(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】定着装置、および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G15/20 535
(21)【出願番号】P 2020012555
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】山中 健太郎
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-111243(JP,A)
【文献】特開2017-116922(JP,A)
【文献】特開2018-169467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な無端状の定着部材と、
前記定着部材の外周面に当接する対向部材と、
前記定着部材を加熱するための発熱体と、
前記定着部材の内周側から前記対向部材に当接してニップ部を形成して、金属材料からなるニップ形成部材と、
前記ニップ形成部材を面圧分散部材を介して支持する支持部材と、
前記ニップ形成部材と前記支持部材の間に配設され
、前記ニップ形成部材に比べて高剛性の材質からなる面圧分散部材と、を備え、
前記面圧分散部材と前記ニップ形成部材の接触面の面積が、前記面圧分散部材と前記支持部材の接触面の面積よりも大きい、
ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
回転可能な無端状の定着部材と、
前記定着部材の外周面に当接する対向部材と、
前記定着部材を加熱するための発熱体と、
前記定着部材の内周側から前記対向部材に当接してニップ部を形成して、金属材料からなるニップ形成部材と、
前記ニップ形成部材を
面圧分散部材を介して切断面で支持する支持部材と、
前記ニップ形成部材と前記支持部材の間に配設され
、前記ニップ形成部材に比べて高剛性の材質からなる面圧分散部材と、を備え、
前記面圧分散部材と前記ニップ形成部材の接触面の面積が、前記面圧分散部材と前記支持部材の接触する切断面の面積よりも大きい、
ことを特徴とする定着装置。
【請求項3】
回転可能な無端状の定着部材と、
前記定着部材の外周面に当接する対向部材と、
前記定着部材を加熱するための発熱体と、
前記定着部材の内周側から前記対向部材に当接してニップ部を形成して、金属材料からなるニップ形成部材と、
前記ニップ形成部材を
面圧分散部材を介して長手方向において複数の切断面で支持する支持部材と、
前記ニップ形成部材と前記支持部材の間に配設され
、前記ニップ形成部材に比べて高剛性の材質からなる面圧分散部材と、を備え、
前記面圧分散部材と前記ニップ形成部材の接触面の面積が、前記面圧分散部材と前記支持部材の接触する切断面の総面積よりも大きい、
ことを特徴とする定着装置。
【請求項4】
前記ニップ形成部材の金属材料がアルミである、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記ニップ形成部材の金属材料が銅である、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記面圧分散部材は、前記ニップ形成部材に比べて高剛性の形状からなる、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項
5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記面圧分散部材は、前記ニップ形成部材に対して熱伝導率が低い材質からなる、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項
6のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項8】
前記支持部材の切断面が、断続した凸部で構成される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項
7のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記支持部材の複数の切断面又は断続した凸部に対応した複数の面圧分散部材で構成される、
ことを特徴とする請求項3又は請求項
8に記載の定着装置。
【請求項10】
前記ニップ形成部材と前記面圧分散部材の間に熱伝導率の小さい断熱部材を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項
9のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項
10のいずれか1項に記載の定着装置を備える、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
回転可能な無端状の定着部材と、
前記定着部材の外周面に当接する対向部材と、
前記定着部材を加熱するための発熱体と、
前記定着部材の内周側から前記対向部材に当接してニップ部を形成する発熱体を有するニップ形成部材と、
前記ニップ形成部材を面圧分散部材を介して複数の切断面で支持する支持部材と、
前記ニップ形成部材と前記支持部材の間に配設され
、前記ニップ形成部材に比べて高剛性の材質からなる面圧分散部材と、を備え、
前記面圧分散部材と前記ニップ形成部材の接触面の面積が、前記面圧分散部材と前記支持部材の接触面の面積よりも大きい、
ことを特徴とする定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の定着装置では、通紙時の軸方向の温度ムラを抑制するために熱容量と均熱性を両立した金属の薄板材料から形成されたニップ形成部材を、支持部材への熱の移動を少なくする目的で接触面を小さくし、また対向部材から押圧による撓みよってニップの中央部が狭くなるのを回避するため、一定量の連続した弧状の凸形状を切断面に設けた支持部材で支持する。
【0003】
例えば、特許文献1では、可撓性を有する無端状の定着部材と、前記定着部材を加熱する熱源と、前記定着部材に対向する加圧部材と、前記定着部材と前記加圧部材との間にニップを形成するニップ形成部材と、前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、を有する定着装置において、前記支持部材と当接する前記ニップ形成部材の裏面が長手方向において非直線形状を有する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようにニップ形成部材の支持部材に凸形状を設ける場合、ニップ形成部材が薄板形状であると荷重集中によりニップ形成部材が変形するという問題があった。
【0005】
本発明は、ニップ形成部材への荷重集中を改善することが可能な定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる定着装置は、回転可能な無端状の定着部材と、前記定着部材の外周面に当接する対向部材と、前記定着部材を加熱するための発熱体と、前記定着部材の内周側から前記対向部材に当接してニップ部を形成して、金属材料からなるニップ形成部材と、前記ニップ形成部材を面圧分散部材を介して支持する支持部材と、前記ニップ形成部材と前記支持部材の間に配設され、前記ニップ形成部材に比べて高剛性の材質からなる面圧分散部材と、を備え、前記面圧分散部材と前記ニップ形成部材の接触面の面積が、前記面圧分散部材と前記支持部材の接触面の面積よりも大きい、 ことを特徴とする定着装置として構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ニップ形成部材への荷重集中を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態における画像形成装置の例を示す図である。
【
図3】従来のニップ形成部材と支持部材の斜視図である。
【
図4】本実施の形態における定着装置を示す断面図である。
【
図5】本実施の形態におけるニップ形成部材と支持部材の斜視図である。
【
図7】本実施の形態における面圧分散部材の例を示す図である。
【
図8】本実施の形態における面圧分散部材の他の例を示す図である。
【
図9】面圧分散部材がニップ形成部材と比べて剛性を高めることのできる形状の一例を示す図である。
【
図10】切断面が断続した凸部で形成される支持部材と、凸部に応じて配設された複数の面圧分散部材の一例を示す図である。
【
図11】ニップ形成部材と面圧分散部材の間に熱伝導率の小さい断熱部材を備える定着装置の一例を示す図である。
【
図12】ニップ形成部材と面圧分散部材の間に熱伝導率の小さい断熱部材を備える定着装置の一例を示す図である。
【
図13】
図10に示した支持部材の切断面の高さを均一にし、
図10に示した複数の面圧分散部材のうち、面圧分散部材の厚みを異ならせた構成例を示す図である。
【
図14】同一高さの支持面を有する支持部材とニップ形成部材の間に同じ厚みの面圧低減部材を挟みつつ、高精度な中央凸形状を作り出す例を示す図である。
【
図15】ニップ形成部材に発熱部を設けた定着装置の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態では、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に使用される定着装置およびこれを備えた画像形成装置において、通紙時の軸方向の温度ムラを抑制するために低熱容量と均熱性を両立した金属の薄板材料から形成されたニップ形成部材を、熱の移動を少なくする目的で接触面を小さくし、また対向部材から押圧による撓みよってニップの中央部が狭くなるのを回避するため、一定量の連続した弧状の凸形状を切断面に設けた支持部材で支持する。例えば、アルミや銅からなるニップ形成部材と比較して剛性に優れた部材や形状からなり、ニップ形成部材との接触面が支持部材の前記切断面の面積よりも大きい面圧分散部材をニップ形成部材と支持部材の間に備える。これにより、対向部材の押圧に対して、支持部材からの集中した荷重を、面圧分散部材が荷重をニップ形成部材との接触面全体に分散した荷重としてニップ形成部材に伝えることができ、ニップ形成部材の塑性変形を防止することが可能となる。上記記載の本発明の特徴について、以下の図面を用いて詳細に解説する。
【0010】
図1に示す画像形成装置1は、カラーレーザープリンタであり、その装置本体の中央には、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kが設けられている。 各作像部4Y,4M,4C,4Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
【0011】
具体的に、各作像部4Y,4M,4C,4Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体5と、感光体5の表面を帯電させる帯電装置6と、感光体5の表面にトナーを供給する現像装置7と、感光体5の表面をクリーニングするクリーニング装置8などを備える。 なお、
図1では、ブラックの作像部4Kが備える感光体5、帯電装置6、現像装置7、クリーニング装置8のみに符号を付しており、その他の作像部4Y,4M,4Cにおいては符号を省略している。
【0012】
各作像部4Y,4M,4C,4Kの下方には、感光体5の表面を露光する露光装置9が配設されている。 露光装置9は、光源、ポリゴンミラー、f-θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体5の表面へレーザー光を照射するようになっている。
【0013】
また、各作像部4Y,4M,4C,4Kの上方には、転写装置3が配設されている。 転写装置3は、中間転写体としての中間転写ベルト30と、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ31と、二次転写手段としての二次転写ローラ36と、二次転写バックアップローラ32と、クリーニングバックアップローラ33と、テンションローラ34、ベルトクリーニング装置35を備える。
【0014】
中間転写ベルト30は、無端状のベルトであり、二次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33及びテンションローラ34によって張架されている。 ここでは、二次転写バックアップローラ32が回転駆動することによって、中間転写ベルト30は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するようになっている。
【0015】
4つの一次転写ローラ31は、それぞれ、各感光体5との間で中間転写ベルト30を挟み込んで一次転写ニップを形成している。 また、各一次転写ローラ31には、図示しない電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ31に印加されるようになっている。
【0016】
二次転写ローラ36は、二次転写バックアップローラ32との間で中間転写ベルト30を挟み込んで二次転写ニップを形成している。 また、上記一次転写ローラ31と同様に、二次転写ローラ36にも図示しない電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ36に印加されるようになっている。
【0017】
ベルトクリーニング装置35は、中間転写ベルト30に当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードを有する。 このベルトクリーニング装置35から伸びた図示しない廃トナー移送ホースは、図示しない廃トナー収容器の入り口部に接続されている。
【0018】
プリンタ本体の上部には、ボトル収容部2が設けられており、ボトル収容部2には、補給用のトナーを収容する4つのトナーボトル2Y,2M,2C,2Kが着脱可能に装着されている。 各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kと上記各現像装置7との間には、図示しない補給路が設けてあり、この補給路を介して各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kから各現像装置7へトナーが補給されるようになっている。
【0019】
一方、プリンタ本体の下部には、記録媒体としての用紙Pを収容した給紙トレイ10や、給紙トレイ10から用紙Pを搬出する給紙ローラ11等が設けてある。 なお、記録媒体には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート等が含まれる。 また、図示しないが、手差し給紙機構が設けてあってもよい。
【0020】
プリンタ本体内には、用紙Pを給紙トレイ10から二次転写ニップを通過させて装置外へ排出するための搬送路Rが配設されている。 搬送路Rにおいて、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向上流側には、搬送タイミングを計って用紙Pを二次転写ニップへ搬送するタイミングローラとしての一対のレジストローラ12が配設されている。
【0021】
また、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向下流側には、用紙Pに転写された未定着画像を定着するための定着装置20が配設されている。 さらに、定着装置20よりも搬送路Rの用紙搬送方向下流側には、用紙を装置外へ排出するための一対の排紙ローラ13が設けられている。 また、プリンタ本体の上面部には、装置外に排出された用紙をストックするための排紙トレイ14が設けてある。
【0022】
続いて、
図1を参照して、本実施形態に係るプリンタの基本的動作について説明する。 作像動作が開始されると、各作像部4Y,4M,4C,4Kにおける各感光体5が図示しない駆動装置によって図の時計回りに回転駆動され、各感光体5の表面が帯電装置6によって所定の極性に一様に帯電される。 帯電された各感光体5の表面には、露光装置9からレーザー光がそれぞれ照射されて、各感光体5の表面に静電潜像が形成される。 このとき、各感光体5に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。 このように各感光体5上に形成された静電潜像に、各現像装置7によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
【0023】
また、作像動作が開始されると、二次転写バックアップローラ32が図の反時計回りに回転駆動し、中間転写ベルト30を図の矢印で示す方向に周回走行させる。 また、各一次転写ローラ31に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ31と各感光体5との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。
【0024】
その後、各感光体5の回転に伴い、感光体5上の各色のトナー画像が一次転写ニップに達したときに、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、各感光体5上のトナー画像が中間転写ベルト30上に順次重ね合わせて転写される。 かくして、中間転写ベルト30の表面にフルカラーのトナー画像が担持される。 また、中間転写ベルト30に転写しきれなかった各感光体5上のトナーは、クリーニング装置8によって除去される。 そして、各感光体5の表面が図示しない除電装置によって除電され、表面電位が初期化される。
【0025】
プリンタの下部では、給紙ローラ11が回転駆動を開始し、給紙トレイ10から用紙Pが搬送路Rに送り出される。 搬送路Rに送り出された用紙Pは、レジストローラ12によって搬送が一旦停止される。
【0026】
その後、所定のタイミングでレジストローラ12の回転駆動を開始し、中間転写ベルト30上のトナー画像が二次転写ニップに達するタイミングに合わせて、用紙Pを二次転写ニップへ搬送する。 このとき、二次転写ローラ36には、中間転写ベルト30上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。 そして、この転写電界によって、中間転写ベルト30上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。 また、このとき用紙Pに転写しきれなかった中間転写ベルト30上の残留トナーは、ベルトクリーニング装置35によって除去され、除去されたトナーは図示しない廃トナー収容器へと搬送され回収される。
【0027】
その後、用紙Pは定着装置20へと搬送され、定着装置20によって用紙P上のトナー画像が当該用紙Pに定着される。 そして、用紙Pは、排紙ローラ13によって装置外へ排出され、排紙トレイ14上にストックされる。
【0028】
以上の説明は、用紙上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像部を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0029】
図2は、従来の定着装置を示す断面図であり、
図3は、従来のニップ形成部材と支持部材の斜視図である。以下、
図2に基づき、定着装置20の構成について説明する。
【0030】
図2に示すように、定着装置20は、定着部材としての定着ベルト21と、定着ベルト21の外周面に当接する対向部材としての加圧ローラ22と、定着ベルト21を加熱する加熱源としてのハロゲンヒータ23と、定着ベルト21の内周側から加圧ローラ22に当接してニップ部Nを形成するニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持する支持部材25と、ハロゲンヒータ23からの熱を定着ベルト21へ反射する反射部材26と、ハロゲンヒータ23からの熱を必要に応じて部分的にもしくは通紙条件により遮蔽する遮蔽部材27を設けても良い。また、定着ベルト21の温度を検知する温度検知手段としての温度センサ28等を備える。
【0031】
上記定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む)で構成されている。 詳しくは、定着ベルト21は、ニッケルもしくはSUS等の金属材料又はポリイミド(PI)などの樹脂材料で形成された内周側の基材と、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで形成された外周側の離型層によって構成されている。 また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
【0032】
また、弾性層が無い場合は、熱容量が小さくなり定着性が向上するが、未定着トナーを押しつぶして定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラが生じる可能性がある。 これを防止するには、厚さ100μm以上の弾性層を設けることが望ましい。 厚さ100μm以上の弾性層を設けることで、弾性層の弾性変形により微小な凹凸を吸収することができるので、光沢ムラの発生を回避することができるようになる。
【0033】
本実施形態では、定着ベルト21の低熱容量化を図るために、定着ベルト21を薄くかつ小径化している。 具体的には、定着ベルト21を構成する基材、弾性層、離型層のそれぞれの厚さを、20~50μm、100~300μm、10~50μmの範囲に設定し、全体としての厚さを1mm以下に設定している。 また、定着ベルト21の直径は、20~40mmに設定している。 さらに低熱容量化を図るためには、望ましくは、定着ベルト21全体の厚さを0.2mm以下にするのがよく、さらに望ましくは、0.16mm以下の厚さとするのがよい。 また、定着ベルト21の直径は、30mm以下とするのが望ましい。
【0034】
上記加圧ローラ22は、芯金22aと、芯金22aの表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等から成る弾性層22bと、弾性層22bの表面に設けられたPFA又はPTFE等から成る離型層22cによって構成されている。 加圧ローラ22は、図示しない加圧手段によって定着ベルト21側へ加圧され定着ベルト21を介してニップ形成部材24に当接している。 この加圧ローラ22と定着ベルト21とが圧接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層22bが押しつぶされることで、所定の幅のニップ部Nが形成されている。 なお、定着部材と対向部材は、互いに圧接する場合に限らず、加圧を行わず単に接触させるだけの構成とすることも可能である。
【0035】
また、加圧ローラ22は、プリンタ本体に設けられた図示しないモータ等の駆動源によって回転駆動するように構成されている。 加圧ローラ22が回転駆動すると、その駆動力がニップ部Nで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転するようになっている。
【0036】
本実施形態では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。 その場合、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータ等の加熱源を配設してもよい。 また、弾性層22bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ22の内部に加熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。 スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。
【0037】
上記ハロゲンヒータ23は、定着ベルト21の内周側で、かつ、ニップ部Nの用紙搬送方向の上流側に配設されている。ハロゲンヒータ23は、プリンタ本体に設けられた電源部により出力制御されて発熱するように構成されており、その出力制御は、上記温度センサ28による定着ベルト21の表面温度の検知結果に基づいて行われる。 このようなヒータ23の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定できるようになっている。 なお、定着ベルト21の温度を検知する温度センサ28の代わりに、加圧ローラ22の温度を検知する温度センサ(図示省略)を設け、その温度センサで検知した温度により、定着ベルト21の温度を予測するようにしてもよい。
【0038】
本実施形態では、ハロゲンヒータ23は2本設けられているが、プリンタで使用する用紙のサイズ等に応じて、ハロゲンヒータ23の本数を1本又は3本以上としてもよい。 また、定着ベルト21を加熱する加熱源として、ハロゲンヒータ以外に、抵抗発熱体、又はカーボンヒータ等を用いることも可能である。
【0039】
上記ニップ形成部材24は、ベルト内面と直接摺動するようになっている。加圧ローラ22の加圧力を受けることで、ニップ部Nの形状が決まる。 本実施形態では、ニップ部Nの形状が平坦状であるが、凹形状やその他の形状としてもよい。
【0040】
上記支持部材25は、
図3に示すようにニップ形成部材24を切断面で支えることにより、ニップ形成部材24と支持部材25は線接触となるため、支持部材25に熱が流れにくくなる。また、支持部材25の切断面に弧状の凸形状を設けることで荷重がかかったときにステーの撓みをキャンセルして中央部ニップの減少を防ぐ効果を付与することができる。
【0041】
上記反射部材26は、ハロゲンヒータ23と対向するように支持部材25に固定支持されている。 この反射部材26によって、ハロゲンヒータ23から放射された熱(又は光)を定着ベルト21へ反射することで、熱が支持部材25等に伝達されるのを抑制し、定着ベルト21を効率良く加熱すると共に省エネルギー化を図っている。 反射部材26の材料としては、アルミニウムやステンレス等が用いられる。 特に、アルミニウム製の基材に輻射率の低い(反射率の高い)銀を蒸着したものを用いた場合、定着ベルト21の加熱効率を向上させることが可能である。
【0042】
上記遮蔽部材27は、厚さ0.1mm~1.0mmの金属板を、定着ベルト21の内周面に沿った円弧状の断面形状に形成して構成されている。 また、遮蔽部材27は、必要に応じて定着ベルト21の周方向に移動可能となっている。 本実施形態では、定着ベルト21の周方向領域において、ハロゲンヒータ23が定着ベルト21に直接対向して加熱する直接加熱領域と、ハロゲンヒータ23と定着ベルト21との間に遮蔽部材27以外の他部材(反射部材26、支持部材25、ニップ形成部材24等)が介在する非直接加熱領域とがあるが、熱遮蔽する必要がある場合は、遮蔽部材27を直接加熱領域側の遮蔽位置に配設する。 一方、熱遮蔽の必要がない場合は、遮蔽部材27を非直接加熱領域側の退避位置へ移動させ、遮蔽部材27を反射部材26や支持部材25の裏側へ退避させることが可能となっている。 また、遮蔽部材27は耐熱性を要するため、その素材には、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属材料、又はセラミックを用いることが好ましい。
【0043】
図4は、請求項1の一実施形態に係る定着装置を示す断面図であり、
図5は、請求項1の一実施形態に係るニップ形成部材と支持部材の斜視図である。
【0044】
本実施形態の定着装置20を
図4、
図5を用いて説明する。本実施形態における定着装置20は無端状の定着部材21と、定着部材の外周面に当接する対向部材22と、定着部材21を加熱する加熱源23と、定着部材21の内周側から対向部22に当接してニップ部Nを形成するニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持する支持部材25と、ニップ形成部材24と支持部材25の間に独立して配設され、ニップ形成部材24との接触面が支持部材25の接触面の面積よりも大きい面圧分散部材29を備える点が従来と異なる。
【0045】
通紙時の軸方向の温度ムラを抑制するため低熱容量と均熱性を両立した金属の薄板材料から形成されたニップ形成部材24と支持部材25の間に、ニップ形成部材24との接触面が支持部材25の接触面の面積よりも大きい面圧分散部材29を配設することで、対向部材の押圧に対して、支持部材25からの集中した荷重を、面圧分散部材29が荷重をニップ形成部材24との接触面全体に分散した荷重として伝えることができ、ニップ形成部材24の塑性変形を防止することが可能となる。
【0046】
支持部材25のニップ形成部材を支持する面を切断面25aのような加工性に優れるため高精度な連続した凸形状を設けやすい切断面にすることで、対向部材から押圧による撓みよってニップの中央部が狭くなるのを回避する効果も得つつも、面圧分散部材29によってニップ形成部材24の塑性変形を防止することが可能である。また、複数の切断面25aで支えることで、安定してニップ形成部材24と面圧分散部材29を支持することが可能となる。
【0047】
続いて、請求項4、5、6、8の一実施形態に係る定着装置について説明する。面圧分散部材29について
図6、
図7を用いて説明する。
図6に示す従来の構成では、金属材料からなるニップ形成部材24を、鋼板などからなる支持部材25で支持している。ニップ形成部材24の金属材料は、均熱性を向上させるため熱伝導率が高い(大きい)ことが求められるため、加工性や生産量に優れる金属のなかでも熱伝導率の大きいアルミや銅とすることが望ましい。しかし、支持部材25から、ニップ形成部材24へ限られた接触面でf1、f2といった集中した荷重がかかってしまうため、支持部材25の鋼板よりも剛性に劣ったアルミや銅からなるニップ形成部材24が塑性変形してしまう問題がある。
【0048】
図7に示す本実施例では、アルミや銅からなるニップ形成部材24と比較して剛性が同等かそれよりも剛性強い部材や形状(加工硬化させた形状や、厚みの厚い形状)からなり、ニップ形成部材24との接触面が支持部材25の前記切断面の面積よりも大きい面圧分散部材29をニップ形成部材24と支持部材25の間に備えることで、対向部材22の押圧Fに対して、支持部材25からの集中した荷重f1、f2を、面圧分散部材29が荷重f1、f2をニップ形成部材5との接触面全体に分散した荷重faとしてニップ形成部材24に伝えることができ、ニップ形成部材24の塑性変形を防止することが可能となる。また、面圧分散部材29は、アルミや銅と比較して剛性に優れるだけでなく、アルミや銅、鋼板よりも熱伝導率の低い(小さい)材質とすることでニップ形成部材24からの熱の移動を防止することも可能となるため、ステンレス材とすることが望ましい。また、プレス部品を使用した面圧分散部材の場合には、支持面及びニップ形成部材に接触する面が切断面ではない方が好ましい。プレス加工の切断面は粗く出来ているため、面全体での接触を確保し難く、結果として一部に圧力が集中してしまい、面圧分散効果が得られにくいからである。
【0049】
面圧分散部材29を独立した部品とすることで、支持部材25の加工しやすい切断面をそのまま利用することができるため、高精度の凸形状を保つことができる。また、支持部材25と同一化することが難しい弾性部材や樹脂材料などを材質とすることが可能となる。その他にも、支持部材25と同一化加工する際にかかる応力を避けることができるため、面圧分散部材29を薄くして低熱容量化することでニップ形成部材24への熱移動を減らすことが可能となる。また、
図8に示すように、面圧分散部材29に開口部80を設けることで、低熱容量化することができるためニップ形成部材24の熱移動を減らすことが可能となる。
【0050】
続いて、請求項7の一実施形態に係る定着装置について説明する。
図9は、面圧分散部材29がニップ形成部材24と比べて剛性を高めることのできる形状の一例である。
図9のように、面圧分散部材29の表面を複数の凹凸形状90を設けることで、面圧分散部材29の強度を増して、面圧分散部材29自体の変形が防止可能となる。
【0051】
続いて、請求項9、10の一実施形態に係る定着装置について説明する。
図10は、切断面が断続した凸部1000で形成される支持部材25と、凸部1000に応じて配設された複数の面圧分散部材の一例である。
図10のように支持部材25を断続した凸形状として、それに応じて部分的に面圧分散部材29を配置することで、接触面積を更に減らすことができ、ニップ形成部材24の熱移動を減らすことが可能となる。
【0052】
続いて、請求項11の一実施形態に係る定着装置について説明する。
図11、
図12は、ニップ形成部材24と面圧分散部材29の間に熱伝導率の小さい断熱部材30を備える定着装置の一例である。図のようにニップ形成部材24の変形を防止する面圧低減部材29だけでなく、熱伝導率に優れた断熱部材30など複数組み合わせることで、ニップ形成部材24の熱移動を減らしつつ、ニップ形成部材24の変形を防止し、補強することが可能となる。断熱部材30の材質は、例えば、面圧分散部材29と同じ材質、あるいはアルミや銅、鋼板よりも熱伝導率の低い(小さい)材質とすればよい。
【0053】
続いて、加工容易化の支持部材で凸形状を作らずに、面圧分散部材の厚みを変えて凸形状を作ったさらなる例について説明する。
図13は、
図10に示した支持部材25の切断面25aの高さを均一にし、
図10に示した複数の面圧分散部材29のうち、面圧分散部材29のニップ形成部材24方向の厚みを異ならせた構成例を示している。
図13では、幅方向の端部側に配置された部材291と、幅方向の中央部に配置された部材292とを有し、部材291よりも部材292の厚みが厚くなるように配置され、面圧分散部材29を配置した時に、全体として上記中央部が上記端部よりも厚くなるようになっている。
【0054】
このような構成とすることにより、支持部材のニップ形成部材支持面25aは略同一高さに形成されているため、剪断加工が容易となり、さらに、2つのステー(支持部材25の各板)の支持面を同一基準面(フラットな実用データム形体)に合わせて一体化(接着・溶接等)することで2つのステーの高さが高精度で揃った支持部材を作ることができる。同一高さの支持面を有する支持部材25とニップ形成部材24の間に、厚みの異なる面圧低減部材を挟むことで、高精度な中央凸形状を作り出すことができる。この際、十分な凸形状を得るためにはニップ形成部材は少なくとも加圧ローラよりも高剛性の部材を使うことが望ましい。
【0055】
また、別の実施形態として、同一高さの支持面を有する支持部材とニップ形成部材の間に同じ厚みの面圧低減部材を挟みつつ、高精度な中央凸形状を作り出す方法を
図14に示す。
図14では、
図13に示した複数の面圧分散部材291、292の厚みは全て同一であり、幅方向の端部側に配置された部材294は、幅方向の中央部に配置された部材295よりも剛性が弱い(部材295のほうが部材294よりも高剛性である)部材により構成されている。
【0056】
このように、支持面の高さはすべて同一で、面圧分散部材の厚みも同一であるが、面圧分散部材の剛性を中央部側を強く、端部側を弱くすることで、加圧時に中央部が凸形状を作り出すことができる。このようにすることにより、製品組立時(非加圧)にニップ形成部材を置く面は平面になるため、安定して組み立てできるメリットも生じる。さらに、
図13及び
図14の実施形態は併せて用いることで、より適切な製品の機能や製品の組立性の要求に幅広く対応することが可能となる。尚、
図13、
図14は断続した支持面の図であるが、必ずしも断続している必要はなく、例えば、
図5に示した切断面25aのような形状であってもよい。
<変形例>
【0057】
ニップ形成部材24は、その一面に発熱部が設けられていても良い。発熱部が設けられたニップ形成部材の実施例を
図15、
図16に示す。
図15は、ニップ形成部材24に発熱部を設けた定着装置の概略を示す断面図である。
図16は、
図15に示した発熱部の構成例を示す図である。
図15、16に示すように、ニップ形成部材24の内部には、発熱体1501と、発熱体1501を発熱させる回路1502とを有した発熱機構部1500が設けられている。当該構成は、例えば、
図7に示したように、ニップ形成部材24と、面圧分散部材29と、面圧分散部材29を介して長手方向において複数の切断面25aで支持する支持部材25とを備えた定着装置に用いることができる。
以上説明したように、ニップ形成部材と支持部材の間に面圧分散部材を設けることで、荷重集中を改善することができる。また、従来の構成の支持部材の凸形状を保ち、ニップ形成部材から他部品への熱移動を減らしつつ、ニップ形成部材の塑性変形を防止して、画像形成に適切なニップ部を形成することが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 画像形成装置
20 定着装置
21 定着部材
22 対向部材
23 加熱源
24 ニップ形成部材
25 支持部材
29 面圧分散部材
25a 切断面
80 開口部
90 凹凸形状
30 断熱部材
291、292、294、295 部材
1500 発熱機構部
1501 発熱体
1502 回路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】