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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】導電性組成物、導電体及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/14 20060101AFI20240214BHJP
   C08G 73/02 20060101ALI20240214BHJP
   C08L 79/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C08L101/14
C08G73/02
C08L79/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020081345
(22)【出願日】2020-05-01
(65)【公開番号】P2020186379
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2019088194
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 昌史
(72)【発明者】
【氏名】森 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 明
(72)【発明者】
【氏名】仲野 早希
(72)【発明者】
【氏名】入江 嘉子
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-140930(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147318(WO,A1)
【文献】特開2010-155904(JP,A)
【文献】特開2017-101102(JP,A)
【文献】特開2016-102190(JP,A)
【文献】国際公開第2014/142133(WO,A1)
【文献】特開平07-233244(JP,A)
【文献】特開2017-179324(JP,A)
【文献】特開2003-226774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08G 73/00-73/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシアルキレン鎖を有する水溶性ポリマー(b)の1種以上からなり、HLB値が9.0以上19.8未満である界面活性剤(B)と、導電性物質(A)とを含み、
前記導電性物質(A)が、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する導電性ポリマーであり、
前記水溶性ポリマー(b)が、下記式(2)で表される1価基を含む水溶性ポリマー(b2)及び下記式(3)で表される水溶性ポリマー(b3)からなる群から選ばれる1種以上を含む、導電性組成物。
【化1】
(式中、R ~R は、各々独立に、水素原子、炭素数1~24の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1~24の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシ基、酸性基、酸性基の塩、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表し、R ~R のうちの少なくとも1つは酸性基又はその塩であり、前記酸性基は、スルホン酸基又はカルボキシ基である。)
-W-[(OC (OC (OC (OC 10 (OC 12 ]-O-Y ・・・式(2)
-[(OC (OC (OC (OC 10 (OC 12 ]-O-Y ・・・式(3)
(式(2)及び式(3)中、Wは単結合又は炭素数2~50の非置換若しくは置換の2価炭化水素基、又は2価オルガノポリシロキサンであり、Y ~Y は各々独立に、水素原子、炭素数1~20の非置換若しくは置換の1価炭化水素基、-COR’’、又は1価オルガノポリシロキサンであり、前記R’’は、炭素数1~10のアルキル基である。aは1~50の整数であり、b、c、d、eは各々独立に0~30の整数である。[ ]内のオキシアルキレン基の配列はランダムでもブロックでもよい。)
【請求項2】
前記式(2)において前記b、c、d、eがいずれも0であり、前記式(3)において前記b、c、d、eがいずれも0である、請求項に記載の導電性組成物。
【請求項3】
前記式(3)において、Y及びYの少なくとも一方が、前記1価炭化水素基又は前記-COR’’である、請求項又はに記載の導電性組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤(B)の末端疎水化度が10~95%である、請求項のいずれか一項に記載の導電性組成物。
【請求項5】
基材と、前記基材の少なくとも1つの面上に、請求項1~のいずれか一項に記載の導電性組成物を塗布することにより形成された塗膜とを含む、導電体。
【請求項6】
基材と、前記基材の少なくとも1つの面上に形成されたレジスト層と、前記レジスト層上に、請求項1~のいずれか一項に記載の導電性組成物を塗布することにより形成された塗膜とを含む、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性組成物、並びにこれを用いた導電体及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子線を用いた光リソグラフィーのパターン形成技術は、基材の帯電(チャージアップ)によって荷電粒子線の軌道が曲げられ、所望のパターンが得られにくい。そのため、導電性ポリマーを含む導電性組成物をレジスト層の表面に塗布して塗膜を形成し、帯電防止機能を付与する技術が知られている。
【0003】
一般に、導電性組成物には、塗布性向上を目的として界面活性剤が添加される。
特許文献1には、加水分解により副生成物が生じにくいことからレジスト層への悪影響(膜減り等)が少ない界面活性剤として、末端疎水基を有する水溶性ポリマーを添加した導電性組成物が提案されている。具体的には、末端疎水基として炭素数18のアルキルチオ基を有するポリビニルピロリドン誘導体を用いた実施例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/060231号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者等の知見によれば、特許文献1に記載の導電性組成物は、必ずしも塗布性が充分ではなく、ハジキ等が無い均一な塗膜が得られない場合がある。
本発明は、塗布性に優れる導電性組成物、並びにこれを用いた導電体及び積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1] ポリオキシアルキレン鎖を有する水溶性ポリマー(b)の1種以上からなり、HLB値が9.0以上19.8未満である界面活性剤(B)と、導電性物質(A)とを含む導電性組成物。
[2] 前記導電性物質(A)が、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する導電性ポリマーである、[1]の導電性組成物。
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、R~Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1~24の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1~24の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子を表し、R~Rのうちの少なくとも1つは酸性基又はその塩であり、前記酸性基は、スルホン酸基又はカルボキシ基である。)
[3] 前記水溶性ポリマー(b)が、下記式(2)で表される1価基を含む水溶性ポリマー(b2)及び下記式(3)で表される水溶性ポリマー(b3)からなる群から選ばれる1種以上を含む、[1]又は[2]の導電性組成物。
-W-[(OC(OC(OC(OC10(OC12]-O-Y・・・式(2)
-[(OC(OC(OC(OC10(OC12]-O-Y・・・式(3)
(式(2)及び式(3)中、Wは単結合又は炭素数2~50の非置換若しくは置換の2価炭化水素基、又は2価オルガノポリシロキサンであり、Y~Yは各々独立に、水素原子、炭素数1~20の非置換若しくは置換の1価炭化水素基、-COR’’、又は1価オルガノポリシロキサンであり、前記R’’は、炭素数1~10のアルキル基である。aは1~50の整数であり、b、c、d、eは各々独立に0~30の整数である。[ ]内のオキシアルキレン基の配列はランダムでもブロックでもよい。)
[4] 前記式(2)において前記b、c、d、eがいずれも0であり、前記式(3)において前記b、c、d、eがいずれも0である、[3]の導電性組成物。
[5] 前記式(3)において、Y及びYの少なくとも一方が、前記1価炭化水素基又は前記-COR’’である、[3]又は[4]の導電性組成物。
[6] 前記界面活性剤(B)の末端疎水化度が10~95%である、[3]~[5]のいずれかの導電性組成物。
[7] 基材と、前記基材の少なくとも1つの面上に、[1]~[6]のいずれかの導電性組成物を塗布することにより形成された塗膜とを含む、導電体。
[8] 基材と、前記基材の少なくとも1つの面上に形成されたレジスト層と、前記レジスト層上に、[1]~[6]のいずれかの導電性組成物を塗布することにより形成された塗膜とを含む、積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の導電性組成物は塗布性に優れる。
本発明の導電体は塗膜の均一性に優れる。
本発明の積層体は塗膜の均一性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための単なる例示であって、本発明をこの実施の形態にのみ限定することは意図されない。本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、様々な態様で実施することが可能である。
【0011】
本明細書における下記の用語の意味は以下の通りである。
「導電性」とは、1×1011Ω/□以下の表面抵抗値を有することである。表面抵抗値は、一定の電流を流した場合の電極間の電位差より求められる。
「導電体」とは、前記導電性を有する部分を含む製品を意味する。
「溶解性」とは、単なる水、塩基及び塩基性塩の少なくとも一方を含む水、酸を含む水、及び水と水溶性有機溶媒との混合物から選ばれる少なくとも1種の溶媒に対して、溶媒10g(液温25℃)に0.1g以上均一に溶解することを意味する。「均一に溶解」とは、試料が溶液中に分散し、沈殿しない状態であって、溶液のどの部分においても濃度が同じであることを意味する。
「水溶性」とは、上記溶解性に関して、水に対する溶解性を有することを意味する。
「質量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定される質量平均分子量(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算)である。質量平均分子量を「Mw」と記載することもある。
【0012】
<導電性組成物>
本実施形態の導電性組成物は、導電性物質(A)と界面活性剤(B)とを含む。さらに溶剤(C)を含むことが好ましい。
【0013】
[導電性物質(A)]
導電性物質(A)としては、導電性ポリマー(a)、イオン性液体、イオン系ポリマー等が挙げられる。これらは単独で、又は組み合わせて使用できる。
[導電性ポリマー(a)]
導電性ポリマー(a)は公知のものを使用できる。例えば、導電性に優れる観点から、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類が好ましい。
導電性ポリマー(a)は酸性基を有する導電性ポリマーが好ましい。酸性基として、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する導電性ポリマーがより好ましい。
【0014】
具体的には、特開昭61-197633号公報、特開昭63-39916号公報、特開平1-301714号公報、特開平5-504153号公報、特開平5-503953号公報、特開平4-32848号公報、特開平4-328181号公報、特開平6-145386号公報、特開平6-56987号公報、特開平5-226238号公報、特開平5-178989号公報、特開平6-293828号公報、特開平7-118524号公報、特開平6-32845号公報、特開平6-87949号公報、特開平6-256516号公報、特開平7-41756号公報、特開平7-48436号公報、特開平4-268331号公報に示された導電性ポリマー等が、溶解性の観点から好ましい。
【0015】
導電性ポリマー(a)として、具体的には、結合手のα位若しくはβ位が、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群から選択される少なくとも1つの基で置換された、フェニレンビニレン、ビニレン、チエニレン、ピロリレン、フェニレン、イミノフェニレン、イソチアナフテン、フリレン、及びカルバゾリレンからなる群より選択される少なくとも1つの基を、導電性ポリマーの繰り返し単位として含む、π共役系導電性ポリマーが挙げられる。
また、前記π共役系導電性ポリマーが、イミノフェニレン、及びガルバゾリレンからなる群より選択される少なくとも1つの基を繰り返し単位として含む場合は、前記繰り返し単位の窒素原子上に、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する導電性ポリマー、又は前記繰り返し単位の窒素原子上に、スルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されたアルキル基、若しくはエーテル結合を含むアルキル基を有する導電性ポリマーが挙げられる。
この中でも、導電性や溶解性の観点から、結合手のβ位がスルホン酸基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されたチエニレン、ピロリレン、イミノフェニレン、フェニレンビニレン、カルバゾリレン、及びイソチアナフテンからなる群から選択される少なくとも1つの基を、導電性ポリマーの繰り返し単位として含む導電性ポリマーが好ましい。
【0016】
本実施形態に係る導電性ポリマー(a)は、導電性や溶解性の観点から、下記式(1)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0017】
【化2】
【0018】
式(1)中、R~Rは、各々独立に、水素原子、炭素数1~24の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数1~24の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルコキシ基、酸性基、ヒドロキシ基、ニトロ基、又はハロゲン原子(即ち、-F、-Cl、-Br又はI)を表し;かつR~Rのうちの少なくとも一つは酸性基又はその塩であり;前記酸性基は、スルホン酸基又はカルボキシ基である。
ここで、スルホン酸基、及びカルボキシ基は、それぞれ酸の状態(即ち、-SOH、及び-COOH)で含まれていてもよく、イオンの状態(即ち、-SO 、及び-COO)で含まれていてもよい。
また、「塩」とは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩及び置換アンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも一つの塩を示す。
前記式(1)で表される繰り返し単位としては、製造が容易な点で、R~Rのうち、いずれか1つの基が炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基であり、その他のいずれか一つの基がスルホン酸基であり、さらにその残りの基が水素原子である繰り返し単位が好ましい。
また、導電性ポリマー(a)は、導電性や溶解性の観点から、下記式(4)~(6)で表される繰り返し単位からなる群より選択される少なくとも1つの繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0019】
【化3】
【0020】
【化4】
【0021】
【化5】
【0022】
前記式(4)~(6)において、Xは硫黄原子、又は-NH-を表す。
~R15は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、-SOH、-R16SOH、-OCH、-CH、-C、-F、-Cl、-Br、-I、-N(R17、-NHCOR17、-OH,-O-、-SR17、-OR17、-OCOR17、-NO、-COOH、-R16COOH、-COOR17、-COR17、-CHO、又は-CNを表す。
ここで、R16は炭素数1~24のアルキレン基、炭素数1~24のアリーレン基、又は炭素数1~24のアラルキレン基を表す。
17は炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のアリール基、又は炭素数1~24のアラルキル基を表す。
但し、式(4)のR~R、式(5)のR~R10、及び式(6)のR11~R15のそれぞれにおいて、少なくとも一つの基は、-SOH、-R16SOH、-COOH、-R16COOH、又はこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、及び置換アンモニウム塩からなる群より選択される基である。
【0023】
導電性ポリマー(a)において、ポリマー中の芳香環の総数(総mol数)に対するスルホン酸基、及びカルボキシ基の含有量は50mol%以上であることが好ましく、70mol%以上がより好ましく、90mol%以上が更に好ましく、100mol%が最も好ましい。前記含有量が50mol%以上の導電性ポリマーであれば、溶解性が非常に良好となるため好ましい。
前記含有量は、導電性ポリマー(a)製造時の、モノマーの仕込み比から算出した値のことを指す。
【0024】
また、導電性ポリマー(a)において、繰り返し単位の芳香環上のスルホン酸基、又はカルボキシ基以外の置換基は、モノマーへの反応性付与の観点から電子供与性基が好ましく、具体的には、炭素数1~24のアルキル基、炭素数1~24のアルコキシ基、ハロゲン基(-F、-Cl、-Br又はI)等が好ましく、このうち、電子供与性の観点から、炭素数1~24のアルコキシ基であることが最も好ましい。
【0025】
本実施形態に係る導電性ポリマー(a)において、上述した繰り返し単位の組み合わせの中でも、溶解性の観点から、下記式(7)の構造式を有するポリマーであることが好ましく、前記式(7)の構造式を有するポリマーの中でも、ポリ(2-スルホ-5-メトキシ-1,4-イミノフェニレン)が特に好ましい。
【0026】
【化6】
【0027】
式(7)中、R18~R33は、各々独立に、水素原子、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基、酸性基、水酸基、ニトロ基、ハロゲン(即ち、-F、-Cl、-Br又はI)を表し、但し、R18~R33のうち少なくとも一つの基は酸性基である。また、nは重合度を示す。本実施形態において、nは5~2500の整数であることが好ましい。R18~R33の酸性基は、前記酸性基と同様である。
【0028】
本実施形態に係る導電性ポリマー(a)に含有される酸性基は、導電性向上の観点から少なくともその一部が遊離酸型であることが望ましい。
また、導電性ポリマー(a)の質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、「GPC」という)のポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算で、導電性、溶解性及び成膜性の観点から、2000~100万であることが好ましく、3000~80万であることがより好ましく、5000~50万であることがさらに好ましく、1万~10万であることが特に好ましい。
導電性ポリマー(a)の質量平均分子量が2000未満の場合、溶解性には優れるものの、導電性、及び塗布性が不足する場合がある。
一方、質量平均分子量が100万より大きい場合、導電性には優れるものの、溶解性が不十分な場合がある。
ここで、「塗布性」とは、ハジキ等が無い均一な膜となる性質のことを意味し、ガラス上へのスピンコート等の方法で評価することができる。
【0029】
導電性ポリマー(a)の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、本発明の効果を有する限り特に限定はされない。
具体的には、前述の繰り返し単位を有する重合性モノマーを化学酸化法、電解酸化法等の各種合成法により重合する方法等が挙げられる。このような方法としては、例えば本発明者らが提案した特開平7-196791号公報、特開平7-324132号公報に記載の合成法等を適用することができる。
【0030】
本実施形態の導電性組成物において、導電性ポリマー(a)の含有量は、導電性組成物の総質量(100質量%)に対して、0.01~50質量%であることが好ましく、0.05~20質量%であることがより好ましい。
【0031】
導電性ポリマー(a)として用いるπ共役系導電性ポリマーのより具体的な例として、ポリチオフェン類としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、及びポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
【0032】
ポリピロール類としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)、及びポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
【0033】
ポリアニリン類としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)、ポリ(2-アミノアニソール-4-スルホン酸)が挙げられる。
【0034】
[イオン性液体]
導電性物質(A)として用いるイオン性液体としては、常温で液体のイミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム塩及びホスホニウム塩等の有機化合物塩等であって、常温で液体のイオン性液体が好ましく用いられる。
イミダゾリウム塩であるイオン性液体としては、例えば、1,3-ジメチルイミダゾリウム・メチルスルファート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロエチルスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・ブロミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムナイトレイト、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェイト、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・クロリド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・ニトラート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・テトラフルオロボラート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・トシラート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム・トリフルオロメタンスルホナート、1-n-ブチル-3-メチルイミダゾリウム・トリフルオロメタンスルホナート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム・ブロミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム・クロリド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム・2-(2-メトキシエトキシ)エチルスルファート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム・メチルスルファート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム・テトラフルオロボラート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム・クロリド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム・テトラフルオロボラート、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウム・クロリド、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウム・テトラフルオロボラート、1,2-ジメチル-3-プロピルオクチルイミダゾリウム・トリス(トリフルオロメチルスルフォニル)メチド、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム・クロリド、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム・テトラフルオロボラート、1-メチル-3-(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル)イミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート、及び1-ブチル-3-(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル)イミダゾリウム・ヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。
【0035】
ピリジニウム塩であるイオン性液体としては、例えば、3-メチル-1-プロピルピリジニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-プロピル-3-メチルピリジニウム・トリフルオロメタンスルホナート、1-ブチル-3-メチルピリジニウム・トリフルオロメタンスルホナート、1-ブチル-4-メチルピリジニウム・ブロミド、1-ブチル-4-メチルピリジニウム・クロリド、1-ブチル-4-メチルピリジニウム・ヘキサフルオロホスファート及び1-ブチル-4-メチルピリジニウム・テトラフルオロボラート等が挙げられる。
【0036】
アンモニウム塩であるイオン性液体としては、例えば、テトラブチルアンモニウム・ヘプタデカフルオロオクタンスルホナート、テトラブチルアンモニウム・ノナフルオロブタンスルホナート、テトラペンチルアンモニウム・メタンスルホナート、テトラペンチルアンモニウム・チオシアナート、及びメチル-トリ-n-ブチルアンモニウム・メチルスルファート等が挙げられる。
【0037】
ホスホニウム塩であるイオン性液体としては、例えば、テトラブチルホスホニウム・メタンスルホナート、テトラブチルホスホニウムニウム・p-トルエンスルホナート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム・ビス(トリフルオロエチルスルホニル)イミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム・ビス(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィナート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム・ブロミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム・クロリド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム・デカノアート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム・ヘキサフルオロホスフィナート、トリエチルテトラデシルホスホニウム・テトラフルオロボラート及びトリブチルメチルホスホニウム・トシラート等が挙げられる。
【0038】
[イオン性ポリマー]
導電性物質(A)として用いるイオン性ポリマー(以下、イオン性高分子化合物ということもある)としては、特公昭49-23828号、同49-23827号、同47-28937号にみられるようなアニオン性高分子化合物:特公昭55-734号、特開昭50-54672号、特公昭59-14735号、同57-18175号、同57-18176号、同57-56059号等にみられるような、主鎖中に解離基をもつアイオネン型ポリマー:特公昭53-13223号、同57-15376号、特開昭53-45231号、同55-145783号、同55-65950号、同55-67746号、同57-11342号、同57-19735号、特公昭58-56858号にみられるような、側鎖中にカチオン性解離基をもつカチオン性ペンダント型ポリマー:等を挙げることができる。
【0039】
[界面活性剤(B)]
本実施形態に係る界面活性剤(B)は、ポリオキシアルキレン鎖を有する水溶性ポリマー(b)(ただし、導電性物質(A)は含まない。)からなる、界面活性剤(B)は、水溶性ポリマー(b)の1種でもよく2種以上の混合物でもよい。
界面活性剤(B)の、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値(以下、またはHLB値ともいう)は10以上19.8未満である。界面活性剤(B)のHLB値は、一般的に用いられるグリフィン法で求められる。
具体的に、界面活性剤(B)が1種の水溶性ポリマー(b)からなる場合、界面活性剤(B)のHLB値、すなわち水溶性ポリマー(b)のHLB値は下記式(H-1)で求められる。式(H-1)において、Mは親水性部分の式量(分子量)、Mwは水溶性ポリマー(b)の質量平均分子量を表す。
HLB=20×M/Mw ・・・(H-1)
【0040】
界面活性剤(B)が2種以上の水溶性ポリマー(b)の混合物である場合、界面活性剤(B)のHLB値は、各水溶性ポリマー(b)のHLB値の加重平均とする。具体的には、L種の水溶性ポリマーn(nは1~Lの整数)の混合物である場合、該混合物のHLB値は、すなわち界面活性剤(B)のHLB値は、下記式(H-2)で求められる。式(H-2)において、HLBnは水溶性ポリマーnのHLB値、Wnは水溶性ポリマーnの質量、Wは水溶性ポリマーすべての質量を表す。
【0041】
【数1】
【0042】
HLB値は0に近いほど疎水性が高く、20に近いほど親水性が高くなる。界面活性剤(B)のHLB値が19.8未満であると、導電性組成物の良好な塗布性が得られやすく良好な導電性が得られやすい。HLB値が9.0以上であると、特にレジスト層の表面上に導電性組成物の塗膜を形成する場合に、レジスト層への悪影響(不溶物の発生、異物欠陥の発生等)を防止しやすい。界面活性剤(B)のHLB値は9.0以上19.8未満が好ましい。
界面活性剤(B)が2種以上の水溶性ポリマー(b)の混合物である場合、界面活性剤(B)を構成する各水溶性ポリマー(b)のHLB値は、それぞれ9.0以上20.0以下が好ましく、10.0以上20.0以下がより好ましく、13以上20以下がさらに好ましい。上記下限値以上であると、塗布時にレジストへの悪影響が少なく、優れた塗布性が得られやすい。2種以上の水溶性ポリマー(b)は、界面活性剤(B)のHLB値が上記の範囲となるように組み合わせて用いる。
【0043】
水溶性ポリマー(b)はポリオキシアルキレン鎖を有する。ポリオキシアルキレン鎖とは、アルキレンオキシドに基づく単位(アルキレンオキシド基とも記す。)から形成される分子鎖を意味する。アルキレンオキシドに基づく単位は、アルキレンオキシドの1分子が開環重合反応して形成される原子団を意味する。ポリオキシアルキレン鎖は親水性部分である。
【0044】
水溶性ポリマー(b)のポリオキシアルキレン鎖は、炭素数2~6のアルキレンオキシド基を含むことが好ましく、少なくともエチレンオキシド基を含むことがより好ましい。
好ましい水溶性ポリマー(b)として、下記式(2)で表される1価基を含む水溶性ポリマー(b2)、下記式(3)で表される水溶性ポリマー(b3)が挙げられる。界面活性剤(B)が、水溶性ポリマー(b2)及び水溶性ポリマー(b3)からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0045】
-W-[(OC(OC(OC(OC10(OC12]-O-Y・・・式(2)
-[(OC(OC(OC(OC10(OC12]-O-Y・・・式(3)
【0046】
式(2)において、Wは単結合又は炭素数2~50の非置換若しくは置換の2価炭化水素基、又は2価オルガノポリシロキサンである。2価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、及びヘキサメチレン基等のアルキレン基が挙げられる。2価オルガノポリシロキサンは、下記一般式(8)で示される。
【0047】
【化7】
【0048】
式(8)において、複数のUは互いに独立に、炭素数1~20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は水酸基であり、mは0~2000の整数である。
塗布性の点から、mは1以上が好ましく、3以上がより好ましい。また水溶性の点から、mは1000以下が好ましく、500以下がより好ましい。
【0049】
式(2)及び式(3)において、Y~Yは各々独立に、水素原子、炭素数1~20の非置換若しくは置換の1価炭化水素基、-COR’’、又は1価オルガノポリシロキサンで示される基である。前記R’’は、炭素数1~10のアルキル基である。
炭素数1~20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのアルキル基、フェニル基などのアリール基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基などのアルケニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などのアラルキル基等や、これらの基の水素原子の一部が酸素原子で置換された、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、これらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などが挙げられる。
-COR’’のR’’は、炭素数1~10のアルキル基であり、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
1価オルガノポリシロキサンは、下記一般式(9)で示される。
【0050】
【化8】
【0051】
式中、複数のUは互いに独立に、炭素数1~20の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は水酸基であり、sは0~2000の整数である。塗布性の観点からsは1以上が好ましく、3以上がより好ましく、水溶性の観点から炭素数1000以下が好ましく、500以下がより好ましい。
~Yは各々独立に、水素原子、メチル基、ブチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンダデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基から選ばれる基が好ましい。
【0052】
式(2)及び式(3)において、aは1~50の整数であり、3~30の整数が好ましい。b、c、d、eは各々独立に0~30の整数であり、0~20の整数が好ましい。
式(2)及び式(3)において、[ ]内のオキシアルキレン基の配列はランダムでもブロックでもよい。
【0053】
例えば、水溶性ポリマー(b2)は、前記式(2)で表される1価基を側鎖として含む水溶性ポリマーが好ましい。
水溶性ポリマー(b2)の主鎖はポリマー主鎖として一般に知られているものであれば、特に限定されない。例えば、分岐、二重結合、三重結合、環状構造、又は芳香環を含んでいてもよく、置換基(例えばハロゲン原子)を有してもよい炭化水素系ポリマー鎖;上記式(8)で表されるオルガノポリシロキサン骨格を有するシロキサン系ポリマー鎖;などが挙げられる。
【0054】
式(2)において、Wが単結合又は炭素数2~50のアルキレン基であることが、塗布性、水溶性、表面平滑性の観点から好ましい。Wが単結合、エチレン基、プロピレン基、又はブチレン基であることがより好ましい。
前記式(2)で表される1価基としては、
-(OC-O-C1021
-(OC-O-C1123
-(OC-O-C1225
-(OC-O-C1429
-(OC-O-C1633
-(OC-O-C1837
-(OC(OC-O-C1021
-(OC(OC-O-C1123
-(OC(OC-O-C1225
-(OC(OC-O-C1429
-(OC(OC-O-C1633
-(OC(OC-OC1837
-(OC-OC-C17
-(OC-OC-C19
-C-(OC-O-H、
-C-(OC-O-CH
-C-(OC-O-C
-C-(OC-O-COCH
-C-(OC-O-H、
-C-(OC-O-CH
-C-(OC-O-C
-C-(OC-O-COCH
-C-(OC-O-H、
-C-(OC-O-CH
-C-(OC-O-C、及び
-C-(OC-O-COCH(a及びbは上記の通り)などが挙げられる。
【0055】
前記式(2)において、前記b、c、d、eがいずれも0であることが好ましい。
前記式(2)で表される1価基として、
-(OC-O-C1021
-(OC-O-C1123
-(OC-O-C1225
-(OC-O-C1429
-(OC-O-C1633
-(OC-O-C1837がより好ましい。
【0056】
水溶性ポリマー(b2)は、市販のアセチレン系界面活性剤、オルガノシロキサン系界面活性剤から入手可能である。例えば日信化学工業(株)製品名:オルフィン1010、オルフィン1020、オルフィンEXP4123、オルフィンB、オルフィンPD-002W、オルフィンEXP.4200、オルフィンWE-003、オルフィンSPC、オルフィンAF-103、オルフィンAK-02、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノールPSA-336、サーフィノールCT151(いずれもYは水素原子)が挙げられる。この中でも特に、オルフィン1010、オルフィン1020、オルフィンEXP4123が塗布時にレジストへの悪影響を与えることなく優れた塗布性を得られるため、特に好ましい。
また、主鎖が前記式(8)で表されるオルガノポリシロキサン骨格を有するシロキサン系ポリマー鎖であり、前記式(2)で表される1価基を側鎖として含む水溶性ポリマー(b2)として、例えば信越化学工業(株)製品名:変性シリコーンオイルKF-354L、変性シリコーンオイルKF-640等が挙げられる。
【0057】
前記式(3)で表される水溶性ポリマー(b3)において、YとYは互いに同じであってもよく、異なってもよい。
とYの両方が水素原子、前記炭化水素基、又は前記-COR’’でもよい。
水溶性ポリマー(b)が水溶性ポリマー(b3)を含む場合、水溶性ポリマー(b3)の一部又は全部が、Y及びYの少なくとも一方が、前記1価炭化水素基又は前記-COR’’である水溶性ポリマーであることが好ましい。
前記式(3)において、前記b、c、d、eがいずれも0であることが好ましい。すなわち、YとYを除いた残基として、-(OC-O-が好ましい。
【0058】
界面活性剤(B)を構成する水溶性ポリマー(b)の少なくとも1種は末端疎水性基を有することが好ましい。「末端疎水性基」とは、ポリオキシアルキレン鎖に結合している疎水性基を意味する。
水溶性ポリマー(b)において、ポリオキシアルキレン鎖の全末端のうち、末端疎水性基に結合している末端の数の割合を「末端疎水化度(単位:%)」とする。
例えば式(3)で表される水溶性ポリマー(b3)において、ポリオキシアルキレン鎖に結合しているY、Yのうち、非置換若しくは置換の炭化水素基、又は-COR’’で示される基が末端疎水性基に該当する。Y及びYの両方が水素原子である場合、末端疎水化度は0%、Y及びYのいずれか一つが水素原子の場合は末端疎水化度50%、Y及びYがいずれも末端疎水性基の場合は末端疎水化度100%となる。
例えば式(2)で表される1価基を含む水溶性ポリマー(b2)において、ポリオキシアルキレン鎖に結合しているYのうち、非置換若しくは置換の炭化水素基、-COR’’、又は1価オルガノポリシロキサンが末端疎水性基に該当する。また、アルキレン鎖に結合しているWは末端疎水性基とみなす。Yが水素原子の場合は末端疎水化度50%、Yが末端疎水基の場合は末端疎水化度100%となる。
【0059】
界面活性剤(B)が1種の水溶性ポリマー(b)からなる場合、界面活性剤(B)の末端疎水化度は水溶性ポリマー(b)の末端疎水化度である。界面活性剤(B)が2種以上の水溶性ポリマー(b)の混合物である場合、界面活性剤(B)の末端疎水化度は各水溶性ポリマー(b)の末端疎水化度の加重平均とする。
いずれの場合も、界面活性剤(B)の末端疎水化度は10~95%が好ましく、10~90%がより好ましい。
【0060】
界面活性剤(B)を構成する水溶性ポリマー(b)のMwは100~100万が好ましく、150~10万がより好ましく、200~1万が特に好ましい。
界面活性剤(B)が2種以上の水溶性ポリマー(b)の混合物である場合は、各水溶性ポリマー(b)のMwが、それぞれ上記の範囲内であることが好ましい。
【0061】
水溶性ポリマー(b)の総質量に対して、オキシアルキレン基の含有量(以下、オキシアルキレン基含有量ともいう。)は40~100質量%が好ましく、50~99質量%がより好ましく、60~99質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、水溶性ポリマー(b)の親水性が充分に高くなり、塗布時にレジストへの悪影響が生じ難い。
水溶性ポリマー(b)の総質量に対する、オキシアルキレン基の含有量は下記式(I-1)によって求めることができる。なお、Zはオキシアルキレン基の含有量(質量%)、Mは親水性部分の式量(分子量)、Mwは水溶性ポリマー(b)の質量平均分子量を表す。
Z=100×M/Mw ・・・(I-1)
【0062】
界面活性剤(B)が2種以上の水溶性ポリマー(b)の混合物である場合、界面活性剤(B)のオキシアルキレン基の含有量は、各水溶性ポリマー(b)のオキシアルキレン基の含有量の加重平均とする。具体的には、L種の水溶性ポリマーn(nは1~Lの整数)の混合物である場合、該混合物のオキシアルキレン基の含有量は、すなわち界面活性剤(B)のオキシアルキレン基の含有量は、下記式(I-2)で求められる。式(I-2)において、Znは水溶性ポリマーnのオキシアルキレン基の含有量(質量%)、Wnは水溶性ポリマーnの質量、Wは水溶性ポリマーすべての質量を表す。
【0063】
【数2】
【0064】
導電性組成物の総質量に対して、界面活性剤(B)の含有量は、0.01~50質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましい。
界面活性剤(B):導電性物質(A)の比率は、0.1:9.9~9.9:0.1であることが好ましく、1:9~9:1であることがより好ましい。
導電性組成物が、後述の溶剤(C)を含む場合、溶剤(C)の100質量部に対して、界面活性剤(B)の使用量は0.01~20質量部が好ましく、0.01~15質量部がより好ましい。
【0065】
[溶剤(C)]
溶剤(C)としては、導電性物質(A)、及び界面活性剤(B)を溶解できる溶剤であれば、本発明の効果を有する限り特に限定はされない。例えば、水;又は水と水溶性有機溶媒との混合系が好ましく用いられる。
水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、エチルイソブチルケトン等のケトン類、エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル等のエチレングリコール類、プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、N-メチルピロリドン、 N-エチルピロリドン等のピロリドン類等が挙げられる。
溶剤(C)として、水と水溶性有機溶媒との混合系を用いる場合、水/水溶性有機溶媒(質量比)=1/100~100/1が好ましく、2/100~100/2がより好ましい。
溶剤(C)の使用量は、導電性物質(A)1質量部に対して2~10000質量部が好ましく、50~10000質量部がより好ましい。
【0066】
[塩基性化合物(D)]
本実施形態の導電性組成物において、導電性物質(A)が酸性基を有する場合に、導電性や耐溶剤性、基材密着性を向上させる目的で、塩基性化合物(D)を含有してもよい。なお、耐溶剤性とは、水やアルカリ性溶液等の溶剤に対する耐性であり、基材密着性とは、ガラス基材やタンタル基材等の基材に対する密着性である。
塩基性化合物(D)としては、本発明の効果を有する限り特に限定はされないが、塩基性化合物(D)の拡散性の観点から、120℃以上の沸点を有するものがより好ましい。
塩基性化合物(D)としては、具体的には、2-アミノピリジン、4-アミノピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、4-ジメチルアミノメチルピリジン、3,4-ジメチルアミノピリジン、2-アミノピラジン、アンメリド等のアミノ基を1つ有するヘテロ環式化合物;2,6-ジアミノピリジン、3,4-ジアミノピリジン、3,4-ビス(ジメチルアミノ)ピリジン、2,3-ジアミノピラジン、アンメリン等のアミノ基を2つ有するヘテロ環式化合物;3,4,5-トリアミノピリジン、4,5,6-トリアミノピリジン、メラミン等のアミノ基を3つ有するヘテロ環式化合物などが挙げられる。これらの中でも、2-アミノピリジン、4-アミノピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、4-ジメチルアミノメチルピリジン、3,4-ジメチルアミノピリジン、3,4-ビス(ジメチルアミノ)ピリジン、2,6-ジアミノピリジン、3,4-ジアミノピリジン、3,4,5-トリアミノピリジン、4,5,6-トリアミノピリジン等のアミノ基が置換したピリジン誘導体が好ましく、4-アミノピリジン、3,4-ジアミノピリジンが特に好ましい。
これらの塩基性化合物(D)はそれぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0067】
塩基性化合物(D)の含有量は、導電性物質(A)1molに対して、0.01~1molが好ましく、0.1~0.9molがより好ましく、0.2~0.8molが特に好ましい。塩基性化合物(D)の含有量が上記範囲内であれば、導電性物質(A)の酸性基に効率よく相互作用する。特に、塩基性化合物(D)の含有量が0.1mol以上であれば、導電性組成物を用いて帯電防止膜を形成した際に、耐溶剤性を十分に向上できる。一方、塩基性化合物(D)の含有量が0.9mol以下であれば、帯電防止膜としての性能(導電性など)を良好に保持できる。
【0068】
[高分子化合物(E)]
本実施形態の導電性組成物において、塗膜強度や表面平滑性を向上させる目的で、高分子化合物(E)を含有させることができる。高分子化合物(E)は界面活性剤(B)を含まない。
具体的には、ポリビニールホルマール、ポリビニールブチラール等のポリビニルアルコール誘導体類;ポリアクリルアミド、ポリ(N-t-ブチルアクリルアミド)、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸等のポリアクリルアミド類;ポリビニルピロリドン類;ポリアクリル酸類;水溶性アルキド樹脂;水溶性メラミン樹脂;水溶性尿素樹脂;水溶性フェノール樹脂;水溶性エポキシ樹脂;水溶性ポリブタジエン樹脂;水溶性アクリル樹脂;水溶性ウレタン樹脂;水溶性アクリルスチレン共重合体樹脂;水溶性酢酸ビニルアクリル共重合体樹脂;水溶性ポリエステル樹脂;水溶性スチレンマレイン酸共重合樹脂;水溶性フッ素樹脂;及びこれらの共重合体が挙げられる。
【0069】
更に、本実施形態の導電性組成物は、必要に応じて顔料、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、レベリング剤、たれ防止剤、艶消し剤、防腐剤等の各種添加剤を含んでもよい。
【0070】
[導電体、及び積層体]
本発明の一実施形態である導電体は、基材と、前記基材の少なくとも1つの面に前記導電性組成物を塗布することにより形成された塗膜と、を含む。
また、本明細書において、前記導電体のうち、特に、基材と;前記基材の少なくとも1つの面上に形成されたレジスト層と;前記レジスト層上に、前記導電性組成物を塗布することにより形成された塗膜と;を含む場合を、積層体ということもある。
【0071】
導電性組成物の基材への塗布方法としては、本発明の効果を有する限り特に限定はされないが、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、エアーナイフコート法、カーテンコート法等の手法が挙げられる。
基材としては、本発明の効果を有する限り特に限定されないが、PET、PBT等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン樹脂、塩化ビニル、ナイロン、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリスルホン、ポリイミド、ポリウレタン、フェノール樹脂、シリコン樹脂、合成紙等の各種高分子化合物の成型品、及びフィルム;紙、鉄、ガラス、石英ガラス、シリコン等の各種ウエハ、アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼等を材料とする基材;及びこれらの基材表面に各種塗料や感光性樹脂、レジスト等がコーティングされている基材等を例示することができる。
【0072】
前記基材に導電性組成物を塗布する工程は、これら基材の製造工程、例えば一軸延伸法、二軸延伸法、成形加工、又はエンボス加工等の工程前、又は工程中に行ってもよく、これら処理工程が完了した基材に対して行うこともできる。
また、本実施形態の導電性組成物は、塗布性が良好であるので、各種塗料や、感光性材料をコーティングした上記基材の上に、さらに導電性組成物を重ね塗りして塗膜を形成することも可能である。
【0073】
本実施形態の導電体は、前記導電性組成物を、前記基材の少なくとも一つの面上に塗布、乾燥して塗膜を形成した後、常温(20℃~30℃)で1分間~60分間放置する、あるいは加熱処理を行うことによって製造することができる。
加熱処理を行う場合の加熱温度としては、導電性の観点から、40℃~250℃の温度範囲であることが好ましく、60℃~200℃の温度範囲であることがより好ましい。また、処理時間は、安定性の観点から1時間以内であることが好ましく、30分以内であることがより好ましい。
【0074】
本実施形態の導電性組成物は、導電体形成後、加熱することで、不溶性、又は剥離可能な可溶性の塗膜(すなわち、導電性ポリマー膜)を有する導電体を形成することが可能である。
これにより、永久帯電防止膜、及びプロセス上の一時的帯電防止膜の両面での適用が可能となるという利点を有する。
すなわち、本実施形態の導電体の製造方法の1つの側面は、前記導電性組成物を、前記基材の少なくとも一つの面上に塗布すること;
前記塗布した導電性組成物を乾燥して塗膜を形成すること;および
前記塗膜を常温(25℃~30℃)で1分間~60分間放置する、あるいは加熱処理を行うこと、を含み、
前記加熱処理における加熱温度は、40℃~250℃であり、前記加熱処理時間は1時間以内である、製造方法である。
【0075】
本実施形態の積層体の製造方法は、化学増幅型レジスト層を少なくとも一つの面上に有する基材における前記化学増幅型レジスト層上に、前記導電性組成物を塗布すること;
前記塗布した導電性組成物を乾燥して塗膜を形成すること;および前記塗膜を常温(25℃~30℃)で1分間~60分間放置する、あるいは加熱処理を行うこと、を含み、
前記加熱処理における加熱温度は、40℃~250℃であり、
前記加熱処理時間は、1時間以内である、製造方法である。
【0076】
レジスト層としては、ポジ型又はネガ型の化学増幅型レジストからなる層が挙げられる。
ポジ型の化学増幅型レジストとしては、電子線に感度を有するものであれば特に限定されず、公知のものを使用できる。典型的には、電子線の照射により酸を発生する酸発生剤と、酸分解性基を有する構成単位を含む重合体とを含有するものが用いられる。
ネガ型の化学増幅型レジストとしては、電子線に感度を有するものであれば特に限定されず、公知のものを使用できる。典型的には、電子線の照射により酸を発生する酸発生剤と、現像液に可溶性の重合体と、架橋剤とを含有するものが用いられる。
【0077】
レジスト層は、公知の方法により形成できる。例えば基材の片面上にポジ型又はネガ型の化学増幅型レジストの有機溶剤溶液を塗布し、必要に応じて加熱(プリベーク)を行うことにより、ポジ型又はネガ型のレジスト層を形成する。
【0078】
本実施形態の積層体の1つの側面は、少なくとも基材の1つの面上に、化学増幅型レジスト層と、前記化学増幅レジスト層上に、本実施形態の導電性組成物から形成される層とを含む、マスクブランクスである。
本実施形態のマスクブランクスを用いてレジストパターンを形成する方法は、電子線描画におけるチャージアップを防止できる。
【0079】
本実施形態の導電性組成物は、優れた塗布性及び導電性を示す。また、界面活性剤として用いるポリオキシアルキレン骨格を有する水溶性ポリマー(b)は、加水分解による副生成物が生じにくいため、基材に塗布されたレジスト等の積層物への影響が少ない塗膜を形成することができる。
【0080】
本実施形態の導電性組成物、及びこれを用いた導電体の具体的用途としては、各種帯電防止剤、電子線リソグラフィー時の帯電防止剤、コンデンサー、電池、EMIシールド、化学センサー、表示素子、非線形材料、防食剤、接着剤、繊維、帯電防止塗料、防食塗料、電着塗料、メッキプライマー、電気防食、包装材料、磁気カード、磁気テープ、磁気ディスク、写真フィルム、印刷材料、離形フィルム、ヒートシールテープ・フィルム、ICトレイ、ICキャリアテープ、カバーテープ、電池等が挙げられる。
このうち、本実施形態の導電性組成物は、基材への影響が少ない塗膜が得られるため、帯電防止剤として好適に用いることができる。
【実施例
【0081】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0082】
「測定・評価方法」
実施例及び比較例における各種測定・評価方法は以下の通りである。
<塗布性の評価>
基材として、4インチシリコンウエハー上に、導電性組成物を1.3mL滴下し、スピンコーターにて、基材表面全体を覆うように、2000rpm×60秒間の条件で回転塗布した後、ホットプレートにて80℃で2分間加熱処理を行い、基材上に膜厚約20nmの塗膜を形成した。
得られた塗膜の表面粗さ(Ra)を、段差・表面あらさ・微細形状測定装置(ケーエルエー・テンコール株式会社製、「プロファイラーP-16」)にて測定し、以下の評価基準にて塗布性を評価した。Raが小さいほど塗布性に優れることを意味する。
○:Raが6.0nm以下である。
△:Raが6.0nm超、10.0nm以下である。
×:Raが10.0nm超である。
【0083】
<導電性の評価>
ハイレスタUX-MCP-HT800(株式会社三菱ケミカルアナリテック製)を用い2端子法(電極間距離20mm)にて、塗膜の表面抵抗値(単位:Ω/□)を測定した。
表において、表面抵抗値は記号Eを用いた指数表示で示す。例えば「2.5E+09」は「2.5×10の9乗」を表す。
【0084】
<界面活性剤(B)の分子量の測定>
界面活性剤(B)の0.1質量%水溶液を、0.45μmのメンブレンフィルターにて濾過し、サンプル調整を行なった。前記サンプルのGPC測定を以下の条件で行い、界面活性剤(B)の質量平均分子量(Mw)を測定した。
測定機:TOSOH GPC-8020(東ソー社製)。
溶離液:0.2M―NaNO-DIW/アセトニトリル=80/20(v/v)。
カラム温度:30℃。
検量線:EasiVialTMポリエチレングリコール/オキシド(PolymerLab社製)を用いて作成。
【0085】
各実施例及び比較例で使用した各成分は次の通りである。
<導電性物質(A)>
a-1;ポリメトキシアニリンスルホン酸。下記製造例1で製造した導電性ポリマー(a-1)、Mw1万。
<界面活性剤(B)を構成する水溶性ポリマー(b)>
表1に、HLB値、末端疎水化度、及びオキシアルキレン基含有量を示す。
b-1;ポリエチレングリコールモノドデシルエーテル(東京化成工業(株)製、Mw600)。
b-2;ポリエチレングリコール(東京化成工業(株)製、Mw600)。
b-3;下記製造例2の方法で、Mw600のポリエチレングリコールをアセチル化したアセチル化ポリエチレングリコール(b-3)。
b-4;下記製造例3の方法で、Mw600のポリエチレングリコールをアセチル化したアセチル化ポリエチレングリコール(b-4)。
b-5;下記製造例4の方法で、Mw600のポリエチレングリコールをアセチル化したアセチル化ポリエチレングリコール(b-5)。
b-6;下記製造例5の方法で、Mw600のポリエチレングリコールをアセチル化したアセチル化ポリエチレングリコール(b-6)。
b-7;下記製造例6の方法で、Mw600のポリエチレングリコールをアセチル化したアセチル化ポリエチレングリコール(b-7)。
b-8;オルフィン1010(日信化学工業(株)製品名)、アセチレン系界面活性剤。
b-9;オルフィン1020(日信化学工業(株)製品名)、アセチレン系界面活性剤。
b-10;オルフィンEXP4123(日信化学工業(株)製品名)、アセチレン系界面活性剤。
b-11;変性シリコーンオイルKF-354L(信越化学工業(株)製品名)、オルガノシロキサン系界面活性剤、25℃における粘度200mm/s。
b-12;変性シリコーンオイルKF-640(信越化学工業(株)製品名)、オルガノシロキサン系界面活性剤、25℃における粘度20mm/s。
<比較の水溶性ポリマー>
b-13;下記製造例7で製造した水溶性ポリマー(b-13)。末端疎水基として炭素数18のアルキルチオ基を有するポリビニルピロリドン誘導体、Mw4800。
<溶剤(C)>
c-1;超純水。
c-2;イソプロピルアルコール。
【0086】
(製造例1:導電性ポリマー(a-1)の製造)
3-アミノアニソール-4-スルホン酸1molを、4mol/Lのピリジンのアセトニトリル水溶液(水/アセトニトリル=3:7)300mLに0℃で溶解し、モノマー溶液を得た。別途、ペルオキソ二硫酸アンモニウム1molを、アセトニトリル水溶液(水/アセトニトリル=3:7)1Lに溶解し、酸化剤溶液を得た。ついで、前記酸化剤溶液を5℃に冷却しながら、前記モノマー溶液を滴下した。滴下終了後、更に25℃で12時間撹拌して、導電性ポリマーを含む反応混合物を得た。その後、前記反応混合物から導電性ポリマーを遠心濾過器にて濾別した。得られた導電性ポリマーをメタノールにて洗浄した後、乾燥させ、粉末状の導電性ポリマー(a-1)185gを得た。得られた導電性ポリマー(a-1)のMwは1万であった。
【0087】
(製造例2:アセチル化ポリエチレングリコール(b-3)の製造)
Mw600のポリエチレングリコール(東京化成工業社(株)製)1mmolを、ピリジン6.0gに20℃で溶解し、アセチルクロライド(東京化成工業(株)製)0.9mmol加え、2時間撹拌後、溶媒留去して、アセチル化ポリエチレングリコール(b-3)を得た。
【0088】
(製造例3:アセチル化ポリエチレングリコール(b-4)の製造)
製造例2において、アセチルクロライドの量を0.8mmolに変更すること以外は製造例2と同様にして、アセチル化ポリエチレングリコール(b-4)を得た。
【0089】
(製造例4:アセチル化ポリエチレングリコール(b-5)の製造)
製造例2において、アセチルクロライドの量を0.6mmolに変更すること以外は製造例2と同様にして、アセチル化ポリエチレングリコール(b-5)を得た。
【0090】
(製造例5:アセチル化ポリエチレングリコール(b-6)の製造)
製造例2において、アセチルクロライドの量を0.4mmolに変更すること以外は製造例2と同様にして、アセチル化ポリエチレングリコール(b-6)を得た。
【0091】
(製造例6:アセチル化ポリエチレングリコール(b-7)の製造)
製造例2において、アセチルクロライドの量を0.2mmolに変更すること以外は製造例2と同様にして、アセチル化ポリエチレングリコール(b-7)を得た。
【0092】
(製造例7:水溶性ポリマー(b-13)の製造)
ビニルモノマーとしてN-ビニルピロリドン55g、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1g、及び末端疎水性基導入のための連鎖移動剤としてn-オクタデシルメルカプタン0.16gを、溶剤であるイソプロピルアルコール100mlに撹拌溶解して反応溶液を得た。その後、予め80℃に加熱しておいたイソプロピルアルコール中に、前記反応溶液を1ml/minの滴下速度で滴下し、滴下重合を行った。滴下重合は、イソプロピルアルコールの温度を80℃に保ちながら行った。滴下終了後、80℃で更に2時間熟成した後、放冷した。その後、減圧濃縮を行い、得られた反応物を少量のアセトンに再溶解した。この反応物のアセトン溶液を、過剰のn-ヘキサンに滴下することで得られた白色沈殿を濾別し、n-ヘキサンで洗浄した後乾燥させ、45gの水溶性ポリマー(b-13)を得た。
【0093】
【表1】
【0094】
(実施例1~14、比較例1、2)
表2、3に示す配合で、導電性物質(A)と、界面活性剤(B)と、溶剤(C)とを混合して導電性組成物を調製した。
界面活性剤(B)としてのHLB値、末端疎水化度、及び導電性組成物の総質量に対する、導電性物質(A)界面活性剤(B)、溶剤(C)の含有量を表に示す。
得られた導電性組成物について、上記の方法で塗布性及び導電性を評価した。結果を表に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
導電性ポリマー(a-1)と、HLB値9.0以上19.8以下の界面活性剤(B)を用いた実施例1~14は、HLB値19.8を超える界面活性剤(B)を用いた比較例1よりも、塗装性が向上した。
また、ポリオキシアルキレン骨格を持たない水溶性ポリマーを用いた比較例2は、塗布性が劣り、十分な導電性が得らなかった。
これらの結果より、HLB値9.0以上19.8以下の、ポリオキシアルキレン骨格を有する水溶性ポリマーからなる界面活性剤(B)を、導電性組成物も含有させることにより、塗布性が向上し、良好な導電性を持つ塗膜が得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の導電性組成物によれば、良好な塗布性、及び導電性を示し、基材に塗布されたレジスト等の積層物への影響が少ない塗膜を形成することができるので、産業上極めて有用である。