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特許7435360流体循環装置及び流体循環装置に用いられる運転制御システム
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  • 特許-流体循環装置及び流体循環装置に用いられる運転制御システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】流体循環装置及び流体循環装置に用いられる運転制御システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 9/02 20060101AFI20240214BHJP
   H02J 9/08 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G05B9/02 A
H02J9/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020141566
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037432
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】荻本 紘史
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-039415(JP,A)
【文献】特開2014-120096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 9/02
H02J 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を送液して循環させる循環ポンプを備えた流体循環装置であって、
前記循環ポンプから送液される流体の通路に自動開閉弁が設けられており、
前記自動開閉弁は、当該流体循環装置の電力系統が停電した場合に、
前記電力系統の停電の検知信号と、該停電の検知により作動する非常用電源の作動の検知信号とによって制御される、
流体循環装置。
【請求項2】
前記循環ポンプは、装置設備における高さ方向の高い位置に流体を送液して循環させるためのものである、
請求項1に記載の流体循環装置。
【請求項3】
当該流体循環装置における電力系統の停電を検知する停電検知部と、
前記停電検知部による停電の検知信号により作動する非常用電源の作動を検知する作動検知部と、
前記自動開閉弁の開閉を制御する制御部と、
を備える運転制御部を備える、
請求項1又は2に記載の流体循環装置。
【請求項4】
前記運転制御部では、
前記作動検知部による作動の検知信号の受信に基づいて、前記制御部が前記自動開閉弁を閉状態とするように制御する、
請求項3に記載の流体循環装置。
【請求項5】
前記運転制御部では、
前記循環ポンプの起動に際して、前記制御部が前記自動開閉弁を開状態とするように制御する、
請求項4に記載の流体循環装置。
【請求項6】
当該流体循環装置は、
電解処理を行う電解槽と、
前記循環ポンプから送液された流体の温度を調整する熱交換器と、
をさらに備え、
電解処理に用いられる、
請求項1乃至5のいずれかに記載の流体循環装置。
【請求項7】
装置設備における高さ方向の高い位置に流体を送液して循環させる循環ポンプと、該循環ポンプから送液される流体の通路に設けられる自動開閉弁と、を有する流体循環装置に用いられる運転制御システムであって、
前記流体循環装置における電力系統の停電を検知する停電検知部と、
前記停電検知部による停電の検知信号により作動する非常用電源の作動を検知する作動検知部と、
前記自動開閉弁の開閉を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記作動検知部による前記非常用電源の作動の検知信号を受信すると、前記自動開閉弁を閉状態とするように制御する、運転制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電解処理に用いられる流体循環装置及び流体循環装置に用いられる運転制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の生産工場においては、生産能力や生産効率の向上の観点から多くの生産装置が設置されるようになっている。例えば、銅製錬工場を例に挙げると、自熔炉、転炉、精製炉に付随したボイラー、各種の循環ポンプ、冷却塔等の設備機器が、工場の生産性を維持するために設置されている。
【0003】
このような生産工場においては通常、震災等により電力系統が停電することに備えて通常の操業に使用する電力系統(通常電力系統)と、通常用電力系統が停電したときに発動する非常電力系統とが設けられている。そして、停電を検知したときに、非常電力系統に切り替えて、ディーゼル発電機等の非常用電源が自動起動するようになっている。そして、非常用電源の電圧が確立すると、決められた複数台の設備機器(負荷設備機器)に送電され、その負荷設備機器を起動させるようになっている。
【0004】
例えば、特許文献1には、緊急時の対応の観点から、起動させる起動負荷の重複による非常用電源の容量逼迫を防止するため、決められた起動順番通りに負荷装置を自動起動させる運転制御システムが開示されている。
【0005】
特許文献1によれば、非常用電力系統による起動負荷の重複を防止することができ、起動させるべき設備機器を遅滞なく効率的に起動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-180858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、こうした負荷設備機器としては、例えば電解処理に用いられる装置がある。このような装置は、電解処理を行う電解槽を備えており、さらに流体を送液して循環させる循環ポンプを備えている。
【0008】
しかしながら、このような流体循環装置において、流体を循環させながら所定の処理を行っているときに流体循環装置の電力系統が停電すると、非常用電力系統によって再起動することが困難となることがあった。例えば、流体循環装置の電力系統が停電して、装置内の高さ方向の高い位置に流体を送液する循環ポンプが停止すると、高い位置に存在する流体が循環ポンプにまで逆流することがある。逆流した状態で循環ポンプを起動すると、循環ポンプに過剰な負荷がかかることによりトリップが発生してしまう恐れがある。そのため、流体が逆流した状態で循環ポンプを再起動することは困難であるといえる。
【0009】
本発明は、上述したような実情に鑑みて提案されたものであり、流体を送液して循環させる循環ポンプを備えた流体循環装置において、装置の電力系統が停電した場合に非常用電力系統により装置を再起動させるにあたり、トリップの発生等の問題が発生することなく再起動させることができるようにする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、循環ポンプから送液される流体の流路に自動開閉弁を設け、装置の電力系統が停電した場合に、所定の検知信号に基づいて自動開閉弁を制御することで、上述した課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
(1)本発明の第1は、流体を送液して循環させる循環ポンプを備えた流体循環装置であって、前記循環ポンプから送液される流体の通路に自動開閉弁が設けられており、前記自動開閉弁は、当該流体循環装置の電力系統が停電した場合に、前記電力系統の停電の検知信号と、該停電の検知により作動する非常用電源の作動の検知信号とによって制御される、流体循環装置である。
【0012】
(2)本発明の第2は、第1の発明において、前記循環ポンプは、装置設備における高さ方向の高い位置に流体を送液して循環させるためのものである、流体循環装置である。
【0013】
(3)本発明の第3は、第1又は第2の発明において、当該流体循環装置における電力系統の停電を検知する停電検知部と、前記停電検知部による停電の検知信号により作動する非常用電源の作動を検知する作動検知部と、前記自動開閉弁の開閉を制御する制御部と、を備える運転制御部を備える、流体循環装置である。
【0014】
(4)本発明の第4は、第3の発明において、前記運転制御部では、前記作動検知部による作動の検知信号の受信に基づいて、前記制御部が前記自動開閉弁を閉状態とするように制御する、流体循環装置である。
【0015】
(5)本発明の第5は、第4の発明において、前記運転制御部では、前記循環ポンプの起動に際して、前記制御部が前記自動開閉弁を開状態とするように制御する、流体循環装置である。
【0016】
(6)本発明の第6は、第1乃至第5のいずれかに記載の発明において、当該流体循環装置は、電解処理を行う電解槽と、前記循環ポンプから送液された流体の温度を調整する熱交換器と、をさらに備え、電解処理に用いられる、流体循環装置である。
【0017】
(7)本発明の第7は、装置設備における高さ方向の高い位置に流体を送液して循環させる循環ポンプと、該循環ポンプから送液される流体の通路に設けられる自動開閉弁と、を有する流体循環装置に用いられる運転制御システムであって、前記流体循環装置における電力系統の停電を検知する停電検知部と、前記停電検知部による停電の検知信号により作動する非常用電源の作動を検知する作動検知部と、前記自動開閉弁の開閉を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記作動検知部による前記非常用電源の作動の検知信号を受信すると、前記自動開閉弁を閉状態とするように制御する、運転制御システムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、循環ポンプを備えた流体循環装置において、非常用電力系統により装置を再起動させるにあたり、トリップの発生等の問題が発生することなく再起動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】流体循環装置の構成を示す構成図である。
図2】運転制御システムの構成を示すブロック図である。
図3】運転制御部による自動開閉弁を閉状態とするように制御するまでの流れを示すフローチャートである。
図4】運転制御部による各電力負荷機器の起動制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
【0021】
≪1.流体循環装置≫
<1-1.流体循環装置の構成>
図1に本実施の形態に係る流体循環装置の構成を示す。当該流体循環装置は、処理槽としての電解槽と、その電解槽に電解液を循環させる循環ポンプとを備え、電解処理に用いられる装置である。具体的に、流体循環装置1は、電解槽11と、貯蔵槽12と、循環ポンプ13と、熱交換器14と、供給槽15と、を備える。また、流体循環装置1は、循環ポンプ13から送液される電解液の流路(循環ポンプ13の下流側の流路)に自動開閉弁16を備えている。さらに、流体循環装置1は、自動開閉弁16の弁開閉を制御する運転制御部2を備えている。
【0022】
なお、図1に示す流体循環装置1の構成図は、図紙面の上下が装置設備の高さ方向に対応するように表されている。すなわち、図1に示すように、流体循環装置1の設備において、電解槽11よりも高さ方向で下方に貯蔵槽12が配置されており、また、電解槽11よりも高さ方向で上方に供給槽15が配置されている。詳しくは後述するが、流体循環装置1では、貯蔵槽12に貯蔵された電解液(処理液)を、循環ポンプ13によって、高さ方向で上方に位置する供給槽15に汲み上げるように循環するようになっている。
【0023】
流体循環装置1において、反応処理槽である電解槽11では、電解液(以下、処理液ともいう。)が保持されており、アノードとカソードが装入されて電解処理が行われている。例えば、電解槽11での電解処理は、銅の電解製錬を挙げることができる。なお、アノードとカソードはそれぞれ1枚ずつであってもよいし、複数枚のアノードとカソードが交互に装入されていてもよい。
【0024】
流体循環装置1においては、電解槽11から外部に処理液を排出可能に構成されている。電解槽11から排出された処理液は、自重で落下して貯蔵槽12に送液され、貯蔵される。貯蔵槽12は、処理液の流路となる配管を介して高さ方向の高い位置にある熱交換器14及び供給槽15と連結されており、その流路配管には処理液を送液して循環させる循環ポンプ13が設けられている。
【0025】
循環ポンプ13によって送液された処理液は、熱交換器14を通過することで、所望の温度に調整され、供給槽15に送液されて貯蔵される。供給槽15では、循環ポンプ13により循環された処理液である電解液を貯蔵し、その後に再び電解槽11へ電解液を送液して供給する。このように、流体循環装置1においては、処理液である電解液が循環されるようになっている。
【0026】
<1-2.自動開閉弁について>
ここで、上述したように、循環ポンプ13の下流側の流路配管には自動開閉弁16が設けられている。自動開閉弁16は、循環ポンプ13によって送液される処理液の流路を開閉するように作動する。
【0027】
流体循環装置1において、通常の操業時には、自動開閉弁16は開状態となっており、循環ポンプ13から高さ方向の高い位置に設けられている供給槽15まで処理液を送液できるようになっている。なお、自動開閉弁16が「開状態」にあるとは、配管により構成される流路を開いた状態であり、この自動開閉弁16が設けられた流路配管内を処理液が流通可能な状態となっていることを意味する。
【0028】
一方、自動開閉弁16は、運転制御部2によってその開閉が制御されるように構成されており、流体循環装置1の電力系統が停電した場合には、運転制御部2により、電力系統の停電の検知信号に基づいて自動開閉弁16が閉状態となるように制御される。なお、自動開閉弁16が「閉状態」にあるとは、配管により構成される流路を閉じた状態であり、この自動開閉弁16が設けられた流路配管内を処理液が流通不可の状態となっていることを意味する。
【0029】
より具体的には、自動開閉弁16は、その開閉を制御する運転制御部2と電気的に接続されている。運転制御部2は、流体循環装置1の電力系統の停電を検知する停電検知部21と、停電の検知信号により作動する非常用電源の作動を検知する作動検知部22と、自動開閉弁16の開閉を制御する制御部23と、を少なくとも有している(後で図2を参照しながらより詳細に説明する。)。制御部23は、停電検知部21による停電の検知信号と、作動検知部22による作動の検知信号とを受信すると、自動開閉弁16が閉状態となるように制御する。これにより、流体循環装置1の電力系統に停電が生じた場合でも、高さ方向で高い場所に位置にする供給槽15へ循環送液途中の処理液が、循環ポンプ13に逆流してしまい、その結果としてトリップが発生して再起動が困難な状態となることを効果的に防ぐことができる。
【0030】
<1-3.運転制御部の構成について>
図2は、流体循環装置1を構成する運転制御部2の構成を示す図である。図2には、流体循環装置1に接続された非常用電源3も併せて示している。非常用電源3は、流体循環装置1に備えられた非常用電力系統の電源であり、震災等により通常用電力系統が全停電したときに、後述する停電検知部21からの停電検知信号を受信し、非常用電力系統を発動させて循環ポンプ13を含む負荷設備機器群を起動させる。なお、非常用電源3としては、特に限定されず、例えばディーゼルエンジン発電機(DEG)を使用できる。
【0031】
運転制御部2は、流体循環装置1における電力系統の停電を検知する停電検知部21と、非常用電源3の作動を検知する作動検知部22と、制御部23と、を有している。
【0032】
停電検知部21は、流体循環装置1の電力系統が停電したことを検知する。停電検知部21は、非常用電源3と、制御部23と電気的に接続されており、流体循環装置1の電力系統が停電したことを検知すると、その停電検知信号を非常用電源3及び制御部23に出力する。
【0033】
作動検知部22は、非常用電源3が作動したことを検知する。作動検知部22は、非常用電源3と、制御部23と電気的に接続されており、非常用電源3が作動したことを検知すると、その作動検知信号を制御部23に出力する。
【0034】
制御部23は、流体循環装置1を構成する電力負荷機器の作動を制御する。流体循環装置1においては特に、この制御部23は、循環ポンプ13の下流側の流路に設けられた自動開閉弁16の開閉を制御するように構成されている。作動検知部22からの非常用電源の作動の検知信号(作動検知信号)を受信して、自動開閉弁16の開閉を制御する。
【0035】
より具体的には、制御部23は、流体循環装置1の電力系統が停電となったことに伴い、作動検知部22から作動検知信号を受信すると、自動開閉弁16を閉状態とするように制御する。つまり、制御部23は、自動開閉弁16が閉状態となるように制御することで、循環ポンプ13と、熱交換器14及び供給槽15との間の流路配管を介した処理液の流通を遮断するようにし、電力系統が停電となった時点において循環ポンプ13から供給槽15に向けて送液された処理液が、その循環ポンプ13内に逆流してくることを防止している。
【0036】
また、制御部23は、流体循環装置1における非常用電源3による各電力負荷機器の起動を制御する。各電力負荷機器の起動制御の流れについては後で詳述するが、制御部23は、例えば、電力負荷機器の一つである循環ポンプ13を所定の流れで作動制御して起動を開始させるに際して、自動開閉弁16を開状態となるように制御する。すなわち、制御部23は、電力負荷機器である循環ポンプ13の起動(非常用電源による起動)の準備が整った段階で、その運転信号を受信して、自動開閉弁16を開状態となるように制御し、これにより、起動を開始する循環ポンプ13から送液される処理液が、自動開閉弁16が設けられた流路配管を介して供給槽15にスムースに流通することを可能にする。
【0037】
<1-4.自動開閉弁を閉状態とする制御の流れ>
図3は、流体循環装置1の電力系統が全停電したときの運転制御部2による自動開閉弁16を閉状態とするように制御するまでの流れを示すフローチャートである。運転制御部2において、制御部23は、停電検知部21による停電検知の情報(停電検出信号)の有無を常時監視し、停電を検出すると停電シーケンスに入る。
【0038】
先ず、停電シーケンスに入ると、制御部23は、停電検知部21からの停電検出信号の有無の確認(ON確認)を実行する(ステップSP1)。そして、制御部23が停電検出信号の受信を確認すると(YES)、ステップSP2に移行する。このとき、停電検知部21は、停電検出信号を非常用電源3にも送信する。停電検知部21から停電検出信号を受信した非常用電源3は、非常電力系統の作動を開始させる。一方で、非常用電源3での電力系統の作動を検知した作動検知部22は、非常用電源作動信号を制御部23に送信する。
【0039】
次に、ステップSP2において、制御部23は、復電に先立ち、負荷設備機器群を構成する設備機器のうちの起動が不要な設備機器についての運転指令の出力を切断する出力断処理を行う。これにより、起動が不要な設備機器の起動による電力容量が逼迫することを防ぐことができる。
【0040】
次に、ステップSP3において、制御部23が作動検知部22からの非常用電源の作動の検知信号の受信を確認すると(YES)、ステップSP4に移行する。一方で、作動検知部22からの検知信号の受信が確認されない場合には、繰り返し確認作業を行う。
【0041】
次に、ステップSP4において、作動検知部22からの検知信号を受信した制御部23は、流体循環装置を構成する自動開閉弁16を閉状態とするように制御する。これにより、電力系統が停電となった時点において供給槽15に向けて送液された処理液が、その循環ポンプ13内に逆流してくることを防止することができる。
【0042】
<1-5.自動開閉弁を開状態とする制御及び各電力負荷機器の起動制御の流れ>
次に、自動開閉弁16が閉状態となった後に、自動開閉弁16を開状態とする制御及び循環ポンプ13を含む各電力負荷機器の起動制御の流れについて説明する。図4は、図3のステップSP4において自動開閉弁16が閉状態となった後の各電力負荷機器に対する起動制御するときの流れをフローチャートである。すなわち、図4は自動開閉弁16が閉状態となることでステップSP4からステップSP5に移行してから設備機器のすべてが起動するまでのフローチャートである。この起動制御では、制御部23は、自動起動の対象である循環ポンプ13などの設備機器に対して順次に起動指令を出力して起動させる。
【0043】
ステップSP5において、制御部23は、起動時間計測部による自動起動管理タイマをスタートさせ、設備機器の起動までの計時を開始する。
【0044】
次に、ステップSP6において、制御部23は、起動時間計測部による自動起動管理タイマのカウントアップを開始する。
【0045】
次に、ステップSP7において、制御部23は、起動させる設備機器までの送電系統が充電されているか否かの確認を行う。設備機器までの送電系統が充電されているか否かの確認を行い、充電されていない場合には(NO)、ステップSP8に移行する。ステップSP8において、自動起動除外フラグをON状態とするとともに起動失敗メッセージをON状態とし、その設備機器の自動起動シーケンスを中断し、次の起動順序の設備機器の自動起動シーケンスに移行する。
【0046】
一方で、送電系統が充電されていることを確認すると(ステップSP7のYES)、次にステップSP9に移行する。ステップSP9において、制御部23は、起動させる負荷装置の運転条件が成立しているか否かの確認を行う。運転条件とは、例えば、設備機器が循環ポンプである場合には、処理液(流体)を送液する圧力等の作動条件が挙げられる。
【0047】
ステップSP9において設備機器の運転条件が成立していないと判断される場合には(NO)、ステップSP10に移行する。ステップSP10において、制御部23は、自動起動待機フラグをON状態とするとともに待機時間管理タイマをスタートさせ、設備機器の起動の運転条件が満足されるまで待機する。そして、任意に設定した待機時間が経過しても、その起動のための運転条件が成立しない場合には、ステップSP12に移行して、自動起動待機フラグをOFF状態とするとともに待機時間管理タイマをストップし、次の起動順序の設備機器の自動起動シーケンスに移行する。
【0048】
ステップSP9において設備機器の運転条件が成立していると判断される場合には(YES)、ステップSP11に移行する。ステップSP11において、制御部23は、設備機器に電力を供給する非常用電源3からの負荷投入可能容量の確認を行い、負荷容量からして設備機器を起動させることができるか否かの判断を行う。
【0049】
ステップSP11において非常用電源の容量が十分ではないと判断される場合には(NO)、ステップSP10に移行する。ステップSP10において制御部23は、自動起動待機フラグをON状態とするとともに待機時間管理タイマをスタートさせ、負荷投入可能容量が満足な状態となるまで待機する。そして、任意に設定した待機時間が経過しても、その負荷投入可能容量が十分とならない場合には、ステップSP12に移行する。ステップSP12において自動起動待機フラグをOFF状態とするとともに待機時間管理タイマをストップし、次の起動順序の設備機器の自動起動シーケンスに移行する。
【0050】
ステップSP11において非常用電源3の容量が十分であると判断される場合には(YES)、ステップSP13に移行する。ステップSP13において、起動させる設備機器が循環ポンプ13である場合に、制御部23は自動開閉弁16を開状態とするように制御する。このように循環ポンプ13の起動に際して、閉状態となっていた自動開閉弁16を開状態にすることで処理液が流路配管内を流通可能な状態にする。なお、起動させる設備機器が循環ポンプ13とは異なる場合には、このステップSP13はスキップしてステップSP14に移行する。
【0051】
次に、ステップSP14において、制御部23は、運転条件が成立した循環ポンプ13を含む設備機器に対して運転指令を出力する(負荷運転信号ON)。
【0052】
次に、ステップSP15において、制御部23は、運転指令を出力した設備機器の負荷起動を確認する。そして、制御部23は、任意に設定した時間が経過しても負荷起動が確認されないと(NO)、ステップSP16に移行し、負荷起動が確認されると(YES)、ステップSP17に移行する。
【0053】
ステップSP16では、任意に設定した時間が経過しても設備機器の負荷起動が確認されなかったことに伴い、自動起動失敗フラグをON状態にするとともに起動失敗メッセージをON状態にし、次の起動順序の設備機器の自動起動シーケンスに移行する。
【0054】
ステップSP17では、設備機器の負荷起動が確認されたことに伴い、自動起動成功フラグをON状態にする。
【0055】
次に、ステップSP18において、制御部23は、負荷設備機器群を構成する設備機器のすべての起動が終了したか否かを確認する(全負荷起動工程終了確認)。設備機器の起動が完了すると、事前に決定した起動順序に従い、自動起動シーケンスに順次移行して自動起動が開始する。すなわち、ステップSP18の確認の結果の「NO」のフローが、次の起動順序のシーケンスへの移行フローとなる。このとき、先述したステップSP13において処理液が流路配管内を流通可能な状態としたことで、循環ポンプ13から供給槽15まで処理液を送液することが可能となる。
【0056】
そして、ステップSP18において負荷設備機器群を構成する設備機器のすべての起動が終了したと判断すると(YES)、停電シーケンス完了メッセージをON状態とし、自動制御シーケンスを停止する。
【0057】
このように、流体循環装置内の設備機器の起動負荷が重複しないように段階的に起動するようにすることで、起動負荷の重複を防止して、操作者による操作を介すことなく効率的に自動起動させることができる。
【0058】
<1-6.流体循環装置での設備機器の起動順序>
複数の設備機器を有する図1の流体循環装置1での設備機器の起動順序の一例を説明する。電力系統により稼働する設備機器は、図1の流体循環装置1内においては、循環ポンプ13、熱交換器14が該当する。なお、電解槽11はアノードやカソードに対する通電等により必要となる電力量が相対的に多いことから、非常用電源の電力系統により稼働させるのではなく、常用電源が復電した後に通常電力系統により稼働させることが好ましい。
【0059】
まず、制御部23は、循環ポンプ13に送電系統が充電されており、非常用電源3の容量が十分であると判断されて循環ポンプ13が起動可能な状態であることが確認されると、循環ポンプ13の起動を指示する。この循環ポンプ13の起動に際して、自動開閉弁16は開状態となるように制御される。
【0060】
次に、送電系統が充電されていることが確認された熱交換器14に対して起動を指示する。具体的には非常用電源からの非常用電力系統により熱交換器14に備えられるボイラー等の熱源やタービン等を起動させて、熱交換器としての機能を回復させる。
【0061】
上記の起動順序を経ることにより、起動を開始する循環ポンプ13から送液される処理液を、自動開閉弁16が設けられた流路配管を介して供給槽15にスムースに流通することができる。また、循環ポンプ13が熱交換器14よりも優先して起動するので、貯蔵槽12に貯蔵された電解液(処理液)を供給槽15に汲み上げることが可能となっており、供給槽15中の電解液(処理液)が無くなったりすることや、貯蔵槽12中で電解液(処理液)がオーバーフローしてしまうことを効果的に防止することができる。また、熱交換器14によって流通する処理液を所望の温度に速やかに調整することができる。
【0062】
上記の起動順序を経ることにより、処理液が電解槽11に保持された状態で、速やかに循環が再開するとともに処理液を所望の温度に速やかに調整できるので、常用電源が復電した後に電解槽11でのアノードやカソードに対する通電の再開を速やかに行うことができる。つまり、電解処理の再開を速やかに行うことが可能である。
【0063】
≪2.運転制御システム≫
上述した流体循環装置1における運転制御部2については、その流体循環装置1とは独立した構成の運転制御システムとしても定義できる。すなわち、例えば、装置設備における高さ方向の高い位置に流体を送液して循環させる循環ポンプと、その循環ポンプから送液される流体の通路に設けられる自動開閉弁と、を有する流体循環装置に用いられる運転制御システムとして定義することができる。
【0064】
具体的に、この運転制御システムは、流体循環装置における電力系統の停電を検知する停電検知部と、停電検知部による停電の検知信号により作動する非常用電源の作動を検知する作動検知部と、自動開閉弁の開閉を制御する制御部と、を備える。
【0065】
そして、制御部は、作動検知部による非常用電源の作動の検知信号を受信すると、自動開閉弁を閉状態とするように制御する。これにより循環ポンプと、その循環ポンプよりも高い位置にある装置設備間の流路配管を介した処理液の流通を遮断するようにし、高い位置にある装置設備に向けて送液された処理液が、その循環ポンプ内に逆流してくることを防止することができる。
【0066】
運転制御システムの構成や、運転制御システムを構成する制御部による制御の流れについては、上述した一例の流体循環装置1を構成する運転制御部2と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0067】
この運転制御システムの制御部により、循環ポンプを含む各電力負荷機器の起動を制御してもよい。そして、その循環ポンプの起動に際して、制御部が自動開閉弁を開状態とするように制御することで、循環ポンプから送液される流体が高い位置にある装置設備に向けて送液することが可能となる。また、起動負荷が重複しないように段階的に各電力負荷機器を起動するようにすることで、起動負荷の重複を防止することができる。各電力負荷機器の起動制御の流れについては、上述した運転制御部による各電力負荷機器に対して起動制御するときの流れと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0068】
なお、このような運転制御システムについては、循環ポンプと、循環ポンプから送液される流体の通路に設けられる自動開閉弁と、を有する流体を循環させる装置であれば、電解処理に用いられる流体循環装置に限られず、いずれの装置に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 流体循環装置
11 電解槽
12 貯蔵槽
13 循環ポンプ
14 熱交換器
15 供給槽
16 自動開閉弁
2 運転制御部
21 停電検知部
22 作動検知部
23 制御部
3 非常用電源
図1
図2
図3
図4