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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-14
(45)【発行日】2024-02-22
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20240215BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240215BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240215BHJP
   B22F 1/052 20220101ALI20240215BHJP
   B22F 1/12 20220101ALI20240215BHJP
   B22F 1/068 20220101ALI20240215BHJP
   B22F 1/107 20220101ALI20240215BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20240215BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H01B13/00 Z
B22F1/00 K
B22F1/052
B22F1/12
B22F1/068
B22F1/107
B22F9/00 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022174324
(22)【出願日】2022-10-31
(62)【分割の表示】P 2021083674の分割
【原出願日】2017-04-28
(65)【公開番号】P2023017869
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】国宗 哲平
(72)【発明者】
【氏名】蔵本 雅史
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/165416(WO,A1)
【文献】特開2012-222309(JP,A)
【文献】国際公開第2009/090915(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
H01B 13/00
B22F 1/00
B22F 1/052
B22F 1/12
B22F 1/068
B22F 1/107
B22F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、
実装部材と、
前記半導体素子と前記実装部材との間に配置され、メジアン径が20~60μmの球状である無機スペーサー粒子と、銀と、を含む導電性材料と、を含み、
前記導電性材料に含まれる前記無機スペーサー粒子と、前記銀と、の配合比は、前記無機スペーサー粒子と前記銀との配合量を100wt%としたときに、0より大きく1wt%以下であり、
前記無機スペーサー粒子の量は、前記導電性材料における前記無機スペーサー粒子の濃度が用いる前記半導体素子の面積(mm 2 )に対して3pcs以上である半導体装置。
【請求項2】
サブマウントチップと、
フレームと、
前記サブマウントチップと前記フレームとの間に配置され、メジアン径が20~60μmの球状である無機スペーサー粒子と、銀と、を含む導電性材料と、を含み、
前記導電性材料に含まれる前記無機スペーサー粒子と、前記銀と、の配合比は、前記無機スペーサー粒子と前記銀との配合量を100wt%としたときに、0より大きく1wt%以下であり、
前記無機スペーサー粒子の量は、前記導電性材料における前記無機スペーサー粒子の濃度が用いる前記サブマウントチップの面積(mm 2 )に対して3pcs以上である半導体装置。
【請求項3】
前記サブマウントチップは、基材に半導体素子が実装されている請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記基材は、窒化アルミである請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体素子は、LED又はLDである請求項1、3および4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記無機スペーサー粒子の粒径の均一さは、CV値(標準偏差/平均値)で5%未満である請求項1~5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記無機スペーサー粒子は、真球状である請求項1~6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記導電性材料は、金、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムおよびオスミウムの金属粒子を1種以上含有する請求項1~7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記導電性材料の厚みは、前記無機スペーサー粒子の直径に相当する請求項1~8のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記導電性材料は、複数の空隙を有する請求項1~9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記導電性材料は、実質的に樹脂を含まない請求項1~10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記導電性材料の電気抵抗は、50μΩ・cm以下である請求項1~11のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記無機スペーサー粒子がシリカから成る請求項1~12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉焼結ペースト及びその製造方法、ならびに導電性材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子を光源とする発光装置やパワー半導体装置において、実装部材の上にパワー半導体素子等を配置する際、金属粒子を有機溶剤などの分散媒に分散した金属粉焼結ペーストを用いたものが知られている。実装部材とパワー半導体素子等との間に金属粉焼結ペーストを配置し、200℃前後の加熱によって金属粉焼結ペースト中の金属粒子同士が焼結する事で接合を行っている。
【0003】
また、発光素子と実装部材との接合方法としては、樹脂を含む接着剤や共晶を用いた鉛フリー共晶半田を発光素子と実装部材との間に配置する方法が知られている。
【0004】
ただし、鉛フリー半田は、一般的に融点が300℃以上であるため、高温加熱による部材劣化や、接合後冷却時における発光素子と実装部材との熱膨張係数の差による応力で、部材損傷が発生する可能性がある。そのため、鉛フリー半田を用いる方法では、使用できる実装部材の選択肢が狭い場合もある。
【0005】
金属粉焼結ペーストにおいて、例えば金属粉として銀を用いる場合は、理論的耐熱限界となる銀の融点は約962℃であるが、200℃前後の加熱により接合する。従って、金属粉焼結ペーストは、得られる発光装置の接合温度および耐熱性の点で、共晶を用いた鉛フリー共晶半田に比べて優れている。
また金属粉焼結ペーストにおいて、金属粉として金を含まない場合、発光素子の実装によく用いられる金錫共晶半田に比べて安価である。
【0006】
金属粉焼結ペーストには樹脂を含むものもあるが、焼結により高温が必要となる点と、樹脂成分、もしくは樹脂の揮発分が周辺部材を汚染する点で、樹脂を含まず揮発性有機溶剤を分散媒とするものが優れる。
【0007】
金属粉焼結ペーストを用いる方法は、樹脂を含む接着剤を用いる方法に比べ、樹脂劣化が発生しないため、得られた発光装置の耐熱性や放熱性の点で優れている。
【0008】
金属粉焼結ペーストとして、例えば、平均粒径が3μm以下の球形Cu粉末と、アスペクト比が3以上で、かつ平均粒径が10μm以上の扁平Cu粉末と、ガラスフリットと、焼き付けるための熱処理工程で溶融しない無機材料からなる平均粒径が30μm以上の球形無機粉末とを含有し、前記無機粉末がセラミック系材料を含むものが知られている(例えば、特許文献1)。また、一次粒子の個数平均粒子径が40nm~400nmの銀微粒子と、溶剤と、示差走査熱量を用いた測定で得られるDSCチャートにおける吸熱ピークの極大値が80℃から170℃の範囲にある熱可塑性樹脂粒子とを含む導電性組成物も知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5962673号
【文献】国際公開第2016/063931号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
金属粉焼結ペーストを焼結後に得られる導電性材料は、金属同士がネットワークを形成するため、弾性率がバルク金属と比べると低い。しかし、このような導電性材料の弾性率は、銀ペースト等の樹脂を含む導電性接着剤より高くなる。このため、このような導電性材料を用いて線膨張係数の異なる発光素子と実装部材を接合した場合に、熱応力が加えられても弾性率が高く変形しにくいので、クラックや破断による接合強度の低下を引き起こす事がある。
【0011】
そこで、本発明は、熱応力に対する耐久性を高めた金属粉焼結ペースト及びその製造方法ならびに、その金属粉焼結ペーストを用いた導電性材料の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本実施形態に係る金属粉焼結ペーストは、平均粒径(メジアン径)が0.3μm~5μmの銀の粒子を主成分として含み、CV値(標準偏差/平均値)が5%未満の無機スペーサー粒子を更に含み、実質的に樹脂を含まない。
【0013】
本実施形態に係る金属粉焼結ペーストの製造方法は、CV値(標準偏差/平均値)が5%未満の無機スペーサー粒子と、平均粒径(メジアン径)が0.3μm~5μmの銀の粒子とを混合することを含み、ただし実質的に樹脂とは混合しない。
【0014】
本実施形態に係る導電性材料の製造方法は、前記金属粉焼結ペーストを焼成する工程を含む。
【発明の効果】
【0015】
これにより、熱応力に対する耐久性を高めた金属粉焼結ペースト及びその製造方法ならびに、その金属粉焼結ペーストを用いた導電性材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態の金属粉焼結ペースト、金属粉焼結ペーストの製造方法、ならびに導電性材料および導電性材料の製造方法について説明する。
【0017】
本実施形態の金属粉焼結ペーストは、平均粒径(メジアン径)が0.3μm~5μmの銀の粒子を主成分として含み、CV値(標準偏差/平均値)が5%未満の無機スペーサー粒子を更に含み、実質的に樹脂を含まない。CV値(Coefficient of Variation)とは、粒子径の均一さ、平均粒子径に対する標準偏差の割合を示すものである。
【0018】
【数1】
【0019】
また、本実施形態の金属粉焼結ペーストの製造方法は、CV値(標準偏差/平均値)が5%未満の無機スペーサー粒子と、平均粒径(メジアン径)が0.3μm~5μmの銀の粒子とを混合することを含み、ただし実質的に樹脂とは混合しない。
【0020】
本実施形態の金属粉焼結ペーストにおいては、CV値(標準偏差/平均値)が5%未満の無機スペーサー粒子がダイボンド時のペーストの押し潰しを防ぐため、ペーストを厚く形成する事が可能になり、結果として熱応力による変形時の変形率を低減する事ができ、強度の低下を抑える事で、信頼性の高い半導体装置等の製造が可能になる。
【0021】
半導体素子をチップとも呼ぶ。半導体素子はLSIやICなどの半導体の他、LEDやLDなどの半導体発光素子も使用することができる。半導体素子は発熱量の大きいパワー半導体と呼ばれる半導体素子や熱の他に光を放出する半導体発光素子に好適に使用することができる。
【0022】
[銀の粒子]
本実施形態の金属粉焼結ペーストに用いる金属粒子は、銀の粒子が主成分である。すなわち、金属粒子における前記銀の粒子の含有率は、例えば70質量%以上、好ましくは80質量%以上、よりこのましくは90質量%以上であることを意味する。なお、銀の粒子には、例えば10質量%以下、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下の酸化銀の粒子を含んでもよい。
【0023】
この銀の粒子は、平均粒径(メジアン径)が1種類のものであっても、2種類以上のものを混合して用いてもよい。銀の粒子は、平均粒径(メジアン径)が0.3μm~5μmであり、好ましくは1.0μm~4μmであり、より好ましくは1.5μm~3.5μmである。これにより電気抵抗値を小さくすることができる。銀の粒子以外の金属粒子は、平均粒径(メジアン径)が、0.1μm~15μmのものを使用することもできるが、0.3μm~10μmが好ましく、0.3μm~5μmがより好ましい。
【0024】
前記銀の粒子は、粒径が0.3μm未満の粒子の含有量が5質量%以下であるのが好ましく、4質量%以下であるのがより好ましい。
【0025】
前記銀の粒子は、粒径が0.5μm以下の粒子の含有量が15質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
【0026】
前記銀の粒子の平均粒径(メジアン径)は、レーザー回折法により測定することができる。なお、平均粒径(メジアン径)とは、粒度分布から求めた積算堆積頻度が50%の値を意味する。以下、平均粒径は特に断りのない限りメジアン径を意味する。
【0027】
また、前記銀の粒子は、比表面積が0.4m2/g~1.5m2/gであり、好ましくは0.6m2/g~0.9m2/gであり、より好ましくは0.66m2/g~0.74m2/gである。これにより隣接する銀粒子の接合面積を大きくすることができ、かつ銀の粒子の添加による粘度上昇が小さいため、ペースト中に銀の粒子を多く含む事ができる。これによりボイドの発生が抑えられ、高い接合強度が得られる。金属粉焼結ペーストの主原料である銀の粒子の比表面積は、BETの方法により測定することができる。
【0028】
前記銀の粒子の形態は限定されないが、例えば、球状、扁平な形状、フレーク状、多面体等が挙げられ、フレーク状が好ましい。フレーク状とすることで隣り合う銀の粒子との接触面積が大きくなり、電気抵抗が下がるからである。前記銀粒子の形態は、平均粒径が所定の範囲内の銀の粒子に関して、均等であるのが好ましい。前記銀粒子は、平均粒径が2種類以上のものを混合する場合、それぞれの平均粒径の銀の粒子の形態は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、平均粒径が3μmである銀の粒子と平均粒径が0.3μmである銀の粒子の2種類を混合する場合、平均粒径が0.3μmである銀の粒子は球状であり、平均粒径が3μmである銀の粒子は扁平な形状であってもよい。
【0029】
本実施形態の金属粉焼結ペーストは、銀の粒子を主成分として含む。本実施形態の金属粉焼結ペーストは、銀の粒子以外の金属粒子としては、例えば、金、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムおよびオスミウムの金属粒子を1種以上使用できる。
【0030】
前記銀の粒子の含有量が、ペーストに対して70質量%以上であるのが好ましく、85質量%以上であるのがより好ましく、90質量%以上であるのがさらに好ましい。前記銀の粒子の含有量が所定の範囲であると、得られる導電性材料の接合強度が高くなるからである。
【0031】
[無機スペーサー粒子]
本実施形態の金属粉焼結ペーストはCV値(標準偏差/平均値)が5%未満の無機スペーサー粒子を含む。前記無機スペーサー粒子は、シリカから成るのが好ましい。前記無機スペーサー粒子が無機物から成るため、前記金属粉焼結ペーストの焼成時に熱分解する恐れが低い。また、前記無機スペーサー粒子が無機物から成るため、前記金属粉焼結ペーストの焼成時に、焼結を阻害する揮発分が発生しない。
【0032】
前記無機スペーサー粒子として機能するためには粒径が均一であるのが好ましい。粒径が均一であると、小さい粒子を含む場合には、前記金属粉焼結ペースト上に配置したチップの傾きや、前記金属粉焼結ペーストの焼結体の厚みのばらつきを抑制することができ、チップ表面へのアッセンブリ工程時の高さ設定範囲外による不具合や、熱応力に対する耐久性不足を防止することができる。前記無機スペーサー粒子の粒径の均一さは、CV値(標準偏差/平均値)で5%未満であり、4%未満が好ましく、3%未満がより好ましい。CV値が小さいほど、前記無機スペーサー粒子の粒径のばらつきが小さいことを意味する。前記無機スペーサー粒子のCV値(標準偏差/平均値)は、例えば分解能に優れるコールターカウンターで測定することができる。
【0033】
前記無機スペーサー粒子の平均粒径(メジアン径)は10~60μmが好ましく、10~50μmがより好ましく、20μm~40μmがさらに好ましい。前記無機スペーサー粒子の平均粒径(メジアン径)が10μm以上であると、前記金属粉焼結ペーストを適度に厚く作成することができ、好ましい。また、前記無機スペーサー粒子の平均粒径(メジアン径)が60μm以下であると、スペーサーとして機能する割合が低く、前記金属粉焼結ペーストの焼結体の強度が低下するのを防止できるためである。
【0034】
前記無機スペーサー粒子の平均粒径(メジアン径)は、レーザー回折・散乱法により求めた粒度分布を用いて測定することができる。なお、平均粒径(メジアン径)とは、粒度分布から求めた積算堆積頻度が50%の値を意味する。以下、平均粒径は特に断りのない限りメジアン径を意味する。
【0035】
前記無機スペーサー粒子の添加量は、前記金属粉焼結ペーストにおける無機スペーサー粒子の濃度が用いるチップ面積(mm2)に対して3pcs以上となる添加量であればよく、20pcs以上となる添加量が好ましく、100pcs以上となる添加量がより好ましい。前記無機スペーサー粒子の濃度が3pcs/チップ面積以上であると、前記金属粉焼結ペースト上に配置したチップ傾きや前記金属粉焼結ペーストの焼結体の厚みのばらつき発生を抑制できるためである。ここで「pcs」は、粒子の個数を意味する。また、前記無機スペーサー粒子の添加量は、前記金属粉焼結ペーストにおける前記無機スペーサー粒子の濃度が10体積%以下となる添加量が好ましく、5体積%以下となる添加量がより好ましい。前記金属粉焼結ペーストにおける前記無機スペーサー粒子の濃度が10体積%以下であると、得られる焼結体の強度が低下するのを防止できるためである。
【0036】
上記の無機スペーサー粒子の濃度は、重量比に計算し直して用いる事ができる。具体的には、混合材料の比重は下記の式1で求められる事が知られている。
1/(材料A重量比/材料A比重+材料B重量比/材料B比重+・・)・・[式1]

さらに金属粉焼結ペーストの厚みは、スペーサーを用いる場合、スペーサーの直径に相当すると考えられる。このため、下記の式2によりチップ下ペースト体積が計算できる。

チップ下ペースト体積=チップ面積×スペーサー直径・・[式2]

チップ下ペースト体積に式1で求められるペースト比重を掛ける事でチップ下ペースト重量が計算できるので、下記の式3によりチップ下スペーサー総体積が求まる。

チップ下スペーサー総体積
=チップ下ペースト体積×ペースト比重×スペーサー重量比/スペーサー比重・・[式3]

上限濃度設定のためのスペーサー体積%は以下の式4で計算できる。

粒子濃度(体積%)=チップ下スペーサー総体積×100/チップ下ペースト体積・・[式4]

さらに、スペーサー粒子体積は下記の式5により粒径から計算できる。

スペーサー粒子体積=4×π×(粒径/2)×(粒径/2)×(粒径/2)/3・・[式5]

下記の式6で下限濃度設定のための粒子濃度(pcs/チップ面積)が求まる。

粒子濃度(pcs/チップ面積)=チップ下スペーサー総体積/スペーサー粒子体積・・[式6]

上記の計算はスペーサー重量比から粒子濃度を求めているが、計算を逆にすれば任意の粒子濃度に相当するスペーサー重量比を求められる。
【0037】
[界面活性剤]
本実施形態の金属粉焼結ペーストにはアニオン性の界面活性剤が含まれても良い。アニオン性による電界により、一般にマイナスの表面電位を持つ銀や金といった電極に対して、アニオン性の界面活性剤が電界による耐ブリード性を発揮することにより、基板底面への漏れや汚染によるワイヤーボンド不良が改善され、安定した電子部品の製造が可能になる。
【0038】
前記界面活性剤は、揮発性が高いものが好ましい。具体的にはTG-DTA(示差熱・熱重量同時分析)において室温付近から毎分2℃で昇温した際に、350℃時点の残渣が初期質量に対して20質量%以下となるものが好ましく、5質量%以下となるものがさらに好ましい。前記残渣が20質量%以下であれば、焼成時に揮発残渣が焼結を疎外しないため、接合強度が高くなるためである。
【0039】
前記アニオン性界面活性剤は、カルボキシル基、またはその塩を含むカルボン酸型であるのが好ましく、下記式(I)で表されるカルボン酸型であるのがより好ましい。

1O(CH2CH(R2)O)n1CH2COOR3 (I)
[式中、R1は炭素数7以上の直鎖または分岐のあるアルキル基であり、R2は-Hまたは-CH3または-CH2CH3、-CH2CH2CH3のいずれかであり、R3は-Hまたはアルカリ金属であり、n1は2~5の範囲である。]
【0040】
また、前記アニオン性界面活性剤は、下記式(II)で表されるカルボン酸型であるのがより好ましい。

11-C(O)N(R12)(CH2n2COOR13 (II)

[式中、R11は、炭素数7以上の直鎖または分岐のあるアルキル基であり、R12は-Hまたは-CH3または-CH2CH3、-CH2CH2CH3のいずれかであり、R13は-H、NH+(C24OH)3またはアルカリ金属であり、n2は1~5の範囲である。]
【0041】
また、前記アニオン性界面活性剤は、下記式(III)で表されるカルボン酸型であるのがより好ましい。

21-CH=CH-(CH2n3COOR22 (III)

[式中、R21は、炭素数7以上の直鎖または分岐のあるアルキル基であり、R22は-Hまたはアルカリ金属であり、n3は1~10の範囲である。]
【0042】
また、前記アニオン性界面活性剤は、下記式(IV)で表されるカルボン酸型であるのがより好ましい。

31-COOR32 (IV)

[式中、R31は、OHまたはCOOR33(R33は、アルカリ金属である)で任意に置換された炭素数7以上の直鎖または分岐のあるアルキル基またはアルコキシ基であり、R32は-Hまたはアルカリ金属である。]
【0043】
また、前記アニオン性界面活性剤は、スルホ基、またはその塩を含むスルホン酸型であるのが好ましく、下記式(V)で表されるスルホン酸型であるのがさらに好ましい。

41-SO342 (V)

[式中、R41は、OHまたはCOOR43(R43は、アルキル基である)で任意に置換された炭素数7以上の直鎖または分岐のあるアルキル基、アラルキル基もしくはアルケニル基またはアラルキル基であり、R42は、-Hまたはアルカリ金属である。]
【0044】
また、前記アニオン性界面活性剤は、カルボキシル基、またはその塩とスルホ基、またはその塩を両方含むカルボン-スルホン酸型であるのが好ましく、下記式(VI)で表されるカルボン-スルホン酸型であるのがさらに好ましい。
【0045】
【化1】
【0046】
[式中、R51は炭素数7以上の直鎖または分岐のあるアルコキシ基またはR54-CONH-であり(R54は、炭素数7以上の直鎖または分岐のあるアルキル基)、R52およびR53は-Hまたはアルカリ金属であり、n5は1~8の範囲であり、n6は0~1の範囲であり、n7は0~1の範囲である。]
【0047】
また、前記アニオン性界面活性剤は、リン酸エステル構造、またはその塩であるリン酸エステル型であるのが好ましく、下記式(VII)で表される硫酸エステル型であるのがさらに好ましい。

61-O-PO(OR62)OR63 (VII)

[式中、R61及びR62は、直鎖または分岐のあるアルキル基であり、R63は、-Hまたはアルカリ金属である。]
【0048】
前記界面活性剤の含有量は、本実施形態の金属粉焼結ペーストに対して10質量%を上限とすることが好ましい。また、前記界面活性剤の含有量は、前記金属粉焼結ペーストに対して2質量%以下であるのが好ましい。焼成により完全に揮発させることができるからである。
【0049】
前記界面活性剤は、25℃で液状であるのが好ましい。前記ペースト中の固形分が抑えられるため、銀粉を多く含む事が可能になり、得られる焼結体においてボイドが発生しにくくなるためである。
【0050】
[有機溶剤]
本実施形態の金属粉焼結ペーストは、分散媒として有機溶剤を含む事が好ましい。銀の粒子を有機溶剤に均一に分散する事で、印刷やディスペンスといった手法により効率的に高品質な塗布が可能になるからである。
【0051】
従来の金属粉焼結ペーストには樹脂を含むものもあるが、焼結により高温が必要となる点と、樹脂成分、もしくはその揮発分が周辺部材を汚染する点で、本実施形態の金属粉焼結ペーストにおいては、樹脂を含まず揮発性有機溶剤を分散媒とするものが優れる。
【0052】
前記分散媒は、1種類の有機溶剤であっても、2種類以上の有機溶剤の混合物であってもよく、ジオールとエーテルとの混合物であるのが好ましい。このような分散媒を用いる金属粉焼結ペーストにより低温で半導体素子と実装部材を接合することができるためである。
【0053】
前記分散媒の沸点は300℃以下であることが好ましく、150℃~250℃であるのがより好ましい。前記分散媒の沸点が150℃~250℃の範囲であると、分散媒揮発による金属粉焼結ペーストの室温時粘度変化を抑制することができて作業性が良好であるからである。さらに、分散媒の沸点が範囲であると、前記分散媒は焼成により完全に揮発させることができる。
【0054】
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール)、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール類;2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2,-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール類が挙げられる。
【0055】
エーテルとしては、例えば、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、1,3-ジオキソラン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0056】
前記分散媒がジオールとエーテルとの混合物の場合、ジオールとエーテルの質量比は、ジオール:エーテル=7~9:2であるのが好ましい。このような有機溶剤の混合物を用いる金属粉焼結ペーストにより低温で半導体素子と実装部材を接合することができるためである。
【0057】
前記分散媒の含有量は、金属粉焼結ペーストの塗布方法により必要粘度が変化するため特に限定するものではない。前記金属粉焼結ペーストを焼成して得られる焼結体の接合層の空隙率を抑制するため、前記金属粉焼結ペーストに対する分散媒の含有量は、30質量%を上限とすることが好ましい。
【0058】
[樹脂]
本実施形態の金属粉焼結ペーストは、実質的に樹脂を含まない。前記樹脂としては、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の結合剤、ポリアミド樹脂などの硬化剤が挙げられる。
【0059】
<金属粉焼結ペーストの製造方法>
また、CV値(標準偏差/平均値)が5%未満の無機スペーサー粒子と、平均粒径(メジアン径)が0.3μm~5μmの銀の粒子とを混合することを含み、ただし実質的に樹脂とは混合しない金属粉焼結ペーストの製造方法について以下に説明する。なお、前記無機スペーサー粒子、銀の粒子および樹脂については、前記金属粉焼結ペーストにおいて説明したとおりである。
【0060】
本実施形態の金属粉焼結ペーストが界面活性剤と分散媒を更に含む場合、本実施形態の金属粉焼結ペーストの製造方法は、界面活性剤と、CV値(標準偏差/平均値)が5%未満の無機スペーサー粒子と、平均粒径(メジアン径)が0.3μm~5μmの銀の粒子と、分散媒とを混合することを含み、ただし実質的に樹脂とは混合しない。なお、前記無機スペーサー粒子、銀の粒子、樹脂、界面活性剤および分散媒については、前記金属粉焼結ペーストにおいて説明したとおりである。
【0061】
本実施形態の金属粉焼結ペーストの製造方法における混合は、室温で行うことができ、脱泡工程を含む事が好ましい。脱泡工程を含む事により、チップ下に気泡が入る事によるチップと実装部材との接合強度の低下を防ぐ事ができる。
【0062】
<金属粉焼結ペースト>
170℃60分の大気オーブンによる焼成によって電気抵抗が6μΩ・cm以下の導電性材料が得られる金属粉焼結ペーストが好ましい。
【0063】
<導電性材料の製造方法>
また、金属粉焼結ペーストを焼成する工程を含む本実施形態の導電性材料の製造方法について説明する。この方法において金属粉焼結ペーストは、本実施形態の金属粉焼結ペーストである。
【0064】
[焼成条件]
前記焼成は、非酸化性雰囲気下、大気下、真空雰囲気下、酸素もしくは混合ガス雰囲気下などの雰囲気下等で行ってもよいが、酸素、オゾン又は大気雰囲気下で行われるのが好ましい。この雰囲気下で焼成すれば、銀の熱拡散が加速され、より高い焼結強度を有する導電性材料(焼結体)が得られるからである。
【0065】
本実施形態において、前記焼成は、160℃~300℃の範囲の温度で行われるのが好ましい。温度範囲で焼成される場合、半導体素子等が実装される樹脂パッケージの融点よりも低い温度で、金属接合が可能だからである。また、焼成は、160℃~260℃の範囲の温度で行われるのがより好ましく、170℃~195℃の範囲の温度で行われるのがさらに好ましい。従来の樹脂を含む接着剤を想定したリードフレームは200℃以上で劣化する部材が含まれるためである。
【0066】
前記焼成は、例えば10分~180分間、好ましくは30分~120分間、行われる。
【0067】
前記焼成は、例えば、160℃~300℃の範囲で10分~180分、好ましくは30分~120分間行われる。
【0068】
<導電性材料>
本実施形態の導電性材料は、本実施形態の金属粉焼結ペーストを焼成して得られる。本実施形態の導電性材料は、電気抵抗値が50μΩ・cm以下であるのが好ましい。電気抵抗が低いほど、電極として用いる場合には電力のロスが抑えられ、また放熱性に優れるためである。電気抵抗値は、10μΩ・cm以下であるのがより好ましく、6μΩ・cm以下であるのがさらに好ましい。
【0069】
<接合方法>
本実施形態の金属粉焼結ペーストを用いて、チップと基板を接合する方法は、前記金属粉焼結ペーストを前記基板上に塗布し、前記金属粉焼結ペーストの上に前記チップを配置し、前記金属粉焼結ペーストと前記チップが配置された前記基板を加熱し、前記金属粉焼結ペーストを焼結させて前記チップと前記基板を接合させる工程を含む。
【0070】
[加熱条件]
前記加熱は、非酸化性雰囲気下、大気下、真空雰囲気下、酸素もしくは混合ガス雰囲気下、気流中などの雰囲気下等で行ってもよいが、酸素、オゾン又は大気雰囲気下で行われるのが好ましい。この雰囲気下で加熱すれば、銀の熱拡散が加速され、より高い焼結強度を有する導電性材料(焼結体)が得られるからである。
【0071】
本実施形態において、前記焼成は、160℃~300℃の範囲の温度で行われるのが好ましい。温度範囲で焼成される場合、半導体素子等が実装される樹脂パッケージの融点よりも低い温度で、金属接合が可能だからである。また、焼成は、160℃~260℃の範囲の温度で行われるのがより好ましく、170℃~195℃の範囲の温度で行われるのがさらに好ましい。従来の樹脂を含む接着剤を想定したリードフレームは200℃以上で劣化する部材が含まれるためである。
【0072】
前記加熱は、例えば10分~180分間、好ましくは30分~120分間、行われる。
【0073】
前記加熱は、例えば、160℃~300℃の範囲で10分~180分、好ましくは30分~120分間行われる。
【0074】
本実施形態の金属粉焼結ペーストを用いるため、前記接合する方法によれば前記チップの傾きや焼結体の厚みのばらつきを抑制することができる。
【実施例
【0075】
以下、実施例、比較例、参考例を元に、本実施形態に係る金属粉焼結ペースト、金属粉焼結ペーストの製造方法、導電性材料、および導電性材料の製造方法について説明する。
【0076】
[比較例1]
有機溶剤である2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(0.57g)とジエチレングリコールモノブチルエーテル(0.14g)および、アニオン性液状界面活性剤(三洋化成工業株式会社製、製品名「ビューライトLCA-H」、ラウレス-5-カルボン酸、25℃で液状、0.09g)を、自転・公転ミキサー(商品名「あわとり錬太郎AR-250」、株式会社シンキー製)にて1分間攪拌、次いで15秒間脱泡のサイクルを1サイクル用いて攪拌し、溶剤混合物を得た。
【0077】
フレーク状銀粒子(福田金属箔粉工業株式会社製、製品名「AgC-239」、フレーク状、平均粒径(メジアン径)が2.7μm、比表面積が0.7m2/g、粒径0.3μm未満の粒子の含有量は1質量%、粒径0.5μm以下の粒子の含有量は3質量%、9.19g)を計量して前記溶剤混合物に加えた。得られた混合物を、自転・公転ミキサー(商品名「あわとり錬太郎AR-250」、株式会社シンキー製)にて1分間攪拌および15秒間脱泡のサイクルを、1サイクル用いて攪拌し、金属粉焼結ペースト(10g)を得た(銀の粒子の含有量は、91.9質量%)。
【0078】
[実施例1]
有機溶剤である2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(0.57g)とジエチレングリコールモノブチルエーテル(0.14g)および、アニオン性液状界面活性剤(三洋化成工業株式会社製、製品名「ビューライトLCA-H」、ラウレス-5-カルボン酸、25℃で液状、0.09g)を自転・公転ミキサー(商品名「あわとり錬太郎AR-250」、株式会社シンキー製)にて1分間攪拌、次いで15秒間脱泡のサイクルを1サイクル用いて攪拌し、溶剤混合物を得た。
【0079】
前記溶剤混合物に、フレーク状銀粒子(福田金属箔粉工業株式会社製、製品名「AgC-239」、フレーク状、平均粒径(メジアン径)が2.7μm、比表面積が0.7m2/g、粒径0.3μm未満の粒子の含有量は1質量%、粒径0.5μm以下の粒子の含有量は3質量%、9.16g)と、真球状シリカスペーサー(宇部エクシモ製、製品名「ハイプレシカTS」、コールターカウンターによる測定で平均粒径(メジアン径)が31.14μm、CV値が1.92%、0.03g)を計量して加えた。得られた混合物を、自転・公転ミキサー(商品名「あわとり錬太郎AR-250」、株式会社シンキー製)にて1分間攪拌および15秒間脱泡のサイクルを、1サイクル用いて攪拌し、金属粉焼結ペースト(10g)を得た(銀の粒子の含有量は、91.6質量%、スペーサー粒子濃度は214pcs/チップ面積で0.94体積%)。
【0080】
[実施例2]
真球状シリカスペーサー(宇部エクシモ製、製品名「ハイプレシカTS」、平均粒径(メジアン径)が31.14μm、CV値が1.92%、0.03g)の代わりに真球状シリカスペーサー(宇部エクシモ製、製品名「ハイプレシカTS」、コールターカウンターによる測定で平均粒径(メジアン径)が50.8μm、CV値が1.1%、0.09g)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、金属粉焼結ペースト(10g)を得た(銀の粒子の含有量は、91.0質量%、スペーサー粒子濃度は214pcs/チップ面積で2.62体積%)。
【0081】
<導電性材料>
比較例1、実施例1または2において得られた金属粉焼結ペーストを、表面に金を有する銅フレームにディスペンス法を用いて塗布し、裏面に銀電極を有し、外形4650μm×2300μm、厚み400μmの、窒化アルミを基材とするサブマウントチップをその上へマウントした。サブマウントチップには半導体発光素子が実装されている。金属粉焼結ペーストを介してサブマウントチップがマウントされた基板を、大気オーブンを用いて185℃で120分加熱し、その後、冷却した。冷却後に、サブマウント表面とフレーム表面の高さの差を光学式の測定顕微鏡で測定し、サブマウント厚みよりペースト厚みを算出した。その後、加熱後の金属粉焼結ペーストを介してサブマウントチップがマウントされた基板の半量を、85℃、85%の高温高湿槽に24時間投入し、260℃、10秒のリフローパスを実施するサイクルを計2サイクル実施した。その後、リフロー前とリフロー後の両サンプルを、基板からサブマウントチップを剥す方向に剪断力をかけ、サブマウントチップが剥離したときの強度を接合強度として測定した。
【0082】
また、比較例1、実施例1または2において得られた金属粉焼結ペーストを、ガラス基板(厚み1mm)にスクリ-ン印刷法により厚み100μmに塗布した。金属粉焼結ペーストが塗布されたガラス基板を、大気オーブンを用いて185℃で120分加熱し、その後、冷却した。得られた配線(導電性材料)を製品名「MCP-T600」(三菱化学株式会社製)を用い4端子法にて電気抵抗を測定した。
【0083】
表1に比較例1及び実施例1乃至2の配合比とペースト厚み、吸湿リフローパス試験前後のダイシェア試験の測定結果、電気抵抗の測定結果を示す。
【0084】
【表1】
【0085】
表1に示すように、スペーサー粒子を添加していない比較例1に比べて、スペーサー粒子を添加した実施例1および2については全て吸湿リフローパス試験前後のダイシェア強度維持率が高くなり、改善が見られた。また粒子径とペースト厚みに相関が見られた。実施例1および2において、電気抵抗についても十分小さい値を維持していた。
【0086】
実施形態に係る金属粉焼結ペーストにより、ペーストを厚く形成する事ができ、熱応力による膨張収縮時の変形率を下げる事ができるため、吸湿リフローパス時の接合強度低下を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本実施形態の金属粉焼結ペーストは、例えば、耐熱パワー配線、部品電極、ダイアタッチ、微細バンプ、フラットパネル、ソーラ配線等の製造用途およびウェハ接続等の用途、またこれらを組み合わせて製造する電子部品の製造に適用できる。また、本実施形態の導電性材料の製造方法は、例えば、LEDやLDなどの半導体発光素子を用いた発光装置を製造する際にも適用できる。