(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】キャリアプレートの研磨方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
H01L21/304 621A
H01L21/304 622G
(21)【出願番号】P 2020214814
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】御厨 俊介
(72)【発明者】
【氏名】田久保 伸弥
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-198864(JP,A)
【文献】特表2020-529332(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159213(WO,A1)
【文献】特開2015-174168(JP,A)
【文献】特開2006-026760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハを保持するウェーハ保持孔を備えるキャリアプレートと、前記キャリアプレートを挟んで対向して配置され、表面に研磨パッドが設けられた上定盤および下定盤とを備え、前記キャリアプレート、前記上定盤および前記下定盤を相対的に回転させつつ研磨液を供給することにより、前記ウェーハ保持孔に保持された半導体ウェーハの表裏面を同時に化学機械研磨する両面研磨装置における、前記キャリアプレートを研磨する方法であって、
前記両面研磨装置における前記研磨パッドとして、粒径
3μm以上の砥粒が埋め込まれた砥粒含有層を表面に有する研磨パッドを用い、
製造後未使用の研磨対象のキャリアプレートを前記両面研磨装置における前記上定盤と前記下定盤とで挟み、前記研磨対象のキャリアプレート、前記上定盤および前記下定盤を相対的に回転させつつ研磨液を供給して前記研磨対象のキャリアプレートの両面を研磨することを特徴とするキャリアプレートの研磨方法。
【請求項2】
前記砥粒の材料は、アルミナまたはダイヤモンドである、請求項1に記載のキャリアプレートの研磨方法。
【請求項3】
研磨液は、スラリー、水または界面活性剤入り水溶液である、請求項1または2に記載のキャリアプレートの研磨方法。
【請求項4】
前記研磨パッドは、前記砥粒含有層の直下に、前記砥粒が埋め込まれていない砥粒非含有層をさらに有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のキャリアプレートの研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアプレートの研磨方法、キャリアプレートおよび半導体ウェーハの研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの基板として用いられるシリコンウェーハなどの半導体ウェーハの製造において、より高い平坦度や表面粗さを実現するために、研磨パッドが貼り付けられた一対の上定盤および下定盤により半導体ウェーハを挟みつつ研磨液を供給して、その両面を同時に研磨する両面研磨工程が行われている。その際、半導体ウェーハは、キャリアプレートのウェーハ保持孔に保持される。
【0003】
上記キャリアプレートとしては、ステンレスやチタンなどの金属製のもの(例えば、特許文献1参照)や、樹脂製のもの(例えば、特許文献2に参照)が存在するが、そのいずれも、製造後未使用のものは、厚みが半導体ウェーハの研磨が可能な厚みよりも大きかったり、平坦度が低かったりする。そのため、両面研磨装置に配設して半導体ウェーハを研磨する前の段階で、キャリアプレートの表裏面を研磨する処理が施されている。
【0004】
例えば、特許文献3には、両面研磨装置に配設してウェーハに対して両面研磨処理を施す前の段階で、ウェーハを両面研磨するのに用いる両面研磨装置とは異なる両面研磨装置を用いて、砥粒を含むスラリーを用いた1次研磨と、砥粒を含まない無機アルカリ溶液を用いた2次研磨からなる2段階両面研磨を行うことにより、両面研磨工程においてウェーハに傷が発生するのを防止する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5648623号明細書
【文献】特開2002-254299号公報
【文献】特開2017-104958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3に記載された方法により製造後未使用のキャリアプレートに対して両面研磨処理を施すと、研磨レートがシリコンウェーハを研磨する場合に比べて1/10以下となり、ウェーハの両面研磨に使用可能な厚みにするまでに膨大な時間を要する問題がある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、半導体ウェーハの両面研磨装置において使用される、製造後未使用のキャリアプレートの表裏面を効率的に研磨することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、以下の通りである。
[1]半導体ウェーハを保持するウェーハ保持孔を備えるキャリアプレートと、前記キャリアプレートを挟んで対向して配置され、表面に研磨パッドが設けられた上定盤および下定盤とを備え、前記キャリアプレート、前記上定盤および前記下定盤を相対的に回転させつつ研磨液を供給することにより、前記ウェーハ保持孔に保持された半導体ウェーハの表裏面を同時に化学機械研磨する両面研磨装置における、前記キャリアプレートを研磨する方法であって、
前記両面研磨装置における前記研磨パッドとして、粒径2μm以上の砥粒が埋め込まれた砥粒含有層を表面に有する研磨パッドを用い、
製造後未使用の研磨対象のキャリアプレートを前記両面研磨装置における前記上定盤と前記下定盤とで挟み、前記研磨対象のキャリアプレート、前記上定盤および前記下定盤を相対的に回転させつつ研磨液を供給して前記研磨対象のキャリアプレートの両面を研磨することを特徴とするキャリアプレートの研磨方法。
【0009】
[2]前記砥粒の材料は、アルミナまたはダイヤモンドである、前記[1]に記載のキャリアプレートの研磨方法。
【0010】
[3]研磨液は、スラリー、水または界面活性剤入り水溶液である、前記[1]または[2]に記載のキャリアプレートの研磨方法。
【0011】
[4]前記研磨パッドは、前記砥粒含有層の直下に、前記砥粒が埋め込まれていない砥粒非含有層をさらに有する、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載のキャリアプレートの研磨方法。
【0012】
[5]平坦度が2μm以下であることを特徴とするキャリアプレート。
【0013】
[6]前記[1]~[4]のいずれか一項に記載のキャリアプレートの研磨方法によって研磨されたキャリアプレートまたは前記[5]に記載のキャリアプレートのウェーハ保持孔に研磨対象の半導体ウェーハを充填して両面研磨装置の上定盤と下定盤との間に挟み、前記キャリアプレート、前記上定盤および前記下定盤を相対的に回転させつつ研磨液を供給して、前記研磨対象の半導体ウェーハの表裏面を研磨することを特徴とする半導体ウェーハの研磨方法。
【0014】
[7]前記半導体ウェーハはシリコンウェーハである、前記[6]に記載の半導体ウェーハの研磨方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、半導体ウェーハの両面研磨装置において使用される、製造後未使用のキャリアプレートの表裏面を効率的に研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】発明例6について、研磨後のキャリアプレートにおける位置と厚みとの関係を示す図であり、(a)は測定箇所、(b)は各測定位置でのキャリアプレートの厚みである。
【
図2】従来例および発明例による研磨処理が施されたキャリアプレートを用いて両面研磨処理が施されたシリコンウェーハのGBIRを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(キャリアプレートの研磨方法)
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本発明によるキャリアプレートの研磨方法は、半導体ウェーハを保持するウェーハ保持孔を備えるキャリアプレートと、キャリアプレートを挟んで対向して配置され、表面に研磨パッドが設けられた上定盤および下定盤とを備え、キャリアプレート、上定盤および下定盤を相対的に回転させつつ研磨液を供給することにより、ウェーハ保持孔に保持されたシリコンウェーハの表裏面を同時に化学機械研磨する両面研磨装置における、キャリアプレートを研磨する方法である。ここで、両面研磨装置における研磨パッドとして、粒径2μm以上の砥粒が埋め込まれた砥粒含有層を表面に有する研磨パッドを用い、製造後未使用の研磨対象のキャリアプレートを両面研磨装置における上定盤と下定盤とで挟み、研磨対象のキャリアプレート、上定盤および下定盤を相対的に回転させつつ研磨液を供給して研磨対象のキャリアプレートの両面を研磨することを特徴とする。
【0018】
上述のように、両面研磨装置におけるキャリアプレートは、製造後未使用の段階で、半導体ウェーハの両面研磨を行うことができる厚みにまで研磨される。しかしながら、本発明者らが特許文献3に記載された方法でキャリアプレートの研磨を行ったところ、研磨に膨大な時間を要することが判明した。
【0019】
そこで、本発明者らは、キャリアプレートをより効率的に研磨することができる方途について鋭意検討した。その結果、両面研磨装置を用いて製造後未使用の研磨対象のキャリアプレートを研磨するに際し、上定盤および下定盤に取り付けられる研磨パッドとして、固定砥粒が埋め込まれた固定砥粒層を表面に有する研磨パッドを用いることに想到した。
【0020】
しかしながら、後述する実施例に示すように、単に固定砥粒層を表面に有する研磨パッドを用いてキャリアプレートを研磨しても、研磨レートは上昇しない場合があることが判明した。そこで、本発明者らがさらに検討を進めた結果、固定砥粒の粒径を2μm以上とすることにより、研磨レートが上昇することを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。以下、各要件について説明する。
【0021】
まず、研磨対象のキャリアプレートは、製造後未使用のキャリアプレートであり、両面研磨装置において半導体ウェーハを保持する保持孔を有するものである。保持孔の数は、1以上の適切な数とすることができる。
【0022】
研磨対象のキャリアプレートとしては、半導体ウェーハを保持する保持孔を有する金属部と、上記保持孔を画定する内壁に沿って配置された環状の樹脂部とを有するものや、全体が樹脂部で構成されたものを用いることができる。上記金属部は、ステンレス鋼(Steel Special Use Stainless、SUS)やチタンなどの金属で構成することができる。また、上記樹脂部は、エポキシ、フェノール、ポリイミドなどの樹脂で構成することができ、さらに樹脂にガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などの強化繊維を含有させた繊維強化プラスチックなどで構成することができる。
【0023】
キャリアプレートの保持孔に保持されて研磨される半導体ウェーハとしては、シリコンやゲルマニウム、ガリウムヒ素などとすることができる。半導体ウェーハの直径は、特に限定されず、150mm以上、例えば150mm、200mm、300mm、450mmなどとすることができる。半導体ウェーハとしては、適切なドーパントが添加されたN型、P型のものとすることができる。
【0024】
本発明においては、両面研磨装置を用いて研磨対象のキャリアプレートを研磨する。その際、上定盤および下定盤に貼り付けられる研磨パッドは、粒径が2μm以上の砥粒が埋め込まれた砥粒含有層を有することが肝要である。砥粒の粒径が2μm未満の場合には、後述する実施例に示すように、キャリアプレートの表面を研磨する能力が低く、研磨を効率的に行うことができない。そこで、砥粒の粒径は2μm以上とする。砥粒の粒径は3μm以上であることが好ましい。これにより、研磨レートを大幅に増加させることができる。
【0025】
一方、砥粒の粒径の上限については、キャリアプレートの研磨の効率性の点では限定されないが、砥粒の粒径が20μmを超えると、キャリアプレートの表面に傷が形成されたり、キャリアプレートの端部にダメージが大きく残ったりし、研磨される半導体ウェーハに多数の傷が発生するおそれがある。そこで、砥粒の粒径は20μm以下とすることが好ましい。
【0026】
なお、本発明において、砥粒の粒径は、レーザー回折・散乱法(JIS Z 8825)により測定したものである。
【0027】
また、砥粒が埋め込まれた砥粒含有層の母体を構成するマトリックスは、砥粒を強固に保持することができる適切な材料で構成することができる。こうした材料としては、樹脂やセラミック材料などを用いることができる。樹脂としては、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などを用いることができる。エポキシ樹脂やアクリル樹脂は、砥粒を十分に保持でき、詳細な種類は問わない。
【0028】
研磨パッドの表面に配置される固定砥粒層に埋め込まれる砥粒の材料は、キャリアプレートの表面を研磨することができるものであれば特に限定されないが、研磨能力の高さの点で、アルミナまたはダイヤモンドであることが好ましい。
【0029】
また、砥粒は、固定砥粒層内に均一に分散していることが好ましい。これにより、キャリアプレートの研磨を同一の品質で継続的に行うことができる。
【0030】
砥粒含有層の厚みは、0.2mm以上2.5mm以下であることが好ましい。砥粒含有層の厚みが0.2mm以上であれば、キャリアプレートの研磨速度を落とすことなく良好に行うことができる。一方、砥粒含有層の厚みが2.5mm以下であれば、キャリアプレートを良好な平坦度に仕上げることができる。
【0031】
砥粒含有層のマトリックスを樹脂で構成する場合、発泡させない非発泡樹脂で構成することが好ましい。これにより、キャリアプレートの硬度を高めることができる。砥粒含有層は、そのショアD硬度(JIS K6253)が40以上であることが好ましい。これにより、研磨の際に、ウェーハ保持孔にダミーのウェーハなどを充填しなくとも、研磨後に平坦度の高いキャリアプレートを得ることができる。
【0032】
また、研磨パッドは、砥粒含有層の直下に、砥粒が埋め込まれていない砥粒非含有層をさらに有することが好ましい。これにより、砥粒非含有層をクッション材として機能させて、キャリアプレートの研磨時の振動を効果的に吸収させて、研磨後のキャリアプレートの平坦度、研磨後のキャリアプレートを用いて研磨された半導体ウェーハの平坦度を高めることができる。
【0033】
砥粒非含有層は、樹脂やセラミック材料などを用いることができる。樹脂としては、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などを用いることができる。エポキシ樹脂やアクリル樹脂は、砥粒を十分に保持でき、詳細な種類は問わない。
【0034】
砥粒非含有層の厚みは、0.2mm以上2.0mm以下であることが好ましい。砥粒非含有層の厚みが0.2mm以上であれば、砥粒非含有層にクッション性を良好に与えることができる。また、キャリアプレートの研磨を良好に行うことができる。一方、砥粒非含有層の厚みが2.0mm以下であれば、クッション性を保ちつつ、砥粒含有層がキャリアプレートに与える仕事量も落とすことなく、良好な研磨レートを得ることができる。
【0035】
また、砥粒非含有層の硬度は、砥粒含有層の硬度よりも小さいことが好ましい。これにより、砥粒非含有層に良好にクッション性を与えて、キャリアプレートの研磨時の振動をより効果的に吸収させ、キャリアプレートの平坦度をより高めることができる。
【0036】
上記砥粒非含有層は、砥粒含有層と一体化されていることが好ましい。両者が一体化していることにより、キャリアプレートの研磨時の振動をより効果的に吸収させ、キャリアプレートの平坦度をより高めることができる。これは、例えば、両者を熱融着させることによって行うことができる。
【0037】
キャリアプレートを研磨する際に用いる研磨液としては、スラリー、水または界面活性剤入り水溶液とすることができる。スラリーに含まれる砥粒としては、シリカやアルミナ、酸化セリウムなどを用いることができる。
【0038】
(キャリアプレート)
本発明によるキャリアプレートは、平坦度が2μm以下であることを特徴とする。
【0039】
上述のように、本発明によるキャリアプレートの研磨方法により、製造後未使用の研磨対象のキャリアプレートを効率的に研磨することができる。そして、研磨後の高いキャリアプレートは2μm以下の高い平坦度を有する。こうした本発明によるキャリアプレートを両面研磨装置に配設して半導体ウェーハの両面研磨を行うと、高い平坦度を有する半導体ウェーハを得ることができる。
【0040】
なお、本発明において、キャリアプレートの平坦度は、キャリアプレートを上面視し、キャリアプレートの中心およびウェーハ保持孔の中心を含む直線上において、ウェーハ保持孔端から10mmの位置から、キャリアプレート外周端から30mmの位置まで上記直線に沿ってキャリアプレートの厚みを測定した際に、測定された厚みの最大値と最小値との差を意味している。
【0041】
キャリアプレートは、半導体ウェーハを保持する保持孔を有する金属部と、上記保持孔を画定する内壁に沿って配置された環状の樹脂部とを有するものや、全体が樹脂部で構成されたものとすることができる。上記金属部は、ステンレス鋼(Steel Special Use Stainless、SUS)やチタンなどの金属またはそれらにダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングを施したもので構成することができる。また、上記樹脂部は、エポキシ、フェノール、ポリイミドなどの樹脂で構成することができ、さらに樹脂にガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などの強化繊維を含有させた繊維強化プラスチックなどで構成することができる。
【0042】
(半導体ウェーハの研磨方法)
本発明による半導体ウェーハの研磨方法は、上述した本発明によるキャリアプレートの研磨方法によって研磨されたキャリアプレート、または本発明によるキャリアプレートのウェーハ保持孔に、研磨対象の半導体ウェーハを充填して両面研磨装置の上定盤と下定盤との間に挟み、キャリアプレート、上定盤および下定盤を相対的に回転させつつ研磨液を供給して、研磨対象の半導体ウェーハの表裏面を研磨することを特徴とする。
【0043】
本発明は、上述した本発明によるキャリアプレートの研磨方法によって研磨されたキャリアプレート、または本発明によるキャリアプレートにより、高い平坦度を有するキャリアプレートを得ることができる。そして、こうしたキャリアプレートを両面研磨装置に配設して半導体ウェーハの両面研磨を行うと、高い平坦度を有する半導体ウェーハを得ることができる。
【0044】
このように、本発明は、本発明によるキャリアプレートの研磨方法によって研磨されたキャリアプレート、または本発明によるキャリアプレートを両面研磨装置に配設して半導体ウェーハの両面研磨を行うことに特徴を有しており、その他の条件は従来公知の方法から適切に選択することができ、限定されない。
【0045】
研磨対象の半導体ウェーハは、特に限定されないが、特にシリコンウェーハを良好に研磨することができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0047】
(従来例1)
両面研磨装置を用いて研磨対象のキャリアプレートに対して研磨処理を施した。研磨対象のキャリアプレートとしては、
図1(a)に示すように、直径500mm、保持孔の直径300mmであり、ガラスエポキシ樹脂製の製造後未使用のキャリアプレートを用意した。このキャリアプレートを両面研磨装置における上定盤と下定盤とで挟み、キャリアプレート、上定盤、下定盤とを相対的に回転させてキャリアプレートの表裏面を同時に研磨した。その際、上定盤および下定盤には、ニッタ・デュポン製の砥粒を含まないウレタン製研磨パッドを使用し、研磨液としては、粒径100nmのシリカを含むスラリーを用いた。研磨条件およびキャリアプレートの研磨時の研磨レートを表1に示す。
【0048】
【0049】
(従来例2)
従来例1と同様に、研磨対象のキャリアプレートに対して研磨処理を施した。その際、研磨液としては、粒径300nmのシリカを含むスラリーを用いた。その他の条件は、従来例1と全て同じである。研磨条件およびキャリアプレートの研磨時の研磨レートを表1に示す。ただし、研磨レートは、従来例1の研磨レートに対する相対値が示されている。
【0050】
(従来例3)
従来例1と同様に、研磨対象のキャリアプレートに対して研磨処理を施した。その際、研磨液としては、粒径300nmのシリカを含むスラリーを用いた。また、研磨パッドは、粒径300nmのシリカをアクリル系樹脂に含有させた砥粒含有層を用いた。その他の条件は、従来例1と全て同じである。研磨条件およびキャリアプレートの研磨時の研磨レートを表1に示す。ただし、研磨レートは、従来例1の研磨レートに対する相対値が示されている。
【0051】
(従来例4)
従来例1と同様に、研磨対象のキャリアプレートに対して研磨処理を施した。その際、研磨液としては、粒径3μmのアルミナを含むスラリーを用いた。その他の条件は、従来例1と全て同じである。研磨条件およびキャリアプレートの研磨時の研磨レートを表1に示す。ただし、研磨レートは、従来例1の研磨レートに対する相対値が示されている。
【0052】
(発明例1)
従来例1と同様に、研磨対象のキャリアプレートに対して研磨処理を施した。その際、研磨液としては、純水を用いた。また、研磨パッドとしては、粒径2μmのアルミナをアクリル系樹脂に含有させた砥粒含有層を用いた。その他の条件は、従来例1と全て同じである。研磨条件およびキャリアプレートの研磨時の研磨レートを表1に示す。ただし、研磨レートは、従来例1の研磨レートに対する相対値が示されている。
【0053】
(発明例2)
発明例1と同様に、研磨対象のキャリアプレートに対して研磨処理を施した。ただし、研磨パッドにおけるアルミナの粒径を3μmとした。その他の条件は、発明例1と全て同じである。研磨条件およびキャリアプレートの研磨時の研磨レートを表1に示す。ただし、研磨レートは、従来例1の研磨レートに対する相対値が示されている。
【0054】
(発明例3)
発明例2と同様に、研磨対象のキャリアプレートに対して研磨処理を施した。ただし、研磨液として、粒径3μmのアルミナを含むスラリーを用いた。その他の条件は、発明例1と全て同じである。研磨条件およびキャリアプレートの研磨時の研磨レートを表1に示す。ただし、研磨レートは、従来例1の研磨レートに対する相対値が示されている。
【0055】
(発明例4)
発明例1と同様に、研磨対象のキャリアプレートに対して研磨処理を施した。ただし、研磨パッドの砥粒含有層に含有させる砥粒としてダイヤモンドを用いた。その他の条件は、発明例1と全て同じである。研磨条件およびキャリアプレートの研磨時の研磨レートを表1に示す。ただし、研磨レートは、従来例1の研磨レートに対する相対値が示されている。
【0056】
(発明例5)
発明例2と同様に、研磨対象のキャリアプレートに対して研磨処理を施した。ただし、研磨パッドの砥粒含有層に含有させる砥粒としてダイヤモンドを用いた。その他の条件は、発明例2と全て同じである。研磨条件およびキャリアプレートの研磨時の研磨レートを表1に示す。ただし、研磨レートは、従来例1の研磨レートに対する相対値が示されている。
【0057】
(発明例6)
発明例5と同様に、研磨対象のキャリアプレートに対して研磨処理を施した。ただし、研磨パッドの砥粒含有層に含有させるダイヤモンドの粒径を6μmとした。その他の条件は、発明例5と全て同じである。研磨条件およびキャリアプレートの研磨時の研磨レートを表1に示す。ただし、研磨レートは、従来例1の研磨レートに対する相対値が示されている。
【0058】
(発明例7)
発明例5と同様に、研磨対象のキャリアプレートに対して研磨処理を施した。ただし、研磨パッドの砥粒含有層に含有させるダイヤモンドの粒径を9μmとした。その他の条件は、発明例5と全て同じである。研磨条件およびキャリアプレートの研磨時の研磨レートを表1に示す。ただし、研磨レートは、従来例1の研磨レートに対する相対値が示されている。
【0059】
<砥粒の粒径と研磨レートとの関係>
表1から、研磨パッドが砥粒が埋め込まれた砥粒含有層を有し、砥粒の粒径が2μm以上である発明例1~7については、シリカを含む研磨液を用いて研磨を行った従来例1の研磨レートの2倍以上であることが分かる。特に、砥粒の粒径が3μm以上である発明例2、3、5~7については、従来例1に対して研磨レートが10倍以上、砥粒がアルミナで構成されている場合には40倍以上であり、研磨レートが大きく増大している。さらに、発明例5~7の比較から、砥粒の粒径が大きいほど研磨レートが大きくなることが分かる。
【0060】
図1は、発明例6について、研磨後のキャリアプレートにおける位置と厚みとの関係、すなわちキャリアプレートの形状を示しており、(a)は測定箇所、(b)は各測定位置でのキャリアプレートの厚みを示している。なお、
図1におけるデータのない箇所は、キャリアプレートに設けられたウェーハ保持孔以外の開口部により、厚みの測定ができなかったことによるものである。
図1から、研磨前はキャリアプレートの厚みは測定位置でばらついていたのに対して、研磨後はキャリアプレートの厚みは均一になっており、平坦度が向上していることが分かる。
【0061】
(比較例1)
従来例1と同様にキャリアプレートを研磨した。ただし、研磨装置として研削装置を用いて行った。その他の条件は従来例1と全て同じである。研磨条件およびキャリアプレートの平坦度を表2に示す。
【0062】
【0063】
(発明例8)
発明例6と同様に、研磨対象のキャリアプレートに対して研磨処理を施した。ただし、研磨パッドの砥粒含有層の直下に、砥粒非含有層(ウレタン樹脂製、厚み0.3mm)を配置した。その他の条件は、発明例5と全て同じである。研磨条件およびキャリアプレートの平坦度を表2に示す。
【0064】
(発明例9)
発明例8と同様に、研磨対象のキャリアプレートに対して研磨処理を施した。ただし、砥粒非含有層の厚みを0.6mmとした。その他の条件は、発明例5と全て同じである。研磨条件およびキャリアプレートの平坦度を表2に示す。
【0065】
(発明例10)
発明例8と同様に、研磨対象のキャリアプレートに対して研磨処理を施した。ただし、砥粒非含有層の厚みを1.0mmとした。その他の条件は、発明例5と全て同じである。研磨条件およびキャリアプレートの平坦度を表2に示す。
【0066】
<キャリアプレートの平坦度>
表1から、研磨パッドが砥粒非含有層を有していない発明例6については、研磨後のキャリアプレートの平坦度は、比較例1および従来例5と同程度であることが分かる。これに対して、研磨パッドが砥粒非含有層を有している発明例8~10については、研磨後のキャリアプレートの平坦度が極めて高いことが分かる。
【0067】
図2は、従来例1および発明例7によるキャリアプレートを両面研磨装置に配設し、直径300mmのシリコンウェーハを各25枚両面研磨した後のシリコンウェーハのGBIR(Global flatness Back Ideal Range)を示している。
図2から、本発明により研磨されたキャリアプレートを用いてシリコンウェーハの両面研磨を行うことにより、従来よりも平坦度の高いシリコンウェーハが得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、半導体ウェーハの両面研磨装置において使用される、製造後未使用のキャリアプレートの表裏面を効率的に研磨することができるため、半導体ウェーハ製造業において有用である。