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特許7436212ウエーハ加工方法、及びウエーハ加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ウエーハ加工方法、及びウエーハ加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
H01L21/78 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020000452
(22)【出願日】2020-01-06
(65)【公開番号】P2021111640
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】能丸 圭司
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-166103(JP,A)
【文献】特開2000-061414(JP,A)
【文献】特開2007-313549(JP,A)
【文献】特開2017-221977(JP,A)
【文献】特開平08-039500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハを個々のチップに分割するウエーハ加工方法であって、
保持手段にウエーハを保持する保持工程と、該保持手段に保持されたウエーハに衝撃波の集束点を位置付けて分割すべき領域に破壊層を形成する破壊層形成工程と、
該破壊層を起点としてウエーハを個々のチップに分割する分割工程と、
を含み構成され
該破壊層形成工程は、パルスレーザー光線を照射する第一のレーザー光線照射手段により1パルス当たりのレーザー光線を波長毎に時間差を持ったリング状に形成し、該リング状に形成されたパルスレーザー光線をウエーハに照射して分割すべき領域に衝撃波を生成して集束点を形成し、該第一のレーザー光線照射手段によって該時間差を調整することにより該衝撃波の集束点の位置を設定するウエーハ加工方法。
【請求項2】
ウエーハを個々のチップに分割するウエーハ加工装置であって、
ウエーハを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたウエーハに衝撃波の集束点を位置付けて分割すべき領域に破壊層を形成する破壊層形成手段と、を含み構成され
該破壊層形成手段は、
パルスレーザー光線を照射する第一のレーザー光線照射手段であり、該第一のレーザー光線照射手段により1パルス当たりのレーザー光線が波長毎に時間差を持ったリング状に形成され、該リング状に形成されたパルスレーザー光線がウエーハに照射されて分割すべき領域に衝撃波を生成して集束点を形成し、該第一のレーザー光線照射手段によって該時間差が調整されることにより該衝撃波の集束点の位置が設定されるウエーハ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを個々のチップに分割するウエーハ加工方法、及びウエーハを個々のチップに分割するウエーハ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI、LED等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割されて携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
レーザー加工装置は、被加工物(ウエーハ)を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とを相対的にX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とを相対的にX軸方向と直交するY軸方向に加工送りするY軸送り手段と、を含み構成され、ウエーハの分割予定ラインに集光点を位置付けて照射してアブレーション加工を施して、分割予定ラインに分割溝を形成して個々のデバイスチップに分割する(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
また、レーザー加工装置は、被加工物(ウエーハ)を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工部鬱に対して透過性を有する波長のレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該保持手段と該レーザー光線照射手段とを相対的にX軸方向と直交するY軸方向に加工送りするY軸送り手段と、を含み構成され、ウエーハの分割予定ラインの内部にレーザー光線の集光点を位置付けて照射し、分割予定ラインの内部に分割の起点となる改質層を形成して個々のデバイスチップに分割する(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-305420号公報
【文献】特開2012-2604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した特許文献1、2に記載された技術においては、ウエーハに照射されるレーザー光線の波長は、ウエーハの種類、又は加工の種類に対応して、吸収性、又は透過性を有していなければならず、ウエーハの種類、又は加工の種類に応じたレーザー加工装置を用意しなければならないことから不経済であるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、ウエーハの種類、又は加工の種類を問わず、ウエーハを個々のチップに効率よく加工することができるウエーハ加工方法、及びウエーハ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、ウエーハを個々のチップに分割するウエーハ加工方法であって、保持手段にウエーハを保持する保持工程と、該保持手段に保持されたウエーハに衝撃波の集束点を位置付けて分割すべき領域に破壊層を形成する破壊層形成工程と、該破壊層を起点としてウエーハを個々のチップに分割する分割工程と、を含み構成され、該破壊層形成工程は、パルスレーザー光線を照射する第一のレーザー光線照射手段により1パルス当たりのレーザー光線を波長毎に時間差を持ったリング状に形成し、該リング状に形成されたパルスレーザー光線をウエーハに照射して分割すべき領域に衝撃波を生成して集束点を形成し、該第一のレーザー光線照射手段によって該時間差を調整することにより該衝撃波の集束点の位置を設定するウエーハ加工方法が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、ウエーハを個々のチップに分割するウエーハ加工装置であって、ウエーハを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたウエーハに衝撃波の集束点を位置付けて分割すべき領域に破壊層を形成する破壊層形成手段と、を含み構成され、破壊層形成手段は、パルスレーザー光線を照射する第一のレーザー光線照射手段であり、該第一のレーザー光線照射手段により1パルス当たりのレーザー光線が波長毎に時間差を持ったリング状に形成され、該リング状に形成されたパルスレーザー光線がウエーハに照射されて分割すべき領域に衝撃波を生成して集束点を形成し、該第一のレーザー光線照射手段によって該時間差が調整されることにより該衝撃波の集束点の位置が設定されるウエーハ加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のウエーハ加工方法は、保持手段にウエーハを保持する保持工程と、該保持手段に保持されたウエーハに衝撃波の集束点を位置付けて分割すべき領域に破壊層を形成する破壊層形成工程と、該破壊層を起点としてウエーハを個々のチップに分割する分割工程と、を含み構成され、該破壊層形成工程は、パルスレーザー光線を照射する第一のレーザー光線照射手段により1パルス当たりのレーザー光線を波長毎に時間差を持ったリング状に形成し、該リング状に形成されたパルスレーザー光線をウエーハに照射して分割すべき領域に衝撃波を生成して集束点を形成し、該第一のレーザー光線照射手段によって該時間差を調整することにより該衝撃波の集束点の位置を設定することから、ウエーハの素材に応じた、吸収性、又は透過性を有するレーザー光線を選択する必要がないため、ウエーハの種類、又は加工の種類に応じたレーザー加工装置を用意する必要がなく、ウエーハを効率よく個々のチップに分割することができる。
【0012】
また、本発明のウエーハ加工装置は、ウエーハを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたウエーハに衝撃波の集束点を位置付けて分割すべき領域に破壊層を形成する破壊層形成手段と、を含み構成され、破壊層形成手段は、パルスレーザー光線を照射する第一のレーザー光線照射手段であり、該第一のレーザー光線照射手段により1パルス当たりのレーザー光線が波長毎に時間差を持ったリング状に形成され、該リング状に形成されたパルスレーザー光線がウエーハに照射されて分割すべき領域に衝撃波を生成して集束点を形成し、該第一のレーザー光線照射手段によって該時間差が調整されることにより該衝撃波の集束点の位置が設定されていることから、ウエーハの素材に応じた、吸収性、又は透過性を有するレーザー光線を選択する必要がないため、ウエーハの種類、又は加工の種類に応じたレーザー加工装置を用意する必要がなく、ウエーハを効率よく個々のチップに分割することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一の実施形態に係るウエーハ加工装置の全体斜視図である。
図2図1に示すウエーハ加工装置に配設された第一のレーザー光線照射手段の光学系を示すブロック図である。
図3】ウエーハに照射される複数のリング光に基づき衝撃波を発生させてウエーハの内部に破壊層を形成する態様を示す概念図である。
図4】分割工程の実施態様を示す側面図である。
図5第一、第二の参考例に係るウエーハ加工装置の全体斜視図である。
図6図5に示すウエーハ加工装置に配設される第二のレーザー光線照射手段の光学系を示すブロック図である。
図7】(a)第三のレーザー光線照射手段の第三の集光器を示す一部拡大断面図、(b)第三のレーザー光線照射手段の変形例に配設される第四の集光器を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に基づいて構成されるウエーハ加工方法、及び、該ウエーハ加工方法の実施に好適なウエーハ加工装置に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0015】
図1には、第一の実施形態であるウエーハ加工装置2Aの全体斜視図が示されている。ウエーハ加工装置2Aは、基台3と、被加工物を保持する保持手段4と、破壊層生成手段として配設される第一のレーザー光線照射手段6と、撮像手段7と、保持手段4を移動させる移動手段30と、制御手段(図示は省略)とを備える。
【0016】
保持手段4は、図中に矢印Xで示すX軸方向において移動自在に基台3に載置される矩形状のX軸方向可動板21と、図中に矢印Yで示すY軸方向において移動自在にX軸方向可動板21に載置される矩形状のY軸方向可動板22と、Y軸方向可動板22の上面に固定された円筒状の支柱23と、支柱23の上端に固定された矩形状のカバー板26とを含む。カバー板26には長穴を通って上方に延びる円形状のチャックテーブル25が配設されており、チャックテーブル25は、図示しない回転駆動手段により回転可能に構成されている。チャックテーブル25の上面を構成するX軸座標、及びY軸座標により規定される保持面25aは、多孔質材料から形成されて通気性を有し、支柱23の内部を通る流路によって図示しない吸引手段に接続されている。チャックテーブル25には、保護テープTを介して被加工物を支持する環状のフレームFを固定するためのクランプ27も配設される。なお、本実施形態における被加工物は、例えば、図1に示すウエーハ10であり、ウエーハ10は、シリコン基板上にデバイス12が分割予定ライン14によって区画され表面10aに形成されている。ウエーハ10は、表面10aを上方に向け、裏面10b側を下方に向けて保護テープTに貼着されて、保護テープTを介して環状のフレームFによって保持される。
【0017】
移動手段30は、基台3上に配設され、保持手段4をX軸方向に加工送りするX軸方向送り手段31と、Y軸可動板22をY軸方向に割り出し送りするY軸方向送り手段32と、を備えている。X軸方向送り手段31は、パルスモータ33の回転運動を、ボールねじ34を介して直線運動に変換してX軸方向可動板21に伝達し、基台3上の案内レール3a、3aに沿ってX軸方向可動板21をX軸方向において進退させる。Y軸方向送り手段32は、パルスモータ35の回転運動を、ボールねじ36を介して直線運動に変換してY軸方向可動板22に伝達し、X軸方向可動板21上の案内レール21a、21aに沿ってY軸方向可動板22をY軸方向において進退させる。なお、図示は省略するが、X軸方向送り手段31、Y軸方向送り手段32、及びチャックテーブル25には、位置検出手段が配設されており、チャックテーブル25のX軸座標、Y軸座標、周方向の回転位置が正確に検出されて、その位置情報は、図示しない制御手段に送られる。そして、その位置情報に基づいて該制御手段から指示される指示信号により、X軸方向送り手段31、Y軸方向送り手段32、及び図示しないチャックテーブル25の回転駆動手段が駆動されて、基台3上の所望の位置にチャックテーブル25を位置付けることができる。
【0018】
図1に示すように、移動手段30の側方には、枠体37が立設される。枠体37は、基台3上に配設される垂直壁部37a、及び垂直壁部37aの上端部から水平方向に延びる水平壁部37bと、を備えている。枠体37の水平壁部37bの内部には、第一のレーザー光線照射手段6の光学系が収容されており、該光学系の一部を構成する第一の集光器67が水平壁部37bの先端部下面に配設されている。
【0019】
撮像手段7は、水平壁部37bの先端下面であって、第一のレーザー光線照射手段6の第一の集光器67とX軸方向に間隔をおいた位置に配設されている。撮像手段7には、必要に応じて、可視光線により撮像する通常の撮像素子(CCD)、被加工物に赤外線を照射する赤外線照射手段、赤外線照射手段により照射された赤外線を捕らえる光学系、該光学系が捕らえた赤外線に対応する電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等が含まれる。撮像手段7によって撮像された画像は、制御手段(図示は省略)に送られ、適宜表示手段(図示は省略)に表示される。
【0020】
該制御手段は、コンピュータから構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)とを含む。そして制御手段は、第一のレーザー光線照射手段6、撮像手段7、移動手段30等に電気的に接続され、各手段の作動を制御する。
【0021】
図2(a)を参照しながら、ウエーハ加工装置2Aの水平壁部37bに内蔵される第一のレーザー光線照射手段6の光学系について説明する。
【0022】
図2(a)に示す第一のレーザー光線照射手段6は、広帯域波長(例えば355nm~1064nm)のパルスレーザー光線PL0を発振する発振器61と、発振器61が発振した1パルス毎のパルスレーザー光線PL0を波長毎に時間差を持たせてパルスレーザー光線PL1として出力する波長別遅延手段62と、パルスレーザー光線PL1を平行光とするコリメーションレンズ63と、パルスレーザー光線PL1を、リング光に生成すると共に波長毎に小リング光から大リング光に分光してパルスレーザー光線PL2を生成するリング生成手段64と、パルスレーザー光線PL2の光路を変更する反射ミラー66と、パルスレーザー光線PL2をチャックテーブル25に保持されたウエーハ10の上面となる表面10aの該X軸座標及び該Y軸座標で特定された位置に集光して照射する集光レンズ671を含む第一の集光器67と、を備えている。
【0023】
パルスレーザー光線PL0が導かれる波長別遅延手段62は、例えば、波長分散を生じさせる光ファイバーを利用することで実現可能である。より具体的に言えば、波長別遅延手段62の内部に含まれる光ファイバー(図示は省略)の中に、波長毎に反射位置が異なるように回折格子を形成して、例えば、長い波長の光の反射距離を短く、短い波長の光の反射距離が長くなるように設定したもので実現される。これにより、図2(a)に示す波長別遅延手段62の出力側に設定される光ファイバー621を介して、1パルス毎に、波長が長い順に所定の時間差をもたせることができ、例えば、時間差をもった赤色光PL1a、黄色光PL1b、緑色光PL1c、及び青色光PL1dを含むパルスレーザー光線PL1が生成される。なお、本実施形態においては、説明の都合上、パルスレーザー光線PL0が、4つの波長域に対応して赤色光PL1a、黄色光PL1b、緑色光PL1c、及び青色光PL1dに分光される例について説明するが、実際は10~20の波長域に対応して分光される。
【0024】
リング生成手段64は、例えば、一対のアキシコンレンズ641、642と、ドーナツ型で半径方向に対称となっている回折格子643とを備えるアキシコンレンズ体で実現される。パルスレーザー光線PL1は、一対のアキシコンレンズ641、642を通過することでリング状の光とされ、さらに回折格子643を通過することで、波長毎に小リング光から大リング光に分光されたパルスレーザー光線PL2に生成される。上記した一対のアキシコンレンズ641、642の間隔を調整することで、パルスレーザー光線PL2を構成するリング光の大きさを調整することが可能である。なお、本実施形態においては、パルスレーザー光線PL1を波長毎に小リング光から大リング光に分光する手段として、上記したアキシコンレンズ体を用いる例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、回折光学素子(DEO)を用いてもよい。
【0025】
リング生成手段64によって生成されたパルスレーザー光線PL2は、反射ミラー66によって光路が変更されて、集光レンズ671を含む第一の集光器67に導かれ、ウエーハ10に照射される。なお、図2(a)の記載では、ウエーハ10を保持する保護テープT、フレームFは省略されている。
【0026】
図3には、上記したパルスレーザー光線PL2を構成するリング光PL2a~PL2dによって衝撃波PL3を生成し、ウエーハ10の内部の所定の集束点(位置P1)に集束させる態様を示す概念図が示されている。図に示すように、上記したリング光PL2a~PL2dがウエーハ10の表面10aに到達することによって、各到達点からウエーハ10内を伝播する衝撃波PL3が生成される。各リング光PL2a~PL2dがウエーハ10の表面10aに到達する際の時間差t1~t3を適切に設定することにより、この衝撃波PL3を、ウエーハ10の表面10aに照射される各リング光PL2a~PL2dの中心Cにおけるウエーハ10の厚み方向の所望の位置P1を集束点として集束させることが可能である。本実施形態においては、ウエーハ10の表面10aを基準とするZ軸方向のPzの深さに該位置P1を設定する。このように位置P1を集束点とする場合に、上記した時間差t1~t3を適切に設定する手順は、以下のとおりである。
【0027】
ウエーハ10の表面10a上に照射されるリング光PL2a~PL2dの径は、上記したリング生成手段64に含まれる回折格子643によって設定される値であり、例えば、図3に示すように、a1~a4となるように設定される。そして、リング光PL2a~PL2dの中心Cからウエーハ10の厚さ方向において、オペレータが各リング光PL2a~PL2dによって発生する衝撃波PL3を集束させたい位置P1までのZ軸座標(深さ)をPzとすると、ウエーハ10の表面10aにおける各リング光PL2a~PL2dが到達する点から該位置P1までの距離H1~H4は、以下の式により演算される。
H1=(a1+Pz1/2
H2=(a2+Pz1/2
H3=(a3+Pz1/2
H4=(a4+Pz1/2
【0028】
ここで、上記したように、リング光PL2a~PL2dが時間差t1~t3をもってウエーハ10の表面10aに到達してウエーハ10の内部を伝播する衝撃波PL3を生成する場合に、衝撃波PL3を位置P1に集束させるためには、以下の式を満たす時間差t1~t3を設定すればよい。なお、Vは、ウエーハ10の内部を衝撃波PL3が伝播する際の速度(m/s)であり、ウエーハ10の材質によって決まる速度である。
(H1-H2)/V=t1
(H2-H3)/V=t2
(H3-H4)/V=t3
【0029】
上記した時間差t1~t3は、上記した波長別遅延手段62によって設定することができ、上記した波長別遅延手段62においては、波長別遅延手段62を構成する光ファイバーの中に波長に対応して配設される回折格子(図示は省略)の位置を、上記した時間差t1~t3が生じるように設定する。
【0030】
上記した条件を満たす時間差t1~t3をもってウエーハ10の表面10aにリング光PL2a~PL2dが照射されることで、リング光PL2a~PL2dによって生成されウエーハ10内を伝播する衝撃波PL3は、位置P1にて集束されて強い衝撃を生じさせる。
【0031】
なお、上記した第一のレーザー光線照射手段6を作動させる際のレーザー照射条件は、例えば、以下のとおりである。発振器61から照射されるパルスレーザー光線PL0の平均出力を適切に調整することによって、ウエーハ10の内部の位置P1を集束点として衝撃波PL3を集束させて位置P1に破壊を生じさせることができる。
波長 :355nm~1064nm
繰り返し周波数 :50kHz
平均出力 :10W~100W
パルス幅 :100ps以下
【0032】
第一の実施形態に係るウエーハ加工装置2Aは、概ね上記したとおりの構成を備えており、図1乃至図3を参照しながら、ウエーハ加工装置2Aによって実施されるウエーハ加工方法、及びウエーハ加工装置2Aの第一のレーザー光線照射手段6が破壊層形成手段として機能する態様について、以下に説明する。
【0033】
ウエーハ10の分割すべき領域(分割予定ライン14)の表面10aから所定の深さ(Pz)の位置P1に破壊層を生成するに際し、まず、保持手段4のチャックテーブル25の保持面25aにウエーハ10が貼着された保護テープT側を載置して、図示しない吸引手段を作動して吸引保持し、ウエーハ10を保持したフレームFをクランプ27で固定する(保持工程)。該保持工程を実施したならば、次いで破壊層形成工程を実施する。
【0034】
破壊層形成工程を実施するに際し、まず、移動手段30を作動して、ウエーハ10を撮像手段7の下方に位置付ける。次いで、撮像手段7によって、ウエーハ10の表面10aを撮像することにより、分割すべき領域、すなわち、分割予定ライン14の位置を検出する(アライメント工程)。
【0035】
該アライメント工程を実施したならば、ウエーハ10を第一の集光器67の下方に移動して、アライメント工程によって把握された分割予定ライン14をX軸方向に沿う方向にし、さらに、分割予定ライン14における加工を開始すべき位置を、第一の集光器67の直下に位置付ける。
【0036】
本実施形態のウエーハ加工装置2Aは、図3に示すように、集光レンズ671を含む第一の集光器67によって集光される波長毎のリング光PL2a~PL2dによって、ウエーハ10の内部に衝撃波PL3を生成する。ウエーハ10の内部を伝播する衝撃波PL3は、上記したように適切に時間差t1~t3が設定されることにより、ウエーハ10の表面10aからZ軸方向で見て所定の深さPzの位置P1に集束される。これと同時に、移動手段30を作動して、チャックテーブル25をX軸方向に加工送りして、所定の深さPzの位置に衝撃波PL3を順次集束させて、図2(a)に示すように、ウエーハ10の内部に破壊層S1を形成する。この結果、破壊層S1は、分割予定ライン14の内部に、分割予定ライン14に沿って形成される。所定の分割予定ライン14の内部に、破壊層S1を形成したならば、移動手段30のY軸方向送り手段を作動してウエーハ10を割出送りして、隣接する未加工の分割予定ライン14を第一の集光器67の直下に位置付けて、上記したリング光PL2a~PL2dを該分割予定ライン14に位置付けて照射し、X軸方向送り手段31を作動して、分割予定ライン14の内部に破壊層S1を形成する。このようにして所定の方向に沿ったすべての分割予定ライン14の内部に破壊層S1を形成したならば、チャックテーブル25を回転させる図示しない回転駆動手段を制御してチャックテーブル25を90度回転させて、先に破壊層S1を形成した分割予定ライン14と直交する方向に形成されたすべての分割予定ライン14の内部に破壊層S1を形成する。以上により、ウエーハ10を個々のチップに分割する際に起点となる破壊層S1が、分割予定ライン14に沿って形成され、破壊層形成工程が完了する。
【0037】
上記したように破壊層形成工程が完了したならば、破壊層S1を起点としてウエーハ10を個々のデバイスチップ12’に分割すべく、分割工程を実施する。該分割工程は、公知の手段を採用し得るが、例えば、図4に示す分割装置70を使用して実施することができる。
【0038】
上記したように破壊層形成工程によって分割予定ライン14の内部に破壊層S1が形成されたウエーハ10は、図4に示す分割装置70に搬送される。分割装置70は、昇降可能に構成された環状のフレーム保持部材71と、その上面部にフレームFを載置してフレームFを保持するクランプ72と、クランプ72により保持されたフレームFに装着されたウエーハ10のデバイス12どうしの間隔を拡張するための少なくとも上方が開口した円筒形状からなる拡張ドラム73と、拡張ドラム73を囲むように設置された複数のエアシリンダ74a及びエアシリンダ74aから延びるピストンロッド74bから構成される支持手段74と、を備えている。
【0039】
拡張ドラム73は、フレームFの内径よりも小さく、フレームFに装着された保護テープTに貼着されるウエーハ10の外径よりも大きく設定されている。ここで、図4に示すように、分割装置70は、フレーム保持部材71を昇降させて、拡張ドラム73の上面部が略同一の高さになる位置(点線で示す)と、拡張ドラム73の上端部が、フレーム保持部材71の上端部よりも相対的に高くなる位置(実線で示す)と、にすることができる。
【0040】
上記したようにフレーム保持部材71を下降させて、拡張ドラム73の上端を、点線で示す位置から、実線で示す高い位置になるように相対的に変化させると、フレームFに装着された保護テープTは拡張ドラム73の上端縁によって拡張させられる。ここで、ウエーハ10は、上記した破壊層形成工程が実施されていることにより、分割予定ライン14に沿って分割起点となる破壊層S1が形成されており、保護テープTが拡張されてウエーハ10に放射状に引張力(外力)が作用することで、図4に示すように、ウエーハ10が、デバイスチップ12’に分割される。このようにしてウエーハ10が個々のデバイスチップ12’に分割されたならば、図示しない適宜のピックアップ装置によってピックアップされる。
【0041】
上記した実施形態によれば、ウエーハ10の表面10aの分割予定ライン14にリング状に形成されたパルスレーザー光線PL2を照射して衝撃波PL3を生成し、所定の位置P1で集束させて分割予定ライン14の内部に破壊層S1を生成することができ、この際に照射されるレーザー光線については、ウエーハ10の素材に応じた、吸収性、又は透過性を有する波長を選択する必要がなく、任意の範囲で設定された広帯域波長のレーザー光線でよいことから、ウエーハの種類、又は加工の種類に応じたレーザー加工装置を用意する必要がない。
【0042】
なお、本発明は、上記した第一の実施形態に限定されない。例えば、図2(b)に示すように、波長毎のリング光PL2a~PL2dを含み構成されるパルスレーザー光線PL2を照射して生成する衝撃波PL3’の集束点を、ウエーハ10の表面10a近傍の深さPz’で規定される位置P1’に設定してもよい。そのようにすることで、分割予定ライン14に沿ったウエーハ10の表面10aに、吸収性を有する波長のレーザー光線を照射して実施されるアブレーション加工の如く分割の起点となる破壊層S2を形成することも可能である。
【0043】
図5乃至図7を参照しながら、ウエーハ加工装置の第一、第二の参考例について説明する。
【0044】
図5には、第一、第二の参考例に係るウエーハ加工装置2Bの全体斜視図が示されている。ウエーハ加工装置2Bは、図1、及び図2を参照しながら説明したウエーハ加工装置2Aに対し、破壊層形成手段として配設された第一のレーザー光線照射手段6に替えて、破壊層形成手段として機能する他のレーザー光線照射手段8A~8Cを配設した点で相違している。なお、以下の説明において、図1図2に示す第一の実施形態と同一の番号が付された同一の構成についての詳細な説明は適宜省略する。
【0045】
図5に示すウエーハ加工装置2Bにおいては、ウエーハ加工装置2B内、又は近傍に、被加工物であるウエーハ10に液体L(例えば水)を供給するための液体供給手段90が配設される。液体供給手段90は、液体Lを貯留するタンクと、該タンクから液体Lを外部に吐出するための圧送ポンプとを備えている(いずれも図示は省略する)。液体供給手段90から吐出された液体Lは、配管92を介して、本実施形態の破壊層形成手段を構成する他のレーザー光線照射手段8A~8Cの集光器84a~84cに供給される。他のレーザー光線照射手段8A~8Cの光学系は、基台3上に配設された枠体37の水平壁部37bの内部に収容されている。図6を参照しながら、第一の参考例に配設される第二のレーザー光線照射手段8Aの光学系について説明する。
【0046】
図6に示すように、第二のレーザー光線照射手段8Aは、広帯域波長のパルスレーザー光線PL0を発振する発振器81と、パルスレーザー光線PL0を平行光とするコリメーションレンズ82と、コリメーションレンズ82によって平行光にされたパルスレーザー光線PL0の光路を必要に応じて変更する反射ミラー83と、該反射ミラー83によって反射されたパルスレーザー光線PL0が導入される第二の集光器84aとを備えている。なお、図示は省略するが、該光学系には、発振器81から発振されるパルスレーザー光線PL0の出力を調整するためのアッテネータ等も含まれる。
【0047】
第二の集光器84aの内部には、図6に示すように、パルスレーザー光線PL0が導入される側(図中上方側)からみて、集光レンズ841a、ガラス板842a、レーザー光線導入部843a、楕円ドーム85aが配設されている。楕円ドーム85aは、縦断面が楕円で構成される楕円体の一部により形成され、楕円ドーム85aとレーザー光線導入部843aとは、開口部845aを介して接続されている。レーザー光線導入部843aには、液体供給手段90と共に液体層形成手段を構成する液体導入口844aが側方から接続されている。ガラス板842aは、パルスレーザー光線PL0を透過しつつ、第二の集光器84aの内部を上下に仕切っている。
【0048】
第二の集光器84a内に形成された楕円ドーム85aは、上記したように、楕円体の一部により構成されている。該楕円体を形成する楕円は、該楕円の基準となる第一の焦点P2、第二の焦点P3により規定される。第一の焦点P2は、楕円ドーム85a内のレーザー光線導入部843a側にあり。また、第二の焦点P3は、第二の集光器84aの下端86aよりも下方側であって、楕円ドーム85aの外側にある。
【0049】
上記した第二のレーザー光線照射手段8Aを使用して、本実施形態のウエーハ加工方法を実施するに際しては、まず、上記した保持工程を実施することにより、チャックテーブル25上にウエーハ10を保持する。次いで、チャックテーブル25に保持されたウエーハ10を撮像手段7の直下に移動させて、撮像手段7によって、ウエーハ10を撮像し、アライメント工程を実施する。該アライメント工程を実施したならば、図示しない制御手段によって、ウエーハ10の画像から把握される分割予定ライン14の位置、方向に基づいて、移動手段30によって、チャックテーブル25を回転、移動させて、ウエーハ10の分割予定ライン14をX軸方向に沿った向きに調整すると共に、分割予定ライン14において加工を開始すべき位置を、第二のレーザー光線照射手段8Aの第二の集光器84aの直下に位置付ける。
【0050】
ウエーハ10を、第二のレーザー光線照射手段8Aの第二の集光器84aの直下に位置付けたならば、図示しない高さ調整手段を作動して、第二のレーザー光線照射手段8Aの高さを調整し、上記した楕円ドーム85aの第二の焦点P3を、ウエーハ10の分割予定ライン14の内部であって、ウエーハ10の表面10aから破壊層S3を生成する所定の深さの位置(Pz)に位置付ける。
【0051】
次いで、液体供給手段90を作動して、配管92を介して液体導入口844aから液体Lを導入する。液体導入口844aから導入された液体Lは、レーザー光線導入部843aを介して楕円ドーム85aに導入され、第二の集光器84aの下端86aと、ウエーハ10の表面10aとの隙間から外部に排出される。このようにして、第二の集光器84aに導入された液体Lによって、ウエーハ10上には液体の層851aが形成され、液体の層851aに楕円ドーム85aが浸漬された状態となる。
【0052】
上記したように、楕円ドーム85aを形成する楕円の第二の焦点P3を、ウエーハ10の表面10aからPz下方に位置付け、移動手段30を作動して、ウエーハ10をX軸方向に配設された分割予定ライン14に沿って移動させながら、第二のレーザー光線照射手段8Aを作動して、パルスレーザー光線PL0を照射する。ここで、図6に示すように、集光レンズ841aは、パルスレーザー光線PL0を液体の層851a内にある第一の焦点P2に集光するように設定されている。そして、レーザー光線PL0が第一の焦点P2に集光されると、第一の焦点P2において衝撃波PL3aを生成する。第一の焦点P2において生成された衝撃波PL3aは、液体の層851aを構成する液体Lを伝播して、楕円ドーム85aの内壁の各所で反射する。楕円ドーム85aの内壁の各所にて反射した衝撃波PL3aはウエーハ10の表面10aに達し、さらに、ウエーハ10内を伝播して、ウエーハ10の表面10aからZ軸方向の深さPzに位置付けられた第二の焦点P3を集束点として集束されて、X軸方向に位置付けられた分割予定ライン14の内部に沿って破壊層S3を形成する。
【0053】
上記したように、所定の深さ(Pz)の位置のX軸方向に破壊層S3を形成したならば、移動手段30を作動して、チャックテーブル25をY軸方向において適宜割出し送りして、第二の焦点P3を、先に破壊層S3を生成した分割予定ライン14に隣接した分割予定ライン14の内部に位置付け、チャックテーブル25をX軸方向に沿って移動してさらに破壊層S3を形成する。このような加工を繰り返すことにより、ウエーハ10の所定の方向に形成されたすべての分割予定ライン14の内部に破壊層S3を形成する。このようにして所定の方向に沿ったすべての分割予定ライン14の内部に破壊層S3を形成したならば、図示しない回転駆動手段を制御してチャックテーブル25を90度回転させて、先に破壊層S3を形成した分割予定ライン14と直交する方向のすべての分割予定ライン14の内部に破壊層S3を形成する。以上により、ウエーハ10を個々のチップに分割する際の起点となる破壊層S3が、分割予定ライン14に沿って形成され、破壊層形成工程が完了する(破壊層形成工程)。該破壊層形成工程が実施されたならば、上記した分割装置70を使用して分割工程を実施して、ウエーハ10を個々のデバイスチップ12’に分割することができる。
【0054】
なお、本実施形態における破壊層形成工程において、第二のレーザー光線照射手段8Aによって実施されるレーザー照射条件は、例えば、以下のように設定される。
波長 :355nm~1064nm
繰り返し周波数 :50kHz
平均出力 :10W~100W
パルス幅 :100ps以下
【0055】
上記した実施形態によっても、ウエーハ10に衝撃波PL3aを生成してウエーハ10の内部で伝播させて、ウエーハ10の分割予定ライン14に沿って所定の深さPzに設定された第二の焦点P3で集束させて破壊層S3を生成することができ、この際に照射されるレーザー光線については、ウエーハ10の素材に応じた、吸収性、又は透過性を有する波長を選択する必要がなく、任意の範囲で設定された広帯域波長のレーザー光線でよいことから、ウエーハの種類、又は加工の種類に応じたレーザー加工装置を用意する必要がない。
【0056】
7を参照しながら、第二の参考例、及び第二の参考例の変形例について説明する。
【0057】
図7(a)に示す第二の参考例で採用される第三のレーザー光線照射手段8Bは、図5、及び図6に基づいて説明した第一の参考例のウエーハ加工装置2Bの第二のレーザー光線照射手段8Aの第二の集光器84aに替えて、第三の集光器84bを配設した点のみが相違している。よって、図7(a)では、第三のレーザー光線照射手段8Bの第三の集光器84bの構成のみを示し、その他の構成については省略する。
【0058】
図7(a)に示すように、第三の集光器84bは、その内部に、上方からみて、集光レンズ841bと、ガラス板842bとを備え、ガラス板842bによって区切られた下部空間852に、本発明の衝撃波生成手段として機能する中空の半球面からなるドーム部材85bが配設されている。下部空間852の側方には、液体供給手段90と共に液体層形成手段を構成する液体導入口844bが形成され、液体導入口844bには上記した液体供給手段90から液体Lを導く配管92が接続されている。上記したドーム部材85bの頂点には、開口穴Hが形成されており、ドーム部材85bの上方側と、中空の内部とを連通している。なお、ドーム部材85bは、例えば、パルスレーザー光線PL0を透過しない硬質の部材で形成され、金属、ガラス等で形成される。このように形成された第三の集光器84bの作用について、以下に説明する。
【0059】
上記した第三のレーザー光線照射手段8Bを使用して、本実施形態のウエーハ加工方法を実施するに際しては、上記した保持工程、アライメント工程を実施した後、移動手段30によって、チャックテーブル25を回転して、ウエーハ10の分割予定ライン14の方向をX軸方向に沿った向きに調整すると共に、分割予定ライン14の加工開始位置を、第三のレーザー光線照射手段8Bの第三の集光器84bの直下に位置付ける。分割予定ライン14の加工開始位置を、第三のレーザー光線照射手段8Bの第三の集光器84bの直下に位置付ける際には、図示しない高さ調整手段を作動して、第三のレーザー光線照射手段8Bの高さを所定の高さに調整する。該所定の高さについては、後述する。
【0060】
上記したように、ウエーハ10の分割予定ライン14を、第三の集光器84bの直下に位置付け、第三のレーザー光線照射手段8Bを所定の高さに位置付けたならば、液体供給手段90を作動して、液体Lを配管92、液体導入口844bを介して下部空間852に導入する。液体導入口844bから導入された液体Lは、第三の集光器84b内の下部空間852を満たし、ドーム部材85bの頂点に形成された開口穴Hを介してドーム部材85bの内側の中空領域に導入され液体の層851bを形成する。液体の層851bを形成した液体Lは、第三の集光器84bの下端86bと、ウエーハ10の表面10aとの隙間から外部に排出される。このようにして、第三の集光器84bの下部空間852に導入された液体Lによって、ウエーハ10上に液体の層851bが形成され、液体の層851bにドーム部材85bが浸漬された状態となる。
【0061】
上記したドーム部材85bを備えた第三の集光器84bを含む第三のレーザー光線照射手段8Bを、ウエーハ10の分割予定ライン14に対して所定の高さに位置付けたならば、移動手段30によってウエーハ10をX軸方向に移動させながら、第三のレーザー光線照射手段8Bを作動して、例えば、上記した第一の参考例と同様のレーザー照射条件によりパルスレーザー光線PL0を照射する。パルスレーザー光線PL0は、図7(a)に示すように、第三の集光器84bの集光レンズ841bに導かれて集光され、ガラス板842bを介してドーム部材85bに照射される。ドーム部材85bは、上記したようにパルスレーザー光線PL0を透過しないが、振動を伝達する硬質の部材(金属、ガラス等)で形成されており、パルスレーザー光線PL0がドーム部材85bの上面に照射されることで衝撃波PL3bが液体の層851bに生成される。衝撃波PL3bがドーム部材85bの内部に形成された液体の層851bで伝播してウエーハ10の表面10aに達し、さらにウエーハ10の内部において伝播する。本実施形態においては、上記したように、第三のレーザー光線照射手段8Bの高さを所定の高さに調整するが、この所定の高さとは、ドーム部材85bによって生成された衝撃波PL3bが、ウエーハ10の内部において集束されて破壊層S4を形成する位置P4が、所望の深さPzとなる所定の高さである。
【0062】
上記したように、図7(a)に示す第三のレーザー光線照射手段8Bによっても、ウエーハ10の分割予定ライン14に沿って、所定の深さPzに設定された位置P4で集束させて破壊層S4を生成することができ、ウエーハ10の素材に応じた、吸収性、又は透過性を有するレーザー光線を選択する必要がなく、ウエーハの種類、又は加工の種類に応じたレーザー加工装置を用意する必要がない。
【0063】
さらに、図7(b)を参照しながら、第二の参考例に配設された第三のレーザー光線照射手段8Bの変形例として示されるレーザー光線照射手段8Cについて説明する。レーザー光線照射手段8Cは、図7(a)に基づいて説明した第三のレーザー光線照射手段8Bの第三の集光器84bに替えて、第四の集光器84cが配設された点のみが相違している。よって、図7(b)では、第四の集光器84cのみを示し、その他の構成については省略する。
【0064】
図7(b)に示すように、第四の集光器84cは、その内部に、上方からみて、集光レンズ841cと、本発明の衝撃波生成手段として機能する中実の半球体85cが配設されている。第四の集光器84cを構成する壁部88には、前記した液体供給手段90と共に液体層形成手段を構成する液体導入口844cが形成され、液体導入口844cから導かれる液体Lを第四の集光器84cの下端86c側に導く通路89が壁部88の内部に形成されている。液体導入口844cには、液体供給手段90から液体Lを導く配管92が接続されている。半球体85cは、第四の集光器84cの下方側に配置され、半球体85cの球面85dが、集光レンズ841cが配設された上方側に向けられ、平坦面85eが、第四の集光器84cの下端86cと面一になるように配設される。半球体85cは、パルスレーザー光線PL0を透過しない硬質の部材で形成され、例えば、金属、ガラス等で形成される。第四の集光器84cの下端86c側は、半球体85cによって閉塞されている。このように形成された第四の集光器84cの作用について、以下に説明する。
【0065】
上記した第四の集光器84cを使用して、本実施形態のウエーハ加工方法を実施するに際しては、上記した保持工程、アライメント工程を実施し、移動手段30によって、チャックテーブル25を回転させて、ウエーハ10の分割予定ライン14の向きをX軸方向に沿う向きに調整すると共に、ウエーハ10の分割予定ライン14の加工開始位置を、第四の集光器84cの直下に位置付ける。上記した第二の参考例と同様に、分割予定ライン14を、第四の集光器84cの直下に位置付ける際には、図示しない高さ調整手段を作動して、レーザー光線照射手段8Cの高さを所定の高さに調整する。
【0066】
上記したように、ウエーハ10の分割予定ライン14を、第四の集光器84cの直下に位置付け、第四の集光器84cを所定の高さに位置付けたならば、液体供給手段90を作動して、配管92を介して液体導入口844cから液体Lを導入する。液体導入口844cから導入された液体Lは、第四の集光器84cを構成する壁部88内の通路89をとおり、第四の集光器84cの下端86c側に液体Lを供給する。第四の集光器84cの下端86c側に供給された液体Lによって、ウエーハ10の表面10aと半球体85cの平坦面85eとによって形成される空間が満たされ、液体の層851cが形成される。このようにして、液体の層851cに半球体85cが浸漬した状態となる。
【0067】
上記した半球体85cを含む第四の集光器84cを、ウエーハ10の表面10aに対して所定の高さに位置付け、液体の層851cを形成したならば、移動手段30によってX軸方向にウエーハ10を移動させながら、レーザー光線照射手段8Cを作動して、上記した第二の参考例と同様のレーザー照射条件によりパルスレーザー光線PL0を照射する。パルスレーザー光線PL0は、図7(b)に示すように、第四の集光器84cの集光レンズ841cに導かれて集光され、半球体85cの球面85dに照射される。半球体85cは、上記したようにパルスレーザー光線PL0を透過しないが、振動を伝達する硬質の部材(金属、ガラス等)で形成されており、パルスレーザー光線PL0が半球体85cの球面85dに照射されることで衝撃波PL3cを生成する。
【0068】
半球体85cにて生成された衝撃波PL3cは、半球体85c内を伝播して平坦面85dに至り、液体の層851cに衝撃波PL3cを生成する。そして、衝撃波PL3cは、ウエーハ10の表面10aに達し、さらに、ウエーハ10を伝播する衝撃波PL3cを生成する。この際、ウエーハ10を伝播する衝撃波PL3cは、半球体85cの上面を形成する球面85dの作用によって、ウエーハ10の分割予定ライン14の内部の所定の深さPzの位置P5に集束させられ、破壊層S5を形成する。本実施形態においては、上記したように、ウエーハ10の分割予定ライン14をレーザー光線照射手段8Cの第四の集光器84cの直下に位置付ける際に、レーザー光線照射手段8Cの高さを所定の高さに調整するが、この所定の高さとは、半球体85cによって生成された衝撃波PL3cが、ウエーハ10の内部において集束されて破壊層S5を形成する位置P5が、所望の深さPzとなる高さである。そして、上記した手順に従って移動手段30を作動することで、ウエーハ10のすべての分割予定ライン14の内部に、ウエーハ10を分割する際の起点となる破壊層S5を形成することができる。
【0069】
上記した図7(b)に示す第三のレーザー光線照射手段の変形例によっても、ウエーハ10の分割予定ライン14に沿って、所定の深さPzに設定された位置P5で集束させて破壊層S5を生成することができ、ウエーハ10の素材に応じた、吸収性、又は透過性を有するレーザー光線を選択する必要がなく、ウエーハの種類、又は加工の種類に応じたレーザー加工装置を用意する必要がない。
【0070】
なお、上記した説明では、衝撃波生成手段として機能するドーム部材85b、半球体85cに関し、パルスレーザー光線が照射される部分の形状について、便宜上「球面」、「球体」と称したが、パルスレーザー光線によって生成される衝撃波を所望の位置に集束させるべくその表面の曲率は適宜調整されるものであり、完全な球面、球体となる形状に限定されるわけではない。また、上記した実施形態ではウエーハ10の表面10aを上面としてレーザー光線を照射、又はレーザー光線の照射により発生させられた衝撃波を伝播させたりしたが、本発明はこれに限定されず、ウエーハ10の裏面10を上面としてチャックテーブル25に吸引保持し、ウエーハ10の裏面10b側から加工を施すようにしてもよい。さらに、上記した第一の参考例、第二の参考例においても、衝撃波PL3a~PL3cの集束点をウエーハ10の分割予定ライン14における上面近傍に位置付けて、ウエーハ10の上面をアブレーション加工の如く加工するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
2A、2B:ウエーハ加工装置
3:基台
4:保持手段
21:X軸方向可動板
22:Y軸方向可動板
25:チャックテーブル
25a:保持面
27:クランプ
6:第一のレーザー光線照射手段
61:発振器
62:波長別遅延手段
64:リング生成手段
641、642:アキシコンレンズ
643:回折格子
67:第一の集光器
671:集光レンズ
7:撮像手段
8A:第二のレーザー光線照射手段
81:発振器
84a:第二の集光器
841a:集光レンズ
842a:ガラス板
843a:レーザー光線導入部
844a:液体導入口
845a:開口部
85a:楕円ドーム
851a:液体の層
P2:第一の焦点
P3:第二の焦点
87:開放部
8B:第三のレーザー光線照射手段
84b:第三の集光器
841b:集光レンズ
842b:ガラス板
85b:ドーム部材
851b:液体の層
852:下部空間
844b:液体導入口
8C:レーザー光線照射手段(第三のレーザー光線照射手段の変形例)
84c:第四の集光器
844c:液体導入口
85c:半球体
85d:球面
85e:平坦面
851c:液体の層
10:ウエーハ
10a:表面
10b:裏面
12:デバイス
12’:デバイスチップ
14:分割予定ライン
30:移動手段
31:X軸方向送り手段
32:Y軸方向送り手段
37:枠体
37a:垂直壁部
37b:水平壁部
70:分割装置
71:フレーム保持部材
72:クランプ
73:拡張ドラム
90:液体供給手段
92:配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7