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特許7435015均熱化構造、当該均熱化構造を有する加熱装置、定着装置および画像形成装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】均熱化構造、当該均熱化構造を有する加熱装置、定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240214BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G03G15/20 515
H05B3/00 335
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020029242
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021135325
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】山中 健太郎
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-207535(JP,A)
【文献】特開2015-219498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 15/20
H05B 1/00- 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を有する形状の高温部材に、当該高温部材よりも高熱伝導性の板状の均熱材を接触配置した均熱化構造において、前記均熱材の前記長手方向における熱抵抗を、前記長手方向端部側から長手方向中央側に近づくにつれて漸次小さくなるようにしたことを特徴とする均熱化構造。
【請求項2】
前記均熱材が前記長手方向に沿って複数配置されている請求項の均熱化構造。
【請求項3】
前記複数の均熱材が前記長手方向で連続すると共に、当該連続部分で熱抵抗が増加するように構成された請求項の均熱化構造。
【請求項4】
前記均熱材の厚さ又は前記長手方向と直交する短手方向の幅を、前記長手方向で異ならせることで前記均熱材の熱抵抗を変化させる請求項1からのいずれか1項の均熱化構造。
【請求項5】
前記高温部材が加熱源によって直接又は間接に加熱されると共に、当該高温部材の前記長手方向の温度が請求項1からの均熱化構造によって均熱化される加熱装置。
【請求項6】
前記加熱源が前記長手方向に延びたハロゲンヒータである請求項の加熱装置。
【請求項7】
前記加熱源が、前記高温部材の表面に接触して配設され通電によって発熱する抵抗パターンを有する面状ヒータである請求項の加熱装置。
【請求項8】
可撓性を有するスリーブ状の回転部材であって、請求項又はの加熱装置によって加熱される回転部材と、
請求項又はの加熱装置の前記高温部材で構成されると共に前記回転部材の内周に摺接するニップ形成部材と、
前記回転部材を挟んで前記ニップ形成部材と圧接して前記回転部材との間にニップ部を形成する加圧部材とを有し、
前記ニップ部で用紙を挟持搬送する際に前記加熱源の熱を前記用紙に付与することを特徴とする定着装置。
【請求項9】
前記ニップ部において前記用紙が通過しない非通紙領域に、前記均熱材の熱抵抗が前記長手方向に変化する部分を配置した請求項の定着装置。
【請求項10】
給紙装置、画像形成部、転写装置および請求項又はの定着装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向を有する形状の高温部材に高熱伝導性の均熱材を接触配置した均熱化構造と、当該均熱化構造を有する加熱装置、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置で使用される定着装置は種々の型式が知られている。その1つに、低熱容量の薄肉定着ベルトをハロゲンヒータや面状ヒータで加熱する型式がある。定着ベルトの外側には加圧部材としての加圧ローラが配設され、この加圧ローラを定着ベルトを挟んでニップ形成部材に圧着することで定着ニップを形成する。
【0003】
ニップ形成部材の材料は、通紙時の長手方向の温度ムラを抑制するため熱伝導率のよい金属材料で構成される。ニップ形成部材の両端は支持部材(ステー)で支持されるが、ニップ形成部材は長尺のため加圧ローラによる大きな加圧力で中央部が撓みやすい。そこで、支持部材やニップ形成部材の中央部を加圧ローラ側に凸形状にして中央部の撓みを抑制することが行われている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、用紙を連続通紙すると、定着ベルトの幅方向両側の用紙が接触しない非通紙領域で過昇温が発生しやすくなる。そこで、ニップ形成部材の熱抵抗を端部側で小さくして非通紙領域の熱エネルギーを端部側に放出(熱移動)して非通紙領域の過昇温を抑制することが行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、熱抵抗を端部側で小さくすると、ニップ形成部材から支持部材(ステー)に向けた熱移動が生じやすくなるので、ニップ形成部材の温度を適切に維持するために昇温時間が増えてしまうという課題が生じる。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みなされたものであって、高温部材(ニップ形成部材)の熱エネルギーロスを少なくすると共に長手方向の温度のばらつきを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の均熱化構造は、長手方向を有する形状の高温部材に、当該高温部材よりも高熱伝導性の均熱材を接触配置した均熱化構造において、前記均熱材の前記長手方向における熱抵抗を、前記長手方向端部側よりも長手方向中央側で小さくしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温部材の熱エネルギーロスを少なくしつつ長手方向の温度のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る画像形成装置の実施の一形態を示す概略構成図である。
図2A】前記画像形成装置に搭載された定着装置の概略断面図である。
図2B】遮蔽部材の形状とハロゲンヒータの発熱部と用紙サイズとの関係を示す図である。
図2C】遮蔽部材を遮蔽位置へ移動させた状態を示す図である。
図3A】本発明の第1実施形態に係る定着装置のニップ形成部材の分解斜視図である。
図3B】均熱材の平面図である。
図3C】別の均熱材の平面図である。
図4A】本発明の第2実施形態に係る定着装置のニップ形成部材の分解斜視図である。
図4B】均熱材の平面図である。
図4C】別の均熱材の平面図である。
図5A】本発明の第3実施形態に係る定着装置のニップ形成部材の分解斜視図である。
図5B】均熱材の平面図である。
図6A】本発明の第4実施形態に係る定着装置の概略断面図である。
図6B】同定着装置のニップ形成部材の分解斜視図である。
図7A】本発明の第5実施形態に係る定着装置の概略断面図である。
図7B】同定着装置のニップ形成部材の分解斜視図である。
図8A】本発明の実施形態の均熱材を配置した、面状ヒータによる複数のヒートブロックを有するニップ形成部材の平面図である。
図8B】本発明の実施形態の均熱材を配置した、線状往復ヒータを有するニップ形成部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0011】
(画像形成装置)
まず、図1を参照して、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。図1に示す画像形成装置1は、カラーレーザープリンタであり、その装置本体の中央には、4つの作像部4Y、4M、4C、4Kが設けられている。各作像部4Y、4M、4C、4Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
【0012】
具体的に、各作像部4Y、4M、4C、4Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体5と、感光体5の表面を帯電させる帯電装置6と、感光体5の表面にトナーを供給する現像装置7と、感光体5の表面をクリーニングするクリーニング装置8などを備える。なお、図1では、ブラックの作像部4Kが備える感光体5、帯電装置6、現像装置7、クリーニング装置8のみに符号を付しており、その他の作像部4Y、4M、4Cにおいては符号を省略している。
【0013】
各作像部4Y、4M、4C、4Kの下方には、感光体5の表面を露光する露光装置9が配設されている。露光装置9は、光源、ポリゴンミラー、f-θレンズ、反射ミラー等を
有し、画像データに基づいて各感光体5の表面へレーザー光を照射するようになっている。
【0014】
また、各作像部4Y、4M、4C、4Kの上方には、転写装置3が配設されている。転写装置3は、中間転写体としての中間転写ベルト30と、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ31と、二次転写手段としての二次転写ローラ36と、二次転写バックアップローラ32と、クリーニングバックアップローラ33と、テンションローラ34、ベルトクリーニング装置35を備える。
【0015】
中間転写ベルト30は、無端状のベルトであり、二次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33及びテンションローラ34によって張架されている。ここでは、二次転写バックアップローラ32が回転駆動することによって、中間転写ベルト30は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するようになっている。
【0016】
4つの一次転写ローラ31は、それぞれ、各感光体5との間で中間転写ベルト30を挟み込んで一次転写ニップを形成している。また、各一次転写ローラ31には、図示しない電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ31に印加されるようになっている。
【0017】
二次転写ローラ36は、二次転写バックアップローラ32との間で中間転写ベルト30を挟み込んで二次転写ニップを形成している。また、上記一次転写ローラ31と同様に、二次転写ローラ36にも図示しない電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ36に印加されるようになっている。
【0018】
ベルトクリーニング装置35は、中間転写ベルト30に当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードを有する。このベルトクリーニング装置35から伸びた図示しない廃トナー移送ホースは、図示しない廃トナー収容器の入り口部に接続されている。
【0019】
プリンタ本体の上部には、ボトル収容部2が設けられており、ボトル収容部2には、補給用のトナーを収容する4つのトナーボトル2Y、2M、2C、2Kが着脱可能に装着されている。各トナーボトル2Y、2M、2C、2Kと上記各現像装置7との間には、図示しない補給路が設けてあり、この補給路を介して各トナーボトル2Y、2M、2C、2Kから各現像装置7へトナーが補給されるようになっている。
【0020】
一方、プリンタ本体の下部には、記録媒体としての用紙Pを収容した給紙トレイ10や、給紙トレイ10から用紙Pを搬出する給紙ローラ11等が設けてある。なお、記録媒体には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート等が含まれる。また、図示しないが、手差し給紙機構が設けてあってもよい。
【0021】
プリンタ本体内には、用紙Pを給紙トレイ10から二次転写ニップを通過させて装置外へ排出するための搬送路Rが配設されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向上流側には、搬送タイミングを計って用紙Pを二次転写ニップへ搬送するタイミングローラとしての一対のレジストローラ12が配設されている。
【0022】
また、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向下流側には、用紙Pに転写された未定着画像を定着するための定着装置20が配設されている。さらに、定着装置20よりも搬送路Rの用紙搬送方向下流側には、用紙を装置外へ排出するための一対の排紙ローラ13が設けられている。また、プリンタ本体の上面部には、装置外に排出された用紙をストックするための排紙トレイ14が設けてある。
【0023】
続いて、図1を参照して、本実施形態に係るプリンタの基本的動作について説明する。作像動作が開始されると、各作像部4Y、4M、4C、4Kにおける各感光体5が図示しない駆動装置によって図の時計回りに回転駆動され、各感光体5の表面が帯電装置6によって所定の極性に一様に帯電される。
【0024】
帯電された各感光体5の表面には、露光装置9からレーザー光がそれぞれ照射されて、各感光体5の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体5に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように各感光体5上に形成された静電潜像に、各現像装置7によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
【0025】
また、作像動作が開始されると、二次転写バックアップローラ32が図の反時計回りに回転駆動し、中間転写ベルト30を図の矢印で示す方向に周回走行させる。また、各一次転写ローラ31に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ31と各感光体5との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。
【0026】
その後、各感光体5の回転に伴い、感光体5上の各色のトナー画像が一次転写ニップに達したときに、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、各感光体5上のトナー画像が中間転写ベルト30上に順次重ね合わせて転写される。かくして、中間転写ベルト30の表面にフルカラーのトナー画像が担持される。また、中間転写ベルト30に転写しきれなかった各感光体5上のトナーは、クリーニング装置8によって除去される。そして、各感光体5の表面が図示しない除電装置によって除電され、表面電位が初期化される。
【0027】
プリンタの下部では、給紙ローラ11が回転駆動を開始し、給紙トレイ10から用紙Pが搬送路Rに送り出される。搬送路Rに送り出された用紙Pは、レジストローラ12によって搬送が一旦停止される。その後、所定のタイミングでレジストローラ12の回転駆動を開始し、中間転写ベルト30上のトナー画像が二次転写ニップに達するタイミングに合わせて、用紙Pを二次転写ニップへ搬送する。
【0028】
このとき、二次転写ローラ36には、中間転写ベルト30上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、この転写電界によって、中間転写ベルト30上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。また、このとき用紙Pに転写しきれなかった中間転写ベルト30上の残留トナーは、ベルトクリーニング装置35によって除去され、除去されたトナーは図示しない廃トナー収容器へと搬送され回収される。
【0029】
その後、用紙Pは定着装置20へと搬送され、定着装置20によって用紙P上のトナー画像が当該用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、排紙ローラ13によって装置外へ排出され、排紙トレイ14上にストックされる。以上の説明は、用紙上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つの作像部4Y、4M、4C、4Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像部を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0030】
図2Aは、本実施形態の定着装置の概略断面図である。以下、図2Aに基づき、定着装置20の構成について説明する。図2Aに示すように、定着装置20は、定着部材としての定着ベルト21と、定着ベルト21の外周面に当接する対向部材としての加圧ローラ22と、定着ベルト21を加熱する加熱源としてのハロゲンヒータ23と、定着ベルト21の内周側から加圧ローラ22に当接してニップ部Nを形成する高温部材としてのニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持する支持部材としてのステー25と、ハロゲンヒータ23からの熱を定着ベルト21へ反射する反射部材26と、ハロゲンヒータ23からの熱を遮蔽する遮蔽部材27と、定着ベルト21の温度を検知する温度検知手段としての温度センサ28等を備える。
【0031】
ニップ形成部材24を構成する材料は、耐熱性で熱伝導率の高い次のような材料(良熱伝導体)である。
材料 熱伝導率(W/mK)
カーボンナノチューブ 3,000~5,500
グラファイトシート 700~1,750
銀 420
銅 398
アルミニウム 236
【0032】
上記定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む)で構成されている。詳しくは、定着ベルト21は、ニッケルもしくはSUS等の金属材料又はポリイミド(PI)などの樹脂材料で形成された内周側の基材と、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで形成された外周側の離型層によって構成されている。また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
【0033】
また、弾性層が無い場合は、熱容量が小さくなり定着性が向上するが、未定着トナーを押しつぶして定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラが生じる可能性がある。これを防止するには、厚さ100μm以上の弾性層を設けることが望ましい。厚さ100μm以上の弾性層を設けることで、弾性層の弾性変形により微小な凹凸を吸収することができるので、光沢ムラの発生を回避することができるようになる。
【0034】
本実施形態では、定着ベルト21の低熱容量化を図るために、定着ベルト21を薄くかつ小径化している。具体的には、定着ベルト21を構成する基材、弾性層、離型層のそれぞれの厚さを、20~50μm、100~300μm、10~50μmの範囲に設定し、全体としての厚さを1mm以下に設定している。また、定着ベルト21の直径は、20~40mmに設定している。
【0035】
さらに低熱容量化を図るためには、望ましくは、定着ベルト21全体の厚さを0.2mm以下にするのがよく、さらに望ましくは、0.16mm以下の厚さとするのがよい。また、定着ベルト21の直径は、30mm以下とするのが望ましい。
【0036】
上記加圧ローラ22は、芯金22aと、芯金22aの表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等から成る弾性層22bと、弾性層22bの表面に設けられたPFA又はPTFE等から成る離型層22cによって構成されている。加圧ローラ22は、図示しない加圧手段によって定着ベルト21側へ加圧され定着ベルト21を介してニップ形成部材24に当接している。
【0037】
この加圧ローラ22と定着ベルト21とが圧接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層22bが押しつぶされることで、所定の幅のニップ部Nが形成されている。ニップ形成部材24は定着ベルト21内面と直接摺動するようになっている。加圧ローラ22の加圧力を受けることで、ニップ部Nの形状が決まる。本実施形態では、ニップ部Nの形状が平坦状であるが、凹形状やその他の形状としてもよい。なお、定着ベルト21と加圧ローラ22は、互いに圧接する場合に限らず、加圧を行わず単に接触させるだけの構成とすることも可能である。
【0038】
また、加圧ローラ22は、プリンタ本体に設けられた図示しないモータ等の駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ22が回転駆動すると、その駆動力がニップ部Nで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転するようになっている。
【0039】
本実施形態では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータ等の加熱源を配設してもよい。また、弾性層22bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ22の内部に加熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。
【0040】
上記ハロゲンヒータ23は、定着ベルト21の内周側で、かつ、ニップ部Nの用紙搬送方向の上流側に配設されている。詳しくは、図2Aにおいて、ニップ部Nの用紙搬送方向の中央Qと、加圧ローラ22の回転中心Oを通る仮想直線をLとすると、ハロゲンヒータ23はこの仮想直線Lよりも用紙搬送方向の上流側(図2Aの下側)に配設されている。
【0041】
ハロゲンヒータ23は、プリンタ本体に設けられた電源部により出力制御されて発熱するように構成されており、その出力制御は、上記温度センサ28による定着ベルト21の表面温度の検知結果に基づいて行われる。このようなヒータ23の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定できるようになっている。なお、定着ベルト21の温度を検知する温度センサの代わりに、加圧ローラ22の温度を検知する温度センサ(図示省略)を設け、その温度センサで検知した温度により、定着ベルト21の温度を予測するようにしてもよい。
【0042】
本実施形態では、ハロゲンヒータ23は2本設けられているが、プリンタで使用する用紙のサイズ等に応じて、ハロゲンヒータ23の本数を1本又は3本以上としてもよい。また、定着ベルト21を加熱する加熱源として、ハロゲンヒータ以外に、抵抗発熱体、又はカーボンヒータ等を用いることも可能である。
【0043】
上記反射部材26は、ハロゲンヒータ23と対向するようにステー25に固定支持されている。この反射部材26によって、ハロゲンヒータ23から放射された熱(又は光)を定着ベルト21へ反射することで、熱がステー25等に伝達されるのを抑制し、定着ベルト21を効率良く加熱すると共に省エネルギー化を図っている。
【0044】
反射部材26の材料としては、アルミニウムやステンレス等が用いられる。特に、アルミニウム製の基材に輻射率の低い(反射率の高い)銀を蒸着したものを用いた場合、定着ベルト21の加熱効率を向上させることが可能である。
【0045】
上記遮蔽部材27は、厚さ0.1mm~1.0mmの金属板を、定着ベルト21の内周面に沿った円弧状の断面形状に形成して構成されている。また、遮蔽部材27は、必要に応じて定着ベルト21の周方向に移動可能となっている。
【0046】
本実施形態では、定着ベルト21の周方向領域において、ハロゲンヒータ23が定着ベルト21に直接対向して加熱する直接加熱領域と、ハロゲンヒータ23と定着ベルト21との間に遮蔽部材27以外の他部材(反射部材26、ステー25、ニップ形成部材24等)が介在する非直接加熱領域とがある。熱遮蔽する必要がある場合は、図2Aに示すように、遮蔽部材27を直接加熱領域側の遮蔽位置に配設する。
【0047】
一方、熱遮蔽の必要がない場合は、図3に示すように、遮蔽部材27を非直接加熱領域側の退避位置へ移動させ、遮蔽部材27を反射部材26やステー25の裏側へ退避させることが可能となっている。また、遮蔽部材27は耐熱性を要するため、その素材には、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属材料、又はセラミックを用いることが好ましい。
【0048】
上記ステー25は、図2Aに示すようにニップ形成部材24を切断面で支えることにより、ニップ形成部材24とステー25が線接触となる。このため、ステー25に向けた熱移動が生じにくくなる。また、ステー25の断面形を加圧ローラ22側に弧状に膨らんだ凸形状とすることで、加圧ローラ22の荷重がかかったときにステー25の撓みをキャンセルして中央部ニップの幅減少を防ぐ効果を付与することができる。
【0049】
(遮蔽部材)
図2Bは、遮蔽部材の形状とハロゲンヒータの発熱部と用紙サイズとの関係を示す図である。図2Bに示すように、本実施形態の遮蔽部材27は、ハロゲンヒータ23からの熱を遮蔽するために両端部に設けられた一対の遮蔽部48と、遮蔽部48同士を連結する連結部49とを有する。また、両遮蔽部48の間は、ハロゲンヒータ23からの熱を遮蔽せずに放出する開口部50となっている。
【0050】
また、各遮蔽部48の互いに対向する内縁には、遮蔽部材27の回転方向に対して平行なストレート部51と、その回転方向に対して傾斜する傾斜部52とが形成されている。図2Bにおいて、遮蔽部材27が遮蔽位置へ回転移動する側を遮蔽側Yとすると、各傾斜部52はストレート部51の遮蔽部側Yに連続して設けられており、互いに遮蔽側Yに向かって離れるように傾斜している。これにより、開口部50は、その遮蔽側Yに向かって、ストレート部51間で同じ幅に形成され、傾斜部52間では幅が広がるように形成されている。
【0051】
次に、図2Cを参照してハロゲンヒータの発熱部と用紙サイズとの関係について説明する。本実施形態では、用紙サイズに応じて加熱領域を変更するため、各ハロゲンヒータ23の発熱部の長さや配設位置を異ならせている。
【0052】
2本のハロゲンヒータ23のうち、一方(図の下側)のハロゲンヒータ23の発熱部23aは、長手方向中央部側に配設される。他方(図の上側)のハロゲンヒータ23の発熱部23bは、長手方向両端部側にそれぞれ配設される。
【0053】
この例では、中央部側の発熱部23aは、中サイズの通紙幅W2に対応した範囲に配設されており、両端部側の発熱部23bは、中サイズの通紙幅W2以上で、大サイズ及び特大サイズの通紙幅W3、W4を含む範囲に配設されている。また、遮蔽部材27の形状と用紙サイズとの関係では、各ストレート部51が、大サイズの通紙幅W3の端部に対して幅方向内側近傍に配設され、各傾斜部52が、大サイズの通紙幅W3の端部を跨ぐ位置に配設されている。
【0054】
なお、本実施形態における用紙サイズの例としては、例えば、中サイズがレターサイズ(通紙幅215.9mm)又はA4サイズ(通紙幅210mm)、大サイズがダブルレターサイズ(通紙幅279.4mm)又はA3サイズ(通紙幅297mm)、特大サイズがA3ノビ(通紙幅329mm)などが挙げられる。ただし、用紙サイズの例はこれに限定されるものではない。また、ここでいう、中サイズ、大サイズ、特大サイズは、各サイズの相対的な関係を示すものであり、小サイズ、中サイズ、大サイズなどであっても構わない。
【0055】
(定着装置の基本動作)
以下、図2Aを参照しつつ、本実施形態に係る定着装置の基本動作について説明する。プリンタ本体の電源スイッチが投入されると、ハロゲンヒータ23に電力が供給されると共に、加圧ローラ22が図2A中の時計回りに回転駆動を開始する。これにより、定着ベルト21は、加圧ローラ22との摩擦力によって、図2A中の反時計回りに従動回転する。
【0056】
その後、上述の画像形成工程により未定着のトナー画像Tが担持された用紙Pが、不図示のガイド板に案内されながら図2Aの矢印A1方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト21及び加圧ローラ22のニップ部Nに送入される。そして、ハロゲンヒータ23によって加熱された定着ベルト21による熱と、定着ベルト21と加圧ローラ22との間の加圧力とによって、用紙Pの表面にトナー画像Tが定着される。
【0057】
トナー画像Tが定着された用紙Pは、ニップ部Nから図2A中の矢印A2方向に搬出される。このとき、用紙Pの先端が図示しない分離部材の先端に接触することにより、用紙Pが定着ベルト21から分離される。その後、分離された用紙Pは、上述のように、排紙ローラによって機外に排出され、排紙トレイにストックされる。
【0058】
特に、本実施形態では、定着ベルト21が上述のように低熱容量化されており、かつ、加圧ローラ22は弾性層22bの断熱効果によって薄い離型層22cが効果的に暖まる構成となっているので、必要最小限の熱量で用紙へのトナーの定着を行うことが可能である。
【0059】
(ハロゲンヒータと遮蔽部材の制御)
次に、用紙サイズごとのハロゲンヒータの制御と遮蔽部材の制御について説明する。まず、図2Bに示す中サイズ用紙P2を通紙する場合は、中央部側の発熱部23aのみを発熱させることにより、中サイズの通紙幅W2に対応した範囲のみを加熱する。また、特大サイズ用紙P4を通紙する場合は、中央部側の発熱部23aに加え、両端部側の発熱部23bも発熱させ、特大サイズの通紙幅W4に対応した範囲を加熱する。
【0060】
ところが、本実施形態では、ハロゲンヒータ23の加熱範囲は中サイズの通紙幅W2と特大サイズの通紙幅W4にしか対応していない。このため、大サイズ用紙P3を通紙する場合、中央部側の発熱部23aのみを発熱させると、必要な範囲が加熱されない。
【0061】
また中央部側と両端部側の各発熱部23a、23bを発熱させると、加熱される範囲が大サイズの通紙幅W3を超えてしまう。仮に、中央部側の両端部側の各発熱部23a、23bを発熱させた状態で、そのまま大サイズ用紙P3を通紙すると、大サイズの通紙幅W3よりも外側の非通紙領域において定着ベルト21の温度が過度に上昇するといった問題がある。
【0062】
そこで、本実施形態では、大サイズ用紙P3を通紙する際、図2Cに示すように、遮蔽部材27を遮蔽位置へ移動させる。これにより、両端部側の遮蔽部48によって大サイズの通紙幅W3の端部近傍から外側の範囲を覆うことができるので、非通紙領域において定着ベルト21の温度上昇を抑えることができる。
【0063】
また、定着処理を終えた場合、又は、定着ベルト21の非通紙領域の温度が所定の閾値以下になった場合など、熱遮蔽する必要がなくなった場合は、遮蔽部材27を退避位置へ戻す。このように、必要に応じて遮蔽部材27を遮蔽位置に移動させることで、通紙速度を落としたりすることなく良好な定着を行うことができる。
【0064】
また、本実施形態では、遮蔽部48に傾斜部52を設けているので、遮蔽部材27の回転位置を変更することにより、遮蔽部48によって発熱部23bを覆う範囲を調整することが可能である。例えば、通紙枚数や通紙時間が増えると、非通紙領域における定着ベルト21の温度が上昇しやすい傾向にあるので、通紙枚数が所定枚数に達した際、又は通紙時間が所定時間に達した際に、両端部側の発熱部23bを覆い隠す方向に遮蔽部材27を回転させることで、より高度に温度上昇を抑制することが可能となる。
【0065】
なお、定着ベルト21の温度を検知する温度センサ28は、定着ベルト21の軸方向における温度上昇が顕著な領域に配設することが望ましい。本実施形態の場合は、特に、大サイズの通紙幅W3よりも外側の領域において温度上昇しやすいので、大サイズの通紙幅W3よりも外側に温度センサ28を配設することが望ましい(図2B参照)。
【0066】
また、本実施形態では、2本のハロゲンヒータ23のうち、上記温度上昇に大きく起因するのは、両端部側に発熱部23bを有するハロゲンヒータ23である。したがって、このハロゲンヒータ23の発熱部23bと対向する位置に温度センサ28を配設することが望ましい。
【0067】
(高熱伝導部)
以下、本発明の均熱材としての高熱伝導部の第1~第5実施形態を、図面を参照して順次説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態では、図2A図3Aに示すように、従来の構成に加えて、ニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持するステー25との間に、均熱材としての4つの高熱伝導部290を配設している。この高熱伝導部290の幅は、ニップ形成部材24の長手方向の位置に応じて変化することが主要な特徴である。高熱伝導部290の材料は、ニップ形成部材24のよりも熱伝導率がよい材料で構成する。ニップ形成部材24を例えばアルミニウム(236W/mK)で構成した場合、例えば銅(398W/mK)やグラファイトシート(700~1,750W/mK)で高熱伝導部290を構成することができる。
【0068】
詳しくは、各高熱伝導部290は平面視で台形状をなし、ニップ形成部材24と同じ長さで長手方向に延びたシート状の断熱部材292の上に間欠配置されている。各高熱伝導部290は断熱部材292の長手方向中央部に関して左右対称に配置され、各高熱伝導部290の台形の長辺を中央側、短辺を端部側に向けて配置されている。
【0069】
したがって、断熱部材292の短手方向における各高熱伝導部290の幅は、ニップ形成部材24の長手方向中央側にいくにつれて漸増する。すなわち、高熱伝導部290の熱抵抗が、ニップ形成部材24の長手方向中央側にいくにつれて次第に小さくなる。これにより、各高熱伝導部290において、ニップ形成部材24の長手方向中央側に向けた熱移動が生じやすくなる。
【0070】
ここで「熱抵抗」とは、熱の伝わりやすさを表す物理量であって、厚さがd(m)で厚さ方向と直交する面の面積がS(m)である直方体を考えたときに、その直方体の厚さ方向の熱抵抗R(K/W)は以下の式で定義される。λは直方体の厚さ方向の熱伝導率(W/m・K)である。
R=d/(λ・S)
【0071】
図3Bは第1実施形態のニップ形成部材24のニップ面の概要図と温度分布図である。図3Bから分かるように、非通紙部の過昇温で生じた熱を無駄にステー25側に排出することなく、中央側の通紙範囲に移動して有効利用することができる。そして、立ち上がり時間、ファーストプリントタイムの遅れなく、非通紙領域の温度上昇を低減することができる。
【0072】
高熱伝導部290は、図3Bのように、各発熱部23a、23bの長手方向端部から所定用紙サイズの端部よりも所定距離だけ用紙搬送基準に近い範囲まで配設する。こうすることで、中央側に向けた熱移動がいっそう生じやすくなる。具体的には、中央の発熱部23aのみ定着ベルト21を加熱する用紙サイズ通紙時に、ニップ形成部材24の非通紙領域に向けた熱移動(熱逃げ)が生じにくくなる。このため、定着ベルト21の適切な定着温度を維持するための消費電力を低減することができる。
【0073】
また、図3Cのように4つの高熱伝導部290を長手方向に連続した場合、ニップ形成部材24の長手方向の均熱性をいっそう向上させることができる。すなわち、4つの高熱伝導部290(290a、290b)を中間高熱伝導部291a、291bで連続することで、図3Bに比べて長手方向の均熱性を向上させることができる。
【0074】
中間高熱伝導部291aの短手方向幅は、高熱伝導部290aの用紙搬送基準側の長さla以下で配設する。また中間高熱伝導部291bの短手方向幅は、高熱伝導部290aの用紙搬送基準とは反対側の長さlb以下で配設する。こうすることで、ニップ形成部材24の中央側への熱移動が生じやすい関係を保ったまま、ニップ形成部材24の長手方向の均熱性を向上させることができる。
【0075】
高熱伝導部290の材料として、面方向のみ熱伝導率が高いグラファイトシート(700-1500W/mK)を使用することができる。また、ニップ形成部材24とステー25との間で、高熱伝導部290が配設されていない位置には、断熱部材292を配設する。こうすることで、ステー25に流れる熱を抑制しつつ、ニップ形成部材24を均熱することができる。
【0076】
以上説明したように、加熱源としてのハロゲンヒータ23による定着ベルト21の加熱をする際に、加熱の必要のない非通紙領域に熱が移動するのを抑制し、ニップ形成部材24からステー25への熱移動を抑制することができる。このため、定着ベルト21の温度を適切に維持するための昇温時間を維持したまま、端部温度上昇を低減することが可能となる。
【0077】
[第2実施形態]
図4Aは第2実施形態に係る定着装置のニップ形成部材24を示す斜視図である。図4Bは当該第2実施形態のニップ形成部材24のニップ面の概要図と温度分布図である。高熱伝導部241は前記第1実施形態と異なりニップ形成部材24に予め一体化しているので、定着装置20の組付作業が容易になる。
【0078】
ニップ形成部材24の各発熱部23a、23bの発熱領域の長手方向端部から所定の紙サイズの端部よりも所定距離だけ用紙搬送基準に近い範囲において、通常部240よりも高熱伝導率で熱抵抗が小さく、当該熱抵抗が長手方向の位置に応じて異なる高熱伝導部241が配設される。
【0079】
所定の紙サイズ(例えばA6)を通紙するため中央発熱部23aが点灯して定着ベルト21の中央部を加熱するとき(端部発熱部23bは消灯)、中央高熱伝導部241aの用紙搬送基準側が紙サイズ(例えばA6)の端部に所定長さで重なる。これにより、A6用紙の外側の非通紙領域の熱が中央高熱伝導部241aによって中央側に熱移動されやすくなる。このため、加熱する必要のないニップ形成部材24の端部には熱移動が生じにくくなり、定着ベルト21の適切な定着温度を維持するための消費電力を低減させることができる。
【0080】
また、中央発熱部23aと端部発熱部23bの両方が定着ベルト21の加熱をする用紙サイズの通紙時でも、中央発熱部23aによる熱は中央高熱伝導部241aによって、端部発熱部23bによる熱は端部高熱伝導部241bによって、それぞれ熱移動がされやすくなる。このため、各発熱部23a、23bによる定着ベルト21の加熱制御を、中央・端部で独立制御しやすくなる。
【0081】
また、図4Bのように、ニップ形成部材24の長手方向において各発熱部23a、23bの端部から中央に向かうにしたがって、各高熱伝導部241の熱抵抗が小さくなるようにすることで、中央側への熱が移動しやすくなる。これにより、非通紙領域で無駄(熱エネルギーロス)になってしまう熱を中央側の通紙領域に送って有効利用することができるため、立ち上がり時間、ファーストプリントタイムの遅れなく非通紙領域の温度上昇を低減することができる。
【0082】
図4Cは、前述した図3Cと同様にニップ形成部材24の均熱性を全体的に向上させるニップ面の概要図である。図4Cのように、中央高熱伝導部241aの相互間に、熱抵抗が中央高熱伝導部241aの近接する部分の熱抵抗以下の中央中間高熱伝導部242aを配設する。
【0083】
また、中央高熱伝導部241aと端部高熱伝導部241bの間に、熱抵抗が端部高熱伝導部241bの近接する部分の熱抵抗以上の端部中間高熱伝導部242bを配設する。こうすることで、ニップ形成部材24の端部から中央側への熱移動が生じやすい関係を保ったまま、ニップ形成部材24の長手方向の均熱性を全体的に向上させることができる。
【0084】
[第3実施形態]
図5Aは第3実施形態に係る定着装置のニップ形成部材24を示す斜視図である。この第3実施形態は、ニップ形成部材24を熱伝導率の異なる複数の材料で構成することを示している。すなわち、例えば図5Aのように、通常部240は材料Aで構成し、高熱伝導部241は材料Bで構成する。熱伝導率は材料B>材料Aである。
【0085】
通常部240に比べて高熱伝導部241の熱抵抗が小さくなるため、高熱伝導部241内での熱移動が促進される。また、高熱伝導部241内の端部から中央に向かって熱伝導率を漸次増大していくと、熱抵抗は端部から中央に向かって漸次小さくなっていくため、端部から中央側への熱移動が促進される。
【0086】
ニップ形成部材24における通常部240と高熱伝導部241、また高熱伝導部241内での熱抵抗の変化の方法であるが、熱伝導率の異なる材料に変える構成だけでなく、次のような方法もあげられる。すなわち、ニップ形成部材24の短手方向における断面形状をニップ形成部材24の長手方向で変更する。
【0087】
図5Bで説明すると、高熱伝導部241の厚さ(t0-t2)や短手方向幅(w1、w2)を、ニップ形成部材24の長手方向で変更する。要するに、高熱伝導部241の熱抵抗を小さくしたい部分では厚さや短手方向幅を大きくする。ニップ形成部材24の所望の熱移動量に応じて、前述のように、ニップ形成部材24の材料を熱伝導率の異なる材料に変えたり、断面形状を変えたり、熱抵抗を小さくしたい部分の表面に熱伝導率の高い高熱伝導部を接触配置するなど、複数の方法を組み合わせることも可能である。
【0088】
[第4実施形態]
図6Aは第4実施形態に係る定着装置の概略断面図、図6Bはニップ形成部材24の斜視図である。図6Bのように、ニップ形成部材24の長手方向の位置に応じて、高熱伝導部291a、291bの形状を決定してニップ形成部材24の裏面に接触配置する。
【0089】
[第5実施形態]
図7Aは第5実施形態に係る定着装置の概略断面図、図7Bはニップ形成部材24の斜視図である。図7A図7Bに示すように、ニップ形成部材24とステー25との間に断熱部材292を配設する。
【0090】
前述した実施形態のように、高熱伝導部241をニップ形成部材24に接触配置すると、ニップ形成部材24の熱が主として高熱伝導部241からステー25に向けて熱移動しやすくなるおそれがある。そこで図7A図7Bのように、ニップ形成部材24とステー25との間に断熱部材292を配設する。こうすることで、ニップ形成部材24からステー25へ向かう熱移動を抑制することができる。
【0091】
(面状ヒータを有するニップ形成部材)
図8Aは、通電によって発熱する蛇行状の抵抗パターン245a、245bを有する面状ヒータを配設したニップ形成部材24を示す図である。高温部材としてのニップ形成部材24の長手方向中央部分に、5つの抵抗パターン245aが長手方向に沿って配設されている。またニップ形成部材24の長手方向両端部分に、各1つの抵抗パターン245bが配設されている。ニップ形成部材24の裏面には前述した高熱伝導部241(241a、241b)が配設されている。
【0092】
小サイズ用紙(例えばA6)を通紙するときは中央部分の抵抗パターン245aのみ通電し、大サイズ用紙(例えばB4)を通紙するときは全部の抵抗パターン245a、245bに通電する。本実施形態の高熱伝導部241(241a、241b)によって、非通紙領域の過昇温抑制を図りつつ、非通紙領域の定着ベルト21の熱を中央側の通紙領域に移動させて有効利用することができる。
【0093】
一方、図8Bは、通電によって発熱する直線状の抵抗パターン246a、246bを有する面状ヒータを配設したニップ形成部材24を示す図である。このニップ形成部材24は、用紙サイズを区別せずにニップ形成部材24の長手方向全体が抵抗パターン246a、246bで加熱されるので、特に小サイズ用紙を通紙するときの非通紙領域が大きくなり、熱の無駄が発生しやすい(熱エネルギーロス大)。本実施形態の高熱伝導部241(241a、241b)によって、非通紙領域の過昇温抑制を図りつつ、非通紙領域の定着ベルト21の熱を中央側の通紙領域に移動させて有効利用することができる。
【0094】
以上により、定着ベルト21の加熱の必要のない非通紙領域への熱移動や過昇温を防ぎ、ニップ形成部材24からステー25への熱の移動を防ぐことができるため、定着ベルト21の温度を適切に維持するための昇温時間を維持したまま、端部温度上昇を低減することが可能となる。
【0095】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。例えば、画像形成装置は図1に示すようなプリンタに限らず、複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等とすることが可能である。
【0096】
また本発明に係る均熱化構造を有する加熱装置は定着装置にのみ適用されるものではなく、用紙に塗布されたインクを乾燥させるために、インクジェット方式の画像形成装置に搭載される乾燥装置にも適用可能である。さらに、本発明に係る加熱装置は、ベルト部材によって用紙などのシートを搬送しながら、そのシートの表面に被覆部材としてのフィルムを熱圧着する被覆装置(ラミネータ)にも適用可能である。また、本発明に係る加熱装置は、ベルト部材を加熱するベルト加熱装置に限らず、ベルト部材を備えていない加熱装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
1:画像形成装置 2:ボトル収容部
2Y、2M、2C、2K:トナーボトル 3:転写装置
4Y、4M、4C、4K:作像部 5:感光体
6:帯電装置 7:現像装置
8:クリーニング装置 9:露光装置
10:給紙トレイ 11:給紙ローラ
12:レジストローラ 13:排紙ローラ
14:排紙トレイ 20:定着装置
21:定着ベルト 22:加圧ローラ
22a:芯金 22b:弾性層
22c:離型層 23:ハロゲンヒータ
23a:中央発熱部 23b:端部発熱部
24:ニップ形成部材 25:ステー(支持部材)
26:反射部材 27:遮蔽部材
28:温度センサ 30:中間転写ベルト
31:一次転写ローラ 32:二次転写バックアップローラ
33:クリーニングバックアップローラ 34:テンションローラ
35:ベルトクリーニング装置 36:二次転写ローラ
48:遮蔽部 49:連結部
50:開口部 51:ストレート部
52:傾斜部 240:通常部
241:高熱伝導部(均熱材) 241a:中央高熱伝導部(均熱材)
241b:端部高熱伝導部(均熱材) 242a:中央中間高熱伝導部(均熱材)
242b:端部中間高熱伝導部(均熱材) 245a、245b:抵抗パターン
246a、246b:抵抗パターン 290:高熱伝導部(均熱材)
290a:高熱伝導部(均熱材) 291:高熱伝導部(均熱材)
291a、291b:中間高熱伝導部(均熱材) 292:断熱部材
T:トナー画像 W2-W4:通紙幅
P:用紙(記録媒体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0098】
【文献】特開2019-159176号公報
【文献】特開2014-186211号公報
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B