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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】画像形成装置及び後処理装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/16 20060101AFI20240214BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20240214BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240214BHJP
   B65H 31/02 20060101ALI20240214BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G03G21/16 104
G03G15/20 510
G03G21/00 530
B65H31/02
H05B3/00 335
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020018865
(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公開番号】P2021124635
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】杉田 純一
(72)【発明者】
【氏名】足立 知哉
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
(72)【発明者】
【氏名】神林 護
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-063372(JP,A)
【文献】特開2013-254018(JP,A)
【文献】特開2007-047558(JP,A)
【文献】特開2016-062024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/16
G03G 15/20
G03G 21/00
B65H 31/02
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
画像が形成された前記記録媒体を加熱する加熱装置と、
加熱された前記記録媒体が排出される記録媒体排出部と、
を備える画像形成装置であって、
前記加熱装置は、前記記録媒体を加熱する加熱部材を備え、
前記加熱部材は、
記録媒体幅方向に長手状に配置される基材と、
前記基材の長手方向に並んで配置された複数の発熱体と、
複数の電極部と、
前記複数の発熱体と前記複数の電極部とを接続する導電部と、
を有し、
前記記録媒体排出部は、排出された前記記録媒体が載置される載置部を有し、
前記載置部は、前記記録媒体が前記載置部に排出された直後の前記記録媒体の幅方向相対的に温度が低い部分を把持しやすくする把持補助形状を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記電極部は、第1電極部及び第2電極部を有し、
前記導電部は、
前記複数の発熱体と前記第1電極部とを接続する第1導電経路と、
前記複数の発熱体から前記基材の長手方向のうちの第1方向に伸びて前記第2電極部に接続される第2導電経路と、
前記第2導電経路から前記第1方向とは反対の第2方向に分岐して前記第1導電経路を介さずに前記第2導電経路又は前記第2電極部に接続される第3導電経路の少なくとも一部と、
を構成する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記把持補助形状は、上方へ突出するように設けられた凸部である請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記凸部の最上部は、前記加熱部材が前記複数の発熱体ごとに分割された複数のブロックのうち、前記ブロック内に流れる電流の合計値が最も小さいブロック内の一点に対応する位置、又は前記一点を含む前記載置部の記録媒体幅方向の一部の領域に渡って配置される請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記把持補助形状は、下方へ凹むように設けられた凹部である請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記凹部の最下部は、前記加熱部材が前記複数の発熱体ごとに分割された複数のブロックのうち、前記ブロック内に流れる電流の合計値が最も小さいブロック内の一点に対応する位置、又は前記一点を含む前記載置部の記録媒体幅方向の一部の領域に渡って配置される請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記記録媒体が前記把持補助形状の上に載置された状態で、前記記録媒体の排出方向前端と前記載置部との間の間隔が、前記記録媒体が前記載置部に排出された直後の前記記録媒体の幅方向温度が高い部分よりも温度が低い部分で大きくなる請求項1から6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記載置部は、前記記録媒体が前記載置部に排出された直後の前記記録媒体の幅方向相対的に温度が高い部分を把持しにくくする把持抑止形状を有する請求項1から7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記記録媒体排出部は、前記記録媒体が前記載置部に排出された直後の前記記録媒体の幅方向相対的に温度が高い部分にエアを吹き付ける送風手段を備える請求項1から8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
画像が形成された記録媒体を加熱する加熱装置と、
加熱された前記記録媒体に後処理を施す後処理部と、
後処理された前記記録媒体が排出される記録媒体排出部と、
を備える後処理装置であって、
前記加熱装置は、前記記録媒体を加熱する加熱部材を備え、
前記加熱部材は、
記録媒体幅方向に長手状に配置される基材と、
前記基材の長手方向に並んで配置された複数の発熱体と、
複数の電極部と、
前記複数の発熱体と前記複数の電極部とを接続する導電部と、
を有し、
前記記録媒体排出部は、排出された前記記録媒体が載置される載置部を有し、
前記載置部は、前記記録媒体が前記載置部に排出された直後の前記記録媒体の幅方向相対的に温度が低い部分を把持しやすくする把持補助形状を有する後処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱装置として、用紙上のトナーを熱により定着させる定着装置や用紙上のインクを乾燥させる乾燥装置などが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2016-62024号公報)には、長手状の基板に、発熱体や電気接点、これらを電気的に接続する導体パターンなどが設けられたヒータを備える定着装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような導体パターンが基板に設けられているヒータにおいては、発熱体を発熱させる際、導体パターンへの通電により導体パターンでもわずかながら発熱が生じる。このため、厳密には、ヒータ全体の発熱分布は、導体パターンの発熱の影響を受けることになる。
【0005】
従って、導体パターンの発熱分布によっては、それが原因でヒータの温度分布にばらつきが生じる虞がある。また、画像形成装置の高速化に対応して発熱量を増大させるために発熱体へ流れる電流を大きくすると、導体パターンで生じる発熱量も大きくなるため、その影響を無視できなくなる。
【0006】
このように、ヒータの温度にばらつきがあると、ヒータによって加熱される用紙の温度にもばらつきが生じるため、加熱処理後に排出された用紙には相対的に温度の高い部分と温度の低い部分が存在する。特に、用紙が装置外に排出された直後は、用紙の温度が高い状態となっていることがあるため、使用者が用紙の温度の高い部分に触れるのは安全上好ましくない。しかしながら、使用者にとっては、排出された用紙のどの部分が温度の高い部分であるかの判断が困難なため、使用者が温度の高い部分に触れてしまう懸念があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、画像が形成された前記記録媒体を加熱する加熱装置と、加熱された前記記録媒体が排出される記録媒体排出部と、を備える画像形成装置であって、前記加熱装置は、前記記録媒体を加熱する加熱部材を備え、前記加熱部材は、記録媒体幅方向に長手状に配置される基材と、前記基材の長手方向に並んで配置された複数の発熱体と、複数の電極部と、前記複数の発熱体と前記複数の電極部とを接続する導電部と、を有し、前記記録媒体排出部は、排出された前記記録媒体が載置される載置部を有し、前記載置部は、前記記録媒体の幅方向において相対的に温度が低い部分を把持しやすくする把持補助形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、排出された記録媒体の相対的に温度が低い部分を把持しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】本実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
図3】前記定着装置の斜視図である。
図4】前記定着装置の分解斜視図である。
図5】前記定着装置が備える加熱ユニットの斜視図である。
図6】前記加熱ユニットの分解斜視図である。
図7】本実施形態に係るヒータの平面図である。
図8】前記ヒータの分解斜視図である。
図9】前記ヒータにコネクタが接続された状態を示す斜視図である。
図10】前記ヒータの平面図である。
図11】全ての抵抗発熱体を発熱させた場合のブロックごとの給電線の発熱量を示す図である。
図12】一部の発熱部のみを発熱させた場合のブロックごとの給電線の発熱量を示す図である。
図13】本実施形態に係る画像形成装置の記録媒体排出部の構成を示す斜視図である。
図14】排紙トレイに用紙が排出された状態を示す図である。
図15】凸部とヒータとの位置関係を示す図である。
図16】本発明の他の実施形態に係る画像形成装置の記録媒体排出部の構成を示す斜視図である。
図17】排紙トレイに用紙が排出された状態を示す図である。
図18】凹部とヒータとの位置関係を示す図である。
図19】本発明のさらに他の実施形態に係る画像形成装置の記録媒体排出部の構成を示す斜視図である。
図20】本発明のさらに別の実施形態に係る画像形成装置の記録媒体排出部の構成を示す斜視図である。
図21】小型化されたヒータを説明するための図である。
図22】他のヒータの構成を示す図である。
図23】他の定着装置の構成を示す図である。
図24】別の定着装置の構成を示す図である。
図25】さらに別の定着装置の構成を示す図である。
図26】本発明を適用可能な後処理装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0012】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成部200と、転写部300と、定着部400と、記録媒体供給部500と、記録媒体排出部600と、を備えている。
【0013】
画像形成部200には、4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkと、露光装置6と、が設けられている。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されている。また、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外、基本的に同様の構成である。具体的に、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、表面に画像を担持する像担持体である感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電手段である帯電ローラ3と、感光体2上にトナー画像を形成する現像手段である現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング手段であるクリーニングブレード5と、を備えている。また、露光装置6は、画像情報に基づいて感光体2の帯電面を露光して静電潜像を形成する手段(書き込み手段)である。
【0014】
転写部300には、記録媒体である用紙に画像を転写する転写装置8が設けられている。なお、画像が形成(転写)される記録媒体は、紙(普通紙、厚紙、薄紙、コート紙、ラベル紙、封筒などを含む)のほか、OHPシートなどの樹脂製のシートであってもよい。転写装置8は、中間転写ベルト11と、4つの一次転写ローラ12と、二次転写ローラ13と、を有している。各一次転写ローラ12は、中間転写ベルト11を介してそれぞれ別の感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2との間に、中間転写ベルト11と各感光体2とが接触する一次転写ニップが形成されている。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架する複数のローラの1つに接触し、中間転写ベルト11との間に二次転写ニップを形成している。
【0015】
定着部400には、用紙に画像を定着させる定着装置9が設けられている。定着装置9の構成については後で詳しく説明する。
【0016】
記録媒体供給部500には、用紙Pを収容する給紙カセット14と、給紙カセット14から用紙Pを送り出す給紙ローラ15と、が設けられている。
【0017】
記録媒体排出部600には、用紙を画像形成装置外に排出する一対の排紙ローラ17と、排紙ローラ17によって排出された用紙を載置する排紙トレイ18と、が設けられている。
【0018】
次に、図1を参照しつつ本実施形態に係る画像形成装置100の印刷動作について説明する。
【0019】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkの感光体2、及び中間転写ベルト11が回転を開始する。また、給紙ローラ15が回転することにより、給紙カセット14から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ16に接触して一旦停止される。
【0020】
各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkでは、まず、帯電ローラ3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント画像情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面(帯電面)に露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して各感光体2の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、回転する中間転写ベルト11上に順次重なり合うように転写される。かくして、中間転写ベルト11上にフルカラーのトナー画像が形成される。また、感光体2から中間転写ベルト11へトナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーはクリーニングブレード5によって除去される。
【0021】
中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、タイミングローラ16によって搬送されてきた用紙P上に転写される。そして、トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙ローラ17によって排紙トレイ18へ排出され、一連の印刷動作が完了する。
【0022】
以上の印刷動作の説明は、フルカラー画像を形成するときの動作についてであるが、4つの作像ユニットのうち、いずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像ユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0023】
続いて、本実施形態に係る定着装置9の構成について説明する。
【0024】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、定着ベルト20と、加圧ローラ21と、ヒータ22と、ヒータホルダ23と、ステー24と、温度センサ19と、を備えている。
【0025】
定着ベルト20は、用紙Pの未定着画像担持面側に配置される回転部材であって、未定着画像を用紙Pに定着させる定着部材である。定着ベルト20は、例えば、外径が25mmで厚みが40~120μmの筒状基体を有する無端状のベルト部材で構成される。基体の材料は、ポリイミドのほか、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル、SUSなどの金属材料であってもよい。また、耐久性を高めると共に離型性を確保するため、基体の外周面に、PFAやPTFEなどのフッ素樹脂から成る離型層が設けられてもよい。また、基体と離型層との間に、ゴムなどから成る弾性層が設けられてもよい。さらに、基体の内周面に、ポリイミドやPTFEなどから成る摺動層が設けられてもよい。
【0026】
加圧ローラ21は、定着ベルト20の外周面に対向するように配置された対向部材である。また、加圧ローラ21は、定着ベルト20の外周面に圧接されて、定着ベルト20との間にニップ部Nを形成する加圧部材でもある。加圧ローラ21は、例えば、外径が25mmであって、鉄製の芯金と、この芯金の外周面に設けられたシリコーンゴム製の弾性層と、弾性層の外周面に設けられたフッ素樹脂製の離型層とを有するローラなどにより構成される。
【0027】
ヒータ22は、定着ベルト20の内側に配置され、定着ベルト20や、定着ベルト20を介して用紙を加熱する加熱部材である。本実施形態では、ヒータ22が、板状の基材50と、基材50上に設けられた第1絶縁層51と、第1絶縁層51上に設けられた導体層52と、導体層52を被覆する第2絶縁層53と、により構成されている。導体層52は、発熱部60を有している。
【0028】
基材50は、例えば、ステンレス(SUS)や鉄、アルミニウム等の金属材料で構成される。また、基材50の材料として、金属材料のほか、セラミック、ガラス等を用いることも可能である。基材50にセラミックなどの絶縁材料を用いた場合は、基材50と導体層52との間の第1絶縁層51を省略することが可能である。一方、金属材料は、急速加熱に対する耐久性に優れ、加工もしやすいため、低コスト化を図るのに好適である。金属材料の中でも、特にアルミニウムや銅は熱伝導性が高く、温度ムラが発生しにくい点で好ましい。また、ステンレスはこれらに比べて安価に製造できる利点がある。
【0029】
各絶縁層51,53は、例えば、耐熱性ガラスなどの絶縁性を有する材料で構成される。また、これらの材料として、セラミックあるいはポリイミドなどを用いてもよい。また、基材50の第1絶縁層51や第2絶縁層53が設けられる面とは反対側の面に、別途絶縁層が設けられてもよい。
【0030】
本実施形態では、発熱部60が基材50よりもニップ部N側に配置されているが、これとは反対に、基材50が発熱部60よりもニップ部N側に配置されてもよい。ただしその場合は、発熱部60の熱が基材50を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材50は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。
【0031】
また、本実施形態では、ヒータ22から定着ベルト20への熱伝達効率を高めるため、ヒータ22が定着ベルト20の内周面に対して直接接触するように配置されている。また、これに限らず、ヒータ22は、定着ベルト20に対して、非接触、あるいは低摩擦シートなどを介して間接的に接触するように配置されてもよい。また、定着ベルト20に対するヒータ22の接触箇所は、定着ベルト20の外周面であってもよい。ただし、定着ベルト20の外周面の傷付きによる定着品質の低下を回避するため、ヒータ22が接触する面は、定着ベルト20の内周面であることが望ましい。
【0032】
ヒータホルダ23は、定着ベルト20の内側でヒータ22を保持する保持部材である。ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で構成されることが望ましい。特に、ヒータホルダ23が、LCPやPEEKなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で構成される場合は、ヒータホルダ23の耐熱性を確保しつつ、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制されるので、効率的に定着ベルト20を加熱することが可能である。
【0033】
ステー24は、定着ベルト20の内側に配置される補強部材である。ステー24によってヒータホルダ23のニップ部N側の面とは反対の面が支持されることにより、ヒータホルダ23が加圧ローラ21の加圧力によって撓むのが抑制される。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に均一な幅のニップ部Nが形成される。ステー24は、その剛性を確保するため、SUSやSECCなどの鉄系金属材料によって形成されることが好ましい。
【0034】
温度センサ19は、ヒータ22の温度を検知する温度検知手段である。温度センサ19の検知結果に基づいてヒータ22の出力が制御されることにより、定着ベルト20の温度が所望の温度(定着温度)となるように維持される。温度センサ19は、接触型、非接触型のいずれでもよい。例えば、温度センサ19として、サーモパイル、サーモスタット、サーミスタ、NCセンサなどの公知の温度センサを適用可能である。
【0035】
本実施形態に係る定着装置9においては、印刷動作が開始されると、ヒータ22に電力が供給されることにより、発熱部60が発熱し、定着ベルト20が加熱される。また、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、図2に示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(ニップ部N)に搬送されることにより、未定着トナーが加熱及び加圧されてトナー画像が用紙Pに定着される。
【0036】
図3は、本実施形態に係る定着装置9の斜視図、図4は、その分解斜視図である。
【0037】
図3及び図4に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、矩形の枠状に形成された装置フレーム40を備えている。装置フレーム40は、一対の側壁部28及び前壁部27を一体に有する第1装置フレーム25と、後壁部29を有する第2装置フレーム26と、によって構成されている。第1装置フレーム25と第2装置フレーム26は、一対の側壁部28に設けられた複数の係合突起28aが後壁部29に設けられた複数の係合孔29aに係合することにより組み付けられる。
【0038】
定着ベルト20や加圧ローラ21は、一対の側壁部28によって支持される。このため、各側壁部28には、加圧ローラ21の回転軸などを挿通させるための挿通溝28bが設けられている。挿通溝28bは、その一端側(後壁部29側)で開口し、これとは反対側の端では開口しない突き当て部が形成されている。この突き当て部には、加圧ローラ21の回転軸を回転可能に支持する軸受30が設けられている。加圧ローラ21が各側壁部28によって支持された状態では、加圧ローラ21の軸方向の一端に設けられた駆動伝達部材としての駆動伝達ギヤ31が、側壁部28よりも外側に露出した状態で配置される。これにより、定着装置9が画像形成装置本体に搭載されると、駆動伝達ギヤ31が画像形成装置本体に設けられているギヤに連結され、駆動源からの駆動力を伝達可能な状態となる。また、駆動伝達ギヤ31に代えて、駆動伝達ベルトを張架するプーリやカップリング機構などの駆動伝達部材を用いてもよい。
【0039】
定着ベルト20の長手方向の両端には、定着ベルト20やステー24などを支持する一対の支持部材32が設けられている。各支持部材32には、ガイド溝32aが形成されている。図4に示すように、一対の支持部材32と、定着ベルト20、ステー24、ヒータホルダ23、及びヒータ22を組み付けた状態で、各支持部材32のガイド溝32aを各側壁部28の挿通溝28bの縁に沿わせながら各支持部材32を各側壁部28に組み付けることにより、定着ベルト20、ステー24、ヒータホルダ23及びヒータ22が、各側壁部28に支持される。また、各支持部材32が、後壁部29との間に設けられた付勢部材としての一対のバネ33によって付勢されることにより、定着ベルト20が加圧ローラ21へ加圧され、ニップ部が形成される。
【0040】
また、後壁部29には、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めを行う位置決め部としての孔部29bが設けられている。一方、画像形成装置本体には、位置決め部としての突起101(図4参照)が設けられている。この突起101が、定着装置9の孔部29bに対して挿入されることで、突起101と孔部29bが嵌合し、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めがなされる。なお、孔部29bが設けられる位置は、後壁部29の長手方向の中央よりもいずれか一方の端寄りの位置であることが好ましい。このような位置に孔部29bが設けられることにより、孔部29bが設けられない端側では、温度変化に伴う長手方向の伸縮が許容され、装置フレーム40の歪を抑制することが可能である。
【0041】
図5は、ヒータ22などを一対の支持部材32によって支持した加熱ユニットの斜視図、図6は、その加熱ユニットの分解斜視図である。
【0042】
図5に示すように、ヒータ22及びヒータホルダ23は、図5の左右方向へ長く伸びる長手状の部材である。ヒータ22及びヒータホルダ23は、定着装置に組み込まれ、定着装置が画像形成装置に搭載された状態で、ヒータ22及びヒータホルダ23の長手方向が定着装置を通過する用紙Pの幅方向U(以下、「記録媒体幅方向」という場合がある。)となるように配置される。また、図6に示すように、ヒータ22及びヒータホルダ23と同様にステー24も、記録媒体幅方向Uへ長手状に配置される。なお、本明細書中でいう「記録媒体幅方向」、「ヒータの長手方向」、「基材の長手方向」、「定着ベルトの長手方向」、及び「排紙トレイの幅方向」は、いずれも同じ方向を意味する。
【0043】
図5及び図6に示すように、ヒータホルダ23には、ヒータ22を収容するための矩形の収容凹部23aが設けられている。収容凹部23aは、ヒータ22とほぼ同等の形状及びサイズに形成されている。ただし、収容凹部23aの長手方向寸法L2はヒータ22の長手方向寸法L1よりも若干長く設定されている。このため、熱膨張によってヒータ22がその長手方向に伸びても、ヒータ22と収容凹部23aとの干渉を回避できる。
【0044】
一対の支持部材32は、定着ベルト20の内側に挿入されて定着ベルト20を支持するC字状のベルト支持部32bと、定着ベルト20の端面に接触して定着ベルト20の長手方向の移動(片寄り)を規制するフランジ状のベルト規制部32cと、ヒータホルダ23及びステー24の長手方向の両端近傍部分が挿入されてこれらを支持する支持凹部32dと、を有している。定着ベルト20は、その長手方向の両端にベルト支持部32bが挿入されることで、ベルト非回転時において基本的に周方向(ベルト回転方向)の張力が作用しない、いわゆるフリーベルト方式で支持される。
【0045】
また、図5及び図6に示すように、ヒータホルダ23の長手方向の中央よりも一端側には、位置決め部としての位置決め凹部23eが設けられている。この位置決め凹部23eに対して、図5及び図6における左側の支持部材32の嵌合部32eが嵌合することにより、ヒータホルダ23と支持部材32との位置決めがなされる。一方、図5及び図6における右側の支持部材32には、嵌合部32eは設けられておらず、ヒータホルダ23との長手方向の位置決めはされない。このように、支持部材32に対するヒータホルダ23の位置決めをヒータホルダ23の長手方向の片側のみとすることで、温度変化に伴うヒータホルダ23の長手方向の伸縮が許容される。
【0046】
また、図6に示すように、ステー24の長手方向の両端近傍部分には、各支持部材32に対するステー24の移動を規制する段差部24aが設けられている。各段差部24aは支持部材32に突き当たることで支持部材32に対するステー24の長手方向の移動を規制する。ただし、これら段差部24aのうち少なくとも一方は、支持部材32に対して隙間(ガタ)を介して配置される。このように、少なくとも一方の段差部24aが支持部材32に対して隙間を介して配置されることにより、温度変化に伴うステー24の伸縮が許容される。
【0047】
図7は、本実施形態に係るヒータ22の平面図、図8は、その分解斜視図である。
【0048】
図8に示すように、ヒータ22の基材50上には、第1絶縁層51を介して発熱部60を構成する複数の抵抗発熱体59が配置されている。各抵抗発熱体59は、上記記録媒体幅方向Uでもある基材50の長手方向Zに渡って一列に並んで配置されている。導体層52は、複数の抵抗発熱体59のほか、複数の電極部61と、複数の給電線(導電部)62と、が設けられている。各抵抗発熱体59は、複数の給電線62を介して複数の電極部61のいずれか2つに電気的に接続されている。図7に示すように、各抵抗発熱体59の全体及び各給電線62の大部分は、第2絶縁層53によって覆われ、絶縁性が確保されている。また、各抵抗発熱体59は、互いに間隔をあけて配列されているため、隣り合う抵抗発熱体59同士の間は絶縁領域(第2絶縁層53)が介在している。一方、各電極部61は、後述のコネクタが接続できるように、第2絶縁層53によってほとんど覆われておらず露出した状態となっている。
【0049】
抵抗発熱体59は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷などにより基材50に塗工し、その後、当該基材50を焼成することによって形成することができる。また、抵抗発熱体59の材料として、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO)などの抵抗材料を用いてもよい。
【0050】
電極部61及び給電線62は、抵抗発熱体59よりも小さい抵抗値の導体で構成されている。例えば、電極部61及び給電線62は、銀(Ag)あるいは銀パラジウム(AgPd)などの材料を基材50上にスクリーン印刷することによって形成される。
【0051】
図9は、ヒータ22に給電部材としてのコネクタ70が接続された状態を示す斜視図である。
【0052】
図9に示すように、コネクタ70は、樹脂製のハウジング71と、ハウジング71に設けられた複数のコンタクト端子72と、を有している。各コンタクト端子72は、板バネで構成されている。また、各コンタクト端子72には、給電用のハーネス73が接続されている。
【0053】
図9に示すように、コネクタ70は、ヒータ22及びヒータホルダ23を一緒に挟むようにして取り付けられる。これにより、ヒータ22及びヒータホルダ23は、コネクタ70によって一緒に保持される。また、この状態で、コネクタ70の各コンタクト端子72の先端(接触部72a)が、それぞれ対応する電極部61に弾性的に接触(圧接)することにより、各コンタクト端子72と各電極部61とが電気的に接続される。また、図9に示すヒータ22の長手方向の端とは反対側の端にある電極部61に対しても、同様にコネクタ70が接続される。これにより、コネクタ70を介して画像形成装置に設けられた電源から発熱部60へ電力が供給可能な状態となる。
【0054】
以下、図10に基づき、本実施形態に係るヒータ22の構成についてさらに詳しく説明する。
【0055】
図10に示すように、本実施形態に係るヒータ22には、7つの抵抗発熱体59A~59Gと、3つの電極部61A~61Cと、これらを接続する4つの給電線62A~62Dと、が設けられている。3つの電極部61A~61Cのうち、2つの電極部61A,61Cは、各抵抗発熱体59A~59Gよりも基材50の長手方向Zの一端側(図10における左側)に配置され、残りの1つの電極部61Bは、各抵抗発熱体59A~59Gよりも基材50の長手方向Zの他端側(図10における右側)に配置されている。各抵抗発熱体59A~59Gは、一端側に配置される2つの電極部61A,61Cのうちのいずれかと、他端側に配置される1つの電極部61Bに対して、電気的に接続されている。
【0056】
詳しくは、7つの抵抗発熱体59A~59Gのうち、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fは、第1給電線62Aを介して第1電極部61Aに並列に接続されると共に、第2給電線62Bを介して第2電極部61Bに並列に接続されている。一方、両端の各抵抗発熱体59A,59Gは、第3給電線62C又は第4給電線62Dを介して第3電極部61Cに並列に接続されると共に、第2給電線62Bを介して第2電極部61Bに並列に接続されている。
【0057】
このような接続構造とすることで、本実施形態では、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fで構成される第1発熱部60Aと、両端の各抵抗発熱体59A,59Gで構成される第2発熱部60Bとを、互いに独立して発熱制御することが可能である。具体的に、第1電極部61A及び第2電極部61Bに電圧を印加して両電極部61A,61B間に電位差を生じさせた場合は、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fが通電し、第1発熱部60Aのみが発熱する。一方、第3電極部61C及び第2電極部61Bに電圧を印加して両電極部61C,61B間に電位差を生じさせた場合は、両端の各抵抗発熱体59A,59Gが通電するため、第2の発熱部60Bのみが発熱する。また、全ての電極部61A~61Cに電圧を印加して第1電極部61Aと第2電極部61の間及び第3電極部61Cと第2電極部61Bの間でそれぞれ電位差を生じさせた場合は、全ての抵抗発熱体59A~59Gが通電するため、第1の発熱部60A及び第2の発熱部60Bの両方が発熱する。例えば、A4サイズ(通紙幅:210mm)以下の比較的小さい幅サイズの用紙を通紙する場合は、第1の発熱部60Aのみを発熱させ、また、A3サイズ(通紙幅:297mm)以上の比較的大きい幅サイズの用紙を通紙する場合は、第1の発熱部60Aに加え第2の発熱部60Bも発熱させることで、用紙幅に応じた発熱領域とすることが可能である。
【0058】
ここで、本実施形態に係るヒータ22に生じる温度のばらつき(温度分布偏差)について説明する。
【0059】
一般的に、上記のような抵抗発熱体が給電線を介して電極部に接続されたヒータにおいては、抵抗発熱体を発熱させる際、給電線への通電により給電線でもわずかながら発熱が生じる。従って、給電線の発熱分布によっては、ヒータの温度分布にばらつきが生じる虞がある。特に、画像形成装置の高速化に伴い、発熱量を増大させるべく発熱体へ流れる電流を大きくすると、給電線で生じる発熱量も大きくなるため、その影響を無視できなくなる。
【0060】
図11では、全ての抵抗発熱体59A~59Gに対して電流が20%ずつ流れた場合に、抵抗発熱体59A~59Gごとに区画された各ブロック内で発生する各給電線62A,62B,62Dの発熱量とその合計値を示す。ここで、基材50の抵抗発熱体59が設けられている面に沿って長手方向Zと交差する方向Y(図10参照)を、基材50の「短手方向」と称すると、本実施形態では、各給電線62A,62B,62Dの短手方向Yに伸びる部分は短く、その部分における発熱量はわずかであることから無視し、長手方向Zに伸びる部分で発生する発熱量のみを算出している。また、発熱量(W)は下記式(1)で表されることから、図11の表に示す発熱量は、便宜的に各給電線に流れる電流(I)の二乗として算出している。よって、算出された発熱量の数値は、あくまで簡易的に算出された値であり、実際の発熱量とは異なるものである。
【0061】
【数1】
【0062】
発熱量の算出方法について、図11における第1ブロック及び第2ブロックを例に説明すると、第1ブロックにおいては、第1給電線62Aに流れる電流が100%、第4給電線62Dに流れる電流が20%であるので、それぞれの二乗の合計値である10400(10000+400)が第1ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、第2ブロックにおいては、第1給電線62Aに流れる電流が80%、第2給電線62Bに流れる電流が20%、第4給電線62Dに流れる電流が20%であるので、これらの二乗の合計値である7200(6400+400+400)が第2ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、他のブロックにおいても、同様にして発熱量を算出している。
【0063】
そして、各ブロックの合計発熱量を縦軸に表したものが、図11中のグラフである。このグラフを見てわかるように、各給電線の合計発熱量は、両端側のブロックで大きく、反対に中央側のブロックでは低くなる。また、中央に対して対称のブロック同士(例えば、第1ブロックと第7ブロック)における各給電線の合計発熱量も異なっている。このように、給電線の発熱分布には基材の長手方向Zに渡ってばらつきがあるため、このばらつきによってヒータの発熱分布にもばらつきが発生する。
【0064】
また、このような給電線の発熱に起因する温度のばらつきは、全ての抵抗発熱体を発熱させる場合(図11に示す例)だけに限らず、一部の抵抗発熱体を発熱させる場合でも発生し得る。特に、ヒータの小型化や画像形成装置の高速化に伴って、給電線に意図しない分流が生じた場合は、温度のばらつきが顕著となる虞がある。また、意図しない分流は、ヒータを短手方向に小型化すべく、給電線の幅をヒータの短手方向に小さくした結果、給電線の抵抗値が大きくなった場合や、画像形成装置を高速化するため、抵抗発熱体の発熱量を増加させるべく、抵抗発熱体の抵抗値を小さくした場合に、発生しやすくなる。すなわち、小型化や高速化に伴って給電線の抵抗値と抵抗発熱体の抵抗値とが相対的に接近した場合は、これまで通電しなかった経路にも通電し得る(意図しない分流が発生し得る)状態となる。
【0065】
例えば、図12に示すように、両端以外の各抵抗発熱体59B~59F(第1発熱部60A)のみに通電した場合に、図の左から2番目の抵抗発熱体59Bを通過した電流の一部が、その先の第2給電線62Bの分岐部Xにて第2電極部61B側とは反対側(図の左側)にも流れる意図しない分流が発生することがある。分流した電流は、図12における左端の抵抗発熱体59Aを通過し、さらに、第3給電線62C、第3電極部61C、第4給電線62Dを介して右端の抵抗発熱体59Gを通過した後、第2給電線62Bに合流する。
【0066】
このように、意図しない分流は、分岐部Xから図12中の一点鎖線K3で示す経路を通って第2給電線62Bに至る。また、このような意図しない分流は、本実施形態に係るヒータ22のような、ヒータ22の導電経路が、両端以外の各抵抗発熱体59B~59F(第1発熱部60A)と第1電極部61Aとを接続する第1導電経路K1と、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fからヒータ22の長手方向のうちの第1方向S1(図12における右方向)に伸びて第2電極部61Bに接続される第2導電経路K2と、第2導電経路K2から第1方向S1とは反対の第2方向S2(図12における左方向)に分岐して第1導電経路K1を介さずに第2導電経路K2又は第2電極部61Bに接続される分第3導電経路K3と、を少なくとも有する構成であれば生じ得る。なお、本実施形態では、第3導電経路K3を構成する部分として、第2給電線62Bの一部(分岐部Xから図12における左側の部分)と、第3給電線62Cと、第4給電線62Dのほか、両端の各抵抗発熱体59A,59G(第2発熱部60B)と、第3電極部61Cと、が含まれているが、第3導電経路K3が抵抗発熱体や電極部を含まない給電線のみの場合であっても、意図しない分流は生じる可能性がある。
【0067】
図12中の表及びグラフに、意図しない分流が発生した場合のブロックごとの各給電線62A,62B,62Dで生じる発熱量及びその合計値を示す。この例では、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fへ電流が20%ずつ均等に流れた場合に、そのうちの一部の電流が分岐部Xにおいて5%分流したとして、発熱させるブロック(第2ブロック~第6ブロック)ごとの各給電線62A,62B,62Dの発熱量を算出している。なお、発熱量の算出方法は、図11に示す例で説明した方法と同様である。
【0068】
図12中の表及びグラフに示すように、この場合も、給電線の合計発熱量は、両端側のブロックで大きく、反対に中央側のブロックでは低くなり、ばらつきが発生する。ただし、図12の場合は、図11とは反対に、グラフの右側のブロックよりも左側のブロックの温度が高くなっている。なお、図11及び図12では、電流が一方向に流れる様子を示しているが、ヒータ22に流れる電流は直流でもよいし交流でもよい。
【0069】
以上のように、本実施形態に係る定着装置においては、図11に示す例と図12に示す例のいずれの場合もヒータ22の長手方向中央側よりも両端側での温度が高くなる。このため、ヒータ22によって加熱された後、装置外に排出される用紙も、その幅方向の中央側よりも両端側で温度が高くなる傾向にある。排出された用紙の温度は、その後、放熱作用によって低下するが、排出直後は温度が高くなっている可能性が高い。そのため、使用者が排出された用紙を把持する際は、温度の高い部分ではなく温度の低い部分に触れるようにすることが好ましい。
【0070】
そこで、本実施形態に係る画像形成装置においては、排出された用紙の温度の低い部分を使用者が把持しやすいように、以下のような対策を講じている。
【0071】
図13は、本実施形態に係る画像形成装置100の記録媒体排出部600の構成を示す斜視図である。
【0072】
図13に示すように、本実施形態に係る画像形成装置100においては、図の矢印V方向に排出された用紙を載置する載置部としての排紙トレイ18が、水平状に設けられた平面部80から上方へ突出する凸部81を有している。凸部81は、排紙トレイ18の幅方向W(記録媒体幅方向U)の少なくとも中央に位置し、その中央から幅方向両端へ向かって低くなるように形成されている。また、凸部81の上面は、排紙の妨げにならないように、用紙が排出される排出口34よりも低い位置に配置されている。
【0073】
図13に示す例では、凸部81が、その幅方向中央の最上部81bから排紙トレイ18の幅方向両端に向かってなだらかに低くなる凸曲面状に形成されているが、凸部81の形状はこの形状に限定されず、適宜変更可能である。例えば、凸部81を、直角又は所定の角度に屈曲した平面を組み合わせた形状にしてもよい。
【0074】
図14に示すように、本実施形態に係る画像形成装置100において、用紙Pが排紙トレイ18上に排出されると、用紙Pは、凸部81上に載置され、凸部81に沿って両端が下がるように湾曲した状態となる。また、この状態で、排紙方向Vにおける用紙Pの前端p1が、凸部81の前端81aよりも前方へ突出した状態で載置されるため、用紙Pの少なくとも幅方向中央及びその近傍において、用紙Pの前端p1と排紙トレイ18(平面部80)との間に使用者が手を挿入できる程度の空間部48が形成される。
【0075】
これにより、使用者は、用紙Pの前端p1側から(画像形成装置本体の排紙方向前方に設けられた開口部102から)その空間部48内に手を差し入れて、用紙Pの相対的に温度の低い部分である幅方向中央及びその近傍部分を把持することができる。このように、凸部81は、用紙Pの相対的に温度の低い部分と排紙トレイ18との間に空間部48を形成し、その温度の低い部分を把持しやすくする把持補助形状として機能する。一方、温度が相対的に高くなる用紙Pの幅方向両端及びその近傍部分では、用紙Pと排紙トレイ18(平面部80)との間に上下方向の空間部(間隔)がほとんど形成されない。このため、用紙Pの幅方向両端及びその近傍部分では、使用者は用紙Pを把持しにくい状態となる。
【0076】
このように、本実施形態では、排紙トレイ18が凸部81を有していることにより、用紙Pの前端p1と排紙トレイ18(平面部80)との上下方向の間隔を、用紙の幅方向両端側の温度の高い部分よりも幅方中央側の温度の低い部分で大きくすることができる。これにより、使用者は温度の高い部分よりも温度の低い部分で用紙Pを把持しやすくなり、使用者は優先して用紙の温度の低い部分を把持するようになる。反対に、用紙の温度の高い部分に対しては使用者が触れにくくなる。このため、安全性が向上する。
【0077】
凸部81は、用紙Pの温度の低い部分と排紙トレイ18(平面部80)との間に使用者が手を挿入できる程度の空間部48を形成するため、少なくとも用紙Pの温度の低い部分に対応する位置で大きく突出していることが好ましい。用紙Pの温度の低い部分は、ヒータ22の発熱温度の低い部分に対応するので、ヒータ22の温度分布に基づいて凸部81の最上部81bの位置を決定すればよい。例えば、上述の図11に示す例の場合は、ヒータ22の長手方向中央側の第3ブロック及び第4ブロックで温度(合計発熱量)が最低となり、上述の図12に示す例の場合は、第4ブロックで温度(合計発熱量)が最低となる。
【0078】
このため、本実施形態では、図15に示すように、凸部81の最上部81bが、ヒータ22を抵抗発熱体59A~59Gごとに分割した7つのブロックJ1~J7のうち、いずれの場合も最低温度となる第4ブロックJ4に対応する位置に配置されている。これにより、用紙Pの最も温度の低い部分と排紙トレイ18(平面部)との間に上下方向の隙間を大きく形成することができ、使用者が温度の低い部分を把持しやすくなる。
【0079】
また、上述のように、ヒータ22のブロックJ1~J7ごとの発熱温度は、各ブロックJ1~J7内の抵抗発熱体59や給電線62に流れる電流の合計値に対応するので、各ブロックJ1~J7内に流れる電流の合計値に基づいて、凸部81の最上部81bの位置を決定してもよい。すなわち、各ブロックJ1~J7内に流れる電流の合計値が最も小さいブロックに対応する位置に、凸部81の最上部81bを配置することにより、使用者が温度の低い部分を把持しやすくなる。
【0080】
また、凸部81の最上部81bは、最低温度のブロック内の一点に対応する位置ではなく、一定の幅を有する一部の領域に渡って設けられていてもよい。すなわち、凸部81の最上部81bは、最低温度のブロック内の一点を含む排紙トレイ18の幅方向Wの一部の領域に渡って設けられていてもよい。なお、最上部81bが設けられる一部の領域の幅は、大きすぎると、凸部81が排紙トレイ18の幅方向Wに渡って大きくなり、用紙Pが幅方向全体に渡って排紙トレイ18から高く浮き上がってしまう。このため、最上部81bが設けられる一部の領域は、排紙トレイ18の幅方向全体のうち、2分の1以下である場合が好ましく、さらに3分の1以下である場合がより好ましい。
【0081】
なお、画像形成装置が種々の用紙に対応して排紙可能な場合、排出された用紙が凸部81の上に載置されても、用紙の幅サイズや厚さ(剛性)によっては、必ずしも用紙が図14に示すような湾曲した状態にならない場合がある。特に、幅サイズの小さい用紙や厚い(剛性の高い)用紙が排出された場合は、用紙が凸部81上に排出されても湾曲せずに平面状に保持される場合が考えられる。そのため、本発明の作用効果は、少なくとも一部の種類の用紙が排出された場合に生じればよく、例えば、A4サイズの普通紙を横向きに排出した場合や、A3サイズの普通紙を縦向きに排出した場合に、少なくとも用紙が図14に示すような状態で載置されればよい。
【0082】
また、凸部81が排紙方向Vに長すぎると、用紙Pが排出された際に、必ずしも用紙Pの前端p1が凸部81の前端81aよりも前方に突出した状態(図14に示す状態)とはならない場合がある。その場合、用紙Pの幅方向中央と排紙トレイ18との間に把持するための空間部48が形成されない。そのため、凸部81の排紙方向Vの長さは、例えばA4サイズなどの使用頻度の高い用紙の排紙方向の長さに応じて設定するとよい。すなわち、少なくともそのような使用頻度の高い用紙が排出された場合に、必ず用紙の前端p1が凸部81の前端81aよりも前方に突出した状態となるように、凸部81の排紙方向Vの長さを設定するのが好ましい。
【0083】
また、反対に、凸部81が排紙方向Vに短すぎると、用紙Pが凸部81上に載置された際に用紙Pの前端p1が下方へ撓んで、使用者が手を挿入するための空間部48を十分に形成されない虞がある。そのため、凸部81の排紙方向Vの長さは、例えば、使用頻度の高い用紙Pが排出された際に、凸部81が少なくとも用紙Pの排紙方向Vの後端p2から用紙Pの半分の長さまでの領域H(図14参照)に渡って接触するような長さに設定されることが望ましい。
【0084】
図16は、本発明の他の実施形態に係る画像形成装置100の記録媒体排出部600の構成を示す斜視図である。
【0085】
図16に示す実施形態では、排紙トレイ18に、平面部80から下方へ凹む凹部82が設けられている。凹部82は、排紙トレイ18の幅方向W(記録媒体幅方向U)の少なくとも中央に位置し、その中央を含む排紙トレイ18の幅方向Wの一部の領域に渡って形成されている。また、凹部82は、画像形成装置本体の排紙方向Vの前面で開口するように形成されている。
【0086】
図16に示す例では、凹部82が、略水平状の底面部と、鉛直状の一対の側面部とを有する略矩形の溝状に形成されているが、凹部82の形状はこの形状に限定されず、適宜変更可能である。例えば、凹部82を、曲面状の凹部としてもよい。
【0087】
本実施形態においては、凹部82が、排紙トレイ18の幅方向中央を含む一部の領域に設けられているため、図17に示すように、用紙Pが排紙トレイ18に排出されると、用紙Pが凹部82の上に被さるようにして載置される。この状態で、用紙Pは、排紙トレイ18の幅方向両端側にある平面部80によって支持され、排紙トレイ18の幅方向中央側では、用紙Pと凹部82との間に使用者が手を挿入できる程度の空間部48が形成される。
【0088】
これにより、使用者は、用紙Pの前端p1側からその空間部48内に手を差し入れて、用紙Pの相対的に温度の低い部分である幅方向中央及びその近傍部分を把持することができる。このように、本実施形態において、凹部82は、用紙Pの温度の低い部分と排紙トレイ18との間に空間部48を形成し、用紙Pの温度の低い部分を使用者に把持しやすくする把持補助形状として機能する。一方、温度が相対的に高くなる用紙Pの幅方向両端及びその近傍部分では、用紙Pと排紙トレイ18(平面部80)との間に上下方向の空間部がほとんど形成されない。このため、用紙Pの幅方向両端及びその近傍部分では、使用者は用紙Pを把持しにくい状態となる。
【0089】
このように、本実施形態では、排紙トレイ18が凹部82を有していることにより、用紙Pの前端p1と排紙トレイ18との上下方向の間隔を、用紙の幅方向両端側の温度の高い部分よりも幅方中央側の温度の低い部分で大きくすることができる。これにより、使用者は温度の高い部分よりも温度の低い部分で用紙Pを把持しやすくなり、使用者は優先して用紙の温度の低い部分を把持するようになる。反対に、用紙の温度の高い部分に対しては使用者が触れにくくなる。このため、安全性が向上する。
【0090】
凹部82は、用紙Pの温度の低い部分と排紙トレイ18との間に使用者が手を挿入できる程度の空間部48を形成するため、少なくとも用紙Pの温度の低い部分に対応する位置で大きく凹んでいることが好ましい。従って、上述のヒータ22と同様のヒータを用いた構成の場合、図18に示すように、凹部82の最下部82bは、ヒータ22を抵抗発熱体59A~59Gごとに分割した7つのブロックJ1~J7のうち、図11及び図12のいずれの場合も最低温度となる第4ブロックのブロックに対応する位置に配置されることが好ましい。これにより、用紙Pの最も温度の低い部分と排紙トレイ18との間に上下方向の隙間を大きく形成することができ、使用者が温度の低い部分を把持しやすくなる。
【0091】
また、本実施形態においても、各ブロックJ1~J7内に流れる電流の合計値に基づいて、凹部82の最下部82bの位置を決定してもよい。すなわち、各ブロックJ1~J7内に流れる電流の合計値が最も小さいブロックに対応する位置に、凹部82の最下部82bを配置することにより、使用者が温度の低い部分を把持しやすくなる。
【0092】
また、凹部82の最下部82bは、最低温度のブロック内の一点に対応する位置ではなく、一定の幅を有する一部の領域に渡って設けられていてもよい。すなわち、凹部82の最下部82bは、最低温度のブロック内の一点を含む排紙トレイ18の幅方向Wの一部の領域に渡って設けられていてもよい。なお、最下部82bが設けられる一部の領域の幅が大きすぎると、凹部82が全体的に大きく形成されてしまい、用紙Pが凹部82内に落ち込んで用紙Pを把持するための空間部48が形成されにくくなる。このため、最下部82bが設けられる一部の領域は、排紙トレイ18の幅方向全体のうち、2分の1以下である場合が好ましく、さらに3分の1以下である場合がより好ましい。
【0093】
また、排出される用紙の幅サイズや厚さ(剛性)によっては、必ずしも用紙Pが凹部82にまたがって両側の平面部80によって支持された状態(図17に示す状態)とはならない場合がある。特に、幅サイズの小さい用紙や薄い(剛性の低い)用紙が排出された場合は、用紙が凹部82内に落ち込んでしまうことも考えられる。そのため、本発明の作用効果は、少なくとも一部の種類の用紙が排出された場合に生じればよく、例えば、A4サイズの普通紙を横向きに排出した場合や、A3サイズの普通紙を縦向きに排出した場合に、少なくとも用紙が図17に示すような状態で載置されればよい。
【0094】
図19は、本発明のさらに他の実施形態に係る画像形成装置100の記録媒体排出部600の構成を示す斜視図である。
【0095】
図19に示す実施形態では、排紙トレイ18に、上記凸部81のほか、排出された用紙Pを使用者に把持しにくくするための把持抑止形状として機能する壁部83が設けられている。
【0096】
図19に示す実施形態では、画像形成装置本体の側面が、排紙トレイ18の排紙方向Vの前方だけでなく、排紙トレイ18の幅方向Wの一端側である正面方向にも開口部103を有しているので、使用者は正面の開口部103からも排紙トレイ18上の用紙Pを把持することが可能である。しかしながら、用紙Pの正面側の幅方向端は相対的に温度の高い部分であるため、この部分に対して使用者が触れるのは好ましくない。
【0097】
そのため、本実施形態では、排紙トレイ18の正面側の端に、把持抑止形状としての上記壁部83が設けられている。壁部83は、排紙トレイ18の平面部80から上方へ突出するように設けられているため、この壁部83によって、用紙Pの正面側の端に対する把持を行いにくくすることができる。これにより、用紙Pの相対的に温度が高くなる正面側の端及びその近傍部分に対して使用者が触れにくくなるため、安全性が向上する。
【0098】
また、図19に示すように、壁部83が、排紙トレイ18上に載置された用紙Pの排紙方向Vの長さ全体に渡って配置されていることにより、用紙Pに対する正面側からの把持をより一層行いにくくすることができ、効果的である。また、壁部83は、排紙トレイ18の正面側の端の全体に渡って連続して設けられていてもよいし、断続的に設けられていてもよい。
【0099】
また、壁部83の位置は、排紙トレイ18の幅方向Wの端ではなく、その端よりも内側の位置であってもよい。ただし、壁部83の位置は、用紙が排出された際に、その用紙の幅方向の端が壁部83の上に重ならないような位置である必要がある。
【0100】
図19に示す実施形態では、使用者が画像形成装置100の背面側(正面とは反対の面側)から用紙Pを把持することはできない構造となっているため、壁部83が、排紙トレイ18の正面側の端のみに設けられている。しかしながら、画像形成装置100の背面側からも用紙Pの把持が可能な場合は、排紙トレイ18の正面側と背面側の両端に壁部83を設けてもよい。また、壁部83は、排紙トレイ18に凹部82が設けられた上述の構成(図16参照)においても同様に設置可能である。
【0101】
図20は、本発明のさらに別の実施形態に係る画像形成装置100の記録媒体排出部600の構成を示す斜視図である。
【0102】
図20に示す実施形態では、排出口34の近傍に、送風手段としての一対の送風ファン84が設けられている。各送風ファン84は、排出された用紙Pの幅方向両端又はその近傍に対応した位置に配置されている。すなわち、各送風ファン84は、用紙Pの幅方向Uにおいて相対的に温度が高くなる部分に対応して配置されている。
【0103】
このように、本実施形態では、一対の送風ファン84が用紙Pの温度が高くなる部分に対応した位置に配置されていることにより、用紙Pが排紙トレイ18に排出された際、排出された用紙Pの温度の高い部分に対して各送風ファン84からエアを吹き付けることができる。これにより、用紙Pの温度の高い部分を積極的に冷却することができるので、万が一、使用者が用紙Pの幅方向一端又はその近傍に触れたとしても熱さを軽減することができる。
【0104】
また、送風ファン84は、温度が高くなる用紙の幅方向両端のうち、一方の端のみに対応して配置されていてもよい。例えば、図20に示す例では、用紙Pの背面側の端よりも正面側の端(図20における手前側の端)の方が使用者によって把持される可能性が高いので、その把持される可能性が高い正面側の端のみに対応して送風ファン84が設けられてもよい。
【0105】
また、図20では、排紙トレイ18に凹部82が設けた構成を例にしているが、排紙トレイ18に凸部81が設けられた構成においても同様に送風ファン84を適用可能である。さらに、送風ファン84に加え、図19に示す壁部83を設けてもよい。
【0106】
以上のように、本発明によれば、ヒータの長手方向に渡る温度のばらつきに起因して、排出された用紙の温度が部分的に高くなったとしても、用紙の温度の低い部分に対する把持をしやすくなることにより、温度の高い部分に対する使用者の把持を抑制することができる。これにより、ヒータの温度分布のばらつきに起因する安全性の問題を改善できるようになる。また、その結果、温度分布のばらつきが発生しやすい小型のヒータや、高速化のために発熱量を増大させたヒータを用いた構成にも対応できるようになる。
【0107】
このため、本発明は、特に次のような小型のヒータを備える画像形成装置に適用された場合に大きな効果が期待できる。具体的は、図21に示すような基材50の短手方向寸法Qに対する抵抗発熱体59の短手方向寸法Rの比(R/Q)が、25%以上となるヒータ22に対して本発明を適用した場合に、大きな効果を期待できる。さらに、このような短手方向の寸法比(R/Q)が、40%以上となるヒータ22であれば、本発明を適用することの効果はより大きくなる。なお、図21に示す例では、ヒータ22の基材50が長方形に形成されているため、基材50の短手方向寸法Qはどの長手方向位置でも同じ寸法であるが、基材50の縁に凹凸があり、長手方向Zの位置によって短手方向寸法Qが変化する場合は、抵抗発熱体59が配置されている長手方向範囲内で基材50の短手方向寸法Qが最小となる部分を対象にして、上記短手方向の寸法比(R/Q)が成立すればよい。
【0108】
また、ヒータにおける温度のばらつきを抑制するために、PTC特性を有する抵抗発熱体を用いてもよい。PTC特性とは、温度が高くなると抵抗値が高くなる(一定電圧をかけた場合に、ヒータ出力が下がる)特性である。PTC特性を有する発熱部とすることで、低温では高出力によって高速で立ち上がり、高温では低出力により過昇温を抑制することができる。例えば、PTC特性のTCR係数を300~4000ppm/度程度にすれば、ヒータに必要な抵抗値を確保しながら、低コスト化を図れる。より好ましくは、TCR係数を500~2000ppm/度とするのがよい。
【0109】
抵抗温度係数(TCR)は、下記式(2)を用いて算出することができる。式(2)中のT0は基準温度、T1は任意温度、R0は基準温度T0における抵抗値、R1は任意温度T1における抵抗値である。例えば、図10に示す上述のヒータ22において、第1電極部61Aと第2電極部61Bとの間の抵抗値が、25℃(基準温度T0)で10Ω(抵抗値R0)であり、125℃(任意温度T1)で12Ω(抵抗値R1)であった場合は、式(2)から抵抗温度係数は2000ppm/℃となる。
【0110】
【数2】
【0111】
また、定着装置が備えるヒータは、図21に示すようなブロック状(四角形状)の抵抗発熱体59を有するヒータ22に限らず、図22に示すような、直線を折り返したような形状の抵抗発熱体59を有するヒータ22や、その他の形状の抵抗発熱体を有するヒータであってもよい。
【0112】
また、画像形成装置が備える定着装置は、上述の定着装置に限らず、図22図25に示すような定着装置であってもよい。以下、図23図25に示す各定着装置の構成について簡単に説明する。
【0113】
図23に示す定着装置9は、定着ベルト20の加圧ローラ21側とは反対側に、押圧ローラ90が配置されている点において、上述の定着装置とは異なっている。この場合、押圧ローラ90とヒータ22とによって定着ベルト20を挟んで加熱するように構成されている。一方、加圧ローラ21側では、定着ベルト20の内周にニップ形成部材91が配置されている。ニップ形成部材91は、ステー24によって支持されており、ニップ形成部材91と加圧ローラ21とによって定着ベルト20を挟んでニップ部Nを形成している。
【0114】
次に、図24に示す定着装置9では、上述の押圧ローラ90が省略されており、定着ベルト20とヒータ22との周方向接触長さを確保するために、ヒータ22が定着ベルト20の曲率に合わせて円弧状に形成されている。その他は、図23に示す定着装置9と同じ構成である。
【0115】
続いて、図25に示す定着装置9では、定着ベルト20のほかに加圧ベルト92が設けられ、加熱ニップ(第1ニップ部)N1と定着ニップ(第2ニップ部)N2とが分けて構成されている。すなわち、加圧ローラ21に対して定着ベルト20側とは反対側にも、ニップ形成部材91とステー93が配置され、ニップ形成部材91とステー93を内包するように加圧ベルト92が配置されている。その他は、図2に示す定着装置9と同じ構成である。
【0116】
このような、図23図25に示すような定着装置を備える画像形成装置においても、本発明を適用することにより、用紙の温度の低い部分を使用者に把持しやすくすることができる。これにより、安全性の向上が図られ、小型化や高速度化に対応できるようになる。
【0117】
また、上述の実施形態では、本発明を加熱装置の一例である定着装置を備える電子写真方式の画像形成装置に適用した場合を例に説明したが、本発明は、用紙を加熱することにより用紙上のインクを乾燥させる乾燥装置を備えるインクジェット式の画像形成装置にも適用可能である。このようなインクジェット方式の画像形成装置においても、乾燥装置が備える加熱部材(ヒータ)に温度のばらつきがある場合は、本発明を適用することにより、ヒータの温度分布のばらつきに起因する安全性の問題を改善できるようになる。また、本発明に係る画像形成装置は、図1に示すようなカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置であってもよい。
【0118】
さらに、本発明は、図26に示すような、画像形成装置100から送られてきた用紙に後処理を施す後処理装置700にも適用可能である。具体的に、図26に示す後処理装置700は、画像形成装置100によって画像が形成された用紙を加熱する加熱装置87(定着装置や乾燥装置)と、加熱された用紙にパンチ処理やステープル処理などの後処理を施す後処理部88と、後処理された用紙が排出される記録媒体排出部89と、を備えている。また、記録媒体排出部89は、排出された用紙を載置する載置部としての排紙トレイ86を有している。このような後処理装置700においても、加熱装置87が備える加熱部材(ヒータ)に温度のばらつきがある場合は、本発明を適用して、排紙トレイ86に上述の凸部81や凹部82を設けることにより、ヒータの温度分布のばらつきに起因する安全性の問題を改善できるようになる。
【符号の説明】
【0119】
9 定着装置(加熱装置)
18 排紙トレイ(載置部)
22 ヒータ(加熱部材)
50 基材
59 抵抗発熱体(発熱体)
60 発熱部
61 電極部
62 給電線(導電部)
81 凸部(把持補助形状)
81b 最上部
82 凹部(把持補助形状)
82b 最下部
83 壁部(把持抑止形状)
84 送風ファン(送風手段)
90 加熱装置
91 後処理部
92 記録媒体排出部
100 画像形成装置
200 画像形成部
600 記録媒体排出部
700 後処理装置
P 用紙(記録媒体)
J1~J7 ブロック
K1 第1導電経路
K2 第2導電経路
K3 第3導電経路
S1 第1方向
S2 第2方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0120】
【文献】特開2016-62024号公報
図1
図2
図3
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図5
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