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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020018185
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021123025
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】内田 公一
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-162773(JP,A)
【文献】特開2019-162783(JP,A)
【文献】特開2019-064135(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0292511(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の記録面を加熱する第1の加熱部と、
前記記録媒体の裏面を加熱する第2の加熱部と、
前記第2の加熱部の温度を測定する温度センサと、
印刷の開始前に第2の加熱部による予熱を開始し、前記温度センサが測定した前記第2加熱部の温度と前記第2の加熱部の設定温度の差分が所定値以下となった場合に、前記第1の加熱部による予熱を開始する制御部と、
を備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
記録媒体の記録面を加熱する第1の加熱部と、
前記記録媒体の裏面を加熱する第2の加熱部と、
前記記録媒体の表面温度を測定する温度センサと、
印刷の開始前に第2の加熱部による予熱を開始し、前記温度センサが測定した温度が所定温度以上となった場合に、前記第1の加熱部による予熱を開始する制御部と、
を備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記温度センサが測定した温度と前記第2の加熱部の設定温度の差分が所定値より大きい場合には、前記第1の加熱部に対する加熱を開始しない、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記温度センサが測定した温度が所定温度未満である場合には、前記第1の加熱部に対する加熱を開始しない、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項5】
前記温度センサは、前記第2の加熱部と接触または非接触により前記第2の加熱部の温度を測定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項6】
前記温度センサは、前記記録媒体と非接触により前記記録媒体の表面温度を測定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンタにおけるインクの乾燥不良を防止するため、印刷前にIR(赤外線)ヒータを予熱する制御が知られている。例えば、特許文献1では、用紙の過剰乾燥を抑え用紙の熱変形を防止する目的で、IRヒータのON/OFF時間を調整し、DUTYを制御する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、IRヒータのDUTYを制御して用紙の熱変形を防止している。しかし、IRヒータのDUTYを制御する方法であるため、例えば、記録媒体を両面から加熱する場合には、記録媒体を余分に加熱してしまい、記録媒体にダメージを与えることがあり、必ずしもIRヒータを予熱し定着不良を防止するものではなかった。
本発明は、予熱制御による定着不良を防止することが可能な液体を吐出する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明にかかる液体を吐出する装置は、記録媒体の記録面を加熱する第1の加熱部と、前記記録媒体の裏面を加熱する第2の加熱部と、前記第2の加熱部の温度を測定する温度センサと、印刷の開始前に第2の加熱部による予熱を開始し、前記温度センサが測定した前記第2加熱部の温度と前記第2の加熱部の設定温度の差分が所定値以下となった場合に、前記第1の加熱部による予熱を開始する制御部と、を備えることを特徴とする液体を吐出する装置として構成される。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、予熱制御による定着不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施の形態におけるインクジェット記録装置の外観斜視図である。
図2図1に示したキャリッジ走査機構部の概略平面図である。
図3図1に示した乾燥部の断面図である。
図4】本実施例における記録装置の構成例を示すブロック図である。
図5】本実施例における点灯制御のフローチャートである。
図6】本実施例における点灯制御のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して、液体吐出装置の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態における液体吐出装置は、例えば、赤外線加熱装置を用いたシリアル型インクジェット記録装置において、以下の特徴を有する。すなわち、IRヒータ予熱点灯制御に際して、記録媒体(例えば、ロールメディア)を伝熱で温めるヒータが目標温度と現在温度の差分が所定の温度以下となった場合に予熱を開始する、あるいは、記録媒体の表面温度を測定するセンサの測定温度が所定温度以上となった場合に予熱を開始する。要するに、記録媒体が温まってからIRヒータの予熱を開始することが特徴になっている。上記記載の本発明の特徴について、以下の図面を用いて詳細に解説する。
【0008】
図1は、本実施の形態におけるインクジェット記録装置100の外観斜視図である。また、図2は、図1に示したキャリッジ走査機構部の概略平面図である。これらの図に示すように、記録装置100の内部には、両側板にガイドロッド1及び副ガイドレール2が掛け渡され、これらのガイドロッド1及び副ガイドレール2に、キャリッジ5が矢印A方向(主走査方向)に移動可能に保持されている。
【0009】
キャリッジ5には、駆動プーリ7と加圧プーリ10に掛け渡されたタイミングベルト11が接続されている。タイミングベルト11が駆動プーリ7を介した主走査モータ9によって駆動させることで、キャリッジ5は主走査方向Aに往復移動される。タイミングベルト11には、加圧プーリ10によって張力が掛けられており、たるむことなくキャリッジ5を駆動させることができる。「HP(ホームポジション)位置」Pは、例えば、維持機構26上部に設定される。
【0010】
印字媒体150は、キャリッジ5が往復移動する下部を矢印B方向(副走査方向)へ間欠的に搬送され、プラテン16上でキャリッジ5に搭載された記録ヘッド6k、6c、6m、6yから液滴であるインクを吐出し、所定の画像を形成する。すなわち、記録ヘッド6k~6yには複数のノズル(図示せず)設けられ、該ノズルよりインクを吐出して画像を形成する。
【0011】
画像形成された印字媒体150は、排紙ガイド32(図3)では、乾燥ヒータである乾燥部17により乾燥処理される。また、記録装置100には、記録ヘッド6(図3)にインクを供給するカートリッジ60とキャリッジ5に搭載された記録ヘッド6の維持メンテナンスを実行する維持機構26が備えられている。 キャリッジ5内にはエンコーダセンサ13が配置されており、両側板に掛け渡されたエンコーダシート14を連続的に読み取ることで、主走査方向位置を検知しながら2つの側板間を駆動する。
【0012】
また、キャリッジ5にはメディア検知センサ20が取り付けられており、例えば反射型のセンサが取り付けられ、LEDで照射した反射光を検知して下部に物体の有無を検知する。本実施例では反射光の値に応じて、キャリッジ直下のプラテン外側エリア、プラテン上エリア、メディア上エリアの識別を行う。
【0013】
図3は、図1に示した乾燥部17の断面図である。図3の左側が図1に示した記録装置100の正面となる。記録紙は図の右側から左側搬送方向Dに搬送される。搬送経路上には4つのヒータ、プレヒータ17-1、プリントヒータ17-2、ポストヒータ17-3、赤外線加熱装置17-4が配置されている。
【0014】
プレヒータ17-1は、記録媒体を温めるヒータである。プレヒータ17-1が搬送されてくる媒体側から温めることにより、インクが着弾したとき、蒸発しやすくする(予備加熱)。プリントヒータ17-2は、インクの水分を蒸発させることにより、インク表面が造膜化する(インクセット)ヒータである。造膜化によってインク表面に膜を張り、触っても手に付かない程度に乾燥させる。造膜化により、インク滴(ドット)の拡がりや大きさがこの時決定されるのでインクセットとも呼ばれる。画像を作る最も重要なヒータである。ポストヒータ17-3は、記録媒体を更に温めて、インクの水分・溶剤を蒸発させて、インクを乾燥させるヒータである。赤外線加熱装置17-4は、インクの表面を遠赤外線(IR)によりインク内部から加熱させ、インク内部の樹脂の重合反応を起こさせてインク硬化を行うヒータである。
【0015】
プレヒータ17-1、プリントヒータ17-2、ポストヒータ17-3には、それぞれ、ヒータが加熱する搬送面等の温度を測定する温度センサであるサーミスタ(17-1a、17-2a、17-3a)が設けられている。これらの温度センサの測定結果にもとづいてヒータ制御が行われ、搬送面の温度制御が行われる。温度センサにはサーミスタが使われ搬送面の裏側に取り付けられている。
【0016】
また、それぞれのヒータにはサーモスタット(17-1b、17-2b、17-3b)が設けられており、各ヒータが制御不能に陥って異常温度上昇した場合に、サーモスタットが切れるようになっている。各ヒータとそれぞれのサーモスタットとは直列に接続されており、サーモスタットが切れるとヒータへの給電も遮断され、安全性を確保している。
【0017】
赤外線加熱装置17-4は、少なくとも、熱源である単数或いは複数の赤外線ヒータ17-4a、記録媒体の表面温度を測定する非接触型温度センサであるサーモパイル17-4b、反射板17-4fの温度を測定することにより赤外線加熱装置17-4内部の温度を測定するサーミスタ17-4c、異常加熱時に断線することで安全性を確保しているサーモスタット17-4d、気流を発生させて媒体付近の湿度の上昇を抑制して乾燥を促進させ、更に赤外線加熱装置の過熱を抑制しているキュアファン17-4e、及び、赤外線ヒータ17-4aから発せられる赤外線を反射させて記録媒体方向への加熱を促進させる反射板17-4fとを備えている。
【0018】
赤外線加熱装置17-4の温度制御には、非接触型温度センサであるサーモパイル17-4bが使用される。サーモパイル17-4bは非接触により記録媒体の表面の温度を測定しており、記録媒体の表面温度が所望の温度になるように赤外線ヒータ17-4aの出力が制御される。第2の温度センサであるサーミスタ17-4cは反射板17-4f上に設置されており、反射板17-4fの温度を測定している。サーミスタ17-4cの役割は、赤外線加熱装置17-4内部の温度が異常上昇していないかを監視することと、予熱が完了しているかどうかを判断することである。
【0019】
図4は、本実施例における記録装置の構成例を示すブロック図である。図4に示すように、記録装置100は、本実施例における制御を行う制御部400を有している。制御部400は、CPU401、FPGA402、モータドライバ403を有し、例えば、CPU制御、メモリ制御、インク吐出制御、センサ制御、モータ制御といった記録装置が行う様々な制御を行う。また、記録装置100は、図1、2等に示したように、主走査モータ9と、主走査モータ9により駆動されるキャリッジ5と、キャリッジ5に搭載される記録ヘッド6と、主走査エンコーダセンサ13と、メディア検知センサ20とを有する。また、記録装置100は、副走査モータ404と、副走査モータ404により駆動される搬送部405とを有する。搬送部405は、副走査方向の搬送量を検知する副走査エンコーダセンサ4051と、記録媒体を副走査方向に搬送する搬送ローラ4052とを有する。その他、図示しない巻き取りモータ、巻き取りローラや巻き取りエンコーダセンサを有した巻き取り部、給紙モータ、給紙ローラや給紙エンコーダセンサを有した給紙部といった、通常の記録装置が備えるべき各種機構を有している。
【0020】
また、乾燥部17は、プレヒータ17-1(M個:副走査方向にM個に分割)、プリントヒータ17-2(N個:主走査方向にN個に分割)、ポストヒータ17-3(K個:主走査方向および副走査方向にK個に分割)、赤外線加熱装置17-4(L個:主走査方向にL個に分割あるいはL=1)を備える。また各ヒータの分割されたそれぞれのヒータの温度測定の為に、温度センサが配置されている。例えば、プレヒータ17-1には温度センサであるサーミスタ17-1aが設けられ、プリントヒータ17-2には温度センサであるサーミスタ17-2aが設けられ、ポストヒータ17-3には温度センサであるサーミスタ17-3aが設けられている。サーミスタ17-3aは、ポストヒータ17-3が加熱する搬送面の温度やポストヒータ17-3自体の温度、あるいはポストヒータ17-3の位置における記録媒体(例えば、ロールメディア)の裏面といった、ポストヒータ17-3周辺の温度を測定する。サーミスタ17-3aは、ポストヒータ17-3と接触または非接触によりポストヒータ17-3周辺の温度を測定する。また、赤外線加熱装置17-4には、温度センサ(第2の温度センサ)であるサーミスタ17-4cおよび非接触型温度センサであるサーモパイル17-4bが設けられている。制御部400は、上記温度センサの値を元にヒータが目標温度に達するように出力制御を行っている。
【0021】
図3に示したように、赤外線ヒータ17-4aは、記録媒体の記録面を加熱する加熱部であり、支持部材である反射板17-4fによって支持されている。ポストヒータ17-3は、記録媒体の記録面の裏面を加熱する加熱部を構成するコード状のヒータであり、粘着テープ等の手段により排紙、排紙ガイド32に貼り付けられている。ポストヒータ17-3の温度制御は、サーミスタ17-3aにより測定され、制御部400は、当該サーミスタ17-3aで測定した温度と目標温度との差分から、所定の温度となるようにポストヒータ17-3をON/OFF制御している。また、赤外線ヒータ17-4aの温度制御は、サーミスタ17-3aにより記録媒体上の温度が測定され、制御部400は、目標温度との差分から、所定の温度となるように赤外線ヒータ17-4aをON/OFF制御している。
【0022】
プリンタが省エネモード等によりポストヒータ17-3が加熱していない場合、記録媒体上の温度(サーミスタ17-3aで測定した温度)が低くなるため、赤外線ヒータ17-4aが過剰に予熱してしまい、記録媒体が熱変形してしまうことがある。このような課題を解決するために、図5のフローチャート、図6のタイミングチャートに従って、赤外線ヒータ17-4aを制御する。
【0023】
例えば、図5の(a)に示すように、制御部400は、プリンタに印字開始命令が入力されると、サーミスタ17-3aとポストヒータ17-3の設定温度の差分を確認し(S501)、当該差分がX℃以下であるか否かを判定する(S502)。制御部400は、サーミスタ17-3aとポストヒータ17-3の設定温度の差分がX℃以下であると判定した場合(S502;Yes)、赤外線ヒータ17-4aの予熱を開始させる(S503)。なお、制御部400は、サーミスタ17-3aとポストヒータ17-3の設定温度の差分がX℃より大きいと判定した場合には(S502;No)、赤外線ヒータ17-4a(第1の加熱部)に対する加熱命令を出力せずに(加熱を開始せずに)そのまま待機する。これにより、赤外線ヒータ17-4a自体を駆動させないことによる省電力化を図ることができる。
【0024】
図6の(a)は、当該制御方法における赤外線ヒータを点灯させるタイミングチャートである。図6の(a)に示すように、制御部400は、サーミスタ17-3aとポストヒータ17-3の設定温度の差分DがX℃以下に到達した場合の時刻t1のタイミングで、赤外線ヒータ17-4aを点灯させる。
【0025】
このように、記録媒体(例えば、ロールメディア)の記録面を加熱する第1の加熱部(例えば、赤外線ヒータ17-4a)と、上記記録媒体の裏面を加熱する第2の加熱部(例えば、ポストヒータ17-3)と、上記第2の加熱部周辺の温度を測定する温度センサ(例えば、サーミスタ17-3a)と、印刷の開始前に、上記温度センサと上記第2の加熱部の設定温度の差分が所定値(例えば、図6(a)に示す差分D)以下となったか否かを判定し、上記温度センサと上記第2の加熱部の設定温度の差分が上記所定値以下となったと判定した場合に、上記第1の加熱部による予熱を開始する制御部400と、を備えるので、予熱制御による定着不良を防止することができる。具体的には、制御部400が、赤外線ヒータ17-4aの予熱により記録媒体の熱変形が生じないように、ポストヒータ17-3の温度を事前に評価することで、設定温度との差分を導き、ポストヒータ17-3と設定温度の差分が所定の閾値となるX℃以下になるまで赤外線ヒータ17-4aを予熱させない。このような制御を行うことで、過剰な予熱を防止することができる。
【0026】
また、図5の(a)に示した制御方法では、記録媒体毎に最適な予熱条件を用いることができないので、予熱開始から印字開始までの時間が長くなるが、ポストヒータ17-3の設定温度が低い場合で定着する記録媒体、設定温度が高い場合で定着する記録媒体に関わらず、一律でX℃を規定できるため、内部処理を簡単にできるメリットがある。
【0027】
また、他の例としては、図5の(b)に示すように、制御部400は、プリンタに印字開始命令が入力されると、サーモパイル17-4bの温度を確認し(S511)、当該温度が規定の温度X℃以上であるか否かを判定する(S512)。制御部400は、当該温度が規定の温度X℃以上であると判定した場合(S512;Yes)、赤外線ヒータ17-4aの予熱を開始させる(S503)。なお、制御部400は、当該温度が規定の温度X℃未満であると判定した場合には(S512;No)、サーモパイル17-4bの温度が所定温度未満であると判定した場合には、赤外線ヒータ17-4a(第1の加熱部)に対する加熱命令を出力せずに(加熱を開始せずに)そのまま待機する。これにより、図5(a)の場合と同様、赤外線ヒータ17-4a自体を駆動させないことによる省電力化を図ることができる。
【0028】
図6の(b)は、当該制御方法における赤外線ヒータを点灯させるタイミングチャートである。図6の(b)に示すように、制御部400は、サーモパイル17-4bの温度がX℃に到達した場合の時刻t2のタイミングで、赤外線ヒータ17-4aを点灯させる。
【0029】
このように、記録媒体(例えば、ロールメディア)の記録面を加熱する第1の加熱部(例えば、赤外線ヒータ17-4a)と、上記記録媒体の裏面を加熱する第2の加熱部(例えば、ポストヒータ17-3)と、上記記録媒体の表面温度を測定する温度センサ(例えば、サーモパイル17-4b)と、印刷の開始前に、上記温度センサの温度が所定温度(例えば、図6(a)に示す温度X)以上となったか否かを判定し、上記温度センサの温度が上記所定温度以上となったと判定した場合に、上記第1の加熱部による予熱を開始する制御部400と、を備えるので、予熱制御による定着不良を防止し、過剰な予熱を防ぐことができる。具体的には、図5の(b)に示した処理も図5の(a)に示した処理と同様に、赤外線ヒータ17-4aの予熱により記録媒体の熱変形が生じない記録媒体上の温度Xを用いて、サーモパイル17-4bが規定温度X℃に到達してから赤外線ヒータ17-4aの予熱を開始することで、過剰な予熱を防ぐことができる。なお、上記第2加熱部の温度とは、第2加熱部自体の温度に限られず、第2加熱部によって加熱されたプラテンの温度等でもよい。
【0030】
また、図5の(b)に示した制御方法では、記録媒体毎にX℃を規定する必要があるため印字する記録媒体の種類が多い場合は内部処理が複雑になるが、記録媒体毎に最適な予熱条件が設定できるため、予熱開始から印字開始までの時間を短くできる。
【0031】
インクジェットプリンタでは、印刷媒体からインクの水分や溶媒を短時間で乾燥させるため、ポストヒータ(コードヒータ)等で印刷媒体を直接加熱する方法と赤外線ヒータ等で非接触に加熱する方法を併せて使用する場合がある。この場合、赤外線ヒータの熱源が高温のため、印字中のみ赤外線ヒータを点灯させるが、赤外線ヒータが完全に温まっていない印字開始直後は乾燥不良が発生しやすいため、赤外線ヒータを予熱してから印字開始する。この場合、印刷媒体が熱変形を生じない範囲で印刷媒体の表面温度を測定しつつ、赤外線ヒータを予熱する。しかし、プリンタが省エネモード等でポストヒータの加熱がなされていない場合、印刷媒体の表面温度が低いため、そのまま赤外線ヒータを予熱すると過剰な熱量が印刷媒体にかかり、熱変形を生じる問題があったが、本実施例のような制御を行うことで、予熱制御による用紙熱変形を防止することができる。すなわち、記録媒体の表面温度を計測しながらヒータの出力制御を行うことで、例えば、記録媒体が低温状態であっても予熱制御を実施した際に過剰な熱量が記録媒体にかかることを防止し、熱変形を防ぐことができる。
【0032】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0033】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0034】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0035】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0036】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0037】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0038】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0039】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0040】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0041】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0042】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0043】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0044】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0045】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0046】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0047】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0048】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0049】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0050】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0051】
100 インクジェット記録装置
17 乾燥部
17-1 プレヒータ
17-2 プリントヒータ
17-3 ポストヒータ
17-4 赤外線加熱装置
17-1a、2a、3a サーミスタ
17-4 赤外線加熱装置
17-4b サーモパイル
17-4c サーミスタ
17-4d サーモスタット
17-4e キュアファン
400 制御部
401 CPU
402 FPGA
403 モータドライバ
404 副走査モータ
405 搬送部
4051 副走査エンコーダセンサ
4052 搬送ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【文献】特開2012-006340号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6