻tmに達した場合、又はそれよりの所定時間早い時点で、薬液補充要求信号(アラーム)をインターネット等を介して送信することにより、薬液切れを起こすことなく薬注運転を行うことができる。
【0025】
薬液補充要求信号は監視装置に送信されてもよく、メンテナンス作業員の携帯端末に送信されてもよく、複数個所に送信されてもよい。アラーム送信先を、管理装置のサーバーにアクセスして設定変更できるようにしてもよい。
【0026】
なお、上記の「所定時間」の一例としては、薬液補充要求信号を受信してからメンテナンス作業員が現場に到着するまでに要する時間、あるいはそれに若干の余裕時間を加えた時間が挙げられるが、これに限定されない。
【0027】
一般に重量などの測定精度(分解能)はフルスケールの1%程度なので、平均減少量と単位時間との積(単位時間当たりの減少量)がその分解能を超えるように(例えば、減少量の測定最小単位がタンク容量×1/100を超えるように)平均減少量算出の期間(単位時間)の長さを設定することが良い。更に、薬液の残量の規定量は、薬液タンク容量から測定精度の誤差分を除いた範囲内(薬液タンク容量×{{100-誤差分(例えば、1)}/100}で算出される量以下)に収まるように重量秤量時の誤差から演算して設定してもよい。そして、上記の設定に基づいて所定の時期に薬液補充要求信号を発してよい。また、タンクを軽量素材として、薬液タンクに付帯するポンプや制御盤通信機器などは可能な限り重量測定に影響の出ない範囲に設置したほうが測定誤差への影響が出ないので良い。
【0028】
図2では、時刻t
1,t
2の点P
1(t
1,W
1)及びP
2(t
2,W
2)の2点を外挿してアラーム時刻t
mを予測するものとしているが、時刻t
1~t
2間、時刻t
2~t
3間、時刻t
3~t
4間、時刻t
n~t
n+1間のように複数(n個)の期間にわたって残量減少速度を演算し、各残量減少速度を平均し、この平均減少速度に基づいてアラーム時刻を予測するようにしてもよい。
【0029】
或いは、平均減少速度は単純平均だけではなく、例えば過去の平均減少値と、薬剤添加水系の稼働状況のほか、気温や工場操業などのビッグデータを演算させてこれを加味した最大値を演算させて用いて、最短となる時刻を予測してアラーム時刻としてもよい。
【0030】
また、
図1のシステムを用いると、所定期間における薬液使用量と、該期間の補給水または給水量、或いはブロー量とに基づいて対象水当たりの添加濃度を演算したり、対象水量を監視して薬液使用速度を把握したりすることも可能である。
【0031】
薬液が希釈して使用される場合は、同上監視装置内で事前にインプットされた希釈率に応じて演算結果を提示することもできる。
【0032】
また、管理装置にメンテナンス作業員のスケジュールデータを与えておき、アラーム送信予定時よりも早い時期であっても作業員スケジュールに合わせてメンテナンス作業員を現場に派遣するような運用システムとしてもよい。
【0033】
【0034】
ボイラ、循環冷却水系などの給水対象水系に対し補給水などの給水が給水配管10を介して供給され、この給水に対し薬液タンク1内の薬液がケミカルポンプ3によって添加されている。給水流量F(単位は例えばL/min)が流量計11で測定され、その測定信号が管理装置12に送信される。
【0035】
管理装置12は、給水流量に対応して、規定添加率となるようにケミカルポンプ3に制御信号を与え、例えばインバータ制御によって薬液添加量を制御する。
【0036】
微小時間Δtにおける給水量は、F・Δtであり、この給水量F・Δtの水に対し薬液添加率bにて薬液を添加する場合、Δt間におけるタンク残量の減少量ΔWがΔW=F・Δt・bとなるようにケミカルポンプ3が制御される。
【0037】
そのため、目標添加率bにて薬注を行っているシステムの場合、給水流量Fを監視することにより、薬液タンク1内の残量の経時変化(減少量)を求めることができる。
【0038】
なお、管理装置12は、薬液タンク1に近接して配置されてもよく、薬液タンク1から離隔して配置し、インターネット等を利用して流量検出信号及びケミカルポンプ制御信号を送受信するようにしてもよい。このようにすれば、複数の薬注システムを共通の管理装置によって管理することができる。
【0039】
また、薬液タンク一つに対して、複数のケミカルポンプを使用する場合は、複数のケミカルポンプと複数の水系流量信号とを把握し、インプットして残量管理することも可能である。
【0040】
以上のように、本発明は、タンク外にある重量測定センサーでタンク重量を測定することによって薬液使用量や残量を把握するので、測定センサーの材質やポンプのエア噛などを考慮することなく薬液使用量と残量の適切な管理が可能となる。
【0041】
また、上記のように薬液残量を通信回線を介して監視すれば、複数個所の管理が可能となる。
【0042】
複数個所又は設備の管理を行う場合において、各個所又は設備ごとに補充時期のアラーム配信のタイミングや頻度を変化させてもよい。
【0043】
本発明では、各測定結果、補充時期の予測結果、及び予測の成否の情報を蓄積してシステムに学習させ、気候や季節なども考慮して予測の精度を向上させてもよい。これにより、薬液タンク又は設備ごとに最適な管理・監視が可能となる。
【0044】
また、残量や薬注の管理データをインターネット経由、または現地制御盤でまとめ、例えば、使用量の平均値、最大値又は予測値と残量とから、補充必要性が予測できるようになるので、薬剤メーカーや事業者の薬剤受発注業務が容易になるとともに、給水量等のインプットデータから薬注量の監視も可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1 薬液タンク
2 重量センサー
3 ケミカルポンプ
4 流量計