(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】パウダー分散液、積層体、膜及び含浸織布
(51)【国際特許分類】
C08L 27/18 20060101AFI20240214BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240214BHJP
D06M 15/256 20060101ALI20240214BHJP
C09D 127/18 20060101ALI20240214BHJP
C09D 127/20 20060101ALI20240214BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240214BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240214BHJP
C08L 33/00 20060101ALN20240214BHJP
【FI】
C08L27/18
B32B27/30 D
D06M15/256
C09D127/18
C09D127/20
C09D7/65
C09D5/02
C08L33/00
(21)【出願番号】P 2020527518
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2019024980
(87)【国際公開番号】W WO2020004339
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018121873
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018240871
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018240874
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100173532
【氏名又は名称】井上 彰文
(72)【発明者】
【氏名】山邊 敦美
(72)【発明者】
【氏名】細田 朋也
(72)【発明者】
【氏名】笠井 渉
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/129407(WO,A1)
【文献】特開2005-075880(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017801(WO,A1)
【文献】特開2008-260864(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122735(WO,A1)
【文献】特開2004-331938(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016644(WO,A1)
【文献】特開2011-225710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
B32B
D06M
C09D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレンに基づく単位及びカルボニル基含有基を有し、テトラフルオロエチレンに基づく単位の割合がポリマーを構成する全単位に対して90~99モル%であ
り、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位を0.5~9.97モル%、酸無水物残基を有するモノマーに基づく単位を0.01~3モル%含む、溶融温度が140~320℃の第1のポリマーのパウダーと、非溶融成形性のポリテトラフルオロエチレンである第2のポリマーのパウダーと、分散剤と、液状分散媒とを含み、第2のポリマーの含有質量に対する第1のポリマーの含有質量の比が
0.01~0.
5である、パウダー分散液。
【請求項2】
第1のポリマーのパウダーの平均粒子径が0.05~75μmであり、第2のポリマーのパウダーの平均粒子径が0.01~100μmである、請求項1に記載のパウダー分散液。
【請求項3】
液状分散媒が、水系分散媒である、請求項1
又は2に記載のパウダー分散液。
【請求項4】
水系分散媒のpHが5~7である、請求項
3に記載のパウダー分散液。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のパウダー分散液を基材の表面に塗布し、加熱により液状分散媒を除去して、第1のポリマーと第2のポリマーとを含むポリマー層を形成することを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のパウダー分散液を織布に含浸させ、加熱により液状分散媒を除去して、第1のポリマーと第2のポリマーを含む織布を得ることを特徴とするポリマー含浸織布の製造方法。
【請求項7】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のパウダー分散液から形成された、第1のポリマー及び第2のポリマーを含むポリマー層と、基材とを有する積層体。
【請求項8】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のパウダー分散液から形成された、第1のポリマー及び第2のポリマーを含む膜。
【請求項9】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のパウダー分散液から形成された、第1のポリマー及び第2のポリマーを含むポリマー含浸織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウダー分散液、積層体、膜及び含浸織布に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)のコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー(FEP)等のフルオロオレフィン系ポリマーは、離型性、電気特性、撥水撥油性、耐薬品性、耐候性、耐熱性等の物性に優れており、その物性を活用して、種々の産業用途に利用されている。
なかでも、フルオロオレフィン系ポリマーのパウダーが液状分散媒中に分散した分散液は、各種基材の表面に塗布すれば、その表面にフルオロオレフィン系ポリマーの物性を付与できるため、コーティング剤として有用である。
【0003】
特許文献1及び2には、PTFEのパウダーと熱可塑性フルオロポリマーであるPFAのパウダーとを含む分散液を基材の表面に塗布し、その表面に薄膜を形成する方法が記載されている。
特許文献3には、溶融流動性フルオロポリマーであるPFA又はFEPのパウダーを含む分散液を基材の表面に塗布し、その表面に薄膜を形成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2008/016644号
【文献】国際公開第2008/018400号
【文献】特開2018-48233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フルオロオレフィン系ポリマーは、本質的に表面張力が低く他の材料との相互作用が低いため、基材表面との強固な接着が困難である傾向、他の材料と相溶しにくい傾向がある。フルオロオレフィン系ポリマーのパウダー分散液においては、液状分散媒の除去に伴うパウダーの充填や焼成により成形品(層等の成形部位を含む。)が形成されるため、かかる傾向が顕著になりやすい。さらに、成形品にクラックが生じやすい課題もある。特に、フルオロオレフィン系ポリマーのパウダーを含む水分散液は、その分散性も未だ充分ではなく、かかる傾向が顕著になりやすい。
【0006】
先行技術文献に開示される、異種のフルオロオレフィン系ポリマーや他の添加剤等の異種の材料をパウダー分散液へ配合した場合には、その効果が未だ充分ではないか、元のフルオロオレフィン系ポリマーが有する物性が低下しやすい。
強固な接着性を示し、元のフルオロオレフィン系ポリマーが有する物性を損なわずに、クラックが生じにくい成形品(積層体、膜、含浸織布等。)を形成できる、フルオロオレフィン系ポリマーのパウダー分散液が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、所定のパウダーの使用により、かかるパウダー分散液が得られることを知見した。
[1]テトラフルオロエチレンに基づく単位及び酸素含有極性基を有する第1のポリマーのパウダーと、フルオロオレフィンに基づく単位を含む第2のポリマーのパウダーと、分散剤と、液状分散媒とを含み、第2のポリマーの含有質量に対する第1のポリマーの含有質量の比が0.7以下である、パウダー分散液。
[2]テトラフルオロエチレンに基づく単位及び酸素含有極性基を有する第1のポリマーのパウダーと、フルオロオレフィンに基づく単位を含む第2のポリマーのパウダーと、水酸基を有するフッ素系界面活性剤と、液状分散媒とを含む、パウダー分散液。
【0008】
[3]第1のポリマーのパウダーの平均粒子径が0.05~75μmであり、第2のポリマーのパウダーの平均粒子径が0.01~100μmである、[1]又は[2]パウダー分散液。
[4]第1のポリマーが、溶融温度が140~320℃のポリマーである、[1]~[3]のいずれかのパウダー分散液。
[5]第1のポリマーが、テトラフルオロエチレンに基づく単位と、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)又はフルオロアルキルエチレンに基づく単位と、酸素含有極性基を有するモノマーに基づく単位とを含むポリマーである、[1]~[4]のいずれかのパウダー分散液。
[6]酸素含有極性基が、水酸基含有基、カルボニル基含有基、アセタール基、ホスホノ基又はオキサシクロアルキル基である、[1]~[5]のいずれかのパウダー分散液。
【0009】
[7]第2のポリマーが、酸素含有極性基を有さないポリマーである、[1]~[6]のいずれかのパウダー分散液。
[8]第2のポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)のコポリマー、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、テトラフルオロエチレンとエチレンのコポリマー又はポリフッ化ビニリデンである、[1]~[7]のいずれかのパウダー分散液。
[9]液状分散媒が、水系分散媒である、[1]~[8]のいずれかのパウダー分散液。
[10]水系分散媒のpHが5~7である、[9]のパウダー分散液。
【0010】
[11]前記[1]~[10]のいずれかのパウダー分散液を基材の表面に塗布し、加熱により液状分散媒を除去して、第1のポリマーと第2のポリマーとを含むポリマー層を形成することを特徴とする積層体の製造方法。
[12]前記[1]~[10]のいずれかのパウダー分散液を織布に含浸させ、加熱により液状分散媒を除去して、第1のポリマーと第2のポリマーを含む織布を得ることを特徴とするポリマー含浸織布の製造方法。
【0011】
[13]前記[1]~[10]のいずれかのパウダー分散液から形成された、第1のポリマー及び第2のポリマーを含むポリマー層と、基材とを有する積層体。
[14]前記[1]~[10]のいずれかのパウダー分散液から形成された、第1のポリマー及び第2のポリマーを含む膜。
[15]前記[1]~[10]のいずれかのパウダー分散液から形成された、第1のポリマー及び第2のポリマーを含むポリマー含浸織布。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、分散性と貯蔵安定性にも優れたパウダー分散液であり、元のフルオロオレフィン系ポリマーが有する物性を損なわずにクラックが生じにくく接着性に優れた成形品(積層体、膜及び被覆織布等。)を形成できるパウダー分散液が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例の例1で得られた積層体のポリマー層表面のSEM画像(倍率:30000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の用語は、以下の意味を有する。
「パウダーの平均粒子径(D50)」は、パウダーの体積基準累積50%径であり、レーザー回折・散乱法によってパウダーの粒度分布を測定し、その粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
「パウダーのD90」は、上記D50と同様にして測定される、パウダーの体積基準累積90%径である。
「分散液の粘度」とは、B型粘度計を用いて測定される分散液の粘度であり、25℃で回転数が30rpmの条件下で測定される値である。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「分散液のチキソ比」とは、回転数が30rpmの条件で測定される分散液の粘度η1を回転数が60rpmの条件で測定される分散液の粘度η2で除して算出される値(η1/η2)である。
「ポリマーの溶融温度(融点)」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定したポリマーの融解ピークの最大値に対応する温度である。
「モノマーに基づく単位」は、モノマー1分子が重合して直接形成される原子団と、この原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。以下、モノマーAに基づく単位をモノマーA単位とも記す。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの総称である。
【0015】
本発明の第1の態様は、テトラフルオロエチレンに基づく単位及び酸素含有極性基を有する第1のポリマーのパウダーと、フルオロオレフィンに基づく単位を含む第2のポリマーのパウダーと、分散剤と、液状分散媒とを含み、第2のポリマーの含有質量に対する第1のポリマーの含有質量の比が0.7以下である、パウダー分散液、にかかる発明である。
本発明の第2の態様は、テトラフルオロエチレンに基づく単位及び酸素含有極性基を有する第1のポリマーのパウダーと、フルオロオレフィンに基づく単位を含む第2のポリマーのパウダーと、水酸基を有する含フッ素界面活性剤と、液状分散媒とを含む、パウダー分散液、にかかる発明である。
なお、第1のポリマーと第2のポリマーとは異なるポリマーであり、したがって、第1のポリマーのパウダーと第2のポリマーのパウダーもまた異なるパウダーである。また、本発明の第2の態様における水酸基を有するフッ素系界面活性剤は、本発明の第1の態様における分散剤の範疇に含まれる化合物である。すなわち、本発明の第1の態様における分散剤は、本発明の第2の態様における水酸基を有するフッ素系界面活性剤であってもよい。
【0016】
以下、前記本発明の2つの態様を総称して本発明ともいい、本発明のパウダー分散液を単に本発明の「分散液」とも記す。
本発明(本発明の2つの態様)において、以下、第1のポリマーを「ポリマーI」及び第1のポリマーのパウダーを「パウダーI」とも記す。同様に、第2のポリマーを「ポリマーII」及び第2のポリマーのパウダーを「パウダーII」とも記す。
また、以下、テトラフルオロエチレンを「TFE」と略称し、TFEに基づく単位も「TFE単位」と記す。同様に、特定のモノマー化合物の略称をモノマー名の後の( )内に示し、その後、その略称を使用する場合がある。
【0017】
本発明の分散液は、TFE単位及び酸素含有極性基を有するポリマーIのパウダーIと、フルオロオレフィンに基づく単位(以下、「F単位」とも記す。)を含むポリマーIIのパウダーIIと、分散剤(本発明の第2の態様においては、水酸基を有するフッ素系界面活性剤)と、液状分散媒とを含む。本発明の分散液において、パウダーI及びパウダーIIは、それぞれ液状分散媒中に粒子状に分散している。
【0018】
パウダーIとパウダーIIの相互作用により、本発明の分散液から形成される成形品(ポリマー層等の成形部位を含む、積層体、膜、含浸織布等。以下同様。)は、強固な接着性と耐クラック性を発現しつつ、ポリマーIIの性質が損なわれにくい。
その理由は必ずしも明確ではないが、成形品の形成に際して、ポリマーIとポリマーIIが、共にフルオロポリマーであり融着して接合しやすいだけでなく、ポリマーIの酸素含有極性基により緻密なマトリックスが形成され、ポリマー鎖が絡み易くなるためと考えられる。その結果、成形品の接着性と耐クラック性が相乗的に向上したと推察される。
さらに、本発明の第1の態様においてはポリマーIIの含有質量に対するポリマーIのそれが所定の低い比率にあるため、成形品はポリマーIIが元来有する物性を損ないにくいと考えられる。
また、本発明の第2の態様においては、上記ポリマー間の相互作用が、水酸基を有するフッ素系界面活性剤により促進され、ポリマー鎖がより均一に絡みやすい状態が形成されると考えられる。その結果、ポリマー全体が高度に相互作用するため、ポリマーIIの性質を損なうことなく、耐クラック性に優れた成形品が形成されると考えられる。
【0019】
本発明におけるパウダーIは、ポリマーIを含むパウダーであり、ポリマーIからなるのが好ましい。パウダーIにおけるポリマーIの含有質量は、80質量%以上であることが好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
パウダーIのD50としては、0.01~75μmが好ましく、0.05~25μmがより好ましく、0.05~8μmが特に好ましく、0.1~4μmがさらに好ましい。パウダーIのD50の好適態様としては、0.1~1μm未満である態様か、1~4μmである態様が挙げられる。パウダーIのD90は、そのD50より大きい値となる。パウダーIのD90の好適態様としては、0.3~3μm以下である態様か、2~6μmである態様が挙げられる。
この場合、パウダーIの分散性とパウダー間の相互作用とが良好となり、成形品の接着性、耐クラック性及びポリマーIIの物性が更に向上しやすい。
特に、パウダーIのD50が0.1μm以上1μm未満であれば、分散液の分散性がより高く、延伸特性等の機械的強度にも優れた成形品が得られやすい。パウダーIのD50が1~4μmであれば、耐クラック性に優れた成形品が得られやすい。
【0020】
本発明におけるポリマーIが有する酸素含有極性基は、酸素含有極性基を有するモノマー(以下、「極性モノマー」とも記す。)に基づく単位に含まれていてもよく、ポリマー末端基に含まれていてもよく、表面処理(放射線処理、電子線処理、コロナ処理、プラズマ処理等。)によりポリマー中に含まれていてもよい。酸素含有極性基は、特に、極性モノマーの単位に含まれていることが好ましい。また、酸素含有極性基は、酸素含有極性基を形成し得る基を有するポリマーを変性して調製された基であってもよい。ポリマー末端基に含まれる酸素含有極性基は、そのポリマーの重合に際する成分(重合開始剤、連鎖移動剤等。)を調整しても得られる。
【0021】
酸素含有極性基は、酸素原子を含有する極性の原子団である。ただし、酸素含有極性基には、エステル結合自体とエーテル結合自体は含まれず、これらの結合を特性基として含む原子団は含まれる。
酸素含有極性基は、水酸基含有基、カルボニル基含有基、アセタール基、ホスホノ基(-OP(O)OH2)又はオキサシクロアルキル基であることが好ましい。ポリマーIは2種以上の酸素含有極性基を有していてもよい。
水酸基含有基としては、アルコール性水酸基を含む基が好ましく、-CF2CH2OH、-C(CF3)2OH及び1,2-グリコール基(-CH(OH)CH2OH)が特に好ましい。
カルボニル基含有基は、カルボニル基(>C(O))を含む基である。カルボニル基含有基としては、-CF2C(O)OH、-CF2C(O)OCH3、>CFC(O)OH、カルバメート基(-OC(O)NH2)、アミド基(-C(O)NH2等。)、酸無水物残基(-C(O)OC(O)-)、イミド残基(-C(O)NHC(O)-等。)、ジカルボン酸残基(-CH(C(O)OH)CH2C(O)OH等。)及びカーボネート基(-OC(O)O-)が好ましい。
オキサシクロアルキル基としては、エポキシ基及びオキセタニル基が好ましい。
酸素含有極性基としては、カルボニル基含有基が好ましく、酸無水物残基、イミド残基、及びカーボネート基がより好ましい。接着性及び耐クラック性に優れ、かつ、成形品におけるポリマーIIの物性を損ないにくい観点から、環状の酸素含有極性基である、環状酸無水物残基、環状イミド残基及び環状カーボネート基がさらに好ましく、環状酸無水物残基が最も好ましい。なお、これらの環状の酸素含有極性基は、少なくとも一部が開環していてもよい。
【0022】
本発明におけるポリマーIとしては、TFE単位と、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)又はフルオロアルキルエチレン(FAE)に基づく単位(以下、これらモノマーに基づく単位を「PAE単位」とも記す。)と、極性モノマーの単位とを含むポリマーが好ましい。
TFE単位の割合は、ポリマーIを構成する全単位に対して、50~99モル%であることが好ましく、90~99モル%であることが特に好ましい。
【0023】
PAE単位としては、PAVE単位及びHFP単位が好ましく、PAVE単位が特に好ましい。ポリマーI中のPAE単位は、2種類以上であってもよい。
PAE単位の割合は、ポリマーIを構成する全単位に対して、0~10モル%であることが好ましく、0.5~9.97モル%であることが特に好ましい。
PAVEとしては、CF2=CFOCF3(PMVE)、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF3(PPVE)、CF2=CFOCF2CF2CF2CF3、CF2=CFO(CF2)8Fが挙げられ、PMVE及びPPVEが好ましい。
PAE単位の割合は、ポリマーIを構成する全単位に対して、0.5~9.97モル%であることが好ましい。
FAEとしては、CH2=CH(CF2)2F(PFEE)、CH2=CH(CF2)3F、CH2=CH(CF2)4F(PFBE)、CH2=CF(CF2)3H、CH2=CF(CF2)4Hが挙げられ、PFBE及びPFEEが好ましい。
【0024】
極性モノマーの単位としては、水酸基含有基、カルボニル基含有基、アセタール基、ホスホノ基(-OP(O)OH2)又はオキサシクロアルキル基を有するモノマーに基づく単位が好ましい。ポリマーI中の極性モノマーの単位は、2種類以上であってもよい。
極性モノマーの単位の割合は、ポリマーIを構成する全単位に対して、0~5モル%であることが好ましく、0.01~3モル%であることが特に好ましい。
極性モノマーとしては、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(別称:無水ハイミック酸。以下、「NAH」とも記す。)及び無水マレイン酸が好ましく、NAHが特に好ましい。
【0025】
また、ポリマーIは、TFE単位、PAE単位及び極性モノマーの単位以外の単位を、さらに含んでいてもよい。他の単位を形成するモノマーとしては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレンが挙げられる。
ポリマーIにおける他の単位の割合は、ポリマーIを構成する全単位に対して、0~50モル%であることが好ましく、0~40モル%であることが特に好ましい。
【0026】
ポリマーIの溶融温度は、140~320℃であることが好ましく、200~320℃がであることより好ましく、260~320℃であることが特に好ましい。この場合、ポリマーIとポリマーIIの融着性がバランスし、成形品物性が更に向上しやすい。
ポリマーIの具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載のポリマーが挙げられる。
【0027】
本発明におけるパウダーIIは、ポリマーIIを含むパウダーであり、ポリマーIIからなることが好ましい。パウダーIIにおけるポリマーIIの含有質量は、80質量%以上であることが好ましく、100質量%であることが特に好ましい。なお、ポリマーIIの製造において使用された成分(界面活性剤等。)がパウダーIIに含まれる場合、該成分はパウダーIIの成分には含めない。
【0028】
パウダーIIのD50としては、0.01~100μmが好ましく、0.1~10μmが特に好ましい。パウダーIIのD50の好適態様としては、0.1~1μmである態様や1μm超10μm以下の態様が挙げられる。パウダーIIのD90は、そのD50より大きい値となる。パウダーIIのD90の好適態様としては、0.1~2μmである態様や1μm超10μm以下の態様が挙げられる。
この場合、パウダーIIの分散性とパウダーIとパウダーIIの相互作用とが良好となり、成形品の物性が向上しやすい。
【0029】
本発明におけるポリマーIIは、フルオロオレフィン単位を含む、ポリマーIとは異なるポリマーである。ポリマーIIとしては、酸素含有極性基を有さないポリマーが好ましい。
フルオロオレフィンとしては、TFE及びVDFが好ましく、TFEが特に好ましい。ポリマーII中のフルオロオレフィン単位は、2種類以上であってもよい。
ポリマーIIとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、TFEとPAVEのコポリマー(PFA)、TFEとHFPのコポリマー(FEP)、TFEとエチレンのコポリマー(ETFE)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)が好ましく、PTFEが特に好ましい。
なお、PTFEには、TFEのホモポリマーに加えて、極微量のコモノマー(PAVE、HFP、FAE等。)とTFEとのコポリマーである、所謂、変性PTFEも包含される。また、PFAは、TFEとPAVE以外のモノマーに基づく単位を含んでいてもよい。上述した他のコポリマー(FEP、ETFE、PVDF)においても同様である。
PTFEとしては、TFEホモポリマー(非溶融成形性を有する)及び非溶融成形性の変性PTFEが好ましい。非溶融成形性の変性PTFEは、コモノマーに基づく単位を、全単位に対して0.001~0.05モル%含むことが好ましい。なお、「非溶融成形性」とは、溶融成形可能ではないこと、つまり溶融流動性を示さないことを意味する。具体的には、ASTM D3307に準拠し、測定温度372℃、荷重49Nで測定されるメルトフローレートが0.5g/10分未満であることを意味する。
【0030】
上述した通り、本発明の分散液から得られる成形品は、強固な接着性と耐クラック性を示すだけでなく、元のポリマー(ポリマーII)が有する物性が損なわれにくい。例えば、ポリマーIIがPTFEである場合、前記成形品はPTFEの成形品が本来有する繊維状の表面物性やその多孔性が損なわれにくい。
ポリマーIIにおけるフルオロオレフィン単位の割合は、全単位に対して、99.5モル%以上であることが好ましく、99.9モル%以上であることがさらに好ましい。
ポリマーIIとしては、水中でフルオロオレフィンを乳化重合して得られるポリマーが好ましい。かかるポリマーIIを含むパウダーIIは、水中でフルオロオレフィンを乳化重合して得られるポリマーがパウダーとして水に分散したパウダーである。かかるパウダーの使用に際しては、水に分散したパウダーをそのまま使用してもよく、水からパウダーを回収して使用してもよい。
ポリマーIIは、プラズマ処理又は放射線照射により改質されていてもよい。かかるプラズマ処理又は放射線照射の方法としては、国際公開第2018/026012号、国際公開第2018/026017号等に記載される方法が挙げられる。
ポリマーIIは、パウダー、又は、その分散液を市販品として広く入手できる。
【0031】
本発明におけるパウダーIのD50とパウダーIIのD50の関係は、前者が0.05~75μmであり、後者が0.01~100μmであることが好ましい。より好適な具体例としては、パウダーIのD50が0.1~1μm未満でありパウダーIIのD50が0.1~1μmである態様、パウダーIのD50が1~4μmでありパウダーIIのD50が0.1~1μmである態様が挙げられる。前者の態様においては分散液の貯蔵安定性が特に優れ、後者の態様においては成形品の耐クラック性が特に優れる。
【0032】
本発明の第1の態様の分散液におけるポリマーIIの含有質量に対するポリマーIの含有質量の比(ポリマーIの含有質量/ポリマーIIの含有質量)は、0.7以下である。前記比としては、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上が特に好ましい。前記として比は、0.5以下が好ましく、0.4以下がより好ましく、0.3以下が特に好ましい。前記比としては、0.01~0.5が好ましく、0.05~0.4がより好ましく、0.1~0.3が特に好ましい。この場合、パウダーの分散性とパウダー間の相互作用とが良好となり、成形品の物性をバランスさせやすい。
本発明の第2の態様の分散液におけるポリマーIIの含有質量に対するポリマーIの含有質量の比(ポリマーIの含有質量/ポリマーIIの含有質量)もまた、0.7以下であることが好ましい。前記比としては、0.4以下であることがより好ましく、0.3以下がさらに好ましく、0.15以下が特に好ましい。前記比としては、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上が特に好ましい。前記比としては、0.01~0.4が好ましく、0.05~0.4がより好ましく、0.1~0.3が特に好ましい。この場合、本発明の第1の態様と同様に、パウダーの分散性とパウダー間の相互作用とが良好となり、成形品の物性をバランスさせやすい。
本発明の分散液におけるポリマーIとポリマーIIの総含有質量は、20~70質量%であることが好ましく、30~60質量%であることが特に好ましい。
【0033】
本発明における分散剤は、ポリマーIとポリマーIIとは異なる界面活性剤であり、ポリマーIとポリマーIIの分散性を向上させ、本発明の分散液の成形性(塗工性、造膜性等)を向上させる成分である。なお、ポリマーを製造する際に使用されたポリマーI又はポリマーIIに含まれる成分(例えば、フルオロオレフィンを乳化重合する際に用いられる界面活性剤。)は、本発明における分散剤には該当しない。なお、本発明の第2の態様における水酸基を有するフッ素系界面活性剤もまた分散剤である。
分散剤は、疎水部位と親水部位を有する化合物が好ましく、アセチレン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が挙げられる。分散剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましく、水酸基を有するフッ素系界面活性剤が特に好ましい。また、分散剤は、ノニオン性であることが好ましい。
【0034】
水酸基を有するフッ素系界面活性剤としては、水酸基を1個有するフッ素系界面活性剤と水酸基を2個以上有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。水酸基としてはアルコール性水酸基が好ましい。
水酸基を有するフッ素系界面活性剤のフッ素含有量は10~50質量%であることが好ましく、その水酸基価は10~100mgKOH/gであることが好ましい。
【0035】
水酸基を1個有するフッ素系界面活性剤は、非ポリマータイプのフッ素系界面活性剤であり、そのフッ素含有量は10~50質量%であることが好ましく、その水酸基価は40~100mgKOH/gであることが好ましい。そのフッ素含有量としては、10~45質量%がより好ましく、15~40質量%が特に好ましい。その水酸基価としては、50~100mgKOH/gがより好ましく、60~100mgKOH/gが特に好ましい。水酸基を1個有するフッ素系界面活性剤の好適態様としては、ポリフルオロアルキルモノオールのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。
水酸基を2個以上有するフッ素系界面活性剤は、ポリマータイプのフッ素系界面活性剤であることが好ましい。そのフッ素含有量は10~45質量%であることが好ましく、その水酸基価は10~60mgKOH/gであることが好ましい。その水酸基価としては、10~35mgKOH/gがより好ましく、10~30mgKOH/gが特に好ましく、10~25mgKOH/gが更に好ましい。水酸基を2個以上有するフッ素系界面活性剤の好適態様としては、ポリフルオロアルキル基又はポリフルオロアルケニル基を有するモノマーとアルコール性水酸基を有するモノマーとのコポリマーが挙げられる。
【0036】
水酸基を1個有するフッ素系界面活性剤としては、式Ra-(OQa)ma-OHで表される化合物が好ましい。
式中の記号は、下記の意味を示す。
Raは、ポリフルオロアルキル基又はエーテル性酸素原子を含むポリフルオロアルキル基を示し、-(CF2)4F、-(CF2)6F、-CH2CF2OCF2CF2OCF2CF3、又は-CH2CF(CF3)CF2OCF2CF2CF3であることが好ましい。
Qaは、炭素数1~4のアルキレン基を示し、エチレン基(-CH2CH2-)又はプロピレン基(-CH2CH(CH3)-)であることが好ましい。Qaは、2種以上の基からなっていてもてよい。2種以上の基からなっている場合、基の並び方は、ランダム状であってもよく、ブロック状であってもよい。
maは、4~20の整数を示し、4~10であることが好ましい。
水酸基は、2級水酸基又は3級水酸基であることが好ましく、2級水酸基であることが特に好ましい。
【0037】
水酸基を1個有するフッ素系界面活性剤の具体例としては、F(CF2)6CH2(OCH2CH2)7OCH2CH(CH3)OH、F(CF2)6CH2(OCH2CH2)12OCH2CH(CH3)OH、F(CF2)6CH2CH2(OCH2CH2)7OCH2CH(CH3)OH、F(CF2)6CH2CH2(OCH2CH2)12OCH2CH(CH3)OH、F(CF2)4CH2CH2(OCH2CH2)7OCH2CH(CH3)OH、が挙げられる。
かかる水酸基を1個有するフッ素系界面活性剤は、市販品(アークロマ社製「Fluowet N083」、「Fluowet N050」等。)として入手できる。
【0038】
水酸基を2個以上有するフッ素系界面活性剤としては、ペルフルオロアルキル基又はペルフルオロアルケニル基とポリオキシアルキレン基とアルコール性水酸基とをそれぞれ側鎖に有するポリマーが好ましく、下式(f)で表されるモノマー(以下、「モノマー(f)」と記す。)及び下式(d)で表されるモノマー(以下、「モノマー(d)」と記す。)のコポリマー(以下、「ポリマー(fd)」と記す。)がより好ましい。
【0039】
式(f) CH2=CRfC(O)O-Xf-Zf
式(d) CH2=CRdC(O)O-(Qd)dn-H
式中の記号は、下記の意味を示す。
Rfは、水素原子又はメチル基を示す。
Xfは、アルキレン基、オキシアルキレン基又はアルキレンアミド基を示し、-CH2-、-(CH2)2-、-(CH2)2O-、-(CH2)4O-、-(CH2)2NHC(O)-、-(CH2)3NHC(O)-又は-CH2CH(CH3)NHC(O)-であることが好ましい。
Zfは、ペルフルオロアルキル基又はペルフルオロアルケニル基を示し、-CF(CF3)(C(CF(CF3)2)(=C(CF3)2))、-C(CF3)=C(CF(CF3)2)2、-(CF2)4F又は-(CF2)6Fであることが好ましい。
Rdは、水素原子又はメチル基を示す。
Qdは、オキシアルキレン基を示し、-CH2O-、-CH2CH2O-、-CH2CH2CH2O-、-CH(CH3)CH2O-、-CH2CH(CH3)CH2O-又は-CH2CH2CH2CH2O-であることが好ましい。dnが2以上の場合、(Qd)dnは、2種類以上のオキシアルキレン基からなっていてもよい。オキシアルキレンの結合種の向きは、その酸素原子側がZd側である。
dnは、1~30の整数を示し、4~20であることが好ましい。
【0040】
モノマー(f)の具体例としては、CH2=CHC(O)OCH2CH2(CF2)4F、CH2=C(CH3)C(O)OCH2CH2(CF2)4F、CH2=CHC(O)OCH2CH2(CF2)6F、CH2=C(CH3)C(O)OCH2CH2(CF2)6F、CH2=CHC(O)OCH2CH2OCF(CF3)(C(CF(CF3)2)(=C(CF3)2))、CH2=C(CH3)C(O)OCH2CH2OC(CF3)=C(CF(CF3)2)2、CH2=CHC(O)OCH2CH2CH2CH2OCF(CF3)(C(CF(CF3)2)(=C(CF3)2))、CH2=C(CH3)C(O)OCH2CH2CH2CH2OC(CF3)=C(CF(CF3)2)2が挙げられる。
【0041】
モノマー(d)の具体例としては、CH2=CHCOO(CH2CH2O)8OH、CH2=CHCOO(CH2CH2O)10OH、CH2=CHCOO(CH2CH2O)23OH、CH2=C(CH3)COO(CH2CH2O)8OH、CH2=C(CH3)COO(CH2CH2O)10OH、CH2=C(CH3)COO(CH2CH2O)23OH、CH2=CHCOOCH2CH2CH2CH2O(CH2CH2O)8OH、CH2=CHCOOCH2CH2CH2CH2O(CH2CH2O)10OH、CH2=CHCOOCH2CH2CH2CH2O(CH2CH2O)23OH、CH2=C(CH3)COO(CH2CH(CH3)O)8OH、CH2=C(CH3)COO(CH2CH(CH3)O)12OH、CH2=C(CH3)COO(CH2CH(CH3)O)16OH、CH2=C(CH3)COOCH2CH2CH2CH2O(CH2CH(CH3)O)8OH、CH2=C(CH3)COOCH2CH2CH2CH2O(CH2CH(CH3)O)12OH、CH2=C(CH3)COOCH2CH2CH2CH2O(CH2CH(CH3)O)16OHが挙げられる。
【0042】
ポリマー(fd)に含まれる全単位に対するモノマー(f)の単位の割合は、20~60モル%であることが好ましく、20~40モル%であることが特に好ましい。
ポリマー(fd)に含まれる全単位に対するモノマー(d)の単位の割合は、40~80モル%であることが好ましく、60~80モル%であることが特に好ましい。
ポリマー(fd)におけるモノマー(f)の単位の割合に対するモノマー(d)の単位の割合の比率は、1~5であることが好ましく、1~2であることが特に好ましい。
ポリマー(fd)は、モノマー(f)の単位とモノマー(d)の単位のみからなっていてもよく、さらに他の単位を含んでいてもよい。
【0043】
ポリマー(fd)のフッ素含有質量は、10~45質量%であることが好ましく、15~40質量%であることが特に好ましい。
ポリマー(fd)は、ノニオン性であることが好ましい。
ポリマー(fd)の質量平均分子量は、2000~80000であることが好ましく、6000~20000であることが特に好ましい。
【0044】
本発明の分散液における分散剤の含有質量は、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることが特に好ましい。この場合、分散液における、パウダーIとパウダーIIの分散性が特に良好であり、成形品の物性とをバランスさせやすい。
分散剤が水酸基を有するフッ素系界面活性剤である場合、本発明の分散液におけるかかる分散剤の含有質量としては、1質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下であってもよい。
また、分散剤が水酸基を有するフッ素系界面活性剤である場合、本発明の分散液における、ポリマーIIとポリマーIとの合計での質量に対する水酸基を有するフッ素系界面活性剤の質量の比としては、0.1以下が好ましく、0.08以下がより好ましく、0.05以下がさらに好ましい。かかる量で水酸基を有するフッ素系界面活性剤を使用すれば、分散液の分散性及び成形性を充分に向上させられる。
【0045】
本発明における液状分散媒は、25℃で液状でありポリマーIとポリマーIIと反応しない化合物であり、加熱等によって容易に除去できる化合物である。
液状分散媒としては、水、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール等。)、アミド(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N-メチル-2-ピロリドン等。)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド等。)、エーテル(ジエチルエーテル、ジオキサン等。)、エステル(乳酸エチル、酢酸エチル等。)、ケトン(メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等。)、グリコールエーテル(エチレングリコールモノイソプロピルエーテル等。)、セロソルブ(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等。)が挙げられる。液状分散媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
液状分散媒としては、水系分散媒(水を含む分散媒)が好ましい。水系分散媒は、水のみからなってもよく、水と水溶性有機分散媒(水溶性有機化合物)とからなっていてもよい。
水系分散媒における水の含有量としては、80質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上が特に好ましい。前記水の含有量は、100質量%以下が好ましい。
水溶性有機分散媒としては、アルコール、アミド及びケトンが好ましく、アミド及びケトンがより好ましく、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N-メチル-2-ピロリドン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノンが特に好ましい。
本発明の分散液の液状分散媒としては、水系分散媒が好ましく、pHが5~7の水系分散媒が特に好ましい。分散液が、かかる中性~弱酸性にあれば、分散液中の分散剤の安定性が向上し、長期保存性が向上する。特に、分散剤が水酸基を有するフッ素系界面活性剤である場合、この傾向が顕著となり、分散剤の変質による分散液の色相変化がより抑制しやすい。
分散液のpHを調整するために、本発明の分散液は、アンモニア又はアミン類を含んでいてもよい。
アミン類の具体例としては、エタノールアミン等のアルカノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン等の第2級アミン、トリエチルアミン、N-メチルモルホリン等の第3級アミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシドが挙げられる。
本発明の分散液における液状分散媒の割合は、15~65質量%であることが好ましく、25~50質量部であることが特に好ましい。この場合、分散液の塗布性が優れ成形品の外観不良が起こりにくい。
【0047】
本発明の分散液は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリマーI、ポリマーII、分散剤及び液状分散媒以外の他の材料を含んでいてもよい。他の材料としては、チキソ性付与剤、充填剤、消泡剤、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、粘度調節剤、難燃剤が挙げられる。他の材料は、分散液に溶解してもよく、溶解しなくてもよい。
【0048】
他の材料としては、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ビスマレイミド樹脂、多官能シアン酸エステル樹脂、多官能マレイミド-シアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂等。)、熱溶融性樹脂(ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート、熱可塑性ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル、ポリフェニレンエーテル等。)、反応性アルコキシシラン、カーボンブラックが挙げられる。
【0049】
他の材料としては、無機フィラーも挙げられ、より具体的にはガラス微小球、セラミック微小球等の中空無機微小球も挙げられる。
ガラス微小球は、シリカガラス又はボロシリケートガラスを含むものが好ましい。
セラミック微小球は、チタン酸バリウムを含むものが好ましく、ネオジウム又は酸化亜鉛がドープされたチタン酸バリウムを含むものが特に好ましい。
中空無機微小球は、20~50℃において、誘電率が4以上であり、誘電率熱係数が150ppm/℃以下になうように調整されることが好ましい。かかる調整において中空無機微小球を2種以上用いてもよい。
中空無機微小球は、非多孔質であってもよく、多孔質であってもよい。
中空無機微小球は、結晶性であってもよく、非結晶性であってもよい。
中空無機微小球は、密度が0.1~0.8g/cm3であり、平均粒子径は5~100μmであることが好ましい。
【0050】
中空無機微小球は、シランカップリング剤(フエニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)-1,1-トリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロデシル)-1-トリエトキシシラン等。)か、ジルコネート(ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(ジオクチル)ピロフォスフェートジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(N-エチレンジアミノ)エチルジルコネート等。)か、チタネート(ネオペンチル(ジアリル)オキシトリネオデカノイルチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(ドデシル)ベンゼン-スルホニルチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(ジオクチル)ホスフェートチタネート等。)によって被覆処理されて疎水性であることが好ましい。
【0051】
中空無機微小球を含む本発明の分散液は、電気特性に優れたプリント基板材料を形成する材料として有用である。例えば、前記分散液を銅箔の表面に塗布し、液状分散媒を除去してポリマー層を形成させた樹脂付金属箔は、誘電率と線膨張係数とが低いプリント基板材料として好適に使用できる。
【0052】
本発明の第1の態様の分散液の粘度としては、10000mPa・s以下が好ましく、50~10000mPa・sがより好ましく、70~5000mPa・sがさらに好ましく、150~1000mPa・sが特に好ましい。この場合、分散液の分散安定性と塗工性とがバランスし、分散液から容易に膜を形成できる。
本発明の第2の態様の分散液の粘度としては、1~1000mPa・sが好ましく、5~500mPa・sがより好ましく、10~200mPa・sが特に好ましい。この場合、分散液の分散性と分散液の塗工性とをバランスさせやすい。
本発明の第1の態様の分散液の、回転数が30rpmの条件で測定される粘度η1を回転数が60rpmの条件で測定される粘度η2で除して算出されるチキソ比(η1/η2)は、1.0~2.2であることが好ましい。本発明の第2の態様の分散液のチキソ比は、0.8~2.2であることが好ましい。この場合、分散液の分散安定性と塗工性とがバランスし、分散液から容易に膜を形成できる。
【0053】
本発明の分散液は、パウダーIとパウダーIIと分散剤と液状分散媒とを混合することにより製造できる。
本発明の分散液の製造方法としては、パウダーI、分散剤及び液状分散媒を含みパウダーIが液状分散媒に分散した分散液(以下、分散液(p1)と記す。)と、パウダーII及び液状分散媒を含みパウダーIIが液状分散媒に分散した分散液(以下、分散液(p2)と記す。)とを混合する方法が挙げられる。
【0054】
分散液(p1)と分散液(p2)は、それぞれの分散液が良好に分散した状態で混合することが好ましい。例えば、分散液(p1)に固形分の沈降が認められる場合には、混合直前に、分散液(p1)をホモディスパーを用いて分散処理し、更にホモジナイザーを用いて分散処理して、分散状態を向上させることが好ましい。特に、0~40℃で貯蔵した分散液(p1)を使用する際は、これらの分散処理をすることが好ましい。なお、かかる分散処理をした分散液(p1)を単独で基材の表面に塗布し液状分散媒を除去すれば、基材の表面に、より均一かつ均質なポリマーIを含むポリマー層も形成できる。
分散液(p1)及び分散液(p2)における液状分散媒の好適な態様としては、それぞれ水である態様が挙げられる。また、分散液(p1)の分散剤が水酸基を有するフッ素系界面活性剤(特にポリマー(fd))である場合の好適な態様としては、分散液(p1)の液状分散媒がアミド又はケトンであり分散液(p2)の液状分散媒が水である態様も挙げられる。
【0055】
本発明の分散液は、分散安定性、貯蔵安定性にも優れており、元のフルオロオレフィン系ポリマー(ポリマーII)の物性を損なわずに、耐クラック性に優れた、強固な接着性を示す成形品を形成できる。
本発明の分散液を、基材の表面に塗布し、加熱してポリマーIとポリマーIIを含むポリマー層を形成すれば、基材と、ポリマーI及びポリマーIIを含むポリマー層(以下、「F層」とも記す。)が積層された積層体(本発明の積層体)を製造できる。F層はポリマーI及びポリマーIIを含み、F層におけるポリマーIIの含有質量に対するポリマーIの含有質量の比は0.7以下であることが好ましい。
【0056】
本発明の積層体の製造における、ポリマーI、パウダーI、ポリマーII、パウダーII、分散剤及び液状分散媒の範囲は、その好適な態様も含めて、本発明の分散液における定義と同様である。また、本発明の積層体の製造においては、基材の表面の少なくとも片面にF層が形成されればよく、基材の片面のみにF層が形成されてもよく、基材の両面にF層が形成されてもよい。基材の表面は、シランカップリング剤等により表面処理されていてもよい。
分散液を塗布する方法としては、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、グラビアオフセット法、ナイフコート法、キスコート法、バーコート法、ダイコート法、ファウンテンメイヤーバー法、スロットダイコート法が挙げられる。
【0057】
F層は、加熱により液状分散媒を除去した後ポリマーを焼成することにより形成されることが好ましく、基材を液状分散媒が揮発する温度(100~300℃の温度領域が好ましい)に加熱し、更に基材をポリマーが焼成する温度領域(300~400℃の温度領域が好ましい)に加熱することにより形成されることが特に好ましい。つまり、F層は、ポリマーI及びポリマーIIの焼成物を含むことが好ましい。この場合、それぞれのポリマー、特にポリマーIIは、部分的に焼成されていてもよく、完全に焼成されていてもよい。
基材の加熱の方法としては、オーブンを用いる方法、通風乾燥炉を用いる方法、熱線(赤外線)を照射する方法等が挙げられる。
基材の加熱における雰囲気は、常圧下、減圧下のいずれの状態であってよい。また、前記保持における雰囲気は、酸化性ガス(酸素ガス等。)、還元性ガス(水素ガス等。)、不活性ガス(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等。)のいずれの雰囲気であってもよい。
基材の加熱時間は、通常は、0.5分~30分である。
例えば、パウダーIIとしてPTFEのパウダーを、分散剤としてポリマー(fd)を、液状分散媒として水系分散媒を含む分散液を使用する場合は、前記分散液を基材の表面に塗布し、200~280℃に加熱し、更に300~400℃に加熱して、F層を形成することが好ましい。200~280℃に加熱する前に、別に80~150℃に加熱してもよい。
【0058】
形成されるF層の厚さとしては、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、15μm以下がさらに好ましく、10μm以下が特に好ましい。F層の厚さとしては、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、4μm以上が特に好ましい。この範囲において、ポリマーIIの物性を損なわずに、耐クラック性に優れたF層を容易に形成できる。
【0059】
形成されるF層と基材の剥離強度は、10N/cm以上が好ましく、12N/cm以上がより好ましく、15N/cm以上が特に好ましい。前記剥離強度は、100N/cm以下が好ましい。本発明の分散液を用いれば、ポリマーIIの物性を損なわずに、基材とF層が強固に接着された積層体を容易に形成できる。
基材は、特に限定されず、銅、アルミ、鉄等の金属基材、ガラス基材、樹脂基材、シリコン基材、セラミックス基材が挙げられる。
基材の形状も、特に限定されず、平面状、曲面状、凹凸状のいずれであってもよく、箔状、板状、膜状、繊維状のいずれであってもよい。
【0060】
本発明の積層体の具体例としては、基材が金属箔である、樹脂付金属箔(本発明の樹脂付金属箔)が挙げられる。
金属箔とF層の間には、接着層が別に設けられていてもよいが、本発明の分散液から形成されるF層は接着性に優れるため、接着層は設けられていなくてもよい。
金属箔の好適な態様としては、圧延銅箔、電解銅箔等の銅箔が挙げられる。本発明の樹脂付金属箔における、金属箔の厚さは3~18μmであることが好ましく、F層の厚さは1~50μmであることが好ましい。
【0061】
本発明の樹脂付金属箔は、金属箔にパターン回路を形成すれば、F層を電気絶縁層とするプリント配線板として使用できる。この際、電気絶縁層の両側にパターン回路が設けられたプリント配線板に貫通穴の形成には、NCドリリング、炭酸ガスレーザー照射又はUV-YAGレーザー照射を使用できる。UV-YAGレーザー照射に際しては、F層が第3高調波(波長355nm)又は第4高調波(波長266nm)において所定の吸光度を示すことが好ましい。本発明の樹脂付金属箔においては、本発明の分散液に紫外線吸収剤、顔料(アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン等。)、硬化剤(トリアリルイソシアヌレート等。)等を更に配合するか、F層の形成における加熱温度を調整すれば、かかる所定の吸光度を示すF層を容易に形成できる。
また、形成された貫通穴の内壁面には、メッキ層を形成してもよい。メッキ層の形成は、金属ナトリウムによるエッチング処理、過マンガン酸溶液による処理、プラズマ処理のいずれの方法でも形成でき、極性ポリマーであるポリマーIをF層に含むため、過マンガン酸溶液による処理又はプラズマ処理によって、メッキ層を効率よく形成できる。
【0062】
本発明の積層体の具体例としては、基材がポリイミドフィルムであり、ポリイミドフィルム表面の少なくとも一方に、本発明の分散液から形成されたF層を有するポリイミドフィルムも挙げられる。かかる積層体は、絶縁被覆体として有用である。
ポリイミドフィルムとF層の間には、接着層が別に設けられていてもよいが、本発明の分散液から形成されるF層は接着性に優れるため、接着層は設けられていなくてもよい。
ポリイミドフィルムの好適な態様としては、2,2’,3,3’-又は3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等。)を主成分とする成分と、パラフェニレンジアミンを主成分とする成分との重合体のフィルムが挙げられる。ポリイミドフィルムの具体例としては、Apical TypeAF(カネカノースアメリカ製)が挙げられる。
【0063】
絶縁被覆体の質量は23.5g/m2以下であることが好ましく、かつ、そのループスティフネス値は0.45g/cm以上であることが好ましい。
絶縁被覆体における、F層の厚さはそれぞれ1~200μmであることが好ましく、5~20μmであることが特に好ましい。また、ポリイミドフィルムの厚さは、5~150μmであることが特に好ましい。
絶縁被覆体は、電気絶縁性、耐摩耗性、耐加水分解性等に優れており、電気絶縁性テープや電気ケーブル又は電気ワイヤーの包装材として使用でき、航空宇宙用又は電気自動車用の、電線材料又はケーブル材料として、特に好適に使用できる。
【0064】
なお、本発明の分散液を、基材の表面に塗布し、加熱してポリマーIとポリマーIIを含むF層を形成させ、基材、ポリマーIとポリマーIIとを含むF層が、この順に積層された、耐クラック性と接着性とにより優れた積層体を得るに際しては、ポリマーIとポリマーIIの含有比は、特に制限されずともよい。
【0065】
本発明の積層体はポリマーIIが有する物性を損なわずに耐クラック性にも優れ、ポリマーIを含み接着性にも優れたF層を有するため、本発明の積層体のF層に、更に他の材料を積層した積層体も製造できる。
本発明の積層体のF層の表面と第2の基材とを圧着させれば、第1の基材(本発明の積層体における基材を示す。以下同様。)とF層と第2の基材とが、この順に積層された複合積層体が得られる。
【0066】
第2の基材は、銅、アルミ、鉄等の金属基材、ガラス基材、樹脂基材、シリコン基材、セラミックス基材のいずれであってもよい。
第2の基材の形状は、平面状、曲面状、凹凸状のいずれであってもよい。
第2の基材の性状も、箔状、板状、膜状、繊維状のいずれであってもよい。
第2の基材の具体例としては、耐熱性樹脂基材、繊維強化樹脂板の前駆体であるプリプレグ等が挙げられる。
プリプレグとは、強化繊維(ガラス繊維、炭素繊維等。)の基材(トウ、織布等。)に樹脂(上述した熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等。)を含浸させたシート状の基材である。
耐熱性樹脂基材としては、耐熱性樹脂を含むフィルムが好ましく、単層であってもよく多層であってもよい。
耐熱性樹脂としては、ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0067】
本発明の積層体のF層の表面と第2の基材とを圧着させる方法としては、熱圧着法が挙げられる。
第2の基材がプリプレグである場合の熱圧着法における圧着温度としては、120~300℃がより好ましく、160~220℃が特に好ましい。この範囲において、プリプレグの熱劣化を抑制しつつ、F層とプリプレグを強固に接着できる。
第2の基材が耐熱性樹脂基材である場合の熱圧着温度としては、300~400℃が好ましい。この範囲において、耐熱性樹脂基材の熱劣化を抑制しつつ、F層と耐熱性樹脂基材を強固に接着できる。
【0068】
熱圧着は、減圧雰囲気下で行うことが好ましく、20kPa以下の真空度で行うことが特に好ましい。この範囲において、複合積層体における、基板、F層、第2の基材それぞれの界面への気泡混入が抑制でき、酸化による劣化を抑制できる。また、熱圧着は前記真空度に到達した後に昇温することが好ましい。
熱圧着における圧力は、0.2MPa以上であることが好ましい。また、圧力の上限は、10MPa以下であることが好ましい。この範囲において、複合積層体の破損を抑制しつつ、F層と第2の基材を強固に接着できる。
【0069】
本発明の積層体のF層の表面に第2のポリマー層を形成する液状の層形成材料を塗布し、第2のポリマー層を形成させれば、第1の基材とF層と第2のポリマー層が、この順に積層された複合積層体が得られる。
液状の層形成材料は、特に限定されず、本発明の分散液を使用してもよい。
第2のポリマー層の形成方法も、特に限定されず、使用する液状の層形成材料の性質によって適宜決定できる。例えば、前記層形成材料が、本発明の分散液である場合には、本発明の積層体の製造方法におけるF層の形成方法と同様の条件にしたがって、第2のポリマー層を形成できる。つまり、前記層形成材料が本発明の分散液であれば、ポリマーIとポリマーIIを含むF層を多層化して、より厚膜のポリマーIとポリマーIIを含むF層を容易に形成できる。
【0070】
本発明の複合積層体の具体例としては、本発明の分散液や、パウダーIを含まずパウダーIIを含む分散液を液状の層形成材料として得られる複合積層体が挙げられる。第2のポリマー層は強固な接着性を示すポリマー層上に形成されるため、後者の分散液を用いても剥離強度の高い複合積層体が得られる。かかる複合積層体も、本発明の樹脂付金属箔又は本発明の絶縁被覆体の一態様として好適に使用できる。
【0071】
本発明によれば、ポリマーIIが有する物性を損なわずに耐クラック性にも優れた、ポリマーIとポリマーIIを含むF層が形成される。本発明の積層体の基材を除去すれば、ポリマーIとポリマーIIとを含む膜(フィルム)が得られる。
基材を除去する方法は、本発明の積層体から基材を剥離させて除去する方法、本発明の積層体から基材を溶解させて除去する方法が挙げられる。例えば、本発明の積層体の基材が銅箔である場合には、本発明の積層体の基材面を塩酸に接触させれば、基材が溶解して除去されて、膜が容易に得られる。
【0072】
本発明の膜における、ポリマーIとポリマーIIとポリマーI及びポリマーIIの含有比率の範囲とは、その好適な態様も含めて、本発明の分散液における定義と同様である。
本発明の膜の膜厚としては、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、15μm以下がさらに好ましく、10μm以下が特に好ましい。膜の膜厚の下限としては、特に限定されず、1μm以上が好ましく、4μm以上が特に好ましい。この範囲において、膜は、ポリマーIIが有する物性を損なわずに、接着性と耐クラック性により優れる。
【0073】
本発明の分散液を、織布に含浸させ、加熱により乾燥させれば、ポリマーI及びポリマーIIの含浸織布(本発明の含浸織布)が得られる。本発明の含浸織布は、F層で被覆された被覆織布であることが好ましい。
本発明の含浸織布の製造における、ポリマーI、パウダーI、ポリマーII、パウダーII、分散剤及び液状分散媒の範囲は、その好適な態様も含めて、本発明の分散液における定義と同様である。
【0074】
織布としては、乾燥に耐える耐熱性織布であれば特に限定されず、ガラス繊維織布、カーボン繊維織布、アラミド繊維織布又は金属繊維織布が好ましく、ガラス繊維織布又はカーボン繊維織布がより好ましく、電気絶縁性の観点からは、JISR3410で定められる電気絶縁用Eガラスヤーンより構成される平織のガラス繊維織布が特に好ましい。織布は、F層との密着接着性を高める観点から、シランカップリング剤で処理されていてもよいが、本発明の分散液から形成されるF層は接着性に優れるため、シランカップリング剤で処理されていなくてもよい。
含浸織布における、ポリマーIとポリマーIIの総含有量は、30~80質量%以上であることが好ましい。
【0075】
本発明の分散液を織布に含浸させる方法は、分散液中に織布をつける方法、分散液を織布に塗布する方法が挙げられる。前者の方法におけるつける回数、及び、後者の方法における塗布回数は、それぞれ、1回であってもよく、2回以上であってもよい。本発明の含浸織布の製造方法は、他の材料との接着性に優れるポリマーIを含む分散液を使用するため、つける回数又は塗布回数によらず、織布とポリマーが強固に接着した、ポリマー含有量が高い含浸織布が得られる。
織布を乾燥させる方法は、分散液に含まれる液状分散媒の種類によって、適宜決定でき、例えば、液状分散媒が水である場合には、織布を80~120℃の雰囲気にある通風乾燥炉に通す方法が挙げられる。
織布を乾燥させるに際しては、ポリマーを焼成させてもよい。ポリマーを焼成させる方法は、ポリマーIとポリマーIIの種類によって適宜決定でき、例えば、織布を300~400℃の雰囲気にある通風乾燥炉に通す方法が挙げられる。なお、織布の乾燥とポリマーの焼成は、一段階で実施してもよい。
【0076】
本発明の製造方法で得られる含浸織布は、F層がポリマーIを含むため、F層と織布の密着接着性が高い、表面平滑性が高い、歪がすくない等の特性に優れている。かかる含浸織布と金属箔を熱圧着させることにより得られる樹脂付金属箔は、剥離強度が高く、反りにくいため、プリント基板材料として好適に使用できる。
【0077】
また、本発明の含浸織布の製造方法においては、分散液を含浸させた織布を、基材の表面に塗布し、加熱させ乾燥させることにより、ポリマーIとポリマーIIと織布を含む含浸織布層を形成させ、基材と含浸織布層が、この順に積層された積層体を製造してもよい。その態様も、特に限定されず、槽、配管、容器等の成形品の内壁面の一部に分散液を含浸させた織布を塗布し、成形品を回転させながら加熱すれば、成形品の内壁全面に含浸織布層を形成できる。この製造方法によれば、槽、配管、容器等の成形品の内壁面のライニング方法としても有用である。
【実施例】
【0078】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
各種測定方法を以下に示す。
<パウダーのD50(平均粒子径)及びD90>
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用い、パウダーを水中に分散させて測定した。
<積層体の剥離強度>
矩形状(長さ100mm、幅10mm)に切り出した積層体の長さ方向の一端から50mmの位置を固定し、引張り速度50mm/分、長さ方向の片端から積層体に対して90°で、金属箔とF層とを剥離させた際にかかる最大荷重を剥離強度(N/cm)とした。
【0079】
[ポリマー及びパウダー]
ポリマーI1:TFE単位、NAH単位及びPPVE単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含むコポリマー(融点:300℃)。
パウダーI1:D50が1.7μm、D90が3.8μmである、ポリマーI1からなるパウダー。
パウダーI2:D50が0.3μm、D90が1.8μmである、ポリマーI1からなるパウダー。このパウダーは、パウダーI1を湿式ジェットミルに供することにより得られる。
分散液(p21):PTFEからなるパウダーII1(D50 0.3μm)を50質量%含む、PTFEの水分散液(AGC社製、品番AD-911E。)。なお、分散液(p21)は前記分散液(p2)に属する分散液であり、前記PTFEは非溶融加工性である。
[分散剤]
分散剤1:F(CF2)6CH2(OCH2CH2)7OCH2CH(CH3)OH(フッ素含有量:34質量%、水酸基価:78mgKOH/g)。
分散剤2:CH2=CHC(O)OCH2CH2CH2CH2OC(CF3)(=C(CF(CF3)2)2)及びCH2=CHC(O)O(CH2CH2O)10Hのコポリマー(フッ素含有量:40質量%、水酸基価:56mgKOH/g)
分散剤3:CH2=C(CH3)C(O)OCH2CH2(CF2)6Fに基づく単位とCH2=C(CH3)C(O)(OCH2CH2)23OHに基づく単位とを含むコポリマー(フッ素含有量:35質量%、水酸基価:19mgKOH/g)。
分散剤4:CH2=CHC(O)OCH2CH2(CF2)6Fのホモポリマー。
【0080】
[例1]パウダー分散液の製造例
[例1-1]分散液1の製造例
パウダーI1の45質量部と、分散剤2の5質量部と、水の50質量部とを混合して、前記分散液(p1)に属する分散液である、分散液(p11)を調製した。
分散液(p21)と分散液(p11)とを混合して、パウダーI1及びパウダーII1が水中に分散した、PTFEに対するポリマーI1の比(質量比)が0.1の、pHが5~7の分散液1を得た。なお、分散液(p11)と分散液(p21)の混合に際しては、混合直前に15kgの分散液(p11)を3000rpmの条件にてホモディスパーで処理し、更に3000rpmの条件にてホモジナイザーで処理した。また、分散液1は、長期保管しても色相が変化しなかった。
[例1-2~例1-4]分散液2~4の製造例
ポリマーII1に対するポリマーI1の比(質量比)を、0.4(分散液2、例1-2)、1.0(分散液3、例1-3)、4.0(分散液4、例1-4)に変更する以外は、例1-1と同様にして分散液をそれぞれ製造した。
[例1-5]分散液5の製造例
分散剤2を分散剤1に変更する以外は、例1-1と同様して、分散液5を得た。
[例1-6]分散液6の製造例
パウダーI1をパウダーI2に、分散剤2を分散剤1に、変更する以外は、例1-1と同様して、分散液6を得た。
【0081】
[例2]積層体及び膜の製造例
分散液1を銅箔(厚さ18μm)の表面に塗布し、100℃で10分間乾燥し、不活性ガス雰囲気下、380℃で10分間焼成した後に徐冷して、銅箔と、銅箔表面にポリマーI1とPTFEを含むF層(厚さ5μm)が形成された積層体(樹脂付銅箔)を得た。積層体の剥離強度は16N/cmであり、F層の表面はPTFEに由来する繊維状表面を形成していた。また、樹脂付銅箔の銅箔を塩酸で除去して、ポリマーI1とPTFEを含む膜(厚さ5μm)を得た。
分散液1を、分散液2、分散液3、分散液4又は分散液(p21)に変更する以外は同様にして積層体をそれぞれ製造し、剥離強度とF層の表面性状とを評価した。結果を、まとめて下表1に示す。表中の「ポリマー比」とは、使用した分散液に含まれる、PTFEの含有量に対するポリマーI1の含有量の比(質量比)である。
【0082】
【0083】
[例3]耐クラック性の評価例
一端辺にビニールテープが貼られたステンレス板(厚さ0.5mm)の表面に分散液2を塗布し、その端辺に沿って棒をスライドさせて、分散液2をステンレス板の表面にならした。ステンレス板を、100℃にて3分間、3回乾燥し、更に380℃にて10分間加熱し、ステンレス板の表面にポリマーI1とPTFEを含み、端辺に貼られたビニールテープの厚さに起因して、厚さが傾斜したF層が形成されたステンレス板を得た。該ステンレス板を目視で確認し、クラック線が発生している部分の先端(最もF層が薄い部分。)のF層の膜厚を、MINITEST3000(Electro Physik社製)を用いて測定した結果、5.8μmであった。
分散液2を、分散液4又は分散液(p21)に変更する以外は同様にして評価した結果を、まとめて表2に示す。
【0084】
【0085】
[例4]パウダー分散液の貯蔵安定性の評価例
分散液1、分散液5及び分散液6を25℃にて10日間静置し、静置後の分散液の外観を目視で確認すると、分散液1及び5には沈降物が確認されるが、分散液6には沈降物が確認されない。
【0086】
[例5]パウダー分散液の製造例
30質量部のパウダーI2、5質量部の分散剤1、及び65質量部の水を含む分散液(p11)と、分散液(p21)とを混合して、それぞれのパウダーが水中に分散し、PTFEとポリマーI1との合計量に対して、PTFEを90質量%、ポリマーI1を10質量%含む、pHが5~7の分散液11を得た。PTFEに対するポリマーI1の比(質量比)が0.11であり、PTFEとポリマーI1との合計量に対する分散剤1の比(質量比)は、0.017であった。また、分散液11は、長期保管しても色相が変化しなかった。
各成分の種類とポリマー混合の割合とを変更する以外は同様にして分散液12~15を得た。それぞれの分散液の組成と、貯蔵安定性及びクラック耐性の評価結果とを、下表2にまとめて示す。
【0087】
【0088】
貯蔵安定性及びクラック耐性は、以下の方法によって評価した。
<貯蔵安定性>
分散液を25℃にて1週間放置した後の状態を目視確認し、以下の基準で評価した。
〇:沈降物が確認されない。
△:沈降物が確認されるが、手で振ると再分散する。
×:沈降物が確認され、手で振るだけでは再分散しない。
<クラック耐性>
一端辺にビニールテープが貼られたステンレス板(厚さ0.5mm)の表面に分散液を塗布し、その端辺に沿って棒をスライドさせならした後、100℃にて3分間、3回乾燥し、更に340℃にて10分間加熱した。これにより、ステンレス板の表面に、端辺に貼られたビニールテープの厚さに起因して、厚さが傾斜したF層を形成した。このステンレス板を目視で確認し、クラック線の発生部分の先端(最もポリマー層が薄い部分。)のポリマー層の膜厚を、MINITEST3000(Electro Physik社製)を用いて測定し、以下の基準で評価した。
〇:クラックが発生する先端のF層の厚さが10μm以上である。
△:クラックが発生する先端のF層の厚さが5μm以上10μm未満である。
×:クラックが発生する先端のF層の厚さが5μm未満である。
【0089】
[例6]積層体の製造例
分散液11を銅箔の表面に塗布し、100℃で10分間乾燥し、不活性ガス雰囲気下、340℃で10分間焼成した後に徐冷した。これにより、銅箔と、銅箔の表面に形成されたポリマーI1及びPTFEを含むF層(厚さ5μm)とを有する積層体(樹脂付銅箔)を得た。
分散液11を、分散液12~15又は分散液(p21)に変更する以外は同様にして、積層体を製造した。それぞれの積層体に関して、F層の表面のSEM画像(倍率:30000倍)での観察結果と、剥離強度の測定結果と、そのF層の平滑性の評価結果とを、表4にまとめて示す。
【0090】
【0091】
剥離強度及び平滑性は、以下の基準によって評価した。
<剥離強度>
〇:剥離強度が10N/cm以上である。
△:剥離強度が1N/cm以上10N/cm未満である。
×:剥離強度が1N/cm未満である。
<平滑性>
積層体のF層側に光照射し、そのF層を斜め上方から目視確認して、下記基準で評価した。
○:ブツ模様が確認されない。
×:ブツ模様が確認される。
【0092】
[例7]膜の製造例
[例7-1]膜13の製造例
分散液13を銅箔の表面に塗布し、100℃で10分間乾燥し、不活性ガス雰囲気下、340℃で10分間焼成した後に徐冷した。これにより、銅箔と、銅箔の表面に形成されたポリマーI1とPTFEとを含むF層とを有する積層体を得た。この積層体のポリマー層の表面への分散液の塗布、乾燥、焼成の操作を同じ条件にて繰り返した。これにより、F層の膜厚を30μmまで増大させた。その後、積層体の銅箔を塩酸で除去して、ポリマーI1とPTFEとを含む膜13を得た。膜13を延伸処理(延伸率200%)して、延伸膜13を得た。
[例7-2]膜14及び膜(p21)の製造例
分散液の種類を変更した以外は例7-1と同様にして、分散液14から膜14を、分散液(p21)から膜(p21)を、それぞれ得た。このポリマー膜を、それぞれ、例7-1と同様に延伸処理して、延伸膜14と延伸膜(p21)を得た。
それぞれの延伸膜は、多孔質の膜であり、その開孔状態を比較すると、孔径分布は小さい順に延伸膜13、延伸膜14、延伸(p21)であり、この順に緻密な多孔質膜を形成していた。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の分散液は、接着性と耐クラック性に優れたフルオロオレフィン系ポリマー層を容易に形成でき、フィルム、含浸物(プリプレグ等。)、積層板(樹脂付銅箔等の金属積層板。)等の成形品の製造に使用でき、離型性、電気特性、撥水撥油性、耐薬品性、耐候性、耐熱性、滑り性、耐摩耗性等が要求される用途の成形品の製造に使用できる。本発明から得られる成形品は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、塗料、化粧品等として有用であり、具体的には、電線被覆材(航空機用電線等。)、電気絶縁性テープ、石油掘削用絶縁テープ、プリント基板用材料、分離膜(精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、透析膜、気体分離膜等。)、電極バインダー(リチウム二次電池用、燃料電池用等。)、コピーロール、家具、自動車ダッシュボート、家電製品のカバー、摺動部材(荷重軸受、すべり軸、バルブ、ベアリング、歯車、カム、ベルトコンベア、食品搬送用ベルト等。)、工具(シャベル、やすり、きり、のこぎり等。)、ボイラー、ホッパー、パイプ、オーブン、焼き型、シュート、ダイス、便器、コンテナ被覆材として有用である。
なお、2018年06月27日に出願された日本特許出願2018-121873号、2018年12月25日に出願された日本特許出願2018-240871号及び2018年12月25日に出願された日本特許出願2018-240874号の明細書、特許請求の範囲、要約書及び図面の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。