(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ワークの両面研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/013 20120101AFI20240214BHJP
B24B 37/08 20120101ALI20240214BHJP
B24B 37/28 20120101ALI20240214BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240214BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B24B37/013
B24B37/08
B24B37/28
B24B49/12
H01L21/304 622S
H01L21/304 621A
(21)【出願番号】P 2020050736
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 裕司
(72)【発明者】
【氏名】森田 優
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-181632(JP,A)
【文献】特開2017-189849(JP,A)
【文献】特許第6490818(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2008/0099443(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/013
B24B 37/08
B24B 37/28
B24B 49/12
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上定盤及び下定盤を有する回転定盤と、前記回転定盤の中心部に設けられたサンギアと、前記回転定盤の外周部に設けられたインターナルギアと、前記上定盤と前記下定盤との間に設けられ、ワークを保持する1つ以上の孔が設けられたキャリアプレートと、を備えた、ワークの両面研磨装置であって、
前記上定盤又は前記下定盤は、該上定盤又は該下定盤の上面から下面まで貫通した1つ以上の貫通孔を有し、
前記ワークの両面研磨中に、前記ワークの厚さを前記1つ以上の貫通孔からリアルタイムで計測可能な、1つ以上のワーク厚さ計測器をさらに備え、
前記上定盤又は前記下定盤の、前記貫通孔により区画される内周面に、金属製の筒状部材が設けられ、
前記上定盤に設けられた前記筒状部材の下部に設けられた下側窓材、及び、前記上定盤に設けられた前記貫通孔の上側を覆うように設けられた上側窓材、又は、
前記下定盤に設けられた前記筒状部材の上部に設けられた上側窓材、及び、前記下定盤に設けられた前記貫通孔の下側を覆うように設けられた下側窓材をさらに備えており、
前記上側窓材と前記下側窓材とは、別部材であり、
前記上側窓材と前記下側窓材との間に、前記貫通孔が位置することを特徴とする、ワークの両面研磨装置。
【請求項2】
前記上定盤の上部に固定された上部部材、又は、前記下定盤の下部に固定された下部部材をさらに備えた、請求項1に記載のワークの両面研磨装置。
【請求項3】
前記上部部材及び前記下部部材は、SUS製である、請求項2に記載のワークの両面研磨装置。
【請求項4】
前記上部部材の一部が、前記筒状部材の上面上に配置され、前記上側窓材は、前記上部部材に設けられ、又は、
前記下部部材の一部が、前記筒状部材の下面上に配置され、前記下側窓材は、前記下部部材に設けられている、請求項2又は3に記載のワークの両面研磨装置。
【請求項5】
前記貫通孔と外部とを連通する1以上の通気口が設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載のワークの両面研磨装置。
【請求項6】
前記下側窓材は、前記上定盤に設けられた前記筒状部材の下部に接着剤からなる接着層を用いて接着され、又は、
前記上側窓材は、前記下定盤に設けられた前記筒状部材の上部に接着剤からなる接着層を用いて接着されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のワークの両面研磨装置。
【請求項7】
前記上定盤の前記内周面に設けられた前記筒状部材の外周面に凹部が設けられ、該凹部にOリングが配置され、又は、前記下定盤の前記内周面に設けられた前記筒状部材の外周面に凹部が設けられ、該凹部にOリングが配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のワークの両面研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの両面研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研磨に供するワークの典型例であるシリコンウェーハなどの半導体ウェーハの製造において、より高精度なウェーハの平坦度品質や表面粗さ品質を得るために、ウェーハの表裏面を同時に研磨する両面研磨工程が一般的に採用されている。
【0003】
特に近年、半導体素子の微細化と半導体ウェーハの大口径化により、露光時における半導体ウェーハの平坦度要求が厳しくなってきているという背景から、適切なタイミングで研磨を終了させることが重要であり、作業者が研磨時間を調整することにより、それを制御していた。
【0004】
ところが、作業者による研磨時間の調整では、研磨副資材の交換時期や、装置の停止のタイミングのずれなど、研磨環境による影響を大きく受けてしまい、研磨量を必ずしも正確に制御できず、結局作業者の経験に頼るところが大きかった。
【0005】
これに対し、本出願人により、上定盤(又は下定盤)に貫通孔を設け、測定機構を用いて、該貫通孔からワークの厚さを研磨中にリアルタイムで測定する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、貫通孔を設けていることから、汚れが窓材の面上に付着する等して、測定精度が低下し、また、それを防止するためにクリーニングの必要が生じてランニングコストがかかってしまう、という問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、ワークの厚さの測定経路における汚れの付着を抑制することができる、ワークの両面研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)上定盤及び下定盤を有する回転定盤と、前記回転定盤の中心部に設けられたサンギアと、前記回転定盤の外周部に設けられたインターナルギアと、前記上定盤と前記下定盤との間に設けられ、ワークを保持する1つ以上の孔が設けられたキャリアプレートと、を備えた、ワークの両面研磨装置であって、
前記上定盤又は前記下定盤は、該上定盤又は該下定盤の上面から下面まで貫通した1つ以上の貫通孔を有し、
前記ワークの両面研磨中に、前記ワークの厚さを前記1つ以上の貫通孔からリアルタイムで計測可能な、1つ以上のワーク厚さ計測器をさらに備え、
前記上定盤又は前記下定盤の、前記貫通孔により区画される内周面に、金属製の筒状部材が設けられ、
前記上定盤に設けられた前記筒状部材の下部に設けられた下側窓材、及び、前記上定盤に設けられた前記貫通孔の上側を覆うように設けられた上側窓材、又は、
前記下定盤に設けられた前記筒状部材の上部に設けられた上側窓材、及び、前記下定盤に設けられた前記貫通孔の下側を覆うように設けられた下側窓材をさらに備えていることを特徴とする、ワークの両面研磨装置。
【0010】
(2)前記上定盤の上部に固定された上部部材、又は、前記下定盤の下部に固定された下部部材をさらに備えた、上記(1)に記載のワークの両面研磨装置。
【0011】
(3)前記上部部材及び前記下部部材は、SUS製である、上記(2)に記載のワークの両面研磨装置。
【0012】
(4)前記上部部材の一部が、前記筒状部材の上面上に配置され、前記上側窓材は、前記上部部材に設けられ、又は、
前記下部部材の一部が、前記筒状部材の下面上に配置され、前記下側窓材は、前記下部部材に設けられている、上記(2)又は(3)に記載のワークの両面研磨装置。
【0013】
(5)前記貫通孔と外部とを連通する1以上の通気口が設けられている、上記(1)~(4)のいずれかに記載のワークの両面研磨装置。
【0014】
(6)前記下側窓材は、前記上定盤に設けられた前記筒状部材の下部に接着剤からなる接着層を用いて接着され、又は、
前記上側窓材は、前記下定盤に設けられた前記筒状部材の上部に接着剤からなる接着層を用いて接着されている、上記(1)~(5)のいずれかに記載のワークの両面研磨装置。
【0015】
(7)前記上定盤の前記内周面に設けられた前記筒状部材の外周面に凹部が設けられ、該凹部にOリングが配置され、又は、前記下定盤の前記内周面に設けられた前記筒状部材の外周面に凹部が設けられ、該凹部にOリングが配置されている、上記(1)~(6)のいずれかに記載のワークの両面研磨装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ワークの厚さの測定経路における汚れの付着を抑制することができる、ワークの両面研磨装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるワークの両面研磨装置の一例を示す図である。
【
図3】本発明の他の実施形態にかかるワークの両面研磨装置の一例の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態にかかるワークの両面研磨装置の一例を示す図である。
図1に示すように、両面研磨装置1は、上定盤2及びそれに対向する下定盤3を有する回転定盤4と、回転定盤4の回転中心部に設けられたサンギア5と、回転定盤4の外周部に円環状に設けられたインターナルギア6とを備えている。
図1に示すように、上下の回転定盤4の対向面、すなわち、上定盤2の研磨面である下面及び下定盤3の研磨面である上面には、それぞれ研磨パッド7が貼付されている。
【0020】
また、
図1に示すように、この両面研磨装置1は、上定盤2と下定盤3との間に配置されたキャリアプレート9を備えており、このキャリアプレート9は、ワークWを保持する1つ以上の保持孔8を有している。なお、図示例では、この両面研磨装置1は、キャリアプレート9を1つのみ有しているが、複数のキャリアプレート9を有していてもよい。図示例では、保持孔8にワーク(本実施形態ではウェーハ)Wが保持されている。
【0021】
ここで、この両面研磨装置1は、サンギア5とインターナルギア6とを回転させることにより、キャリアプレート9を公転及び自転させて遊星運動させることができる。すなわち、研磨スラリーを供給しながら、キャリアプレート9を遊星運動させ、同時に上定盤2及び下定盤3をキャリアプレート9に対して相対的に回転させることにより、上下の回転定盤4に貼付した研磨パッド7とキャリアプレート9の保持孔8に保持したウェーハWの両面とを摺動させてウェーハWの両面を同時に研磨することができる。
【0022】
さらに、
図1に示すように、本実施形態の両面研磨装置1では、上定盤2は、該上定盤2の上面から研磨面である下面まで貫通した1つ以上の貫通孔10が設けられている。図示例では、貫通孔10は、保持孔8(ウェーハW)の中心付近を通過する位置に1つ配置されている。なお、この例では、貫通孔10は、上定盤2に設けているが、下定盤3に設けてもよく、上定盤2及び下定盤3のいずれかに貫通孔10を1つ以上設ければよい。また、
図1に示す例では、貫通孔10を1つ設けているが、上定盤2の例えば同一円周上に複数配置してもよい。ここで、
図1に示すように、上定盤2に貼付した研磨パッド7にも、貫通孔10に対応する位置に穴11が貫通しており、上定盤2の上面から研磨パッド7の下面まで貫通した状態である。図示例では、穴11の径は、貫通孔10の径より大きくなっているが、小さくすることも、同じとすることもできる。
【0023】
また、この貫通孔10の上方には、ワーク厚さ計測器12を備えており、ウェーハWの両面研磨中に、ウェーハWの厚さを貫通孔10及び穴11を介してリアルタイムに計測することが可能である。なお、ワーク厚さ計測器12は、例えば、波長可変型の赤外線レーザ計測器とすることができる。このような計測器によれば、ウェーハWの表面での反射光と裏面での反射光との干渉を評価して、ウェーハWの厚さを計測することができる。
【0024】
図2は、
図1の要部を示す図である。
図1、
図2に示すように、本実施形態では、上定盤2の、貫通孔10により区画される内周面2aに、金属製(本例ではSUS製)の筒状部材13が設けられている。本例では、筒状部材13の外周面に(環状の)凹部14が設けられ、該凹部14に(例えばゴム製の)Oリング(環状のリング)15が配置され、Oリング15により上定盤2の内周面2aと筒状部材13との間が封止され、研磨スラリーの逆流が防止されている。
【0025】
また、
図1、
図2に示すように、この両面研磨装置1は、上定盤2に設けられた筒状部材13の下部に設けられた下側窓材16をさらに備えている。図示例では、板状の下側窓材16が、筒状部材13の下端に環状に形成された凹部に配置されている。そして、下側窓材16の上面と上記凹部により区画される筒状部材13の下面とが、接着層17によって接着されている。下側窓材16は、例えば、透明なアクリル製のものとすることができる。接着層17は、例えば、シリコーン系又は変成シリコーン系の接着剤からなる接着層を用いることができる。
【0026】
また、
図1、
図2に示すように、この両面研磨装置1は、上定盤2に設けられた貫通孔10の上側を覆うように設けられた上側窓材18をさらに備えている。図示例では、板状の上側窓材18が、筒状部材13の上端に環状に形成された凹部に配置されている。そして、上側窓材18の下面と上記凹部により区画される筒状部材13の上面との間にガスケット19が配置され、後述の上部部材20により押さえ込まれて上側窓材18が固定されている。上側窓材18は、例えば、透明なアクリル製のものとすることができる。ガスケット19は、例えばゴム製のものとすることができ、ガスケット19の厚さは特には限定されないが、例えば1.0~3.0mmのものとすることができる。
【0027】
また、
図1、
図2に示すように、本例では、上定盤2は、上部に上側に突出する突出部2bを有している。そして、この両面研磨装置1は、上定盤2の上部に固定された上部部材20をさらに備えている。図示例では、上部部材20は、上下方向に延在する部分20aと、(貫通孔10の)径方向に延在する部分20bとからなる。図示例では、上定盤2の突出部2bの外側側面(ボルト形状のネジ溝)と上記部分20aの内側側面(ナット形状のネジ溝)とが固定されている。図示例では、筒状部材13は、上端に径方向外側に突出した部分13aを有しており、突出した部分13aと突出部2bとの間に配置されたワッシャー21の厚さを調整することにより、上定盤2の下面と筒状部材13の下面とを位置合わせしつつ、上定盤2の上部と上部部材20との固定の強さを調整することができる。
図1、
図2に示すように、上部部材の一部(図示例では、部分20b)は、筒状部材13の上面上に配置されている。上部部材20は、特には限定されないが、例えばSUS製とすることができる。
以下、本実施形態の両面研磨装置の作用効果について説明する。
【0028】
本実施形態の両面研磨装置1によれば、まず、上記の上定盤2の貫通孔10、研磨パッド7の穴11、下側窓材16、上側窓材18が設けられ、ワーク厚さ計測器12を備えているため、ワーク厚さ計測器12により、上側窓材18、上定盤2の貫通孔10、研磨パッド7の穴11、下側窓材16を介して、両面研磨中にリアルタイムでワーク(本例ではウェーハ)の厚さの計測を行うことができる。本実施形態の両面研磨装置1によれば、上側窓材18が設けられているため、ワークの厚さの測定経路である下側窓材16における汚れ(例えば塵等)の付着を抑制することができる。
【0029】
さらに、本実施形態の両面研磨装置1によれば、上定盤2の、貫通孔10により区画される内周面2aに、金属製(本例ではSUS製)の筒状部材13が設けられ、上定盤2に設けられた筒状部材13の下部に設けられた下側窓材16、及び、上定盤2に設けられた貫通孔10の上側を覆うように設けられた上側窓材18を設けている。このように、下側窓材16及び上側窓材18が、定盤にではなく、筒状部材13に設けられていることから、窓材を交換することが容易であり、クリーニングのためのランニングコストを抑えることもでき、さらに、接着剤、例えばシリコーン系又は変成シリコーン系の接着剤等の強力な接着剤を用いて研磨スラリーの逆流をより一層抑制し、また、窓材の剥離も抑制することができる。さらに、筒状部材13は、金属製(本例ではSUS製)であるため、加工精度が良く、(例えば窓材を水平に配置するといったような)測定精度を向上させるような正確な加工が可能である。
【0030】
図3は、本発明の他の実施形態にかかるワークの両面研磨装置の一例の要部を示す図である。この他の実施形態にかかる両面研磨装置は、基本構成は、
図1に示した両面研磨装置と同様であるが、上側窓材18が(筒状部材13ではなく)上部部材20に設けられている点、及び、貫通孔10と外部とを連通する1以上の(図示例で1つの)通気口22が(図示例では、上部部材20に)設けられている点で、
図1に示した両面研磨装置と異なっている。
【0031】
図示例では、板状の上側窓材18が、上部部材20の上端に環状に形成された凹部に配置されている。上側窓材18の下面と上記凹部により区画される上部部材20(部分20b)の上面とが、接着層23によって接着されている。
図1の場合と同様に、上側窓材18は、例えば、透明なアクリル製のものとすることができ、また、接着層23は、例えば、シリコーン系又は変成シリコーン系の接着剤からなる接着層を用いることができる。
【0032】
この他の実施形態の両面研磨装置によっても、まず、上記の上定盤2の貫通孔10、研磨パッド7の穴11、下側窓材16、上側窓材18が設けられ、ワーク厚さ計測器12を備えているため、ワーク厚さ計測器12により、上側窓材18、上定盤2の貫通孔10、研磨パッド7の穴11、下側窓材16を介して、両面研磨中にリアルタイムでワーク(本例ではウェーハ)の厚さの計測を行うことができる。この他の実施形態の両面研磨装置1によっても、上側窓材18が設けられているため、ワークの厚さの測定経路である下側窓材16における汚れ(例えば塵等)の付着を抑制することができる。
【0033】
さらに、
図3に示した実施形態でも、下側窓材16及び上側窓材18が、定盤にではなく、筒状部材13及び上部部材20にそれぞれ設けられていることから、窓材を交換することが容易であり、クリーニングのためのランニングコストを抑えることもでき、さらに、接着剤、例えばシリコーン系又は変成シリコーン系の接着剤等の強力な接着剤を用いて研磨スラリーの逆流をより一層抑制し、また、窓材の剥離も抑制することができる。さらに、筒状部材13は、金属製(本例ではSUS製)であるため、加工精度が良く、(例えば窓材を水平に配置するといったような)測定精度を向上させるような正確な加工が可能である。
【0034】
ところで、本発明者らが検討したところ、
図1、
図3に示したような、上側窓材18及び下側窓材16を有する構成においては、ワークの厚さの測定経路に曇りが発生するおそれがあることも判明した。これは、金属(SUS)部材の熱伝導率が高く、また、上側窓材16及び下側窓材18で密閉された構造となっているため、両面研磨でワークと研磨パッドとが摺動することにより生じる熱が、貫通孔10においてこもりやすいことに起因することが考えられた。
そこで、
図3に示した実施形態にように、貫通孔10と外部とを連通する1以上の通気口22を設けることにより、曇りの原因となる蒸気等を通気口22から逃がすことができ、また、そもそも熱がこもらないようにして曇りの発生自体を抑制することもできる。これにより、ワークの厚さの測定精度が低下してしまうのを抑制することができる。
【0035】
ここで、両面研磨装置1は、上定盤2の上部に固定された上部部材20、又は、下定盤3の下部に固定された下部部材をさらに備えていることが好ましい。
図1~
図3に示した例では、両面研磨装置1は、上定盤2の上部の突出部2bに固定された上部部材20を備えている。このように上部部材20(又は下部部材)を上定盤2の上部(又は下定盤3の下部)に固定することで、上側窓材18(又は下側窓材16)を取り外し可能であるようにしつつ、貫通孔の上側(又は下側)を覆うように設けることができる。なお、上記の例では、定盤と(上部又は下部)部材とを固定する手段としてボルトとナットを例示したが、定盤と(上部又は下部)部材とを、互いに嵌合する相補的な形状を有する他のものとすることもできる。また、上部部材及び下部部材は、SUS製であることが好ましい。加工が容易であるからである。
【0036】
また、上部部材20の一部が、筒状部材13の上面上に配置され、上側窓材18は、上部部材に設けられ、又は、下部部材の一部が、筒状部材13の下面上に配置され、下側窓材16は、下部部材に設けられていることも好ましい。
【0037】
また、貫通孔10と外部とを連通する1以上の通気口22が設けられていることが好ましい。貫通孔10における曇りを防止することができるからである。なお、
図3においては、上部部材20に貫通孔22を設けていたが、他の部材に設けても良く、例えば筒状部材13に設けることもできる。また、
図1に示した実施形態では、貫通孔10を有していないが、この場合も例えば筒状部材13等に貫通孔10を設けることができる。
【0038】
また、下側窓材16は、上定盤2に設けられた筒状部材13の下部に、接着剤(例えばシリコーン系又は変成シリコーン系の接着剤)からなる接着層を用いて接着され、又は、上側窓材18は、下定盤3に設けられた筒状部材13の上部に、接着剤(例えばシリコーン系又は変成シリコーン系の接着剤)からなる接着層を用いて接着されていることが好ましい。定盤に接着剤(特にシリコーン系又は変成シリコーン系の接着剤等の強力な接着剤)を用いると、剥離の際の作業が非常に困難であるが、筒状部材であれば、接着剤(例えばシリコーン系又は変成シリコーン系の接着剤)を用いても、剥離の際の作業性に大きな影響を与えずに済む。なお、シリコーン系又は変成シリコーン系の接着剤としては、特には限定されないが、例えば、セメダイン社製のスーパーシールを例示することができる。あるいは、以下のように、接着剤を用いないこともできる。すなわち、特に筒状部材13や上部部材20(下部部材)がSUS製である場合には、加工が容易であるため、筒状部材13や上部部材20(下部部材)を例えば窓材との嵌合が可能となるように加工を施し、窓材と筒状部材や上部部材(下部部材)とを嵌合させることにより、窓材を固定しつつも、交換が容易な状態とすることもできる。
【0039】
また、上定盤2の内周面に設けられた筒状部材13の外周面に凹部14が設けられ、該凹部にOリング15が配置され、又は、下定盤3の内周面に設けられた筒状部材13の外周面に凹部14が設けられ、該凹部14にOリング15が配置されていることが好ましい。Oリング15により定盤2(3)の内周面と筒状部材13との間を封止して、研磨スラリーの逆流を防止することができるからである。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではない。特に、
図1~
図3は、上定盤2に貫通孔10を設ける場合について説明したが、下定盤3に貫通孔10を設ける場合であっても同様に本発明を適用することができることが明らかである。一例を述べると、下定盤3の、貫通孔10により区画される内周面に、金属製(例えばSUS製)の筒状部材13が設けられていても良い。また、下定盤3に設けられた筒状部材13の上部に設けられた上側窓材18、及び、下定盤3に設けられた貫通孔10の下側を覆うように設けられた下側窓材16をさらに備えていても良い。また、下定盤3の下部に固定された下部部材をさらに備えていても良い。下部部材は、SUS製であっても良い。下部部材の一部が、筒状部材13の下面上に配置され、下側窓材16は、下部部材に設けられていても良い。上側窓材18は、下定盤に設けられた筒状部材13の上部に、接着剤(例えばシリコーン系又は変成シリコーン系の接着剤)からなる接着層を用いて接着されていても良い。下定盤3の内周面に設けられた筒状部材13の外周面に凹部14が設けられ、該凹部14にOリング15が配置されていても良い。
【符号の説明】
【0041】
1:両面研磨装置、
2:上定盤、
3:下定盤、
4:回転定盤、
5:サンギア、
6:インターナルギア、
7:研磨パッド、
8:保持孔、
9:キャリアプレート、
10:貫通孔、
11:穴、
12:ワーク厚さ計測器、
13:筒状部材、
14:凹部、
15:Oリング、
16:下側窓材、
17:接着層、
18:上側窓材、
19:ガスケット、
20:ワッシャー、
21:上部部材、
22:通気口、
23:接着層