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特許7435444銅張積層板、プリント配線板、半導体パッケージ及び銅張積層板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】銅張積層板、プリント配線板、半導体パッケージ及び銅張積層板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20240214BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20240214BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
B32B15/08 P
H05K1/09 C
B32B15/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020531341
(86)(22)【出願日】2019-07-17
(86)【国際出願番号】 JP2019028081
(87)【国際公開番号】W WO2020017551
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2018135318
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白男川 芳克
(72)【発明者】
【氏名】鴨志田 真一
(72)【発明者】
【氏名】黒川 博
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-007327(JP,A)
【文献】特開2018-090903(JP,A)
【文献】特開2017-036495(JP,A)
【文献】国際公開第2011/090174(WO,A1)
【文献】特開2010-201620(JP,A)
【文献】国際公開第2017/191771(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/022563(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
H05K 1/09
H05K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂及びシリカを含有する絶縁層と、該絶縁層の少なくとも一方の面に配置された銅箔と、を含む銅張積層板であり、
前記銅箔が、亜鉛及びニッケルを含有する金属処理層を有する表面処理銅箔であり、
前記金属処理層における亜鉛の含有量が、10~2,500μg/dmであり、
前記金属処理層におけるニッケルの含有量が、10~500μg/dm であり、
前記金属処理層における、亜鉛の含有量と、ニッケル、任意で含有されるコバルト及び任意で含有されるモリブデンからなる群から選択される1種以上である第2金属の合計含有量と、の比〔第2金属/亜鉛〕が、質量比で、1.0~20である、銅張積層板。
【請求項2】
前記絶縁層が、熱硬化性樹脂及びシリカを含有する熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含有する、請求項1に記載の銅張積層板。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂組成物中における前記シリカの含有量が、前記熱硬化性樹脂組成物に含有される樹脂成分総量100質量部に対して、30~200質量部である、請求項2に記載の銅張積層板。
【請求項4】
前記絶縁層が、前記熱硬化性樹脂組成物を、ガラスクロスに含浸してなるプリプレグの硬化物である、請求項2又は3に記載の銅張積層板。
【請求項5】
前記金属処理層における亜鉛の含有量が、20~500μg/dmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の銅張積層板。
【請求項6】
前記表面処理銅箔が、銅箔の片面又は両面に、耐熱処理、クロメート処理及びシランカップリング剤処理を施してなるものである、請求項1~5のいずれか1項に記載の銅張積層板。
【請求項7】
請求項に記載の銅張積層板を製造する方法であって、
前記絶縁層が、前記プリプレグ又は前記プリプレグを硬化してなる絶縁層と前記表面処理銅箔とを張り合わせた状態で、210℃以上に加熱する工程を有する、銅張積層板の製造方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の銅張積層板を用いてなるプリント配線板。
【請求項9】
請求項8に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅張積層板、プリント配線板、半導体パッケージ及び銅張積層板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化及び高性能化により、プリント配線板では配線密度の高度化及び高集積化が進展し、これに伴ってプリント配線板用の銅張積層板への信頼性向上の要求が強まっている。
銅張積層板は絶縁層と銅箔とを積層してなるものであり、一般的には、ガラスクロスに樹脂を含浸してなるプリプレグと銅箔とを積層して、加熱及び加圧することで製造される。得られた銅張積層板は、その後、回路を形成された後、アニール処理、リフロー処理等の加熱処理が施され、該銅張積層板を用いたプリント配線板が製造される。
【0003】
上記のように、プリント配線板の製造過程においては、プリプレグ等の絶縁層と銅箔とが積層された状態で複数の加熱処理が施されるが、その際に、絶縁層と銅箔との間に、膨れ(以下、「ブリスター」ともいう)が発生することがある。ブリスターは、銅張積層板の歩留まりの悪化、プリント配線板の信頼性の低下等の原因になるため、その発生を抑制することが望まれている。
【0004】
特に、近年、地球環境保護の観点から、はんだの鉛フリー化が進行しており、プリント配線板への部品実装時及び半導体パッケージ組み立て時におけるリフロー工程の温度が非常に高くなっている。また、生産効率の向上を目的として積層成形時の加熱温度を高くすることもあり、銅張積層板に付与される熱履歴は益々過酷になりつつあり、銅張積層板の耐ブリスター性を高める要求が強まっている。
【0005】
銅張積層板の耐ブリスター性を向上させることを目的として種々の検討が行われている。
例えば、特許文献1には、リフロー時に基板側面からブリスターの原因となる水分が侵入することを抑制することを目的として、基板周縁部の少なくとも一つに金属壁部が形成されているプリント基板が開示されている。
また、特許文献2には、高温下に晒された場合にブリスターの発生を抑制できる硬化物の製造方法として、エポキシ樹脂と活性エステル化合物と硬化促進剤とを含むエポキシ樹脂材料を用いて、該エポキシ樹脂材料を不活性ガスの雰囲気下で硬化させる、硬化物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-062441号公報
【文献】特開2013-075948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のプリント基板は、周縁部に金属壁部を形成する必要があり、プリント基板の設計自由度に制約が生じる問題がある。
また、特許文献2に記載の硬化物の製造方法は、エポキシ樹脂材料を不活性ガス雰囲気下で硬化させる必要があり、生産性及び取り扱い性に劣る問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ブリスターの発生が抑制された銅張積層板及びその製造方法、並びに、該銅張積層板を用いたプリント配線板及び半導体パッケージを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、下記の本発明によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、下記[1]~[9]に関する。
[1]樹脂を含有する絶縁層と、該絶縁層の少なくとも一方の面に配置された銅箔と、を含む銅張積層板であり、
前記銅箔が、亜鉛を含有する金属処理層を有する表面処理銅箔であり、
前記金属処理層における亜鉛の含有量が、10~2,500μg/dmである、銅張積層板。
[2]前記金属処理層が、さらに、ニッケル、コバルト及びモリブデンからなる群から選択される1種以上の金属を含有する、上記[1]に記載の銅張積層板。
[3]前記金属処理層における、ニッケル、コバルト及びモリブデンからなる群から選択される1種以上の金属の合計含有量が、10~2,500μg/dmである、上記[2]に記載の銅張積層板。
[4]前記金属処理層が、さらに、ニッケルを含有するものであり、前記金属処理層におけるニッケルの含有量が、10~200μg/dmである、上記[1]~[3]のいずれかに記載の銅張積層板。
[5]前記金属処理層における亜鉛の含有量が、10~500μg/dmである、上記[1]~[4]のいずれかに記載の銅張積層板。
[6]前記表面処理銅箔が、銅箔の片面又は両面に、耐熱処理、クロメート処理及びシランカップリング剤処理を施してなる、上記[1]~[5]のいずれかに記載の銅張積層板。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の銅張積層板を製造する方法であって、
前記絶縁層が、熱硬化性樹脂を含有するプリプレグを硬化してなる層であり、
前記プリプレグ又は前記プリプレグを硬化してなる絶縁層と前記表面処理銅箔とを張り合わせた状態で、210℃以上に加熱する工程を有する、銅張積層板の製造方法。
[8]上記[1]~[6]のいずれかに記載の銅張積層板を用いてなるプリント配線板。
[9]上記[8]に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ブリスターの発生が抑制された銅張積層板及びその製造方法、並びに、該銅張積層板を用いたプリント配線板及び半導体パッケージを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値及び上限値と任意に組み合わせられる。
また、本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本発明に含まれる。
【0013】
[銅張積層板]
本実施形態の銅張積層板は、樹脂を含有する絶縁層(以下、単に「絶縁層」とも称する。)と、該絶縁層の少なくとも一方の面に配置された銅箔と、を含む銅張積層板であり、前記銅箔が、亜鉛を含有する金属処理層を有する表面処理銅箔であり、前記金属処理層における亜鉛の含有量が、10~2,500μg/dmである。
なお、以下の説明において、本実施形態の銅張積層板が有する、亜鉛の含有量が10~2,500μg/dmである金属処理層を有する表面処理銅箔を「表面処理銅箔(I)」とも称する。
【0014】
本実施形態の銅張積層板は、絶縁層と、該絶縁層の少なくとも一方の面に表面処理銅箔(I)が配置された構成を含むものであれば、その構成は特に限定されない。
本実施形態の銅張積層板が銅箔を2枚以上含む場合、2枚以上の銅箔は、表面処理銅箔(I)のみであってもよく、表面処理銅箔(I)と、表面処理銅箔(I)以外の銅箔との組み合わせであってもよい。
【0015】
銅張積層板の構成としては、絶縁層の一方の面又は両面に銅箔が積層されたものであってもよく、1層以上の絶縁層と1層以上の銅箔とが交互に層形成されたものであってもよい。また、両面に銅箔を有するコア基板の一方又は両方の面に、1層以上の絶縁層と1層以上の銅箔とが交互に層形成されたものであってもよい。
本実施形態の銅張積層板に含まれる絶縁層の層数は、1層以上であればよく、その用途に応じて、例えば、2~20枚の間から適宜選択してもよい。
本実施形態の銅張積層板に含まれる銅箔の枚数は、1枚以上であり、その用途に応じて、例えば、2~20枚の間から適宜選択してもよい。
さらに、本実施形態の銅張積層板が有する銅箔は、後述する方法によって回路が形成されていてもよい。
なお、上記の説明において、単に「銅箔」と記載する場合、該用語は、銅張積層板が「表面処理銅箔(I)」のみを含む態様の場合は「表面処理銅箔(I)」を指し、銅張積層板が「表面処理銅箔(I)」と「表面処理銅箔(I)以外の銅箔」とを含む態様の場合は、「表面処理銅箔(I)」及び「表面処理銅箔(I)以外の銅箔」の両者を指すものとする。
本実施形態の銅張積層板の厚さは、特に限定されず、銅張積層板の用途に応じて適宜決定すればよいが、例えば、0.03~1.6mmである。
次に、本実施形態の銅張積層板が有する表面処理銅箔(I)及び絶縁層について説明する。
【0016】
<表面処理銅箔(I)>
本実施形態の銅張積層板が有する表面処理銅箔(I)は、少なくとも一方の面に、亜鉛を含有する金属処理層を有するものである。
ここで、銅箔の表面に形成される金属処理層は、少なくとも一方の面に、亜鉛を含有する金属処理層を有するものであればよく、該金属処理層を形成する目的については特に限定されない。すなわち、金属処理層は、例えば、耐熱性、耐候性等の向上を目的とした耐熱処理によって形成されたものであってもよく、防錆性の向上を目的としてクロメート処理等によって形成されたものであってもよい。また、耐熱処理及びクロメート処理の両者によって形成されたものであってもよく、これら以外の処理によって形成されてなるものであってもよい。
【0017】
該金属処理層中における亜鉛の含有量は、10~2,500μg/dmであり、好ましくは15~1,000μg/dm、より好ましくは20~500μg/dm、さらに好ましくは25~300μg/dm、特に好ましくは30~200μg/dmである。
金属処理層中における亜鉛の含有量が、上記下限値以上であると、十分な防錆効果が得られ、微細配線性に優れるものとなり、上記上限値以下であると、耐ブリスター性に優れるものとなる。
なお、本明細書において、金属処理層中における特定の元素の含有量とは、1層当たりの金属処理層中における前記特定の元素の含有量を意味する。したがって、表面処理銅箔(I)が両面に金属処理層を有する場合は、金属処理層中における特定の元素の含有量とは、両面の金属処理層のうち、片面の金属処理層中における前記特定の元素の含有量を意味する。
【0018】
上記金属処理層は、亜鉛の他にも、ニッケル、コバルト及びモリブデンからなる群から選択される1種以上の金属(以下、「第2金属」ともいう。なお、第2金属として2種以上の元素を含有する場合、これらの2種以上の元素も「第2金属」と称する。)を含有することが好ましく、ニッケルを含有することがより好ましい。金属処理層がこれらの第2金属を含有することによって、得られる銅張積層板は、より一層耐ブリスター性に優れるものとなる。
上記金属処理層が第2金属を含有する場合、金属処理層における上記第2金属の合計含有量は、好ましくは10~2,500μg/dm、より好ましくは40~1,000μg/dm、さらに好ましくは60~500μg/dm、特に好ましくは100~300μg/dmである。
上記金属処理層が第2金属としてニッケルを含有する場合、金属処理層におけるニッケルの含有量は、好ましくは10~500μg/dm、より好ましくは40~400μg/dm、さらに好ましくは60~300μg/dm、特に好ましくは100~200μg/dmである。
また、上記金属処理層が第2金属を含有する場合、金属処理層における亜鉛の含有量と、第2金属の合計含有量と、の比〔第2金属/亜鉛〕は、より一層耐ブリスター性に優れるものとする観点から、質量比で、好ましくは0.1~20、より好ましくは0.5~10、さらに好ましくは1.0~5、特に好ましくは1.2~2である。
なお、金属処理層における亜鉛及び第2金属の含有量は、蛍光X線分析によって測定することができる。
【0019】
本実施形態の銅張積層板に含まれる銅箔は、特に限定されず、圧延銅箔であっても、電解銅箔であってもよいが、電解銅箔であることが好ましい。
【0020】
表面処理銅箔(I)の少なくとも一方の面には粗化処理が施されていてもよい。
粗化処理の方法及び条件は、要求される表面特性に応じて、従来公知の方法及び条件を適宜採用すればよいが、例えば、銅等の電気めっきによって、銅箔の表面に微細な凹凸を有する皮膜を付着させる方法が挙げられる。粗化処理前には、適宜、酸洗浄等の前処理を行ってもよい。
表面処理銅箔(I)が粗化処理されてなるものである場合、表面処理層は、粗化処理面及び粗化処理を行っていない面のいずれか又は両方に設けられていればよく、粗化処理面に設けられていることが好ましい。
【0021】
本実施形態の表面処理銅箔(I)が有する金属処理層の少なくとも一部は、耐熱処理によって形成されたものであることが好ましい。
耐熱処理は、亜鉛を用いためっき処理を含むことが好ましい。亜鉛を用いためっき処理は、亜鉛めっき処理又は亜鉛合金めっき処理のいずれであってもよく、亜鉛合金めっき処理であることが好ましい。
亜鉛合金めっき処理による場合、亜鉛と合金を形成する金属としては、上記した第2金属と同じものが挙げられる。亜鉛合金の具体例としては、亜鉛-ニッケル合金、亜鉛-コバルト合金、亜鉛-モリブデン合金、亜鉛-コバルト-モリブデン合金等が挙げられ、これらの中でも、亜鉛-ニッケル合金、亜鉛-コバルト-モリブデン合金が好ましい。
亜鉛めっき処理又は亜鉛合金めっき処理によって形成される金属処理層における、亜鉛及び第2金属の含有量及び含有量比の好適な範囲は、上記した通りである。
【0022】
また、本実施形態の表面処理銅箔(I)が有する金属処理層の少なくとも一部は、クロメート処理(防錆処理)によって形成されたものであってもよい。クロメート処理を行うことによって、銅箔の酸化を抑制することができ、回路形成時に微細配線を良好に形成することが可能となる。クロメート処理は、電解クロメート処理又は浸漬クロメート処理のいずれであってもよいが、付着量の安定性等の観点から、電解クロメート処理が好ましい。
【0023】
表面処理銅箔(I)は、さらに、シランカップリング剤処理を施したものであってもよい。これにより耐湿性、耐薬品性及び絶縁層との密着性等を向上させることができる。シランカップリング剤処理は、例えば、シランカップリング剤を適宜希釈した後、銅箔に塗布及び乾燥することで実施することができる。シランカップリング剤は、公知のシランカップリング剤の中から、所望する特性に応じて適宜選択することができる。
【0024】
表面処理銅箔(I)は、上記した、耐熱処理、クロメート処理及びシランカップリング剤処理を施してなるものであることが好ましい。
【0025】
表面処理銅箔(I)の厚さは、銅張積層板の用途等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、好ましくは1~120μm、より好ましくは2~60μm、さらに好ましくは3~40μmである。また、半導体パッケージをより薄型化する観点からは、好ましくは35μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。
【0026】
<絶縁層>
本実施形態の銅張積層板が有する樹脂を含有する絶縁層は、特に限定されず、所望する特性に応じて従来公知の絶縁樹脂材料の中から適宜選択してもよい。
絶縁層は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含有するものであることが好ましく、熱硬化性樹脂組成物がガラスクロス等のシート状補強基材に含浸されてなるプリプレグの硬化物であることがより好ましい。
【0027】
上記熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含有するものであれば特に限定されない。
熱硬化性樹脂としては、マレイミド化合物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐熱性、成形性及び電気絶縁性の観点から、マレイミド化合物、エポキシ樹脂が好ましい。
【0028】
上記熱硬化性樹脂組成物は、より一層耐ブリスター性を高める観点、及び優れた銅箔接着性、低熱膨張性、誘電特性等を得る観点から、(A)マレイミド化合物を含有するものが好ましく、さらに、(B)エポキシ樹脂、(C)置換ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂、(D)無機充填材、(E)硬化剤、(F)熱可塑性エラストマー及び(G)硬化促進剤からなる群から選択される1種以上を含有するものがより好ましい。
以下、各成分の好適な態様について詳細に説明する。
【0029】
〔(A)マレイミド化合物〕
(A)マレイミド化合物は、少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(a1)(以下、「マレイミド化合物(a1)」ともいう)である。
マレイミド化合物(a1)としては、複数のマレイミド基のうちの任意の2個のマレイミド基の間に脂肪族炭化水素基を有する(但し、芳香族炭化水素基は存在しない)マレイミド化合物(以下、「脂肪族炭化水素基含有マレイミド」ともいう)、複数のマレイミド基のうちの任意の2個のマレイミド基の間に芳香族炭化水素基を含有するマレイミド化合物(以下、「芳香族炭化水素基含有マレイミド」ともいう)が挙げられる。これらの中でも、高耐熱性、低比誘電率、高銅箔接着性等の観点から、芳香族炭化水素基含有マレイミドが好ましい。
同様の観点から、マレイミド化合物(a1)は、1分子中に2個~5個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物が好ましく、1分子中に2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物がより好ましく、下記一般式(a1-1)~(a1-4)のいずれかで表される芳香族炭化水素基含有マレイミドがさらに好ましく、下記一般式(a1-2)で表される芳香族炭化水素基含有マレイミドが特に好ましい。
(A)マレイミド化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
【化1】

(式中、RA1~RA3は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基を示す。XA1は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S-S-又はスルホニル基を示す。p、q及びrは、各々独立に、0~4の整数である。sは、0~10の整数である。)
【0031】
A1~RA3が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、高耐熱性、低比誘電率、高銅箔接着性等の観点から、好ましくは炭素数1~3の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはメチル基、エチル基である。
【0032】
A1が示す炭素数1~5のアルキレン基としては、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、高耐熱性、低比誘電率、高銅箔接着性等の観点から、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基であり、より好ましくはメチレン基である。
A1が示す炭素数2~5のアルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、高耐熱性、低比誘電率、高銅箔接着性等の観点から、イソプロピリデン基が好ましい。
A1としては、上記選択肢の中でも、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基が好ましい。より好ましいものは前述の通りである。
p、q及びrは、各々独立に、0~4の整数であり、高耐熱性、低比誘電率、高銅箔接着性等の観点から、いずれも、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。
sは、0~10の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0~5の整数、より好ましくは0~3の整数である。
【0033】
マレイミド化合物(a1)としては、具体的には、N,N’-エチレンビスマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素基含有マレイミド;N,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’-[1,3-(2-メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[1,3-(4-メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-(1,4-フェニレン)ビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ケトン、1,4-ビス(4-マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス(4-マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド等の芳香族炭化水素基含有マレイミドが挙げられる。
これらの中でも、反応率が高く、より高耐熱性化できるという観点からは、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ジスルフィド、N,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましく、安価であるという観点からは、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、N,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミドが好ましい。
【0034】
(A)マレイミド化合物は、上記マレイミド化合物(a1)と、モノアミン化合物(a2)及びジアミン化合物(a3)からなる群から選択される1種以上とを反応させて得られる化合物(以下、「変性マレイミド化合物」ともいう)であることが好ましく、マレイミド化合物(a1)とモノアミン化合物(a2)とジアミン化合物(a3)とを反応させて得られる化合物、マレイミド化合物(a1)とジアミン化合物(a3)とを反応させて得られる化合物がより好ましい。
【0035】
(モノアミン化合物(a2))
モノアミン化合物(a2)は、アミノ基を1つ有する化合物であれば特に制限はないが、高耐熱性、低比誘電率、高銅箔接着性等の観点から、酸性置換基を有するモノアミン化合物が好ましく、下記一般式(a2-1)で表されるモノアミン化合物がより好ましい。
【化2】

(式中、RA4は、水酸基、カルボキシ基及びスルホン酸基から選択される酸性置換基を示す。RA5は、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子を示す。tは1~5の整数、uは0~4の整数であり、且つ、1≦t+u≦5を満たす。但し、tが2~5の整数の場合、複数のRA4は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、uが2~4の整数の場合、複数のRA5は同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【0036】
A4が示す酸性置換基としては、溶解性及び反応性の観点から、好ましくは水酸基、カルボキシ基であり、耐熱性も考慮すると、より好ましくは水酸基である。
tは1~5の整数であり、高耐熱性、低比誘電率、高銅箔接着性等の観点から、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1又は2、さらに好ましくは1である。
A5が示す炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。
A5が示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
uは0~4の整数であり、高耐熱性、低比誘電率、高銅箔接着性等の観点から、好ましくは0~3の整数、より好ましくは0~2の整数、さらに好ましくは0又は1、特に好ましくは0である。
【0037】
モノアミン化合物(a2)としては、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、o-アミノ安息香酸、m-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸、o-アミノベンゼンスルホン酸、m-アミノベンゼンスルホン酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、3,5-ジヒドロキシアニリン、3,5-ジカルボキシアニリン等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性の観点からは、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノールが好ましく、誘電特性、低熱膨張性及び製造コストも考慮すると、p-アミノフェノールがより好ましい。
モノアミン化合物(a2)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
(ジアミン化合物(a3))
ジアミン化合物(a3)は、アミノ基を2つ有する化合物であれば特に制限はないが、高耐熱性、低比誘電率、高銅箔接着性等の観点から、下記一般式(a3-1)で表されるジアミン化合物、及び後述する分子末端にアミノ基を有する変性シロキサン化合物であることが好ましい。
【化3】

(式中、XA2は、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基又は-O-を示す。RA6及びRA7は、各々独立に、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基又はスルホン酸基を示す。v及びwは、各々独立に、0~4の整数である。)
【0039】
A2が示す炭素数1~3の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、プロピリデン基等が挙げられる。
A2としては、メチレン基が好ましい。
A6及びRA7が示す炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。
v及びwは、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。
【0040】
上記分子末端にアミノ基を有する変性シロキサン化合物としては、下記一般式(a3-2)で表されるジアミン化合物が挙げられる。
【0041】
【化4】

(式中、RA8~RA11は、各々独立に、炭素数1~5のアルキル基、フェニル基、又は置換基を有するフェニル基を示す。RA12及びRA13は、各々独立に、2価の有機基を表し、mは2~100の整数である。)
【0042】
A8~RA11が示す炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
置換基を有するフェニル基における置換基としては、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、炭素数2~5のアルキニル基等が挙げられる。該炭素数1~5のアルキル基としては、前記したものと同じものが挙げられる。該炭素数2~5のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。炭素数2~5のアルキニル基としては、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
A12及びRA13が示す2価の有機基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-又はこれらが組み合わされた2価の連結基等が挙げられる。該アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1~10のアルキレン基が挙げられる。該アルケニレン基としては、炭素数2~10のアルケニレン基が挙げられる。該アルキニレン基としては、炭素数2~10のアルキニレン基が挙げられる。該アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等の炭素数6~20のアリーレン基が挙げられる。
これらの中でも、RA12及びRA13としては、アルキレン基、アリーレン基が好ましい。
mは、好ましくは2~50の整数、より好ましくは3~40の整数、さらに好ましくは5~30の整数である。
【0043】
ジアミン化合物(a3)としては、具体的には、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、2,2’-ビス(4,4’-ジアミノジフェニル)プロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’,6,6’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジブロモ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’,6,6’-テトラクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’,6,6’-テトラブロモ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、上記した分子末端にアミノ基を有する変性シロキサン化合物等が挙げられる。これらの中でも、安価であるという観点から、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、分子末端にアミノ基を有する変性シロキサン化合物が好ましい。
ジアミン化合物(a3)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
マレイミド化合物(a1)と、モノアミン化合物(a2)及びジアミン化合物(a3)からなる群から選択される1種以上との反応は、好ましくは有機溶媒の存在下、反応温度70~200℃で0.1~10時間反応させることにより実施することが好ましい。反応温度は、より好ましくは70~160℃、さらに好ましくは70~130℃、特に好ましくは80~120℃である。
反応時間は、より好ましくは1~8時間、さらに好ましくは2~6時間である。
【0045】
上記変性マレイミド化合物の製造における、(a1)成分と、(a2)成分及び(a3)成分からなる群から選択される1種との反応において、三者の使用量は、(a2)成分及び(a3)成分からなる群から選択される1種以上が有する-NH基当量(第1級アミノ基当量)の総和と、(a1)成分のマレイミド基当量との関係が、下記式を満たすことが好ましい。
0.1≦〔マレイミド基当量〕/〔-NH基当量の総和〕≦10
〔マレイミド基当量〕/〔-NH基当量の総和〕を0.1以上とすることにより、ゲル化及び耐熱性の低下が抑制され、また、10以下とすることにより、有機溶媒への溶解性、銅箔接着性及び耐熱性が良好となる。
上記三者の使用量は、同様の観点から、より好ましくは、
1≦〔マレイミド基当量〕/〔-NH基当量の総和〕≦9 を満たし、
さらに好ましくは、
2≦〔マレイミド基当量〕/〔-NH基当量の総和〕≦8 を満たす。
なお、変性マレイミド化合物が、(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分とを反応させて得られる化合物である場合、(a2)成分に由来する構造単位と(a3)成分に由来する構造単位との比率(モル比)は、好ましくは0.9~5.0、より好ましくは1.0~4.5、さらに好ましくは1.0~4.0である。
【0046】
変性マレイミド化合物の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは400~3,500、より好ましくは600~2,000、さらに好ましくは800~1,500である。
なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、溶離液としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(標準ポリスチレン換算)で測定された値であり、より具体的には実施例に記載の方法により測定された値である。
【0047】
〔(B)エポキシ樹脂〕
(B)エポキシ樹脂としては、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂、グリシジルアミンタイプのエポキシ樹脂、グリシジルエステルタイプのエポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂が好ましい。
(B)エポキシ樹脂は、主骨格の違いによっても種々のエポキシ樹脂に分類され、上記それぞれのタイプのエポキシ樹脂において、さらに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアルキルフェノール共重合ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキルクレゾール共重合ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;トリアジン骨格含有エポキシ樹脂;フルオレン骨格含有エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂などに分類される。
(B)エポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
(B)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは100~500g/eq、より好ましくは120~400g/eq、さらに好ましくは140~300g/eq、特に好ましくは170~240g/eqである。
ここで、エポキシ当量は、エポキシ基あたりの樹脂の質量(g/eq)であり、JIS K 7236(2001年)に規定された方法に従って測定することができる。具体的には、株式会社三菱ケミカルアナリテック製の自動滴定装置「GT-200型」を用いて、200mlビーカーにエポキシ樹脂2gを秤量し、メチルエチルケトン90mlを滴下し、超音波洗浄器溶解後、氷酢酸10ml及び臭化セチルトリメチルアンモニウム1.5gを添加し、0.1mol/Lの過塩素酸/酢酸溶液で滴定することにより求められる。
【0049】
〔(C)特定の共重合樹脂〕
(C)成分は、置換ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位とを有する共重合樹脂(以下、「(C)共重合樹脂」ともいう)である。
置換ビニル化合物としては、芳香族ビニル化合物、脂肪族ビニル化合物、官能基置換ビニル化合物等が挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、スチレン、1-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン等が挙げられる。脂肪族ビニル化合物としては、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン等が挙げられる。官能基置換ビニル化合物としては、アクリロニトリル;メチルアクリレート、メチルメタクリレート等の(メタ)アクリロイル基を有する化合物などが挙げられる。これらの中でも、芳香族ビニル化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
(C)成分としては、置換ビニル化合物に由来する構造単位として、下記一般式(C-i)で表される構造単位と、無水マレイン酸に由来する構造単位として、下記式(C-ii)で表される構造単位とを有する共重合樹脂が好ましい。
(C)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
【化5】

(式中、RC1は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、RC2は、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、水酸基又は(メタ)アクリロイル基である。xは、0~3の整数である。但し、xが2又は3である場合、複数のRC2は同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【0051】
C1及びRC2が示す炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。
C2が示す炭素数2~5のアルケニル基としては、アリル基、クロチル基等が挙げられる。該アルケニル基としては、好ましくは炭素数3又は4のアルケニル基である。
C2が示す炭素数6~20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニリル基等が挙げられる。該アリール基としては、好ましくは炭素数6~10のアリール基である。xは、好ましくは0又は1、より好ましくは0である。
【0052】
(C)共重合樹脂中における、置換ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位の含有比率[置換ビニル化合物に由来する構造単位/無水マレイン酸に由来する構造単位](モル比)は、好ましくは1~9、より好ましくは2~9、さらに好ましくは3~8である。上記含有比率が上記下限値以上であると、誘電特性の改善効果が十分となる傾向にあり、上記上限値以下であれば、他の樹脂成分との相溶性が良好となる傾向にある。
(C)共重合樹脂中における、置換ビニル化合物に由来する構造単位と無水マレイン酸に由来する構造単位との合計含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは実質的に100質量%である。
(C)共重合樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは4,500~18,000、より好ましくは6,000~17,000、さらに好ましくは8,000~16,000、特に好ましくは8,000~15,000である。
【0053】
〔(D)無機充填材〕
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、(D)無機充填材を含有していてもよい。
(D)無機充填材としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、石英粉末、ガラス短繊維、ガラス微粉末、中空ガラスなどが挙げられる。ガラスとしては、Eガラス、Tガラス、Dガラス等が挙げられる。
(D)無機充填材は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、誘電特性、耐熱性及び低熱膨張性の観点から、シリカが好ましい。シリカとしては、例えば、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカが挙げられ、乾式法シリカは、さらに、製造法の違いにより、破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融球状シリカ等に分類される。これらの中でも、低熱膨張性及び樹脂に充填した際の流動性の観点から、溶融球状シリカが好ましい。
【0054】
(D)無機充填材の平均粒子径は、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.3~8μm、さらに好ましくは0.5~2μmである。平均粒子径が0.1μm以上であると、樹脂に高充填した際の流動性を良好に保つことができ、10μm以下であると、粗大粒子の混入確率を低減し、粗大粒子起因の不良の発生を抑えることができる。ここで、本発明における平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0055】
(D)無機充填材として、アミノシラン系カップリング剤で処理されたシリカを用いると、低熱膨張性が向上すると共に、前記(A)~(C)成分との密着性が向上することによりシリカの脱落が抑制されるため、過剰なデスミアによるレーザビア形状の変形等を抑制する効果が得られるために好ましい。
【0056】
アミノシラン系カップリング剤は、アミノ基を1つ有していてもよいし、2つ有していてもよいし、3つ以上有していてもよいが、通常は、アミノ基を1つ又は2つ有する。
アミノ基を1つ有するアミノシラン系カップリング剤としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、2-プロピニル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]カルバメート等が挙げられる。
アミノ基を2つ有するアミノシラン系カップリング剤としては、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ウレア、1-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ウレア等が挙げられる。
アミノシラン系カップリング剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
〔(E)硬化剤〕
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、(E)硬化剤を含有してもよい。(E)硬化剤としては、ジシアンジアミド;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン等の、ジシアンジアミドを除く鎖状脂肪族アミン;イソホロンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、N-アミノエチルピペラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等の環状脂肪族アミン;キシレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミンなどが挙げられる。
(E)硬化剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
〔(F)熱可塑性エラストマー〕
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、(F)熱可塑性エラストマーを含有してもよい。
(F)熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー、これらの誘導体等が挙げられる。これらの中でも、スチレン系エラストマーが好ましい。
(F)熱可塑性エラストマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
但し、本実施形態において、(F)熱可塑性エラストマーの定義には、上記(C)成分を含めないものとする。
【0059】
(F)熱可塑性エラストマーは、分子末端又は分子鎖中に反応性官能基を有するものが好ましい。反応性官能基としては、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、イソシアナート基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基等が挙げられる。これらの反応性官能基を分子末端又は分子鎖中に有することにより、他の樹脂成分との相溶性が向上し、基板の耐熱性を向上させることが可能となる。これらの反応性官能基の中でも、銅箔との密着性の観点から、カルボキシ基、アミノ基、水酸基が好ましい。
【0060】
スチレン系エラストマーとしては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー等のスチレン-ブタジエン共重合体;スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー等のスチレン-イソプレン共重合体;スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマーなどが挙げられる。スチレン系エラストマーの原料モノマーとしては、スチレンの他に、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン等のスチレン誘導体を用いることができる。これらの中でも、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体が好ましく、これらの共重合体の二重結合部分を水素添加した水添スチレン-ブタジエン共重合樹脂、水添スチレン-イソプレン共重合樹脂等の水添スチレン系熱可塑性エラストマーがより好ましい。
【0061】
〔(G)硬化促進剤〕
熱硬化性樹脂組成物は、硬化反応を促進する観点から、さらに、(G)硬化促進剤を含有していてもよい。
(G)硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン等の有機リン系化合物;イミダゾール類及びその誘導体;第二級アミン類、第三級アミン類、第四級アンモニウム塩等の含窒素化合;ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等の有機過酸化物;ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸錫、オクチル酸コバルト等の有機金属塩などが挙げられる。これらの中でも、有機リン系化合物が好ましい。
(G)硬化促進剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
(熱硬化性樹脂組成物の各成分の含有量)
熱硬化性樹脂組成物中における各成分の含有量は、特に制限されないが、例えば、以下に記載する範囲とすることができる。
熱硬化性樹脂組成物が(A)成分を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物に含有される樹脂成分総量100質量部に対して、好ましくは10~90質量部、より好ましくは20~85質量部、さらに好ましくは40~80質量部である。(A)成分の含有量が上記下限値以上であると、耐熱性、比誘電率、ガラス転移温度及び低熱膨張性に優れる傾向にある。一方、上記上限値以下であると、流動性及び成形性に優れる傾向にある。
熱硬化性樹脂組成物が(B)成分を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物に含有される樹脂成分総量100質量部に対して、好ましくは5~50質量部、より好ましくは10~40質量部、さらに好ましくは20~35質量部である。(B)成分の含有量が上記下限値以上であると、耐熱性、ガラス転移温度及び低熱膨張性に優れる傾向にある。一方、上記上限値以下であると、耐熱性、比誘電率、ガラス転移温度及び低熱膨張性に優れる傾向にある。
熱硬化性樹脂組成物が(C)成分を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物に含有される樹脂成分総量100質量部に対して、好ましくは2~40質量部、より好ましくは5~35質量部、さらに好ましくは10~30質量部である。(C)成分の含有量が上記下限値以上であると、耐熱性及び比誘電率に優れる傾向にある。一方、上記上限値以下であると、耐熱性、銅箔接着性及び低熱膨張性に優れる傾向にある。
熱硬化性樹脂組成物が(D)成分を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物に含有される樹脂成分総量100質量部に対して、好ましくは30~200質量部、より好ましくは40~150質量部、さらに好ましくは45~120質量部である。(D)成分の含有量が上記下限値以上であると、低熱膨張性に優れる傾向にある。一方、上記上限値以下であると、耐熱性、流動性及び成形性に優れる傾向にある。
熱硬化性樹脂組成物が(E)成分を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物に含有される樹脂成分総量100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部、さらに好ましくは1~3質量部である。(E)成分の含有量が上記下限値以上であると、銅箔接着性及び低熱膨張性に優れる傾向にある。一方、上記上限値以下であると、耐熱性に優れる傾向にある。
熱硬化性樹脂組成物が(F)成分を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物に含有される樹脂成分総量100質量部に対して、好ましくは2~30質量部、より好ましくは5~20質量部、さらに好ましくは7~15質量部である。(F)成分の含有量が、上記下限値以上であると、比誘電率に優れる傾向にある。一方、上記上限値以下であると、耐熱性及び銅箔接着性に優れる傾向にある。
熱硬化性樹脂組成物が(G)成分を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物に含有される樹脂成分総量100質量部に対して、好ましくは0.05~5質量部、より好ましくは0.1~3質量部、さらに好ましくは0.2~1質量部である。
【0063】
(その他の成分)
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、密着性向上剤、有機充填材等のその他の成分を含有していてもよい。これらは、各々について、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
〔プリプレグの製造方法〕
絶縁層がプリプレグを硬化してなるものである場合、該プリプレグは、例えば、上記熱硬化性樹脂組成物を、シート状補強基材に含浸又は塗工し、加熱等により半硬化(Bステージ化)させて製造することができる。
シート状補強基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸又は塗工する際、熱硬化性樹脂組成物は、メチルエチルケトン等の有機溶媒によって希釈されたワニスの状態であってもよい。ワニス中の不揮発分濃度は、例えば、40~80質量%であり、好ましくは50~75質量%である。
含浸後の乾燥条件は特に限定されないが、加熱温度は、例えば、120~200℃、好ましくは140~180℃であり、加熱時間は、例えば、30秒~30分間、好ましくは1~10分間である。
【0065】
プリプレグのシート状補強基材としては、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。シート状補強基材の材質としては、紙、コットンリンター等の天然繊維;ガラス繊維、アスベスト等の無機物繊維;アラミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、テトラフルオロエチレン、アクリル等の有機繊維;これらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、難燃性の観点から、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維基材としては、Eガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラス等を用いたガラスクロス又は短繊維を有機バインダーで接着したガラスクロス;ガラス繊維とセルロース繊維とを混抄したもの等が挙げられる。これらの中でも、Eガラスを使用したガラスクロスが好ましい。
これらのシート状補強基材は、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット又はサーフェシングマット等の形状を有する。なお、材質及び形状は、目的とする成形物の用途、性能等により選択され、1種を単独で使用してもよいし、必要に応じて、2種以上の材質及び形状を組み合わせることもできる。
プリプレグの厚さは、成形性及び高密度配線を可能にする観点から、好ましくは0.01~0.5mm、より好ましくは0.02~0.3mm、さらに好ましくは0.05~0.2mmである。
【0066】
銅張積層板に含まれる絶縁層の厚さは、成形性及び高密度配線を可能にする観点から、好ましくは0.01~0.5mm、より好ましくは0.02~0.3mm、さらに好ましくは0.05~0.2mmである。
【0067】
[銅張積層板の製造方法]
本実施形態の銅張積層板の製造方法は、前記絶縁層が、熱硬化性樹脂を含有するプリプレグを硬化してなる層であり、前記プリプレグ又は前記プリプレグを硬化してなる絶縁層と前記表面処理銅箔(I)とを張り合わせた状態で、210℃以上に加熱する工程を有する、銅張積層板の製造方法である。
なお、「210℃以上に加熱する工程」とは、製品温度(すなわち、絶縁層と表面処理銅箔(I)とを張り合わせてなる積層体)が210℃以上になることを意味する。製品温度を210℃以上とするためには、例えば、使用する加熱装置の設定を210℃以上にすればよい。
上記加熱する工程における加熱温度は、生産性を高める観点から、215℃以上がより好ましく、220℃以上がさらに好ましい。また、加熱温度は、均一な硬化反応を生じさせる観点から、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。
積層板の成形条件としては、電気絶縁材料用積層板及び多層板の公知の成形手法を適用することができ、例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、上記加熱温度において、圧力0.2~10MPa、加熱時間0.1~5時間の条件で成形することができる。
【0068】
[プリント配線板]
本実施形態のプリント配線板は、本実施形態の銅張積層板を用いてなるプリント配線板である。
本実施形態のプリント配線板は、銅張積層板の銅箔に対して回路加工を施すことにより製造することができる。回路加工は、例えば、銅箔表面にレジストパターンを形成後、エッチングにより不要部分の銅箔を除去し、レジストパターンを除去後、ドリルにより必要なスルーホールを形成し、再度レジストパターンを形成後、スルーホールに導通させるためのメッキを施し、最後にレジストパターンを除去して行うことができる。得られたプリント配線板の表面にさらに銅張積層板を上記と同様の条件で積層及び回路加工する工程を必要回数繰り返し、多層プリント配線板とすることができる。
【0069】
[半導体パッケージ]
本実施形態の半導体パッケージは、本実施形態のプリント配線板に半導体素子を搭載してなるものである。本実施形態の半導体パッケージは、本実施形態のプリント配線板の所定の位置に、半導体チップ、メモリ等を搭載して製造することができる。
【実施例
【0070】
次に、下記の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明をいかなる意味においても制限するものではない。
【0071】
[評価方法]
<耐ブリスター性>
各例で作製した4層銅張積層板を用いて、最高到達温度を266℃とし、260℃以上の恒温槽環境下で50秒間4層銅張積層板を流すことを1サイクルとし、目視にてブリスターの発生が確認されるまでのサイクル数を求め、以下の基準に基づいて評価した。サイクル数が多いほど、耐熱性に優れる。
(評価基準)
A:20回超え
B:15回超え、20回以下
C:5回超え、15回以下
D:3回超え、5回以下
E:2回以上、3回以下
F:1回以下
【0072】
製造例1
(プリプレグAの作製)
プリプレグAを作製するに当たって、下記に示す各成分を準備した。
(A)成分:下記方法で製造したマレイミド化合物の溶液
温度計、攪拌装置及び還流冷却管付き水分定量器を備えた容積1Lの反応容器に、4,4’-ジアミノジフェニルメタン19.2g、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン174.0g、p-アミノフェノール6.6g及びジメチルアセトアミド330.0gを入れ、100℃で2時間反応させて、変性マレイミド化合物として、酸性置換基とN-置換マレイミド基とを有するマレイミド化合物(Mw=1,370)のジメチルアセトアミド溶液を得て、(A)成分として用いた。
なお、上記重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type;A-2500、A-5000、F-1、F-2、F-4、F-10、F-20、F-40)[東ソー株式会社製]を用いて3次式で近似した。GPCの条件は、以下に示す。
装置:(ポンプ:L-6200型[株式会社日立ハイテクノロジーズ製])、
(検出器:L-3300型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ製])、
(カラムオーブン:L-655A-52[株式会社日立ハイテクノロジーズ製])
カラム;TSKgel SuperHZ2000+TSKgel SuperHZ2300(すべて東ソー株式会社製)
カラムサイズ:6.0×40mm(ガードカラム)、7.8×300mm(カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:20mg/5mL
注入量:10μL
流量:0.5mL/分
測定温度:40℃
【0073】
(B)成分:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂「EPICLON(登録商標)N-673」(DIC株式会社製)
(C)成分:「SMA(登録商標)EF40」(スチレン/無水マレイン酸モル比=4、Mw=11,000、CRAY VALLEY社製)
(D)成分:アミノシラン系カップリング剤により処理された溶融シリカ、平均粒子径:1.9μm、比表面積:5.8m/g
(E)成分:ジシアンジアミド
【0074】
次に、上記(A)成分を45質量部、(B)成分を30質量部、(C)成分を25質量部、(D)成分を、樹脂成分総量〔(A)~(C)成分の総和〕100質量部に対して50質量部、(E)成分を、上記樹脂成分総量100質量部に対して、2質量部配合し、さらに溶液の不揮発分が67質量%になるようにメチルエチルケトンを追加し、樹脂ワニスを調製した。なお、上記した各成分の配合量は、いずれも固形分の質量部であり、溶液(有機溶媒を除く)又は分散液の場合は固形分換算量である。
得られた各樹脂ワニスをIPC規格#3313のガラスクロス(厚さ:0.1mm)に含浸させ、160℃で4分間乾燥してプリプレグAを得た。
【0075】
製造例2
(プリプレグBの作製)
プリプレグBを作製するに当たって、下記に示す各成分を準備した。
(A)成分:下記方法で製造した変性マレイミド化合物の溶液
温度計、攪拌装置及び還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、両末端ジアミン変性シロキサン(信越化学工業株式会社製、商品名:X-22-161A)15.9gと、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン28.6gと、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン280.5gと、プロピレングリコールモノメチルエーテル200.0gと、を入れ、126℃で還流させながら5時間反応させて変性マレイミド化合物の溶液を得た。
【0076】
(C)成分:「SMA(登録商標)EF80」(スチレン/無水マレイン酸モル比=8)(サートマー社製)
(D)成分:球状溶融シリカ(平均粒子径:0.5μm)
(F)成分:「タフテックM1913」(カルボン酸変性水添スチレン-ブタジエン共重合樹脂)(スチレン量:30質量%)(旭化成ケミカルズ株式会社製)
(G)成分:テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート
(H)成分:PX-200:芳香族リン酸エステル(リン含有量:9質量%)(大八化学工業株式会社製)
【0077】
上記(A)成分を80質量部、(C)成分を10質量部、(F)成分を10質量部、(H)成分を、樹脂成分総量〔(A)成分、(C)成分及び(F)成分の総和〕100質量部に対して2質量部、(G)成分を、上記樹脂成分総量100質量部に対して0.5質量部、(D)成分を、上記樹脂成分総量100質量部に対して100質量部配合し、さらに溶液の不揮発分が60質量%になるようにトルエンを追加し、樹脂ワニスを調製した。なお、上記した各成分の配合量は、いずれも固形分の質量部であり、溶液(有機溶媒を除く)又は分散液の場合は固形分換算量である。
得られた各樹脂ワニスをIPC規格#3313のガラスクロス(厚さ:0.1mm)に含浸させ、160℃で4分間乾燥してプリプレグBを得た。
【0078】
実施例1~7、比較例1~4
各製造例で作製したプリプレグと表1に示す銅箔とを、表2に示す通りに組み合わせて、以下に示す方法によって、4層銅張積層板を作製した。
なお、表1に示す銅箔は一方の面に耐熱処理、クロメート処理及びシランカップリング剤処理を施したものである。
【0079】
(4層銅張積層板の作製)
表2に示すプリプレグ(1枚)の両面に、表2に示す銅箔を、金属処理層がプリプレグ側となるように1枚ずつ重ね、温度225℃、圧力25kgf/cm(2.45MPa)の条件で90分間加熱加圧成形し、両面銅張積層板を作製した。次に、該両面銅張積層板の両面の銅箔表面に内層密着処理(マルチボンド100(マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン株式会社製)処理)を施した。
続いて、両面銅張積層板の両面の銅箔に、プリプレグを1枚ずつ重ね、さらに、該プリプレグに表2に示す銅箔を、金属処理層がプリプレグ側となるように1枚ずつ重ねた。その後、温度225℃、圧力25kgf/cm(2.45MPa)にて90分間加熱加圧成形して4層銅張積層板を作製した。該4層銅張積層板を用いて、前記方法に従って、耐ブリスター性を評価した。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
表2から、本実施形態の表面処理銅箔(I)を使用した実施例1~7の銅張積層板は、耐ブリスター性に優れていることが分かる。一方、金属処理層における亜鉛の含有量が2,500μg/dmを超える銅箔を使用した比較例1~4の銅張積層板は、耐ブリスター性に劣っていた。