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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】エピタキシャルウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20240214BHJP
   C30B 25/20 20060101ALI20240214BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20240214BHJP
   H01L 21/322 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01L21/205
C30B25/20
C30B29/06 504F
H01L21/322 Q
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021047743
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146664
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克佳
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-165494(JP,A)
【文献】特開2019-004050(JP,A)
【文献】特開2000-323689(JP,A)
【文献】特開平11-067779(JP,A)
【文献】国際公開第2022/158148(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/20
H01L 21/316
H01L 21/322
C30B 25/20
C30B 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CZ法により製造された単結晶シリコンウェーハ上に単結晶シリコン層を形成するエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
前記単結晶シリコンウェーハの表面の自然酸化膜を700℃以下で除去する自然酸化膜除去工程を行い、
該自然酸化膜除去工程後に、前記単結晶シリコンウェーハの表面に対して、
一酸化窒素を用いて平面濃度が1×1015atoms/cm以下の酸素原子層を形成し、その上に単結晶シリコンをエピタキシャル成長させて前記単結晶シリコン層を形成する酸素原子層および単結晶シリコン層形成工程を1回以上行うことにより、
前記エピタキシャルウェーハを製造することを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記自然酸化膜除去工程を、フッ酸またはフッ酸蒸気を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記自然酸化膜除去工程を、水素原子を含むガスまたは不活性ガスを用いたプラズマ処理により行うことを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項4】
前記酸素原子層の形成を、前記一酸化窒素を含む雰囲気に前記単結晶シリコンウェーハを曝すことにより行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項5】
前記酸素原子層を形成するとき、前記一酸化窒素を含む雰囲気において、前記一酸化窒素の希釈ガスとして、窒素ガスまたは希ガスを用いることを特徴とする請求項4に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項6】
前記酸素原子層を形成するとき、前記一酸化窒素の分圧を5Pa以上10000Pa以下とすることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項7】
前記酸素原子層の形成を、20℃以上700℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか一項に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項8】
前記単結晶シリコン層のエピタキシャル成長による形成を、450℃以上800℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項9】
前記単結晶シリコン層をエピタキシャル成長により形成するとき、シリコンの原料ガスの分圧を0.1Pa以上かつ2000Pa以下とすることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項10】
前記酸素原子層および単結晶シリコン層形成工程を複数回行うことにより、前記酸素原子層と前記単結晶シリコン層とを交互に複数形成することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項11】
前記酸素原子層および前記単結晶シリコン層形成工程において、
前記酸素原子層の形成と前記単結晶シリコン層のエピタキシャル成長による形成を同一チャンバーで行うことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャルウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子やその他のトランジスタをはじめとした半導体素子を形成するシリコン基板には、重金属をはじめとした素子特性を狂わせる元素をゲッタリングする機能を持つことが求められる。ゲッタリングにはシリコン基板裏面に多結晶シリコン(Poly-Si)層を持たせたり、ブラスト加工によりダメージを持たせた層を形成する方法や、高濃度ボロンのシリコン基板を利用したり、析出物を形成させたりとさまざまな手法が提案、実用化されている。酸素析出によるゲッタリングは電気陰性度が大きい酸素に対して、イオン化傾向が大きい(電気陰性度が小さい)金属を取り込むことでゲッタリングする。
【0003】
また素子の活性領域近傍にゲッタリング層を形成する、いわゆる近接ゲッタリングも提案されている。例えば、炭素をイオン注入した基板の上にシリコンをエピタキシャル成長させた基板などがある。ゲッタリングは、ゲッタリングサイト(金属が単元素で存在するよりもサイトで結合やクラスタリングすることで系全体のエネルギーが低下する)まで元素が拡散する必要がある。シリコン中に含まれる金属元素の拡散係数は元素により異なり、また近年のプロセス低温化によりゲッタリングサイトまで金属が拡散することが出来なくなることを考慮して近接ゲッタリングの手法が提案されている。
近接ゲッタリングに酸素を用いることが出来れば、非常に有力なゲッタリング層をもったシリコン基板となると考えられる。特に、エピタキシャル層の途中に酸素原子層を有するエピタキシャルウェーハであれば、近年の低温プロセスにおいても確実に金属不純物をゲッタリングすることができる。
【0004】
以上、金属不純物をゲッタリングすることを中心に述べてきたが、例えば、酸素の効果としては、CVD酸化膜を裏面に形成することでエピタキシャル成長時のオートドープを防ぐ効果が知られている。
【0005】
先行技術について言及する。特許文献1は、構造としてはシリコンの上に酸素の薄い層を形成しさらにシリコンを成長させる方法である。この方法は、ALD(「Atomic layer deposition」、「原子層堆積法」)をベースとした技術である。ALDは対象原子を含む分子を吸着させ、その後分子中の不要な原子(分子)を乖離・脱離させる方法であり、表面結合を利用し、非常に精度よく、また、反応制御性が良好であり、幅広く用いられている。
【0006】
特許文献2では、真空加熱などにより形成したシリコン清浄表面上に、自然酸化膜を形成してから酸化膜もしくは別の物質を吸着、堆積させる方法が記載されている。
【0007】
特許文献3、4では、シリコン基板に亜酸化窒素により形成した酸素原子層を複数層導入する方法が記載されている。
【0008】
特許文献5では、超高真空装置を用いて厚さが5nm以下である原子層の上にSiHガスを用いてエピタキシャル層を形成する方法が記載されている。また、酸素原子層を酸素ガスにより形成する方法が記載されている。
【0009】
特許文献6、7では、半導体基板の表面を酸化性気体や酸化性溶液に接触させて酸化膜を形成した後に単結晶シリコンをエピタキシャル成長させる方法が記載されている。
【0010】
特許文献8では、洗浄後のシリコン基板をNOとNOの濃度の合計が140ng/m以下の環境雰囲気で保管し、シリコン基板上にエピタキシャル層を形成する方法が記載されている。
【0011】
非特許文献1は、HFによる自然酸化膜除去後に大気中で酸化してから減圧CVDによりアモルファスシリコンを成膜し、その後結晶化熱処理により単結晶シリコンを形成する方法を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2014-165494号公報
【文献】特開平05-243266号公報
【文献】米国特許第9,558,939号明細書
【文献】米国特許第9,721,790号明細書
【文献】特開2019-004050号公報
【文献】特開2008-263025号公報
【文献】特開2009-016637号公報
【文献】特開2019-080026号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】I.Mizushima et al., Jpn. J. Appl. Phys. 39(2000)2147.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のように、ウェーハ内に酸素の層を形成することで金属不純物をゲッタリングする方法は従来から用いられてきた。しかし、従来の技術では、精度よく酸素の薄い層を得られる一方で装置の構成が複雑であったり、工程数が多くなったりという問題があった。
例えば、特許文献1に記載の技術では酸化をオゾンで行うため、オゾンを生成するための特殊な生成器が必要であるという問題があった。
また、特許文献5に記載の技術では、汎用的ではない超高真空装置が必要となるという問題があった。
非特許文献1に記載の方法では、結晶化する時に熱処理を行う必要があり、プロセスの工程数が多くなるという問題があった。また、アモルファスシリコン中には一般的に多量の水素が含まれるため、結晶化熱処理時に水素起因の欠陥が形成される可能性がある。
【0015】
また、従来の技術では、酸素の層を安定的に導入するための記載や、良質な単結晶シリコンのエピタキシャル層を形成するための具体的な記載がないという問題があった。
例えば、特許文献2では、転位および積層欠陥を発生させることなくウェーハ表面に単結晶シリコンのエピタキシャル層を形成する方法については何ら記載されていない。
また、特許文献3、4では、酸素原子層を形成する前の自然酸化膜の除去法は記載されていない。また、亜酸化窒素以外の窒素酸化物により酸素原子層を形成する方法については言及していない。
また、特許文献6では、酸化膜上に安定的に単結晶シリコンを成膜する具体的な方法については言及していない。
また、特許文献7では、酸化性気体や酸化性溶液に接触させる前の自然酸化膜の除去法は記載されていない。
【0016】
また、特許文献8は、NO及びNOにより酸化してヘイズが悪化するのを防ぐ方法であり、窒素酸化物の濃度が非常に低いため、酸素原子層を効率良く形成することはできないという問題があった。例えば、1気圧、温度0℃の窒素中にNOが140ng/m含まれる場合には、NOの分圧は6.9×10-6Paである。また、酸素原子層から酸素が拡散して消滅するのを防ぐための単結晶シリコンのエピタキシャル層の形成方法については記載されていない。
【0017】
上述のように、従来の技術では、精度よく酸素の原子層を得られる一方で、装置の構成が複雑であったり、酸素の層の導入が安定的ではなかったり、良質な単結晶シリコンのエピタキシャル層を得られなかったりといった問題があった。そのため、酸素原子層をエピタキシャル層に安定的かつ簡便に導入することができるエピタキシャルウェーハの製造方法が必要である。
【0018】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、酸素原子層をエピタキシャル層に安定的かつ簡便に導入することができるとともに、良質な単結晶シリコンのエピタキシャル層を有するエピタキシャルウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、CZ法により製造された単結晶シリコンウェーハ上に単結晶シリコン層を形成するエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
前記単結晶シリコンウェーハの表面の自然酸化膜を700℃以下で除去する自然酸化膜除去工程を行い、
該自然酸化膜除去工程後に、前記単結晶シリコンウェーハの表面に対して、
一酸化窒素を用いて平面濃度が1×1015atoms/cm以下の酸素原子層を形成し、その上に単結晶シリコンをエピタキシャル成長させて前記単結晶シリコン層を形成する酸素原子層および単結晶シリコン層形成工程を1回以上行うことにより、
前記エピタキシャルウェーハを製造することを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法を提供する。
【0020】
このようなエピタキシャルウェーハの製造方法とすることで、酸素原子層を残した状態で酸素原子層上に転位および積層欠陥を形成することなく単結晶シリコンを成長できる。しかも、上記酸素原子層を安定的かつ簡便に導入することができるし、その上に形成するエピタキシャル層も良質なものとすることができる。そして、デバイス領域の近傍にゲッタリング層を備えたものとすることができる。
また、このようなエピタキシャルウェーハの製造方法によれば、汎用性が高くなる。
【0021】
このとき、前記自然酸化膜除去工程を、フッ酸またはフッ酸蒸気を用いて行うことができる。
【0022】
このようにして自然酸化膜を除去すれば、短時間で自然酸化膜を除去することができる。
【0023】
このとき、前記自然酸化膜除去工程を、水素原子を含むガスまたは不活性ガスを用いたプラズマ処理により行うことができる。
【0024】
このようにして自然酸化膜を除去すれば、より効果的に自然酸化膜を除去することができる。このようなガスを用いることで、その後、より安定的に酸素原子層を形成することができる。
【0025】
このとき、前記酸素原子層の形成を、前記一酸化窒素を含む雰囲気に前記単結晶シリコンウェーハを曝すことにより行うことができる。
【0026】
酸素原子層を形成する工程において、このような環境にすることで、特殊な設備を準備することなくより一層簡単にウェーハに酸素原子層を形成することができる。
【0027】
また、前記酸素原子層を形成するとき、前記一酸化窒素を含む雰囲気において、前記一酸化窒素の希釈ガスとして、窒素ガスまたは希ガスを用いることができる。
【0028】
このような希釈ガスであれば、一酸化窒素をより安全に希釈でき、酸素原子層を一層安定的に形成することができる。
【0029】
また、前記酸素原子層を形成するとき、前記一酸化窒素の分圧を5Pa以上10000Pa以下とすることができる。
【0030】
このような圧力範囲であれば、より安定的に酸素原子層を形成することができる。
【0031】
このとき、前記酸素原子層の形成を、20℃以上700℃以下の温度で行うことができる。
【0032】
このような温度範囲とすることで、より安定的に酸素原子層を形成することができる。
【0033】
このとき、前記単結晶シリコン層のエピタキシャル成長による形成を、450℃以上800℃以下の温度で行うことができる。
【0034】
単結晶シリコンをエピタキシャル成長させる工程において、このような温度範囲とすることで、より安定して欠陥を発生させることなく単結晶シリコン層をエピタキシャル成長させることができる。
【0035】
このとき、前記単結晶シリコン層をエピタキシャル成長により形成するとき、シリコンの原料ガスの分圧を0.1Pa以上かつ2000Pa以下とすることができる。
【0036】
単結晶シリコンをエピタキシャル成長させる工程において、このような圧力範囲とすることで、より安定して欠陥を発生させることなく単結晶シリコン層をエピタキシャル成長させることができる。
【0037】
また、前記酸素原子層および単結晶シリコン層形成工程を複数回行うことにより、前記酸素原子層と前記単結晶シリコン層とを交互に複数形成することができる。
【0038】
このように酸素原子層を複数層設けることで、単層の場合よりもゲッタリング効果の高いエピタキシャルウェーハを得ることができる。
【0039】
このとき、前記酸素原子層および前記単結晶シリコン層形成工程において、
前記酸素原子層の形成と前記単結晶シリコン層のエピタキシャル成長による形成を同一チャンバーで行うことができる。
【0040】
このようにすることで、より効率的に酸素原子層上に単結晶シリコンをエピタキシャル成長させることができる。
【発明の効果】
【0041】
以上のように、本発明に係るエピタキシャルウェーハの製造方法によれば、先端デバイスで採用されるシリコンエピタキシャルウェーハにおいて、エピタキシャル層に酸素原子層を簡便かつ安定的に導入する方法を提供することができるし、高品質のエピタキシャル層を得ることができる。また、酸素原子層による近接ゲッタリング効果を有する近接ゲッタリング基板を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法のフローを示す図である。
図2】本発明に係るエピタキシャルウェーハの製造方法で得られるエピタキシャルウェーハの一例を示した図である。
図3】本発明に係るエピタキシャルウェーハの製造方法で得られるエピタキシャルウェーハの他の一例を示した図である。
図4】実施例1と比較例1におけるエピタキシャルウェーハの断面の透過電子顕微鏡像である。
図5】実施例2と比較例2における熱処理前後の酸素原子層の酸素濃度を示すグラフである。
図6】実施例3と比較例3における欠陥数を示すグラフである。
図7】実施例4におけるエピタキシャルウェーハの断面の透過電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
上述のように、特殊な装置や、複雑なプロセスが必要なく、また、酸素原子層をエピタキシャル層に安定的に導入するとともに、良質な単結晶シリコンのエピタキシャル層を有するエピタキシャルウェーハの製造方法が求められていた。
【0045】
本発明者は、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、チョクラルスキー法(Czochralski Method:以下「CZ法」という)により製造された単結晶シリコンウェーハ上に単結晶シリコン層を形成するエピタキシャルウェーハの製造方法であって、前記単結晶シリコンウェーハの表面の自然酸化膜を700℃以下で除去する自然酸化膜除去工程を行い、該自然酸化膜除去工程後に、前記単結晶シリコンウェーハの表面に対して、一酸化窒素を用いて平面濃度が1×1015atoms/cm以下の酸素原子層を形成し、その上に単結晶シリコンをエピタキシャル成長させて前記単結晶シリコン層を形成する酸素原子層および単結晶シリコン層形成工程を1回以上行うことにより、前記エピタキシャルウェーハを製造することを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法により、酸素原子層上に転位及び積層欠陥を形成することなく、エピタキシャル層に酸素原子層を安定的かつ簡便に導入することが可能となることを見出し、本発明を完成させた。
以下、図面を参照して説明する。
【0046】
[エピタキシャルウェーハ]
図2は、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法により得られるエピタキシャルウェーハの一例を示した図である。本発明に係るエピタキシャルウェーハ10Aは、CZ法により形成された単結晶シリコンウェーハ(以下、単結晶シリコン基板とも言う)1上に単結晶シリコン層3を有し、単結晶シリコン層3と単結晶シリコンウェーハ1との間に酸素原子層2を有している。
【0047】
ここで、エピタキシャルウェーハ10Aが有している酸素原子層2の酸素の平面濃度は1×1015atoms/cm以下である。このような範囲の酸素の平面濃度を有する酸素原子層を備えたエピタキシャルウェーハであれば、エピタキシャル成長させた単結晶シリコン層の積層欠陥や転位が少なく、結晶性の高いものとなる。なお、酸素の平面濃度の下限値は限定されず、0よりも大きければよい。なお、ゲッタリング能力を、より安定して得るためには、1×1013atoms/cm以上であることが好ましい。
【0048】
ここで、単結晶シリコンウェーハ1はCZ法により製造された基板を用いる。このような方法で製造した単結晶シリコン基板であれば、酸素濃度が十分高いため、酸素原子層の耐熱性を高くすることができる。具体的には、酸素原子層形成後に熱処理が加わった場合、単結晶シリコン基板から酸素が外方拡散して酸素原子層に供給されるため、酸素原子層から酸素が拡散して酸素原子層が消滅するのを防止することができる。ここで、CZ法により形成された単結晶シリコン基板の酸素濃度は、例えば、8~20ppma(JEIDA)である。
【0049】
また、図3は、単結晶シリコンウェーハ上に酸素原子層と単結晶シリコン層を交互に複数積層させた本発明の製造方法により得られるエピタキシャルウェーハの他の一例を示した図である。図3に示すように、CZ法により製造された単結晶シリコンウェーハ1上に酸素原子層2と単結晶シリコン層3を交互に繰り返し積層させたものであってもよい。このとき最上面は単結晶シリコン層である。
【0050】
ここで、酸素の平面濃度はSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)により測定することができる。酸素原子層を含むシリコンをSIMSで測定した場合には、酸素原子層が形成された深さにピークが形成される。ピーク付近において1回のスパッタリングによる体積濃度と深さの積を積算することで平面濃度を求めることができる。
【0051】
[エピタキシャルウェーハの製造方法]
図1は、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法のフローを示した図である。S11はCZ法により製造された単結晶シリコンウェーハを準備する工程、S12は700℃以下で自然酸化膜を除去する工程、S13は一酸化窒素を用いて酸素原子層を形成するステップ、S14は単結晶シリコンをエピタキシャル成長させるステップをそれぞれ示している。
なお、S12を自然酸化膜除去工程とも言う。またS13とS14の2つのステップを併せて酸素原子層および単結晶シリコン層形成工程と言い(単に、層形成工程とも言う)、この酸素原子層および単結晶シリコン層形成工程は1回以上行う。
以下、各工程について詳述する。
【0052】
まず工程S11について述べる。ここで、エピタキシャル層を形成するウェーハとしてCZ法により製造された単結晶シリコン基板を準備する。このようにCZ法で製造した単結晶シリコン基板であれば、上述したように酸素濃度が十分高いため、酸素原子層の耐熱性を高くすることができる。CZ法により製造された単結晶シリコン基板の酸素濃度は、例えば、8~20ppmaである。
【0053】
工程S12は700℃以下で単結晶シリコンウェーハの表面の自然酸化膜を除去する工程である。700℃以下とすることで、単結晶シリコン基板から酸素が外方拡散するのを防ぐことができる。
この自然酸化膜を除去する工程では、例えばウェーハの自然酸化膜をフッ酸を用いて除去することができ、より具体的にはフッ酸にウェーハを浸漬することができる。
フッ酸の代わりにバッファードフッ酸を用いてもよい。
【0054】
フッ酸の濃度は自然酸化膜を除去できればよく、例えば0.001%以上かつ60%以下とすることができる。
またフッ酸の温度は、例えば10℃以上かつ50℃以下とすることができる。温度を10℃以上とすれば、フッ酸処理後のウェーハに結露が生じることをより効果的に抑制できる。また、温度を50℃以下とすれば、揮発するフッ酸の量が適度になるため安全性を高くすることができる。
フッ酸洗浄の時間は撥水性が確認できるまでとすることができるが、例えば、1秒以上かつ1時間以下とすることができる。1秒以上であれば自然酸化膜を除去することができる。また、1時間以下とすることで時間が掛かりすぎるのを防止することができる。
このようなフッ酸洗浄はバッチ式の洗浄装置を用いても良いし、枚葉式の洗浄装置を用いても良い。
【0055】
また、フッ酸の蒸気に曝して自然酸化膜を除去してもよい。フッ酸蒸気に曝す方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
フッ酸やフッ酸蒸気によって、より短時間で自然酸化膜の除去が可能である。
【0056】
上記の700℃以下で自然酸化膜を除去する工程では、ウェーハを水素原子を含むガスまたは不活性ガスを用いたプラズマ処理、すなわち、そのようなプラズマに曝すことにより自然酸化膜を除去してもよい。このような方法であれば、一層効果的に、かつ、安定的に自然酸化膜を除去することができる。
このようなガスとしては、例えば、水素分子、アンモニア、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等のガスを用いることができる。これらのガスは混合して用いてもよい。水素原子を含むガスである水素分子およびアンモニアの場合は、プラズマにより生成された水素ラジカルにより自然酸化膜を除去することができる。不活性ガスの窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノンの場合は、プラズマにより生成された高エネルギーの粒子により自然酸化膜をスパッタリングすることで除去することができる。
【0057】
なお、上記のようにプラズマを用いて自然酸化膜を除去する場合には、室温で自然酸化膜の除去を行っても良いし、700℃以下で加熱して自然酸化膜の除去を行っても良い。
ウェーハをプラズマに曝す時間は、プラズマ密度やイオンエネルギーなどに依存するが、例えば1秒以上かつ30分以下とすることで、安定的に自然酸化膜を除去することができる。
【0058】
このように、水素を含むプラズマを用いることにより自然酸化膜を除去する場合には、水素を含む雰囲気で加熱することにより自然酸化膜を除去する場合と比べて低温で自然酸化膜を除去することができる。このため、単結晶シリコン基板から酸素が外方拡散して、表層の酸素濃度が低下することがないため、酸素原子層の耐熱性を高く保てる。
【0059】
次に、ステップS13とステップS14を有する層形成工程について詳述する。
まずステップS13は、上記の自然酸化膜を除去した単結晶シリコンウェーハの表面に対して、一酸化窒素により酸素原子層(平面濃度:1×1015atoms/cm以下)を形成するステップである。単結晶シリコン中で酸素原子はシリコン原子と最近接のシリコン原子の間のボンドセンター位置で安定となるため、酸素が1原子層存在する場合には、酸素の平面濃度は1.36×1015atoms/cmとなる。酸素の平面濃度が1×1015atoms/cmの場合は0.74原子層に相当する。
【0060】
一酸化窒素は酸素分子よりも酸化力が高いため、酸素分子を用いる場合よりも短時間で酸素原子層を形成することができる。一方で、一酸化窒素はオゾンよりは酸化力が弱いため、制御性良く安定的に酸素原子層を形成することができる。また、一酸化窒素は、亜酸化窒素よりも軽いため、チャンバーの底部に滞留することなく容易にパージすることができる。
【0061】
ステップS13では、例えば、自然酸化膜の除去後のウェーハを、一酸化窒素を含む雰囲気に曝す(一酸化窒素を含む雰囲気中に放置する)ことで酸素原子層の形成を行うことができる。このような方法であれば、酸素原子層の形成をより簡便に行うことができるので好ましい。
【0062】
このとき、一酸化窒素は窒素ガス又は希ガスにより希釈することができる。このような不活性ガスであれば、一酸化窒素と反応することがないため、より安全に取り扱うことができる。希ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンを用いることができる。
【0063】
また、一酸化窒素の分圧は、例えば5Pa以上かつ10000Pa以下とすることができる。このような圧力範囲であれば、酸素原子層の形成に時間が掛かり過ぎたり、酸素原子層の酸素濃度が高くなり過ぎることをより確実に防ぐことができる。したがって、より安定的に酸素原子層を形成することができる。
また、一酸化窒素により酸素原子層を形成するこのステップでは、例えば20℃以上かつ700℃以下の温度で行うことができる。20℃以上とすることでより安定的に酸素原子層を形成することができる。また、700℃以下とすることで、一酸化窒素が分解するのをより効果的に防止することができる。
また、ウェーハを一酸化窒素に暴露する時間は、例えば1秒以上かつ5時間以下とすることができる。1秒以上とすることでより確実に酸素原子層を形成することができる。また、5時間以下とすることで酸素原子層の酸素濃度が高くなり過ぎることを防ぐことができる。
【0064】
なお、一酸化窒素で酸素原子層を形成する装置に特に制限はない。バッチ式の装置を用いることもできるし、枚葉式の装置を用いることもできる。
【0065】
ステップS14は、上記酸素原子層の上に単結晶シリコンをエピタキシャル成長させて単結晶シリコン層を形成するステップである。
シリコンの原料ガスとして、モノシラン及びジシランを使うことができる。キャリアガスとして窒素、水素、及び希ガスを使用しても良い。また、ホスフィンやジボランなどを添加して、このエピタキシャル層である単結晶シリコン層にドーピングすることもできる。
【0066】
エピタキシャル成長装置としてはバッチ式を使用しても良いし、枚葉式を使用しても良い。
【0067】
また、単結晶シリコンのエピタキシャル成長を、450℃以上かつ800℃以下の温度で行うことができる。このような温度でエピタキシャル成長を行うことで、形成するエピタキシャル層に転位及び積層欠陥が形成されるのを防止でき、より安定して良質のエピタキシャル層を形成することができる。温度が高いほどエピタキシャル成長レートは高くなるため、高温で成膜することで厚いエピタキシャル層を短時間で形成することができる。一方で、薄いエピタキシャル層を形成したい場合には低温で成膜すればよい。このように、目的とするエピタキシャル層の厚さに応じて成長温度を変えることができる。また、このような温度範囲であれば、酸素原子層から酸素が拡散して酸素原子層が消滅することをより確実に防ぐことができる。
また、エピタキシャル層の厚さを調整するために成膜時間を調整することができる。また、高温で成膜する場合には、成膜時間を短くすることで単結晶シリコン基板から酸素が外方拡散して、酸素原子層の耐熱性が低下することを防ぐことができる。
【0068】
また、単結晶シリコンのエピタキシャル成長を、シリコンの原料ガスの分圧を0.1Pa以上かつ2000Pa以下として行うことができる。このような圧力範囲であれば、酸素原子層上に転位や積層欠陥を発生させることなく、より安定して単結晶シリコンを成膜することができる。
【0069】
本発明においては、ステップS13について説明したように酸素原子層の酸素の平面濃度を1×1015atoms/cm以下にしており、このような濃度範囲にすることで、その上のエピタキシャル層中に欠陥が形成されない。これは、酸化量が少ない場合には基板の結晶性が保たれるためである。このため、酸素原子層における酸素の平面濃度の下限値はなく、0よりも大きければよい。なお、酸化量が多い場合(酸素原子層の酸素の平面濃度が1×1015atoms/cmよりも高い場合)にはエピタキシャル層は多結晶シリコンまたはアモルファスシリコンになる。
【0070】
上記のようなステップS13とステップS14を有する層形成工程を1回以上行うことにより、エピタキシャルウェーハを製造する。
なお、層形成工程を1回だけ行って得たエピタキシャルウェーハの一例が図2に示すエピタキシャルウェーハ10Aである。
一方、図3のエピタキシャルウェーハ10Bのように、層形成工程を複数回行うことにより、酸素原子層と単結晶シリコン層とを交互に複数形成することもできる。図3のエピタキシャルウェーハ10Bは4回繰り返した例である。
このように酸素原子層の層数を複数層設けることで、単層の場合よりもゲッタリング効果を高めることができる。なお、例えば所望とするエピタキシャル層全体の厚さやゲッタリング能力の度合いなどをその都度考慮することができ、繰り返しの回数の上限は決められない。
【0071】
また、上記の自然酸化膜を除去する工程(工程S12)、一酸化窒素により酸素原子層を形成するステップ(ステップS13)、単結晶シリコンをエピタキシャル成長させるステップ(ステップS14)は別々の装置又は設備を用いてもよいが、同一のチャンバーで行うことができる。このように同一チャンバーで処理することにより、ウェーハの搬送に要する時間を短縮することができるため、より効率良くエピタキシャルウェーハを製造することができる。特に、ステップS13とステップS14とを同一チャンバーで行うのが好ましく、図3のエピタキシャルウェーハ10Bのように酸素原子層を複数層形成する場合に有効である。
【0072】
以上のような本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法であれば、特殊な装置等も不要で汎用性の高い方法であるとともに、近接ゲッタリングのための酸素原子層の安定的かつ簡便な形成や、良質なエピタキシャル層の形成が可能であり、高品質なエピタキシャルウェーハを得ることができる。
【実施例
【0073】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
(実施例1、比較例1)
準備したCZ法により製造した単結晶シリコン基板の導電型、直径、結晶面方位、酸素濃度は以下の通りである。
基板の導電型 :p型
直径 :300mm
結晶面方位 :(100)
酸素濃度 :14ppma
次に、準備した単結晶シリコンウェーハの自然酸化膜を除去するために水素プラズマ処理を行った。温度は350℃とし、時間は1分とした。
【0074】
その後、ウェーハを一酸化窒素に暴露することで(一酸化窒素を含む雰囲気、具体的には、一酸化窒素と窒素を混合した雰囲気に放置することで)酸素原子層を形成した。温度は600℃、一酸化窒素の分圧は100Pa、時間は15~540秒とした。具体的には、実施例1では15秒及び180秒の2パターンとし、比較例1では540秒とした。
次に、酸素原子層を形成した単結晶シリコンウェーハ表面に、モノシランを用いて単結晶シリコンをエピタキシャル成長させた。温度は650℃とし、モノシランの分圧は60Paとした。このときキャリアガスには水素を用いた。
なお、酸素原子層の形成と単結晶シリコンのエピタキシャル成長は同一チャンバー内で行った。
【0075】
その後、酸素原子層における酸素の平面濃度をSIMSにより測定した。実施例1では、一酸化窒素の暴露時間が15秒の場合に8×1013atoms/cmであり、180秒の場合に1×1015atoms/cmであった。比較例1では3×1015atoms/cmであった。
また結晶性を評価するために断面TEM(Transmission Electron Microscopy)観察を行った。図4に観察結果を示す。
酸素原子層での酸素の平面濃度が1×1015atoms/cm以下の場合(実施例1の2パターンの両方)では酸素原子層上に転位及び積層欠陥が形成されることなく単結晶シリコン層が形成できていることがわかる。
一方、酸素原子層での酸素の平面濃度が1×1015atoms/cmより大きい3×1015atoms/cmの場合(比較例1)には、エピタキシャル層が単結晶シリコンではなくポリシリコンとなっている。
【0076】
なお、実施例1のように酸素原子層の酸素の平面濃度が8×1013atoms/cm程度となると断面TEM観察画像において酸素原子層のコントラストの変化が弱くなるため、1×1015atoms/cmの場合と比べて酸素原子層が見えづらくなっているが、SIMS測定で酸素原子層の部分に明確な酸素のピークが観察され、酸素原子層の存在は確認できている。
【0077】
(実施例2、比較例2)
実施例1及び比較例1と同じ単結晶シリコン基板を準備した。
準備した単結晶シリコンウェーハの自然酸化膜を除去するために水素プラズマ処理(実施例2)または水素ベーク処理(比較例2)を行った。水素プラズマ処理の温度は350℃とし、水素ベーク処理の温度は1150℃とした。時間はいずれの場合にも1分とした。
【0078】
その後、ウェーハを一酸化窒素に暴露することで(実施例1と同様の雰囲気に放置することで)酸素原子層を形成した。温度は600℃、一酸化窒素の分圧は100Pa、時間は15秒とした。
次に、酸素原子層を形成した単結晶シリコンウェーハ表面に、モノシランを用いて単結晶シリコンをエピタキシャル成長させた。温度は650℃とし、モノシランの分圧は60Paとした。このときキャリアガスには水素を用いた。
なお、酸素原子層の形成と単結晶シリコンのエピタキシャル成長は同一チャンバー内で行った。
その後、窒素雰囲気で温度を950℃、時間を30秒とした熱処理を行った(熱処理A)。
【0079】
熱処理Aの前後における酸素原子層の酸素濃度をSIMSにより測定した結果を図5に示す。
自然酸化膜の除去の際に、350℃の水素プラズマ処理をした場合(実施例2)に比べ、1150℃の水素ベークで処理した場合(比較例2)には酸素濃度が大幅に低下していることがわかる。これは、比較例2では自然酸化膜除去時の高温処理により、単結晶シリコンウェーハから酸素が外方拡散し、単結晶シリコンウェーハ中の酸素濃度が低下してしまい、その後の熱処理Aのときに酸素原子層から酸素が拡散する一方で、単結晶シリコンウェーハから酸素原子層への酸素の供給が大きく不足したためと考えられる。これに対して、実施例2のように700℃以下での自然酸化膜の除去処理を行った場合、熱処理Aを施した際に単結晶シリコンウェーハから酸素原子層への酸素の供給が十分に行われ、酸素原子層での酸素の平面濃度の低下を効果的に抑制することができたと考えられる。
【0080】
(実施例3、比較例3)
実施例1及び比較例1と同じ単結晶シリコン基板を準備した。
準備した単結晶シリコンウェーハの自然酸化膜を除去するために水素プラズマ処理を行った。温度は350℃とし、時間は1分とした。
【0081】
その後、ウェーハを一酸化窒素に暴露するか(実施例1と同様の雰囲気に放置するか)(実施例3)、または、亜酸化窒素(NO)に暴露することで(亜酸化窒素を含む雰囲気、具体的には、亜酸化窒素と窒素を混合した雰囲気に放置することで)(比較例3)、酸素原子層を形成した。いずれも温度は600℃、時間は15秒とし、実施例3における一酸化窒素の分圧は100Pa、比較例3における亜酸化窒素の分圧は100Paとした。
次に、酸素原子層を形成した単結晶シリコンウェーハ表面に、モノシランを用いて単結晶シリコンをエピタキシャル成長させた。温度は650℃とし、モノシランの分圧は60Paとした。このとき、キャリアガスとして水素を用いた。
なお、酸素原子層の形成と単結晶シリコンのエピタキシャル成長は同一チャンバー内で行った。
【0082】
成膜後の欠陥数をレーザテック社製のMAGICSにより測定した結果を図6に示す。
酸素原子層を一酸化窒素により形成した方(実施例3)が、亜酸化窒素により形成した方(比較例3)よりも欠陥が少ないことがわかる。亜酸化窒素は一酸化窒素よりも重いため、これらをパージした際に一部がチャンバーに滞留し、モノシランと反応して生じた微小なSiOが欠陥として検出されたと考えられる。
【0083】
(実施例4)
実施例1及び比較例1と同じ単結晶シリコン基板を準備した。
準備した単結晶シリコンウェーハの自然酸化膜を除去するために水素プラズマ処理を行った。温度は350℃とし、時間は1分とした。
【0084】
その後、ウェーハを一酸化窒素に暴露することで(実施例1と同様の雰囲気に放置することで)酸素原子層を形成した。温度は600℃、一酸化窒素の分圧は100Pa、時間は15秒とした。
次に、酸素原子層を形成した単結晶シリコンウェーハ表面に、モノシランを用いて単結晶シリコンをエピタキシャル成長させた。温度は650℃とし、モノシランの分圧は60Paとした。このとき、キャリアガスとして水素を用いた。
その後、酸素原子層の形成と単結晶シリコンのエピタキシャル成長を繰り返して(すなわち、酸素原子層および単結晶シリコン層形成工程を繰り返して)、酸素原子層と単結晶シリコン層を交互に2層ずつ形成した。
なお、酸素原子層の形成と単結晶シリコンのエピタキシャル成長は同一チャンバー内で行った。
【0085】
その後、酸素原子層における酸素の平面濃度をSIMSにより測定した。その結果、酸素原子層の酸素濃度はどちらの層の場合にも8×1013atoms/cmであった。
さらに、結晶性を評価するために断面TEM観察を行った。図7に観察結果を示す。酸素原子層を複数層形成した場合でも、転位及び積層欠陥が形成されることなく単結晶シリコン層が形成できていることがわかる。図7では酸素原子層のコントラストの変化が弱くて見づらいが、SIMS測定で酸素原子層の部分に明確な酸素のピークが観察され、酸素原子層の存在は確認できている。
【0086】
(実施例5)
自然酸化膜を除去するための水素プラズマ処理における温度を700℃としたこと以外は実施例2と同様にして、一酸化窒素への暴露、単結晶シリコンのエピタキシャル成長を行った。その後、実施例2と同様に熱処理Aを行った。
【0087】
熱処理Aの前後における酸素原子層の酸素濃度をSIMSにより測定したところ、実施例2に比べ、熱処理Aの後にやや大きく酸素濃度が低下したものの、比較例2と比べると低下の度合いを小さく抑えることができた。
【0088】
以上のように、本発明に係るエピタキシャルウェーハの製造方法であれば、酸素原子層をエピタキシャル層に安定的かつ簡便に導入することができるとともに、良質な単結晶シリコンのエピタキシャル層を有するエピタキシャルウェーハを得ることが可能となる。
【0089】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0090】
1…単結晶シリコンウェーハ、 2…酸素原子層、 3…単結晶シリコン層、
10A、10B…エピタキシャルウェーハ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7