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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】加熱装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G03G15/20 535
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020050528
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021149018
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 有信
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-225021(JP,A)
【文献】特開2005-258144(JP,A)
【文献】特開2009-047977(JP,A)
【文献】特開2013-073198(JP,A)
【文献】特開2019-174849(JP,A)
【文献】特開2019-159176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルト部材と、
前記ベルト部材に対向する対向部材と、
前記ベルト部材の内側に設けられ、前記ベルト部材を介して前記対向部材との間にニップ部を形成するニップ形成部材と、
前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、
前記ベルト部材を加熱する加熱部材とを備えた加熱装置であって、
前記支持部材と前記ニップ形成部材とは、その長手方向中央部の接触面積が端部よりも大きく、
前記ニップ形成部材は、前記支持部材側へ突出し、前記支持部材に接触する突出部を有し、
前記突出部の前記支持部材側への突出高さは、前記長手方向中央部が端部よりも大きいことを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記突出部の前記支持部材側の端面である接触面は、その長手方向中央部の面積が、端部の面積よりも大きい請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
無端状のベルト部材と、
前記ベルト部材に対向する対向部材と、
前記ベルト部材の内側に設けられ、前記ベルト部材を介して前記対向部材との間にニップ部を形成するニップ形成部材と、
前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、
前記ベルト部材を加熱する加熱部材とを備えた加熱装置であって、
前記支持部材と前記ニップ形成部材とは、その長手方向中央部の接触面積が端部よりも大きく、
前記支持部材は、前記ニップ形成部材側へ突出し、前記ニップ形成部材に接触する突出部を有し、
前記突出部の前記ニップ形成部材側への突出高さは、前記長手方向中央部が端部よりも大きいことを特徴とする加熱装置。
【請求項4】
前記突出部の前記ニップ形成部材側の端面である接触面は、その長手方向中央部の面積が、端部の面積よりも大きい請求項記載の加熱装置。
【請求項5】
前記対向部材の長手方向中央位置よりも一方側に、前記対向部材に駆動力を伝達する駆動伝達部材が設けられ、
前記支持部材と前記ニップ形成部材とは、その長手方向一方の端部側の接触面積が他方の端部側よりも大きい請求項1からいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記支持部材と前記ニップ形成部材とは、その被加熱物搬送方向下流側の接触面積が上流側よりも大きい請求項1からいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項7】
記録媒体上のトナーを熱により定着させる定着装置である請求項1からいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項8】
請求項1からいずれか1項に記載の加熱装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱装置として、プリンタなどの画像形成装置に設けられた定着装置が存在する。定着装置は、ベルト部材としての定着ベルトを備え、定着ベルトの内側に、定着ベルトを加熱する加熱部材や加圧ローラとの間に定着ニップを形成するためのニップ形成部材が設けられる。
【0003】
そして、定着装置には、ニップ形成部材をその背面側から支持する支持部材が設けられる。支持部材がニップ形成部材を支持することで、加圧ローラからの加圧力によるニップ形成部材の撓みを抑制し、定着ベルトと加圧ローラとの間に均一な幅のニップ部を形成することができる。
【0004】
しかし、支持部材が長手方向両側で定着装置のフレーム部分などに支持される構成の場合、長手方向中央部で支持部材が撓みやすく、中央部で十分なニップ幅を形成できないという問題があった。
【0005】
これに対して、特許文献1(特開2016-18160号公報)の定着装置では、ステーのニップ形成部材に対する支持面である剪断面が、ステーの長手方向に断続的に設けられている。この剪断面は、長手方向端部から中央へ向けて、ニップ形成部材側に突出した凸形状をなしている。これにより、ステーの撓みによるニップの偏差を相殺して均一なニップを得ることができる。
【0006】
ところで、このような定着装置では、その長手方向中央部で支持部材からニップ形成部材への接触面圧が大きくなることで、支持部材からニップ形成部材への伝熱が大きくなり、ニップ形成部材が熱変形するおそれがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
長手方向中央部における支持部材からニップ形成部材への面圧が大きいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、無端状のベルト部材と、前記ベルト部材に対向する対向部材と、前記ベルト部材の内側に設けられ、前記ベルト部材を介して前記対向部材との間にニップ部を形成するニップ形成部材と、前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、前記ベルト部材を加熱する加熱部材とを備えた加熱装置であって、前記支持部材と前記ニップ形成部材とは、その長手方向中央部の接触面積が端部よりも大きく、前記ニップ形成部材は、前記支持部材側へ突出し、前記支持部材に接触する突出部を有し、前記突出部の前記支持部材側への突出高さは、前記長手方向中央部が端部よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の加熱装置は、長手方向中央部における支持部材からニップ形成部材への面圧を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】画像形成装置の概略構成図である。
図2】定着装置の概略構成図である。
図3】定着装置内の各部材の配置を示す模式図である。
図4図3において、加圧ローラが定着ベルトに圧接された状態の図である。
図5】ニップ形成部材の各突出部の、ステーに接触する接触面を示す図である。
図6】突出部の変形例を示す図である。
図7】下流側に凸部を有する構成のニップ形成部材を示す図である。
図8図2と異なる形態の定着装置の概略構成図である。
図9】さらに異なる形態の定着装置の概略構成図である。
図10】遮光部材の展開図である。
図11】遮光部材の配置例を示し、上段は斜視図であり、下段は断面構成図である。
図12図2と異なる実施形態のニップ形成部材の分解斜視図である。
図13】突出部のさらに変形例を示す図である。
図14】ステー側に突出部を設けた構成の定着装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。以下、各実施形態の説明において、加熱装置として、トナーを熱により定着させる定着装置として説明する。
【0012】
図1に示すカラー画像形成装置1の中央には、4つのプロセスユニット9Y,9M,9C,9Kが着脱可能に設けられた画像形成部2が配置されている。各プロセスユニット9Y,9M,9C,9Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
【0013】
具体的な各プロセスユニット9としては、表面上に現像剤としてのトナーを担持可能なドラム状の回転体である感光体ドラム10と、感光体ドラム10の表面を一様に帯電させる帯電ローラ11と、感光体ドラム10の表面にトナーを供給する現像ローラを有する現像装置12等を備えている。
【0014】
プロセスユニット9の下方には、露光部3が配置されている。露光部3は、画像データに基づいて、レーザ光を発するように構成されている。
【0015】
画像形成部2の上方には転写部4が配置されている。転写部4は、駆動ローラ14および従動ローラ15に周回走行可能に張架されている無端状の中間転写ベルト16、各プロセスユニット9の感光体ドラム10に対して中間転写ベルト16を挟んだ対向位置に配置されている一次転写ローラ13等で構成されている。各一次転写ローラ13はそれぞれの位置で中間転写ベルト16の内周面を押圧しており、中間転写ベルト16の押圧された部分と各感光体ドラム10とが接触する箇所に一次転写ニップが形成されている。
【0016】
また、中間転写ベルト16を挟んで駆動ローラ14に対向した位置には二次転写ローラ17が配設されている。二次転写ローラ17は中間転写ベルト16の外周面を押圧しており、二次転写ローラ17と中間転写ベルト16とが接触する箇所に二次転写ニップが形成されている。駆動ローラ14、中間転写ベルト16、そして、二次転写ローラ17は、画像を用紙に転写する画像転写部として機能する。
【0017】
給紙部5は、画像形成装置1の下部に位置しており、記録媒体あるいは被加熱物としての用紙Pを収容した給紙カセット18や、給紙カセット18から用紙Pを搬出する給紙ローラ19等からなっている。
【0018】
搬送路7は、給紙部5から搬出された用紙Pを搬送する搬送経路であり、一対のレジストローラ20の他、後述する排紙部8に至るまで、搬送ローラ対が搬送路7の途中に適宜配置されている。
【0019】
定着装置6は、加熱部材によって加熱される定着ベルト31、その定着ベルト31を加圧可能な加圧ローラ32等を有している。
【0020】
排紙部8は、画像形成装置1の搬送路7の最下流に設けられる。この排紙部8には、用紙Pを外部へ排出するための一対の排紙ローラ21と、排出された用紙Pをストックするための排紙トレイ22とが配設されている。
【0021】
画像形成装置1の上部には、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の各色トナーが充填されたトナーボトル23Y,M,C,Kが着脱可能に設けられている。そして、このトナーボトル23Y,M,C,Kから各現像装置12との間に設けた補給路を介して、各色の現像装置12に各色トナーが補給される。
【0022】
以下、図1を参照して上記画像形成装置1の基本的動作について説明する。
【0023】
画像形成装置1において、画像形成動作が開始されると、各プロセスユニット9Y,9M,9C,9Kの感光体ドラム10の表面に静電潜像が形成される。各感光体ドラム10に露光部3によって露光される画像情報は、所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。各感光体ドラム10上には静電潜像が形成され、各現像装置12に蓄えられたトナーが、ドラム状の現像ローラによって感光体ドラム10に供給されることにより、静電潜像は顕像であるトナー画像(現像剤像)として可視像化される。
【0024】
転写部4では、駆動ローラ14の回転駆動により中間転写ベルト16が図の矢印の方向に走行駆動される。また、各一次転写ローラ13には、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、一次転写ニップにおいて転写電界が形成され、各感光体ドラム10に形成されたトナー画像は一次転写ニップにて中間転写ベルト16上に順次重ね合わせて転写される。
【0025】
一方、画像形成動作が開始されると、画像形成装置1の下部では、給紙部5の給紙ローラ19が回転駆動することによって、給紙カセット18に収容された用紙Pが搬送路7に送り出される。搬送路7に送り出された用紙Pは、レジストローラ20によってタイミングを計られて、二次転写ローラ17と駆動ローラ14との間の二次転写ニップに送られる。このとき、中間転写ベルト16上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、二次転写ニップに転写電界が形成されている。二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト16上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。
【0026】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置6へと搬送され、定着ベルト31と加圧ローラ32とによって用紙Pが加熱および加圧されてトナー画像が用紙Pに定着される。そして、トナー画像が定着された用紙Pは、定着ベルト31から分離され、搬送ローラ対によって搬送され、排紙部8において排紙ローラ21によって排紙トレイ22へと排出される。
【0027】
以上の説明は、用紙P上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つのプロセスユニット9Y,9M,9C,9Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニット9を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0028】
次に、図2に基づき、上記定着装置6の構成について説明する。
図2に示すように、定着装置6は、回転可能な定着部材あるいはベルト部材としての定着ベルト31と、定着ベルト31に対向して回転可能に設けられた対向部材あるいは加圧部材としての加圧ローラ32と、定着ベルト31を加熱する加熱部材としてのヒータ33と、定着ベルト31の内側に配設されたニップ形成部材34と、ニップ形成部材34を支持する支持部材としてのステー35と、ヒータ33から放射される光を定着ベルト31へ反射する反射部材36と、定着ベルト31の温度を検知する温度検知手段としての温度センサ37と、定着ベルト31から用紙を分離する分離部材38と、加圧ローラ32を定着ベルト31へ加圧する加圧手段等を備えている。定着ベルト31、加圧ローラ32、ヒータ33、ニップ形成部材34、ステー35、および、反射部材36は、図2の紙面に直交する方向(図3の両矢印D方向参照。加圧ローラ32の軸方向、あるいは、用紙の幅方向でもある)に延在しており、以下、この方向を各部材の長手方向、あるいは、定着装置6の長手方向と呼ぶ。
【0029】
上記定着ベルト31は、薄肉で可撓性を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む)で構成されている。詳しくは、定着ベルト31は、ニッケルもしくはSUS等の金属材料又はポリイミド(PI)などの樹脂材料で形成された内周側の基材と、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで形成された外周側の離型層によって構成されている。また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
【0030】
上記加圧ローラ32は、芯金32aと、芯金32aの表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等から成る弾性層32bと、弾性層32の表面に設けられたPFA又はPTFE等から成る離型層32cによって構成されている。加圧ローラ32は、加圧手段によって定着ベルト31側へ加圧され定着ベルト31を介してニップ形成部材34に当接している。この加圧ローラ32と定着ベルト31とが圧接する箇所では、加圧ローラ32の弾性層32bが押しつぶされることで、所定の幅の定着ニップN(ニップ部N)が形成されている。また、加圧ローラ32は、モータ等の駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ32が回転駆動すると、その駆動力が定着ニップNで定着ベルト31に伝達され、定着ベルト31が従動回転するようになっている。
【0031】
本実施形態では、加圧ローラ32を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ32の内部にハロゲンヒータ等の加熱源を配設してもよい。また、弾性層が無い場合は、熱容量が小さくなり定着性が向上するが、未定着トナーを押しつぶして定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラが生じる可能性がある。これを防止するには、厚さ100μm以上の弾性層を設けることが望ましい。厚さ100μm以上の弾性層を設けることで、弾性層の弾性変形により微小な凹凸を吸収することができるので、光沢ムラの発生を回避することができるようになる。弾性層32bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ32の内部に加熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト31の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。また、定着ベルト31と加圧ローラ32は、互いに圧接する場合に限らず、加圧を行わず単に接触させるだけの構成とすることも可能である。
【0032】
本実施形態では、ヒータ33はハロゲンヒータである。各ヒータ33は、それぞれの両端部が定着装置6の側板に固定されている。各ヒータ33は、プリンタ本体に設けられた電源部により出力制御されて発熱するように構成されており、その出力制御は、上記温度センサ37による定着ベルト31の表面温度の検知結果に基づいて行われる。このようなヒータ33の出力制御によって、定着ベルト31の温度(定着温度)を所望の温度に設定できるようになっている。また、定着ベルト31を加熱する加熱部材として、ハロゲンヒータ以外に、IH、抵抗発熱体、又はカーボンヒータ等を用いてもよい。
【0033】
上記ニップ形成部材34は、ベースパッド341と、ベースパッド341の表面に設けられた摺動シート(低摩擦シート)340とを有する。ベースパッド341は、定着ベルト31の長手方向に渡って配設されており、加圧ローラ32の加圧力を受けて定着ニップNの形状を決めるものである。また、ベースパッド341は、ステー35によって固定支持されている。これにより、加圧ローラ32による圧力でニップ形成部材34に撓みが生じるのを防止し、加圧ローラ32の軸方向に渡って均一なニップ幅が得られるようにしている。
【0034】
また、ベースパッド341は、強度確保のためにある程度硬い材料で、かつ耐熱温度200℃以上の耐熱性材料で構成されている。これにより、トナー定着温度域で、熱によるニップ形成部材34の変形を防止し、安定した定着ニップNの状態を確保して、出力画質の安定化を図っている。ベースパッド341の材料としては、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの一般的な耐熱性樹脂の他、金属、あるいはセラミックなどを使用することが可能である。
【0035】
摺動シート340は、ベースパッド341の少なくとも定着ベルト31と対向する表面に配設される。これにより、ベースパッド341が摺動シート340を介して間接的に定着ベルト31と接触する。定着ベルト31の回転中は、この摺動シート340に対して定着ベルト31が摺動するため、定着ベルト31に生じる摩擦力が軽減され、定着ベルト31の駆動トルクが低減される。なお、摺動シート340を有しない構成とすることも可能である。
【0036】
定着装置6には、ニップ形成部材34を支持する部材が設けられる。つまり、 加圧ローラ32の加圧方向(図の左右方向)に幅を有する部分を有した部材を、ニップ形成部材34に対して、加圧ローラ32と反対側(図の左側)から当接させることで、ニップ形成部材34を支持する。これにより、加圧ローラ32からの加圧力によるニップ形成部材34の撓み(本実施形態では、特に長手方向の撓み)を抑制することができる。本実施形態では、支持部材としてのステー35が、加圧ローラ32の加圧方向に延在する一対の立ち上がり部35bを有する。
【0037】
ステー35は、ニップ形成部材34の撓み防止機能を満足するために、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成することが望ましい。本実施形態では、ベースパッド341の加圧ローラ32との対向面が平坦面状に形成されており、そのために定着ニップNはストレート形状になっている。定着ニップNをストレート形状にすることで、加圧ローラ32による加圧力を軽減することができる。
【0038】
さらにステー35の強度を確保するために、本実施形態では、ステー35が、ニップ形成部材34と接触し用紙搬送方向(図2の上下方向)に延在するベース部35aと、ベース部35aの用紙搬送方向上流側と下流側の各端部から加圧ローラ32の当接方向(図2の左側)に向かって延びる立ち上がり部35bとを有するように構成している。すなわち、ステー35に立ち上がり部35bを設けることで、ステー35が加圧ローラ32の加圧方向に延在する横長の断面を有するようになり、断面係数が大きくなって、ステー35の機械的強度を向上させることが可能となる。
【0039】
上記反射部材36は、ステー35とヒータ33との間に配設されている。本実施形態では、反射部材36をステー35に固定している。反射部材36の材料としては、アルミニウムやステンレス等を使用することができる。このように反射部材36を配設していることにより、ヒータ33からステー35側に放射された光が定着ベルト31へ反射される。これにより、定着ベルト31に照射される光量を多くすることができ、定着ベルト31を効率良く加熱することが可能となる。また、ヒータ33からの輻射熱がステー35等に伝達されるのを抑制することができるので、省エネルギー化も図れる。
【0040】
なお、定着ベルト31の長手方向両端部には、定着ベルト31とヒータ33との間に、ヒータ33からの熱を遮蔽する遮蔽部材を配設している。これにより、特に、連続通紙時の定着ベルトの非通紙領域における過剰な温度上昇を抑制することができ、定着ベルトの熱による劣化や損傷を防止することができる。
【0041】
以下、図2を参照しつつ、本実施形態に係る定着装置の基本動作について説明する。
プリンタ本体の電源スイッチが投入されると、ヒータ33に電力が供給されると共に、加圧ローラ32が図2中の時計回りに回転駆動を開始する。これにより、定着ベルト31は、加圧ローラ32との摩擦力によって、図2中の反時計回りに従動回転する。
【0042】
その後、上述の画像形成工程により未定着のトナー画像Tが担持された用紙Pが、ガイド板に案内されながら図2の矢印A1方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト31及び加圧ローラ32の定着ニップNに送入される。用紙Pの未定着画像Tが担持された側を定着ベルト31が加熱し、ヒータ33による熱と、定着ベルト31と加圧ローラ32との間の加圧力とによって、用紙Pの表面にトナー画像Tが定着される。
【0043】
トナー画像Tが定着された用紙Pは、定着ニップNから図2中の矢印A2方向に搬出される。定着ニップNの出口近傍に配置された分離部材38によって分離され、さらに下流側へ搬送される。
【0044】
図3に示すように、ニップ形成部材34に、ステー35の側へ突出する突出部34aを設ける。突出部34aは、長手方向に断続的に複数設けられる。また、長手方向に複数設けられた突出部34aの列が、用紙搬送方向に2列設けられる(図5参照)。図3に示すように、突出部34aは、定着ベルト31と加圧ローラ32とが圧接された際に、ニップ形成部材34がステー35に当接する部分である。突出部34aを長手方向に断続的に設けることで、ニップ形成部材34とステー35との接触面積を減らすことができ、ニップ形成部材34とステー35との間の伝熱量を減らすことができる。
【0045】
また、加圧ローラ32の軸部には、その長手方向一方側(より詳しくは加圧ローラ32の長手方向の中央位置よりも一方側で図の右側。以下、単に駆動側とも呼ぶ)に、駆動伝達部材としての駆動ギア39が設けられる。加圧ローラ32は、駆動ギア39を介して、モータなどの駆動源から駆動力を伝達されて回転する。なお図3では、突出部34aのステー35に対する当接関係を始めとして、図の上下方向(加圧ローラ32の加圧方向)に対する各部材の配置を模式的に示すものであり、各部材の形状を適宜簡略化して表示している。また、反射部材36(図2参照)の記載を省略している。
【0046】
ステー35は、その長手方向両端部を側板によって保持される構成のため、加圧ローラ32からの加圧力を受けると、長手方向中央部が撓む。この撓みにより、長手方向中央部で十分な幅の定着ニップNを形成できなくなるおそれがある。
【0047】
そこで本実施形態では、図3に示すように、長手方向端部側から中央部へ向かうに従って、複数の突出部34aの突出高さ(図の上下方向の長さで、加圧ローラ32の加圧方向の長さでもある)が大きくなるように設定している。つまり、ステー35が撓みに応じて突出部34aの突出高さが高くなるように設定されている。これにより、長手方向中央部でステー35をニップ形成部材34に十分に当接させることができ、長手方向に均一な幅の定着ニップNを形成することができる。
【0048】
しかし一方で、このようにニップ形成部材34とステー35が長手方向中央部で当接することにより、ニップ形成部材34が長手方向中央部で高温になることが問題になる。つまり、図4に示すように、加圧ローラ32が定着ベルト31を介してニップ形成部材34やステー35に加圧力Fを加えると、前述のようにステー35は長手方向中央部がヒータ33側へ撓む。つまり、長手方向中央部で、ステー35がヒータ33に接近する。
【0049】
ステー35とヒータ33との間には反射部材36(図2参照)が設けられており、ヒータ33からステー35の側への輻射熱は反射される。しかし、定着装置6に連続通紙された場合等には、定着装置6内全体が暖まるため、ステー35も加熱されて高温になる。特に、金属製で熱伝導率の高いステー35は高温になりやすい。従って、上記のようにステー35の長手方向中央部がヒータ33に接近すると、この部分が特に高温になりやすくなる。また、ステー35の長手方向端部側は、定着装置6の外側へ放熱することができる(図4の矢印B参照)が、長手方向中央部では熱が逃げにくく、この観点でもステー35の長手方向中央部は高温になりやすい。
【0050】
そして前述のように、本実施形態では、突出部34aの長手方向中央部の突出高さを高くすることで、長手方向中央部においてニップ形成部材34とステー35とを十分に接触させている。従って、ステー35の長手方向中央部が高温になると、ステー35に接触するニップ形成部材34が加熱されて、ニップ形成部材34の特に長手方向中央部が高温になる。これにより、ニップ形成部材34が熱変形してしまうおそれがある。そして、ニップ形成部材34の熱変形により、定着装置の駆動時に定着ベルト31の摺動負荷の増大や用紙の搬送不良、ステー35からニップ形成部材34への面圧の低下による定着性の悪化等の不具合を生じてしまう。このような不具合に対して、ニップ形成部材34をより耐熱性の高い材料で形成することも可能であるが、ニップ形成部材34の材料の選択肢を狭めたり、ニップ形成部材34のコストアップになってしまうという別の問題が生じてしまう。
【0051】
上記のような課題に対して、本実施形態では、ニップ形成部材34とステー35との接触面積を、その長手方向にわたって変化させる。つまり、ニップ形成部材34の突出部34aのステー35側の端面であり、ステー35に接触する接触面34a1の面積を長手方向に変化させる。
【0052】
具体的には、図5に示すように、接触面34a1の長手方向中央の用紙搬送方向(図の矢印A1参照)の幅である幅L3を、端部の接触面34a1の幅L1,L2よりも大きくする。また、両端部側の接触面34a1のうち、駆動側(駆動ギア39が設けられる側で、長手方向一方側。図3参照)の接触面34a1の幅L1が、その反対側の接触面34a1の幅L2よりも大きい。なお、ここでいう中央部とは、ニップ形成部材34をその長手方向に3等分した場合の中央の領域を指し、その両側の領域を端部あるいは端部側とする。ただしこれに限らず、定着ベルト31や加圧ローラ32、ステー35、あるいは、定着装置6に通紙される用紙の画像形成領域の中央部や定着ニップNを長手方向に3等分した場合の中央部であってもよい。
【0053】
長手方向中央部の接触面34a1の幅L3を幅L1,L2よりも大きくすることで、中央部での突出部34aとステー35との接触面積を相対的に大きくし、ステー35が突出部34aに加える面圧を小さくすることができる。これにより、長手方向中央部で、ステー35からニップ形成部材34への伝熱を抑制でき、ニップ形成部材34の熱変形を抑制できる。従って、突出部34aの高さを、長手方向端部側から中央部へ向けて高くなるようにして、定着ニップNの面圧を均一化する効果を得ると共に、上記のニップ形成部材34の熱変形を抑制でき、これに起因した上記の用紙搬送不良等の不具合を防止できる。
【0054】
また、駆動時の引き込み力により、加圧ローラ32の駆動ギア39側の加圧力は大きくなる。つまり、モータの駆動力を、駆動ギア39を介して加圧ローラ32に伝達して加圧ローラ32を回転させる際に、定着ベルト31に対する加圧方向の荷重が駆動ギア39から加圧ローラ32に加えられる。従って、上記のように駆動側の接触面34a1の幅L1をその反対側の接触面34a1の幅L2よりも大きくすることで、駆動側におけるステー35からニップ形成部材34への面圧を小さくし、長手方向の一端側と他端側との面圧の差を小さくすることができる。従って、ステー35からニップ形成部材34への面圧を、その長手方向に対してより均一化することができる。ただし、幅L1と幅L2を同じにしてもよい。
【0055】
図5と接触面34a1の用紙搬送方向の幅が異なる変形例を図6に示す。
図6に示すように、本実施形態では、長手方向中央部の接触面34a1の用紙搬送方向の幅L4が端部側の幅L5よりも、中央部の幅L6が端部側の幅L7よりも、それぞれ大きく設けられる。これにより、前述した実施形態と同様、長手方向中央部でのステー35からニップ形成部材34への伝熱を抑制でき、ニップ形成部材34の熱変形を抑制できる。
【0056】
また本実施形態では、幅L4は幅L6よりも大きく、幅L5は幅L7よりも大きく設けられる。つまり、本実施形態では、接触面34a1の長手方向中央部の幅を端部側よりも大きくするのに加えて、用紙搬送方向の下流側の幅L4、L6を用紙搬送方向上流側の幅L5、L7よりも大きくしている。これにより、下流側のステー35からニップ形成部材34への面圧を小さくすることができる。用紙搬送方向の上流側は定着ニップNの入口側、下流側は出口側でもある。以下の説明では、この用紙搬送方向の上流側あるいは下流側を、単に、上流側あるいは下流側とも呼ぶ。
【0057】
上記のニップ形成部材34を適用する構成の一例を、図7を用いて説明する。
図7に示すように、ベースパッド341の用紙搬送方向下流側に、加圧ローラ32側へ突出した凸部341aが設けられる。凸部341aを設けることで、用紙Pの定着ニップNからの分離性を高めることができるが一方で、用紙搬送方向下流側でのステー35からニップ形成部材34への面圧が、上流側よりも大きくなる。
【0058】
このような構成の定着装置に対して、上記のように接触面34a1の下流側の幅を上流側よりも大きくすることで、下流側におけるステー35からニップ形成部材34への面圧を小さくし、用紙搬送方向の上流側と下流側との面圧の差を小さくすることができる。従って、ステー35からニップ形成部材34への面圧を、用紙搬送方向に対してより均一化することができる。
【0059】
以上のように、ステー35がニップ形成部材34に加える面圧の分布に応じて、各接触面34a1の面積を最適化することで、それぞれの位置におけるステー35からニップ形成部材34への面圧を均一化することができる。
【0060】
なお、長手方向中央部の全ての接触面34a1の面積を端部の接触面34a1の面積よりも大きくする必要はなく、その一部だけであってもよい。また、加圧ローラ32の駆動側の接触面34a1の一部の面積を、駆動側と反対側の接触面34a1の面積よりも大きくしてもよいし、用紙搬送方向の下流側の接触面34a1の一部の面積を、下流側の接触面34a1の面積よりも大きくしてもよい。さらに、長手方向端部側から中央部へ向けて、徐々に接触面34a1の面積が大きくなってもよい。
【0061】
次に、本発明を適用する定着装置として、前述した図2の定着装置と異なる構成の定着装置について、順に説明する。以下、図2の定着装置と同一の構成については適宜その説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0062】
図8に、定着装置6の他の実施形態を示す。本実施形態の定着装置6は、加熱部材としてのヒータ33を3本備えている。この場合、ヒータ33ごとに発熱領域を異ならせることで、種々の幅の用紙幅に対応した範囲で定着ベルト31を加熱することが可能となっている。従って、定着装置6の省エネルギー化を図ることができる。また、ニップ形成部材34を囲むように板金41が設けられており、板金41を介してニップ形成部材34がステー35に支持されている。
【0063】
図9に示す定着装置6は、図8の定着装置6に遮光部材40を加えた構成である。遮光部材40は、図10に示すように段付きの形状を有し、用紙Pの各サイズに応じた遮光領域を有する。具体的には、小サイズ(例えばハガキサイズ)の用紙P1の幅H1、中サイズ(例えばA4サイズ)の用紙P2の幅H2、大サイズ(例えばA3サイズ)の用紙P3の幅H3にそれぞれ対応した遮光領域を有する。
【0064】
図11は遮光部材の配置例を示し、上段は斜視図であり、下段は断面構成図である。また(a)図は大サイズ(例えばA3サイズ)の用紙Pが通紙される例であり、(b)は小サイズ(例えばハガキサイズ)の用紙Pが通紙される例である。遮光部材40は、定着ベルト31の内側に沿って非接触で各紙幅に対応した位置に回動し、加熱に不必要な領域を遮光する。
【0065】
遮光部材40を用いて非通紙領域を遮光することにより、紙幅の狭い用紙Pを連続通紙した場合でも、非通紙領域が過昇温状態にならない。また、過昇温を抑えるために生産性を落とさなくてもよい。上記の非通紙領域とは、定着装置6に通紙された用紙外の領域であり、通紙される用紙のサイズによってもその領域は変化する。また、遮光部材40を設けることにより、ヒータ33の本数を減らすことができる。
【0066】
また、上記と異なる定着装置6として、上記の遮光部材40に代えて、ニップ形成部材34の構成により、非通紙領域の過昇温を抑制する構成について説明する。
【0067】
図12に示すように、本実施形態のニップ形成部材34は、熱移動手段としての均熱部材342と、この均熱部材342に備わる摺動シート340と、第1断熱部材343と、第2断熱部材344と、第1吸熱部材345と、第2吸熱部材346とを有する。ニップ形成部材34は、ヒータ33の加熱領域Hに対応した幅で設けられる。図12に通紙される小サイズの用紙P1は、例えばA6サイズの用紙である。
【0068】
均熱部材342は、熱伝導率の高い材料、例えば銅からなり、定着ベルト31の長手方向にわたって形成される。そして、定着ベルト31の非通紙部に過剰に蓄積する熱を吸熱し、長手方向へ熱を移動させることができる。
【0069】
均熱部材342は、摺動シート340を介して定着ベルト31に当接する当接部342aと、用紙Pの搬送方向で定着ニップNの入口側にある曲げ部342bと、定着ニップNの出口側にある曲げ部342cとを有する。曲げ部342b、342cは、それぞれ定着ベルト31の内側に延在して形成されている。
【0070】
曲げ部342bの先端は鋭利な形状を有している。定着ベルト31が回転した際、摺動シート340が摺動方向に引っ張られたとしても、保持部342dが摺動シート340を保持する。定着ベルト31が逆回転する構成の場合は、曲げ部342cの先端にも同様に鋭利な形状を設けることが有効である。
【0071】
第1断熱部材343は、均熱部材342より熱伝導率の低い、例えば樹脂からなる。第1断熱部材343は、長手方向に延在し、長手方向に複数設けられる。具体的には、断熱部材343は、均熱部材342と第2吸熱部材346との間で、長手方向において、第1吸熱部材345が存しない位置に配置されている。第1断熱部材343を有することで、ニップ形成部材34が、定着ベルト31の熱を過剰に吸収することを回避する。その結果、通紙領域での温度落ち込みを防げる。また、ウォームアップ時間の短縮や消費電力の削減を図れる。
【0072】
第2断熱部材344は、均熱部材342より熱伝導率の低い、例えば樹脂からなり、均熱部材342と第1吸熱部材345との間に設けられる。第2断熱部材344を設けることにより、均熱部材342から第1吸熱部材345を介する第2吸熱部材346への熱移動量を減らすことができる。
【0073】
第2吸熱部材346は、第1断熱部材343及び第2断熱部材344よりも熱伝導率の大きい材料からなり、定着ベルト31の長手方向に延在し、第1断熱部材343及び第1吸熱部材345に当接して配置されている。
【0074】
第1吸熱部材345は、第1断熱部材343及び第2断熱部材344よりも熱伝導率の大きい材料からなる。第1吸熱部材345は、長手方向に延在し、長手方向に複数設けられる。具体的には、第1吸熱部材345は、第2断熱部材344と第2吸熱部材346との間に配置されている。特に、第1吸熱部材345は、定着ベルト31の中央領域以外に対応する位置、すなわち、定着ベルト31の非通紙部温度上昇の発生位置に対応して設けられる。
【0075】
本実施形態のニップ形成部材34により、長手方向に伝熱を促進し、定着ベルト31の温度を長手方向により均一化することができる。従って、上記のように通紙領域での温度落ち込みを防止したり、非通紙領域での過昇温を抑制できる。つまり、前述した定着装置6の遮光部材40に代えて非通紙領域での過昇温を抑制でき、遮光部材40およびそれを駆動させる駆動部が不要となり、定着装置6の大幅なコスト削減ができる。
【0076】
これらの定着装置6においても、例えば図3で示したように、ニップ形成部材34に、ステー35の側へ突出し、ステー35に当接する突出部34aを複数設け、長手方向中央部の突出部34aの突出高さを端部側の突出部34aよりも大きくすることができる。これにより、長手方向に均一な幅の定着ニップNを形成することができる。また、長手方向中央部の突出部34aの用紙搬送方向の幅を端部側の幅よりも大きく設ける。これにより、前述した実施形態と同様、長手方向中央部でのステー35からニップ形成部材34への伝熱を抑制でき、ニップ形成部材34の熱変形を抑制できる。また、前述した実施形態と同様、加圧ローラの駆動ギア側の突出部の幅を大きくしたり、用紙搬送方向下流側の突出部の幅を上流側よりも大きくしたりすることができる。このようにニップ形成部材34の接触面34a1の面積を最適化することで、ステー35からニップ形成部材34への面圧を均一化することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0078】
以上の実施形態では、ニップ形成部材に設けられた接触面34a1の用紙搬送方向の幅(図5の上下方向の幅)を変更するものとしたが、長手方向の幅(図5の左右方向の幅)を変更するものとしてもよい。例えば、図13に示すように、長手方向中央部の接触面34a1の長手方向の幅W1を端部側の接触面34a1の長手方向の幅W2よりも大きく設ける。これにより、前述した実施形態と同様、長手方向中央部でのステー35からニップ形成部材34への伝熱を抑制でき、ニップ形成部材34の熱変形を抑制できる。
【0079】
以上の実施形態では、ニップ形成部材34に突出部34aを設ける場合を示したが、ステー35の側に突出部を設けてもよい。例えば、図14に示すように、ステー35は長手方向に複数の突出部35cを有する。そして、各突出部35cのニップ形成部材34側への突出高さは、その長手方向中央部が端部側よりも大きい。これにより、長手方向に均一な幅の定着ニップNを形成することができる。また、長手方向中央部の突出部35cに形成された接触面35c1の用紙搬送方向の幅を端部側の幅よりも大きく設ける。これにより、前述した実施形態と同様、長手方向中央部でのステー35からニップ形成部材34への伝熱を抑制でき、ニップ形成部材34の熱変形を抑制できる。また、前述した実施形態と同様、加圧ローラの駆動ギア側の接触面35c1の幅を大きくしたり、用紙搬送方向下流側の接触面35c1の幅を上流側よりも大きくしたりすることができる。これにより、ステー35からニップ形成部材34への面圧を均一化することができる。従って、ニップ形成部材34の熱変形を抑制できる。
【0080】
本発明に係る画像形成装置は、図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
【0081】
記録媒体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
【0082】
また、本発明は、上記の実施形態で説明したような定着装置に限らず、用紙に塗布された液体などのインクを乾燥させる乾燥装置にも適用可能である。この乾燥装置に本発明を適用することにより、つまり、長手方向中央部での支持部材とニップ形成部材との接触面積を端部よりも大きくすることによりベルト部材に当接するニップ形成部材の熱変形を抑制することができる。また、各接触面(支持部材あるいはニップ形成部材のもう一方に対する接触面)の面積を最適化することで、それぞれの位置における支持部材からニップ形成部材への面圧を均一化することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 画像形成装置
6 定着装置(加熱装置)
31 定着ベルト(定着部材あるいはベルト部材)
32 加圧ローラ(加圧部材あるいは対向部材)
33 ハロゲンヒータ(加熱部材)
34 ニップ形成部材
34a 突出部
35 ステー(支持部材)
39 駆動ギア(駆動伝達部材)
A1 用紙搬送方向
D 長手方向
N 定着ニップ(ニップ部)
P 用紙(記録媒体あるいは被加熱物)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【文献】特開2016-18160号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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