(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ウレタンポリマー及びこれを含む油類組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/48 20060101AFI20240214BHJP
C08L 75/08 20060101ALI20240214BHJP
A61K 8/87 20060101ALI20240214BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240214BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240214BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20240214BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240214BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240214BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240214BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20240214BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C08G18/48
C08G18/48 037
C08L75/08
A61K8/87
A61Q1/00
A61Q5/00
A61Q15/00
A61Q17/04
A61Q19/10
A61K8/37
A61K8/891
A61K8/81
(21)【出願番号】P 2020563108
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2019049346
(87)【国際公開番号】W WO2020137679
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2018240931
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】松倉 範佳
(72)【発明者】
【氏名】宮園 圭大郎
(72)【発明者】
【氏名】舛川 諒
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-275699(JP,A)
【文献】特開2011-132410(JP,A)
【文献】特開平6-316623(JP,A)
【文献】特開平5-310883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/48
C08L 75/08
A61K 8/87
A61Q 1/00
A61Q 5/00
A61Q 15/00
A61Q 17/04
A61Q 19/10
A61K 8/37
A61K 8/891
A61K 8/81
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表される構造を有するウレタンポリマー。
【化1】
(式中、R
1、R
2はそれぞれ独立して炭素数5~40のアルキレン基を表し、Z
1、Z
2はそれぞれ下記の一般式(2)、(3)で表されるオキシアルキレン基を表し、R
3はジイソシアネート残基を表し、X
1は水素原子又は下記の一般式(4)で表される基を表し、X
2は水素原子又は下記の一般式(5)で表される基を表し、nは1~20の数を表す(但し、X
1およびX
2が水素原子であるとき、nは1を表す)。)
【化2】
(式中、a
1、b
1、c
1はa
1:b
1:c
1=
1:0:0の比(a
1、b
1およびc
1の合計は1)を表し、pは4~60の数を表す
。)
【化3】
(式中、a
2、b
2、c
2はa
2:b
2:c
2=
1:0:0の比(a
2、b
2およびc
2の合計は1)を表し、qは4~60の数を表す
。)
【化4】
(式中、a
3、b
3、c
3はa
3:b
3:c
3=
1:0:0の比(a
3、b
3およびc
3の合計は1)を表し、rは4~60の数を表す
。)
【化5】
(式中、a
4、b
4、c
4はa
4:b
4:c
4=
1:0:0の比(a
4、b
4およびc
4の合計は1)を表し、sは4~60の数を表す
。)
【請求項2】
Z
1が、一般式(2)においてpが6~40の数を表す基であり、Z
2が、一般式(3)においてqが6~40の数を表す基である、請求項
1に記載のウレタンポリマー。
【請求項3】
R
3が、炭素数4~16の脂肪族炭化水素基または炭素数4~16の脂環式炭化水素基である、請求項
1又は2に記載のウレタンポリマー。
【請求項4】
X
1、X
2がそれぞれ水素原子であり、nが1である、請求項1~
3のいずれか1項に記載のウレタンポリマー。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のウレタンポリマーと、炭化水素油、シリコーン油およびエステル油からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む油性成分と、を含む油類組成物。
【請求項6】
ウレタンポリマーと油性成分の含有比率が、質量比で0.1:99.9~95:5(質量比の合計は100)である、請求項
5に記載の油類組成物。
【請求項7】
請求項
5または
6に記載の油類組成物を含有する化粧料組成物。
【請求項8】
炭化水素油、シリコーン油およびエステル油からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む油性成分に、請求項1~
4のいずれか1項に記載のウレタンポリマーを組み合わせることを含む、前記油性成分を含む化粧料組成物の艶感を向上させる方法。
【請求項9】
炭化水素油、シリコーン油およびエステル油からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む油性成分を含む化粧料組成物の艶感を向上させるための、請求項1~
4のいずれか1項に記載のウレタンポリマーの使用であって、前記ウレタンポリマーは前記油性成分中に溶解されている、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、粘接着剤、燃料、潤滑剤、食品、化粧品等の様々な分野において使用可能なウレタンポリマー、それを含む油類組成物及び該油類組成物を含む化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料、粘接着剤、燃料、潤滑剤、食品、化粧品等の各種製品においては、その粘性や使用前後の感触等の諸特性を調整するために、粘性調整剤・増粘剤や改質剤が使用されている。例えば、粘性調整剤としては、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロース等の天然系粘性調整剤、ポリアクリル酸やポリアクリル酸含有コポリマー等のアルカリで増粘するタイプのアルカリ増粘型粘性調整剤、ウレタン変性ポリエーテル等のウレタン型粘性調整剤等が一般に知られている。これらの中でもウレタン型粘性調整剤は、添加した製品に多様な特性を付与できること、長期安定性や耐久性に優れること等の理由から、多くの種類が製造され使用されている。
【0003】
特許文献1には、温度依存性が少なく、様々な条件下で一定の範囲の粘度を保つため、外気の温度変化に対して影響が少なく作業性に優れるウレタン型の粘性調整剤が開示されている。特許文献2には、既存のウレタン型粘性調整剤と同様の特性を有しつつ、アルカリ増粘型粘性調整剤と同様に長期保存安定性に優れる、塗料、粘接着剤、食品、化粧品等の様々な分野において使用可能なウレタン型ポリマーが開示されている。
【0004】
しかし特許文献1の粘性調整剤や特許文献2に記載のウレタン型ポリマーは、水溶液に対しては溶解しその機能を発揮する一方で、油性成分には溶解しないため、油性成分の粘性や使用前後の感触等の諸特性を調整することはできなかった。そこで、特許文献3では、油脂、鉱物油、合成油等のオイルに溶解し、ゲル状のオイル、ゼリー状あるいはグミ状のオイルを形成できるウレタン型のオイル用増粘剤が提案されている。
【0005】
しかし、特許文献3のウレタン型のオイル用増粘剤も、シリコーン油やその誘導体等に対して使用しても増粘物やゲルを得ることはできないとされているため、種々の成分を原料として含む塗料、粘接着剤、燃料、潤滑剤、食品、化粧品等の各種製品にウレタン型のオイル用増粘剤を適用する際に特性を十分に発揮できない場合があるなどの制限が生じており、依然として様々な分野や製品に幅広く使用できるウレタンポリマーが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-71767号公報
【文献】再公表WO2014/084174号公報
【文献】特開2011-102256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、炭化水素油、シリコーン油、エステル油といった様々な種類の油性成分に可溶であり、よって塗料、粘接着剤、燃料、潤滑剤、食品、化粧品等の油性成分を含む各種製品の粘性や使用前後の感触等の諸特性を調整又は改善できるウレタンポリマー、及び該ウレタンポリマーが溶解した油類組成物ならびに該油類組成物を含む化粧料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者等は鋭意検討し、様々な種類の油性成分に可溶であり、よって油性成分および油性成分を含む各種製品の粘性や使用前後の感触等の諸特性を調整又は改善できるウレタンポリマーを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、下記の一般式(1)で表される構造を有するウレタンポリマーである。
【0009】
【0010】
(式中、R1、R2はそれぞれ独立して炭素数5~40のアルキレン基を表し、Z1、Z2はそれぞれ下記の一般式(2)、(3)で表されるオキシアルキレン基を表し、R3はジイソシアネート残基を表し、X1は水素原子又は下記の一般式(4)で表される基を表し、X2は水素原子又は下記の一般式(5)で表される基を表し、nは1~20の数を表す(但し、X1およびX2が水素原子であるとき、nは1を表す)。)
【0011】
【0012】
(式中、a1、b1、c1はa1:b1:c1=1~0.6:0~0.4:0~0.4の比(a1、b1およびc1の合計は1)を表し、pは4~60の数を表す。なお各構造単位の配列はブロック状でもランダム状でもよい。)
【0013】
【0014】
(式中、a2、b2、c2はa2:b2:c2=1~0.6:0~0.4:0~0.4の比(a2、b2およびc2の合計は1)を表し、qは4~60の数を表す。なお各構造単位の配列はブロック状でもランダム状でもよい。)
【0015】
【0016】
(式中、a3、b3、c3はa3:b3:c3=1~0.6:0~0.4:0~0.4の比(a3、b3およびc3の合計は1)を表し、rは4~60の数を表す。なお各構造単位の配列はブロック状でもランダム状でもよい。)
【0017】
【0018】
(式中、a4、b4、c4はa4:b4:c4=1~0.6:0~0.4:0~0.4の比(a4、b4およびc4の合計は1)を表し、sは4~60の数を表す。なお各構造単位の配列はブロック状でもランダム状でもよい。)
【発明の効果】
【0019】
本発明のウレタンポリマーは、炭化水素油、シリコーン油、エステル油を包含する様々な種類の油性成分に可溶であり、よって油性成分および油性成分を含む各種製品の粘性や使用前後の感触等の諸特性を調整又は改善できる。さらに本発明のウレタンポリマーを用いて、粘性や使用前後の感触が調整又は改善された油類組成物ならびに、粘性や使用前後の感触が調整又は改善された塗料、粘接着剤、燃料、潤滑剤、食品、化粧品等の各種製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のウレタンポリマーは、下記の一般式(1)で表される構造を有するウレタンポリマーである。
【0021】
【0022】
(式中、R1、R2はそれぞれ独立して炭素数5~40のアルキレン基を表し、Z1、Z2はそれぞれ下記の一般式(2)、(3)で表されるオキシアルキレン基を表し、R3はジイソシアネート残基を表し、X1は水素原子又は下記の一般式(4)で表される基を表し、X2は水素原子又は下記の一般式(5)で表される基を表し、nは1~20の数を表す(但し、X1およびX2が水素原子であるとき、nは1を表す)。)
【0023】
一般式(1)のR1およびR2はそれぞれ独立して炭素数5~40のアルキレン基を表す。このようなアルキレン基の例としては、例えば、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、エイコシレン基、ヘンエイコシレン基、ドコシレン基、トリコシレン基、テトラコシレン基、ペンタコシレン基、ヘキサコシレン基、ヘプタコシレン基、オクタコシレン基、ノナコシレン基、トリアコンチレン基、ヘントリアコンチレン基、ドトリアコンチレン基、トリトリアコンチレン基、テトラトリアコンチレン基、ペンタトリアコンチレン基、ヘキサトリアコンチレン基、ヘプタトリアコンチレン基、オクタトリアコンチレン基、ノナトリアコンチレン基、テトラコンチレン基等の炭素数5~40の直鎖アルキレン基、イソペンチレン基、イソへキシレン基、イソヘプチレン基、イソオクチレン基、イソノニレン基、イソデシレン基、イソウンデシレン基、イソドデシレン基、イソトリデシレン基、イソテトラデシレン基、イソペンタデシレン基、イソヘキサデシレン基、イソヘプタデシレン基、イソオクタデシレン基、イソノナデシレン基、イソエイコシレン基、イソヘンエイコシレン基、イソドコシレン基、イソトリコシレン基、イソテトラコシレン基、イソペンタコシレン基、イソヘキサコシレン基、イソヘプタコシレン基、イソオクタコシレン基、イソノナコシレン基、イソトリアコンチレン基、イソヘントリアコンチレン基、イソドトリアコンチレン基、イソトリトリアコンチレン基、イソテトラトリアコンチレン基、イソペンタトリアコンチレン基、イソヘキサトリアコンチレン基、イソヘプタトリアコンチレン基、イソオクタトリアコンチレン基、イソノナトリアコンチレン基、イソテトラコンチレン基等の炭素数5~40の分岐アルキレン基が挙げられる。これらの中でも、各種油性成分への本発明のウレタンポリマーの可溶性の観点から、炭素数6~36の直鎖または分岐アルキレン基であることが好ましい。また、具体的に、R1およびR2は、ヘキシレン基、ドデシレン基、オクタデシレン基、炭素数36のアルキレン基が好ましい。
【0024】
一般式(1)のR3は、ジイソシアネート化合物の残基を表し、具体的には、後述するジイソシアネート化合物が反応した後の残基(ジイソシアネート化合物の2つのイソシアネート基を除いた構造)を表す。R3は、各種油性成分への可溶性の観点から、官能基を有していてもよい炭素数2~20の炭化水素基であることが好ましく、炭素数4~16の脂肪族炭化水素基または炭素数4~16の脂環式炭化水素基であることがより好ましく、炭素数6~12の脂環式炭化水素基であることがさらにより好ましい。具体的には、各種油性成分への可溶性の観点から、R3は炭素数2~20の炭化水素基を有する脂肪族ジイソシアネートまたは炭素数4~20の炭化水素基を有する脂環式ジイソシアネートの残基であることが好ましい。より具体的には、R3はヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、またはイソホロンジイソシアネートの残基であることがより好ましい。また、各種油性成分に対して、本発明のウレタンポリマーの質量比が高い場合でもその可溶性を十分に維持できることから、R3はジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートの残基であることがより好ましく、イソホロンジイソシアネートの残基であることがさらにより好ましい。
【0025】
一般式(1)のnは1~20の数を表す。但し、後述するX1およびX2が水素原子であるとき、nは1を表す。なお、nが1~20であるとは、nの値がこの範囲内にあるいずれか1つの化合物またはnの値がこの範囲内にある化合物の混合物であることを表す。本発明においては、本発明の効果を効果的に得る観点から、nが1である化合物を含むことが好ましい。各種油性成分への本発明のウレタンポリマーの可溶性の観点からは、nは1~10であることが好ましい。また、各種油性成分に対して、本発明のウレタンポリマーの質量比が高い場合でもその可溶性を十分に維持できることから、nは1のみであることがより好ましい。
【0026】
一般式(1)のZ1、Z2はそれぞれ下記の一般式(2)、(3)で表されるオキシアルキレン基である。
【0027】
【0028】
(式中、a1、b1、c1はa1:b1:c1=1~0.6:0~0.4:0~0.4の比(a1、b1およびc1の合計は1)を表し、pは4~60の数を表す。なお各構造単位の配列はブロック状でもランダム状でもよい。)
【0029】
【0030】
(式中、a2、b2、c2はa2:b2:c2=1~0.6:0~0.4:0~0.4の比(a2、b2、c2の合計は1)を表し、qは4~60の数を表す。なお各構造単位の配列はブロック状でもランダム状でもよい。)
【0031】
一般式(2)のa1、b1、c1はa1:b1:c1=1~0.6:0~0.4:0~0.4の比(a1、b1およびc1の合計は1)を表す。なお各構造単位の配列はブロック状でもランダム状でもよい。各種油性成分への本発明のウレタンポリマーの可溶性の観点から、a1:b1:c1=1~0.6:0~0.4:0であることが好ましく、a1:b1:c1=1~0.8:0~0.2:0であることがより好ましく、a1:b1:c1=1:0:0である(つまり、Z1がオキシブチレン単位のみからなるオキシアルキレン基である)ことがさらにより好ましい。
【0032】
一般式(2)のpは4~60の数を表す。各種油性成分への本発明のウレタンポリマーの可溶性の観点から、pは6~40の数であることが好ましく、pは8~30の数であることがより好ましい。
【0033】
一般式(3)のa2、b2、c2はa2:b2:c2=1~0.6:0~0.4:0~0.4の比(a2、b2、c2の合計は1)を表す。なお各構造単位の配列はブロック状でもランダム状でもよい。各種油性成分への本発明のウレタンポリマーの可溶性の観点から、a2:b2:c2=1~0.6:0~0.4:0であることが好ましく、a2:b2:c2=1~0.8:0~0.2:0であることがより好ましく、a2:b2:c2=1:0:0である(つまり、Z2がオキシブチレン単位のみからなるオキシアルキレン基である)ことがさらにより好ましい。
【0034】
一般式(3)のqは4~60の数を表す。各種油性成分への本発明のウレタンポリマーの可溶性の観点から、qは6~40の数であることが好ましく、8~30の数であることがより好ましい。
【0035】
各種油性成分への可溶性の観点から、本発明のウレタンポリマーは、一般式(1)において、Z1が一般式(2)においてa1:b1:c1=1:0:0で表される基(つまり、Z1がオキシブチレン単位のみからなるオキシアルキレン基である)であり、Z2が一般式(3)においてa2:b2:c2=1:0:0で表される基(つまり、Z2がオキシブチレン単位のみからなるオキシアルキレン基である)であることが好ましい。
【0036】
一般式(1)のX1は水素原子又は下記の一般式(4)で表される基を表す。
【0037】
【0038】
(式中、a3、b3、c3はa3:b3:c3=1~0.6:0~0.4:0~0.4の比(a3、b3およびc3の合計は1)を表し、rは4~60の数を表す。なお各構造単位の配列はブロック状でもランダム状でもよい。)
【0039】
一般式(4)のa3、b3、c3はa3:b3:c3=1~0.6:0~0.4:0~0.4の比(a3、b3およびc3の合計は1)を表す。なお各構造単位の配列はブロック状でもランダム状でもよい。各種油性成分への本発明のウレタンポリマーの可溶性の観点から、a3:b3:c3=1~0.6:0~0.4:0であることが好ましく、a3:b3:c3=1~0.8:0~0.2:0であることがより好ましく、a3:b3:c3=1:0:0である(つまり、X1はオキシブチレン単位のみからなるオキシアルキレン末端基である)ことがさらにより好ましい。
【0040】
一般式(4)のrは4~60の数を表す。各種油性成分への可溶性の観点から、rは6~40の数であることが好ましく、8~30の数であることがより好ましく、8~16の数であることが更に好ましい。
【0041】
一般式(1)のX2は水素原子又は下記の一般式(5)で表される基を表す。
【0042】
【0043】
(式中、a4、b4、c4はa4:b4:c4=1~0.6:0~0.4:0~0.4の比(a4、b4およびc4の合計は1)を表し、sは4~60の数を表す。なお各構造単位の配列はブロック状でもランダム状でもよい。)
【0044】
一般式(5)のa4、b4、c4はa4:b4:c4=1~0.6:0~0.4:0~0.4の比(a4、b4およびc4の合計は1)を表す。なお各構造単位の配列はブロック状でもランダム状でもよい。各種油性成分への本発明のウレタンポリマーの可溶性の観点から、a4:b4:c4=1~0.6:0~0.4:0であることが好ましく、a4:b4:c4=1~0.8:0~0.2:0であることがより好ましく、a4:b4:c4=1:0:0である(つまり、X2はオキシブチレン単位のみからなるオキシアルキレン末端基である)ことがさらにより好ましい。
【0045】
一般式(5)のsは4~60の数を表す。各種油性成分への可溶性の観点から、sは6~40の数であることが好ましく、8~30の数であることがより好ましく、8~16の数であることが更に好ましい。
【0046】
各種油性成分への可溶性の観点から、本発明のウレタンポリマーは、一般式(1)において、X1が水素原子または一般式(4)においてa3:b3:c3=1:0:0で表される基(つまり、X1がオキシブチレン単位のみからなるオキシアルキレン末端基である)であり、X2が水素原子または一般式(5)においてa4:b4:c4=1:0:0で表される基(つまり、X2がオキシブチレン単位のみからなるオキシアルキレン末端基である)であることが好ましい。
【0047】
本発明においては、一般式(1)で表される構造を有するウレタンポリマーの中でも、各種油性成分への可溶性の観点から、一般式(1)においてX1およびX2が水素原子であり、nが1であるウレタンポリマーであることが好ましい。
【0048】
本発明のウレタンポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、各種油性成分への本発明のウレタンポリマーの可溶性の観点から、例えば600~200000であることが好ましく、800~50000であることがより好ましく、1000~20000であることがさらに好ましく、1500~12000であることがさらにより好ましい。なお本発明において全ての重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定しスチレン換算で求めることができる。
【0049】
本発明のウレタンポリマーは、様々な種類の油性成分に可溶であり、例えば、炭化水素油、シリコーン油、エステル油、高級アルコール等の油性成分に可溶である。なお本発明において、「本発明のウレタンポリマーが油性成分に可溶である」とは、ウレタンポリマーと油性成分とを混合した際に、その混合物では目視にて白濁や沈殿が見られず、本発明のウレタンポリマーが完全に溶解している(透明である)ことを表す。
【0050】
本発明のウレタンポリマーが可溶な炭化水素油は特に限定されないが、例えば、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、ポリイソブテン、ポリイソプレン、イソデカン、イソドデカン、イソヘキサデカン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ケロシン、デカリン、テトラリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0051】
本発明のウレタンポリマーが可溶なシリコーン油は特に限定されないが、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、オクタメチルトリシロキサン等の鎖状シリコーン油、デカメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、シクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロヘキサシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン油、アルキル変性ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、脂肪酸変性ポリシロキサン、高級アルコール変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性シリコーン油等が挙げられる。
【0052】
本発明のウレタンポリマーが可溶なエステル油は特に限定されないが、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸へキシル、酢酸デシル、プロピオン酸ブチル、オクタン酸セチル、ジメチルオクタン酸へキシルデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸グリセリン、ステアリン酸ブチル、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、ステアリン酸エチレングリコール、オキシステアリン酸オクチル、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、セチルエチルヘキサノエート、トリエチルヘキサノイン、ポリグリセリル-2トリイソステアレート、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリチルテトライソステアレート等の合成エステル油;ラノリン、ミンク油、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油等の動植物エステル油等が挙げられる。
【0053】
本発明のウレタンポリマーが可溶な高級アルコールは特に限定されないが、例えば、セチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられる。
【0054】
本発明のウレタンポリマーは、様々な種類の油性成分に可溶であるため、油性成分の粘性や使用前後の感触等の諸特性を調整できる。
【0055】
本発明のウレタンポリマーの製造方法は特に限定されないが、例えば、炭素数5~40のアルキル基を有する1価のアルコール化合物および/または炭素数5~40のアルキレン基を有する2価のアルコール化合物と、炭素数4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを必ず含む炭素数2~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドと、ジイソシアネート化合物とを含む原料を公知の方法により反応させることで製造することができる。
【0056】
炭素数5~40のアルキル基を有する1価のアルコール化合物としては、炭素数5~40のアルキル基を有する1価のアルコール等が挙げられる。また炭素数5~40のアルキレン基を有する2価のアルコール化合物としては、炭素数5~40のアルキレン基を有する2価のアルコール等が挙げられる。1価のアルコール化合物および2価のアルコール化合物はそれぞれ単独または2種以上で用いることができ、1価のアルコール化合物及び2価のアルコール化合物を組み合わせて用いてもよい。得られるウレタンポリマーの各種油性成分への可溶性の観点から、炭素数6~36のアルキル基を有する1価のアルコールまたは炭素数6~36のアルキレン基を有する2価のアルコールもしくはこれらの混合物を用いることが好ましい。また、各種油性成分に対して、本発明のウレタンポリマーの質量比が高い場合でもその可溶性を十分に維持できることから、少なくとも1種の炭素数6~36のアルキル基を有する1価のアルコールを用いることが好ましく、少なくとも1種の炭素数10~20のアルキル基を有する1価のアルコールを用いることがより好ましい。なお、アルコール化合物として1価のアルコール化合物のみを用いると、一般式(1)においてX1およびX2が水素原子であり、nが1であるウレタンポリマーが得られる。
【0057】
一般に、炭素数2~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドとしては、炭素数2のアルキレンを有するアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド)、炭素数3のアルキレン基を有するアルキレンオキサイド(プロピレンオキサイド)、炭素数4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイド(ブチレンオキサイド)が挙げられる。一方で、本発明のウレタンポリマーの製造においては、アルキレンオキサイドを原料として用いる場合、炭素数4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを必ず含む炭素数2~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを用いることを特徴とする。得られるウレタンポリマーの各種油性成分への可溶性の観点から、用いる炭素数4のアルキレン基と炭素数3のアルキレン基と炭素数2のアルキレン基とのモル比率が1~0.6:0~0.4:0~0.4の比であることが好ましく、1~0.6:0~0.4:0であることがより好ましく、1~0.8:0~0.2:0であることがさらにより好ましく、1:0:0である(いずれもこれらの比の値の合計は1)ことがさらにより好ましい。
【0058】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2-ジメチルペンタンジイソシアネート、3-メトキシヘキサンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルペンタンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、3-ブトキシヘキサンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、エチルシクロヘキサンジイソシアネート、プロピルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,2’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジメチルベンゼンジイソシアネート、エチルベンゼンジイソシアネート、イソプロピルベンゼンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,6-ナフタレンジイソシアネート、2,7-ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも、得られるウレタンポリマーの各種油性成分への可溶性の観点から、脂肪族ジイソシアネートまたは脂環式ジイソシアネートもしくはこれらの混合物を用いることが好ましく、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、またはイソホロンジイソシアネートもしくはこれらの混合物を用いることがより好ましく、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートもしくはこれらの混合物を用いることがさらに好ましく、イソホロンジイソシアネートを用いることがさらにより好ましい。
【0059】
一般式(1)で表される構造を有するウレタンポリマーは、例えば、炭素数5~40のアルキル基を有する1価のアルコール化合物および/または炭素数5~40のアルキレン基を有する2価のアルコール化合物と、炭素数4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを必ず含む炭素数2~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドと、ジイソシアネート化合物とを含む原料を反応させることで製造できる。具体的には、炭素数5~40のアルキル基を有する1価のアルコール化合物および/または炭素数5~40のアルキレン基を有する2価のアルコール化合物の水酸基と炭素数4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを必ず含む炭素数2~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドのエポキシ基との反応および、炭素数4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを必ず含む炭素数2~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドの反応物に由来する水酸基とジイソシアネート化合物のイソシアネート基との反応によってウレタン結合を形成する方法により製造される。
【0060】
上記の製造方法において、炭素数5~40のアルキル基を有する1価のアルコール化合物および/または炭素数5~40のアルキレン基を有する2価のアルコール化合物と、炭素数4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを必ず含む炭素数2~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドと、ジイソシアネート化合物とを反応させる方法は特に限定されない。例えば、炭素数5~40のアルキル基を有する1価のアルコール化合物および/または炭素数5~40のアルキレン基を有する2価のアルコール化合物と、炭素数4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを必ず含む炭素数2~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドと、ジイソシアネート化合物とを、一度に混合して反応させてもよく、また炭素数5~40のアルキル基を有する1価のアルコール化合物および/または炭素数5~40のアルキレン基を有する2価のアルコール化合物と炭素数4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを必ず含む炭素数2~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドとを反応させてアルキレンオキサイド付加アルコール化合物を得た後、アルキレンオキサイド付加アルコール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させてウレタンポリマーを製造してもよい。また、炭素数4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを必ず含む炭素数2~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを水分子等と重合反応させてアルキレングリコール重合体(ポリアルキレングリコール)を得た後に、炭素数5~40のアルキル基を有する1価のアルコール化合物および/または炭素数5~40のアルキレン基を有する2価のアルコール化合物ならびにジイソシアネート化合物と一度に混合して反応、または炭素数5~40のアルキル基を有する1価のアルコール化合物および/または炭素数5~40のアルキレン基を有する2価のアルコール化合物と反応させてアルキレンオキサイド付加アルコールを得た後にジイソシアネート化合物とを反応させてもよい。これらの製造方法のうち、得られるウレタンポリマーの各種油性成分への可溶性の観点から、炭素数5~40のアルキル基を有する1価のアルコール化合物および/または炭素数5~40のアルキレン基を有する2価のアルコール化合物と炭素数4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを必ず含む炭素数2~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドとを反応させてアルキレンオキサイド付加アルコール化合物を得た後、該アルキレンオキサイド付加アルコール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させてウレタンポリマーを製造することが好ましい。
【0061】
なお、いずれの製造方法においても、炭素数2~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドとして炭素数4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドと炭素数2または3のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを用いる場合は、これらを全て同時に炭素数5~40のアルキル基を有する1価のアルコール化合物および/または炭素数5~40のアルキレン基を有する2価のアルコール化合物に反応または単独で重合反応させてもよいし、炭素数4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを炭素数5~40のアルキル基を有する1価のアルコール化合物および/または炭素数5~40のアルキレン基を有する2価のアルコール化合物に反応または単独で重合反応させたのちに、炭素数2または3のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを反応または重合反応させてもよい。
【0062】
上記の反応は、各原料が反応するような条件であれば特に限定されず、また、各原料の全量を一括で投入して反応させても数回に分割して投入して反応させてもよい。具体的には、例えば、各成分の原料をそれぞれ一度にまたは数回に分割して反応系内に入れて40~160℃、好ましくは80~160℃の温度、0.1~20kg/cm2、好ましくは1.0~10kg/cm2の圧力下で混合し、同環境を保持したまま反応が完了するまで30分~10時間維持する方法が挙げられる。
【0063】
上記の反応において、各原料の配合比は特に限定されないが、例えば、炭素数5~40のアルキル基を有する1価のアルコール化合物および/または炭素数5~40のアルキレン基を有する2価のアルコール化合物と、炭素数4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを必ず含む炭素数2~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドと、ジイソシアネート化合物とを、一度に投入して反応させる製造方法においては、得られるウレタンポリマーの各種油性成分への可溶性の観点から、炭素数5~40のアルキル基を有する1価のアルコール化合物および/または炭素数5~40のアルキレン基を有する2価のアルコール化合物の水酸基と、炭素数4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを必ず含む炭素数2~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドのエポキシ基と、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル比率を1:4~60:0.10~2.0とすることが好ましく、1:6~40:0.15~1.0とすることがより好ましく、1:8~30:0.20~0.9とすることがさらに好ましい。
【0064】
また、炭素数5~40のアルキル基を有する1価のアルコール化合物および/または炭素数5~40のアルキレン基を有する2価のアルコール化合物と炭素数4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを必ず含む炭素数2~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドとを反応させてアルキレンオキサイド付加アルコールを得た後、アルキレンオキサイド付加アルコール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させてウレタンポリマーを製造する場合においては、得られるウレタンポリマーの各種油性成分への可溶性の観点から、炭素数5~40のアルキル基を有する1価のアルコール化合物および/または炭素数5~40のアルキレン基を有する2価のアルコール化合物の水酸基と、炭素数4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを必ず含む炭素数2~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドのエポキシ基とのモル比率を好ましくは1:4~60、より好ましくは1:6~40、さらに好ましくは1:8~30とし、得られたアルキレンオキサイド付加アルコールの水酸基と、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基との比率を好ましくは1:0.1~2.0、より好ましくは1:0.15~1.0、さらに好ましくは1:0.2~0.9とすることができる。アルキレンオキサイド付加アルコール化合物の水酸基と、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル比率を好ましくは1:0.1~2.0、より好ましくは1:0.15~1.0、さらに好ましくは1:0.2~0.9とすることで、得られるウレタンポリマーの構造を制御することが容易となり、具体的には、一般式(1)においてnの値を特定の範囲とすることが容易となり、各種油性成分へ均質な可溶性を有する本発明のウレタンポリマーを容易に得ることができる。
【0065】
また、上記の各反応において、反応を促進させるために触媒を使用することも可能である。触媒の例としては、硫酸やトルエンスルフォン酸等の強酸;四塩化チタン、塩化ハフニウム、塩化ジルコニウム、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、塩化鉄、塩化スズ、フッ化硼素等の金属ハロゲン化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ソヂウムメチラート、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、アルコラート物、炭酸塩;酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ナトリウム等の金属酸化物;テトライソプロピルチタネート、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(2-エチルヘキシルチオグリコレート)等の有機金属化合物;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、オクチル酸ナトリウム、オクチル酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム等の石鹸が挙げられる。これらの触媒の配合量は、特に限定されないが、各原料の合計質量に対して0.01~1質量%程度である。なお、触媒を使用しなくても反応は進むが、触媒を使用すると反応速度が上がるので、反応時間を短縮する効果が得られる。
【0066】
上記の各反応においては、得られるウレタンポリマーの特性(油性成分への可溶性)を阻害しない範囲で、その他の原料を用いてもよいが、得られるウレタンポリマーの各種油性成分への可溶性等の観点からは、炭素数5~40のアルキル基を有する1価のアルコール化合物および/または炭素数5~40のアルキレン基を有する2価のアルコール化合物と、炭素数4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドを必ず含む炭素数2~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドと、ジイソシアネート化合物との3種類からなる原料のみを反応させて製造することが好ましい。
【0067】
本発明の油類組成物は、本発明のウレタンポリマーと、炭化水素油、シリコーン油およびエステル油からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む油性成分と、を含む油類組成物である。このとき炭化水素油、シリコーン油、エステル油としては、例えば前述した炭化水素油、シリコーン油、エステル油を用いることができる。本発明によれば、粘性や使用前後の感触が調整された油類組成物を得ることができる。前記油類組成物の一実施態様では、油性成分は、少なくとも1種の炭化水素油を含む。別の実施態様では、油性成分は、少なくとも1種のシリコーン油を含む。また別の実施態様では、油性成分は、少なくとも1種のエステル油を含む。
【0068】
本発明の油類組成物において、ウレタンポリマーと油性成分との含有比率は特に限定されないが、例えば、ウレタンポリマーと油性成分の含有比率が質量比で0.1:99.9~95:5(質量比の合計は100)である。
【0069】
本発明の油類組成物が使用できる分野は特に限定されないが、例えば、塗料、粘接着剤、燃料、潤滑剤、食品、化粧品等に用いることができる。このとき、塗料、粘接着剤、燃料、潤滑剤、食品、化粧品には、それぞれ使用用途や目的に応じて公知の材料を含んでいてもよい。
【0070】
本発明の油類組成物において、ウレタンポリマーおよび油性成分の合計量は特に限定されないが、一般に油類組成物の全体量に対し80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらにより好ましくは99質量%以上、最も好ましくは、本発明の油類組成物はウレタンポリマーと油性成分からなる。
なお、本発明の油類組成物に含まれるウレタンポリマーおよび油性成分以外の成分は油水組成物が使用用途や目的により適宜選択される。
【0071】
本発明の化粧料組成物は、本発明の油類組成物を含有する化粧料組成物である。本発明によれば、粘性や使用前後の感触が調整された化粧料組成物を得ることができる。本発明の化粧料組成物において、油類組成物の含有量は特に限定されないが、例えば、化粧料組成物100質量部に対して本発明の油類組成物を0.01~90質量部含むことが好ましい。
【0072】
本発明の化粧料組成物は、使用目的に応じて保存時、使用時、使用後にて各種特性(溶解性、分散性、安定性、使用感、塗布性、浸透性、保湿性、安全性、意匠性、光学特性、芳香性、美白性等)を向上改質させるために化粧料組成物で一般に使用されるその他の添加剤を使用することができる。その他の添加剤としては、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、高級脂肪酸、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、高分子化合物、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸及びその誘導体、有機アミン、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、血行促進剤、消炎剤、賦活剤、美白剤、抗脂漏剤、抗炎症剤、各種抽出物及び植物海藻エキス等が挙げられ、これらの中から1種又は2種以上を任意に配合することができる。
【0073】
また、本発明の化粧料組成物の具体的な用途も特に限定されず、例えば、シャンプーやリンス等のトイレタリー製品も含まれ、例えば、化粧水、化粧液、乳液、クリーム、洗顔フォーム、クレンジングミルク、クレンジングローション、養毛剤、ヘアリキッド、セットローション、ヘアブリーチ、カラーリンス、パーマネントウェーブ液、口紅、パック、ファンデーション、オーデコロン、シャンプー、リンス、トリートメント、サンスクリーン、防臭剤、香水、クレンジングオイル及び化粧オイル等が挙げられる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例及び比較例により本発明の詳細を説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。なお、以下の実施例等において、%は特に記載がない限り質量基準である。
【0075】
<アルキレンオキサイド付加アルコール1の製造>
10リットルオートクレーブに、1-ドデカノール1000g及び触媒として水酸化カリウムを20.1g入れ、溶解させた後、100~140℃、1.0~6.0kg/cm2の環境下でブチレンオキサイド6191.6g(投入した1-ドデカノールの16倍の物質量にあたる)を徐々に添加し、付加反応が進行して反応器内の圧力が一定となるまで待って、1-ドデカノール1モルに対してブチレンオキサイドを合計16モル付加反応させた。最後に、触媒である水酸化カリウムを吸着剤処理し、アルキレンオキサイド付加アルコール1(AO付加アルコール1)を得た。
【0076】
<アルキレンオキサイド付加アルコール2~8の製造>
使用した原料及び/又はAO付加数を表1の通りに変更した以外は、アルキレンオキサイド付加アルコール1の製造と同様の方法で付加反応を行い、アルキレンオキサイド付加アルコール2~8を得た。なお、表1中のAO付加数は、アルコール化合物1モルに対するアルキレンオキサイドの付加モル数である。またアルキレンオキサイド付加アルコール7は、メタノールにプロピレンオキサイド9モルを付加後、さらにブチレンオキサイド7モルを付加させた化合物であり、アルキレンオキサイド付加アルコール8は、水分子にプロピレンオキサイドを重合させたプロピレングリコール重合体(ポリプロピレングリコール)からなる化合物である。
【0077】
【0078】
<ウレタンポリマー1の製造>
アルキレンオキサイド付加アルコール1とイソホロンジイソシアネートとを、アルキレンオキサイド付加アルコール1の水酸基とイソホロンジイソシアネートのイソシアネート基の当量比が0.5となるような条件下で反応させてウレタンポリマー1を製造した。具体的には、温度計、窒素導入管及び攪拌機を備えた容量2000mLの4つ口フラスコに、アルキレンオキサイド付加アルコール1を959.9g、イソホロンジイソシアネートを40.1g仕込み、系内を窒素置換しながら均一になるまで混合した後、100~120℃で3時間反応させてウレタンポリマー1を得た。ウレタンポリマー1の構造を一般式(1)に対応させて示した情報を表3に示す。
【0079】
(使用したジイソシアネート化合物)
IPDI:イソホロンジイソシアネート
H12MDI:ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
【0080】
<ウレタンポリマー2~14の製造>
原料及び配合比率を表2の通りにしたこと以外は、ウレタンポリマー1の製造方法と同様の方法により、アルキレンオキサイド付加アルコール化合物とジイソシアネート化合物を反応させ、ウレタンポリマー2~14を得た。なお、表2中の当量比とは、用いたAO付加アルコールの水酸基とジイソシアネートのイソシアネート基の当量比を表す。ウレタンポリマー2~14の構造を一般式(1)に対応させて示した情報を表3および表4に示す。なお用いたAO付加アルコールとジイソシアネート化合物の当量比を異なる値としたウレタンポリマー7と8、およびウレタンポリマー9と10は、一般式(1)におけるnの数の分布範囲は同等であったが、それぞれのn数の化合物の存在比率がわずかに異なっていた。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
<油性成分への可溶性評価1>
得られたウレタンポリマー1~14について、各種油性成分に対する可溶性を評価した。具体的には、表5に記載の通りにウレタンポリマー5gと油性成分20g(質量比20:80)とを100mlのガラスビンに添加することで油類組成物を調製し、室温にて振盪して均一化した後、25℃の恒温槽内に24時間静置した。静置後の各油類組成物の外観を目視で観察し、下記の評価基準に基づき可溶性を評価した。評価結果を表5に示す。
【0085】
(使用した油性成分)
油性成分1:水添ポリイソブテン(炭化水素油)
油性成分2:ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン(鎖状シリコーン油)
油性成分3:シクロペンタシロキサン(環状シリコーン油)
油性成分4:イソノナン酸イソノニル(低極性エステル油)
油性成分5:ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル(高極性エステル油)
油性成分6:トリエチルヘキサノイン(トリグリセリド)
【0086】
(可溶性の評価基準)
○:完全に溶解している(透明)
×:白濁が見られる
【0087】
【0088】
<油性成分への可溶性評価2>
油性成分への可溶性評価1において、ウレタンポリマーと油性成分の配合条件を表6の通りに変更した以外は同様の方法により、油類組成物を調製し、油性成分への可溶性を評価した。評価結果を表6に示す。
【0089】
【0090】
<油類組成物の諸特性評価>
本発明のウレタンポリマー5gと油性成分20g(質量比20:80)とからなる油類組成物および、比較例としてそれぞれ油性成分1~6のみからなる油類組成物を表7の記載の通りにそれぞれ調製し、各油類組成物の諸特性評価として触感および艶性について評価を行った。具体的には、調製した各油類組成物を指ですくった際の触感と、各油類組成物を肌に塗布した後の肌の艶感(光沢)を、それぞれ下記の評価基準に基づき評価した。評価結果を表7に示す。
【0091】
(触感の評価基準)
○:滑らかな触感を有する
×:滑らかさは感じられなかった
(艶性の評価基準)
○:肌の艶感が顕著にある
×:肌の艶感が全くない
【0092】
【0093】
上記の結果からわかるように、本発明のウレタンポリマーは、炭化水素油、シリコーン油、エステル油といった様々な種類の油性成分に可溶であり、使用前後の感触等の諸特性を調整できることが確認された。よって本発明によれば、炭化水素油、シリコーン油、エステル油といった様々な種類の油性成分に可溶であり、よって塗料、粘接着剤、燃料、潤滑剤、食品、化粧品等の油性成分を含む各種製品の粘性や使用前後の感触等の諸特性を調整又は改善できるウレタンポリマー、及び粘性や使用前後の感触が調整又は改善された油類組成物を得ることができる。