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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】合成ガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/24 20060101AFI20240214BHJP
   C01B 32/40 20170101ALI20240214BHJP
   C10G 9/00 20060101ALI20240214BHJP
   C10G 35/00 20060101ALI20240214BHJP
   C10G 63/04 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C01B3/24
C01B32/40
C10G9/00
C10G35/00
C10G63/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022551371
(86)(22)【出願日】2021-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 KR2021018819
(87)【国際公開番号】W WO2022270701
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0082447
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ジュン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】テ・ウ・キム
(72)【発明者】
【氏名】シク・キ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・キュ・イ
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0203130(US,A1)
【文献】特開2008-050303(JP,A)
【文献】特表2020-517797(JP,A)
【文献】特表2014-518924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 - 3/58
C01B 32/00 - 32/991
C10G 9/00
C10G 35/00
C10G 63/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナフサ分解工程(NCC)から排出される熱分解ガス油(Pyrolysis Gas Oil、PGO)を含むPGOストリームを蒸留塔に供給するステップと、
前記蒸留塔の下部排出ストリームとナフサ分解工程(NCC)から排出される熱分解燃料油(Pyrolysis Fuel Oil、PFO)を含むPFOストリームをフィードストリームとしてガス化工程のための燃焼室に供給するステップと、
を含み、
前記フィードストリームは、前記燃焼室への供給時点での動粘度が300cSt以下である、合成ガスの製造方法。
【請求項2】
前記蒸留塔に供給されるPGOストリームの流量に対する前記蒸留塔の上部排出ストリームの流量の比率(distillateの比率)は、0.04~0.23である、請求項1に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項3】
前記蒸留塔に供給されるPGOストリームの流量に対する前記蒸留塔の上部排出ストリームの流量の比率(distillateの比率)は、0.1~0.2である、請求項1又は2に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項4】
記フィードストリームの引火点は、前記燃焼室への供給時点での温度より25℃以上高い、請求項1~3のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項5】
前記フィードストリームは、前記燃焼室への供給時点での動粘度が1cSt~300cStであり、
前記フィードストリームの引火点は、前記燃焼室への供給時点での温度より25℃~150℃高い、請求項1~4のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項6】
前記フィードストリームは、燃焼室への供給時点での温度が20℃~90℃である、請求項1~5のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項7】
前記フィードストリームは、前記蒸留塔の下部排出ストリームおよび前記PFOストリームの流量比が0.2:1~1.6:1である、請求項1~6のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項8】
前記フィードストリームを燃焼室に供給する前に、熱交換器を通過させる、請求項1~7のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項9】
前記PGOストリームは、C10~C12の炭化水素を70重量%以上含み、
前記PFOストリームは、C13+炭化水素を70重量%以上含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項10】
前記PGOストリームの引火点は、10~50℃であり、
前記PFOストリームの引火点は、70~200℃である、請求項1~9のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項11】
前記PGOストリームは、40℃での動粘度が1~200cStであり、
前記PFOストリームは、40℃での動粘度が400~100,000cStである、請求項1~10のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項12】
前記PGOストリームは、前記ナフサ分解工程のガソリン精留塔の側部から排出された側部排出ストリームを第1ストリッパーに供給した後、前記第1ストリッパーの下部から排出された下部排出ストリームであり、
前記PFOストリームは、前記ナフサ分解工程のガソリン精留塔の下部から排出された下部排出ストリームを第2ストリッパーに供給した後、前記第2ストリッパーの下部から排出された下部排出ストリームである、請求項1~11のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項13】
前記ガソリン精留塔の下部排出ストリームは、前記ガソリン精留塔の全体の段数に対して90%以上の段から排出され、
前記ガソリン精留塔の側部排出ストリームは、前記ガソリン精留塔の全体の段数に対して10%~70%の段から排出される、請求項12に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項14】
前記蒸留塔の下部排出ストリームは、C10+炭化水素の含量が80重量%以上であり、C8-炭化水素の含量が5重量%以下である、請求項1~13のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項15】
前記蒸留塔の還流比(reflux ratio)は、0.03~12である、請求項1~14のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年6月24日付けの韓国特許出願第10-2021-0082447号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、合成ガスの製造方法に関し、より詳細には、ナフサ分解工程(NCC)の熱分解燃料油(PFO)をガス化工程の原料として代替することができる合成ガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
合成ガス(synthesis gas、syngas)は、油田と炭鉱地域の地から噴出する自然性ガス、メタンガス、エタンガスなどの天然ガスとは異なり、人工的に製造されたガスであり、ガス化(gasification)工程を経て製造される。
【0004】
前記ガス化工程は、石炭、石油、バイオマスなどの炭化水素を原料として、熱分解や、酸素、空気、水蒸気などのガス化剤と化学反応させて、主に水素と一酸化炭素からなる合成ガスに変換させる工程である。このようなガス化工程の最前段に位置する燃焼室には、ガス化剤および原料が供給され、700℃以上の温度で燃焼過程を経て合成ガスを生成するが、前記燃焼室に供給される原料の動粘度が高いほど、燃焼室内の差圧が上昇するか、噴霧(atomizing)がスムーズに行われず燃焼性能を低下させるか、酸素過剰による爆発の恐れを高める。
【0005】
従来、液体相の炭化水素(Hydrocarbon)原料を用いて合成ガスを製造するためのガス化工程の原料としては、原油を精製する精油工場(refinery)から排出される減圧残渣油(vacuum residue、VR)、バンカーC油(bunker-c oil)などの精油残渣油(refinery residue)を主に使用していた。しかし、このような精油残渣油は、動粘度が高くて、ガス化工程の原料として使用するために、粘度緩和のための熱処理、希釈剤または水の添加などの前処理が必要なだけでなく、精油残渣油には、硫黄および窒素の含量が高くて、ガス化工程中に硫化水素などの酸性ガスおよびアンモニアの発生量が高くなるため、強化した環境規制に対応するためには、硫黄および窒素の含量が低い原料で精油残渣油を代替する必要性が高まっている状況である。
【0006】
一方、ナフサを分解してエチレン、プロピレンなどの石油化学基礎素材を製造する工程であるNCC(Naphtha Cracking Center)工程から排出される副生成物である熱分解燃料油(Pyrolysis Fuel Oil、PFO)は、一般的に燃料として使用されているが、硫黄の含量が前処理なしに燃料として使用するには高い水準であり、燃料として使用するには二酸化炭素(CO)排出係数が大きいため、環境規制によって販路が次第に狭くなっており、今後、販売が不可能な状況に備えなければならない状態である。
【0007】
そのため、前記熱分解燃料油をガス化工程の原料として代替する方法が考慮されていたが、前記熱分解燃料油をガス化工程の原料として代替するためには、熱分解燃料油を加熱して動粘度を下げる必要があるが、前記熱分解燃料油の動粘度が非常に高くて、引火点以下でガス化工程の原料として使用するための動粘度の条件を満たすことができない不都合があった。
【0008】
したがって、本発明者らは、ナフサ分解工程(NCC)の熱分解燃料油(PFO)をガス化工程の原料として代替することが可能であれば、従来の精油残渣油を原料として使用する場合に比べて温室ガスの排出を低減することができ、ガス化工程の運転費用が減少し、工程効率を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上記発明の背景技術で言及した問題を解決するために、ナフサ分解工程(NCC)の熱分解燃料油(PFO)をガス化工程の原料として代替し、従来の精油残渣油を原料として使用する場合に比べて温室ガス排出が低減することができ、ガス化工程の運転費用が減少し、工程効率が向上することができる合成ガスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、ナフサ分解工程(NCC)から排出される熱分解ガス油(Pyrolysis Gas Oil、PGO)を含むPGOストリームを蒸留塔に供給するステップと、前記蒸留塔の下部排出ストリームとナフサ分解工程(NCC)から排出される熱分解燃料油(Pyrolysis Fuel Oil、PFO)を含むPFOストリームをフィードストリームとしてガス化工程のための燃焼室に供給するステップとを含む合成ガスの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、ナフサ分解工程(NCC)の熱分解燃料油(PFO)をガス化工程の原料として代替することで、従来の精油残渣油を原料として使用する場合に比べて温室ガス排出を低減することができ、ガス化工程の運転費用を減少させ、工程効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による合成ガスの製造方法に関する工程フローチャートである。
図2】本発明の比較例1による合成ガスの製造方法に関する工程フローチャートである。
図3】本発明の比較例2による合成ガスの製造方法に関する工程フローチャートである。
図4】本発明の比較例3による合成ガスの製造方法に関する工程フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の説明および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0014】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程内の流体(fluid)の流れを意味し得、また、配管内で流れる流体自体を意味し得る。具体的には、前記「ストリーム」は、各装置を連結する配管内で流れる流体自体および流体の流れを同時に意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)または液体(liquid)を意味し得、前記流体に固体成分(solid)が含まれている場合に対して排除するものではない。
【0015】
本発明において、「#」が正の整数である「C#」という用語は、#個の炭素原子を有するすべての炭化水素を示すものである。したがって、「C8」という用語は、8個の炭素原子を有する炭化水素化合物を示すものである。また、「C#-」という用語は、#個以下の炭素原子を有するすべての炭化水素分子を示すものである。したがって、「C8-」という用語は、8個以下の炭素原子を有する炭化水素の混合物を示すものである。また、「C#+」という用語は、#個以上の炭素原子を有するすべての炭化水素分子を示すものである。したがって、「C10+」という用語は、10個以上の炭素原子を有する炭化水素の混合物を示すものである。
【0016】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明について、図1を参照してより詳細に説明する。
【0017】
本発明によると、合成ガス(synthesis gas、syngas)の製造方法が提供される。前記合成ガスの製造方法は、ナフサ分解工程(S1)から排出される熱分解ガス油(Pyrolysis Gas Oil、PGO)を含むPGOストリームを蒸留塔40に供給するステップと、前記蒸留塔40の下部排出ストリームとナフサ分解工程(S1)から排出される熱分解燃料油(Pyrolysis Fuel Oil、PFO)を含むPFOストリームをフィードストリームとしてガス化工程(S3)のための燃焼室に供給するステップとを含むことができる。
【0018】
前記合成ガスは、油田と炭鉱地域の地から噴出する自然性ガス、メタンガス、エタンガスなどの天然ガスとは異なり、人工的に製造されたガスであり、ガス化(gasification)工程を経て製造される。
【0019】
前記ガス化工程は、石炭、石油、バイオマスなどの炭化水素を原料として、熱分解や、酸素、空気、水蒸気などのガス化剤と化学反応させて、主に水素および一酸化炭素を含む合成ガスに変換させる工程である。具体的には、本発明において、合成ガスは、水素および一酸化炭素を含むことができる。このようなガス化工程の最前段に位置する燃焼室には、ガス化剤および原料が供給されて700℃以上の温度で燃焼過程を経て合成ガスを生成するが、前記燃焼室に供給される原料の動粘度が高いほど、燃焼室内の差圧が上昇するか、噴霧(atomizing)がスムーズに行われず燃焼性能を低下させ、酸素過剰による爆発の恐れを高める。
【0020】
従来、液体相の炭化水素(Hydrocarbon)原料を用いて合成ガスを製造するためのガス化工程の原料としては、原油を精製する精油工場(refinery)から排出される減圧残渣油(vacuum residue、VR)、バンカーC油(bunker-c oil)などの精油残渣油(refinery residue)を主に使用していた。しかし、このような精油残渣油は、動粘度が高くて、ガス化工程の原料として使用されるために、粘度緩和のための熱処理、希釈剤または水の添加などの前処理が必要なだけでなく、精油残渣油には硫黄および窒素の含量が高くて、ガス化工程中に硫化水素などの酸性ガスおよびアンモニアの発生量が高くなるため、強化した環境規制に対応するためには、硫黄および窒素の含量が低い原料で精油残渣油を代替する必要性が高まっている状況である。例えば、前記精油残渣油のうち、減圧残渣油には、約3.5重量%の硫黄と、約3600ppmの窒素が含まれ、バンカーC油には、約4.5重量%の硫黄が含まれることができる。
【0021】
一方、ナフサを分解して、エチレン、プロピレンなどの石油化学基礎素材を製造する工程であるナフサ分解工程から排出される熱分解燃料油(Pyrolysis Fuel Oil、PFO)は、一般的に燃料として使用されているが、硫黄の含量が、前処理なしに燃料として使用するには高い水準であるため、環境規制によって販路が次第に狭くなっており、今後、販売が不可能な状況に備えなければならない状態である。
【0022】
そのため、前記熱分解燃料油をガス化工程の原料として代替する方法が考慮されていたが、前記熱分解燃料油をガス化工程の原料として代替するためには、熱分解燃料油を加熱して動粘度を下げる必要があるが、前記熱分解燃料油の動粘度が非常に高くて、引火点以下でガス化工程の原料として使用するための動粘度の条件を満たすことができない不都合があった。
【0023】
したがって、本発明では、ナフサ分解工程から排出される熱分解燃料油(PFO)を含むPFOストリームと熱分解ガス油(PGO)を含むPGOストリームを前記ガス化工程の原料として代替するための前処理工程(S2)を開発することで、従来の精油残渣油を原料として使用する場合に比べて温室ガスの排出を低減することができ、ガス化工程の運転費用を減少させ、工程効率を向上させようとした。
【0024】
本発明の一実施形態によると、前記熱分解燃料油(PFO)を含むPFOストリームおよび前記熱分解ガス油(PGO)を含むPGOストリームは、ナフサ分解工程(S1)から排出されることができる。
【0025】
具体的には、前記ナフサ分解工程は、パラフィン(paraffin)、ナフテン(naphthene)および芳香族化合物(aromatics)を含むナフサ(naphtha)を分解して石油化学基礎素材として使用されるエチレン、プロピレンなどのオレフィン(olefin)を製造する工程であり、ナフサ分解工程は、大きく、分解工程、急冷工程、圧縮工程および精製工程からなることができる。
【0026】
前記分解工程は、ナフサを800℃以上の分解炉で炭素数が少ない炭化水素として熱分解反応させる工程であり、高温の分解ガスが排出され得る。この際、前記ナフサは、分解炉への進入前に高圧の水蒸気から予熱過程を経た後、分解炉に供給されることができる。
【0027】
前記急冷工程は、分解炉から排出された高温の分解ガス内の炭化水素の重合反応を抑制し、廃熱回収および後続工程(圧縮工程)の熱負荷の減少のために、前記高温の分解ガスを冷却させるステップである。この際、前記急冷工程は、前記高温の分解ガスを急冷オイル(quench oil)で1次冷却するステップと、急冷水(quench water)で2次冷却させるステップとを含んで行われることができる。
【0028】
具体的には、前記1次冷却するステップにおいて、前記分解ガスをガソリン精留塔(gasoline fractionator)に供給して、水素、メタン、エチレン、プロピレンなどを含む軽質留分、熱分解ガソリン(RPG)、熱分解燃料油(PFO)および熱分解ガス油(PGO)を分離することができる。次に、前記軽質留分は、後続する圧縮工程に移送されることができる。
【0029】
前記圧縮工程は、前記軽質留分を経済的に分離および精製するために、高圧下で軽質留分の昇圧により体積を減少させた圧縮ガスを生成する工程であることができる。
【0030】
前記精製工程は、前記高圧で圧縮された圧縮ガスを超低温で冷却させた後、沸点差によってステップ別に成分を分離する工程であり、水素、エチレン、プロピレン、プロパン、C4留分および熱分解ガソリン(RPG)などが生成されることができる。
【0031】
上述のように、前記ナフサの分解工程(S1)のうち、急冷工程では、熱分解燃料油(PFO)および熱分解ガス油(PGO)が排出されることができる。一般的に、前記熱分解燃料油(PFO)には、約0.1重量%以下の硫黄、および約20ppm以下の窒素が含まれており、燃料として使用時に、燃焼過程で硫酸化物(SOx)および窒素酸化物(NOx)が排出されるため、環境問題が引き起こされ得るが、これを合成ガスの原料として使用する場合には、相当低い水準である。
【0032】
したがって、本発明では、熱分解燃料油(PFO)および前処理した熱分解ガス油(PGO)を合成ガスを製造するためのガス化工程の原料として使用することで、前記問題を解決することができ、さらには、従来の精油残渣油をガス化工程の原料として使用する場合に比べて温室ガス排出を低減することができ、ガス化工程の運転費用を減少させ、工程効率を向上させることができる。
【0033】
本発明の一実施形態によると、上述のように、本発明のPFOストリームおよびPGOストリームは、それぞれ、ナフサ分解工程(S1)のガソリン精留塔10から排出される熱分解燃料油(PFO)および熱分解ガス油(PGO)を含むことができる。具体的な例として、ガソリン精留塔10の全体の段数において、最上段を1%の段、最下段を100%の段として表現すると、前記ガソリン精留塔10の全体の段数に対して、前記熱分解燃料油(PFO)は、90%以上の段、95%以上の段、または95%~100%の段から排出されることができる。また、前記熱分解ガス油(PGO)は、10%~70%の段、15%~65%の段、または20%~60%の段から排出されることができる。例えば、前記ガソリン精留塔10の全体の段数が100段である場合、最上段が1段、最下段が100段であることができ、前記ガソリン精留塔10の全体の段数の90%以上の段は、ガソリン精留塔10の90段~100段を意味し得る。
【0034】
本発明の一実施形態によると、前記PGOストリームは、前記ナフサ分解工程(S1)のガソリン精留塔10の側部から排出され、熱分解ガス油(PGO)を含む側部排出ストリームを第1ストリッパー20に供給した後、前記第1ストリッパー20の下部から排出された下部排出ストリームであることができる。また、前記PFOストリームは、前記ナフサ分解工程(S1)のガソリン精留塔10の下部から排出され、熱分解燃料油(PFO)を含む下部排出ストリームを第2ストリッパー30に供給した後、前記第2ストリッパー30の下部から排出された下部排出ストリームであることができる。
【0035】
前記第1ストリッパー20および第2ストリッパー30は、液体の中に溶解している気体または蒸気を分離および除去するストリッピング(stripping)工程が行われる装置であることができ、例えば、スチームまたは不活性ガスなどによる直接接触、加熱および加圧などの方法により行われることができる。具体的な例として、前記ガソリン精留塔10の側部排出ストリームを第1ストリッパー20に供給し、第1ストリッパー20から前記ガソリン精留塔10の側部排出ストリームから分離した軽質分を含む上部排出ストリームを前記ガソリン精留塔10に還流させることができる。また、前記ガソリン精留塔10の下部排出ストリームを第2ストリッパー30に供給し、第2ストリッパー30から前記ガソリン精留塔10の下部排出ストリームから分離した軽質分を含む上部排出ストリームを前記ガソリン精留塔10に還流させることができる。
【0036】
本発明の一実施形態によると、前記PGOストリームは、C10~C12の炭化水素を70重量%以上または70重量%~95重量%含み、前記PFOストリームは、C13+炭化水素を70重量%以上または70重量%~98重量%含むことができる。例えば、前記C10~C12の炭化水素を70重量%以上含むPGOストリームの40℃での動粘度は、1~200cStであることができ、引火点は、10~50℃であることができる。また、例えば、前記C13+炭化水素を70重量%以上含むPFOストリームの40℃での動粘度は、400~100,000cStであることができ、引火点は、70~200℃であることができる。このように、前記PGOストリームに比べて重質の炭化水素をより多く含むPFOストリームは、同一の温度条件で、熱分解ガス油に比べて動粘度および引火点が高いことができる。
【0037】
本発明の一実施形態によると、前記PGOストリームの沸点は、200~288℃、または210~270℃であり、前記PFOストリームの沸点は、289℃~550℃、または300~500℃であることができる。
【0038】
前記PGOストリームおよびPFOストリームの沸点は、それぞれ、多数の炭化水素からなるバルク(bulk)状のPGOストリームおよびPFOストリームの沸点を意味し得る。この際、前記PGOストリームに含まれる炭化水素の種類とPFOストリームに含まれる炭化水素の種類は、互いに相違していてもよく、一部の種類は同一であってもよい。具体的な例として、前記PGOストリームおよびPFOストリームに含まれる炭化水素の種類は、上述のように含まれることができる。
【0039】
本発明の一実施形態によると、前記ナフサ分解工程(S1)から排出される熱分解ガス油(Pyrolysis Gas Oil、PGO)を含むPGOストリームを蒸留塔40に供給することができる。
【0040】
前記蒸留塔40に供給されたPGOストリームは、前記蒸留塔40に供給され、前記蒸留塔40の上部から軽質留分を含む上部排出ストリームの排出により、蒸留塔40の下部から動粘度および引火点が調節された下部排出ストリームとして取得されることができる。具体的な例として、前記PGOストリーム内に含まれている重質留分に比べて軽質留分の動粘度および引火点が低いことができ、前記蒸留塔40でPGOストリーム内の軽質留分の一部を除去することで、目的とする動粘度および引火点を有するストリームを蒸留塔40の下部から排出させることができる。
【0041】
本発明の一実施形態によると、前記蒸留塔40に供給されるPGOストリームの流量に対する前記蒸留塔40の上部排出ストリームの流量の比率(以下、「蒸留塔40の蒸留比率」とする)は、0.04~0.23、0.08~0.2、または0.1~0.2であることができる。すなわち、前記蒸留塔40の蒸留比率を0.04~0.23、0.08~0.2、または0.1~0.2に調節することができる。ここで、「流量」は、単位時間当たりの重量の流れを意味し得る。具体的な例として、前記流量の単位は、kg/hであることができる。
【0042】
上記の範囲の蒸留塔40の蒸留比率は、前記蒸留塔40の上部排出ストリームが移送される配管に設置された流量調節装置(図示せず)を介して調節され、前記蒸留塔40の性能は、蒸留比率および蒸留塔40の上部排出ストリームの還流比(reflux ratio)を調節することで行われることができる。この際、前記還流比は、流出ストリームの流量に対する還流ストリームの流量の比を意味し得、具体的な例として、前記蒸留塔40の上部排出ストリームの還流比とは、前記蒸留塔40の上部排出ストリームの一部を分岐して還流ストリームとして前記蒸留塔40に還流させ、残部は流出ストリームとして排出させる場合に、前記流出ストリームの流量に対する還流ストリーム流量の比(以下、「還流比」とする)を意味し得る。より具体的な例として、前記蒸留塔40の還流比は、0.03~12、0.1~8、または0.2~6であることができる。
【0043】
本発明の一実施形態によると、前記蒸留塔40の下部排出ストリームは、C10+炭化水素の含量が80重量%以上または85重量%~98重量%であり、C8-炭化水素の含量が5重量%以下または0.01重量%~5重量%であることができる。
【0044】
例えば、前記C8-炭化水素は、ペンタン、ペンテン、ペンタジエン、メチルブテン、シクロペンタン、シクロペンテン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルヘキサン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびスチレンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。具体的な例として、前記C8-炭化水素は、上述のC8-炭化水素の種類をすべて含むことができ、これに限定されるものではない。
【0045】
また、例えば、前記C10+炭化水素は、ジシクロペンタジエン、ナフタレン、メチルナフタレン、テトラメチルベンゼン、フルオレンおよびアントラセンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。具体的な例として、前記C10+炭化水素は、上述のC10+炭化水素の種類をすべて含むことができ、これに限定されるものではない。
【0046】
具体的には、前記蒸留塔40の蒸留比率と還流比を制御することで、PGOストリームを前処理し、前記前処理過程で組成が制御された蒸留塔40の下部排出ストリームが排出されることができ、前記PFOストリームと混合されてフィードストリームを形成する前記蒸留塔40の下部排出ストリームの流量が調節されることができる。
【0047】
前記蒸留塔40の下部排出ストリームとナフサ分解工程(NCC)から排出される熱分解燃料油(Pyrolysis Fuel Oil、PFO)を含むPFOストリームをフィードストリームとしてガス化工程(S3)のための燃焼室に供給することができる。この際、前記蒸留塔40の下部排出ストリームとPFOストリームは、混合ストリームを形成した後、フィードストリームとして燃焼室に供給することができる。
【0048】
上述のように、前記ガス化工程(S3)の最前段に位置する燃焼室(図示せず)には、ガス化剤および原料が供給され、700℃以上の温度で燃焼過程を経て合成ガスを生成することができる。この際、前記合成ガスの生成反応は、20~80気圧の高圧で行われ、燃焼室内で、原料は、2~40m/sの速い流速で移動する必要がある。したがって、前記合成ガスの生成反応のために、高い圧力で原料が速い流速でポンピングされる必要があるが、前記燃焼室に供給される原料の動粘度が適正範囲を超える場合、ポンパビリティー(pumpability)の低下によって高価のポンプを使用しなければならないか、エネルギー消費量が増加して費用が増加し、所望の条件でのポンピング(pumping)が不可能になり得る。さらに、ポンピングがスムーズに行われず、原料を燃焼室に均一に供給することができない問題がある。また、燃焼室内の差圧が上昇するか、小さい粒子径で原料の均一な噴霧(atomizing)がスムーズに行われず、燃焼性能を低下させる可能性があり、生産性が低下し、多量のガス化剤が必要となり、酸素過剰による爆発の恐れが高まる。この際、前記動粘度の適正範囲は、合成しようとする合成ガスの種類、燃焼室で行われる燃焼過程の条件などに応じて多少差があり得るが、一般的に、原料の動粘度は、前記ガス化工程(S3)内の燃焼室に原料が供給される時点の原料の温度で、費用、生産性および安定性の面で、低いほど有利であり、300cSt以下の範囲を有することが好ましく、この範囲内で、燃焼室内の差圧の上昇を防止し、噴霧がスムーズに行われて燃焼性能を向上させることができ、燃焼反応がスムーズに行われて反応性を向上させることができる。
【0049】
また、前記燃焼室に供給される原料の引火点が適正範囲未満である場合、低い引火点によって燃焼反応の発生前に、バーナー(Burner)で火炎が生じ得、燃焼室内の火炎の逆化現象によって爆発の恐れが存在し、燃焼室の耐火物が損傷し得る。この際、前記引火点の適正範囲は、燃焼室で合成しようとする合成ガスの種類、燃焼室で行われる燃焼過程の条件などに応じて変わることができるが、一般的に、原料の引火点は、前記ガス化工程(S3)内の燃焼室に原料が供給される時点の原料の温度より25℃以上高い範囲を有することが好ましく、この範囲内で、原料の損失、爆発の恐れおよび燃焼室の耐火物の損傷を防止することができる。
【0050】
これにより、本発明では、前記蒸留塔40の下部排出ストリームとPFOストリームを含むフィードストリームを前記ガス化工程(S3)内の燃焼室に供給される原料として使用することで、前記蒸留塔40の下部排出ストリームが前記燃焼室に供給される時点の温度での前記蒸留塔40の下部排出ストリームとPFOストリームを含むフィードストリームの動粘度と引火点を適正範囲に制御することができる。
【0051】
本発明の一実施形態によると、前記フィードストリームの燃焼室への供給時点での温度は、前記フィードストリームの前記燃焼室への供給時点の引火点より25℃以上低く、300cSt以下の動粘度を有する温度であることができる。すなわち、前記フィードストリームは、燃焼室への供給時点での動粘度が300cSt以下または1cSt~300cStであることができ、前記フィードストリームの引火点は、前記燃焼室への供給時点での温度より25℃以上または25℃~150℃高いことができる。この際、前記フィードストリームの燃焼室に供給される時点の温度は、20℃~90℃、または30℃~80℃であることができる。前記範囲内のフィードストリームの燃焼室への供給時点の温度で動粘度は300cSt以下であることができ、引火点より25℃以上低いことができ、ガス化工程(S3)の原料として使用するための工程運転条件を満たすことができる。
【0052】
具体的には、前記蒸留塔40の運転条件を調節してPGOストリームの組成が制御された蒸留塔40の下部排出ストリームを、PGOストリームとともにフィードストリームとしてガス化工程(S3)のための燃焼室に供給することで、前記フィードストリームの燃焼室への供給時点で、引火点は、前記供給時点のフィードストリームの温度より25℃以上高く、動粘度は、前記供給時点のフィードストリームの温度で300cSt以下の範囲を有することができる。
【0053】
前記蒸留塔40で蒸留比率が0.04~0.23である場合には、引火点が低い軽い物質を除去することにより、これをPFOストリームと混合することで動粘度の増加幅より引火点の増加幅が増加し、フィードストリームの燃焼室への供給時点での引火点および動粘度を上述の引火点および動粘度の範囲に制御することができる。一方、前記蒸留塔40の蒸留比率が0.04未満である場合には、前記蒸留塔40の下部排出ストリームとPFOストリームを混合してもフィードストリームの燃焼室への供給時点で、引火点がフィードストリームの燃焼室への供給時点での温度より25℃以上高くなるように制御することが難しく、前記蒸留塔40の蒸留比率が0.23を超える場合には、引火点の増加幅より動粘度の増加幅が増加するため、動粘度を300cSt以下に制御し難い問題がある。
【0054】
このように、前記蒸留塔40の蒸留比率を調節することで、PGOストリームを前処理し、前記前処理されたPGOストリームである蒸留塔40の下部排出ストリームをPFOストリームと混合してフィードストリームとして使用した時に、前記フィードストリームの燃焼室への供給時点で引火点および動粘度を制御することができ、これにより、ガス化工程(S3)の原料として使用するのに適する物性を有するようにすることができる。
【0055】
本発明の一実施形態によると、前記蒸留塔40に供給されるPGOストリームおよび前記PFOストリームの流量比は、0.2:1~1.6:1,0.25:1~1.2:1または0.3:1~0.8:1であることができる。前記フィードストリームは、蒸留塔40に供給されるPGOストリームとPFOストリームが前記範囲内の流量比に制御されることで、前記蒸留塔40の下部排出ストリームの組成が制御されて燃焼室への供給時点で引火点および動粘度を制御することができ、これにより、ガス化工程(S3)の原料としての使用に適する物性を有するようにすることができる。
【0056】
一方、例えば、図2に図示されているように、前記PFOストリームを前処理工程(S2)なしに直接燃焼室に供給するか、図3に図示されているように、前記PGOストリームを前処理工程(S2)なしに直接燃焼室に供給するか、または、図4に図示されているように、前記PGOストリームおよびPFOストリームの混合油ストリームを本発明による前処理工程(S2)なしに直接燃焼室に供給する場合には、上述の適正範囲の動粘度および引火点をすべて満たす温度が存在しない問題が発生し得る。
【0057】
このように、前記適正範囲の動粘度および引火点のいずれか一つでも満たしていない温度でPFOストリーム、PGOストリーム、またはPFOストリームとPGOストリームの混合油ストリームが燃焼室に供給される場合には、燃焼室内の差圧が上昇するか噴霧がスムーズに行われず、燃焼性能を低下させる可能性があり、酸素過剰による爆発の恐れを高めるか、または燃焼反応の発生前にバーナーで火炎が生じ得、燃焼室内の火炎の逆化現象によって爆発の恐れが存在し、燃焼室の耐火物が損傷する問題が発生し得る。
【0058】
具体的には、前記PFOストリームは、重質留分の含量が高くて粘度が非常に高く、前記PFOストリームを合成ガスの原料として使用するためには加熱を介して粘度を下げる必要があるが、引火点より低い温度での動粘度が適正範囲に制御されない問題がある。また、前記PGOストリームの場合には、引火点が常温以下と非常に低くて合成ガス原料としての使用が不可能である。また、前記PGOストリームおよびPFOストリームの混合油ストリームは、一般的に、PFOストリームおよびPGOストリームの全体のストリームの流量に対して、PGOストリームの流量の比率は0.35~0.7程度であり、この場合にも、動粘度と引火点を同時に満たすことができず、合成ガスの原料としては使用が困難である。
【0059】
一般的に、PFOストリームおよびPGOストリームは、NCC工程において最も重い残渣油であることから単純燃料として使用されており、このように、単純燃料として使用される場合には、組成および物性を調節する必要がなかった。しかし、本発明のように、合成ガスの原料として使用するためには、特定の物性、例えば、動粘度と引火点を同時に満たす必要がある。しかし、PGOストリームは、動粘度が満たされても引火点が過剰に低く、PFOストリームは、引火点は高いとしても動粘度が過剰に高く、それぞれのストリームは、動粘度と引火点を同時に満たすことができず、合成ガスの原料としては使用が困難であった。また、前記PFOストリームおよびPGOストリームの全体のストリームを合成ガスの原料として使用する場合、一般的に、PFOストリームおよびPGOストリームの全体のストリームの流量に対して、PGOストリームの流量の比率は0.35~0.7程度であり、この場合にも、動粘度と引火点を同時に満たすことができず、合成ガスの原料としては使用が困難であった。これに対して、本発明では、前記PGOストリームの全量を蒸留塔40に供給して前処理し、前処理されたPGOストリームである蒸留塔40の下部排出ストリームとPFOストリームをガス化工程(S3)の原料として燃焼室に供給することで、前記フィードストリームの燃焼室への供給時点で、前記フィードストリームの引火点は、前記供給時点のフィードストリームの温度より25℃以上高い範囲に制御し、且つ動粘度は、前記供給時点のフィードストリームの温度で300cSt以下の範囲に制御することができ、これにより、合成ガスの原料として使用するための条件を満たすことができた。
【0060】
本発明の一実施形態によると、前記フィードストリームは、ガス化工程(S3)に供給される前に熱交換器(図示せず)を通過させた後、ガス化工程(S3)に供給することができる。この場合、前記フィードストリームのガス化工程(S3)への供給温度を調節するとともに、廃熱として廃棄される前記フィードストリームの顕熱を、熱交換器を用いて、工程内において再使用することで、工程エネルギーを低減することができる。
【0061】
本発明の一実施形態によると、前記ガス化工程(S3)内の燃焼室に供給されたフィードストリームを700℃以上、700~2000℃、または800~1800℃の温度で燃消させるステップをさらに含むことができる。また、前記フィードストリームをガス化剤とともに前記燃焼室に供給することができる。この際、前記ガス化剤は、酸素、空気、水蒸気からなる群から選択される1種以上を含むことができ、具体的な例として、前記ガス化剤は、酸素および水蒸気であることができる。
【0062】
このように、前記フィードストリームをガス化剤の存在下で、高温で燃消させることで、合成ガスが製造されることができる。本発明の製造方法により製造された前記合成ガスは、一酸化炭素と水素を含み、二酸化炭素、アンモニア、硫化水素、シアン化水素、および硫化カルボニルからなる群から選択される1種以上をさらに含むことができる。
【0063】
本発明の一実施形態によると、合成ガスの製造方法では、必要な場合、バルブ、ポンプ、分離器および混合器などの装置をさらに設置することができる。
【0064】
以上、本発明による合成ガスの製造方法について記載および図面に図示しているが、前記の記載および図面の図示は、本発明を理解するための核心的な構成のみを記載および図示したものであって、前記記載および図面に図示している工程および装置以外に、別に記載および図示していない工程および装置は、本発明による合成ガスの製造方法を実施するために適宜応用されて用いられることができる。
【0065】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白なことであり、これらにのみ本発明の範囲が限定されるものではない。
【0066】
実施例
実施例1~5
図1に図示されている工程フローチャートにしたがって、合成ガスの製造を行った。
【0067】
具体的には、ナフサ分解工程(S1)のガソリン精留塔10の全体の段数に対して40%の段から排出された側部排出ストリームを第1ストリッパー20に供給した後、前記第1ストリッパー20の下部から熱分解ガス油(PGO)を含むPGOストリームを排出し、この際、前記PGOストリーム内のC10~C12の含量は74重量%と確認された。また、前記ガソリン精留塔10の全体の段数に対して100%の段から排出された下部排出ストリームを第2ストリッパー30に供給した後、前記第2ストリッパー30の下部から熱分解燃料油(PFO)を含むPFOストリームを排出し、この際、前記PFOストリーム内のC13+の含量は91重量%と確認された。また、前記PGOストリームの引火点は30.5℃であり、40℃での動粘度は70cStであり、前記PFOストリームの引火点は88℃であり、40℃での動粘度は675cStであった。
【0068】
前記PGOストリームは蒸留塔40に供給した後、前記蒸留塔40の蒸留比率を調節して、蒸留塔40の下部排出ストリームはPFOストリームと混合してガス化工程(S3)のためのフィードストリームを生成することで前処理工程(S2)を行った。この際、前記蒸留塔40の還流比は3に制御し、前記蒸留塔40に供給されるPGOストリームおよびPFOストリームの流量比は0.65:1と確認された。
【0069】
前記フィードストリームは、酸素および蒸気とともにガス化工程(S3)内の燃焼室に供給し、水素および一酸化炭素を含む合成ガスを製造した。
【0070】
下記表1には、前記蒸留塔40の蒸留比率、前記フィードストリームの燃焼室への供給時点温度および引火点を測定して示した。また、前記測定結果に応じて、工程運転基準を満たすか否かを確認した。この際、前記フィードストリームの燃焼室への供給時点は、熱交換器を用いて動粘度を300cStに制御する温度条件に設定した。具体的には、動粘度を300cStに制御する温度条件を導き出すために、当該サンプルの動粘度を温度別に測定した後、温度と粘度関係式(Correlation)を設けて内挿法(Interpolation)を用いて計算した。
【0071】
前記動粘度と引火点は、下記のように測定し、これは、実施例および比較例の両方で適用した。
【0072】
(1)動粘度:測定しようとするサンプルのストリームからサンプルを取得し、Anton Paar社製のSVM 3001を使用してASTM D7042に準じて測定した。また、前記各サンプルは動粘度測定温度より10℃低く温度を維持し、軽質物質(Light)の気化を防ぐために、密封した容器にサンプルを保管して気相の発生を最小化した。
【0073】
(2)引火点:測定しようとするサンプルのストリームからサンプルを取得し、TANAKA社製のapm-8を使用してASTM D93に準じて測定した。また、前記各サンプルは、引火点の予想温度より10℃低く温度を維持し、軽質物質(Light)の気化を防ぐために、密封した容器にサンプルを保管して気相の発生を最小化した。
【0074】
比較例
比較例1
図2に図示されている工程フローチャートにしたがって、合成ガスの製造を行った。
【0075】
具体的には、ナフサ分解工程(S1)のガソリン精留塔10の全体の段数に対して100%の段から排出された下部排出ストリームを第2ストリッパー30に供給した後、前記第2ストリッパー30の下部から熱分解燃料油(PFO)を含むPFOストリームを排出した。
【0076】
前記PFOストリームは、酸素および蒸気とともにガス化工程(S3)内の燃焼室に供給した。この際、前記PFOストリーム内のC13+の含量は91重量%と確認され、前記PFOストリームの引火点は88℃であり、40℃での動粘度は675cStであった。
【0077】
下記表2には、前記PFOストリームの燃焼室への供給時点温度を測定して示した。また、前記測定結果に応じて、工程運転基準を満たすか否かを確認した。この際、前記PFOストリームの燃焼室への供給時点は、熱交換器を用いて動粘度を300cStに制御する温度条件に設定した。
【0078】
比較例2
図3に図示されている工程フローチャートにしたがって、合成ガスの製造を行った。
【0079】
具体的には、ナフサ分解工程(S1)のガソリン精留塔10の全体の段数に対して40%の段から排出された側部排出ストリームを第1ストリッパー20に供給した後、前記第1ストリッパー20の下部から熱分解ガス油(PGO)を含むPGOストリームを排出した。
【0080】
前記PGOストリームは酸素および蒸気とともにガス化工程(S3)内の燃焼室に供給した。この際、前記PGOストリーム内のC10~C12の含量は74重量%と確認され、前記PGOストリームの引火点は30.5℃であり、40℃での動粘度は70cStであった。
【0081】
下記表2には、前記PGOストリームの燃焼室への供給時点温度を測定して示した。また、前記測定結果に応じて、工程運転基準を満たすか否かを確認した。この際、前記PGOストリームの燃焼室への供給時点は、熱交換器を用いて動粘度を300cStに制御する温度条件に設定した。
【0082】
比較例3
図4に図示されている工程フローチャートにしたがって、合成ガスの製造を行った。
【0083】
具体的には、ナフサ分解工程(S1)のガソリン精留塔10の全体の段数に対して40%の段から排出された側部排出ストリームを第1ストリッパー20に供給した後、前記第1ストリッパー20の下部から熱分解ガス油(PGO)を含むPGOストリームを排出し、この際、前記PGOストリーム内のC10~C12の含量は74重量%と確認された。前記ガソリン精留塔10の全体の段数に対して100%の段から排出された下部排出ストリームを第2ストリッパー30に供給した後、前記第2ストリッパー30の下部から熱分解燃料油(PFO)を含むPFOストリームを排出し、この際、前記PFOストリーム内のC13+の含量は91重量%と確認された。
【0084】
次に、前記PGOストリームおよびPFOストリームを混合することで混合油ストリームを生成した。この際、前記PGOストリームの引火点は30.5℃であり、40℃での動粘度は70cStであり、前記PFOストリームの引火点は88℃であり、40℃での動粘度は675cStであった。また、前記混合油ストリームの流量に対するPGOストリームの流量の比率は0.4であった。その後、前記混合油ストリームを酸素および蒸気とともにガス化工程(S3)内の燃焼室に供給した。
【0085】
下記表2には、前記混合油ストリームの引火点、前記混合油ストリームの燃焼室への供給時点温度を測定して示した。また、前記測定結果に応じて、工程運転基準を満たすか否かを確認した。この際、前記混合油ストリームの燃焼室への供給時点は、熱交換器を用いて動粘度を300cStに制御する温度条件に設定した。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
前記表1および表2で、工程運転基準を満たすか否かは、実施例1~5および比較例1~3のそれぞれで燃焼室に供給されるストリームに対して、前記燃焼室への供給時点での動粘度が300cStになるようにする前記燃焼室への供給時点での温度が引火点より25℃以上低い場合〇、そうではない場合×と表示した。
【0089】
前記表1および表2を参照すると、本発明の合成ガスの製造方法にしたがって、蒸留塔40の蒸留比率を適正範囲(0.04~0.23)に調節して下部排出ストリームを生成した後、前記蒸留塔40の下部排出ストリームとPFOストリームをフィードストリームとしてガス化工程(S3)のための燃焼室に供給した実施例2~4の場合、前記フィードストリームの燃焼室への供給時点で、前記フィードストリームの引火点は、前記燃焼室への供給時点のフィードストリームの温度より25℃以上高く、動粘度は、前記燃焼室への供給時点のフィードストリームの温度で300cSt以下の範囲を有することを確認することができる。このような引火点および動粘度の範囲を同時に有することで、ガス化工程(S3)の原料として使用するための工程運転条件を満たすことを確認した。
【0090】
特に、前記図1に図示されているように、前処理工程(S2)で蒸留塔40の蒸留比率が0.1~0.2の範囲内に制御された状態で排出される蒸留塔40の下部排出ストリームとPFOストリームを含むフィードストリームを形成した実施例3は、フィードストリームの燃焼室への供給時点で、前記フィードストリームの引火点は、前記燃焼室への供給時点のフィードストリームの温度より28℃以上高く、より安定した運転が可能であることを確認した。
【0091】
また、蒸留塔40の蒸留比率を適正範囲(0.04~0.23)に調節していない状態で排出される蒸留塔40の下部排出ストリームとPFOストリームを含むフィードストリームを形成した実施例1および5を参照すると、前記燃焼室への供給時点のフィードストリーム温度で動粘度を300cStに制御する時に、前記燃焼室への供給時点のフィードストリームの温度が引火点より25℃以上低く制御されないことが分かる。
【0092】
一方、図2に図示されているように、前記PFOストリームを前処理工程(S2)なしに直接前記燃焼室に供給するか(比較例1)、図3に図示されているように、前記PGOストリームを前処理工程(S2)なしに直接前記燃焼室に供給するか(比較例2)、または、前記図4に図示されているように、PGOストリームおよびPFOストリームの混合油ストリームを本発明による前処理工程(S2)なしに直接燃焼室に供給する場合(比較例3)には、上述の適正範囲の動粘度および引火点をすべて満たす温度が存在しないことを確認することができる。このように、適正範囲の動粘度および引火点をすべて満たすことができない比較例1~3それぞれのストリームは、ガス化工程(S3)の原料として使用するための工程運転条件を満たすことができないことを確認した。
【0093】
前記適正範囲の動粘度および引火点のいずれか一つでも満たしていない温度でガス化工程(S3)の原料が燃焼室に供給される場合には、燃焼室内の差圧が上昇するか噴霧がスムーズに行われず、燃焼性能を低下させる可能性があり、酸素過剰による爆発の恐れを高めるか、または燃焼反応の発生前に、バーナーで火炎が生じ得、燃焼室内の火炎の逆化現象によって爆発の恐れが存在し、燃焼室の耐火物が損傷する問題がある。
図1
図2
図3
図4