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特許7436438半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20240214BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20240214BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/318 B
C23C16/42
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021159296
(22)【出願日】2021-09-29
(65)【公開番号】P2023049515
(43)【公開日】2023-04-10
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 遼
(72)【発明者】
【氏名】石橋 清久
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-183223(JP,A)
【文献】特開2014-030041(JP,A)
【文献】特開2015-149493(JP,A)
【文献】特開2011-023576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/318
C23C 16/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板に対してシリコンを含み、且つSi-Si結合を含まない第1ガスを供給して第1層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してシリコンを含み、且つSi-Si結合を含む第2ガスを供給して第2層を形成する工程と、
(c)前記基板に対して所定の元素を含む第3ガスを供給する工程と、
(d)前記基板に対して窒素を含む第4ガスを供給して前記第1層および前記第2層を改質する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上にシリコン、前記所定の元素、および窒素を含む膜を形成する工程を有し、
前記所定の元素として、前記膜中に欠陥を形成することが可能な元素を用い、
前記サイクルでは、(a)~(d)の各工程を、(a)(c)(b)(d)、(c)(a)(b)(d)、または(c)(a)(c)(b)(d)のいずれかの順に行う基板処理方法。
【請求項2】
(a)の実施期間の少なくとも一部と、(c)の実施期間の少なくとも一部と、を重複させる、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記サイクルでは、(a)~(d)の各工程を、(a)(c)(b)(d)の順に行う、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記サイクルでは、(a)~(d)の各工程を、(c)(a)(b)(d)の順に行う、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記サイクルでは、(a)~(d)の各工程を、(c)(a)(c)(b)(d)の順に行う、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記所定の元素として、炭素またはホウ素のうち少なくともいずれかを用いる、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記第3ガスとして、炭化水素系ガス、アミン系ガス、塩化ホウ素系ガス、および、水素化ホウ素系ガスからなる群より選択される少なくともいずれかのガスを用いる、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項8】
(a)基板に対してシリコンを含む第1ガスを供給して第1層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してシリコンを含み、前記第1ガスとは分子構造の異なる第2ガスを供給して第2層を形成する工程と、
(c)前記基板に対して所定の元素を含む第3ガスを供給する工程と、
(d)前記基板に対して窒素を含む第4ガスを供給して前記第1層および前記第2層を改質する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上にシリコン、前記所定の元素、および窒素を含む、不揮発性メモリセルのチャージトラップ膜を形成する工程を有し、
前記所定の元素として、前記膜中に欠陥を形成することが可能な元素を用い、
前記サイクルでは、(a)~(d)の各工程を、(a)(c)(b)(d)、(c)(a)(b)(d)、または(c)(a)(c)(b)(d)のいずれかの順に行う基板処理方法。
【請求項9】
(c)、前記基板に対して炭素を含む第3ガスを供給する期間と、前記基板に対してホウ素を含む第ガスを供給する期間とを含み、
炭素を含む第3ガスを供給する期間の少なくとも一部と、ホウ素を含む第3ガスを供給する期間の少なくとも一部と、を重複させる、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
(c)、前記基板に対して炭素を含む第3ガスを供給する期間と、前記基板に対してホウ素を含む第ガスを供給する期間とを含み、
炭素を含む第3ガスまたはホウ素を含む第3ガスのいずれか一方の第3ガスを供給する期間が終了した直後に他の一方の第3ガスを供給する期間を開始させる、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
(a)基板に対してシリコンを含む第1ガスを供給して第1層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してシリコンを含み、前記第1ガスとは分子構造の異なる第2ガスを供給して第2層を形成する工程と、
(c)前記基板に対して所定の元素を含む第3ガスを供給する工程と、
(d)前記基板に対して窒素を含む第4ガスを供給して前記第1層および前記第2層を改質する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上にシリコン、前記所定の元素、および窒素を含む膜を形成する工程を有し、
前記所定の元素として、前記膜中に欠陥を形成することが可能な元素を用い、
(a)における前記基板の温度を、前記基板が存在する空間に前記第1ガスが単独で存在した場合に前記第1ガスが熱分解する温度以下の温度、または、前記第1ガスが熱分解する温度よりも低い温度とし、
(b)における前記基板の温度を、前記基板が存在する空間に前記第2ガスが単独で存在した場合に前記第2ガスが熱分解する温度以上の温度、または、前記第2ガスが熱分解する温度よりも高い温度と
前記サイクルでは、(a)~(d)の各工程を、(a)(c)(b)(d)、(c)(a)(b)(d)、または(c)(a)(c)(b)(d)のいずれかの順に行う基板処理方法。
【請求項12】
(a)基板に対してシリコンを含み、且つSi-Si結合を含まない第1ガスを供給して第1層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してシリコンを含み、且つSi-Si結合を含む第2ガスを供給して第2層を形成する工程と、
(c)前記基板に対して所定の元素を含む第3ガスを供給する工程と、
(d)前記基板に対して窒素を含む第4ガスを供給して前記第1層および前記第2層を改質する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上にシリコン、前記所定の元素、および窒素を含む膜を形成する工程を有し、
前記所定の元素として、前記膜中に欠陥を形成することが可能な元素を用い、
前記サイクルでは、(a)~(d)の各工程を、(a)(c)(b)(d)、(c)(a)(b)(d)、または(c)(a)(c)(b)(d)のいずれかの順に行う半導体装置の製造方法。
【請求項13】
(a)基板に対してシリコンを含む第1ガスを供給して第1層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してシリコンを含み、前記第1ガスとは分子構造の異なる第2ガスを供給して第2層を形成する工程と、
(c)前記基板に対して所定の元素を含む第3ガスを供給する工程と、
(d)前記基板に対して窒素を含む第4ガスを供給して前記第1層および前記第2層を改質する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上にシリコン、前記所定の元素、および窒素を含む、不揮発性メモリセルのチャージトラップ膜を形成する工程を有し、
前記所定の元素として、前記膜中に欠陥を形成することが可能な元素を用い、
前記サイクルでは、(a)~(d)の各工程を、(a)(c)(b)(d)、(c)(a)(b)(d)、または(c)(a)(c)(b)(d)のいずれかの順に行う半導体装置の製造方法。
【請求項14】
(a)基板に対してシリコンを含む第1ガスを供給して第1層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してシリコンを含み、前記第1ガスとは分子構造の異なる第2ガスを供給して第2層を形成する工程と、
(c)前記基板に対して所定の元素を含む第3ガスを供給する工程と、
(d)前記基板に対して窒素を含む第4ガスを供給して前記第1層および前記第2層を改質する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上にシリコン、前記所定の元素、および窒素を含む膜を形成する工程を有し、
前記所定の元素として、前記膜中に欠陥を形成することが可能な元素を用い、
(a)における前記基板の温度を、前記基板が存在する空間に前記第1ガスが単独で存在した場合に前記第1ガスが熱分解する温度以下の温度、または、前記第1ガスが熱分解する温度よりも低い温度とし、
(b)における前記基板の温度を、前記基板が存在する空間に前記第2ガスが単独で存在した場合に前記第2ガスが熱分解する温度以上の温度、または、前記第2ガスが熱分解する温度よりも高い温度とし、
前記サイクルでは、(a)~(d)の各工程を、(a)(c)(b)(d)、(c)(a)(b)(d)、または(c)(a)(c)(b)(d)のいずれかの順に行う半導体装置の製造方法。
【請求項15】
基板に対して、シリコンを含み、且つSi-Si結合を含まない第1ガスを供給する第1ガス供給系と、
前記基板に対して、シリコンを含み、且つSi-Si結合を含む第2ガスを供給する第2ガス供給系と、
前記基板に対して、前記基板上に形成される膜中に欠陥を形成することが可能な所定の元素を含む第3ガスを供給する第3ガス供給系と、
前記基板に対して、窒素を含む第4ガスを供給する第4ガス供給系と、
(a)前記基板に対して前記第1ガスを供給して第1層を形成する処理と、(b)前記基板に対して前記第2ガスを供給して第2層を形成する処理と、(c)前記基板に対して前記第3ガスを供給する工程と、(d)前記基板に対して前記第4ガスを供給して前記第1層および前記第2層を改質する工程と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記膜として、前記基板上にシリコン、前記所定の元素、および窒素を含む膜を形成する処理を行わせ、前記サイクルでは、(a)~(d)の各工程を、(a)(c)(b)(d)、(c)(a)(b)(d)、または(c)(a)(c)(b)(d)のいずれかの順に行うように、前記第1ガス供給系、前記第2ガス供給系、前記第3ガス供給系、および前記第4ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項16】
基板に対して、シリコンを含む第1ガスを供給する第1ガス供給系と、
前記基板に対して、シリコンを含み前記第1ガスとは分子構造の異なる第2ガスを供給する第2ガス供給系と、
前記基板に対して、前記基板上に形成される膜中に欠陥を形成することが可能な所定の元素を含む第3ガスを供給する第3ガス供給系と、
前記基板に対して、窒素を含む第4ガスを供給する第4ガス供給系と、
(a)前記基板に対して前記第1ガスを供給して第1層を形成する処理と、(b)前記基板に対して前記第2ガスを供給して第2層を形成する処理と、(c)前記基板に対して前記第3ガスを供給する工程と、(d)前記基板に対して前記第4ガスを供給して前記第1層および前記第2層を改質する工程と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記膜として、前記基板上にシリコン、前記所定の元素、および窒素を含む、不揮発性メモリセルのチャージトラップ膜を形成する処理を行わせ、前記サイクルでは、(a)~(d)の各工程を、(a)(c)(b)(d)、(c)(a)(b)(d)、または(c)(a)(c)(b)(d)のいずれかの順に行うように、前記第1ガス供給系、前記第2ガス供給系、前記第3ガス供給系、および前記第4ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項17】
基板に対して、シリコンを含む第1ガスを供給する第1ガス供給系と、
前記基板に対して、シリコンを含み前記第1ガスとは分子構造の異なる第2ガスを供給する第2ガス供給系と、
前記基板に対して、前記基板上に形成される膜中に欠陥を形成することが可能な所定の元素を含む第3ガスを供給する第3ガス供給系と、
前記基板に対して、窒素を含む第4ガスを供給する第4ガス供給系と、
(a)前記基板に対して前記第1ガスを供給して第1層を形成する処理と、(b)前記基板に対して前記第2ガスを供給して第2層を形成する処理と、(c)前記基板に対して前記第3ガスを供給する工程と、(d)前記基板に対して前記第4ガスを供給して前記第1層および前記第2層を改質する工程と、を含むサイクルを所定回数行うことで、前記膜として、前記基板上にシリコン、前記所定の元素、および窒素を含む膜を形成する処理を行わせ、前記サイクルでは、(a)~(d)の各工程を、(a)(c)(b)(d)、(c)(a)(b)(d)、または(c)(a)(c)(b)(d)のいずれかの順に行うように、前記第1ガス供給系、前記第2ガス供給系、前記第3ガス供給系、および前記第4ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有し、
(a)における前記基板の温度は、前記基板が存在する空間に前記第1ガスが単独で存在した場合に前記第1ガスが熱分解する温度以下の温度、または、前記第1ガスが熱分解する温度よりも低い温度とし、
(b)における前記基板の温度は、前記基板が存在する空間に前記第2ガスが単独で存在した場合に前記第2ガスが熱分解する温度以上の温度、または、前記第2ガスが熱分解する温度よりも高い温度とする基板処理装置。
【請求項18】
a)基板に対してシリコンを含み、且つSi-Si結合を含まない第1ガスを供給して第1層を形成する手順と、
(b)前記基板に対してシリコンを含み、且つSi-Si結合を含む第2ガスを供給して第2層を形成する手順と、
(c)前記基板に対して、前記基板上に形成される膜中に欠陥を形成することが可能な所定の元素を含む第3ガスを供給する手順と、
(d)前記基板に対して窒素を含む第4ガスを供給して前記第1層および前記第2層を改質する手順と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記膜として、前記基板上にシリコン、前記所定の元素、および窒素を含む膜を形成する手順と、
前記サイクルにおいて、(a)~(d)の各工程を、(a)(c)(b)(d)、(c)(a)(b)(d)、または(c)(a)(c)(b)(d)のいずれかの順に行う手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項19】
(a)基板に対してシリコンを含む第1ガスを供給して第1層を形成する手順と、
(b)前記基板に対してシリコンを含み前記第1ガスとは分子構造の異なる第2ガスを供給して第2層を形成する手順と、
(c)前記基板に対して、前記基板上に形成される膜中に欠陥を形成することが可能な所定の元素を含む第3ガスを供給する手順と、
(d)前記基板に対して窒素を含む第4ガスを供給して前記第1層および前記第2層を改質する手順と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記膜として、前記基板上にシリコン、前記所定の元素、および窒素を含む不揮発性メモリセルのチャージトラップ膜を形成する手順と、
前記サイクルにおいて、(a)~(d)の各工程を、(a)(c)(b)(d)、(c)(a)(b)(d)、または(c)(a)(c)(b)(d)のいずれかの順に行う手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項20】
(a)基板に対してシリコンを含む第1ガスを供給して第1層を形成する手順と、
(b)前記基板に対してシリコンを含み前記第1ガスとは分子構造の異なる第2ガスを供給して第2層を形成する手順と、
(c)前記基板に対して、前記基板上に形成される膜中に欠陥を形成することが可能な所定の元素を含む第3ガスを供給する手順と、
(d)前記基板に対して窒素を含む第4ガスを供給して前記第1層および前記第2層を改質する手順と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記膜として、前記基板上にシリコン、前記所定の元素、および窒素を含む膜を形成する手順と、
前記サイクルにおいて、(a)~(d)の各工程を、(a)(c)(b)(d)、(c)(a)(b)(d)、または(c)(a)(c)(b)(d)のいずれかの順に行う手順と、
を有し、
(a)における前記基板の温度は、前記基板が存在する空間に前記第1ガスが単独で存在した場合に前記第1ガスが熱分解する温度以下の温度、または、前記第1ガスが熱分解する温度よりも低い温度とし、
(b)における前記基板の温度は、前記基板が存在する空間に前記第2ガスが単独で存在した場合に前記第2ガスが熱分解する温度以上の温度、または、前記第2ガスが熱分解する温度よりも高い温度とする手順を、コンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成する処理が行われることがある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2021/053756号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、基板上に形成される膜の特性を向上させることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
(a)基板に対してシリコンを含む第1ガスを供給して第1層を形成する工程と、
(b)基板に対してシリコンを含み前記第1ガスとは分子構造の異なる第2ガスを供給して第2層を形成する工程と、
(c)基板に対して所定の元素を含む第3ガスを供給する工程と、
(d)基板に対して窒素を含む第4ガスを供給して前記第1層および前記第2層を改質する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上にシリコン、前記所定の元素、および窒素を含む膜を形成する工程を有し、
前記所定の元素として、前記膜中に欠陥を形成することが可能な元素を用い、
前記サイクルでは、(a)~(d)の各工程を、(a)(c)(b)(d)、(c)(a)(b)(d)、または(c)(a)(c)(b)(d)のいずれかの順に行う技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板上に形成される膜の特性を向上させることが可能な技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示す図である。
図2図2は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を図1のA-A線断面図で示す図である。
図3図3は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラ121の概略構成図であり、コントローラ121の制御系をブロック図で示す図である。
図4図4は、本開示の一態様における処理シーケンスを示す図である。
図5図5は、本開示の変形例1における処理シーケンスを示す図である。
図6図6は、本開示の変形例3における処理シーケンスを示す図である。
図7図7は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置で形成された膜を示す図である。
図8図8は、実施例における測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、主に、図1図4を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は温度調整器(加熱部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0011】
処理室201内には、第1~第3供給部としてのノズル249a~249cが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a~249cを、それぞれ第1~第3ノズルとも称する。ノズル249a~249cは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料により構成されている。ノズル249a~249cには、ガス供給管232a~232cがそれぞれ接続されている。ノズル249a~249cはそれぞれ異なるノズルであり、ノズル249a,249cのそれぞれは、ノズル249bに隣接して設けられている。
【0012】
ガス供給管232a~232cには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a~241cおよび開閉弁であるバルブ243a~243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232d,232eがそれぞれ接続されている。ガス供給管232b,232cのバルブ243b,243cよりも下流側には、ガス供給管232f,232gがそれぞれ接続されている。ガス供給管232d~232gには、ガス流の上流側から順に、MFC241d~241gおよびバルブ243d~243gがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a~232gは、例えば,SUS等の金属材料により構成されている。
【0013】
図2に示すように、ノズル249a~249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a~249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。平面視において、ノズル249bは、処理室201内に搬入されるウエハ200の中心を挟んで後述する排気口231aと一直線上に対向するように配置されている。ノズル249a,249cは、ノズル249bと排気口231aの中心とを通る直線Lを、反応管203の内壁(ウエハ200の外周部)に沿って両側から挟み込むように配置されている。直線Lは、ノズル249bとウエハ200の中心とを通る直線でもある。すなわち、ノズル249cは、直線Lを挟んでノズル249aと反対側に設けられているということもできる。ノズル249a,249cは、直線Lを対称軸として線対称に配置されている。ノズル249a~249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a~250cがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a~250cは、それぞれが、平面視において排気口231aと対向(対面)するように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a~250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0014】
ガス供給管232aからは、シリコン(Si)を含む第1ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。第1ガスは、原料ガスとして用いられる。
【0015】
ガス供給管232bからは、所定の元素を含む第3ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。なお、所定の元素とは、後述する成膜処理を行うことでウエハ200上に形成される膜中に欠陥を形成することが可能な元素のことである。所定の元素として、炭素(C)またはホウ素(B)のうち少なくともいずれかを用いることができる。
【0016】
ガス供給管232cからは、窒素(N)を含む第4ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給される。第4ガスは、反応ガスとして用いられる。
【0017】
ガス供給管232dからは、Siを含む第2ガスが、MFC241d、バルブ243d、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。なお、第2ガスは、第1ガスとは分子構造の異なるガスであり、原料ガスとして用いられる。
【0018】
ガス供給管232e~232gからは、不活性ガスが、それぞれMFC241e~241g、バルブ243e~243g、ガス供給管232a~232c、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0019】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、第1ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、第3ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、第4ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232d、MFC241d、バルブ243dにより、第2ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232e~232g、MFC241e~241g、バルブ243e~243gにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0020】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a~243gやMFC241a~241g等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a~232gのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232h内への各種物質(各種ガス)の供給動作、すなわち、バルブ243a~243gの開閉動作やMFC241a~241gによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232g等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0021】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。図2に示すように、排気口231aは、平面視において、ウエハ200を挟んでノズル249a~249c(ガス供給孔250a~250c)と対向(対面)する位置に設けられている。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができる。APCバルブ244は、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0022】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。搬送装置は、処理室201内へウエハ200を提供する提供装置として機能する。
【0023】
マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0024】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0025】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0026】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。また、コントローラ121には、外部記憶装置123を接続することが可能となっている。
【0027】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121によって、基板処理装置に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0028】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241g、バルブ243a~243g、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0029】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241gによる各種物質(各種ガス)の流量調整動作、バルブ243a~243gの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0030】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやSSD等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0031】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200に対し処理を行うシーケンス例、すなわち、ウエハ200上に膜を形成する成膜シーケンス例について、主に、図4を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0032】
本態様における成膜シーケンスは、
ウエハ200に対してSiを含む第1ガスを供給して第1層を形成するステップaと、
ウエハ200に対してSiを含み第1ガスとは分子構造の異なる第2ガスを供給して第2層を形成するステップbと、
ウエハ200に対して所定の元素として例えばCを含む第3ガスを供給するステップcと、
ウエハ200に対してNを含む第4ガスを供給して第1層および第2層を改質するステップdと、
を含むサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことで、ウエハ200上にSi、C、およびNを含む膜として、シリコン炭窒化膜(SiCN膜、或いは、CがドープされたSiN膜)を形成する工程を行う。
【0033】
なお、上述のサイクルでは、ステップa~dの各工程を、ステップa,c,b,d、ステップc,a,b,d、またはステップc,a,c,b,dのいずれかの順に非同時に行う。なお、図4では、ステップa~dの各工程を、a,c,b,dの順に非同時に行う例を示している。また、図4では、ステップa,b,c,dの実施期間を、それぞれa,b,c,dと表している。
【0034】
以下の説明では、膜として、SiCN膜により構成されるチャージトラップ(電荷捕獲)膜を形成する例について説明する。
【0035】
本明細書では、上述の処理シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例や他の態様等の説明においても、同様の表記を用いる。
【0036】
(第1ガス→第3ガス→第2ガス→第4ガス)×n⇒ SiCN
【0037】
本明細書において用いる「ウエハ」という用語は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において用いる「ウエハの表面」という言葉は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0038】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。このようにして、ウエハ200は、処理室201内に提供されることとなる。
【0039】
(圧力調整および温度調整)
ボートロードが終了した後、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0040】
(成膜処理)
その後、以下のステップa~dをa,c,b,dの順に実行する。
【0041】
[ステップa]
ステップaでは、処理室201内のウエハ200に対して第1ガスを供給する。
【0042】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ第1ガスを流す。第1ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して第1ガスが供給される(第1ガス供給)。このとき、バルブ243e~243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。なお、以下に示すいくつかの方法については不活性ガスの供給を不実施とするようにしてもよい。
【0043】
本ステップにて第1ガスを供給する際における処理条件としては、
処理温度:450~750℃、好ましくは650~700℃
処理圧力:20~133Pa、好ましくは40~70Pa
第1ガス供給流量:0.01~2slm、好ましくは0.1~1slm
第1ガス供給時間:6~60秒、好ましくは10~30秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
が例示される。圧力を133Pa以下とすることにより、温度等他の要因も関係するがガスの分解を防ぐことが可能となる。
【0044】
なお、本明細書における「450~750℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「450~750℃」とは「450℃以上750℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、供給流量に0slmが含まれる場合、0slmとは、そのガスを供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0045】
上述の処理条件下でウエハ200に対して、第1ガスとして、例えば、クロロシラン系ガスを供給することにより、下地としてのウエハ200の最表面上に、第1層(Si含有層)が形成される。第1層は、ウエハ200の最表面への、クロロシラン系ガスの分子の物理吸着や化学吸着、クロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の物理吸着や化学吸着等により形成される。第1層は、クロロシラン系ガスの分子やクロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の吸着層(物理吸着層や化学吸着層)であってもよい。
【0046】
処理温度が450℃未満となると、ウエハ200上にSiが吸着しにくくなり、第1層の形成が困難となる場合がある。処理温度を450℃以上にすることにより、ウエハ200上に第1層を形成することが可能となる。処理温度を650℃以上にすることで、ウエハ200上に第1層をより十分に形成することが可能となる。
【0047】
処理温度が750℃を超えると、第1ガスとしての、例えば、クロロシラン系ガスが熱分解し、ウエハ200上にSiが多重に堆積することにより、1原子層未満の厚さの略均一な厚さの第1層を形成することが難しくなる場合がある。処理温度を750℃以下とすることにより、1原子層未満の厚さの略均一な厚さの第1層を形成することができ、第1層のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させることができる。処理温度を700℃以下とすることにより、さらに、第1層のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させることができる。ここで、1原子層未満の厚さの層とは、不連続に形成される原子層のことを意味しており、1原子層の厚さの層とは、連続的に形成される原子層のことを意味している。また、1原子層未満の厚さの層が略均一であるということは、ウエハ200の表面上に略均一な密度で原子が吸着していることを意味している。
【0048】
本ステップでは、処理温度を、処理室201内に第1ガスとして、例えば、クロロシラン系ガスが単独で存在した場合に、第1ガスが熱分解(気相分解)する温度以下の温度、または、第1ガスが熱分解する温度よりも低い温度(450~750℃)としている。これにより、ウエハ200の最表面上へのクロロシラン系ガスの分子やクロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の物理吸着や化学吸着が支配的に(優先的に)生じ、クロロシラン系ガスの熱分解によるSiの堆積は僅かに生じるか、あるいは、殆ど生じないこととなる。すなわち、上述の処理条件下では、第1層は、クロロシラン系ガスの分子やクロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の吸着層(物理吸着層や化学吸着層)を圧倒的に多く含むこととなり、Clを含むSiの堆積層を僅かに含むか、もしくは、殆ど含まないこととなる。
【0049】
第1層が形成された後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への第1ガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243e~243gを開いたままとして、不活性ガスの処理室201内への供給を維持する。ノズル249a~249cのそれぞれを介して供給される不活性ガスは、パージガスとして作用し、これにより、処理室201内がパージされる(パージ)。
【0050】
本ステップにてパージを行う際における処理条件としては、
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0.5~20slm
不活性ガス供給時間:1~60秒、好ましくは2~20秒
が例示される。他の処理条件は、本ステップにて第1ガスを供給する際における処理条件と同様にする。
【0051】
第1ガスとしては、ウエハ200上に形成される膜を構成する主元素としてのシリコン(Si)を含むシラン系ガスを用いることができる。シラン系ガスとしては、例えば、Siおよびハロゲンを含むガス、すなわち、ハロシラン系ガスを用いることができる。ハロゲンには、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等が含まれる。ハロシラン系ガスとしては、例えば、SiおよびClを含む上述のクロロシラン系ガスを用いることができる。
【0052】
第1ガスとしては、テトラクロロシラン(SiCl、略称:STC)ガス、ジクロロシラン(SiHCl、略称:DCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl、略称:TCS)ガス等のクロロシラン系ガスを用いることができる。第1ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0053】
これらのガスのうち、第1ガスとして、Si-Si結合を含まないシラン系ガスを用いることが好ましい。
【0054】
不活性ガスとしては、窒素(N)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0055】
[ステップc]
ステップcでは、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成された第1層に対して第3ガスを供給する。
【0056】
具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へ第3ガスを流す。第3ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して第3ガスが供給される(第3ガス供給)。このとき、バルブ243e~243gを開いたままとして、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。
【0057】
本ステップにて第3ガスを供給する際における処理条件としては、
処理圧力:10~50Pa、好ましくは15~30Pa
第3ガス供給流量:0.05~6slm、好ましくは0.5~2slm
第3ガス供給時間:2~60秒、好ましくは4~30秒
が例示される。他の処理条件は、ステップaにて第1ガスを供給する際における処理条件と同様にする。
【0058】
上述の処理条件下でウエハ200上に形成された第1層に対し、所定の元素として、例えば、Cを含む第3ガスを供給することにより、ウエハ200上に形成された第1層上にCを吸着させることができる。第1層上にCを吸着させることにより、サイクルを行うことで形成される第1層が窒化されてなる層中に、ひいては、最終的にウエハ200上に形成されるSiCN膜中に、電荷を捕獲(トラップ)する欠陥(結晶欠陥)を形成(導入)することができる。
【0059】
第1層上にCを吸着させてC含有層を形成した後、バルブ243bを閉じ、処理室201内への第3ガスの供給を停止する。そして、上述のパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する(パージ)。なお、本ステップにおいてパージを行う際の処理温度は、第3ガスを供給する際における処理温度と同様の温度とすることが好ましい。
【0060】
第3ガスとしては、例えば、C含有ガスを用いることができる。C含有ガスとしては、例えば、プロピレン(C)ガス、エチレン(C)ガス、アセチレン(C)ガス等の上述の炭化水素系ガスを用いることができる。第3ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0061】
第3ガスとしては、炭化水素系ガスの他、例えば、トリエチルアミン((CN、略称:TEA)ガス、ジエチルアミン((CNH、略称:DEA)ガス等のアミン系ガスを用いることができる。第3ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0062】
第3ガスとしては、これらの他、例えば、トリメチルシラン(SiH(CH、略称:TMS)ガス、ジメチルシラン(SiH(CH、略称:DMS)ガス、トリエチルシラン(SiH(C、略称:TES)ガス、ジエチルシラン(SiH(C、略称:DES)ガス等のアルキルシラン系ガスを用いることができる。第3ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0063】
[ステップb]
ステップbでは、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたCが吸着した第1層(又は、Cを含む第1層、又は表面にC含有層が形成された第1層とも言う)に対して第2ガスを供給する。
【0064】
具体的には、バルブ243dを開き、ガス供給管232a内へ第2ガスを流す。第2ガスは、MFC241dにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して第2ガスが供給される(第2ガス供給)。このとき、バルブ243e~243gを開いたままとして、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。
【0065】
本ステップにて第2ガスを供給する際における処理条件としては、
処理圧力:20~133Pa、好ましくは40~70Pa
第2ガス供給流量:0.01~1.5slm、好ましくは0.1~0.8slm
第2ガス供給時間:6~30秒、好ましくは10~20秒
が例示される。他の処理条件は、ステップaにて第1ガスを供給する際における処理条件と同様にする。
【0066】
上述の処理条件下でウエハ200に対して、第2ガスとして、例えば、第1ガスとは分子構造の異なるクロロシラン系ガスを供給することにより、主に、Cが吸着した第1層上に、第2層として、Si含有層が形成される。第2層は、主に、Cが吸着した第1層上への、クロロシラン系ガスの熱分解によるSiの堆積等により形成される。
【0067】
より具体的には、本ステップでは、処理温度を、処理室201内に第2ガスとして、例えば、クロロシラン系ガスが単独で存在した場合に、第2ガスが熱分解(気相分解)する温度以上の温度、または、第2ガスが熱分解する温度よりも高い温度(450~750℃)としている。これにより、第2ガスの分子構造の大部分が熱分解され、第2層として、Cが吸着した第1層上に、Siが多重に堆積したSi含有層が形成される。
【0068】
処理温度が450℃未満となると、第2ガスが熱分解しにくくなり、第2層の形成が困難となる場合がある。処理温度を450℃以上にすることにより、第2ガスが熱分解され、Cが吸着した第1層上に第2層として、例えば、Siが多重に堆積した層を形成することができる。これにより、SiCN膜の成膜レートを高くすることができる。処理温度を650℃以上にすることにより、第2ガスがより十分に熱分解され、例えば、Siが多重に堆積した層をより十分に形成することができる。これにより、SiCN膜の成膜レートをより十分に高くすることができる。
【0069】
処理温度が750℃を超えると、第2ガスの熱分解が過剰に進行し、第2層の形成が困難となる場合がある。処理温度を750℃以下とすることにより、第2ガスの過剰な熱分解を抑制し、第2層を形成することが可能となる。処理温度を700℃以下とすることにより、第2ガスの過剰な熱分解をより十分に抑制し、より十分に第2層を形成することが可能となる。
【0070】
上述したように、層中の欠陥は、第1層上にCが吸着することにより形成される。それ故、後述するが、最終的にSiCN膜が形成されたとき、このCが吸着した第1層部分に多くの欠陥が形成されることとなる。
【0071】
ウエハ200上にステップa~cによって形成された層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップdでの改質の作用がSi含有層の全体に届かなくなる場合がある。したがって、第2層の厚さは、ステップ1及び2によって形成された層の厚さと合わせて数原子層程度となるようにするのが好ましい。
【0072】
また、本態様では、ステップa~cにおける処理温度を実質的に同一温度としている。これにより、ステップa~cの間で、ウエハ200の温度変更、すなわち、処理室201内の温度変更を行うことが不要となるので、ステップ間でウエハ200の温度を安定させるまでの待機時間が不要となり、成膜処理の生産性を向上させることができる。
【0073】
また、ステップa~cにおける処理温度を実質的に同一温度にする場合は、ステップaにおいては第1ガスの熱分解が実質的に起こらず(すなわち抑制され)、ステップbにおいては第2ガスの熱分解が起こる(すなわち促進される)ように、例えば、ステップaでは、第1ガスとして、第2ガスが有する熱分解温度よりも高い熱分解温度を有するガスを用いることが好ましい。
【0074】
ウエハ200上に第2層を形成した後、バルブ243dを閉じ、処理室201内への第2ガスの供給を停止する。そして、上述のパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する(パージ)。なお、本ステップにおいてパージを行う際の処理温度は、第2ガスを供給する際における処理温度と同様の温度とすることが好ましい。
【0075】
第2ガスとしては、例えば、ウエハ200上に形成される膜を構成する主元素としてのSiを含み第1ガスとは分子構造の異なるシラン系ガスを用いることができる。
【0076】
第2ガスとしては、ヘキサクロロジシラン(SiCl、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(SiCl、略称:OCTS)ガス等の無機系のクロロシラン原料ガスを用いることができる。これらガスは、1分子中に少なくとも2つのSiを含み、Si-Si結合を有する原料ガスであるといえる。これらのガスの他に、テトラクロロシラン(SiCl、略称:STC)ガス等のクロロシラン系ガス、モノシラン(SiH、略称:MS)ガス等の水素化ケイ素系ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CHH、略称:3DMAS)ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(SiH[N(C、略称:BDEAS)ガス等のアミノシラン系ガスを用いることができる。第2ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。第2ガスとして、ノンハロゲンガスを用いることにより、ウエハ200上に最終的に形成されるSiCN膜へのハロゲンの混入を回避することが可能となる。
【0077】
これらのガスのうち、第2ガスとして、上述したガス、更に、これら以外のSi-Si結合を含むシラン系ガスを用いることが好ましい。
【0078】
[ステップd]
ステップdでは、処理室201内のウエハ200に対して第4ガスを供給する。
【0079】
具体的には、バルブ243cを開き、ガス供給管232c内へ第4ガスを流す。第3ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して第4ガスが供給される(第4ガス供給)。このとき、バルブ243e~243gを開いたままとして、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。
【0080】
本ステップにて第4ガスを供給する際における処理条件としては、
処理圧力:133~1330Pa、好ましくは650~950Pa
第4ガス供給流量:1.0~9slm、好ましくは3.0~7slm
第4ガス供給時間:10~60秒、好ましくは20~50秒
が例示される。他の処理条件は、ステップaにて第1ガスを供給する際における処理条件と同様にする。
【0081】
上述の処理条件下でウエハ200に対して、窒素(N)を含む第4ガスを供給することにより、第1層の少なくとも一部、および、第2層の少なくとも一部を、それぞれ改質(窒化)することができる。この結果、ウエハ200上には、Cを含む第1層が窒化されてなる層と、Cを含まないか第1層よりも低い濃度で含む第2層が窒化されてなる層と、が積層されてなる層、すなわち、Si、CおよびNを含むシリコン炭窒化層(SiCN層)が形成される。
【0082】
SiCN層が形成された後、バルブ243cを閉じ、処理室201内への第3ガスの供給を停止する。そして、上述のパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する(パージ)。なお、本ステップにおいてパージを行う際の処理温度は、第4ガスを供給する際における処理温度と同様の温度とすることが好ましい。
【0083】
第4ガスとしては、例えば、窒化ガス(窒化剤)である窒素(N)及び水素(H)含有ガスを用いることができる。N及びH含有ガスは、N含有ガスでもあり、H含有ガスでもある。
【0084】
第4ガスとしては、例えば、アンモニア(NH)ガス、ジアゼン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、Nガス等の窒化水素系ガスを用いることができる。第4ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0085】
第4ガスとしては、これらの他、例えば、窒素(N)、炭素(C)及び水素(H)含有ガスを用いることもできる。N,C及びH含有ガスとしては、例えば、アミン系ガスや有機ヒドラジン系ガスを用いることができる。N,C及びH含有ガスは、N含有ガスでもあり、C含有ガスでもあり、H含有ガスでもあり、N及びC含有ガスでもある。
【0086】
第4ガスとしては、例えば、モノエチルアミン(CNH、略称:MEA)ガス、ジエチルアミン((CNH、略称:DEA)ガス、トリエチルアミン((CN、略称:TEA)ガス等のエチルアミン系ガスや、モノメチルアミン(CHNH、略称:MMA)ガス、ジメチルアミン((CHNH、略称:DMA)ガス、トリメチルアミン((CHN、略称:TMA)ガス等のメチルアミン系ガスや、モノメチルヒドラジン((CH)HN、略称:MMH)ガス、ジメチルヒドラジン((CH、略称:DMH)ガス、トリメチルヒドラジン((CH(CH)H、略称:TMH)ガス等の有機ヒドラジン系ガス等を用いることができる。第4ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0087】
[所定回数実施]
上述したステップa~dを非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、図7に示すように、ウエハ200上に、1サイクルあたりに形成される上述のSiCN層を所定の数だけ積層して、SiCN膜を形成することができる。より具体的には、その組成として、Si、NおよびC等を含み、Cが添加されたことにより、膜中に欠陥が形成されたSiCN膜を、ウエハ200上に形成することができる。SiCN膜では、第1層が窒化されてなる層中に形成される欠陥の密度は、第2層が窒化されてなる層中に形成される欠陥の密度よりも高くなっている。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成されるSiCN層の厚さを所望の膜厚よりも薄くし、SiCN層を積層することで形成されるSiCN膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。
【0088】
上述の処理条件下でウエハ200に対して、第1~第4ガスを供給することにより、SiCN膜中におけるCの濃度を5原子%以下とすることができる。SiCN膜中におけるCの濃度は、好ましくは、1原子%以上5原子%以下、より好ましくは1.5原子%以上4原子%以下、さらにより好ましくは2原子%以上3原子%以下である。
【0089】
SiCN膜中におけるCの濃度が5原子%を超えると、SiCN膜に形成される欠陥の量を増やすことができるものの、膜密度が低下するなどし、SiCN膜のリーク耐性が低下する場合がある。SiCN膜中におけるCの濃度が5原子%以下とすることにより、SiCN膜のリーク耐性の低下を回避することができる。SiCN膜中におけるCの濃度を4原子%以下とすることで、SiCN膜のリーク耐性の低下をより十分に回避することができる。SiCN膜中におけるCの濃度を3原子%以下とすることにより、SiCN膜のリーク耐性の低下をさらに十分に回避することができる。
【0090】
SiCN膜中におけるCの濃度が1原子%未満となると、SiCN膜中に十分な量の欠陥を形成することができず、SiCN膜が有するチャージトラップ特性が低下する場合がある。SiCN膜中におけるCの濃度を1原子%以上とすることにより、SiCN膜中に十分な量の欠陥を形成することができ、SiCN膜が有するチャージトラップ特性を高めることができる。SiCN膜中におけるCの濃度を1.5原子%以上とすることにより、SiCN膜が有するチャージトラップ特性をより高めることができる。SiCN膜中におけるCの濃度を2原子%以上とすることにより、SiCN膜が有するチャージトラップ特性をさらに高めることができる。
【0091】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
上述の成膜処理が終了した後、ノズル249a~249cのそれぞれからパージガスとしての不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0092】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0093】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0094】
(a)ステップa~dの各工程を、ステップa,c,b,dの順に非同時に行うことにより、具体的には、ステップaを行った直後にステップcを行うことにより、第1層が窒化されてなる層におけるCの濃度を、第2層が窒化されてなる層におけるCの濃度よりも高くすることができる。
【0095】
また、第1層の表面におけるC濃度と、第2層の表面におけるC濃度が、同一濃度である場合、第1層が窒化されなる層中に形成される欠陥の数が、第2層が窒化されてなる層中に形成される欠陥の数よりも多いことが、例えば、Photo Luminescence法(PL法)による測定により確認されている。これは、第1層が窒化されてなる層の方が、第2層が窒化されてなる層よりも、化学量論組成に近い組成を有する傾向にあり、このため、第1層の方が第2層よりも、Cが吸着したことによる影響を受けやすくなることに起因するものと考えられる。
【0096】
以上により、ステップcをステップaの直後に行い、第2層上へのCの吸着よりも第1層上へのCの吸着を優先することにより、SiCN膜全体におけるC含有量を抑制しつつ、SiCN膜中に、欠陥を効率的に形成することが可能となる。結果として、SiCN膜を、リーク特性に優れ、また、チャージトラップ特性に優れた膜とすることが可能となる。
【0097】
(b)第1層が改質されてなる層中に形成される欠陥の密度を、第2層が改質されてなる層中に形成される欠陥の密度よりも高くすることにより、SiCN膜全体におけるC含有量を抑制しつつ、SiCN膜中に、欠陥を効率的に形成することが可能となる。結果として、SiCN膜を、リーク特性に優れ、また、チャージトラップ特性に優れた膜とすることが可能となる。
【0098】
(c)第1ガスとして、第2ガスが有する熱分解温度よりも高い熱分解温度を有するガスを用いることにより、ウエハ200上に形成されるSiCN膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させつつ、SiCN膜の成膜レートを高めることが可能となる。
【0099】
(d)第1ガスとして、Si-Si結合を含まないガスを用い、第2ガスとして、Si-Si結合を含むガスを用いることにより、ウエハ200上に形成されるSiCN膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性をさらに向上させつつ、SiCN膜の成膜レートをさらに高めることが可能となる。
【0100】
(e)ステップaでは、処理温度を、第1ガスが熱分解する温度以下の温度とし、ステップbでは、処理温度を、第2ガスが熱分解する温度以上の温度とすることにより、ウエハ200上に形成されるSiCN膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を十分に向上させつつ、SiCN膜の成膜レートを高めることが十分に可能となる。また、好ましくは、ステップaでは、処理温度を、第1ガスが熱分解する温度よりも低い温度とし、ステップbでは、処理温度を、第2ガスが熱分解する温度よりも高い温度とすることにより、これらの効果がより確実に得られる。
【0101】
(4)変形例
本態様における成膜シーケンスは、以下に示す変形例のように変更することができる。これらの変形例は、任意に組み合わせることができる。特に説明がない限り、各変形例の各ステップにおける処理手順、処理条件は、上述の成膜シーケンスの各ステップにおける処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0102】
(変形例1)
図5および以下に示す成膜シーケンスのように、ステップa~dの各工程を、ステップc,a,b,dの順に非同時に行うようにしてもよい。具体的には、ステップaを行う直前にステップcを行うようにしてもよい。図5では、ステップa,b,c,dの実施期間をそれぞれa,b,c,dと表している。
【0103】
(第3ガス→第1ガス→第2ガス→第4ガス)×n⇒ SiCN
【0104】
変形例1においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0105】
(変形例2)
以下に示す成膜シーケンスのように、ステップa~dの各工程を、ステップc,a,c,b,dの順に非同時に行うようにしてもよい。具体的には、ステップaを行う直前とステップaを行った直後にステップcを行うようにしてもよい。
【0106】
(第3ガス→第1ガス→第3ガス→第2ガス→第4ガス)×n⇒ SiCN
【0107】
変形例2においては、第1層へのCの吸着量を増加させることができるので、SiCN膜中に、欠陥を効率的に形成する効果を、さらに十分に得ることができる。
【0108】
(変形例3)
上述の態様では、ステップaの実施期間とステップcの実施期間とを重複させない例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、ステップaにおいて第1ガスの供給を継続したままの状態でステップcを開始して第2ガスを供給し、ステップaの実施期間の少なくとも一部と、ステップcの実施期間の少なくとも一部と、を重複させてもよい。このようにすることにより、上述の効果に加えて、サイクルタイムを短縮させて成膜処理の生産性を向上させることができる。
【0109】
本変形例では、ステップcの実施期間と、ステップbの実施期間と、を重複させないことが好ましい。すなわち、ステップcを実施したのち、パージを実施し、その後、ステップbを実施することが好ましい。このようにすることにより、第3ガスに基づくパーティクルの発生を抑制することができる。
【0110】
本変形例では、ステップcの実施期間と、ステップdの実施期間と、を重複させないことが好ましい。このようにすることにより、上述の効果に加えて、第3ガスと第4ガスとの反応によるパーティクルの発生を抑制し、SiCN膜の膜質の低下を回避することが可能となる。
【0111】
(変形例4)
図6および以下に示す成膜シーケンスのように、ステップaの実施期間の少なくとも一部と、ステップcの実施期間と、を重複させつつ、ステップa,b,dの工程を、この順に行うようにしてもよい。図6では、ステップa,b,dの実施期間をそれぞれa,b,dと表している。
【0112】
(第1ガス+第3ガス→第2ガス→第4ガス)×n⇒ SiCN
【0113】
変形例4においては、上述の効果に加えて、サイクルタイムを短縮させて成膜処理の生産性を向上させることができる。
【0114】
(変形例5)
以下に示す成膜シーケンスのように、ステップaの実施期間の少なくとも一部と、ステップcの実施期間を重複させつつ、ステップa~dの各工程を、ステップa,c,b,dの順に行うようにしてもよい。
【0115】
(第1ガス+第3ガス→第3ガス→第2ガス→第4ガス)×n⇒ SiCN
【0116】
変形例5においては、第1層へのCの吸着量を増加させることができるので、SiCN膜中に、欠陥を効率的に形成する効果を、さらに十分に得ることができる。
【0117】
(変形例6)
以下に示す成膜シーケンスのように、ステップaの実施期間の少なくとも一部と、ステップcの実施期間と、を重複させつつ、ステップa~dの各工程を、ステップc,a,b,dの順に行うようにしてもよい。
【0118】
(第3ガス→第1ガス+第3ガス→第2ガス→第4ガス)×n⇒ SiCN
【0119】
変形例6においては、第1層へのCの吸着量を増加させることができるので、SiCN膜中に、欠陥を効率的に形成する効果を、さらに十分に得ることができる。
【0120】
(変形例7)
以下に示す成膜シーケンスのように、ステップaの実施期間の少なくとも一部と、ステップcの実施期間と、を重複させつつ、ステップa~dの各工程を、ステップc,a,c,b,dの順に行うようにしてもよい。
【0121】
(第3ガス→第1ガス+第3ガス→第3ガス→第2ガス→第4ガス)×n⇒ SiCN
【0122】
変形例7においては、第1層へのCの吸着量を増加させることができるので、SiCN膜中に、欠陥を効率的に形成する効果を、さらに十分に得ることができる。
【0123】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0124】
例えば、上述の態様では、所定の元素としてCを含む第3ガスを用いる例について説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されず、所定の元素として、例えば、ホウ素(B)を含む第3ガスが用いられてもよい。
【0125】
この場合、第3ガスとしては、例えば、モノボラン(BH)ガス、ジボラン(B)ガス、テトラボラン(B10)ガス等の水素化ホウ素系ガスを用いることができる。第3ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0126】
第3ガスとしては、水素化ホウ素系ガスの他、例えば、三塩化ホウ素(BCl)ガス、四塩化二ホウ素(BCl)等の塩化ホウ素系ガスを用いることができる。第3ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。なお、処理温度を低い温度にできる点において、第3ガスとして、水素化ホウ素系ガスよりも塩化ホウ素系ガスを用いる方が好ましい。
【0127】
第3ガスとして、Bを含むガスを用いた場合、ウエハ200上に、Si、NおよびB等を含むシリコン硼窒化膜(SiBN膜)を形成することができる。膜中に、Bを添加することにより、膜中に電荷を捕獲(トラップ)する欠陥(結晶欠陥)を形成することができる。この場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0128】
上述の態様や本態様では、Cを含むガス第3ガス、またはBを含む第3ガスのいずれか一方のガスを用いる例について説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されない。例えば、Cを含む第3ガスと、Bを含む第3ガスの双方のガスを供給してもよい。
【0129】
具体的には、Cを含む第3ガスと、Bを含む第3ガスを同時に供給してもよい。
【0130】
また、Cを含む第3ガスと、Bを含む第3ガスとを連続して供給してもよい。このとき、いずれか一方の第3ガスの供給が終了した直後に他の一方の第3ガスの供給を開始してもよい。また、いずれか一方の第3ガスの供給を継続したままの状態で、他の一方の第3ガスの供給を開始する、というように、一方の第3ガスの供給期間の一部と、他の一方の第3ガスの供給期間の一部とを重複させてもよい。
【0131】
また、Cを含む第3ガスと、Bを含む第3ガスとを間欠的に供給してもよい。例えば、いずれか一方の第3ガスの供給が終了し、所定時間が経過した後、他の一方の第3ガスの供給を開始させてもよい。
【0132】
これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。なお、Cを含む第3ガスと、Bを含む第3ガスの双方のガスを供給する場合において、これらのガスを同時に供給する場合が、最も多くの欠陥を膜中に形成することができる。
【0133】
各処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各処理を迅速に開始できるようになる。
【0134】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールするようにしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0135】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0136】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0137】
上述の態様は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様の処理手順、処理条件と同様とすることができる。上述の態様では、各ステップを非同時に行う例について説明したが、膜特性に影響を与えない限りにおいては、各ステップを同時に行う期間を有していてもよい。
【実施例
【0138】
上述の基板処理装置を用い、以下の成膜シーケンスを行うことで、ウエハ上にSiCN膜を形成し、サンプル1~4を作製した。
【0139】
サンプル1:(第1ガス→第3ガス→第2ガス→第4ガス)×n
サンプル2:(第3ガス→第1ガス→第2ガス→第4ガス)×n
サンプル3:(第1ガス→第2ガス→第4ガス)×n
サンプル4:(第1ガス→第2ガス→第3ガス→第4ガス)×n
【0140】
第1ガスとしてはSTCガス、第2ガスとしてはHCDSガス、第3ガスとしてはCガス、第4ガスとしてはNHガスを用いた。処理条件は、上述の態様に示す各ステップにおける処理条件範囲内の所定の条件とした。
【0141】
サンプル1~4を作製した後、サンプル1~4のそれぞれについて、SiCN膜におけるC濃度、SiCN膜中に形成された欠陥の密度、SiCN膜のリーク耐性の良否を測定した。
【0142】
SiCN膜におけるC濃度の測定は、光電子分光法(XPS)を用いて行った。図8に示すように、サンプル1~4のSiCN膜におけるC濃度(Cの原子濃度)は、それぞれ、1.81原子%、2.74原子%、0原子%、1.09原子%であった。ステップcを不実施としたサンプル3の膜は、Cを含有しない、または実質的に含有しないことが確認された。サンプル1,2,4のC濃度は、いずれも5原子%以下の良好な結果となり、このうち、サンプル2が、2原子%以上3原子%以下の範囲内の値となり、最も良好であることが確認された。また、サンプル1が、1.5原子%以上4原子%以下の範囲内の値となり、2番目に良好であることが確認された。
【0143】
SiCN膜中に形成された欠陥の密度の測定は、PL法により、SiCN膜のトータルピークエリアを計測することにより行った。トータルピークエリアの値が大きいほど、膜中に形成された欠陥の密度が高いことを示している。図8に示すように、サンプル1~4のトータルピークエリアの値は、それぞれ、26261.9、27719.2、9733.4、21586.2であった。したがって、サンプル2の欠陥密度が最も高く、サンプル1の欠陥密度が2番目に高いことがわかった。さらに、サンプル1およびサンプル2の欠陥密度が、サンプル4の欠陥密度よりも高いという結果が得られた。これは、サンプル1及びサンプル2のC濃度がサンプル4のC濃度よりも高いことに起因すると考えている。なぜならば、STCガスは、HCDSガスよりもCを吸収しやすい、ということが実験から得られている。そのため、STCガスが供給される直前直後にCを供給すると、Cが効率的に吸収され、C濃度が高くなり、その結果として、欠陥が多くなる、と考えている。
【0144】
SiCN膜のリーク耐性の良否は、SiCN膜に6MV/cmの電解を印加したときに、SiCN膜を流れるリーク電流(A/cm)を測定することにより行った。その結果として、サンプル1のリーク電流が最も小さく、リーク耐性が最も優れていることが確認された。
【0145】
以上により、サンプル1は、SiCN膜におけるC濃度、SiCN膜中に形成された欠陥の密度、SiCN膜のリーク耐性のいずれも好適であり、サンプル2は、SiCN膜におけるC濃度、SiCN膜中に形成された欠陥の密度に関して特に良好であることがわかった。
【0146】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
【0147】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
(a)基板に対してシリコンを含む第1ガスを供給して第1層を形成する工程と、
(b)基板に対してシリコンを含み前記第1ガスとは分子構造の異なる第2ガスを供給して第2層を形成する工程と、
(c)基板に対して所定の元素を含む第3ガスを供給する工程と、
(d)基板に対して窒素を含む第4ガスを供給して前記第1層および前記第2層を改質する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上にシリコン、前記所定の元素、および窒素を含む膜を形成する工程を有し、
前記所定の元素として、前記膜中に欠陥を形成することが可能な元素を用い、
前記サイクルでは、(a)~(d)の各工程を、(a)(c)(b)(d)、(c)(a)(b)(d)、または(c)(a)(c)(b)(d)のいずれかの順に行う半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0148】
(付記2)
本開示の他の態様によれば、
(a)基板に対してシリコンを含む第1ガスを供給して第1層を形成する工程と
(b)基板に対してシリコンを含み前記第1ガスとは分子構造の異なる第2ガスを供給して第2層を形成する工程と、
(c)基板に対して所定の元素を含む第3ガスを供給する工程と、
(d)基板に対して窒素を含む第4ガスを供給して前記第1層および前記第2層を改質する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことで、前記基板上にシリコン、前記所定の元素、及び窒素を含む膜を形成する工程を有し、
前記所定の元素として、前記膜中に欠陥を形成することが可能な元素を用い、
(a)の実施期間の少なくとも一部と、(c)の実施期間の少なくとも一部と、を重複させる半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0149】
(付記3)
付記2に記載の方法であって、
(c)の実施期間と、(b)の実施期間と、を重複させない。
【0150】
(付記4)
付記2または3に記載の方法であって、
(c)の実施期間と、(d)の実施期間と、を重複させない。
【0151】
(付記5)
付記2~4のいずれか1項に記載の方法であって、
前記サイクルでは、(a)(b)(d)の工程を、この順に行う。
【0152】
(付記6)
付記2~4のいずれか1項に記載の方法であって、
前記サイクルでは、(a)~(d)の各工程を、(a)(c)(b)(d)の順に行う。
【0153】
(付記7)
付記2~4のいずれか1項に記載の方法であって、
前記サイクルでは、(a)~(d)の各工程を、(c)(a)(b)(d)の順に行う。
【0154】
(付記8)
付記2~4のいずれか1項に記載の方法であって、
前記サイクルでは、(a)~(d)の各工程を、(c)(a)(c)(b)(d)の順に行う。
【0155】
(付記9)
本開示のさらに他の態様によれば、
基板に対して、シリコンを含む第1ガス、シリコンを含み前記第1ガスとは分子構造の異なる第2ガス、所定の元素を含む第3ガス、窒素を含む第4ガスを供給し、前記基板上に、前記第1ガスが供給されることで形成される第1層が改質されてなる層と、前記第2ガスが供給されることで形成される第2層が改質されてなる層と、を交互に積層して、シリコン、前記所定の元素、及び窒素を含む膜を形成する工程を有し、
前記所定の元素として、前記膜中に欠陥を形成することが可能な元素を用い、
前記第1層が改質されてなる層における前記所定の元素の濃度を、前記第2層が改質されてなる層における前記所定の元素の濃度よりも高くし、
前記第1ガスとして、前記第2ガスが有する熱分解温度よりも高い熱分解温度を有するガスを用いる半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0156】
(付記10)
付記9に記載の方法であって、
前記第1層が改質されてなる層中に形成される欠陥の密度を、前記第2層が改質されてなる層中に形成される欠陥の密度よりも高くする。
【0157】
(付記11)
付記1~10のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第1ガスとして、Si-Si結合を含まないガスを用い、
前記第2ガスとして、Si-Si結合を含むガスを用いる。
【0158】
(付記12)
付記1~11のいずれか1項に記載の方法であって、
前記所定の元素として、炭素またはホウ素のうち少なくともいずれかを用いる。
【0159】
(付記13)
付記1~12のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第3ガスとして、炭化水素系ガス、アミン系ガス、塩化ホウ素系ガス、および、水素化ホウ素系ガスからなる群より選択される少なくともいずれかのガスを用いる。
【0160】
(付記14)
付記1~13のいずれか1項に記載の方法であって、
前記膜中における前記所定の元素の濃度を5原子%以下とする。
好ましくは1原子%以上5原子%以下、より好ましくは1.5原子%以上4原子%以下、より好ましくは2原子%以上3原子%以下とする。
【0161】
(付記15)
付記1~14のいずれか1項に記載の方法であって、
前記膜は、不揮発性メモリセルのチャージトラップ膜である。
【0162】
(付記16)
付記1~8のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)における前記基板の温度を、前記基板が存在する空間に前記第1ガスが単独で存在した場合に前記第1ガスが熱分解する温度以下の温度、または、前記第1ガスが熱分解する温度よりも低い温度とし、
(b)における前記基板の温度を、前記基板が存在する空間に前記第2ガスが単独で存在した場合に前記第2ガスが熱分解する温度以上の温度、または、前記第2ガスが熱分解する温度よりも高い温度とする。
具体的には、基板の温度を、450℃以上750℃以下、好ましくは650℃以上750℃以下にする。
【0163】
(付記17)
本開示のさらに他の態様によれば、
基板上に膜を形成する処理が行われる処理室と、
前記処理室内の基板に対して、シリコンを含む第1ガスを供給する第1ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して、シリコンを含み前記第1ガスとは分子構造の異なる第2ガスを供給する第2ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して、前記膜中に欠陥を形成することが可能な所定の元素を含む第3ガスを供給する第3ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して、窒素を含む第4ガスを供給する第4ガス供給系と、
前記処理室内において、付記1の各処理(各工程)を行わせるように、前記第1ガス供給系、前記第2ガス供給系、前記第3ガス供給系、および前記第4ガス供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、を有する基板処理装置が提供される。
【0164】
(付記18)
本開示のさらに他の態様によれば、
付記1の各手順(各工程)をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【符号の説明】
【0165】
200 ウエハ(基板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8