(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ワイヤハーネスの製造装置
(51)【国際特許分類】
H01B 13/012 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
H01B13/012 D
(21)【出願番号】P 2022177920
(22)【出願日】2022-11-07
(62)【分割の表示】P 2019125242の分割
【原出願日】2019-07-04
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 賢司
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-055974(JP,A)
【文献】特開2000-156127(JP,A)
【文献】特開平06-044839(JP,A)
【文献】特開2017-157561(JP,A)
【文献】特開2017-220287(JP,A)
【文献】特開平10-261328(JP,A)
【文献】国際公開第2018/225467(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一列に並べて配置された複数のディスプレイに長さ方向の大きさが実寸大の布線画像を表示させ、前記布線画像に沿って電線を布線しワイヤハーネスを製造するワイヤハーネスの製造装置であって、
前記複数のディスプレイのうち、前記複数のディスプレイの配列方向における、一方の最端部に位置する前記ディスプレイには、製造する前記ワイヤハーネスの情報
を表示
させ、他方に位置する前記ディスプレイには前記布線画像を表示させ、
前記ワイヤハーネスの情報が表示されるディスプレイ側から前記複数のディスプレイの配列方向に沿って、前記電線を引き出し可能に設けられた電線供給装置を備える、
ワイヤハーネスの製造装置。
【請求項2】
前記電線供給装置は、前記ディスプレイにおける、布線作業時の作業者側の縁部に沿って前記電線を引き出し可能に設けられている、
請求項1に記載のワイヤハーネスの製造装置。
【請求項3】
引き出した前記電線を受けるためのトレイを備え、
前記トレイは、並べられた前記複数のディスプレイに沿うように設けられている、
請求項1に記載のワイヤハーネスの製造装置。
【請求項4】
前記トレイは、前記ディスプレイにおける、布線作業時の作業者側の縁部に沿うように設けられている、
請求項3に記載のワイヤハーネスの製造装置。
【請求項5】
前記複数のディスプレイ上に設けられ、前記ディスプレイの表示部を保護するための板状の透明保護カバーを備え、
前記トレイは、前記透明保護カバーと一体に設けられている、
請求項3に記載のワイヤハーネスの製造装置。
【請求項6】
前記トレイは、引き出した前記電線の長さを測定するための寸法ゲージが設けられている、
請求項3に記載のワイヤハーネスの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道等の車両に用いられるワイヤハーネスは、複数の電線を束ねて構成されている。ワイヤハーネスを製造する際には、予め設定した電線長となるように切断された各電線を実寸大の布線図に沿って布線する布線作業、該布線作業によって布線した電線を束ね電線束とし所定位置に付属部品を取り付けてワイヤハーネスとして組立てる組立作業等の複数の作業を行う(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記布線作業に関し、特許文献1では、長方形状のディスプレイに表示した実寸大の布線画像(布線図)に沿って、予め設定した電線長に切断された各電線を布線する方法が開示されている。また、特許文献1では、前記布線作業を行う作業台に予め設定した電線長の電線を供給する方法として、電線搬送ロボットにより電線を自動で予め設定した電線長まで引出し搬送する点、電線切断機により電線を自動で切断する点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、作業台に予め設定した電線長の電線を供給する方法に関し、電線搬送ロボットを省略し、設備投資コストを抑えた場合、作業者による手動で予め設定した電線長の電線を作業台(より詳しくは作業台の作業面)に供給することが考えられる。このような場合、電線を予め設定した電線長に切断する切断作業の効率化が課題となる。
【0006】
そこで、本発明は、作業者による手動で予め設定した電線長の電線を作業台の作業面に供給する場合に、電線の切断作業を効率よく行うことが可能なワイヤハーネスの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、一列に並べて配置された複数のディスプレイに長さ方向の大きさが実寸大の布線画像を表示させ、前記布線画像に沿って電線を布線しワイヤハーネスを製造するワイヤハーネスの製造装置であって、前記複数のディスプレイの配列方向における、一方の最端部に位置する前記ディスプレイには、製造する前記ワイヤハーネスの情報が表示され、前記ワイヤハーネスの情報が表示されるディスプレイ側から前記複数のディスプレイの配列方向に沿って、前記電線を引き出し可能に設けられた電線供給装置を備える、ワイヤハーネスの製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ワイヤハーネスの製造装置において、作業者による手動で予め設定した電線長の電線を作業台の作業面に供給する場合に、電線の切断作業を効率よく行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るワイヤハーネスの製造装置の概略構成図である。
【
図2】作業台を示す図であり、(a)は分解斜視図、(b)は斜視図である。
【
図3】(a)は透明保護カバーと一体にトレイを形成した際の斜視図、(b)はその側面図であり、(c),(d)はトレイの一変形例を示す側面図である。
【
図5】(a)~(c)は、ディスプレイの表示例を示す図である。
【
図6】トレイに寸法ゲージを設けた場合の作業台の斜視図である。
【
図7】リングマークとマークテープを付した電線の端部を示す図である。
【
図8】導通チェック作業時の表示例を示す図である。
【
図10】ワイヤハーネスを製造する際における作業フロー及び制御フローの手順を示すフロー図である。
【
図11】ワイヤハーネスを製造する際における作業フロー及び制御フローの手順を示すフロー図である。
【
図12】ワイヤハーネスを製造する際における作業フロー及び制御フローの手順を示すフロー図である。
【
図13】ワイヤハーネスを製造する際における作業フロー及び制御フローの手順を示すフロー図である。
【
図15】(a),(b)は、始端位置表示及び終端位置表示の表示方法の変形例を説明する図である。
【
図16】始端位置表示及び終端位置表示の表示方法の変形例を説明する図である。
【
図17】(a)~(c)は、始端位置表示及び終端位置表示の表示方法の変形例を説明する図である。
【
図18】(a),(b)は、始端位置表示及び終端位置表示の表示方法の変形例を説明する図である。
【
図19】(a),(b)は、始端位置表示及び終端位置表示の表示方法の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係るワイヤハーネスの製造装置の概略構成図である。本実施の形態で製造するワイヤハーネスは、例えば、鉄道車両の機器間配線に用いられるものである。
【0012】
図1に示すように、ワイヤハーネスの製造装置10は、長方形状の表示部141と当該表示部141の周囲を取り囲むように配置されたベゼル部142とを有する複数の長方形状のディスプレイ14を左右方向に略水平状に一列に配置し、該一列に配置した複数のディスプレイ14に長さ方向(
図1で言えば、左右方向)の大きさが実寸大の布線画像(布線図)143を表示させ、布線画像143に沿って、予め設定した電線長に切断された各電線を布線しワイヤハーネスを製造する装置である。
【0013】
ワイヤハーネスの製造装置10は、製造対象のワイヤハーネスに用いられる電線11がストックされる電線ストック部12と、複数のディスプレイ14を略水平状に一列に配置するための作業台15と、ディスプレイ14の表示制御等を行う制御装置16と、を備えている。
【0014】
電線11は、線状の導体の外周に絶縁体を被覆したものであるが、電線11は、例えば、LANケーブルのように、複数本の線状の導体の外周にそれぞれ絶縁体を被覆し、それらを外部シースで一括被覆し一体化したものであってもよい。ここで、絶縁体は、絶縁性の樹脂からなり、1層もしくは複数層であってもよい。外部シースは、絶縁体の間を埋めるように充実式押出しにより形成されてもよいし、チューブ状であってもよい。
【0015】
本実施の形態では、電線ストック部12は、製造対象のワイヤハーネスに用いられ、予め設定した電線長に切断される電線11がリール121にドラム状に巻き付けられることによりストックされる場所であり、ドラム状の電線11の先端部をトレイ123に向けて手動で引き出し可能に構成されている。より具体的には、電線ストック部12は、例えば、電線11が巻き付けられたリール121と、リール121を回転可能に支持する支持部材122と、を備えている。リール121には、巻き付けられている電線11の品種を識別するための電線識別コード(不図示)が付されている。
【0016】
作業台15は、その上面は、略水平状に一列に配置した複数のディスプレイ14が設けられ、平面視で長方形状の平面であり、布線画像143等の各種画像が表示される表示面としての役割だけでなく、作業者による各種作業(前記布線作業や前記組立作業等)を行うための作業面としての役割もなしている。なお、本実施の形態に係るワイヤハーネスの場合、鉄道車両用のワイヤハーネスであるため、その長さは例えば30mと非常に長い。そこで、本実施の形態に係る作業台15は、24台のディスプレイ14を一列に配置する構成とした。
【0017】
なお、作業台15に並べるディスプレイ14の数はこれに限定されない。また、作業台15の数も、本実施の形態のように、1台でもいいし、複数台、一列に配置する構成でもよい。ただし、作業台15を複数台とする場合、後述するディスプレイ14および透明保護カバー144は、作業台15と作業台15との間で切り離し(分離)ができるように、その数および配置を調整した方がよい。このように構成することにより、工場内における製造エリアのレイアウト変更が行い易いという効果がある。
【0018】
また、ディスプレイ14の配置についても、図示のもの(一列に直線状に配置する構成)に限定されず、製造するワイヤハーネスの形状に応じて適宜変更可能である。例えば、ディスプレイ14を縦横にマトリクス状に配置してもよいし、一列にL字状、U字状、またはW字状に配置してもよい。つまり、ディスプレイ14の配置における上記のような自由度は、製造対象のワイヤハーネスの長さ、工場内における製造エリアの広さ、作業者の配置等の様々な要因を考慮した上で決めることができるため、ワイヤハーネスの製造における効率化の面で非常に有効である。
【0019】
ディスプレイ14は、例えば液晶ディスプレイ等からなる。
図2(a),(b)に示すように、作業台15は、ディスプレイ14を収容するための凹状の収容部151aを有するフレーム151を有し、フレーム151の上方からディスプレイ14を収容部151aに収容して構成される。ディスプレイ14上には、ディスプレイ14の表示部141を保護するための板状の透明保護カバー144が設けられている。透明保護カバー144は、アクリル等の透明な板状部材からなる。
【0020】
また、ディスプレイ14に設けられる透明保護カバー144上では、電線ストック部12から引き出され、予め設定した電線長に切断された電線11を、ディスプレイ14に表示された布線画像143に沿わせるように布線し、該布線した電線11をテープ巻き、保護材の装着等を適宜行うことで、ワイヤハーネスとして束ねられる。つまり、透明保護カバー144がディスプレイ14に設けられる場合は、その上面が作業台15の作業面となる。
【0021】
また、透明保護カバー144は、ディスプレイ14上に、表示部141とベゼル部142間の段差を覆うように設けられている。透明保護カバー144は、ディスプレイ14の表示部141に傷がつかないように保護する役割と、布線する電線11が表示部141とベゼル部142間の段差に干渉して電線11に傷がつくことを抑制する役割とを果たしている。
【0022】
複数のディスプレイ14に1枚の透明保護カバー144を設けてもよいが、この場合、傷ついた透明保護カバー144を交換する際に無駄が多くなり、また故障したディスプレイ14を交換する際にも手間がかかってしまう。そこで、本実施の形態では、ディスプレイ14毎に個別に透明保護カバー144を設けている。透明保護カバー144は、上方に取り外すことができる。透明保護カバー144を取り外すことで、ディスプレイ14も、フレーム151から上方に取り外すことができる。よって、作業スペースが狭い場合であっても、透明保護カバー144やディスプレイ14の交換が容易である。つまり、透明保護カバー144やディスプレイ14に関し、作業台15の収容部151aの上面に対し上方から着脱可能(取り外し可能)に構成されるので、工場内の製造エリアに複数列の作業台15を並べた際、たとえ、作業台15間の通路幅(作業スペース)が狭くなっても、透明保護カバー144やディスプレイ14の交換作業がし易いという効果がある。なお、ディスプレイ14がマトリクス状に配置されている場合であっても、透明保護カバー144を適用できる。
【0023】
ディスプレイ14の配列方向における透明保護カバー144の長さは、ディスプレイ14と略同等とされる。また、ディスプレイ14の配列方向と垂直な幅方向における透明保護カバー144の幅は、ディスプレイ14よりも若干大きくされる。幅方向においてディスプレイ14から突出した透明保護カバー144の両端部をフレーム151の縁部151bにねじ等により固定することで、透明保護カバー144がフレーム151に固定されている。
【0024】
なお、透明保護カバー144は、フレーム151の縁部151bに当接しているが、ディスプレイ14のベゼル部142に対しては、当接していてもよいし、当接していなくともよい。本実施の形態では、透明保護カバー144は、ディスプレイ14のベゼル部142に当接させている。このように構成することにより、1枚の長方形状の透明保護カバー144の四辺がロ字状のベゼル部142に支えられる格好となるため、作業面となる透明保護カバー144の上面に載置した電線11の重みや透明保護カバー144の上面に対する作業者による押圧等によって、透明保護カバー144が凹むという歪みが発生し難くなるという効果がある。
【0025】
透明保護カバー144同士の接続部は、ベゼル部142上に位置することが望ましい。これは、透明保護カバー144同士の接続部が表示部141上にあると、後述するコードリーダ19によるコード読込みが困難となる場合があるためである。また、隣り合う透明保護カバー144同士の接続部には、透明な保護テープが設けられていてもよい。保護テープは、透明保護カバー144同士の接続部に、製造公差等により段差が発生したり、あるいは何らかの理由で透明保護カバー144の端部同士が離間してしまった場合に、布線する電線11が透明保護カバー144の端部に干渉して電線11に傷がついてしまうことを抑制する役割を果たす。
【0026】
作業者の目の疲労を抑制するために、透明保護カバー144は、波長380nm以上500nm以下のブルーライト光を減衰あるいは遮断するブルーライトカット層を有していてもよい。また、透明保護カバー144は、その表面に、外部照明等の照り返しを抑制するための反射抑制層を有していてもよい。また、本実施の形態では、透明保護カバー144は、アクリル等の透明な板状部材であるが、シート状の透明保護シートでもよいし、その両方を用いて積層構造としてもよい。透明保護カバー144の代わりに透明保護シートを採用した場合は、ディスプレイ14の表示部141に密着させることができる。
【0027】
また、作業台15には、電線ストック部12のリール121から引き出した電線11を受け入れる、または予め設定した電線長の電線を作業台15の作業面に供給する前に一時的にストックするためのトレイ123が設けられている。なお、本実施の形態では、トレイ12は、作業台15の一部であり、一列に並べられた複数の長方形状のディスプレイ14に沿うように、ディスプレイ14の配列方向に沿って設けられている。また、本実施の形態では、トレイ123は、ディスプレイ14(作業台15)における、布線作業時の作業者側(布線作業時の作業スペース側)の縁部(
図1における下側の縁部)に沿うように設けられている。つまり、トレイ123は、ディスプレイ14の中央部よりも、布線作業時の作業者側に設けられている。本実施の形態では、トレイ123は、フレーム151の作業スペース側の側面に固定されている。これにより、電線ストック部12から引き出された電線11が取り扱い易くなり、作業効率が向上する。
【0028】
本実施の形態では、長手方向に垂直な断面形状がV字状のトレイ123を用いた。V字状のトレイ123を用いることで、電線11の重さによって電線11がトレイ123の底部に真っ直ぐな状態で保持されるため、電線11を真っ直ぐに引き出し易くなる。ただし、トレイ123の断面形状はこれに限定されるものではなく、適宜変更可能である。また、トレイ123は、その長手方向において、複数に分割されていてもよいし、分割しないで1台または複数台の作業台15に対し1本のトレイ123を設ける構成としてもよい。なお、トレイ123を長手方向に複数に分割する場合、作業台15と作業台15との間で切り離し(分離)ができるように、1台または複数台(例えば、2台)の作業台15に対応する長さで、トレイ123の長さを設定する構成としてもよい。このように構成することにより、工場内における製造エリアのレイアウト変更が行い易いという効果がある。
【0029】
また、トレイ123は、透明保護カバー144と一体に設けられていてもよい。例えば、
図3(a),(b)に示すように、透明保護カバー144の縁部表面に、アクリル等の透明部材からなり、V字状の溝123aが形成された棒状(条状)の透明部材をトレイ123として設けてもよい。この場合、個々の透明保護カバー144毎に(つまりディスプレイ14毎に)分割してトレイ123が設けられることになる。また、
図3(c)に示すように、透明保護カバー144の縁部に、一対の線状の突起123bを平行に設けることで、トレイ123を構成してもよい。さらに、
図3(d)に示すように、透明保護カバー144の縁に沿うように1つの線状の突起123bを設け、当該突起123bをガイドとして電線11を引き出すようにトレイ123を構成してもよい。なお、
図3におけるトレイ123は、別部材で形成し、接着剤等で透明保護カバー144に設け一体としているが、透明保護カバー自体を成形し、透明保護カバー144のトレイ部として一体としてもよい。
【0030】
図1に戻り、制御装置16は、布線画像データ171、作業レシピ情報172等を記憶する記憶部17を有している。布線画像データ171は、ディスプレイ14に表示する布線画像143の画像データである。作業レシピ情報172は、製造対象のワイヤハーネスを製造する際に布線する各電線11に関する情報であって、布線作業の順序(布線ステップ順)に並べたデータベースである。また、作業レシピ情報172は、ワイヤハーネス毎に設定されている。なお、作業レシピ情報172は、データベースにおいて、本実施の形態のように、布線作業の順序に並べていなくてもよく、各電線11に布線作業の順序を表す布線ステップ番号(
図4で言えば、「Step No.」)が記憶してあればよい。
【0031】
図4に示すように、作業レシピ情報172では、例えば、布線する順序毎に、電線11の名称(Cable name)、電線11の電線長(Cut Length)、電線11の品種を表す製造番号(Cable P/N No.)が設定されている。また、作業レシピ情報172では、各電線11の両端部それぞれについて(From及びTo)、接続対象の端子やコネクタを識別するための情報であるマークインフォ(End Mark Info)、端部の位置を示し接続先のエリア(接続先の機器等)を表すエリア(Area)、エリアラベルキャラクター(Area Mark Info)等が設定されている。
【0032】
さらに、本実施の形態では、作業レシピ情報172は、後述する識別コード(バーコード)の表示位置を示す座標情報を含んでいる。作業レシピ情報172は、布線する電線11の両端部近傍の2つの座標情報を含んでいる。
図4におけるX-From及びY-Fromは、布線する電線11の一方の端部における識別コードの表示位置を示すX座標及びY座標である。
図3におけるX-To及びY-Toは、布線する電線11の他方の端部における識別コードの表示位置を示すX座標及びY座標である。以下、電線11の一方の端部(
図1、5における左側の端部)を電線11の左側端部といい、電線11の他方の端部(
図1、5における右側の端部)を電線の右側端部という。X座標、Y座標は、例えば、
図1、5における表示部141の左下端を原点(0.0)とし、
図1、5における長手方向に沿う右側方向をX座標の正方向、
図1、5における短手方向に沿う上側方向をY座標の正方向とする座標である。なお、X座標、Y座標の原点は他の点としてもよく、X座標の正方向、Y座標の正方向は他の方向としてもよい。また、作業レシピ情報172の具体的な内容については、これに限定されるものではなく、適宜設定可能である。
【0033】
制御装置16は、作業台15のディスプレイ14の表示制御を行う表示制御部161と、電線11の端部に取り付ける識別票をプリンタ18に印刷する印刷制御部163と、各電線11の導通チェック処理を行う導通チェック部164と、を有している。制御装置16には、作業台15のディスプレイ14、コードリーダ19、プリンタ18、及び導通チェック用のテスタ20が接続されている。
【0034】
表示制御部161は、記憶部17に記憶された布線画像データ171を基に、複数のディスプレイ14のそれぞれに実寸大の布線画像143を表示する。表示制御部161から出力された布線画像データ171は、グラフィックカード167にて、2台のディスプレイ14毎に分割され、さらに、セパレータ168にて2分割されて、各ディスプレイ14の表示部141に表示される。
【0035】
また、本実施の形態では、表示制御部161は、作業レシピ情報172を参照して、ディスプレイ14に、電線11の布線順にしたがって識別コードを順次表示させるように構成されている。また、表示制御部161は、布線が終わった電線11に関する識別コードの表示を消去する。すなわち、表示制御部161は、現在、布線されている電線11に関する識別コードのみを表示する。
【0036】
図5(a)~(c)に示すように、本実施の形態では、表示制御部161は、布線を行う電線11の一方の端部(本実施の形態における左側端部)を特定可能なバーコード(ポップアップバーコード)を生成し、生成したバーコード146aを、ディスプレイ14の布線画像143における電線11の一方の端部(本実施の形態における左側端部)の付近に表示する。また、表示制御部161は、布線を行う電線11の他方の端部(本実施の形態における右側端部)を特定可能なバーコード(ポップアップバーコード)を生成し、生成したバーコード146bを、ディスプレイ14の布線画像143における電線11の他方の端部(本実施の形態における右側端部)の付近に表示する。バーコード146aは、作業レシピ情報172の文字情報である、
図4のFROMの”End Mark Info.”から生成される。バーコード146bは、作業レシピ情報172の文字情報である
図4のTOの”End Mark Info.”から生成される。また、バーコード146a,146bは、作業レシピ情報172に含まれる他の情報から生成されてもよく、複数の情報を含んでいてもよい。表示制御部161は、作業レシピ情報172を参照し、作業レシピ情報172の座標情報で示される表示位置(
図4のX-From,Y-Fromの座標位置)に、布線画像143上に重なるように、布線する電線11のバーコード146aを表示させ、作業レシピ情報172の座標情報で示される表示位置(
図4のX-TO,Y-TOの座標位置)に、布線画像143上に重なるように、布線する電線11のバーコード146bを表示させる。一方の端部に表示されるバーコード146aと他方の端部に表示されるバーコード146bは、異なるバーコードであり、一方の端部と他方の端部とが区別されるようになっている。また、バーコード146a,146bは、作業レシピ情報のstepNo.から生成されてもよい。この場合、一方の端部に表示されるバーコード146aと他方の端部に表示されるバーコード146bは、同じバーコードになる。
【0037】
このように、本実施の形態では、作業レシピ情報172内に電線11の両端部に対応する2つの座標情報が含むようにしている。表示制御部161は、2つの座標情報で示される表示位置、すなわち布線画像143における電線11の両端部の付近に、それぞれ識別コードとしてのバーコード146a,146bを表示する。
【0038】
なお、作業レシピ情報172に予めバーコード146の画像情報を記憶させておき、その画像情報を取得して指定座標にバーコード146を表示するよう表示制御部161を構成してもよい。また、表示制御部161が表示する識別コードは、バーコード146に限らず、例えば二次元コード(QRコード(登録商標))であってもよい。
【0039】
布線画像143は、電線11の長さ(電線画像11aの長さ)が実寸大となるようにディスプレイ14に表示されている。なお、電線画像11aの太さについては、実寸より太くても、細くともよい。電線画像11aを実寸よりも太く表示することで、電線11を布線する際に電線画像11aが電線11により隠れてしまうことが抑制され、布線作業を行いやすくなる。
【0040】
本実施の形態では、表示制御部161は、作業レシピ情報172に設定された電線長を基に、布線する電線11毎に、電線11を引き出した際の電線11の先端部の位置を示す始端位置表示147をディスプレイ14に表示する電線端部位置表示部162を有している。本実施の形態では、電線端部位置表示部162は、引き出した電線11の切断位置(終端位置)を示す終端位置表示148を、ディスプレイ14に表示するよう構成されている。
【0041】
これにより、作業者は、手動で電線11を引き出す際に、電線11の先端部を始端位置表示147に合わせ、当該電線11を終端位置表示148の位置で切断することで、容易に規定の長さの電線11を得ることが可能になる。電線11はトレイ123上で引き出されるため、始端位置表示147及び終端位置表示148は、ディスプレイ14の表示部141におけるトレイ123に近い側の縁部(
図5(a)~(c)における下側の縁部)に表示されることが望ましい。なお、
図3(a)~(d)のように透明保護カバー144と一体にトレイ123を設ける場合には、トレイ123と重なる位置に始端位置表示147及び終端位置表示148を表示するとよい。
【0042】
本実施の形態では、始端位置表示147及び終端位置表示148を矢印により表示したが、これに限らず、始端位置表示147及び終端位置表示148の具体的な表示は適宜変更可能である。また、電線11の切断後に当該電線11を布線し易いように、布線する電線11の電線画像11aの両端部の近傍に、始端位置表示147及び終端位置表示148が表示されることが望ましい。この場合、例えば、作業レシピ情報172に含まれる電線11の端部の座標情報や、バーコード146の表示座標を基に、布線する電線11毎に、始端位置表示147及び終端位置表示148の表示位置を決定するようにしてもよい。つまり、布線する電線11毎に、始端位置表示147及び終端位置表示148の表示位置を変更可能としてもよい。これにより、切断後の電線11の布線作業が容易になる。
【0043】
本実施の形態では、電線端部位置表示部162は、作業レシピ情報172を参照して、布線する電線11のX-TOの位置に始端位置表示147を表示し、X-TOとCut Lengthより求められた位置(本実施の形態では、X-TOの値よりCut Lengthの値を減算した位置)に終端位置表示148を表示する。すなわち、表示制御部161は、布線する電線11の一方の端部(右側端部)に対応する位置に始端位置表示147を表示し、始端位置表示147の表示位置と、当該電線11の電線長より求められた位置に終端位置表示148を表示する。これにより、布線画像143における第n電線の右側端部の位置と、第n電線の始端位置表示147が対応するため、作業者による電線布線作業が容易になる。始端位置表示147及び終端位置表示148は、ディスプレイ14におけるトレイ123側の縁部に表示される。
【0044】
図5(a)~(c)の例では、まず、中央の電線11を布線する際に、
図5(a)に示すように、当該電線11の右側端部に対応する位置(X-TOの位置)に始端位置表示147が表示され、X-TOの値よりCut Lengthの値を減算した位置に終端位置表示148が表示される。なお、電線11と始端位置表示147を結ぶ破線は、電線11の端部と始端位置表示147との対応関係を示す仮想的な線であり、ディスプレイ14には表示されない。ただし、電線11と始端位置表示147を結ぶ破線をディスプレイ14に表示することで、電線11の端部と始端位置表示147との対応関係を明確としてもよい。なお、電線11と始端位置表示147を結ぶ線は破線でなくてもよい。さらに、電線11の左側端部と終端位置表示148とを結ぶ線(破線等)を表示し、電線11の左側端部と終端位置表示148との対応関係を明確としてもよい。
【0045】
同様に、図示下側の電線11を布線する際には、
図5(a)に示すように、当該電線11の右側端部に対応する位置(X-TOの位置)に始端位置表示147が表示され、X-TOの値よりCut Lengthの値を減算した位置に終端位置表示148が表示される。なお、始端位置表示147または終端位置表示148が電線画像11aに重なる場合には、始端位置表示147及び終端位置表示148の位置をずらして表示してもよい。同様に、図示上側の電線11を布線する際には、
図5(c)に示すように、当該電線11の右側端部に対応する位置(X-TOの位置)に始端位置表示147が表示され、X-TOの値よりCut Lengthの値を減算した位置に終端位置表示148が表示される。
【0046】
また、
図6に示すように、電線11を引き出す際の目安とするために、トレイ123には、寸法ゲージ(寸法を示す目盛り)123cが設けられていてもよい。なお、寸法ゲージ123cは、トレイ123の外部に設けられていてもよく、またディスプレイ14に表示されてもよい。さらに、電線供給装置12は、リール121から引き出した電線11の長さを測定可能な手段を有していてもよく、またフィーダ等の電線11の送り出し機構を有していてもよい。
【0047】
印刷制御部163は、電線11の端部に取り付ける識別票をプリンタ18に印刷する。本実施の形態では、電線11の両端に識別票を取り付けるため、作業台15の両端部にそれぞれプリンタ18を配置している。また、本実施の形態では、プリンタ18を用いて、識別票として、電線11の端部の接続先を特定可能な文字情報(
図4の「End Mark Info.」)が付されたリングマーク、及び、電線11の端部の接続先を特定可能な二次元コード(QRコード(登録商標))と文字情報(
図4の「End Mark Info.」)が付されたマークテープを印刷する。なお、コードリーダ19とテスタ20についても、電線11の両端で作業ができるように、2つずつ備えられている。
【0048】
図7に示すように、プリンタ18で印刷されたリングマーク181及びマークテープ182は、各電線11の両端部にそれぞれ付される。本実施の形態では、マークテープ182に二次元コード(QRコード(登録商標))182aを印刷しているが、マークテープ182にバーコードを印刷してもよい。また、電線11の分岐部分の近傍には、当該分岐部分から延出された電線11の接続先のエリアを示すエリアラベルテープ183が取り付けられる。エリアラベルテープ183には、マークテープ182と同様に、電線11の接続先のエリアを特定可能な二次元コード183a(QRコード(登録商標))と文字情報(
図4の「Area Mark Info.」)が印刷されている。本実施の形態では、エリアラベルテープ183に二次元コード183a(QRコード(登録商標))を印刷しているが、エリアラベルテープ183にバーコードを印刷してもよい。マークテープ182及びエリアラベルテープ183は、二次元コード182a,183aが印刷された粘着シールであり、その一部を電線11に巻き付けるようにして電線11に取り付けられる。マークテープ182の二次元コード182aは、作業レシピ情報172の文字情報(
図4の「End Mark Info.」)から生成される。エリアラベルテープ183の二次元コード183aは、作業レシピ情報172の文字情報(
図4の「Area Mark Info」)から生成される。また、二次元コード182a、及び二次元コード183aは、作業レシピ情報172に含まれる複数の情報も含んでいてもよい。
【0049】
リングマーク181は、リング状の部材であり、内周に電線11を挿入することで電線11に取り付けられる。本実施の形態では、リングマーク181の内径は電線11の外径よりも大きく形成され、電線11の長手方向に移動可能に取り付けられている。リングマーク181よりも電線11の端部側にマークテープ182が位置することにより、電線11の長手方向に移動可能なリングマーク181が電線11の端部より抜けてしまうことが抑制されている。
【0050】
なお、本実施の形態では、識別票としてリングマーク181及びマークテープ182を用いたが、例えばリングマーク181を省略してマークテープ182のみとしてもよい。また、識別票として、ICタグ、RFIDタグ等を用いることも当然に可能である。さらに、マークテープ182、リングマーク181、及びエリアラベルテープ183に印刷される情報は、電線11の外周上(外部シースの外周上)に印刷されていてもよい。
【0051】
導通チェック部164は、電線11の布線後に各電線11の導通をチェックするものであり、電線11の両端部において、電線11の導体にテスタ20のプローブを接触させた際の導体抵抗を求め、導体抵抗が所定の正常範囲内にあるかを判定することで、導通チェックを行うものである。本実施の形態では、導通チェック部164は、電線11の布線後に、表示制御部161を介してディスプレイ14に導通チェックの指示を表示し、導通チェック後に表示を消去するように構成されている。
【0052】
図8に示すように、導通チェック表示146cは、バーコード146と一部重なり合うように表示され、バーコード146の位置は作業者が確認できるものの、バーコード146の読み取りができない状態とされる。これにより、導通チェック前にバーコード146の読み取りがなされ次工程へと進んでしまうことが抑制される。また、バーコード146の一部が作業者に視認できるため、導通チェック後のバーコード146の読み取りをスムーズに行うことが可能になる。本実施の形態では、導通チェック表示146cとして、「Check Conductivity, black」といった表示を行っており、導通チェックを行う電線11の色(外皮の色、ここではblack)を提示することで、導通チェックの際のミスの抑制を図っている。
【0053】
図1及び
図5(a)~(c)に示されるように、最も基準端部側に配置されたディスプレイ14には、製造するワイヤハーネスの情報や、作業者の情報、製造手順等を含む製造情報が表示される製造情報画面143aが表示され、ワイヤハーネスの画像は表示されないようになっている。この製造情報画面143aは、布線画像データ171の一部であってもよいし、布線画像データ171とは別に作成されたものであってもよい。
【0054】
また、制御装置16は、コードリーダ19によりバーコード146が読まれた時刻を進捗情報173として記憶部17に記憶させる時刻記憶部165を有している。進捗情報173は、後述する管理用サーバ21に送信され、進捗の情報管理に用いられる。また、管理用サーバ21の記憶部22には、工場内の製造エリアに設置されている1つもしくは複数のワイヤハーネスの製造装置10のそれぞれが製造するワイヤハーネスの種類および製造順序を特定可能なデータベースである製造予定情報223が記憶されている。管理用サーバ21の記憶部22で複数のワイヤハーネスの製造装置10の製造予定情報223を一括で記憶することにより、それぞれのワイヤハーネスの製造装置10において、製造予定情報を変更する必要がなく、製造予定情報の管理が容易になる。
【0055】
なお、制御装置16の記憶部17にも製造予定情報174が記憶されていてもよい。本実施の形態では、制御装置16の記憶部17にも製造予定情報174を記憶するように構成した。この場合、制御装置16の記憶部17には、制御装置16が接続されているワイヤハーネスの製造装置10で製造するワイヤハーネスの種類および製造順序を特定可能な情報のみが製造予定情報174として記憶される。
【0056】
また、制御装置16は、コードリーダ19により読み込まれた識別票(マークテープ182の二次元コード182a)のコード情報と、ディスプレイ14に表示された識別コード(バーコード146のコード情報とが対応しているかを判定する対応判定部166を備えている。本実施の形態では、マークテープ182の二次元コード182aのコード情報と、ディスプレイ14に表示されたバーコード146のコード情報とを一致させるようにしており、対応判定部166は、コードリーダ19により読み込んだ二次元コード182aのコード情報と、バーコード146のコード情報とが一致しているかを判定するように構成されている。
【0057】
対応判定部166は、判定の結果、二次元コード182aとバーコード146のコード情報が一致しなかった場合には、表示制御部161を介して、ディスプレイ14にアラート情報を表示するように構成されている。なお、例えば作業台15の近傍に音や光等により警報を発する警報装置を備え、二次元コード182aとバーコード146コード情報が一致しなかった場合に警報装置を作動させるように対応判定部166を構成してもよい。
【0058】
時刻記憶部165は、時計機能を内蔵しており、電線11を布線する毎に、電線11を布線した後の時刻を記憶部17に記憶させる。本実施の形態では、時刻記憶部165は、コードリーダ19により識別コード(バーコード146が読まれた時刻を記憶部17に記憶させる。時刻記憶部165は、対応判定部166の判定の結果、二次元コード182aのコード情報と、バーコード146のコード情報とが一致していると判定されたときに、バーコード146が読まれた時刻を記憶部17に進捗情報173として記憶する。
【0059】
なお、これに限らず、対応判定部166によって、二次元コード182aのコード情報とバーコード146のコード情報とが一致していると判定された時刻を、識別コードが読まれた時刻として記憶するようにしてもよい。つまり、「識別コードが読まれた時刻」とは、厳密に識別コードが読み込まれた時刻である必要はなく、識別コードが読まれたことにより発生する所定の判定処理等(本実施の形態においては、二次元コード182aのコード情報とバーコード146のコード情報とが一致していると判定する処理)が終了した時刻を、「識別コードが読まれた時刻」として記憶してもよい。
【0060】
また、ワイヤハーネスの製造装置10は、制御装置16と相互に通信可能に設けられた管理用サーバ21を備えている。
図1では、制御装置16を1つのみ示しているが、実際には、制御装置16は、製造ライン毎(作業台15毎)に設けられており、管理用サーバ21は、各製造ラインの制御装置16と相互に通信可能に設けられている。
【0061】
管理用サーバ21は、布線画像データの作成、及び進捗状況の管理を行うものであり、演算素子、メモリ、インターフェイス、ハードディスク、ソフトウェア等を適宜組み合わせて実現されている。管理用サーバ21の記憶部22には、工場内で製造する全ての種類のワイヤハーネスの布線画像データ171及び作業レシピ情報172が記憶されている。各製造ラインの制御装置16には、当該製造ラインに割り振られたワイヤハーネスの布線画像データ171及び作業レシピ情報172が、管理用サーバ21より送信される。また、管理用サーバ21の記憶部22には、作業者ID情報222が記憶されている。作業者ID情報222とは、工場内の製造エリアに設置されている1つもしくは複数のワイヤハーネスの製造装置10ごとに、作業が許可された作業者を特定するための作業者IDが登録されているデータベースである。なお、作業者ID情報222は、制御装置16の記憶部17に記憶されていてもよく、この場合は、作業者ID情報222は、当該制御装置16が接続されているワイヤハーネスの製造装置10での作業が許可された作業者を特定するための作業者IDのみが登録されている。記憶部17に作業者ID情報222を記憶する場合、当該制御装置16に接続されているワイヤハーネスの製造装置10での作業が許可された作業者を特定するための作業者IDのみが登録されことで、記憶部17のデータ容量を小さくすることができる。なお、作業者ID情報222では、作業者名が作業者IDに関連付けられて登録されていてもよい。
【0062】
管理用サーバ21は、進捗状況管理部211を有している。進捗状況管理部211は、制御装置16の記憶部17に記憶された時刻、すなわち進捗情報173を取得し、取得した進捗情報173を管理用サーバ21の記憶部22に記憶すると共に、進捗情報173を基にワイヤハーネスの製造の進捗状況を求め、求めた進捗状況を管理用表示器23に表示する。本実施の形態では、管理用表示器23として、管理用サーバ21に取り付けられたモニタを用いたが、管理用サーバ21とは別体に設けられたモニタ、例えば工場等に設けられた大画面のモニタを、管理用表示器23として用いてもよい。
【0063】
より具体的には、進捗状況管理部211は、進捗情報を基に、各製造ラインにおける布線済みの電線11の本数、未布線の電線11の本数、布線する電線11の総本数に対する布線済みの電線11の本数の割合、予め設定された標準作業時間(目標作業時間)、作業開始からの経過時間等を求め、進捗状況表示画面として管理用表示器23に表示する。
【0064】
図9は、進捗状況表示画面の一例である。
図8に示すように、進捗状況表示画面51では、例えば、工場の製造ラインごとに、進捗状況を表示するように構成されている。ここでは、一例として、ラインA,Bの2つの製造ラインの個別進捗状況表示部52を表示する場合を示しているが、表示する製造ライン数はこれに限定されない。また、各個別進捗状況表示部52の表示形態についても、例えば棒グラフや円グラフを用いて進捗状況を表示する等、様々な表示形態を採用することができる。各個別進捗状況表示部52の表示内容についても、図示のものに限定されず、例えば、標準作業時間(目標作業時間)に対する経過時間の割合を表示する等、適宜設定可能である。
【0065】
図10~13は、ワイヤハーネスの製造装置10によって、ワイヤハーネスを製造する際における作業フロー及び制御フローを示すフロー図である。
【0066】
図10~13に示すように、まず、表示制御部161の電源が入ると、表示制御部161が、記憶部17に記憶された布線画像データ171を基に、ディスプレイ14に布線画像143を表示する(ステップS301)。この際、表示制御部161は、記憶部17の製造予定情報174に設定された種類のワイヤハーネスに対応する布線画像データ171を基に、ディスプレイ14に布線画像143を表示する。なお、どの種類のワイヤハーネスに対応する布線画像データ171を基に、ディスプレイ14に布線画像143を表示するかについては、製造予定情報174を基に、ディスプレイ14に製造予定のワイヤハーネスの種類を複数表示させ、作業者が(制御装置16に接続されたマウス、キーボード等の入力装置により)選択できるようにしてもよい。その後、作業者は、ステップS101にて、コードリーダ19で作業者IDをスキャンする。作業者IDとは、作業者毎に割り当てられた作業者を特定するためのコードであり、例えば名札等にバーコードとして表示されている。スキャンした作業者IDの情報は、記憶部17に記憶される。制御装置16は、この際、表示制御部161が、ディスプレイ14に、作業者IDを読み込む指示を表示するようにしてもよい。
【0067】
作業者IDがスキャンされると、ステップS201にて、制御装置16は、入力された作業者IDが、制御装置16が接続されているワイヤハーネスの製造装置10での作業を許可された作業者であるか否かを判定する。作業者IDを判定する方法については、記憶部22の作業者ID情報222に作業者IDを予め登録しておき、当該作業者ID情報222を参照することで、スキャンされた作業者IDが作業者ID情報222に登録されている作業者IDのいずれかと一致するかの判定を行う。ステップS201でスキャンされた作業者IDが作業者ID情報222に登録されている作業者IDのいずれとも一致しない場合、スキャンされた作業者IDが作業者ID情報222に登録されている作業者IDのいずれかと一致するまでステップS101、S201を繰り返す。なお、本実施の形態では、作業者が左側に一人、右側に一人の計二人が配置されているが、作業者の数は、一人であっても、三人以上であってもよい。また、本実施の形態では、左側の作業者の作業者IDのみをスキャンするが、右側の作業者の作業者IDのみをスキャンしても、両方の作業者の作業者IDをスキャンしてもよい。
【0068】
その後、ステップS202にて、布線ステップ番号(布線順)を表す変数nに1を代入する。その後、表示制御部161が、布線画像143上にオーバーラップするように、布線画像143における布線する電線11の両端部の近傍それぞれに第n電線(ここでは第1電線)のバーコード146a、146bをディスプレイ14に表示する(ステップS302)。なお、バーコード146aは、作業レシピ情報172を参照して、nに対応するStepNo.のFROMの”End Mark Info.から生成され、X-From,Y-Fromの座標位置に表示される。バーコード146bは、作業レシピ情報172を参照して、nに対応するStepNo.のTOの”End Mark Info.から生成され、X-TO,Y-TOの座標位置に表示される。
【0069】
その後、ステップS102にて、リール121に近い位置の左側の作業者は、ディスプレイ14に表示された第n電線のバーコード146aをスキャンする。その後、制御装置16は、ステップS203にて、作業レシピ情報172を基に、第n電線のバーコード146aから第n電線の製造番号を特定する。その後、ステップS303にて、表示制御部161が、リール121のセット指示をディスプレイ14に表示する。作業者は、ステップS103にて、リール121のセット作業を行う。なお、本実施の形態では、ステップS102にて、リール121に近い位置の左側端部のバーコード146aのみをスキャンしたが、バーコード146a、146bの両方をスキャンするようにしてもよい。また、ステップS203では、第n電線のバーコード146a,146bから第n電線の製造番号を特定したが、S102をトリガとして、布線ステップ番号を表すnより第n電線の製造番号を特定してもよい。さらに、ステップS103の前に予めリール121のセット作業を行っておいてもよい。
【0070】
その後、ステップS104にて、作業者は、リール121に付された電線識別コードをコードリーダ19でスキャンする。制御装置16は、ステップS204にて、スキャンされた電線識別コードの情報に含まれる第n電線の製造番号が、ステップS203で特定した第n電線の製造番号と一致しているかを判定する。ステップS204でNOと判定された場合、表示制御部161が、ディスプレイ14に、リール交換指示を表示すると共に第n電線のバーコード146を非表示とし(ステップS304)、ステップS104に戻る。
【0071】
ステップS204でYESと判定された場合、表示制御部161が、ディスプレイ14に、第n電線のバーコード146を再表示する(ステップS305)。その後、ステップS105にて、作業者は、ディスプレイ14に表示された第n電線のバーコード146a、146bをスキャンする。バーコード146a、146bをともにスキャンさせることで、左側、右側のそれぞれの所定位置に作業者がいることを確認することができる。なお、ステップS105では、バーコード146a、146bのいずれかをスキャンするようにしてもよい。第n電線のバーコード146a、146bがスキャンされると、電線端部位置表示部162が、ディスプレイ14に、始端位置表示147及び終端位置表示148を表示する(ステップS306)。
【0072】
本実施の形態では、ステップS306では、電線端部位置表示部162は、作業レシピ情報172を参照して、第n電線のX-TOの位置に始端位置表示147を表示し、第n電線のX-TOとCut Lengthより求められた位置(本実施の形態では、X-TOの値よりCut Lengthの値を減算した位置)に終端位置表示148を表示する。
【0073】
ステップS306の後、作業者は、ステップS106にて、表示された始端位置表示147及び終端位置表示148に合わせて電線11を切断する電線切断作業を行う。電線切断作業では、作業者は、リール121から電線11をトレイ123上に、始端位置表示147が表示されている位置まで引き出し、終端位置表示148が表示されている位置で切断する。
【0074】
また、ステップS205にて、制御装置16は、2台のプリンタ18それぞれにおいて、リングマーク181とマークテープ182を印刷する。ステップS205では、制御装置16は、作業レシピ情報172を参照して、nに対応するStepNo.のFROMの”End Mark Info.”、TOの”End Mark Info.”を基に、リングマーク181とマークテープ182をそれぞれ印刷する。より具体的にはステップS205では、、左側のプリンタ18からFROMの”End Mark Info.”に対応するリングマーク181とマークテープ182が印刷され、右側のプリンタ18からTOの”End Mark Info.”に対応するリングマーク181とマークテープ182が印刷される。作業者は、ステップS107にて、ステップS105で切断した電線11(第n電線)を、ディスプレイ14に表示された布線画像143、及びステップS305で再表示した第n電線のバーコード146を目印にして配置する電線布線作業を行う。その後、作業者は、ステップS108にて、電線11の両端部にリングマーク181とマークテープ182を取り付ける作業を行う。
【0075】
その後、表示制御部161が、ディスプレイ14に、導通チェック表示146cを表示する(ステップS311)。作業者は、ステップS111にて、導通チェック作業を行う。導通チェック作業では、作業者は、電線11(第n電線)の両端において、テスタ20のプローブを電線11の導体に接触させる。その後、ステップS211にて、導通チェック部164が、導通チェックに合格したかを判定する。導通チェック部164は、テスタ20の出力を基に、電線11の導電率を演算し、演算した導電率が所定の正常値範囲に含まれる場合に、導通チェックが合格であると判定する。なお、導通チェック部164は、テスタ20の出力を基に、電線11の電気抵抗率を演算し、演算した電気抵抗率が所定の正常値範囲に含まれる場合に、導通チェックが合格であると判定してもよい。導通チェックが不合格であった場合(ステップS211でNOと判定された場合)、導通チェック部164が、表示制御部161を介して、ディスプレイ14に再チェック指示を表示し(ステップS312)、ステップS111へ戻り導通チェック作業を再度行う。なお、ステップS211にて所定回数不合格を繰り返した場合には、ステップS105に戻り、第n電線の布線をやり直すように構成してもよい。この場合、導通チェックに不合格となった電線11は破棄される。
【0076】
ステップS211で導通チェックに合格した後、作業者は、ステップS112にて、左側の作業者が電線の左側端部のマークテープ182の二次元コード182aのスキャンを行い、右側の作業者が電線の右側端部のマークテープ182の二次元コード182aのスキャンを行う。その後、表示制御部161が、FROMの” Area Mark Info.”から生成されたバーコードを布線画像143の第n電線における左側端部(X-From,Y-Fromの座標位置)に表示し、TOの” Area Mark Info.”から生成されたバーコードを布線画像143における第n電線の右側端部(X-TO,Y-TOの座標位置)に表示する(ステップS313)。作業者は、ステップS113にて、左側の作業者が左側端部のエリアラベルのバーコード146aのスキャンを行い、右側の作業者が右側端部のエリアラベルのバーコード146bのスキャンを行う。その後、制御装置16は、ステップS212にて、2台のプリンタ18のそれぞれにおいてエリアラベルテープ183を印刷する。ステップS212では、制御装置16は、作業レシピ情報172を参照して、nに対応するStepNo.のFROMの” Area Mark Info.”、TOの” Area Mark Info.”を基にエリアラベルテープ183を印刷する。より具体的には、ステップS212では、左側のプリンタ18でFROMの” Area Mark Info.”に対応するエリアラベルテープ183を印刷し、右側のプリンタ18でTOの” Area Mark Info.”に対応するエリアラベルテープ183を印刷する。作業者は、ステップS114にて、エリアラベルテープ183を電線11の所定箇所に取り付ける作業を行った後、ステップS115にて、取り付けたエリアラベル183の二次元コード183aをスキャンする。
【0077】
その後、ステップS213にて、布線ステップ番号(布線順)を表す変数nをインクリメントする。その後、ステップS214にて、制御装置16が、作業レシピ情報を基に、電線11の品種が変更されたかを判定する。電線11の品種が変更されたかの判定については、作業レシピ情報172を参照して、nに対応するStepNo.の第n電線の製造番号(
図4の(Cable P/N No.))と、n-1に対応するStepNo.の第n-1電線の製造番号とを比較することにより判定するとよい。
【0078】
ステップS214でYESと判定された場合、
図10のステップS302に戻る。ステップS214でNOと判定された場合、表示制御部161が、n番目に布線する第n電線のバーコード146を、第n電線の両端部の近傍それぞれに、オーバーラップ表示する(ステップS314)。この際、制御装置161は、作業レシピ情報172を参照して、nに対応するStepNo.のFROMの”End Mark Info.”、TOの”End Mark Info.”から生成されたバーコードを、X-From,Y-Fromの座標位置、X-TO,Y-TOの座標位置にそれぞれ表示する。また、電線端部位置表示部162が、ディスプレイ14に、第n電線の始端位置表示147及び終端位置表示148を表示する(ステップS315)。本実施の形態では、ステップS315では、電線端部位置表示部162は、作業レシピ情報172を参照して、第n電線のX-TOの位置に始端位置表示147を表示し、第n電線のX-TOとCut Lengthより求められた位置(本実施の形態では、X-TOの値よりCut Lengthの値を減算した位置)に終端位置表示148を表示する。
【0079】
ステップS315の後、作業者は、ステップS116にて、表示された始端位置表示147及び終端位置表示148に合わせて電線11を切断する電線切断作業を行う。電線切断作業では、作業者は、リール121から電線11をトレイ123上に、始端位置表示147が表示されている位置まで引き出し、終端位置表示148が表示されている位置で切断する。
【0080】
また、ステップS215にて、制御装置16は、2台のプリンタ18それぞれにおいて、リングマーク181とマークテープ182を印刷する。ステップS215では、制御装置16は、作業レシピ情報172を参照して、nに対応するStepNo.のFROMの”End Mark Info.”、TOの”End Mark Info.”を基にリングマーク181とマークテープ182を印刷する。より具体的には、ステップS215では、左側のプリンタ18からFROMの”End Mark Info.”に対応するリングマーク181とマークテープ182が印刷され、右側のプリンタ18からTOの”End Mark Info.”に対応するリングマーク181とマークテープ182が印刷される。作業者は、ステップS117にて、ステップS105で切断した電線11(第n電線)を、ディスプレイ14に表示された布線画像143、及び識別コード(バーコード146)を目印にして配置する電線布線作業を行う。その後、作業者は、ステップS118にて、電線11の両端部にリングマーク181とマークテープ182を取り付ける作業を行う。
【0081】
その後、表示制御部161が、ディスプレイ14に、導通チェック表示146cを表示する(ステップS321)。作業者は、ステップS121にて、導通チェック作業を行う。導通チェック作業では、作業者は、電線11(第n電線)の両端において、テスタ20のプローブを電線11の導体に接触させる。その後、ステップS221にて、導通チェック部164が、導通チェックに合格したかを判定する。導通チェック部164は、テスタ20の出力を基に、電線11の導電率を演算し、演算した導電率が所定の正常値範囲に含まれる場合に、導通チェックが合格であると判定する。なお、導通チェック部164は、テスタ20の出力を基に、電線11の電気抵抗率を演算し、演算した電気抵抗率が所定の正常値範囲に含まれる場合に、導通チェックが合格であると判定してもよい。導通チェックが不合格であった場合(ステップS221でNOと判定された場合)、導通チェック部164が、表示制御部161を介して、ディスプレイ14に再チェック指示を表示し(ステップS322)、ステップS121へ戻り導通チェック作業を再度行う。なお、ステップS221にて所定回数不合格を繰り返した場合には、ステップS314に戻り、第n電線の布線をやり直すように構成してもよい。この場合、導通チェックに不合格となった電線11は破棄される。
【0082】
ステップS221で導通チェックに合格した後(ステップS221でYESと判定された後)、ステップS222にて、制御装置16は、作業レシピ情報172を参照し、第n電線が布線する最後の電線11であるかを判定する。ステップS222では、作業レシピ情報172を参照して、n+1に対応するStepNo.に第n+1電線の製造番号(
図4の(Cable P/N No.))が含まれているかどうかにより判定する。また、n+1に対応するStepNo.の他の情報により判断してもよい。その後、作業者は、ステップS122にて、左側の作業者が電線の左側端部のマークテープ182の二次元コード182aのスキャンを行い、右側の作業者が電線の右側端部のマークテープ182の二次元コード182aのスキャンを行う。
【0083】
ステップS222でNOと判定された場合、ステップS223にて、制御装置16は、作業レシピ情報172を参照し、前に布線した電線11(第n-1電線)が、現在布線している電線11(第n電線)、すなわちステップS221で導通チェックを行った電線11と同じエリアであるか(作業レシピ情報172の“Area Mark Info.”が同じであるか)を判定する。ステップS223でNOと判定された場合、
図11のステップS313へと戻る。ステップS223でYESと判定された場合、
図11のステップS213へと戻る。
【0084】
ステップS222でYESと判定された場合、すなわち全ての電線11の布線を終えた後、表示制御部161は、ディスプレイ14にP/Nラベルのバーコードを表示する(ステップS323)。作業者は、ステップS123にて、ディスプレイに表示されたP/Nラベルのバーコードをスキャンする。作業者がP/Nラベルのバーコードをスキャンすると、ステップS224にて、制御装置16が、プリンタ18によりP/Nラベルを印刷する。なお、P/Nラベルとは、ワイヤハーネスの製造番号(part number)を表すラベルであり、作業レシピ情報172に含まれる製造番号、製品名、図面番号等が文字情報及び二次元コードとして印刷されたものである。P/Nラベルは、ワイヤハーネス全体を識別するために用いられるものであるから、ワイヤハーネスの幹部に取り付けられる。作業者は、ステップS124にて、P/Nラベルをワイヤハーネスの所定箇所に取り付けた後、ステップS125にて、P/Nラベルの二次元コードをスキャンする。
【0085】
その後、表示制御部161が、ディスプレイ14に、テープ巻き作業開始のバーコードを表示する(ステップS331)。作業者は、ステップS131にて、ディスプレイ14に表示されたテープ巻き作業開始のバーコードをスキャンする。このとき、テープを巻く位置がディスプレイ14に表示される。テープを巻く位置は、例えば、色または枠等で表示される。なお、テープを巻く位置は、最初から(ステップS301の時点から)布線画像143とともに表示されていてもよい。また、表示制御部161が、ディスプレイ14に、テープ巻き作業終了のバーコードを表示する(ステップS332)。作業者は、ステップS132にて、テープ巻き作業を行った後、ステップS133にて、テープ巻き作業終了のバーコードをスキャンする。
【0086】
作業者がテープ巻き作業終了のバーコードをスキャンすると、ステップS231にて、誤った電線の発見プログラム(Incorrect wire detection program)が開始される。誤った電線の発見プログラムとは、作業履歴情報(進捗情報173)を基に、予め設定した標準作業時間に対して作業時間が極端に早い、または遅いことがないかをチェックし、作業順の誤りや作業の抜けをチェックするプログラムである。
【0087】
その後、表示制御部161が、ディスプレイ14に、保護材装着作業開始のバーコードを表示する(ステップS333)。作業者は、ステップS134にて、ディスプレイ14に表示された保護材装着作業開始のバーコードをスキャンする。このとき、保護材を装着する位置がディスプレイ14に表示される。保護材を装着する位置は、例えば、色または枠等で表示される。なお、保護材を装着する位置は、最初から(ステップS301の時点から)布線画像143とともに表示されていてもよい。また、表示制御部161が、ディスプレイ14に、保護材装着作業終了のバーコードを表示する(ステップS334)。作業者は、ステップS135にて、保護材装着作業を行った後、ステップS136にて、保護材装着作業終了のバーコードをスキャンする。
【0088】
その後、表示制御部161が、ディスプレイ14に、検査作業開始のバーコードを表示する(ステップS335)。作業者は、ステップS137にて、ディスプレイ14に表示された検査作業開始のバーコードをスキャンする。その後、表示制御部161が、ディスプレイ14に、検査作業終了のバーコードを表示する(ステップS336)。作業者は、ステップS139にて、所定の検査作業を行った後、ステップS141にて、検査作業終了のバーコードをスキャンする。以上により、ワイヤハーネスが製造される。
【0089】
上記各ステップにおいてバーコード146や二次元コード等をスキャンした時刻は、時刻記憶部165により、進捗情報173として記憶部17に記憶される。進捗状況管理部214は、進捗情報173を基に、進捗状況表示画面51の進捗状況を適宜更新する。進捗状況管理部214は、バーコード146や二次元コード等がスキャンされる度に進捗状況を更新する。なお、進捗状況管理部214は、適宜な時間間隔で進捗状況を更新してもよい。記憶部22の進捗情報173は、記憶部17の進捗情報173に新たな情報が記憶されるたびに更新される。なお、1つのワイヤハーネスに対する工程が終わった段階で、記憶部22の進捗情報173が更新されてもよい。また、一定時間ごとに記憶部22の進捗情報173が更新されてもよい。さらに、制御装置16の電源がOFFにされる際(シャットダウンの際)に記憶部22の進捗情報173が更新されてもよい。
【0090】
また、記憶部17あるいは記憶部22に記憶された進捗情報173を基に、作業履歴情報を作成し記憶するようにしてもよい。作業履歴情報は、作業の履歴や作業にかかった時間をまとめたデータログである。例えば
図14に示すように、作業履歴情報174は、端部の位置を示し接続先のエリア(接続先の機器等)を表すArea、電線11や作業内容を表すItem/Operation、時刻を表すDate、作業内容の詳細等を示すAdditional Info、電線長を表すlength、開始・終了・確認等のスキャン内容、あるいは導通チェック時の導電率の測定結果等を表すScanned、作業時間を表すTime、その他付加情報を表すMore Info等の情報を含んでいる。
図14において、Part Numberはワイヤハーネスの製造番号、Startはワイヤハーネスの製造開始時刻、Finishはワイヤハーネスの製造終了時刻、Operatorsは作業者ID、Totalはワイヤハーネスの製造にかかった時間を表している。なお、作業履歴情報174が含む情報については、適宜変更可能である。
【0091】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るワイヤハーネスの製造装置10では、表示制御部161は、作業レシピ情報172に設定された電線長を基に、布線する電線11毎に、電線11を引き出した際の電線11の先端部の位置を示す始端位置表示147をディスプレイ14に表示するよう構成されている。
【0092】
これにより、電線11を手動で供給する場合に、電線11を規定の電線長に切断する切断作業を短時間で効率よく行うことが可能になり、ワイヤハーネスを効率よく製造することが可能になる。
【0093】
(変形例)
本実施の形態では、布線する電線11の右側端部に対応する位置(X-TOの位置)に始端位置表示147を表示し、X-TOの値よりCut Lengthの値を減算した位置に終端位置表示148を表示したが、始端位置表示147と終端位置表示148の表示位置はこれに限定されない。
【0094】
例えば、
図15(a),(b)に示すように、始端位置表示147を全ての電線11で一定の位置に表示してもよい。
図15(a),(b)の例では、電線端部位置表示部162は、作業レシピ情報172を参照して、X-TOの値が一番大きいものの位置に始端位置表示147を表示し、X-TOの値が一番大きいものと布線する電線11(第n電線)のCut Lengthより求められた位置(一番大きいもののX-TOの値よりCut Lengthの値を減算した位置)に終端位置表示148を表示してもよい。すなわち、表示制御部161は、全ての電線11で始端位置表示147を同じ位置に表示し、始端位置表示147の表示位置と、布線する電線11の電線長より求められた位置に終端位置表示148を表示する。
図15(a)は図示中央の電線11を布線する際の始端位置表示147と終端位置表示148の表示位置を示し、
図15(b)は図示下側の電線11を布線する際の始端位置表示147と終端位置表示148の表示位置を示している。この場合、始端位置表示147が電線11によらず同じ位置に表示されるため、電線切断作業における電線11の引き出しが容易になる。この場合、始端位置表示147の表示位置が固定されるため、始端位置表示147の表示位置が予め決められていてもよい。
【0095】
また、
図16に示すように、電線端部位置表示部162は、予め設定された中心位置に基づき、当該中心位置と第n電線のCut Lengthより始端位置表示147、終端位置表示148を表示するようにしてもよい。具体的には、中心位置におけるX座標の値にCut Lengthの値を1/2した値を加算した位置に始端位置表示147を表示し、中心位置におけるX座標の値にCut Lengthの値を1/2した値を減算した位置に終端位置表示148を表示してもよい。この場合、予め設定された中心位置からの距離が等しくなる位置に、始端位置表示147と終端位置表示148が表示されることになる。すなわち、表示制御部161は、予め設定された中心位置からの距離が等しくなる位置に、始端位置表示147、及び終端位置表示148を表示する。
図16では、破線にて中心位置を表しているが、中心位置はディスプレイ14に表示されても表示されなくてもよい。なお、中心位置は、ワイヤハーネスの長さに応じて変更されるようにしてもよい。
【0096】
また、
図17(a)~(c)に示すように、布線する電線11の左側端部に対応する位置(X-FROMの位置)に終端位置表示148を表示し、X-FROMの値にCut Lengthの値を加算した位置に始端位置表示147を表示してもよい。
図17(a)は図示中央の電線11を布線する際、
図17(b)は図示下側の電線11を布線する際、
図17(c)は図示上側の電線11を布線する際の始端位置表示147と終端位置表示148の表示位置を示している。すなわち、表示制御部161は、布線する電線11の他方の端部(左側端部)に対応する位置に終端位置表示148を表示し、終端位置表示148の表示位置と、当該電線の電線長より求められた位置に始端位置表示147を表示する。
【0097】
また、
図18(a),(b)に示すように、終端位置表示148を全ての電線11で一定の位置に表示してもよい。
図18(a),(b)の例では、終端位置表示148の表示位置が予め決められており、始端位置表示147の表示位置を、終端位置表示148の表示位置と第n電線のCut Lengthより求められた位置(終端位置表示148の表示位置のX座標の値よりCut Lengthの値を加算した位置)に始端位置表示147を表示してもよい。すなわち、表示制御部161は、全ての電線11で終端位置表示148を同じ位置に表示し、終端位置表示148の表示位置と、布線する電線11の電線長より求められた位置に始端位置表示147を表示する。
図18(a)は図示中央の電線11を布線する際の始端位置表示147と終端位置表示148の表示位置を示し、
図18(b)は図示下側の電線11を布線する際の始端位置表示147と終端位置表示148の表示位置を示している。この場合、終端位置表示147が電線11によらず、同じ位置に表示されるため、電線切断作業における電線11の切断が容易になる。また、終端位置表示148の表示位置に対応する位置で電線が切断されるように、電線切断機を配置してもよい。電線切断機を用いる場合、終端位置表示148を表示しなくてもよい。
【0098】
また、
図19(a)に示すように、布線する全ての電線11の始端位置表示147及び終端位置表示148が、布線順とともに表示されるようにしてもよい。また、現在布線している電線11と、次に布線する電線11の始端位置表示147及び終端位置表示148を表示するようにしてもよい。例えば、現在布線している電線11の始端位置表示147及び終端位置表示148を濃く表示し、次に布線する電線11の始端位置表示147及び終端位置表示148を薄く表示する、あるいは色を変える等して、現在布線している電線11の始端位置表示147及び終端位置表示148と、次に布線する電線11の始端位置表示147及び終端位置表示148を区別できるようにするとよい。
【0099】
また、上記実施の形態では、始端位置表示147及び終端位置表示148として、ワイヤハーネスの長手方向に対して垂直な方向(図示上下方向)に延びる矢印を用いたが、これに限らず、
図19(b)に示すように、ワイヤハーネスの長手方向に対して平行な方向(図示左右方向)に延びる矢印を用いてもよい。これにより、始端位置表示147や終端位置表示148と電線画像11aとが重なりにくくなる。ただし、始端位置表示147及び終端位置表示148を複数同時に表示するような場合には、始端位置表示147及び終端位置表示148の表示スペースを抑えるために、始端位置表示147及び終端位置表示148として、ワイヤハーネスの長手方向に対して垂直な方向(図示上下方向)に延びる矢印を用いることがより望ましい。
【0100】
始端位置表示147及び終端位置表示148は、布線画像143と異なる色で表示されてもよい。また、始端位置表示147及び終端位置表示148は、点滅表示等により強調表示されてもよい。また、上記実施の形態では、矢印の近傍にSTART、ENDといった文字を表示したが、START、END以外の文字を表示してもよく、また文字を表示しなくてもよい。
【0101】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0102】
[1]複数のディスプレイ(14)に長さ方向の大きさが実寸大の布線画像(143)を表示させ、前記布線画像(143)に沿って電線(11)を布線しワイヤハーネスを製造するワイヤハーネスの製造装置(10)であって、前記電線(11)を手動で引き出し可能な電線供給装置(12)と、前記電線(11)の布線順序を特定可能なデータベースである作業レシピ情報(172)を記憶する記憶部(17)と、前記ディスプレイ(14)の表示制御を行う表示制御部(161)と、を備え、前記作業レシピ情報(172)は、前記電線(11)毎に電線長が設定されており、前記表示制御部(161)は、前記作業レシピ情報(172)に設定された電線長を基に、布線する前記電線(11)毎に、前記電線(11)を引き出した際の前記電線(11)の先端部の位置を示す始端位置表示(147)を前記ディスプレイ(14)に表示する、ワイヤハーネスの製造装置(10)。
【0103】
[2]前記表示制御部(161)は、引き出した前記電線(11)の切断位置を示す終端位置表示(148)を、前記ディスプレイ(14)に表示する、[1]に記載のワイヤハーネスの製造装置(10)。
【0104】
[3]前記表示制御部(161)は、布線する前記電線(11)の一方の端部に対応する位置に前記始端位置表示(147)を表示し、前記始端位置表示(147)の表示位置と、当該電線(11)の電線長より求められた位置に前記終端位置表示(148)を表示する、[2]に記載のワイヤハーネスの製造装置(10)。
【0105】
[4]前記表示制御部(161)は、全ての前記電線(11)で前記始端位置表示(147)を同じ位置に表示し、前記始端位置表示(147)の表示位置と、布線する前記電線(11)の電線長より求められた位置に前記終端位置表示(148)を表示する、[2]に記載のワイヤハーネスの製造装置(10)。
【0106】
[5]前記表示制御部(161)は、布線する前記電線(11)の一方の端部に対応する位置に前記終端位置表示(148)を表示し、前記終端位置表示(148)の表示位置と、当該電線(11)の電線長より求められた位置に前記始端位置表示(147)を表示する、[2]に記載のワイヤハーネスの製造装置(10)。
【0107】
[6]前記表示制御部(161)は、全ての前記電線(11)で前記終端位置表示(148)を同じ位置に表示し、前記終端位置表示(148)の表示位置と、布線する前記電線(11)の電線長より求められた位置に前記始端位置表示(147)を表示する、[2]に記載のワイヤハーネスの製造装置(10)。
【0108】
[7]前記表示制御部(161)は、予め設定された中心位置からの距離が等しくなる位置に、前記始端位置表示(147)、及び終端位置表示(148)を表示する、[2]に記載のワイヤハーネスの製造装置(10)。
【0109】
[8]引き出した前記電線(10)を受けるためのトレイ(123)を備え、前記トレイ(123)は、並べられた複数の前記ディスプレイ(14)に沿うように設けられている、[1]乃至[7]の何れか1項に記載のワイヤハーネスの製造装置(10)。
【0110】
[9]前記トレイ(123)は、前記ディスプレイ(14)における、布線作業時の作業者側の縁部に沿うように設けられている、[8]に記載のワイヤハーネスの製造装置(10)。
【0111】
[10]前記複数のディスプレイ(14)上に設けられ、前記ディスプレイ(14)の表示部(141)を保護するための板状の透明保護カバー(144)を備え、前記トレイ(123)は、前記透明保護カバー(144)と一体に設けられている、[8]または[9]に記載のワイヤハーネスの製造装置(10)。
【0112】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0113】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、鉄道車両用のワイヤハーネスを製造する場合について説明したが、これに限らず、鉄道車両以外の用途のワイヤハーネスも製造可能である。
【符号の説明】
【0114】
10…ワイヤハーネスの製造装置
11…電線
11a…電線画像
12…電線供給装置
123…トレイ
14…ディスプレイ
143…布線画像
144…透明保護カバー
147…始端位置表示
148…終端位置表示
15…作業台
16…制御装置
161…表示制御部
162…電線端部位置表示部
17…記憶部
171…布線画像データ
172…作業レシピ情報