(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】変性ポリイソシアネート組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/72 20060101AFI20240214BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20240214BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20240214BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20240214BHJP
C08G 18/78 20060101ALI20240214BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20240214BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C08G18/72 050
C08G18/79 020
C08G18/73
C08G18/10
C08G18/78 037
C08G18/32 012
C09D175/04
(21)【出願番号】P 2020052110
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2019234271
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 優
(72)【発明者】
【氏名】堀口 健二
(72)【発明者】
【氏名】野口 周人
【審査官】山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/181798(WO,A1)
【文献】特開2006-016430(JP,A)
【文献】特開2019-163428(JP,A)
【文献】特開2019-199551(JP,A)
【文献】特開2018-021151(JP,A)
【文献】特開2019-218437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00-18/87;71/00-71/04
C09D1/00-10/00;101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート型ポリイソシアネート(A)、及びヘキサメチレンジイソシアネートモノマーを含むヘキサメチレンジイソシアネート誘導体と環状基を有する分子量300以下のジオールとのアダクト体(B)を含むポリイソシアネート組成物であって、
ポリイソシアネート組成物中のイソシアヌレート基とウレタン基とのモル比が、イソシアヌレート基/ウレタン基=50/50~95/5であり、
ポリイソシアネート組成物中のイソシアヌレート基とウレタン基との合計の割合が、前記ポリイソシアネート組成物におけるイソシアネート基
が反応して生成した官能基の合計の75~100モル%であり、かつ、
ポリイソシアネート組成物の平均
イソシアネート基数が3.4~4.4であることを特徴とする、ポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
環状基を有する分子量300以下のジオールが水素化ビスフェノールAであることを特徴とする、請求項1に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
モノオールから誘導されたアロファネート基を有するポリイソシアネートを、ポリイソシアネート組成物中に25モル%以下含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のポリイソシアネート組成物とポリオールとからなるポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のポリウレタン樹脂組成物を含む塗料組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の塗料組成物から形成された塗膜。
【請求項7】
請求項6に記載の塗膜を少なくとも一層含む、複層塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ポリイソシアネート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1,6-ヘキサメチレンジイソアネート(以下HDIという)などの脂肪族イソシアネートや、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIという)などの脂環族イソシアネートより誘導される無黄変ポリイソシアネートは、耐候性に優れていることから塗料や接着剤の硬化剤として用いられている。中でもイソシアヌレート結合を含有するポリイソシアネートタイプが化学的、熱的安定性が高く、特に耐候性、耐熱性、耐久性に優れているため、その用途に応じて幅広く使用されている。
【0003】
一方、塗料等に用いる場合、得られる塗膜の強度も必要であることから、特にIPDIから誘導されるポリイソシアヌレートを用いてきた(例えば特許文献1)。
【0004】
しかしながら、塗膜の高強度化に伴い、高強度と相反する特性である基材への追従性が損なわれやすく、また、塗膜の擦り傷に対する耐性についても改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した背景技術に鑑みてなされたものであり、基材追従性、密着性に優れるだけでなく、耐擦り傷性にも優れる硬化塗膜を得ることができるポリイソシアネート組成物、およびこれを硬化剤とした塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、検討を重ねた結果、HDIのヌレート型ポリイソシアネート、及びHDIモノマーを含むHDI誘導体と環状基を有する分子量300以下のジオールとのアダクト体を含み、平均官能基数が特定の数値範囲であるポリイソシアネート組成物を用いることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、以下の実施形態を含むものである。
【0009】
[1]HDIのヌレート型ポリイソシアネート(A)、及びHDIモノマーを含むHDI誘導体と環状基を有する分子量300以下のジオールとのアダクト体(B)を含むポリイソシアネート組成物であって、ポリイソシアネート組成物中のイソシアヌレート基とウレタン基とのモル比が、イソシアヌレート基/ウレタン基=50/50~95/5であり、ポリイソシアネート組成物中のイソシアヌレート基とウレタン基との合計の割合が、前記ポリイソシアネート組成物におけるイソシアネート基残基中の官能基の合計の75~100モル%であり、かつ、ポリイソシアネート組成物の平均官能基数が3.4~4.4であることを特徴とする、ポリイソシアネート組成物。
【0010】
[2]環状基を有する分子量300以下のジオールが水素化ビスフェノールAであることを特徴とする、上記[1]に記載のポリイソシアネート組成物。
【0011】
[3]モノオールから誘導されたアロファネート基を有するポリイソシアネートを、ポリイソシアネート組成物中に25モル%以下含むことを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載のポリイソシアネート組成物。
【0012】
[4]上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のポリイソシアネート組成物とポリオールとからなるポリウレタン樹脂組成物。
【0013】
[5]上記[4]に記載のポリウレタン樹脂組成物を含む塗料組成物。
【0014】
[6]上記[5]に記載の塗料組成物から形成された塗膜。
【0015】
[7]上記[6]に記載の塗膜を少なくとも一層含む、複層塗膜。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリイソシアネート組成物は、硬化塗膜の硬度、基材追従性、耐擦り傷性などの塗膜性能に優れるポリイソシアネート組成物、およびこれを硬化剤とした塗料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のポリイソシアネート組成物は、HDIのヌレート型ポリイソシアネート(A)、及びHDIモノマーを含むHDI誘導体と環状基を有する分子量300以下のジオールとのアダクト体(B)を含むものである。
【0018】
本発明のポリイソシアネート組成物に用いるHDIは、脂肪族ジイソシアネートモノマー(以下、単に脂肪族ジイソシアネートとも言う。)の一種であり、その構造中にベンゼン環を含まないジイソシアネート化合物である。脂肪族ジイソシアネートとしては、HDIの他、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等を挙げることができる。HDIは単独で使用または他の脂肪族ジイソシアネートと併用してもよく、イソホロンジイソシアネートやノルボルネンジイソシアネートに代表される脂環族ジイソシアネートと併用してもよい。
【0019】
本発明におけるHDIのヌレート型ポリイソシアネート(A)(以下、(A)成分、又は(A)とも言う。)は、HDIモノマー3分子が環化重合したものである。なお、このヌレート型ポリイソシアネートは、5量化、多量化したイソシアヌレート基を有するポリイソシアネートとなる場合がある。
【0020】
次に、本発明におけるHDIモノマーを含むHDI誘導体(B1)(以下、(B1)成分とも言う。)と、環状基を有する分子量300以下のジオール(B2)(以下、単に(B2)成分とも言う。)とのアダクト体(B)(以下、単に(B)成分、又は(B)とも言う。)について説明する。
【0021】
(B1)成分とは、HDIモノマーと、HDIのヌレート体及びHDIのアロファネート体等のHDI誘導体とを含むものである。
【0022】
(B2)成分とは、分子中に芳香環、脂環、複素環等の環状基を有するジオールである。
【0023】
このような環状基を有するジオールとしては、例えばビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、ナフタレンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、イソソルビド、2,4-ジヒドロキシピリジン、2,5-ジヒドロキシ-1,4-ジチアン等が挙げられる。なかでも、耐候性の面から脂環族が好ましく、水素化ビスフェノールAが特に好ましい。
【0024】
以上のような(B1)成分と(B2)成分とが反応し、ウレタン結合を生成することで、(B)成分となる。
【0025】
本発明におけるポリイソシアネート組成物中のイソシアヌレート基とウレタン基とのモル比は、イソシアネート基/ウレタン基=50/50~95/5であり、好ましくは58/42~92/8である。ポリイソシアネート組成物中のイソシアヌレート基とウレタン基との合計の割合は、ポリイソシアネート組成物におけるイソシアネート基残基中の官能基の合計の75~100モル%であり、75~99モル%が好ましい。また、(A)成分と(B)成分とを含むポリイソシアネート組成物の平均官能基数は、3.4~4.4であり、好ましくは3.5~4.2である。下限値未満の場合は、耐擦り傷性低下の恐れがあり、上限値を超えると作業性の悪化を招く恐れがある。
【0026】
ポリイソシアネート組成物中のイソシアヌレート基とウレタン基とのモル比、ポリイソシアネート組成物中のイソシアヌレート基とウレタン基との合計の割合、及びポリイソシアネート組成物の平均官能基数を上記の通りとすることで、高強度、高基材追従性、高耐擦り傷性を有する塗膜を得ることができる。
【0027】
また、本発明におけるポリイソシアネート組成物には、モノオールから誘導されたアロファネート基を有するポリイソシアネートを含んでよい。アロファネート基を有するポリイソシアネートは、ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基残基中の官能基に対してアロファネート基として25モル%以下含むことが好ましい。また、1モル%以上含むことも好適である。前記ポリイソシアネートを含むことで、ポリイソシアネート組成物を低粘度化することができ、塗工時の作業性がより改善される。しかし、25モル%を超えると塗膜の硬度が不足する恐れがある。
【0028】
前記アロファネート基を有するポリイソシアネートを得るにあたり、使用できるモノオールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、n-ヘキサノール、2-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、3,3,5-トリメチル-1-ヘキサノール、n-トリデカノール、2-トリデカノール、2-オクチルドデカノール、ペンタデカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール等のモノアルコールが挙げられる。これらの中でも、2-エチルヘキサノール、メタノール、シクロヘキサンメタノールが好ましい。
【0029】
次に、本発明のポリイソシアネート組成物の具体的な製造方法について説明する。
【0030】
第1工程では、HDIとモノアルコールとを、水酸基に対してイソシアネート基が過剰になる量を仕込んで、有機溶剤の存在下、又は非存在下、20~120℃でウレタン化反応させてイソシアネート基末端プレポリマーIを製造する。ここで、ウレタン化反応の目安としては、中和滴定法によるイソシアネート基含有量と屈折率上昇値により完結の有無を判断する。
【0031】
第2工程では、イソシアネート基末端プレポリマーIに触媒を仕込み、有機溶剤の存在下または非存在下、目的とするイソシアネート基含有量、及び分子量になるまで、50~150℃にてイソシアヌレート化およびアロファネート化を行い、イソシアネート基末端プレポリマーIIを製造する。
【0032】
第3工程では、イソシアネート基末端プレポリマーIIに反応停止剤を添加することによって、反応の停止を行う。
【0033】
第4工程では、イソシアネート基末端プレポリマーIIに水酸基含有化合物を、水酸基に対してイソシアネート基が過剰になる量を仕込んで、20~150℃でウレタン化反応させてイソシアネート基末端プレポリマーIIIを製造する。ここでウレタン化反応の目安としては、中和滴定法によるイソシアネート基含有量と屈折率上昇値により完結の有無を判断する。また、市販されているヌレート型ポリイソシアネート(例えば、コロネートHXLV(商品名)、東ソー社製。)をHDIと混合したものを、前記イソシアネート基末端プレポリマーIIとして使用することもできる。その場合、第2工程に示した反応停止剤の添加は不要である。
【0034】
これら第1工程~第4工程は、窒素ガス、若しくは、乾燥空気気流下で反応を進行させる。
【0035】
第5工程では、イソシアネート基末端プレポリマーIIIを薄膜蒸留又は溶剤抽出によって、遊離のHDIの含有量が1質量%未満になるまで除去する。
【0036】
ここで、第2工程における触媒としては、4級アンモニウム塩やカルボン酸金属塩などを用いることができる。
【0037】
4級アンモニウム塩としては、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム・オクチル酸塩(DABCO TMR、三共エアープロダクツ社製)や、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラブチルチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウム炭酸塩、メチルトリエチルアンモニウム炭酸塩、エチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、プロピルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ブチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ペンチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ヘキシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ヘプチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、オクチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ノニルトリメチルアンモニウム炭酸塩、デシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、デシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ウンデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ドデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、トリデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、テトラデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム炭酸塩、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、1-メチル1-アザニア-4-メチルピペリジニウム炭酸塩などが挙げられる。また、カルボン酸金属塩としては、例えば酢酸、プロピオン酸、吉草酸、酪酸、ウンデシル酸、カプリン酸、オクチル酸、ミリスチル酸等のカルボン酸の亜鉛塩、スズ塩、ジルコニウム塩等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
第3工程における反応停止剤としては、触媒を失活させる作用があるものであり、具体的には、リン酸、塩酸等の無機酸、スルホン酸基、スルファミン酸基等を有する有機酸およびこれらのエステル類、アシルハライド等公知の化合物が使用される。これらの反応停止剤は、単独または2種以上を併用することができる。尚、添加時期は、反応終了後、速やかな添加が好ましい。
【0039】
また、反応停止剤の添加量は、反応停止剤や使用した触媒の種類によって異なるが、触媒の0.5~10当量となるのが好ましく、0.8~5.0当量が特に好ましい。反応停止剤が下限未満の場合には、得られるポリイソシアネート組成物の貯蔵安定性が低下しやすく、上限を超える場合はポリイソシアネート組成物が着色する恐れがある。
【0040】
第1、および第4工程における「イソシアネート基が過剰になる量」とは、原料仕込みの際、有機ジイソシアネートのイソシアネート基とジオールの水酸基とのモル比が、R=イソシアネート基/水酸基で3~100になるように仕込むことが好ましく、R=5~100になるように仕込むことがさらに好ましい。下限未満の場合には、反応生成物の分子量が高くなり、高粘度化及びゲル化が生じる恐れがある。上限を超える場合には、製品収率が下がり、生産性の低下を招く恐れや、十分な塗膜強度が得られない恐れがある。
【0041】
また、ウレタン化反応の反応温度は、20~150℃が好ましく、60~130℃がさらに好ましい。尚、ウレタン化反応の際、公知のウレタン化触媒を用いることができる。
【0042】
ウレタン化反応の反応時間は、触媒の有無、種類、および温度により異なるが、一般には10時間以内、好ましくは1~5時間で十分である。
【0043】
第1~第4工程においては、有機溶媒等を含まずに反応を行う方法や有機溶媒の存在下で反応を行う方法が適宜選ばれる。
【0044】
有機溶媒の存在下で反応を行う場合には、反応に影響を与えない有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒としては、例えばオクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素類、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル類、ジオキサン等のエーテル類、ヨウ化メチレン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミド等の極性非プロトン溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
反応で使用した有機溶媒は、第5工程における遊離のHDIの除去時に同時に除去される。
【0046】
第5工程は精製工程であり、例えば、10~100Paの高真空下、120~150℃で薄膜蒸留による除去法や有機溶剤による抽出法により、反応混合物中に存在している遊離の未反応のHDIの残留含有率を1質量%以下にする。尚、HDIの残留含有率が上限値を超える場合は、臭気の発生や貯蔵安定性の低下を招く恐れがある。
【0047】
精製して得られたポリイソシアネート組成物は、ポットライフの延長や塗料組成物の一液化を目的として、公知のブロック剤を用いてブロックイソシアネートとすることも可能である。これにより、ブロック化されたポリイソシアネートは、常温時は不活性であるが、加熱することでブロック剤が解離し、再びイソシアネート基が活性化することで、活性水素基と反応する潜在的な機能を付加することができる。
【0048】
本発明に用いることができるブロック剤としては、活性水素を分子内に1個有する化合物であり、例えば、アルコール系、アルキルフェノール系、フェノール系、活性メチレン、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系、イミド系、ピラゾール系化合物等を挙げることができる。
【0049】
一連の反応で得られたポリイソシアネート組成物は、ポリオールを配合することによって、本発明のポリウレタン樹脂組成物を得ることができる。
【0050】
ここで、本発明のポリウレタン樹脂組成物に使用されるポリオールとしては、特に限定されるものではなく、イソシアネート基との反応基として活性水素基を含有する化合物であり、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオール、2種類以上のポリオールのエステル交換物、及びポリイソシアネートとウレタン化反応した水酸基末端プレポリマー等が好適に用いられ、これらは1種類又は2種類以上の混合物として使用することもできる。
【0051】
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールとしては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、α-ハイドロムコン酸、β-ハイドロムコン酸、α-ブチル-α-エチルグルタル酸、α,β-ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸またはこれらの無水物等の1種類以上と、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の分子量500以下の低分子ポリオール類の1種類以上との縮重合反応から得られるものを挙げることができる。また、ε-カプロラクトン、アルキル置換ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、アルキル置換δ-バレロラクトン等の環状エステル(いわゆるラクトン)モノマーの開環重合から得られるラクトン系ポリエステルポリオール等を挙げることができる。更に、低分子ポリオールの一部をヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等の低分子ポリアミンや低分子アミノアルコールに代えて得られるポリエステル-アミドポリオールを使用することもできる。
【0052】
<ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類、またはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等の低分子ポリアミン類等のような活性水素基を2個以上、好ましくは2~3個有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のようなアルキレンオキサイド類を付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオール、或いはメチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマーを開環重合することで得られるポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0053】
<ポリカーボネートポリオール>
ポリカーボネートポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオールの1種類以上と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート、テトラヒドロナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート類との脱アルコール反応や脱フェノール反応から得られるものを挙げることができる。
【0054】
また、ポリカーボネートポリオールとポリエステルポリオールと低分子ポリオールとのエステル交換反応により得られたポリオールも好適に用いることができる。
【0055】
<ポリオレフィンポリオール>
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等を挙げることができる。
【0056】
<アクリルポリオール>
アクリルポリオールとしては、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル〔以下(メタ)アクリル酸エステルという〕と、反応点となりうる少なくとも分子内に1個以上の水酸基を有するアクリル酸ヒドロキシ化合物及び/又はメタクリル酸ヒドロキシ化合物〔以下(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物という〕と、重合開始剤とを熱エネルギーや紫外線または電子線などの光エネルギー等を使用し、アクリルモノマーを共重合したものを挙げることができる。
【0057】
<(メタ)アクリル酸エステル>
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば炭素数1~20のアルキルエステルを挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の脂環属アルコールとのエステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル等を挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルは単独または2種類以上組み合わせて使用しても良い。
【0058】
<(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物>
(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物としては、例えばポリイソシアネートとの反応点となりうる少なくとも分子内に1個以上の水酸基を有しており、具体的には、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のアクリル酸ヒドロキシ化合物等が挙げられる。また、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等のメタクリル酸ヒドロキシ化合物が挙げられる。これら(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物は、単独または2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0059】
<シリコーンポリオール>
シリコーンポリオールとしては、例えばγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を重合したビニル基含有シリコーン化合物、及び分子中に少なくとも1個の末端水酸基を有する、α,ω-ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、α,ω-ジヒドロキシポリジフェニルシロキサン等のポリシロキサンを挙げることができる。
【0060】
<ヒマシ油系ポリオール>
ヒマシ油系ポリオールとしては、例えばヒマシ油脂肪酸とポリオールとの反応により得られる線状または分岐状ポリエステルポリオールが挙げられる。また、脱水ヒマシ油、一部分を脱水した部分脱水ヒマシ油、水素を付加させた水添ヒマシ油も使用することができる。
【0061】
<フッ素系ポリオール>
フッ素系ポリオールとしては、例えば必須成分として含フッ素モノマーとヒドロキシ基を有するモノマーとの共重合反応により得られる線状または分岐状のポリオールを挙げることができる。ここで、含フッ素モノマーとしては、フルオロオレフィンであることが好ましく、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロメチルトリフルオロエチレンが挙げられる。また、ヒドロキシル基を有するモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル、ヒドロキシアルキルクロトン酸ビニル等のヒドロキシル基含有カルボン酸ビニル又はアリルエステル等のヒドロキシル基を有するモノマーが挙げられる。
【0062】
また、ポリオールは、1分子中の活性水素基数(平均官能基数)が1.9~6.0であることが好ましい。活性水素基数が下限値未満の場合には、塗膜物性が低下する恐れがある。また、上限値を超える場合には、密着性が低下する恐れがある。
【0063】
また、ポリオールの数平均分子量は、250~50000の範囲にあることが好ましい。下限値未満の場合には、密着性低下の恐れがあり、上限値を超えると低極性有機溶剤に対する溶解性の低下や密着性低下を招く恐れがある。
【0064】
また、本発明のポリウレタン樹脂組成物は、塗料組成物として好適に用いることができる。塗料組成物中のポリイソシアネート組成物と、ポリオールとの配合の割合は、特に限定するものではないが、イソシアネート組成物中のイソシアネート基とポリオール中の水酸基のモル比が、R=イソシアネート基/水酸基で0.5~2.5となるように配合することが好ましい。下限値未満の場合には水酸基が過剰になり、密着性の低下を招く恐れがある。また、架橋密度が低下し耐久性の低下や塗膜の機械的強度が低下する恐れがある。上限値を超える場合にはイソシアネート基が過剰になり、空気中の水分と反応し、塗膜の膨れやこれに伴う密着性の低下を生じる恐れがある。
【0065】
また、希釈溶剤として使用する有機溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類等からなる群から、目的及び用途に応じて適宜選択して使用することができる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
また、塗料組成物は、ポットライフ、硬化条件、及び作業条件等を考慮し、適宜公知のウレタン化触媒を用いることができる。具体的には、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機金属化合物や、トリエチレンジアミンやトリエチルアミン等の有機アミンやその塩を選択して用いる。これらの触媒は、単独または2種以上併用することができる。
【0067】
また、塗料組成物の硬化条件としては、特に限定されるものではないが、硬化温度が-5~120℃、湿度が10~95%RH、養生時間が0.5~168時間であることが好ましい。
【0068】
本発明によって得られた塗料組成物には、必要に応じて、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、溶剤、難燃剤、加水分解抑制剤、潤滑剤、可塑剤、充填材、帯電防止剤、分散剤、触媒、貯蔵安定剤、界面活性剤、レベリング剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0069】
また、本発明によって得られた塗料組成物は、スプレー、刷毛、浸漬、コーター等の公知の方法により被着体の表面上に塗布され、塗膜を形成する。
【0070】
ここで被着体は特に限定されるものではなく、ステンレス、リン酸処理鋼、亜鉛鋼、鉄、銅、アルミニウム、真鍮、ガラス、スレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート-ABS樹脂、6-ナイロン樹脂、6,6-ナイロン樹脂、MXD6ナイロン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリアセタール樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、NBR樹脂、クロロプレン樹脂、SBR樹脂、SEBS樹脂などの素材で成形された被着体、コロナ放電処理やその他表面処理を施されたポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、または前記被着体表面に中間形成となりうる塗膜層が形成された被着体を用いることができる。
【0071】
被着体表層に形成される塗膜の膜厚は、リコート性や耐久性に優れるため、被着体に少なくとも10μmの膜厚を形成すれば良い。膜厚が10μm未満である場合には耐久性が低下し、衝撃により塗膜の破れ等を生じる恐れがある。
【0072】
また、複層塗膜を作成する際、下層に使用する樹脂としては、例えばエポキシ、アルキド、メラミン、アクリル、ウレタン等の樹脂を用いることができ、水性樹脂であることが好ましい。複層塗膜の膜厚は特に限定されるものではないが、少なくとも乾燥塗膜として10μmの膜厚を形成することが好ましい。ここでいう複層塗膜とは、前記下層に用いる樹脂をスプレー、浸漬、コーター等の公知の方法により被着体の表面に塗布して塗膜層を少なくとも一層形成し、その上に本発明のポリイソシアネート組成物を含む塗料組成物をスプレー、浸漬、コーター等の公知の方法により塗布して形成された二層以上の塗膜層を有する塗膜である。
【実施例】
【0073】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、実施例における%表記は特に断りのない限り質量基準である。
【0074】
<ポリイソシアネート組成物の合成>
<実施例1>
攪拌機、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI(東ソー社製、NCO含量:49.9質量%)を976.5g、2-エチルヘキサノール(オクタノール(商品名)、KHネオケム社製。以下、2-EHOHという)を1.0g仕込み、これを60℃に加熱し、イソシアヌレート化及びアロファネート化触媒であるトリメチルオクチルアンモニウムメチル炭酸塩(2-エチルヘキサノール10%希釈)1gを添加し、60℃にて表1に示す所定の反応転化率に達するまで反応させた後、反応停止剤である酸性リン酸エステル(JP-508(商品名)、城北化学工業社製。以下、JP-508という。)0.2gを添加し、60℃で1時間停止反応を行い、反応生成物C-1を得た。続いて、得られたC-1に、水素化ビスフェノールA(商品名、丸善石油化学社製。以下、HBPAという。)を21.5g仕込み、これらを撹拌しながら120℃に加熱し、所定の反応転化率に達するまでウレタン化反応させ反応生成物D-1を得た。D-1から、薄膜蒸留(条件:140℃,0.04kPa)により過剰のHDIを除去し、計算官能基数3.7であるポリイソシアネート組成物P-1を450g得た。
【0075】
P-1のNCO含量は20.3%であり、25℃における粘度は約6,500mPa・sであった。P-1を、1H-NMR測定したところ、イソシアヌレート基、ウレタン基、およびアロファネート基のモル比率は90/9/1であった。
【0076】
<NMR:イソシアヌレート基、ウレタン基、アロファネート基含有量の測定>
(1)測定装置:ECX400M(日本電子社製、1H-NMR)
(2)測定温度:23℃
(3)試料濃度:0.1g/1ml
(4)積算回数:16
(5)緩和時間:5秒
(6)溶剤:重水素ジメチルスルホキシド
(7)化学シフト基準:重水素ジメチルスルホキシド中のメチル基の水素原子シグナル(2.5ppm)
(8)評価方法:3.7ppm付近のイソシアヌレート基の窒素原子に隣接したメチレン基の水素原子のシグナルと、7.0ppm付近のウレタン基の窒素原子に結合した水素原子のシグナルと、8.5ppm付近のアロファネート基の窒素原子に接合した水素原子のシグナルの面積比から結合基の含有量を測定。
【0077】
<実施例2~4>
表1に示す仕込比にて実施例1と同様の方法で、ポリイソシアネート組成物P-2~4を得た。
【0078】
<実施例5>
攪拌機、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDIを934.8g、メタノール(新日鉄住金化学社製)を3.3g仕込み、これを60℃に加熱し、イソシアヌレート化及びアロファネート化触媒であるトリメチルオクチルアンモニウムメチル炭酸塩(2-エチルヘキサノール10%希釈)1gを添加し、60℃にて表1に示す所定の反応転化率に達するまで反応させた後、JP-508を0.2g添加し、60℃で1時間停止反応を行い、反応生成物C-5を得た。続いて、得られたC-5に、HBPAを61.9g仕込み、これらを撹拌しながら120℃に加熱し、所定の反応転化率に達するまでウレタン化反応させ反応生成物D-5を得た。D-5から、薄膜蒸留(条件:140℃,0.04kPa)により過剰のHDIを除去し、計算官能基数3.6であるポリイソシアネート組成物P-5を475g得た。
【0079】
P-5のNCO含量は18.5%であり、25℃における粘度は約14,000mPa・sであった。P-5を、1H-NMR測定したところ、イソシアヌレート基、ウレタン基、およびアロファネート基のモル比率は65/25/10であった。
【0080】
<実施例6~7、17>
表1、表5に示す仕込比にて実施例5と同様の方法で、ポリイソシアネート組成物P-6~7、P-14を得た。
【0081】
<実施例8>
攪拌機、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDIを965.5g、シクロヘキサンメタノール(関東化学社製)を11.9g仕込み、これを60℃に加熱し、イソシアヌレート化及びアロファネート化触媒であるトリメチルオクチルアンモニウムメチル炭酸塩(2-エチルヘキサノール10%希釈)1gを添加し、60℃にて表1に示す所定の反応転化率に達するまで反応させた後、JP-508を0.2g添加し、60℃で1時間停止反応を行い、反応生成物C-8を得た。続いて、得られたC-8に、HBPAを21.5g仕込み、これらを撹拌しながら120℃に加熱し、所定の反応転化率に達するまでウレタン化反応させ反応生成物D-8を得た。D-8から、薄膜蒸留(条件:140℃,0.04kPa)により過剰のHDIを除去し、計算官能基数3.6であるポリイソシアネート組成物P-8を484g得た。
【0082】
P-8のNCO含量は19.6%であり、25℃における粘度は約6,300mPa・sであった。P-8を、1H-NMR測定したところ、イソシアヌレート基、ウレタン基、およびアロファネート基のモル比率は82/8/10であった。
【0083】
<実施例18>
表1に示す仕込比にて実施例8と同様の方法で、ポリイソシアネート組成物P-15を得た。
【0084】
<比較例1~2>
表1に示す仕込比にて実施例1と同様の方法で、ポリイソシアネート組成物P-9~10を得た。
【0085】
<比較例3>
表1に示す仕込比にて実施例5と同様の方法で、ポリイソシアネート組成物P-11を得た。
【0086】
<比較例4>
コロネートHK:HDIポリイソシアヌレート(商品名:コロネートHK。東ソー社製)を用いた。
【0087】
<比較例5>
T1890:IPDIポリイソシアヌレート(商品名:VESTANAT T1890/100。EVONIK社製)を用いた。
【0088】
<比較例11>
コロネートHXLV:HDIポリイソシアヌレート(商品名:コロネートHXLV。東ソー社製)を用いた。
【0089】
【0090】
【0091】
<二液塗料組成物の調製(1)>
評価用塗料配合液は表3、4に示すように、ポリオールとポリイソシアネート組成物とをR(イソシアネート基/水酸基のモル比)=1.0になるように配合し、更に有機溶剤で固形分が50%になるように、塗料組成物(S-1~S-13)を調製した(配合量の単位はg)。ポリオールには、アクリルポリオール(商品名:アクリディック49-394-IM、水酸基価:25mgKOH/g、固形分:50%、DIC社製)を使用し、有機溶剤には酢酸ブチルを使用した。
【0092】
<二液塗料組成物の調製(2)>
評価用塗料配合液は表6に示すように、ポリオールとポリイソシアネート組成物とをR(イソシアネート基/水酸基のモル比)=1.2になるように配合し、更に有機溶剤で固形分が25%になるように、塗料組成物(S-14~20)を調製した(配合量の単位はg)。ポリオールには、アクリルポリオール(商品名:アクリディック49-394-IM、水酸基価:25mgKOH/g、固形分:50%、DIC社製)を使用し、有機溶剤には酢酸ブチルを使用した。
【0093】
<塗装方法及び単層塗膜試験片の作成>
調製した塗料組成物S-1~S-13を、鋼板(JIS G3141、商品名:SPCC-SB、処理方法:PF-1077、パルテック社製)にアプリケーターを用い、乾燥後の膜厚約20μmになるように塗布した。その後、温度23℃、相対湿度50%の環境下で1時間乾燥後、80℃の乾燥機中で12時間加熱処理を行い、続いて温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間養生し、コーティング塗膜を得た。
【0094】
<塗装方法及び複層塗膜試験片の作成>
鋼板(JIS G3141、商品名:SPCC-SB、処理方法:PF-1077、パルテック社製)に水系アクリルエマルジョン(商品名:バーノックWE-303、DIC社製、ガラス転移温度15℃)を乾燥膜厚が20μmになるようにスプレー塗装した。次に50℃の乾燥機中で1時間加熱処理を行い、上記で得られた評価用塗料配合液(S-14~20)を乾燥膜厚が25μmになるようにスプレー塗装した。その後、温度23℃、相対湿度50%の環境下で1時間乾燥後、80℃の乾燥機中で12時間加熱処理を行い、続いて温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間養生し、コーティング塗膜を得た。
【0095】
<塗膜評価>
塗膜評価は、表3、4、6に示す塗料組成物を上記塗装方法で作製したコーティング塗膜を用い、押込み硬度評価、基材追従性評価、耐擦り傷性評価にて実施した。
【0096】
<押込み硬度評価、および評価基準>
ISO 14577に準じて、下記の条件で押込み硬度評価を行った。結果を表3、4、6に示す。評価A、Bであれば良好と言える。
試験装置:フィッシャースコープHM2000(フィッシャー・インストルメンツ社製)
圧子:ビッカースダイヤモンド
試験荷重:5mN
試験温度:25℃
・80N/mm2以上:(評価)A
・50N/mm2以上~80N/mm2未満:(評価)B
・50N/mm2未満:(評価)C。
【0097】
<基材追従性評価、および評価基準>
JIS K5600-5-3に準じて、耐おもり落下性による基材追従性試験を実施した。結果を表3、4に示す。評価A、Bであれば良好と言える。
・100cm:(評価)A
・90cm以上~100cm未満:(評価)B
・90cm未満:(評価)C。
【0098】
<耐擦り傷性評価、および評価基準>
ガーゼを5枚重ねにし、学振形摩耗試験機(摩擦試験機II形)(安田精機製作所製)を用い、500g荷重にて200往復摩耗試験を実施した。塗膜の試験面を、走査型白色干渉顕微鏡(日立ハイテクサイエンス製)にて観察し、摩耗痕深さを測定した。結果を表3、4に示す。評価Aであれば良好と言える。
・30nm未満:(評価)A
・30~50nm:(評価)B
・50nm以上:(評価)C
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】