(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム及びその品質管理方法、並びに半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
H01L21/78 M
(21)【出願番号】P 2021566403
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2019050395
(87)【国際公開番号】W WO2021130823
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】彼谷 美千子
(72)【発明者】
【氏名】谷口 紘平
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-023161(JP,A)
【文献】国際公開第2015/178346(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面及び前記第1の表面の反対側の第2の表面を有する基材層と、前記基材層の前記第2の表面上に設けられた、光硬化性粘着剤からなる粘着剤層と、前記粘着剤層の前記基材層とは反対側に設けられた接着剤層とを備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを準備する第1の工程と、
前記ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの前記基材層の前記第1の表面について、負荷長さ率tpを算出する第2の工程と、
前記負荷長さ率tpを指標として、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの品質の良否を判定する第3の工程と、
を備える、
ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの品質管理方法。
【請求項2】
前記負荷長さ率tpが、切断レベル50%における負荷長さ率tp(50%)である、
請求項1に記載のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの品質管理方法。
【請求項3】
前記第3の工程は、前記負荷長さ率tp(50%)が15%以上であることを満たすか否かによって品質の良否を判定する工程である、
請求項2に記載のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの品質管理方法。
【請求項4】
第1の表面及び前記第1の表面の反対側の第2の表面を有する基材層と、前記基材層の前記第2の表面上に設けられた、光硬化性粘着剤からなる粘着剤層と、前記粘着剤層の前記基材層とは反対側に設けられた接着剤層とを備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを準備する第1の工程と、
前記ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの前記基材層の前記第1の表面について、負荷長さ率tpを算出する第2の工程と、
前記負荷長さ率tpを指標として、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの品質の良否を判定する第3の工程と、
前記第3の工程において、良と判定されたダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを用いて半導体装置を製造する第4の工程と、
を備える、
半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記負荷長さ率tpが、切断レベル50%における負荷長さ率tp(50%)である、
請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第3の工程は、前記負荷長さ率tp(50%)が15%以上であることを満たすか否かによって品質の良否を判定する工程である、
請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
第1の表面及び前記第1の表面の反対側の第2の表面を有する基材層と、
前記基材層の前記第2の表面上に設けられた、光硬化性粘着剤からなる粘着剤層と、
前記粘着剤層の前記基材層とは反対側に設けられた接着剤層と、
を備え、
前記基材層の前記第1の表面が、切断レベル50%における負荷長さ率tp(50%)が15%以上である、
ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム及びその品質管理方法、並びに半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの製造においては、半導体ウェハを個々の半導体チップに個片化するダイシング工程、個片化した半導体チップを粘着剤層から剥離するピックアップ工程、及び個片化した半導体チップをリードフレーム、パッケージ基板等に接着するダイボンディング工程が通常備えられている。このような半導体チップの製造においては、基材層と、ダイシング工程における半導体ウェハの固定に用いられる光硬化性粘着剤からなる粘着剤層(光硬化性粘着剤層)と、半導体チップとリードフレーム、パッケージ基板等との接着に用いられる接着剤層とを備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルムが主に用いられている。ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムは、粘着剤層を含むダイシングフィルムと接着剤層を含むダイボンディングフィルムとを一体化させたものであるともいえる。
【0003】
近年、薄型半導体ウェハを個片化して半導体チップを製造する方法の一例として、半導体ウェハを完全に切断せずに、切断予定ライン上の半導体ウェハ内部にレーザ光を照射して改質層を形成し、粘着剤層を拡張させることによって半導体ウェハを割断する、いわゆるステルスダイシングが提案されている(例えば、特許文献1)。ステルスダイシングによって個片化された半導体チップは、その後のピックアップ工程での破損防止の観点から、粘着剤層と接着剤層とをより小さな力で剥離させることが求められる。そのため、薄型半導体チップの製造に用いられるダイシング・ダイボンディング一体型フィルムには、小さな力でピックアップの成功率を高めることが極めて重要である。
【0004】
ピックアップの成功率を向上させるために、ダイシングフィルム、特に粘着剤層の改善が以下の文献で提案されている。特許文献2には、粘着剤層の最適化された組成が提案されている。特許文献3には基材層及び粘着剤層を共に最適化する提案がされている。また、ダイシングフィルムの基材層では、ピックアップの成功率を向上させるために、均一な延伸性に優れた上で作業工程を考慮した引張応力が重要であるとされている。例えば、特許文献4には、フィルムの均一拡張性及び復元率が、半導体製造工程のエキスパンド工程に有効である旨の記載がある。また、特許文献5では、ダイシングフィルムにおける伸び率と収縮率とを制御することで、チップ間の隙間(カーフ幅)を制御し、ピックアップの成功率を向上させることが検討されている。
【0005】
一方で、ダイシングフィルムにおいて、基材層の粘着剤層とは反対側の表面(以下、場合によって「基材層の背表面」という場合がある。)は、搬送性向上及びブロッキング抑制の観点から、様々な処理を施すことが検討されている。例えば、特許文献6には、算術表面粗さを調整すること及び基材層の背表面に潤滑材による処理を行うことが記載されている。また、例えば、特許文献7には、ブロッキング抑制及び視認性向上の観点から、当該基材層の背表面の算術表面粗さを所定の範囲にすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-338467号公報
【文献】特開2015-126217号公報
【文献】特開2013-135146号公報
【文献】特開2018-065327号公報
【文献】特開2017-147293号公報
【文献】特開2007-150206号公報
【文献】国際公開第2017/150330号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体チップの製造においては、基材層の背表面から基材層を介して粘着剤層に対して光が照射される。ところで、本発明者らの検討によると、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの基材層は様々な要因によって徐々に劣化し、これに伴って粘着剤層の光反応性も低下してしまう場合があることが見出された。粘着剤層の光反応性の低下は、ピックアップの成功率の低下にもつながる。そのため、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの品質を管理することが重要となる。しかし、品質が維持されているかどうかは見た目では判断がつかず、実際に使用してみなければ分からないことが多い。
【0008】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの新規な品質管理方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム、特に、ダイシングフィルムの基材層は、通常、使用直前まで巻き芯に一定の張力がかけられた状態で保管される。この際の保管状況によっては、基材層においてクリープ現象が発生し、基材層の背表面の凹凸が変形する場合がある。従来、ダイシングフィルムの場合、基材層の背表面を、搬送性、視認性向上、及びブロッキング抑制の観点から、算術表面粗さ(Ra)、算術平均高さ(Sa)、摩擦係数等を指標として制御することが知られている(例えば、特許文献6、7参照)。しかし、近年の半導体製造プロセスで適用されている工程、例えば、ステルスダイシングプロセス等では、より精密な粘着力制御が必要となる。加えて、基材層の背表面から照射される光透過性は、基材層の背表面の凹凸に影響を受けて、粘着剤層の光反応性に影響を及ぼし、結果として、量産性に影響を及ぼすことが考えられる。本発明者らが基材層の背表面の状態について鋭意検討したところ、従来の表面粗さのパラメータに比べて、負荷長さ率tpが評価指標として優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本開示の一側面は、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの品質管理方法に関する。当該品質管理方法は、第1の表面(上記の「基材層の背表面」に対応する。)及び第1の表面の反対側の第2の表面を有する基材層と、基材層の第2の表面上に設けられた、光硬化性粘着剤からなる粘着剤層と、粘着剤層の基材層とは反対側に設けられた接着剤層とを備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを準備する第1の工程と、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの基材層の第1の表面について、負荷長さ率tpを算出する第2の工程と、負荷長さ率tpを指標として、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの品質の良否を判定する第3の工程とを備える。
【0011】
このように判定されたダイシング・ダイボンディング一体型フィルムは、ピックアップの成功率に優れるものであり得る。そのため、このような品質管理方法は、使用予定のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの品質が維持されているものであるか否かを判断するのに有用である。
【0012】
負荷長さ率tpは、切断レベル50%における負荷長さ率tp(50%)であってよい。この場合、第3の工程は、負荷長さ率tp(50%)が15%以上であることを満たすか否かによって品質の良否を判定する工程であってよい。
【0013】
本開示の他の一側面は、半導体装置の製造方法に関する。当該半導体装置の製造方法は、第1の表面及び第1の表面の反対側の第2の表面を有する基材層と、基材層の第2の表面上に設けられた、光硬化性粘着剤からなる粘着剤層と、粘着剤層の基材層とは反対側に設けられた接着剤層とを備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを準備する第1の工程と、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの基材層の第1の表面について、負荷長さ率tpを算出する第2の工程と、負荷長さ率tpを指標として、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの品質の良否を判定する第3の工程と、第3の工程において、良と判定されたダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを用いて半導体装置を製造する第4の工程とを備える。
【0014】
負荷長さ率tpは、切断レベル50%における負荷長さ率tp(50%)であってよい。この場合、第3の工程は、負荷長さ率tp(50%)が15%以上であることを満たすか否かによって品質の良否を判定する工程であってよい。
【0015】
本開示の他の一側面は、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムに関する。当該ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムは、第1の表面及び第1の表面の反対側の第2の表面を有する基材層と、基材層の第2の表面上に設けられた、光硬化性粘着剤からなる粘着剤層と、粘着剤層の基材層とは反対側に設けられた接着剤層とを備え、基材層の第1の表面が、切断レベル50%における負荷長さ率tp(50%)が15%以上である。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの新規な品質管理方法を提供することが提供される。また、本開示によれば、このような方法によって品質が良と判定されたダイシング・ダイボンディング一体型フィルム、及びこのようなダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを用いた半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】
図2は、負荷長さ率tpを説明するための説明図である。
【
図3】
図3は、半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図であり、
図3(a)、(b)、(c)、(d)、及び(e)は、各工程を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図であり、
図4(f)、(g)、(h)、及び(i)は、各工程を示す模式断面図である。
【
図5】
図5は、半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の実施形態について説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。各図における構成要素の大きさは概念的なものであり、構成要素間の大きさの相対的な関係は各図に示されたものに限定されない。
【0019】
本明細書における数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0020】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリル共重合体等の他の類似表現についても同様である。
【0021】
[ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの品質管理方法]
一実施形態に係るダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの品質管理方法は、第1の表面及び第1の表面の反対側の第2の表面を有する基材層と、基材層の第2の表面上に設けられた、光硬化性粘着剤からなる粘着剤層と、粘着剤層の基材層とは反対側に設けられた接着剤層とを備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを準備する第1の工程と、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの基材層の第1の表面について、負荷長さ率tpを算出する第2の工程と、負荷長さ率tpを指標として、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの品質の良否を判定する第3の工程とを備える。
【0022】
<第1の工程>
本工程は、管理対象であるダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを準備する工程である。
図1は、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1は、第1の表面10A及び第1の表面10Aの反対側の第2の表面10Bを有する基材層10と、基材層10の第2の表面10B上に設けられた、光硬化性粘着剤からなる粘着剤層20と、粘着剤層20の基材層10とは反対側に設けられた接着剤層30とを備える。
【0023】
(基材層)
基材層10は、既知のポリマーシート又はフィルムを用いることができ、ダイボンディング工程においてエキスパンドすることが可能な材料で構成されているのであれば、特に制限されない。このような材料としては、例えば、結晶性ポリプロピレン、非晶性ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、低密度直鎖ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体;アイオノマー樹脂;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体;エチレン-(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体;エチレン-プロピレン共重合体;エチレン-ブテン共重合体;エチレン-ヘキセン共重合体;ポリウレタン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリイミド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアミド;全芳香族ポリアミド;ポリフェニルスルフイド;アラミド(紙);ガラス;ガラスクロス;フッ素樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;セルロース系樹脂;シリコーン樹脂などが挙げられる。これらの材料は、可塑剤、シリカ、アンチブロッキング材、スリップ剤、帯電防止剤等と混合した材料であってもよい。
【0024】
これらの中でも、基材層10は、ヤング率、応力緩和性、融点等の特性、価格面、使用後の廃材リサイクルなどの観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン-ポリプロピレンランダム共重合体、及びポリエチレン-ポリプロピレンブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種の材料を主成分とする表面を有し、当該表面が粘着剤層20と接しているものであってよい。基材層10は、単層であっても、異なる材料からなる2層以上の多層であってもよい。基材層10は、後述の粘着剤層20との密着性を制御する観点から、必要に応じて、コロナ放電処理、マット処理等の表面粗化処理が施されていてもよい。
【0025】
基材層10の厚さは、50~200μm、60~150μm、又は70~120μmであってよい。基材層10の厚さが50μm以上であると、エキスパンドよる破損をより抑制できる傾向にある。基材層10の厚さが200μm以下であると、ピックアップにおける応力が接着剤層まで到達し易くなり、ピックアップ性により優れる傾向にある。
【0026】
(粘着剤層)
粘着剤層20は、光硬化性粘着剤からなる層である。光硬化性粘着剤は、光によって硬化する粘着剤であれば特に制限されず、ダイシングフィルムの分野で使用される粘着剤を使用することができる。光硬化性粘着剤は、紫外線によって硬化する紫外線硬化型の光硬化性粘着剤であってよい。
【0027】
粘着剤層20は、基材層10上に形成されている。基材層10上に粘着剤層20を形成する方法としては、例えば、粘着剤層形成用ワニスを調製し、当該ワニスを基材層10に塗工して、当該ワニスの揮発成分を除去し、粘着剤層20を形成する方法、当該ワニスを離型処理されたフィルム上に塗工し、当該ワニスの揮発成分を除去して、粘着剤層20を形成し、得られた粘着剤層20を基材層10に転写する方法等が挙げられる。
【0028】
粘着剤層形成用ワニスは、例えば、光硬化性粘着剤と、有機溶剤とを含有する。有機溶剤は、含有される成分を溶解し得るものであって、加熱によって揮発するものであってよい。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル;メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコールアルキルエーテルアセテート;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミドなどが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。ワニスの固形分濃度は、ワニス全質量を基準として、10~60質量%であってよい。
【0029】
粘着剤層20の厚さは、例えば、1~200μm、3~50μm、又は5~30μmであってよい。
【0030】
(接着剤層)
接着剤層30は、接着剤からなる層である。接着剤は、ダイボンディングフィルムの分野で使用される接着剤を使用することができる。以下では、一態様として、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体とを含有する接着剤について説明する。このような接着剤からなる接着剤層30によれば、チップと基板との間、チップとチップとの間の接着性に優れ、電極埋め込み性、ワイヤー埋め込み性等を付与することが可能であり、かつダイボンディング工程において、低温で接着することが可能となる。
【0031】
・エポキシ樹脂
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、多官能フェノール類、アントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
・エポキシ樹脂硬化剤
エポキシ樹脂硬化剤は、例えば、フェノール樹脂であってよい。フェノール樹脂は、分子内にフェノール性水酸基を有するものであれば特に制限なく用いることができる。フェノール樹脂はとしては、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、アリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールF、アリル化ナフタレンジオール、フェノールノボラック、フェノール等のフェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
・エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体
エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体は、原料としてグリシジル(メタ)アクリレートを、得られる共重合体に対し0.5~6質量%となる量に調整された共重合体であってよい。当該量が0.5質量%以上であると、高い接着力が得られ易くなる傾向にあり、当該量が6質量%以下であると、ゲル化を抑制できる傾向にある。グリシジル(メタ)アクリレートの残部はメチル(メタ)アクリレート等の炭素数1~8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、及びスチレン、アクリロニトリル等の混合物であってよい。アルキル(メタ)アクリレートは、エチル(メタ)アクリレート及び/又はブチル(メタ)アクリレートを含んでいてよい。各成分の混合比率は、得られるエポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体のTg(ガラス転移点)を考慮して調整することができる。Tgが-10℃以上であると、Bステージ状態での接着剤層30のタック性が良好になる傾向にあり、取り扱い性に優れる傾向にある。エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体のTgの上限値は、例えば、30℃であってよい。
【0034】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は10万以上であってよく、30万~300万又は50万~200万であってよい。重量平均分子量が300万以下であると、半導体チップと支持基板との間の充填性の低下を制御できる傾向にある。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0035】
接着剤は、必要に応じて、第三級アミン、イミダゾール類、第四級アンモニウム塩類等の硬化促進剤をさらに含有していてもよい。硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
接着剤は、必要に応じて、無機フィラーをさらに含有してもよい。無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ホウ素、結晶質シリカ、非晶質シリカ等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
接着剤層30は、粘着剤層20上に形成される。粘着剤層20上に接着剤層30を形成する方法としては、例えば、接着剤層形成用ワニスを調製し、当該ワニスを離型処理されたフィルム上に塗工して、接着剤層30を形成し、得られた接着剤層30を粘着剤層20に転写する方法が挙げられる。接着剤層形成用ワニスは、含有される成分(例えば、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体等)と、有機溶剤とを含有する。有機溶剤は、粘着剤層形成用ワニスで使用される有機溶剤で例示したものと同様であってよい。
【0038】
接着剤層30の厚さは、例えば、1~300μm、5~150μm、又は10~100μmであってよい。
【0039】
<第2の工程>
本工程は、管理対象であるダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの基材層の第1の表面について、負荷長さ率tpを算出する工程である。ここで、負荷長さ率tpは、JIS B0601:1994に準拠して測定される値である。
図2は、負荷長さ率tpを説明するための説明図である。
図2に示すように、負荷長さ率tp(C%)は、切断レベルCにおける基準長さlに対する百分率であり、下記式で表されるパラメータである。基準長さlは、表面粗さ、表面の周期性等によって決定される値である。最大高さRyは、粗さ曲線の最高山頂と最深谷底との距離である。切断レベルCは、粗さ曲線の最高山頂を0%、最深谷底を100%とするものである。最大切断レベル0%のときの負荷長さ率tp(0%)は0%、切断レベル100%のときの負荷長さ率tp(100%)は100%となる。
【0040】
【0041】
表面の粗さには様々なパラメータがある。例えば、JIS B0601:1994に規定される算術平均粗さRa等は、粗さの高さ方向のパラメータである。一方、負荷長さ率tpは、粗さ曲線の山の幅(谷の幅)と粗さの高さ方向の情報を含む凹凸の複雑さを表すパラメータである。光透過性は、光が透過する表面の凹凸の複雑さが光の散乱、反射等が大きな影響を与える。そのため、光透過性が重要であるダイシング・ダイボンディング一体型フィルムでは、基材層の表面の負荷長さ率tpがより有効な評価指標となり得る。
【0042】
負荷長さ率tpは、例えば、実施例に記載の方法によって測定することができる。すなわち、10mm角のサンプルを準備し、無作為に10~30点、好ましくは20~30点をレーザ顕微鏡で測定することによって負荷長さ率tpを算出することができる。なお、負荷長さ率tpは、所定のサンプル数の平均値よりも中央値の方がデータとして最適である。ここで、中央値は、有限個のデータを小さい順に並べたときの中央に位置する値を意味し、データが偶数個である場合は、中央に近い値の平均値を意味する。本発明者らは、平均値の場合には、データが局所であるために他のデータとずれの大きい値を取ることもあり、そのデータの絶対値が大き過ぎると、平均値に大きな影響を与えてしまうことがあること、及びデータ分布が正規分布であることの保証がないことから、負荷長さ率tpは、データの集合の中央値を用いることが最適であると考えている。
【0043】
<第3の工程>
本工程は、負荷長さ率tpを指標として、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの品質の良否を判定する工程である。負荷長さ率tpにおける切断レベルC%は、特に制限されず、任意に設定することができるが、負荷長さ率tpは、負荷曲線が緩やかな曲線を示すことから、切断レベルを50%とした負荷長さ率tp(50%)であってよい。この場合、第3の工程は、負荷長さ率tp(50%)が15%以上であることを満たすか否かによって品質の良否を判定する工程であってよい。負荷長さ率tp(50%)が15%以上であると、基材層の第1の表面において、凸部が多く、表面がより複雑であるといえ、光が散乱、屈折、又は反射し易くなって局所的に集中しなくなって光透過性が均一になり易い傾向にある。品質の良否の判定基準である負荷長さ率tp(50%)は、基材層と粘着剤層との組み合わせで適宜設定が可能であり、例えば、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、又は25%以上と設定してもよく、70%以下、60%以下、又は50%以下と設定してもよい。
【0044】
このように判定されたダイシング・ダイボンディング一体型フィルムは、ピックアップの成功率に優れるものであり得る。また、このように判定されたダイシング・ダイボンディング一体型フィルムは、搬送時の貼りつき、検査機器の検知率の低下等を抑制できることが期待できる。このように、本開示の品質管理方法は、使用予定のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの品質が維持されているものであるか否かを判断するのに有用である。
【0045】
[ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム]
一実施形態に係るダイシング・ダイボンディング一体型フィルムは、第1の表面及び第1の表面の反対側の第2の表面を有する基材層と、基材層の第2の表面上に設けられた、光硬化性粘着剤からなる粘着剤層と、粘着剤層の基材層とは反対側に設けられた接着剤層とを備える。ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムは、基材層の第1の表面が、切断レベル50%における負荷長さ率tp(50%)が15%以上である。基材層、粘着剤層、及び接着剤層は、上記のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの品質管理方法で例示したものと同様のものである。したがって、重複する説明を省略する。
【0046】
基材層の第1の表面の切断レベル50%における負荷長さ率tp(50%)を調整する方法としては、例えば、基材層の第1の表面を加熱する方法、凹凸を制御したロールに一定の温度及び圧力を負荷する方法等が挙げられる。基材層の第1の表面を加熱する場合、基材層の軟化点以上の温度で加熱すると負荷長さ率tp(50%)が所定の範囲を満たさない傾向にある。
【0047】
[半導体装置(半導体パッケージ)の製造方法]
図3及び
図4は、半導体装置の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。半導体装置の製造方法は、第1の表面及び第1の表面の反対側の第2の表面を有する基材層と、基材層の第2の表面上に設けられた、光硬化性粘着剤からなる粘着剤層と、粘着剤層の基材層とは反対側に設けられた接着剤層とを備えるダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを準備する第1の工程と、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの基材層の第1の表面について、負荷長さ率tpを算出する第2の工程と、負荷長さ率tpを指標として、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの品質の良否を判定する第3の工程と、第3の工程において、良と判定されたダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを用いて半導体装置を製造する第4の工程とを備える。なお、第1の工程、第2の工程、及び第3の工程は、上記のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの品質管理方法の第1の工程、第2の工程、及び第3の工程と同様である。したがって、重複する説明を省略する。
【0048】
<第4の工程>
第4の工程は、第3の工程において、良と判定されたダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを用いて半導体装置を製造する工程である。より具体的には、半導体装置の製造方法における第4の工程は、当該ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1の接着剤層30を半導体ウェハW2に貼り付ける工程(ウェハラミネート工程)と、半導体ウェハW2、接着剤層30、及び粘着剤層20を個片化する工程(ダイシング工程)と、粘着剤層20に対して紫外線を照射する工程(紫外線照射工程)と、基材層10から接着剤層30aが付着した半導体チップ(接着剤層付き半導体チップ50)をピックアップする工程(ピックアップ工程)と、接着剤層30aを介して、接着剤層付き半導体チップ50を支持基板60に接着する工程(半導体チップ接着工程)とを備える。
【0049】
ダイシング工程におけるダイシングは、特に制限されず、例えば、ブレードダイシング、レーザダイシング、ステルスダイシング等が挙げられる。半導体ウェハW2の厚さを60μm以下とする場合、ダイシングはステルスダイシングを適用したものであってよい。以下では、ダイシングとして主にステルスダイシングを用いた態様について詳細に説明する。
【0050】
(改質層形成工程)
ダイシングがステルスダイシングを適用したものである場合、半導体装置の製造方法は、ウェハラミネート工程の前に改質層形成工程を備えていてよい。
【0051】
まず、厚さH1の半導体ウェハW1を用意する。改質層を形成する半導体ウェハW1の厚さH1は、60μmを超えていてよい。続いて、半導体ウェハW1の一方の主面上に保護フィルム2を貼り付ける(
図3(a)参照)。保護フィルム2が貼り付けられる面は、半導体ウェハW1の回路面であることが好ましい。保護フィルム2は、半導体ウェハの裏面研削(バックグラインド)に使用されるバックグラインドテープであってよい。続いて、半導体ウェハW1内部にレーザ光を照射して改質層4を形成し(
図3(b)参照)、半導体ウェハW1の保護フィルム2が張り付けられた面とは反対側(裏面側)に対してバックグラインディング(裏面研削)及びポリッシング(研磨)を行うことによって、改質層4を有する半導体ウェハW2を作製する(
図3(c)参照)。得られる半導体ウェハW2の厚さH2は、60μm以下であってよい。
【0052】
(ウェハラミネート工程)
次いで、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1の接着剤層30を所定の装置に配置する。続いて、半導体ウェハW2の主面Wsに、接着剤層30を介してダイシング・ダイボンディング一体型フィルム1を貼り付け(
図3(d)参照)、半導体ウェハW2の保護フィルム2を剥離する(
図3(e)参照)。
【0053】
(ダイシング工程)
次に、少なくとも半導体ウェハW2及び接着剤層30をダイシングによって個片化する(
図4(f)参照)。ダイシングがステルスダイシングを適用したものである場合、ク-ルエキスパンド及びヒートシュリンクを行うことによって個片化することができる。
【0054】
(紫外線照射工程)
次に、粘着剤層20に紫外線を照射することによって粘着剤層20を硬化させ、光硬化性粘着剤の硬化物を含む硬化粘着剤層を形成する(
図4(g)参照)。これによって、粘着剤層20と接着剤層30との間の粘着力を低下させることができる。紫外線照射においては、波長200~400nmの紫外線を用いることが好ましい。紫外線照射条件は、照度:30~240mW/cm
2で照射量200~500mJ/cm
2となるように調整することが好ましい。
【0055】
(ピックアップ工程)
次に、基材層10をエキスパンドすることによって、ダイシングされた接着剤層付き半導体チップ50を互いに離間させつつ、基材層10側からニードル42で突き上げられた接着剤層付き半導体チップ50を吸引コレット44で吸引して、硬化粘着剤層20acからピックアップする(
図4(h)参照)。なお、接着剤層付き半導体チップ50は、半導体チップWaと接着剤層30aとを有する。半導体チップWaは半導体ウェハW2がダイシングによって分割されたものであり、接着剤層30aは接着剤層30がダイシングによって分割されたものである。硬化粘着剤層20acは光硬化性粘着剤の硬化物を含む硬化粘着剤層がダイシングによって分割されたものである。硬化粘着剤層20acは接着剤層付き半導体チップ50をピックアップする際に基材層10上に残存し得る。ピックアップ工程では、必ずしもエキスパンドする必要はないが、エキスパンドすることによってピックアップ性をより向上させることができる。
【0056】
ニードル42による突き上げ量は、適宜設定することができる。さらに、極薄ウェハに対しても充分なピックアップ性を確保する観点から、例えば、2段又は3段のピックアップを行ってもよい。また、吸引コレット44を用いる方法以外の方法で接着剤層付き半導体チップ50のピックアップを行ってもよい。
【0057】
(半導体チップ接着工程)
接着剤層付き半導体チップ50をピックアップした後、接着剤層付き半導体チップ50を、熱圧着によって、接着剤層30aを介して支持基板60に接着する(
図4(i)参照)。支持基板60には、複数の接着剤層付き半導体チップ50を接着してもよい。
【0058】
図5は、半導体装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図5に示される半導体装置100は、半導体チップWaと、半導体チップWaを搭載する支持基板60と、半導体チップWa及び支持基板60の間に設けられ、半導体チップWaと支持基板60とを接着する接着剤層30aとを備える。接着剤層30aは、接着剤(ダイボンディングフィルム)の硬化物であってもよい。半導体装置100は、半導体チップWaと支持基板60とがワイヤーボンド70によって電気的に接続されていてもよい。半導体装置100は、支持基板60の表面60a上に、樹脂封止材80によって半導体チップWaが樹脂封止されていてもよい。半導体装置100は、支持基板60の表面60aと反対側の面に、外部基板(マザーボード)との電気的な接続用として、はんだボール90が形成されていてもよい。
【0059】
図5に示す半導体装置100は、上記工程に加えて、半導体チップWaと支持基板60とをワイヤーボンド70によって電気的に接続する工程と、支持基板60の表面60a上に、樹脂封止材80を用いて半導体チップWaを樹脂封止する工程とをさらに備える製造方法によって製造することができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本開示をさらに具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に記載がない限り、化合物は市販の試薬を使用した。
【0061】
[ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの準備]
<製造例1>
(ダイボンディングフィルムの作製)
剥離基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ38μm)上に、熱硬化型エポキシ樹脂含有接着剤(商品名「FH-D2-10」、日立化成株式会社製)を塗布し、厚さ10μmの接着剤層を形成し、接着剤層を備えるダイボンディングフィルムを作製した。
【0062】
(ダイシングフィルムの作製)
基材層としての基材フィルム(アイオノマー系単層フィルム、商品名「HM-1855」、厚さ100μm、軟化点56℃、三井・ダウ ポリケミカル株式会社製)に、紫外線硬化型の光硬化型粘着剤を塗布し、厚さ10μmの粘着剤層を形成し、粘着剤層を備えるダイシングフィルムを作製した。なお、軟化点温度はJIS K6760に従って測定される値である。
【0063】
(ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの作製)
上記で作製したダイボンディングフィルムの接着剤層と、上記で作製したダイシングフィルムの粘着剤層とを貼り合わせた。貼り合わせは、ラミネートマシンを用い、温度23℃でラミネート速度12.5mm/sで行った。
【0064】
<製造例2>
基材フィルムの軟化点以下である40℃に設定したローラーに、作製したダイシングフィルムにおける基材フィルムを1秒間接触させた以外は、製造例1と同様にして、製造例2のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを作製した。
【0065】
<製造例3>
基材フィルムの軟化点以上である70℃に設定したホットプレートに、作製したダイシングフィルムの基材フィルムを1秒間接触させ、すぐに放熱した以外は、製造例1と同様にして、製造例3のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを作製した。
【0066】
<製造例4>
基材フィルムの軟化点以上である70℃のホットプレートに、作製したダイシングフィルムの基材層を3秒間接触させ、すぐに放熱した以外は、製造例1と同様にして、製造例4のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを作製した。
【0067】
[算術平均粗さRa、十点平均粗さRz、及び負荷長さ率tp(50%)の算出]
得られた製造例1~4のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの基材層を10mm角で切り出した。切り出した基材層の第1の表面について、レーザ顕微鏡を用いて観察を行い、算術平均粗さRa、十点平均粗さRz、及び負荷長さ率tp(50%)を算出した。なお、基準長さlは、算出した算術平均粗さRaから、JIS B0601:1994に基づき、800μmとした。結果を表1に示す。
【0068】
装置:形状測定レーザーマイクロスコープ VK-X100(株式会社キーエンス製)
視野:20倍レンズ使用
ピッチ:0.75μm
条件:室温(23℃)
解析手法:JIS B0601:1994に準拠
観察アプリケーション:VK-H1V2(株式会社キーエンス製)
モニター:算術平均粗さRa、十点平均粗さRz、負荷長さ率tp(50%)
N数:20~30
【0069】
[ピックアップの成功率の評価]
得られた製造例1~4のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムについて、ピックアップの成功率を評価した。
【0070】
<評価サンプルの作製>
(改質層形成)
半導体ウェハ(シリコンウェハ(厚さ750μm、外径12インチ))の片面に、バックグラインドテープを貼り付け、バックグラインドテープ付き半導体ウェハを得た。半導体ウェハのバックグラインドテープが貼り付けられた側とは反対側の面に対してレーザ光を照射して半導体ウェハ内部に改質層を形成した。レーザの照射条件は以下のとおりである。
【0071】
レーザ発振器型式:半導体レーザ励起Qスイッチ固体レーザ
波長:1342nm
発振形式:パルス
周波数:90kHz
出力:1.7W
半導体ウェハの載置台の移動速度:700mm/秒
【0072】
次いで、半導体ウェハのバックグラインドテープが貼り付けられた側とは反対側の面に対して、バックグラインディング及びポリッシングを行うことによって、厚さ30μmの半導体ウェハを得た。
【0073】
(ウェハラミネート)
半導体ウェハのバックグラインドテープが貼り付けられた側とは反対側の面に、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムのPETフィルムを剥がし、接着剤層を貼り付けた。
【0074】
(ダイシング)
次いで、改質層を有するダイシング・ダイボンディング一体型フィルム付き半導体ウェハをエキスパンド装置に固定した。次いで、ダイシングフィルムを下記条件でエキスパンドし、半導体ウェハ、接着剤層、及び粘着剤層を個片化した。
【0075】
装置:株式会社ディスコ製、商品名「DDS2300 Fully Automatic Die Separator」
クールエキスパンド条件:
温度:-15℃、高さ:9mm、冷却時間:90秒、速度:300mm/秒、待機時間:0秒
ヒートシュリンク条件:
温度:220℃、高さ:7mm、保持時間:15秒、速度:30mm/秒、ヒーター速度:7℃/秒
【0076】
(紫外線照射)
個片化された半導体ウェハの粘着剤層を照射強度70mW/cm2及び積算光量150mJ/cm2で中心波長365nmの紫外線を照射し、光硬化性粘着剤の硬化物を含む硬化粘着剤層を形成することによって後述のピックアップ性の評価サンプルを得た。
【0077】
<ピックアップ性の評価>
ダイボンダDB-830P(ファスフォードテクノロジ株式会社製(旧株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、ピン本数9本でピックアップ試験を行った。ピックアップ用コレットには、RUBBER TIP 13-087E-33(マイクロメカニクス社製、商品名、サイズ:10×10mm)を用いた。突上げピンには、EJECTOR NEEDLE SEN2-83-05(マイクロメカニクス社製、商品名、直径:0.7mm、先端形状:直径350μmの半円)を用いた。突上げピンは、ピン中心から等間隔に9本を配置した。
【0078】
(ピックアップの成功率)
上記ピックアップ試験において、ピックアップの成功率が99.5%以上であったものを「A」、99.5%未満であったものを「B」と評価した。結果を表1に示す。
【0079】
【0080】
表1に示すように、製造例1~4のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムは、同程度の算術平均粗さRa及び十点平均粗さRzを有していた。この中で、製造例1、2のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムは、負荷長さ率tp(50%)が15%以上であるという条件を満たしており、ピックアップの成功率の評価において極めて優れていることが判明した。これに対して、負荷長さ率tp(50%)が15%未満である製造例3、4のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムは、ピックアップの成功率が不充分であることが判明した。これらの結果から、本開示の品質管理方法が、使用予定のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの品質が維持されているものであるか否かを判断するのに有用であることが確認された。
【符号の説明】
【0081】
1…ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム、2…保護フィルム、4…改質層、10…基材層、10A…第1の表面、10B…第2の表面、20…粘着剤層、20ac…硬化粘着剤層、30、30a…接着剤層、42…ニードル、44…吸引コレット、50…接着剤層付き半導体チップ、60…支持基板、70…ワイヤーボンド、80…樹脂封止材、90…はんだボール、W1、W2…半導体ウェハ、H1…半導体ウェハW1の厚さ、H2…半導体ウェハW2の厚さ、100…半導体装置。