(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】光導波路素子、及び光導波路デバイス
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20240214BHJP
G02B 6/125 20060101ALI20240214BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G02B6/12 301
G02B6/125 301
G02B6/42
(21)【出願番号】P 2020047846
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 悠
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06885795(US,B1)
【文献】特開2017-173660(JP,A)
【文献】特開2011-075917(JP,A)
【文献】特開2014-164243(JP,A)
【文献】特開2019-159189(JP,A)
【文献】特開2010-224064(JP,A)
【文献】特開2011-170168(JP,A)
【文献】特開2013-080009(JP,A)
【文献】特開2015-194517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12- 6/14
G02B 6/26- 6/27
G02B 6/30- 6/34
G02B 6/42- 6/43
G02F 1/00- 1/125
G02F 1/21- 7/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路基板上に設けられた、当該光導波路基板の厚さ方向に突き出て当該光導波路基板の面方向に延在する凸部により構成されるリブ型光導波路と、
前記リブ型光導波路を伝搬する2つの光波を合波する合波部と、
前記リブ型光導波路の上に配される受光素子基板上に形成された受光部により構成され、当該リブ型光導波路を伝搬する光の少なくとも一部を受信する受光素子と、
を有する光導波路素子であって、
前記受光素子基板は、前記光導波路基板上に設けられた前記リブ型光導波路と同じ高さを有する少なくとも一つの第1の凸部により支持されており、
前記第1の凸部は、前記光導波路基板と同じ材料で構成さ
れ、
前記光導波路基板には、前記リブ型光導波路の光の伝搬方向に沿って前記受光部よりも上流側であって且つ前記合波部よりも下流側に、前記リブ型光導波路と異なる、前記リブ型光導波路と同じ高さを有する少なくとも一つの第2の凸部が設けられており、
前記第2の凸部の少なくとも一つは、前記受光素子基板を支持する前記第1の凸部とは別の凸部である、
光導波路素子。
【請求項2】
前記第2の凸部は、
前記光導波路基板の面方向に延在し、且つ、延在方向の両端部の、前記リブ型光導波路の上流側を向く一の端部と前記リブ型光導波路との距離は、前記一の端部に対向する他の端部と前記リブ型光導波路との距離より小さく構成さ
れ、
前記合波部を起点として前記光導波路基板の内部を伝搬する光を、前記受光素子の方向と異なる方向へ導波する、
請求項
1に記載の光導波路素子。
【請求項3】
前記第2の凸部の少なくとも一つは、前記受光素子基板の外側に配される、
請求項1または2に記載の光導波路素子。
【請求項4】
前記第2の凸部の少なくとも一つは、前記受光素子基板を支持する前記第1の凸部である、
請求項
1または2に記載の光導波路素子。
【請求項5】
前記リブ型光導波路は、前記受光部の受光範囲の下部において終端している、
請求項1ないし
4のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項6】
前記受光素子は、前記受光素子基板上に設けられた複数の前記受光部を含み、
前記受光素子基板は、前記複数の前記受光部のそれぞれが相異なる複数の前記リブ型光導波路のそれぞれを伝播する光の一部を受信する位置に配される、
請求項1ないし
5のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項7】
前記光導波路基板は、厚さが5μm以下である、
請求項1ないし
6のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項8】
請求項1ないし
7のいずれか一項に記載の光導波路素子と、当該光導波路素子を収容する筐体と、当該光導波路素子に光を入射する入力光ファイバと、前記光導波路素子が出射する出力光を前記筐体の外へ導く出力光ファイバと、を備える光導波路デバイス。
【請求項9】
前記筐体の内部に、前記光導波路素子を駆動する駆動回路を備えるか、又は前記駆動回路とデジタルシグナルプロセッサとを備える、
請求項
8に記載の光導波路デバイス。
【請求項10】
前記筐体の内部に前記駆動回路を備える、請求項
9に記載の光導波路デバイスと、前記筐体の外部に配されたデジタルシグナルプロセッサと、を備える光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光変調素子などの、光導波路を用いた機能素子である光導波路素子、及びそのような光導波路素子を用いた光導波路デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
高速/大容量光ファイバ通信システムにおいては、導波路型の光変調器を組み込んだ光送信装置が多く用いられている。中でも、電気光学効果を有するLiNbO3(以下、LNともいう)を基板に用いた光変調素子は、インジウムリン(InP)、シリコン(Si)、あるいはガリウム砒素(GaAs)などの半導体系材料を用いた光変調素子に比べて、光の損失が少なく且つ広帯域な光変調特性を実現し得ることから、高速/大容量光ファイバ通信システムに広く用いられている。
【0003】
光ファイバ通信システムにおける変調方式は、近年の伝送容量の増大化の流れを受け、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)やDP-QPSK(Dual Polarization - Quadrature Phase Shift Keying)等、多値変調や、多値変調に偏波多重を取り入れた伝送フォーマットが主流となっている。
【0004】
一方、近年のインターネットサービスの普及加速は通信トラフィックのより一層の増大を招き、光変調素子の更なる小型化、広帯域化、省電力化の検討が今も進められている。
【0005】
そのような光変調素子の小型化、広帯域化、省電力化の一つの策として、例えば、リブ型光導波路を用いた光変調素子(以下、リブ型光変調素子)が検討されている(例えば、特許文献1参照)。リブ型光導波路は、LNより成る基板(LN基板)を薄く加工し、ドライエッチング等により所望のストライプ状部分(リブ)を残して他の部分を更に薄く(例えば、基板厚さ10μm以下まで)加工することで、当該リブ部分の実効屈折率を他の部分より高めて光導波路としたものである。
【0006】
一方、光変調素子においては、例えばいわゆるドリフト現象に伴うバイアス点変動の状態を検知する目的で、及び又は出力される変調光の光量を制御する目的で、当該光変調素子の光導波路内を伝搬する光の量をモニタするための受光素子が設けられる。
【0007】
そのような光変調素子として、従来、基板上に高屈折率材料を拡散することにより形成された光導波路のうち光量観測の対象となる部分の上部に受光素子を設けたものが知られている(特許文献2参照)。この光変調素子では、半導体などの受光素子基板の小片に形成された受光素子の受光面を光導波路に近接して配置することで、当該受光素子により光導波路から放出されるエバネセント波が検出される。
【0008】
しかしながら、受光素子が形成される受光素子基板のサイズは、上述したリブ型光導波路の幅に比べて数倍から数10倍以上大きいため、リブ型光導波路により構成される光変調素子に上記従来の構成をそのまま適用したのでは、受光素子をリブ型光導波路上に安定に保持することはできない。
図13は、このことを模式的に示した図である。
図13は、リブ型光導波路1300が形成された光導波路基板1302の、当該リブ型光導波路1300の延在方向に対し直交する面の断面を示している。光導波路基板1302は、ガラス等の支持基板1310により支持されている。リブ型光導波路1300の上部には、受光素子基板1306上に形成された受光部1308から成る受光素子1304が搭載されている。これにより、受光素子1304により、リブ型光導波路1300を伝搬する光の強度がモニタされ得る。
【0009】
ここで、受光素子基板1306は、一般的には、その幅(図示左右方向に測った幅)が、例えばリブ型光導波路1300の幅よりも数倍から数十倍以上度大きく構成される(例えばリブの幅が1μm前後であるのに対して、受光素子基板のサイズが数百μm)。このため、受光素子1304には、リブ型光導波路1300を中心とする回転モーメントを生じることとなり、製造時において、及び又は経年変化により、例えば図示のようにリブ型光導波路1300上を左方向に傾いてしまうこととなり得る。その結果、受光素子1304とリブ型光導波路1300が近接しないことで十分なエバネッセント波が受光素子1304に入力されなくなり、光強度のモニタ感度が許容範囲以下となる。また温度変化があった場合、受光素子1304とリブ型光導波路1300の間隔が変動し、モニタ感度の変動が生じ経時的に不安定なものになるなどの不具合を生じうる。
【0010】
また、上記のように光導波路基板1302が厚さ数μm程度まで薄く加工される場合には、受光素子1304がリブ型光導波路1300上で傾くことにより、リブ型光導波路1300に応力が発生するのみならず、光導波路基板1302のうち当該リブ型光導波路1300の周辺部の部分にも応力が発生し得る。その結果、製造時に又は経時的に、光導波路基板1302にヒビや割れ等の機械的損傷が生じる場合もあり得る。
【0011】
なお、特許文献2には、基板中に高屈折率材料を拡散して形成される光導波路を用いて構成される光変調素子において、光導波路の近傍に同じ高屈折率材料を所定のパターンで拡散することで、受光素子を配置するための台座を形成することが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の構成は、拡散型光導波路においては有効であるものの、上述のようなリブ型光導波路における受光素子の安定配置のための解決策を与えるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2011-075917号公報
【文献】特開2010-224064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記背景より、リブ型光導波路を用いる光導波路素子において、リブ型光導波路内を伝搬する光を安定に且つ精度よくモニタすることのできる構成の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一の態様は、光導波路基板上に設けられた、当該光導波路基板の厚さ方向に突き出て当該光導波路基板の面方向に延在する凸部により構成されるリブ型光導波路と、前記リブ型光導波路を伝搬する2つの光波を合波する合波部と、前記リブ型光導波路の上に配される受光素子基板上に形成された受光部により構成され、当該リブ型光導波路を伝搬する光の一部を受信する受光素子と、を有する光導波路素子であって、前記受光素子基板は、前記光導波路基板上に設けられた前記リブ型光導波路と同じ高さを有する少なくとも一つの第1の凸部により支持されており、前記第1の凸部は、前記光導波路基板と同じ材料で構成され、前記光導波路基板には、前記リブ型光導波路の光の伝搬方向に沿って前記受光部よりも上流側であって且つ前記合波部よりも下流側に、前記リブ型光導波路と異なる、前記リブ型光導波路と同じ高さを有する少なくとも一つの第2の凸部が設けられており、前記第2の凸部の少なくとも一つは、前記受光素子基板を支持する前記第1の凸部とは別の凸部である。
本発明の他の態様によると、前記第2の凸部は、前記光導波路基板の面方向に延在し、且つ、延在方向の両端部の、前記リブ型光導波路の上流側を向く一の端部と前記リブ型光導波路との距離は、前記一の端部に対向する他の端部と前記リブ型光導波路との距離より小さく構成され、前記合波部を起点として前記光導波路基板の内部を伝搬する光を、前記受光素子の方向と異なる方向へ導波する。
本発明の他の態様によると、前記第2の凸部の少なくとも一つは、前記受光素子基板の外側に配される。
本発明の他の態様によると、前記第2の凸部の少なくとも一つは、前記受光素子基板を支持する前記第1の凸部である。
本発明の他の態様によると、前記リブ型光導波路は、前記受光部の受光範囲の下部において終端している。
本発明の他の態様によると、前記受光素子は、前記受光素子基板上に設けられた複数の前記受光部を含み、前記受光素子基板は、前記複数の前記受光部のそれぞれが相異なる複数の前記リブ型光導波路のそれぞれを伝播する光の一部を受信する位置に配される。
本発明の他の態様によると、前記光導波路基板は、厚さが5μm以下である。
本発明の他の態様は、上記いずれかの光導波路素子と、当該光導波路素子を収容する筐体と、当該光導波路素子に光を入射する入力光ファイバと、前記光導波路素子が出射する出力光を前記筐体の外へ導く出力光ファイバと、を備える光導波路デバイスである。
本発明の他の態様は、前記筐体の内部に、前記光導波路素子を駆動する駆動回路を備えるか、又は前記駆動回路とデジタルシグナルプロセッサとを備える、光導波路デバイスである。
本発明のさらに他の態様は、前記筐体の内部に前記駆動回路を備える、請求項10に記載の光導波路デバイスと、前記筐体の外部に配されたデジタルシグナルプロセッサと、を備える光送信装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、リブ型光導波路を用いる光導波路素子において、リブ型光導波路内を伝搬する光を安定に且つ精度よくモニタすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る、光変調素子を備える光変調デバイスの構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す光変調素子のA部の部分詳細図である。
【
図3】
図2に示す光変調素子のA部のIII-III断面図である。
【
図4】
図1に示す光変調器に用いることのできる光変調素子の第1の変形例を示す図である。
【
図5】
図1に示す光変調器に用いることのできる光変調素子の第2の変形例を示す図である。
【
図6】
図1に示す光変調器に用いることのできる光変調素子の第3の変形例を示す図である。
【
図7】
図1に示す光変調器に用いることのできる光変調素子の第4の変形例を示す図である。
【
図8】
図1に示す光変調器に用いることのできる光変調素子の第5の変形例を示す図である。
【
図9】
図1に示す光変調器に用いることのできる光変調素子の第6の変形例を示す図である。
【
図10】
図1に示す光変調器に用いることのできる光変調素子の第7の変形例を示す図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る光導波路デバイスの構成を示す図である。
【
図12】本発明の第3の実施形態に係る光送信装置の構成を示す図である。
【
図13】リブ型光導波路上に受光素子を配する従来の光導波路素子の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態に係る光導波路素子は、LN基板を用いて構成される光変調素子であるが、本発明に係る光導波路素子は、これには限られない。本発明は、LN基板以外の基板を用いる光導波路素子や、光変調以外の機能を有する光導波路素子にも、同様に適応することができる。
【0018】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光導波路素子および光導波路デバイスの構成を示す図である。本実施形態では、光導波路素子はマッハツェンダ型光導波路を用いて光変調を行う光変調素子102であり、光導波路デバイスは、当該光変調素子102を用いた光変調デバイス100である。
【0019】
光変調デバイス100は、筐体104の内部に光変調素子102を収容する。なお、筐体104は、最終的にはその開口部に板体であるカバー(不図示)が固定されて、その内部が気密封止される。
【0020】
光変調デバイス100は、筐体104内に光を入力するための入力光ファイバ106と、光変調素子102により変調された光を筐体104の外部へ導く出力光ファイバ108と、を有する。
【0021】
光変調デバイス100は、また、光変調素子102に光変調動作を行わせるための高周波電気信号を外部から受信するためのコネクタ110と、当該コネクタ110が受信した高周波電気信号を光変調素子102の信号電極134a、134b、136(後述)の一端へと中継するための中継基板112を備える。また、光変調デバイス100は、光変調素子102の信号電極134a、134b、136の他端に接続された所定のインピーダンスを有する終端器114を備える。ここで、光変調素子102の信号電極134a、134b、136と、中継基板112及び終端器114と、の間は、例えば金属ワイヤ等のボンディングにより電気的に接続される。
【0022】
光変調素子102は、例えばLNで構成される光導波路基板120と、光導波路基板120を支持する支持基板122と、を有する。支持基板122は、例えばガラスである。光導波路基板120上には、マッハツェンダ型光導波路(
図1に示す光変調素子102に示された太い点線)が形成されている。このマッハツェンダ型光導波路は、入力光ファイバ106からの入力光を受ける入力導波路124と、入力導波路124を伝搬する2つの光波に分岐する分岐導波路126(図示点線円で囲まれた導波路部分)と、分岐されて生成された2つの光波をそれぞれ伝搬する2つの並行導波路128a、128bと、を備える。
【0023】
上記マッハツェンダ型光導波路は、また、並行導波路128a、128bをそれぞれ伝搬した2つの光波を合波する合波導波路130と、合波された光波である出力光を導波して、当該出力光を出力光ファイバ108へ向けて光導波路基板120の図示右側エッジから出射する出力導波路132と、を備える。以下、入力導波路124、分岐導波路126、並行導波路128a、128b、合波導波路130、および出力導波路132を、総称して入力導波路124等ともいう。
【0024】
ここで、光導波路基板120は、例えば1~2μm以下の厚さまで薄く加工されている。入力導波路124等の光導波路は、光導波路基板120上に設けられた、当該光導波路基板120の厚さ方向に突き出て光導波路基板120の面方向に延在する凸部(例えば高さ数μmの凸部)により構成される、いわゆるリブ型光導波路である。当該凸部の存在により、入力導波路124等の内部の実効屈折率が他の部分よりも高くなり、当該入力導波路124等の内部に光が閉じ込められて導波される。
【0025】
このようなリブ型光導波路は、例えば、光導波路基板120を所望の厚さに加工した後、光導波路基板120の表面のうちリブ型光導波路として残す部分をフォトレジスト等によりマスキングし、マスキング部分以外の部分をドライエッチング等により光導波路基板120の厚さ方向へ削り出すことで形成され得る。
【0026】
光導波路基板120上には、また、並行導波路128a、128bの屈折率を変化させて当該並行導波路128a、128bを伝搬する光波を制御する信号電極134a、134bおよび136が設けられている。例えば、信号電極134a、134bはグランド電極であり、信号電極136は、信号電極134a、134bと共に、並行導波路128a、128bを伝搬する光波を制御する信号線路を構成する。
【0027】
なお、光変調素子102には、従来技術に従い、いわゆるDCドリフト等に起因するバイアス点の変動を補償するためのバイアス電極も設けられ得るが、
図1では記載を省略している。
【0028】
光変調素子102では、出力導波路132の上に受光素子140が搭載されている。受光素子140は、出力導波路132から漏れ出るエバネセント波により当該出力導波路132の内部の伝搬光と結合(エバネセント結合)し、当該伝搬光の少なくとも一部を受信して、受信した光に応じたモニタ信号(電気信号)を出力する。これにより、受光素子140を用いて出力導波路132内の伝搬光をモニタすることができる。受光素子140が出力するモニタ信号は、光導波路基板120上に形成された電極142および中継基板144を介して、筐体104に設けられたピン146から外部へ出力される。
【0029】
図2は、
図1に示す光変調素子102のA部の部分詳細図である。また、
図3は、
図2に示すA部のIII-III断面矢視図である。なお、
図2において、受光素子140と電極142との間を接続するワイヤの図示は省略されている。
【0030】
受光素子140は、Si(シリコン)や化合物半導体等の受光素子基板250上に形成された受光部252で構成される。受光部252は、受光素子基板250に不純物をドープすることにより形成されるpn接合部又はpin接合部により構成される。
【0031】
特に、本実施形態の光導波路素子である光変調素子102では、受光素子140の受光素子基板250は、光導波路基板120上に設けられたリブ型光導波路である出力導波路132と同じ高さを有する第1の凸部である突出部260a、260bにより支持されている。ここで「同じ高さ」とは、リブ型光導波路である出力導波路132からのエバネッセント波を受光部252が実用上問題なく受光できる程度の段差を含むものであり、例えばリブ型光導波路である出力導波路132の高さと突出部260a、260bの高さとの違いが±0.5μm以下の構成を含む。以下における「同じ高さ」も上記と同様に定義される。
【0032】
このため、受光素子140は、出力導波路132に加えて、突出部260a、260bによっても支持されることとなり、出力導波路132上に安定に配置されることとなる。その結果、光変調素子102では、出力導波路132と受光素子140とのエバネセント波(
図3の図示点線矢印)による結合(エバネセント結合)を所望の状態に安定に維持することができ、受光素子140により、リブ型光導波路である出力導波路132の内部を伝搬する光を、安定に且つ精度よくモニタすることができる。
【0033】
ここで、突出部260a、260bは、例えば、光変調素子102の製造時において出力導波路132を含む入力導波路124等のリブ型光導波路を形成する際に、これらリブ型光導波路と同様に、光導波路基板120の表面のうち突出部260a、260bを形成すべき部分をフォトレジスト等によりマスキングし、マスキング部分以外の部分をドライエッチング等により基板深さ方向に削り出すことで形成される。すなわち、第1の凸部である突出部260a、260bは、例えば、光導波路基板120の一部であって当該光導波路基板120と同じ材料で構成される。
【0034】
上記の形成方法においては、リブ型光導波路である出力導波路132の上面と、突出部260a、260bの上面とは、それぞれ、上記ドライエッチング等を行う前の光導波路基板120の、同じ表面の一部であるので、突出部260a、260bを、出力導波路132と同じ高さに、容易に形成することができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、
図2および
図3に示すように、受光素子140の受光部252は、平面視が正方形の受光素子基板250の中央に形成されるものとしたが、受光素子140の構成は、これには限られない。受光素子基板250の平面視の形状は、正方形以外の任意の形状であるものとすることができ、受光部252は、受光素子基板250の表面の任意の位置に形成されているものとすることができる。
【0036】
また、本実施形態では、第1の凸部として2つの突出部260a、260bを設けるものとしたが、第1の凸部の数は、これには限られない。第1の凸部は、少なくとも一つあればよい。例えば、
図2に示す受光素子140において、受光部252が、受光素子基板250の図示下側へ寄って形成される場合には、突出部260bを設けなくてもよい。この場合には、受光素子140は、受光部252と出力導波路132の接触部に加えて、第1の凸部である一つの突出部260aにより支持されることで、出力導波路132上に安定に支持され得る。
【0037】
あるいは、受光素子140の受光素子基板250のサイズが更に大きく、出力導波路132上に受光素子基板250をより安定に配置したい場合や、受光素子140の質量が重く、例えば出力導波路132に応力を過剰に発生させたくない場合には、4つまたはそれ以上の第1の凸部を、受光素子基板250の四隅を含む複数の部分にそれぞれ配置して、受光素子140の質量を分散させるものとしてもよい。
【0038】
以下、本発明の第1の実施形態に係る導波路型光素子である光変調素子102の変形例について説明する。以下に示す光変調素子102の変形例は、光変調素子102に代えて光変調デバイス100に用いることができる。
【0039】
<第1変形例>
まず、光変調素子102の第1の変形例について説明する。
図4は、第1の変形例に係る光変調素子102-1の構成を示す図であり、光変調素子102のA部の構成を示した
図2に相当する図である。なお、光変調素子102-1のうち、
図4に記載のない部分については、
図1に示す光変調素子102と同様の構成を有するものとし、上述した
図1についての説明を援用する。また、
図4において、
図2に示す光変調素子102の構成要素と同じ構成要素については、
図2における符号と同一の符号を用いるものとし、上述した
図2についての説明を援用するものとする。
【0040】
図4に示す光変調素子102-1は、
図2に示す光変調素子102と同様の構成を有するが、光導波路基板120には、受光素子140が配されたリブ型光導波路である出力導波路132の光の伝搬方向に沿って、受光素子140の受光部252よりも上流側に、第2の凸部である突出部466aが設けられている。
【0041】
一般に、合波導波路130においては、2つの並行導波路128a、128b内を伝搬してきた光波の伝搬モードが変化するため、それらの光波の一部が導波モードから放射モードに変換され、合波導波路130または出力導波路132の外へ漏れ光として放射され得る(図示黒太線の矢印)。そして、この漏れ光は、光導波路基板120内を伝搬することにより、受光部252において受信されるが、その際、出力導波路132を伝搬する光と漏れ光とで干渉等が生じることでモニタ信号と出力導波路132を伝搬する光の信号間で変調曲線のバイアス点シフトが発生し、受光素子140のモニタ精度に影響を与え得る。
【0042】
上記の構成を有する光変調素子102-1は、第2の凸部である突出部466aを有することにより、合波導波路130に起因して発生する漏れ光の一部を当該突出部466aにより擾乱して、受光部252に到達する当該漏れ光の量を低減することができる。したがって、光変調素子102-1では、上記漏れ光に起因する、受光素子140におけるモニタ精度の低下を防止して、より安定に且つ精度のよいモニタ動作を実現し得る。
【0043】
ここで、突出部466aにより一例として示す第2の凸部は、任意の平面視形状を有し、任意の方向に配されるものとすることができる。ただし、上記の効果を効果的に実現する意味において、第2の凸部は、例えば突出部466aのように、光導波路基板120の面方向に延在し、且つ、出力導波路132の上流側を向いた第2の凸部の一の端部と出力導波路132との距離は、第2の凸部の他の一の端部と出力導波路132との距離より小さく構成されることが望ましい。これにより、合波導波路130において生じた漏れ光を、受光部252以外の方向へと導くことができる。
【0044】
また、例えば突出部466aである第2の凸部の高さは、当該第2の凸部の部分において漏れ光を効果的にトラップする意味において、当該漏れ光を導波し得るように、リブ型光導波路である入力導波路124等と同じ高さであることが望ましい。
【0045】
なお、
図4においては、第2の凸部である一つの突出部466aが設けられるものとしたが、第2の凸部の数はこれには限られない。第2の凸部は、上記漏れ光に起因するモニタ精度の劣化を防止するために必要となる範囲において、任意の数(すなわち、少なくとも一つ)であるものとすることができる。また、それらの第2の凸部を配する位置は、モニタ対象である出力導波路132の伝搬光の伝搬方向に沿って、受光部252より上流である任意の位置であるものとすることができる。例えば、
図4において合波導波路130の図示下側にも無視し得ない漏れ光が発生すると考えられる場合には、
図4に点線で示す位置に、2つ目の第2の凸部である突出部466bを設けてもよい。
【0046】
<第2変形例>
次に、光変調素子102の第2の変形例について説明する。
図5は、第2の変形例に係る光変調素子102-2の構成を示す図であり、光変調素子102のA部の構成を示した
図2に相当する図である。なお、光変調素子102-2のうち、
図5に記載のない部分については、
図1に示す光変調素子102と同様の構成を有するものとし、上述した
図1についての説明を援用する。また、
図5において、
図2に示す光変調素子102の構成要素と同じ構成要素については、
図2における符号と同一の符号を用いるものとし、上述した
図2についての説明を援用するものとする。
【0047】
図5に示す光変調素子102-2は、
図4に示す光変調素子102-1において突出部466aに代えて当該突出部466aとは平面視形状が異なる突出部566aを第2の凸部として配したものに相当する。ここで、突出部566aは、平面視が矩形である突出部466aとは異なり、その平面視形状が、曲線で構成された相対向する2つの辺を有する、曲がった四辺形で構成されている。
【0048】
また、光変調素子102-2では、出力導波路132を挟んで突出部566aと反対側の位置にも、突出部566aと同じ平面視形状を有する突出部566bが、第2の凸部として配されている。
【0049】
そして、突出部566a、566bは、それぞれ、光導波路基板120の面方向に延在し、且つ、当該延在方向の両端部が、モニタ対象である出力導波路132の上流側を向いた一の端部と、受光部252から離れる方向を向く他の端部と、で構成されている。
【0050】
光変調素子102-2では、第2の凸部である突出部566a、566bは、平面視形状が曲がって構成されているので、突出部566a、566bに入射した漏れ光の伝搬方向を、
図5において点線矢印で示すように、それぞれ当該突出部566a、566bの形状に沿って変化させることができる。このため、光変調素子102-2では、光変調素子102-1に比べて、受光部252に伝搬する漏れ光の量を更に低減して、より高精度なモニタ動作を実現することができる。
【0051】
なお、突出部566a、566bにおいて漏れ光をより効果的に伝搬させてその方向を変化させるために、突出部566a、566bの高さは、リブ型光導波路である入力導波路124等と同じ高さであることが望ましい。
【0052】
<第3変形例>
次に、光変調素子102の第3の変形例について説明する。
図6は、第3の変形例に係る光変調素子102-3の構成を示す図であり、光変調素子102のA部の構成を示した
図2に相当する図である。なお、光変調素子102-3のうち、
図6に記載のない部分については、
図1に示す光変調素子102と同様の構成を有するものとし、上述した
図1についての説明を援用する。また、
図6において、
図2に示す光変調素子102の構成要素と同じ構成要素については、
図2における符号と同一の符号を用いるものとし、上述した
図2についての説明を援用するものとする。
【0053】
図6に示す光変調素子102-3では、光導波路基板120の面のうち、受光素子140を構成する受光素子基板250の図示右側の2つの角部の位置に、それぞれ突出部660a、660bが形成されている。これらの突出部660a、660bは、リブ型光導波路である出力導波路132と同じ高さで形成されて受光素子基板250を支持する第1の凸部である。
【0054】
また、光変調素子102-3では、
図4に示す第2の凸部である突出部466a、466bと同形状の突出部666a、666bが、第2の凸部として、出力導波路132に沿って受光部252より上流に配されている。ただし、突出部666a、666bは、
図4に示す突出部466a、466bとは異なり、受光素子140の受光素子基板250の下部にあって、出力導波路132と同じ高さで形成されており、受光素子140の受光素子基板250を支持する第1の凸部としても機能している。
【0055】
上記のように構成される光変調素子102-3は、合波導波路130からの漏れ光が受光部252へ伝搬するのを防止する第2の凸部である突出部666a、666bが、受光素子140を支持する第1の凸部としても機能するので、光変調素子102-3の構成の複雑化を招くことなく、受光素子140によるモニタ精度を高く安定に維持することができる。
【0056】
<第4変形例>
次に、光変調素子102の第4の変形例について説明する。
図7は、第4の変形例に係る光変調素子102-4の構成を示す図であり、光変調素子102のA部の構成を示した
図2に相当する図である。なお、光変調素子102-4のうち、
図7に記載のない部分については、
図1に示す光変調素子102と同様の構成を有するものとし、上述した
図1についての説明を援用する。また、
図7において、
図2、
図4、
図6に示す光変調素子102、102-1、102-3の構成要素と同じ構成要素については、それぞれ
図2、
図4、
図6における符号と同一の符号を用いるものとし、上述した
図2、
図4、
図6についての説明を援用するものとする。
【0057】
図7に示す光変調素子102-4は、
図6に示す光変調素子102-3と同様の構成を有するが、さらに、
図4に示す光変調素子102-1が備える又は備え得る突出部466a及び466bも備えている。
【0058】
上記の構成を有する光変調素子102-4は、モニタ対象である出力導波路132に沿って受光素子140の受光部252の上流に第2の凸部である突出部466a、466b、666a、666bを有し、かつ、突出部666a、666bは、受光素子140を支持する第1の凸部でもある。このため、光変調素子102-4では、第1の凸部及び又は第2の凸部である突出部の数を大きく増加させることなく、光変調素子102、102-1、102-3よりも更に高く安定な、受光素子140のモニタ精度を実現することができる。
【0059】
<第5変形例>
次に、光変調素子102の第5の変形例について説明する。
図8は、第5の変形例に係る光変調素子102-5の構成を示す図であり、光変調素子102のA部の構成を示した
図2に相当する図である。なお、
図8においては、電極142の図示は省略されている(後述する
図9、
図10についても同様である)。また、光変調素子102-4のうち、
図8に記載のない部分については、
図1に示す光変調素子102と同様の構成を有するものとし、上述した
図1についての説明を援用する。また、
図8において、
図2に示す光変調素子102の構成要素と同じ構成要素については、
図2における符号と同一の符号を用いるものとし、上述した
図2についての説明を援用するものとする。
【0060】
図8に示す光変調素子102-5は、
図2に示す光変調素子102と同様の構成を有するが、出力導波路132内の光波の伝搬方向に沿って合波導波路130より下流に追加の分岐導波路870を更に有する。また、光変調素子102-5では、分岐導波路870により出力導波路132から分岐したモニタ用導波路872の端部の上に、受光素子140の受光部252が配されている点が、光変調素子102と異なる。すなわち、光変調素子102-5では、リブ型光導波路であるモニタ用導波路872は、受光素子140の受光部252の受光範囲(例えば、
図8において受光部252を示す実線円の範囲)の下部において終端している。
【0061】
ここで、出力導波路132は、信号電極134a、134b、136(
図1参照)により変調された変調光である出力光を光導波路基板120の端部まで導く主経路であり、モニタ用導波路872は、当該主経路である出力導波路132から分岐して設けられた分岐経路である。また、分岐導波路870およびモニタ用導波路872は、入力導波路124等と同様に、例えば出力導波路132と同じ高さをもって光導波路基板120に延在する凸部で構成されたリブ型光導波路として形成される。すなわち、光変調素子102-5では、受光素子140の受光部252が、光導波路基板120上に形成されたリブ型光導波路のうち、光導波路基板120の端部へ出力光を出射する主経路から分岐して設けられた分岐経路上に配されている。
【0062】
光変調素子102-5では、さらに、例えば矩形である受光素子140の受光素子基板250は、光導波路基板120の表面上の、受光素子基板250の四隅の位置に配された第1の凸部である突出部860a、860b、860c、860dにより支持されている。ここで、突出部860a、860b、860c、860dは、リブ型光導波路であるモニタ用導波路872と同じ高さを持つ凸部として形成される。
【0063】
上記の構成を有する光変調素子102-5では、特に、主経路である出力導波路132から分岐して設けられた分岐経路であるモニタ用導波路872に設けられているので、出力導波路132上に受光素子140を配する光変調素子102とは異なり、光導波路基板120から出射される出力光の強度が、受光素子140と出力導波路132との接触状態の製造ばらつきに起因して個体ごとにばらついてしまうことを防止することができる。
【0064】
また、モニタ用導波路872は、光波を受光素子140まで伝搬するだけでよいので、上述したように、光変調素子102-5では、モニタ用導波路872の端部に受光素子140の受光部252を配することができる。このため、受光素子140は、モニタ用導波路872とのエバネセント結合により受信する光に加えて、モニタ用導波路872の端部から放射及び散乱された光を受信することができる。その結果、光変調素子102-5では、受光素子140に入射する光波の光量を増やして、リブ型光導波路であるモニタ用導波路872を伝搬する光の一部又は全部(すなわち、少なくとも一部)を受光素子140において受信するものとすることができる。したがって、受光素子140によるモニタ精度を向上することができる。
【0065】
<第6変形例>
次に、光変調素子102の第6の変形例について説明する。
図9は、第6の変形例に係る光変調素子102-6の構成を示す図であり、光変調素子102のA部の構成を示した
図2に相当する図である。なお、光変調素子102-6のうち、
図9に記載のない部分については、
図1に示す光変調素子102と同様の構成を有するものとし、上述した
図1についての説明を援用する。また、
図9において、
図2および
図8にそれぞれ示す光変調素子102、102-5の構成要素と同じ構成要素については、それぞれ
図2及び
図8における符号と同一の符号を用いるものとし、上述した
図2および
図8についての説明を援用するものとする。
【0066】
図9に示す光変調素子102-6は、
図8に示す光変調素子102-5と同様の構成を有するが、モニタ用導波路872は、その導波路幅が当該モニタ用導波路872の端部に向かって減少する幅変化部872-aを有し、当該幅変化部872-aの上に受光素子140の受光部252が配されている。
【0067】
これにより、光変調素子102-6では、
図8に示す光変調素子102-5と同様に、受光素子140は、モニタ用導波路872とのエバネセント結合により受信する光に加えて、幅変化部872-aから放射及び散乱された光を受信することができる。その結果、光変調素子102-6では、受光素子140に入射する光波の光量を増やして、受光素子140によるモニタ精度を向上することができる。
【0068】
なお、
図9に示す構成においては、幅変化部872-aの端部(したがって、モニタ用導波路872の端部)は、受光部252の下部にはないものしたが、これには限られない。受光素子140の受光部252は、幅変化部872-aの端部の上に配されるものとすることもできる。これにより、受光部252に入射する光波の光量を更に増加させることができる。
【0069】
また、
図9に示す構成においては、幅変化部872-aは、その端部に向かって導波路幅が単調に減少するものとしたが、幅変化部872-aの形状はこれには限られない。幅変化部872-aは、モニタ用導波路872の光波を放射及び散乱し得る限りにおいて、導波路幅を任意のパターンで変化させるものとすることができる。例えば、幅変化部872-aは、導波路幅が規則的に又は不規則に変化するように形成されていてもよい。
【0070】
<第7変形例>
次に、光変調素子102の第7の変形例について説明する。
図10は、第7の変形例に係る光変調素子102-7の構成を示す図であり、光変調素子102のA部の構成を示した
図2に相当する図である。なお、光変調素子102-7のうち、
図10に記載のない部分については、
図1に示す光変調素子102と同様の構成を有するものとし、上述した
図1についての説明を援用する。また、
図10において、
図2に示す光変調素子102の構成要素と同じ構成要素については、
図2における符号と同一の符号を用いるものとし、上述した
図2についての説明を援用するものとする。
【0071】
図10に示す光変調素子102-7は、
図2に示す光変調素子102と同様の構成を有するが、Y字型の合波導波路130において出力光に寄与しないいわゆるオフ光1080、1082をそれぞれ導波するように配された、出力導波路132から分岐する分岐導波路1072、1074が設けられている。
【0072】
また、光変調素子102-7では、受光素子140に代えて、受光素子基板1050の上に形成された2つの受光部1052-1、1052-2を有する受光素子1040を備える点が、
図2の光変調素子102と異なる。受光素子140と同様に、受光素子1040を構成する受光素子基板1050は、例えばSiなど受光素子基板であるものとすることができ、受光部1052-1、1052-2は、受光素子基板1050である受光素子基板に不純物をドープすることにより形成されるpn接合部又はpin接合部により構成される。
【0073】
受光素子1040は、受光部1052-1、1052-2が、それぞれ、分岐導波路1072、1074の端部の上に配されるように、略矩形の受光素子基板1050の四隅が、光導波路基板120上に設けられた第1の凸部である突出部1060a、1060b、1060c、1060dにより支持されている。
【0074】
上記の構成を有する光変調素子102-7では、分岐導波路1072、1074が合波導波路130に連続して構成されているので、合波導波路130において出力光に寄与しなかった光波は、漏れ光(例えば、
図4の黒太線矢印)とはならず、分岐導波路1072および1074を伝搬することとなる。そして、光変調素子102-7では、分岐導波路1072および1074を伝搬する光波が、一つの受光素子1040を構成する2つの受光部1052-1及び1052-2により受信される。
【0075】
分岐導波路1072および1074を伝搬する光波は、変調波形の位相シフト方向が逆となっていることから、受光部1052-1および1052-2の出力信号は、例えば加算されて、正確なモニタ信号として抽出される。また、本構成においては、合波導波路130において出力光に寄与しないオフ光1080、1082の多くは分岐導波路1072、1074に導波されるが、一部は光導波路基板120内を漏れ光として伝搬してしまう。またその他にも、光導波路基板120内部には、他の光導波路部分(例えば、曲がり導波路部分や分岐導波路126など)から発生した迷光が伝搬し得る。突出部1060c、1060dは、これらの迷光に対しては第2の凸部としても機能するので、受光部1052-1および1052-2では、これらの迷光に起因するノイズの発生が抑制される。
【0076】
これにより、光変調素子102-7では、受光素子の数を増やすことなく単純な構成により、合波導波路130における漏れ光の発生を抑制しつつ、出力導波路132を伝搬する光波のモニタ精度を向上することができる。
【0077】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図11は、本発明の第2の実施形態に係る光導波路デバイスの構成を示す図である。この光導波路デバイス1100は、筐体1104と、当該筐体1104に収容された光導波路素子1102および回路基板1106と、で構成されている。
【0078】
光導波路素子1102は、例えば、
図1に示す光変調素子102若しくはその変形例のいずれかであるものとすることができる。あるいは、光導波路素子1102は、光変調素子102又はその変形例が備える受光素子140、1040の支持構造と同様の受光素子の支持構造を備える、任意の光導波路パターンを有する光導波路素子であるものとすることができる。そのような光導波路素子は、特開2019-159189号公報に記載のような、いわゆるネスト型マッハツェンダ型光導波路で構成されるDP-QPSK光変調素子であり得る。
【0079】
回路基板1106は光導波素子を駆動するための駆動部1108とその配線(不図示)で構成されている。駆動部1108は、駆動回路(ドライバ:不図示)、あるいは駆動回路(ドライバ:不図示)及びDSP(デジタルシグナルプロセッサ:不図示)で構成されている。DSPは、例えば、筐体1104に設けられたピン1114を介して外部から供給される送信データを処理して、当該送信データを光信号として送信するための変調信号(例えば、送信データにエラー訂正データを付加したり、各種伝送フォーマットに応じた変調信号への変換や光信号が最適になるように補償した変調信号)を生成し、当該生成した変調信号を、駆動回路を介して光導波路素子1102へ入力する。
【0080】
筐体1104には、また、光導波路素子1102において上記支持構造により支持された受光素子の出力信号や、光導波路素子1102が備え得るバイアス電極のための入力信号を入力するためのピン1112が設けられている。
【0081】
なお、駆動回路とDSPとで構成される回路基板1106は一例であって、回路基板1106の構成はこれには限られない。回路基板1106には、DSPが搭載されていないものとすることもできる。この場合には、DSPは、光導波路デバイス1100で構成される装置内において、光導波路デバイス1100の筐体1104の外に配され得る。
【0082】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図12は、本発明の第3の実施形態に係る光送信装置1200の構成を示す図である。光送信装置1200は、光源1202と、光導波路デバイス1204と、当該光導波路デバイス1204の筐体1206の外部に配されたDSP1208とを備える。光源1202は、例えば半導体レーザである。DSP1208は、例えば光送信装置1200に入力される送信データを処理して、当該送信データを光信号として送信するための変調データを生成する。
【0083】
光導波路デバイス1204は、筐体1206の内部に、光導波路素子である光変調素子1210と、光変調素子1210を駆動する駆動部1212と、を備える。光導波路デバイス1204は、例えば
図11に示す光導波路デバイス1100であって駆動部は駆動回路(ドライバ:不図示)で構成され、DSPが含まれない構成の光導波路デバイスであり得る。
【0084】
光導波路デバイス1204の光変調素子1210は、例えば、
図1に示す光変調素子102若しくはその変形例のいずれかであるものとすることができる。あるいは、光変調素子1210は、光変調素子102又はその変形例が備える受光素子140、1040の支持構造と同様の受光素子の支持構造を備える、任意の光導波路パターンを有する光変調素子であるものとすることができる。
【0085】
なお、本発明は上記実施形態およびその変形例の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0086】
例えば、
図8に示した第5変形例に係る実施形態では、受光素子140の受光部252はモニタ用導波路872の端部の上部に配されるものとしたが、受光部252の配置はこれには限られない。受光部252は、上記端部の上部に限らず、主経路である出力導波路132から分岐して設けられた分岐経路であるモニタ用導波路872上の任意の位置に配されるものとすることができる。
【0087】
また、上述した光変調素子102およびその変形例である光変調素子102-1ないし102-7(以下、光変調素子102等ともいう)においては、分岐導波路126、870は、
図1ないし
図10に示すようにY字型導波路で構成されるものとしたが、これらの分岐導波路の構成はこれには限られず、任意の形状又は原理に基づく分岐導波路であるものとすることができる。例えば、
図8、
図9に示す光変調素子102-5、102-6が備える合波導波路130及び分岐導波路870は、一つの多モード干渉(MMI、Multi Mode Interference)導波路又は方向性結合器で構成されるものとすることができる。合波導波路130及び分岐導波路870が多モード干渉導波路で構成される場合には、分岐経路であるモニタ用導波路872は、上記多モード干渉導波路から延在する。そして合波部の干渉で生じた出力光に寄与しないオフ光がモニタ用導波路を伝搬し、モニタ光として取り出して利用される。
【0088】
また、
図10に示す光変調素子102-7は、一つの受光素子基板1050上に形成された2つの受光部1052-1、1052-2を有する受光素子1040を備え、受光素子1040は、受光部1052-1、1052-2が、出力導波路132から分岐する分岐導波路1072、1074上にそれぞれ配されるものとしたが、受光素子の構成及びその配置は、これには限られない。光変調素子102等を一例として示した本発明に係る光導波路素子では、受光素子は、受光素子基板上に設けられた複数の受光部を含むものとすることができ、当該受光素子基板は、当該複数の受光部のそれぞれが、相異なる複数のリブ型光導波路の上部において、当該リブ型光導波路のそれぞれを伝播する光の一部又は全部を受信し得る位置に配されるものとすることができる。
【0089】
また、当業者において明らかなように、
図1ないし
図10に示す光変調素子102及びその変形例である光変調素子102-1ないし102-7の特徴構成は、これらの光変調素子のそれぞれにおいて相互に重複して用いることができる。例えば、
図8ないし
図10に示す光変調素子102-5ないし102-7は、第2の凸部を有しないが、
図4ないし
図7に示す光変調素子102-1ないし102-4が備える第2の凸部である突出部466a等を備えるものとしてもよい。また、例えば、
図10に示す光変調素子102-7において、分岐導波路1072、1074は、
図9に示す光変調素子102-6のモニタ用導波路872と同様の幅変化部を有していてもよく、受光部1052-1、1052-2は、そのような幅変化部上に配されるものとすることができる。
【0090】
また、上述した第1の実施形態及びその変形例においては、光導波路基板120は、その厚さが、例えば1~2μm以下の厚さまで薄く加工されているものとしたが、光導波路基板120の厚さは、これには限られない。本発明の構成は、例えば厚さ5μm以下の光導波路基板120を用いる構成おいて、受光素子をリブ型光導波路上に安定に支持して、リブ型光導波路内を伝搬する光を安定に且つ精度よくモニタすることができると共に、受光素子が傾くことによる応力発生に起因した光導波路基板120のヒビや割れ等の機械的損傷の発生も効果的に防止し得る。
【0091】
また、上述した実施形態及びその変形例においては、光導波路基板120は、LNで構成されるものとしたが、光導波路基板120の材料は、これには限られない。例えば、光導波路基板120は、LN以外の任意の誘電体または半導体材料で構成されるものとすることができる。
【0092】
以上、説明したように、本実施形態に示す光導波路素子である光変調素子102は、光導波路基板120上に設けられた、当該光導波路基板120の厚さ方向に突き出て当該光導波路基板120の面方向に延在する凸部により構成されるリブ型光導波路である出力導波路132と、受光素子140と、を備える。ここで、受光素子140は、上記リブ型光導波路である出力導波路132の上に配される受光素子基板250上に形成された受光部252を備えて、受光部252により出力導波路132を伝搬する光の少なくとも一部を受信する。そして、受光素子140を構成する受光素子基板250は、光導波路基板120上に設けられた上記リブ型光導波路と同じ高さを有する少なくとも一つの第1の凸部である260a、260bにより支持されている。
【0093】
この構成によれば、光変調素子102のようなリブ型光導波路を用いる光導波路素子において、リブ型光導波路内を伝搬する光を安定に且つ精度よくモニタすることができる。
【0094】
また、第1の変形例に係る光変調素子102-1では、光導波路基板120には、リブ型光導波路である出力導波路132の光の伝搬方向に沿って受光部252よりも上流側に、少なくとも一つの第2の凸部である突出部466aが設けられている。この構成によれば、上記上流側から到来する漏れ光を第2の凸部により擾乱して、当該漏れ光に起因する受光素子140におけるモニタ精度の低下を防止し、より安定に且つ精度のよいモニタ動作を実現することができる。
【0095】
また、例えば第1の変形例に係る光変調素子102-1では、第2の凸部である突出部466aは、光導波路基板120の面方向に延在し、且つ、延在方向の両端部の、リブ型光導波路である出力導波路132の上流側を向く一の端部と当該出力導波路132との距離は、上記一の端部に対向する他の端部と出力導波路132との距離より小さく構成されている。この構成によれば、上記上流で生じた漏れ光を、受光部252以外の方向へと導いて、より安定且つ精度のよいモニタ動作を実現することができる。
【0096】
また、例えば第1の変形例に係る光変調素子102-1では、第2の凸部である突出部466aは、リブ型光導波路である入力導波路124等と同じ高さを有する。この構成によれば、上記上流の漏れ光を第2の凸部により受光部252以外の方向へと導波して、より安定且つ精度のよいモニタ動作を実現することができる。
【0097】
また、例えば第4の変形例に係る光変調素子102-4では、第2の凸部の少なくとも一つ、例えば突出部666aおよび666bは、受光素子140の受光素子基板250を支持する第1の凸部である。この構成によれば、突出部の数を大きく増加させることなく、より高く安定なモニタ精度を実現することができる。
【0098】
また、例えば第5の変形例に係る光変調素子102-5では、リブ型光導波路であるモニタ用導波路872は、受光素子140の受光部252の受光範囲の下部において終端している。この構成によれば、受光素子140の受光部252に入射する光波の光量を増やして、受光素子140によるモニタ精度を向上することができる。
【0099】
また、例えば第5の変形例に係る光変調素子102-5では、受光素子140の受光部252は、光導波路基板120の端部へ出力光を導く主経路である出力導波路132から分岐して設けられた分岐経路であるモニタ用導波路872上に配されている。この構成によれば、受光素子140は出力導波路132上に配されないので、光導波路基板120から出射される出力光の強度が、受光素子140と出力導波路132との接触状態の製造ばらつきに起因して個体ごとにばらついてしまうことを防止することができる。
【0100】
また、例えば第5の変形例に係る光変調素子102-5では、合波導波路130および分岐導波路870で構成される部分を多モード干渉導波路により構成して、分岐経路であるモニタ用導波路872が、多モード干渉導波路から延在するように構成することができる。この構成によれば、光経路を単純化しつつ、受光素子140によるモニタ精度を向上することができる。
【0101】
また、受光素子は、受光素子基板上に設けられた複数の受光部を含み、当該受光素子基板は、これら複数の受光部のそれぞれが相異なる複数のリブ型光導波路のそれぞれを伝播する光の一部を受信する位置に配されるものとすることができる。例えば、第7の変形例に係る光変調素子102-7では、上記相異なる複数のリブ型光導波路は、光導波路基板120の端部へ出力光を導く主経路である出力導波路132の伝搬光の一部を当該出力導波路132を挟んで相対向する方向へそれぞれ分岐する2つの分岐経路である分岐導波路1072、1074である。この構成によれば、受光素子の数を増やすことなく単純な構成により、合波導波路130における漏れ光の発生を抑制しつつ、出力導波路132を伝搬する光波のモニタ精度を向上することができる。
【0102】
また、光変調素子102では、光導波路基板120は、厚さが5μm以下である。この構成によれば、薄く形成されて応力による破損の生じやすい光導波路基板120上において、受光素子基板250で構成された受光素子140をリブ型光導波路上に安定に保持することができる。
【0103】
また、光変調素子102等においては、第1の凸部である260a等は、光導波路基板120の一部であって当該光導波路基板120と同じ材料で構成される。この構成によれば、所定の厚さに加工された光導波路基板120の表面を、例えばドライエッチングにより選択的に削ることにより、リブ型光導波路と同じ高さの第1の凸部を容易に形成することができる。
【0104】
また、光導波路デバイスである光変調デバイス100は、
図1ないし
図10に示す光変調素子102等のいずれかの光導波路素子と、当該光導波路素子を収容する筐体104と、当該光導波路素子に光を入射する入力光ファイバ106と、光導波路素子が出射する出力光を筐体104の外へ導く出力光ファイバ108と、を備える。この構成によれば、高く且つ安定なモニタ精度を実現し得る、光導波路デバイスを実現することができる。
【0105】
また、上述した第2の実施形態に係る光導波路デバイス1100は、筐体1104の内部に、光導波路素子1102を駆動する駆動部1108を備え、駆動部には駆動回路を備えるか、又は駆動回路とDSPとを備える。
【0106】
また、上述した第3の実施形態に係る光送信装置1200は、筐体1206の内部に駆動部1212を備える光導波路デバイス1204と、筐体1206の外部に配されたDSP1208と、を備える。
【符号の説明】
【0107】
100…光変調デバイス、102、102-1、102-2、102-3、102-4、102-5、102-6、102-7、1210…光変調素子、104、1104、1206…筐体、106…入力光ファイバ、108…出力光ファイバ、110…コネクタ、112、144…中継基板、114…終端器、120、1302…光導波路基板、122、1310…支持基板、124…入力導波路、126、870、1072、1074…分岐導波路、128a、128b…並行導波路、130…合波導波路、132…出力導波路、134a、134b、136…信号電極、140、1040、1304…受光素子、142…電極、146…ピン、250、1050、1306…受光素子基板、252、1052-1、1052-2、1308…受光部、260a、260b、466a、466b、566a、566b、660a、660b、666a、666b、860a、860b、860c、860d、1060a、1060b、1060c、1060d…突出部、466a-1、466a-2…端部、872…モニタ用導波路、872-a…幅変化部、1080、1082…オフ光、1100、1204…光導波路デバイス、1102…光導波路素子、1106…回路基板、1108、1212…駆動部、1208…DSP、1112、1114…ピン、1200…光送信装置、1202…光源、1300…リブ型光導波路。