(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】蒸着フィルム用コーティング剤、ガスバリア性フィルム、及び、包装材
(51)【国際特許分類】
C09D 175/06 20060101AFI20240214BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C09D175/06
C09D5/02
(21)【出願番号】P 2023562270
(86)(22)【出願日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2023015708
【審査請求日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2022098903
(32)【優先日】2022-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】沖野 浩平
(72)【発明者】
【氏名】久保田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】山本 辰弥
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-238403(JP,A)
【文献】国際公開第2012/039259(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂(A)、及び、水性媒体(B)を含有する蒸着フィルム用コーティング剤であって、
前記ウレタン樹脂(A)が、多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)との重縮合体であるポリエステル(A3)、親水性基を有する活性水素基含有化合物(A4)、及び、ジイソシアネート(A5)を含有する組成物の反応生成物であり、
前記ウレタン樹脂(A)が、前記ポリエステル(A3)に由来のエステル骨格を有し、
前記多価カルボン酸
成分(A1)の全量100質量%に対して、芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物の少なくとも1種を10~100質量%含有し、
前記多価アルコール成分(A2)が、炭素原子数2~6のアルキレングリコールを含有する蒸着フィルム用コーティング剤。
【請求項2】
前記組成物が、更に鎖伸長剤(A6)を含有する請求項1に記載の蒸着フィルム用コーティング剤。
【請求項3】
硬化剤(C)を含有する請求項1に記載の蒸着フィルム用コーティング剤。
【請求項4】
前記ジイソシアネート(A5)の全量100質量%に対して、トリレンジイソシアネートを50~100質量%含有する請求項1に記載の蒸着フィルム用コーティング剤。
【請求項5】
前記水性媒体(B)が、水、及び/又は、イソプロピルアルコールである請求項1に記載の蒸着フィルム用コーティング剤。
【請求項6】
前記硬化剤(C)が、メラミン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、及び、水分散性ポリイソシアネート架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種である請求項3に記載の蒸着フィルム用コーティング剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の蒸着フィルム用コーティング剤を蒸着フィルムにコーティングしたガスバリア性フィルム。
【請求項8】
請求項7に記載のガスバリア性フィルムを用いた包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着フィルム用コーティング剤、ガスバリア性フィルム、及び、包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や飲料等の包装材料は、内容物を酸素や水蒸気等による劣化から守るために、ガスバリア性が求められることが多い。
【0003】
包装材料にガスバリアを付与する方法としては、ガスバリアコーティングを延伸フィルムに施す方法や、ガスバリア性の樹脂を共押し出しにより多層フィルム中の層に設けるなどの方法が広く用いられている。
【0004】
中でもフィルムに蒸着層を付与する蒸着法は、ガスの種類によらずに容易にバリア機能を付与できる優れた方法であり、特に、透明蒸着フィルムは、透明性に優れ、高湿度下でのガスバリア性に優れている。
【0005】
一方で、透明蒸着フィルムを用いた場合であっても、レトルト(加熱・加圧)処理後に、ガスバリア性が低下する問題が発生する場合がある。
【0006】
そこで、透明蒸着フィルムの透明蒸着層の上に、樹脂層をオーバーコートすることで、レトルト処理後であっても、ガスバリア性や接着性に優れる透明蒸着フィルムを得ることができる。
【0007】
オーバーコートに使用される汎用性のある樹脂層としては、ガスバリア性樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)が用いられている。しかし、PVAは、親水性が高いため、レトルト処理後に、透明蒸着層からデラミネーションしてしまう場合があり、レトルト処理後にも高い接着性やガスバリア性を有するオーバーコート層が求められている。
【0008】
透明蒸着層へのオーバーコート技術として、例えば、無機酸化物層(透明蒸着層)上に、水溶性高分子と共に、金属アルコキシド、金属アルコキシドの加水分解物、または塩化錫の少なくとも1つ以上を含む水溶液、あるいは、水/アルコール混合溶液を主成分とするガスバリア被覆液を塗布してなるガスバリア被覆層を有する、透明ガスバリア積層体が開示されている(例えば、特許文献1及び2)。しかしながら、水溶性高分子は、塗工乾燥性が悪いことに加えて、反応制御が困難なゾルゲルプロセスを含むため、オーバーコート液の反応管理や再利用が困難であり、塗工方法が煩雑となる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2012-101505号公報
【文献】特開2012-250470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明が解決しようとする課題は、常態、及び、レトルト処理後であっても、ガスバリア性、及び、接着性に優れたガスバリア性フィルム、及び、前記ガスバリア性フィルムを用いた包装材を得ることができる蒸着フィルム用コーティング剤、ガスバリア性フィルム、及び、包装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定のポリエステル、親水性基を有する活性水素基含有化合物、及び、ジイソシアネートを含有する組成物の反応生成物であるウレタン樹脂、及び、水性媒体を含有する蒸着フィルム用コーティング剤を用いることにより、常態、及び、レトルト処理後であっても、ガスバリア性、及び、接着性に優れたガスバリア性フィルム、及び、前記ガスバリア性フィルムを用いた包装材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、ウレタン樹脂(A)、及び、水性媒体(B)を含有する蒸着フィルム用コーティング剤であって、前記ウレタン樹脂(A)が、多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)との重縮合体であるポリエステル(A3)、親水性基を有する活性水素基含有化合物(A4)、及び、ジイソシアネート(A5)を含有する組成物の反応生成物であり、前記ウレタン樹脂(A)が、前記ポリエステル(A3)に由来のエステル骨格を有し、前記多価カルボン酸(A1)の全量100質量%に対して、芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物の少なくとも1種を10~100質量%含有し、前記多価アル
コール成分(A2)が、炭素原子数2~6のアルキレングリコールを含有する蒸着フィルム用コーティング剤に関する。
【0013】
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤は、前記組成物が、更に鎖伸長剤(A6)を含有することが好ましい。
【0014】
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤は、硬化剤(C)を含有することが好ましい。
【0015】
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤は、前記ジイソシアネート(A5)の全量100質量%に対して、トリレンジイソシアネートを50~100質量%含有することが好ましい。
【0016】
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤は、前記水性媒体(B)が、水、及び/又は、イソプロピルアルコールであることが好ましい。
【0017】
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤は、前記硬化剤(C)が、メラミン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、及び、水分散性ポリイソシアネート架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0018】
本発明は、前記蒸着フィルム用コーティング剤を蒸着フィルムにコーティングしたガスバリア性フィルムに関する。
【0019】
本発明は、前記ガスバリア性フィルムを用いた包装材に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤は、水性媒体を使用することで、残留溶剤の問題がなく、特定のウレタン樹脂を使用することで、蒸着フィルムにオーバーコートした場合に、常態およびレトルト処理後の酸素や水蒸気のガスバリア性を向上し、蒸着フィルム用コーティング剤を用いて得られるコーティング塗膜は、常態およびレトルト処理後の蒸着フィルムへの密着性(ラミネート強度)にも優れ、特に食品包装用として有用なバリア性フィルムを提供することができ、有用である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、ウレタン樹脂(A)、及び、水性媒体(B)を含有する蒸着フィルム用コーティング剤であって、前記ウレタン樹脂(A)が、多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)との重縮合体であるポリエステル(A3)、親水性基を有する活性水素基含有化合物(A4)、及び、ジイソシアネート(A5)を含有する組成物の反応生成物であり、前記ウレタン樹脂(A)が、前記ポリエステル(A3)に由来のエステル骨格を有し、前記多価カルボン酸(A1)の全量100質量%に対して、芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物の少なくとも1種を10~100質量%含有し、前記多価アルコール成分(A2)が、炭素原子数2~6のアルキレングリコールを含有する蒸着フィルム用コーティング剤に関する。
前記蒸着フィルム用コーティング剤は、水性媒体を使用することで、残留溶剤の問題がなく、蒸着フィルムにオーバーコートした場合に、常態およびレトルト処理後の酸素や水蒸気バリア性を向上し、蒸着フィルム用コーティング剤を用いて得られるコーティング塗膜は、常態およびレトルト処理後の蒸着フィルムへの密着性(ラミネート強度)にも優れ、有用である。
【0022】
(ウレタン樹脂(A))
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤は、ウレタン樹脂(A)を含有し、前記ウレタン樹脂(A)は、多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)との重縮合体であるポリエステル(A3)、親水性基を有する活性水素基含有化合物(A4)、及び、ジイソシアネート(A5)を含有する組成物の反応生成物であり、前記ウレタン樹脂(A)は、前記ポリエステル(A3)に由来のエステル骨格を有し、前記多価カルボン酸(A1)の全量100質量%に対して、芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物の少なくとも1種を10~100質量%含有し、前記多価アルコール成分(A2)が、炭素原子数2~6のアルキレングリコールを含有することを特徴とする。
前記ポリエステル(A3)は、多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)との重縮合反応により得られ、末端にヒドロキシ基またはカルボキシル基を有し、前記ジイソシアネート(A5)と反応することができる。
また、前記ウレタン樹脂(A)は、前記ポリエステル(A3)に由来のエステル骨格を有することで、得られるコーティング塗膜の蒸着面との密着性、およびガスバリア性向上の点で、有用である。
更に、前記ウレタン樹脂(A)は、前記ポリエステル(A3)(ポリエステルポリオール)と、前記ジイソシアネート(A5)との重付加反応、更に、前記親水性基を有する活性水素基含有化合物(A4)を反応させることにより得られるウレタン樹脂であるため、親水性基により、水分散安定性を有するウレタン樹脂となり、水性媒体中でのウレタン樹脂(粒子)の分散が容易となる。
【0023】
(多価カルボン酸成分(A1))
前記ウレタン樹脂(A)は、多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)との重縮合体であるポリエステル(A3)、親水性基を有する活性水素基含有化合物(A4)、及び、ジイソシアネート(A5)を含有する組成物の反応生成物であることを特徴とする。前記多価カルボン酸成分(A1)を使用することで、前記ポリエステル(A3)を用いて得られるコーティング塗膜は、蒸着面との良好な密着性、およびガスバリア性を有し、有用である。
【0024】
前記多価カルボン酸成分(A1)としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等を、不飽和結合含有多価カルボン酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、無水フマル酸、フマル酸等を、脂環族多価カルボン酸としては1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等を、芳香族多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェン酸及びその無水物、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物、あるいは、エステル形成性誘導体;p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の多塩基酸を挙げることができ、中でも、ガスバリア性向上の観点から、芳香族多価カルボン酸又はその酸無水物がより好ましく、芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物が更に好ましい。これらは、単独または2種類以上併用することがで
きる。
【0025】
前記多価カルボン酸(A1)の全量100質量%に対して、芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物の少なくとも1種を10~100質量%含有することを特徴とし、40~100質量%含有することが好ましく、60~100質量%含有することがより好ましい。前記範囲内であると、得られるコーティング塗膜は、蒸着面との優れた密着性、およびガスバリア性を有し、有用である。
【0026】
(多価アルコール成分(A2))
前記ウレタン樹脂(A)は、多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)との重縮合体であるポリエステル(A3)、親水性基を有する活性水素基含有化合物(A4)、及び、ジイソシアネート(A5)を含有する組成物の反応生成物であり、前記多価アルコール成分(A2)が、炭素原子数2~6のアルキレングリコールを含有することを特徴とする。前記多価アルコール成分(A2)を使用することで、得られるポリエステル(A3)を用いて得られるコーティング塗膜は、蒸着面との良好な密着性、およびガスバリア性を有し、有用である。
【0027】
前記多価アルコール成分(A2)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール(ヘキサメチレングリコール)、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールなどのアルキレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのエーテルジオール、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテンなどのアルケンジオール
などが挙げられ、中でも多価アルコール成分に含まれる酸素原子間の炭素原子数が少ないほど、分子鎖が過剰に柔軟にならず、酸素を透過しにくくなる観点から、炭素原子数2~6のアルキレングリコールを含有し、好ましくは、炭素原子数が2~4のアルキレングリコールを含有する。これらは、単独または2種類以上併用することができる。
【0028】
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤は、前記多価アルコール成分(A2)の全量100質量%に対して、前記炭素原子数2~6のアルキレングリコールを10~100質量%含有することが好ましく、20~100質量%含有することがより好ましく、30~100質量%含有することが更に好ましい。前記範囲内であると、得られるポリエステルが、適度な疎水性を有し、レトルト処理後の水分によるコーティング塗膜のガスバリア性、及び、接着性(密着性)の低下を防ぐことができ、有用である。
【0029】
前記多価カルボン酸成分(A1)と前記多価アルコール成分(A2)の配合割合(モル比)として、ヒドロキシ基末端のポリエステル(A3)を得ること、および、コーティング塗膜の蒸着面への優れたガスバリア性、及び、接着性(密着性)を得る観点から、好ましくは、多価カルボン酸成分(A1):多価アルコール成分(A2)=1:1.01~4.0であり、より好ましくは、多価カルボン酸成分(A1):多価アルコール成分(A2)=1:1.1~3.0である。
【0030】
(重合触媒)
前記多価カルボン酸成分(A1)と前記多価アルコール成分(A2)との重縮合体であるポリエステル(A3)を得る反応に用いられる重合触媒として、特に制限されないが、たとえば、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物の少なくとも1種を用いることができ、中でも、前記チタン化合物は、好ましく使用でき、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラブトキシドなどがより好ましい。これらは、単独または2種類以上併用することができる。
【0031】
前記重合触媒の配合量としては、使用する反応原料全量に対して、前記重合開始剤を、好ましくは、1~1000ppm含有し、より好ましくは、10~100ppm含有することである。前記範囲内にあると、良好にエステル化反応が進行し、ジイソシアネート(A5)と反応させた際の、ウレタン化反応を阻害しないため、好ましい。
【0032】
(ポリエステル(A3))
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤は、ウレタン樹脂(A)を含有し、前記ウレタン樹脂(A)は、多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)との重縮合体であるポリエステル(A3)、親水性基を有する活性水素基含有化合物(A4)、及び、ジイソシアネート(A5)を含有する組成物の反応生成物であることを特徴とする。前記多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)との重縮合体であるポリエステル(A3)は、特に制限されず、公知慣用の方法(重縮合反応)により得ることができ
る。
【0033】
(ポリエステルポリオール(ポリエステル(A3))の酸価)
前記ポリエステルポリオールの酸価としては、ヒドロキシ基末端のポリエステルを得る観点から、好ましくは、0~5mgKOH/gであり、より好ましくは、0~1mgKOH/gである。前記酸価が前記範囲内であることで、ヒドロキシ基末端のポリエステルを得ることができ、続くジイソシアネート(A5)との反応による高分子量化が良好に進行するため、有効である
【0034】
(ポリエステルポリオール(ポリエステル(A3))の水酸基価)
前記ポリエステルポリオールの水酸基価としては、コーティング塗膜の蒸着面との優れた密着性およびガスバリア性を得る観点から、好ましくは、20~400mgKOH/g
であり、より好ましくは、40~250mgKOH/gである。前記水酸基価が前記範囲内であることで、続くジイソシアネート(A5)と反応後に、ウレタン樹脂(A)が良好な凝集力を発揮し、コーティング塗膜の蒸着面との優れた密着性およびガスバリア性を発現し、有効である。
【0035】
(ポリエステルポリオール(ポリエステル(A3))の数平均分子量(Mn))
前記ポリエステルポリオール(ポリエステル(A3)の数平均分子量(Mn)としては、コーティング塗膜の蒸着面との優れた密着性およびガスバリア性を得る観点から、好ましくは、280~5600であり、より好ましくは、450~2800である。前記数平均分子量(Mn)が前記範囲内であることで、コーティング塗膜の蒸着面との優れた密着性およびガスバリア性を発現し、有効である。
【0036】
前記ポリエステル(A3)の配合割合としては、前記ウレタン樹脂(A)100質量部中、得られるコーティング塗膜のガスバリア性の向上や、造膜性向上による均一な塗膜形成の観点から、好ましくは、20~87質量部であり、より好ましくは、42~81質量部である。
【0037】
(親水性基を有する活性水素基含有化合物(A4))
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤は、ウレタン樹脂(A)を含有し、前記ウレタン樹脂(A)は、多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)との重縮合体であるポリエステル(A3)、親水性基を有する活性水素基含有化合物(A4)、及び、ジイソシアネート(A5)を含有する組成物の反応生成物であることを特徴とする。
前記親水性基を有する活性水素基含有化合物(A4)は、親水性基を有することで、前記ウレタン樹脂(A)(粒子)を水性媒体(B)中に、容易に分散することができ、得られるコーティング塗膜のガスバリア性、接着性(基材との密着性)の向上に寄与することができ、有用である。
【0038】
前記親水性基を含有する活性水素基含有化合物(A4)としては、ノニオン性基またはイオン性基などの親水性基を含有し、アミノ基または水酸基などの活性水素基を含有する化合物であって、具体的には、例えば、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物やイオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられる。
【0039】
前記ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物としては、例えば、ノニオン性基として、ポリアルキレンオキシド基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられ、例えば、ポリオキシエチレングリコール、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールなどが挙げられる。また、前記イオン性基を含有する活性水素基含有化合物としては、例えば、カルボン酸などのアニオン性基、4級アミンなどのカチオン性基、2つ以上の水酸基またはアミノ基などの活性水素基とを併有する有機化合物などが挙げられる。中でも、前記親水性基を含有する活性水素基含有化合物(A4
)として、カルボン酸のアニオン性基(カルボキシル基)と2つ以上の水酸基とを併有する有機化合物は、カルボキシル基を有することで、ウレタン樹脂(A)が水性媒体(B)中で、前記ウレタン樹脂(A)(粒子)が、乳化剤などを使用することなく、分散することが容易となり、作業性や、塗膜への乳化剤のブリードアウトを防ぐ観点から好ましい。
【0040】
前記カルボン酸のアニオン性基(カルボキシル基)と2つ以上の水酸基とを併有する有機化合物としては、例えば、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸などのポリヒドロキシアルカン酸などが挙げられ、より好ましくは、2,2-ジメチロールプロピオン酸が挙げられる。これらは、単独または2種類以上併用することができる。なかでも、カルボン酸の一部または全部を塩基性化合物等によって、中和することが、良好な水分散安定性を有するウレタン樹脂を得る観点か
ら好ましい。
【0041】
前記親水性基を有する活性水素基含有化合物(A4)の配合割合としては、前記ウレタン樹脂(A)100質量部中、良好な水分散安定性を得る観点から、好ましくは、3~20質量部含有し、より好ましくは、4~10質量部含有する。
【0042】
(ジイソシアネート(A5))
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤は、ウレタン樹脂(A)を含有し、前記ウレタン樹脂(A)は、多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)との重縮合体であるポリエステル(A3)、親水性基を有する活性水素基含有化合物(A4)、及び、ジイソシアネート(A5)を含有する組成物の反応生成物であることを特徴とする。前記ジイソシアネート(A5)は、得られるウレタン樹脂(A)中に、酸素を透過しにくいハードセグメントを形成することになり、得られるウレタン樹脂(A)を用いたコーティ
ング塗膜が、良好なガスバリア性を発現し、有用である。
【0043】
前記ジイソシアネート(A5)としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロ
ピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられ、中でも、得られるコーティング塗膜のガスバリア性の向上や、造膜性向上による均一な塗膜形成の観点から、トリレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートが好ましく、より好ましくは、トリレンジイソシアネートがより好ましい。これらは、単独または2種類以上併用することができる。
【0044】
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤は、前記ジイソシアネート(A5)の全量100質量%に対して、トリレンジイソシアネートを50~100質量%含有することが好ましく、60~100質量%含有することがより好ましく、70~100質量%含有することが更に好ましい。前記範囲内であると、得られるウレタン樹脂(A)中に、酸素を透過しにくいハードセグメントを形成することになり、コーティング塗膜が、良好なガスバリア性を発現し、有用である。
【0045】
前記ジイソシアネート(A5)の配合割合としては、前記ウレタン樹脂(A)100質量部中、得られるコーティング塗膜のガスバリア性の向上や、造膜性向上による均一な塗膜形成の観点から、好ましくは、10~50質量部であり、より好ましくは、15~40質量部未満である。
【0046】
(鎖伸長剤(A6))
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤は、前記ウレタン樹脂(A)を含有し、前記ウレタン樹脂(A)は、多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)との重縮合体であるポリエステル(A3)、親水性基を有する活性水素基含有化合物(A4)、及び、ジイソシアネート(A5)を含有する組成物の反応生成物であり、前記組成物が、更に鎖伸長剤(A6)を含有することが好ましい。前記鎖伸長剤(A6)を使用することで、得られるウレタン樹脂(A)がより高い凝集力を発現し、得られるコーティング塗膜のガスバリア性を向上させることができ、有用である。
【0047】
前記鎖伸長剤(A6)としては、前記ジイソシアネート(A5)のイソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば、特に制限なく使用でき、一般的には、水酸基またはアミノ基を2個有する鎖伸長剤を主に用いることができる。
【0048】
前水酸基を2個有する鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。これらは、単独または2種類以上併用することができる。
【0049】
また、前アミノ基を2個有する鎖伸長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1 ,8-オクタンジアミン、1 ,9-ノナンジアミン、1 ,10-デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロビリチンシクロヘキシル-4,4’-ジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。これらは、単独または2種類以上併用することができる。
【0050】
前記鎖伸長剤(A6)の配合割合としては、前記ウレタン樹脂(A)100質量部中、ウレタン樹脂の凝集力を調整する観点から、好ましくは、0~10質量部であり、より好ましくは、0~8質量部である。
【0051】
(水性媒体(B))
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤は、水性媒体(B)を含有することを特徴とする。前記蒸着フィルム用コーティング剤が水性媒体(B)を含有することにより、通常使用される有機溶剤を使用しないため、残留溶剤の問題がなく、有害な有機溶剤を大気中に放出しないため、好ましい。
【0052】
前記水性媒体(B)として、特に制限されないが、水に加えて、例えば、アルコール類やケトン類などが挙げられる。前記アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール(イソプロピルアルコール)、ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、その他のアルカノール(C5~38)および脂肪族不飽和アルコール(C9~24)、アルケニルアルコール、2-プロペン-1-オール、アルカジエノール(C6~8)、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられる。前記ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられ、中でも、水、及び/又は、イソプロピルアルコールであることが好ましく、水、及び、イソプロピルアルコールの混合溶剤であることが特に好ましい。これらは、単独または2種類以上併用することができる。
【0053】
前コーティング組成物100質量部中に、前記水性媒体(B)の配合割合としては、塗膜の均一な形成促進と水性媒体の乾燥速度向上の観点から、好ましくは、80質量部以上、より好ましくは80~90質量部である。
【0054】
(硬化剤(C))
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤は、硬化剤(C)(架橋剤)を含有することが好ましい。前記蒸着フィルム用コーティング剤が硬化剤(C)(以下、「架橋剤」という場合がある。)を含有することにより、前記ウレタン樹脂(A)(粒子)と前記硬化剤(C)が反応することで、得られるコーティング塗膜のガスバリア性、耐レトルト性や接着性の向上の点で、好ましい。
【0055】
前記硬化剤(C)としては、メラミン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、及び、水分散性ポリイソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、オキサゾリン架橋剤、アジリジン架橋剤などが挙げられ、中でも、ガスバリア性、接着性、及び、架橋剤の反応速度の観点から、メラミン架橋剤、カルボジイミド架橋剤、及び、水分散性ポリイソシアネート架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、メラミン架橋剤がより好ましい。なお、前記メラミン架橋剤を使用する際は、架橋反応速度の向上のため、メラミン架橋剤用の酸触媒を使用することができる。これらは、単独または2種類以上併用することができる。
【0056】
前記硬化剤(C)の配合割合としては、前記ウレタン樹脂(A)100質量部に対して、得られるコーティング塗膜の良好な接着性とガスバリア性を担保する観点から、好ましくは、2~10質量部であり、より好ましくは、3~7質量部である。
【0057】
(ガス捕捉成分)
また、本発明の蒸着フィルム用コーティング剤は、必要に応じて、更にガス捕捉機能を有する材料を添加してもよい。酸素捕捉機能を有する材料としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。水蒸気補足機能を有する材料としては、シリカゲル、ゼオライト、活性炭、炭酸カルシウム等の材料を挙げることができる。これら以外にも遮断したい対象ガスの捕捉成分を添加することができる。
【0058】
(その他添加剤)
更に、本発明の蒸着フィルム用コーティング剤は、必要に応じて、各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、分散安定剤、着色剤(顔料、染料など)、フィラー、コロイダルシリカ、無機粒子、無機酸化物粒子、結晶核剤、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂などが挙げられる。前記添加剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0059】
(ガスバリア性フィルム)
本発明は、前記蒸着フィルム用コーティング剤を蒸着フィルムにコーティングしたガスバリア性フィルムに関する。前記ガスバリア性フィルムは、前記蒸着フィルム用コーティング剤を使用することで、ガスバリア性に優れ、有用である。
【0060】
(蒸着フィルム)
本発明のガスバリア性フィルムは、蒸着フィルムが持つガスバリア性を向上させるものであり、前記蒸着フィルム用コーティング剤を塗布する対象としては各種蒸着フィルムを用いる。前記蒸着フィルム用コーティング剤をコーティングしたフィルムは、通常の蒸着フィルムよりも更にガスバリア性に優れるため、ハイガスバリアフィルムとして使用できる。
【0061】
(蒸着層の種類)
前記蒸着フィルムの蒸着層の種類としては、ガスバリア性を付与できるものであれば特に限定されない。現在、包装用に広く用いられている金属蒸着、または金属酸化物蒸着が好適に例示される。金属蒸着としては各種金属が例示できるが、特に安価で広く用いられているアルミニウムが好ましい。
【0062】
また、前記金属酸化物としては、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化ケイ素(SiOx)が、汎用性が高い材料として好ましく例示される。これ以外にも各種有機化合物、無機化合物を蒸着したフィルムや、複数種の材料を蒸着したものを用いても良い。蒸着方法としては特に制限はなく物理的蒸着法である真空蒸着法や、化学的蒸着法であるCVD法が例示できる。
【0063】
前記蒸着層の厚みは、蒸着層単独でも一定のガスバリア機能が発現できこれにコーティング層が設置されることで、さらに高バリアフィルムとできれば特に制限はない。但し、あまりに蒸着層が薄いとガスバリアに対する蒸着層の寄与が少なくなり本発明のコーティング剤を用いても十分なガスバリア機能が発現できなくなり、厚すぎても一定厚み以上ではバリア向上機能が少ないため、好ましくは3~70nmさらに好ましくは5~60nmである。また、これら蒸着フィルムには蒸着の保護として、オーバーコートやアンダーコートが予め施されていても、施されていなくても用いることができる。なお、コーティング層が無い蒸着フィルムでは、本発明のコーティング剤のバリア向上機能を十分に発揮することができるため好ましく用いられる。
【0064】
(接着剤層)
接着剤層は、接着剤の硬化塗膜である。ガスバリア性フィルムと、ヒートシール性などその他の機能を有するフィルムをラミネートするために、使用される。使用できる接着剤は、溶剤型もしくは、無溶剤型の接着剤を用いることができ、特に限定されない。
【0065】
(フィルムの種類)
本発明での蒸着フィルム用コーティング剤を使用するフィルム(基材)は、特に限定はなく、所望の用途に応じた熱可塑性樹脂フィルムを適宜選択することができる。例えば食品包装用としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:リニア低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)やポリプロピレンフィルム(CPP:未延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、シクロオレフィンコポリマフィルム等が挙げられる。これらのフィルムには延伸処理があっても、無くても好ましく用いることができる。延伸処理をほどこしているフィルム類は寸法安定性、剛性よりコーティング操作が容易で使いやすい利点がある。また、未延伸フィルムでは逆に基材の寸法安定性、剛性、耐熱性が劣るため蒸着層が欠陥を多く持ちガスバリアが安定しないことが多いので、前記蒸着フィルム用コーティング剤を用いることで、バリア機能の強化に大きな効果をだせる利点がある。
【0066】
本発明では、さらに高いバリア機能を付与するためにポリビニルアルコールや、エチレン・ビニールアルコール共重合体、塩化ビニリデン等のガスバリア層を含有するバリア性フィルムを併用して、より高いバリア機能を付与しても良い。
【0067】
(コーティング方法)
本発明の蒸着フィルム用コーティング剤のコーティング方法としては、蒸着フィルムの蒸着面にコーティングができるのであれば特に制限はない。具体的な方法としては、コールコート、グラビアコート等の各種コーティング方法を例示することができる。また、コーティングに用いる装置についても特に限定はない。
【0068】
(コーティング膜厚)
本発明のコーティング剤を塗布する膜厚は特に制限はないが、例えば、0.1μm以上あればバリア向上効果をだすことができ、乾燥性とのバランスにより、好ましくは0.2~5μmの範囲である。
【0069】
(コーティング剤が使用される層構成)
本発明のコーティング剤が用いられる層構成としては、以下の構成が想定される。なお、前記コーティング剤が、蒸着層直上にコーティングされることにより、良好なガスバリア性を付与することができる。
1)フィルム+金属酸化物蒸着層+コーティング剤(塗膜)+接着剤層+CPPフィルム
2)フィルム+金属酸化物蒸着層+コーティング剤(塗膜)+インキ+接着剤層+CPPフィルム
3)フィルム+金属蒸着層+コーティング剤(塗膜)+接着剤層+CPPフィルム
4)フィルム+金属蒸着層+コーティング剤(塗膜)+インキ+接着剤層+CPPフィルム
【0070】
(透過を遮断できるガス成分種類)
本発明のコーティング剤を利用したガスバリア用フィルムが遮断できるガスとしては、酸素、水蒸気の他、二酸化炭素、窒素、アルゴン等の不活性ガス、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール成分、フェノール、クレゾール等のフェノール類の他、低分子化合物からなる香気成分類、例えば、醤油、ソース、味噌、レモネン、メントール、サリチル酸メチル、コーヒー、ココアシャンプー、リンス、等の香り成分を例示することができる。
【0071】
(包装材及びその他用途)
本発明は、前記ガスバリア性フィルムを用いた包装材に関する。本発明のコーティング剤は、蒸着フィルムの水蒸気や酸素のバリア性を向上させ、高いラミネート強度も有するため、ラミネート作業が必要な各種包装材に用いることができ、更にその他の用途としては、例えば、太陽電池用保護フィルム用の接着剤や表示素子用水蒸気バリア性基板のコーティング剤等の電子材料用コーティング剤、建築材料用コーティング剤、工業材料用コーティング等、水蒸気、酸素のガスバリア性の強化を所望される用途であれば好適に使用できる。
【実施例】
【0072】
次に、本発明を、実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。また、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0073】
(ポリエステルポリオール(ポリエステル)の酸価(AN))
酸価(mgKOH/g)は、JIS-K0070に記載の酸価測定方法にて、測定した。
【0074】
(ポリエステルポリオール(ポリエステル)の水酸基価(OHV))
水酸基価(mgKOH/g)は、JIS-K0070に記載の水酸基価測定方法にて、測定した。
【0075】
(ポリエステルポリオール(ポリエステル)の数平均分子量(Mn))
ポリエステルポリオールの数平均分子量については、以下の式で計算して求めた。
Mn=2×56110/(OHV+AN)
【0076】
(PEs-1の合成)
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸621部、エチレングリコール380部、及び、チタニウムテトライソプロポキシド0.05部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が10mgKOH/g以下になったところで、減圧下100torrにて加熱を継続し、酸価が1mgKOH/g以下になったところで、エステル化反応を終了し、水酸基価から計算される数平均分子量518のポリエステルポリオール(ポリエステル)「PEs-1」を得た。
【0077】
以下、ポリエステルポリオール「PEs-1」と同様の方法で、表1に従って、ポリエステルポリオール「PEs-2」~「PEs-8」を合成した。
【0078】
【0079】
(ウレタン樹脂1の合成)
温度計、攪拌装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、上記得られたポリエステルポリオール「PEs-1」を338部、エチレングリコール74部、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)88部、メチルエチルケトン600部を加え、次いで、トリレンジイソシアネート(TDI)435部を加えて、75℃で8時間反応した。次いで、50℃まで冷却し、トリエチルアミン66部を加えて、中和した後、水4200部を加えて、水溶化した。得られた透明な反応生成物を減圧下、40~60℃にてメチルエチルケトンを除去した後、水を加えて濃度調節を行うことによって、不揮発分23%の安定なウレタン樹脂1を得た。
【0080】
以下、ウレタン樹脂1と同様の方法で、表2に従って、ウレタン樹脂2~7を合成した。
【0081】
【0082】
(コーティング剤の調製、及び、バリア用積層フィルムの作製)
(実施例1)
上記得られたウレタン樹脂1の100部に対して、表3に従い、硬化剤(架橋剤)、及び、触媒を加え、水性媒体である水とイソプロピルアルコール(IPA)により希釈することで、不揮発分15%の均一なコーティング剤を調製した。
【0083】
以下、実施例1と同様の方法で、表3及び4に従って、実施例2~9、及び、比較例2~5のコーティング剤を調製した。なお、比較例1は、コーティング剤を使用しない例であり、実施例3等は、硬化剤等を使用しない例である。
【0084】
【0085】
【0086】
ここで、上記表3及び4中の、硬化剤(架橋剤)、及び、触媒などに関する略語について、以下に示した。
(架橋剤)
XW3106:allnex社製、サイメルXW3106(メラミン架橋剤)
SV-02:日清紡ケミカル(株)製、カルボジライトSV-02(カルボジイミド架橋剤)
V-02-L2:日清紡ケミカル(株)製、カルボジライトV-02-L2 (カルボジイミド架橋剤)
WT31-100:旭化成(株)製デュラネートWT31-100(水分散型ポリイソシアネート)
(触媒)
NACURE2500:KING INDUSTRIES社製、NACURE2500(メラミン架橋剤用酸触媒)
【0087】
上記得られた各コーティング剤を、基材であるアルミナ蒸着PETフィルム(東レフィルム加工(株)製、バリアロックス1011HG #12)の蒸着面側にバーコーター#4を用いて、塗布量0.5g/m2(固形分)になるように塗工し、150℃設定の乾燥機中に1分間設置し、均一なコーティング層(コーティング塗膜)を有するガスバリア性フィルムを得た。
【0088】
次いで、前記コーティング層の表面に、ディックドライLX-703VL(DICグラフィックス社製、溶剤系ポリエステルポリオール)と、KR-90(DICグラフィックス社製、ポリイソシアネート架橋剤)を15/1の質量比で配合し、不揮発分が30%となるように、酢酸エチルを配合して接着剤とした。
得られた接着剤を、バーコーターを用いて、塗布量3.0g/m2となるように塗工し、ドライヤーで80℃の熱風により溶媒を揮発させ、接着剤層を形成した。
次いで、温度40℃、圧力0.4MPa、ラミネート速度40m/minにて、CPPフィルムZK-207(東レ(株)製、70μm厚)とドライラミネートして、積層フィルムを得た。この積層フィルムを、設定温度40℃の乾燥機中に3日間静置し、乾燥・硬化させ、試験評価用のバリア用積層フィルムを得た。
【0089】
(常態の酸素透過度)
得られた前記バリア用積層フィルムを、MOCON社製、OX-TRAN 2/22を用いて、JIS-K7126(等圧法)に準じ、23℃×0%RH(相対湿度)雰囲気下で、常態の酸素透過度(cc/(m2・day・atm))を測定した。
【0090】
(レトルト処理後の酸素透過度)
得られた前記バリア用積層フィルムを、三方シールし、水入りのパウチを作製したのち、121℃で30分間、レトルト処理を行った。その後、上記常態の酸素透過度と同様に、レトルト処理後の酸素透過度(cc/(m2・day・atm))を測定した。
【0091】
常態、及び、レトルト処理後の酸素透過度としては、好ましくは、7cc/(m2・day・atm)以下であり、より好ましくは、6cc/(m2・day・atm)以下であり、更に好ましくは、5cc/(m2・day・atm)である。
【0092】
(常態のラミネート接着強度)
得られた前記バリア用積層フィルムを、塗工方向に15mm幅に切断し、(株)エー・アンド・デイ製卓上型材料試験機STB-1225Lを用いて、雰囲気温度25℃、剥離速度を300mm/分に設定し、積層フィルム間(前記接着剤層と前記コーティング層の間)を180度剥離方法で剥離した際の引張強度をラミネート強度(N/15mm)とした。
【0093】
(レトルト処理後のラミネート接着強度)
得られた前記バリア用積層フィルムを、三方シールし、水入りのパウチを作製したのち、121℃で30分間、レトルト処理を行った。その後、上記常態のラミネート接着強度と同様に、レトルト処理後のラミネート接着強度(N/15mm)を測定した。
【0094】
常態、及び、レトルト処理後のラミネート接着強度としては、好ましくは、1.0N/15mm以上であり、より好ましくは、1.5N/15mm以上であり、更に好ましくは、2.5N/15mm以上である。
【0095】
以下、実施例、及び、比較例の積層フィルムの評価結果を表5及び6に示した。
【0096】
【0097】
【0098】
上記表5の評価結果より、全ての実施例が、常態及びレトルト処理後の酸素透過度が低く、ガスバリア性に優れることが確認できた。また、全ての実施例において、高いラミネート強度を示し、接着性にも優れることが確認できた。
【0099】
一方、比較例1では、蒸着層にコーティング層を有していないため、常態およびレトルト処理後の酸素透過度が実施例と比較して、劣ることが確認された。
比較例2~5では、コーティング剤を調製する際の原料に、炭素原子数2~6のアルキレングリコールを使用しなかったため、ポリエステルポリオール構造の親水性が高く、レトルト処理による塗膜の劣化が起こりやすくなっているため、レトルト処理後の酸素透過度が著しく劣ることが確認された。
比較例3では、ポリエステルポリオール部分にジエチレングリコールを用いており、親水性が高いため、レトルト処理後に塗膜の接着性が低下したことに加えて、ウレタン樹脂中に占めるトリレンジイソシアネートの質量比率が40%以上と高く、硬いコーティング塗膜となっているため、レトルト処理後のデラミネーションが確認され、酸素透過度及びラミネート強度を測定することができず、実用レベルではないことが確認された。
【要約】
本発明は、ウレタン樹脂(A)、及び、水性媒体(B)を含有する蒸着フィルム用コーティング剤であって、前記ウレタン樹脂(A)が、多価カルボン酸成分(A1)と多価アルコール成分(A2)との重縮合体であるポリエステル(A3)、親水性基を有する活性水素基含有化合物(A4)、及び、ジイソシアネート(A5)を含有する組成物の反応生成物であり、前記ウレタン樹脂(A)が、前記ポリエステル(A3)に由来のエステル骨格を有し、前記多価カルボン酸(A1)の全量100質量%に対して、芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物の少なくとも1種を10~100質量%含有し、前記多価アルコール成分(A2)が、炭素原子数2~6のアルキレングリコールを含有する蒸着フィルム用コーティングを提供する。この蒸着フィルム用コーティングは、常態、及び、レトルト処理後であっても、優れたガスバリア性、及び接着性を発現する。