(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20240214BHJP
C08J 9/06 20060101ALI20240214BHJP
C08F 220/06 20060101ALI20240214BHJP
C08F 6/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C08J3/12 A
C08J9/06 CER
C08F220/06
C08F6/00
(21)【出願番号】P 2022539708
(86)(22)【出願日】2021-08-17
(86)【国際出願番号】 KR2021010870
(87)【国際公開番号】W WO2022080641
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0134425
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュンウェ・イ
(72)【発明者】
【氏名】チャン・フン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】テ・ヨン・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジュンミン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ヘミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジヘ・リュ
(72)【発明者】
【氏名】ミンス・キム
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-518874(JP,A)
【文献】特開2014-098172(JP,A)
【文献】国際公開第2020/189539(WO,A1)
【文献】特表2019-518821(JP,A)
【文献】特開2000-063527(JP,A)
【文献】特表2007-529295(JP,A)
【文献】国際公開第2011/126079(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/221154(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/06
C08F 6/00
C08J 3/00-3/28
C08J 9/06
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を発泡剤の存在下で架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階(段階1);
2)前記含水ゲル重合体をゲル粉砕する段階(段階2);
3)前記ゲル粉砕された含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階(段階3);および
4)表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂粉末を熱処理して表面架橋する段階(段階4)を含み、
前記ゲル粉砕段階は、円筒型粉砕機の内部に取り付けられたスクリュー型押出機を用いて前記含水ゲル重合体を複数の孔が形成された多孔板に押し出しながら、下記計算式1による55~75のチョッピング指数の条件下で行われる、高吸水性樹脂の製造方法:
【数1】
前記計算式1において、
Nはスクリュー型押出機でのスクリューの回転数(rpm)であり、
Aは前記多孔板の開口率(πr
2×n/πR
2)であり、
ここで、前記rは前記多孔板に形成された孔の半径(mm)であり、前記nは前記多孔板に形成された孔の個数であり、前記Rは前記多孔板の半径(mm)である。
【請求項2】
前記発泡剤は炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、p-トルエンスルホニルヒドラジド、ステアリン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、およびラウリン酸スクロースからなる群より選ばれた1種以上の化合物を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記チョッピング指数は60~70である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記高吸水性樹脂の破砕抵抗指数が-0.3~0である、請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記高吸水性樹脂のCRCが27~40g/gである、請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記高吸水性樹脂のAUPは24~30g/gである、請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記高吸水性樹脂のボルテックス(vortex)は45秒以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記高吸水性樹脂の通液性(permeability)は60秒以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2020年10月16日付韓国特許出願第10-2020-0134425号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は優れた吸収性能を維持しながらも、向上した吸収速度を示す高吸水性樹脂の製造を可能にする高吸水性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(super absorbent polymer,SAP)は、自重の約5百ないし1千倍程度の水分を吸収できる合成高分子物質であって、SAM(super absorbency material)、AGM(absorbent gel material)などとも呼ばれている。
【0004】
高吸水性樹脂は生理用品として実用化され始め、現在は乳児用おむつなどの衛生用品、園芸用土壌保水剤、土木用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤など多様な分野に広く使用されている。最も多くの場合に、このような高吸水性樹脂はおむつや生理用ナプキンなど衛生材分野で広く使用されているが、このような用途のために水分などに対する高い吸収力を示す必要があり、外部の圧力にも吸収された水分が抜け出てはならず、それに加えて、水を吸収して体積膨張(膨潤)した状態でも形態をよく維持して優れた通液性(permeability)を示す必要がある。
【0005】
最近では薄いおむつに対する要求が高まるにつれ、おむつ内の吸水性樹脂の割合が増加する傾向がある。したがって、おむつの繊維材が担当していた性能を吸水性樹脂が兼ね備える必要性があり、これのために吸水性樹脂の高い吸収倍率は勿論高い吸収速度および通液性を有しなければならない。
【0006】
一例として、高吸水性樹脂の吸収速度を向上させるための方法として、発泡重合などにより高吸水性樹脂内に多孔性構造を導入する方法が最も広く知られている。しかし、このような方法で多孔性構造を導入する場合、高吸水性樹脂内に十分な架橋構造が導入されず通液性または加圧下吸収能などが低下し得、延いては、発泡重合の過度な進行などにより高吸水性樹脂の基本的な吸収性能自体が低下し得る。
【0007】
一方、吸水性樹脂の製造において、製造工程上必須として空気移送過程を 経る。このような空気移送は高圧気体により移送されるが、移送ラインの曲がった部分を通過するかまたは通過後の移送ラインの内壁に吸水性樹脂がぶつかって表面の損傷が発生し、そのため吸水性樹脂の物性下落を招く。
【0008】
これによって、前記物性上のトレードオフ(trade off)関係を克服して、優れた高吸水性樹脂の吸収性能を維持しながらも、吸収速度をより向上させ得る技術開発が引き続き求められており、特に空気移送過程における吸水性樹脂の表面損傷現象を最小化できる方法が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は高吸水性樹脂の製造過程中の空気移送過程で、または最終的に製造された高吸水性樹脂の空気移送過程で吸水性樹脂の表面損傷現象を最小化し、高吸水性樹脂の優れた吸収性能を維持しながらも、向上した吸収速度を示す高吸水性樹脂の製造を可能にする高吸水性樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は下記の段階を含む高吸水性樹脂の製造方法を提供する:
1)少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を発泡剤の存在下で架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階(段階1);
2)前記含水ゲル重合体をゲル粉砕する段階(段階2);
3)前記ゲル粉砕された含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階(段階3);および
4)表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂粉末を熱処理して表面架橋する段階(段階4)を含み、
前記ゲル粉砕段階は、円筒型粉砕機の内部に取り付けられたスクリュー型押出機を用いて前記含水ゲル重合体を複数の孔が形成された多孔板に押し出しながら、下記計算式1による55~75のチョッピング指数の条件下で行われる、
高吸水性樹脂の製造方法:
【0011】
【0012】
前記計算式1において、
Nはスクリュー型押出機でのスクリューの回転数(rpm)であり、
Aは前記多孔板の開口率(πr2×n/πR2)であり、
ここで、前記rは前記多孔板に形成された孔の半径(mm)であり、前記nは前記多孔板に形成された孔の個数であり、前記Rは前記多孔板の半径(mm)である。
【0013】
本発明で、ゲル粉砕条件を前記チョッピング指数を満たすように制御することにより、優れた吸収性能を維持しながらも、吸収速度を大きく向上させることができ、特に高吸水性樹脂の製造過程中の空気移送過程における高吸水性樹脂の表面損傷現象を最小化でき、これは後述する「破砕抵抗指数」で数値化して確認することができる。
【0014】
理論的に制限されるものではないが、上述したチョッピング指数を制御することにより、前記含水ゲル重合体が非常に均一に粉砕され、高吸水性樹脂の内部に発達した多孔性構造が導入されながらも、このようなゲル粉砕および多孔性構造の導入が均一に行われ、高吸水性樹脂の表面損傷が最小化されると予測される。
【0015】
したがって、一実施形態の方法によれば、既に知られている物性上のトレードオフ(trade off)関係を克服して、優れた吸収性能を維持しながらも、吸収速度がより向上した高吸水性樹脂が製造および提供されることができる。
【0016】
以下、各段階別に本発明を詳細に説明する。
【0017】
(段階1)
前記段階1は、含水ゲル重合体を製造する段階であって、具体的には、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を含む単量体組成物を発泡剤の存在下で架橋重合して含水ゲル重合体を形成する段階である。
【0018】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は高吸水性樹脂の製造に通常使用される任意の単量体であり得る。具体的には、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は下記化学式1で表される化合物であり得る:
【0019】
[化学式1]
R1-COOM1
【0020】
前記化学式1において、
R1は不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
M1は水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0021】
好ましくは、前記水溶性エチレン系不飽和単量体はアクリル酸、メタクリル酸、およびこれら酸の1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選ばれた1種以上であり得る。このように水溶性エチレン系不飽和単量体としてアクリル酸またはその塩を使用する場合、吸水性が向上した高吸水性樹脂が得られるため有利である。その他にも前記単量体としては無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のアニオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたは(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選ばれた1種以上を使用することができる。
【0022】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和したものであり得る。好ましくは前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ物質で部分的に中和させたものが使用できる。
【0023】
この時、前記単量体の中和度は40~95モル%、または40~80モル%、または45~75モル%であり得る。前記中和度の範囲は最終物性によって変わり得るが、中和度が過度に高いと中和した単量体が析出されて重合が円滑に行われにくく、逆に中和度が過度に低いと高分子の吸収力が大きく落ちるだけでなく取り扱いが困難な弾性ゴムのような性質を示し得る。
【0024】
前記単量体組成物には高吸水性樹脂の製造に一般に使用される重合開始剤が含まれ得る。
【0025】
前記重合開始剤としては重合方法により熱重合開始剤または光重合開始剤などが使用できる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などによって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によってある程度の熱が発生するので、熱重合開始剤が追加で含まれ得る。
【0026】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(a-aminoketone)からなる群より選ばれた一つ以上の化合物が使用できる。その中でアシルホスフィンの具体的な例として、商用のlucirin TPO、すなわち、2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-トリメチルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethyl-benzoyl-trimethyl phosphine oxide)が使用できる。より多様な光重合開始剤についてはReinhold Schwalmの著書である「UV Coatings: Basics, Recent Developments and New Application(Elsevier, 2007)」の115頁に開示されており、これを参照することができる。
【0027】
前記熱重合開始剤としては過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素、およびアスコルビン酸からなる群より選ばれた一つ以上の化合物が使用できる。具体的には、過硫酸塩系開始剤としては過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na2S2O8)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K2S2O8)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH4)2S2O8)などが例に挙げられる。また、アゾ(Azo)系開始剤としては2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane) dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitrile)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane] dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などが例に挙げられる。より多様な熱重合開始剤についてはOdianの著書である「Principle of Polymerization(Wiley, 1981)」の203頁に開示されており、これを参照することができる。
【0028】
このような重合開始剤は前記単量体組成物に対して0.001~1重量%、あるいは0.005~0.1重量%の濃度で添加され得る。すなわち、前記重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり、最終製品に残存モノマーが多量から抽出され得るので好ましくない。逆に、前記重合開始剤の濃度が過度に高い場合、ネットワークをなす高分子鎖が短くなって、水可溶成分の含有量が高くなり加圧吸収能が低くなるなど樹脂の物性が低下し得るので好ましくない。
【0029】
なお、前記単量体組成物の重合は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重合による樹脂の物性を向上させるために架橋剤(「内部架橋剤」)の存在下で行われる。前記架橋剤は含水ゲル重合体を内部架橋させるためのものとして、後述する「表面架橋剤」とは別に使用され得る。
【0030】
前記内部架橋剤としては前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重合時架橋結合の導入を可能にするものであればいかなる化合物も使用可能である。非制限的な例として、前記内部架橋剤はN,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、トリアリルアミン、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、またはエチレンカーボネートなどの多官能性架橋剤が単独使用または2以上併用できる。
【0031】
このような内部架橋剤は前記単量体組成物に対して0.001~1重量%、あるいは0.01~0.8重量%、あるいは0.1~0.7重量%の濃度で添加され得る。すなわち、前記内部架橋剤の濃度が過度に低い場合、樹脂の吸収速度が低くなりゲル強度が弱くなり得るので好ましくない。逆に、前記内部架橋剤の濃度が過度に高い場合、樹脂の吸収力が低くなり吸収体として好ましくない。
【0032】
また、前記単量体組成物の架橋重合は吸収速度の向上必要性および程度によって、発泡剤の存在下で行われる。このような発泡剤は前記架橋重合反応過程で分解されて気体を発生させ、そのため含水ゲル重合体内に気孔を形成する。その結果、このような発泡剤の追加使用時高吸水性樹脂内により発達した多孔性構造が形成され、高吸水性樹脂の吸収速度がより一層向上することができる。
【0033】
非制限的な例として、前記発泡剤は炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)、炭酸ナトリウム(sodium carbonate)、炭酸水素カリウム(potassium bicarbonate)、炭酸カリウム(potassium carbonate)、炭酸水素カルシウム(calcium bicarbonate)、炭酸カルシウム(calcium bicarbonate)、重炭酸マグネシウム(magnesium bicarbonate)、炭酸マグネシウム(magnesium carbonate)、アゾジカルボンアミド(azodicarbonamide,ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(dinitroso pentamethylene tetramine,DPT)、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(p,p’-oxybis(benzenesulfonyl hydrazide)、OBSH)、p-トルエンスルホニルヒドラジド(p-toluenesulfonyl hydrazide,TSH)、ステアリン酸スクロース(sucrose stearate)、パルミチン酸スクロース(sucrose palmitate)、およびラウリン酸スクロース(sucrose laurate)からなる群より選ばれた1種以上の化合物を含むことができる。
【0034】
前記発泡剤は前記単量体組成物に1000~4000ppmwの含有量で存在し得、より具体的には、1000ppm以上、あるいは1100ppmw以上、あるいは1200ppmw以上;そして4000ppmw以下、あるいは3500ppmw以下、あるいは3000ppmw以下の含有量で存在し得る。
【0035】
この他にも、前記単量体組成物には必要に応じて増粘剤、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤がさらに含まれ得る。
【0036】
そして、このような単量体組成物は前述した水溶性エチレン系不飽和単量体、重合開始剤、内部架橋剤、発泡剤などの原料物質が溶媒に溶解した溶液の形態で準備される。
【0037】
この時、使用可能な溶媒としては前述した原料物質を溶解させ得るものであればその構成の限定なく使用できる。例えば、前記溶媒としては水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテート、N,N-ジメチルアセトアミド、またはこれらの混合物など使用できる。
【0038】
前記単量体組成物の重合による含水ゲル重合体の形成は通常の重合方法で行われ得、その工程は特に限定されない。
【0039】
非制限的な例として、前記重合方法は重合エネルギ源の種類によって大きく熱重合と光重合に分けられるが、前記熱重合を行う場合はニーダー(kneader)などの攪拌軸を有する反応器で行われ、光重合を行う場合は移動可能なコンベヤーベルトが備えられた反応器で行われる。
【0040】
一例として、攪拌軸が備えられたニーダーなどの反応器に前記単量体組成物を投入し、ここに熱風を供給したり反応器を加熱して熱重合することによって含水ゲル重合体を得ることができる。この時、反応器に備えられた攪拌軸の形態によって反応器の排出口に排出される含水ゲル重合体は数ミリメートルないし数センチメートルの粒子で得られる。具体的には、得られる含水ゲル重合体は注入される単量体組成物の濃度および注入速度などによって多様な形態で得られるが、通常(重量平均)粒径が2~50mmの含水ゲル重合体が得られる。
【0041】
そして、他の一例として、移動可能なコンベヤーベルトが備えられた反応器で前記単量体組成物に対する光重合を行う場合はシート状の含水ゲル重合体が得られる。この時、前記シートの厚さは注入される単量体組成物の濃度および注入速度によって変わるが、シート全体が均等に重合されるようにしながらも生産速度などを確保するために、通常0.5~10cmの厚さに調節されることが好ましい。
【0042】
このような方法で形成される含水ゲル重合体は40~80重量%の含水率を示すことができる。ここで、含水率は含水ゲル重合体の全体重量において水分が占める重量であって、含水ゲル重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値であり得る。具体的には、赤外線加熱によって重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値で定義できる。この時、乾燥条件は常温から約180℃まで温度を上昇させた後180℃で維持する方式で総乾燥時間は温度上昇段階5分を含んで20分に設定される。
【0043】
(段階2)
本発明の段階2は、先立って段階1で製造した含水ゲル重合体をゲル粉砕する段階である。
【0044】
前記粉砕により、含水ゲル重合体の大きさを減らし、表面積を広げて後続乾燥効率を上げることができる。特に、前述したように、前記チョッピング指数を満たすようにゲル粉砕条件を調節して、前記含水ゲル重合体が非常に均一に粉砕され、空気移送過程で高吸水性樹脂の表面損傷を最小化することができる。前記「空気移送過程」とは、前記段階2以後に行われる各段階での生成物を、または最終的に製造された高吸水性樹脂を、移送ラインを介して高吸水性樹脂が高圧気体により移送される過程を意味する。
【0045】
一方、含水ゲル重合体のゲル粉砕時、前記含水ゲル重合体にはせん断力と圧縮力が作用するが、本発明ではゲル粉砕条件を制御してせん断力と圧縮力を適切な範囲に制御することを特徴とする。前記せん断力は含水ゲル重合体を粉砕機に押し出す時に作用する力に関連し、前記圧縮力は含水ゲル重合体が粉砕機を通過する時に作用する力に関連する。
【0046】
具体的には、前記含水ゲル重合体をゲル粉砕する段階は、円筒型粉砕機の内部に取り付けられたスクリュー型押出機を用いて前記含水ゲル重合体を複数の孔が形成された多孔板に押し出しながら、前記計算式1による55~75のチョッピング指数の条件下で行われる。
【0047】
前記チョッピング指数は上述した計算式1により算出でき、その具体的な算出方法は後述する実施例で詳細に説明する。より好ましくは、前記チョッピング指数は56以上、57以上、58以上、59以上、または60以上であり、74以下、73以下、72以下、71以下、または70以下である。
【0048】
上述したゲル粉砕工程を行うと、クラム(crum)形態の含水ゲル重合体粒子が形成され得、後続乾燥、粉砕および分級工程を行うと、非常に発達した多孔性構造が均一に導入されたベース樹脂粉末が得られる。
【0049】
このようなゲル粉砕を行った後、クラム形態で形成される含水ゲル重合体粒子は0.1mm~10mmの粒径を有することができる。すなわち、乾燥効率の増大のために前記含水ゲル重合体は10mm以下の粒子で粉砕されることが好ましい。しかし、過度な粉砕時粒子間の凝集現象が発生し得るので、前記含水ゲル重合体は0.1mm以上の粒子に粉砕されることが好ましい。
【0050】
また、前記含水ゲル重合体の粉砕は、含水率が高い状態で行われるので粉砕機の表面に含水ゲル重合体がくっつく現象が現れる。このような現象を最小化するために、必要に応じて、スチーム、水、界面活性剤、凝集防止剤(例えばクレー(clay)、シリカ(silica)など);過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素、熱重合開始剤、エポキシ系架橋剤、ジオール(diol)類架橋剤、2官能基または3官能基以上の多官能基のアクリレートを含む架橋剤、水酸化基を含む1官能基の架橋剤などが含水ゲル重合体に添加され得る。
【0051】
(段階3)
本発明の段階3は、前記段階2でゲル粉砕された含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階である。
【0052】
前記乾燥は120~250℃、140~200℃、または150~190℃の温度下で行われる。この時、前記乾燥温度は乾燥のために供給される熱媒体の温度または乾燥工程で熱媒体および重合体を含む乾燥反応器内部の温度で定義できる。乾燥温度が低くて乾燥時間が長くなる場合、工程効率性が低下するので、これを防止するために乾燥温度は120℃以上であることが好ましい。また、乾燥温度が必要以上に高い場合、含水ゲル重合体の表面が過度に乾燥されて後続工程の粉砕段階で微粉発生が多くなり得、最終樹脂の物性が低下し得るが、これを防止するために乾燥温度は250℃以下であることが好ましい。
【0053】
この時、前記乾燥段階での乾燥時間は特に制限されないが、工程効率および樹脂の物性などを考慮し、前記乾燥温度下で20分~90分に調節できる。
【0054】
前記乾燥は通常の媒体を用いて行われるが、例えば、前記粉砕された含水ゲル重合体に対する熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法により行われることができる。
【0055】
そして、このような乾燥は乾燥された重合体が0.1~10重量%の含水率を有するように行われることが好ましい。すなわち、乾燥された重合体の含水率が0.1重量%未満の場合、過度な乾燥による製造原価の上昇および架橋重合体の分解(degradation)が起き得るため好ましくない。そして、乾燥された重合体の含水率が10重量%を超える場合、後続工程で不良が発生し得るため好ましくない。
【0056】
次に、前記乾燥された含水ゲル重合体を粉砕する。これはベース樹脂粉末および高吸水性樹脂の表面積を最適化するための段階である。前記粉砕は、粉砕された重合体の粒径が150~850μmになるように行われる。
【0057】
この時、用いられる粉砕機としてはピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)、ジョグミル(jog mill)など通常のものが用いられる。
【0058】
また、最終製品化される高吸水性樹脂の物性を管理するために、前記粉砕段階により得られる重合体粒子で150~850μmの粒径を有する粒子を選択的に分級する段階を行う。
【0059】
以上の分級段階まで経てベース樹脂粉末を得ることができる。このようなベース樹脂粉末は150~850μmの粒径を有し得、150μm未満の粒径を有する微粉を2重量%以下、あるいは1重量%以下で含むことができる。
【0060】
より具体的には、前記ベース樹脂粉末は300~600μmの粒径を有する粒子を60重量%以上で含み、前記300~600μmの粒径を有するベース樹脂粉末全体を電子顕微鏡写真により表面を観察した時、多孔性粒子が、全体ベース樹脂粉末に対して60個の数%以上、あるいは60~80個数%、あるいは60~70個数%の割合で含まれ得る。この時、「多孔性粒子」とは、深さ10μm以上の凹部が粒子表面の1/3以上を占める粒子を指すか、表面から深さ10μm以上の凹部または気孔が表面で3個以上観察される粒子を指す。
【0061】
このようなベース樹脂粉末の多孔性構造および多孔性粒子の高い比率は最終的に製造された高吸水性樹脂でも維持され得、これは電子顕微鏡で表面分析および観察により確認されることができる。
【0062】
(段階4)
本発明の段階4は、表面架橋剤の存在下で、前記段階3で製造したベース樹脂粉末を熱処理して表面架橋する段階である。
【0063】
このような表面架橋段階により、前記ベース樹脂粉末上に追加的な表面架橋層が形成される。このような表面架橋段階は一般的な高吸水性樹脂の表面架橋条件下で行われ得、例えば、表面架橋剤を含む溶液と前記ベース樹脂粉末を混合して架橋反応させる方法で行われ得る。
【0064】
ここで前記表面架橋剤としては前記ベース樹脂粉末が有する官能基と反応可能な化合物であって、炭素数2~5のアルキレンカーボネートが好ましい。より好ましくは、前記表面架橋剤としてエチレンカーボネートを使用できる。また、前記表面架橋剤とともに、多孔性シリカ(silica)やクレー(clay)などをさらに含むことができる。また、前記表面架橋剤の浸透速度および深さを調節するために必要に応じて酸性化合物や高分子などをさらに添加することもできる。
【0065】
この時、前記表面架橋剤の含有量は架橋剤の種類や反応条件などに応じて適宜調節でき、好ましくは前記ベース樹脂粉末100重量部に対して0.001~5重量部、あるいは0.01~4重量部、あるいは0.1~3重量部に調節できる。前記表面架橋剤の含有量が過度に低くなると、表面改質が十分に行われず、最終樹脂の通液性やゲル強度などが低下し得る。逆に過量の表面架橋剤が使用されると、過度な表面架橋反応により樹脂の吸収力がかえって低下し得るので好ましくない。
【0066】
一方、前記表面架橋段階は、前記表面架橋剤とベース樹脂粉末を反応槽に入れて混合する方法、ベース樹脂粉末に表面架橋剤を噴射する方法、連続して運転されるミキサーにベース樹脂粉末と表面架橋剤を連続して供給して混合する方法など通常の方法で行われることができる。
【0067】
また、前記表面架橋剤を添加する時、追加的に水が添加され得る。このように表面架橋剤と水が共に添加されることによって表面架橋剤の均一な分散が誘導され得、重合体粒子の塊り現象が防止され、重合体粒子に対する表面架橋剤の浸透の深さがより最適化することができる。このような目的および効果を考慮し、表面架橋剤と共に添加される水の含有量は前記ベース樹脂粉末100重量部に対して0.5~10重量部に調節できる。
【0068】
そして、前記表面架橋段階は100~250℃の温度下で行われる。また、前記表面改質は1分~120分、好ましくは1分~100分、より好ましくは10分~80分間行う。すなわち、最小限度の表面架橋反応を誘導しながらも過度な反応時重合体粒子が損傷して物性が低下することを防止するために、前記表面架橋段階は前述した条件で行われる。
【0069】
(高吸水性樹脂)
また、本発明は上述した本発明の製造方法により製造された高吸水性樹脂が提供される。
【0070】
前記高吸水性樹脂は、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および前記ベース樹脂粉末上に形成され、前記架橋重合体が表面架橋剤を媒介に追加架橋した表面架橋層を含む。また、前記高吸水性樹脂は150~850μmの粒径を有する粒子として得られる。
【0071】
上述した本発明による製造方法で製造された高吸水性樹脂は、上述したゲル粉砕条件を満たすことで、空気移送過程で吸水性樹脂の表面損傷現象を最小化して、高吸水性樹脂の優れた吸収性能を維持することができる。
【0072】
特に、高吸水性樹脂の製造過程中の空気移送過程での高吸水性樹脂の表面損傷現象の程度は破砕抵抗指数で数値化して確認できる。前記「破砕抵抗指数」は、下記破砕法による高吸水性樹脂を破砕した後、破砕前後による球形度(sphericity)の差異により計算でき、その具体的な方法は後述する実施例で詳細に説明する。好ましくは、前記高吸水性樹脂の破砕抵抗指数は-0.3~0である。
【0073】
後述する実施例および比較例で確認されるように、上述した本発明によるチョッピング指数を適用した場合には、破砕抵抗指数が高く示され、また、高吸水性樹脂の物性が向上した。反面、上述した本発明によるチョッピング指数を適用しなかった場合には、高吸水性樹脂の物性が低下したり、または破砕抵抗指数が低く示された。
【0074】
また、前記破砕抵抗指数が高いことは高吸水性樹脂を空気移送ラインにより移送させた時高吸水性樹脂の物性が低下しないことを意味する。
【0075】
また、前記の他にも、本発明による高吸水性樹脂はCRC、AUP、ボルテックス(vortex)および通液性に優れる。
【0076】
本発明で使用する用語の「CRC(Centrifugal Retention Capacity)」は、保水能ともいい、無荷重下で吸収できる溶液の量を意味する。前記CRCはEDANA WSP 241.3に従って測定することができ、具体的な測定方法は以下の実施例で詳細に説明する。好ましくは、前記高吸水性樹脂のCRCは27~40g/gである。より好ましくは、前記高吸水性樹脂のCRCは27.5以上、または28.0以上であり、35g/g以下である。
【0077】
本発明で使用する用語の「AUP(Absorbency Under Pressure)」は、加圧下吸収能ともいい、一定の圧力下で吸収できる溶液の量を意味する。前記AUPはEDANA法WSP 242.3に従って測定することができ、具体的な測定方法は以下の実施例で詳細に説明する。好ましくは、前記高吸水性樹脂のAUPは24~30g/gである。より好ましくは、前記高吸水性樹脂のAUPは24.5g/g以上である。
【0078】
本発明で使用する用語の「ボルテックス(vortex)」は、吸収速度ともいい、溶液を高吸水性樹脂内に吸収する速度を意味する。前記vortexの具体的な測定方法は以下の実施例で詳細に説明する。好ましくは、前記高吸水性樹脂のvortexは45秒以下である。より好ましくは、前記高吸水性樹脂のvortexは44秒以下、43秒以下、42秒以下、41秒以下、または40秒以下である。一方、前記vortexはその値が小さいほど優れ、理論的な下限は0秒であるが、一例として前記高吸水性樹脂のvortexは20秒以上、25秒以上、または30秒以上である。
【0079】
本発明で使用する用語の「通液性(permeability)」は、高吸水性樹脂に吸収された溶液を他の高吸水性樹脂に迅速に伝達する能力を意味し、換言すれば高吸水性樹脂内で溶液の移動性を意味する。一方、通液性の具体的な測定方法は以下の実施例で詳細に説明する。好ましくは、前記高吸水性樹脂の通液性(permeability)は65秒以下である。より好ましくは、前記高吸水性樹脂の通液性(permeability)は60秒以下、55秒以下、50秒以下、45秒以下、または40秒以下である。一方、前記通液性(permeability)は、その値が小さいほど優れ、理論的な下限は0秒であるが、一例として前記高吸水性樹脂の通液性(permeability)は20秒以上、25秒以上、または30秒以上である。
【発明の効果】
【0080】
本発明による高吸水性樹脂の製造方法は、高吸水性樹脂の製造過程中の空気移送過程で、または最終的に製造された高吸水性樹脂の空気移送過程で吸水性樹脂の表面損傷現象を最小化して、高吸水性樹脂の優れた吸収性能を維持しながらも、向上した吸収速度を示す高吸水性樹脂の製造を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】
図1は、本発明の実施例で破砕抵抗指数の測定のための装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
以下、発明の理解を深めるために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は本発明を例示するためであり、本発明はこれらにだけに限定されるものではない。
【0083】
以下の実施例および比較例で各物性は下記の方法で測定した。
【0084】
(1)CRC(Centrifugal Retention Capacity)
EDANA WSP 241.3に従って測定した。具体的には、高吸水性樹脂W0(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%)に浸水させた。30分経過後、遠心分離機を用いて250Gの条件下で前記封筒から3分間水気を取って、封筒の質量W2(g)を測定した。また、高吸水性樹脂を用いずに同じ操作をした後にその時の質量W1(g)を測定した。得られた各質量を用いて次のような式によりCRC(g/g)を算出した。
【0085】
[計算式2]
CRC(g/g)={[W2(g)-W1(g)]/W0(g)}-1
【0086】
(2)AUP(加圧吸収能)
高吸水性樹脂の0.7psi(または0.18psi)の加圧吸収能を、EDANA法WSP 242.3に従って測定した。
【0087】
具体的には、内径25mmのプラスチックの円筒の底にステンレス製400mesh金網を取り付けた。常温および湿度50%の条件下で金網上に高吸水性樹脂W0(g)を均一に散布し、その上に0.7psi(または0.18psi)の荷重を均一にさらに付与できるピストンは外径25mmより若干小さくて円筒の内壁との間隙がなく上下動きが妨げられないようにした。この時、前記装置の重量W3(g)を測定した。
【0088】
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmおよび厚さ5mmのガラスフィルタを置いて、0.9重量%塩化ナトリウムで構成された生理食塩水をガラスフィルタの上面と同一レベルになるようにした。その上に直径90mmの濾過紙1枚を載せた。濾過紙の上に前記測定装置を載せ、液を荷重下で1時間の間吸収させた。1時間後測定装置を持ち上げて、その重量W4(g)を測定した。
【0089】
得られた各質量を用いて次のような計算式により加圧吸収能(g/g)を算出した。
【0090】
[計算式3]
AUP(g/g)=[W4(g)-W3(g)]/W0(g)
【0091】
(3)Vortex(吸収速度)
吸収速度は国際公開第1987-003208号に記載された方法に準じて秒単位で測定された。
【0092】
具体的には、23℃~24℃の50mLの生理食塩水に高吸水性樹脂2gを入れ、マグネチックバー(直径8mm、長さ31.8mm)を600rpmで攪拌して渦流(vortex)が消えるまでの時間を秒単位で測定した。
【0093】
(4)通液性(permeability)
通液性は次のような計算式で測定した。
【0094】
[計算式4]
Perm=[20mL/T1(秒)]×60秒
【0095】
前記計算式4において、
Permは高吸水性樹脂の通液性であり、
T1はシリンダーに高吸水性樹脂0.2gを入れて前記高吸水性樹脂が完全に浸るように生理食塩水(0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液)を注いで前記高吸水性樹脂を30分間膨潤させた後、0.3psiの圧力下で20mLの生理食塩水が膨潤された高吸水性樹脂を通過するまでかかった時間(秒)である。
【0096】
具体的には、シリンダーとピストンを準備した。前記シリンダーとしては内径が20mmであり、下端にガラスフィルター(glass filter)と栓(stopcock)が備えられたものが用いられた。前記ピストンとしては外径が20mmより若干小さくて前記シリンダーを上下に自由に動くことのできるスクリーンが下端に配置され、錘(weight)が上端に配置され、スクリーンと錘(weight)が棒によって連結されたものが用いられた。前記ピストンにはピストンの付加によって0.3psiの圧力を加えられる錘(weight)が設けられた。
【0097】
前記シリンダーの栓(stopcock)を閉めた状態で高吸水性樹脂0.2gを入れ、前記高吸水性樹脂が完全に浸るように過量の生理食塩水(0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液)を注いだ。そして、前記高吸水性樹脂を30分間膨潤させた。以後、膨潤された高吸水性樹脂の上に0.3psiの荷重が均一に付与されるようにピストンを付加した。
【0098】
次に、シリンダーの栓(stopcock)を開けて生理食塩水20mLが膨潤された高吸水性樹脂を通過するまでかかった時間を秒単位で測定した。この時、シリンダーに生理食塩水が40mL満たされている場合のメニスカスをマーキングしておいて、シリンダーに生理食塩水が20mL満たされている場合のメニスカスをマーキングしておけば、40mLに該当するレベルから20mLに該当するレベルに到達するまでかかる時間を測定して前記計算式4のT1を測定することができる。
【0099】
(5)破砕法および破砕抵抗指数
600~710um直径の高吸水性樹脂0.5kg~1kgを
図1の構造を有するPCS(Pneumatic Conveying system)空気移送ライン(diameter:1 inch、長さ:30m、90度bendingライン2ea)を介して圧縮空気で15~20m/sの速度で移送した後分級機を用いて再分級して600~710μm直径の高吸水性樹脂を回収した。
【0100】
前記回収した高吸水性樹脂をMalvern Morphology 4装置(Malvern Panalytical社)を用いて球形度(sphericity)を測定した後、次のような計算式で計算した。
【0101】
[計算式5]
破砕抵抗指数=((破砕後球形度)-(破砕前球形度))×100
【0102】
実施例1
高吸水性樹脂の製造装置としては重合工程、含水ゲル粉砕工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程、冷却工程、分級工程、および各工程を連結する輸送工程で構成される連続製造装置を用いた。
【0103】
(段階1)
アクリル酸100重量部に内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量:~500g/mol)0.6重量部および光開始剤としてIRGACURE 819 0.01重量部を混合して単量体溶液を製造した。次に、前記単量体溶液を定量ポンプで連続供給しながら、同時に31重量%水酸化ナトリウム水溶液140重量部を連続してラインミキシングして単量体水溶液を製造した。この時、中和熱によって前記単量体水溶液の温度が約72℃以上に上昇したことを確認した後、温度が40℃に冷却されるまで待った。温度が40℃に冷却された時、前記単量体水溶液に発泡剤である固体状の炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)を下記表1に示した含有量で添加し、同時に2重量%過硫酸ナトリウム水溶液6重量部を添加した。前記溶液を光照射装置が上部に取り付けられて内部が80℃に予熱された正方形の重合器内に設けられたVat形態のトレー(tray,横15cm×縦15cm)に注いで光照射を行って光開始した。光照射後約15秒後に表面からゲルが発生し、30秒程度後に発泡と同時に重合反応が起きることを確認し、3分間さらに反応させてシート状の含水ゲル重合体を得た。
【0104】
(段階2)
前記段階1で得た前記シート状の含水ゲル重合体は70~90℃の間の温度を有することが確認された。このような含水ゲル重合体に対して常温の温度を有する水200mlを噴射した。このような含水ゲル重合体を3cm×3cmの大きさに切った後、円筒型粉砕機の内部に取り付けられたスクリュー型押出機を用いて前記含水ゲルを複数の孔が形成された多孔板に押し出しながら下記表1と同じチョッピング指数の条件下で粉砕(chopping)を行った。
【0105】
(段階3)
次に、前記段階2で粉砕された含水ゲル重合体を上下に風量転移が可能な乾燥器で乾燥させた。乾燥された粉の含水量が約2%以下になるように180℃のホットエア(hot air)を15分間下方から上方に流れるようにし、再び15分間上方から下方に流れるようにして前記含水ゲル重合体を均一に乾燥させた。
【0106】
(段階4)
前記段階3で乾燥された重合体を粉砕機で粉砕した後分級して150~850μmの大きさのベース樹脂粉末を得た。
【0107】
(段階5)
その後、製造されたベース樹脂粉末100重量部に、エチレンカーボネート3重量部を含む表面架橋剤水溶液6gを噴射して常温で攪拌してベース樹脂粉末上に表面架橋液が均等に分布するように混合した。次に、表面架橋液と混合されたベース樹脂粉末を表面架橋反応器に入れて表面架橋反応を行った。
【0108】
このような表面架橋反応器内で、ベース樹脂粉末は80℃近傍の初期温度から徐々に昇温することが確認され、30分経過後に190℃の反応最高温度に到達するように操作した。このような反応最高温度に到達した後に、15分間追加反応させた後最終的に製造された高吸水性樹脂サンプルを取った。前記表面架橋工程後、ASTM規格の標準網ふるいで分級して150μm~850μmの粒径を有する高吸水性樹脂を製造した。
【0109】
実施例2~4および比較例1~5
前記実施例1と同様の方法で製造するものの、発泡剤使用量とチョッピング指数を下記表1のように変更して高吸水性樹脂を製造した。
【0110】
実験例
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂について各物性を測定して下記表1および2に示した。下記表1および2において、N、A、Rは上述した計算式1の各変数を意味する。
【0111】
【0112】
【0113】
前記表1に示す通り、本発明による製造方法によって発泡剤を使用してチョッピング指数を本発明による範囲で行って高吸水性樹脂を製造した場合、破砕抵抗指数が高く、またCRC、AUP、ボルテックス(vortex)および通液性に優れることを確認することができた。また、破砕抵抗指数が高いので、破砕後にも高吸水性樹脂の物性がほぼ同等水準に維持されることを確認することができた。
【0114】
しかし、前記表2に示す通り、比較例1および2はチョッピング指数が本発明による範囲より低くて破砕抵抗指数が低く、そのため破砕後にも高吸水性樹脂の物性がほとんど低下することを確認することができた。また、比較例3は破砕抵抗指数は本発明の実施例に準ずる水準であるが、吸収速度と通液性が低下し、これはゲル粉砕時均一な粉砕が行われず高吸水性樹脂の物性に影響を及ぼしたことに起因する。
【0115】
また、比較例3は発泡剤を使用しなかったため高吸水性樹脂の内部に気孔が十分に形成されず吸収速度と通液性が低下し、比較例4および5は比較例3と同様に破砕抵抗指数は本発明の実施例に準ずる水準であるが、吸収速度と通液性が低下したり(比較例4)、または吸収能力(CRCおよびAUP)(比較例5)が低下した。
【0116】
したがって、本発明による製造方法のように、発泡剤を使用してチョッピング指数を本発明による範囲で行う場合、破砕抵抗指数が高く、また、高吸水性樹脂の様々な物性が同時に向上することを確認することができた。