(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】油性保湿剤及びそれを含む皮膚外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20240214BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240214BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240214BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240214BHJP
【FI】
A61K8/37
A61Q19/00
A61K9/107
A61K47/14
(21)【出願番号】P 2020559199
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2019047115
(87)【国際公開番号】W WO2020116411
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2018227607
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】傳田 紘史
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 忠城
(72)【発明者】
【氏名】加知 久典
(72)【発明者】
【氏名】和田 貴史
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-526402(JP,A)
【文献】特開平06-032720(JP,A)
【文献】国際公開第2011/013174(WO,A1)
【文献】特表2017-513823(JP,A)
【文献】国際公開第2012/131848(WO,A1)
【文献】特開2006-036704(JP,A)
【文献】国際公開第2010/146616(WO,A1)
【文献】米国特許第08420109(US,B2)
【文献】国際公開第2018/221534(WO,A1)
【文献】特開2014-088354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/107
A61K 47/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分Aと成分Bと成分Cとのエステル化物からなり、前記エステル化物の水酸基価が0~160mgKOH/gであり、
前記成分Aと成分Bと成分Cとのエステル化物を構成する脂肪酸残基中の成分Bに由来する脂肪酸残基と成分Cに由来する脂肪酸残基の質量比が、99.9:0.1~45:55であることを特徴とする、油性保湿剤。
成分A:ジペンタエリスリトール、エリスリトール、又はソルビタンである、多価アルコール
成分B:
炭素数8~10の直鎖飽和脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸
成分C:炭素数6~28の脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸(ただし、成分Bは除く)
【請求項2】
前記成分Aがジペンタエリスリトールである、請求項1に記載の油性保湿剤。
【請求項3】
成分A’と成分Bとのエステル化物からなり、前記エステル化物の水酸基価が0~160mgKOH/gであることを特徴とする、油性保湿剤。
成分A’:エリスリトール、又はソルビタンである、多価アルコール
成分B:炭素数8~10の直鎖飽和脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか一項に記載の油性保湿剤を含むことを特徴とする、皮膚外用組成物。
【請求項5】
前記皮膚外用組成物が、化粧料、洗顔料、全身用洗浄料、又は外用医薬品である、請求項
4に記載の皮膚外用組成物。
【請求項6】
水酸基価が0~160mgKOH/gであり、構成脂肪酸残基中の成分Bに由来する脂肪酸残基と成分Cに由来する脂肪酸残基の質量比が99.9:0.1~45:55である、成分Aと成分Bと成分Cとのエステル化物の、皮膚外用組成物を製造するための使用。
成分A:ジペンタエリスリトール、エリスリトール、又はソルビタンである、多価アルコール
成分B:
炭素数8~10の直鎖飽和脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸
成分C:炭素数6~28の脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸(ただし、成分Bは除く)
【請求項7】
水酸基価が0~160mgKOH/gである、成分A’と成分Bとのエステル化物の、皮膚外用組成物を製造するための使用。
成分A’:エリスリトール、又はソルビタンである、多価アルコール
成分B:炭素数8~10の直鎖飽和脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の多価アルコールと脂肪酸からなるエステル化物、当該エステル化物からなる油性保湿剤、及び当該油性保湿剤を含む皮膚外用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで化粧品分野においては、皮膚の乾燥を防ぎ、皮膚にうるおいを与える保湿剤として、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、及びヒアルロン酸等の水溶性保湿剤がよく用いられている(特許文献1参照。)。また、この他にも、各種天然抽出物及びエキス等の水溶性保湿剤が数多く開発されている。しかしながら、これらの水溶性保湿剤は、皮膚へ塗布した後に、発汗や水による洗い流し等によって皮膚から流れ落ちてしまい、結果的に、皮膚の保湿が保たれなくなってしまうことがある。
【0003】
一方、油性の保湿剤としては、例が少ないが、ワセリン等の油剤が知られている。油剤は、皮膚を閉塞することによって皮膚表面からの水分蒸散を抑制することができる。このため、特にワセリンは、皮膚の乾燥に起因する症状の治療、予防又は改善のための皮膚外用組成物の基剤として、具体的には主に軟膏の基剤として汎用されている(特許文献2参照。)。
【0004】
確かに、油性であるワセリンは、発汗や水での洗い流しによって流れ落ちにくいというメリットはある。しかし、ワセリン自体の性状により、皮膚に塗布した際にべたつき感があって肌馴染みが悪いため、使用時に不快に感じる場合がある。さらに、皮膚に塗布したワセリンが、衣服等との接触により拭き取られてしまうと、その閉塞効果を発揮できず、結果的に皮膚の保湿が保たれなくなる場合がある。
【0005】
保湿効果の評価手法としては、これまで、経表皮水分蒸散量(例えば、特許文献3参照。)や角層水分量(例えば、特許文献4及び5参照。)に基づく評価手法が一般的である。実際に、保湿効果を角層水分量で評価した特許文献が数多く出されている。
【0006】
なお、特許文献6においては、美容液の保湿感は、被験者の皮膚表面に塗布した後の感触として保湿感を感じるかどうか、という官能評価で評価している。つまり、保湿感の評価は、官能評価のみで行っており、角層の水分含有量は調べられてはおらず、当該美容液の塗布によって皮膚の保湿機能自体が改善されたかどうかは明らかではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-209223号公報
【文献】特許第4385170号公報
【文献】特許第5954935号公報
【文献】特許第5572263号公報
【文献】特許第5917043号公報
【文献】特許第4377879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
化粧料等の皮膚外用組成物に配合される保湿剤としては、保湿効果がより優れたものの開発が期待されている。
【0009】
本発明の目的は、皮膚の保湿効果が優れた油性保湿剤、及びそれを含む皮膚外用組成物を提供することである。詳しくは、皮膚に塗布した時に皮膚の保湿機能を有するエステル化物からなる油性保湿剤、及びそれを含む皮膚外用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、先に説明した事情に鑑み、各種油性物質が有する保湿機能について鋭意研究を重ねた結果、油性物質の皮膚の保湿機能に対する効果を、被験対象である油性物質を皮膚表面に塗布し、その状態で所定時間待機した後に皮膚表面から当該油性物質を除去した状態の皮膚の角層水分量を測定する方法により調べることによって、特定のエステル化物が皮膚に対する高い保湿効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は次のものを提供する。
【0011】
[1] 成分Aと成分Bと成分Cとのエステル化物からなり、前記エステル化物の水酸基価が0~160mgKOH/gであり、
前記成分Aと成分Bと成分Cとのエステル化物を構成する脂肪酸残基中の成分Bに由来する脂肪酸残基と成分Cに由来する脂肪酸残基の質量比が、99.9:0.1~45:55であることを特徴とする、油性保湿剤。
成分A:ジペンタエリスリトール、エリスリトール、又はソルビタンである、多価アルコール
成分B:炭素数8~10の直鎖飽和脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸
成分B:カプリル酸及びカプリン酸
成分C:炭素数6~28の脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸(ただし、成分Bは除く)
[2] 前記成分Aがジペンタエリスリトールである、前記[1]の油性保湿剤。
[3] 成分A’と成分Bとのエステル化物からなり、前記エステル化物の水酸基価が0~160mgKOH/gであることを特徴とする、油性保湿剤。
成分A’:エリスリトール、又はソルビタンである、多価アルコール
成分B:炭素数8~10の直鎖飽和脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸
[4] 前記[1]~[3]のいずれかの油性保湿剤を含むことを特徴とする、皮膚外用組成物。
[5] 前記皮膚外用組成物が、化粧料、洗顔料、全身用洗浄料、又は外用医薬品である、前記[4]の皮膚外用組成物。
[6] 水酸基価が0~160mgKOH/gであり、構成脂肪酸残基中の成分Bに由来する脂肪酸残基と成分Cに由来する脂肪酸残基の質量比が99.9:0.1~45:55である、成分Aと成分Bと成分Cとのエステル化物の、皮膚外用組成物を製造するための使用。
成分A:ジペンタエリスリトール、エリスリトール、又はソルビタンである、多価アルコール
成分B:炭素数8~10の直鎖飽和脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸
成分C:炭素数6~28の脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸(ただし、成分Bは除く)
[7] 水酸基価が0~160mgKOH/gである、成分A’と成分Bとのエステル化物の、皮膚外用組成物を製造するための使用。
成分A’:エリスリトール、又はソルビタンである、多価アルコール
成分B:炭素数8~10の直鎖飽和脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、特定のエステル化物からなり、皮膚に塗布した時に保湿効果を有する油性保湿剤、及び当該油性保湿剤を含有する皮膚外用組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施態様について具体的に説明する。
本発明及び本願明細書において、「油性保湿剤」とは、常温及び常圧下(例えば20℃、101.3kPa)において水に溶けない、保湿効果を有する剤を意味する。ここで、水に溶解するとは、水と混合した場合に、層を形成したり白濁したりすることなく、均一になることを意味する。つまり、油性保湿剤は、水と混合した場合には、水分子と分離して層を形成したり、乳化により白濁したりする。
【0014】
本発明及び本願明細書において、保湿効果とは、皮膚の保湿機能を改善させる効果を意味し、より具体的には、角層の水分含有量を保持又は増量させる効果を意味する。本発明に係る油性保湿剤としては、皮膚に塗布した状態のみならず、皮膚に塗布後に皮膚表面から当該皮膚外用組成物の一部又は大部分が除かれてしまった場合でも、一定時間角層の水分含有量を保持又は増量させる効果が維持されるものが好ましい。
【0015】
角層の水分含有量は、角層の電気伝導度(μS)により調べられる。角層の電気伝導度(μS)は、角層の水分含有量に依存し、角層の水分含有量が多くなるほど、角層の電気伝導度(μS)は大きくなる。角層の電気伝導度(μS)は、定圧センサープローブ接触高周波コンダクタンス交換方法により測定することができる。具体的には、当該測定方法に基づく角層水分量測定装置、例えば、IBS社の角層水分量測定装置「SKICON-200」を使用することにより、角層の電気伝導度(μS)は測定できる。
【0016】
エステル化物の水酸基価(mgKOH/g)は、公益社団法人日本油化学会発行、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法 2013年版」の2.3.6.2-1996ヒドロキシル価(ピリジン-無水酢酸法)により測定することができる。
【0017】
具体的には、サンプル1gをアセチル化させたときに、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数である。エステル化物の水酸基価は、中和滴定法により測定される。より詳細には、サンプルにアセチル化試薬を加えて1時間、グリセリン浴中で加熱した後、1mLの水で未反応の無水酢酸を酢酸に変え、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を加えて水酸化カリウムエタノール溶液で滴定する。フェノールフタレインの発色が確認されるのに必要な水酸化カリウムエタノール溶液の量から、水酸基価を算出する。アセチル化試薬は、無水酢酸25gにピリジンを加えて全量を100mLに調製した溶液である。
【0018】
<油性保湿剤>
本発明に係る油性保湿剤は、成分Aと成分Bとのエステル化物又は成分Aと成分Bと成分Cとのエステル化物からなり、前記エステル化物の水酸基価が0~160mgKOH/gである。前記エステル化物のうち、成分Aと成分Bと成分Cとのエステル化物は、当該エステル化物を構成する脂肪酸残基中の成分Bに由来する脂肪酸残基と成分Cに由来する脂肪酸残基の質量比が、99.9:0.1~45:55である。
成分A:ジペンタエリスリトール、エリスリトール、又はソルビタンである、多価アルコール
成分B:炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸
成分C:炭素数6~28の脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸(ただし、成分Bは除く)
【0019】
成分Aの多価アルコールは、ジペンタエリスリトール、エリスリトール、又はソルビタンである。ジペンタエリスリトールは、ペンタエリスリトールを原料とし、縮合反応等により得ることができ、市販されている。またソルビタンはソルビトールを原料とし、分子内縮合反応等により得ることができ、市販されている。
ジペンタエリスリトールの市販品としては、李長栄化学社販売のDipentaerythritol(90%GRADE)、エリスリトールの市販品としては、物産フードサイエンス社販売のエリスリトール、ソルビタンの市販品としては、三光化学工業社販売のソルビタンM-70等が挙げられる。
成分Aの多価アルコールとしては、より高い保湿効果が得られることから、ジペンタエリスリトールが好ましい。
【0020】
成分Bの脂肪酸は、炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸である。炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸としては、具体的には、カプロン酸(n-ヘキサン酸:炭素数6)、n-ヘプタン酸(炭素数7)、カプリル酸(n-オクタン酸:炭素数8)、ぺラルゴン酸(n-ノナン酸:炭素数9)、及びカプリン酸(n-デカン酸:炭素数10)が挙げられ、カプリル酸及びカプリン酸から選ばれる1種又は2種が好ましく、カプリル酸がより好ましい。
【0021】
成分Cの脂肪酸は、炭素数8~22の脂肪酸であり、炭素数8~18の脂肪酸であることが好ましい。また、当該脂肪酸は、直鎖飽和脂肪酸であってもよく、分岐飽和脂肪酸であってもよく、直鎖不飽和脂肪酸であってもよく、分岐不飽和脂肪酸であってもよい。また、水酸基含有脂肪酸であってもよい。この中でも直鎖飽和脂肪酸、又は分岐飽和脂肪酸が好ましく、直鎖飽和脂肪酸がより好ましい。また、1価脂肪酸に加え、多価脂肪酸も使用することができる。成分Cの脂肪酸としては、これらの1種又は2種以上を使用することができる。ただし、炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸(成分B)を除く。
【0022】
炭素数11~28の直鎖飽和脂肪酸としては、具体的には、n-ウンデカン酸(炭素数11)、ラウリン酸(n-ドデカン酸:炭素数12)、ミリスチン酸(炭素数14)、パルミチン酸(炭素数16)、及びステアリン酸(炭素数18)、べヘン酸(炭素数22)、モンタン酸(炭素数28)等が挙げられる。
【0023】
炭素数6~28の直鎖の不飽和脂肪酸としては、パルミトオレイン酸(炭素数16)、オレイン酸(炭素数18)、リノール酸(炭素数18)、リノレン酸(炭素数18)、エルシン酸(炭素数22)等が挙げられる。
【0024】
炭素数6~28の分岐飽和脂肪酸としては、具体的には、2-エチルヘキサン酸(炭素数8、イソカプリル酸ともいう)、3,5,5-トリメチルヘキサン酸(炭素数9、イソノナン酸ともいう)、2-ブチルオクタン酸(炭素数10)、イソウンデカン酸(炭素数11)、2-ブチルオクタン酸(炭素数12、イソラウリン酸またはインドデカン酸ともいう)、イソトリデカン酸(炭素数13)、イソパルミチン酸(炭素数16)、イソステアリン酸(炭素数18で分岐状態の異なる3種)、及びオクチルドデカン酸(炭素数20)等が挙げられる。
【0025】
炭素数6~28の水酸基含有脂肪酸としては、12-ヒドロキシステアリン酸(炭素数18)、及びリシノール酸(炭素数18)等が挙げられる。
【0026】
炭素数6~28の多価脂肪酸としては、二塩基酸が挙げられる。具体的には、スベリン酸(オクタン二酸:炭素数8)、アゼライン酸(ノナン二酸:炭素数9)、セバシン酸(デカン二酸:炭素数10)、ウンデカン二酸(炭素数11)、ドデカン二酸(炭素数12)、トリデカン二酸(炭素数:13)、テトラデカン二酸(炭素数:14)、ペンタデカン二酸(炭素数:15)、ヘキサデカン二酸(炭素数:16)、ヘプタデカン二酸(炭素数:17)、オクタデカン二酸(炭素数:18)、ノナデカン二酸(炭素数:19)、エイコサン二酸(炭素数:20)、イソエイコサン二酸(炭素数:20)、及びオクタコサン二酸(炭素数:28)等が挙げられる。
【0027】
成分Bの飽和脂肪酸及び成分Cの脂肪酸としては、化学的に合成された合成品であってもよく、天然物から抽出されたものであってもよい。また、成分B及び成分Cは、いずれも市販品を用いることもできる。
【0028】
本発明に係る油性保湿剤であるエステル化物が、成分Aと成分Bと成分Cとのエステル化物である場合、当該エステル化物を構成する脂肪酸残基中の成分Cに由来する脂肪酸残基の量は、成分Aの多価アルコール中の水酸基に成分Bに由来する脂肪酸残基がエステル化反応により導入されることにより得られる皮膚の保湿効果を損なわない量であればよい。当該エステル化物を構成する脂肪酸残基中の成分Bに由来する脂肪酸残基と成分Cに由来する脂肪酸残基の質量比(以下、「成分Bと成分Cの構成脂肪酸残基の質量比」ということがある。)は、99.9:0.1~45:55の範囲内であり、99.9:0.1~50:50であることが好ましく、99.9:0.1~80:20であることがより好ましい。
【0029】
エステル化物の構成脂肪酸中の成分Bと成分Cの構成脂肪酸残基の質量比は、例えば、以下のように測定することができる。供試サンプルであるエステル化物中の脂肪酸残基を、2.4.1.1-2013メチルエステル化法(硫酸-メタノール法)(公益社団法人日本油化学会発行、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法 2013年版」)又はそれに相当する方法でメチルエステル化した誘導体を調製する。このメチルエステル化した誘導体の調製には、同基準油脂分析試験法の 2.4.1.2-2013三フッ化ホウ素-メタノール法及び2.4.1.3-2013ナトリウムメトキシド法等のメチルエステル化法も参考にできる。
【0030】
得られた誘導体を、2.4.2.3-2013脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)(公益社団法人日本油化学会発行、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法
2013年版」)又はそれに相当する方法により分離して測定する方法によりエステル化物の構成脂肪酸中の成分Bと成分Cの構成脂肪酸残基の質量比を求めることができる。
例えば、炭素数18の飽和、不飽和脂肪酸が混合されている場合に、炭素数18の飽和、不飽和脂肪酸の総質量比ではなく、各成分に分けて知りたいときには、2.4.2.3-2013脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)であればステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等を分離することができる。
【0031】
より詳細には、供試サンプルであるエステル化物を誘導化試薬に溶解させて加熱処理することによって当該エステル化物中の脂肪酸残基をメチルエステル化した誘導体を調製する。得られた誘導体を、FIDを備えたガスクロマトグラフにより脂肪酸メチルエステルの種類ごとに分離し、定量する。エステル化物の脂肪酸残基の組成は、クロマトグラフ上のピーク面積の総和に対する、各脂肪酸残基から得られた脂肪酸メチルエステルのピーク面積の百分率(%)に基づいて求められる。事前に成分Bと成分Cの構成脂肪酸残基の質量比が既知である脂肪酸原料についてメチルエステル化した誘導体を調製し、これをガスクロマトグラフで分析しておくことにより、より正確にエステル化物中の成分Bと成分Cの構成脂肪酸残基の質量比を確認することができる。
【0032】
本発明に係る油性保湿剤は、成分Aの多価アルコール中の水酸基の少なくとも一部が、エステル化反応により、成分Bの脂肪酸に由来する脂肪酸残基に置換され、水酸基価が0~160mgKOH/gであるエステル化物、又は、成分Bの脂肪酸に由来する脂肪酸残基と成分Cの脂肪酸に由来する脂肪酸残基に置換され、かつ成分Bに由来する脂肪酸残基と成分Cに由来する脂肪酸残基の質量比が、99.9:0.1~45:55であり、水酸基価が0~160mgKOH/gであるエステル化物からなる。エステル化物の水酸基価を特定の範囲内にすることによって、当該エステル化物に皮膚の保湿効果を備えさせることができる。
【0033】
本発明に係る油性保湿剤は、これを構成するエステル化物の水酸基価が0~160mgKOH/gであれば、保湿効果を備えることができる。本発明に係る油性保湿剤を構成するエステル化物の水酸基価の値を変えることによって、当該エステル化物の粘度や感触を所望の状態に調整することができる。このため、本発明に係る油性保湿剤としては、用途や処方上の都合に応じて水酸基価の異なるエステル化物を適宜使い分けることができる。
【0034】
本発明に係る油性保湿剤であるエステル化物の粘度や感触は、当該エステル化物中の脂肪酸残基の種類や組成にも影響を受ける。このため、成分Bの脂肪酸及び成分Cの脂肪酸の種類や、成分Aの多価アルコールとのエステル化効率を調整することによって、所望の粘度や感触を備えるエステル化物を得ることができる。例えば、成分Bの脂肪酸を、特に、カプリル酸及びカプリン酸の少なくとも1つに限定することにより、エステル化物の粘度をより低くすることができる。そして、粘度の低いエステル化物は、皮膚に塗布した時にべたつき感が少なく、さらりとした感触となる。このため、成分Bの脂肪酸とのエステル化物を、油性保湿剤として含有させた皮膚外用組成物は、肌馴染みが良く、使用感の優れたものとなる。
【0035】
エステル化物中の脂肪酸残基に、成分Cの脂肪酸に由来する脂肪酸残基が含まれていることにより、当該エステル化物を皮膚表面に塗布した時の感触や各種物性を改善することができる。すなわち、エステル化物中の成分Cの脂肪酸に由来する脂肪酸残基の種類や存在比(エステル化率)を適宜調整することにより、保湿効果を有しながら所望の感触や物性等を備え、油性保湿剤として非常に有用なエステル化物を得ることができる。
【0036】
本発明に係る油性保湿剤であるエステル化物は、反応原料として、成分Aと成分B、又は成分Aと成分Bと成分Cとを使用し、これらの反応原料を、水酸基価が特定の範囲内となるようにエステル化反応することによって得られるエステル化物である。
【0037】
成分Aがジペンタエリスリトールのエステル化物は、エステル化度が1~6の脂肪酸エステルを含み得る。エステル化度が1~6のジペンタエリスリトール脂肪酸エステルの組成比は、エステル化物の水酸基価が0~160mgKOH/gであれば特に限定されるものではない。なお、この組成比は、原料の仕込み比やエステル化反応の反応条件を適宜調節することによって調整することができる。
【0038】
成分Aがエリスリトールのエステル化物は、エステル化度が1~4の脂肪酸エステルを含み得る。エステル化度が1~4のエリスリトール脂肪酸エステルの組成比は、エステル化物の水酸基価が0~160mgKOH/gであれば特に限定されるものではない。なお、この組成比は、原料の仕込み比やエステル化反応の反応条件を適宜調節することによって調整することができる。
【0039】
成分Aがソルビタンのエステル化物は、エステル化度が1~4の脂肪酸エステルを含み得る。エステル化度が1~4のソルビタン脂肪酸エステルの組成比は、エステル化物の水酸基価が0~160mgKOH/gであれば特に限定されるものではない。なお、この組成比は、原料の仕込み比やエステル化反応の反応条件を適宜調節することによって調整することができる。
【0040】
本発明に係る油性保湿剤であるエステル化物のうち、成分Aと成分Bとのエステル化物を得るためのエステル化反応は、例えば、成分A1モルに対し、目的とする水酸基価にするために必要な成分Bのモル数、又はそれよりも多いモル数を仕込み、無触媒又は触媒存在下で、180~240℃の温度で反応させることにより行うことができる。前記触媒としては、アルコールと脂肪酸のエステル化反応で用いられる、例えば酸、アルカリ又はその他の有機化学の分野でそれ自体公知の触媒を適用することができる。前記反応は、エステル化反応に悪影響を及ぼさない溶媒中で行ってもよく、また無溶媒で行ってもよい。前記溶媒として、アルコールと脂肪酸のエステル化反応に用いられる、有機化学の分野でそれ自体公知の溶媒を適用することができる。反応時間としては、通常10時間~20時間を適用することができる。また、反応時間は、使用する原料(直鎖又は分岐)、触媒の有無、エステル化温度又は酸の過剰量等の影響を受けるため、10時間以下又は20時間以上となる場合もある。反応終了後、触媒を使用していた場合にはろ過処理や吸着処理等により触媒を除去してもよい。エステル化反応の反応物からは、蒸留により過剰な未反応原料を除去して精製したり、アルカリ条件下で精製したりするなどの常法によりエステル化物を得ることができる。また、エステル化物の色相等を改善したい場合には、常法により脱色処理し、色相を改善することができる。
【0041】
ここで、成分Aと成分Bの仕込み量を調整し、目的の水酸基価となるように計算することによって、目的の水酸基価近傍のエステル化物を得ることができる。
【0042】
例えば、成分Aがジペンタエリスリトールで、水酸基価が0mgKOH/gのエステル化物を製造する場合、すなわち、ジペンタエリスリトールの脂肪酸のフルエステル(ジペンタエリスリトールのすべての水酸基に脂肪酸がエステル化したもの)を製造する場合には、成分A1モルに対して、6モルより多い量の成分Bを仕込むことにより製造できる。
【0043】
また、成分Aがエリスリトール、又はソルビタンで、水酸基価が0mgKOH/gのエステル化物を製造する場合、すなわち、エリスリトール、又はソルビタンの脂肪酸のフルエステル(エリスリトール、又はソルビタンのすべての脂肪酸がエステル化したもの)を製造する場合には、成分A1モルに対して、4モルより多い量の成分Bを仕込むことにより製造できる。
【0044】
また、成分Aがジペンタエリスリトールで、水酸基価が0mgKOH/gより大きいエステル化物を製造する場合、すなわち、ジペンタエリスリトールの脂肪酸の部分エステル(ジペンタエリスリトールの一部の水酸基に脂肪酸がエステル化したもの)を製造する場合には、成分A1モルに対して、6モルより少ない量の成分Bを仕込み、反応を完結することにより製造できる。
【0045】
また、成分Aがエリスリトール、又はソルビタンで、水酸基価が0mgKOH/gより大きいエステル化物を製造する場合、すなわち、エリスリトール、又はソルビタンの脂肪酸の部分エステル(エリスリトール、又はソルビタンの一部の水酸基に脂肪酸がエステル化したもの)を製造する場合には、成分A1モルに対して、4モルより少ない量の成分Bを仕込み、反応を完結することにより製造できる。
【0046】
また、成分Aが、ジペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビタンのいずれの場合であっても、目的の水酸基価を有する部分エステルの製造において、必要な成分Bの量よりも多い量を仕込み、反応中の酸価の推移などを見ながら反応を途中で停止するという方法によっても、目的の水酸基価近傍のエステル化物を得ることができる。
なお、成分Aが、ジペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビタンのいずれの場合おいても、得られたエステル化物の水酸基価が目的の水酸基価とずれてしまった場合には、そのずれの程度を考慮した仕込み比にすることにより、最終的に目的の水酸基価のエステル化物を得ることができる。
【0047】
本発明に係る油性保湿剤である成分Aと成分Bと成分Cとのエステル化物の製造において、目的とする水酸基価を有するエステル化物を得るためのエステル化反応は、例えば、成分A1モルに、目的とする水酸基価にするために必要な成分B及び成分Cのモル数、又はそれよりも多いモル数を仕込み、無触媒又は触媒存在下で、180~240℃の温度で反応させることにより行うことができる。反応終了後の精製については、先に説明した方法と同様に行えばよい。
【0048】
ここで、成分Aと成分Bと成分Cの仕込み量を調整し、目的の水酸基価となるように計算することによって、目的の水酸基価近傍のエステル化物を得ることができる。
例えば、成分Aがジペンタエリスリトールで、水酸基価が0mgKOH/gのエステル化物を製造する場合、すなわち、ジペンタエリスリトールの脂肪酸のフルエステル(ジペンタエリスリトールのすべての水酸基に脂肪酸がエステル化したもの)を製造する場合には、成分A1モルに対して、6モルより多い量の成分B及び成分Cを仕込むことにより製造できる。
【0049】
また、成分Aがエリスリトール、又はソルビタンで、水酸基価が0mgKOH/gのエステル化物を製造する場合、すなわち、エリスリトール、又はソルビタンの脂肪酸のフルエステル(エリスリトール、又はソルビタンのすべての脂肪酸がエステル化したもの)を製造する場合には、成分A1モルに対して、4モルより多い量の成分B及び成分Cを仕込むことにより製造できる。
【0050】
また、成分Aがジペンタエリスリトールで、水酸基価が0mgKOH/gより大きいエステル化物を製造する場合、すなわち、ジペンタエリスリトールの脂肪酸の部分エステル(ジペンタエリスリトールの一部の水酸基に脂肪酸がエステル化したもの)を製造する場合には、成分A1モルに対して、6モルより少ない量の成分B及び成分Cを仕込み、反応を完結することにより製造できる。
【0051】
また、成分Aがエリスリトール、又はソルビタンで、水酸基価が0mgKOH/gより大きいエステル化物を製造する場合、すなわち、エリスリトール、又はソルビタンの脂肪酸の部分エステル(エリスリトール、又はソルビタンの一部の水酸基に脂肪酸がエステル化したもの)を製造する場合には、成分A1モルに対して、4モルより少ない量の成分B及び成分Cを仕込み、反応を完結することにより製造できる。
【0052】
また、成分Aが、ジペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビタンのいずれの場合であっても、目的の水酸基価を有する部分エステルの製造において、必要な成分B及び成分Cの量よりも多い量を仕込み、反応中の酸価の推移などを見ながら反応を途中で停止するという方法によっても、目的の水酸基価近傍のエステル化物を得ることができる。
【0053】
なお、成分Aが、ジペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビタンのいずれの場合おいても、得られたエステル化物の水酸基価が目的の水酸基価とずれてしまった場合には、そのずれの程度を考慮した仕込み比にすることにより、最終的に目的の水酸基価のエステル化物を得ることができる。
【0054】
また、成分Bと成分Cの合計量を、目的とする水酸基価にするために必要な成分B及び成分Cのモル数より多い量仕込む場合、成分Cの反応性が、成分Bの反応性よりも低いと、成分Bの反応が先に進行し、得られるエステル化物中の成分Bと成分Cの構成脂肪酸残基の質量比が、仕込みの構成脂肪酸残基の質量比とずれてしまう場合がある。このような場合は、事前にずれを考慮して各成分の仕込み量の質量比を調整したり、反応性が低い成分Cの脂肪酸を先に仕込んで反応させ、その後成分Bを仕込んで反応させるという2段反応を行うことによって、成分Bと成分Cの構成脂肪酸残基の質量比を調整することができる。
【0055】
本発明に係る油性保湿剤であるエステル化物の1つの態様は、成分Aと成分Bとのエステル化物であって、成分Aがジペンタエリスリトール、エリスリトール、又はソルビタンであり、成分Bが炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸であり、水酸基価が0~160mgKOH/gのものである。好ましくは、水酸基価が0~160mgKOH/gである、ジペンタエリスリトール(成分A)と炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸(成分B)とのエステル化物であり、より好ましくは、水酸基価が0~160mgKOH/gである、ジペンタエリスリトール(成分A)とカプリル酸及びカプリン酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸(成分B)とのエステル化物である。
【0056】
本発明に係る油性保湿剤であるエステル化物の1つの態様は、成分Aと成分Bと成分Cとのエステル化物であって、成分Aがジペンタエリスリトール、エリスリトール、又はソルビタンであり、成分Bが炭素数6~10の直鎖飽和脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸であり、成分Cが炭素数6~28の脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸(ただし、成分Bは除く)であり、エステル化物を構成する脂肪酸残基中の成分Bと成分Cの構成脂肪酸残基の質量比が99.9:0.1~45:55であり、かつ水酸基価が0~160mgKOH/gのものである。好ましくは、ジペンタエリスリトール(成分A)と炭素数8~10の直鎖飽和脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸(成分B)と炭素数8~18の脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸(成分C)とのエステル化物であって、水酸基価が0~160mgKOH/g、成分Bと成分Cの構成脂肪酸残基の質量比が99.9:0.1~45:55であるエステル化物であり、より好ましくは、ジペンタエリスリトール(成分A)、カプリル酸及びカプリン酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸(成分B)と炭素数8~18の脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸(成分C)とのエステル化物であって、水酸基価が0~160mgKOH/g、成分Bと成分Cの構成脂肪酸残基の質量比が99.9:0.1~45:55であるエステル化物である。
【0057】
本発明に係る油性保湿剤としては、保湿効果が、当該油性保湿剤を塗布後の皮膚の角層の電気伝導度(μS)を、塗布前の角層の電気伝導度(μS)よりも、少なくとも50μS以上に出来る効果であることが好ましく、少なくとも60μS以上に出来る効果であることがより好ましく、少なくとも70μS以上に出来る効果であることがさらに好ましい。
【0058】
油性保湿剤の保湿効果を調べる際には、角層の電気伝導度(μS)は、室温、湿度が一定の範囲内にある環境下、例えば、18~22℃、40~55%RHに制御された環境下で測定する。より具体的には、例えば、予め角層の電気伝導度(μS)を測定した皮膚表面に、油性保湿剤を均一に塗布する。油性保湿剤を塗布した状態で一定期間、例えば30~90分間保持した後、皮膚表面から当該油性保湿剤を除去する。除去後一定期間、例えば、5~60分間経過後に、当該油性保湿剤を塗布していた角層の電気伝導度(μS)を測定する。得られた油性保湿剤塗布前後の角層の電気伝導度(μS)の値を用いて保湿効果値を算出し、保湿効果を評価する。
なお、油性保湿剤の保湿効果評価は、肌が乾燥しやすい時期に実施することが好ましい。
【0059】
本発明に係る油性保湿剤であるエステル化物を他の成分等と混合することにより、保湿のために動物の身体表面に塗布される皮膚外用組成物とすることができる。室温で固化しているエステル化物であっても、液状油に溶解することで、液状油として使用することができる。
【0060】
当該他の成分は、当該エステル化物による保湿効果を過度に損なわない物であれば特に限定されるものではなく、化粧料や洗浄料、外用医薬品等に含有されることが許容されている各種添加剤の中から適宜選択して用いることができる。当該他の成分としては、例えば、油性成分(本発明に係る油性保湿剤を除く。)、水性成分、ポリマーエマルション、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、親油性非イオン界面活性剤、親水性非イオン界面活性剤、天然系界面活性剤、保湿剤(本発明に係る油性保湿剤を除く。)、増粘剤、防腐剤、粉末成分、顔料、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料、色素、金属イオン封鎖剤、及び精製水等が挙げられる。具体的には、後述する皮膚外用組成物に含有させ得る成分と同様のものが挙げられる。
【0061】
本発明に係る油性保湿剤は、各種皮膚外用組成物の原料とすることができる。各種皮膚外用組成物に当該油性保湿剤を配合させることにより、当該皮膚外用組成物に、皮膚の保湿効果を付与することができる。
【0062】
<皮膚外用組成物>
次に、本発明に係る皮膚外用組成物について説明する。
本発明に係る皮膚外用組成物は、本発明に係る油性保湿剤を含有するものであり、油性保湿剤それ自体も皮膚外用組成物として利用できる。
【0063】
ここで、本発明及び本願明細書において、「皮膚外用組成物」は、化粧料、洗浄料、医薬部外品、及び外用医薬品等の、皮膚、爪、及び毛髪等の身体表面に外用される全ての外用組成物を意味する。本発明に係る皮膚外用組成物としては、皮膚等のヒト等の動物の身体表面組織を保湿することが、使用の目的の少なくとも1つとされている皮膚外用組成物であることが好ましく、皮膚の保湿のために使用される保湿用化粧料、保湿用洗浄料、保湿用医薬部外品、又は保湿用外用医薬品がより好ましい。
【0064】
本発明に係る皮膚外用組成物は、本発明に係る油性保湿剤を含有するため、皮膚に付着させることにより、皮膚の保湿機能を改善させて皮膚を保湿することができる。特に、本発明に係る油性保湿剤は、皮膚に塗布した後、拭きとられた後であっても、皮膚の角層の水分量を高く保持でき、保湿状態を維持することができる。このため、この油性保湿剤を含有する本発明に係る皮膚外用組成物は、皮膚に塗布した状態のみならず、皮膚に塗布後に皮脂、汗、こすれ、及び洗浄等により皮膚表面から当該皮膚外用組成物の一部又は大部分が除かれてしまった場合であっても、一定時間保湿効果を維持することができる。
【0065】
本発明に係る皮膚外用組成物は、動物の身体表面に付着させて使用する。当該皮膚外用組成物を付着させる身体表面は、特に限定されるものではなく、例えば、皮膚、爪、及び毛髪等が挙げられる。当該皮膚外用組成物の身体表面への付着の態様は特に限定されるものではなく、当該皮膚外用組成物を身体表面に塗布してもよく、噴霧してもよい。
【0066】
本発明に係る皮膚外用組成物を使用する対象、すなわち皮膚の保湿が必要な対象は特に限定されるものではないが、動物であることが好ましい。当該動物としては、ヒトであってもよく、ヒト以外の動物であってもよい。本発明に係る油性保湿剤による高い保湿効果を備えるため、本発明に係る皮膚外用組成物は、皮膚や毛髪等の保湿を必要とする動物、例えば、乾燥環境下で生活している動物や、皮膚の乾燥に起因する症状の治療、予防又は改善が必要とされる動物に対して使用されることが好ましい。皮膚の乾燥に起因する症状としては、赤み、湿疹、ひび割れ等の乾燥肌、乾燥性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、及び老人性皮膚そう痒症等が挙げられる。例えば、本発明に係る油性保湿剤を含む化粧料や、本発明に係る油性保湿剤を基材として含む軟膏剤等の外用医薬品を、皮膚表面に塗布することにより、本発明に係る油性保湿剤を含んでいない化粧料や外用医薬品を塗布した場合よりも、皮膚の角層の水分含有量の低下が抑えられ、皮膚の乾燥に起因する症状が改善されることが期待できる。
【0067】
本発明に係る皮膚外用組成物の用途及び剤形等については特に制限はなく、化粧料であってもよく、洗浄料であってもよく、医薬部外品であってもよく、外用医薬品であってもよい。また、本発明に係る皮膚外用組成物は、透明(状態:例えば、可溶化状態や溶解状態)、半透明(状態:例えば、微粒子状態での分散)、白濁(状態:例えば、分散状態や乳化状態)、及び二層分離(状態:二層に分離している状態)等、いずれの外観であっても良い。例えば、本発明に係る皮膚外用組成物は、従来油性成分が使用されていた多種多様な皮膚外用組成物とすることができる。化粧料としては、具体的には、乳液、美容液、クリーム、ローション、化粧オイル、エモリエントクリーム、及びハンドクリーム等のスキンケア化粧料;リンス、ヘアコンディショナー、ヘアワックス、及びヘアクリームなどの毛髪化粧料、口紅、リップグロス等の口唇化粧料、アイメークアップ化粧料、紛体ファンデーション、乳化ファンデーション、チーク、化粧下地、眉目化粧料、爪化粧料、及び溶剤系美爪料等のメイク化粧料;及びサンオイル、乳化サンスクリーン等の日焼け止め化粧料等が挙げられる。洗浄料としては、具体的には、クレンジングオイル、クレンジングクリーム、洗顔料、身体用洗浄料、及びシャンプー等の毛髪用洗浄料等が挙げられる。外用医薬品としては、具体的には、クリーム剤、軟膏剤、及びローション剤等の塗布剤や、パップ剤、プラスター剤等の貼付剤等が挙げられる。これらの皮膚外用組成物の製造方法に特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。
【0068】
本発明に係る皮膚外用組成物は、原料として本発明に係る油性保湿剤を用いることにより製造できる。本発明に係る油性保湿剤は、多くの油性原料と同様に簡単に配合することができる。本発明に係る油性保湿剤は油性であるため、皮膚外用組成物の原料として使用する場合には、その他の原料のうちの油性成分と混合して製造することにより、本発明に係る皮膚外用組成物を効率よく製造することができる。本発明に係る油性保湿剤は、その他の原料のうちの油性成分とは混合せずに、乳化により水性媒体中に分散させたり、水性媒体に可溶化させたりすることによって皮膚外用組成物を製造することも可能である。
【0069】
本発明に係る皮膚外用組成物における本発明に係る油性保湿剤の含有量は、当該油性保湿剤による皮膚の保湿効果を発揮し得る量であればよく、特に限定されるものではない。
本発明に係る油性保湿剤の含有量は、その他の成分や皮膚外用組成物の種類やその使用態様(皮膚に塗布したまま、意図的には皮膚表面から除去しない態様か、塗布後一定期間内に皮膚表面から除去する態様か。)等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、本発明に係る皮膚外用組成物における本発明に係る油性保湿剤の含有量は、皮膚外用組成物の総質量に対し0.001~99.9質量%の範囲内で適宜決定することができる。
【0070】
本発明に係る皮膚外用組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に皮膚外用組成物に用いられる各種成分を配合することができる。かかる成分としては、皮膚外用組成物の用途及び剤形によって異なるが、例えば、油性成分(本発明に係る油性保湿剤を除く。)、水性成分、ポリマーエマルション、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、親油性非イオン界面活性剤、親水性非イオン界面活性剤、天然系界面活性剤、保湿剤(本発明に係る油性保湿剤を除く。)、増粘剤、防腐剤、粉末成分、顔料、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料、色素、金属イオン封鎖剤、及び精製水等が挙げられる。
【0071】
前記油性成分としては、例えば、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、固形パラフィン、α-オレフィンオリゴマー、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、モンタンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、及びフィッシャートロプシュワックス等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、及びマカデミアナッツ油等の油脂類;ミツロウ、キャンデリラワックス、ゲイロウ、カルナウバロウ、及びモクロウ等のロウ類;2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ポリグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、トリオクタノイン、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジデカン酸プロピレングリコール、コレステロール脂肪酸エステル、トリステアリン酸グリセリル、グリセリン脂肪酸エステルエイコサン二酸縮合物、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、及びデキストリン脂肪酸エステル等のエステル類;ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、及びオレイン酸等の脂肪酸類;ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、及びイソヘキサデシルアルコール等の高級アルコール類;低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、及びアルコキシ変性ポリシロキサン等のシリコーン類;パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、及びパーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類;ステアロイルグルタミン酸等のN-アシルグルタミン酸及びN-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル又はフィトステリル・べへニル・オクチルドデシル)等のアミノ酸系エステル油剤;ラノリン、液状ラノリン、酢酸ラノリン、酢酸液状ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、及びラノリンアルコール等のラノリン誘導体等が挙げられる。これらの油性成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
前記水性成分としては、例えば、エチルアルコール及びブチルアルコール等の低級アルコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、及びポリエチレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、及びポリグリセリン等のグリセロール類;アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、トマト、リンゴ、レモン、ラベンダー、及びローズ等の植物抽出液等が挙げられる。これらの水性成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
前記ポリマーエマルションとしては、例えば、アクリル酸アルキル重合体エマルション、メタクリル酸アルキル重合体エマルション、アクリル酸アルキル共重合体エマルション、メタクリル酸アルキル共重合体エマルション、アクリル酸・アクリル酸アルキル共重合体エマルション、メタクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体エマルション、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション、メタクリル酸アルキル・スチレン共重合体エマルション、酢酸ビニル重合体エマルション、ポリ酢酸ビニルエマルション、酢酸ビニル含有共重合体エマルション、ビニルピロリドン・スチレン共重合体エマルション、及びシリコーン含有共重合体エマルション等が挙げられる。これらのポリマーエマルションは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
前記アニオン界面活性剤としては、例えば、セッケン用素地、ラウリン酸ナトリウム、及びパルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸セッケン、ラウリル硫酸ナトリウム及びラウリル硫酸カリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレン(POE)-ラウリル硫酸トリエタノールアミン及びPOE-ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN-アシルサルコシン酸;N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム、及びラウリルメチルタウリッドナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;POE-オレイルエーテルリン酸ナトリウム及びPOE-ステアリルエーテルリン酸等のリン酸エステル塩;ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、及びラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、及びリニアドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、及びN-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム等のN-アシルグルタミン酸塩;硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等の高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩;ロート油等の硫酸化油;POE-アルキルエーテルカルボン酸、POE-アルキルアリルエーテルカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、二級アルコール硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、N-パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン、及びカゼインナトリウム等が挙げられる。これらのアニオン界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
前記カチオン界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム及び塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等のジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ポリ(N,N’-ジメチル-3,5-メチレンピペリジニウム)、及び塩化セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム塩;アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモルホリニウム塩、POE-アルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。これらのカチオン界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
前記両性界面活性剤としては、例えば、2-ウンデシル-N,N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム及び2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、及びスルホベタイン等のベタイン系界面活性剤等が挙げられる。これらの両性界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
前記親油性非イオン界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル類;モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α’-オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、及びモノステアリン酸グリセリン等のグリセリン脂肪酸類;モノイソステアリン酸ジグリセリル及びジイソステアリン酸ジグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル;モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類;ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、及びテトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類;硬化ヒマシ油誘導体、及びグリセリンアルキルエーテル等が挙げられる。これらの親油性非イオン界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
前記親水性非イオン界面活性剤としては、例えば、POE-ソルビタンモノオレエート、POE-ソルビタンモノステアレート、及びPOE-ソルビタンテトラオレエート等のPOE-ソルビタン脂肪酸エステル類;POE-ソルビットモノラウレート、POE-ソルビットモノオレエート、POE-ソルビットペンタオレエート、及びPOE-ソルビットモノステアレート等のPOE-ソルビット脂肪酸エステル類;POE-グリセリンモノステアレート、POE-グリセリンモノイソステアレート、及びPOE-グリセリントリイソステアレート等のPOE-グリセリン脂肪酸エステル類;POE-モノオレエート、POE-ジステアレート、POE-ジオレエート、及びPOE-ステアレート等のPOE-脂肪酸エステル類;POE-ラウリルエーテル、POE-オレイルエーテル、POE-ステアリルエーテル、POE-ベヘニルエーテル、POE-2-オクチルドデシルエーテル、及びPOE-コレスタノールエーテル等のPOE-アルキルエーテル類;プルロニック等のプルロニック型類;POE・POP-セチルエーテル、POE・POP-2-デシルテトラデシルエーテル、POE・POP-モノブチルエーテル、POE・POP-水添ラノリン、及びPOE・POP-グリセリンエーテル等のPOE・POP-アルキルエーテル類;テトロニック等のテトラPOE・テトラPOP-エチレンジアミン重合物類;POE-ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE-硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE-硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、及びPOE-硬化ヒマシ油マレイン酸等のPOE-ヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体;POE-ソルビットミツロウ等のPOE-ミツロウ・ラノリン誘導体;ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、及び脂肪酸イソプロパノールアミド等のアルカノールアミド;POE-プロピレングリコール脂肪酸エステル、POE-アルキルアミン、POE-脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル、POE-ノニルフェニルホルムアルデヒド重合物、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、及びトリオレイルリン酸等が挙げられる。これらの親水性非イオン界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、POPは、ポリオキシプロピレンである。
【0079】
前記天然系界面活性剤としては、例えば、大豆リン脂質、水添大豆リン脂質、卵黄リン脂質、及び水添卵黄リン脂質等のレシチン類;及び大豆サポニン等が挙げられる。これらの天然系界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
前記保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、尿素、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリンエチレンオキシド(EO)付加物、ジグリセリンプロピレンオキシド(PO)付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、及びメリロート抽出物等が挙げられる。これらの保湿剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
前記増粘剤としては、例えば、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルメチルエーテル(PVM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト、第四級アンモニウム塩型カチオン変性ベントナイト、第四級アンモニウム塩型カチオン変性ヘクトライト及びデカグリセリン脂肪酸エステルエイコサンニ酸縮合物等が挙げられる。これらの増粘剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
前記防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、及びブチルパラベン等が挙げられる。これらの防腐剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
前記粉末成分としては、例えば、タルク、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム)、及び窒化ホウ素等の無機粉末;ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、及びセルロース粉末等の有機粉末等が挙げられる。これらの粉末成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
前記顔料としては、例えば、二酸化チタン及び酸化亜鉛等の無機白色顔料(紫外線散乱剤として用いられる、微粒子タイプの二酸化チタン、酸化亜鉛、又はこれらの表面をアルミニウムステアレート及びジンクパルミテート等の脂肪酸石けん、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、及びパルミチン酸デキストリン等の脂肪酸エステル等により被覆した表面被覆無機白色顔料も含む);酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等の無機赤色系顔料;γ-酸化鉄等の無機褐色系顔料;黄酸化鉄及び黄土等の無機黄色系顔料;黒酸化鉄、カーボンブラック、及び低次酸化チタン等の無機黒色系顔料;マンゴバイオレット及びコバルトバイオレット等の無機紫色系顔料;酸化クロム、水酸化クロム、及びチタン酸コバルト等の無機緑色系顔料;群青及び紺青等の無機青色系顔料;酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、及び魚鱗箔等のパール顔料;アルミニウムパウダー及びカッパーパウダー等の金属粉末顔料;赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号などのジルコニウム、及びバリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料等が挙げられる。これらの顔料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
前記pH調整剤としては、例えば、エデト酸、エデト酸二ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びトリエタノールアミン等が挙げられる。これらのpH調整剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
前記酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、トコフェロール類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、及び没食子酸エステル類等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、及びN,N-ジメチルPABAオクチルエステル等の安息香酸系紫外線吸収剤;ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等のアントラニル酸系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、及びp-イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、及びグリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等の桂皮酸系紫外線吸収剤;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2‘-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、及び4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン、5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン、及び2,4,6-トリアニリノ-p-(カルボ-2’-エチルヘキシル-1’-オキシ)1,3,5-トリアジン、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
前記色素としては、例えば、クロロフィル、及びβ-カロチン等が挙げられる。これらの色素は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
前記香料としては、例えば、バラ油、ジャスミン油、及びラベンダー油等の植物性香料、リモネン、シトラール、リナロール、及びオイゲノール等の合成香料等が挙げられる。これらの香料は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
前記金属イオン封鎖剤としては、例えば、エデト酸二ナトリウム、エデト酸塩、及びヒドロキシエタンジホスホン酸等が挙げられる。これらの金属イオン封鎖剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
本発明の1つの側面は、本発明に係る油性保湿剤を含む皮膚外用組成物を皮膚の保湿が必要な対象の皮膚表面にその有効量を塗布することを含む皮膚の保湿方法である。前記有効量は、皮膚外用組成物が適用される対象及び前記対象が存在する環境に応じて適宜調整することができるが、例えば適用部位一箇所の1cm2あたりにつき一回当たり0.1mg以上20mg以下であり、好ましくは0.2mg以上10mg以下である。また、一日当たり1回以上10回以下、好ましくは1回以上5回以下適用することができる。また、対象の状態によって適用期間を調整することができる。永続的に使用し続けることも可能であるが、1日~数か月、例えば1日~6ヶ月の適用が例示される。また、単回の使用であってもよく、複数回の適用である場合には、連日の適用であってもよく、使用期間に不適用日を含んでいてもよい。
【0092】
皮膚外用組成物の保湿効果評価は、皮膚外用組成物をその使用態様に合わせて皮膚に塗布し、角層水分量の変化を評価することで行うことができる。角層水分量は、市販機器を用い、角層の電気伝導度を測定することで評価する。皮膚外用組成物の保湿効果は、試験前後での角層水分量の変化を算出して評価する。
【0093】
皮膚外用組成物の使用方法、塗布時間、試験時間、及び試験期間などの試験条件は、皮膚外用組成物の使用態様に応じて決定すれば良い。また、皮膚外用組成物、汚れ、及びほこり等が残存すると、電気伝導度に影響を及ぼし、角層水分量を正確に評価できない可能性があるため、角層の電気伝導度の測定前に、これらは洗浄又は除去しておく。なお、皮膚外用組成物の保湿効果評価は、肌が乾燥しやすい時期に実施することが好ましい。
【0094】
さらに詳細に説明すると、皮膚外用組成物の単回塗布時の保湿効果評価は、例えば、次のようにして行うことができる。
まず、皮膚外用組成物を塗布前の皮膚の角層の電気伝導度(角層水分量)を測定する。次に、皮膚外用組成物を、その使用態様に合わせて皮膚に一定の時間塗布した後、皮膚表面から当該皮膚外用組成物を、洗浄や拭き取り等により除去する。除去後一定時間経過後に、当該皮膚外用組成物を塗布していた角層の電気伝導度(角層水分量)を測定する。得られた皮膚外用組成物塗布前後の角層の電気伝導度(角層水分量)の値を用いて保湿効果値を算出し、保湿効果を評価する。なお、皮膚外用組成物の保湿効果評価は、肌が乾燥しやすい時期に実施することが好ましい。
【0095】
また、皮膚外用組成物の連用塗布時の保湿効果評価は、例えば、次のようにして行うことができる。
まず、皮膚外用組成物の連用試験開始前に、皮膚の角層の電気伝導度(連用試験開始前の角層水分量)を測定する。次に、皮膚外用組成物を、その使用態様に合わせて皮膚に1日に1回以上塗布し、数日間日常生活を行う。連用試験期間終了の翌日に皮膚外用組成物を塗布していた部分を洗浄し、残存している皮膚外用組成物、汚れ及びほこり等を除去した後、角層の電気伝導度(連用試験終了時の角層水分量)を測定する。得られた連用試験前後の角層の電気伝導度(角層水分量)の値を用いて保湿効果値を算出し、保湿効果を評価する。なお、皮膚外用組成物の保湿効果評価は、肌が乾燥しやすい時期に実施することが好ましい。
【0096】
本発明に係る油性保湿剤を含有する皮膚外用組成物の応用例として、以下に、軟膏ベース、化粧オイル、水中油型乳化化粧料、サンスクリーン、油中水型乳化化粧料、粉体化粧料、毛髪化粧料、乳化型アイメークアップ化粧料、水系化粧料、溶剤系美爪料、洗浄剤組成物、パック化粧料、油性固形リップ化粧料の具体的な一態様を示す。
【0097】
〔軟膏ベース〕
軟膏ベースには、本発明に係る油性保湿剤に加えて、適宜、その他の油性成分、油性増粘剤、酸化防止剤、防腐剤を含ませることができる。軟膏ベース中の本発明に係る油性保湿剤の含有量は、0.1~99質量%であることが好ましく、油性増粘剤の含有量は、0.1~20質量%であることが好ましい。
【0098】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例1で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価0mgKOH/g)を使用した軟膏ベースの処方例を表1に示す。なお、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルとして、日清オイリオグループ社製の商品「O.D.O」を、パルミチン酸デキストリンとして、千葉製粉社製の商品「レオパールKL」を使用することができる。
【0099】
この処方例1の軟膏ベースは、成分1~7を均一に溶解するまで加熱混合し、広口ジャー容器に流し込み、放冷して冷却することで製造することができる。
【0100】
【0101】
〔化粧オイル〕
化粧オイルには、本発明に係る油性保湿剤に加えて、適宜、その他の油性成分、酸化防止剤、防腐剤を含ませることができる。化粧オイル中の本発明に係る油性保湿剤の含有量は、0.1~100質量%であることが好ましい。
【0102】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例1で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価0mgKOH/g)を使用した化粧オイルの処方例を表2に示す。
【0103】
この処方例2の化粧オイルは、成分1~9を溶解し、均一に混合することで製造することができる。
【0104】
【0105】
〔水中油型乳化化粧料〕
水中油型乳化化粧料には、本発明に係る油性保湿剤に加えて、界面活性剤、グリセリンなどの水性保湿剤、水溶性高分子、水を含ませることができる。水中油型乳化化粧料中の本発明に係る油性保湿剤の含有量は、0.1~60質量%であることが好ましく、界面活性剤の含有量は、0.01~10質量%であることが好ましく、水性保湿剤の含有量は、1~40質量%であることが好ましく、水溶性高分子の含有量は、0.001~5質量%であることが好ましく、水の含有量は、20~95質量%であることが好ましい。
【0106】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例1で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価0mgKOH/g)を使用した水中油型乳化保湿クリームの処方例を表3に示す。なお、ジペンタエリトリット脂肪酸エステルとして、日清オイリオグループ社製の商品「コスモール168ARV」を使用することができる。
【0107】
この処方例3の水中油型乳化保湿クリームは、次のA~C工程により製造することができる。A:成分1~9を加温溶解し、均一に混合する。B:成分10~15を加温し、均一に混合する。C:80℃にてA工程で得られた混合物にB工程で得られた混合物を加えて乳化し、冷却後、成分16を加える。
【0108】
【0109】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例1で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価0mgKOH/g)を使用した水中油型乳化ハンドクリームの処方例を表4に示す。
【0110】
この処方例4の水中油型乳化ハンドクリームは、次のA~C工程により製造することができる。A:成分1~8を加温溶解し、均一に混合する。B:成分9~13を加温し、均一に混合する。C:80℃にてA工程で得られた混合物にB工程で得られた混合物を加えて乳化し、冷却する。
【0111】
【0112】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例1で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル((水酸基価0mgKOH/g)を使用した水中油型乳化クレンジングクリームの処方例を表5に示す。
【0113】
この処方例5の水中油型乳化クレンジングクリームは、次のA~C工程により製造することができる。A:成分1~8を加温溶解し、均一に混合する。B:成分9~15を加温し、均一に混合する。C:80℃で、A工程で得られた混合物にB工程で得られた混合物を加えて乳化し、冷却後、水中油型乳化クレンジングクリームを得る。
【0114】
【0115】
〔サンスクリーン〕
サンスクリーンには、本発明に係る油性保湿剤に加えて、紫外線遮蔽効果を有する金属酸化物粉体を含むことが好ましく、さらに有機紫外線吸収剤を加えてもよい。紫外線遮蔽効果を有する金属酸化物粉体の平均粒径が10~100nmであると、肌に塗付した時に白浮きが抑えられるためより好ましい。サンスクリーン中の本発明に係る油性保湿剤の含有量は、0.1~60質量%であることが好ましい。
【0116】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例1で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価0mgKOH/g)と、後述する実施例11で製造したエステル化物、すなわち、ソルビタンのカプリル酸エステル(水酸基価2mgKOH/g)を使用した多層状油中水型乳化サンスクリーンの処方例を表6に示す。なお、ステアリン酸処理微粒子酸化チタンとして、石原産業社製の商品「TIPAQUE TTO-S2」、シリコーン処理酸化亜鉛として、堺化学工業社製の商品「FINEX 25」をメチルハイドロジェンポリシロキサン5%で処理したものを、セチルジメチコンコポリオールとして、エボニック社製の商品「ABIL EM-90」を使用することができる。
【0117】
この処方例6の多層状油中水型乳化サンスクリーンは、次のA~D工程により製造することができる。A:成分1~13を均一に混合する。B:成分14~17を均一に混合する。C:A工程で得られた混合物にB工程で得られた混合物を添加して、乳化する。D:C工程で得られた乳化物をステンレスボール入りの樹脂ボトルに充填する。
【0118】
【0119】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例1で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価0mgKOH/g)を使用したクリーム状水中油型日焼け止め料の処方例を表7に示す。なお、ステアリン酸処理微粒子酸化チタンとして、石原産業社製の商品「TIPAQUE TTO-S2」を使用することができる。
【0120】
この処方例7のクリーム状水中油型日焼け止め料は、次のA~E工程により製造することができる。A:成分1~10を70℃に加熱し、均一に混合する。B:成分12~16を70℃に加熱し、均一に混合する。C:A工程で得られた混合物にB工程で得られた混合物を添加して、乳化する。D:C工程で得られた乳化物を室温まで冷却後、成分11を添加し、混合する。E:D工程で得られた混合物を容器に充填する。
【0121】
【0122】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例11で製造したエステル化物、すなわち、ソルビタンのカプリル酸エステル(水酸基価2mgKOH/g)を使用した油中水型サンケアクリームの処方例を表8に示す。なお、ポリエーテル変性シリコーンとして、信越化学工業社製の商品「KF-6017」を、トリメチルシロキシケイ酸溶液として、信越化学工業社製の商品「KF-9021」を、使用することができる。
【0123】
この処方例8の油中水型サンケアクリームは、次のA~C工程により製造することができる。A:成分1~8を室温にて均一に混合する。B:成分9~12を室温にて均一に混合する。C:A工程で得られた混合物にB工程で得られた混合物を添加して乳化混合する。
【0124】
【0125】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例11で製造したエステル化物、すなわち、ソルビタンのカプリル酸エステル(水酸基価2mgKOH/g)を使用したスティック状油性型コンシーラーの処方例を表9に示す。なお、ステアリン酸処理酸化チタンとして、石原産業社製の商品「TIPAQUE CR-50」をステアリン酸にて3質量%処理した粉体を、ジペンタエリトリット脂肪酸エステルとして、日清オイリオグループ社製の商品「コスモール168ARV」を、使用することができる。
【0126】
この処方例9のスティック状油性型コンシーラーは、次のA~D工程により製造することができる。A:成分6~14を70℃に加熱し、均一に混合する。B:A工程で得られた混合物に成分1~5及び成分15を添加し、均一に混合する。C:B工程で得られた混合物を再び加熱溶解し、脱泡する。D:C工程で得られた処理物をスティック容器に充填し、室温まで冷却する。
【0127】
【0128】
〔油中水型乳化化粧料〕
油中水型乳化化粧料は、本発明に係る油性保湿剤に加えて、界面活性剤、水性成分を加えて調製できる。油中水型乳化化粧料中の本発明に係る油性保湿剤の含有量は、0.1~60質量%であることが好ましく、界面活性剤の含有量は、0.1~10質量%であることが好ましく、水性成分の含有量は、5~70質量%であることが好ましい。
【0129】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例1で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価0mgKOH/g)を使用した油中水型ファンデーションの処方例を表10に示す。なお、ポリエーテル変性シリコーンとして、信越化学工業社製の商品「KF-6017」を、有機変性粘土鉱物として、ELEMENTIS社製の商品「ベントン38」を、使用することができる。
【0130】
この処方例10の油中水型ファンデーションは、次のA~C工程により製造することができる。A:成分10~17を加熱混合し、40℃に冷却後、成分1~9及び成分18を加えホモミキサーにて分散する。B:成分19~24を均一に混合溶解する。C:A工程で得られた分散物にB工程で得られた混合物を添加、乳化する。
【0131】
【0132】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例1で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価0mgKOH/g)を使用した油中水型ハンドクリームの処方例を表11に示す。なお、アルキル含有ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンとして、エボニック社製の商品「ABIL EM-90」を、使用することができる。
【0133】
この処方例11の油中水型ハンドクリームは、次のA~C工程により製造することができる。A:成分1~6を混合し、そこに成分7をディスパーミキサーにて分散する。B:成分8~11を均一に混合する。C:A工程で得られた分散物にB工程で得られた混合物を加え乳化する。
【0134】
【0135】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例2で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価67mgKOH/g)を使用した油中水型アイシャドウの処方例を表12に示す。なお、ポリエーテル変性シリコーンとして、信越化学工業社製の商品「KF-6017」を、トリメチルシロキシケイ酸溶液として、信越化学工業社製の商品「KF-7312F」を、使用することができる。
【0136】
この処方例12の油中水型アイシャドウは、次のA~C工程により製造することができる。A:成分1~7を混合し、そこに成分8をディスパーミキサーにて分散する。B:成分9~13を均一に混合する。C:A工程で得られた分散物にB工程で得られた混合物を加え乳化する。
【0137】
【0138】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例2で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価67mgKOH/g)を使用した油中水型マスカラの処方例を表13に示す。なお、有機変性粘土鉱物として、ELEMENTIS社製の商品「ベントン38」を、有機シリコーン樹脂として、信越化学工業社製の商品「KF-7312J」を、使用することができる。
【0139】
この処方例13の油中水型マスカラは、次のA~C工程により製造することができる。A:成分6~12を均一に混合する。B:成分1~5を均一に混合する。C:A工程で得られた混合物にB工程で得られた混合物を加え乳化する。
【0140】
【0141】
〔粉体化粧料〕
粉体化粧料は、本発明に係る油性保湿剤に加えて、体質顔料、着色顔料などの紛体を含む。好ましくは、粉体化粧料中の本発明に係る油性保湿剤の含有量は、0.1~30質量%であることが好ましく、紛体の含有量は70~95質量%であることが好ましい。
【0142】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例2で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価67mgKOH/g)を使用した固形粉末状ファンデーションの処方例を表14に示す。
【0143】
この処方例14の固形粉末状ファンデーションは、次のA~D工程により製造することができる。A:成分8~12を50℃に加熱し、混合する。B:成分1~7を混合分散する。C:B工程で得られた混合分散物にA工程で得られた混合物を添加し、混合する。D:C工程で得られた混合物を粉砕し、皿に圧縮成型する。
【0144】
【0145】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例11で製造したエステル化物、すなわち、ソルビタンのカプリル酸エステル(水酸基価2mgKOH/g)を使用した固形粉末状白粉の処方例を表15に示す。なお、ジペンタエリトリット脂肪酸エステルとして、日清オイリオグループ社製の商品「コスモール 168ARV」を使用することができる。
【0146】
この処方例15の固形粉末状白粉は、次のA~C工程により製造することができる。A:成分1~4を混合分散する。B:A工程で得られた混合分散物に成分5~9を添加し、均一混合する。C:B工程で得られた混合物を粉砕し、皿に圧縮成型する。
【0147】
【0148】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例11で製造したエステル化物、すなわち、ソルビタンのカプリル酸エステル(水酸基価0mgKOH/g)を使用した固形粉末状ケーキファンデーション(水使用)の処方例を表16に示す。なお、シリコーン処理タルクとして、タルクをメチルハイドロジェンポリシロキサン5質量%処理したものを、フッ素処理セリサイトとして、セリサイトをパーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩5質量%処理したものを、使用することができる。
【0149】
この処方例16の固形粉末状ケーキファンデーション(水使用)は、次のA~D工程により製造することができる。A:成分1~8を混合分散する。B:成分9~13を50℃に加熱し、混合する。C:A工程で得られた混合分散物にB工程で得られた混合物及び成分14を添加し、均一混合する。D:C工程で得られた混合物を粉砕し、皿に圧縮成型する。
【0150】
【0151】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例11で製造したエステル化物、すなわち、ソルビタンのカプリル酸エステル(水酸基価2mgKOH/g)を使用した粉末状頬紅の処方例を表17に示す。
【0152】
この処方例17の粉末状頬紅は、次のA~C工程により製造することができる。A:成分1~6を均一に混合分散する。B:A工程で得られた混合分散物に成分7を添加し、均一混合する。C:B工程で得られた混合物を粉砕し、容器に充填する。
【0153】
【0154】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例11で製造したエステル化物、すなわち、ソルビタンのカプリル酸エステル(水酸基価2mgKOH/g)を使用した粉末状アイカラーの処方例を表18に示す。
【0155】
この処方例18の粉末状アイカラーは、次のA~C工程により製造することができる。A:成分1~6を均一に混合分散する。B:A工程で得られた混合分散物に成分7を添加し、均一混合する。C:B工程で得られた混合物を粉砕し、容器に充填する。
【0156】
【0157】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例11で製造したエステル化物、すなわち、ソルビタンのカプリル酸エステル(水酸基価2mgKOH/g)を使用した粉末状ボディーパウダーの処方例を表19に示す。
【0158】
この処方例19の粉末状ボディーパウダーは、次のA~C工程により製造することができる。A:成分1~4を均一に混合分散する。B:A工程で得られた混合分散物に成分5を添加し、均一混合する。C:B工程で得られた混合物を粉砕し、容器に充填する。
【0159】
【0160】
〔毛髪化粧料〕
毛髪化粧料は、本発明に係る油性保湿剤に加えて、カチオン性界面活性剤を含む。当該毛髪化粧料は、さらに高級アルコール、水、保湿剤などを加えて調製することができる。
【0161】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例11で製造したエステル化物、すなわち、ソルビタンのカプリル酸エステル(水酸基価2mgKOH/g)を使用したヘアクリームの処方例を表20に示す。なお、ジメチルポリシロキサンとして、信越化学工業製の商品「KF96A(6cs)」を、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムとして、クラリアント・ジャパン社製の商品「GENAMIN STAC」を、ポリオキシエチレンオレイルエーテルとして、日本エマルジョン社製の商品「EMALEX 503」を、使用することができる。
【0162】
この処方例20のヘアクリームは、次のA~C工程により製造することができる。A:成分1~6を均一に混合溶解する。B:成分7~11及び成分13を均一に混合溶解する。C:80℃でA工程で得られた混合物にB工程で得られた混合物を添加して乳化後、成分12を添加後冷却する。
【0163】
【0164】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例2で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価67mgKOH/g)を使用したヘアコンディショナーの処方例を表21に示す。
【0165】
この処方例21のヘアコンディショナーは、次のA~C工程により製造することができる。A:成分1~6を均一に溶解混合する。B:成分7~11を均一に溶解混合する。C:80℃でB工程で得られた混合物にA工程で得られた混合物を加えながら乳化後、成分12を添加して混合する。
【0166】
【0167】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例2で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価67mgKOH/g)を使用したヘアリンス(洗い流し用)の処方例を表22に示す。なお、高重合メチルポリシロキサンエマルションとして、東レ・ダウコーニング社製の商品「BY22-073」を、使用することができる。
【0168】
この処方例22のヘアリンス(洗い流し用)は、次のA~C工程により製造することができる。A:成分1~4を均一に溶解混合する。B:成分5~9を均一に溶解混合する。C:80℃でB工程で得られた混合物にA工程で得られた混合物を加えながら乳化後、成分10を添加して混合する。
【0169】
【0170】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例16で製造したエステル化物、すなわち、エリスリトールの(カプリル酸/カプリン酸)エステル(構成脂肪酸残基のカプリル酸及びカプリン酸構成比は80:20、水酸基価9mgKOH/g)を使用したキューティクル保護ジェルの処方例を表23に示す。
【0171】
この処方例23のキューティクル保護ジェルは、次のA~D工程により製造することができる。A:成分1~5を均一に混合する。B:成分6~11を均一に混合する。C:B工程で得られた混合物に、A工程で得られた混合物を添加しながら混合し、分散する。D:C工程で得られた混合物に、成分12を加えて均一に混合する。
【0172】
【0173】
〔乳化型アイメークアップ化粧料〕
乳化型アイメークアップ化粧料は、本発明に係る油性保湿剤に加えて、被膜形成性ポリマーエマルションを含む。当該乳化型アイメークアップ化粧料は、本発明に係る油性保湿剤と被膜形成性ポリマーエマルションに加えて、さらに、界面活性剤、顔料、高級アルコール、水、保湿剤などを加えて調製することができる。乳化型アイメークアップ化粧料中の本発明に係る油性保湿剤の含有量は、乳化型アイメークアップ化粧料全量中の0.1~80質量%であることが好ましい。また、当該乳化型アイメークアップ化粧料としては、被膜形成性ポリマーエマルション中の固形分が、乳化型アイメークアップ化粧料全量中の0.1~30質量%であることが好ましい。
【0174】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例11で製造したエステル化物、すなわち、ソルビタンのカプリル酸エステル(水酸基価2mgKOH/g)と、後述する実施例16で製造したエステル化物、すなわち、エリスリトールの(カプリル酸/カプリン酸)エステル(構成脂肪酸残基のカプリル酸及びカプリン酸構成比は80:20、水酸基価9mgKOH/g)を使用した水中油型乳化型マスカラの処方例を表24に示す。
【0175】
この処方例24の水中油型乳化型マスカラは、次のA~D工程により製造することができる。A:成分1~9を加熱溶解し、成分10~12を加えて均一に混合する。B:成分13~21を均一に混合する。C:A工程で得られた混合物にB工程で得られた混合物を加え、乳化する。D:C工程で得られた混合物を容器に充填する。
【0176】
【0177】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例16で製造したエステル化物、すなわち、エリスリトールの(カプリル酸/カプリン酸)エステル(構成脂肪酸残基のカプリル酸及びカプリン酸構成比は80:20、水酸基価9mgKOH/g)を使用した油中水型乳化型マスカラの処方例を表25に示す。
【0178】
この処方例25の油中水型乳化型マスカラは、次のA~D工程により製造することができる。A:成分1~5を加熱溶解し均一に混合する。B:成分6~11を均一に混合する。C:A工程で得られた混合物にB工程で得られた混合物を加え、乳化する。D:C工程で得られた混合物を容器に充填する。
【0179】
【0180】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例6で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールの(カプリル酸/カプリン酸)エステル(構成脂肪酸残基のカプリル酸及びカプリン酸構成比は80:20、水酸基価150mgKOH/g)を使用した水中油型乳化型アイライナーの処方例を表26に示す。
【0181】
この処方例26の水中油型乳化型アイライナーは、次のA~D工程により製造することができる。A:成分1~4を加熱溶解し、成分5、6を加えて均一に混合する。B:成分7~13を均一に混合する。C:A工程で得られた混合物にB工程で得られた混合物を加え、乳化する。D:C工程で得られた混合物を容器に充填する。
【0182】
【0183】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例11で製造したエステル化物、すなわち、ソルビタンのカプリル酸エステル(水酸基価2mgKOH/g)を使用した水中油型乳化型アイシャドウの処方例を表27に示す。
【0184】
この処方例27の水中油型乳化型アイシャドウは、次のA~D工程により製造することができる。A:成分1~6を加熱溶解し、成分7、8を加えて均一に混合する。B:成分9~16を均一に混合する。C:A工程で得られた混合物にB工程で得られた混合物を加え、乳化する。D:C工程で得られた混合物を容器に充填する。
【0185】
【0186】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例11で製造したエステル化物、すなわち、ソルビタンのカプリル酸エステル(水酸基価2mgKOH/g)を使用した水中油型乳化型アイブローの処方例を表28に示す。
【0187】
この処方例28の水中油型乳化型アイブローは、次のA~D工程により製造することができる。A:成分1~6を加熱溶解し、成分7を加えて均一に混合する。B:成分8~13を均一に混合する。C:A工程で得られた混合物にB工程で得られた混合物を加え、乳化する。D:C工程で得られた混合物を容器に充填する。
【0188】
【0189】
〔水系化粧料〕
水系化粧料は、本発明に係る油性保湿剤に加えて、エタノール、非イオン性界面活性剤、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、水を含む。水系化粧料中の本発明に係る油性保湿剤の含有量は、水系化粧料全量中の0.01~40質量%であることが好ましい。
【0190】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例6で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールの(カプリル酸/カプリン酸)エステル(構成脂肪酸残基のカプリル酸及びカプリン酸構成比は80:20、水酸基価150mgKOH/g)を使用した化粧水の処方例を表29に示す。
【0191】
この処方例29の化粧水は、次のA~C工程により製造することができる。A:成分1~3を均一に混合溶解する。B:成分4~8を均一に混合溶解する。C:B工程で得られた混合物にA工程で得られた混合物を撹拌しながら加え、容器に充填する。
【0192】
【0193】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例6で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールの(カプリル酸/カプリン酸)エステル(構成脂肪酸残基のカプリル酸及びカプリン酸構成比は80:20、水酸基価150mgKOH/g)を使用した美容液の処方例を表30に示す。
【0194】
この処方例30の美容液は、次のA~C工程により製造することができる。A:成分1~5を均一に混合溶解する。B:成分6~11を均一に混合溶解する。C:B工程で得られた混合物にA工程で得られた混合物を撹拌しながら加え、容器に充填する。
【0195】
【0196】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例6で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールの(カプリル酸/カプリン酸)エステル(構成脂肪酸残基のカプリル酸及びカプリン酸構成比は80:20、水酸基価150mgKOH/g)を使用したジェル状アイカラーの処方例を表31に示す。
【0197】
この処方例31のジェル状アイカラーは、次のA~C工程により製造することができる。A:成分1~7を均一に混合溶解する。B:成分8~11を均一に混合溶解する。C:B工程で得られた混合物にA工程で得られた混合物を撹拌しながら加える。
【0198】
【0199】
〔溶剤系美爪料〕
溶剤系美爪料は、本発明に係る油性保湿剤に加えて、皮膜形成剤、非芳香族系溶剤を含む。溶剤系美爪料中の本発明に係る油性保湿剤の含有量は、溶剤系美爪料全量中の0.01~40質量%であることが好ましい。
【0200】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例5で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールの(カプリル酸/カプリン酸)エステル(構成脂肪酸残基のカプリル酸及びカプリン酸構成比は80:20、水酸基価0mgKOH/g)を使用したマニュキュアの処方例を表32に示す。なお、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体として、藤倉化成社製の商品「アクリベースMH7057」を、有機変性粘土鉱物として、ELEMENTIS社製の商品「ベントン 27」を、無水ケイ酸として、日本アエロジル社製の商品「AEROSIL 300」を、使用することができる。
【0201】
この処方例32のマニュキュアは、次のA~C工程により製造することができる。A:成分7~9を混合し、成分10を添加して、均一に混合する。B:A工程で得られた混合物に成分1~6を添加して均一に混合する。C:B工程で得られた混合物に成分11~15を添加して均一に混合し、容器に充填する。
【0202】
【0203】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例5で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールの(カプリル酸/カプリン酸)エステル(構成脂肪酸残基のカプリル酸及びカプリン酸構成比は80:20、水酸基価0mgKOH/g)を使用したトップコートの処方例を表33に示す。なお、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体として、藤倉化成社製の商品「アクリベースMH7057」を、使用することができる。
【0204】
この処方例33のトップコートは、次のA~B工程により製造することができる。A:成分5~8を均一に混合した後、成分1~4を添加し、均一に混合する。B:A工程で得られた混合物を容器に充填する。
【0205】
【0206】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例5で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールの(カプリル酸/カプリン酸)エステル(構成脂肪酸残基のカプリル酸及びカプリン酸構成比は80:20、水酸基価0mgKOH/g)を使用したベースコートの処方例を表34に示す。なお、アクリル酸アルキル・スチレン共重合体として、藤倉化成社製の商品「アクリベースMH7057」を、使用することができる。
【0207】
この処方例34のベースコートは、次のA~B工程により製造することができる。A:成分4~7を均一に混合した後、成分1~3を添加し、均一に混合する。B:A工程で得られた混合物を容器に充填する。
【0208】
【0209】
〔洗浄剤組成物〕
洗浄剤組成物は、本発明に係る油性保湿剤に加えて、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上を含む。洗浄剤組成物中の本発明に係る油性保湿剤の含有量は、洗浄剤組成物全量中の0.01~30質量%であることが好ましい。洗浄剤組成物中のアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上の総含有量は、洗浄剤組成物全量中の0.01~40質量%であることが好ましい。
【0210】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例5で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールの(カプリル酸/カプリン酸)エステル(構成脂肪酸残基のカプリル酸及びカプリン酸構成比は80:20、水酸基価0mgKOH/g)を使用したシャンプーの処方例を表35に示す。
【0211】
この処方例35のシャンプーは、成分1~9を均一に混合することにより製造することができる。
【0212】
【0213】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例5で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールの(カプリル酸/カプリン酸)エステル(構成脂肪酸残基のカプリル酸及びカプリン酸構成比は80:20、水酸基価0mgKOH/g)を使用したボディーソープの処方例を表36に示す。
【0214】
この処方例36のボディーソープは、成分1~10を均一に混合することにより製造することができる。
【0215】
【0216】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例5で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールの(カプリル酸/カプリン酸)エステル(構成脂肪酸残基のカプリル酸及びカプリン酸構成比は80:20、水酸基価0mgKOH/g)を使用した洗顔クリームの処方例を表37に示す。なお、高重合ジメチルポリシロキサンとして、信越化学工業社製の商品「KF-96H-6000cs」を、使用することができる。
【0217】
この処方例37の洗顔クリームは、次のA~C工程により製造することができる。A:成分1~7を加熱溶解し、70℃にする。B:成分8~12を加熱し70℃にする。C:70℃にてB工程で得られた混合物にA工程で得られた混合物を攪拌しながら徐々に加え、けん化反応が終了後、攪拌しながら冷却する。
【0218】
【0219】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例1で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価0mgKOH/g)を使用したジェル状洗顔料の処方例を表38に示す。
【0220】
この処方例38のジェル状洗顔料は、次のA~B工程により製造することができる。A:成分1~3を均一に混合する。B:A工程で得られた混合物に成分4~9を加えて均一混合する。
【0221】
【0222】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例1で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価0mgKOH/g)、実施例11で製造したエステル化物、すなわち、ソルビタンのカプリル酸エステル(水酸基価2mgKOH/g)、及び実施例15で製造したエステル化物、すなわち、エリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価0mgKOH/g)を使用したクレンジングオイルの処方例を表39に示す。
【0223】
この処方例39のクレンジングオイルは、成分1~9を均一に混合することにより製造することができる。
【0224】
【0225】
〔パック化粧料〕
パック化粧料には、本発明に係る油性保湿剤に加えて、グリセリンなどの水性保湿剤、水溶性高分子、水を含ませることができる。パック化粧料中の本発明に係る油性保湿剤の含有量は、0.1~60質量%であることが好ましく、水性保湿剤の含有量は、1~40質量%であることが好ましく、水溶性高分子の含有量は、0.001~20質量%であることが好ましく、水の含有量は、20~95質量%であることが好ましい。
【0226】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例1で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価0mgKOH/g)を使用したペースト状ピールオフパックの処方例を表40に示す。なお、ポリビニルアルコールとしてクラレ社製の商品「クラレポバールPVA217」を使用することができる。
【0227】
この処方例40のペースト状ピールオフパックは、次のA~C工程により製造することができる。A:成分1~5を均一に混合する。B:成分6~9を均一に混合する。C:A工程で得られた混合物にB工程で得られた混合物を加えて、50℃で加温撹拌し、冷却後、成分10を加える。
【0228】
【0229】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例1で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価0mgKOH/g)を使用したクリームパックの処方例を表41に示す。
【0230】
この処方例41のクリームパックは、次のA~C工程により製造することができる。A:成分1~6を80℃で加温溶解し、均一に混合する。B:成分7~12を80℃で加温溶解し、均一に混合する。C:80℃にてA工程で得られた混合物にB工程で得られた混合物を加えて乳化し、冷却し、成分13を加える。
【0231】
【0232】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例1で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価0mgKOH/g)を使用したシート状パックの処方例を表42に示す。なお、モノオレイン酸ポリグリセリル-10として日清オイリオグループ社製の商品「サラコスPG-180」を、モノオレイン酸ポリグリセリル-2として日清オイリオグループ社製の商品「サラコスDG-180」を使用することが出来る。
【0233】
この処方例42のシート状パックは、次のA~D工程により製造することができる。A:成分1~3を加温溶解し、均一に混合する。B:成分4~9を加温し、均一に混合する。C:B工程で得られた混合物にA工程で得られた混合物を加えて乳化し、冷却して、シート状パック用液部を得る。D:C工程で得られた液部を不織布に含浸させ、シート状パックを得る。
【0234】
【0235】
〔油性固形リップ化粧料〕
油性固形リップ化粧料は、本発明に係る油性保湿剤に加えて、適宜、融点70℃以上のワックス成分、その他の油性成分、有機顔料、無機顔料、酸化防止剤、防腐剤を含ませることができる。化粧オイル中の本発明に係る油性保湿剤の含有量は、0.1~95質量%であることが好ましい。
【0236】
本発明に係る油性保湿剤として、例えば、後述する実施例1で製造したエステル化物、すなわち、ジペンタエリスリトールのカプリル酸エステル(水酸基価0mgKOH/g)を使用した油性固形リップ化粧料の処方例を表43に示す。
なお、ジペンタエリトリット脂肪酸エステルとして、日清オイリオグループ社製の商品「コスモール168ARV」を、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルとして、日清オイリオグループ社製の商品「サラコスWO-6」を、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2として、日清オイリオグループ社製の商品「コスモール43V」使用することができる。
【0237】
この処方例43の油性固形リップ化粧料は、次のA~D工程により製造することができる。A:成分5~16を90℃に加熱し、均一に混合する。B:A工程で得られた混合物に成分1~4及び成分17を添加し、均一に混合する。C:B工程で得られた混合物を再び加熱溶解し、脱泡する。D:C工程で得られた処理物をスティック容器に充填し、室温まで冷却する。
【0238】
【実施例】
【0239】
以下、本発明の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら限定されるものではない。なお、以降において、特に記載のない限り、「%」は質量%を意味する。
【0240】
[実施例1~18(ただし、実施例1~6は参考例)、比較例1~9]エステル化物の製造
アルコールと脂肪酸を反応原料とし、アルコールと脂肪酸のモル比を調整してエステル化反応を行い、エステル化物を製造した。
具体的には、まず、表46及び47に記載のアルコールと脂肪酸を四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下、180~240℃に加熱し、生成する水を系外に取り除きながら約10~20時間エステル化反応を行った。反応終了後、必要に応じて過剰の酸を除去し、目的のエステル化物を得た。
さらに詳しくは、実施例5のエステル化物は、後述する製造例1に示す方法で製造した。また、実施例2のエステル化物は、後述する製造例2に示す方法で製造した。
【0241】
得られたエステル化物の反応原料、水酸基価、35℃での性状(外観)、保湿効果の評価結果、及び使用感の評価結果を表46及び47に示す。
また、原料に2種類の脂肪酸を使用して製造したエステル化物については、得られたエステル化物の構成脂肪酸残基の組成を測定し、各構成脂肪酸残基の質量比を算出した。その値を表46及び47に示す。
【0242】
[製造例1]エステル化物の製造
ジペンタエリスリトールとカプリル酸、及びカプリン酸を反応原料とし、得られるエステル化物の水酸基価が0mgKOH/g、得られるエステル化物のカプリル酸とカプリン酸の質量比が8:2となるようにジペンタエリスリトールとカプリル酸、及びカプリン酸のモル比を調整してエステル化反応を行い、エステル化物を製造した。
具体的には、まずカプリル酸1198.6g(8.3モル)、カプリン酸299.6g(1.7モル)、及びジペンタエリスリトール254.3g(1.0モル)を四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下、230~240℃に加熱し、生成する水を系外に取り除きながら約15時間エステル化反応を行った。反応終了後、過剰の酸を除去し、目的のエステル化物940gを得た。
得られたエステル化物の酸価は0.1、水酸基価は0mgKOH/gであった。
また、得られたエステル化物の構成脂肪酸残基の質量比は、カプリル酸:カプリン酸=79:21であった。
【0243】
[製造例2]エステル化物の製造
ジペンタエリスリトールとカプリル酸を反応原料とし、得られるエステル化物の水酸基価が約70mgKOH/gとなるようにジペンタエリスリトールとカプリル酸のモル比を調整してエステル化反応を行い、エステル化物を製造した。
具体的には、まずカプリル酸692.2g(4.8モル)、及びジペンタエリスリトール254.3g(1.0モル)を四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下、230~240℃に加熱し、生成する水を系外に取り除きながら約25時間エステル化反応を行った。反応しながら反応物の酸価が1未満になったことを確認した時点で反応を終了し、目的のエステル化物817gを得た。得られたエステル化物は酸価0.1、水酸基価67mgKOH/gであった。
【0244】
[比較例10]ジペンタエリスリトール脂肪酸エステルの製造
ジペンタエリスリトールとカプリル酸を反応原料とし、得られるエステル化物の水酸基価が約170mgKOH/gとなるようにジペンタエリスリトールとカプリル酸のモル比を調整してエステル化反応を行ったが、反応中に二相に分離し、目的のエステル化物を製造することができなかった。
したがって、水酸基価が約170mgKOH/gのジペンタエリスリトール脂肪酸エステルの各種評価は実施することができなかった。
【0245】
<エステル化物の構成脂肪酸残基の組成の測定>
以降の実施例等において、エステル化物の各構成脂肪酸残基の質量比は、エステル化物中の脂肪酸残基を、2.4.1.1-2013メチルエステル化法(硫酸-メタノール法)(公益社団法人日本油化学会発行、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法 2013年版」)に相当する方法によってメチルエステル化した誘導体を調製した後、得られた誘導体を、2.4.2.3-2013脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法)(公益社団法人日本油化学会発行、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法 2013年版」)に相当する方法により分離して測定した。
【0246】
具体的には、まず、エステル化物1滴を試験管に分取し、硫酸-メタノール溶液[メタノール230mLに硫酸2mLを混合した溶液]2mLに溶解させた。次いで、当該試験管を加温し、エステル交換反応によって、当該エステル化物中の脂肪酸残基をメチルエステル化した誘導体を調製した。
【0247】
このメチルエステル誘導体を、ヘキサン2mLに溶解させて、FIDを備えたガスクロマトグラフ装置のカラムに注入し、以下のGC分析条件で、各メチルエステル誘導体を分離して検出した。
【0248】
<GC分析条件>
・カラム:DB-1ht(Agilent Technologies社製)
・注入量:1μL
・キャリアガス:ヘリウム
・カラム温度:50~370℃(昇温15℃/min)
【0249】
クロマトグラフ上のピークの同定は、供試サンプルと同じ測定条件で標準物質を分析して得られたピークの保持時間と比較することにより行った。エステル化物の脂肪酸残基の組成は、クロマトグラフ上の各脂肪酸残基に由来するメチルエステル誘導体のピークのピーク面積の百分率(%)に基づいて算出した。
【0250】
<皮膚の角層水分量測定試験>
本発明において、エステル化物の保湿効果、すなわち、皮膚の保湿機能の改善効果は、エステル化物の塗布前後における皮膚の角層水分量の変化に基づいて評価した。
角層水分量の測定は、IBS社の角層水分量測定装置(装置名:SKICON-200)を用いて行った。角層水分量測定装置は、角層の水分状態を測定するために汎用に使用される機器であり、角層の電気伝導度(μS)を測定する装置である。肌水分量が多い程、角層の電気伝導度は高くなる。そこで、角層水分量測定装置によって測定された電気伝導度(μS)を、角層水分量とした。
【0251】
<エステル化物の単回塗布時の保湿効果評価試験>
供試サンプルの皮膚の保湿効果について、洗浄した皮膚に供試サンプルを直接塗布後、ヘキサンを浸み込ませた綿棒で拭き取った後の皮膚の角層水分量の変化量に基づいて評価した。
皮膚の角層水分量測定試験は、複数のパネラーに対して、秋から春の肌が乾燥しやすい時期に実施した。また、測定結果への室温や湿度の影響をなくすために、試験は、室温を18~22℃、湿度を40~55%RHに調整した室内で行った。
【0252】
具体的には、まず、ヒト前腕部を石鹸で洗浄した後、室温及び湿度を前記範囲に調整した室内に30分間いることによって前腕部の皮膚を測定環境に馴化させ、測定の初期条件を整えた。
次に、洗浄した前腕部の縦3cm、横3cmの正方形を測定部位とし、その部分の皮膚の角層水分量を測定し、ブランク値(試験開始前の角層水分量)とした。
その後、前腕部の正方形の測定部位に、評価する供試サンプル40μLを均一に塗布した。塗布してから60分後に、ヘキサンを浸み込ませた綿棒で供試サンプルを拭き取り、拭き取ってから30分後に、その拭き取った部分の皮膚の角層水分量(試験終了時の角層水分量)を測定した。
また、供試サンプルの保湿効果を評価するにあたり、測定時間内での肌状態の変化を考慮してこれを差し引くために、サンプル未塗布部の角層水分量も、試験開始前と試験終了時に測定し、未塗布部の角層水分量変化を算出しておいた。
【0253】
測定した皮膚の角層水分量の測定値から、下記式に基づいて保湿効果値(μS)を求めた。各供試サンプルの保湿効果値(μS)は、5名のパネラーの保湿効果値(μS)の平均値とした。
【0254】
(式1)[保湿効果値(μS)]=[試験終了時の塗布部の角層水分量(μS)]-[ブランクの角層水分量(μS)]-[未塗布部の角層水分変化量(μS)](式2)[未塗布部の角層水分変化量(μS)]=[試験終了時の未塗布部の角層水分量(μS)]-[試験開始前の未塗布部の角層水分量(μS)]
【0255】
各供試サンプルの保湿効果値(μS)に基づいて、表44の基準により、各供試サンプルの保湿効果を評価した。保湿評価がa1、b1、及びc1の供試サンプルは、保湿効果があり、保湿剤として有用であると判断し、d1、及びe1の供試サンプルは、充分な保湿効果がなく、保湿剤としては有用ではないと判断した。
【0256】
【0257】
<単回塗布時の保湿評価>
各エステル化物について、5名のパネラーにより、前記<エステル化物の単回塗布時の保湿効果評価試験>を行い、保湿評価を行った。
ただし、試験時の肌の表皮温度は約30~35℃であるため、35℃で固体状の評価サンプルは、皮膚にうまく塗布することができない。そこで、35℃で固体状のエステル化物については、2-エチルヘキサン酸セチル(商品名「サラコス816T」、日清オイリオグループ社製)と、1:1の質量比で混合して、35℃で液状になったものを評価のための供試サンプルとした。
【0258】
<使用感の評価>
皮膚外用組成物においては、使用感に優れることも実際の使用においては重要である。各エステル化物についての使用感、具体的には、「べたつきのなさ」と「密着感」についての官能評価を行った。
【0259】
専門評価パネラー4名により、前腕部に評価対象の供試サンプルを均一に塗布した時の、感触の「べたつきのなさ」及び「密着感」について、5段階(5点:良い、4点:やや良い、3点:普通、2点:やや悪い、1点:悪い)で評価した。各供試サンプルの使用感の評価点は、4名のパネラーの評価点の平均値とした。
【0260】
各供試サンプルの「べたつきのなさ」の評価点に基づいて、表45の基準により、各供試サンプルの使用感を評価した。
【0261】
【0262】
各供試サンプルの「密着感」の評価点に基づいて、表46の基準により、各供試サンプルの使用感を評価した。
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
[比較例11~23]
市販の各種油剤及びグリセリンについて、前記の<単回塗布時の保湿評価>を行い、保湿効果を調べた。市販の各種油剤及びグリセリンの35℃での性状(外観)、評価結果を表49に示す。
【0267】
比較例23のグリセリンは、水性保湿剤の代表的な物質であり、保湿剤として一般的に使用されている。グリセリンの場合には、前記の<単回塗布時の保湿評価>において、皮膚に塗布したグリセリンの除去には、ヘキサンでは無く、水を浸した綿棒を使用した。除去する溶媒をヘキサンから水に変えた以外の評価条件は、前記の<単回塗布時の保湿評価>と同様とした。
【0268】
【0269】
表47~49の結果から、実施例1~18のエステル化物、すなわち、エステル化反応の反応原料として、アルコールとしてジペンタエリスリトール、エリスリトール、又はソルビタンを使用し、脂肪酸として炭素数6~28の脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸を必ず使用して得られた水酸基価が0~160mgKOH/gのエステル化物は、油性の物質であり、保湿効果値が50μS以上と高く、油性保湿剤として非常に有用であることがわかった。一方で、ジペンタエリスリトール、エリスリトール、及びソルビタンのいずれも原料としていない比較例2~5、8、9のエステル化物、エリスリトール又はジペンタエリスリトールを原料とするが、成分Aと成分Bと成分Cとのエステル化物を構成する脂肪酸残基中の成分Bに由来する脂肪酸残基と成分Cに由来する脂肪酸残基の質量比が99.9:0.1~45:55の範囲外である比較例1のエステル化物、並びに、エリスリトールを原料とするが、成分Bを原料としていない比較例6、7のエステル化物は、保湿効果値が50μS未満であり、保湿剤として十分な保湿効果はみられなかった。比較例11~22の油剤は、従来から皮膚外用組成物の原料として用いられている油剤であるが、本発明に係る油性保湿剤である実施例1~18のエステル化物は、比較例11~22の油剤よりも高い保湿効果を奏することが確認された。
【0270】
実施例1~18のエステル化物は、皮膚から除去された後でも角層水分量を高く維持することができている。このことから、皮膚表面に油性膜をはることによって皮膚からの水分蒸散を抑制することにより保湿効果を奏している従来の油性保湿剤とは異なる作用機序によって、保湿効果を奏していることが推察される。
【0271】
比較例23のグリセリンは、一般的に保湿性が良好とされており、水性保湿剤として汎用されているにもかかわらず、今回の保湿評価結果では、グリセリンの保湿効果値は8μSであり、充分な保湿効果は確認されなかった。参考までに、グリセリンを塗布してから60分経過後に、水で除去する前のグリセリンが皮膚表面に塗布された状態の皮膚について、角層水分量を測定した場合は、保湿効果値に相当する電気伝導度の上昇量が、477μSと非常に高い数値を示しており、グリセリンは保湿剤として有用と言われていることが確認された。ただし、グリセリンは吸湿性が高いことや、肌上のグリセリンを除去した後はこの数値が大きく低下することを考慮すると、このグリセリン除去前の保湿効果値は、角層中の水分量に加えて、グリセリンに含まれる水分量の合計として計測された結果と推察される。
【0272】
[実施例19~23(ただし、実施例19及び20は参考例)、比較例24~29]
実施例2、5、13、14、16のエステル化物、比較例1のエステル化物、及び比較例12、15、18、20の油剤を配合した乳液について、単回試験(皮膚表面上に塗布する回数が1回のみである試験)での保湿効果を調べた。
【0273】
具体的には、まず、表51及び52に示す配合の乳液を、次のA~C工程により製造した。なお、ステアリン酸グリセリルとして、Industrial Quimica Lasem社製(IQL社製)の商品「LASEMUL92AE」を、PEG-100ステアレートとして、IQL社製の商品名「LASEMUL4000」を、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマーとして、Lubrizol社製の商品名「Pemulen TR-1」を、それぞれ用いた。
A:成分1~2を、70℃で加熱混合した。
B:成分3~10を、70℃で均一に加熱混合した。
C:B工程で得られた混合物に、A工程で得られた混合物を加え、乳化機(卓上ディスパーミキサー)で2000rpm、70℃、5分間乳化することにより乳液を得た。
【0274】
<乳液の単回塗布時の保湿効果評価試験>
実施例19~23、比較例24~29の乳液について、10名のパネラーにより保湿評価を行った。
具体的には、洗浄した皮膚にエステル化物又は油剤を含む乳液を塗布後、流水で洗浄した後の皮膚の角層水分量測定を行うことによって、エステル化物を含む乳液の保湿効果を評価した。
【0275】
皮膚の角層水分量測定試験は、秋から春の肌が乾燥しやすい時期に実施した。また、測定結果への室温や湿度の影響をなくすために、試験は、室温を18~22℃、湿度を40~55%に調整した室内で行った。
【0276】
皮膚の角層水分量は次のようにして測定した。
まず、前記<エステル化物の単回塗布時の保湿効果評価試験>と同様に、測定部の洗浄、環境への馴化、ブランク値測定、無塗付部の測定を行った。
その後、前腕部の正方形の測定部位に、乳液を40mg均一に塗布した。塗布してから5時間後に、塗布した部分を流水(2L/min)で20秒間洗浄した後、余分な水分を拭き取り、30分後に角層水分量(μS)を測定した。
次いで、前記<エステル化物の単回塗布時の保湿効果評価試験>と同様に、式1及び式2を用いて求めた5名のパネラーの保湿効果値の平均値を、各乳液の保湿効果値(μS)とした。
【0277】
(式1)[保湿効果値(μS)]=[試験終了時の塗布部の角層水分量(μS)]-[ブランクの角層水分量(μS)]-[未塗布部の角層水分変化量(μS)](式2)[未塗布部の角層水分変化量(μS)]=[試験終了時の未塗布部の角層水分量(μS)]-[試験開始前の未塗布部の角層水分量(μS)]
【0278】
各乳液の保湿効果値(μS)に基づいて、表50の基準により、各乳液の保湿効果を評価した。保湿評価がa4、b4、及びc4の乳液は、保湿効果を有する乳液として有用であると判断し、d4及びe4の乳液は、保湿効果を有さず、保湿効果を有する乳液としては有用ではないと判断した。各乳液の評価結果を表51及び52に示す。
【0279】
【0280】
【0281】
【0282】
表51及び52から、本発明に係る油性保湿剤であるエステル化物を含有させた乳液は、皮膚表面に単回塗布し、その後皮膚表面から除去した場合でも、比較例1のエステル化物、又は市販の油剤を配合した比較例24~29の乳液に比べてより高い保湿効果が得られることが分かった。また、油剤が配合されていない乳液(比較例29)と比較しても、本発明に係る油性保湿剤が配合されることで、乳液の保湿効果値が高くなることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0283】
本発明によれば、皮膚の保湿効果が優れた油性保湿剤、及びそれを含む皮膚外用組成物を提供することができる。