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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】画像読取装置、画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20240214BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20240214BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20240214BHJP
   B65H 7/14 20060101ALI20240214BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H04N1/00 567M
H04N1/00 002A
H04N1/12 Z
B65H5/06 M
B65H7/14
G03G21/00 370
G03G21/00 510
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020043257
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021145251
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】苅草 裕治
(72)【発明者】
【氏名】関田 大樹
【審査官】豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-030451(JP,A)
【文献】特開2013-023307(JP,A)
【文献】特開2010-252250(JP,A)
【文献】特開2008-216737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/04
B65H 5/06
B65H 7/14
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに形成された画像を読み取る読取機構と、
前記読取機構よりも前記シートの搬送方向の上流側に配置され、前記シートを搬送する第一搬送手段と、
前記読取機構よりも前記搬送方向における下流側に配置され、前記シートを搬送する第二搬送手段と、
前記第一搬送手段と前記第二搬送手段との間に配置され、搬送経路を切り替える搬送経路切替部材と、
前記第一搬送手段および前記第二搬送手段の搬送動作の制御をする制御手段と、
を含み、
前記読取機構は、前記搬送経路切替部材よりも前記搬送方向の上流側に配置され、
前記制御手段は、前記第二搬送手段による前記シートの搬送速度を前記第一搬送手段による前記シートの搬送速度よりも速くした状態で前記シートを搬送し、前記読取機構において読み取られた画像に基づいて、前記第一搬送手段による前記シートの搬送速度と前記第二搬送手段による前記シートの搬送速度との差を前記シートの後端が規定位置を通過したとき減少させる
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記読取機構において読み取られた画像に含まれる複数の箇所であって、前記搬送方向において互いに異なる位置に相当する各箇所における読取結果に基づき、前記差を変更する、ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記シートに形成された画像は、前記搬送方向にマークが並べられたチャート画像であり、
前記制御手段は、前記読取機構における前記チャート画像の読取結果に基づき、前記差を変更する、ことを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記マークは、前記搬送方向における一定の間隔で形成されていて、
前記制御手段は、前記読取機構が読み取った前記マークの間隔に基づき、前記差を変更する、ことを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記読取機構において読み取られた画像に含まれる複数の箇所のうち、前記搬送方向において互いに異なる位置の特徴領域の読取結果基づき、前記差を変更する、ことを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項6】
シートに画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段により画像が形成されたシートを読み取る、請求項1乃至のいずれか一項に記載の画像読取装置と、を有することを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置、画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、様々な原因により、所望の画像形成結果(印刷物)が得られない場合がある。これに対処するべく、利用者に対して、画像形成結果の異常を知らせる技術が知られている。
【0003】
従来技術として、シート状の記録媒体に形成された画像から検出した情報と、画像形成時に用いられたデータと比較し、形成された画像の異常を検知した場合に利用者へ異常発生を知らせることで、異常画像の流出を防止する欠陥検知技術が既に知られている。
【0004】
また従来技術として、記録媒体に形成された画像を読み取る画像読取機構よりも搬送方向下流側であり、かつ下流側搬送ローラよりも搬送方向上流側において、記録媒体の搬送経路よりも上方に搬送中の記録媒体に接する回転部材を備える画像形成装置が開示されている(例えば、特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、記録媒体に形成された画像の読み取り精度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、画像読取装置は、シートに形成された画像を読み取る読取機構と、前記読取機構よりも前記シートの搬送方向の上流側に配置され、前記シートを搬送する第一搬送手段と、前記読取機構よりも前記搬送方向における下流側に配置され、前記シートを搬送する第二搬送手段と、前記第一搬送手段と前記第二搬送手段との間に配置され、搬送経路を切り替える搬送経路切替部材と、前記第一搬送手段および前記第二搬送手段の搬送動作の制御をする制御手段と、を含み、前記読取機構は、前記搬送経路切替部材よりも前記搬送方向の上流側に配置され、前記制御手段は、前記第二搬送手段による前記シートの搬送速度を前記第一搬送手段による前記シートの搬送速度よりも速くした状態で前記シートを搬送し、前記読取機構において読み取られた画像に基づいて、前記第一搬送手段による前記シートの搬送速度と前記第二搬送手段による前記シートの搬送速度との差を前記シートの後端が規定位置を通過したとき減少させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、記録媒体に形成された画像の読み取りの精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る画像形成システムの実施形態である画像形成装置の例を示す概略構成図である。
図2】上記画像形成装置に含まれる搬送切替装置の実施形態を示す周辺概略構成図である。
図3】本発明に係る画像読取装置の第一実施形態に係る速度可変制御の動作例を示すフローチャートである。
図4】第一実施形態に係る基準パターンチャートの一例を示す図である。
図5】第二実施形態における速度可変制御の動作例を示すフローチャートである。
図6】第三実施形態における速度可変制御の動作例を示すフローチャートである。
図7】第四実施形態に係る基準パターンチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る画像読取装置及び画像形成システムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る画像読取装置は、形成された画像に異常がないか否かの判定を、当該画像の読取結果に基づいて行なうものである。当該画像読取装置は、画像の読取機構において画像を読み取る際の画像読み取り精度の低下を抑制するように、画像の読み取り状態を制御することができるものである。
【0010】
画像読み取りによる画像欠陥検知技術の従来技術を備える装置(例えば、画像形成装置)において、画像の欠陥を検出する機構を装置外部に設けることが主流であるが、画像を読み取る機構を装置内部に設けることで、コスト低減やダウンサイジングを図ることがある。
【0011】
従来から知られている画像形成装置では、シート状の記録媒体(以下、単に「記録媒体」と表記する。)の両面に画像は形成される機能を備えるものが多い。そこで、画像形成装置の内部に画像の読取機構を設ける場合、表面画像と裏面画像を読み取ることが必要となる。この場合、画像を記録媒体に定着させる定着部と、搬送方向に対する記録媒体の表面と裏面を切り替える経路切替部と、の間に、画像を読み取るための読取機構を配置することが望ましい。なお、装置内部の実装スペースによっては、経路切替部の直前に読取機構を配置することもある。
【0012】
従来から知られる経路切替部において、搬送経路を切り替える機構として稼働式のゲート部材を用いことが一般的である。この場合、ゲート部材が配置される箇所の周囲に経路切替部(ゲート部材)を稼働させる空間(稼働範囲)を確保する必要がある。従来の経路切替部では一般的に、経路切替部の稼働範囲を確保するために、搬送方向に対する垂直方向(上下方向)において搬送パスが広くなる。すなわち、記録媒体の搬送空間(搬送パス)の一部が垂直方向に広がった部分を含むことになる。この広がった搬送パスを記録媒体が通過する際、記録媒体にたるみが発生する場合がある。たるみが発生すると経路切替部を通過する記録媒体がゲート部材に接触することがある。画像が形成されている記録媒体がゲート部材に接触すると、当該記録媒体や記録媒体に形成された画像に傷を付けることがあり、また、形成された画像に筋状の光沢ムラを発生させることがある。
【0013】
記録媒体のたるみを防止するためには、搬送中のシートを搬送方向に引っ張って「張り状態」にすればよい。そこで、経路切替部の下流側に配置されている搬送ローラの回転速度を、経路切替部の上流側に搬送されている搬送ローラの回転速度よりも速くし、下流側と上流側のそれぞれの搬送ローラで記録媒体に張力を与えるような構成を採用すればよい。
【0014】
しかし、二つの搬送ローラを用いて記録媒体を張り状態にした場合、その記録媒体の後端が上流側の搬送ローラを抜ける際にそれまで与えられていた張力が無くなることで、記録媒体の後端の搬送速度が加速し、記録媒体全体の搬送速度が定常状態ではなくなる。この搬送速度の変動によって搬送ムラが発生する。記録媒体に搬送ムラが生ずると、読取機構における副走査方向(搬送方向)の画像読み取り精度を悪化させる要因となる。
【0015】
従来技術において、上記のように生ずる搬送ムラを考慮して画像読取り時の読取精度の向上に関しては考慮されているものはない。
【0016】
本発明に係る像読取装置は、画像読取り時の搬送ムラを抑制することで、記録媒体に形成された画像の異常検知を行うための画像読取精度を向上させることができるものである。具体的には、画像を読み取る読取機構の上流側と下流側にそれぞれ配置される搬送機構の動作を制御することで、記録媒体の搬送ムラを抑制する。これによって、画像が形成された媒体の姿勢を画像の読み取りに適した状態にし、画像読取精度を向上させることができる。以下、本発明に係る画像読取装置を備える画像形成装置(画像形成システム)の実施形態について説明し、続けて、画像読取装置の実施形態の詳細について説明する。
【0017】
<画像形成システムの構成>
まず、本発明に係る画像形成システムの実施形態である画像形成装置100の基本的な構成について説明する。画像形成装置100は、本発明に係る画像読取装置の実施形態である読取機構を含み、シート状の記録媒体(シートP)に画像を形成する画像形成機構も含む装置である。後述するように、記録媒体には様々な種類のものを適用可能であるが、本実施形態においては、用紙を前提に説明する。図1に示すように画像形成装置100は、二つの光書込ユニット1(1a、1b)と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像を形成するための四つのプロセスユニット2(2Y、2M、2C、2K)と、を備えている。また、給紙路30、転写前搬送路31、手差し給紙路32、手差しトレイ33、レジストローラ対34、搬送ベルトユニット35、定着装置40、搬送切替装置50、排紙路51、排紙ローラ対52、排紙トレイ53、給紙装置7、再送装置等も備えている。
【0018】
給送手段たる給紙装置7は、積載部たる上段給紙カセット101、下段給紙カセット102からなる二つの記録媒体収納部を備えている。上段給紙カセット101と下段給紙カセット102は、それぞれ内部にシート状の記録媒体であるシートPの束を収容している。そして、上段給紙ローラ101a、下段給紙ローラ102aの回転駆動により、積載されているシートPの束の一番上にあるシートPを給紙路30に向けて送り出す。この給紙路30には、後述する2次転写ニップの直前でシートPを搬送するための転写前搬送路31が続いている。上段給紙カセット101又は下段給紙カセット102から送り出されたシートPは、給紙路30を経て転写前搬送路31に進入する。尚、上記シートPとは、紙媒体の用紙、コート紙、ラベル紙、OHPシート、フィルム等を含む。
【0019】
画像形成装置100の装置筺体の側面部には、手差しトレイ33が筺体に対して開閉可能に配設されており、筺体に対して開いた状態でトレイ上面にシートPの束が手差しされる。手差しされたシートPの束の一番上のシートPが、手差しトレイ33の送出ローラによって転写前搬送路31に向けて送り出される。
【0020】
図1に例示した画像形成装置100は、いわゆるタンデム型の構成であって、4つのプロセスユニット2Y、2M、2C、2Kを、後述する中間転写ベルト61の回動方向に沿って並べた構成を有する。
【0021】
プロセスユニット2(2Y、2M、2C、2K)は、それぞれ、潜像担持体としてのドラム状の感光体3(3Y、3M、3C、3K)を有している。また、プロセスユニット2(2Y、2M、2C、2K)は、それぞれ、感光体3(3Y、3M、3C、3K)の周囲に配設される各種機器を1つのユニットとして共通の支持体に支持しており、それらが画像形成部本体に対して着脱可能になっている。
【0022】
感光体3Yとしては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いてもよい。
【0023】
各プロセスユニット2は、互いに使用するトナーの色が異なる点を除いて同様の構成になっている。例えば、Y用のプロセスユニット2Yは、感光体3Yのほか、感光体3Yの表面に形成された静電潜像をYトナー像として現像するための現像装置4Yを有している。また、回転駆動される感光体3Yの表面を一様に帯電させる一様帯電処理を施す帯電装置5Yや、後述するY用の1次転写ニップを通過した後の感光体3Yの表面に付着している転写残トナーをクリーニングするドラムクリーニング装置6Yなども有している。
【0024】
二つの光書込ユニット1(1a、1b)は、それぞれ、レーザーダイオード、ポリゴンミラー、各種レンズなどを有している。そして、装置外部のスキャナによって読み取られた画像情報や、パーソナルコンピュータから送られてくる画像情報に基づいて、レーザーダイオードを駆動し、プロセスユニット2(2Y、2M、2C、2K)の感光体3(3Y、3M、3C、3K)を光走査する。
【0025】
プロセスユニット2のそれぞれの感光体3は、駆動手段によってそれぞれ図中反時計回り方向に回転駆動される。光書込ユニット1aは、駆動中の感光体3Yと感光体3Mに対して、レーザー光をそれぞれ回転軸線方向に偏向させながら照射することで、光走査処理を行う。これにより、感光体3Yと感光体3Mには、それぞれ、Y画像情報およびM画像情報に基づいた静電潜像が形成される。また、光書込ユニット1bは、駆動中の感光体3Cと感光体3Kに対して、レーザー光をそれぞれ回転軸線方向に偏向させながら照射することで、光走査処理を行う。これにより、感光体3Cと感光体3Kには、それぞれ、C画像情報およびK画像情報に基づいた静電潜像が形成される。
【0026】
現像装置4Yは、磁性キャリアと非磁性のYトナーとを含有する二成分現像剤(以下、単に「現像剤」という。)を用いて潜像を現像するものである。現像装置4Yとして、二成分現像剤の代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤によって現像を行うタイプのものを使用してもよい。現像装置4Yに対しては、Yトナー補給装置により、Yトナーボトル103Y内のYトナーが適宜補給される。
【0027】
ドラムクリーニング装置6Yとしては、クリーニング部材であるポリウレタンゴム製のクリーニングブレードを感光体3Yに押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、画像形成装置100では、回転自在なファーブラシを感光体3Yに当接させる方式のものを採用している。このファーブラシは、固形潤滑剤から潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体3Y表面に塗布する役割も兼ねている。
【0028】
感光体3Yの上方には、除電ランプが配設されており、この除電ランプもプロセスユニット2Yの一部になっている。除電ランプは、ドラムクリーニング装置6Yを通過した後の感光体3Y表面を光照射によって除電する。除電された感光体3Yの表面は、帯電装置5Yによって一様に帯電された後、上記の光書込ユニット1aによる光走査が施される。尚、帯電装置5Yは、電源から帯電バイアスの供給を受けながら回転駆動するものである。この方式に代えて、感光体3Yに対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ方式を採用してもよい。
【0029】
以上、Y用のプロセスユニット2Yについて説明したが、M、C、K用のプロセスユニット2M,2C,2Kも、プロセスユニット2Yと同様の構成になっている。
【0030】
四つのプロセスユニット2(2Y,2M,2C,2K)の下方には、転写ユニット60が配設されている。この転写ユニット60は、複数の支持ローラによって張架している無端ベルトである中間転写ベルト61を、感光体3(3Y,3M,3C,3K)に当接させながら、いずれか一つの支持ローラの回転駆動によって図中時計回り方向に走行(無端移動)させる。これにより、感光体3(3Y,3M,3C,3K)と中間転写ベルト61とが当接するY、M、C、K用の一次転写ニップが形成されている。
【0031】
Y、M、C、K用の一次転写ニップの近傍では、中間転写ベルトの内周面に囲まれた空間すなわちベルトループ内に配設された一次転写部材としての一次転写ローラ62(62Y、62M、62C、62K)によって中間転写ベルト61を感光体3(3Y、3M、3C、3K)に向けて押圧している。これら一次転写ローラ62(62Y、62M、62C、62K)には、それぞれ電源によって一次転写バイアスが印加されている。これにより、Y、M、C、K用の一次転写ニップには、感光体3(3Y、3M、3C、3K)上のトナー像を中間転写ベルト61に向けて静電移動させる一次転写電界が形成される。
【0032】
図中時計回り方向の無端移動に伴ってY、M、C、K用の一次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト61の外周面には、各一次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト61の外周面には四色重ね合わせトナー像(以下「四色トナー像」という。)が形成される。
【0033】
中間転写ベルト61の図中下方には、二次転写部材としての二次転写ローラ72が配設されている。この二次転写ローラ72は、中間転写ベルト61における二次転写バックアップローラ68に対する掛け回し箇所にベルト外周面から当接して二次転写ニップを形成している。これにより、中間転写ベルト61の外周面と二次転写ローラ72とが当接する二次転写ニップが形成されている。
【0034】
二次転写ローラ72には電源によって二次転写バイアスが印加されている。一方、ベルトループ内の二次転写バックアップローラ68は接地されている。これにより、二次転写ニップ内に二次転写電界が形成されている。
【0035】
二次転写ニップの図中右側方には、上記のレジストローラ対34が配設されており、ローラ間に挟み込んだシートPを中間転写ベルト61上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。二次転写ニップ内では、中間転写ベルト61上の四色トナー像が二次転写電界やニップ圧の影響によってシートPに一括転写され、シートPの白色と相まってフルカラー画像となる。
【0036】
二次転写ニップを通過した中間転写ベルト61の外周面には、二次転写ニップでシートPに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト61に当接するベルトクリーニング装置75によってクリーニングされる。
【0037】
二次転写ニップを通過したシートPは、中間転写ベルト61から離間して、搬送ベルトユニット35に受け渡される。この搬送ベルトユニット35は、無端ベルト状の搬送ベルト36を駆動ローラ37と従動ローラ38とによって張架しながら、駆動ローラ37の回転駆動によって図中反時計回り方向に無端移動させる。そして、二次転写ニップから受け渡されたシートPを搬送ベルト外周面の張架面に保持しながら、搬送ベルト36の無端移動に伴って搬送して定着手段としての定着装置40に受け渡す。
【0038】
本実施形態に係る画像形成装置100においては、搬送切替装置50、再送路54、スイッチバック路55、スイッチバック後搬送路56等により、反転搬送手段が構成されている。具体的には、搬送切替装置50は、定着装置40から受け取ったシートPのその後の搬送先を、排紙路51と再送路54とで切り替える経路切替機構を備える。シートPの第一面だけに画像を形成する片面モードのプリントジョブの実行時には、シートPの搬送先を排紙路51に設定する。これにより、第一面だけに画像が形成されたシートPを、排紙路51経由で排紙ローラ対52に送って、機外の排紙トレイ53上に排紙する。また、シートPの第二面にも画像を形成する両面モードのプリントジョブの実行時において、両面にそれぞれ画像が定着されたシートPを定着装置40から受け取ったときにも、シートPの搬送先を排紙路51に設定する。これにより、両面に画像が形成されたシートPを、機外の排紙トレイ53上に排紙する。一方、両面モードのプリントジョブの実行時において、第一面だけに画像が定着されたシートPを定着装置40から受け取ったときには、シートPの搬送先を再送路54に設定する。
【0039】
再送路54には、スイッチバック路55が繋がっており、再送路54に送られたシートPはこのスイッチバック路55に進入する。そして、シートPの搬送方向の全領域がスイッチバック路55に進入すると、シートPの搬送方向が逆転されて、シートPがスイッチバックする。スイッチバック路55には、再送路54の他に、スイッチバック後搬送路56が繋がっており、スイッチバックしたシートPは、このスイッチバック後搬送路56に進入する。このとき、シートPの上下が反転する。そして、上下反転したシートPは、スイッチバック後搬送路56と給紙路30とを経由して二次転写ニップに再送される。二次転写ニップで第二面にもトナー像が転写されたシートPは、定着装置40を経由して第二面にトナー像が定着された後、搬送切替装置50と排紙路51と排紙ローラ対52とを経由して、排紙トレイ53上に排紙される。
【0040】
画像形成装置100においては、不要なシートが排紙されるパージトレイ58が、装置の図中左側の下部に設けられている。例えば、ジャムなどにより装置が停止したときに装置内に存在するシートが、上記パージトレイ58へ搬送される。具体的には、再送路54には、シートをパージトレイ58へ搬送するトレイ搬送路57が繋がっており、パージトレイ58へシートを搬送するときは、シートPの搬送先をトレイ搬送路57に設定する。これにより、再送路54へ搬送されたシートが、スイッチバック後搬送路56の手前で、トレイ搬送路57へ搬送され、パージトレイ58へ排出される。
【0041】
また画像形成装置100では、利用者からのジョブの実行指示を受け付け、また画像形成装置100の状態を表示するコントロールパネル8を有する。さらに、上記の動作および以降に説明する動作を行うため、各ハードウェアを統括的に制御する制御部150(制御手段)を有する。制御部150は、一般的なコンピュータと同様の構成であって、例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算処理装置、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)及びフラッシュメモリなどの記憶装置を有している。制御部150では、記憶装置に記憶されているプログラムを演算処理装置が実行することで、上記の動作および以降に説明する動作を行う機能構成を実現し、この機能構成によって後述するようにシートPの搬送状態の制御を行うことができる。
【0042】
また上記の構成のうち、光書込ユニット1(1a、1b)、プロセスユニット2(2C、2K、2M、2Y)、搬送ベルトユニット35、定着装置40、転写ユニット60を含む構成を、シートに画像を形成する画像形成部(画像形成手段)に相当する。
【0043】
次に、搬送切替装置50およびその近傍に設けられる機器の構成について、図2を参照しつつ説明する。
【0044】
画像形成装置100において、定着装置40にて画像が定着されたシートPは、図2に示すシート冷却装置84を通過する。その後、シート冷却装置84に対する搬送方向下流側に配置された画像読み取り部80(読取機構)をシートPが通過する時に、シートP上に形成された画像が画像読み取り部80によって読み取られる。読み取られた画像は制御部150において、異常がないかの欠陥検知が行われる。ここで画像読み取り部80は、搬送経路切替部材85よりも上流に配置されている。
【0045】
搬送経路切替部材85は、搬送路の切り替えを行うゲート部材である。搬送経路切替部材85による搬送路の切り替えにより、排紙路51もしくは再送路54へとシートPが搬送される。シートPが再送路54へと搬送されるときは、搬送経路切替部材85は矢印85bの方に回動して搬送路を切り替える。
【0046】
画像読み取り部80を搬送経路切替部材85の上流に設けることで、シートPの片面のみに画像を形成する動作モードである「片面プリントモード」の実行時には、シートPの第一面側に形成された画像の欠陥検知を行うことができる。また、シートPの両面に画像を形成する動作モードである「両面プリントモード」の実行時には、シートPの第一面側およびスイッチバック後搬送路56を経由して反転した第二面側に形成された画像の欠陥検知を行うことができる。
【0047】
また、搬送切替装置50は、搬送経路切替部材85および画像読み取り部80に対する、シートPの搬送方向の上流側に上流搬送ローラ81(第一搬送手段)が配置されている。また、は、搬送経路切替部材85および画像読み取り部80に対する、シートPの搬送方向の下流側に下流搬送ローラ82(第二搬送手段)が配置されている。
【0048】
<従来技術における課題>
ここで、従来技術における課題について、搬送切替装置50の構成に沿って改めて説明する。図2に例示するように、搬送経路切替部材85は矢印85bの方に回転するので、搬送経路切替部材85の稼働範囲を確保するために、当該箇所において、搬送方向に対する垂直方向(図2においては矢印85bの方向)の搬送パスを広くする必要が生ずる。図2を参照すると、排紙路51、再送路54の搬送パスに比べ、搬送経路切替部材85が設けられている搬送パスの方が広くなっている。
【0049】
この垂直方向に広がっている搬送パスをシートPが通過する際、シートPの姿勢(搬送中の姿勢)が搬送パスによって規制されないため、シートPにたるみが発生する場合がある。
【0050】
そこで、画像形成装置100が備える搬送切替装置50においては、シートPのたるみを防止することを目的として、この広がっている搬送パスの下流側に位置する下流搬送ローラ82の回転速度を、上流側に位置する上流搬送ローラ81よりも速くするように制御部150が制御をする。下流搬送ローラ82の回転速度を上流搬送ローラ81の回転速度よりも速くすることで、シートPに張力を与えて「張り状態」にして、たるみを防止できる。
【0051】
従来の欠陥検知技術による欠陥検知処理の実行時において、読取機構の上流側と下流側に配置された各搬送ローラの回転速度を一定の速度とするものが一般的であり、これら各ローラは定常回転する構成となっている。このような定常回転の搬送ローラの場合、シートPの搬送方向後端が上流搬送ローラ81を抜けて「張り状態」が解除されると、張力によって延びていたシートPが元に戻ろうとし、シートPに加わる力の変化によって復元力が生じる。この復元力は、シートPの搬送方向後端部の搬送速度を加速させる。したがって、従来のものでは、読取機構に対してシートPの後端の搬送速度が一時的に速まるようになる。すなわち、定常回転していたローラによる搬送において、シートPの後端側の搬送速度が一時的に速くなり搬送ムラが発生する。この搬送ムラが発生した状態で画像読み取り部80を通過することになるので、シートPに形成された画像を読み取る際の副走査方向(搬送方向)における画像読み取り精度を悪化させる要因となる。
【0052】
<第一実施形態>
以下、本発明に係る画像読取装置の実施形態について説明する。画像読取装置の実施形態として、上述した画像読み取り部80、搬送経路切替部材85、上流搬送ローラ81及び下流搬送ローラ82を備える搬送切替装置50を用いる。搬送切替装置50は、読取機構である画像読み取り部80と、制御部150と、制御部150によってシートPの搬送速度を制御するために動作条件が変更される上流搬送ローラ81及び下流搬送ローラ82を備えるものである。
【0053】
従来の欠陥検知技術の説明でも述べた課題を解決するため、本発明に係る画像読取装置の第一実施形態では、規定位置に設けられる搬送タイミングセンサ83がシートPの後端を検知したタイミングを契機に、上流搬送ローラ81および下流搬送ローラ82の回転速度を変更する。回転速度の変更は、制御部150による上流搬送ローラ81および下流搬送ローラ82の回転速度の設定値の変更による。これによって、シートPの搬送速度を決定する複数の搬送ローラのうち、シートPに形成されている画像を読み取る読取機構を間に挟む位置に配置される搬送ローラの回転速度差を可変にする。この回転速度差の制御によって、記録媒体に形成された画像の読み取りの精度の低下を抑制する。以下、上流搬送ローラ81および下流搬送ローラ82の速度変更制御について、図3および図4を用いて説明する。
【0054】
図3(a)および図3(a)は、搬送切替装置50において実行可能な速度変更制御の第一実施形態を示すフローチャートである。第一実施形態では、速度調整用の基準パターンチャートを用いての速度変更値の算出を行うものとする。
【0055】
まずシステム管理者や保守担当者などが上段給紙カセット101もしくは102にシートPをセットして、コントロールパネル8を介して、画像形成装置100の動作モードを通常の実プリントモード(利用者により指定された画像をシートP上に形成するモード)から、速度調整用の基準パターンを画像形成するモードに切り替える。そしてシステム管理者などがコントロールパネル8内のスタートボタンを押下することで、上段給紙カセット101、又は下段給紙カセット102より任意の枚数のシートPが供給され、画像形成手段が基準パターンチャートをシートP上に転写し、基準パターンを形成する(S301)。
【0056】
図4(a)は、第一実施形態で用いられるチャート画像である基準パターンチャートの例である。図4(a)は、理想的に形成された基準パターンチャートを例示している。したがって、シートPの搬送方向における等間隔で複数のマーク(これを「基準パターン」と称する)が形成されている。基準パターンは、搬送方向と直交する線であって、複数が平行して形成されるものとする。この基準パターンの間隔を実間隔Lrとする。すなわち、シートPに理想的に形成される基準パターンの間隔を実間隔Lrとする。尚、図4(a)の例はあくまでも一例であり、基準となるマークが搬送方向において一定の規則に基づき間隔をあけて複数設けられていればよい。
【0057】
基準パターンチャートが形成されたシートPは、画像読み取り部80に搬送され、画像読み取り部80がこれを検知(撮像)し、検知結果(撮像結果)を制御部150に出力する(S302)。
【0058】
ここで図4(b)を用いて、シートPに形成された基準パターンチャートと画像読み取り部80で検知された画像との差異を説明する。基準パターンチャートは、搬送方向に対して一定の実間隔Lrごとに設けられているが、この基準パターンの実間隔Lrと、画像読み取り部80にて検知された基準パターンチャートから抽出される基準パターンの間隔(破線で図示される検知間隔Ll)とを比較すると、特に、シートPの後端部で一致せず、差異が生じる。例えば、上流搬送ローラ81及び下流搬送ローラ82によってシートPに対する張力が掛かっているときは、特にシートPの後端部においては、実間隔Lrに対し検知間隔Llの方が伸びた状態として検出される。また、シートPの後端部が上流搬送ローラ81を抜けると、それまで掛かっていた張力が無くなり、シートPの復元力によってシートPの後端部の進行速度が速まることで、実間隔Lrに対し検知間隔Llの方が縮んだ状態として検出される。
【0059】
制御部150は、実間隔Lrに対する検知間隔Llの差に基づく演算処理を行なうことで、上流搬送ローラ81の好適な上流側回転速度変更値Vc1および下流搬送ローラ82の好適な下流側回転速度変更値Vc2を算出する(S303)。上流側回転速度変更値Vc1および下流側回転速度変更値Vc2は、実間隔Lrと検知間隔Llの差異を低減させるための、上流搬送ローラ81と下流搬送ローラ82の回転速度(ローラ回転速度)である。上流側回転速度変更値Vc1および下流側回転速度変更値Vc2は、上流搬送ローラ81と下流搬送ローラ82との回転速度の差が定常回転時よりも減少するような値である。また上流搬送ローラ81および下流搬送ローラ82は、搬送タイミングセンサ83がシートPの後端を検知したタイミングを契機に、これまでの速度(定常回転の回転速度)から上流側回転速度変更値Vc1および下流側回転速度変更値Vc2による回転速度に切り替わる。したがって、上流搬送ローラ81および下流搬送ローラ82の回転速度の変更を制御するタイミングは、画像読み取り部80と搬送タイミングセンサ83との相対的な位置などにも依拠する。よって、搬送タイミングセンサ83から上流搬送ローラ81までの搬送距離、上流搬送ローラ81と画像読み取り部80との距離、上流搬送ローラ81と下流搬送ローラ82との距離なども、上流側回転速度変更値Vc1と下流側回転速度変更値Vc2の算出に係るパラメータに含まれる。そして制御部150は、演算結果である上流側回転速度変更値Vc1および下流側回転速度変更値Vc2を記憶装置に記憶させ、図3(a)の処理を終了する。
【0060】
続いて、上流側回転速度変更値Vc1および下流側回転速度変更値Vc2が算出された後の実プリントモード時の速度変更制御について図3(b)のフローチャートを用いて説明する。
【0061】
上段給紙カセット101もしくは下段給紙カセット102からシートPが供給されると、画像形成手段は、シートPに利用者が指定した画像を形成する(S310)。その後、搬送タイミングセンサ83がシートPの後端を検知したタイミングを契機に(S311)、制御部150は、上流搬送ローラ81の回転速度を上流側回転速度変更値Vc1に変更し、また、下流搬送ローラ82の回転速度を下流側回転速度変更値Vc2に変更する(S312)。この速度変更制御により、シートPの搬送ムラを抑制することができ、画像読み取り部80での副走査方向(搬送方向)の画像読み取り精度の低下を抑制することができる。
【0062】
<第二実施形態>
次に、搬送切替装置50において実行可能な速度変更制御の第二実施形態について説明する。搬送経路切替部材85の設けられている箇所、すなわち搬送パスが広くなる箇所において、シートPのたるみがどの程度になるかは、シートPの厚さ(シートPのコシの強さ)にも依拠する。第二実施形態では、このシートPの厚さ(シート厚と称する)を考慮して、上流搬送ローラ81の回転速度と下流搬送ローラ82の回転速度を変更する。図5は、第二実施形態に係る速度変更制御のフローチャートである。
【0063】
尚、第二実施形態では、シート厚と、シート厚を考慮して変更する下流搬送ローラ82の回転速度(下流側回転速度第二変更値Vc3)とを対応付けたテーブルデータを、制御部150が有する記憶手段に予め記憶されているものとする。
【0064】
第二実施形態に係る制御部150は、画像形成対象のシートPのシート厚を取得し、設定する(S501)。このシート厚の情報は、例えば利用者がコントロールパネル8を介して画像形成のジョブを実行する際に指定する値による。例えば、画像形成対象のシートPの種類を指定した場合、当該種類によって特定されるシート厚が制御部150の有する記憶手段に記憶されていれば、シートPの種類によって決定される。また、シートPの大きさによって決定されてもよい。または、事前に初期値として設定されていてもよい。尚、搬送切替装置50にシート厚を検知する検知手段を設け、当該検知手段から取得してもよい。
【0065】
シート厚が取得されたら、制御部150は、画像形成のジョブを開始する(S502)。搬送タイミングセンサ83がシートPの後端を検知したタイミングを契機に(S503)、制御部150は、S501で取得したシート厚に基づいて記憶手段に記憶されているテーブルデータを参照し、下流側回転速度第二変更値Vc3を取得する。尚、この下流側回転速度第二変更値Vc3の取得動作は、S503よりも前であってもよい。そして制御部150は、下流側回転速度第二変更値Vc3に基づいて下流搬送ローラ82の回転速度を変更する(S504)。尚、下流側回転速度第二変更値Vc3は、上流搬送ローラ81と下流搬送ローラ82との回転速度の差を減少するような値である。
【0066】
第二実施形態によれば、シート厚に応じたシートPの搬送ムラを抑制することができ、画像読み取り部80での副走査方向(搬送方向)の画像読み取り精度の低下を抑制することができる。尚、ここではシート厚を考慮する実装例としたが、たるみ量は、紙、コート紙、ラベル紙、OHPシート、フィルムなどのシートの種別や材質にも依拠する。よって、制御部150内に、種別や材質などを一意に特定する識別子と下流側回転速度第二変更値Vc3とを対応付けたテーブルデータを事前に設け、対象となるシートPの種別や材質に応じて上記の処理と同様の動作を行うことで、下流搬送ローラ82の回転速度を変更してもよい。
【0067】
また、第二実施形態によれば、第一実施形態と比べて、シートPに基準パターンチャート等を形成し、これを読み取る必要が無い。したがって、基準パターンチャート等を形成する分の用紙やトナーの消費を抑えることができ、またチャートの読み取りに要する時間を省くことができる。
【0068】
<第三実施形態>
第一実施形態では、特定のマーク(基準パターン)を、搬送方向において一定の実間隔Lrで形成した画像(基準パターンチャート)を読み取り、読み取られた基準パターンチャートから抽出されたマークの検知間隔Llに基づいて、搬送速度の変更を制御した。第三実施形態では、基準パターンチャートのように、一定の間隔で形成された画像を用いることなく、不定の間隔で形成された特定の画像を読み取り対象として、搬送速度の変更を制御する。
【0069】
図6(a)および図6(a)は、搬送切替装置50において実行可能な速度変更制御の第三実施形態を示すフローチャートである。第三実施形態では、速度調整用の基準パターンチャートではなく、図7に例示するように、被形成画像(実際に形成する対象となる画像)の中から特徴点を特定し、これに基づいて速度変更値の算出を行うものとする。
【0070】
第三実施形態では、速度変更値を算出するための専用の基準パターンを用いないので、第一実施形態のように、画像形成装置100の動作モードの切り替えを不要とする。但し、制御部150の記憶装置に、すでに算出された速度変更値が記憶されていない場合は、最初の動作時に一旦、動作モードを変更し、利用者が指定した被形成画像の画像形成処理を実行しつつ、速度変更値を算出するように動作すればよい。すでに速度変更値が算出されていれば、以下で説明する図6(a)のフローチャートに係る処理は実行しなくてもよい。
【0071】
まず、速度変更値を算出するときの処理の流れについて、説明する。図6(a)に示すように、利用者またはシステム管理者などが画像形成ジョブを実行する(S601)。このときに形成される画像の例を図7(a)に例示する。図7(a)には複数の画像が含まれている。この画像に含まれる複数の箇所のうち、速度変更値の算出に適している箇所は、搬送方向上流側の画像である。そこで、制御部150は、被形成画像の元データ(画像形成データ)の中から、搬送方向上流側の箇所のうち、特徴点を検出しやすい領域を「判定領域」として指定する。そして指定された判定領域に含まれる画像の中で、速度変更値の算出に用いる領域を特徴領域として特定する。特定された複数の特徴領域の隣接するもの同士の間隔を算出する(S602)。
【0072】
制御部150は、特徴領域を自動的に抽出して特定する。この自動抽出処理は、被形成画像の元データ(画像データ)に含まれる画素のうち、たとえば濃度や明度などが顕著に変化する箇所を、画像中から検索および抽出することにより実行する。
【0073】
ここで、判定領域、特徴領域、特徴点について説明する。図7(a)に例示するように、シートPに形成された被形成画像に含まれる複数の箇所のうち、搬送方向上流側の三箇所を判定領域とする。そして、判定領域に含まれる画像の中の特徴点となる領域(特徴領域)を特定する。図7の例では、判定領域内の「A」という文字の左下のエッジ部分、判定領域内の「B」という文字の左下のエッジ部分、判定領域内の「C」という文字の右下のエッジ部分、をそれぞれ特徴領域とする。
【0074】
その上で、搬送方向において隣接する特徴領域同士の間隔を制御部150の演算処理によって算出する。ここで、算出される間隔を、図7(b)に示すように、「第一実間隔Lr´」と「第二実間隔Lr´´」とする。
【0075】
被形成画像が形成されたシートPは、画像読み取り部80に搬送され、画像読み取り部80がこれを検知(撮像)し、検知結果(撮像結果)を制御部150に出力する(S603)。
【0076】
ここで図7(b)を用いて、シートPに形成された被形成画像と画像読み取り部80で検知された画像との差異を説明する。被形成画像は、搬送方向に対して所定の間隔(第一実間隔Lr´、第二実間隔Lr´´)を含む。これと同じ箇所の間隔を、画像読み取り部80にて検知された非形成画像から抽出すると、その間隔(第一検知間隔Ll´と第二検知間隔Ll´´)は、元データから特定可能な間隔(第一実間隔Lr´、第二実間隔Lr´´)とは、異なる。特に、シートPの後端部(搬送方向上流側)では一致せずに、差異が生じる。
【0077】
これは、上流搬送ローラ81及び下流搬送ローラ82によってシートPに対する張力が掛かっている状態から、張力が消滅した状態に移行するとシートPの後端部の進行速度が速まり、たるみが生ずることになる。したがって、張力が消滅した直後では第一実間隔Lr´に対して第一検知間隔Ll´の方が伸びていて、第二実間隔Lr´´に対して第二検知間隔Ll´´の方が伸びている。
【0078】
制御部150は、実間隔の抽出に用いられた判定領域に含まれる特徴領域を特定し(S604)、第一検知間隔Ll´と第二検知間隔Ll´´を算出する(S605)。
【0079】
続いて、上流搬送ローラ81の好適な回転速度の設定値である上流側回転速度変更値Vc4および下流搬送ローラ82の好適な回転速度の設定値である下流側回転速度変更値Vc5を算出する(S606)。上流側回転速度変更値Vc4および下流側回転速度変更値Vc5は、第一実間隔Lr´と第一検知間隔Ll´の差異、第二実間隔Lr´´と第二検知間隔Ll´´の差異を低減させるための、上流搬送ローラ81と下流搬送ローラ82の回転速度(ローラ回転速度)である。
【0080】
上流側回転速度変更値Vc4および下流側回転速度変更値Vc5も、上流搬送ローラ81と下流搬送ローラ82との回転速度の差が定常回転時よりも減少するような値である。また上流搬送ローラ81および下流搬送ローラ82は、搬送タイミングセンサ83がシートPの後端を検知したタイミングを契機に、これまでの速度(定常回転の回転速度)から上流側回転速度変更値Vc1および下流側回転速度変更値Vc2による回転速度に切り替わる。したがって、上流搬送ローラ81および下流搬送ローラ82の回転速度の変更を制御するタイミングは、画像読み取り部80と搬送タイミングセンサ83との相対的な位置などにも依拠する。よって、搬送タイミングセンサ83から上流搬送ローラ81までの搬送距離、上流搬送ローラ81と画像読み取り部80との距離、上流搬送ローラ81と下流搬送ローラ82との距離なども、上流側回転速度変更値Vc4と下流側回転速度変更値Vc5の算出に係るパラメータに含まれる。そして制御部150は、演算結果である上流側回転速度変更値Vc4および下流側回転速度変更値Vc5を記憶装置に記憶させ、図6(a)の処理を終了する。
【0081】
続いて、上流側回転速度変更値Vc4および下流側回転速度変更値Vc5が算出された後の実プリントモード時の速度変更制御について説明する。この制御は、図6(b)に示すように、すでに説明した第一実施形態の制御と同様であるので詳細な説明を省略する(図3(b)参照)。
【0082】
この速度変更制御により、シートPの搬送ムラを抑制することができ、画像読み取り部80での副走査方向(搬送方向)の画像読み取り精度の低下を抑制することができる。
【0083】
なお、上記の第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態の態様を、相互に組み合わせてもよい。たとえば、ユーザによりどちらの態様によって各ローラの搬送動作を制御するか選択可能としてもよい。
【0084】
画像読取装置は、上流搬送ローラ81、下流搬送ローラ82、画像読み取り部80、および制御部150を含む構成となる。また上記の各実施形態では、画像読取装置は画像欠陥を検知するためのものとして説明したが、用途はこれに限定されない。例えば画像の濃度や位置を検知する場合にも、本実施形態の画像読取装置を適用させてもよい。
【0085】
画像形成手段は、インクジェット方式のものでもよく、また搬送ローラにかえてベルト状の搬送ベルトを用いてもよい。
【0086】
上流、下流の各ローラ対の速度差を変える方法として、第一実施形態のように上流搬送ローラ81および下流搬送ローラ82の両方の回転速度を変更する方法を採用してもよいし、第二実施形態のように下流搬送ローラ82の回転速度のみを変更する方法を採用してもよい。また、上流搬送ローラ81の回転速度のみを変更する方法を採用してもよい。すなわち、制御部150は、上流搬送ローラ81と下流搬送ローラ82との搬送速度の差を変更するように、各ローラの搬送動作を制御する構成であればよい。
【0087】
以上、本実施形態によって、シートに形成された画像の読み取りの際に、画像読み取りの精度の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 :光書込ユニット
1a :光書込ユニット
1b :光書込ユニット
2 :プロセスユニット
3 :感光体
3C :感光体
4Y :現像装置
5Y :帯電装置
6Y :ドラムクリーニング装置
7 :給紙装置
8 :コントロールパネル
30 :給紙路
31 :転写前搬送路
32 :手差し給紙路
33 :手差しトレイ
34 :レジストローラ対
35 :搬送ベルトユニット
36 :搬送ベルト
37 :駆動ローラ
38 :従動ローラ
40 :定着装置
50 :搬送切替装置
51 :排紙路
52 :排紙ローラ対
53 :排紙トレイ
54 :再送路
55 :スイッチバック路
56 :スイッチバック後搬送路
57 :トレイ搬送路
58 :パージトレイ
60 :転写ユニット
61 :中間転写ベルト
62 :一次転写ローラ
68 :二次転写バックアップローラ
72 :二次転写ローラ
75 :ベルトクリーニング装置
80 :画像読み取り部
81 :上流搬送ローラ
82 :下流搬送ローラ
83 :搬送タイミングセンサ
84 :シート冷却装置
85 :搬送経路切替部材
85b :矢印
100 :画像形成装置
101 :上段給紙カセット
101a :上段給紙ローラ
102 :下段給紙カセット
102a :下段給紙ローラ
150 :制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0089】
【文献】特開2015-220471号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7