(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】保護部材形成装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240214BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2020091988
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 真裕
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-119578(JP,A)
【文献】特開2010-155297(JP,A)
【文献】特開2010-155298(JP,A)
【文献】特開2010-62269(JP,A)
【文献】特開2011-51328(JP,A)
【文献】特開2014-78655(JP,A)
【文献】特開2015-162553(JP,A)
【文献】特開平11-314231(JP,A)
【文献】特開2003-33926(JP,A)
【文献】特開2017-164837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを載置する載置面を有するステージと、該ステージに載置した該シートの上に所定量の液状樹脂を供給する液状樹脂供給手段と、該載置面に対面しウェーハを保持する保持面を有する保持部と、該ステージと該保持部とを相対的に該載置面に垂直な方向に移動させ該液状樹脂を押し広げる押し広げ手段と、該載置面と該保持面とに挟まれウェーハの下面に押し広げられた該液状樹脂に外的刺激を与えて硬化させる硬化手段と、制御手段と、を備える保護部材形成装置であって、
該押し広げ手段は、
該ステージを下から支持する下ベース、及び該保持部を支持する支持ベースを少なくとも有し、該ステージの該載置面に対して垂直方向に延在するボールネジによって該保持部を該垂直方向に移動させ、該シート上に供給された該液状樹脂に該保持部が保持したウェーハを接触させる垂直移動機構と、
該垂直移動機構により該液状樹脂に接触させたウェーハを保持する該保持部を該垂直方向に昇降自在に該ボールネジに接続する接続部と、
該垂直方向に昇降自在な該保持部の該保持面を該載置面に平行な状態で該載置面に向かって下降させるために、該下ベースの上面、又は該支持ベースの下面の少なくともいずれか一方において、該載置面、又は該保持面の中心を中心として水平方向に形成する三角形の頂点それぞれに配設される電磁石と、を備え、
該載置面、又は該保持面の中心を中心とし水平方向に形成する三角形の各頂点にそれぞれ配置され該載置面と該保持面との距離を測定する3つのスケールを備え、
該制御手段は、該電磁石によりウェーハを保持した該保持面を該載置面に向かって下降させている際に、3つの該スケールの測定値が一致するように、各々の該電磁石に流す電流の値を制御する、保護部材形成装置。
【請求項2】
前記保持部を前記載置面から上方向に付勢する付勢部を備え、
前記制御手段は、該付勢部による該保持部を上方向に付勢する力に反して、前記ステージと該保持部とを接近させるように前記電磁石に流す電流の値を制御する請求項1記載の保護部材形成装置。
【請求項3】
シートを載置する載置面を有するステージと、該ステージに載置した該シートの上に所定量の液状樹脂を供給する液状樹脂供給手段と、該載置面に対面しウェーハを保持する保持面を有する保持部と、該ステージと該保持部とを相対的に該載置面に垂直な方向に移動させ該液状樹脂を押し広げる押し広げ手段と、該載置面と該保持面とに挟まれウェーハの下面に押し広げられた該液状樹脂に外的刺激を与えて硬化させる硬化手段と、制御手段と、を備える保護部材形成装置であって、
該押し広げ手段は、
該ステージを下から支持する下ベース、及び該保持部を支持する支持ベースを少なくとも有し、該ステージの該載置面に対して垂直方向に該保持部を移動させる垂直移動機構と、
該載置面に対して該垂直方向に該保持部の該保持面を該載置面に平行な状態で下降させるために、該下ベースの上面、又は該支持ベースの下面の少なくともいずれか一方において、該載置面、又は該保持面の中心を中心として水平方向に形成する三角形の頂点それぞれに配設される電磁石と、を備え、
該載置面、又は該保持面の中心を中心とし水平方向に形成する三角形の各頂点にそれぞれ配置され該載置面と該保持面との距離を測定する3つのスケールを備え、
該制御手段は、
該垂直移動機構を用いて該保持部を該載置面に向かって下降させる下降制御部と、
3つの該スケールの測定値が一致するように、各々の該電磁石に流す電流の値を制御する電流制御部と、を備える保護部材形成装置。
【請求項4】
前記垂直移動機構は、前記垂直方向に延在するボールネジと、該ボールネジを回転させるモータと、を少なくとも備える請求項3記載の保護部材形成装置。
【請求項5】
前記垂直移動機構は、一方を前記下ベースに連結し、他方を前記垂直方向に移動させる前記支持ベースに連結した伸縮シリンダであって、シリンダチューブと、該シリンダチューブ内を摺動するピストンと、該ピストンに連結させるロッドと、を備える請求項3記載の保護部材形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハに保護部材を形成する保護部材形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、シリコンインゴット等からスライスしたアズスライスウェーハを研削砥石で研削してアズスライスウェーハの反り、及び切り出された面のうねりを除去するために、研削を実施する前にアズスライスウェーハの一方の面に液状樹脂を押し広げ硬化させ保護部材を形成する保護部材形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているような保護部材形成装置は、ガラスステージに保持させたシートフィルムに液状樹脂を所定量供給し、その液状樹脂を保持手段に保持されたウェーハで上側から押圧してウェーハの下面に押し広げた後、紫外線を照射する等して硬化させ保護部材を形成している。この液状樹脂を押し広げる際に、保持手段とガラスステージとに荷重がかかる。その荷重によってウェーハを吸引保持する保持手段が傾くと、ウェーハに均一な厚みの保護部材が形成できないという問題が有る。
したがって、保護部材形成装置においては、保持手段が傾くことなく、均一な厚みの保護部材をウェーハに形成するという解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明は、シートを載置する載置面を有するステージと、該ステージに載置した該シートの上に所定量の液状樹脂を供給する液状樹脂供給手段と、該載置面に対面しウェーハを保持する保持面を有する保持部と、該ステージと該保持部とを相対的に該載置面に垂直な方向に移動させ該液状樹脂を押し広げる押し広げ手段と、該載置面と該保持面とに挟まれウェーハの下面に押し広げられた該液状樹脂に外的刺激を与えて硬化させる硬化手段と、制御手段と、を備える保護部材形成装置であって、該押し広げ手段は、該ステージを下から支持する下ベース、及び該保持部を支持する支持ベースを少なくとも有し、該ステージの該載置面に対して垂直方向に延在するボールネジによって該保持部を該垂直方向に移動させ、該シート上に供給された該液状樹脂に該保持部が保持したウェーハを接触させる垂直移動機構と、該垂直移動機構により該液状樹脂に接触させたウェーハを保持する該保持部を該垂直方向に昇降自在に該ボールネジに接続する接続部と、該垂直方向に昇降自在な該保持部の該保持面を該載置面に平行な状態で該載置面に向かって下降させるために、該下ベースの上面、又は該支持ベースの下面の少なくともいずれか一方において、該載置面、又は該保持面の中心を中心として水平方向に形成する三角形の頂点それぞれに配設される電磁石と、を備え、該載置面、又は該保持面の中心を中心とし水平方向に形成する三角形の各頂点にそれぞれ配置され該載置面と該保持面との距離を測定する3つのスケールを備え、該制御手段は、該電磁石によりウェーハを保持した該保持面を該載置面に向かって下降させている際に、3つの該スケールの測定値が一致するように、各々の該電磁石に流す電流の値を制御する、保護部材形成装置である。
【0006】
本発明に係る保護部材形成装置は、前記保持部を前記載置面から上方向に付勢する付勢部を備え、前記制御手段は、該付勢部による該保持部を上方向に付勢する力に反して、前記ステージと該保持部とを接近させるように前記電磁石に流す電流の値を制御すると好ましい。
【0007】
また、上記課題を解決するための本発明は、シートを載置する載置面を有するステージと、該ステージに載置した該シートの上に所定量の液状樹脂を供給する液状樹脂供給手段と、該載置面に対面しウェーハを保持する保持面を有する保持部と、該ステージと該保持部とを相対的に該載置面に垂直な方向に移動させ該液状樹脂を押し広げる押し広げ手段と、該載置面と該保持面とに挟まれウェーハの下面に押し広げられた該液状樹脂に外的刺激を与えて硬化させる硬化手段と、制御手段と、を備える保護部材形成装置であって、該押し広げ手段は、該ステージを下から支持する下ベース、及び該保持部を支持する支持ベースを少なくとも有し、該ステージの該載置面に対して垂直方向に該保持部を移動させる垂直移動機構と、該載置面に対して該垂直方向に該保持部の該保持面を該載置面に平行な状態で下降させるために、該下ベースの上面、又は該支持ベースの下面の少なくともいずれか一方において、該載置面、又は該保持面の中心を中心として水平方向に形成する三角形の頂点それぞれに配設される電磁石と、を備え、該載置面、又は該保持面の中心を中心とし水平方向に形成する三角形の各頂点にそれぞれ配置され該載置面と該保持面との距離を測定する3つのスケールを備え、該制御手段は、該垂直移動機構を用いて該保持部を該載置面に向かって下降させる下降制御部と、3つの該スケールの測定値が一致するように、各々の該電磁石に流す電流の値を制御する電流制御部と、を備える保護部材形成装置である。
【0008】
例えば、前記垂直移動機構は、前記垂直方向に延在するボールネジと、該ボールネジを回転させるモータと、を少なくとも備えると好ましい。
【0009】
例えば、前記垂直移動機構は、一方を前記下ベースに連結し、他方を前記垂直方向に移動させる該支持ベースに連結した伸縮シリンダであって、シリンダチューブと、該シリンダチューブ内を摺動するピストンと、該ピストンに連結させるロッドと、を備えると好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る保護部材形成装置は、押し広げ手段は、ステージを下から支持する下ベース、及び保持部を支持する支持ベースを少なくとも有し、ステージの載置面に対して垂直方向に延在するボールネジによって保持部を垂直方向に移動させ、シート上に供給された液状樹脂に保持部が保持したウェーハを接触させる垂直移動機構と、垂直移動機構により液状樹脂に接触させたウェーハを保持する保持部を垂直方向に昇降自在にボールネジに接続する接続部と、該垂直方向に昇降自在な保持部の保持面を載置面に平行な状態で載置面に向かって下降させるために、下ベースの上面、又は支持ベースの下面の少なくともいずれか一方において、載置面、又は保持面の中心を中心として水平方向に形成する三角形の頂点それぞれに配設される電磁石と、を備え、載置面、又は保持面の中心を中心とし水平方向に形成する三角形の各頂点にそれぞれ配置され載置面と保持面との距離を測定する3つのスケールを備え、制御手段は、電磁石によりウェーハを保持した保持面を載置面上の液状樹脂に向かって接触させ下降させている際に、3つのスケールの測定値が一致するように、各々の電磁石に流す電流の値を制御することで、保護部材形成時にウェーハの押し付けにより保持部が荷重(ステージ側からの反力)を受けても、適切な電流がそれぞれ流された3つの電磁石が生み出す磁力によって、保持面を載置面に平行な状態(即ち、保持部が傾いていない状態)で載置面に近づけて液状樹脂をウェーハの下面全面に拡張させていくことが可能となるため、ウェーハに対する均一な厚みの保護部材の形成が可能になる。
【0011】
また、本発明の係る保護部材形成装置は、保持部を載置面から上方向に付勢する付勢部を備え、制御手段は、付勢部による保持部を上方向に付勢する力に反して、ステージと保持部とを接近させるように電磁石に流す電流の値を制御することで、保持面を載置面に平行な状態(即ち、保持部が傾いていない状態)で載置面に近づけて液状樹脂をウェーハの下面全面に拡張させていくことが可能となるため、ウェーハに対する均一な厚みの保護部材の形成が可能になる。
【0012】
また、本発明に係る保護部材形成装置は、押し広げ手段は、ステージを下から支持する下ベース、及び保持部を支持する支持ベースを少なくとも有し、ステージの載置面に対して垂直方向に保持部を移動させ例えばシート上に供給された液状樹脂に保持部が保持したウェーハを接触させる垂直移動機構と、該載置面に対して該垂直方向に該保持部の該保持面を該載置面に平行な状態で下降させるために、下ベースの上面、又は支持ベースの下面の少なくともいずれか一方において、載置面、又は保持面の中心を中心として水平方向に形成する三角形の頂点それぞれに配設される電磁石と、を備え、載置面、又は保持面の中心を中心とし水平方向に形成する三角形の各頂点にそれぞれ配置され載置面と保持面との距離を測定する3つのスケールを備え、制御手段は、垂直移動機構を用いて保持部を載置面に向かって下降させる下降制御部と、3つのスケールの測定値が一致するように、各々の電磁石に流す電流の値を制御する電流制御部と、を備えることで、保護部材形成時にウェーハの押し付けにより保持部が荷重(ステージ側からの反力)を受けても、適切な電流がそれぞれ流された3つの電磁石が生み出す磁力によって、保持面を載置面に平行な状態(即ち、保持部が傾いていない状態)で載置面に近づけて液状樹脂をウェーハの下面全面に拡張させていくことが可能となるため、ウェーハに対する均一な厚みの保護部材の形成が可能になる
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】保護部材形成装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】保護部材形成装置の一例を示す正面図である。
【
図3】保護部材形成装置を用いてウェーハに保護部材を形成する場合を説明する正面図である。
【
図4】別形態の保護部材形成装置の一例を示す正面図である。
【
図5】別形態の保護部材形成装置を用いてウェーハに保護部材を形成する場合を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、シート82を載置する載置面3000を有するステージ30と、ステージ30に載置したシート82の上に所定量の液状樹脂を供給する液状樹脂供給手段18と、載置面3000にZ軸方向(鉛直方向)において対面しウェーハ80を保持する保持面601を有する保持部60と、ステージ30と保持部60とを相対的に載置面3000に垂直な方向(Z軸方向)に移動させ液状樹脂を押し広げる押し広げ手段2と、載置面3000と保持面601とに挟まれウェーハ80の下面800に押し広げられた液状樹脂に外的刺激(本実施形態においては紫外線照射)を与えて硬化させる硬化手段402(
図2参照)と、制御手段9と、を備える保護部材形成装置1を示す斜視図である。
【0015】
図1に示すウェーハ80は、例えば、円柱状のシリコンインゴットをワイヤーソー等で薄く切断して形成された円形のアズスライスウェーハであるが、これに限定されるものではない。ウェーハ80は分割予定ラインに区画された領域にデバイスが形成された半導体ウェーハであってもよい。
図1に示すシート82は、例えば、ポリオレフィン系の樹脂等で構成されるシートであり、ウェーハ80よりも大径の円形となっているが、これに限定されるものではない。
【0016】
ステージ30は、外形が平面視円形状であり、例えば、石英ガラス等の円形のガラス板300と、ガラス板300を支持する円形凹部を有する円筒状の枠体301とを備える。ガラス板300の平坦な上面である載置面3000には、シート82が載置され、シート82上に液状樹脂が溜められる。
【0017】
例えば、所定の合金等で形成される枠体301の円環状の上面は、ガラス板300の載置面3000と同一の高さに設定されている。枠体301の直径は、例えば、保持するウェーハ80よりも大径に設定されている。
【0018】
図1、2に示すように、ステージ30は、押し広げ手段2を構成する下ベース40によって下側から支持されている。下ベース40は、例えば、平面視略正三角状に形成されており、下ベース40の上面にガラス板300を支持した枠体301が固定されている。
【0019】
図2に示すように、例えば、下ベース40によって支持されたステージ30のガラス板300と下ベース40との間には円柱状の空間が設けられており、該空間内に硬化手段402が配設されている。そして、硬化手段402は例えば紫外線照射ランプであり、硬化手段402から上方に向かって照射されガラス板300やシート82を透過した紫外線によって、ステージ30の載置面3000に載置されたシート82上に溜められ上からウェーハ80によって押圧されウェーハ80の下面800全面に広げられた液状樹脂が硬化される。
【0020】
図1に示す液状樹脂供給手段18は、樹脂供給ノズル180と、樹脂供給ノズル180に所定量の液状樹脂188を送出する図示しないディスペンサと、可撓性を備える樹脂チューブ等を介して図示しないディスペンサに連通する樹脂供給源189とを備えている。
例えば側面視逆L字状の樹脂供給ノズル180は、ステージ30の載置面3000に向く供給口1800を有している。樹脂供給ノズル180は、軸方向がZ軸方向である回転軸回りに旋回可能となっており、ステージ30の上方から退避位置まで供給口1800を移動することができる。
樹脂供給源189が供給する液状樹脂188は、本実施形態においては紫外線が照射されることで硬化する紫外線硬化樹脂であるが、熱が加えられることで硬化する熱硬化樹脂であってもよい。この場合には、
図2に示す硬化手段402は、ヒーターであってもよい。
【0021】
図1、2に示す保持部60は、本実施形態においては、例えば、平面視円形のホイール600と、ポーラス部材等からなりホイール600によって支持されウェーハ80を吸引保持する図示しないポーラス板とを備えている。円形板状の図示しないポーラス板は、例えば、ホイール600の下面側に嵌め込まれており、真空発生装置等の吸引源に連通している。そして、吸引源が吸引することで生み出された吸引力が、保持部60の下面であり水平面(X軸Y軸平面)に平行な平坦な保持面601に伝達されることで、保持面601でウェーハ80を吸引保持することができる。
ウェーハ80に保護部材を形成しておらず保持部60が傾いていない状態においては、水平面に平行な保持面601とステージ30の載置面3000とは平行となっている。また、保持面601の中心と載置面3000の中心とは合致している。
【0022】
保持部60のホイール600の上面には、
図2に示すように、例えば、保持したウェーハ80をステージ30上にシート82を介して溜められた液状樹脂188に+Z方向側から押し付けた際に、ステージ30からウェーハ80に加わる荷重を測定する荷重センサ61が複数配設されている。荷重センサ61は、例えば、ホイール600の上面にホイール600の周方向に120度間隔を空けて、3つ配設されている。そして、本実施形態において、3つの荷重センサ61は、それぞれ、ホイール600と後述する保持部連結具66とにより上下から挟まれ、ステージ30からウェーハ80に加わる+Z方向の向きの荷重が作用する作用点部となるように配設されている。荷重センサ61は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電素子を用いたキスラー社製の薄型力センサ等で構成されている。
【0023】
図1、2に示す押し広げ手段2は、ステージ30を下から支持する下ベース40、保持部60を支持する支持ベース42、及び例えば支持ベース42を下ベース40とによって挟むように下ベース40に対向して配置する上ベース44を有し、ステージ30の載置面3000に対して垂直方向(Z軸方向)に延在するボールネジ47(
図2のみ図示)によって保持部60を垂直方向に移動させ、シート82上に供給された液状樹脂188に保持部60が保持したウェーハ80を接触させる垂直移動機構4を備えている。
【0024】
保持部60を支持する支持ベース42は、例えば、
図1に示すように外形が平面視略正三角形状に形成されており、また、
図2に示すように保持部60を円板状の保持部連結具66及び図示しない固定ボルト等を介して、その下面の中央領域において支持している。
【0025】
例えば、
図1に示すように、上下方向に移動可能な支持ベース42には、各頂点側の領域に付勢部46がそれぞれ連結されている。3つの付勢部46は、カウンタバランスと呼ばれ、押し広げ手段2に保持部60及び支持ベース42の自重による大きな負荷が掛かるため、その負荷を軽減相殺するための機構である。なお、保護部材形成装置1は、上ベース44および付勢部46を備えてなくてもよい。
【0026】
付勢部46について具体的に説明する。付勢部46は、例えば、
図1、2に示すようにエアシリンダで構成され、有底円筒状のシリンダ460と、シリンダ460内部に配設され該内部を垂直方向(Z軸方向)に移動可能なピストン462と、シリンダ460に挿入され上端がピストン462に連結されたロッド464とを備える。
【0027】
図2に示すように各ロッド464の下端側には、持ち上げブロック467が形成されており、
図1に示す支持ベース42から下方に突き出た持ち上げブロック467の上面に、支持ベース42の下面が当接し、持ち上げブロック467によって該下面が持ち上げられるように支持される。
【0028】
また、シリンダ460の上側部分は、上ベース44に連結されている。シリンダ460の側壁の下部側又は底板には、エア導入口461が貫通形成されており、各エア導入口461は、コンプレッサー等からなるエア源15が各エア配管466を介して連通している。そして、シリンダ460内にエア導入口461を通りエア源15が供給するエアの圧力を調整することで、付勢部46による支持ベース42及び保持部60を持ち上げる力を調整することが可能となる。
【0029】
支持ベース42の上方には、上ベース44が支持ベース42を下ベース40とで上下方向から挟むように配置されている。上ベース44の外形は、例えば、支持ベース42と平面視相似形の略正三角形状に形成されており、各付勢部46を3つの頂点側の各領域で支持している。
【0030】
図1、2に示すように、上ベース44の中心にはボールネジ挿通孔440がZ軸方向に貫通形成されており、該ボールネジ挿通孔440には、例えば軸中心が保持部60の水平面内における中心を通る軸心を備えZ軸方向に延在するボールネジ47が挿通されている。ボールネジ47の上端側はカップリング480及び図示しない軸受け等を介してモータ48が連結しており、ボールネジ47が回転可能となっている。
【0031】
図2に示すように、押し広げ手段2は、垂直移動機構4によりステージ30上に溜められた液状樹脂188に接触させたウェーハ80を保持する保持部60を垂直方向(Z軸方向)に昇降自在にボールネジ47に接続する接続部27を備えている。
【0032】
本実施形態における接続部27は、例えば、ボールネジ47に螺合するナット270と、ナット270の外側面に一体的に形成された平面視円環平板状のツバ部271と、ツバ部271にツバ部271の周方向に均等間隔を空けて複数、例えば、120度間隔を空けて3つ貫通形成された可動ピン挿通孔272と、可動ピン挿通孔272に配設されたロック部材273と、可動ピン挿通孔272に挿通されロック部材273によってツバ部271に対して固定された状態とツバ部271に対してZ軸方向に上下動可能な状態とを切り換え可能な可動ピン274と、を備えている。
【0033】
ロック部材273は、例えば、制御手段9から通電されると可動ピン274をロックしてモータ48のボールネジ47の回動に伴うナット270の上下動と共に上下動可能な状態とし、制御手段9からの通電が止められると可動ピン274のロックを解除してナット270の上下動とは独立した後述する上側電磁石452と下側電磁石451との間に発生する電磁力による可動ピン274の下降動作を可能とする。
例えば3つの可動ピン274の下端側は支持ベース42の上面に固定されており、これによって、支持ベース42及び保持部60が、ナット270の上下動と共に上下動する場合と、停止した状態のナット270及びツバ部271に対して支持ベース42及び保持部60が相対的に下降可能な場合とが実現される。
【0034】
図1、2に示すガイドレール49は、下ベース40と上ベース44との間で支持ベース42のステージ30に対する垂直方向(Z軸方向)の移動をガイドするための、垂直移動機構4の構成要件の一つである。本実施形態においては、ガイドレール49は、保持部60の保持面601の中心を中心として水平方向に形成した仮想的な正三角形の各頂点となる位置に1本ずつ、計3本配設されているが、計2本であってもよい。
【0035】
ガイドレール49の上端は、ガイドレール固定ナット490によって上ベース44に固定されている。各ガイドレール49は支持ベース42の各頂点側に設けられた挿通孔を通り、その下端がガイドレール固定ナット405によって下ベース40に固定されている。
【0036】
押し広げ手段2は、載置面3000に対して垂直方向(Z軸方向)に昇降自在な保持部60の保持面601を載置面3000に平行な状態で下降させるために、下ベース40の上面、又は支持ベース42の下面の少なくともいずれか一方において、ステージ30の載置面3000、又は保持部60の保持面601の中心を中心として水平方向(X軸Y軸平面方向)に形成する例えば正三角形の頂点それぞれに配設される電磁石を備えている。
なお、下ベース40の上面の中心、載置面3000の中心、保持面601の中心、及び支持ベース42の下面の中心は合致している。
【0037】
例えば、下ベース40の上面における仮想的な正三角形の各頂点に位置するように計3つの例えば円柱状の下側電磁石451が配設されている。また、下側電磁石451にZ軸方向において対向するように、支持ベース42の下面における仮想的な正三角形の各頂点に位置するように計3つの例えば円柱状の上側電磁石452が配設されている。なお、下側電磁石451及び上側電磁石452は、例えば軟鉄心にコイルを巻きつけて構成される従来のものであり、各下側電磁石451及び各上側電磁石452のコイルには、制御手段9から電力が供給され所望の電流が流される。
なお、3つの上側電磁石452、又は3つの下側電磁石451のいずれか一方が永久磁石であってもよい。
【0038】
図1、2に示すように、保護部材形成装置1は、ステージ30の載置面3000、又は保持部60の保持面601の中心を中心とし水平方向に形成する正三角形の各頂点にそれぞれ配置され、載置面3000と保持面601とのZ軸方向における距離を測定する3つスケール、即ち、第1のスケール171(
図1のみ図示)、第2のスケール172、及び第3のスケール173(
図2のみ図示)を備えている。
【0039】
第1のスケール171~第3のスケール173の構造は同様となっており、本実施形態においては、第1のスケール171~第3のスケール173は、投光部と受光部とが例えば支持ベース42の下面に並べて配設された反射型光電センサである。そして、第1のスケール171の投光部が、例えば載置面3000と面一の枠体301の上面に対して測定光175を照射する。そして、枠体301の上面で反射した反射光を受光部が受けた際の光路差から、例えば三角測量の原理等によって枠体301の上面と支持ベース42の下面との距離が測定され、測定値が制御手段9に電気信号として送られる。制御手段9は、予め支持ベース42の下面と保持部60の下面である保持面601との装置構成における高さの差を把握しているため、制御手段9は、保持部60が下降することに伴って変化するステージ30の上面である載置面3000と保持部60の保持面601との距離を認識できる。
【0040】
なお、保持部60の保持面601と支持ベース42の下面とが面一になっていてもよい。また、第1のスケール171~第3のスケール173は、投光部と受光部とがステージ30の枠体301の上面に並べて配設されており支持ベース42の下面に測定光を照射する構成となっていてもよいし、投光部と受光部とがZ軸方向において上下で対向する光測長センサであってもよいし、静電容量変位センサ、超音波変位センサ等であってもよい。また、ガイドレール49に並行にZ軸方向に延在するメモリを備えた尺と、尺の目盛を読む読取り部を支持ベース42に配置するという構成で支持ベース42の高さを測定してもよい。
【0041】
制御手段9は、各種の制御プログラムに従って演算処理するCPU及びメモリ等の記憶媒体等を備えており、有線又は無線の通信経路を介して、第1のスケール171~第3のスケール173からそれぞれの測定情報を受け取る。また、制御手段9は、電力供給源としても機能して、図示しない配線を介して各下側電磁石451及び各上側電磁石452に接続されており、下側電磁石451及び各上側電磁石452に流す電流の値を制御することができる。
【0042】
以下に、上述した保護部材形成装置1を用いて
図1に示すウェーハ80に保護部材を形成する場合の、保護部材形成装置1の動作について説明する。
まず、保持部60が、保持面601の中心とウェーハ80の中心とが略合致するように、ウェーハ80の上面を吸引保持する。
【0043】
保持部60によるウェーハ80の吸引保持と並行して、ステージ30の載置面3000にシート82が載置される。さらに、
図1に示す液状樹脂供給手段18の樹脂供給ノズル180が旋回移動し、供給口1800が載置面3000上のシート82の中央領域上方に位置付けられる。続いて、図示しないディスペンサが、樹脂供給ノズル180に基準温度に温度管理されている液状樹脂188を送り出して、供給口1800からステージ30に吸引保持されているシート82に向けて液状樹脂188を滴下する。そして、所定量の液状樹脂188がシート82上に堆積したら、液状樹脂供給手段18によるシート82への液状樹脂188の供給が停止され、樹脂供給ノズル180が旋回移動して載置面3000上から退避する。
【0044】
図2に示す接続部27は、ロック部材273が可動ピン274をロックしており、ナット270の上下動と一体となって支持ベース42及び保持部60が上下動可能な状態になっている。そして、モータ48がボールネジ47を所定の回転速度で回動させると、ボールネジ47の回転運動がボールネジ47に螺合するナット270のZ軸方向における直線運動に変換される。これに伴い支持ベース42及びウェーハ80を保持する保持部60が、3本のガイドレール49にガイドされてZ軸方向に下降していく。
【0045】
支持ベース42及び保持部60の下降が開始されるのと並行して、付勢部46によって、支持ベース42を+Z方向に付勢する力(持ち上げる力)が加えられる。すなわち、
図1、2に示すエア源15が、例えば、支持ベース42及び保持部60の自重を相殺することができる程度の力を生み出す量のエアを、シリンダ460内にエア導入口461から供給する。ピストン462はシリンダ460内に供給されるエアによって+Z方向に上昇しようとするため、支持ベース42に対して、支持ベース42を+Z方向に持ち上げようとする所定の力が加えられる。
【0046】
例えば、保持部60及び支持ベース42が下降し始めると、
図1,2に示す第1のスケール171~第3のスケール173が先に説明した通りの測定方法によって、保持面601の中心を中心とし水平方向に形成する仮想的な正三角形の各頂点となる各測定点において、ステージ30の上面である載置面3000と保持部60の保持面601との距離を測定し始め、測定情報を制御手段9に逐次送信する。この段階においては、保持部60にはステージ30からの荷重が掛かっていないため、第1のスケール171、第2のスケール172、及び第3のスケール173による測定距離は同値となる。
つまり、保護部材形成装置1は、予め上記のような保護部材の形成を開始する前の装置のセットアップにおいて、載置面3000に保持面601を接触させた際に、第1のスケール171、第2のスケール172、及び第3のスケール173の値を同値とする。その後、保持面601を載置面3000から離間させている。
【0047】
この状態で、支持ベース42及び保持部60が降下していき、そして、保持部60に吸引保持されたウェーハ80の下面800が、例えばシート82の中央で水滴上に溜められていた液状樹脂188に接触する。
【0048】
例えば、
図3に示すように、ウェーハ80の下面800が液状樹脂188に接触して液状樹脂188をある程度押し広げると、モータ48によるボールネジ47の回転が停止され接続部27のナット270の下降に伴う保持部60及び支持ベース42の下降が停止される。また、これに並行して、ロック部材273による可動ピン274のロックが解除され、支持ベース42及び保持部60が停止したナット270及びツバ部271に対して可動ピン274を介して昇降自在な状態になる。なお、この状態においても付勢部46によって保持部60及び支持ベース42に対して上方向に付勢する力が加えられている。
【0049】
そして、制御手段9から各下側電磁石451及び各上側電磁石452に電力が供給され、各下側電磁石451及び各上側電磁石452に所定の電流が流される制御が行われ、各下側電磁石451と各上側電磁石452との間に電磁力が発生して互いが引き合う。その結果、該電磁力によって保持部60及び支持ベース42が下降していき、ウェーハ80の下面800によって下方に押圧された液状樹脂188は、ウェーハ80の径方向にさらに押し広げられる。
【0050】
上記のようにウェーハ80の下面800が液状樹脂188を押し始めると、ステージ30からの荷重が保持部60に掛かってくる。ここで、液状樹脂188のウェーハ80の下面800における径方向への広がり速度や量の偏り等を要因として、該荷重が保持部60の保持面601において均一とならず、該荷重によって保持部60が傾いてしまわないようにする必要がある。
【0051】
例えば、保持部60に保持されたウェーハ80の下面800に液状樹脂188が押し広げられている際に、制御手段9に送られてくる
図3に示す第3のスケール173の測定値が、第1のスケール171(
図1参照)及び第2のスケール172の測定値よりも大きな値になった場合を考える。この場合には、保持部60及び支持ベース42が、第3のスケール173側部分(
図1においては、紙面奥側部分)が他よりも高くなるように傾きかけているため制御手段9は、例えば、
図3に示す+X方向側の下側電磁石451と上側電磁石452、即ち、第3のスケール173側の下側電磁石451と上側電磁石452とに供給する電力を徐々に増加させて流れる電流の値を大きくする制御を行う。
【0052】
これによって、第3のスケール173側の上側電磁石452と下側電磁石451との間に働く両者を引き合わせる電磁力が、第1のスケール171側の上側電磁石452と下側電磁石451との間に働く電磁力、及び第2のスケール172側の上側電磁石452と下側電磁石451との間に働く電磁力よりも大きくなるため、付勢部46による保持部60を上方向に付勢する力に反して、第3のスケール173側のステージ30と保持部60とが他の箇所よりもより接近する。そのため保持部60が傾くことなく、保持面601が水平方向に平行な面を維持し、第1のスケール171、第2のスケール172、及び第3のスケール173による測定距離が再び同じ値となる。例えば、第1のスケール171、第2のスケール172、及び第3のスケール173による測定距離が再び同じ値になると、制御手段9による第3のスケール173側の上側電磁石452及び下側電磁石451に供給する電力を徐々に増加させる制御が停止される。
なお、電磁石は、上側電磁石または下側電磁石のどちらか一方でもよく、他方の電磁石に代えて磁性体を配置してもよい。
【0053】
上記のような第1のスケール171、第2のスケール172、及び第3のスケール173の測定値が一致するように、保持面601の中心を中心として水平方向に形成した正三角形の各頂点で下ベース40の上面及び支持ベース42の下面にそれぞれ3つずつ配設した下側電磁石451及び上側電磁石452に対する電力供給の制御、即ち、流す電流の値の制御が制御手段9により実施され、保持部60が所定の高さ位置まで降下することで、ウェーハ80の下面800全面に液状樹脂188の膜が形成される。該液状樹脂188の膜は、上記制御手段9による制御の下で、保持部60が荷重(ステージ30側からの反力)を受けても保持部60の傾きが変わることが無いように保持部60の傾き補正がなされ保持面601が水平方向に平行な面となった状態で形成されているため、均一な厚みとなっている。
なお、例えば、ウェーハ80の下面800にうねりや反りがある場合であっても、形成された膜によって該うねりや反りが吸収され、保護部材が形成されたウェーハ80は平坦な露出面(上面)を備えるため、後にウェーハ80が研削装置のチャックテーブルに搬送された場合等においても、ウェーハ80の被研削面である上面を研削砥石の下面に対して平行な状態にすることが可能となる。
【0054】
次いで、
図3に示すように、硬化手段402が、液状樹脂188の均一な厚みの膜に向けて外的刺激となる紫外線を照射する。その結果、液状樹脂188の膜は、硬化するとともに均一な厚みの保護部材としてウェーハ80の下面800に形成される。
【0055】
なお、本発明に係る保護部材形成装置は本実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
以下に、上記に説明した保護部材形成装置1の別形態の
図4に示す保護部材形成装置10について説明する。
【0056】
別形態の保護部材形成装置10は、
図2に示す保護部材形成装置1とは異なり接続部27を備えず、かつ、制御手段9の構成、及び制御手段9が行う制御が保護部材形成装置1とは異なる。そして、それ以外の構成は
図1、2に示す保護部材形成装置1と略同様となっている。
【0057】
保護部材形成装置10において、
図4に示す垂直移動機構4のモータ48によって回転するボールネジ47には、ボールナット471が螺合しており、該ボールナット471の下面には支持ベース42の上面が直に接合されている。
【0058】
保護部材形成装置10の制御手段9は、
図4に示すように、垂直移動機構4を用いて保持部60をステージ30の載置面3000に向かって-Z方向に下降させる下降制御部90と、保持部60で吸引保持したウェーハ80の下面800に液状樹脂188による保護部材を形成する際に、第1のスケール171(
図1参照)、第2のスケール172、及び第3のスケール173の測定値が一致するように、各々の下側電磁石451と各々の上側電磁石452とに流す電流の値を制御する電流制御部91と、を備える。
【0059】
以下に、上述した保護部材形成装置10を用いて
図4に示すウェーハ80に保護部材を形成する場合の、保護部材形成装置10の動作について説明する。
保持部60がウェーハ80を吸引保持してから、載置面3000に載置されたシート82上に液状樹脂188が供給されるまでは、
図1、2に示す保護部材形成装置1と同じである。
【0060】
制御手段9の下降制御部90から垂直移動機構4のモータ48にパルス信号が送られ、モータ48がボールネジ47を所定の回転速度で回動させると、ボールネジ47の回転運動がボールネジ47に螺合するボールナット471のZ軸方向における直線運動に変換される。これに伴いボールナット471に連結された支持ベース42及びウェーハ80を保持する保持部60が、3本のガイドレール49にガイドされてZ軸方向に下降していく。
支持ベース42及び保持部60の下降が開始されるのと並行して、付勢部46によって、支持ベース42に対して+Z方向に付勢する力(持ち上げる力)が加えられる。なお、保護部材形成装置10は、付勢部46を備えてなくてもよい。
【0061】
保持部60及び支持ベース42が下降し始めると、
図1、4に示す第1のスケール171~第3のスケール173が先に説明した通りの測定方法によって、保持面601の中心を中心とし水平方向に形成する仮想的な正三角形の各頂点となる各測定点において、載置面3000と保持部60の保持面601との距離を測定し始め、測定情報を制御手段9に逐次送信する。
【0062】
この状態で、支持ベース42及び保持部60が降下していき、そして、
図5に示すように、保持部60に吸引保持されたウェーハ80の下面800が、例えばシート82の中央で水滴上に溜められていた液状樹脂188に接触して、ウェーハ80の下面800に液状樹脂188が押し広げられていく。
【0063】
垂直移動機構4による保持部60及び支持ベース42の下降と共に、制御手段9の電流制御部91から各下側電磁石451及び各上側電磁石452に電力が供給され、各下側電磁石451及び各上側電磁石452に所定の電流が流される制御が行われ、各下側電磁石451と各上側電磁石452との間に電磁力が発生して互いが引き合う。
【0064】
上記のように
図5に示すウェーハ80の下面800が液状樹脂188を押し始めると、ステージ30からの荷重が保持部60に掛かり、保持部60が傾く場合がある。そして、例えば、制御手段9に送られてくる
図5に示す第3のスケール173の測定値が、第1のスケール171(
図1参照)及び第2のスケール172の測定値よりも大きな値になった場合は、保持部60及び支持ベース42が、第3のスケール173側部分が他よりも高くなるように傾いているため、電流制御部91は、例えば、
図5に示す+X方向側の下側電磁石451と上側電磁石452、即ち、第3のスケール173側の下側電磁石451と上側電磁石452とに供給する電力を徐々に増加させて流れる電流の値を大きくする制御を行う。
【0065】
これによって、第3のスケール173側の上側電磁石452と下側電磁石451との間に働く電磁力が、第1のスケール171側の上側電磁石452と下側電磁石451との間に働く電磁力、及び第2のスケール172側の上側電磁石452と下側電磁石451との間に働く電磁力よりも大きくなるため、付勢部46による保持部60を上方向に付勢する力に反して、第3のスケール173側のステージ30と保持部60とがより接近する。そのため保持部60の傾きが解消されて、保持面601が再び水平方向に平行な面となり、第1のスケール171、第2のスケール172、及び第3のスケール173による測定距離が再び同じ値となる。例えば、第1のスケール171、第2のスケール172、及び第3のスケール173による測定距離が再び同じ値になると、制御手段9による第3のスケール173側の上側電磁石452及び下側電磁石451に供給する電力を徐々に増加させる制御が停止される。
なお、上側電磁石452及び下側電磁石451に供給する電流は、大きい値を示す第1のスケール171、第2のスケール172、又は第3のスケール173に対応した上側電磁石452及び下側電磁石451にのみ供給するようにしてもよい。
また、上側電磁石452及び下側電磁石451との2つの電磁石に電流を供給するのではなく、一方の電磁石に電流を供給させ、他方の電磁石の代わりに磁性体を配置させてもよい。
また、ボールネジ47で保持面601を載置面3000接近する方向に移動させつつ上側電磁石452と下側電磁石451とが反発する磁力を発生させるように電流の極性を変えて供給してもよい。
【0066】
下降制御部90による垂直移動機構4の制御、及び電流制御部91による各上側電磁石452及び各下側電磁石451に流す電流の値の制御の下で、保持部60が荷重(ステージ30側からの反力)を受けても保持部60の傾きが変わることが無いように保持部60の傾き補正がなされ保持面601が水平方向に平行な面となった状態で液状樹脂188が押し広げられていくため、所定時間押圧された
図5に示す液状樹脂188からなる膜は均一な厚みとなっている。その後、硬化手段402によって、液状樹脂188の膜は、硬化されて均一な厚みの保護部材がウェーハ80の下面800に形成される。
【0067】
保護部材形成装置10において、垂直移動機構4は、上記のようなボールネジ機構に限定されず、下ベース40に一方側であるシリンダチューブを連結し、他方側であるロッドを垂直方向に移動させる支持ベース42に連結した伸縮シリンダであって、該シリンダチューブと、シリンダチューブ内を摺動するピストンと、ピストンに連結させる該ロッドと、を備えた構成となっていてもよい。
なお、伸縮シリンダの一方側であるシリンダチューブを支持ベース42に連結させ、他方側であるロッドを下ベース40に連結させてもよい。
また、例えば、保護部材形成装置10は、下ベース40側が図示しないボールネジ機構等によって保持部60に向かって上昇可能となっていてもよい。
【符号の説明】
【0068】
80:ウェーハ 800:ウェーハの下面 82:シート
1:保護部材形成装置
18:液状樹脂供給手段 180:樹脂供給ノズル 189:樹脂供給源 188:液状樹脂
30:ステージ 300:ガラス板 3000:載置面 301:枠体
60:保持部 600:ホイール 601:保持面
61:荷重センサ 66:保持部連結具
2:押し広げ手段
40:下ベース 402:硬化手段
42:支持ベース 420:ボールナット 421:ボールネジ連結具
44:上ベース 440:ボールネジ挿通孔
46:付勢部460:シリンダ 462:ピストン 464:ロッド 467:持ち上げブロック 461:エア導入口 15:エア源
47:ボールネジ 48:モータ 480:カップリング
49:ガイドレール 27:接続部 270:ナット 271:ツバ部 274:可動ピン 273:ロック部材
451:下側電磁石 452:上側電磁石
171~173:第1のスケール~第3のスケール
9:制御手段
10:別形態の保護部材形成装置 9:制御手段 90:下降制御部 91:電流制御部
90:下降制御部 91:電流制御部 471:ボールナット